(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189610
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】環状凸部除去装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098278
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 栄一
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 哲志
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA12
5F057BA15
5F057CA16
5F057DA14
5F057DA17
5F057EB15
5F057FA13
5F057FA17
5F057FA19
(57)【要約】
【課題】環状凸部の除去後のダイシングテープの弛み部分を効率よく加熱できる環状凸部除去装置を提供すること。
【解決手段】環状凸部除去装置1は、ウェーハユニット110のテープ112から環状凸部を除去する環状凸部除去ユニットと、ウェーハユニット110の環状凸部が除去された領域113のテープ112を加熱してテープ112の弛みを緩和する加熱ユニット30と、を備える。加熱ユニット30は、環状凸部108が除去されたウェーハユニット110が載置される支持板31と、支持板31を支持し、支持板31を加熱する熱源33が収容された基台部32と、を備え、基台部32は、熱源33を支持する支持面36を有し、支持面36には断熱領域となる空気の層を形成する凹部37が配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に円形凹部と該円形凹部を囲繞する環状凸部とを有し、該円形凹部と該環状凸部との境界部分に分断溝が形成されたウェーハと、該ウェーハの該一方の面に貼着されたテープと、該テープの外周部分が装着された環状フレームとから構成されるウェーハユニットから該環状凸部を除去する環状凸部除去装置であって、
該ウェーハユニットの該テープから該環状凸部を除去する環状凸部除去ユニットと、
該ウェーハユニットの該環状凸部が除去された領域の該テープを加熱して該テープの弛みを緩和する加熱ユニットと、を備え、
該加熱ユニットは、
該環状凸部が除去された該ウェーハユニットが載置される支持板と、
該支持板を支持し、該支持板を加熱する熱源が配置された基台部と、を備え、
該基台部は、熱源を支持する支持面を有し、該支持面には断熱領域となる空気の層を形成する凹部が配置されている環状凸部除去装置。
【請求項2】
該熱源は、加熱する該テープの領域に対応した環状の発熱体である請求項1に記載の環状凸部除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状凸部除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスチップは、電子機器の小型化にともない薄く形成される。半導体デバイスを搭載したウェーハを50μm以下などの極薄に研削すると、紙のようにコシ(すなわち、しなやかさ及び丈夫さ)がなくなり取り扱いが困難になり、搬送等において破損する恐れがある。そこで、ウェーハの半導体デバイスを搭載したデバイス領域に対応する裏面のみを研削し、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域に対応するウェーハの裏面に補強用の環状凸部を形成する研削方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-173487号公報
【特許文献2】特開2011-061137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環状凸部はデバイス形成後のダイシングによる分割工程では不要のため、環状フレームにダイシングテープで固定され、環状凸部の内周がデバイス領域と分断された後、環状凸部を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、環状凸部の除去後のダイシングテープには弛みが発生し、そのままデバイス領域を切削すると、弛んだダイシングテープが切断されてしまうという問題があった。そこで、ダイシングテープの弛み部分を加熱して収縮させ平坦にする方法が採用されている。しかしながら、ダイシングテープの加熱ユニットは、比較的広い面積を加熱するため、所定の温度、例えば70℃まで温度を上昇させるまでに10~15分かかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、環状凸部の除去後のダイシングテープの弛み部分を効率よく加熱できる環状凸部除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の環状凸部除去装置は、一方の面に円形凹部と該円形凹部を囲繞する環状凸部とを有し、該円形凹部と該環状凸部との境界部分に分断溝が形成されたウェーハと、該ウェーハの該一方の面に貼着されたテープと、該テープの外周部分が装着された環状フレームとから構成されるウェーハユニットから該環状凸部を除去する環状凸部除去装置であって、該ウェーハユニットの該テープから該環状凸部を除去する環状凸部除去ユニットと、該ウェーハユニットの該環状凸部が除去された領域の該テープを加熱して該テープの弛みを緩和する加熱ユニットと、を備え、該加熱ユニットは、該環状凸部が除去された該ウェーハユニットが載置される支持板と、該支持板を支持し、該支持板を加熱する熱源が配置された基台部と、を備え、該基台部は、熱源を支持する支持面を有し、該支持面には断熱領域となる空気の層を形成する凹部が配置されているものである。
