(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190386
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】経口医薬組成物及び錠剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/166 20060101AFI20221219BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221219BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20221219BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20221219BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20221219BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20221219BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221219BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K31/166
A61K47/02
A61K47/06
A61K47/20
A61P1/04
A61P1/08
A61K9/20
A61K31/198
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098685
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 貴裕
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC16
4C076DD25
4C076DD27
4C076DD28
4C076DD30T
4C076DD34T
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE31
4C076FF36
4C076FF52
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA07
4C206GA31
4C206JA79
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA03
4C206NA09
4C206ZA66
4C206ZA69
4C206ZA71
4C206ZC42
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、イトプリド及び/又はその塩を含む複合胃腸薬の、高い付加価値を備える製剤処方を提供することである。
【解決手段】経口医薬組成物において、(A)イトプリド及び/又はその塩と共に、(B)制酸剤及び/又は(C)アズレン誘導体を含有させることで、イトプリド及び/又はその塩の苦味が改善される。また、錠剤組成物において、(A)イトプリド及び/又はその塩と共に、(D)メチルメチオニンスルホニウム塩及び/又は(E)水酸化アルミニウムを含有させることによって、錠剤硬度を向上できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イトプリド及び/又はその塩、並びに(B)制酸剤及び/又は(C)アズレン誘導体を含有する、経口医薬組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカルシウムからなる群より選択される金属を含む、請求項1に記載の経口医薬組成物。
【請求項3】
前記(A)成分100重量部当たり、前記(B)成分を総量で66~10000重量部含む、請求項1又は2に記載の経口医薬組成物。
【請求項4】
前記(A)成分100重量部当たり、前記(C)成分を総量で0.5~50重量部含む、請求項1又は2に記載の経口医薬組成物。
【請求項5】
イトプリド及び/又はその塩の苦味改善方法であって、経口医薬組成物において、(A)イトプリド及び/又はその塩と共に、(B)制酸剤及び/又は(C)アズレン誘導体を含有させる、苦味改善方法。
【請求項6】
(A)イトプリド及び/又はその塩、並びに(D)メチルメチオニンスルホニウム塩及び/又は(E)水酸化アルミニウムを含有する、錠剤組成物。
【請求項7】
前記(A)成分100重量部当たり、前記(D)成分を総量で5~500重量部含む、請求項6に記載の錠剤組成物。
【請求項8】
前記(A)成分100重量部当たり、前記(E)成分を総量で500~5000重量部含む、請求項6又は7に記載の錠剤組成物。
【請求項9】
イトプリド及び/又はその塩を含む錠剤の硬度を向上させる方法であって、錠剤組成物において、(A)イトプリド及び/又はその塩と共に、(D)メチルメチオニンスルホニウム塩及び/又は(E)水酸化アルミニウムを含有させる、前記硬度の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イトプリド及び/又はその塩を含む経口医薬組成物及び錠剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、イトプリド及び/又はその塩の苦味が改善している経口医薬組成物、並びに、イトプリド及び/又はその塩を含む錠剤の硬度を向上できる錠剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イトプリド及びその塩には、胃や十二指腸に存在するドパミンD2受容体に対して拮抗作用があり、アセチルコリンを遊離させることによる消化管運動賦活作用を示すので、機能性ディスペプシアや慢性胃炎における消化器症状(腹部膨満感、上腹部痛、食欲不振、胸やけ、悪心、嘔吐等)の改善に使用されている。また、特許文献1には、イトプリド及びその塩には、薬剤投与時における消化管機能異常を治療及び/又は予防する作用があることも報告されている。
