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特開2022-190497処理装置、処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190497
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20221219BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098848
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】小阪 尚子
(72)【発明者】
【氏名】小山 晃
(72)【発明者】
【氏名】松原 浩史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】乾 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 健史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】災害の状況を逐次報告する業務において、以前の報告書からの差分の視認性を向上する処理装置、処理方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】処理装置1は、災害の状況を逐次報告する複数の報告書データと、状況を示す所定のパラメータについて、対象の報告書データの数値と対象の前の報告書データの数値から、状況の改善または悪化を判定する判定データ12を記憶する。処理装置1は、対象の報告書データと対象の前の報告書データから、所定のパラメータに対応づけられる数値を抽出し、判定データ12を用いて、所定のパラメータについての改善または悪化を判定する判定部23と、改善と判定された場合、対象の報告書データの所定のパラメータの数値に、改善を示す装飾を付加し、悪化と判定された場合、数値に、悪化を示す装飾を付加して表示する表示部27を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害の状況を逐次報告する複数の報告書データと、
前記状況を示す所定のパラメータについて、対象の報告書データの数値と前記対象の前の報告書データの数値から、前記状況の改善または悪化を判定する判定データを記憶する記憶装置と、
対象の報告書データと対象の前の報告書データから、所定のパラメータに対応づけられる数値を抽出し、前記判定データを用いて、前記所定のパラメータについての改善または悪化を判定する判定部と、
改善と判定された場合、前記対象の報告書データの前記所定のパラメータの数値に、改善を示す装飾を付加し、悪化と判定された場合、前記数値に、悪化を示す装飾を付加して表示する表示部
を備える処理装置。
【請求項2】
対象の報告書データと、前記対象の前の報告書データを比較して、前記対象の前の報告書データに存在し、前記対象の報告書データに存在しない情報を特定する特定部と、
前記表示部は、前記特定された情報が、前記対象の報告書データで削除されたことを示す装飾を付加して表示する
をさらに備える請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記複数の報告書データにおいて、所定のパラメータに対応づけられたデータの推移を表示する
請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
作成時期が隣接する2つの報告書データの類似度を算出し、
算出された類似度が所定の閾値を超える報告書データを、前記災害の状況の急変期に作成される急性期サンプルデータとして設定する設定部
をさらに備える請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記災害の発生初期に作成された報告書データを、初期サンプルデータとして設定する
請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
コンピュータが、災害の状況を逐次報告する複数の報告書データと、前記状況を示す所定のパラメータについて、対象の報告書データの数値と前記対象の前の報告書データの数値から、前記状況の改善または悪化を判定する判定データを記憶装置に記憶し、
前記コンピュータが、対象の報告書データと対象の前の報告書データから、所定のパラメータに対応づけられる数値を抽出し、前記判定データを用いて、前記所定のパラメータについての改善または悪化を判定し、
前記コンピュータが、改善と判定された場合、前記対象の報告書データの前記所定のパラメータの数値に、改善を示す装飾を付加し、悪化と判定された場合、前記数値に、悪化を示す装飾を付加して表示する
