IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特開2022-190023繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグおよび成形体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190023
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグおよび成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
C08J5/24 CEZ
C08J5/24 CFG
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175515
(22)【出願日】2022-11-01
(62)【分割の表示】P 2020503559の分割
【原出願日】2019-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2018032768
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】林 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】石川 健
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 一也
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 真保
(57)【要約】
【課題】強化繊維とマトリックス樹脂との高い界面接着性を有し、耐層間破壊に優れた繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを提供する。
【解決手段】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグは、ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含むマトリックス樹脂と、炭素繊維とを含み、前記マトリックス樹脂中の前記ポリエーテルイミド樹脂が、下記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂を含み、前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリエーテルイミド樹脂の含有割合が3~25質量%であり、前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリアリールケトン樹脂の含有割合が75質量%以上である。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含むマトリックス樹脂と、
炭素繊維とを含み、
前記マトリックス樹脂中の前記ポリエーテルイミド樹脂が、下記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂を含み、
前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリエーテルイミド樹脂の含有割合が3~25質量%であり、前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリアリールケトン樹脂の含有割合が75質量%以上である、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【化1】
【請求項2】
前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリエーテルイミド樹脂の含有割合が3~15質量%であり、前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリアリールケトン樹脂の含有割合が85質量%以上である、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【請求項3】
前記炭素繊維が連続した炭素繊維である、請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【請求項4】
前記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂のISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:360℃、荷重:5kg)が15~30cm/10分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【請求項5】
前記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂のISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:360℃、荷重:5kg)が1~10cm/10分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【請求項6】
前記マトリックス樹脂中のポリエーテルイミド樹脂として、前記式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【請求項7】
前記式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位が下記式(3)で表される構造単位である、請求項6に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【化2】
【請求項8】
前記マトリックス樹脂中の前記ポリアリールケトン樹脂として、下記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【化3】
【請求項9】
前記マトリックス樹脂中の前記ポリアリールケトン樹脂のISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が1~80cm/10分である請求項1~8のいずれか一項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【請求項10】
前記マトリックス樹脂中の前記ポリアリールケトン樹脂として、粘度が異なる2種以上のポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【請求項11】
前記マトリックス樹脂中の前記ポリアリールケトン樹脂として、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が1~80cm/10分である前記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂、およびISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が100~200cm/10分である前記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを成形してなる成形体。
【請求項13】
ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含むマトリックス樹脂と、
炭素繊維とを含み、
前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリエーテルイミド樹脂の含有割合が25質量%以下である、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグおよび成形体に関する。
本願は、2018年2月27日に日本に出願された特願2018-032768号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂に代表されるポリアリールケトン樹脂は、耐熱性、難燃性、耐加水分解性、耐薬品性などに優れているため、航空機部品、電気電子部品を中心に多く採用されている。しかしながら、ポリアリールケトン樹脂は原料が非常に高価な上、樹脂自体のガラス転移温度が約140~170℃程度と比較的低いことから、耐熱性の改良検討が種々行われてきた。その中でも良好な相溶性を示す系として、ポリエーテルイミド樹脂とのブレンドが注目されてきた。
【0003】
