IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189911
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】語彙力取得装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20221215BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20221215BHJP
【FI】
G09B19/00 G
G06Q50/20
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168942
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2021186926の分割
【原出願日】2017-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲生
(72)【発明者】
【氏名】奥村 優子
(57)【要約】
【課題】語彙力チェック処理を効率化する。
【解決手段】複数個の人物属性語を含む評価対象人物属性語群に含まれる各人物属性語についての評価対象者の獲得状況を取得する。そのために、評価対象者が獲得している各人物属性語で表される人物属性の人物名の人数に対応する操作領域を表示し、押下操作によって、評価対象者が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つを獲得していると選択がされた場合に、該操作領域が有効であることを視認可能にして該人数の入力を受け付け、そうでない場合に該操作領域が無効であることを視認可能にして該人数の入力を受け付けない。または、該人数の入力を受け付け、人数が1以上である場合に、評価対象者が該人物属性語で表される人物名を少なくとも1つ獲得していると選択がされた状態にし、そうでない場合に獲得していないと選択がされた状態にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
語彙力取得装置であって、
評価対象者が語を理解できるか否かと評価対象者が語を発話できる否かの何れかが、評価対象者が語を獲得しているか否か、であるとして、
複数個の人物属性語を含む評価対象人物属性語群に含まれる各人物属性語についての評価対象者の獲得状況を取得するためのものであり、
前記各人物属性語について、該人物属性語が表す人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得していることの選択に対応する第1操作領域と、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数に対応する第2操作領域と、を表示する表示部と、
前記第1操作領域への押下操作と前記第2操作領域への人数の入力とを受け付ける入力部と、
該人物属性語に対応する前記第1操作領域への押下操作が行われたときに、該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える第1状態設定部と、
前記第1状態設定部が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態とした場合には、前記表示部の前記第2操作領域を有効であることが視認可能なように表示し、前記入力部が前記第2操作領域への人数の入力を受け付けるようにし、
前記第1状態設定部が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされていない状態とした場合には、前記表示部の前記第2操作領域を無効であることが視認可能なように表示し、前記入力部が前記第2操作領域への人数の入力を受け付けないようにする
第2状態設定部と、
を含む語彙力取得装置。
【請求項2】
語彙力取得装置であって、
評価対象者が語を理解できるか否かと評価対象者が語を発話できる否かの何れかが、評価対象者が語を獲得しているか否か、であるとして、
複数個の人物属性語を含む評価対象人物属性語群に含まれる各人物属性語についての評価対象者の獲得状況を取得するためのものであり、
前記各人物属性語について、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数に対応する第1操作領域を表示する表示部と、
前記第1操作領域への人数の入力を受け付ける入力部と、
前記入力部が受け付けた人数を、評価対象者が獲得している該人物属性語で表される人物名の数とする第1状態設定部と、
前記入力部が受け付けた人数が1以上であるときには、該人物属性語で表される人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態にし、前記入力部が受け付けた人数が0であるときには、該人物属性語で表される人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされていない状態とする第2状態設定部と、
を含む語彙力取得装置。
【請求項3】
請求項1または2の語彙力取得装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、語彙力をチェックするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
幼児がいつ、どんな語を習得するかを明らかにすることは、言語発達の分野における重要な研究テーマの1つである。幼児の語彙発達データを取得する手法の1つに語彙チェックリスト法(vocabulary checklist method)がある。これは、あらかじめ用意された有限個の語彙からなるチェックリストを用いて、我が子が理解/発話できる語を親が報告する手法である。すなわち、チェックリストの各語彙について、評価対象者である我が子が理解/発話できるか否かを、利用者である親が報告する手法である。
【0003】
非特許文献1には、この語彙チェックリスト法に従って語彙発達データを取得する語彙チェックリストアプリが開示されており、このアプリにおいて「各語をわかるか(理解)、あるいは言えるか(発話)の2側面を回答してもらう場合」があることが開示されている。また、得られたデータを統計処理して平均語彙数と標準誤差とを求めることも開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小林哲生,奥村優子,南泰浩,「語彙チェックリストアプリによる幼児語彙発達データ収集の試み」,信学技報,vol.115,no.418,HCS2015-59,pp.1-6,2016年1月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1の手法には語彙力チェック処理の効率化についての課題がある。例えば、非特許文献1には「2側面」の回答を効率よく得るための回答方法の効率化、利用者の負担を大きく増やすことなく語彙チェックの正確性を向上させるための効率化、調査結果を有効に利用するための可視化方法の効率化などの課題がある。
【0006】
本発明は語彙力チェック処理を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
評価対象者が語を理解できるか否かと評価対象者が語を発話できる否かの何れかが、評価対象者が語を獲得しているか否か、であるとして、複数個の人物属性語を含む評価対象人物属性語群に含まれる各人物属性語についての評価対象者の獲得状況を取得するための語彙力取得装置が提供される。この語彙力取得装置は、各人物属性語について、該人物属性語が表す人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得していることの選択に対応する第1操作領域と、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数に対応する第2操作領域と、を表示する表示部と、第1操作領域への押下操作と第2操作領域への人数の入力とを受け付ける入力部と、該人物属性語に対応する第1操作領域への押下操作が行われたときに、該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える第1状態設定部と、第1状態設定部が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態とした場合には、表示部の第2操作領域を有効であることが視認可能なように表示し、入力部が第2操作領域への人数の入力を受け付けるようにし、第1状態設定部が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされていない状態とした場合には、表示部の第2操作領域を無効であることが視認可能なように表示し、入力部が第2操作領域への人数の入力を受け付けないようにする第2状態設定部と、を含む。あるいは、語彙力取得装置は、各人物属性語について、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数に対応する第1操作領域を表示する表示部と、第1操作領域への人数の入力を受け付ける入力部と、入力部が受け付けた人数を、評価対象者が獲得している該人物属性語で表される人物名の数とする第1状態設定部と、入力部が受け付けた人数が1以上であるときには、該人物属性語で表される人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態にし、入力部が受け付けた人数が0であるときには、該人物属性語で表される人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされていない状態とする第2状態設定部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
これにより、語彙力チェック処理を効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施形態の語彙力チェック装置の機能構成を例示するブロック図である。
図2図2は実施形態の語彙力チェック装置の入力処理(語彙力チェック装置を語彙力取得装置として機能させる処理)を例示するためのフロー図である。
図3図3は実施形態の語彙力チェック装置の入力処理(語彙力チェック装置を語彙力取得装置として機能させる処理)を例示するためのフロー図である。
図4図4は実施形態の語彙力チェック装置の入力処理(語彙力チェック装置を語彙力取得装置として機能させる処理)を例示するためのフロー図である。
図5図5は実施形態のチェック入力処理の詳細を例示するためのフロー図である。
図6図6は実施形態のチェック入力処理の詳細を例示するためのフロー図である。
図7図7は実施形態のチェック入力処理の詳細を例示するためのフロー図である。
図8図8は実施形態のチェック入力処理の詳細を例示するためのフロー図である。
図9図9は実施形態の語彙力チェック装置の結果表示処理(語彙力チェック装置を語彙力確認装置として機能させる処理)を例示するためのフロー図である。
図10図10は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図11図11は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図12図12は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図13図13は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図14図14は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図15図15は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図16図16は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図17図17は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図18図18は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図19図19は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図20図20は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図21図21は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図22図22は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図23図23は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図24図24は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図25図25は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図26図26は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図27図27は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図28図28は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図29図29は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図30図30は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図31図31は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図32図32は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図33図33は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
図34図34は実施形態の表示部の表示内容を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を説明する。
【0011】
<構成>