【0003】
イトプリド及びその塩は、ドパミンD2受容体拮抗作用に基づく錐体外路症状、プロラクチン分泌亢進による乳汁分泌、女性化乳房等の副作用が少ないとされており、日常臨床で汎用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イトプリド及びその塩が長年日常臨床で汎用されてきた経緯から、ОTC医薬品への展開が期待できる。ОTC医薬品の有効成分としてイトプリド及び/又はその塩が使用できれば、他の胃腸薬有効成分をさらに配合して複合胃腸薬として構成することが望ましい。さらに、イトプリド及び/又はその塩を含む複合胃腸薬は、単に胃腸薬有効成分の寄せ集めにとどまらず、高い付加価値を備える製剤処方であることが望ましい。
【0006】
第1に、イトプリド及びその塩には、特有の苦味を呈することが知られている。このようなイトプリド及びその塩に特有の苦味は、医薬組成物において通常用いられる呈味改善のための製剤処方を採用しても改善できないほど強烈である。そのため、イトプリド及び/又はその塩の特有の苦味は、服用時にストレスを与え、ノンコンプライアンスをもたらす要因にもなっている。
【0007】
そこで、本発明の第1の目的は、イトプリド及び/又はその塩を含む複合胃腸薬であって、イトプリド及び/又はその塩に特有の苦味が改善されている経口医薬組成物を提供することである。
【0008】
第2に、イトプリド及びその塩を含む医薬組成物の味をマスキングし服用を容易化する手段として、錠剤の形態に製剤することも考えられる。しかしながら、錠剤に成型するには、通常、硬度を付与するために所定の結合剤を必要とするが、胃腸薬においては複数の胃腸薬有効成分を配合するため、結合剤を配合する余地が少なくなる。そのため、結合剤以外の手段でイトプリド及びその塩を含む錠剤の硬度を向上できる製剤処方も望まれる。
【0009】
そこで、本発明の第2の目的は、イトプリド及び/又はその塩を含む複合医薬であって、硬度が向上した錠剤を成型可能な錠剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記第1の課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、イトプリド及び/又はその塩を含む経口医薬組成物に、さらに、胃腸薬有効成分である制酸剤及び/又はアズレン誘導体を含有させることで、イトプリド及び/又はその塩の苦味を各段に改善でき、服用性が向上することを見出した。
【0011】
また、本発明者は、前記第2の課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、イトプリド及び/又はその塩を含む錠剤組成物に、さらに、胃腸薬有効成分であるメチルメチオニンスルホニウム塩及び/又は水酸化アルミニウムを含有させることで、錠剤に成型した場合に硬度が格段に向上することを見出した。
【0012】
本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)イトプリド及び/又はその塩、並びに(B)制酸剤及び/又は(C)アズレン誘導体を含有する、経口医薬組成物。
項2. 前記(B)成分が、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカルシウムからなる群より選択される金属を含む、項1に記載の経口医薬組成物。
項3. 前記(A)成分100重量部当たり、前記(B)成分を総量で66~10000重量部含む、項1又は2に記載の経口医薬組成物。
項4. 前記(A)成分100重量部当たり、前記(C)成分を総量で0.5~50重量部含む、項1又は2に記載の経口医薬組成物。
項5. イトプリド及び/又はその塩の苦味改善方法であって、経口医薬組成物において、(A)イトプリド及び/又はその塩と共に、(B)制酸剤及び/又は(C)アズレン誘導体を含有させる、苦味改善方法。
項6. (A)イトプリド及び/又はその塩、並びに(D)メチルメチオニンスルホニウム塩及び/又は(E)水酸化アルミニウムを含有する、錠剤組成物。
項7. 前記(A)成分100重量部当たり、前記(D)成分を総量で5~500重量部含む、項6に記載の錠剤組成物。
項8. 前記(A)成分100重量部当たり、前記(E)成分を総量で500~5000重量部含む、項6又は7に記載の錠剤組成物。
項9. イトプリド及び/又はその塩を含む錠剤の硬度を向上させる方法であって、錠剤組成物において、(A)イトプリド及び/又はその塩と共に、(D)メチルメチオニンスルホニウム塩及び/又は(E)水酸化アルミニウムを含有させる、前記硬度の向上方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の経口医薬組成物によれば、イトプリド及び/又はその塩と、制酸剤及び/又はアズレン誘導体とを併用することによって、イトプリド及び/又はその塩の特有の苦味を効果的に改善し、服用性を向上可能な複合胃腸薬が提供できる。
【0014】
また、本発明の錠剤組成物によれば、イトプリド及び/又はその塩と、メチルメチオニンスルホニウム塩及び/又は水酸化アルミニウムとを併用することによって、錠剤に成型した場合に硬度を向上可能な複合胃腸薬が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.経口医薬組成物
本発明の経口医薬組成物は、イトプリド及び/又はその塩(「(A)成分」と表記することもある)、並びに制酸剤(「(B)成分」と表記することもある)及び/又はアズレン誘導体(「(C)成分」と表記することもある)を含有することを特徴とする。以下、本発明の経口医薬組成物について詳述する。