処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模災害において、その災害対応に当たる組織は、被害現場において、被害の状況の把握、被害からの復旧活動の進捗の把握に尽力する。把握された被害状況および復旧活動の進捗は、現場から管理者に報告される。被害の状況および復旧活動の進捗は、時々刻々と変化する。現場は、版を重ねて報告書を作成するので、管理者への報告が、現場の負担になる場合がある。
【0003】
災害対応において、災害種別または災害規模に応じた被害の形態が多岐にわたることから、報告様式の定型化が困難な問題がある。そこで、定型化の難しい報告内容を、非定型の自由記述の文章で報告するシステムがある(非特許文献1)。非特許文献1は、自由記述の報告を用いることで、状況に応じて柔軟に報告できること、および、システム導入当初に定型様式を整備する手間が省けるという利点がある。
【0004】
自然言語の分野において、トピック分類およびトレンド分析の技術がある(非特許文献2)。これらの技術は、文章に含まれる文字列の統計的な出現頻度とその時系列での頻度の変化を、捉える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大規模国際スポーツイベントへの危機対応支援システムの適用―第8回札幌アジア冬季競技大会における「KADAN(登録商標)」の活用―,電子情報通信学会論文誌 D Vol.J101-D No.10 pp.1405-1413
【非特許文献2】Bing Liu, Sentiment Analysis: Mining Opinions, Sentiments, and Emotions Cambridge University Press 2015, ISBN 978-1-107-01789-4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、自由記述の文章で報告書を作成する場合、直前の報告書からの差分がわかりにくい問題がある。また直前の報告書において、直前の報告書からの差分が、改善しているのか、あるいは悪化しているのかを把握しづらい問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、災害の状況を逐次報告する業務において、以前の報告書からの差分の視認性を向上可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の処理装置は、災害の状況を逐次報告する複数の報告書データと、前記状況を示す所定のパラメータについて、対象の報告書データの数値と前記対象の前の報告書データの数値から、前記状況の改善または悪化を判定する判定データを記憶する記憶装置と、対象の報告書データと対象の前の報告書データから、所定のパラメータに対応づけられる数値を抽出し、前記判定データを用いて、前記所定のパラメータについての改善または悪化を判定する判定部と、改善と判定された場合、前記対象の報告書データの前記所定のパラメータの数値に、改善を示す装飾を付加し、悪化と判定された場合、前記数値に、悪化を示す装飾を付加して表示する表示部を備える。
【0009】
本発明の一態様の処理方法は、コンピュータが、災害の状況を逐次報告する複数の報告書データと、前記状況を示す所定のパラメータについて、対象の報告書データの数値と前記対象の前の報告書データの数値から、前記状況の改善または悪化を判定する判定データを記憶装置に記憶し、前記コンピュータが、対象の報告書データと対象の前の報告書データから、所定のパラメータに対応づけられる数値を抽出し、前記判定データを用いて、前記所定のパラメータについての改善または悪化を判定し、前記コンピュータが、改善と判定された場合、前記対象の報告書データの前記所定のパラメータの数値に、改善を示す装飾を付加し、悪化と判定された場合、前記数値に、悪化を示す装飾を付加して表示する。
【0010】
本発明の一態様は、上記処理装置として、コンピュータを機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、災害の状況を逐次報告する業務において、以前の報告書からの差分の視認性を向上可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る処理装置の機能ブロックを説明する図である。
図2図2は、報告書データの一例を説明する図である。
図3図3は、判定データのデータ構造とデータの一例を説明する図である。
図4図4は、2つのフレーズの類似度を算出するエディットグラフの一例である。
図5図5は、エディットグラフにおいて、移動コストを算出する計算式である。
図6図6は、2つのトピックの類似度を算出するエディットグラフの一例である。
図7図7は、所定のパラメータのデータの推移の一例を表示する図である。
