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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190087
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20221215BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221215BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20221215BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/06
C09J133/06
C09J11/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176459
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2021062787の分割
【原出願日】2011-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】島口 龍介
(57)【要約】
【課題】(1)低速度剥離領域及び高速度剥離領域においての粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生防止、(3)優れた帯電防止性能、及び(4)リワーク性能の全ての要求性能を、同時に満たすことが可能な表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーと、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーと、を共重合させたアクリル共重合体と、(D)3官能以上のイソシアネート化合物、(E)ケトエノール互変異性化合物の架橋遅延剤、(F)架橋触媒、(G)帯電防止剤、(H)HLB値が7~12であるポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してなる粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層の粘着力が、低速度剥離領域で0.05~0.1N/25mm、高速度剥離領域で1.0N/25mm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル共重合体を含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が、樹脂フィルムの片面に形成してなる表面保護フィルムであって、
前記アクリル共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーと、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーと、を共重合させた共重合体からなり、
前記粘着剤組成物が、さらに、(D)3官能以上のイソシアネート化合物、(E)ケトエノール互変異性化合物の架橋遅延剤、(F)架橋触媒、(G)帯電防止剤、(H)HLB値が7~12であるポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してなり、
前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であり、
前記粘着剤層の厚み25μmでの、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力が0.05~0.1N/25mmであり、高速度剥離領域30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部に対して、前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが0.1~5.0重量部含まれ、かつ、前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーのうち、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの合計量が0~0.9重量部(8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを含有しない場合も許容される)であり、
前記(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であり、
前記(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部に対して、前記(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが0.35~1.0重量部含まれることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記共重合体の100重量部に対して、イオン性化合物が0.5~5.0重量部含まれ、前記(H)HLB値が7~12であるポリエーテル変性シロキサン化合物が0.01~0.5重量部含まれ、前記(E)ケトエノール互変異性化合物の架橋遅延剤が1.0~5.0重量部含まれ、前記(F)架橋触媒が、有機錫化合物であり、前記共重合体の100重量部に対して、前記(F)架橋触媒が0.01~0.5重量部含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
光学部材の表面を保護するために用いられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイの製造工程に利用される表面保護フィルムに関するものである。さらに詳しくは、液晶ディスプレイを構成する偏光板、位相差板などの光学部材の表面に貼着することにより、偏光板、位相差板などの光学部材の表面を保護するために使用される表面保護フィルム用の粘着剤組成物及び表面保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板、位相差板などの光学部材の製造工程においては、光学部材の表面を一時的に保護するための表面保護フィルムが貼着される。このような表面保護フィルムは、光学部材を製造する工程のみに使用され、光学部材を液晶ディスプレイに組み込む時点で、光学部材から剥離して除去される。このような光学部材の表面を保護するための表面保護フィルムは、製造工程においてのみに使用されるため、一般には、工程フィルムと呼ばれることもある。
【0003】
このように光学部材を製造する工程において使用される表面保護フィルムは、光学的に透明性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの片面に粘着剤層が形成されているが、光学部材に貼り合わせるまで、その粘着剤層を保護するための剥離処理された剥離フィルムが、粘着剤層の上に貼り合わされている。
また、偏光板、位相差板などの光学部材は、表面保護フィルムを貼り合わされた状態で、液晶表示板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う製品検査を行うため、表面保護フィルムに対する要求性能としては、粘着剤層に気泡や異物が付着していないことが求められている。