【0016】
[(A)イトプリド及び/又はその塩]
本発明の経口医薬組成物は、(A)成分として、イトプリド及び/又はその塩を含有する。イトプリドは、ドパミンD2受容体に作用してアセチルコリンの遊離を促進し、またアセチルコリンの分解を抑制することにより消化管運動を賦活化させることが知られている公知の化合物である。
【0017】
イトプリドの塩については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくは無機酸塩、より好ましくは塩酸塩が挙げられる。
【0018】
本発明の経口医薬組成物では、(A)成分として、イトプリド及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
(A)成分の中でも、好ましくはイトプリドの塩、より好ましくはイトプリド塩酸塩が挙げられる。
【0020】
本発明の経口医薬組成物における(A)成分の含有量については、原則、剤型、投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~90重量%が挙げられる。苦味改善効果をより一層高める観点から、本発明の経口医薬組成物における(A)成分の含有量としては、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.1~5重量%、一層好ましくは0.1~3重量%が挙げられる。通常、イトプリド及び/又はその塩の含有量が多い程、服用時に特有の苦味が感じられ易くなるが、本発明の経口医薬組成物では、上記(A)成分の含有量範囲の下限値が、さらに、1重量%以上、2重量%以上、又は2.4重量%以上であっても、効果的に苦味を改善することができる。
【0021】
より具体的には、本発明の経口医薬組成物が(B)成分を含む場合の(A)成分の含有量については、剤型、投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~90重量%が挙げられる。苦味改善効果をより一層高める観点から、本発明の経口医薬組成物が(B)成分を含む場合における(A)成分の含有量としては、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.1~5重量%、一層好ましくは0.1~3重量%が挙げられる。
【0022】
また、本発明の経口医薬組成物が(C)成分を含む場合の(A)成分の含有量については、剤型、投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、50~99重量%が挙げられる。苦味改善効果をより一層高める観点から、本発明の経口医薬組成物が(C)成分を含む場合における(A)成分の含有量としては、好ましくは60~99重量%、より好ましくは70~99重量%、さらに好ましくは80~98重量%、一層好ましくは92~97重量%が挙げられる。
【0023】
[(B)制酸剤]
本発明の経口医薬組成物は、(B)成分として、制酸剤を含有することができる。イトプリド及び/又はその塩と制酸剤とを併用する場合、イトプリド及び/又はその塩の特有の苦味を効果的に改善することが可能になる。
【0024】
制酸剤とは、胃酸を中和する薬剤である。本発明で使用される制酸剤の種類については、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカルシウムからなる群より選択される金属を含む制酸剤が挙げられる。
【0025】
アルミニウムを含む制酸剤としては特に限定されないが、例えば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ショ糖硫酸エステルアルミニウム塩、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、ジヒドロアルミニウムアミノアセテート、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等が挙げられる。
【0026】
マグネシウムを含む制酸剤としては特に限定されないが、例えば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物等が挙げられる。
【0027】
ナトリウムを含む制酸剤としては特に限定されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物等が挙げられる。
【0028】
カルシウムを含む制酸剤としては特に限定されないが、例えば、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、烏賊骨、石決明、ボレイ、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物等が挙げられる。
【0029】
これらの制酸剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
(B)成分の中でも、イトプリド及び/又はその塩の苦味改善効果をより一層効果的に増強させるという観点から、好ましくはアルミニウム、マグネシウム、ナトリウムからなる群より選択される金属を含む制酸剤が挙げられ、より好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、水酸化マグネシウム、及び炭酸水素ナトリウムが挙げられ、さらに好ましくは、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及び炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0031】