図1に例示するように、第1実施形態の語彙力チェック装置1は、処理部100、入力部120、および表示部130を有する。処理部100は、評価対象語記憶部101、状態記憶部102、表示制御部103、基本情報設定部104、評価対象語選択部105、評価対象語追加部106、状態設定部107,108、集計部109、ソート部110、および制御部111を有する。処理部100は、例えば、CPU(central processing unit)等のプロセッサ(ハードウェア・プロセッサ)およびRAM(random-access memory),ROM(read-only memory),ハードディスク等の記憶装置等を備える汎用または専用のコンピュータが所定のプログラムを実行することで構成される。このコンピュータは1個のプロセッサやメモリを備えていてもよいし、複数個のプロセッサやメモリを備えていてもよい。このプログラムはコンピュータにインストールされてもよいし、予めROM等に記録されていてもよい。また、CPUのようにプログラムが読み込まれることで機能構成を実現する電子回路(circuitry)ではなく、プログラムを用いることなく処理機能を実現する電子回路を用いて一部またはすべての処理部が構成されてもよい。1個の装置を構成する電子回路が複数のCPUを含んでいてもよい。入力部120は利用者による情報入力を受け付けるユーザインタフェースであり、表示部130は利用者に対する情報表示を行うユーザインタフェースである。入力部120の例は、タッチセンサ、タッチパッド、マウス、キーボードなどである。表示部130の例は液晶ディスプレイ、投影装置などである。語彙力チェック装置1の例は、タッチスクリーン(タッチセンサと液晶ディスプレイとを1つのハードウェアで実装したもの)を備えるスマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータ(PC)、ノート型PCなどである。その他、語彙力チェック装置1が、タッチパッド、マウス、キーボード、液晶ディスプレイなどを備えたノート型PC、ディスクトップPC、専用端末装置等であってもよい。処理部100は、制御部111の制御に基づいて各処理を実行し、各処理の過程で得られたデータは必要に応じて状態記憶部102または一時メモリ(図示せず)に格納され、別の処理に利用される。
【0012】
<事前処理>
評価対象語記憶部101には、複数個の評価対象の語(以下、「評価対象語」という)を含む評価対象語群が格納されている。評価対象語群が含む各語は「単語」であってもよいし、「単語」の組み合わせであってもよい。評価対象語群の例は、語彙チェックリスト法で用いられる有限個の語彙からなるチェックリストである(非特許文献1)。評価対象語群が含む複数個の語のそれぞれには各語のX%獲得月齢(X%到達月齢ともいう)を得るための情報が対応付けられている。Xは0以上100以下の実数である。「語のX%獲得月齢」とは、幼児のX%が当該語を獲得(習得)する月齢を意味する。「語を獲得する」とは、その語を理解することであってもよいし、その語を発話可能になることであってもよいし、その語を理解し、かつ、発話可能になることであってもよい。「語のX%獲得月齢を得るための情報」は、語のX%獲得月齢のリストであってもよいし、入力されたXに対して語のX%獲得月齢を得る関数であってもよい。入力されたXに対して語のX%獲得月齢を得る関数の例は、語の獲得率(習得率)と月齢との関係を近似したロジスティック関数などである(例えば、非特許文献1、および特開2016-118598公報(参考文献1)等参照)。また、評価対象語群は「基本語群」と「特殊語群」とに分類されており、さらに「基本語群」「特殊語群」に属する語群はそれぞれ複数のカテゴリに分類されている。基本語群は基本的な語からなる語群であり、特殊語群はキャラクターや鉄道モノなどマニアックな語群である。
【0013】
<入力処理>
次に、語彙力チェック装置1への入力処理を説明する。この入力処理は、図1の語彙力チェック装置1を語彙力取得装置2として機能させる処理である。語彙力取得装置2は評価対象語群に含まれる各評価対象語を表示し、評価対象者(幼児など)がそれらの語を理解できるのか発話できるかなどの回答内容を受け付ける。本形態の入力処理は、回答内容の入力のさせ方およびそれに対する情報処理に特徴がある。以下、図2から図6のフロー図を用いて入力処理を説明する。
【0014】
図2に例示するように、語彙力取得装置2が起動すると、表示制御部103が「開始画面」を表示部130に表示させる。図10に例示した開始画面1301には、タイトル「こども語チェックリスト」が表示され、さらに入力開始ボタン1301aが表示される(ステップS101)。
【0015】
制御部111は、入力開始ボタン1301aへの押下操作が行われた否かを判定する(ステップS102)。ボタンへの押下操作は、利用者が入力部120を用いてこのボタンの位置を指定し、さらに押下操作に相当する入力操作を行う処理(タップやクリックなど)である。すなわち、ボタンへの押下操作は入力部120に受け付けられる。押下操作が行われていないと判定された場合、ステップS101の処理に戻る。一方、ステップS102で押下操作が行われたと判定された場合には、次のステップS103が実行される。
【0016】
ステップS103では、表示制御部103が「基本情報入力画面」を表示部130に表示させる。基本情報入力画面は、評価対象者に関する基本情報の入力および/または選択を受け付ける画面である。基本情報の例は、「評価対象者の名前」、「生年月日」、「性別」、「評価対象者を定型発達者として評価するか非定型発達者として評価するか」、「利用者と評価対象者」との関係などである。基本情報入力画面は、利用者が、評価対象者の名前、生年月日、性別、評価対象者を定型発達者として評価するか非定型発達者として評価するか、利用者と評価対象者との関係などの基本情報の入力操作および/または選択操作を行うための入力欄を含む。図11に例示した基本情報入力画面1302では、評価対象者(こども)の名前、生年月日、性別、利用者(記入者)と評価対象者との関係、および利用者名(記入者名)の入力操作および/または選択操作を行うための入力欄1302a、ならびに入力内容から自動計算される内容を表示する表示欄1302bが表示される。入力欄1302aへの入力操作および選択操作は、利用者が入力部120を用いて入力欄1302aの入力位置および入力内容を指定する処理である。入力欄1302aへの入力操作および/または選択操作によって得られた情報は、状態記憶部102に格納され、さらに基本情報設定部104および表示制御部103に送られる。基本情報設定部104は送られた情報に基づいて表示欄1302bに表示する内容を得て出力する。例えば、基本情報設定部104は、入力された生年月日と現在の日時とから評価対象者の現在の年齢(月齢)を自動計算し、それを表す設定情報を出力する。また基本情報設定部104は、2種類あるチェックリスト方式のうち一方を自動で選択し、それらを表す設定情報を出力する。ここで2種類あるチェックリスト方式とは、評価対象者が語を理解できるかと発話できるかとをチェックする方式(理解と発話をチェックする方式)、および評価対象者が語を発話できるかのみをチェックする方式(発話のみをチェックする方式)である。例えば、基本情報設定部104は、月齢が21ヵ月未満の場合には「理解と発話をチェックする方式」を選択し、月齢が21ヵ月以上の場合には「発話のみをチェックする方式」を選択する。このように選択するのは、月齢20ヵ月以降に語彙爆発が起こり、月齢21ヵ月以上の子供の語彙力を発話と理解とに区別してチェックすることが困難になるからである。基本情報設定部104から出力された設定情報は状態記憶部102に格納され、さらに表示制御部103に送られる。表示制御部103は、入力欄1302aへの入力処理によって得られた情報を基本情報入力画面1302の入力欄1302aに表示し、基本情報設定部104から出力された設定情報を基本情報入力画面1302の表示欄1302bに表示する(ステップS103)。入力欄1302aへの入力処理が完了した場合、処理がステップS105に進む。入力処理が完了していない場合、ステップS103の処理に戻る。
【0017】
ステップS105では、表示制御部103が「確認画面」を表示部130に表示させる。図12に例示した確認画面1303は、「生年月日と年齢は以下でよろしいですか?」とのメッセージ、入力欄1302aへの入力内容(生年月日等)および基本情報設定部104から出力された設定情報(年齢や月齢等)を表示する表示欄1303a、「いいえ」ボタン1303b、および「はい」ボタン1303cを有する(ステップS105)。制御部111は、「いいえ」ボタン1303bまたは「はい」ボタン1303cへの押下操作が行われた否かを判定する。ここで、「いいえ」ボタン1303bへの押下操作が行われたと判定された場合、ステップS103に戻る。これにより、基本情報の再入力や修正が可能になる(ステップS106)。「はい」ボタン1303cへの押下操作が行われたと判定された場合、処理がステップS108に進む(ステップS107)。「いいえ」ボタン1303bへの押下操作も「はい」ボタン1303cへの押下操作も行われていないと判定された場合、ステップS105の処理に戻る。
【0018】
図3に例示するように、ステップS108では、表示制御部103が「パート一覧画面」を表示部130に表示させる。図13に例示したパート一覧画面1304では、「パート1」「パート2」「パート3」と表示されたパート選択ボタン1304a、および完了ボタン1304bが表示されている。パート選択ボタン1304aは、評価対象語群の分類を指定するためのボタンである。「パート1」ボタンは、評価対象として基本語群(例えば、2052語)の分類を指定するためのものである。基本語群は個人の語彙発達レベルを測定するために必須な語彙であり、基本語群のすべてをチェックした後にしか「パート2」「パート3」ボタンを選択できない。そのため、初期段階では「パート1」ボタンのみが選択可能となっている。パート一覧画面1304のうち、選択可能なボタンの色や形状が他のボタンの色や形状と相違していてもよい。「パート2」ボタンは、評価対象として特殊語群(例えば、636語)の分類を指定するためのものである。特殊語群は各個人がどのあたりの分野の語に興味がありそうかを探るための語彙である。「パート3」ボタンは、「パート1」の基本語群および「パート2」の特殊語群のいずれにも含まれない語(例えば、評価対象者が発話できる語)を追加するためのものである。完了ボタン1304bは入力処理を終了させるためのボタンである(ステップS108)。
【0019】
制御部111は、完了ボタン1304bへの押下操作が行われたかを判定する(ステップS109a)。完了ボタン1304bへの押下操作が行われた場合には入力処理が終了する。一方、完了ボタン1304bへの押下操作が行われていない場合、制御部111は、パート選択ボタン1304aの何れかのボタンへの押下操作が行われたかを判定する(ステップS109b)。パート選択ボタン1304aのボタンへの押下操作が行われていない場合、処理がステップS108に戻る。一方、パート選択ボタン1304aの何れかのボタンへの押下操作が行われた場合、処理がステップS110に進む。ステップS110では、「パート1」ボタンまたは「パート2」ボタンへの押下操作が行われたか、「パート3」ボタンへの押下操作が行われたかが判定される。「パート1」ボタンまたは「パート2」ボタンへの押下操作が行われた場合、処理がステップS111に進む。「パート3」ボタンへの押下操作が行われた場合、処理がステップS121に進む(ステップS110)。
【0020】
ステップS111では、表示制御部103が「カテゴリ一覧画面」を表示部130に表示させる。カテゴリ一覧画面には、パート選択ボタン1304aへの押下操作によって選択された分類(基本語群の分類(パート1)または特殊語群の分類(パート2))に属する語群のカテゴリを選択するためのカテゴリ選択ボタンが表示される。利用者は、カテゴリ選択ボタンへ押下操作を行うことで、当該カテゴリ選択ボタンに対応するカテゴリを選択し、選択したカテゴリの語に対する回答内容(評価対象者が理解できるのか発話できるかなど)を開始できる。図13に例示したカテゴリ一覧画面1305では、基本語群の分類(パート1)に属する複数のカテゴリ(家族、ひと、人物名など)を選択するためのカテゴリ選択ボタン1304cが表示されている。カテゴリ選択ボタン1304cのうち、既に回答内容が入力された処理済みのカテゴリのカテゴリ選択ボタンの色や形状が、まだ回答内容が入力されていないカテゴリのカテゴリ選択ボタンの色や形状と相違していてもよい。カテゴリ選択ボタン1304cのうち、選択可能なカテゴリのカテゴリ選択ボタンの色や形状が、それ以外のカテゴリ選択ボタンの色や形状と相違していてもよい。基本語群の分類のカテゴリ選択ボタン1304cの場合、決められた順序(例えば、上から順番に選択する順序)でしかカテゴリを選択できないことにしてもよい。例えば、図14の例の場合、最初にカテゴリを選択するときには最も上に配置された「家族」カテゴリしか選択できず、「家族」カテゴリの語に対する回答内容の入力が完了した後に「ひと」カテゴリが選択可能な状態にされてもよい(ステップS111)。制御部111は、いずれかのカテゴリ選択ボタン1304cへの押下操作が行われたかを判定する(ステップS112)。カテゴリ選択ボタン1304cへの押下操作が行われていない場合、ステップS111の処理に戻る。一方、いずれかのカテゴリ選択ボタン1304cへの押下操作が行われた場合、チェック入力処理が行われる(ステップS114)。
【0021】
以下にチェック入力処理(ステップS114)の詳細を説明する。
≪「人物名」以外のカテゴリの語に対して理解と発話をチェックする場合≫
「人物名」以外のカテゴリの語に対する理解と発話をチェックする場合のチェック入力処理を説明する。この処理は、前述の基本情報設定部104から出力された設定情報(ステップS104)が「理解と発話をチェックする方式」を示しており、カテゴリとして「人物名」以外が選択された場合(ステップ112)に行われる。その他、予め「理解と発話をチェックする方式」を行うことが定められており、カテゴリとして「人物名」以外が選択された場合に、この処理が行われてもよい。
【0022】
