(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190387
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用複合活物質およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20221219BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20221219BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221219BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20221219BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/36 C
H01M4/134
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098686
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石塚 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】荒川 太地
(72)【発明者】
【氏名】岩嶋 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】三崎 日出彦
(72)【発明者】
【氏名】摩庭 篤
(72)【発明者】
【氏名】梶田 徹也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 壽也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 昌則
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA02
5H050CA04
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】 容量維持率及びクーロン効率が高いリチウム二次電池用複合活物質を提供すること。
【解決手段】 SiまたはSi化合物、非晶性炭素及び空隙を含むリチウム二次電池用複合活物質であって、空隙の周囲にSiまたはSi化合物が存在し、SiまたはSi化合物が該非晶性炭素と付着していることを特徴とするリチウム二次電池用複合活物質。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiまたはSi化合物、非晶性炭素及び空隙を含むリチウム二次電池用複合活物質であって、空隙の周囲にSiまたはSi化合物が存在し、SiまたはSi化合物が該非晶性炭素と付着していることを特徴とするリチウム二次電池用複合活物質。
【請求項2】
前記SiまたはSi化合物の体積に対する前記空隙の体積の比が0.5~50である請求項1に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
【請求項3】
前記マトリクスに含まれる前記空隙一つ当たりに収容される前記SiまたはSi化合物の平均個数が4以下である請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
【請求項4】
前記SiまたはSi化合物と、前記SiまたはSi化合物を収容する前記空隙の内壁面との最短距離が10nm以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
【請求項5】
前記複数の空隙のそれぞれの空隙において、その周囲に配置された空隙までの最短距離が1.0μm以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
【請求項6】
前記リチウム二次電池用複合活物質の外側に外層をさらに有し、
前記外層が、結晶性炭素、又は、10nm以上の細孔径を有する非晶性炭素を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
【請求項7】
前記結晶性炭素が、以下の条件(1)~(3)の少なくとも1つを満たす、請求項6に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
(1)ICP発光分光分析法による26元素(Al、Ca、Cr、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、V、Zn、Zr、Ag、As、Ba、Be、Cd、Co、Cu、Mo、Pb、Sb、Se、Th、Tl、U)の不純物半定量値より求めた純度が99重量%以上であること。
(2)酸素フラスコ燃焼法によるイオンクロマトグラフィー(IC)測定法によるS量が1重量%以下であること。
(3)BET比表面積100m2/g以下であること。
【請求項8】
前記複合活物質の粒径(D50)が0.3~50μmである請求項1~70のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
【請求項9】
前記複合活物質のBET比表面積が100m2/g以下である請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用複合活物質。
【請求項10】
請求項1に記載のリチウム二次電池用複合活物質を製造する方法であって、
前記SiまたはSi化合物に高分子膜を被覆して第1粒子を得る第1工程と、
前記第1粒子に非晶性炭素の前駆体を混合または被覆して第2粒子を得る第2工程と、
複数の前記第2粒子を集合させて焼成し、焼成体を形成する第3工程と
さらに充放電する第4工程を含む、リチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
【請求項11】
前記高分子膜が、モノマー、開始剤及び分散剤を用いて形成される、請求項10に記載のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
【請求項12】
第3工程の後、焼成体に炭素被覆する工程を含む、請求項10又は11に記載のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
【請求項13】
前記非晶性炭素の前駆体がポリアクリロニトリルである請求項10~12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法。
【請求項14】
請求項1~9ずれか一項に記載のリチウム二次電池用複合活物質を含むリチウム二次電池用電極組成物。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用複合活物質を含むリチウム二次電池用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用複合活物質およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は比較的高いエネルギー密度、軽量、長寿命といった特徴のため、家庭用電化製品において広く使用されている。しかし、電気自動車開発の進展に伴い、大容量、高速充放電特性、良好なサイクル特性、かつ安全性に優れた電池の開発に対する要望が一層増大している。このような高出力用途には、既存のリチウム二次電池において使用されるものよりも比容量の高い電極が必要となる。
【0003】
現在、炭素系材料(例えば、黒鉛)が市販のリチウム二次電池における主要な負極材料として用いられているが、その充電容量は黒鉛の形態において、グラム当たり約372ミリアンペア時(mAh/g)程度である。近年、炭素に代わる高容量の負極材料として盛んに研究されている物質としてシリコンが挙げられる。シリコンの理論容量は約4200mAh/gと黒鉛の10倍以上である。しかし、シリコンを負極材料として用いる場合、シリコンの低い電子伝導性や、充放電に伴うシリコンの大きな体積変化による粒子の崩壊、連続的な電解液の分解、などの課題を解決する必要がある。
【0004】
これらの課題を解決するべく、電子伝導性材料とシリコンを組み合わせたり、体積変化を緩和するための空隙を導入したりするといった取り組みがなされてきた。非特許文献1ではシリコンと炭素を組み合わせることで電子伝導性と容量の向上を部分的に達成している。しかし、膨張収縮に伴う連続的な電解液の分解が抑制できておらず、充放電効率が黒鉛に比べて低いなどの課題がある。また、特許文献1において、複合活物質を導電性マトリクスに内包することで導電性と体積変化の緩和を達成できると報告している。該特許には材料の合成法および電池評価結果について具体的な記述が存在しないが、活物質周囲に空隙が存在しないために体積変化による応力を直接緩和することができず、連続的な電解液の分解が抑制できないため、充放電効率の劣化が大きいと容易に推測される。
【0005】
これまで述べたように、リチウム二次電池に使用するための改善された負極が依然として必要とされている。とりわけ、安定な負極性能を達成することは、多くの高容量材料にとって課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kong Lijuan et al.,Electrochimica Acta,2016,198,144-155.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、近年、電池の使用安全性の点から、容量が高いことだけでなく、充放電を繰り返した後においても電極材料の体積が膨張しないことが求められている。電極材料の体積膨張が大きいと、電解液の液漏れの発生や、電池の寿命の低下が起きる。また、近年、電極材料に対する要求特性が非常に高まってきており、サイクル特性に対する要求水準もより一層高まっている。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて、容量維持率及びクーロン効率が高いリチウム二次電池用複合活物質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来技術について鋭意検討を行った結果、サイクル特性評価の前にエージングを行うことでシリコンの構造を変化させ、炭素マトリックス内壁面に沿った構造(中空構造)を形成する。これにより、シリコンと炭素マトリックス間の接触面積が大きくなり、リチウム導電性が向上することで充放電時のリチウム供給効率が向上し、長期サイクル安定性も向上することを見出した。
【0011】
本発明は以下の実施態様と有するものである。
【0012】
SiまたはSi化合物、非晶性炭素及び空隙を含むリチウム二次電池用複合活物質であって、空隙の周囲にSiまたはSi化合物が存在し、SiまたはSi化合物が該非晶性炭素と付着していることを特徴とするリチウム二次電池用複合活物質である。
【0013】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質によれば、容量維持率が高く及びクーロン効率が高く、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を実現できる。
【0014】
上記リチウム二次電池用複合活物質においては、前記SiまたはSi化合物の体積に対する、前記空隙体積の比が0.5~50であることが好ましい。
【0015】
上記リチウム二次電池用複合活物質においては、前記空隙一つの当たりに収容される前記SiまたはSi化合物の平均個数が4以下であることが好ましい。
【0016】
上記リチウム二次電池用複合活物質においては、前記SiまたはSi化合物と、前記SiまたはSi化合物を収容する前記空隙の内壁面との最短距離が10nm以下であることが好ましい。
【0017】
上記リチウム二次電池用複合活物質においては、前記複数の空隙のそれぞれの空隙において、その周囲に配置された空隙までの最短距離が、1.0μm以下であることが好ましい。
【0018】
上記リチウム二次電池用複合活物質は、外側に外層をさらに有し、前記外層が、結晶性炭素、又は、10nm以上の細孔径を有する非晶性炭素を含むことが好ましい。
【0019】