図8図8は、表示部が表示する画面の一例を説明する図である。
図9図9は、処理装置による編集支援処理を説明するフローチャートである。
図10図10は、処理装置による判定処理を説明するフローチャートである。
図11図11は、処理装置による取得処理を説明するフローチャートである。
図12図12は、処理装置に用いられるコンピュータのハードウエア構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0014】
(処理装置)
図1に示す本発明の実施の形態に係る処理装置1は、災害の状況を逐次報告するための報告書の作成を支援する。ここで災害の状況は、地震、台風などの自然災害、または事故などにおいて、自然、設備、人等が受けた被害の状況と、その被害からの復旧活動の進捗の状況を含む。処理装置1は、所定の通信サービス業など、特定の業種および業務等に限定した報告書の作成を支援しても良い。
【0015】
図1に示すように処理装置1は、報告書データ群R、R’、サンプルデータ群11および判定データ12の各データと、設定部21、取得部26、編集支援部22および表示部27の各機能を備える。編集支援部22は、判定部23および確認部25を備える。各データは、メモリ902またはストレージ903等の記憶装置に記憶される。各機能は、CPU901に実装される。
【0016】
報告書データ群Rは、処理装置1が報告書の作成を支援する災害に関し、過去に作成された報告書データ、および現在作成中の報告書データを蓄積する。報告書データ群Rに含まれる各報告書データは、その時々の災害の状況を逐次報告するために作成される。報告書データ群Rは、時間の経過とともに異なる各版の報告書データを備える。本発明の実施の形態において、現在作成中の報告書データをR(t)と表記する。本発明の実施の形態において、報告書データR(t)の直前に作成された報告書データをR(t-1)と表記し、報告書データR(t-1)の直前に作成された報告書データをR(t-2)と表記する。
【0017】
図2に示すように報告書データR(t)は、作成日C、第1のトピックT1、第2のトピックT2の各欄を備える。作成日Cは、報告書データR(t)の作成日または版を特定する。報告書データR(t)は、報告内容に応じて複数のトピックを備える。第1のトピックT1は、ビルの孤立に関する情報を有する。第2のトピックT2は、ビルの水没に関する情報を有する。
【0018】
各トピックにおいて、報告内容の詳細と状況が記載される。トピックで扱う報告内容に応じて、トピックの内容が記載される。例えば、ビル孤立のトピックにおいて、切断されたケーブルの特定情報、被害数、被害発生日時、被害に対する復旧状況の進捗等の各パラメータ種別とその値が対応づけられる。ビル水没のトピックにおいて、水没したビルの特定情報、水没に伴う回線被害数、被害発生日時、被害に対する復旧状況の進捗等の各パラメータ種別とその値が対応づけられる。
【0019】
図2に示すように、各トピックは、所定のマークを使って、報告内容が記載し、報告内容を構造化しても良い。見やすさ、検索のしやすさを実現することができる。図2に示す例において、トピックのタイトルは、「<>」で括られる。トピックにおける報告内容の先頭に、マーク「◇」が付される。被害の発生状況と、その被害に対する発生は、「→」でつながれる。図2に示すマークの使用例は一例であって、これに限るものではない。
【0020】
報告書データ群R’は、処理装置1が報告書の作成を支援する災害の以前に発生した過去の災害について作成された報告書データを蓄積する。報告書データ群R’から、今回作成する報告書のサンプルデータが選択される。報告書データ群R’は、災害の種類、規模、業種、現場の業務等の属性に対応づけて、報告書データを蓄積しても良い。
【0021】
サンプルデータ群11は、報告書データを作成する際に参照されるひな形となるサンプルデータを含む。サンプルデータ群11は、初期サンプルデータと、急変期サンプルデータを含む。サンプルデータは、災害の種類、規模、業種、現場の業務等の属性毎に、生成されてもよい。所定の属性に対する初期サンプルデータの数は、1である。所定の属性に対する急変期サンプルデータの数は、1でも良いし複数でも良い。
【0022】
初期サンプルデータは、災害発生後に最初に作成する報告書データのひな形である。急変期サンプルデータは、報告する事項が急変した際に作成する報告書データのひな形である。設定部21が、報告書データ群R’から、ひな形となる報告書データを選定して、サンプルデータ群11が生成される。
【0023】
判定データ12は、状況を示す所定のパラメータについて、対象の報告書データの数値と対象の前の報告書データの数値から、状況の改善または悪化を判定するために用いられる。判定データ12は、判定部23が、状況の改善または悪化を判定するために参照される。対象の報告書データは、報告書データ群Rの報告書データのうち、判定部23による判定の対象である。判定データ12は、異なる時間に作成された2つの報告書データについて、所定のパラメータの数字の変化が、状況の改善を示すか、または悪化を示すかを特定するために用いられる。