この処理の場合、語彙力取得装置2は、以下のように、複数個の評価対象語を含む評価対象語群に含まれる各評価対象語について、評価対象者が理解できるか発話できるかを取得する。表示部130は、各評価対象語について、該評価対象語を評価対象者が理解できることの選択に対応する第1操作領域と、該評価対象語を評価対象者が発話できることの選択に対応する第2操作領域と、の2つ組を表示する。入力部120は、第1操作領域への押下操作および第2操作領域への押下操作を受け付ける。状態設定部107(第1状態設定部)は、評価対象語に対応する第1操作領域への押下操作が行われたときに、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。状態設定部108(第2状態設定部)は、評価対象語に対応する第2操作領域への押下操作が行われたときに、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。評価対象語について、該評価対象語を理解できるとの選択がされていない状態を該評価対象語に対応する第1操作領域が表示していて、かつ、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態を該評価対象語に対応する第2操作領域が表示している状態において、該評価対象語に対応する第1操作領域への押下操作が行われたときに、状態設定部107が、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態に切り替え、状態設定部108が、該評価対象語を発話できるとの選択がされていない状態に切り替える。評価対象語について、該評価対象語を発話できるとの選択がされていない状態を該評価対象語に対応する第2操作領域が表示していて、かつ、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態を該評価対象語に対応する第1操作領域が表示している状態において、該評価対象語に対応する第2操作領域への押下操作が行われたときに、状態設定部108が、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態に切り替え、状態設定部107が、該評価対象語を理解できるとの選択がされていない状態に切り替える。
【0023】
幼児の語彙習得は、まずある語を理解できるようになり、その後にその語を発話できるようになる、という過程を辿ることが多い。すなわち、ある語を理解することはできてもその語を発話できないことはよくある一方で、ある語を発話することはできてもその語の意味が分からないということはほとんどない。よって、以下の3つの状態から評価対象語に対する状態を選択できるようにすることが望ましい。
・評価対象者が語を理解できるが発話できない状態
・評価対象者が語を理解も発話もできる状態
・評価対象者が語を理解も発話もできない状態
この3つの状態を選択するためには、評価対象者が語を理解も発話もできる状態である場合には「評価対象者が評価対象語を発話できる」との選択をし、評価対象者が語を理解できるが発話できない状態である場合には「評価対象者が評価対象語を理解できる」との選択をし、評価対象者が語を理解も発話もできない状態である場合にはこれらの何れも選択しないように、評価対象者の状態を利用者に選択してもらうようにすればよい。すなわち、語彙力取得装置2は、評価対象者が評価対象語を理解できることの選択、と、評価対象者が評価対象語を発話できることの選択、の2つの選択それぞれをできるようにし、かつ、同時に選択しないようにすればよい。ただし、2つの選択それぞれをできる実装をするだけでは、利用者が何れか一方を選択する操作を誤って行ってしまった場合には、その誤った選択を取り消す操作を行った上で、他方を選択する操作を利用者が行う必要が生じてしまう。これに対し、上記の処理によれば、利用者が誤って第1操作領域への押下操作を行ってしまった場合であっても、その操作を取り消すための操作を行うことなく、第2操作領域への押下操作を行うだけで「評価対象者が評価対象語を理解できる」との回答から「評価対象者が評価対象語を発話できる」との回答に修正できる。同様に、利用者が誤って第2操作領域への押下操作を行ってしまった場合であっても、その操作を取り消すための操作を行うことなく、第1操作領域への押下操作を行うだけで「評価対象者が評価対象語を発話できる」との回答から「評価対象者が評価対象語を理解できる」との回答に修正できる。すなわち、この処理は、幼児の語彙の習得過程に多く見られる生理学上の法則(自然法則)を利用した工夫により、前述の3状態から評価対象語に対する状態を選択する回答処理を効率化できるようにするものである。
【0024】
図5および図6を用いてこの処理を具体的に説明する。まず評価対象語選択部105が、評価対象語記憶部101に格納された評価対象語群から、上述のように選択されたカテゴリ(ステップ112)の語群を抽出する。抽出された語群は表示制御部103に送られる。例えば、「家族」カテゴリが選択された場合には、「ママ」「パパ」「ばーば」等の家族に関する語からなる語群が表示制御部103に送られる。表示制御部103は、送られた語群に含まれる各語と、各語(複数個の語を含む評価対象語群に含まれる各語)に対応する第1操作領域と第2操作領域との各組(各評価対象語について、該評価対象語を評価対象者が理解できることの選択に対応する第1操作領域と、該評価対象語を評価対象者が発話できることの選択に対応する第2操作領域と、の2つ組)を有するチェックリスト画面を生成する。第1操作領域は「評価対象者が語を理解できる(わかる)」との選択をするときに押下操作されるボタンであり、第2操作領域は「評価対象者が語を発話できる(言える)」との選択をするときに押下操作されるボタンである。表示制御部103はチェックリスト画面を表示部130に表示させる。図15に例示したチェックリスト画面1311は、送られた語群に含まれる「ママ」「パパ」「ばーば」等の語1311aと、それらにそれぞれ対応する第1操作ボタン1311b(第1操作領域)と第2操作ボタン1311c(第2操作領域)との組と、を有する(ステップS114a)。
【0025】
利用者は入力部120に対し、「ママ」「パパ」「ばーば」等の何れかの語1311a(評価対象語)に対応する第1操作ボタン1311b(第1操作領域)および第2操作ボタン1311c(第2操作領域)の少なくとも一方の位置を指定し、押下操作に相当する入力操作(タップ等)を行うことができる。利用者は「評価対象者が評価対象語を理解できる(わかる)が発話できない」状態であると思うときに「評価対象者が評価対象語を理解できる(わかる)」ことに対応する操作ボタンである第1操作ボタン1311bのみへの押下操作を行い、「評価対象者が評価対象語を発話できる(言える)」状態であると思うときに「評価対象者が評価対象語を発話できる(言える)」ことに対応する操作ボタンである第2操作ボタン1311cのみへの押下操作を行う。これらの押下操作に従い、状態設定部107,108は、以下のように「評価対象語」に対応する状態を「評価対象者が評価対象語を理解できる」との選択がされた状態(「理解可能状態」と呼ぶことにする)または「評価対象者が評価対象語を発話できる」との選択がされた状態(「発話可能状態」と呼ぶことにする)に設定し、その設定内容を状態記憶部102に格納する。すなわち、状態設定部107は、評価対象語に対応する第1操作ボタン1311bへの押下操作が行われたときに、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。状態設定部108は、評価対象語に対応する第2操作ボタン1311cへの押下操作が行われたときに、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。理解可能状態の語1311aに対応する第1操作ボタン1311bにはマーク(●)が表示される。理解可能状態ではない語1311aに対応する第1操作ボタン1311bにはマーク(●)は表示されない。同様に、発話可能状態の語1311aに対応する第2操作ボタン1311cにはマーク(●)が表示される。発話可能状態ではない語1311aに対応する第2操作ボタン1311cにはマーク(●)は表示されない。
【0026】
制御部111は、何れかの語1311aに対応する第1操作ボタン1311bへの押下操作(「わかる」押下)が行われたかを判定する(ステップS114b)。第1操作ボタン1311bへの押下操作が行われていない場合には、処理がステップS114hに進む。
【0027】
一方、何れかの語1311aに対応する第1操作ボタン1311bへの押下操作が行われた場合、状態設定部107は状態記憶部102を参照し、押下操作が行われた第1操作ボタン1311bに対応する語1311a(評価対象語)が発話可能状態であるかを判定する(ステップS114c)。ここで発話可能状態でないと判定された場合にはステップS114fに進む。例えば、図15に例示したチェックリスト画面1311の「パパ」との語1311aは発話可能状態ではないため、「パパ」に対応する第1操作ボタン1311bへの押下操作が行われた場合にはステップS114fに進む。
【0028】
一方、発話可能状態であると判定された場合には、状態設定部107は当該語1311aに対応する発話可能状態を取り消す。例えば、図15に例示したチェックリスト画面1311の「ママ」との語1311aは発話可能状態であるため、「ママ」に対応する第1操作ボタン1311bへの押下操作が行われた場合には、「ママ」に対応する発話可能状態が取り消される。当該語1311a(評価対象語)に対応する発話可能状態が取り消された場合、状態記憶部102に格納されていた当該語1311aに対応する発話可能状態が削除される(ステップS114d)。その後、処理がステップS114eに進む。
【0029】
ステップS114eでは、状態設定部107が当該語1311a(評価対象語)に対応する状態を理解可能状態に設定し、状態記憶部102に格納する。すなわち、評価対象語について、該評価対象語を理解できるとの選択がされていない状態を該評価対象語に対応する第1操作ボタン1311b(第1操作領域)が表示していて、かつ、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態を該評価対象語に対応する第2操作ボタン1311c(第2操作領域)が表示している状態において、該評価対象語に対応する第1操作ボタン1311b(第1操作領域)への押下操作が行われたときに、状態設定部107が、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態に切り替え、状態設定部108が、該評価対象語を発話できるとの選択がされていない状態に切り替える(ステップS114e)。その後、処理がステップS114hに進む。
【0030】
ステップS114fでは、状態設定部107が状態記憶部102を参照し、押下操作が行われた第1操作ボタン1311bに対応する語1311a(評価対象語)が理解可能状態であるかを判定する(ステップS114f)。ここで、理解可能状態でなければステップS114eに進む。一方、理解可能状態であれば、状態設定部107は当該語1311aに対応する理解可能状態を取り消す。当該語1311aに対応する理解可能状態が取り消された場合、状態記憶部102に格納されていた当該語1311aに対応する理解可能状態が削除される(ステップS114g)。その後、処理がステップS114hに進む。
【0031】
ステップS114hでは、制御部111が、何れかの語1311aに対応する第2操作ボタン1311cへの押下操作(「言える」押下)が行われたかを判定する(ステップS114h)。第2操作ボタン1311cへの押下操作が行われていない場合には、処理がステップS114rに進む。
【0032】
一方、何れかの語1311aに対応する第2操作ボタン1311cへの押下操作が行われた場合、状態設定部108は状態記憶部102を参照し、押下操作が行われた第2操作ボタン1311cに対応する語1311a(評価対象語)が理解可能状態であるかを判定する(ステップS114i)。ここで理解可能状態でないと判定された場合にはステップS114mに進む。例えば、図15に例示したチェックリスト画面1311の「ママ」との語1311aは理解可能状態ではないため、「ママ」に対応する第2操作ボタン1311cへの押下操作が行われた場合にはステップS114mに進む。
【0033】
一方、理解可能状態であると判定された場合には、状態設定部108は当該語1311aに対応する理解可能状態を取り消す。例えば、図15に例示したチェックリスト画面1311の「パパ」との語1311aは理解可能状態であるため、「パパ」に対応する第2操作ボタン1311cへの押下操作が行われた場合には、「パパ」に対応する理解可能状態が取り消される(ステップS114j)。その後、処理がステップS114kに進む。
【0034】
ステップS114kでは、状態設定部108が当該語1311a(評価対象語)に対応する状態を発話可能状態に設定し、状態記憶部102に格納する。すなわち、評価対象語について、該評価対象語を発話できるとの選択がされていない状態を該評価対象語に対応する第2操作ボタン1311c(第2操作領域)が表示していて、かつ、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態を該評価対象語に対応する第1操作ボタン1311b(第1操作領域)が表示している状態において、該評価対象語に対応する第2操作ボタン1311c(第2操作領域)への押下操作が行われたときに、状態設定部108が、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態に切り替え、状態設定部107が、該評価対象語を理解できるとの選択がされていない状態に切り替える(ステップS114k)。その後、処理がステップS114rに進む。
【0035】
ステップS114mでは、状態設定部108が状態記憶部102を参照し、押下操作が行われた第2操作ボタン1311cに対応する語1311a(評価対象語)が発話可能状態であるかを判定する(ステップS114m)。ここで、発話可能状態でなければステップS114kに進む。一方、発話可能状態であれば、状態設定部108は当該語1311aに対応する発話可能状態を取り消す(ステップS114n)。その後、処理がステップS114rに進む。
【0036】
ステップS114rでは、制御部111が、チェックリスト画面に表示された語群についての入力処理が完了したかを判定する(ステップS114r)。例えば、利用者はチェックリスト画面に表示された語群についての入力処理が完了した場合に、入力部120に対し、チェックリスト画面に表示された入力完了を表すボタン(リターンボタン)への押下操作を行う。これにより、制御部111は入力処理が完了したと判定する。入力処理が完了していない場合には、処理がステップS114bに戻る。一方、入力処理が完了した場合にはステップS114の処理を終了し、ステップS115(図3)に進む。以上により、チェックリスト画面に表示された語群の各語に対して、「評価対象者が語を理解できるが発話できない状態」を「理解可能状態(わかる)」(図15のA1)とし、「評価対象者が語を理解も発話もできる状態を「発話可能状態(言える)」(図15のA3)とし、「評価対象者が語を理解も発話もできない状態」を「理解可能状態(わかる)」ではない状態かつ「発話可能状態(言える)」ではない状態(図15のA2)として、3状態を効率的に入力できる。