また、近年では、偏光板、位相差板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときに、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電が、液晶ディスプレイの電気制御回路の故障に影響することが懸念され、粘着剤層に対して優れた帯電防止性能が求められている。
また、偏光板、位相差板などの光学部材に表面保護フィルムを貼り合わせるときに、各種の理由により、一旦、表面保護フィルムを剥がして、再度、表面保護フィルムを貼り直すことがあり、そのときに被着体の光学部材から剥がし易いこと(リワーク性)が求められている。
また、最終的に偏光板、位相差板などの光学部材から表面保護フィルムを剥がすときには、速やかに剥離できることが求められている。いわゆる、高速剥離によっても、速やかに剥離できるように、粘着力が剥離速度によっても変化が少ないことが求められている。
【0004】
このように、近年においては、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能として、(1)低速度剥離領域及び高速度剥離領域においての粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生防止、(3)優れた帯電防止性能、及び(4)リワーク性能などが、表面保護フィルムを使用するに当たっての使い易さの点から求められている。
しかし、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能である、これら(1)~(4)のそれぞれ、個々の要求性能を満たすことは出来ても、表面保護フィルムの粘着剤層に求められる(1)~(4)の全ての要求性能を、同時に満たすことは非常に困難な課題であった。
【0005】
例えば、(1)低速度剥離領域及び高速度剥離領域においての粘着力のバランスを取ること、及び(2)糊残りの発生防止については、次のような提案が知られている。
【0006】
炭素数が7以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有共重合性化合物との共重合体を主成分とし、これを架橋剤で架橋処理してなるアクリル系の粘着剤層では、長期間接着した場合に粘着剤が被着体側へ移着し、また被着体に対する接着力の経時上昇性が大きいという問題があった。これを回避するため、炭素数8~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアルコ―ル性水酸基を有する共重合性化合物との共重合体を用い、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものが知られている(特許文献1)。
また、上記と同様の共重合体に(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有共重合性化合物との共重合体を少量配合し、これを架橋剤で架橋処理した粘着剤層を設けたものなどが提案されている。しかし、これらは、表面張力が低くて表面が平滑なプラスチック板などの表面保護に使用すると、加工時や保存時の加熱により浮きなどの剥離現象を生じる問題や、手作業領域である高速での剥離時の再剥離性に劣るという問題もあった。
【0007】
これらの問題を解決するため、a)炭素数8~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル100重量部に、b)カルボキシル基含有共重合性化合物1~15重量部と、c)炭素数1~5の脂肪族カルボン酸のビニルエステル3~100重量部とを加えてなる単量体混合物の共重合体に、上記のb)成分のカルボキシル基に対して当量以上の架橋剤を配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献2)。
特許文献2に記載の粘着剤組成物では、加工時や保存時などに浮きなどの剥離現象を生じることがなく、そのうえ接着力の経時上昇性が小さくて再剥離性に優れており、長期保存、特に高温雰囲気下で長期保存しても小さな力で再剥離でき、その際被着体上に糊残りを生じず、また高速剥離を行ったときでも小さな力で再剥離できるとしている。
【0008】
また、(3)優れた帯電防止性能については、表面保護フィルムに帯電防止性を付与させための方法として、基材フィルムに帯電防止剤を練り込む方法などが示され、帯電防止剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~3級アミノ基などのカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、(b)スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、(c)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、(d)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性帯電防止剤、(e)上記の様な帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、などが開示されている(特許文献3)。
また、近年では、このような帯電防止剤を基材フィルムに含有させたり、あるいは基材フィルムの表面に塗布するのではなく、直接に粘着剤層に含有させたりすることが提案されている。
【0009】
また、(4)リワーク性能については、例えば、アクリル樹脂中に、イソシアネート系化合物の硬化剤と、特定のシリケートオリゴマーをアクリル系樹脂100重量部に対して0.0001~10重量部で配合した粘着剤組成物が提案されている(特許文献4)。
特許文献4では、アルキル基の炭素数2~12程度のアクリル酸アルキルエステルやアルキル基の炭素数4~12程度のメタクリル酸アルキルエステル等を主モノマー成分とし、例えば、カルボキシル基含有モノマーなどの他の官能基含有モノマー成分を含むことができるとしている。一般的には上記主モノマーを50重量%以上含有させることが好ましい、又、官能基含有モノマー成分の含有量は0.001~50重量%、好ましくは0.001~25重量%、更に好ましくは0.01~25重量%であることが望まれる、としている。このような特許文献4に記載の粘着剤組成物は、高温下又は高温高湿下でも凝集力及び接着力の経時変化が小さく、かつ、曲面接着力にも優れた効果を示すことから、リワーク性を有するとしている。
一般に、粘着剤層を柔らかい性状のものにすると、糊残りが発生し易くなり、リワーク性が低下しやすい。すなわち、誤って貼合したときに剥離がし難く、貼り直しが困難となりやすい。このことから、カルボキシル基などの官能基を有するモノマーを主剤に架橋させて、粘着剤層を一定の硬さにすることが、リワーク性を持たせるためには必要と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63-225677号公報
【特許文献2】特開平11-256111号公報
【特許文献3】特開平11-070629号公報