【0024】
判定データ12は、例えば、図3に示すデータ構造を有する。判定データ12は、トピックで報告される所定のパラメータについて、数値の増加または減少と、状況の改善または悪化を対応づける。判定データ12は、報告書データで参照される各パラメータについて、そのパラメータの数値の増加および減少のそれぞれについて、その数値の増加または減少が意味する状況の改善または悪化を対応づける。
【0025】
図3に示す例において、パラメータ名が不通回線数の場合、不通回線数の増加は、状況の悪化を意味し、減少は、状況の改善を意味する。一方パラメータ名が復旧回線数の場合、復旧回線数の増加は、状況の改善を意味し、減少は、状況の悪化を意味する。
【0026】
判定データ12は、所定のパラメータについて、数値の増加または減少と、状況の改善または悪化を学習した学習済のモデルを特定するデータであっても良い。判定データ12が特定するモデルに、所定のパラメータの数値の増加または減少を入力すると、モデルが、状況の改善または悪化を出力する。
【0027】
判定データ12は、状況の改善または悪化を判定することができればよく、ここで挙げる例に限定されるものではない。
【0028】
設定部21は、過去の災害における報告書データ群R’の各報告書データから、初期サンプルデータと急変期サンプルデータを選定して、サンプルデータ群11を生成する。
【0029】
設定部21は、報告書データ群R’のうち、所定の災害の発生初期に作成された報告書データを、初期サンプルデータとして設定する。設定部21は、報告書データ群R’の各報告書データについて、作成時期が隣接する2つの報告書データの類似度を算出し、算出された類似度が所定の閾値よりも低い報告書データを、災害の状況の急変期に作成される急性期サンプルデータとして設定する。設定部21は、初期サンプルデータおよび急性期サンプルデータを、サンプルデータ群11に含ませる。
【0030】
設定部21が、急性期サンプルデータを選択する処理を説明する。報告書データ群R’が、第1版、第2版・・・、および第10版の各報告書データを備える場合、設定部21は、第1版と第2版、第2版と第3版、・・・、および第9版と第10版の各2つの版の報告書データについて、類似度を算出する。
【0031】
設定部21は、これらの類似度が閾値よりも低い、具体的には、直前に作成された報告書データとの非類似度が閾値よりも高い報告書データを、急変期サンプルデータとして設定する。急変期において災害の状況は大きく変わるので、他の時期よりも、トピックの増減、およびトピックにおける報告項目の増減が大きい。設定部21は、過去に作成された急変期の報告書データをひな形として提供することで、作成者が、報告内容の漏れを防ぎ、報告者の負荷を軽減することができる。また、各トピックにおいて、所定のマークを使って、報告内容を記載することで、見やすさ、検索のしやすさを実現するところ、サンプルデータを参照することで、作成者によるマークの使用方法を統一し、設定部21は、一貫性のある報告書の作成を支援することができる。
【0032】
2つの版の報告書データ間の類似度は、報告書データを構成する複数のフレーズ間の類似度から、算出される。トピック内の文字数が少ない場合、トピック内の情報を1つのフレーズとしても良いし、文字数が多い場合、トピック内の情報を複数のフレーズに分割しても良い。
【0033】
フレーズ間の類似度は、図4等に示すエディットグラフを用いて、エディットグラフの左上から右下までに移動する際の最小コストから求められる。図5は、「8本全復旧」と「4本復旧済」の2つのフレーズの類似度を算出するために用いられるエディットグラフである。最小コストを求める場合のアルゴリズムは、例えばダイクストラ法である。
【0034】
エディットグラフは2次元のグリッド上の有向グラフである。すべての頂点には、上の頂点から下向きに、左の頂点から右向きに、左上の頂点から右下向きに有向辺が引かれる。各辺に、コストが与えられ、縦方向および横方向の各辺のコストは1である。斜辺のコストには、グリッドの対応する縦の要素と横の要素から計算するコスト関数を導入する。もっともシンプルなコストは、グリッドに対応する縦の要素と横の要素が同一の場合0、異なる場合に定数βとする。また縦の要素と横の要素が異なる場合でも、異なる数字など同種の場合、異種の場合よりも小さく、同一の場合よりも大きいコストが設定されても良い。
【0035】
