IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

特開2022-189563インゴットの処理方法および処理装置
<>
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図1
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図2
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図3
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図4
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図5
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図6
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図7
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図8
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図9
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図10
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図11
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図12
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図13
  • 特開-インゴットの処理方法および処理装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189563
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】インゴットの処理方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20221215BHJP
   C30B 33/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
C30B33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098211
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 朝輝
(72)【発明者】
【氏名】須藤 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦充
【テーマコード(参考)】
2G043
4G077
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043CA05
2G043EA01
2G043FA01
2G043HA01
2G043HA03
2G043JA02
4G077AA02
4G077AB04
4G077BE08
4G077FG13
4G077FG20
4G077FH08
4G077FJ03
4G077GA06
4G077HA12
(57)【要約】
【課題】インゴット内部における不純物濃度が異なるファセット領域を三次元的に確認することができるインゴットの処理方法および処理装置を提供すること。
【解決手段】インゴットの処理方法は、励起光を照射してインゴットの上面から生じた蛍光を検出する蛍光検出ステップ1と、インゴットの上面における蛍光の光子数の分布をXY座標位置と紐付けて二次元データとして記憶し、二次元データを取得したZ座標位置を記憶する記憶ステップ2と、レーザービームの集光点をインゴットの上面からウェーハの厚みに相当する深さに位置づけて照射し、剥離層を形成するレーザービーム照射ステップ3と、剥離層を起点としてインゴットからウェーハを分離するウェーハ生成ステップ4と、インゴットの各々のZ座標位置における二次元データに基づいて、インゴット全体における蛍光の光子数の分布を示す三次元データを生成する三次元データ生成ステップ5と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットの処理方法であって、
該インゴットの上方から所定波長の励起光を該インゴットに照射して該インゴットの上面から生じた蛍光の光子数を検出する蛍光検出ステップと、
該蛍光検出ステップにおいて検出した該インゴットの上面における蛍光の光子数の分布を、該インゴットの高さ方向と直交するXY平面上におけるXY座標位置と紐付けて二次元データとして記憶するとともに、該二次元データを取得した該インゴットの高さ方向の位置であるZ座標位置を、該二次元データと紐付けて記憶する記憶ステップと、
該記憶ステップの後、該インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該インゴットの上面から生成すべきウェーハの厚みに相当する深さに位置づけて照射し、該集光点と該インゴットとをXY方向に相対的に移動させることで該インゴットに剥離層を形成するレーザービーム照射ステップと、
該レーザービーム照射ステップで形成された剥離層を起点として該インゴットからウェーハを分離するウェーハ生成ステップと、
該蛍光検出ステップと該記憶ステップと該レーザービーム照射ステップと該ウェーハ生成ステップとを繰り返し実施して該インゴットから複数のウェーハを生成した後、該記憶ステップで記憶された該インゴットの各々のZ座標位置における二次元データに基づいて、該インゴット全体における蛍光の光子数の分布を示す三次元データを生成する三次元データ生成ステップと、