【特許文献4】特開平8-199130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術においては、表面保護フィルムを構成する粘着剤層に対する要求性能として、(1)低速度剥離領域及び高速度剥離領域においての粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生防止、(3)優れた帯電防止性能、及び(4)リワーク性能などが求められてきたが、これら(1)~(4)のそれぞれ、個々の要求性能を満たすことは出来ても、表面保護フィルムの粘着剤層に求められる(1)~(4)の全ての要求性能を、同時に満たすことは困難であり実現することが出来なかった。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、(1)低速度剥離領域及び高速度剥離領域においての粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生防止、(3)優れた帯電防止性能、及び(4)リワーク性能の全ての要求性能を、同時に満たすことが可能な粘着剤組成物及び表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーと、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーと、を含む共重合体からなり、さらに、(D)3官能以上のイソシアネート化合物、(E)架橋遅延剤、(F)架橋触媒、(G)帯電防止剤、(H)HLB値が7~12であるポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してなり、前記(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部に対して、前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが0.1~5.0重量部と、前記(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが0.35~1.0重量部と含まれ、かつ、前記(D)3官能以上のイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート化合物から選択した少なくとも1種以上を含有してなる粘着剤組成物を提供する。
また、本発明は、前記粘着剤組成物を用いた表面保護フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、(1)低速度剥離領域及び高速度剥離領域においての粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生防止、(3)優れた帯電防止性能、及び(4)リワーク性能の全ての要求性能を、同時に満たすことが可能な粘着剤組成物及び表面保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明の粘着剤組成物は、その主剤が、(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーと、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーと、を含む共重合体からなり、さらに、(D)3官能以上のイソシアネート化合物、(E)架橋遅延剤、(F)架橋触媒、(G)帯電防止剤、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物を含有してなることを特徴とする。
【0016】
(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0017】
(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。
8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部に対して、前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが0.1~5.0重量部含まれることが好ましい。
なおかつ、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーのうち、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの合計量は、1重量部未満(含有しない場合も許容される)が好ましく、0~0.9重量部であることが好ましい。
【0018】
(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの100重量部に対して、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが0.35~1.0重量部含まれることが好ましい。
【0019】
(D)3官能以上のイソシアネート化合物としては、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンやグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
(D)3官能以上のイソシアネート化合物が、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であり、特にヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体からなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。(D)3官能以上のイソシアネート化合物は、共重合体の100重量部に対して、0.5~5.0重量部含まれることが好ましい。
【0020】
(E)架橋遅延剤としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらはケトエノール互変異性化合物であり、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする粘着剤組成物において、架橋剤の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。
(E)架橋遅延剤は、ケトエノール互変異性化合物であるのが好ましく、特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
(E)架橋遅延剤は、共重合体の100重量部に対して、1.0~5.0重量部含まれることが好ましい。
【0021】
(F)架橋触媒は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、前記共重合体と架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよく、第三級アミン等のアミン系化合物、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。
第三級アミンとしては、トリアルキルアミン、N,N,N’,N’-テトラアルキルジアミン、N,N-ジアルキルアミノアルコール、トリエチレンジアミン、モルホリン誘導体、ピペラジン誘導体等が挙げられる。
有機錫化合物としては、ジアルキル錫オキシドや、ジアルキル錫の脂肪酸塩、第1錫の脂肪酸塩等が挙げられる。
(F)架橋触媒は、有機錫化合物であるのが好ましく、特にジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレートからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