図5を参照して、2つのフレーズの距離を算出する計算式を説明する。iは、図4の横方向の頂点を特定する変数で、jは、縦方向の頂点を特定する変数である。fは、最左上から、任意のiおよびjで特定される対象頂点までの距離を算出する関数である。2つのフレーズのそれぞれは、要素毎に分割され、各頂点に対応づけられる。要素は、文字または単語である。|S1|は、横方向に設定されるフレーズから分割された要素数で、|S2|は、縦方向に設定されるフレーズから分割された要素数である。図4に示す例において|S1|および|S2|の両方に、5が設定される。iは、横方向の各頂点に設定されるフレーズの要素を特定するインデックスである。jは、縦方向の各頂点に設定されるフレーズの要素を特定するインデックスである。
【0036】
図5に示す計算式は、j=0において、横方向に隣接する2つの頂点間の移動コストを算出し、i=0において、縦方向に隣接する2つの頂点間の移動コストを算出する。さらに、図5の計算式は、iが1以上かつ|S1|までの各整数と、jが1以上かつ|S2|までの各整数の各組み合わせで特定される対象頂点について、最左上からの移動コストを算出する。対象頂点について算出される移動コストは、下記(1)ないし(3)の各値のうち、最小の値である。
(1)最左上の頂点から、対象頂点の縦方向に隣接する頂点までの最小移動コストに、その縦方向に隣接する頂点から対象頂点までの移動コストを加算した値、
(2)最左上の頂点から、対象頂点の横方向に隣接する頂点までの最小移動コストに、その横方向に隣接する頂点から対象頂点までの移動コストを加算した値、および
(3)最左上の頂点から、対象頂点の斜め左上方向に隣接する頂点までの最小移動コストに、その斜め左上方向に隣接する頂点から対象頂点までの移動コストを加算した値。
【0037】
図5に示す計算式により、図4に示す各頂点に、最左上の頂点からの移動コストが設定される。このとき、図4の最右下の頂点に設定される移動コストは、最左上の頂点からの移動コストとなり、2つのフレーズ間の非類似度となる。2つのフレーズ間の非類似度から、類似度が算出される。
【0038】
図4を参照して、フレーズ間の類似度を算出する例を説明したが、図6に示すように、2つのトピックの類似度も算出することができる。各トピックは複数のフレーズの集合と考えられる。図6の横方向に設定されるトピックは、「■片系運用ルート」、「A:2区間」、「[B~C]ケーブル4本」・・・などの複数のフレーズの集合である。縦方向に設定されるトピックは、「■片系運用ルート」、「A:3区間」、「[B~C]ケーブル4本」・・・などの複数のフレーズの集合である。なお図6の太字で示した部分は、トピック間の差異のある部分である。
【0039】
フレーズ間の類似度、換言すると隣接する頂点間の移動コストは、図4に示す方法で算出される。図6の右下の頂点に設定される移動コストが、2つのトピック間の非類似度となる。2つのトピック間の非類似度から、類似度が算出される。
【0040】
報告書データは、1以上のトピックを含む。図6に示す方法でトピック間の類似度が算出されると、2つの報告書データ間の類似度が算出される。例えば、各報告書データに含まれるトピックの数が同じで、各トピックの記載内容が類似する場合、類似度は高く算出される。各報告書データに含まれるトピックの数が大きく異なり、各トピックの記載内容も類似しない場合、類似度は低く算出される。
【0041】
なお上記では、連続して作成される2つの報告書データの類似度から、急性期サンプルデータが選択される場合を説明したが、設定部21は、一般的なサンプルデータを設定しても良い。設定部21は、過去に作成された2つの報告書データのそれぞれから選択された2つのトピックについて、網羅的に類似度を算出する。ここで、他のトピックとの類似度が高いトピックは、頻出のトピックと考えられる。設定部21は、他のトピックと類似度が所定値以上のトピックを特定し、特定されたトピックを含むサンプルデータを、サンプルデータ群11に設定しても良い。
【0042】
編集支援部22は、ユーザが報告書データR(t)を編集する支援をする。編集支援部22は、例えば、サンプルデータ群11から、ユーザが選択したあるいはユーザの状況に応じたサンプルデータを選択して、編集可能な報告書データを表示して、ユーザに編集を促す。また編集支援部22は、ユーザが編集中の報告書データを逐次報告書データ群Rに蓄積して保存する。編集支援部22は、ユーザによる編集内容、編集支援部22によって表示された装飾等を、表示部27を介して表示する。
【0043】
取得部26は、所定のパラメータについて、過去に作成された複数の報告書データから、そのパラメータの値を取得する。表示部27は、例えば図7に示すように、複数の報告書データにおいて、所定のパラメータに対応づけられたデータの推移を表示する。図7は、時系列毎のA市の不通回線数を示す折れ線グラフであるが、棒グラフなど、任意の方法で表示しても良い。また複数の地域における所定のパラメータの推移を、地図上で表示するなど、表示部27は、任意のグラフィックと併せてデータの推移を表示しても良い。
