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特開2022-190619有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190619
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20221219BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20221219BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H05B33/22 B
H05B33/14 B
H05B33/22 D
H01L27/32
G09F9/30 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099029
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】深川 弘彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翼
(72)【発明者】
【氏名】大野 拓
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴央
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】森井 克行
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC12
3K107CC45
3K107DD53
3K107DD66
3K107DD67
3K107DD71
3K107DD74
3K107DD78
3K107FF19
5C094AA24
5C094BA27
5C094FB01
(57)【要約】
【課題】素子構造が単純で且つ低電圧で駆動可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】陽極3と、正孔注入層4と、正孔輸送層5と、発光層6と、電子輸送層7と、電子注入層8と、陰極9と、をこの順に具える有機エレクトロルミネッセンス素子1であって、前記発光層6が、励起錯体を形成する第1の有機化合物と第2の有機化合物とを含み、前記電子注入層8が、特定構造のヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物等を含み、前記電子輸送層7が、前記励起錯体を形成する第1の有機化合物を含み、前記正孔輸送層5が、前記励起錯体を形成する第2の有機化合物を含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子1である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、正孔注入層と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、電子注入層と、陰極と、をこの順に具える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が、励起錯体を形成する第1の有機化合物と第2の有機化合物とを含み、
前記電子注入層が、下記一般式(1)で表される構造を有するヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物、又は下記一般式(2)で表される構造を有する化合物を含み、
前記電子輸送層が、前記励起錯体を形成する第1の有機化合物を含み、
前記正孔輸送層が、前記励起錯体を形成する第2の有機化合物を含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アリールアルキレン基、2~4価の鎖状または環状炭化水素基、又は、これらの基を2つ以上組み合わせてできる基、これらの基の1つ若しくは2つ以上と窒素原子とを組み合わせてできる基を表す。nは、1~4の整数である。)
【化2】
(一般式(2)中、X、Xは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子、酸素原子、硫黄原子又は2価の連結基を表す。Lは直接結合またはp価の連結基を表す。nは、0又は1の数を表し、pは、1~4の数を表す。qは、0又は1の数を表し、pが1のとき、qは0である。R~Rは、同一又は異なって、1価の置換基を表す。m~mは、同一又は異なって、0~3の数を表す。)
【請求項2】
前記正孔輸送層に含まれる第2の有機化合物は、密度汎関数法を用いて算出したイオン化ポテンシャル(IP)の計算値が3.3~5.5eVであるか、イオン化ポテンシャル(IP)の実測値が4.0~6.3eVである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記電子輸送層に含まれる第1の有機化合物は、電子親和力(EA)の計算値が1.54~2.03eVであるか、電子親和力(EA)の実測値が1.9~2.4eVである、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記電子輸送層に含まれる第1の有機化合物は、イオン化エネルギー及び電子親和力の値が前記正孔輸送層に含まれる第2の有機化合物よりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記発光層が、燐光発光材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記発光層が、蛍光発光材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記発光層が、熱活性化遅延蛍光材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、表示装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンス(電界発光)を「EL」と記す場合がある。)素子、表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、薄く、柔軟でフレキシブルである。また、有機EL素子を用いた表示装置は、現在主流となっている液晶表示装置及びプラズマ表示装置と比べて、高輝度、高精細な表示が可能である。また、有機EL素子を用いた表示装置は、液晶表示装置に比べて視野角が広い。このため、有機EL素子を用いた表示装置は、今後、テレビや携帯電話のディスプレイ等としての利用の拡大が期待されている。
また、有機EL素子は、照明装置としての利用も期待されている。
【0003】
有機EL素子は、陰極と発光層と陽極とが積層されたものである。有機EL素子では、機能を分離した有機化合物を多数積層することで、その性能を向上させてきた。近年の有機EL素子の構造は、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、陰極のように、多くの有機化合物を用いた非常に複雑な構成となっている(非特許文献1)。このような複雑な構成の有機EL素子を作製するためには多くの材料を要するため、有機EL素子及びそれを用いた各種デバイスの高コスト化につながっている。