を有する、インゴットの処理方法。
【請求項2】
該三次元データを表示する表示ステップを更に有する、
請求項1に記載のインゴットの処理方法。
【請求項3】
該記憶ステップでは、該蛍光検出ステップにおいて検出された蛍光の光子数が所定値以上の領域を非ファセット領域とし、蛍光の光子数が該所定値よりも小さい領域をファセット領域として、該非ファセット領域および該ファセット領域のXY座標位置を記憶し、
該表示ステップでは、該インゴット全体におけるファセット領域と非ファセット領域との境界を表示する、
請求項2に記載のインゴットの処理方法。
【請求項4】
インゴットから複数のウェーハを生成するための処理装置であって、
該インゴットを保持する保持面を有する保持ユニットと、
該インゴットの上方から所定波長の励起光を該インゴットに照射して該インゴットの上面から生じた蛍光の光子数を検出する蛍光検出ユニットと、
該インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該インゴットの上面から生成すべきウェーハの厚みに相当する深さに位置づけて照射し、剥離層を形成するレーザービーム照射ユニットと、
該保持ユニットと該レーザービームの集光点とを該保持面に平行なXY方向に相対的に移動させる移動ユニットと、
制御ユニットと、
を有し、
該制御ユニットは、
該蛍光検出ユニットにおいて検出された該インゴットの上面における蛍光の光子数の分布を、該保持面に平行なXY平面上におけるXY座標位置と紐付けて二次元データとして記憶するとともに、該二次元データを取得した該インゴットの高さ方向の位置であるZ座標位置を、該二次元データと紐付けて記憶する記憶部と、
該記憶部に記憶された該インゴットの各々のZ座標位置における二次元データに基づいて、該インゴット全体における蛍光の光子数の分布を示す三次元データを生成する三次元データ生成部と、
を含むことを特徴とする、処理装置。
【請求項5】
該三次元データを表示する表示ユニットを更に有する、
請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
該記憶部は、該蛍光検出ユニットにおいて検出された蛍光の光子数が所定値以上の領域を非ファセット領域とし、蛍光の光子数が該所定値よりも小さい領域をファセット領域として、該非ファセット領域および該ファセット領域のXY座標位置を記憶し、
該表示ユニットは、該インゴット全体におけるファセット領域と非ファセット領域との境界を表示する、
請求項5に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットの処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハの製造方法として、ワイヤーソーを用いて円柱状のインゴットからウェーハを切り出す方法が知られているが、ワイヤーソーでの切り出しは、インゴットの大部分がカーフロス(切り代)として失われるため、経済的でないという課題があった。また、パワーデバイスとして用いられるSiC単結晶は硬度が高いため、切り出しに時間がかかり生産性が悪いという課題があった。これを解決するために、レーザービームの集光点をインゴットの内部に位置づけ、集光点を走査させてインゴットから板状ワークをスライスする方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、SiC単結晶インゴットには、一般に導電性を付与するために窒素等の不純物がドープされている。例えば、SiC単結晶の成長過程において形成されるファセット領域と呼ばれる原子レベルで平坦な領域は、他の部分より相対的に窒素が取り込まれやすいため、窒素濃度が他の領域より高くなる。このように不純物濃度が異なる領域が存在すると、インゴットからウェーハを切り出した際にウェーハ面内に抵抗率のばらつきが生じるため、デバイスの歩留まりを低下させる原因となる。そこで、ファセット領域を制御して結晶を成長させる技術が種々提案されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-111143号公報
【特許文献2】特開2014-040357号公報
【特許文献3】特開2013-100217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような不純物はインゴット内部に一様にドープされているわけではないため、結晶成長後にインゴット内部の様子を正確に評価するのは困難であり、結晶成長プロセスへの適切なフィードバックが行えないという課題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インゴット内部における不純物濃度が異なるファセット領域を三次元的に確認することができるインゴットの処理方法および処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のインゴットの処理方法は、該インゴットの上方から所定波長の励起光を該インゴットに照射して該インゴットの上面から生じた蛍光の光子数を検出する蛍光検出ステップと、該蛍光検出ステップにおいて検出した該インゴットの上面における蛍光の光子数の分布を、該インゴットの高さ方向と直交するXY平面上におけるXY座標位置と紐付けて二次元データとして記憶するとともに、該二次元データを取得した該インゴットの高さ方向の位置であるZ座標位置を、該二次元データと紐付けて記憶する記憶ステップと、該記憶ステップの後、該インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該インゴットの上面から生成すべきウェーハの厚みに相当する深さに位置づけて照射し、該集光点と該インゴットとをXY方向に相対的に移動させることで該インゴットに剥離層を形成するレーザービーム照射ステップと、該レーザービーム照射ステップで形成された剥離層を起点として該インゴットからウェーハを分離するウェーハ生成ステップと、該蛍光検出ステップと該記憶ステップと該レーザービーム照射ステップと該ウェーハ生成ステップとを繰り返し実施して該インゴットから複数のウェーハを生成した後、該記憶ステップで記憶された該インゴットの各々のZ座標位置における二次元データに基づいて、該インゴット全体における蛍光の光子数の分布を示す三次元データを生成する三次元データ生成ステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のインゴットの処理方法は、該三次元データを表示する表示ステップを更に有してもよい。