また、(B)成分の中でも、イトプリド及び/又はその塩の苦味をより効果的に改善する観点、及び/又はえぐ味を改善する観点から、アルミニウムを含む制酸剤として、好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ショ糖硫酸エステルアルミニウム塩、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、より好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、更に好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、一層好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、特に好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられ;マグネシウムを含む制酸剤として、好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、より好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、更に好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化マグネシウムが挙げられ;ナトリウムを含む制酸剤として、好ましくは炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0032】
また、本発明の経口医薬組成物において、(A)成分と(B)成分の比率としては、例えば、(A)成分100重量部当たり、(B)成分の総量で66~10000重量部が挙げられる。イトプリド及び/又はその塩の苦味改善効果をより一層効果的に増強させるという観点から、(A)成分100重量部当たりの(B)成分の総量としては、好ましくは100~10000重量部、より好ましくは500~5000重量部、更に好ましくは1000~4000重量部、より更に好ましくは1200~3500重量部、一層好ましくは1500~3500重量部、特に好ましくは2000~3500重量部が挙げられる。
【0033】
本発明の経口医薬組成物における(B)成分の含有量については、前述する(A)成分と(B)成分の比率に応じた範囲内で、使用する(B)成分の種類、剤型、投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10~99.9重量%、好ましくは30~99重量%、より好ましくは40~95重量%、さらに好ましくは50~90重量%、一層好ましくは65~85重量%、特に好ましくは80~85重量%が挙げられる。
【0034】
[(C)アズレン誘導体]
本発明の経口医薬組成物は、(C)成分として、アズレン誘導体を含有することができる。イトプリド及び/又はその塩とアズレン誘導体とを併用する場合、イトプリド及び/又はその塩の特有の苦味を効果的に改善することが可能になる。
【0035】
アズレン誘導体は、抗炎症成分として胃腸薬に配合して用いられる公知の化合物である。具体的には、アズレン誘導体とは、アズレン骨格に1又は複数の置換基が結合している化合物及びその塩である。本発明で使用されるアズレン誘導体としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、イトプリド及び/又はその塩の苦味改善効果をより一層効果的に増強させるという観点から、アズレン骨格に少なくとも酸性官能基が結合しているアズレン誘導体が挙げられる。当該酸性官能基としては、具体的には、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられ、好ましくはスルホ基が挙げられる。
【0036】
本発明で使用されるアズレン誘導体として、具体的には、アズレンスルホン酸(グアイアズレンスルホン酸)、ジメチルイソプロピルアズレン(グアイアズレン)、ジメチルエチルアズレン(カマアズレン)、1,4-ジメチル-7-エチルアズレン-3-スルホン酸(カマアズレンスルホン酸)等が挙げられる。
【0037】
アズレン誘導体が塩の形態である場合、その塩の種類については、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等のその他の金属塩;アンモニウム塩;酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等の有機スルホン酸塩;メチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、ピペラジン塩、ピロリジン塩、トリピリジン塩、ピコリン塩等の有機アミン塩;塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩等が挙げられる。
【0038】
これらのアズレン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
これらのアズレン誘導体の中でも、より一層効果的にイトプリド及び/又はその塩の苦味を改善する観点、並びに/若しくはえぐみを改善する観点から、好ましくはアズレン誘導体の塩、具体的にはアズレンスルホン酸及び1,4-ジメチル-7-エチルアズレン-3-スルホン酸の塩が挙げられ、より好ましくはアズレンスルホン酸及び1,4-ジメチル-7-エチルアズレン-3-スルホン酸の、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びその他の金属塩が挙げられ、さらに好ましくはアズレンスルホン酸及び1,4-ジメチル-7-エチルアズレン-3-スルホン酸の、アルカリ金属塩、一層好ましくはアズレンスルホン酸のアルカリ金属塩が挙げられ、特に好ましくはアズレンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0040】
