(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189943
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】センサ付きケーブル
(51)【国際特許分類】
G01P 3/487 20060101AFI20221215BHJP
G01P 1/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01P3/487 Z
G01P1/02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173499
(22)【出願日】2022-10-28
(62)【分割の表示】P 2021133813の分割
【原出願日】2016-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鬼本 隆
(72)【発明者】
【氏名】城田 照昌
(57)【要約】
【課題】複数の磁気センサを備えつつもセンサ部を小型にすることが可能な回転検出装置及びセンサ付きケーブルを提供する。
【解決手段】回転部材としての内輪11に取り付けられており、内輪11の周方向に沿って複数の磁極が設けられている被検出部材としての磁気エンコーダ2と、内輪11の回転に伴って回転しない固定部材としてのナックル9に取り付けられており、磁気エンコーダ2と対向して配置されているセンサ部3と、を備え、センサ部3は、磁気検出素子と信号処理回路とを一括して樹脂モールド300aで覆った板状の検出部300を有している複数の磁気センサ30を備え、各検出部300は、センサ部3と磁気エンコーダ2との対向方向に積層されており、磁気エンコーダ2から最も離れて配置されている磁気センサ30は、磁気エンコーダ2に最も近接して配置されている磁気センサ30よりも感度が高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と前記複数の電線を一括して覆うシースとを有するケーブルと、
前記ケーブルの端部に設けられたセンサ部と、
を有し、
前記シースは、前記ケーブルの最外層の部材であり、
前記センサ部は、
磁気検出素子と前記磁気検出素子を覆う覆い体とを有する検出部を有している複数の磁気センサと、
前記複数の磁気センサ、前記複数の電線、及び前記シースを被覆しているハウジング部と、
を有し、
前記ケーブルは、前記ハウジング部から延出しており、
前記各検出部は、前記ケーブルの前記ハウジング部からの延出方向と同方向に並んで配置されている、
センサ付きケーブル。
【請求項2】
前記ハウジング部は、L字型に形成されている、
請求項1に記載のセンサ付きケーブル。
【請求項3】
前記複数の磁気センサは、それぞれ前記検出部から延出する接続端子を有し、
前記複数の電線はそれぞれ、前記複数の磁気センサのそれぞれの前記接続端子に接続される、
請求項1または2に記載のセンサ付きケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ付きケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車輪の軸受ユニットに用いられ、車輪と共に回転する回転部材の回転速度を検出する回転検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1では、回転部材に取り付けられ、回転部材の周方向に沿って複数の磁極を有する被検出部材と、回転部材を回転可能に支持する固定部材に取り付けられ、前記被検出部材の磁界を検出する検出素子を有する磁気センサと、を備えた回転検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように、車輪の回転速度を測定する回転検出装置においては、磁気センサの故障等が生じても車輪の回転速度が検出できるように、あるいは、より精度よく車輪の回転速度が検出できるように、複数の磁気センサを用いたいという要求がある。
【0006】
複数の磁気センサをセンサ部に搭載する場合、センサ部全体のサイズが大きくなってしまい、例えば、センサ部を保持する保持孔に挿入できなくなる、といった不具合が生じるおそれがある。そのため、複数の磁気センサを搭載した場合であっても、センサ部を小型に維持したいという要求があった。
【0007】