【0004】
そして、このような複雑な構成が有機EL素子の最適化に不可欠である一方、複数の有機化合物が素子内に存在する場合に、素子内に多数存在する有機化合物間のエネルギー準位の違いが、素子の駆動電圧を上昇させることも提唱されている(非特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】カーステン ウェーバー(Karsten Walzer)、他3名,「ケミカル レビュー(Chemical Review)」,第107巻,2007年,p1233-1271
【非特許文献2】ヤダヴ ロイット(Rohit Ashok Kumar Yadav)、外4名,「サイエンティフィック リポーツ (Scientific Reports)」,第10巻,2020年,p9915
【非特許文献3】コタディアル ナーエッシュ(Naresh B. Kotadiya1)、外6名,「ネイチャー マテリアルズ(Nature Materials)」,第17巻,2018年,p329-334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、従来の複雑な構成の有機EL素子は、高コストで、駆動電圧が高いという課題を有しており、素子構造が単純で且つ低電圧で駆動可能な有機EL素子が要求されている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、素子構造が単純で且つ低電圧で駆動可能な有機EL素子を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる有機EL素子を具えた表示装置及び照明装置を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、素子構造が単純で且つ低電圧で駆動可能な有機EL素子として、2種の有機化合物からなる励起錯体に注目した。該励起錯体は、イオン化エネルギー及び電子親和力が相対的に小さいドナー性の材料と、イオン化エネルギー及び電子親和力が相対的に大きいアクセプター性の材料とからなり、近年、励起錯体を利用した高効率な有機EL素子が報告されている(例えば、サトシ セオ,「ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジックス(J. J. Appl. Phys.)」,第53巻,2014年,p042102;Jeong-Hwan Lee、外4名,「エーシーエス アップライド マテリアルズ アンド インターフェーシズ(ACS Applied Materials & Interfaces)」,第9巻,2017年,p3277)。過去の報告では、励起錯体を利用した高効率な有機EL素子について報告されているが、素子構造の単純化にはほとんど言及されていない。また、多くの励起錯体を利用した有機EL素子においては、励起錯体を構成する材料以外に、電子輸送材料となる有機化合物やアルカリ金属をドープしたn-dope層が用いられている等、素子構造は複雑な構成となっている。
【0009】
これに対して、近年、水素結合や配位結合を活用することで、これまで電子注入に不可欠であったLi等のアルカリ金属を用いずに電子注入が可能であることが報告されている。これらの知見を活かして、有機EL素子内のエネルギー準位を精密に設計することで、素子構造が単純で且つ低電圧で駆動可能な有機EL素子が実現できるものと推定される。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、以下の通りである。
【0011】
[1] 陽極と、正孔注入層と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、電子注入層と、陰極と、をこの順に具える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が、励起錯体を形成する第1の有機化合物と第2の有機化合物とを含み、
前記電子注入層が、下記一般式(1)で表される構造を有するヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物、又は下記一般式(2)で表される構造を有する化合物を含み、
前記電子輸送層が、前記励起錯体を形成する第1の有機化合物を含み、
前記正孔輸送層が、前記励起錯体を形成する第2の有機化合物を含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アリールアルキレン基、2~4価の鎖状または環状炭化水素基、又は、これらの基を2つ以上組み合わせてできる基、これらの基の1つ若しくは2つ以上と窒素原子とを組み合わせてできる基を表す。nは、1~4の整数である。)
【化2】
(一般式(2)中、X、Xは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子、酸素原子、硫黄原子又は2価の連結基を表す。Lは直接結合またはp価の連結基を表す。nは、0又は1の数を表し、pは、1~4の数を表す。qは、0又は1の数を表し、pが1のとき、qは0である。R~Rは、同一又は異なって、1価の置換基を表す。m~mは、同一又は異なって、0~3の数を表す。)
【0012】
[2] 前記正孔輸送層に含まれる第2の有機化合物は、密度汎関数法を用いて算出したイオン化ポテンシャル(IP)の計算値が3.3~5.5eVであるか、イオン化ポテンシャル(IP)の実測値が4.0~6.3eVである、[1]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0013】
[3] 前記電子輸送層に含まれる第1の有機化合物は、電子親和力(EA)の計算値が1.54~2.03eVであるか、電子親和力(EA)の実測値が1.9~2.4eVである、[1]又は[2]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0014】
[4] 前記電子輸送層に含まれる第1の有機化合物は、イオン化エネルギー及び電子親和力の値が前記正孔輸送層に含まれる第2の有機化合物よりも大きい、[1]~[3]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0015】
[5] 前記発光層が、燐光発光材料を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0016】
[6] 前記発光層が、蛍光発光材料を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0017】
[7] 前記発光層が、熱活性化遅延蛍光材料を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0018】
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、表示装置。
【0019】
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、照明装置。