上記リチウム二次電池用複合活物質においては、前記結晶性炭素が、以下の条件(1)~(3)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(1)ICP発光分光分析法による26元素(Al、Ca、Cr、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、V、Zn、Zr、Ag、As、Ba、Be、Cd、Co、Cu、Mo、Pb、Sb、Se、Th、Tl、U)の不純物半定量値より求めた純度が99重量%以上であること。
(2)酸素フラスコ燃焼法によるイオンクロマトグラフィー(IC)測定法によるS量が1重量%以下であること。
(3)BET比表面積100m2/g以下であること。
【0020】
上記リチウム二次電池用複合活物質の粒径(D50)は0.3~50μmであることが好ましい。
【0021】
上記リチウム二次電池用複合活物質のBET比表面積は100m2/g以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、上述したリチウム二次電池用複合活物質を製造する方法であって、前記SiまたはSi化合物に、高分子膜を被覆して第1粒子を得る第1工程と、前記第1粒子に非晶性炭素の前駆体を混合または被覆して第2粒子を得る第2工程と、前記第2粒子を集合させて焼成し、焼成体を形成する第3工程と、さらに充放電する第4工程を含む、リチウム二次電池用複合活物質の製造方法である。
【0023】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法によれば、初回充電時に体積変化が抑制された電極材料の作製が可能であり、かつ高容量でサイクル特性に優れたリチウム二次電池を実現できるリチウム二次電池用複合活物質を製造することができる。
【0024】
上記製造方法においては、前記高分子膜は、モノマー、開始剤及び分散剤を用いて形成されることが好ましい。
【0025】
上記製造方法は、第3工程の後、焼成体に炭素被覆する工程を含むことが好ましい
上記製造方法においては、前記非晶性炭素の前駆体がポリアクリロニトリルであることが好ましい。
【0026】
また本発明は、上記リチウム二次電池用複合活物質を含むリチウム二次電池用電極組成物である。
【0027】
本発明のリチウム二次電池用電極組成物によれば、初回充電時に体積変化が抑制された電極材料の作製が可能であり、かつ高容量でサイクル特性に優れたリチウム二次電池を実現できるリチウム二次電池の電極を製造することができる。
【0028】
さらに本発明は、上記リチウム二次電池用複合活物質を含む電極である。
【0029】
本発明の電極によれば、初回充電時に体積変化が抑制され、かつ高容量でサイクル特性に優れたリチウム二次電池を実現できる。
【0030】
なお、本発明において、「非晶性炭素」とは、(002)面のX線回折ピークの半値幅が3°以上である炭素をいう。
【0031】
また、「結晶性炭素」とは、(002)面のX線回折ピークの半値幅が3°未満である炭素をいう。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、初回の充電後の体積膨張が抑制された電極材料の作製が可能で、かつ、高容量でサイクル特性に優れたリチウム二次電池を実現できるリチウム二次電池用複合活物質、リチウム二次電池用電極組成物、リチウム二次電池用電極並びにリチウム二次電池用複合活物質の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<リチウム二次電池用複合活物質>
以下に、本発明のリチウム二次電池用複合活物質(複合材料)について、
図1及び
図6を用い、本発明の一例を示しながら詳述する。
図1は、本発明のリチウム二次電池用複合活物質の一例を示す模式図、
図6は本発明の実施例1で製造した複合活物質の断面SEM像(×30,000倍)である。
【0034】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質は、Si系材料及び非晶性炭素を含むリチウム二次電池用複合活物質であって、該Si系材料が該非晶性炭素内に内包されており、該Si系材料が該非晶性炭素内に内包された構造が複数存在するリチウム二次電池用複合活物質である。本発明のリチウム二次電池用複合活物質においては、非晶性炭素が空隙を内包し、Si系材料内に空隙が存在する。
【0035】
詳細に述べると、
図1に示すように、本発明のリチウム二次電池用複合活物質100は、複数の空隙3を有するマトリクス1と、空隙3内に収容されるSi系材料2とを含み、マトリクス1が非晶性炭素を含むリチウム二次電池用複合活物質である。Si系材料は、SiまたはSi合金である。
【0036】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質によれば、容量維持率及びクーロン効率が高いリチウム二次電池を実現できる。
【0037】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質は、
図6のように、非晶性炭素に複数の空隙3を内包し、Si系材料2内に空隙3を内包する構造を有する。すなわち、マトリクス1内に複数の空隙3が含まれ、Si系材料2内に空隙3が収容されている。
【0038】
さらに、複合活物質100は、マトリクス1内に複数の空隙3を有し、Si系材料2内に空隙3を収容しているため、非晶性炭素からなるシェル内の空隙にコアとしてSi系材料を収容したコア-シェル粒子の集合体と比べて以下の利点を有する。すなわち、電子やリチウムイオンの導通パスがマトリクス1により十分に確保され、電子やリチウムイオンの移動に対する抵抗が低減される。このため、レート特性の低下や充放電に伴う容量維持率の低下が抑制される。
【0039】
以上より、本発明のリチウム二次電池用複合活物質は、リチウム二次電池で使用される電極材料(特に負極材料)に使用される複合活物質として有用である。
【0040】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質は非晶性炭素を含む。非晶性炭素の含有率は、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。非晶性炭素の含有率が20質量%以上であることで、緻密性が向上し、複合活物質内への電解液の侵入を抑制することができることでサイクル特性が向上する。
【0041】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質における空隙は、SiまたはSi化合物の膨張応力を緩和するために導入される。このため、SiまたはSi化合物の体積に対する空隙体積の比が0.5~50であることが好ましく、より好ましくは1~30であり、より一層好ましくは2~10、さらに好ましくは3~10、特に好ましくは3~7である。体積比がこの範囲にあることで、複合活物質の膨張が緩和され、かつ、複合活物質の体積容量が低くなりにくい。
【0042】
SiまたはSi化合物の体積に対する空隙体積の比の算出方法として、以下の方法が挙げられる。
【0043】
まず、断面加工装置を用いてリチウム二次電池用負極を電極の垂直方向(厚さ方向)に切断する。あるいは、複合活物質を切断する。断面加工に用いる装置としては、より明瞭な画像を得るためにクロスセクションポリッシャーを用いることが好ましい。その後、顕微鏡を用いて、得られた断面部分を観察する。ここで用いられる顕微鏡としては、解像度や観察範囲を十分得る必要があるため、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いることが好ましい。ここで得られた顕微鏡像のことを、以下、「断面SEM像」と呼ぶことにする。その後、得られた2次電子像の印刷画像の上に透明シートを2枚重ね、1枚のシートにはSiまたはSi化合物に相当する部分をペンで塗りつぶし、もう1枚のシートには空隙に相当する部分をペンで塗りつぶす。透明シートとしては、作業性が良いことからOHPシート(オーバーヘッドプロジェクター用シート)を用いることが好ましい。次に、それぞれの画像をJPEG又はTIFFデータに変換し、Nano Hunter NS2K-Pro(ナノシステム株式会社)を用いて2値化し、SiまたはSi化合物に相当する部分の面積S1と空隙に相当する部分の面積S2を算出する。その後、こうして算出された面積S1及びS2を、SiまたはSi化合物に相当する部分の体積V1と空隙に相当する部分の体積V2に換算する。このとき、SiまたはSi化合物に相当する部分及び空隙に相当する部分を円であると仮定し、以下の式(A)を用いて円の半径rを算出し、算出された半径rに基づき、以下の式(B)を用いて体積Vを算出する。こうして、SiまたはSi化合物の体積に対する空隙の体積の比を算出できる。
r=(面積/π)1/2・・・(A)
V=4πr3/3・・・(B)
本発明における非晶性炭素の(002)面のX線回折ピークの半値幅は15°以下であることが好ましく、さらに好ましくは3°~12°である。非晶性炭素の(002)面のX線回折ピークの半値幅が15°以下であることで、初回の充放電効率が向上する。
【0044】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質において、非晶性炭素に含まれる空隙一つ当たりに収容されるSiまたはSi化合物の平均個数は、4以下であることが好ましく、さらに好ましくは2以下である。平均個数が4以下であることで、電子伝導性がさらに担保され、かつ、SiまたはSi化合物の膨張が効率的に緩和される。
【0045】
非晶性炭素に含まれる空隙一つ当たりに内包されるSiまたはSi化合物の平均個数の算出方法として、以下の方法が挙げられる。
【0046】
上述の方法で得られた複合活物質の断面SEM像について、SiまたはSi化合物が内包されている空隙を複数選択し、それらの空隙に内包されるSiまたはSi化合物の個数の合計値を計測する。選択する空隙の個数は多いほど良いが、作業性の観点から10個以上、好ましくは20個以上である。計測したSiまたはSi化合物の個数の合計値を、計測した空隙の数で割って平均値を計算することで、非晶性炭素中の空隙一つの当たりに収容されるSiまたはSi化合物の平均個数を算出することができる。
【0047】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質中のSiまたはSi化合物と、SiまたはSi化合物を収容する空隙の内壁面との最短距離は10nm以下が好ましい。最短距離が10nm以下であることで、電子およびリチウムイオンの伝導性がより向上する。複合活物質中のSiまたはSi化合物と、SiまたはSi化合物を収容する空隙の内壁面との最短距離の算出方法としては、断面SEM像上で距離を計測する方法が挙げられる。上記最短距離は、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがより一層好ましい。特に、上記最短距離は0nmであることが好ましい。すなわち、SiまたはSi化合物と空隙の内壁面とが接触していることが好ましい。この場合、充電時にSiまたはSi化合物が膨張する際に、SiまたはSi化合物が空隙の内壁面に加える応力がより効果的に低減される。
【0048】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質においては、複数の空隙のそれぞれの空隙において、その周囲に配置された空隙までの最短距離が1.0μm以下、より好ましくは0.7μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下であることが好ましい。この場合、SiまたはSi化合物と電解液との接触がより抑制され、電池の寿命がより向上する。また、上記最短距離が1.0μm以下であることで、マトリクス1による電子伝達効果が高まる。また、マトリクス1が断面で見て網目状であることが電子伝達の点で好ましい。
【0049】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質の粒径(D50:50%体積粒径)は、0.3~50μmであることが好ましく、0.3~40μmであることがより好ましい。リチウム二次電池用複合活物質の粒径(D50)が0.3~50μmであることで電極表面の平滑性や電極中の複合活物質の密度を向上させることができる。すなわち、上記粒径が0.3μm以上であることで、リチウム二次電池用複合活物質を含む電極形成用組成物を塗工する際に複数の複合活物質からなる凝集体が形成されにくくなり、電極形成用組成物の塗工性が向上するため、電極表面の平滑性をより向上させることができる。また、上記粒径が50μm以下であることで、電極における複合活物質の充填性がより向上し、電極中の複合活物質の密度をより向上させることができる。