そこで、本発明は、複数の磁気センサを備えつつもセンサ部を小型にすることが可能なセンサ付きケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心した周方向に沿って複数の磁極が設けられている被検出部材と、前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備え、前記センサ部は、前記被検出部材からの磁界を検出する前記磁気検出素子、前記磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路、及び前記磁気検出素子と前記信号処理回路とを一括して覆う覆い体を有する板状の検出部を有している複数の磁気センサを備え、前記各検出部は、前記センサ部と前記被検出部材との対向方向に積層されており、前記被検出部材から最も離れて配置されている前記磁気センサは、前記被検出部材に最も近接して配置されている前記磁気センサよりも感度が高い、回転検出装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心した周方向に沿って複数の磁極が設けられている被検出部材と、前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備えた回転検出装置に用いられるセンサ付きケーブルであって、ケーブルと、前記ケーブルの端部に設けられた前記センサ部と、を有し、前記センサ部は、前記被検出部材からの磁界を検出する前記磁気検出素子、前記磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路、及び前記磁気検出素子と前記信号処理回路とを一括して覆う樹脂モールドを有する板状の検出部を有している複数の磁気センサを備え、前記各検出部は、前記センサ部と前記被検出部材との対向方向に積層されている、センサ付きケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の磁気センサを備えつつもセンサ部を小型にすることが可能なセンサ付きケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る回転検出装置、及びこの回転検出装置を有する車両用の車輪軸受装置の構成例を示す断面図である。
【
図3】(a)はセンサ部の側面図であり、(b)はそのハウジングを断面で示した破断面図である。
【
図4】(a)はセンサ部の上面図であり、(b)はそのハウジングを断面で示した破断面図、(c)は磁気センサと電線の上面図である。
【
図5】本発明の一変形例に係るセンサ付きケーブルを示す図であり、(a)は概略構成図、(b)はケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
(車輪軸受装置10の構成)
図1は、本実施の形態に係る回転検出装置、及びこの回転検出装置を有する車両用の車輪軸受装置の構成例を示す断面図である。
【0014】
車輪軸受装置10は、円筒状の本体部110、及び車輪が取り付けられるフランジ部111を有する回転部材としての内輪11と、内輪11の本体部110の外周側に配置された外輪12と、内輪11の外周面11aに形成された一対の軌道面11b,11b、及び外輪12の内周面12aに形成された一対の軌道面12b,12bの間に配置され、両軌道面11b,12bを転動する球状の複数の転動体13と、内輪11の外輪12に対する回転速度(すなわち車輪速)を検出する回転検出装置1とを備えている。
【0015】
内輪11の本体部110の中心部には、その回転軸線Oに沿って貫通孔が形成され、この貫通孔の内面には、図示しないドライブシャフトを連結するためのスプライン嵌合部110aが形成されている。また、内輪11の一対の軌道面11b,11bは、周方向延びるように、互いに平行に形成されている。
【0016】
内輪11のフランジ部111は、本体部110の径方向外側に突出して本体部110と一体に設けられている。フランジ部111には、図示しない車輪を取り付けるためのボルトが圧入される複数の貫通孔111aが形成されている。
【0017】
外輪12は、円筒状に形成され、車体に連結されたナックル9に複数のボルト91(