(F)架橋触媒は、共重合体の100重量部に対して、0.01~0.5重量部含まれることが好ましい。
【0022】
(G)帯電防止剤は、常温(例えば30℃)で固体であることが好ましく、より具体的には、前記共重合体の100重量部に対して0.5~5.0重量部含まれる、融点が30~80℃であるイオン性化合物、又は、前記共重合体中に1.0~5.0重量%共重合された融点が30~80℃である4級アンモニウム塩型アクリルモノマーであることが好ましい。本発明では、(G)帯電防止剤として、(G1)融点が30~80℃であるイオン性化合物を共重合体に添加し、又は(G2)融点が30~80℃である4級アンモニウム塩型アクリルモノマーを共重合体中に共重合する。これらの(G)帯電防止剤は、融点が低いため、また、長鎖のアルキル基を有するため、アクリル共重合体との親和性は高いと推測される。
【0023】
(G1)融点が30~80℃であるイオン性化合物としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンが、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオンや、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等であり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF )、チオシアン酸塩(SCN)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(RCSO )、過塩素酸塩(ClO )、四フッ化ホウ酸塩(BF )等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。アルキル基の鎖長や置換基の位置、個数等の選択により、融点が30~80℃のものを得ることができる。カチオンは、好ましくは4級含窒素オニウムカチオンであり、1-アルキルピリジニウム(2~6位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピリジニウムカチオン、や1,3-ジアルキルイミダゾリウム(2,4,5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0024】
(G2)融点が30~80℃である4級アンモニウム塩型アクリルモノマーとしては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンが、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム〔R-C2n-OCOCQ=CH、ただし、Q=HまたはCH、R=アルキル〕等の(メタ)アクリル基含有4級アンモニウムであり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF )、チオシアン酸塩(SCN)、有機スルホン酸塩(RSO )、過塩素酸塩(ClO )、四フッ化ホウ酸塩(BF )等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。
(G)帯電防止剤の具体例としては、特に限定されるものでないが、1-オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、1-ノニルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、2-メチル-1-ドデシルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、1-オクチルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、1-ドデシルピリジニウム チオシアン酸塩、1-ドデシルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、4-メチル-1-オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、ジメチルアミノメチルアクリレート 六フッ化リン酸メチル塩〔(CHCHOCOCH=CH・PF 〕等が挙げられる。
【0025】
(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物は、ポリエーテル基を有するシロキサン化合物であり、通常のシロキサン単位〔-SiR -O-〕の他に、ポリエーテル基を有するシロキサン単位〔-SiR(RO(RO))-O-〕を有する。ここで、Rは1種又は2種以上のアルキル基又はアリール基、R及びRは1種又は2種以上のアルキレン基、Rは1種又は2種以上のアルキル基やアシル基等(末端基)を示す。ポリエーテル基としては、ポリオキシエチレン基〔(CO)〕やポリオキシプロピレン基〔(CO)〕等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。
(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物が、HLB値が7~12であるポリエーテル変性シロキサン化合物であり、前記共重合体の100重量部に対して、前記(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物が0.01~0.5重量部含まれることが好ましい。より好ましくは、0.1~0.5重量部である。
HLBとは、例えばJIS K3211(界面活性剤用語)等に規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
ポリエーテル変性シロキサン化合物は、例えば、水素化ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることができる。具体的には、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン重合体等が挙げられる。
(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物を粘着剤組成物に配合することにより、粘着剤の粘着力及びリワーク性能を改善することができる。
【0026】
さらに、その他成分として、アルキレンオキサイドを含有する共重合可能な(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、ジアルキル置換アクリルアミドモノマー、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することが出来る。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0027】
本発明の粘着剤組成物に用いられる主剤の共重合体は、(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーと、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーとを重合させることで合成することができる。共重合体の重合方法は特に限定されるものではなく、溶液重合、乳化重合等、適宜の重合方法が使用可能である。