【0050】
なお、粒径(D90:90%体積粒径)は、1~75μmであることが好ましく、2~60μmであることがより好ましい。リチウム二次電池用複合活物質の粒径(D90)が1~75μmであることで電極表面の平滑性や電極中の複合活物質の密度を向上させることができる。すなわち、上記粒径が1μm以上であることで、リチウム二次電池用複合活物質を含む電極形成用組成物を塗工する際に複数の複合活物質からなる凝集体が形成されにくくなり、電極形成用組成物の塗工性が向上するため、電極表面の平滑性をより向上させることができる。また、上記粒径が75μm以下であることで、電極における複合活物質の充填性がより向上し、電極中の複合活物質の密度をより向上させることができる。
【0051】
D50およびD90は、レーザー回折散乱法により測定した累積粒度分布の累積50%、累積90%の粒径にそれぞれ該当する。
【0052】
なお、測定に際しては、リチウム二次電池用複合活物質を液体に加えて超音波などを利用しながら激しく混合し、作製した分散液を、装置(レーザ粒度分布計)にサンプルとして導入し、粒径(D50又はD90)の測定を行う。該複合活物質と液体がうまくなじまない時は、必要に応じて界面活性剤などを添加しても良い。液体としては作業上、水やアルコール、低揮発性の有機溶媒を用いることが好ましい。
【0053】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質は、BET比表面積が100m2/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5~70m2/g、特に好ましくは0.5~30m2/gである。BET比表面積が100m2/g以下であることで、前記複合活物質の内部に空隙を導入しつつ、電解液との接触及び充放電により活物質表面に形成される固体電解質層(SEI)を抑制し、初回充放電効率と容量維持率を改善できる。
【0054】
なお、BET比表面積は、窒素吸着によるBET法(JIS Z 8830、一点法)を用いて測定された値である。
【0055】
本発明でいうSiとは、汎用グレードの金属シリコン以上の純度のものであれば特に限定されない。具体的には、このようなSiとしては、純度が98重量%程度の汎用グレードの金属シリコン、純度が2~4Nのケミカルグレードの金属シリコン、塩素化して蒸留精製した4Nより高純度のポリシリコン、単結晶成長法による析出工程を経た超高純度の単結晶シリコン、もしくはそれらに周期表13族もしくは15族元素をドーピングして、p型またはn型としたもの、半導体製造プロセスで発生したウエハの研磨や切断の屑、プロセスで不良となった廃棄ウエハなどが挙げられる。
【0056】
本発明でいうSi化合物とは、Si合金とSiを含む非金属化合物をいう。
【0057】
Si合金とは、Siが主成分の合金である。前記Si合金において、Si以外に含まれる元素としては、周期表2~15族の元素の一つ以上が好ましく、合金に含まれる相の融点が900℃以上となる元素が好ましい。周期表2~15族の元素の中でも、2~4、7、8、11~14族が好ましい。
【0058】
Siを含む非金属化合物とはSiが主成分の酸化物、炭化物、窒化物、フッ化物、硫化物、リン化物、水素化物である。
【0059】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質において、SiまたはSi化合物の粒径(D50)は0.01~5μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.01~1μmであり、特に好ましくは0.05~0.6μmである。D50が0.01μm以上であると、表面酸化による容量や初期効率が低下しにくい。D50が5μm以下であると、リチウム挿入による膨張で割れが生じにくく、サイクル劣化がより起こりにくい。なお、粒径(D50)はレーザー粒度分布計で測定した体積平均径である。
【0060】
SiまたはSi化合物の含有量は、SiまたはSi化合物及び非晶性炭素の合計100質量部において5~80質量部であることが好ましく、15~50質量部であることが特に好ましい。SiまたはSi化合物及び非晶性炭素の合計100質量部に対するSiまたはSi化合物の含有量が5質量部以上である場合、より十分に大きい容量が得られる。SiまたはSi化合物及び非晶性炭素の合計100質量部に対するSiまたはSi化合物の含有量が80質量部以下である場合、サイクル劣化がより起こりにくい。
【0061】
本発明の非晶性炭素は、非結晶性を有する炭素であれば特に制限はないが、非晶性炭素としては、黒鉛以外の非晶質もしくは微結晶の炭素質物が好ましい。
【0062】
黒鉛以外の非晶質もしくは微結晶の炭素質物は、非晶性炭素の前駆体を焼成することで得られる。このような非晶性炭素の前駆体としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリイミド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シアネート樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ピロール、ドーパミン、アルギン酸アンモニウム、セルロース、グルコース、サッカリン、フルクトース等の糖類、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)、石油系ピッチ、メソフェーズピッチ、コークス、低分子重質油、またはそれらの誘導体等が挙げられる。その中でもポリアニリン、ポリピロール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリイミド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ドーパミン、グルコース、サッカリン、フルクトース等の糖類、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)、石油系ピッチ、またはそれらの誘導体等が好ましく、特に好ましくはポリアニリン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)またはそれらの誘導体である。
【0063】
非晶性炭素の前駆体を焼成する際の温度(焼成温度)は炭化する温度であればよく、300~1500℃であることが好ましく、特に好ましくは500~1300℃であり、より好ましくは600~1100℃である。焼成温度が300℃以上であると炭化が進行しやすい。一方、焼成温度が1500℃以下である場合、SiまたはSi化合物と後述する不活性ガスとの反応が起こりにくく、放電容量の低下が発生しにくくなる傾向にある。
【0064】
焼成は、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましく、用いる不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。その中でも窒素が好ましい。
【0065】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質において、非晶性炭素の含有量はSiまたはSi化合物及び非晶性炭素の合計100質量部において20~95質量部であることが好ましく、30~85質量部であることが特に好ましい。非晶性炭素の含有量がSiまたはSi化合物及び非晶性炭素の合計100質量部において20質量部以上である場合、非晶性炭素がSiまたはSi化合物を覆うことができ、導電パスが十分となって容量劣化が起こりにくい。非晶性炭素の含有量がSiまたはSi化合物及び非晶性炭素の合計100質量部において95質量部以下である場合、十分な容量が得られやすい。
【0066】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質は、さらに外側に外層をさらに有し、外層が、結晶性炭素、もしくは10nm以上の細孔径を有する非晶性炭素を含んでも良い。外層に結晶性炭素が存在することで、プレス成形により電極を製造する時に複合活物質同士間の密着性が向上したり、複合活物質表面の平滑性が向上したりする。その結果、電極の密度がより向上する。また、複合活物質が、外側に非晶性炭素を含む外層をさらに有する場合、非晶性炭素の細孔径としては10nm以上1000nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10nm以上500nm以下、特に好ましくは10nm以上200nm以下である。細孔径がこの範囲内にあることで、複合活物質と電解液とのなじみが良くなり、リチウム二次電池において充電容量が向上したり、レート特性が向上したりする。具体的には非晶性炭素の細孔径が10nm以上であると、複合活物質と電解液とのなじみが良好になり、細孔径が1000nm以下であると電極の密度が低下しにくくなり、リチウム二次電池においてSiと電解液との反応が起こりにくくなって、容量維持率が低下しにくくなる。
【0067】
外層における細孔径はBJH法によって測定することができる。測定装置としては、株式会社島津製作所 自動比表面積/細孔分布測定装置 Tristar 3000を用いることができる。
【0068】
非晶性炭素は、リチウム二次電池用複合活物質に含まれる非晶性炭素と同一でも異なってもよい。外層に含まれる非晶性炭素がリチウム二次電池用複合活物質に含まれる非晶性炭素と異なる場合、さらに充放電効率を向上できる。
【0069】
本発明の結晶性炭素は、結晶性を有するものであれば特に制限はないが、結晶性炭素としては、黒鉛由来の炭素が好ましい。
【0070】
黒鉛由来の炭素は、黒鉛を焼成することで得られる。このような黒鉛としては、天然黒鉛材、人造黒鉛等が挙げられる。その中でも通常グラファイトと呼ばれる天然黒鉛を薄片化した薄片化黒鉛が好ましい。
【0071】
本明細書においては、薄片化黒鉛とは、グラフェンシートの積層数が400層以下の黒鉛を意味する。なお、グラフェンシートは主にファンデルワールス力によって互いに結合している。
【0072】
薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの層の数は、リチウムイオンと化合可能な電池活物質と薄片化黒鉛とがより均一に分散し、リチウム二次電池用複合活物質を用いた電池材料の膨張がより抑制される点、および/又は、リチウム二次電池のサイクル特性がより優れる点で、300以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、150以下であることがさらに好ましい。グラフェンシートの層の数は、取り扱い性の点からは、5層以上であることが好ましい。
【0073】
なお、薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの層の数は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。
【0074】
薄片化黒鉛の平均厚みは、リチウム二次電池のレート特性がより優れる点で、40nm以下であることが好ましく、22nm以下であることがより好ましい。薄片化黒鉛の平均厚みは、製造手順が簡素化されることから、4nm以上であることが好ましい。
【0075】
なお、上記平均厚みの測定方法としては、TEMによって薄片化黒鉛を観察し、10個以上の薄片化黒鉛中の積層したグラフェンシートの層の厚みを測定して、その値を算術平均することによって平均厚みを得る方法が用いられる。
【0076】
薄片化黒鉛は、黒鉛化合物をその層面間において剥離し薄片化して得られる。
【0077】
薄片化黒鉛としては、例えば、いわゆる膨張黒鉛が挙げられる。
【0078】
膨張黒鉛中には、黒鉛が含まれており、膨張黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛を濃硫酸や硝酸や過酸化水素水等で処理し、グラフェンシートの隙間にこれら薬液をインターカレートさせ、さらに加熱してインターカレートされた薬液が気化する際にグラフェンシートの隙間を広げることによって得られる。なお、後述するように、膨張黒鉛を出発原料として所定のリチウム二次電池用複合活物質を製造することができる。つまり、リチウム二次電池用複合活物質中の黒鉛として、膨張黒鉛を使用することもできる。