図1には1つのみ示す)によって固定されている。ナックル9は、内輪11を回転可能に支持する固定部材の一例である。外輪12の一対の軌道面12b,12bは、内輪11の一対の軌道面11b,11bに対向して周方向延びるように、互いに平行に形成されている。外輪12における内輪11のフランジ部111側の端部には、内輪11との間にシール14が配置されている。
【0018】
ナックル9には、次に説明する回転検出装置1のセンサ部3を保持するための保持孔90が形成されている。保持孔90は、中心軸に直交する断面の形状が円形であり、ナックル9を回転軸線Oの径方向に貫通している。
【0019】
(回転検出装置1の説明)
図2はセンサ部の斜視図である。
図3(a)はセンサ部の側面図であり、
図3(b)はそのハウジングを断面で示した破断面図である。
図4(a)はセンサ部の上面図であり、
図4(b)はそのハウジングを断面で示した破断面図、
図4(c)は磁気センサと電線の上面図である。
【0020】
図1~4に示すように、回転検出装置1は、回転部材としての内輪11に取り付けられており、内輪11の回転軸(回転軸線O)を中心した周方向に沿って複数の磁極(不図示)が設けられている被検出部材としての磁気エンコーダ2と、内輪11の回転に伴って回転しない固定部材としてのナックル9に取り付けられており、磁気エンコーダ2と対向して配置されているセンサ部3と、を備えている。
【0021】
磁気エンコーダ2は、回転軸線Oに平行な方向の厚みを有する環状に形成されている。この磁気エンコーダ2は、内輪11の外周面11aに固定された支持部材112に支持され、内輪11と一体回転するように取り付けられている。また、磁気エンコーダ2は、センサ部3に対向して周方向に沿って交互に配列されたN磁極とS磁極とを有している。
【0022】
センサ部3は、ケーブル4の端部に設けられている。ケーブル4の端部にセンサ部3を設けたものが、本実施の形態に係るセンサ付きケーブル100である。本実施の形態では、磁気エンコーダ2とセンサ部3の先端部とが、回転軸線Oに平行な軸方向に対向している。
【0023】
本実施の形態に係る回転検出装置1では、センサ部3は、複数の磁気センサ30と、複数の磁気センサ30を一括して被覆している樹脂モールドからなるハウジング部31と、を有している。ここでは、センサ部3が2つの磁気センサ30を有している場合について説明する。
【0024】
ケーブル4は、複数の磁気センサ30に対応した複数対(ここでは2対)の電線41を有している。各電線41は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた撚線導体からなる中心導体41aと、中心導体41aの外周に被覆されており、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる絶縁体41bと、を有している。また、ケーブル4は、2対(4本)の電線41を一括して覆うシース42をさらに有している。
【0025】
ケーブル4の端部においては、シース42から2対の電線41が露出され、さらに電線41の端部において、絶縁体41bから中心導体41aが露出されている。絶縁体41bから露出された中心導体41aは、対応する磁気センサ30の接続端子301に、抵抗溶接により電気的に接続されている。
【0026】
磁気センサ30は、検出部300と、検出部300から延出された一対の接続端子301と、を有している。
【0027】
検出部300は、磁気エンコーダ2からの磁界を検出する磁気検出素子(不図示)と、磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路(不図示)と、磁気検出素子と信号処理回路とを一括して覆う覆い体としての樹脂モールド300aと、を有している。検出部300は、平面視で略長方形(長方形の4つの角部のうち1つが面取りされた形状)の板状に形成されている。磁気検出素子の検出軸(磁界の検出方向)は、
図4(a)における上下方向(回転軸線Oを中心とした円の接線方向)である。
【0028】
一対の接続端子301は、検出部300の一方の長辺(面取りされた角部に接続されていない側の長辺)から当該長辺と垂直な方向に延出されており、両接続端子301は互いに平行に形成されている。本実施の形態では、両接続端子301は帯状に形成されており、その先端部(検出部300と反対側の端部)には、対応する電線41の中心導体41aが電気的に接続されている。
【0029】
また、磁気エンコーダ2に近い側の一方の磁気センサ30(