【0009】
また、本発明のインゴットの処理方法において、該記憶ステップでは、該蛍光検出ステップにおいて検出された蛍光の光子数が所定値以上の領域を非ファセット領域とし、蛍光の光子数が該所定値よりも小さい領域をファセット領域として、該非ファセット領域および該ファセット領域のXY座標位置を記憶し、該表示ステップでは、該インゴット全体におけるファセット領域と非ファセット領域との境界を表示してもよい。
【0010】
また、本発明の処理装置は、インゴットから複数のウェーハを生成するための処理装置であって、該インゴットを保持する保持面を有する保持ユニットと、該インゴットの上方から所定波長の励起光を該インゴットに照射して該インゴットの上面から生じた蛍光の光子数を検出する蛍光検出ユニットと、該インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該インゴットの上面から生成すべきウェーハの厚みに相当する深さに位置づけて照射し、剥離層を形成するレーザービーム照射ユニットと、該保持ユニットと該レーザービームの集光点とを該保持面に平行なXY方向に相対的に移動させる移動ユニットと、制御ユニットと、を有し、該制御ユニットは、該蛍光検出ユニットにおいて検出された該インゴットの上面における蛍光の光子数の分布を、該保持面に平行なXY平面上におけるXY座標位置と紐付けて二次元データとして記憶するとともに、該二次元データを取得した該インゴットの高さ方向の位置であるZ座標位置を、該二次元データと紐付けて記憶する記憶部と、該記憶部に記憶された該インゴットの各々のZ座標位置における二次元データに基づいて、該インゴット全体における蛍光の光子数の分布を示す三次元データを生成する三次元データ生成部と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の処理装置は、該三次元データを表示する表示ユニットを更に有してもよい。
【0012】
また、本発明の処理装置において、該記憶部は、該蛍光検出ユニットにおいて検出された蛍光の光子数が所定値以上の領域を非ファセット領域とし、蛍光の光子数が該所定値よりも小さい領域をファセット領域として、該非ファセット領域および該ファセット領域のXY座標位置を記憶し、該表示ユニットは、該インゴット全体におけるファセット領域と非ファセット領域との境界を表示してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、インゴット内部における不純物濃度が異なるファセット領域を三次元的に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係るインゴットの処理方法の処理対象のインゴットの斜視図である。
図2図2は、図1に示すインゴットの側面図である。
図3図3は、実施形態に係る処理装置の構成例を示す斜視図である。
図4図4は、図3に示す処理装置の蛍光検出ユニットの概略構成を説明する説明図である。
図5図5は、実施形態に係るインゴットの処理方法の流れを示すフローチャート図である。
図6図6は、図5に示す蛍光検出ステップを示す斜視図である。
図7図7は、図5に示す蛍光検出ステップで蛍光を検出したXY座標位置の一例を示す図である。
図8図8は、図5に示す記憶ステップで記憶する二次元データの一例を示す図である。
図9図9は、図5に示すレーザービーム照射ステップを示す斜視図である。
図10図10は、図9の側面図である。
図11図11は、図5に示すウェーハ生成ステップの一状態を示す図である。
図12図12は、図5に示すウェーハ生成ステップの図11の後の一状態を示す図である。
図13図13は、図5に示す三次元データ生成ステップの前に蓄積された複数の二次元データの模式図である。
図14図14は、図5に示す三次元データ生成ステップで生成された三次元データの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るインゴット10の処理方法および処理装置100を図面に基づいて説明する。実施形態のインゴット10の処理方法は、図3および図4に示す処理装置100を用いて、図1および図2に示されるインゴット10から、図13等に示す複数のウェーハ30を生成するとともに、図14に示すインゴット10内部のファセット領域21の三次元データを生成する方法である。
【0017】
(インゴット)
まず、本発明の実施形態に係るインゴット10の処理方法の処理対象のインゴット10の構成について説明する。図1は、実施形態に係るインゴット10の処理方法の処理対象のインゴット10の斜視図である。図2は、図1に示すインゴット10の側面図である。
【0018】
図1および図2に示す実施形態のインゴット10は、SiC(炭化ケイ素)からなり、全体として円柱状に形成されている。インゴット10は、実施形態において、六方晶単結晶SiCインゴットである。インゴット10は、第一の面11と、第二の面12と、周面13と、第一オリエンテーションフラット14と、第二オリエンテーションフラット15と、を有している。
【0019】