特許文献1や特許文献2ではポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂との混合組成物が開示されているが、主に耐薬品性の効果について議論されている。
特許文献3ではポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とのブレンド樹脂と繊維状充填材と非繊維状充填材の組み合わせにより耐磨耗性の向上が報告されている。
特許文献4ではポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂との連続繊維から成る炭素繊維複合材料について報告されている。しかし、マトリックス樹脂中のポリエーテルイミドの含有割合が30質量%以上の場合、耐熱性は向上するものの、機械特性が低下することが報告されている。
本発明者らも特許文献5~7において耐熱性樹脂の処方やそのフィルム、積層板を提案しているが、マトリックス樹脂中のポリエーテルイミドの含有割合は30質量%以上であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59-187054号公報
【特許文献2】特表昭61-500023号公報
【特許文献3】国際公開第2015/059216号
【特許文献4】特開昭63-80411号公報
【特許文献5】特許3714876号公報
【特許文献6】特許4094211号公報
【特許文献7】特許4201965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの特許文献中での無機充填物は、射出成形体として使用される数mm以下の短い強化繊維であり、プリプレグ用で使用される繊維長数mm以上の強化繊維とマトリックス樹脂の界面接着性については議論されていなかった。また、マトリックス樹脂中のポリエーテルイミド樹脂の含有割合は30質量%以上であった。連続繊維から構成される複合材料の場合は、マトリックス樹脂中のポリエーテルイミド樹脂の含有割合を30質量%以上とすることで、耐熱性は向上するものの、機械特性は低下する報告しかなされていなかった。
【0006】
強化繊維とポリアリールケトン樹脂との界面接着性はエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と比較すると十分ではなかった。それゆえ、衝撃や繰り返し荷重によって発生する繊維強化熱可塑性樹脂成形体の層間破壊を抑制するには、従来の強化繊維とポリアリールケトン樹脂の界面接着性より、高い界面接着性が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアリールケトン樹脂にポリエーテルイミド樹脂を特定の含有割合で混合することにより当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の要旨は、以下に存する。
【0008】
[1]ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含むマトリックス樹脂と、
炭素繊維とを含み、
前記マトリックス樹脂中の前記ポリエーテルイミド樹脂が、下記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂を含み、
前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリエーテルイミド樹脂の含有割合が3~25質量%であり、前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリアリールケトン樹脂の含有割合が75質量%以上である、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【0009】
【化1】
【0010】
[2]前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリエーテルイミド樹脂の含有割合が3~15質量%であり、前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリアリールケトン樹脂の含有割合が85質量%以上である、[1]に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
[3]前記炭素繊維が連続した炭素繊維である、[1]または[2]に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
[4]前記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂のISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:360℃、荷重:5kg)が15~30cm/10分である、[1]~[3]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
[5]前記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂のISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:360℃、荷重:5kg)が1~10cm/10分である、[1]~[3]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
[6]前記マトリックス樹脂中のポリエーテルイミド樹脂として、前記式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
[7]前記式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位が下記式(3)で表される構造単位である、[6]に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【0011】
【化2】
【0012】
[8]前記マトリックス樹脂中の前記ポリアリールケトン樹脂として、下記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【0013】
【化3】
【0014】
[9]前記マトリックス樹脂中の前記ポリアリールケトン樹脂のISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が1~80cm/10分である[1]~[8]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
[10]前記マトリックス樹脂中の前記ポリアリールケトン樹脂として、粘度が異なる2種以上のポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
[11]前記マトリックス樹脂中の前記ポリアリールケトン樹脂として、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が1~80cm/10分である前記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂、およびISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が100~200cm/10分である前記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
[12][1]~[11]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを成形してなる成形体。
[13]ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含むマトリックス樹脂と、
炭素繊維とを含み、
前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリエーテルイミド樹脂の含有割合が25質量%以下である、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
【発明の効果】
【0015】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグは、強化繊維とマトリックス樹脂との高い界面接着性を有し、耐衝撃特性、特に耐層間破壊に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ)