図3(b)でいえば、下側の磁気センサ30)の一対の接続端子301は、中心導体41aの延出方向と同じ方向に平行に直線状に延びている。一方、磁気エンコーダ2から遠い側の他方の磁気センサ30(
図3(b)でいえば、上側の磁気センサ30)の一対の接続端子301は、クランク形状に折り曲げられて形成されている。詳しくは、他方の磁気センサ30の一対の接続端子301は、中心導体41aとの接続部から中心導体41aの延出方向と同じ方向に平行に延びる部分を有するとともに、当該部分から折れ曲がって一方の磁気センサ30方向(
図3(b)でいえば、左斜め下方向)に延びる部分を有し、さらに、当該部分から折れ曲がって中心導体41aの延出方向と同じ方向に平行に延びる部分を有する。
【0030】
図示していないが、両接続端子301の間には、ノイズを抑制するための容量素子が接続されており、その容量素子と容量素子と接続されている部分の接続端子301とを覆うように、樹脂モールドにより形成された容量素子保護部302が設けられている。他方の磁気センサ30に設けられている容量素子保護部302は、一方の磁気センサ30の一対の接続端子301と、他方の磁気センサ30の一対の接続端子301との間に、直線状の一対の接続端子301とクランク形状の一対の接続端子301との間にできるスペースを有効利用しながら配置されている。
【0031】
本実施の形態に係る回転検出装置1では、複数(ここでは2つ)の磁気センサ30の各検出部300は、センサ部3と磁気エンコーダ2との対向方向に積層されている。また、各検出部30は、ケーブル4がハウジング部31から導出される導出方向に対して交差する方向(本実施の形態では、直交する方向)に積層されている。また、本実施の形態では、磁気エンコーダ2から最も離れて配置されている磁気センサ30は、磁気エンコーダ2に最も近接して配置されている磁気センサ30よりも感度が高い。なお、ケーブル4を屈曲し当該ケーブル4の屈曲部ごと樹脂モールドしてL字型のハウジング部30を形成する場合には、各検出部30は、ケーブル4がハウジング部31から導出される導出方向と同方向に積層される。
【0032】
両磁気センサ30の検出部300は、その厚さ方向に積層されている。つまり、本実施の形態では、センサ部3と磁気エンコーダ2との対向方向と、検出部300の厚さ方向(積層方向)とが一致している。なお、センサ部3と磁気エンコーダ2との対向方向と、検出部300の厚さ方向(積層方向)とは厳密に一致している必要はなく、多少ずれていてもよい。つまり、「各検出部300は、センサ部3と磁気エンコーダ2との対向方向に積層されており」とは、センサ部3と磁気エンコーダ2との対向方向と、検出部300の積層方向とが数度(例えば±10°程度)ずれている場合も含まれる。
【0033】
本実施の形態では、磁気エンコーダ2とセンサ部3の先端部とが回転軸線Oに平行な軸方向に対向しているため、検出部300の厚さ方向(積層方向)が、軸方向と一致している。なお、これに限らず、例えば、磁気エンコーダ2とセンサ部3の先端部とを回転軸線Oに垂直な径方向に対向させている場合には、検出部300の厚さ方向(積層方向)を、径方向に一致させるとよい。
【0034】
また、本実施の形態では、両検出部300が直接積層されている。つまり、一方の検出部300の表面と、他方の検出部300の表面とが接触している。これにより、両検出部300を離間して配置した場合と比較して小型化が可能になると共に、両検出部300における磁気検出素子間の距離を一定に維持し易くなり、また磁気エンコーダ2からより離れて配置される磁気センサ30の磁気エンコーダ2までの距離を最小として検出精度を向上することができる。なお、本実施の形態では、両検出部300は接着剤等によって接着固定されておらず、両検出部300は積層された状態でハウジング部31に保持されている。
【0035】
また、両検出部300は、両磁気検出素子の少なくとも一部が、センサ部3と磁気エンコーダ2との対向方向(軸方向)に重なり合うように積層されていることが望ましい。
【0036】
複数の磁気センサ30を用いることで、1つの磁気センサ30が故障しても他の磁気センサ30を用いて検出を続行することが可能になり、回転検出装置1の信頼性が向上する。
【0037】
また、検出部300を積層(厚さ方向に積層)することにより、例えばセンサ部3を厚さ方向と垂直な幅方向に並べて配置した場合と比較して、複数の磁気センサ30をコンパクトに配置することが可能になり、複数の磁気センサ30を用いた場合であっても、センサ部3全体を小型に維持することが可能になる。