第一の面11は、円形状であって、円柱状に形成されるインゴット10の一方の端面である。第一の面11は、インゴット10の上面に相当する。第二の面12は、円形状であって、円柱状に形成されるインゴット10の第一の面11とは反対側の端面である。第二の面12は、インゴット10の底面に相当する。周面13は、第一の面11の外縁と第二の面12の外縁とに連なる面である。
【0020】
第一オリエンテーションフラット14は、インゴット10の結晶方位を示すために周面13の一部に形成される平面である。第二オリエンテーションフラット15は、インゴット10の結晶方位を示すために周面13の一部に形成される平面である。第二オリエンテーションフラット15は、第一オリエンテーションフラット14に直交する。なお、第一オリエンテーションフラット14の長さは、第二オリエンテーションフラット15の長さより長い。
【0021】
また、インゴット10は、第一の面11の垂線16に対して第二オリエンテーションフラット15に向かう傾斜方向17にオフ角20傾斜したc軸18と、c軸18に直交するc面19と、を有している。c軸18の垂線16からの傾斜方向17は、第二オリエンテーションフラット15の伸長方向に直交し、かつ第一オリエンテーションフラット14と平行である。c面19は、インゴット10の第一の面11に対してオフ角20傾斜している。
【0022】
c面19は、インゴット10中にインゴット10の分子レベルで無数に設定される。インゴット10は、実施形態では、オフ角20を1°、4°または6°に設定されているが、本発明では、例えば1°~6°の範囲で自由に設定されて製造されてもよい。インゴット10は、第一の面11が研削装置により研削加工された後、研磨装置により研磨加工されて、第一の面11が鏡面に形成される。
【0023】
また、実施形態のインゴット10は、主として六方晶単結晶SiCインゴットとして形成されるが、局所的にファセット領域21が存在する。ファセット領域21は、インゴット10の第一の面11から第二の面12まで柱状に形成される(図14参照)。ファセット領域21は、ファセット領域21以外の非ファセット領域22と比較して、相対的に窒素が取り込まれやすいため、窒素濃度が他の領域より高くなる。
【0024】
(処理装置)
次に本発明の実施形態に係る処理装置100の構成について説明する。図3は、実施形態に係る処理装置100の構成例を示す斜視図である。図4は、図3に示す処理装置100の蛍光検出ユニット120の概略構成を説明する説明図である。以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。実施形態の処理装置100は、保持ユニット110と、蛍光検出ユニット120と、レーザービーム照射ユニット140と、移動ユニット150と、表示ユニット160と、制御ユニット170と、を有する。
【0025】
保持ユニット110は、インゴット10を保持面111で保持する。保持面111は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面111は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面111は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。保持ユニット110は、保持面111上に載置されたインゴット10を吸引保持する。
【0026】
保持ユニット110は、回転ユニット112によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット112は、X軸方向移動プレート113に支持される。回転ユニット112および保持ユニット110は、X軸方向移動プレート113を介して、移動ユニット150によりX軸方向に移動される。回転ユニット112および保持ユニット110は、X軸方向移動プレート113およびY軸方向移動プレート114を介して、移動ユニット150によりY軸方向に移動される。
【0027】
蛍光検出ユニット120は、保持ユニット110の保持面111に保持されたインゴット10に対して、インゴット10の上方から所定波長の励起光121を照射するとともに、インゴット10の上面から生じた蛍光122を検出するユニットである。蛍光検出ユニット120の一部は、装置本体101から立設した立設壁102の上端部から水平方向に延設された支持梁103の先端に支持されている。図4に示すように、蛍光検出ユニット120は、励起光源123と、集光レンズ124と、励起光反射鏡125と、受光部126と、バンドパスフィルタ127と、蛍光反射鏡128と、を含む。
【0028】
励起光源123は、インゴット10が吸収する波長を有する励起光121を照射する。励起光源123は、例えば、GaN(窒化ガリウム)系の発光素子を有する。
【0029】
集光レンズ124は、励起光源123から照射された励起光121を、保持ユニット110の保持面111に保持されたインゴット10の上面(第一の面11)に向けて集光照射する。集光レンズ124は、実施形態では励起光反射鏡125とインゴット10との間に配置されるが、本発明では励起光源123と励起光反射鏡125との間に配置されてもよい。
【0030】
励起光反射鏡125は、励起光源123から照射された励起光121を反射して、保持ユニット110の保持面111に保持されたインゴット10の上面(第一の面11)に向けて導く。励起光反射鏡125は、実施形態において、励起光源123から照射された励起光121を、集光レンズ124へ向けて反射する。
【0031】
受光部126は、インゴット10の上面から生じた蛍光122の光子数を検出する。受光部126は、例えば、光電効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換するとともに、電流増幅(電子増倍)機能を付加した高感度光検出器を含む。受光部126は、例えば、ガラス管で区画された真空領域に配置され、ガラス管を透過した蛍光122の光電子(フォトン)を受光して、蛍光122の光子数を示す電気信号を出力する。受光部126が受光した蛍光122の光電子は、光電子の衝突により2次電子を次々と発生させて電流を増幅させる。