【0044】
表示部27は、編集中の報告書データを表示したり、編集支援部22による処理結果を表示したりする。
【0045】
編集支援部22は、判定部23、特定部24および確認部25を備える。各処理について詳述する。
【0046】
(判定部)
判定部23は、対象の報告書データと対象の前の報告書データから、所定のパラメータに対応づけられる数値を抽出し、判定データ12を用いて、所定のパラメータについての改善または悪化を判定する。対象の報告書データは、対象の報告書データは、報告書データ群Rの報告書データのうち、判定部23による判定の対象であって、本発明の実施の形態において、ユーザによる編集中の報告書データである。例えば判定部23は、編集中の報告書データR(t)と、その直前に作成された報告書データR(t-1)を比較して、各パラメータについて状況の改善または悪化を判定する。
【0047】
なお判定部23による判定対象は、編集中の報告書データに限らず、編集が完了した報告書データであっても良い。また判定部23は、判定対象の報告書データを、その直前に生成された報告書データと比較して、判定する場合について説明するが、これに限らない。判定部23は、判定対象の報告書データを、報告書データ群Rの複数の報告書データからユーザが指定した報告書データと比較しても良い。
【0048】
所定のパラメータは、ユーザによって指定されても良いし、判定部23が報告書データから抽出してもよい。判定部23は、例えば、図2に示す例において、「<>」で括られた文言、「◇」で始まる文言、または数字が対応づけられた文言等を、パラメータとしても良い。
【0049】
判定部23は、所定のパラメータについて、対象の報告書データにおける数値と、それ以前に作成された報告書データにおける数値を抽出する。判定部23は、判定データ12を参照して、そのパラメータについて、改善したか悪化したかを判定する。
【0050】
判定部23は、改善したパラメータと悪化したパラメータの情報を表示部27に入力する。表示部27は、各パラメータに、改善または悪化を示す装飾を付加する。
【0051】
表示部27は、改善と判定された場合、対象の報告書データの所定のパラメータの数値に、改善を示す装飾を付加し、悪化と判定された場合、数値に、悪化を示す装飾を付加して表示する。例えば図8の最新版表示部V2第1のトピックT2において、パラメータ「M回線被害数」の数値「131」が、直前に生成された報告書データにおけるパラメータ「M回線被害数」の数値よりも悪化している場合、表示部27は、「131」に悪化を示す悪化装飾部D3を付加する。第2のトピックT2において、パラメータ「K回線被害数」の数値「2182」が、直前に生成された報告書データにおけるパラメータ「K回線被害数」の数値よりも改善している場合、表示部27は、「2182」に改善を示す改善装飾部D2を付加する。
【0052】
図8の最新版表示部V2に示す例において、悪化を示す装飾は「BAD」と記載したアイコンで、改善を示す装飾は「GOOD」を示すアイコンであるが、これに限らない。例えば、数値、またはパラメータを、改善を示す装飾として青文字で記載し、悪化を示す装飾として赤文字で記載しても良い。表示部27は、そのパラメータの数値が、直前よりも改善したか悪化したかを装飾で表現すれば良い。また改善でも悪化でもないパラメータについて、変更がないことを示す装飾を付加しても良い。
【0053】
なお、判定部23によって判定されるパラメータを、予め絞り込んでも良い。数値の変化が、改善とも悪化とも取られる場合など、判定部23による判定対象から外しても良い。例えば、毛布の配布枚数が増加している場合、災害対策の進捗が進んでおり改善しているとも考えられる一方、毛布を必要とする人が増加していることから被害が大きくなっており悪化しているとも考えられる。このように、判定が難しいパラメータについて、判定部23は、判定対象から除外しても良いし、判定結果を「不明」として不明なことを示す装飾を付加しても良い。
【0054】
表示部27が、状況の悪化または改善を、装飾で表現することにより、以前からの状況の変化の視認性を向上することができる。また表示部27は、改善または悪化を示す装飾を不可した報告書データを、報告書データ群Rに記憶しても良い。これにより、報告書データを印刷物またはビューワで視認する人も、以前からの状況の変化の視認性を向上することができる。
【0055】
(特定部)
特定部24は、対象の報告書データと、対象の前の報告書データを比較して、対象の前の報告書データに存在し、対象の報告書データに存在しない情報を特定する。
【0056】