また、本発明の経口医薬組成物において、(A)成分と(C)成分の比率としては、例えば、(A)成分100重量部当たり、(C)成分の総量で0.1~50重量部が挙げられる。イトプリド及び/又はその塩の苦味改善効果をより一層効果的に増強させるという観点から、(A)成分100重量部当たりの(C)成分の総量としては、好ましくは0.2~40重量部、より好ましくは0.3~30重量部、さらに好ましくは0.4~20重量部、一層好ましくは0.5~15重量部、特に好ましくは0.8~4重量部が挙げられる。
【0041】
本発明の経口医薬組成物における(C)成分の含有量については、前述する(A)成分と(C)成分の比率に応じた範囲内で、使用する(C)成分の種類、剤型、投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01~10重量%、好ましくは0.05~8重量%、より好ましくは0.08~6重量%、さらに好ましくは0.1~1重量%、一層好ましくは0.15~0.3重量%が挙げられる。
【0042】
[その他の含有成分]
本発明の経口医薬組成物には、前述する成分以外に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。このような薬理成分の種類については、特に制限されないが、例えば、消炎鎮痛剤、消化剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、催眠鎮静剤、抗ヒスタミン剤、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、プロトンポンプ阻害薬、生薬、生薬エキス、カフェイン類、メントール類、ポリフェノール等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの薬理成分の含有量については、使用する薬理成分の種類や経口医薬組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
本発明の医薬組成物には、所望の剤型に調製するために、必要に応じて、薬学的に許容される基剤や添加剤等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、結合剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。
【0044】
これらの基剤や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの基剤や添加剤の中でも、好ましくは、賦形剤や滑沢剤等が挙げられる。賦形剤としては、好ましくは糖が挙げられ、より好ましくは乳糖等が挙げられる。滑沢剤としては、好ましくはステアリン酸塩が挙げられ、より好ましくはステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0045】
これらの基剤や添加剤の含有量については、使用する添加成分の種類や経口医薬組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよい。好ましくは、上記添加剤の含有量としては、総量で、例えば10~98重量%、好ましくは12~35重量%が挙げられる。
【0046】
より具体的には、賦形剤の含有量については例えば5~98重量%、好ましくは6~60重量%、より好ましくは7~30重量%が挙げられ;ステアリン酸塩の含有量については例えば0.1~5重量%、好ましくは0.3~3重量%、より好ましくは0.5~1重量%、更に好ましくは0.7~0.9重量%が挙げられる。
【0047】
[剤型]
本発明の経口医薬組成物の剤型については、特に制限されず、固体状製剤、半固体状製剤、又は液体状製剤のいずれであってもよい。
【0048】
固体状製剤としては、具体的には、錠剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、散剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)、チュアブル錠等が挙げられる。半固体状製剤としては、具体的には、ゼリー剤等が挙げられる。液体状製剤としては、具体的には、液剤、懸濁剤、シロップ剤等が挙げられる。
【0049】
本発明の経口医薬組成物はイトプリド及び/又はその塩の苦味改善効果に優れているため、本来的に苦味を感じやすい剤型であっても、効果的に苦味改善できる。このような観点から、本発明の経口医薬組成物の有用性の高い剤型として、好ましくは散剤及び顆粒剤が挙げられ、より好ましくは散剤が挙げられる。
【0050】
本発明の経口医薬組成物を前記剤型に調製するには、(A)成分と、(B)成分及び/又は(C)成分と、必要に応じて添加される他の薬理成分、基剤、及び/又は添加剤とを用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0051】
[用法・用量]
本発明の経口医薬組成物は、イトプリド及び/又はその塩に基づく消化管運動賦活作用と、苦味改善に用いられる制酸剤に基づく制酸作用、及び/又は苦味改善に用いられるアズレン誘導体に基づく抗炎症作用とを発揮できるので、複合胃腸薬の用途に好適に使用される。
【0052】
本発明の経口医薬組成物の服用量については、用途、服用者の年齢等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1日当たりのイトプリド及び/又はその塩の服用量が75~150mg程度、好ましくは100~150mg程度となる量で、1日当たり1~3回程度服用すればよい。