(G)帯電防止剤として(G2)の4級アンモニウム塩型アクリルモノマーを用いる場合、本発明の粘着剤組成物に用いられる主剤の共重合体は、(A)アルキル基の炭素数がC4~C10の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーと、(C)カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーと、(G2)の4級アンモニウム塩型アクリルモノマーを重合させることで合成することができる。
本発明の粘着剤組成物は、上記の共重合体に、(D)3官能以上のイソシアネート化合物、(E)架橋遅延剤、(F)架橋触媒、(G)帯電防止剤、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物、さらに適宜任意の添加剤を配合することで調製することができる。なお、(G2)融点が30~80℃である4級アンモニウム塩型アクリルモノマーを主剤の共重合体中に重合させた場合、共重合体に対して(G)帯電防止剤をさらに添加しても添加しなくても構わない。
【0028】
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力が0.05~0.1N/25mmであり、高速度剥離領域30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることが好ましい。これにより、粘着力が剥離速度によっても変化が少ない性能が得られ、高速剥離によっても、速やかに剥離することが可能になる。また、貼り直しのため、一旦、表面保護フィルムを剥がすときにも、過大な力を必要とせず、被着体から剥がし易い。
【0029】
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、表面抵抗値が5.0×10+10Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0~1kVであることが好ましい。なお、本発明において、「±0~1kV」とは、0~-1kV及び0~+1kV、すなわち、-1~+1kVを意味する。表面抵抗値が大きいと剥離時に帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣るため、表面抵抗値を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の電気制御回路等に影響することを抑制することができる。
【0030】
本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層(架橋後の粘着剤)のゲル分率は、95~100%であることが好ましい。このようにゲル分率が高いことにより、低速度剥離領域における粘着力が過大にならず、共重合体からの未重合モノマーあるいはオリゴマーの溶出が低減して、リワーク性や高温・高湿度における耐久性が改善され、被着体の汚染を抑制することができる。
【0031】
本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面または両面に形成してなる。また、本発明の表面保護フィルムは、本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面に形成してなる表面保護フィルムである。本発明の粘着剤組成物は、上記の(A)~(H)の各成分がバランスよく配合されているため、(1)低速度剥離領域及び高速度剥離領域においての粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生防止、(3)優れた帯電防止性能、及び(4)リワーク性能(粘着剤層を介して表面保護フィルムの上をボールペンでなぞった後に被着体に汚染移行の無いこと)の全ての要求性能を、同時に満たすことが可能である。このため、偏光板の表面保護フィルムの用途として好適に使用することができる。
【0032】
粘着剤層の基材フィルムや、粘着面を保護する剥離フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
剥離フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
【実施例0033】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0034】
<アクリル共重合体の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2-エチルヘキシルアクリレート100重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート0.9重量部、アクリル酸0.5重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1に用いるアクリル共重合体溶液1を得た。
[実施例2~9及び比較例1~9]
単量体の組成を各々、表1の(A)~(C)の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル共重合体溶液1と同様にして、実施例2~9及び比較例1~9に用いるアクリル共重合体溶液を得た。
【0035】
<粘着剤組成物及び表面保護フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造したアクリル共重合体溶液1(そのうちアクリル共重合体が100重量部)に対して、1-オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩1.5重量部、KF-351A(HLB=12のポリエーテル変性シロキサン化合物)0.1重量部、アセチルアセトン2.5重量部を加え撹拌したのち、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)1.5重量部、ジオクチル錫ジラウレート0.02重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着シートを得た。
その後、一方の面に帯電防止及び防汚処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に粘着シートを転写させ、「帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する実施例1の表面保護フィルムを得た。
[実施例2~9及び比較例1~9]
添加剤の組成を各々、表1の(D)~(H)の記載のようにする以外は、上記の実施例1の表面保護フィルムと同様にして、実施例2~9及び比較例1~9の表面保護フィルムを得た。
【0036】
表1において、各成分の配合比は、(A)群の合計を100重量部として求めた重量部の数値を括弧で囲んで示す。また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、コロネート(登録商標)HX及び同HLは日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D-140Nは三井化学株式会社の商品名であり、デュラネート(登録商標)24A―100は旭化成ケミカルズ株式会社の商品名であり、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-640及びX-22-6191は信越化学株式会社の商品名である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
<試験方法及び評価>