【0037】
≪「人物名」以外のカテゴリの語に対して理解と発話をチェックする場合(定型発達者として評価するか非定型発達者として評価するかを区別する場合)≫
自閉症スペクトラム等の非定型発達者が幼児期に行う特徴的な行動の一つに反響言語(いわゆる、オウム返し)がある。反響言語とは、耳から入った語をそのまま発話する行動である。反響言語を行う幼児は、たとえ耳から入った語を正確に発話することができたとしても、その意味を理解しているとは限らない。すなわち、非定型発達者の幼児の場合、ある語を発話することはできても、その意味を分からないこともある。そのため、評価対象者が非定型発達者である場合には、以下の4つの状態から評価対象語に対する状態を選択できるようにすることが望ましい。
・評価対象者が語を理解できるが発話できない状態
・評価対象者が語を理解も発話もできる状態
・評価対象者が語を発話できるが理解できない状態
・評価対象者が語を理解も発話もできない状態
【0038】
一方、定型発達者の幼児の場合、初期語彙の特徴を考慮すると、ある語を発話することはできても、その意味は分からないということはほとんどない。よって、「発話はできるが理解はできない状態」を選択肢に加える必要性に乏しく、またこの状態を選択肢に加えない方が回答作業を効率化できる。そのため、評価対象者が定型発達者の場合には、以下の3つの状態から評価対象語に対する状態を選択できるようにすることが望ましい。
・評価対象者が語を理解できるが発話できない状態
・評価対象者が語を理解も発話もできる状態
・評価対象者が語を理解も発話もできない状態
【0039】
ただし、評価対象者が定型発達者であるか非定型発達者であるかが事前に確実に分かっているとは限らない。上記の通り、評価対象語に対する状態は、評価対象者が定型発達者である場合よりも、評価対象者が非定型発達者である場合のほうが多い。すなわち、評価対象者が非定型発達者である可能性がある場合や評価対象者が非定型発達者であるか定型発達者であるかが不明な場合には、評価対象者が非定型発達者である場合と同様の4状態を選択できるようにすることが望ましい。言い換えると、評価対象者が非定型発達者である可能性がある場合や評価対象者が非定型発達者であるか定型発達者であるかが不明な場合には、評価対象者を非定型発達者として評価するのが望ましい。
【0040】
以上より、「人物名」以外のカテゴリの語に対する理解と発話をチェックする場合、評価対象者を定型発達者として評価するか非定型発達者として評価するかに応じてチェック入力処理を切り替えることが望ましい。この処理の場合、表示部130は、前述の基本情報入力画面を表示した際に(ステップS103)、定型発達者として評価対象者の語彙力をチェックするか非定型発達者として評価対象者の語彙力をチェックするかを選択するための入力欄(評価対象者を定型発達者として評価するか非定型発達者として評価するかの第3操作領域)を表示する。入力部120(第1入力部)は当該入力欄での選択操作を受け付ける。また表示部130は、各評価対象語についての、該評価対象語を評価対象者が理解できることの選択に対応する第1操作領域と、該評価対象語を評価対象者が発話できることの選択に対応する第2操作領域との2つ組と、を表示する。入力部120は、第1操作領域への押下操作、および、第2操作領域への押下操作、および、第3操作領域へ評価対象者を定型発達者として評価するか非定型発達者として評価するかの選択操作を受け付ける。状態設定部107(第1状態設定部)は、評価対象語に対応する第1操作領域への押下操作が行われたときに、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。状態設定部108(第2状態設定部)は、評価対象語に対応する第2操作領域への押下操作が行われたときに、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。
【0041】
さらに(a)評価対象者を定型発達者として評価すること(定型発達者であること)が選択された場合には、
(a‐1)評価対象語について、該評価対象語を理解できるとの選択がされていない状態を該評価対象語に対応する第1操作領域が表示していて、かつ、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態を該評価対象語に対応する第2操作領域が表示している状態において、該評価対象語に対応する第1操作領域への押下操作が行われたときに、状態設定部107(第1状態設定部)が、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態に切り替え、状態設定部108(第2状態設定部)が、該評価対象語を発話できるとの選択がされていない状態に切り替える。
(a‐2)評価対象語について、該評価対象語を発話できるとの選択がされていない状態を該評価対象語に対応する第2操作領域が表示していて、かつ、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態を該評価対象語に対応する第1操作領域が表示している状態において、該評価対象語に対応する第2操作領域への押下操作が行われたときに、状態設定部108が、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態に切り替え、状態設定部107が、該評価対象語を理解できるとの選択がされていない状態に切り替える。
【0042】
これにより、評価対象者を定型発達者として評価する場合には、評価対象者が語を理解できるが発話できない状態である場合には「理解可能状態(わかる)」であることに対応する操作ボタンである第1操作領域のみへの押下操作を行い、評価対象者が語を発話できる状態である場合には「発話可能状態(言える)」であることに対応する操作ボタンである第2操作領域のみへの押下操作を行うように利用者に指示しておくことにより、前述した定型発達者の特徴から、「評価対象者が語を理解できるが発話できない状態」を「理解可能状態(わかる)」とし、「評価対象者が語を理解も発話もできる状態を「発話可能状態(言える)」とし、「評価対象者が語を理解も発話もできない状態」を「理解可能状態(わかる)」ではない状態かつ「発話可能状態(言える)」ではない状態として、3状態から、語群の各語に対する評価対象者の状態を選択できる。
【0043】
一方、(b)評価対象者を非定型発達者として評価すること(非定型発達者であること)が選択された場合には、
(b‐1)評価対象語について、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態を該評価対象語に対応する第2操作領域が表示している状態であっても、該評価対象語を発話できるとの選択がされていない状態を該評価対象語に対応する第2操作領域が表示している状態であっても、該評価対象語に対応する第1操作領域への押下操作が行われたときに、状態設定部108(第2状態設定部)は、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態または該評価対象語を発話できるとの選択がされていない状態を維持しつつ、状態設定部107(第1状態設定部)は、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。
(b‐2)評価対象語について、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態を該評価対象語に対応する第1操作領域が表示している状態であっても、該評価対象語を理解できるとの選択がされていない状態を該評価対象語に対応する第1操作領域が表示している状態であっても、該評価対象語に対応する第2操作領域への押下操作が行われたときに、状態設定部107は、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態または該評価対象語を理解できるとの選択がされていない状態を維持しつつ、状態設定部108は、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。
【0044】
これにより、評価対象者を非定型発達者として評価する場合には、利用者への指示は行わないか、評価対象者が語を理解できる状態である場合には「理解可能状態(わかる)」であることに対応する操作ボタンである第1操作領域への押下操作を行うことと、評価対象者が語を発話できる状態である場合には「発話可能状態(言える)」であることに対応する操作ボタンである第2操作領域のみへの押下操作を行うことと、を独立して行うように利用者に指示しておけば、「評価対象者が語を理解できるが発話できない状態」を「発話可能状態(言える)」ではない状態かつ「理解可能状態(わかる)」とし、「評価対象者が語を理解も発話もできる状態」を「理解可能状態(わかる)」かつ「発話可能状態(言える)」とし、「評価対象者が語を発話できるが理解できない状態」を「理解可能状態(わかる)」ではない状態かつ「発話可能状態(言える)」とし、「評価対象者が語を理解も発話もできない状態」を「理解可能状態(わかる)」ではない状態かつ「発話可能状態(言える)」ではない状態として、4状態から、語群の各語に対する評価対象者の状態を入力できる。
【0045】
以上のように、評価対象者を定型発達者として評価する場合には、「発話はできるが理解はできない状態」という状態がほとんどないという、定型発達者の生理学上の法則(自然法則)を利用して、前述の3状態から評価対象語に対する状態を選択する回答作業を効率化できる。具体的には、利用者が誤って第1操作領域への押下操作を行ってしまった場合であっても、その操作を取り消すための操作を行うことなく、第2操作領域への押下操作を行うだけで「評価対象者が評価対象語を理解できる」との回答(「評価対象者が語を理解できるが発話できない状態」であることの回答)から「評価対象者が評価対象語を発話できる」との回答(「評価対象者が語を理解も発話もできる状態」であることの回答)に修正できる。同様に、利用者が誤って第2操作領域への押下操作を行ってしまった場合であっても、その操作を取り消すための操作を行うことなく、第1操作領域への押下操作を行うだけで「評価対象者が評価対象語を発話できる」との回答(「評価対象者が語を理解も発話もできる状態」であることの回答)から「評価対象者が評価対象語を理解できる」との回答(「評価対象者が語を理解できるが発話できない状態」であることの回答)に修正できる。このような定型発達者の生理学上の法則(自然法則)を利用した工夫により、前述の3状態から評価対象語に対する状態を選択する回答作業を効率化できる。
【0046】
一方、評価対象者を非定型発達者として評価する場合には、「発話はできるが理解はできない状態」という状態が存在するという、非定型発達者の生理学上の法則(自然法則)を利用して、前述の4状態から評価対象語に対する状態を選択できるようにする。これにより、非定型発達者の語彙力のチェックの精度を悪化させないことができる。
【0047】
すなわち、評価対象者を定型発達者として評価するときと非定型発達者として評価するときとを選択できる構成にしたことで、非定型発達者として評価するときの状態の選択の精度を悪化させずに、定型発達者として評価するときの回答作業を効率化できる。
【0048】
図5から図8を用いてこの処理を具体的に説明する。この例では、ステップS103で「評価対象者を定型発達者として評価する」または「評価対象者を非定型発達者として評価する」との選択内容が基本情報として入力または選択される。「評価対象者を定型発達者として評価する」ことが選択された場合には、前述した図5および図6の処理(ステップS114a~S114r)が実行される。一方、「評価対象者を非定型発達者として評価する」ことが選択された場合には、図7および図8の処理が実行される。図7および図8の処理は、以下の点で図5および図6の処理と相違する。
相違点1:図7および図8の処理では、ステップS114bで評価対象語1311aに対応する第1操作ボタン1311bへの押下操作が行われ(わかる)、ステップS114cで当該評価対象語1311aが発話可能状態である(言える)と判定された場合に、当該語1311aに対応する発話可能状態を取り消すことなく、状態設定部107が当該語1311aに対応する状態を理解可能状態に設定し、状態記憶部102に格納する。これにより、当該評価対象語1311aが理解可能状態であって発話可能状態である状態を選択できる。例えば、図15に例示したチェックリスト画面1311の「ママ」との語1311aに対応する第1操作ボタン1311bへの押下操作が行われた場合、図16に例示するように、チェックリスト画面1311の「ママ」との語1311aに対応する第1操作ボタン1311bおよび第2操作ボタン1311cの両方にマーク(●)が表示され、当該評価対象語1311aが理解可能状態であって発話可能状態である状態が選択される(ステップS214e)。その後、処理がステップS114hに進む。
相違点2:図7および図8の処理では、ステップS114fで理解可能状態でないと判定された場合にステップS214eに進む。この場合には、図16に例示するように、チェックリスト画面1311の「パパ」との語1311aに対応する第1操作ボタン1311bにマーク(●)が表示され、当該評価対象語1311aが理解可能状態とされる。すなわち、評価対象語について、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態を該評価対象語に対応する第2操作ボタン1311c(第2操作領域)が表示している状態であっても、該評価対象語を発話できるとの選択がされていない状態を該評価対象語に対応する第2操作ボタン1311c(第2操作領域)が表示している状態であっても、該評価対象語に対応する第1操作ボタン1311b(第1操作領域)への押下操作が行われたときに、状態設定部108(第2状態設定部)は、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態または該評価対象語を発話できるとの選択がされていない状態を維持しつつ、状態設定部107(第1状態設定部)は、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える(ステップS214e)。