【0007】
該熱源は、加熱する該テープの領域に対応した環状の発熱体であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、環状凸部の除去後のダイシングテープの弛み部分を効率よく加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る環状凸部除去装置の全体を概略的に示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す環状凸部除去装置の環状凸部の除去対象であるウェーハを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すウェーハの裏面側を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す環状凸部除去ユニットを一部断面で示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す環状凸部除去ユニットを一部断面で示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す加熱ユニットの要部を概略的に示す模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係る環状凸部除去装置の加熱ユニットの要部を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る環状凸部除去装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る環状凸部除去装置1の全体を概略的に示す模式図である。
図2は、
図1に示す環状凸部除去装置1の環状凸部108の除去対象であるウェーハ100を示す斜視図である。
図3は、
図2に示すウェーハ100の裏面106側を示す斜視図である。環状凸部除去装置1は、
図1に示すように、環状凸部除去ユニット10と、環状凸部廃棄ユニット20と、加熱ユニット30と、制御ユニット40と、を備える。
【0012】
実施形態1に係る環状凸部除去装置1の環状凸部108の除去対象であるウェーハ100は、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハなどである。ウェーハ100は、
図2に示すように、平坦な表面101に、デバイス領域104と、外周余剰領域105とを備えている。デバイス領域104は、複数の分割予定ライン102によって格子状に区画された領域に複数の半導体デバイス等のデバイス103が形成された領域である。外周余剰領域105は、デバイス領域104の外周側に位置しデバイス領域104を囲繞する円環状の領域であるとともに、デバイス103が形成されていない領域である。
【0013】
ウェーハ100の一方の面である表面101の裏側の裏面106は、
図3に示すように、円形の円形凹部107と、円形凹部107の外周側に位置し円形凹部107を囲繞する円環状の環状凸部108と、を備える。円形凹部107は、デバイス領域104に対応する部位であり、研削によって、厚さが例えば50μmに薄く形成されている。環状凸部108は、外周余剰領域105に対応する部位であり、研削されずに残存されて厚さが例えば700μmに形成されている。すなわち、環状凸部108は、円形凹部107よりも厚い。このように、環状凸部108は、ウェーハ100の反りを抑制する補強部として作用し、円形凹部107よりも裏面106側に突出している。
【0014】
ウェーハユニット110は、
図2に示すように、ウェーハ100と、環状フレーム111と、テープ112と、を備える。テープ112は、ウェーハ100を切削する際にウェーハ100を固定するために使用される所謂ダイシングテープであり、ウェーハ100よりも大径の円形に形成され、一方の面に粘着力を有し、ウェーハ100の裏面106に貼着される。テープ112は、例えば紫外線硬化型の粘着テープであり、紫外線が照射されると硬化して粘着力が低下する性質の粘着層を有する。環状フレーム111は、例えばSUS(Steel Use Stainless)等の金属製であり、内径がウェーハ100の外径よりも大きな環状に形成され、テープ112の外周部分が貼着されて、ウェーハ100の外周側に配置される。すなわち、ウェーハ100は、裏面106にテープ112が貼着され、テープ112の外縁部に環状フレーム111が装着されてウェーハユニット110を形成する。
【0015】
ウェーハ100は、
図2及び
図3に示すように、円形凹部107と環状凸部108との境界部分に円形の分断溝109が形成されている。分断溝109は、例えば切削ブレードにより、ウェーハ100の表面101側から、円形凹部107と環状凸部108との境界部分(デバイス領域104と外周余剰領域105との境界部分に対応)を円形に切削して形成される。ウェーハ100は、分断溝109により円形凹部107と環状凸部108との間で分断された状態で、テープ112に貼着されている。テープ112は、実施形態1では、ウェーハ100の外周余剰領域105及び環状凸部108の裏面106に貼着された部位が、紫外線が照射され粘着層が硬化して粘着力が低下している。