特定部24は、例えば、設定部21において算出した2つの報告書データ間の類似度を参照して、移動コストの大きい部分から差分を特定することができる。対象の報告書データのトピックと、対象の前の報告書データのトピック間の非類似度が0でない場合、差異があることがわかる。特定部24は、例えば図6に示すエディットグラフから、差異のある部分を特定することができる。図6に示す例において、横軸に対象の報告書データのフレーズが設定され、縦軸に対象の前の報告書データのフレーズが設定されるとする。図6から、「A:3区間」が「A:2区間」に変更されたこと、「[D~E]ケーブル1本」が削除されたこと、「現地調査日程調整中」が追加されたことがわかる。特定部24は、対象の報告書データに存在しない情報として、「[D~E]ケーブル1本」を特定する。
【0057】
表示部27は、特定された情報が、対象の報告書データで削除されたことを示す装飾を付加して表示する。表示部27は、例えば図8に示す画面を表示する。図8は、旧版表示部V1と、最新版表示部V2を有する。旧版表示部V1は、対象の前の報告書データを表示し、最新版表示部V2は、対象の報告書データを表示する。
【0058】
旧版表示部V1の第1のトピック表示部V11と、最新版表示部V2の第1のトピック表示部V21は、ともに、「ビル孤立」に関する情報を表示する。これらのトピックの類似度の検索により、特定部24は、旧版の「A市 XXビル(MM/DD XX:XX発生)→迂回ルート検討中」のフレーズが削除されたことを特定する。表示部27は、このフレーズに削除装飾部D1を付加する。図8に示す例において、削除装飾部は、取り消し線であるが、グレー表示などの他の装飾であっても良い。
【0059】
(確認部)
ユーザが報告書データの編集を終えたタイミングで、表示部27は、図8に示す画面を表示する。このとき確認部25は、編集済の報告書データに関し、誤りの生じやすい部分を特定し、表示部27は、確認部25が特定した部分について、ユーザの確認を促すメッセージを表示しても良い。
【0060】
表示部27は、例えば、旧版表示部V1から削除されたフレーズについて、「削除箇所に誤りはないですか?」と表示しても良い。旧版表示部V1から削除されたフレーズには、削除を示す装飾が付加されているので、ユーザは、削除された箇所が正しいか確認することができる。
【0061】
報告書データにおいて、パラメータの数値が変更された際、その変更日時も併記する場合、確認部25は、パラメータの数値が変更された箇所を、誤りの生じやすい部分として特定しても良い。表示部27は、特定された部分について、変更日時が編集されたことを確認するメッセージを表示することにより、変更日時の編集漏れを防ぐことができる。
【0062】
確認部25が、誤りの生じやすい部分を特定して、表示部27が、ユーザの確認を促すメッセージを表示することにより、処理装置1は、質の高い報告書データの作成を支援することができる。
【0063】
編集支援部22の判定部23、特定部24および確認部25の各機能について説明したが、そのほかの機能を実現しても良い。
【0064】
例えば編集支援部22は、過去の報告書データ群R’から、所定のトピックを検索するインタフェースを提供しても良い。ユーザが所定のトピックを入力すると、編集支援部22は、報告書データ群R’から、入力されたトピックに関する報告内容を表示する。このとき編集支援部22は、他のトピックと類似度が高く頻出のトピック群から、ユーザが入力したトピックの情報を検索して出力しても良い。
【0065】
編集支援部22は、トピックのみならず、トピックの報告内容の一部のフレーズを指定して、その指定されたフレーズに類似するフレーズを含むトピックを検索するインタフェースを提供しても良い。ユーザが所定のフレーズを指定すると、編集支援部22は、報告書データ群R’から、指定されたフレーズと類似度の高いフレーズを含むトピックを表示する。
【0066】
このように編集支援部22は、予め算出されたトピック間の類似度およびフレーズ間の類似度を用いて、ユーザの所望のデータを検索して出力しても良い。
【0067】
(処理方法)
図9ないし図11を参照して、本発明の実施の形態に係る処理装置1による処理方法を説明する。図9ないし図11に示す処理は一例であって、これに限るものではない。
【0068】
まず図9および図10を参照して、編集支援部22および表示部27による編集支援処理を説明する。なお図9および図10は、ユーザが新たな報告書データの作成を開始し、完成するまでの処理として記載するが、判定部23の処理などは、編集時以外のタイミングで実行されても良い。
【0069】
ステップS101において処理装置1は、ユーザが、新たに作成する報告書データのベースとなるサンプルデータを選択したか否かを判定する。ユーザがベースとなるサンプルデータを選択すると、ステップS102においてユーザが選択したデータを編集可能な報告書データとして表示し、ユーザに、報告書データの作成を開始させる。
【0070】