相違点3:図7および図8の処理では、ステップS114hで評価対象語1311aに対応する第2操作ボタン1311cへの押下操作が行われ(言える)、ステップS114iで当該評価対象語1311aが理解可能状態である(わかる)と判定された場合に、当該語1311aに対応する理解可能状態を取り消すことなく、状態設定部108が当該語1311aに対応する状態を発話可能状態に設定し、状態記憶部102に格納する。すなわち評価対象語について、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態を該評価対象語に対応する第1操作ボタン1311b(第1操作領域)が表示している状態であっても、該評価対象語を理解できるとの選択がされていない状態を該評価対象語に対応する第1操作ボタン1311b(第1操作領域)が表示している状態であっても、該評価対象語に対応する第2操作領域への押下操作が行われたときに、状態設定部107は、該評価対象語を理解できるとの選択がされた状態または該評価対象語を理解できるとの選択がされていない状態を維持しつつ、状態設定部108は、該評価対象語を発話できるとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。これにより、当該評価対象語1311aが理解可能状態であって発話可能状態である状態を選択できる(ステップS214k)。その後、処理がステップS114hに進む。
相違点4:図7および図8の処理では、ステップS114mで発話可能状態でないと判定された場合にステップS214kに進む。この場合には、図16に例示するように、チェックリスト画面1311の「じーじ」との語1311aに対応する第2操作ボタン1311cにマーク(●)が表示され、当該評価対象語1311aが発話可能状態とされる(ステップS214k)。
その他は図5および図6の処理と同一である。これにより、チェックリスト画面1311に表示された語群の各語に対して、「評価対象者が語を理解できるが発話できない状態」を「発話可能状態(言える)」ではない状態かつ「理解可能状態(わかる)」(図16のB2)とし、「評価対象者が語を理解も発話もできる状態」を「理解可能状態(わかる)」かつ「発話可能状態(言える)」(図16のB1)とし、「評価対象者が語を発話できるが理解できない状態」を「理解可能状態(わかる)」ではない状態かつ「発話可能状態(言える)」(図16のB4)とし、「評価対象者が語を理解も発話もできない状態」を「理解可能状態(わかる)」ではない状態かつ「発話可能状態(言える)」ではない状態(図16B3)として、4状態を入力できる。
【0049】
≪「人物名」以外のカテゴリの語に対して発話のみをチェックする場合≫
「人物名」以外のカテゴリの語に対する発話のみをチェックする場合のチェック入力処理を説明する。この処理は、前述の基本情報設定部104から出力された設定情報(ステップS104)が「発話のみをチェックする方式」を示しており、カテゴリとして「人物名」以外が選択された場合(ステップ112)に行われる。その他、予め「発話のみをチェックする方式」を行うことが定められており、カテゴリとして「人物名」以外が選択された場合に、この処理が行われてもよい。
【0050】
この処理の場合、表示部130は、選択されたカテゴリについて評価対象語記憶部101から抽出された語群(複数個の語を含む評価対象語群に含まれる語群)の各語に対応する第2操作領域を表示する。入力部120は、第2操作領域への押下操作を受け付ける。状態設定部108(第2状態設定部)は、表示された語群に含まれる評価対象語に対応する第2操作領域への押下操作が行われたときに、「評価対象者が評価対象語を発話できる」との選択がされた状態にする。例えば、前述のように選択されたカテゴリ(ステップ112)の語群が表示制御部103に送られ、表示制御部103は、送られた語群に含まれる各語と、各語に対応する第2操作領域を有するチェックリスト画面を生成する。図17に例示したチェックリスト画面1310は、送られた語群に含まれる「ママ」「パパ」「ばーば」等の語1310aと、それらにそれぞれ対応する第2操作ボタン1311c(第2操作領域)と、を有する。利用者は「評価対象者が評価対象語を発話できる(言える)」と思うときに第2操作ボタン1311cへの押下操作を行う。これにより、評価対象者が当該語1310aに対して発話可能状態であることが設定され、それが状態記憶部102に格納される。また、発話可能状態の語1310aに対応する第2操作ボタン1311cへの押下操作が行われた際に当該発話可能状態を取り消してもよい。
【0051】
≪「人物名」カテゴリの語に対してチェックを行う場合≫
「人物名」カテゴリの語に対してチェックを行う場合のチェック入力処理を説明する。「人物名」カテゴリの語は、「祖母」「祖父」「兄弟」「親戚」等の人物属性を表す人物属性語である。この例では、評価対象者が当該人物属性語によって表される人物属性の人物の名称(人物名)を理解および/または発話できるのか、および何名の人物の名称を理解および/または発話できるのかが入力される。「祖母」「祖父」「兄弟」「親戚」等の人物属性の人物が複数存在する場合があるが、評価対象者が理解および/または発話できる人名をすべて入力するのでは回答作業が膨大なものとなる。また、各人物属性の人物名をチェックリスト画面に表示する方法も考えられるが、各人物属性の人物名をチェックリスト画面に表示するためには事前にすべての人名を登録しておかなければならない。一方で各人物属性の人物が複数存在するにもかかわらず、いずれか一人の名前の発話の可否のみを確認するのでは累積語彙数を正確に推定することができない。これに対し、評価対象者が当該人物属性語によって表される人物属性の人物の名称を理解および/または発話できるのか、および何名の人物の名称を理解および/または発話できるのかを回答させることにすれば、利用者の手間をそれほど増やすことなく、累積語彙数の推定精度を向上させることができる。この例では、語彙力取得装置2は、評価対象者が語を理解できるか否かと評価対象者が語を発話できる否かの何れかが、評価対象者が語を獲得しているか否か、であるとして、複数個の人物属性語を含む評価対象語群(評価対象人物属性語群)に含まれる各人物属性語についての評価対象者の獲得状況を取得する。以下にこのような処理内容の例(例1,2)を示す。
【0052】
例1)表示部130は、各人物属性語について、該人物属性語が表す人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得していることの選択に対応する第1操作領域と、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数に対応する第2操作領域と、を表示する。入力部120は、第1操作領域への押下操作と第2操作領域への人数の入力とを受け付ける。状態設定部107(第1状態設定部)は、該人物属性語に対応する第1操作領域への押下操作が行われたときに、該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。状態設定部108(第2状態設定部)は、第1状態設定部が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態とした場合には、表示部130の第2操作領域を有効であることが視認可能なように表示し、入力部120が第2操作領域への人数の入力を受け付けるようにする。状態設定部107が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされていない状態とした場合には、表示部130の第2操作領域を無効であることが視認可能なように表示し、入力部120が第2操作領域への人数の入力を受け付けないようにする。
【0053】
例2)表示部130は、各人物属性語について、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数に対応する第1操作領域を表示する。入力部120は、第1操作領域への人数の入力を受け付ける。状態設定部107(第1状態設定部)は、入力部120が受け付けた人数を、評価対象者が獲得している該人物属性語で表される人物名の数とする。状態設定部108(第2状態設定部)は、入力部120が受け付けた人数が1以上であるときには、該人物属性語で表される人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態にし、入力部120が受け付けた人数が0であるときには、該人物属性語で表される人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされていない状態とする。
【0054】
以下、図18から図20を用いて上述の例1~例2を具体的に説明する。
図18は、「評価対象者が語を獲得している否か」が「評価対象者が語を発話できる否か」である場合の例1)の具体例である。抽出された「人物名」カテゴリの語群は表示制御部103に送られる。表示制御部103は、送られた語群に含まれる「祖母」「祖父」等の各人物属性語1330aと、各人物属性語1330aに対応する操作ボタン1330c(第1操作領域)および対応入力欄1330d(第2操作領域)と、を有するチェックリスト画面1330を生成する。チェックリスト画面1330では、利用者が理解し易いように「人物属性語1330a+『の名前』」(例えば、「祖母の名前」)と表記されている。表示制御部103はチェックリスト画面1330を表示部130に表示させる。これにより、表示部130は、各人物属性語1330aについて、該人物属性語1330aが表す人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得していること(図18では、評価対象者が発話できること)の選択に対応する操作ボタン1330c(第1操作領域)と、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数に対応する対応入力欄1330d(第2操作領域)と、を表示する。利用者は入力部120に対する入力操作によって、操作ボタン1330cへの押下操作および対応入力欄1330dへの人数の入力操作を行うことができる。対応入力欄1330dへの人数の入力操作は、人数を直接入力する操作であってもよいし、対応入力欄1330d内のボタンへの押下操作によって人数を変化させる操作であってもよい。図18の例では1人以上の人数を入力できる。状態設定部108(第2状態設定部)は、各人物属性語1330aに対応する操作ボタン1330cへの押下操作が行われたときに、「評価対象者が当該人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を発話できるとの選択がされた状態」にし、かつ評価対象者が発話できる当該人物属性の人物の人数を当該人物属性語1330aに対応する対応入力欄1330dに入力された人数にし、この状態を状態記憶部102に格納する。すなわち、状態設定部107(第1状態設定部)は、該人物属性語に対応する操作ボタン1330c(第1操作領域)への押下操作が行われたときに、該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。状態設定部108(第2状態設定部)は、状態設定部107(第1状態設定部)が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態とした場合に、表示部130の対応入力欄1330d(第2操作領域)を有効であることが視認可能なように表示し、入力部120が対応入力欄1330d(第2操作領域)への人数の入力を受け付けるようにしてもよい。一方、状態設定部107が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされていない状態とした場合に、表示部130の対応入力欄1330d(第2操作領域)を無効であることが視認可能なように表示し、入力部120が対応入力欄1330d(第2操作領域)への人数の入力を受け付けないようにしてもよい。
【0055】
図19は、「評価対象者が語を獲得している否か」が、「評価対象者が語を理解できるか否かと評価対象者が語を発話できる否かの何れか」である場合の例1)の具体例である。なお、以降の説明においては、説明を簡単化するため、上述した3状態の入力をする場合については、「評価対象者が語を理解できるが発話できない状態」を「評価対象者が語を理解できる」とし、「評価対象者が語を理解も発話もできる状態」を「評価対象者が語を発話できる」としている。
【0056】
抽出された「人物名」カテゴリの語群は表示制御部103に送られる。表示制御部103は、送られた語群に含まれる「祖母」「祖父」等の各人物属性語1330aと、各人物属性語1330aに対応する操作ボタン1331b(第1操作領域)および操作ボタン1331c(第2操作領域)と対応入力欄1330dとの組を有するチェックリスト画面1331を生成する。表示制御部103はチェックリスト画面1330を表示部130に表示させる。これにより、表示部130は、各人物属性語1330aについて、該人物属性語1330aが表す人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得していること(図19では、評価対象者が「理解できる」または「発話できる」こと)の選択に対応する操作ボタン1331b,1331c(第1操作領域)と、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数に対応する対応入力欄1330d(第2操作領域)と、を表示する。利用者は入力部120に対する入力操作によって、操作ボタン1331bへの押下操作、操作ボタン1331cへの押下操作、および対応入力欄1330dへの人数の入力操作を行うことができる。状態設定部107(第1状態設定部)は、各人物属性語1330aに対応する操作ボタン1331bへの押下操作が行われたときに、「評価対象者が各人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を理解できることの選択がされた状態」にし、かつ評価対象者が理解できる当該人物属性の人物の人数を当該人物属性語1330aに対応する対応入力欄1330dに入力された人数にし、この状態を状態記憶部102に格納する。状態設定部108(第2状態設定部)は、各人物属性語1330aに対応する操作ボタン1331cへの押下操作が行われたときに、「評価対象者が各人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を発話できるとの選択がされた状態」にし、かつ評価対象者が発話できる人物属性の人物の人数を当該人物属性語1330aに対応する対応入力欄1330dに入力された人数にし、この状態を状態記憶部102に格納する。すなわち、状態設定部107(第1状態設定部)は、該人物属性語に対応する操作ボタン1331bまたは1331c(第1操作領域)への押下操作が行われたときに、該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。状態設定部108(第2状態設定部)は、状態設定部107(第1状態設定部)が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態とした場合に、表示部130の対応入力欄1330d(第2操作領域)を有効であることが視認可能なように表示し、入力部120が対応入力欄1330d(第2操作領域)への人数の入力を受け付けるようにしてもよい。一方、状態設定部107が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされていない状態とした場合に、表示部130の対応入力欄1330d(第2操作領域)を無効であることが視認可能なように表示し、入力部120が対応入力欄1330d(第2操作領域)への人数の入力を受け付けないようにしてもよい。