【0016】
環状凸部除去装置1は、
図1においてウェーハユニット110を二点鎖線で示し、不図示の搬送手段を用いてウェーハユニット110を矢印で示す方向に移動させる。環状凸部除去装置1は、不図示の搬送手段により、ウェーハ100に分断溝109が形成されたウェーハユニット110を環状凸部除去ユニット10に搬送する。環状凸部除去ユニット10は、ウェーハ100に分断溝109が形成されたウェーハユニット110から環状凸部108を除去し、除去した環状凸部108を環状凸部廃棄ユニット20の廃棄ボックス21に投入する。環状凸部除去装置1は、不図示の搬送手段により、環状凸部108が除去されたウェーハユニット110を環状凸部除去ユニット10から加熱ユニット30に搬送する。加熱ユニット30は、テープ112の環状凸部108が除去された領域113(
図6等参照)を加熱してテープ112の弛みを緩和する。
【0017】
図4及び
図5は、
図1に示す環状凸部除去ユニット10を一部断面で示す側面図である。
図4は、フレーム固定手段62がウェーハ100の高さ位置から下降した状態で、爪56がウェーハ100に向けて水平移動している状態を示している。
図5は、ウェーハユニット110から離脱した環状凸部108を環状凸部除去ユニット10が持ち上げている状態を示している。
【0018】
環状凸部除去ユニット10は、
図4及び
図5に示すように、爪アセンブリ50と、ウェーハユニット保持手段60と、を備える。爪アセンブリ50は、Z軸移動部材51と、矩形部材52と、案内部材53と、ボールねじ54と、水平移動部材55と、爪56と、を備える。Z軸移動部材51は、上下方向に移動可能である。Z軸移動部材51の下端には、矩形部材52が固定されている。矩形部材52から水平方向に向けて複数の案内部材53が延びている。案内部材53にはボールねじ54が取り付けられている。ボールねじ54は、矩形部材52の中に収容されたパルスモータに連結されている。水平移動部材55の中には、図示しないナットが配置されている。水平移動部材55の下端部には、爪56が設けられる。ボールねじ54の外周側のおねじ部は、水平移動部材55の中のナットのめねじ部と噛み合っている。従って、矩形部材52の中のパルスモータが回転駆動してボールねじ54が回転すると、ナットと一体となって水平移動部材55及び爪56が水平方向(
図4及び
図5における左右方向)に移動する。
【0019】
ウェーハユニット保持手段60は、チャックテーブル61と、フレーム固定手段62と、を備える。チャックテーブル61の上面は、ウェーハ100の保持面63である。ウェーハ100の円形凹部107を、テープ112を介して、チャックテーブル61の保持面63に吸引保持する。保持面63は、円形凹部107より僅かに小さい直径を有する。フレーム固定手段62は、チャックテーブル61の外周側に配置され、上下方向に移動可能である。フレーム固定手段62は、例えば不図示の開閉可能なクランプが配置され、クランプを閉じることで環状フレーム111をフレーム固定手段62と挟持して固定することが可能である。
【0020】
環状凸部除去ユニット10は、爪アセンブリ50がウェーハユニット保持手段60の上方位置に待機している状態で、不図示の搬送手段によりウェーハユニット110がウェーハユニット保持手段60の上に載置される。環状凸部除去ユニット10は、その後、爪アセンブリ50を下方のウェーハユニット保持手段60に向けて移動させ、
図4に示すように、爪56の高さが環状凸部108とテープ112との界面部分の高さになる高さ位置で停止させる。環状凸部除去ユニット10は、そして、
図4に示すように、矩形部材52の中のパルスモータを回転駆動させてボールねじ54を回転させ、水平移動部材55及び爪56を矢印71に示す方向に、すなわち左右に一対に示された爪56を互いに近づける方向に、水平方向に移動させる。ここで、ウェーハ100の外周縁の径方向中心が、チャックテーブル61の保持面63の中心に対して水平方向にずれている場合、環状凸部除去ユニット10は、爪56の内周側の先端でウェーハ100の外周縁を押すことにより、ウェーハ100をチャックテーブル61の保持面63の上で移動させて、ウェーハ100の外周縁の径方向中心をチャックテーブル61の保持面63の中心に合致させる。
【0021】
環状凸部除去ユニット10は、次に、
図4に示すように、フレーム固定手段62を下方に向けて移動させることで、フレーム固定手段62をチャックテーブル61の保持面63に対して相対的に下側に位置付けて、ウェーハ100の裏面106に貼着されているテープ112を径方向に沿って伸長させる。環状凸部除去ユニット10は、そして、
図5に示すように、ウェーハ100の外周側から、矢印72に示すように複数の爪56をウェーハ100の径方向の中心に向けて移動させて、環状凸部108とテープ112との界面部分に侵入させる。ここで、テープ112の環状凸部108に貼着された部位の粘着層の粘着力が低下しているとともに、径方向に伸長されるため、爪56が環状凸部108とテープ112との界面部分に侵入しやすく、また、ウェーハ100の円形凹部107がチャックテーブル61の保持面63で吸引保持されているため破損しにくい。環状凸部除去ユニット10は、さらに、