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグは、マトリックス樹脂と炭素繊維とを含み、マトリックス樹脂は、ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含む。
【0017】
(炭素繊維)
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグに含まれる炭素繊維の形態は、繊維を一方向に引き揃えた繊維形態や平織、綾織、朱子織などの繊維形態が適している。特に好ましくは繊維を一方向に引き揃えた繊維形態である。
また、成形時の残留応力の観点から、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの厚さは0.04~0.7mmであることが好ましく、より好ましくは0.07~0.4mmである。
【0018】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ中における炭素繊維の体積含有率(Vf)は、高い弾性率または強度の観点から20~70%であることが好ましく、40~60%であることがより好ましい。
【0019】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグは、炭素繊維以外の強化繊維を含んでいてもよい。
強化繊維としては、無機繊維、金属繊維またはそれらの混合からなる繊維を使用することができる。無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維などが挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が使用可能であり、また金属を被覆した炭素繊維等もある。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグに含まれる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系などが挙げられるが、何れの炭素繊維も使用することができる。特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維で、12,000~48,000フィラメントのストランドまたはトウが、工業的規模における生産性および機械的特性に優れており好ましい。
【0020】
特に、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグに含まれる炭素繊維としては、連続した炭素繊維が好ましい。
本明細書において、連続した炭素繊維とは、炭素繊維が一方向に並んだ形態や織物形態(例えば平織、綾織、朱子織)が挙げられる。
【0021】
(マトリックス樹脂)
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグは、ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含むマトリックス樹脂を含む。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ中におけるマトリックス樹脂の体積含有率(Vf)は、高い弾性率または強度の観点から30~80%であることが好ましく、40~60%であることがより好ましい。
【0022】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグに含まれるマトリックス樹脂において、ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂の混合割合は、ポリアリールケトン樹脂:ポリエーテルイミドが樹脂質量比で97:3~75:25であることが好ましく、90:10~80:20であることがより好ましく、97:3~85:15であることがさらに好ましい。
マトリックス樹脂におけるポリアリールケトン樹脂の混合割合が前記下限値以上であれば、耐溶剤性が低下しにくく、ポリアリールケトン樹脂の混合割合が前記上限値以下であれば、十分な炭素繊維との接着性を得やすい。
【0023】
(ポリアリールケトン樹脂)
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリアリールケトン樹脂は、その構造単位に芳香核結合、エーテル結合およびケトン結合を含む熱可塑性樹脂であり、その代表例としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等が挙げられるが、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグにおいては、式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトンが好適に使用される。
【0024】
【化4】
【0025】
このようなポリエーテルエーテルケトンとしては、市販のものを用いることができ、たとえば、ダイセルエボニック社製、商品名「ベスタキープ(登録商標。以下同様。)3300G」、「ベスタキープJ ZV7402」、「ベスタキープ1000G」等を挙げることができる。
【0026】
式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン(100質量%)に占める、式(2)で表される構造単位の割合は、70質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%が特に好ましい。
【0027】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグに含まれるマトリックス樹脂(100質量%)におけるポリアリールケトン樹脂の含有割合は、75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。
【0028】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリアリールケトン樹脂は結晶融解ピーク温度が260℃以上であることが耐熱性の点から好ましい。
結晶融解ピーク温度は示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0029】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリアリールケトン樹脂は、上記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン以外のポリアリールケトン樹脂を含んでいてもよい。
このようなポリアリールケトン樹脂としては、ポリエーテルケトンケトン樹脂が挙げられる。
たとえば、アルケマ社製、「Kepstan(登録商標)7002」等を挙げることができる。
【0030】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリアリールケトン樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリアリールケトン樹脂としては、粘度が異なる2種以上のポリエーテルエーテルケトン樹脂を含むことが好ましい。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリアリールケトン樹脂として、粘度が異なる2種以上のポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む場合、粘度が異なる2種のポリエーテルエーテルケトン樹脂の含有割合は、質量比(粘度の高い樹脂:粘度の低い樹脂)で90:10~10:90であることが好ましく、70:30~20:80がより好ましい。特に、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリアリールケトン樹脂としては、粘度が異なる2種以上の、上記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を含むことが好ましい。
【0032】
ポリアリールケトン樹脂の粘度としては、ある態様としては、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が1~80cm/10分であることが好ましく、別の態様としては、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が100~200cm/10分であることが好ましい。