【0079】
また、黒鉛として、球形化処理が施された膨張黒鉛も挙げられる。球形化処理の手順は後段で詳述する。なお、後述するように、膨張黒鉛に球形化処理を実施する際には、他の成分(例えば、ハードカーボン及びソフトカーボンの前駆体、リチウムイオンと化合可能な電池活物質など)と共に、球形化処理が実施されてもよい。
【0080】
結晶性炭素又は黒鉛は、以下の(1)~(3)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(1)純度が99重量%以上、若しくは不純物量が10000ppm以下であること。
(2)S量が1重量%以下であること
(3)BET比表面積が100m2/g以下であること。
【0081】
純度が99重量%以上、若しくは不純物量が10000ppm以下であると、不純物由来のSEI形成による不可逆容量が少なくなるため、初回の充電容量に対する放電容量である初回充放電効率が低くなりにくい傾向がある。
【0082】
S量が1重量%以下であると、(1)と同様に不可逆容量が少なくなるため、初回充放電効率が低くなりにくい。さらに好ましくは、S量が0.5重量%以下である。
【0083】
結晶性炭素又は黒鉛のBET比表面積は、さらに好ましくは、5~100m2/gであり、特に好ましくは、20~50m2/gである。結晶性炭素又は黒鉛のBET比表面積が100m2/g以下であると、結晶性炭素又は黒鉛と電解液とが反応する面積を小さくできるため、初回充放電効率が低くなりにくくなる。
【0084】
なお、結晶性炭素又は黒鉛の比表面積は、窒素吸着によるBET法(JIS Z 8830、一点法)を用いて測定したものである。
【0085】
不純物量の測定は、ICP発光分光分析法により、以下の26元素(Al、Ca、Cr、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、V、Zn、Zr、Ag、As、Ba、Be、Cd、Co、Cu、Mo、Pb、Sb、Se、Th、Tl、U)の不純物半定量値により測定する。また、S量の測定は、酸素フラスコ燃焼法で黒鉛を燃焼吸収処理した後、フィルターで濾過してイオンクロマトグラフィー(IC)測定により行う。
<リチウム二次電池用複合活物質の製造方法>
次に、本発明のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法について
図2~4を用いて説明する。
図2は、本発明のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法における第1粒子の一例を示す模式断面図、
図3は、本発明のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法における第2粒子の一例を示す模式断面図、
図4は、
図3の第2粒子の集合体の一例を示す模式断面図である。
【0086】
図2~
図4に示すように、本発明のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法は、上述したリチウム二次電池用複合活物質を製造する方法であって、SiまたはSi化合物に、高分子膜を被覆して第1粒子を得る第1工程と、第1粒子に非晶性炭素の前駆体を混合または被覆して第2粒子を得る第2工程と、複数の第2粒子を集合させ、その集合体を焼成し、焼成体を形成する第3工程と、さらに充放電する第4工程を含む。
【0087】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法によれば、初回充電時に体積変化が抑制された電極材料の作製が可能であり、かつ高容量でサイクル特性に優れたリチウム二次電池を実現できるリチウム二次電池用複合活物質を製造することができる。
【0088】
上記製造方法においては、高分子膜は、例えばモノマー、開始剤及び必要に応じて分散剤を用いて形成される。この溶液は分散剤を含むことが好ましい。
【0089】
上記製造方法においては、焼成は例えば不活性雰囲気下で行われる。
【0090】
また、上記第3工程は、上記第2粒子に、必要に応じて結晶性炭素を混合して第1混合物を得る工程と、第1混合物を造粒して圧密化し、第2混合物を得る工程と、第2混合物を粉砕および球形化処理して略球状の複合粒子を形成する工程と、該複合粒子を焼成体として不活性雰囲気中で焼成する工程とを含んでもよい。
【0091】
上記製造方法は、第3工程の後、焼成体に炭素被覆する工程をさらに含んでも含んでいなくてもよいが、含むことが好ましい。
【0092】
SiまたはSi化合物としては、粒径(D50)が0.01~5μmの粉末を使用することが好ましい。所定の粒径のSiまたはSi化合物を得るためには、上述のSiまたはSi化合物の原料(インゴット、ウエハ、粉末などの状態)を粉砕機で粉砕し、場合によっては分級機を用いる。SiまたはSi化合物の原料がインゴット、ウエハなどの塊の場合、最初はジョークラッシャー等の粗粉砕機を用いて粉末化した後、微粉砕装置を用いて微粉砕することができる。このような微粉砕装置としては、例えば、ボール、ビーズなどの粉砕媒体を運動させ、その運動エネルギーによる衝撃力や摩擦力、圧縮力を利用して被砕物を粉砕するボールミル、媒体撹拌ミルや、ローラによる圧縮力を利用して粉砕を行うローラミルや、被砕物を高速で内張材に衝突もしくは粒子相互に衝突させ、その衝撃による衝撃力によって粉砕を行うジェットミルや、ハンマー、ブレード、ピンなどを固設したローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕するハンマーミル、ブレードミル、ピンミル、ディスクミルや、剪断力を利用するコロイドミルや高圧湿式対向衝突式分散機「アルティマイザー」などを用いることができる。
【0093】
粉砕は、湿式粉砕、乾式粉砕のいずれも用いることができる。さらに微粉砕するには、例えば、湿式のビーズミルを用い、ビーズの径を段階的に小さくすること等により非常に細かい粒子を得ることができる。また、粉砕後に粒度分布を整えるため、乾式分級や湿式分級もしくはふるい分け分級を用いることができる。乾式分級は、主として気流を用い、分散、分離(細粒子と粗粒子の分離)、捕集(固体と気体の分離)、排出のプロセスが逐次もしくは同時に行われ、粒子相互間の干渉、粒子の形状、気流の乱れ、速度分布、静電気の影響などで分級効率を低下させないように、分級をする前に前処理(水分、分散性、湿度などの調整)を行うか、使用される気流の水分や酸素濃度を調整して行う。乾式で分級機が一体となっているタイプでは、一度に粉砕、分級が行われ、所望の粒度分布とすることが可能となる。
【0094】
所定の粒径のSiまたはSi化合物を得る別の方法としては、プラズマやレーザー等でSiまたはSi化合物を加熱して蒸発させ、不活性雰囲気中で凝固させて得る方法、ガス原料を用いてCVDやプラズマCVD等で得る方法があり、これらの方法は0.1μm以下の超微粒子を得るのに適している。
【0095】
SiまたはSi化合物の表面は改質しても改質しなくてもよいが、SiまたはSi化合物とモノマーの反応を促進させるために、あらかじめSiまたはSi化合物粒子表面を改質することが好ましい。ここでいう改質とは、表面改質剤を用いる化学反応によってSiまたはSi化合物の表面状態を変化させ、ポリマー(高分子膜)の被覆を容易にする工程である。表面改質剤としては、分子内にアルコキシド基、カルボキシ基、又はヒドロキシ基を含む分子、塩基および酸化剤からなる群より選ばれた1種以上の化合物を用いることが好ましい。具体的な表面改質剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系表面改質剤、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ系表面改質剤、p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系表面改質剤、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリル系表面改質剤、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリル系表面改質剤、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート系表面改質剤又は3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート系表面改質剤、テトラエトキシシラン、塩酸、過酸化水素、硝酸、硫酸、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、三酸化クロム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの酸化剤、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基が挙げられる。表面改質剤は、好ましくは3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、過酸化水素、硝酸、塩酸、アンモニア、水酸化ナトリウムの群から選ばれる1種以上、特に好ましくは3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、塩酸、アンモニアの群から選ばれる1種以上である。
【0096】
表面改質剤を用いる際には、SiまたはSi化合物100質量部に対して表面改質剤を0.1~800質量部添加することが好ましい。改質反応中の粒子の凝集を防ぐため、必要に応じてポリカルボン酸系の安定化剤を添加してもよい。改質反応を促進するため、必要に応じてアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は炭酸水素ナトリウムなどの水に溶けてアルカリ性を示す化合物や、塩酸、硝酸、酢酸又は硫酸などの水に溶けて酸性を示す化合物などの残存反応促進剤を添加してもよい。反応性が高く、金属化合物が残存しないことから、アンモニアまたは塩酸または硝酸であることが好ましい。残存反応促進剤を用いる場合、SiまたはSi化合物100質量部に対して残存反応促進剤を0.005~54質量部添加することが好ましい。反応に用いる溶媒は、表面改質剤を溶解させることが可能な溶媒であればよい。このような溶媒としては、水、エタノール、メタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられる。溶媒としては、必要に応じてこれらの2種以上の混合溶媒を用いても良い。表面改質剤として3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン又はテトラエトキシシランを用いてSi粒子表面を改質する際には、水とエタノールの混合溶媒を用いることが好ましい。該混合溶媒における各溶媒の比率は、エタノール100質量部に対して、水が10~100質量部であることが好ましい。該混合溶媒中のエタノールに対する水の比率がこの範囲内であることで、溶媒中のSiまたはSi化合物が分散しやすく、なおかつ、改質反応が十分に進みやすくなる。
【0097】
SiまたはSi化合物の表面を改質した後に、必要に応じて、ボールミルやビーズミルを用いて上記表面改質SiまたはSi化合物を解砕して微粒化しても良い。解砕に用いるボールとしてはジルコニア又はアルミナが好ましい。解砕時間は1~24時間が好ましく、より好ましくは1~12時間である。
【0098】
また、表面改質SiまたはSi化合物を解砕して微粒化した後、必要に応じて遠心分離により微粒化された表面改質SiまたはSi化合物を分離してもよい。このとき、遠心分離において、SiまたはSi化合物表面を改質する際に用いた溶媒を水に置換してもよい。
【0099】
SiまたはSi化合物とモノマーの反応中は、マグネチックスターラー、スリーワンモーター、ホモミキサー、インラインミキサー、ビーズミル、ボールミルなどの一般的な混合機や攪拌機を用い、各原料を均一に混合することが好ましい。反応温度は40~100℃が好ましい。また、反応時間は0.5~72時間が好ましく、より好ましくは0.5~24時間である。反応時間がこの範囲にあることで、SiまたはSi化合物とモノマーの反応反応が十分に進行し、なおかつ、生産性が低下しにくくなる。
【0100】