図5に示すように、矢印73に示す方向に、爪アセンブリ50を上方にウェーハユニット保持手段60から遠ざける方向に移動させると、爪56で環状凸部108を保持したまま引き上げて、環状凸部108をウェーハユニット110から除去する。
【0022】
図6は、
図1に示す加熱ユニット30を示す断面図である。
図7は、
図1に示す加熱ユニット30の要部を概略的に示す模式図である。
図7は、
図1に示す加熱ユニット30の基台部32を上方から見た図であり、熱源33が配置された領域や窪み部34が形成された領域を破線で示している。加熱ユニット30は、
図6に示すように、支持板31と、基台部32と、熱源33と、を備える。支持板31は、環状フレーム111の外径よりも大きな板状に形成されている、支持板31は、
図6に示すように、基台部32の上方に配置され、上面に環状凸部108が除去されたウェーハユニット110が載置され、載置されたウェーハユニット110を上面で下方から支持する。
【0023】
熱源33は、加熱するテープ112の領域113に対応した環状の発熱体である。熱源33は、内径が領域113の内径よりも小さく、かつ、外径が領域113の外径よりも大きい円環の板状に形成されている。熱源33は、
図6に示すように、基台部32に配置され、上方が支持板31に覆われ、支持板31を介して支持板31上のウェーハユニット110のテープ112の環状凸部108が除去された領域113に対応する位置に配されて、当該領域113を加熱する。
【0024】
基台部32は、水平方向の形状及び大きさが支持板31と同じ板状に形成されている。基台部32は、
図6及び
図7に示すように、窪み部34と、外周支持面35と、を有する。窪み部34は、外周支持面35より下方に窪んで形成される。窪み部34は、基台部32の上面の中央に、直径が熱源33の外径よりも少し大きく、深さが熱源33の厚みと同じ円形状に形成される。窪み部34は、嵌め合わせられた熱源33を収容する。窪み部34は、底面に嵌め合わせられた熱源33を下方から支持する支持面36を有する。外周支持面35と窪み部34に収容された熱源33の上面とは同一平面上に配置されており、水平面と平行に形成される。外周支持面35と窪み部34に収容された熱源33の上面とは、支持板31が載置され、載置された支持板31を上面で下方から支持する。
【0025】
基台部32の支持面36には、
図6に示すように、支持面36よりさらに下方に窪んで形成された凹部37が配置されている。凹部37は、実施形態1では、
図7に示すように、熱源33が支持及び収容される領域に、内径が熱源33の内径よりも大きく、かつ、外径が熱源33の外径よりも小さい、十分な深さの円環状に形成されている。このため、熱源33は、凹部37に進入できず、なおかつ、支持面36の凹部37が形成されていない部分で、凹部37から浮いた状態で支持される。また、凹部37は、十分に深く形成されているため、熱源33の下方に断熱領域となる空気の層を形成する。すなわち、凹部37は、断熱領域となる空気の層を形成することが可能な程度に十分に深く形成されている。凹部37によって形成された空気の層は、熱源33から凹部37のさらに下方側に熱が伝達することを大きく低減し、熱源33からの熱がウェーハユニット110の領域113のある上方側に効率よく伝達することを促す。
【0026】
凹部37の径方向の幅(内周と外周との間の幅)は、大きくなるに従って凹部37の平面方向の面積が上昇することにより凹部37によって形成される空気の層の断熱性が向上する。このため、凹部37の径方向の幅は、支持面36の凹部37が形成されていない部分で熱源33を凹部37から浮いた状態で支持できる範囲内で、大きければ大きいほど好ましい。凹部37の径方向の幅は、例えば、熱源33の径方向の幅の半分以上に形成される。
【0027】
凹部37の深さは、深くなるに従って凹部37内の体積が上昇することにより凹部37によって形成される空気の層の断熱性が向上する。このため、凹部37の深さは、基台部32の構造的な安定性に影響を与えない範囲内で、深ければ深いほど好ましい。凹部37の深さは、例えば、熱源33の厚みと同じ、すなわち窪み部34の深さと同じに形成される。
【0028】
制御ユニット40は、環状凸部除去装置1の各種構成要素の動作を制御して、環状凸部除去ユニット10による環状凸部108の除去処理、加熱ユニット30による領域113の加熱処理、及び不図示の搬送手段によるウェーハユニット110の搬送処理等を環状凸部除去装置1に実施させる。制御ユニット40は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット40が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット40の演算処理装置は、制御ユニット40の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、環状凸部除去装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット40の入出力インターフェース装置を介して環状凸部除去装置1の各構成要素に出力する。
【0029】