【0057】
図19の例において、上述した3状態の入力をする場合については、「評価対象者が各人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を発話できるとの選択がされた状態(属性発話可能状態)」おいて、当該人物属性語1330aに対応する操作ボタン1331bへの押下操作が行われたときに、状態設定部107によって、「評価対象者が当該人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を理解できるとの選択がされた状態(属性理解可能状態)」にされるとともに、「評価対象者が各人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を発話できるとの選択がされていない状態」に切り替えられてもよい。また、「評価対象者が各人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を理解できるとの選択がされた状態(属性理解可能状態)」おいて、当該人物属性語1330aに対応する操作ボタン1331cへの押下操作が行われたときに、状態設定部108によって、「評評価対象者が当該人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を発話できるとの選択がされた状態(属性発話可能状態)」にされるとともに、「評価対象者が各人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を理解できるとの選択がされていない状態」に切り替えられてもよい。この場合には、属性理解可能状態が選択された場合、状態設定部107は、評価対象者が理解できる当該人物属性の人物の人数を当該人物属性語1330aに対応する対応入力欄1330dに入力された人数にし、属性発話可能状態が選択された場合、状態設定部108は、評価対象者が発話できる当該人物属性の人物の人数を当該人物属性語1330aに対応する対応入力欄1330dに入力された人数にする。選択された状態および入力された人数は状態記憶部102に格納される。
【0058】
図19の例では、各人物属性語1330aについて評価対象者が理解できる人数または発話できる人数しか入力できない。そこで、上述した3状態の入力をする場合については、上述したように、属性理解可能状態(わかる)の場合には、対応入力欄1330dに入力された人数を評価対象者が理解できる当該人物属性の人物の人数とし、属性発話可能状態(言える)の場合には、対応入力欄1330dに入力された人数を評価対象者が発話できる当該人物属性の人物の人数とする。評価対象者が定型発達者の場合、或る人物属性に対して属性発話可能状態であれば当該評価対象者はその人物属性の人物を理解可能でもある。そのため、定型発達者が理解できる人物の人数は発話できる人数よりも多い。定型発達者として評価する評価対象者が或る人物属性語1330aについて属性発話可能状態(言える)である場合、通常、その評価対象者は当該人物属性語1330aの人物属性に属するα人の人物の名称を理解でき、かつ、当該人物属性語1330aの人物属性に属するβ人(β<α)の人物の名称を発話できる。この場合にはβ人しか入力できないが、評価対象者はこのβ人の人物の名称を理解かつ発話できる。このように評価対象者が確実に獲得している人物名の名称を優先して入力することで正確な語彙数を推定できる。また、評価対象者が理解できる人数と発話できる人数の両方をそれぞれ入力する場合に比べ、何れか一方のみの人数を入力するほうが回答作業を軽減できる。
【0059】
図20は、「評価対象者が語を獲得している否か」が、「評価対象者が語を理解できるか否か」と「評価対象者が語を発話できる否かの何れか」の両方である場合の例1)の具体例である。抽出された「人物名」カテゴリの語群は表示制御部103に送られる。表示制御部103は、送られた語群に含まれる「祖母」「祖父」等の各人物属性語1330aと、各人物属性語1330aに対応する操作ボタン1331b(第1操作領域)と第1入力欄1332dとの組、操作ボタン1331c(第2操作領域)と第2入力欄1332eとの組、を有するチェックリスト画面1332を生成する。表示制御部103はチェックリスト画面1332を表示部130に表示させる。これにより、表示部130は、各人物属性語1330aについて、該人物属性語1330aが表す人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得していること(図20では、評価対象者が「理解できる」または「発話できる」ことの選択に対応する操作ボタン1331b,1331c(第1操作領域)と、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数に対応する第1入力欄1332dおよび第2入力欄1332e(第2操作領域)と、を表示する。利用者は入力部120に対する入力操作によって、操作ボタン1331bへの押下操作、操作ボタン1331cへの押下操作、第1入力欄1332dへの人数の入力操作、および第2入力欄1332eへの人数の入力操作を行うことができる。状態設定部107(第1状態設定部)は、操作ボタン1331bへの押下操作と第1入力欄1332dへの人数の入力が行われたときに、評価対象者が評価対象の人物属性語で表される人物属性の人物の名称を理解できるとの選択がされた状態にし、かつ評価対象者が理解できる当該人物属性の人物の人数を当該人物属性語に対応する第1入力欄1332dに入力された人数にする。また状態設定部108(第2状態設定部)は、操作ボタン1331cへの押下操作と第2入力欄1332eへの人数の入力が行われたときに、評価対象者が評価対象の人物属性語で表される人物属性の人物の名称を発話できるとの選択がされた状態にし、かつ評価対象者が発話できる当該人物属性の人物の人数を当該人物属性語に対応する第2入力欄1332eに入力された人数にする。状態および人数は状態記憶部102に格納される。すなわち、状態設定部107(第1状態設定部)は、該人物属性語に対応する操作ボタン1331bまたは1331c(第1操作領域)への押下操作が行われたときに、該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が獲得しているとの選択がされた状態と選択がされていない状態とを切り替える。状態設定部108(第2状態設定部)は、状態設定部107(第1状態設定部)が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が理解できるとの選択がされた状態とした場合に、表示部130の第1入力欄1332d(第2操作領域)を有効であることが視認可能なように表示し、入力部120が第2操作領域への人数の入力を受け付けるようにしてもよい。同様に、状態設定部108(第2状態設定部)は、状態設定部107(第1状態設定部)が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が発話できるとの選択がされた状態とした場合に、表示部130の第2入力欄1332e(第2操作領域)を有効であることが視認可能なように表示し、入力部120が第2操作領域への人数の入力を受け付けるようにしてもよい。一方、状態設定部107が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が理解しているとの選択がされていない状態とした場合に、表示部130の第1入力欄1332d(第2操作領域)を無効であることが視認可能なように表示し、入力部120が第1入力欄1332d(第2操作領域)への人数の入力を受け付けないようにしてもよい。同様に、状態設定部107が該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ評価対象者が発話できるとの選択がされていない状態とした場合に、表示部130の第2入力欄1332e(第2操作領域)を無効であることが視認可能なように表示し、入力部120が第2入力欄1332e(第2操作領域)への人数の入力を受け付けないようにしてもよい。
【0060】
例えば、評価対象者を定型発達者として評価する場合、操作ボタン1331bへの押下操作が行われて属性理解可能状態(わかる)となった場合に、当該操作ボタン1331bに対応する第1入力欄1332dへの人数の入力が可能になる。第1入力欄1332dには、評価対象者が名前を理解できる、当該操作ボタン1331bに対応する人物属性語1330aの人物属性の人物の人数が入力される。例えば、図20に例示するように人物属性語1330a「祖父の名前」に対応する操作ボタン1331bへの押下操作が行われた場合、当該「祖父の名前」に対応する第1入力欄1332dへの人数(評価対象者が名前を理解できる祖父の人数)の入力が可能になる。一方、操作ボタン1331cへの押下操作が行われて属性発話可能状態(言える)となった場合には、当該操作ボタン1331cに対応する第1入力欄1332dおよび第2入力欄1332eへの人数の入力が可能になる。第1入力欄1332dには、評価対象者が名前を理解できる当該操作ボタン1331bに対応する人物属性語1330aの人物属性の人物の人数が入力され、第2入力欄1332eには、評価対象者が名前を理解できる当該人物属性語1330aの人物属性の人物の人数が入力される。例えば、図20に例示するように人物属性語1330a「祖母の名前」に対応する操作ボタン1331eへの押下操作が行われた場合、当該「祖母の名前」に対応する第1入力欄1332dへの人数(評価対象者が名前を理解できる祖母の人数)、および第2入力欄1332eへの人数(評価対象者が名前を発話できる祖母の人数)の入力が可能になる。
【0061】
なお、上述した3状態の入力をする場合については、図19の例と同様に、「評価対象者が各人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を発話できるとの選択がされた状態(属性発話可能状態)」において、当該人物属性語1330aに対応する操作ボタン1331bへの押下操作が行われたときに、状態設定部107によって、「評価対象者が当該人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を理解できるとの選択がされた状態(属性理解可能状態)」にされるとともに、「評価対象者が各人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を発話できるとの選択がされていない状態」に切り替えられてもよい。また、「評価対象者が各人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を理解できるとの選択がされた状態(属性理解可能状態)」おいて、当該人物属性語1330aに対応する操作ボタン1331cへの押下操作が行われたときに、状態設定部108によって、「評価対象者が当該人物属性語1330aで表される属性の人物の名称を発話できるとの選択がされた状態(属性発話可能状態)」にされるとともに、「評価対象者が各人物属性語1330aで表される人物属性の人物の名称を理解できるとの選択がされていない状態」に切り替えられてもよい。このようにすれば、図20の例でも、各人物属性語1330aに対して上述した3状態の選択肢からの効率的な選択が可能である。
【0062】
また図20において、第1入力欄1332dに代えて0人以上の人数の入力が可能な第3入力欄を設け、第2入力欄1332eに代えて0人以上の人数の入力が可能な第4入力欄を設けてもよい。この場合には、操作ボタン1331bおよび操作ボタン1331cを省略できる(例2)。状態設定部107は、第3入力欄に1人以上の人数が入力されたときに、評価対象者が評価対象の人物属性語で表される人物属性の人物の名称を理解できるとの選択がされた状態(属性理解可能状態)にし、かつ評価対象者が理解できる当該人物属性の人物の人数を当該人物属性語に対応する第3入力欄に入力された人数にする。状態設定部108は、第4入力欄に1人以上の人数が入力されたときに、評価対象者が評価対象の人物属性語で表される人物属性の人物の名称を発話できるとの選択がされた状態(属性発話可能状態)にし、かつ評価対象者が発話できる当該人物属性の人物の人数を当該人物属性語に対応する第4入力欄に入力された人数にする。第3入力欄に0人の人数が入力されたときには、評価対象者が評価対象の人物属性語で表される人物属性の人物の名称を理解できないことにする。同様に、第4入力欄に0人の人数が入力されたときには、評価対象者が評価対象の人物属性語で表される人物属性の人物の名称を発話できないことにする。同様に、図18において、操作ボタン1330cを省略し、対応入力欄1330dに代えて0人以上の人数の入力が可能な第1操作領域を設けてもよい(チェック入力処理(ステップS114)の説明終わり)。
【0063】
チェック入力処理(ステップS114)が終了すると(図3)、制御部111は、パート選択ボタン1304a(図13)への押下操作によって選択された分類(パート1またはパート2)に属するすべてのカテゴリに対するチェック入力処理(ステップS114)が終了したかを判定する(ステップS115)。ここで、すべてのカテゴリに対するチェック入力処理が終了していない場合には、処理がステップS111に戻る。一方、パート選択ボタン1304aへの押下操作によって選択された分類に属するすべてのカテゴリに対するチェック入力処理が終了した場合には、処理がステップS108に戻る。
【0064】
図4に例示するように、前述のステップS110(図3)で「パート3」ボタンへの押下操作が行われたと判定された場合、表示制御部103が「追加開始画面」を表示部130に表示させる。図21に例示した追加開始画面1341では、メッセージと、追加ボタン1341aと、「パート一覧へ」と表示されたパート一覧戻りボタン1341bとが表示されている(ステップS121)。