SiまたはSi化合物に反応させるモノマーとしては、例えば、スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸イソボニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸トリエチレングリコールなどのメタクリル酸系、イタコン酸無水物、イタコン酸、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアクリル酸系のモノマー、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N、N’-ジメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミドなどのメタクリルアミド系のモノマー、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-メチロ-ルアクリルアミド、N-エチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド系のモノマー、安息香酸ビニル、ジエチルアミノスチレン、ジエチルアミノアルファーメチルスチレン、p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、p-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム塩、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、酢酸ブチル、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、アクリロニトリル、アニリン、ピロール、ウレタン重合に用いられるポリオール系のモノマー又はイソシアネート系のモノマーが挙げられる。高分子モノマーは、好ましくはスチレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸イソボニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸トリエチレングリコールなどのメタクリル酸系のモノマー、イタコン酸無水物、イタコン酸、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアクリル酸系のモノマー、ジビニルベンゼン、アクリロニトリルであり、さらに好ましくは、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリロニトリル、特に好ましくはスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル又はアクリロニトリルである。
【0101】
用いる開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、ジイソブチリルパーオキシド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、1,1-ジ(tert-へキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルヒドロパーオキシドやジイソブチリルパーオキシド、tert-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカルボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルモノカルボネート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルオキシアセテート、ジ-tert-ヘキシルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド等の過酸化物が挙げられる。
【0102】
モノマーのスラリーを得る際に用いる溶媒としては、例えば、水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール又はトルエンなどが挙げられ、好ましくは水、エタノール又はメタノール、特に好ましくは水又はエタノールである。これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0103】
モノマーのスラリーにおけるモノマーの含有量は、0.5~20重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.5~10重量%である。モノマーの含有量がこの範囲であることで、SiまたはSi化合物周囲の被覆体が十分な厚さを有することが可能となる。
【0104】
モノマーのスラリーにおける開始剤の含有量は、0.01~3重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.01~1重量%である。
【0105】
モノマーのスラリーは、SiまたはSi化合物の分散性を向上させるため、又は重合を促進させるため、分散剤を含有することが好ましい。該分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸エチルエステルなどのスチレンスルホン酸系分散剤、カルボキシスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などのポリカルボン酸系分散剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系分散剤、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系分散剤、ポリエーテル系分散剤、ポリアルキレンポリアミン系分散剤、アルキルスルホン酸系分散剤、四級アンモニウム系分散剤、高級アルコールアルキレンオキサイド系分散剤、多価アルコールエステル系分散剤、アルキルポリアミン系分散剤又はポリリン酸塩系分散剤が挙げられ、好ましくはポリアクリル酸系添加剤(分散剤)、スチレンスルホン酸系分散剤、ポリビニルピロリドン、特に好ましくはスチレンスルホン酸系分散剤及びポリビニルピロリドンである。
【0106】
モノマーのスラリーにおける分散剤の含有量は、3重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.001~2重量%である。分散剤の量がこの範囲内にあることで、SiまたはSi化合物同士の凝集が進行しにくくなる。もしくは、SiまたはSi化合物の周囲のポリマー(高分子膜)の膜厚が薄くなりにくくなる。
【0107】
モノマーのスラリーは、重合を促進するために、重合促進剤を含有してもよい。該重合促進剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム又は水酸化カリウムなどのpH調整剤が挙げられる。重合促進剤は、好ましくは炭酸水素ナトリウムである。
【0108】
なお、得られたSiまたはSi化合物に被覆された高分子膜は、後述する焼成により除去され空隙となるものである。
【0109】
高分子膜が被覆されたSiまたはSi化合物(第1粒子)に非晶性炭素の前駆体を混合又は被覆する方法としては、以下の製造方法1、2のいずれかの方法が挙げられる。
【0110】
製造方法1:高分子膜の周囲に、非晶性炭素の前駆体となる高分子を重合によって混合又は被覆する方法。
【0111】
製造方法2:高分子膜で被覆されたSiまたはSi化合物(第1粒子)と非晶性炭素の前駆体を、湿式又は乾式混合することで混合又は被覆する方法。
【0112】
製造方法1で用いる非晶性炭素の前駆体となる高分子は、焼成によって炭化して非晶性炭素となるものであれば特に制限はなく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアニリン、ポリピロール、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリパラフェニレンビニレン、などが挙げられる。その中でもポリアニリン、ポリピロール、ポリアクリロニトリルが好ましい。非晶性炭素の前駆体となる高分子は、特に好ましくはポリアニリン、ポリアクリロニトリルである。このうち、ポリアクリロニトリルがより好ましい。この場合、より緻密性の高いマトリクスが得られ、複合活物質内部への電解液の侵入が抑制されることで、複合活物質内部での電解液の分解が抑制され、サイクル特性が向上する。
【0113】
重合によって高分子を混合又は被覆する際には、上述した開始剤、モノマー、分散剤、重合促進剤および溶媒を用いることができる。
【0114】
このとき、第1粒子がシードとなり反応が促進するため、表面改質剤を添加する必要はないが、必要に応じて上述の表面改質剤を添加しても良い。
【0115】
製造方法2で用いる非晶性炭素の前駆体としては、焼成後に非晶性炭素となるものであれば特に制限はなく、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリイミド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シアネート樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ピロール、ドーパミン、アルギン酸アンモニウム、セルロース、グルコース、サッカリン、フルクトース等の糖類、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)、石油系ピッチ、メソフェーズピッチ、コークス、低分子重質油、またはそれらの誘導体等が挙げられる。その中でもポリアニリン、ポリピロール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリイミド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ドーパミン、グルコース、サッカリン、フルクトース等の糖類、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)、石油系ピッチ、またはそれらの誘導体等が好ましい。非晶性炭素の前駆体は、特に好ましくはポリアニリン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)またはそれらの誘導体である。
【0116】
第1粒子と非晶性炭素の前駆体を混合する方法に特に制限はなく、例えば、第1粒子の乾燥物と非晶性炭素の前駆体を固体状態で混合する方法、第1粒子の乾燥物に、非晶性炭素前駆体を含むスラリーを含侵させて混合する方法、第1粒子を含むスラリーに非晶性炭素の前駆体を添加し液相中で混合させる方法などが使用できる。
【0117】
第1粒子の乾燥物と非晶性炭素前駆体を固体状態で混合する方法としては、例えば、第1粒子を乾燥させた後、第1粒子の乾燥物と非晶性炭素の前駆体を乳鉢中での混合、ボールミル、ビーズミル、ポットミル、ローラミル、ジェットミルなどを用いる混合が好ましく、特に乳鉢中での混合、ボールミルでの混合が好ましい。
【0118】
第1粒子の乾燥物に非晶性炭素の前駆体を含むスラリーを含侵させて混合する方法としては、例えば、第1粒子を乾燥させた後、非晶性炭素の前駆体を溶剤に溶解させ溶液又は分散させスラリーとし、その溶液又はスラリーに第1粒子の乾燥物を添加して混合する方法、非晶性炭素の前駆体を高濃度で溶剤に溶解又は分散させて粘度の高い溶液又はスラリーとし、第1粒子の乾燥物に添加して混合する方法などが使用できる。溶剤は非晶性炭素の前駆体を溶解又は分散さえできれば特に制限はなく、例えばエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、ピリジン、ピペリジン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、クレオソート油、グリセリン、水等が挙げられ、その中でもエタノール、メタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、シクロヘキサノン、水等が好ましく、特にエタノール、キシレン、水等が好ましい。混合の方法に特に制限はなく、マグネチックスターラー、スリーワンモーター、ホモミキサー、インラインミキサー、ビーズミル、ボールミルなどの一般的な混合機や攪拌機を用いることができる。
【0119】