以上のような構成を有する実施形態1に係る環状凸部除去装置1は、加熱ユニット30において、支持板31上に載置されたウェーハユニット110のテープ112の環状凸部108が除去された領域113を加熱する熱源33を支持する支持面36に、断熱領域となる空気の層を形成する凹部37を配置している。このため、実施形態1に係る環状凸部除去装置1は、加熱ユニット30において熱源33で領域113を加熱する際に、凹部37によって形成された空気の層が、熱源33から凹部37のさらに下方側に熱が伝達することを大きく低減し、熱源33からの熱がウェーハユニット110の領域113のある上方側に効率よく伝達することを促すことにより、環状凸部108の除去後のテープ112の弛み部分(領域113)を効率よく加熱できるという作用効果を奏する。
【0030】
また、実施形態1に係る環状凸部除去装置1は、熱源33が加熱するテープ112の領域113に対応した環状の発熱体であるため、熱源33からの熱をさらに効率よく領域113に伝達することを促すことにより、環状凸部108の除去後のテープ112の弛み部分(領域113)をさらに効率よく加熱できる。
【0031】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る環状凸部除去装置1を説明する。
図8は、実施形態2に係る環状凸部除去装置1の加熱ユニット30-2の要部を概略的に示す模式図である。
図8は、
図7と同様に、実施形態2に係る環状凸部除去装置1の加熱ユニット30-2の基台部32-2を上方から見た図であり、熱源33が配置された領域や窪み部34が形成された領域を破線で示している。
図8は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
実施形態2に係る環状凸部除去装置1は、実施形態1において、加熱ユニット30を加熱ユニット30-2に変更したものであり、その他の構成は同じである。加熱ユニット30-2は、加熱ユニット30の基台部32を、熱源33を支持する支持面36に凹部37の代わりに凹部37-2を形成した基台部32-2に変更したものであり、その他の構成は同じである。
【0033】
実施形態2では、基台部32-2の支持面36には、支持面36よりさらに下方に窪んで形成された複数(
図8に示す例では8箇所)の凹部37-2が配置されている。凹部37-2は、実施形態2では、
図8に示すように、それぞれ円形状に形成され、熱源33が支持及び収容される領域に、周方向に等間隔に配置されている。このため、熱源33は、支持面36の互いに隣接する凹部37-2の間の部分で、実施形態1よりも安定に、各凹部37-2から浮いた状態で支持される。また、凹部37-2は、実施形態1の凹部37と同様に十分に深く形成されているため、熱源33の下方に断熱領域となる空気の層を形成する。凹部37-2によって形成された空気の層は、実施形態1の凹部37と同様に、熱源33から凹部37-2のさらに下方側に熱が伝達することを大きく低減し、熱源33からの熱がウェーハユニット110の領域113のある上方側に効率よく伝達することを促す。
【0034】
以上のような構成を有する実施形態2に係る環状凸部除去装置1は、実施形態1において、熱源33を支持する支持面36に凹部37の代わりに、凹部37と同様に熱源33の下方に断熱領域となる空気層を形成する凹部37-2を形成したものであるので、凹部37-2により、実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0035】
〔実施例〕
次に、本発明の発明者らは、実施形態1に係る環状凸部除去装置1の作用効果を確認した。実施形態1に係る環状凸部除去装置1において、アルミニウム製の基台部32に熱源33を設置し、熱源33を作動させると、支持板31上に載置されたウェーハユニット110の領域113が目標温度の70℃に到達するまで2分であった。一方、凹部37を設けていない点を除いて上記の環状凸部除去装置1と同様の従来装置において、凹部37を設けていない点を除いて上記の基台部32と同様の基台部に、上記の熱源33と同様の熱源を設置し、熱源を作動させると、支持板31と同様の支持板上に載置されたウェーハユニット110の領域113が目標温度の70℃に到達するまで12分であった。このように、支持板31上に載置されたウェーハユニット110の領域113を加熱する熱源33を支持する支持面36に、断熱領域となる空気の層を形成する凹部37を配置することにより、領域113を効率よく加熱できることが明らかとなった。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上記実施形態では、熱源33を支持する支持面36の熱源33が支持及び収容される領域に、円環状の凹部37や周方向に等間隔に配置された複数の円形状の凹部37-2が形成されているが、本発明ではこれに限定されず、凹部37,37-2と同様に熱源33の周囲(下方または側方)に断熱領域となる空気層を形成するものであれば、どのような形状でもよく、また、凹部に代えて空洞等であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 環状凸部除去装置
10 環状凸部除去ユニット
30 加熱ユニット
31 支持板
32 基台部
33 熱源
36 支持面
37 凹部
100 ウェーハ
106 裏面
107 円形凹部
108 環状凸部
109 分断溝
110 ウェーハユニット
111 環状フレーム
112 テープ
113 領域