【0038】
検出部300の厚さは例えば1mm程度であるが、何らかの理由で両磁気センサ30の検出部300同士を離間して配置した場合や、センサ部3と磁気エンコーダ2間の距離(ギャップ)が比較的大きい場合には、磁気エンコーダ2から離れた位置に配置される磁気センサ30で検出される磁界の強度が小さくなり、検出精度が低下してしまうことも考えられる。
【0039】
そこで、本実施の形態では、磁気エンコーダ2から最も離れて配置されている磁気センサ30の感度を、磁気エンコーダ2に最も近接して配置されている磁気センサ30の感度よりも高くしている。本実施の形態にように2つの磁気センサ30を用いる場合、磁気エンコーダ2と反対側に配置された磁気センサ30としては、磁気エンコーダ2側に配置された磁気センサ30よりも感度が高いものが用いられることになる。
【0040】
なお、ここでいう「感度が高い」とは、より小さい磁界の強度を検出可能であることを意味している。つまり、「感度が高い」とは、検出可能な磁界の強度の最小値がより小さいことを意味している。
【0041】
本実施の形態では、磁気エンコーダ2側に配置された磁気センサ30としてホールICを用い、磁気エンコーダ2と反対側に配置された磁気センサ30として、ホールICよりも感度が高いGMR(Giant Magneto Resistive effect)センサを用いた。なお、磁気エンコーダ2側に配置された磁気センサ30としてホールICを用いる場合、磁気エンコーダ2と反対側に配置された磁気センサ30としては、AMR(Anisotropic Magneto Resistive)センサやTMR(Tunneling Magneto Resistive)センサを用いてもよい。
【0042】
また、例えば、内輪11の外輪12に対する回転速度(車輪速)の検出結果を車体安定制御装置や間接式空気圧検出装置に使用する場合など、内輪11の外輪12に対する回転速度(車輪速)をより精度よく検出することが要求される場合には、磁気エンコーダ2側に配置された磁気センサ30としてGMRセンサまたはAMRセンサを用い、磁気エンコーダ2と反対側に配置された磁気センサ30として、GMRセンサやAMRセンサよりも感度が高いTMRセンサを用いてもよい。なお、例えば、磁気エンコーダ2側に配置された磁気センサ30としてGMRセンサを用い、磁気エンコーダ2と反対側に配置された磁気センサ30として、磁気エンコーダ2側に配置されたGMRセンサよりも感度が高いGMRセンサを用いる、といったように、感度の異なる同じ種類の磁気センサ30を用いることも可能である。なお、間接式空気圧検出装置とは、車両の4つの車輪の回転数(車輪速)を比較することで任意の車輪でのパンクの発生等を検出するものである。
【0043】
なお、3つ以上の磁気センサ30を用いる場合、磁気エンコーダ2から離れるほど感度が高くなるようにするとよい。より詳細には、最も磁気エンコーダ2側に配置される磁気センサ30以外の磁気センサ30は、その感度が、当該磁気センサ30よりも磁気エンコーダ2側に配置されている磁気センサ30の感度以上であるとよい。つまり、例えば、4つの磁気センサ30を用いる場合、磁気エンコーダ2により近接して配置されている2つの磁気センサ30として同じ感度のホールICを用い、より磁気エンコーダ2と離れて配置されている2つ磁気センサ30として同じ感度のGMRセンサを用いる、といったことも可能である。
【0044】
ハウジング部31は、磁気センサ30とケーブル4の端部とを一括して覆う略円柱状の本体部310と、センサ部3をナックル9に固定するためのフランジ部311と、を一体に形成してなる。フランジ部311には、センサ部3をナックル9に固定するボルト92(
図1参照)を通すためのボルト穴312が形成されており、ボルト穴312には、当該ボルト穴312の内周面に沿うように、ボルト固定の際にフランジ部311の変形を抑制するための金属からなるカラー313が設けられている。
【0045】
ハウジング部31の本体部310の先端部(ケーブル4の延出側と反対側の端部)には、磁気エンコーダ2と対向する対向面314が形成されている。センサ部3は、この対向面314を磁気エンコーダ2と対向させた状態(回転軸線Oに平行な軸方向に対向させた状態)で、ナックル9に固定されている。
【0046】