【0053】
2.イトプリド及び/又はその塩の苦味改善方法
本発明は、更に、イトプリド及び/又はその塩の苦味改善方法であって、経口医薬組成物において、(A)イトプリド及び/又はその塩と共に、(B)制酸剤及び/又は(C)アズレン誘導体を含有させる、苦味改善方法も提供する。
【0054】
当該苦味改善方法において、使用される成分の種類、配合量、経口医薬組成物の剤型等については、前記「1.経口医薬組成物」の欄に記載の通りである。
【0055】
3.錠剤組成物
本発明の錠剤組成物は、(A)イトプリド及び/又はその塩、並びに(D)メチルメチオニンスルホニウム塩及び/又は(E)水酸化アルミニウムを含有することを特徴とする。以下、本発明の錠剤組成物について詳述する。
【0056】
[(A)イトプリド及び/又はその塩]
本発明の錠剤組成物は、(A)成分として、イトプリド及び/又はその塩を含有する。(A)の具体例及び好ましい例については、前記「1.経口医薬組成物」の[(A)イトプリド及び/又はその塩]の欄に記載の通りである。
【0057】
本発明の錠剤組成物における(A)成分の含有量については、原則として成型される錠剤の大きさ、1回当たりの服用錠数等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~90重量%が挙げられる。錠剤の硬度向上効果をより一層高める観点から、本発明の錠剤組成物における(A)成分の含有量としては、好ましくは1~60重量%、より好ましくは2.5~50重量%、さらに好ましくは4~40重量%が挙げられる。
【0058】
より具体的には、本発明の錠剤組成物が(D)成分を含む場合における(A)成分の含有量については、成型される錠剤の大きさ、1回当たりの服用錠数等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、30~90重量%が挙げられ、錠剤の硬度向上効果をより一層高める観点から、好ましくは35~85重量%、より好ましくは36~50重量%、さらに好ましくは36~40重量 %が挙げられる。
【0059】
また、本発明の錠剤組成物が(E)成分を含む場合における(A)成分の含有量については、成型される錠剤の大きさ、1回当たりの服用錠数等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~90重量%が挙げられ、錠剤の硬度向上効果をより一層高める観点から、好ましくは1~30重量%、より好ましくは1.5~10重量%、さらに好ましくは2~6重量%が挙げられる。
【0060】
[(D)メチルメチオニンスルホニウム塩]
本発明の錠剤組成物は、(D)成分として、メチルメチオニンスルホニウム塩を含有することができる。イトプリド及び/又はその塩とメチルメチオニンスルホニウム塩とを併用する場合、錠剤の硬度を効果的に向上することが可能になる。
【0061】
メチオニンスルホニウム塩は、胃腸粘膜修復成分として胃腸薬に配合して用いられる公知の成分である。メチルメチオニンスルホニウム塩の種類については、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されず、例えば、メチルメチオニンスルホニウムと、無機酸、有機酸、酸性アミノ酸、及び5’-ヌクレオタイドからなる群より選択される化合物との塩が挙げられる。上記無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。また、上記有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等が挙げられる。上記酸性アミノ酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられる。上記5’-ヌクレオタイドとしては、5’-イノシン酸、5’-アデニル酸、5’-グアニル酸等が挙げられる。
【0062】
これらのメチルメチオニンスルホニウム塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
これらのメチルメチオニンスルホニウム塩の中でも、錠剤の硬度向上効果をより一層効果的に高める観点から、好ましくはメチルメチオニンスルホニウムと無機酸との塩が挙げられ、より好ましくはメチルメチオニンスルホニウムと塩酸との塩(すなわち、メチルメチオニンスルホニウムクロライド)が挙げられる。
【0064】
本発明の錠剤組成物における(D)成分の含有量については、使用する(D)成分の種類、剤型、投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、5~90重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは20~60重量%、さらに好ましくは30~50重量%、一層好ましくは35~40重量%が挙げられる。
【0065】
また、本発明の錠剤組成物において、(A)成分と(D)成分の比率については、上記各成分の含有量に応じて定まるが、(A)成分100重量部当たりの(D)成分の総量で、例えば5~500重量部が挙げられる。錠剤の硬度向上効果をより一層効果的に高める観点から、(A)成分100重量部当たりの(D)成分の総量としては、好ましくは10~200重量部、より好ましくは50~150重量部、さらに好ましくは80~120重量部、特に好ましくは90~110重量部が挙げられる。
【0066】
[(E)水酸化アルミニウム]
本発明の錠剤組成物は、(E)成分として、水酸化アルミニウムを含有することができる。イトプリド及び/又はその塩と水酸化アルミニウムをと併用する場合、錠剤の硬度を効果的に向上することが可能になる。
【0067】