第1粒子を含むスラリーに非晶性炭素前駆体を添加し液相中で混合させる方法に特に制限はなく、マグネチックスターラー、スリーワンモーター、ホモミキサー、インラインミキサー、ビーズミル、ボールミルなどの一般的な混合機や攪拌機を用いることができる。スラリーとする溶媒としては、特に制限はなく、例えばエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、ピリジン、ピペリジン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、クレオソート油、グリセリン、水等が挙げられる。その中でもエタノール、メタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、シクロヘキサノン、水等が好ましく、特にエタノール、キシレン、水等が好ましい。
【0120】
第1粒子に非晶性炭素の前駆体を混合又は被覆した混合物(第2粒子)を複数集合させて焼成する温度は、300~1500℃であることが好ましく、より好ましくは500~1300℃であり、特に好ましくは600~1100℃である。焼成温度が300℃以上であると、SiまたはSi化合物の周囲に形成されたポリマーが残存しにくくなり、初回体積放電容量の低下、更には初回充放電効率の低下や初回電極膨張率の上昇が生じにくい。一方、焼成温度が1500℃以下である場合、SiまたはSi化合物と後述する不活性ガスとの反応が起こりにくく、放電容量の低下が発生しにくくなる傾向にある。
【0121】
焼成は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が好ましく、特に窒素が好ましい。
【0122】
この焼成を行うことにより、SiまたはSi化合物の周囲の高分子膜が揮発し、SiまたはSi化合物の周囲に空隙が生じるとともに、第2粒子の集合体の非晶性炭素の前駆体が炭化し、非晶性炭素とSiまたはSi化合物の複合粒子が焼成体として生成するものである。
【0123】
充放電する第4工程ついては、第3工程に引き続いて行うことのみならず、後述するリチウム二次電池用負極としても行うことができる。
【0124】
具体的な充放電工程としては、例えばコインセルにて、20~65℃の恒温環境でサイクル充放電工程を行うことができる。充放電工程におけるサイクル充放電条件について、充放電電流は0.01~10Cが好ましく、特に好ましくは0.05~5Cであり、充放電電圧は0.010~1.5V vs. Li/Li+の範囲内で行うことができる。充電は定電流―定電圧充電(CCCV充電)で行い、放電は定電流放電(CC放電)で行うことができる。また、サイクル数は1~100サイクルが好ましく、特に好ましくは50~100サイクルである。
【0125】
上記複合粒子に第3工程の後炭素被覆する方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により炭素被覆する方法又は炭素前駆体を加熱下に気化させて炭素被覆する方法又は該複合粒子に炭素前駆体を混合し、さらに焼成することで炭素被覆する方法が挙げられる。
【0126】
CVD法により上記複合粒子に炭素被覆する方法は、炭素化合物を加熱することにより炭素被覆することができる。
【0127】
ここで、用いる炭素化合物としては、例えばメタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、アセナフチレン、ジヒドロアントラセン、ジフェニレンサルファイド、チオキサンテン、チアントレン、カルバゾール、アクリジン、縮合多環フェナジン化合物等が挙げられ、その中でもエチレン、アセチレン、プロピレン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン等が好ましく、特に好ましくはエチレン、アントラセン、トルエン等である。
【0128】
炭素化合物を加熱する際の温度は300~1500℃が好ましく、特に好ましくは500~1100℃等である。
【0129】
CVD法では炭素化合物が炭素として複合粒子に被覆されればよく、常圧か減圧かは問わない。
【0130】
炭素前駆体を加熱下に気化させて炭素被覆する方法で用いる炭素前駆体は、焼成後に炭素となるものであれば特に制限はない。このような炭素前駆体としては、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリイミド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シアネート樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ピロール、ドーパミン、アルギン酸アンモニウム、セルロース、グルコース、サッカリン、フルクトース等の糖類、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)、石油系ピッチ、メソフェーズピッチ、コークス、低分子重質油、またはそれらの誘導体等が挙げられる。その中でもポリアニリン、ポリピロール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリイミド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ドーパミン、グルコース、サッカリン、フルクトース等の糖類、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)、石油系ピッチ、またはそれらの誘導体等が好ましく、特に好ましくはポリアニリン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)またはそれらの誘導体である。
【0131】
加熱する際の温度は、炭素前駆体が気化する温度であればよく、300~1500℃が好ましく、特に好ましくは500~1300℃であり、より好ましくは600~1100℃である。300℃以上であると、炭素前駆体が残存しにくくなり、初回体積放電容量の低下、更には初回充放電効率の低下や初回電極膨張率の上昇が生じにくい。一方、1500℃以下である場合、SiまたはSi化合物と後述する不活性ガスとの反応が起こりにくく、放電容量の低下が発生しにくくなる傾向にある。
【0132】
炭素前駆体の加熱下での気化は、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。用いる不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。その中でも窒素が好ましい。
【0133】
上記複合粒子に炭素前駆体を混合し、さらに焼成することで炭素被覆する方法における炭素前駆体の被覆方法としては、上述の第1粒子と非晶性炭素前駆体を混合する方法と同様の方法を用いることができる。
【0134】
上記複合粒子に炭素前駆体を混合し、さらに焼成することで炭素被覆する方法における炭素前駆体としては、炭素前駆体を加熱下に気化させて炭素被覆する方法で用いる炭素前駆体と同様のものを用いることができる。
【0135】
焼成する際の温度は、炭素前駆体が気化する温度であればよく、300~1500℃が好ましく、特に好ましくは500~1300℃であり、より好ましくは600~1100℃である。300℃以上であると、炭素前駆体が残存しにくくなり、初回体積放電容量の低下、更には初回充放電効率の低下や初回電極膨張率の上昇が生じにくい。一方、1500℃以下である場合、SiまたはSi化合物と後述する不活性ガスとの反応が起こりにくく、放電容量の低下が発生しにくくなる傾向にある。
【0136】
炭素前駆体を焼成させる際には、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましく、用いる不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられ、その中でも窒素が好ましい。
【0137】
本発明で、第2粒子に必要に応じて混合する結晶性炭素としては、天然黒鉛、石油や石炭のピッチを黒鉛化した人造黒鉛等が利用できる。結晶性炭素の形状としては、鱗片状、小判状もしくは球状、円柱状もしくはファイバー状等が用いられる。また、それらの結晶性炭素を酸処理、酸化処理した後、熱処理することにより膨張させて黒鉛層間の一部が剥離してアコーディオン状となった膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物、または超音波等により層間剥離させたグラフェン等も用いることができる。膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物はその他の結晶性炭素に比べて可とう性に優れており、後述する複合粒子を形成する工程において、粉砕された粒子が再結着して略球状の複合粒子を容易に形成することができる。上記の点で、膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物を用いることが好ましい。第2粒子と混合する前の結晶性炭素の粒子サイズとしては天然黒鉛や人造黒鉛では1~100μm、膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物、グラフェンでは5μm~5mmであることが好ましい。
【0138】
上記第2粒子に、結晶性炭素を混合する際に、よりSiまたはSi化合物と結晶性炭素を結着させることができることから、炭素化合物を加えることができる。炭素化合物としてはSiまたはSi化合物と結晶性炭素を結合させることができ、かつ、焼成後に残炭成分が無いことが好ましく、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステルなどのグリセリン系、メントール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、トリメチロールプロパンなどのグリコール系、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、好ましくは、グリセリン、ポリグリセリン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリビニルピロリドン、特に好ましくはグリセリンである。
【0139】
上記高第2粒子に、結晶性炭素を混合する際には、溶媒を用いることが好ましく、該溶媒としては、例えば、キノリン、ピリジン、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、クレオソート油、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン、グリセリン、メントール、ポリビニルアルコール、水、エタノール、メタノールを使用することができる。
【0140】
第2粒子と結晶性炭素との混合方法としては、第2粒子及び結晶性炭素を含むスラリー中の第2粒子及び結晶性炭素からなる固形分の合計の濃度が高い場合には、混練機(ニーダー)やレーディゲミキサーを用いることができる。溶媒を用いる場合は、上述の混練機の他、スリーワンモーター、スターラー、ナウターミキサー、レーディゲミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、インラインミキサー等を用いることができる。
【0141】
溶媒を用い溶媒を除去する場合は、そのままこれらの装置でジャケット加熱したり、振動乾燥機、パドルドライヤー、ロータリーエバポレーター、薄膜蒸発機、スプレードライヤー、コニカルドライヤー、減圧乾燥機などで溶媒を除去したりすることができる。乾燥作業の前に、遠心分離機、フィルタープレス、吸引濾過器、加圧濾過機などの装置で固液分離することができる。過剰な炭素化合物が残っていると、焼成後に複合活物質同士を連結し、その後、粉砕・解砕工程が必要になる上、負極の容量低下の原因になるため、これらの固液分離作業を行うことが好ましい。
【0142】
これらの装置で、溶媒除去の過程における撹拌を1~100時間続けることで、SiまたはSi化合物、結晶性炭素と必要に応じて炭素化合物との混合物(第1混合物)は造粒・圧密化される。また、溶媒除去後の混合物をローラーコンパクタ等の圧縮機によって圧縮し、解砕機で粗粉砕することにより、造粒・圧密化することができる。これらの造粒・圧密化物の大きさは、その後の粉砕工程での取り扱いの容易さから0.1~5mmが好ましい。
【0143】