【0032】
バンドパスフィルタ127は、受光部126の前段に配置される。バンドパスフィルタ127は、インゴット10の上面から生じた蛍光122のうち所定波長の光を通過させ、所定波長の蛍光122以外の波長の光を除去する。したがって、例えば、励起光121の一部が散乱して受光部126に向かった場合でも、励起光121は、バンドパスフィルタ127によって除去される。
【0033】
蛍光反射鏡128は、インゴット10の上面から生じた蛍光122を、受光部126に向けて反射する。蛍光反射鏡128は、反射面129が、鉛直方向に延びる長軸131と長軸131に直交する短軸132とを有する楕円130を、長軸131を中心に回転させた回転楕円体の曲面の一部からなる回転楕円鏡である。
【0034】
楕円鏡は、二つの焦点を有し、一方の焦点から出た光は、楕円鏡の内面で反射してから他方の焦点に至るという性質が知られている。実施形態における回転楕円体を形成する楕円鏡は、第一焦点133および第二焦点134を有する。第一焦点133の位置には、インゴット10の上面に励起光121が照射される部分が配置される。第二焦点134には、受光部126が配置される。
【0035】
このような構成によれば、第一焦点133に位置するインゴット10の上面に向けて励起光121を照射すると、励起光121によりインゴット10の上面から蛍光122が発せられる。蛍光122は、回転楕円体の一部からなる反射面129で反射されて、第二焦点134に向けて集光され、第二焦点134に配置される受光部126により受光される。
【0036】
このため、インゴット10の上面から発せられる蛍光122を、反射面129を介して、第二焦点134に配置される受光部126に効率よく導くことができ、微弱な蛍光122の損失の低減を図ることができる。更に、実施形態では、第二焦点134に受光部126を配置しているため、微弱な強度の蛍光122でも検出感度を向上させることができる。
【0037】
図3に示すレーザービーム照射ユニット140は、保持ユニット110の保持面111に保持されたインゴット10に対して、所定波長のパルス状のレーザービーム141(図9等参照)を照射するユニットである。レーザービーム照射ユニット140の一部は、装置本体101から立設した立設壁102の上端部から水平方向に延設された支持梁103の先端に支持されている。レーザービーム照射ユニット140の照射部は、蛍光検出ユニット120の照射部と隣接して設けられる。
【0038】
レーザービーム照射ユニット140は、例えば、インゴット10に対して透過性を有する波長のレーザービーム141の集光点142(図9等参照)を、インゴット10の上面から生成すべきウェーハ30(図11等参照)の厚みに相当する深さに位置づけて照射することで、剥離層24(図10等参照)を形成する。
【0039】
移動ユニット150は、保持ユニット110と、レーザービーム照射ユニット140から照射されるレーザービーム141の集光点142と、を保持面111に平行なXY方向に相対的に移動させるユニットである。移動ユニット150は、X軸方向移動ユニット151と、Y軸方向移動ユニット152と、を含む。
【0040】
X軸方向移動ユニット151は、保持ユニット110と、レーザービーム照射ユニット140から照射されるレーザービーム141の集光点142とを加工送り方向であるX軸方向に相対的に移動させるユニットである。X軸方向移動ユニット151は、実施形態において、保持ユニット110をX軸方向に移動させる。X軸方向移動ユニット151は、実施形態において、処理装置100の装置本体101上に設置されている。X軸方向移動ユニット151は、X軸方向移動プレート113をX軸方向に移動自在に支持する。
【0041】
Y軸方向移動ユニット152は、保持ユニット110と、レーザービーム照射ユニット140から照射されるレーザービーム141の集光点142とを割り出し送り方向であるY軸方向に相対的に移動させるユニットである。Y軸方向移動ユニット152は、実施形態において、保持ユニット110をY軸方向に移動させる。Y軸方向移動ユニット152は、実施形態において、処理装置100の装置本体101上に設置されている。Y軸方向移動ユニット152は、Y軸方向移動プレート114をY軸方向に移動自在に支持する。
【0042】
X軸方向移動ユニット151およびY軸方向移動ユニット152はそれぞれ、例えば、周知のボールねじと、周知のパルスモータと、周知のガイドレールと、を含む。ボールねじは、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータは、ボールねじを軸心回りに回転させる。X軸方向移動ユニット151のガイドレールは、Y軸方向移動プレート114に固定して設けられ、X軸方向移動プレート113をX軸方向に移動自在に支持する。Y軸方向移動ユニット152のガイドレールは、装置本体101に固定して設けられ、Y軸方向移動プレート114をY軸方向に移動自在に支持する。
【0043】
移動ユニット150は、更に、保持ユニット110と、レーザービーム照射ユニット140から照射されるレーザービーム141の集光点142とを焦点調整方向であるZ軸方向に相対的に移動させるZ軸方向移動ユニットを含んでもよい。Z軸方向移動ユニットは、レーザービーム照射ユニット140の集光器をZ軸方向に移動させる。
【0044】
実施形態において、蛍光検出ユニット120の照射部は、レーザービーム照射ユニット140の照射部と隣接して設けられる。したがって、移動ユニット150は、保持ユニット110と、蛍光検出ユニット120から照射される励起光121の照射位置と、を保持面111に平行なXY方向に相対的に移動させるユニットでもある。