水酸化アルミニウムは、制酸剤として胃薬に配合して用いられる公知の成分である。水酸化アルミニウムを本発明の錠剤組成物に配合するための材料としては、例えば、水酸化アルミニウムゲル(例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲル;具体的には、第十八改正日本薬局方に規定される乾燥水酸化アルミニウムゲル、第十八改正日本薬局方に規定される乾燥水酸化アルミニウムゲル細粒)、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物等が挙げられる。
【0068】
これらのメチルメチオニンスルホニウム塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
これら水酸化アルミニウムの材料の中でも、錠剤の硬度向上効果をより一層効果的に高める観点から、好ましくは水酸化アルミニウムゲル、より好ましくは乾燥水酸化アルミニウムゲル、さらに好ましくは、第十八改正日本薬局方に規定される乾燥水酸化アルミニウムゲル、第十八改正日本薬局方に規定される乾燥水酸化アルミニウムゲル細粒が挙げられる。
【0070】
本発明の錠剤組成物における(E)成分の含有量については、剤型、投与量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10~99.9重量%、好ましくは20~99重量%、より好ましくは40~95重量%、さらに好ましくは60~95重量%、一層好ましくは80~95重量%、特に好ましくは88~95重量%が挙げられる。
【0071】
また、本発明の錠剤組成物において、(A)成分と(E)成分の比率については、上記各成分の含有量に応じて定まるが、(A)成分100重量部当たりの(E)成分の総量で、例えば400~5000重量部が挙げられる。錠剤の硬度向上効果をより一層効果的に高める観点から、(A)成分100重量部当たりの(E)成分の総量としては、好ましくは1000~3000重量部、より好ましくは1500~2500重量部、さらに好ましくは1800~2200重量部が挙げられる。
【0072】
なお、上記の(E)成分の含有量とは、水酸化アルミニウムの量をいい、例えば、(E)成分の配合のために用いる材料が、水酸化アルミニウム以外の他の成分(例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲルに含まれ得る水酸化アルミニウム以外の成分、乾燥水酸化アルミニウムゲル細粒に含まれ得る水酸化アルミニウム以外の成分及び賦形剤、水酸化アルミニウムを含む共沈生成物に含まれる、水酸化アルミニウム以外の共沈塩等)を含む場合は、当該他の成分を除外した量をいう。
【0073】
[その他の成分]
本発明の錠剤組成物は、前記成分の他に、その用途に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤(水酸化アルミニウム以外)、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤(メチルメチオニンスルホニウム塩以外)、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス末、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0074】
また、本発明の錠剤組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、錠剤への製剤化に必要とされる添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、結合剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、矯味剤、増粘剤、色素、pH調整剤、緩衝剤、キレート剤等が挙げられる。
【0075】
上記添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の錠剤組成物には、上記の添加剤の中でも、賦形剤、滑沢剤、及び/又は崩壊剤を含むことが好ましい。賦形剤、滑沢剤、及び/又は崩壊剤としては、好ましくは、ケイ酸塩(より好ましくはケイ酸アルミニウム等)、糖(より好ましくは乳糖等)、ステアリン酸塩(より好ましくはステアリン酸マグネシウム等)、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース等)等が挙げられる。
【0076】
また、上記添加剤の含有量については、使用する添加剤の種類等に応じて適宜設定される。好ましくは、上記添加剤の含有量としては、総量で、例えば10~40重量%、好ましくは15~35重量%、より好ましくは20~30重量%が挙げられる。
【0077】
より具体的には、ケイ酸塩の含有量については、例えば2~7重量%、好ましくは3~5.5重量%、より好ましくは3.5~4.8重量%が挙げられ;糖の含有量については、例えば5~35重量%、好ましくは8~30重量%、より好ましくは10~25重量%が挙げられ;ステアリン酸塩の含有量については、例えば0.3~1.5重量%、好ましくは0.5~1.2重量%、より好ましくは0.7~0.9重量%が挙げられ;セルロース誘導体の含有量については、例えば2~7重量%、好ましくは3~5重量%、より好ましくは3.5~4重量%が挙げられる。
【0078】
[錠剤の硬度]
本発明の錠剤組成物は、錠剤に成型された場合、(D)成分及び/又は(E)成分を有しない場合に比べて向上した硬度を備えることが可能になっている。具体的な硬度については、(A)成分以外の成分の組成等により異なりうるが、例えば、40N以上、好ましくは45~500N、より好ましくは60~500N、さらに好ましくは80~500N、一層好ましくは100~500N、特に好ましくは120~500N、120~400N、120~300N、120~200N、又は120~150Nが挙げられる。本発明において、錠剤の硬度は、ロードセル式錠剤硬度計によって測定される値を指す。