造粒・圧密化の方法は、圧縮力を利用して被砕物を粉砕するボールミル、媒体撹拌ミルや、ローラによる圧縮力を利用して粉砕を行うローラミルや、被砕物を高速で内張材に衝突もしくは粒子相互に衝突させ、その衝撃による衝撃力によって粉砕を行うジェットミルや、ハンマー、ブレード、ピンなどを固設したローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕するハンマーミル、ブレードミル、ピンミル、ディスクミル等の乾式の粉砕方法が好ましい。また、粉砕後に粒度分布を整えるため、風力分級、ふるい分け等の乾式分級が用いられる。粉砕機と分級機が一体となっているタイプでは、一度に粉砕、分級が行われ、所望の粒度分布とすることが可能となる。
【0144】
造粒・圧密化して得られる混合物(第2混合物)を粉砕及び球形化処理を施す方法としては、上述の粉砕方法により粉砕して粒度を整えた後、専用の球形化装置を通す方法と、上述のジェットミルやローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕する方法を繰り返す方法、もしくは処理時間を延長することで球形化する方法がある。専用の球形化装置としては、ホソカワミクロン社のファカルティ(商品名)、ノビルタ(商品名)、メカノフュージョン(商品名)、日本コークス工業社のCOMPOSI、奈良機械製作所社のハイブリダイゼーションシステム、アーステクニカ社のクリプトロンオーブ、クリプトロンエディ等が挙げられる。
【0145】
上記粉砕および球形化処理を行うことにより、略球状の複合粒子を得ることができる。
【0146】
得られた複合粒子は焼成し、焼成体を得る。
【0147】
焼成温度は300~1200℃が好ましく、特に好ましくは600~1200℃である。焼成温度が300℃以上であると、SiまたはSi化合物に被覆した高分子膜の未熱分解成分が残存しにくくなり、初回充放電効率が低下しにくく、初回充電膨張率が高くなりにくくなる。一方、焼成温度が1200℃以下である場合、SiまたはSi化合物と炭素との反応が起こりにくくなり、放電容量の低下が発生しにくくなる。
【0148】
複合粒子の焼成は、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。用いる不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。その中でも窒素が好ましい。
【0149】
上記焼成体に炭素被覆する方法としては、上述のCVD法により炭素被覆する方法又は炭素前駆体を加熱下に気化させて炭素被覆する方法又は該焼成粉に炭素前駆体を混合し、さらに焼成することで炭素被覆する方法を用いることができる。
<リチウム二次電池用電極組成物>
本発明のリチウム二次電池用電極組成物は、本発明のリチウム二次電池用複合活物質と、結着剤と、溶剤とを含む。
【0150】
本発明のリチウム二次電池用電極組成物によれば、初回充電時に体積変化が抑制された電極材料の作製が可能であり、かつ高容量でサイクル特性に優れたリチウム二次電池を実現できるリチウム二次電池の電極を製造することができる。
【0151】
使用する結着剤としては、公知の材料を使用でき、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸又は膠などが用いられる。
【0152】
また、溶剤としては、例えば、水、イソプロピルアルコール、N-メチルロリドン又はジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0153】
本発明のリチウム二次電池用電極組成物は、本発明のリチウム二次電池用複合活物質と結着剤とを混合し、溶剤を用いてペースト化することによって得ることができる。なお、ペースト化を行う際には、必要に応じて、公知の攪拌機、混合機、混練機、ニーダーなどを用い、リチウム二次電池用複合活物質、結着剤及び溶剤を攪拌混合してもよい。
<リチウム二次電池用電極>
次に、本発明のリチウム二次電池用電極について
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の電極の一例を示す模式図である。
図5に示すように、本発明のリチウム二次電池用電極200は、上述したリチウム二次電池用複合活物質100を含む。
【0154】
本発明のリチウム二次電池用電極によれば、初回充電時に体積変化が抑制され、かつ高容量でサイクル特性に優れたリチウム二次電池を実現できる。
【0155】
本発明のリチウム二次電池用電極は、リチウム二次電池の負極として有用である。
【0156】
本発明のリチウム二次電池用複合活物質を使用してリチウム二次電池用負極を製造する方法は、公知の方法を使用することができる。
【0157】
例えば、負極合剤含有スラリーを上述したリチウム二次電池用電極組成物として用意する。当該負極合剤含有スラリーを、集電体上、例えば銅箔上、に塗布することで、リチウム二次電池用負極を得ることができる。
【0158】
なお、集電体としては銅箔以外に、電池のサイクルがより優れる点で、三次元構造を有する集電体が好ましい。三次元構造を有する集電体の材料としては、例えば、炭素繊維、スポンジ状カーボン(スポンジ状樹脂にカーボンを塗工したもの)、銅以外の金属などが挙げられる。
【0159】
三次元構造を有する集電体(多孔質集電体)としては、金属や炭素の導電体の多孔質体が挙げられる。このような導電体の多孔質体としては、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、金属発泡体、金属織布、金属不織布、炭素繊維織布、及び炭素繊維不織布などが挙げられる。
【0160】
リチウム二次電池用複合活物質を用いて負極合剤含有スラリーを調製する場合、導電材として導電性カーボンブラック、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種以上を添加することが好ましい。上記工程により得られたリチウム二次電池用複合活物質の形状が粒状化(特に、略球形化)していても、該負極合剤含有スラリーにカーボンブラック、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種以上を配合することで複合活物質の粒子同士の接触が点接触になりにくくなる。カーボンブラック、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種以上はスラリー溶剤の乾燥時に該リチウム二次電池用複合活物質が接触して形成する毛細管部分に集中的に凝集することが出来るので、サイクルに伴う接点切れ(抵抗増大)を防止することが出来る。
【0161】
カーボンブラック、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種以上の配合量は、リチウム二次電池用複合活物質100質量部に対して、0.2~4質量部であることが好ましく、0.5~2質量部であることがより好ましい。カーボンナノチューブとしては、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブが挙げられる。
<リチウム二次電池>
リチウム二次電池は、上述した電極としての負極と、正極と、電解液と、セパレータとを含む。リチウム二次電池は、その他電池構成要素(例えば、集電体、ガスケット、封口板、ケースなど)をさらに含んでもよい。リチウム二次電池は、常法にしたがって円筒型、角型あるいはボタン型などの形態を有することができる。
(正極)
本発明のリチウム二次電池用複合活物質を使用して得られる負極を有するリチウム二次電池に使用される正極としては、公知の正極材料を使用した正極を使用することができる。
【0162】
正極の製造方法としては公知の方法が挙げられ、正極材料、結合剤および導電剤よりなる正極合剤を集電体の表面に塗布する方法などが挙げられる。正極材料(正極活物質)としては、酸化クロム、酸化チタン、酸化コバルト、五酸化バナジウムなどの金属酸化物や、LiCoO2、LiNiO2、LiNi1-yCoyO2、LiNi1-x-yCoxAlyO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiFeO2などのリチウム金属酸化物、硫化チタン、硫化モリブデンなどの遷移金属のカルコゲン化合物、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロールなどの導電性を有する共役系高分子物質などが挙げられる。
(電解液)
本発明のリチウム二次電池用複合活物質を使用して得られる負極を有するリチウム二次電池に使用される電解液としては、公知の電解液を使用することができる。
【0163】
例えば、電解液中に含まれる電解質塩として、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3CH2OSO2)2、LiN(CF3CF3OSO2)2、LiN(HCF2CF2CH2OSO2)2、LiN{(CF3)2CHOSO2}2、LiB{C6H3(CF3)2}4、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiAlCl4又はLiSiF6などのリチウム塩を用いることができる。特にLiPF6およびLiBF4が酸化安定性の点から好ましい。
【0164】
電解質溶液中の電解質塩濃度は0.1~5モル/リットルであることが好ましく、0.5~3モル/リットルであることがより好ましい。
【0165】
電解液で使用される溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート、1,1-または1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジオキソフラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、アニソール、ジエチルエーテルなどのエーテル、スルホラン、メチルスルホランなどのチオエーテル、アセトニトリル、クロロニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル、ホウ酸トリメチル、ケイ酸テトラメチル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、トリメチルオルトホルメート、ニトロベンゼン、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、3-メチル-2-オキサゾリン、エチレングリコール又はジメチルサルファイトなどの非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0166】
なお、電解液の代わりに、高分子固体電解質、高分子ゲル電解質などの高分子電解質を使用してもよい。高分子固体電解質または高分子ゲル電解質のマトリクスを構成する高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイドやその架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのメタクリレート系高分子化合物、ポリアクリレートなどのアクリレート系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)又はビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物が好ましい。これらは、混合して使用することもできる。酸化還元安定性などの観点から、PVDF又はビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物が特に好ましい。
(セパレータ)
本発明のリチウム二次電池用複合活物質を使用して得られる負極を有するリチウム二次電池に使用されるセパレータとしては、公知の材料を使用できる。セパレータとしては、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが例示される。合成樹脂製微多孔膜が好適であり、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、膜厚、膜強度、膜抵抗などの点から好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜などである。
【0167】