また、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が1~80cm/10分であるポリエーテルエーテルケトン樹脂と、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が100~200cm/10分であるポリエーテルエーテルケトン樹脂とを併用することが好ましく、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が1~80cm/10分である、上記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が100~200cm/10分である、上記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂とを併用することが好ましい。
【0033】
(ポリエーテルイミド樹脂)
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリエーテルイミド樹脂としては、特に限定はなく、下記式(3)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂(たとえば、サビック社製、商品名「Ultem(登録商標。以下同様。) 1000」、「Ultem 1010」)や、下記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂(たとえば、サビック社製、商品名「Ultem CRS5011」、「Ultem CRS5001」)の市販のポリエーテルイミド樹脂を用いることができる。一つの態様として、高い耐熱性の観点から、下記式(3)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂を用いることが好ましく、別の態様として、高い結晶性の観点から、下記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂を用いることが好ましい。繊維直角方向の強度の観点では、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグに含まれるマトリックス樹脂(100質量%)におけるポリエーテルイミド樹脂の含有割合が25質量%以下であることが好ましい。層間破壊靭性の観点では、前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂の含有割合が3~25質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましい。
【0034】
また、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリエーテルイミド樹脂としては、下記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂と、下記式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂を併用することが好ましい。
下記式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂としては、下記式(3)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂が好ましい。
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂(100質量%)に占める、式(1)で表される構造単位の割合は、50質量%~100質量%が好ましく、70質量%~100質量%がより好ましく、95質量%~100質量%が特に好ましい。
式(3)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂(100質量%)に占める、式(3)で表される構造単位の割合は、10質量%~100質量%が好ましく、30質量%~100質量%がより好ましく、50質量%~100質量%が特に好ましい。
【0038】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリエーテルイミド樹脂として、式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂と、式(3)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂とを併用する場合、式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂と式(3)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂の混合割合は、式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂:式(3)で表される構造単位を有するポリエーテルイミドが樹脂質量比で20:80~100:0であることが好ましく、40:60~100:0がより好ましく、50:50~100:0がさらに好ましい。
【0039】
ポリエーテルイミド樹脂の粘度としては、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:360℃、荷重:5kg)が、1~30cm/10分であることが好ましい。
式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂の粘度としては、プリプレグ製造の観点からは、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:360℃、荷重:5kg)が、15~30cm/10分が好ましい。また、式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂の粘度としては、機械特性の観点からは、1~10cm/10分が好ましい。
式(3)で表される構造単位を有するm-ポリエーテルイミド樹脂の粘度としては、プリプレグ製造の観点から、ISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:360℃、荷重:5kg)が、10~30cm/10分がより好ましく、20~30cm/10分がより好ましい。
【0040】
(その他の添加剤)
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂は、その性質を損なわない程度に、ポリアリールケトン樹脂およびポリエーテルイミド樹脂以外の樹脂や、炭素繊維以外の各種添加剤を含んでいてもよい。
炭素繊維以外の各種添加剤としては、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、滑剤、難燃剤等を挙げることができ、各種添加剤は、公知の方法を用いてマトリックス樹脂中に混合することができる。
【0041】
(繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの製造方法)
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグは、ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含むマトリックス樹脂を、10~100μm厚さのフィルム状、もしくは繊維径が5~50μmの繊維状、もしくは平均粒径が10~100μmパウダー状に加工して強化繊維に付着させた後、強化繊維間の空気を除去しながらマトリックス樹脂を加熱溶融する方法や、その他の公知方法により製造できる。
【0042】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグのマトリックス樹脂に含まれるポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂の粘度は、樹脂の加工形態やプリプレグの製造方法、求める物性によって適切に選択することができる。
一般的に熱可塑性樹脂の平均分子量が低く相対的に粘度が低い場合、具体的にはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂であればISO1133に準じて測定したメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が10cm/10分以上である樹脂であれば、プリプレグが製造しやすい。