ステップS103において処理装置1は、ユーザから編集終了の指示を待機する。編集終了の指示が入力されると、ステップS104において処理装置1は、図8に示すように、編集された報告書データと、直近の報告書データを並べて表示する。ステップS105において、図10に示す判定処理が行われる。
【0071】
図10のステップS151に示すように、処理装置1は、編集対象の報告書データに含まれる各パラメータについて、ステップS151ないしステップS155の処理を繰り返す。ステップS151において処理装置1は、前の報告書データから処理対象のパラメータの値を抽出する。ステップS152において処理装置1は、判定データ12を用いて、処理対象のパラメータが改善したか悪化したかを判定し、ステップS153において判定結果によって処理を振り分ける。改善した場合、ステップS154において処理装置1は、処理対象のパラメータに改善を示す装飾を付加する。悪化した場合、ステップS155において処理装置1は、処理対象のパラメータに悪化を示す装飾を付加する。各パラメータについて処理が終了すると、図9のステップS106に進む。
【0072】
ステップS106において処理装置1は、直近の報告書データにあり、編集された報告書から削除されたフレーズに、削除されたことを示す装飾を付加する。ステップS107において処理装置1は、編集漏れの多い箇所、削除箇所等に、確認メッセージを表示し、ユーザの確認を促す。
【0073】
ステップS108において処理装置1は、ユーザからの編集完了の指示を待機する。編集完了の指示がない場合、ユーザによる編集を促し、ステップS103に戻る。編集完了の指示があると、ステップS109において処理装置1は、編集された報告書データを、報告書データ群Rに格納する。なお、ここでは、編集が完了した報告書データを報告書データ群Rに格納する場合を説明するが、処理装置1は、編集途中の報告書データも、報告書データ群Rに格納しても良い。
【0074】
図11を参照して、取得部26および表示部27による取得処理を説明する。
【0075】
ステップS201において処理装置1は、ユーザが選択したパラメータを取得する。ステップS202において処理装置1は、報告書データ群Rから、ステップS201において取得したパラメータの値を取得する。ステップS203において処理装置1は、ステップS202で取得したパラメータの値の推移を、表示する。
【0076】
本発明の実施の形態に係る処理装置1は、報告書データに含まれる所定のパラメータについて、以前の報告書からの状況の改善または悪化を判定し、改善または悪化を示す装飾を付加する。状況の改善または悪化を示す装飾を付加した報告書データにより、ユーザは、過去の報告書データを参照しなくとも、状況の改善または悪化を即座に把握することができる。
【0077】
処理装置1は、以前に作成した報告書において存在し、編集対象の報告書において削除されたフレーズを特定し表示する。これによりユーザは、報告書に含まれるフレーズのみならず、報告書から削除されたデータについても確認し、質の高い報告書データを生成することができる。
【0078】
処理装置1は、所定のパラメータについて、各報告書データで設定された値を抽出し、報告書が作成された時系列で、その値の推移を表示する。ある特定のパラメータのトレンドを表示することで、ユーザは、単に改善または悪化に止まらず、より適切にそのパラメータの傾向を把握することができる。
【0079】
このように本発明の実施の形態に係る処理装置1は、災害の状況を逐次報告する業務において、以前の報告書からの差分の視認性を向上することができる。
【0080】
上記説明した本実施形態の処理装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムが用いられる。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされたプログラムを実行することにより、処理装置1の各機能が実現される。
【0081】
なお、処理装置1は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また処理装置1は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0082】
処理装置1のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 処理装置
11 サンプルデータ群
12 判定データ
21 設定部
22 編集支援部
23 判定部
24 特定部
25 確認部
26 取得部
27 表示部
901 CPU
902 メモリ
903 ストレージ
904 通信装置
905 入力装置
906 出力装置
R 報告書データ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12