本発明のリチウム二次電池は、各種携帯電子機器に用いられ、特にノート型パソコン、ノート型ワープロ、パームトップ(ポケット)パソコン、携帯電話、携帯ファックス、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオカメラ、携帯テレビ、ポータブルCD、ポータブルMD、電動髭剃り機、電子手帳、トランシーバー、電動工具、ラジオ、テープレコーダー、デジタルカメラ、携帯コピー機、携帯ゲーム機などに用いることができる。また、本発明のリチウム二次電池は、電気自動車、ハイブリッド自動車、自動販売機、電動カート、ロードレベリング用蓄電システム、家庭用蓄電器、分散型電力貯蔵機システム(据置型電化製品に内蔵)、非常時電力供給システムなどの二次電池として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【
図1】本発明のリチウム二次電池用複合活物質の一例を示す模式断面図である。
【
図2】本発明のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法における第1粒子の一例を示す模式断面図である。
【
図3】本発明のリチウム二次電池用複合活物質の製造方法における第2粒子の一例を示す模式断面図である。
【
図4】
図3の第2粒子の集合体の一例を示す模式断面図である。
【
図6】本発明の実施例1で製造した複合活物質の断面SEM像(×30,000倍)である。
【実施例0169】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0170】
<実施例1>
(シリコン表面改質工程)
D50が200nmのシリコン粒子を含むエタノールスラリーをシリコン量が87.5gになるようにビーカーに投入し、15分間超音波照射を行い、その後、合計のエタノール量が2212gになるように追加し、シリコンスラリーを得た。その後、ポリカルボン酸系分散剤192.5g、塩酸5.0g、水700gを上記シリコンスラリーに添加し、回転数250rpmの条件で30分間撹拌を行った。その後、テトラエトキシシラン(TEOS)175gを上記スラリーに添加し、70℃に昇温した。70℃で12時間撹拌を行い、その後、得られたシリコンスラリーを回転数4800rpm、回転時間25分の条件で遠心分離処理し、エタノールで再分散した。得られたスラリーに対して、直径1.0mmのジルコニアボールを用いたボールミルを8時間行い、シリコンスラリーを得た。これを回転数4800rpm、回転時間60分の条件で遠心分離処理し、水で再分散した。
【0171】
(シリコン被覆工程)
上記スラリーをシリコン固形分量が22.2gとなるように秤量して丸底フラスコに移し、合計の水量が6116gとなるように追加で水を添加した。フラスコ系内を窒素パージした後、液温を35℃に昇温した。その後、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)0.84gをフラスコ内に加え、30分間攪拌した。蒸留したスチレンモノマー140.3gと80gの水に溶解させたp-スチレンスルホン酸リチウム(LiSS)0.65gを添加し、2時間攪拌した。その後、液温を62℃に昇温させ、80gの水に溶解させた過硫酸アンモニウム(APS)1.8gを添加した。その後、還流下で10時間加熱撹拌を続けた。得られた反応液を回転数4800rpm、回転時間5分の条件で遠心分離処理し、得られた沈殿を水で再分散。得られた上澄みを回転数4800rpm、回転時間15分の条件でさらに遠心分離処理し、得られた沈殿を水で再分散。得られた上澄みを回転数4800rpm、回転時間30分の条件でさらに遠心分離処理し、得られた沈殿を水で再分散。最後に得られた上澄みを回転数4800rpm、回転時間45分の条件で遠心分離処理し、得られた沈殿を水で再分散することでポリスチレン被覆シリコンスラリーを得た。
【0172】
ポリスチレン被覆シリコンの水スラリーを固形分が5.0gになるようにビーカーに秤量し、合計の水量が1380gになるように水を追加した。フラスコ系内を窒素パージした後、液温を35℃に昇温した。その後、アクリロニトリルモノマー36.3gを添加し、2時間攪拌した。その後、液温を62℃に昇温させ、50gの水に溶解させたAPS1.1gを添加した。その後、還流下で10時間加熱撹拌を続けた。得られた反応液を回転数4800rpm、回転時間25分の条件で遠心分離処理し、エタノールで再分散することでポリマー被覆シリコンスラリーを得た。
【0173】
その後、上記ポリマー被覆シリコンを、ダイアフラムポンプで減圧にしつつ65℃に加熱し溶媒を除去、乾燥することで混合乾燥物を得た。
【0174】
(解砕工程)
上記混合乾燥物をブレードミルに入れて水冷しながら、15000rpmで150秒粉砕し、同時に球形化した。
【0175】
(焼成工程)
得られた粉末を石英ボートに入れて、管状炉で窒素ガスを流しながら、最高温度900℃で1時間焼成した。これにより、焼成粉を得た。
【0176】
(気相コートによる炭素被覆工程)
得られた焼成粉を回転焼成炉にセットし、管内に267SCCMの流量の窒素ガス及び、133SCCMの流量のエチレンガスを流し、2rpmにて回転させながら電気ヒーターで920℃まで加熱した。その状態を57分間保持する事で炭素被覆を行い、リチウム二次電池用複合活物質を得た。
【0177】
(リチウム二次電池用負極の作製)
得られたリチウム二次電池用複合活物質92.5重量%(固形分全量中の含有量。以下同じ。)に対して、導電助剤としてアセチレンブラック0.5重量%、バインダとしてポリカルボン酸系バインダ7.0重量%、及び、水とを混合して負極合剤含有スラリーを調製した。
【0178】
得られた負極合剤含有スラリーを、アプリケータを用いて固形分塗布量が2.0mg/cm2になるように厚みが10μmの銅箔に塗布し、90℃で真空乾燥機にて12時間乾燥した。乾燥後、14mmφの円形に打ち抜き、室温下、送り速度1m/min、圧力4.0t/cm2の条件でロールプレスし、さらに真空下、110℃で2時間熱処理して、厚みが32μmの負極合剤層を形成したリチウム二次電池用負極を得た。
【0179】
(サイクル特性評価用セルの作製と評価および内包物質が中空構造を有する複合材料の作製)
評価用コインセルは、グローブボックス中でコインセルに上記負極、21mmφのガラスフィルター、16mmφで厚み0.6mmの金属リチウムおよびその基材のステンレス箔を、各々、電解液にディップしたのち、この順に積層し、最後に蓋をねじ込み作製した。電解液はエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1対1の混合溶媒とし、これにFEC(フルオロエチレンカーボネート)を2体積%添加し、LiPF6を1.2モル/リットルの濃度になるように溶解させたものを使用した。評価用コインセルは、さらにシリカゲルを入れた密閉ガラス容器に入れて、シリコンゴムの蓋を通した電極を充放電装置に接続した。
【0180】
評価用コインセルは25℃の恒温室にて、サイクル試験した。充電は、0.3Cで充電後、0.010Vの定電圧で電流値が0.03Cになるまで行った。
【0181】
また放電は、0.3Cの定電流で1.5Vの電圧値まで行った。初回放電容量と初回充放電効率は、初回充放電試験の結果とした。
【0182】
また、サイクル特性は、前記充放電条件にて100回充放電試験した時の、50および100サイクル目の充放電効率として評価したところ、50サイクル目の充放電効率が99.6%、100サイクル目の充放電効率が99.9%であった。
【0183】
図6の断面SEM画像より、充放電前において複合活物質はSiまたはSi合金が非晶性炭素内に内包されており、SiまたはSi合金が該非晶性炭素内に内包された構造が複数存在し、結晶性炭素が空隙を内包しているものであり、また、充放電後の断面SEM画像より、内包物質が該非晶性炭素の内壁に付着している構造を取っていることがわかる。
【0184】
<比較例1>
(シリコン被覆工程)
実施例1と同様の方法で得られたスラリーをシリコン固形分量が16.6gとなるように秤量して丸底フラスコに移し、合計の水量が4590gとなるように追加で水を添加した。フラスコ系内を窒素パージした後、液温を35℃に昇温した。その後、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)0.63gをフラスコ内に加え、30分間攪拌した。蒸留したスチレンモノマー52.6gと60gの水に溶解させたp-スチレンスルホン酸リチウム(LiSS)0.48gを添加し、2時間攪拌した。その後、液温を62℃に昇温させ、60gの水に溶解させた過硫酸アンモニウム(APS)1.3gを添加した。その後、還流下で10時間加熱撹拌を続けた。得られた反応液を回転数4800rpm、回転時間45分の条件で遠心分離処理し、エタノールで再分散することでポリスチレン被覆シリコンスラリーを得た。
【0185】
上記ポリスチレン被覆シリコンのエタノールスラリーを固形分が8.7gになるようにビーカーに秤量し、合計のエタノール量が1273gになるようにエタノールを追加した。得られたスラリーに水248mLに分散させた臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム8.0gを加え、マグネチックスターラーで10分間攪拌を行った。その後、アンモニウムヒドロキシド34.6g、水268mLを上記スラリーに添加し、30分間攪拌を行った。その後、テトラエトキシシラン16.9gを添加し、3時間攪拌を行った。得られたスラリーを回転数4800rpm、回転時間10分の条件で遠心分離処理し、上澄みを廃棄した。沈降物を減圧乾燥してSi@void@SiO2粒子粉末を得た。
【0186】
(焼成工程)
得られた粉末を石英ボ-トに入れて、管状炉で窒素ガスを流しながら、最高温度900℃で1時間焼成して焼成粉を得た。
【0187】
(気相コートによる炭素被覆工程)
得られた焼成粉を焼成炉に導入し、窒素を流しながらコールタールピッチを炭素前駆体とした気相コートを行った。焼成条件は、昇温速度を5℃/minとし、300℃で1時間、600℃で5時間、900℃で1時間加熱とした。気相コートによって炭素が導入された殻構造粒子を得た。
【0188】
(リチウム二次電池用負極の作製)
得られた殻構造粒子100質量部に対し、57質量部の黒鉛を加え、比較例のリチウム二次電池用複合活物質とした。
【0189】
得られたリチウム二次電池用複合活物質92.5重量%(固形分全量中の含有量。以下同じ。)に対して、導電助剤としてアセチレンブラック0.5重量%、バインダとしてポリカルボン酸系バインダ7.0重量%、及び、水とを混合して負極合剤含有スラリーを調製した。
【0190】
得られた負極合剤含有スラリーを、アプリケータを用いて固形分塗布量が2.0mg/cm2になるように厚みが10μmの銅箔に塗布し、90℃で真空乾燥機にて12時間乾燥した。乾燥後、14mmφの円形に打ち抜き、圧力1.0t/cm2の条件で一軸プレスし、さらに真空下、110℃で2時間熱処理して、厚みが22μmの負極合剤層を形成したリチウム二次電池用負極を得た。
【0191】
(サイクル特性評価用セルの作製と評価)
評価用コインセルは、グローブボックス中でコインセルに上記リチウム二次電池用負極、21mmφのガラスフィルター、16mmφで厚み0.6mmの金属リチウムおよびその基材のステンレス箔を、各々、電解液にディップしたのち、この順に積層し、最後に蓋をねじ込み作製した。電解液はエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1対1の混合溶媒とし、これにFEC(フルオロエチレンカーボネート)を2体積%添加し、LiPF6を1.2モル/リットルの濃度になるように溶解させたものを使用した。評価用コインセルは、さらにシリカゲルを入れた密閉ガラス容器に入れて、シリコンゴムの蓋を通した電極を充放電装置に接続した。
【0192】
評価用コインセルは25℃の恒温室にて、サイクル試験した。充電は、0.3Cで充電後、0.010Vの定電圧で電流値が0.03Cになるまで行った。
【0193】
また放電は、0.3Cの定電流で1.5Vの電圧値まで行った。初回放電容量と初回充放電効率は、初回充放電試験の結果とした。
【0194】
また、サイクル特性は、前記充放電条件にて100回充放電試験した時の、50および100サイクル目の充放電効率として評価したところ、50サイクル目の充放電効率が99.1%、100サイクル目の充放電効率が99.0%であった。
【0195】
実施例では、内包物質が該非晶性炭素の内壁に付着することで接触面積が増大し、サイクル中の充放電効率が向上している。すなわち、充放電サイクル特性が良好である。