【0065】
制御部111は、パート一覧戻りボタン1341bの押下操作が行われたかを判定する(ステップS122)。パート一覧戻りボタン1341bへの押下操作が行われた場合、処理がステップS108に戻る。一方、パート一覧戻りボタン1341bへの押下操作が行われていない場合、制御部111は、追加ボタン1341aへの押下操作が行われたかを判定する(ステップS123)。追加ボタン1341aへの押下操作が行われていない場合、処理がステップS121に戻る。
【0066】
一方、追加ボタン1341aへの押下操作が行われた場合、表示制御部103は「追加画面」を表示部130に表示させる。「追加画面」は、新たな語の入力と、評価対象者が当該新たな語を理解可能か、発話可能かなどの回答内容の入力とを行うためのものである。図22に例示した追加画面1350は、新たな語を入力可能な入力欄1350a、評価対象者が当該新たな語を理解可能な場合に押下操作される第1操作ボタン1350b、評価対象者が当該新たな語を発話可能な場合に押下操作される第2操作ボタン1350c、新たな語の追加を取り消す場合に押下操作されるキャンセルボタン1350d、および新たな語の追加およびそれに対する評価対象者の理解可否/発話可否の入力内容を確定する場合に押下操作される追加ボタン1350eを含む。利用者は、入力部120を用いて入力欄1350aへの新たな語の入力、第1操作ボタン1350bへの押下操作、第2操作ボタン1350cへの押下操作、キャンセルボタン1350dへの押下操作、および追加ボタン1350eへの押下操作を行うことができる。
【0067】
第1操作ボタン1350bおよび/または第2操作ボタン1350cへの押下操作による動作およびそれによって設定される状態は、前述のチェック入力処理(ステップS114)の詳細で例示したのと同じである。例えば、入力欄1350aに入力された新たな語について、第1操作ボタン1350bへの押下操作がされた場合には理解可能状態となり、第2操作ボタン1350cへの押下操作がされた場合には発話可能状態となる。また、理解可能状態のときに第2操作ボタン1350cへの押下操作がされた場合には、理解可能状態が取り消されて発話可能状態となってもよい。発話可能状態のときに第1操作ボタン1350bへの押下操作がされた場合には、発話可能状態が取り消されて理解可能状態となってもよい。また、評価対象者を定型発達者として評価する場合にはこのように動作し、評価対象者を非定型発達者として評価する場合には理解可能状態かつ発話可能状態が選択可能であってもよい。すなわち、評価対象者を非定型発達者として評価する場合、理解可能状態のときに第2操作ボタン1350cへの押下操作がされた場合には、理解可能状態が維持されたまま発話可能状態となってもよく、発話可能状態のときに第1操作ボタン1350bへの押下操作がされた場合には、発話可能状態が維持されたまま理解可能状態となってもよい(ステップS124)。
【0068】
制御部111は、キャンセルボタン1350dへの押下操作が行われたかを判定する(ステップS125)。キャンセルボタン1350dへの押下操作が行われた場合には、処理がステップS108に戻る。一方、キャンセルボタン1350dへの押下操作が行われていない場合には、制御部111は、追加ボタン1350eへの押下操作が行われたかを判定する(ステップS126)。追加ボタン1350eへの押下操作が行われていない場合には、処理がステップS124に戻る。一方、追加ボタン1350eへの押下操作が行われた場合には、追加画面1350への入力によって設定された新たな語およびそれに対する状態が状態記憶部102に格納される。その後、処理がステップS121に戻る。この際、ステップS121で表示される「追加開始画面」には新たな語およびそれに対する状態も表示される。例えば、図23に例示した追加開始画面1351では、メッセージと、追加ボタン1341aと、「パート一覧へ」と表示されたパート一覧戻りボタン1341bとに加え、表示欄1351cに新たな語およびそれに対する状態が表示されている(ステップS121)
【0069】
<結果表示処理>
図9を用い、上述の入力処理で得られた調査結果を表示する結果表示処理を説明する。この結果表示処理は、図1の語彙力チェック装置1を語彙力確認装置3として機能させる処理である。結果表示処理では、語彙力チェック装置1(語彙力確認装置3)が、評価対象語群に含まれる複数個の語のそれぞれについて、評価対象者が理解しているか、および/または、評価対象者が発話できるか、についての調査結果を表示する。結果表示処理が開始されると、集計部109は状態記憶部102に格納された情報を読み出し、それらを集計して集計結果を表示制御部103に送る。表示制御部103は、送られた集計結果を用いて「チェック状況画面」を生成して出力する。チェック状況画面は表示部130で表示される。チェック状況画面は、カテゴリ、語群、各語に対する調査結果(例えば、「わかる」「言える」「いずれでもない」)を表示する。図24に例示したチェック状況画面1360は、各カテゴリ(家族、ひとなど)、各カテゴリで発話可能状態または属性発話可能状態(言える)とされた数、各カテゴリに属する語群の総数を表示する表示欄1360a、月齢順調査結果を表示する際に押下操作される月齢順チェックボタン1360b、および「表紙に戻る」と表記された戻りボタン1360cを有する(ステップS131)。
【0070】
制御部111は、戻りボタン1360cへの押下操作がされたかを判定する(ステップS131)。戻りボタン1360cへの押下操作がされたと判定された場合には、処理がステップS101(図2)に戻る。一方、戻りボタン1360cへの押下操作がなされていないと判定された場合には、制御部111は、月齢順チェックボタン1360bへの押下操作がされたかを判定する(ステップS133)。月齢順チェックボタン1360bへの押下操作がなされていないと判定された場合には、処理がステップS131に戻る。一方、月齢順チェックボタン1360bへの押下操作がされたと判定された場合には、処理がステップS134に進む。
【0071】
ステップS134では、評価対象語群に含まれる複数個の語のそれぞれについて、評価対象者による各語の理解および/または発話が可能であるかを示す調査結果を表示する。まず、表示制御部103が状態記憶部102から前述した基本情報、設定情報、カテゴリ、語群、各語に対する調査結果を特定する状態(理解可能状態、発話可能状態、属性理解可能状態、属性発話可能状態、いずれでもないなど)を読み出し、評価対象語記憶部101から評価対象語および各語のX%獲得月齢を得るための情報を読み出す。表示制御部103は、これらを用いて、調査結果の表示方法を指定するための入力欄(調査結果の表示に関するパラメータに対応するパラメータ表示欄)、および調査結果を表示するための表示欄(結果表示欄)を含む月齢順調査結果画面を生成し、表示部130に表示させる。これにより、表示部130は、調査結果の表示に関するパラメータに対応するパラメータ表示欄と調査結果を表示する結果表示欄とを表示する。図25に例示する月齢順調査結果画面1361は入力欄1361a(パラメータ表示欄)および表示欄1361bを含む。表示欄1361bは、通番、カテゴリ、語彙名(語)、月齢(男女)、月齢(男)、月齢(女)、調査結果が関連付けられた調査結果レコードの集合を表示する。月齢(男女)は全体のA%の獲得月齢を表し、月齢(男)は男児X%の獲得月齢を表し、月齢(女)は女児A%の獲得月齢を表す。実数Aの初期値は例えば50である。調査結果の「言」は「言える」(発話可能状態または属性発話可能状態に対応)を表し、「わ」は「わかる」(理解可能状態または属性理解可能状態に対応)を表し、「×」は「いずれでもない(選択なし)」を表している。入力欄1361aは、表示するカテゴリを選択するためのカテゴリ選択欄(大カテゴリ)、表示対象を選択するための表示選択欄(表示選択)、表示順序を選択するためのソート条件設定欄(表示順)を含む。カテゴリ選択欄への選択操作により、すべてのカテゴリについての調査結果を表示するか、特定のカテゴリのみについての調査結果を表示するのかを選択できる。表示選択欄への選択操作により、「わかる」「言える」「いずれでもない」のすべての結果を表示するか、「わかる」「言える」の結果のみを表示するか、「いずれでもない(選択なし)」の結果のみを表示するかを選択できる。また、表示選択欄への選択操作により、「わかる」の結果のみを表示したり、「言える」の結果のみを表示したりできてもよい。ソート条件設定欄への選択操作により、通番の番号順に調査結果レコードの集合を並べ替えて表示するか、獲得月齢の早い順(昇順)に調査結果レコードの集合を並べ替えて表示するか、獲得月齢の遅い順(降順)に調査結果レコードの集合を並べ替えて表示するかを選択できる。また、基本情報が示す評価対象者の性別と同じ性別のX%の獲得月齢をソート基準に指定する性別内ボタンが設けられ、その性別内ボタンへの押下操作によって獲得月齢のソート基準が選択されてもよい。獲得月齢のソート基準として月齢(男女)を用いるか、月齢(男)を用いるか、月齢(女)を用いるかを指定するための性別選択ボタンが設けられ、その性別選択ボタンへの押下操作によって獲得月齢のソート基準が選択されてもよい。入力欄1361aが各語のA%獲得月齢の実数Aを指定するための欄を含んでもよく、これにより実数Aが選択可能であってもよい。入力欄1361a(パラメータ表示欄)への入力操作は入力部120によって受け付けられる(ステップS134)。
【0072】
制御部111は、入力部120から入力欄1361aへの選択操作がされたかを判定する(ステップS135)。入力部120によって入力欄1361aへの選択操作がなされていない場合には、処理がステップS134に戻る。一方、入力部120によって入力欄1361aへの選択操作がなされている場合には、ソート部110がこの選択操作に応じ、通番、カテゴリ、語彙名(語)、月齢(男女)、月齢(男)、月齢(女)、調査結果が関連付けられた調査結果レコードの集合を並べ替えて出力する。表示制御部103は、入力欄1361aと、並べ替えられた調査結果レコードの集合を含む表示欄1361bと、を含む月齢順調査結果画面1361を生成して出力し、表示部130がこれを表示する。
【0073】
図26に例示する月齢順調査結果画面1361は、入力欄1361aと獲得月齢の早い順に並べ替えた調査結果レコードの集合を表示する表示欄1361bとを含む。図27に例示する月齢順調査結果画面1361は、入力欄1361aと獲得月齢の遅い順に並べ替えた調査結果レコードの集合を表示する表示欄1361bとを含む。
【0074】
図28に例示する月齢順調査結果画面1362は、入力欄1361aと、設定情報に基づいた評価対象者の月齢(チェック時月齢)を表すチェック時月齢レコード1362baと調査結果レコードの集合とを獲得月齢の早い順に並べ替えたレコードの集合を表示する表示欄1362bと、を含む。チェック時月齢レコード1362baにはチェック時月齢が表示されている(この例では20.99ヵ月)。図29に例示する月齢順調査結果画面1363は、入力欄1361aと、チェック時月齢レコード1362baと調査結果レコードの集合とを獲得月齢の遅い順に並べ替えたレコードの集合を表示する表示欄1363bと、を含む。チェック時月齢レコード1362baにより、評価対象者の月齢と各語の獲得月齢との関係を視覚的に理解できる。例えば、獲得月齢がX%獲得月齢である場合、図28の表示欄1362bにおいてチェック時月齢レコード1362baよりも上に表示された調査結果レコードは、チェック時月齢レコード1362baが表すチェック時月齢までにX%の子供が言えるようになっている語に対応する。また、図29の表示欄1362bにおいてチェック時月齢レコード1362baよりも下に表示された調査結果レコードは、チェック時月齢レコード1362baが表すチェック時月齢までにX%の子供が言えるようになっている語に対応する。これらの結果を言語訓練などの参考として用いることもできる。表示欄1361bが最初に表示されたときにチェック時月齢レコード1362baが表示欄1361bの欄外に位置していると、利用者は画面スクロールによってチェック時月齢レコード1362baを探さなければならない。そのため、表示欄1361bが最初に表示されたときに、チェック時月齢レコード1362baが表示欄1361b内(例えば、表示欄1361bの中央)に配置されるよう制御されてもよい。
【0075】
入力欄1361aに前述した性別内ボタンが設けられている場合の処理は次のようになる。利用者が入力部120を利用して性別内ボタンへの押下操作を行うと、ソート部110は基本情報が示す評価対象者の性別と同じ性別のA%獲得月齢をソート基準とし、調査結果レコードの集合または調査結果レコードの集合とチェック時月齢レコードを、当該X%獲得月齢の昇順または降順に並べ替えて出力する。例えば、評価対象者が男であった場合、ソート部110は月齢(男)(図26図29)の昇順または降順に、調査結果レコードの集合を並べ替えて出力するか、調査結果レコードの集合とチェック時月齢レコード1362baとを並べ替えて出力する。入力欄1361aに前述した性別選択ボタンが設けられている場合の処理は次のようになる。利用者が入力部120を利用して性別選択ボタンの押下操作を行って、評価対象者の性別とは無関係に、ソート基準として月齢(男女)を用いるか、月齢(男)を用いるか、月齢(女)を用いるかを指定する。ソート部110は、これによって指定されたA%獲得月齢をソート基準とし、調査結果レコードの集合または調査結果レコードの集合とチェック時月齢レコードを、当該X%獲得月齢の昇順または降順に並べ替えて出力する。例えば、利用者が入力部120を利用して性別選択ボタンの押下操作を行って月齢(女)を指定した場合、ソート部110は月齢(女)(図26図29)の昇順または降順に、調査結果レコードの集合を並べ替えて出力するか、調査結果レコードの集合とチェック時月齢レコード1362baとを並べ替えて出力する。いずれの場合も、表示制御部103は、入力欄1361aとソート部110で並べ替えられたレコードの集合を含む表示欄1361bとを含む月齢順調査結果画面1361を生成して出力し、表示部130がこれを表示する。
【0076】