【0045】
表示ユニット160は、液晶表示装置等により構成される表示部である。表示ユニット160は、例えば、処理条件の設定画面、不図示の撮像ユニットが撮像したインゴット10の状態、処理動作の状態、後述の制御ユニット170が生成した二次元データおよび三次元データ等を、表示面に表示させる。なお、撮像ユニットは、例えば、ミクロ顕微鏡およびマクロ顕微鏡を含み、蛍光検出ユニット120およびレーザービーム照射ユニット140の照射部に隣接して設けられる。
【0046】
表示ユニット160の表示面がタッチパネルを含む場合、表示ユニット160は、入力部を含んでもよい。入力部は、オペレータが加工内容情報を登録する等の各種操作を受付可能である。入力部は、キーボード等の外部入力装置であってもよい。表示ユニット160は、表示面に表示される情報や画像が入力部等からの操作により切り換えられる。表示ユニット160は、報知装置を含んでもよい。報知装置は、音および光の少なくとも一方を発して処理装置100のオペレータに予め定められた報知情報を報知する。報知装置は、スピーカーまたは発光装置等の外部報知装置であってもよい。
【0047】
制御ユニット170は、処理装置100の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、インゴット10に対する処理動作を処理装置100に実行させる。制御ユニット170は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。
【0048】
演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果に従って、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、処理装置100の制御を行う。
【0049】
制御ユニット170は、例えば、蛍光検出ユニット120に、保持ユニット110に保持されたインゴット10の上方から所定波長の励起光121をインゴット10に照射させる。制御ユニット170は、例えば、蛍光検出ユニット120が検出したインゴット10の上面から生じた蛍光122の光子数を取得する。
【0050】
制御ユニット170は、例えば、移動ユニット150に、レーザービーム照射ユニット140が照射するレーザービーム141の集光点142を、保持ユニット110に保持されたインゴット10の上面から生成すべきウェーハ30の厚みに相当する深さに位置づけさせる。制御ユニット170は、例えば、レーザービーム照射ユニット140に、保持ユニット110に保持されたインゴット10に対して透過性を有する波長のレーザービーム141を照射させる。制御ユニット170は、例えば、移動ユニット150に、レーザービーム141の集光点142と、インゴット10を保持する保持ユニット110とを、XY方向に相対的に移動させる。
【0051】
制御ユニット170は、例えば、表示ユニット160に、各種の情報および処理結果を表示させる。制御ユニット170は、例えば、表示ユニット160に、後述の記憶部171が記憶した二次元データを表示させる。制御ユニット170は、例えば、表示ユニット160に、後述の三次元データ生成部172が生成した三次元データを表示させる。この際、制御ユニット170は、例えば、表示ユニット160に、インゴット10全体におけるファセット領域21と非ファセット領域22との境界25(図14参照)を表示させる。制御ユニット170は、記憶部171と、三次元データ生成部172と、を含む。
【0052】
記憶部171は、蛍光検出ユニット120において検出されたインゴット10の上面における蛍光122の光子数の分布を記憶する。この際、記憶部171は、蛍光122の光子数の分布を、保持ユニット110の保持面111に平行なXY平面上におけるXY座標位置と紐付けて二次元データとして記憶する。また、記憶部171は、二次元データを取得したインゴット10の高さ方向の位置であるZ座標位置を、二次元データと紐付けて記憶する。
【0053】
記憶部171は、蛍光検出ユニット120において検出された蛍光122の光子数が所定値以上の領域を非ファセット領域22とし、蛍光122の光子数が所定値よりも小さい領域をファセット領域21として、非ファセット領域22およびファセット領域21のXY座標位置を記憶する。
【0054】
三次元データ生成部172は、記憶部171に記憶されたインゴット10の各々のZ座標位置における二次元データに基づいて、インゴット10全体における蛍光122の光子数の分布を示す三次元データを生成する。
【0055】
(インゴットの処理方法)
次に、本発明の実施形態に係るインゴット10の処理方法について説明する。図5は、実施形態に係るインゴット10の処理方法の流れを示すフローチャート図である。インゴット10の処理方法は、蛍光検出ステップ1と、記憶ステップ2と、レーザービーム照射ステップ3と、ウェーハ生成ステップ4と、三次元データ生成ステップ5と、表示ステップ6と、を有する。蛍光検出ステップ1、記憶ステップ2、レーザービーム照射ステップ3、およびウェーハ生成ステップ4は、一つのインゴット10から複数のウェーハ30を生成する間、繰り返し実行される。
【0056】
<蛍光検出ステップ1>
図6は、図5に示す蛍光検出ステップ1を示す斜視図である。蛍光検出ステップ1は、インゴット10の上方から所定波長の励起光121をインゴット10に照射してインゴット10の上面から生じた蛍光122の光子数を検出するステップである。
【0057】
蛍光検出ステップ1では、まず、インゴット10の第二の面12側を保持ユニット110の保持面111に吸引保持する。次に、蛍光検出ユニット120の第一焦点133(図4参照)がインゴット10の第一の面11に位置するように、蛍光検出ユニット120の高さを調整するとともに、インゴット10の第一の面11の周縁に向けて蛍光検出ユニット120の照射部を対向させるよう、移動ユニット150によって保持ユニット110を移動させる。