一方で平均分子量が高く相対的に粘度が高い場合、具体的にはPEEK樹脂であればISO1133に準じて測定したMVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が150cm/10分以下である樹脂であれば、繊維強化熱可塑性樹脂成形品の特性が優れる。
【0043】
本発明により得られた繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグは、様々な繊維強化熱可塑性樹脂成形品を製造するため、用途に応じて様々な角度に積層した材料として用いることができ、例えば一方向性材料、直交積層、擬似等方積層材料が挙げられる。また、成形性を向上させるため、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグに切込み加工を施した切込みプリプレグとしたり、長方形もしくは平行四辺形のチョップドストランドとし、チョップドストランドを等方的もしくは異方的にランダムに分散させたランダムシートとしたりすることができる。
【0044】
(成形体)
本発明の成形体は、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを成形してなる成形体である。したがって、本発明の成形体は、マトリックス樹脂と炭素繊維とを含み、マトリックス樹脂は、ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含む。
【0045】
(繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの成形方法)
本発明の成形品を得るための、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの成形方法は、特に限定されるものではなく、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを一枚または複数枚積層し、金型プレス法、オートクレーブ法、熱間・冷間プレス法、ロボットを活用した自動積層法等の公知の成形方法で成形することができる。
【実施例0046】
以下、実施例により本発明を詳述するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0047】
[実施例1]
(プリプレグ作製)
上記式(2)の構造単位を有するポリアリールケトン樹脂であるPEEK樹脂1(ダイセルエボニック社製、商品名「ベスタキープ(登録商標)3300G」、MVR:20cm/10分;設定温度:380℃、荷重:5kg)と、上記式(1)の構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂であるp-PEI樹脂1(サビック社製、商品名「Ultem(登録商標)CRS5011」、MVR:20cm/10;設定温度:360℃、荷重:5kg)を90対10の質量比となるように混合し、Tダイを備えた押出機を用いて、厚さ25μmのフィルムを得た。
炭素繊維(三菱ケミカル社製、商品名「MR50R」、570tex、12,000本のストランド)を使用し、連続した炭素繊維を一方向に配向した炭素繊維目付190g/mの炭素繊維シート状物の両面に上記で作成したフィルムを重ね、フィルムを炭素繊維シート状物に加熱溶融含浸させ繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを作製した。得られた繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの厚さは0.18~0.19mmであった。繊維体積分率は58%であった。
【0048】
(成形板の作製)
得られた繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを所定の大きさにカットした後、各試験に応じた積層体を鋼材製の金型の中へ配置した。その積層体を含む金型を加熱冷却二段プレス(神藤金属工業所製、50トンプレス)にて380℃、5MPaの成形条件で30分間圧縮後、数分で200℃まで降温し、空隙や欠陥等が極めて少ない繊維強化熱可塑性樹脂成形板を得た。
【0049】
(90°曲げ試験)
前記繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを積層し、繊維が一方向に並ぶ約2mm厚さの成形板を得た。ASTM D790に準拠した試験方法によって繊維直角方向(90°)曲げ試験を施し、90°曲げ強度(FS90)を測定した。
【0050】
(層間破壊靭性試験)
前記繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを積層し、繊維が一方向に並び、厚さ中央部分に約10μm厚さのポリイミドフィルムを部分的に挿入した約3mm厚さの成形板を得た。ASTM D5528に準拠した試験方法によって、モードI層間破壊靭性値(GIC)を測定した。前記成形板からBMS8-276に準拠した試験方法によってモードII層間破壊靭性値(GIIC)を測定した。
IC及びGIICはそれぞれ1.0kJ/m以上が耐層間破壊に優れた材料として好ましい。
【0051】
(衝撃後残留圧縮試験)
前記繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを疑似等方積層[+45°/0°/-45°/90°]3Sに積層し、得られた繊維強化熱可塑性樹脂成形板を、計装化落錘式衝撃試験機を用いて、SACMA SRM 2Rに準拠した衝撃エネルギー6.7J/mmの衝撃条件での試験を施した。衝撃試験後の圧縮強度(CAI強度)を測定した。
前記衝撃エネルギーを与えた場合のCAI強度は300MPa以上が好ましい。
実施例1のCAI強度は300MPa以上であった。
【0052】
表1に樹脂組成、FS90、GIC、GIICの一覧を示す。
【0053】
[比較例1]
前記PEEK樹脂1から作製した厚さ15μmのフィルムから炭素繊維目付75g/mの繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得、繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製した。
CAIの場合の積層構成は[+45°/+45°/0°/0°/-45°/-45°/90°/90°]4Sであり、CAI強度は300MPa以上であった。
また、ASTM D7028記載の耐熱性を示すガラス転移温度(DMA-Tg)は145℃であった。140℃以上で扱う用途としては耐熱性が不足となる可能性がある。
【0054】
[実施例2]
前記PEEK樹脂1と前記p-PEI樹脂1の質量比を80対20となるように混合し、比較例1と同様の方法で繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得、繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製した。
CAI強度は300MPa以上であった。
IC、GIIC共に1.0kJ/mよりも高い値を示した。
【0055】
[実施例3]
前記PEEK樹脂1と、前記式(1)の構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂であるp-PEI樹脂2(サビック社製、商品名「Ultem(登録商標)CRS5001」、MVR:7cm/10分;設定温度:360℃、荷重:5kg)の質量比を80対20となるように混合し、実施例1と同様の方法で繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得、繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製した。
CAI強度は300MPa以上であった。
IC、GIIC共に1.0kJ/mよりも高く、FS90及びGICは、比較例1よりも高い値を示した。
【0056】
[実施例4]
前記PEEK樹脂1と、前記p-PEI樹脂1と、前記式(3)の構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂であるm-PEI樹脂1(サビック社製、商品名「Ultem(登録商標)1010」、MVR:25cm/10分;設定温度:360℃、荷重:5kg)の質量比を90対5対5となるように混合し、実施例1と同様の方法で繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得、繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製した。