ハウジング部31としては、例えばPA(ポリアミド)612や、ナイロン66(ナイロンは登録商標)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等からなるものを用いることができる。本実施の形態では、ハウジング部31に用いる樹脂として、PA612にガラスフィラーを混入させたものを用いた。
【0047】
(センサ付きケーブル100の変形例)
上記実施の形態では、ケーブル4が、2対の電線41をシース42で一括して覆ったものであったが、これに限らず、ケーブル4は、センサ部3用の電線41以外の電線を含むものであってもよい。
【0048】
図5(a),(b)に示すセンサ付きケーブル100aでは、ケーブル4aは、1対の電線41を撚り合わせてなる2つの対撚線43と、電線41よりも外径及び導体断面積が大きい一対の電源線7と、両対撚線43と電源線7とが撚り合わされてなる集合体44の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材45と、テープ部材45の外周に被覆されているシース42と、を備えている。
【0049】
両対撚線43の一端部には、センサ部3が設けられている。両対撚線43の他端部には、車両の車体に設けられた中継ボックス内における電線群との接続のための車体側センサ用コネクタ75が取り付けられている。
【0050】
本実施の形態では、電源線7は、車両の車輪に搭載された電動パーキングブレーキ(以下、EPB)用の電気モータ(不図示)に駆動電流を供給するための電源線からなる。
【0051】
EPBとは、車両の停止時に、パーキングブレーキ作動スイッチがオフ状態からオン状態に操作されたとき、所定時間(例えば1秒間)にわたって電気モータに駆動電流を出力することにより、電気モータによりブレーキパッドを車輪のディスクロータに押し付けた状態とし、車輪に制動力を発生させる電動式の制動装置である。また、EPBでは、パーキングブレーキ作動スイッチがオン状態からオフ状態に操作されたとき、あるいは、アクセルペダルが踏込操作されたときに、電気モータに駆動電流を出力し、ブレーキパッドを車輪のディスクロータから離間させて、車輪への制動力を解除するように構成されている。つまり、EPBの作動状態は、パーキングブレーキ作動スイッチがオンされてから、パーキングブレーキ作動スイッチがオフされるかアクセルペダルが踏み込まれるまで維持される。
【0052】
電源線7は、電源線用中心導体71と、電源線用中心導体71の外周に被覆されている電源線用絶縁体72と、を有している。電源線用中心導体71は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた撚線導体からなり、電源線用絶縁体72は、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる。
【0053】
一対の電源線7の一端部には、EPB用の電気モータとの接続のための車輪側電源コネクタ73aが取り付けられ、1対の電源線7の他端部には、中継ボックス内における電線群との接続のための車体側電源コネクタ73bが取り付けられている。
【0054】
集合体44は、両対撚線43と、1対の電源線7とを撚り合わせて構成される。本実施の形態では、周方向において両対撚線43の間に電源線7が配置されている。
図7(b)の断面においては、時計回り方向に、一方の対撚線43、一方の電源線7、他方の対撚線43、他方の電源線7が順次配置されている。
【0055】
なお、電源線7を周方向に隣り合うように配置した場合(両対撚線43を隣り合うように配置した場合)には、集合体44の重心が集合体44の中心位置から大きくずれてしまい、この状態で両対撚線43と電源線7とを撚り合わせて集合体44を構成すると、集合体44が全体的に捩れた状態となってしまう。そのため、直線状のケーブル4aを作製することが困難となり、また長手方向の一部において曲げにくい方向が発生するなどして、可撓性が低下してしまう問題も生じる。本実施の形態のように、周方向において対撚線43と電源線7が交互に配置される構成とすることで、直線状のケーブル4aを容易に実現可能となり、かつ、長手方向の一部において曲げにくい方向が発生するといった不具合を抑制して、可撓性の低下を抑制できる。
【0056】