【0058】
この状態で、回転ユニット112によって、保持ユニット110を所定回転数(例えば900°/sec)で回転させて、インゴット10を所定方向(図6の下部に示す矢印方向)に回転させる。蛍光検出ユニット120かインゴット10の上面(第一の面11)に向けて励起光121を連続的に照射しつつ、図6に示すように、蛍光検出ユニット120がインゴット10の周縁から中心に向けて半径方向(図6の上部に示す矢印方向)に移動するように保持ユニット110を移動させる。すると、蛍光検出ユニット120は、インゴット10の周縁から中心に向かう螺旋状の軌跡を通過する。
【0059】
蛍光検出ステップ1では、インゴット10の上面から生じた蛍光122の光子数を取得するとともに、蛍光122を取得した際の励起光121を照射した位置のXY座標位置を取得する。
【0060】
<記憶ステップ2>
図7は、図5に示す蛍光検出ステップ1で蛍光122を検出したXY座標位置の一例を示す図である。図8は、図5に示す記憶ステップ2で記憶する二次元データの一例を示す図である。記憶ステップ2は、蛍光検出ステップ1において検出したインゴット10の上面における蛍光122の光子数の分布を、XY座標位置と紐付けて二次元データとして記憶するとともに、二次元データを取得したインゴット10のZ座標位置を、二次元データと紐付けて記憶するステップである。
【0061】
記憶ステップ2では、例えば、図7に示す検出位置23-1、23-2、23-3、23-4、23-5について、各々のXY座標位置と、各々で検出された蛍光122の光子数(count per second:cps)とが、図8に示すように、二次元データ173として記憶される。記憶ステップ2では、図8に示す二次元データ173を取得したインゴット10のZ座標位置を、二次元データ173と紐付けて、制御ユニット170の記憶部171に記憶する。
【0062】
実施形態の記憶ステップ2では、ファセット領域21および非ファセット領域22のXY座標位置を記憶する。ファセット領域21は、蛍光検出ステップ1において検出された蛍光122の光子数が所定値よりも小さい領域である。非ファセット領域22は、蛍光検出ステップ1において検出された蛍光122の光子数が所定値以上の領域である。図7および図8に示す実施形態のように、所定値を4000とした場合、検出位置23-3、23-4は、ファセット領域21であり、検出位置23-1、23-2、23-5は、非ファセット領域22である。
【0063】
<レーザービーム照射ステップ3>
図9は、図5に示すレーザービーム照射ステップ3を示す斜視図である。図10は、図9の側面図である。レーザービーム照射ステップ3は、記憶ステップ2の後に実施される。レーザービーム照射ステップ3は、インゴット10の上面から生成すべきウェーハ30の厚みに相当する深さに剥離層24を形成するステップである。
【0064】
レーザービーム照射ステップ3では、蛍光検出ステップ1から引き続いて、インゴット10の第二の面12側を保持ユニット110の保持面111に吸引保持している。レーザービーム照射ステップ3では、まず、レーザービーム141の集光点142をインゴット10の上面から生成すべきウェーハ30(図11参照)の厚みに相当する深さに位置づける。レーザービーム141は、インゴット10に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザービームである。次に、レーザービーム照射ステップ3では、集光点142とインゴット10とをXY方向に相対的に移動させながら、レーザービーム141をインゴット10に向けて照射する。
【0065】
レーザービーム照射ステップ3では、パルス状のレーザービーム141の照射によりSiCがSi(シリコン)とC(炭素)とに分離する。そして、次に照射されるパルス状のレーザービーム141が、前に形成されたCに吸収されて、SiCが連鎖的にSiとCとに分離する改質部が、加工送り方向に沿ってインゴット10の内部に形成されるとともに、改質部からc面19(図2参照)に沿って延びるクラックが生成される。このようにして、レーザービーム照射ステップ3では、改質部と、改質部からc面19に沿って形成されるクラックとを含む剥離層24を形成する。
【0066】
<ウェーハ生成ステップ4>
図11は、図5に示すウェーハ生成ステップ4の一状態を示す図である。図12は、図5に示すウェーハ生成ステップ4の図11の後の一状態を示す図である。ウェーハ生成ステップ4は、レーザービーム照射ステップ3で形成された剥離層24を起点としてインゴット10からウェーハ30を分離するステップである。
【0067】
ウェーハ生成ステップ4では、超音波発振ユニット180によって、インゴット10に超音波を付与し、剥離ユニット190によって、インゴット10からウェーハ30を剥離させる。これにより、剥離層24を界面としてインゴット10の第一の面11側の一部を剥離し、剥離した一部をウェーハ30として生成する。超音波発振ユニット180は、例えば、超音波電源と、超音波電源により電圧が印加される圧電セラミックス等から形成される超音波振動子と、を含む。
【0068】
ウェーハ生成ステップ4では、まず、インゴット10の第二の面12側を保持ユニット181の保持面182に吸引保持する。次に、超音波発振ユニット180の超音波振動子をインゴット10の第一の面11に対向させる。次に、超音波振動子とインゴット10との間に液体供給ユニット185から液体186を供給する。
【0069】
この状態で、超音波発振ユニット180の超音波電源から電圧を印加して超音波振動子を超音波振動させることにより、液体186内に超音波振動子の振動に応じた周波数の超音波振動を伝搬させ、インゴット10に付与する。インゴット10の全面に対して超音波振動を付与することにより、レーザービーム照射ステップ3で形成した剥離層24を界面としてインゴット10の第一の面11側の一部が剥離する。