実施例1~9及び比較例1~9における表面保護フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させたものを、ゲル分率及び表面抵抗値の測定試料とした。
さらに、この粘着剤層を表出させた表面保護フィルムを、粘着剤層を介して液晶セルに貼られた偏光板の表面に貼り合わせ、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力、剥離帯電圧及び耐久性の測定試料とした。
【0040】
<ゲル分率>
エージング終了後、偏光板に貼り合わせる前の測定試料の質量を正確に測定し、トルエン中に24時間浸漬後、200メッシュの金網で濾過する。その後、濾過物を100℃、1時間乾燥した後、残渣の質量を正確に測定して、以下の式から粘着剤層(架橋後の粘着剤)のゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=不溶部分質量(g)/粘着剤質量(g)×100
【0041】
<粘着力>
上記で得られた測定試料(25mm幅の表面保護フィルムを偏光板の表面に貼り合わせたもの)を180°方向に引張試験機を用いて低速度(0.3m/min)及び高速度(30m/min)において剥がして測定した剥離強度を粘着力とした。
【0042】
<表面抵抗>
エージングした後、偏光板に貼り合わせる前に、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗を測定した。
【0043】
<剥離帯電圧>
上記で得られた測定試料を30m/minの引張速度で180°剥離した際に偏光板が帯電して発生する電圧(帯電圧)を高精度静電気センサSK-035、SK-200(株式会社キーエンス製)を用いて測定し、測定値の最大値を剥離帯電圧とした。
【0044】
<リワーク性>
上記で得られた測定試料の表面保護フィルムの上をボールペンでなぞった後、偏光板から表面保護フィルムを剥離して偏光板の表面を観察し、偏光板に汚染移行の無いことを確認した。評価目標基準は、偏光板に汚染移行の無い場合を「○」、ボールペンでなぞった軌跡に沿って少なくとも一部に汚染移行が確認された場合を「×」と評価した。
【0045】
<耐久性>
上記で得られた測定試料を60℃、90%RHの雰囲気下に250時間放置後、室温に取り出し、さらに12時間放置した後、粘着力を測定して初期の粘着力と比較して明らかな増加が無いことを確認した。評価目標基準は、試験後の粘着力が初期粘着力の1.5倍以下である場合を「○」、1.5倍を超えた場合を「×」と評価した。
【0046】
表3に、評価結果を示す。なお、表面抵抗値は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0047】
【表3】
【0048】
実施例1~9の表面保護フィルムは、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力が0.05~0.1N/25mmであり、高速度剥離領域30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であり、表面抵抗値が5.0×10+10Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0~1kVであり、粘着剤層を介して表面保護フィルムの上をボールペンでなぞった後に被着体に汚染移行の無く、60℃、90%RHの雰囲気下に250時間放置したときの耐久性にも優れていた。
すなわち、(1)低速度剥離領域及び高速度剥離領域においての粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生防止、(3)優れた帯電防止性能、及び(4)リワーク性能の全ての要求性能を、同時に満たしている。
【0049】
比較例1の表面保護フィルムは、(B)水酸基含有モノマーが過多であったためか、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力が低い結果となった。
比較例2の表面保護フィルムでは、(B)水酸基含有モノマーが過少、(D)イソシアネート化合物が過多、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物のHLB値が過小であったためか、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力と高速度剥離領域30m/minでの粘着力が大きすぎ、剥離耐電圧が高く、リワーク性と耐久性が劣り、ゲル分率が低くなった。
比較例3の表面保護フィルムでは、(B)水酸基含有モノマーが過多、(C)酸含有モノマーが過多、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物のHLB値が過大であったためか、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力が低く、表面抵抗値が高く、剥離耐電圧が高く、リワーク性と耐久性が劣っていた。
【0050】
比較例4の表面保護フィルムでは、(C)酸含有モノマーが過少であったためか、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力が低く、耐久性が劣っていた。
比較例5の表面保護フィルムでは、(B)水酸基含有モノマーが過多、(D)イソシアネート化合物が過少であったためか、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力と高速度剥離領域30m/minでの粘着力が大きすぎ、剥離耐電圧が高く、リワーク性と耐久性が劣り、ゲル分率が低くなった。
比較例6の表面保護フィルムは、(E)架橋遅延剤を配合せず、(F)架橋触媒が過多であったためか、ポットライフが短くなりすぎ、塗布前に架橋が進行したため、塗工をすることができなかった。
【0051】
比較例7の表面保護フィルムは、(A)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーにC1のアルキル基を有するMAを含有し、(F)架橋触媒を配合しなかったためか、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力と高速度剥離領域30m/minでの粘着が大きすぎ、表面抵抗値が高く、剥離耐電圧が高く、リワーク性と耐久性が劣っていた。
比較例8の表面保護フィルムでは、(G)帯電防止剤が過少であり、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物を配合しなかったためか、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力と高速度剥離領域30m/minでの粘着力が大きすぎ、剥離耐電圧が高く、リワーク性が劣っていた。
比較例9の表面保護フィルムでは、(G)帯電防止剤の融点が30℃未満(常温で液体)であり、(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物が過多であったためか、低速度剥離領域0.3m/minでの粘着力が低く、剥離耐電圧が高く、耐久性が劣っていた。
このように、比較例1~9の表面保護フィルムでは、(1)低速度剥離領域及び高速度剥離領域においての粘着力のバランスを取ること、(2)糊残りの発生防止、(3)優れた帯電防止性能、及び(4)リワーク性能の全ての要求性能を、同時に満たすことができなかった。