(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190232
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/18 20200101AFI20221219BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20221219BHJP
H05B 47/165 20200101ALI20221219BHJP
【FI】
H05B45/18
H05B47/16
H05B47/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098462
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 但
(72)【発明者】
【氏名】今野 雄途
(72)【発明者】
【氏名】森田 英揮
(72)【発明者】
【氏名】金子 展也
(72)【発明者】
【氏名】平澤 哲
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA09
3K273QA02
3K273RA13
3K273SA22
3K273SA35
3K273SA46
3K273SA60
3K273TA03
3K273TA07
3K273TA15
3K273TA26
3K273TA28
3K273UA22
3K273VA10
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で照度を一定化できる照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置1は、発光ダイオードを用いた発光素子13と、発光素子13の現在温度を検出する温度センサ15と、現在温度に応じて発光素子13に供給される駆動電圧を調整する発光制御部20と、を有する。発光制御部20は、予め基準温度が記憶された基準温度記憶部23を有し、一定時間周期で温度センサ15から現在温度を検出し、基準温度と比較して駆動電圧を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードを用いた発光素子と、前記発光素子の現在温度を検出する温度センサと、前記現在温度に応じて前記発光素子に供給される駆動電圧を調整する発光制御部と、を有する照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載した照明装置において、
前記発光制御部は、予め基準温度が記憶されており、前記現在温度と前記基準温度とを比較して前記駆動電圧を調整する照明装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した照明装置において、
前記発光制御部は、一定時間周期で前記温度センサから前記現在温度を検出し、前記駆動電圧を調整する照明装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した照明装置において、
前記温度センサは、前記発光素子に固定された放熱部材、または前記発光素子が固定された回路基板に装着されている照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定装置の照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像測定装置あるいは光学的手段による形状等の測定装置においては、測定対象を照明する照明装置が用いられる。照明装置としては、発光ダイオード(LED)を光源とするものが多用されている(特許文献1参照)。
LED照明装置においては、照明の明るさを一定に保つために、LED駆動回路に定電圧制御回路または定電流制御回路を用い、LEDの発光状態ないし照明装置としての照度を一定に維持している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-175399号公報
【特許文献2】国際公開第2011-065047号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した定電圧制御回路では、電圧フィードバック制御によりLEDに印加される電圧が一定化される。しかし、照明にともなうLEDの発熱などにより、LEDの順電圧が変動して順電流が変動し、LEDの明るさ(光度)が変動することがある。
【0005】
本発明の目的は、簡素な構成で照度を一定化できる照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の照明装置は、発光ダイオードを用いた発光素子と、前記発光素子の現在温度を検出する温度センサと、前記現在温度に応じて前記発光素子に供給される駆動電圧を調整する発光制御部と、を有する。
【0007】
このような本発明では、温度センサで検出された発光素子の現在温度に基づいて、発光制御部から発光素子に供給される駆動電圧が調整される。これにより、発光素子の温度が変化しても発光素子を流れる電流が一定化され、発光素子の明るさが一定化される。
すなわち、発光ダイオード(LED)を発光させる際、駆動電圧E、制限抵抗R、LEDの順電圧Vfとして、順電流If=(E-Vf)/Rとなる。LEDは点灯に伴って発熱し、温度が上昇することで特性が変化し、順電圧Vfが低下する。LEDの順電圧Vfが低下すると、駆動電圧Eおよび制限抵抗Rが固定であれば、順電流Ifが増加し、明るさも増加する。これに対し、LEDの温度に基づいて駆動電圧Eを減少させることで、温度上昇による順電圧Vfの低下分に応じた調整を行うことができ、その結果、順電流Ifを一定化し、LEDの明るさを一定に保つことができる。
このような温度による定電流化制御は、温度センサの追加および制御ソフトウェアの変更により簡単に実現できる。