【0070】
ウェーハ生成ステップ4では、次に、インゴット10の第二の面12側を保持ユニット191の保持面192に吸引保持する。次に、剥離ユニット190でインゴット10の第一の面11側を保持する。次に、剥離ユニット190を上方に引き上げることによって、インゴット10が上下に引っ張られ、剥離層24を界面としてインゴット10が分離する。これにより、インゴット10の第一の面11側の剥離した一部がウェーハ30として生成される。
【0071】
<三次元データ生成ステップ5>
図13は、図5に示す三次元データ生成ステップ5の前に蓄積された複数の二次元データの模式図である。図14は、図5に示す三次元データ生成ステップ5で生成された三次元データの模式図である。三次元データ生成ステップ5は、蛍光検出ステップ1と記憶ステップ2とレーザービーム照射ステップ3とウェーハ生成ステップ4とを繰り返し実施してインゴット10から複数のウェーハ30を生成した後に実施される。三次元データ生成ステップ5は、記憶ステップ2で記憶されたインゴット10の各々のZ座標位置における二次元データに基づいて、インゴット10全体における蛍光122の光子数の分布を示す三次元データを生成するステップである。
【0072】
図13に示すように、実施形態のインゴット10の処理方法では、インゴット10から剥離されたn個のウェーハ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nが生成される。制御ユニット170の記憶部171は、n個のウェーハ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nに関して、各々のZ座標位置のデータと、二次元データ(例えば、図8に示す二次元データ173)と、を紐付けて記憶している。
【0073】
三次元データ生成ステップ5において、制御ユニット170の三次元データ生成部172は、n個のウェーハ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nの各々のZ座標位置と、これに対応する各々の二次元データから、インゴット10全体における蛍光122の光子数の分布を示す三次元データを生成する。
【0074】
実施形態において、記憶部171は、n個のウェーハ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nに関して、各々のZ座標位置に対応するファセット領域21-1、21-2、21-3、・・・、21-nのXY座標位置のデータを記憶している。実施形態では、n個のウェーハ30-1、30-2、30-3、・・・、30-nの各々のZ座標位置と、ファセット領域21-1、21-2、21-3、・・・、21-nのXY座標位置とから、図14に示すように、ファセット領域21と非ファセット領域22との境界25を示す三次元データを生成する。
【0075】
<表示ステップ6>
表示ステップ6は、三次元データを表示するステップである。実施形態では、表示ユニット160の表示面に、三次元データを表示する。表示ステップ6では、例えば、立体モデルとして視覚的に三次元データを表示する。表示ステップ6では、例えば、図14に示すような立体モデルとして、インゴット10全体におけるファセット領域21と非ファセット領域22との境界を表示する。
【0076】
以上説明したように、実施形態に係るインゴット10の処理方法は、インゴット10からウェーハ30を剥離するための剥離層24を形成する前に、インゴット10の上面に励起光121を照射した際の蛍光122の光子数を検出することで、インゴット10の上面における蛍光122の光子数の分布を取得する。そして、繰り返し複数のウェーハ30を生成する毎に、インゴット10の上面における蛍光122の光子数の分布を取得することで、インゴット10全体における蛍光122の光子数の分布を示す三次元データを生成する。
【0077】
したがって、実施形態のインゴット10の処理方法は、インゴット10から複数のウェーハ30の切り出しが終了するとともに、インゴット10内部において不純物濃度が異なるファセット領域21を三次元的に確認することができる。これにより、迅速かつ適切な結晶成長プロセスへのフィードバックが可能となるという効果を奏する。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、レーザービーム照射ステップ3では、記憶ステップ2で記憶された二次元データに基づいて、ファセット領域21のみ異なるレーザー加工条件で加工を実施してもよい。例えば、ファセット領域21と非ファセット領域22とで、レーザービーム141を集光させる集光レンズの高さ(Z方向位置)を変更して、集光点142のインゴット10の厚み方向の位置が一定になるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 インゴット
11 第一の面(上面)
12 第二の面
21、21-1、21-2、21-3、21-n ファセット領域
22 非ファセット領域
23-1、23-2、23-3、23-4、23-5 検出位置
24 剥離層
25 境界
30、30-1、30-2、30-3、30-n ウェーハ
100 処理装置
110 保持ユニット
111 保持面
120 蛍光検出ユニット
121 励起光
122 蛍光
140 レーザービーム照射ユニット
141 レーザービーム
142 集光点
150 移動ユニット
160 表示ユニット
170 制御ユニット
171 記憶部
172 三次元データ生成部
180 超音波発振ユニット
185 液体供給ユニット
190 剥離ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14