なお、EPBでは、基本的に車両の停止時に電気モータに駆動電流を供給する。これに対して、回転検出装置1は車両の走行時に使用されるものであり、電源線7に駆動電流が供給されているときに回転検出装置1が使用されることはない。そこで、本実施の形態では、電源線7や対撚線43の周囲に設けられるシールド導体を省略している。シールド導体を省略することで、シールド導体を設けた場合と比較してケーブル4aの外径を小さくすることができ、また部品点数を削減してコストを抑制することも可能になる。
【0057】
また、本実施の形態では、主に車両の停車後に電気モータへ駆動電流を供給する一対の電源線7により、車両の走行時に電気信号を伝送する両対撚線43を離間させている。これにより、対撚線43の周囲に設けられるシールド導体を省略したとしても、両対撚線43間のクロストークを低減することが可能となる。
【0058】
両対撚線43と電源線7とテープ部材45との間には、ケーブル4aの長手方向に延びる糸状(繊維状)の複数の介在が配置されていてもよい。この場合、この介在と両対撚線43と電源線7とを共に撚り合わせることにより、集合体44を構成するとよい。これにより、集合体44の外周にテープ部材45を巻き付けた際の断面形状をより円形状に近づけることができる。介在としては、ポリプロピレンヤーンや、スフ糸(レーヨンステープルファイバー)、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいは繊維系プラスチック等の繊維状体や、紙もしくは綿糸を用いることができる。
【0059】
集合体44の周囲には、テープ部材45が螺旋状に巻き付けられており、テープ部材45は、テープ部材45が覆う全ての電線(4本の電線41及び1対の電源線7)に接触している。テープ部材45は、集合体44とシース42との間に介在し、屈曲時に集合体44(電線41及び電源線7)とシース42間の摩擦を低減する役割を果たす。すなわち、テープ部材45を設けることで、タルク粉体等の潤滑剤を用いることなく、電線41や電源線7とシース42間の摩擦を低減し、屈曲時に電線41や電源線7にかかるストレスを低減して、耐屈曲性を向上させることが可能になる。
【0060】
テープ部材45としては、電線41の絶縁体41bや、電源線7の電源線用絶縁体72に対して、滑りやすいもの(摩擦係数が小さいもの)を用いることが望ましく、例えば、不織布や紙、あるいは樹脂(樹脂フィルム等)からなるものを用いることができる。テープ部材45は、その幅方向(テープ部材45の長手方向及び厚さ方向と垂直な方向)の一部が重なり合うように、螺旋状に集合体44に巻き付けられている。なお、テープ部材45が重なり合う部分は、接着剤等により接着されていない。
【0061】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る回転検出装置1では、センサ部3は、磁気エンコーダ2からの磁界を検出する磁気検出素子、磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路、及び磁気検出素子と信号処理回路とを一括して覆う樹脂モールド300aを有する板状の検出部300を有している複数の磁気センサ30を備え、各検出部300は、センサ部3と磁気エンコーダ2との対向方向に積層されている。
【0062】
これにより、冗長化あるいは検出精度の向上のために複数の磁気センサ30を用いた場合であってもセンサ部3を小型にすることができ、かつ、例えばセンサ部3と磁気エンコーダ2間の隙間が大きい場合や検出部300の積層間隔が大きい場合であっても、複数の磁気センサ30を用いた検出が可能になる。
【0063】
また、本実施の形態では、磁気エンコーダ2から最も離れて配置されている磁気センサ30は、磁気エンコーダ2に最も近接して配置されている磁気センサ30よりも感度が高い。例えば、磁気センサ30を2つ用いる場合において、両方の磁気センサ30として十分に感度が高いものを用いることも考えられる。しかし、感度が高い磁気センサ30は高価であるため、回転検出装置1のコストが増大してしまう。本実施の形態によれば、コストを抑制しつつも、複数の磁気センサ30を用いた信頼性の高い回転検出装置1を実現可能である。
【0064】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0065】