【0079】
[製剤形態]
本発明の錠剤組成物の形態としては、錠剤、及び錠剤に成型されることを前提とした任意の形態(例えば、造粒前の粉末組成物、打錠前の造粒物(顆粒)等)が挙げられる。
【0080】
また、本発明の錠剤組成物が錠剤形態である場合、錠剤は、素錠であってもよいし、必要に応じて、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤等でコーティングがなされたものであってもよい。
【0081】
また、本発明の錠剤の1錠当たりの重量については、1回当たりの服用錠数、(A)成分、(D)成分、(E)成分、又はさらにその他の成分の含有量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば100~1500mg、好ましくは130~1200g程度が挙げられる。
【0082】
[製造方法]
本発明の錠剤組成物は、公知の製造方法に従って得ることができる。具体的には原料成分を混合することによって粉末組成物とすることにより;粉末組成物を造粒して顆粒とすることにより;原料成分の一部を造粒して顆粒とし、原料成分の他部の顆粒と混合して顆粒混合物とすることにより;又は、上記粉末組成物、顆粒、又は顆粒混合物を打錠成型に供することによって製造できる。
【0083】
打錠成型は、単発打錠機、ロータリー式打錠機、高速回転式打錠機、静圧プレス機等の装置を用いて行うことができる。また、打錠成型する際の打錠圧については、錠剤を成型可能である限り、特に制限されないが、例えば5~20kN程度、好ましくは10~15kN程度が挙げられる。
【0084】
4.錠剤の硬度の向上方法
本発明は、更に、イトプリド及び/又はその塩を含む錠剤の硬度を向上させる方法であって、錠剤組成物において、(A)イトプリド及び/又はその塩と共に、(D)メチルメチオニンスルホニウム塩及び/又は(E)水酸化アルミニウムを含有させる、前記硬度の向上方法も提供する。
【0085】
当該硬度向上方法において、使用される成分の種類、配合量、錠剤組成物の形態等については、前記「3.錠剤組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例0086】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0087】
[試験例1]
表1に示す各成分を混合し、粉末剤を調製し、呈味試験の熟練者11名(20歳代~40歳代男女)を評価者として呈味の評価を行った。また、表2に示す各成分を混合し、粉末剤を調製し、呈味試験の熟練者5名(20歳代~40歳代男女)を評価者として呈味の評価を行った。呈味としては、苦味(先味として感じられる不快味)及びえぐ味(後味として感じられる不快味)を評価した。評価者には、各粉末剤の呈味を評価する前に水道水で口を洗浄させた。
【0088】
呈味の評価は、各粉末剤の2000mgを口に含めて呈味を確認した後に吐き出し、呈味を以下の判定基準に従って採点した。比較例1の粉末剤による苦味の評点を1とした場合の各実施例の粉末剤による苦味の評点の相対値を、苦味改善指数として得た。苦味改善指数が1を上回ると、苦味が改善されたと評価できる。同様に、比較例1の粉末剤によるえぐ味の評点を1とした場合の各実施例の粉末剤によるえぐ味の評点の相対値を、えぐ味改善指数として得た。苦味改善指数が1を上回ると、えぐ味が改善されたと評価できる。結果を表1に示す。
【0089】
<苦味の判定基準>
4点:全く苦くない
3点:あまり苦くない
2点:やや苦い
1点:苦い
0点:とても苦い
【0090】
<えぐ味の判定基準>
4点:全くえぐくない
3点:あまりえぐくない
2点:ややえぐい
1点:えぐい
0点:とてもえぐい
【0091】
【0092】
【0093】
表1及び2から明らかな通り、イトプリド塩酸塩に制酸剤又はアズレン誘導体を配合した実施例1~6の経口医薬組成物では、イトプリド塩酸塩特有の苦味の改善効果が認められた。さらに、実施例2,3,4,6の経口医薬組成物では、当該苦味だけでなくイトプリド塩酸塩特有のえぐ味も改善されるという格別顕著な不快味改善効果が認められた。
【0094】
[試験例2]
表3に示す組成の錠剤を製造した。具体的には、表3に示す成分を所定量混合し、得られた混合粉末組成物を静圧プレス機(TB-20H-V09、NPaシステム株式会社)にて10kN(比較例2,3及び実施例7)又は15kN(比較例4及び実施例8)の打圧で打錠し、1錠当たり130mg、直径8mmの円盤状(比較例2,3及び実施例7)又は1錠当たり1200mg、直径15mmの円盤状(比較例4及び実施例8)の錠剤(素錠)を得た。得られた各錠剤について、ロードセル式錠剤硬度計(PC-30、岡田精工株式会社)によって10~11錠の硬度を測定し、平均値を算出した。結果を表3に示す。
【0095】
【0096】
表3から明らかなとおり、イトプリド塩酸塩にメチルメチオニンスルホニウム塩又は水酸化アルミニウムを配合した錠剤組成物から成型された実施例7,8の錠剤は、それぞれ、メチルメチオニンスルホニウム塩又は水酸化アルミニウムを含まない比較例2,4の錠剤に比べて硬度が顕著に向上していた。
【0097】
処方例(I)
表4及び表5に示す処方の経口医薬組成物を調製した。いずれの経口医薬組成物についても、イトプリド塩酸塩特有の苦味の改善効果が認められた。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
処方例(II)
表7及び表8に示す処方の錠剤組成物を調製した。いずれの錠剤組成物についても、硬度が顕著に向上していた。
【0102】
【0103】