従って、本発明では、温度フィードバックにより発光素子の明るさが一定化され、簡素な構造で照明装置の照度を一定化できる。
【0008】
本発明の照明装置において、前記発光制御部は、予め基準温度が記憶されており、前記現在温度と前記基準温度とを比較して前記駆動電圧を調整することが好ましい。
このような本発明では、予め記憶しておいた基準温度との比較により、発光素子の現在温度に応じた駆動電圧を容易に調整でき、簡素な構造で照明装置の照度を一定化できる。
基準温度としては、照明装置の起動時に温度センサで検出した現在温度を設定してもよく、室温あるいは他の温度を指定してもよい。基準温度は、初期設定の値を継続するほか、駆動電圧の調整のつど現在温度で基準温度を更新してもよい。
現在温度と基準温度との比較の際には、基準温度の上下に一定の幅をもたせてもよい。
【0009】
本発明の照明装置において、前記発光制御部は、一定時間周期で前記温度センサから前記現在温度を検出し、前記駆動電圧を調整することが好ましい。
このような本発明では、一定時間周期での処理とすることで過剰な頻度の調整動作を避けることができ、発光素子の温度変化に対応しつつ処理の負荷軽減を図ることができる。
【0010】
本発明の照明装置において、前記温度センサは、前記発光素子に固定された放熱部材、または前記発光素子が固定された回路基板に装着されていることが好ましい。
このような本発明では、それぞれ発光素子の現在温度を検出することができる。とくに、温度センサが回路基板に装着されている場合、回路基板に配列された複数の発光素子の温度を包括的に検出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡素な構成で照度を一定化できる照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】前記実施形態の制御ブロックを示すブロック図。
【
図5】本発明の他の実施形態の照明装置を示す模式図。
【
図6】前記他の実施形態の回路基板および発光制御部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および
図2には、本実施形態の照明装置1が示されている。
照明装置1は、画像測定装置2に装着される白色光落射照明用の照明装置であり、画像測定装置2に装着される機器本体部10と、画像測定装置2の制御装置3に配置される発光制御部20と、を備えている。
【0014】
図1において、機器本体部10は、画像測定装置2に装着されるケース11と、ケース11の上端に固定された回路基板12と、回路基板12に固定された発光ダイオード(LED)を光源とする発光素子13と、を有する。
発光素子13は、制御装置3に配置された発光制御部20により駆動され、画像測定装置2に落射照明用の照明光16を供給する。
画像測定装置2においては、照明光16で照明された被測定物4の画像が画像検出部5で検出され、制御装置3に転送されて処理される。
【0015】
機器本体部10は、さらに、多数のフィンにより発光素子13を空冷する放熱部材14と、放熱部材14に固定された温度センサ15と、を有する。
温度センサ15は、放熱部材14を経由して発光素子13の現在温度を検出し、検出した温度は発光制御部20により読み取られる。
発光制御部20は、温度センサ15で検出した発光素子13の現在温度に基づいて、発光素子13の駆動状態を制御する。
【0016】
図2において、発光制御部20は、発光素子13を駆動する駆動回路21と、駆動回路21の駆動電圧を調整する電圧調整部22と、電圧調整の基準となる基準温度を記憶する基準温度記憶部23と、を有する。駆動回路21には、発光素子13を駆動するための電力を供給する電源装置24が接続されている。
【0017】
図3には、発光制御部20による発光素子13の駆動制御が示されている。
発光制御部20は、照明装置1の起動とともに動作を開始し、温度センサ15の現在温度を検出して基準温度記憶部23に記憶し(
図3の処理S1)、電圧調整部22による電圧調整を開始する。
【0018】
電圧調整部22は、所定周期(例えば10分)のカウントを行い(処理S2)、所定周期が経過したのち温度センサ15の現在温度を検出し(処理S3)、基準温度記憶部23に記憶されていた基準温度との比較を行う(処理S4)。
現在温度が基準温度よりも高ければ(処理S5)、電圧調整部22は駆動回路21の駆動電圧を下げる(処理S6)。
現在温度が基準温度よりも低ければ(処理S7)、電圧調整部22は駆動回路21の駆動電圧を上げる(処理S8)。
現在温度が基準温度と等しければ、電圧調整を行わず、現状の駆動電圧を維持する(処理S9)。
【0019】
なお、処理S5,S7の判定は、基準温度に対して所定幅で上限値および下限値を設定しておき、その間の所定幅の温度範囲に現在温度がある場合には電圧調整を行わないとしてもよい。
また、電圧の調整量としては、予め指定しておいた値(例えば50mV)あるいは比率(5%)とすることができるほか、基準温度と現在温度との差の大きさに応じて調整量を増減させてもよい。
【0020】
前述した発光制御部20による駆動制御を行うことで、発光素子13による発光は一定の明るさに維持される。
図4(A)に示すように、発光素子13の温度(温度センサ15で検出される現在温度)は、動作開始時点で温度Tiであるが、所定の時間遅れののち、時刻t1から上昇してゆく。
図4(B)に示すように、発光素子13に供給される駆動回路21からの駆動電圧は、動作開始時点で電圧Viであるが、発光素子13の現在温度が上昇を続けた場合、電圧調整部22における電圧調整(処理S4~S6)により、駆動電圧が下げられる。
【0021】
発光素子13の発光ダイオード(LED)においては、駆動電圧E、制限抵抗R、LEDの順電圧Vfとして、順電流If=(E-Vf)/Rとなる。LEDは点灯に伴って発熱し、温度が上昇することで特性が変化し、順電圧Vfが低下する。LEDの順電圧Vfが低下すると、駆動電圧Eおよび制限抵抗Rが固定であれば、順電流Ifが増加し、明るさも増加する。