[1]回転部材(11)に取り付けられており、前記回転部材(11)の回転軸を中心した周方向に沿って複数の磁極が設けられている被検出部材(2)と、前記回転部材(11)の回転に伴って回転しない固定部材(9)に取り付けられており、前記被検出部材(2)と対向して配置されているセンサ部(3)と、を備え、前記センサ部(3)は、前記被検出部材(2)からの磁界を検出する磁気検出素子、前記磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路、及び前記磁気検出素子と前記信号処理回路とを一括して覆う覆い体(300a)を有する板状の検出部(300)を有している複数の磁気センサ(30)を備え、前記各検出部(300)は、前記センサ部(3)と前記被検出部材(2)との対向方向に積層されている、回転検出装置(1)。
【0066】
[2]前記被検出部材(2)から最も離れて配置されている前記磁気センサ(30)は、前記被検出部材(2)に最も近接して配置されている前記磁気センサ(30)よりも感度が高い、[1]に記載の回転検出装置(1)。
【0067】
[3]前記センサ部(3)は、2つの前記磁気センサ(30)を有し、前記被検出部材(2)側に配置された前記磁気センサ(30)が、ホールICからなり、前記被検出部材(2)と反対側に配置された前記磁気センサ(30)が、GMRセンサ、AMRセンサ、またはTMRセンサからなる、[2]に記載の回転検出装置(1)。
【0068】
[4]前記センサ部(3)は、2つの前記磁気センサ(30)を有し、前記被検出部材(2)側に配置された前記磁気センサ(30)が、GMRセンサまたはAMRセンサからなり、前記被検出部材(2)と反対側に配置された前記磁気センサ(30)が、TMRセンサからなる、[2]に記載の回転検出装置(1)。
【0069】
[5]回転部材(11)に取り付けられており、前記回転部材(11)の回転軸を中心した周方向に沿って複数の磁極が設けられている被検出部材(2)と、前記回転部材(11)の回転に伴って回転しない固定部材(9)に取り付けられており、前記被検出部材(2)と対向して配置されているセンサ部(3)と、を備えた回転検出装置(1)に用いられるセンサ付きケーブル(100)であって、ケーブル(4)と、前記ケーブル(4)の端部に設けられた前記センサ部(3)と、を有し、前記センサ部(3)は、前記被検出部材(2)からの磁界を検出する磁気検出素子、前記磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路、及び前記磁気検出素子と前記信号処理回路とを一括して覆う覆い体(300a)を有する板状の検出部(300)を有している複数の磁気センサ(30)を備え、前記各検出部(300)は、前記センサ部(3)と前記被検出部材(2)との対向方向に積層されている、センサ付きケーブル(100)。
【0070】
[6]前記被検出部材(2)から最も離れて配置されている前記磁気センサ(30)は、前記被検出部材(2)に最も近接して配置されている前記磁気センサ(30)よりも感度が高い、[5]に記載のセンサ付きケーブル(100)。
【0071】
[7]前記回転検出装置(1)は、車両の車輪と共に回転する前記回転部材(11)の回転速度を検出するものであり、前記ケーブル(4)は、前記複数の磁気センサ(30)に対応した複数対の電線(41)と、前記車輪に搭載された前記電動パーキングブレーキ用の電気モータに駆動電流を供給するための電源線(7)と、前記複数対の電線(41)と前記電源線(7)とを一括して被覆しているシース(42)と、を備える、[5]または[6]に記載のセンサ付きケーブル(100a)。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0073】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0074】
例えば、上記実施の形態では、回転検出装置1が車輪速を検出するものである場合を説明したが、これに限らず、例えば、ドライブシャフトセンサやクランク角センサ等にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…回転検出装置
2…磁気エンコーダ(被検出部材)
3…センサ部
30…磁気センサ
300…検出部
300a…樹脂モールド(覆い体)
301…接続端子
31…ハウジング部
4…ケーブル
9…ナックル(固定部材)
10…車輪軸受装置
11…内輪(回転部材)
12…外輪
13…転動体
100…センサ付きケーブル