入力部120が入力欄1361aに実数Aを設定する入力操作を受け付け、これに基づき、ソート部110が、チェック時月齢レコード1362baの月齢(男女)、月齢(男)、月齢(女)の一部またはすべてをA%獲得月齢に設定してもよい。この場合、ソート部110は調査結果レコード(複数個の語と語の調査結果との組)の集合を、語のA%獲得月齢の昇順または降順に並べ替えて出力する。この並べ替えの基準となるA%獲得月齢は、月齢(男女)であってもよいし、月齢(男)であってもよいし、月齢(女)であってもよいし、上述のように選択可能であってもよい。表示制御部103は、入力欄1361aと並べ替えられた調査結果レコード(ソート部110で並べ替えられた組)の集合を含む表示欄1361bとを含む月齢順調査結果画面1361(図26図27)を生成して出力し、表示部130がこれを表示する。あるいは、ソート部110が調査結果レコード(複数個の語と語の調査結果との組)の集合およびチェック時月齢レコード1362baを、語のA%獲得月齢の昇順または降順に並べ替えて出力してもよい。この場合、表示制御部103は、入力欄1361aと並べ替えられた調査結果レコードおよびチェック時月齢レコード1362baを含む表示欄1362bとを含む月齢順調査結果画面1362(図28図29)を生成して出力し、表示部130がこれを表示する。すなわち、入力欄1361a(パラメータ表示欄)にA%獲得月齢の欄が含まれ、入力部120がAとして0以上100以下の値を受け付けたのを契機に、ソート部110が、複数個の語についての、各語と各語の調査結果との組を、受け付けたAについての各語のA%獲得月齢の昇順または降順に並べた複数組の調査結果の表示情報を得、表示制御部103が、ソート部110が得た複数組の調査結果の表示情報を、複数組の表示情報の並びの中のどこが評価対象者の月齢に対応するかを視認可能なようにして、表示欄1362b(結果表示欄)に表示させてもよい(ステップS136)。
【0077】
入力部120から結果表示処理を終了させる旨が入力されていない場合にはステップS134に戻り、入力部120から結果表示処理を終了させる旨が入力された場合には処理を終了する(ステップS137)
【0078】
[第2実施形態]
利用者が回答用紙などの回答シートに記入することで、複数個の語を含む評価対象語群に含まれる各語に対する評価対象者の理解能力および/または発話能力の回答を行ってもよい。
【0079】
図30に、評価対象者が定型発達者であるとして語彙力を回答するための定型発達者用シート310(回答シート)を例示する。前述のように、定型発達者には「初期語彙の語を発話することはできても、その意味は分からないということはほとんどない」という生理学上の特徴がある。定型発達者用シート310は、この生理学上の特徴(自然法則)を利用して、利用者が定型発達者の語彙力を効率的に回答できるように構成されている。すなわち、定型発達者用シート310は、評価対象語群に含まれる各評価対象語を表示する語彙欄311と、語彙欄311の各語(評価対象語群に含まれる評価対象語)について、評価対象者が評価対象語を理解できることを表す第1選択肢(わかる)、評価対象者が評価対象語を発話できることを表す第2選択肢(言える)、および第1選択肢または第2選択肢のいずれでもないことを表す第3選択肢(どちらでもない)の3つの選択肢から1つを選択するための定型発達者用記入欄312~314とを含む。例えば、定型発達者用シート310は、「『わかる』『言える』『どちらでもない』のどれか1つをチェックしてください」とのメッセージ、評価対象語群に含まれる評価対象語(「ママ」「パパ」など)を表示した語彙欄311、語彙欄311のそれぞれの語についての「わかる」に対応する定型発達者用記入欄312、「言える」に対応する定型発達者用記入欄313、および「どちらでもない」に対応する定型発達者用記入欄313を有する。利用者は、どれか1つをチェックするとの観点でのチェックを行うため、評価対象者が語を理解できるが発話できない場合には当該後に対応する定型発達者用記入欄312にチェックし、評価対象者が評価対象語を理解も発話もできる場合には当該後に対応する定型発達者用記入欄313にチェックし、評価対象者が語を理解も発話もできない場合には当該後に対応する定型発達者用記入欄313にチェックする。図30の定型発達者用記入欄312~314はチェックボックスであるが、定型発達者用記入欄312~314がマークシート形式の記入欄であってもよい。
【0080】
図31に、評価対象者が非定型発達者であるとして語彙力を回答するための非定型発達者用シート320(回答シート)を例示する。前述のように、非定型発達者には「ある語を発話することはできても、その意味は分からないことが多い」という生理学上の特徴がある。非定型発達者用シート320は、この生理学上の特徴(自然法則)を利用して、非定型発達者の語彙力を正確に推定できるように構成されている。すなわち、非定型発達者用シート320は、評価対象語群に含まれる各評価対象語を表示する語彙欄321と、語彙欄321の各語(評価対象語群に含まれる評価対象語)について、評価対象者が評価対象語を理解できることを表す第1選択肢(わかる)または評価対象者が評価対象語を理解できないことを表す第4選択肢(わからない)のいずれか1つを選択するための非定型発達者用記入欄322(第1記入欄)と、評価対象者が評価対象語を発話できることを表す第2選択肢(言える)または評価対象者が評価対象語を発話できないことを表す第5選択肢(言えない)のいずれか1つを選択するための非定型発達者用記入欄323(第2記入欄)とを含む。例えば、非定型発達者用シート320は、「『わかる』『言える』のそれぞれについてをチェックしてください」とのメッセージ、評価対象語群に含まれる評価対象語(「ママ」「パパ」など)を表示した語彙欄321、語彙欄321のそれぞれの語についての「わかる」に対応する非定型発達者用記入欄322、および「言える」に対応する非定型発達者用記入欄323を有する。非定型発達者用記入欄322にチェックが記載された場合には「わかる」が選択されたことになり、非定型発達者用記入欄322にチェックが記載されなかった場合には「わからない」が選択されたことになる。非定型発達者用記入欄323にチェックが記載された場合には「言える」が選択されたことになり、非定型発達者用記入欄322にチェックが記載されなかった場合には「言えない」が選択されたことになる。このように各語に対して2個ずつの非定型発達者用記入欄322,323が設けられており、これによって上記の「わかる」または「わからない」と「言える」または「言えない」との組み合わせからなる4つの選択肢から1つの選択肢を選択できる。利用者は、評価対象者が語を理解できるが発話できない場合には当該後に対応する非定型発達者用記入欄322にチェックするが非定型発達者用記入欄323にはチェックせず、評価対象者が語を理解も発話もできる場合には当該後に対応する非定型発達者用記入欄322,323の両方にチェックし、評価対象者が語を発話できるが理解できない場合には当該後に対応する非定型発達者用記入欄323にチェックするが非定型発達者用記入欄322にはチェックせず、評価対象者が語を理解も発話もできない場合には当該後に対応する非定型発達者用記入欄322,323のいずれにもチェックしない。図31の非定型発達者用記入欄322,323はチェックボックスであるが、非定型発達者用記入欄322,323がマークシート形式の記入欄であってもよい。
【0081】
定型発達者用シート310と非定型発達者用シート320との組を含むシートセットが用いられてもよい。利用者は評価対象者を定型発達者として評価するか非定型発達者として評価するかに応じ、定型発達者用シート310を用いるか非定型発達者用シート320を用いるかを選択し、選択したシートを用いて回答を行う。
【0082】
図32に例示するように、「言える場合にはチェックしてください」とのメッセージ、評価対象語群に含まれる評価対象語(「ひと」など)を表示した語彙欄331、語彙欄331のそれぞれの語についての「言える」に対応する定型発達者用記入欄313を有する回答シート330であってもよい。利用者は評価対象者が語を発話できる場合のみに当該後に対応する記入欄333にチェックする。また、記入欄333がマークシート形式の記入欄であってもよい。
【0083】
利用者が回答用紙などの回答シートに記入することで、複数個の人物属性語を含む評価対象語群に含まれる各人物属性語で表される人物属性の人物の名称に対する評価対象者の理解能力および/または発話能力を回答してもよい。このような回答シートは、各人物属性語を表示する語彙欄と、回答を行うための記入欄と、を有する。この記入欄は、各人物属性語について、評価対象者が人物属性語で表される人物属性の人物の名称を理解できる(わかる)か否か、および、評価対象者が人物属性語で表される人物属性の人物の名称を発話できる(言える)か否か、の少なくとも一方を選択するための第1記入欄と、評価対象者が名称を理解できる人物属性の人物の人数および/または評価対象者が名称を発話できる人物属性の人物の人数を指定可能な第2記入欄とを含む。すなわち、このような回答シートは、評価対象者が語を理解できるか否かと評価対象者が語を発話できる否かの何れかが、評価対象者が語を獲得しているか否か、であるとして、複数個の人物属性語を含む評価対象人物属性語群に含まれる各人物属性語についての評価対象者の獲得状況を取得するためのものである。当該回答シートは、各人物属性語について、(a)該人物属性語を表示する語彙欄と、(b)該人物属性語についての回答を記入するための記入欄と、を有する。当該記入欄は、評価対象者が人物属性語で表される人物属性の人物名を獲得しているか否かを選択するための第1記入欄と、該人物属性語で表される人物属性の人物名を少なくとも1つ獲得している場合に、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数を指定するための第2記入欄と、を含む。例えば、図33の回答シート510は、「『言える』場合にはチェックして、人数を記入してください」とのメッセージ、各人物属性語(「祖母の名前」など)を表示する語彙欄511、評価対象者が当該人物属性語で表される人物属性の人物の名称を発話できる(言える)か否かを記入する第1記入欄513、および評価対象者が名称を発話できる当該人物属性の人物の人数を指定可能な第2記入欄512を含む。利用者は、評価対象者が当該人物属性語で表される人物属性の人物の名称を発話できる(言える)場合に、当該人物属性語に対応する第1記入欄513にチェックを行い、第2記入欄512に評価対象者が名称を発話できる当該人物属性の人物の人数を記入する。評価対象者が当該人物属性語で表される人物属性の人物の名称を発話できない場合には、利用者は、当該人物属性語に対応する第1記入欄513にも第2記入欄512にも記入を行わない。これにより、評価対象者が発話できる人物の名前をすべて記入するといった煩雑な回答を行うことなく、評価対象者の語彙力を正確に推定できる。
【0084】
回答シートが、各人物属性語について、評価対象者が名称を理解できる人物属性の人物の0人以上の人数および/または評価対象者が名称を発話できる人物属性の人物の0人以上の人数を指定可能な第3記入欄を含んでいてもよい。この場合には人数の記入のみによって、評価対象者が名称を理解および/または発話できるか否か、および理解および/または発話できる人数を回答できる。すなわち、このような回答シートも、評価対象者が語を理解できるか否かと評価対象者が語を発話できる否かの何れかが、評価対象者が語を獲得しているか否か、であるとして、複数個の人物属性語を含む評価対象人物属性語群に含まれる各人物属性語についての評価対象者の獲得状況を取得するためのものである。当該回答シートは、各人物属性語について、(a)該人物属性語を表示する語彙欄と、(b)該人物属性語についての回答を記入するための記入欄と、を有する。当該記入欄は、該人物属性語で表される人物属性の人物名を評価対象者が獲得している人数を0以上の数で指定するための第3記入欄を含む。例えば、図34の回答シート520は、「『言える』人数を記入してください」とのメッセージ、各人物属性語(「祖母の名前」など)を表示する語彙欄511、および評価対象者が名称を発話できる(言える)当該人物属性の人物の人数(0人以上)を指定可能な第3記入欄522を含む。利用者は、評価対象者が当該人物属性語で表される人物属性の人物の名称を発話できる(言える)場合に、当該人物属性語に対応する第3記入欄522に評価対象者が名称を発話できる当該人物属性の人物の人数を記入する。評価対象者が当該人物属性語で表される人物属性の人物の名称を発話できない場合には、利用者は、当該人物属性語に対応する第3記入欄522に「0」と記入する。
【0085】
[その他の変形例等]
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、処理部100の機能やデータが複数の装置に分散配置され、これらの装置がインターネット等を通じて互いに情報の受け渡しを行って上述の各処理が実行されてもよい。上述の各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。また、上述の語彙力チェック装置1を語彙力取得装置2としてのみ機能させる場合、すなわち、入力処理のみを行う場合には、語彙力取得装置2である語彙力チェック装置1は、集計部109とソート部110は備えないでよい。同様に、語彙力チェック装置1を語彙力確認装置3としてのみ機能させる場合、すなわち、結果表示処理のみを行う場合には、語彙力確認装置3である語彙力チェック装置1は、基本情報設定部104、評価対象語選択部105、評価対象語追加部106、状態設定部107および状態設定部108は備えないでよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0086】
上述の構成をコンピュータによって実現する場合、装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例は、非一時的な(non-transitory)記録媒体である。このような記録媒体の例は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等である。
【0087】
このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0088】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。処理の実行時、このコンピュータは、自己の記憶装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。
【0089】
コンピュータ上で所定のプログラムを実行させて本装置の処理機能が実現されるのではなく、これらの処理機能の少なくとも一部がハードウェアで実現されてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 語彙力チェック装置、
2 語彙力取得装置
3 語彙力確認装置
310 定型発達者用シート
320 非定型発達者用シート
330,510,520 回答シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34