これに対し、電圧調整部22による電圧調整により、現在温度に基づいて駆動電圧Eを減少させることで、温度上昇による順電圧Vfの低下分に応じた調整が行われる。
【0022】
このような電圧調整部22の電圧調整により、発光素子13のLEDの順電流Ifが一定化され、LEDの明るさが一定に保たれる。
図4(C)において、電圧調整部22の電圧調整が行われない場合、発光素子13の光度は一点鎖線で示すように、温度に応じて発光素子13のLEDの順電流Ifが増加し、光度も増加してゆく。これに対し、電圧調整部22の電圧調整が行われた場合、発光素子13のLEDの順電流Ifが一定化されることで、LEDの明るさが一定の光度Liに保たれる。
【0023】
このような本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
本実施形態の照明装置1では、温度センサ15で検出された発光素子13の現在温度に基づいて、発光制御部20から発光素子13に供給される駆動電圧が調整される。これにより、発光素子13の温度が変化しても発光素子13を流れる電流が一定化され、発光素子13の明るさが一定化される。このような温度フィードバックにより、本実施形態の照明装置1では照度を一定化することができる。
【0024】
本実施形態の照明装置1では、機器本体部10への温度センサ15の追加、および制御装置3の制御ソフトウェア(発光制御部20)の変更により、前述のような温度による定電流化制御を簡単に実現でき、簡素な構造で照明装置1の照度を一定化することができる。
【0025】
本実施形態の照明装置1では、発光制御部20の基準温度記憶部23に基準温度を予め記憶しておき、基準温度と温度センサ15からの現在温度とを電圧調整部22で比較し、駆動回路21の駆動電圧を調整するようにした。このため、発光制御部20において、予め記憶しておいた基準温度との比較により、発光素子13の現在温度に応じて駆動電圧を容易に調整でき、簡素な構造で照明装置1の照度を一定化できる。
【0026】
本実施形態の照明装置1において、発光制御部20は、一定時間周期で温度センサ15から現在温度を検出し、駆動回路21の駆動電圧を調整するようにした。このため、電圧調整部22における処理(
図3の処理S2~S9)を、一定時間周期での処理とすることができ、過剰な頻度の調整動作を避けることができ、発光素子13の温度変化に対応しつつ処理の負荷軽減を図ることができる。
【0027】
本実施形態の照明装置1では、温度センサ15を、発光素子13に固定された放熱部材14に装着した。このため、温度フィードバックによる電圧調整にあたって、放熱部材14を介して発光素子13の現在温度を検出することができる。
【0028】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、画像測定装置2に装着される照明装置1を例示したが、本発明は顕微鏡や投影機、インライン検査システムなどの照明装置として利用できる。また、白色光落射照明用の照明装置1に限らず、カラー光リング照明にも適用できる。
【0029】
図5および
図6には、本発明の他の実施形態が示されている。
図5において、照明装置1Aは、画像測定装置2Aに装着されてカラー照明光16Aを供給するものであり、機器本体部10Aと、画像測定装置2Aの制御装置3Aに配置される発光制御部20Aと、を備えている。
照明装置1Aは、ケース11Aの上部外周に4枚の回路基板12Aを有する。回路基板12Aは、それぞれ上面を放熱部材14Aで覆われている。
【0030】
図6において、回路基板12Aには、発光ダイオード(LED)を光源とする発光素子13Aが複数固定されている。
回路基板12Aには、複数の発光素子13Aが配列された区域に隣接した部位に、温度センサ15Aが1個設置されている。
温度センサ15Aは、回路基板12Aの温度を検出することで、間接的に複数の発光素子13Aの現在温度を検出する。
【0031】
発光制御部20Aは、温度センサ15Aで検出した発光素子13Aの現在温度に基づいて、発光素子13Aの駆動状態を制御する。
発光制御部20Aは、前述した実施形態と同様な構成を有し(
図2参照)、重複する説明は省略する。ただし、
図2における駆動回路21は、本実施形態ではRGBの色別に3系統の駆動を行うものとされる。
【0032】
このような
図5および
図6の実施形態においても、前述した
図1~
図4の実施形態と同様な動作により、発光素子13Aの現在温度に応じて駆動電圧を容易に調整でき、簡素な構造で照明装置1Aの照度を一定化できる。
さらに、本実施形態の照明装置1では、温度センサ15Aを、発光素子13Aが固定された回路基板12Aに装着した。このため、回路基板12Aに配列された複数の発光素子13Aの温度を包括的に検出することができる。
【0033】
前記実施形態では、現在温度と比較する基準温度として、照明装置1の起動時に温度センサ15で検出した現在温度を用いたが、室温あるいは他の温度を指定してもよい。また、基準温度は、基準温度記憶部23に初期設定の値を継続して用いてもよく、電圧調整部22での駆動電圧の調整のつど、新たな現在温度で基準温度記憶部23に記憶された基準温度を更新してもよい。この場合、電圧調整部22では前回の電圧調整時の温度に対して現在温度との比較を行う。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は測定装置の照明装置に利用できる。
【符号の説明】
【0035】
1,1A…照明装置、2,2A…画像測定装置、3,3A…制御装置、4…被測定物、5…画像検出部、10,10A…機器本体部、11,11A…ケース、12,12A…回路基板、13,13A…発光素子、14,14A…放熱部材、15,15A…温度センサ、16,16A…照明光、20,20A…発光制御部、21…駆動回路、22…電圧調整部、23…基準温度記憶部、24…電源装置。