CAI強度は300MPa以上であった。
IC、GIIC、FS90は、比較例1よりも高い値を示した。
【0057】
[比較例2]
前記PEEK樹脂1と前記p-PEI樹脂1の質量比を60対40となるように混合し、比較例1と同様の方法で繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得、繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製した。
CAI強度は300MPa以上であった。
IC、GIIC、FS90は、全て比較例1よりも低い値を示した。
【0058】
[比較例3]
前記PEEK樹脂1と、前記p-PEI樹脂1と、前記m-PEI樹脂1の質量比を60対20対20となるように混合し、比較例1と同様の方法で繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得、繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製した。
CAI強度は300MPa以上であった。
またFS90が低く、GICは1.0kJ/mよりも低い値を示した。
【0059】
[参考例1]
前記PEEK樹脂1と前記m-PEI樹脂1の質量比を90対10となるように混合し、実施例1と同様の方法で繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得、繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製した。
CAI強度は300MPa以上であったが、GICとGIICが共に1.0kJ/mよりも低い値を示した。
【0060】
[参考例2]
前記PEEK樹脂1と前記m-PEI樹脂1の質量比を80対20となるように混合し、実施例1と同様の方法で繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得、繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製した。
CAI強度は300MPa以上であったが、GICが1.0kJ/mよりも低い値を示した。
【0061】
[比較例4]
上記式(2)の構造単位を有するポリアリールケトン樹脂であるPEEK樹脂2(ダイセルエボニック社製、商品名「ベスタキープ(登録商標)J ZV7402」、MVR:65cm/10分;設定温度:380℃、荷重:5kg)と、PEEK樹脂3(ダイセルエボニック社製、商品名「ベスタキープ(登録商標)1000G」、MVR:150cm/10分;設定温度:380℃、荷重:5kg)の質量比を60対40に混合し、比較例1と同様の方法で繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得た。繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製し、前記特性を取得した。
【0062】
[実施例5]
前記PEEK樹脂2と前記PEEK樹脂3と前記p-PEI樹脂1の質量比を48対32対20(前記PEEK樹脂2と前記PEEK樹脂3の質量比は60対40)に混合し、比較例6と同様の方法で繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得、繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製した。
p-PEI樹脂1を含まない比較例6と比較して、FS90が高い値を示した。
【0063】
[実施例6]
前記PEEK樹脂2と前記PEEK樹脂3と前記p-PEI樹脂1と前記m-PEI樹脂1の質量比を54対36対5対5(前記PEEK樹脂2と前記PEEK樹脂3の質量比は60対40)に混合し、比較例6と同様の方法で繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを得、繊維強化熱可塑性樹脂成形板を作製した。
p-PEI樹脂1及びm-PEI樹脂1を含まない比較例6と比較して、FS90が高い値を示した。
【0064】
【表1】
【0065】
表1により、ポリアリールケトン樹脂にポリエーテルイミド樹脂をブレンドしたマトリックス樹脂は、繊維強化熱可塑性樹脂成形板の強度が低い部分である繊維直角方向の強度(具体的にはFS90)や層間破壊靭性値(具体的にはGIC及びGIIC)が向上した。これはポリエーテルイミド樹脂の添加により界面強度が向上したことを意味している。繊維強化熱可塑性樹脂成形板には、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの間に発生する層間破壊が少ないことが重要な要素である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、強化繊維とマトリックス樹脂との高い界面強度から、耐層間破壊に優れる成形品を得ることができる、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグを提供できる。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含むマトリックス樹脂と、
一方向に引き揃えた炭素繊維シートとを含み、
前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリエーテルイミド樹脂の含有割合が25質量%以下である、プリプレグ。
【請求項2】
記マトリックス樹脂中の前記ポリエーテルイミド樹脂が、下記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂を含む、請求項1に記載のプリプレグ。
【化1】
【請求項3】
前記マトリックス樹脂中の前記ポリエーテルイミド樹脂として、下記式(3)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂をさらに含む、請求項に記載のプリプレグ。
【化2】
【請求項4】
前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂の含有割合が3質量%以上である、請求項2又は3に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂と前記式(3)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂の混合割合が、式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂:式(3)で表される構造単位を有するポリエーテルイミドの樹脂質量比で20:80~100:0である、請求項3に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記式(1)で表される構造単位を有するポリエーテルイミド樹脂の含有割合が15質量%以下である、請求項2~5のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記マトリックス樹脂(100質量%)における前記ポリアリールケトン樹脂の含有割合が75質量%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項8】
前記マトリックス樹脂中の前記ポリアリールケトン樹脂として、下記式(2)で表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【化3】
【請求項9】
前記マトリックス樹脂中の前記ポリアリールケトン樹脂のISO1133に準じて測定されたメルトボリュームレート(MVR;設定温度:380℃、荷重:5kg)が1~80cm/10分である請求項1~8のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のプリプレグの製造方法であって、
ポリアリールケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを含むマトリックス樹脂の10~100μm厚さのフィルムを、一方向に引き揃えられた炭素繊維シートに付着させた後、前記フィルムを加熱溶融することを含むプリプレグの製造方法。