【発明の効果】
【0020】
従来の有機EL素子においては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、と極めて多くの材料を成膜する必要があったが、本発明の有機EL素子の構成は、正孔注入層、正孔輸送層(ドナー性材料)、発光層、電子輸送層(アクセプター性材料)、電子注入層と、極めて単純であり、有機EL素子を簡易に、低コストで作製できる。
【0021】
また、本発明の有機EL素子においては、素子内に用いる材料が少ないため、素子内にエネルギーの障壁が存在しない。そのため、本発明の有機EL素子によれば、極めて低い印加電圧で高い電流値を得ることができる。
【0022】
また、本発明の有機EL素子は、電子注入層として水分により劣化し易いアルカリ金属を用いないことが可能であるため、フレキシブル有機EL素子を長寿命化させる効果も得られる。
【0023】
更に、本発明の表示装置及び照明装置は、本発明の有機EL素子を具えているため、低コストで作製でき、駆動電圧が低く、優れた特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一般的な有機EL素子の構造及び素子内のエネルギー準位を説明するための概略図である。
図2】本発明の有機EL素子の一例の構造及び素子内のエネルギー準位を説明するための概略図である。
図3】本発明で用いることが可能なドナー性材料のイオン化ポテンシャルの計算値と実測値の相関図である。
図4】本発明で用いることが可能なアクセプター性材料の電子親和力の計算値と実測値の相関図である。
図5】本発明の有機EL素子の一例の積層構造を説明するための概略断面図である。
図6】本発明の有機EL素子の他の一例の積層構造を説明するための概略断面図である。
図7】実施例1~3及び比較例1~3の有機EL素子の印加電圧と電流密度との関係を示したグラフである。
図8】実施例1~3の有機EL素子のELスペクトルである。
図9】実施例1~3及び比較例1~3の有機EL素子の印加電圧と輝度との関係を示したグラフである。
図10】実施例4~6及び比較例4~6の有機EL素子の印加電圧と電流密度との関係を示したグラフである。
図11】実施例4~6の有機EL素子のELスペクトルである。
図12】実施例4~6及び比較例4~6の有機EL素子の印加電圧と輝度との関係を示したグラフである。
図13】実施例1~3及び実施例7~18の有機EL素子のELスペクトルである。
図14】実施例1~3及び実施例7~18の有機EL素子のELスペクトルから得られた励起錯体エネルギーと励起錯体エネルギーの計算値との相関図である。
図15】実施例19、25及び28の有機EL素子のELスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の有機EL素子、表示装置及び照明装置の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は、以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0026】
図1に、一般的な有機EL素子の層構成と、素子内のエネルギー準位の模式図を示す。一般的な有機EL素子においては、陽極から正孔が、陰極から電子が注入され、それぞれの電荷が輸送層を経て発光層に到達し、また、電荷が発光層から漏れ出ることを阻止する目的で阻止層が設けられていた。このように、一般的な有機EL素子においては、素子内にはイオン化ポテンシャル(IP)や電子親和力(EA)が異なる複数の有機化合物からなる層が存在し、これらのエネルギー準位が異なるため、素子内にエネルギー準位の差が生じる。このエネルギー準位の差が、一般的な有機EL素子の駆動電圧の上昇に繋がっている。
【0027】
図2に、本実施形態の有機EL素子の構造と、素子内のエネルギー準位の模式図を示す。本実施形態の有機EL素子の発光層には、励起錯体を形成する材料のうちIP/EAが小さいドナー性材料(励起錯体を形成する第2の有機化合物)と、IP/EAが大きいアクセプター性材料(励起錯体を形成する第1の有機化合物)とが含まれており、また、正孔注入層に隣接する正孔輸送層には、励起錯体を形成する材料のうちIP/EAが大きいドナー性材料(励起錯体を形成する第2の有機化合物)が含まれており、一方、電子注入層に隣接する電子輸送層には、励起錯体を形成する材料のうちIP/EAが小さいアクセプター性材料(励起錯体を形成する第1の有機化合物)が含まれている。
ドナー性材料に正孔が注入され、アクセプター性材料に電子が注入されれば、ドナー性材料とアクセプター性材料を含む発光層で再結合し、発光を得ることができる。この際、本実施形態の有機EL素子は、一般的な有機EL素子とは異なり、素子内にエネルギー差が存在しないため、単純な構造でありながらも、低い印加電圧で有機EL素子を駆動することができる。先行研究においても、このような励起錯体を利用した有機EL素子は提唱されていたが、電子注入層に広く用いられるLi等のアルカリ金属から、直接電子を注入できるアクセプター性材料は限られており、アクセプター性材料からなる層と電子注入層の間に、第2の電子輸送層を設けることが不可欠であり、構造が複雑になっていた。
これに対して、本実施形態の有機EL素子においては、電子注入層に、上記一般式(1)で表される構造を有するヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物、又は上記一般式(2)で表される構造を有する化合物を用いることで、あらゆるアクセプター性材料に対して効率的に電子を注入できるため、Li等のアルカリ金属を電子注入層に用いた有機EL素子に比べ、大幅に低い印加電圧で素子を駆動することが可能となる。
【0028】
以下に、励起錯体を形成するドナー性材料(正孔輸送層及び発光層に含まれ、励起錯体を形成する第2の有機化合物)の例を示す。
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
【0029】
ドナー性材料としては、IPが小さい材料が好ましいため、トリアリールアミン、カルバゾール、フェノキサジン、フェナジン、アクリジン、アザジベンゾピレン、ジュロリジン骨格等、ドナー性が高い分子構造を含む材料が好ましい。上記ドナー性材料のIP/EAの計算値を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
上記IP/EAの計算値は、主にGaussian 09プログラムを用いて密度汎関数法により計算し、以下の条件[B3LYP/6-31G (d,p)]で計算した。
また、幾つかのドナー性材料について、紫外光電子分光法(UPS)により求めたIPの実測値とIPの計算値の相関を図3に示す。このように、IPの実測値と計算値には強い相関関係が見られることから、IPの計算値を用いて実験結果の議論が可能であることが分かる。表1及び図3から、上記ドナー性材料のIPの計算値は、3.74~5.08eVであり、IPの実測値は、概ね4.4~5.8eVであることが分かる。
【0032】
次に、励起錯体を形成するアクセプター性材料(電子輸送層及び発光層に含まれ、励起錯体を形成する第1の有機化合物)の例を示す。
【化4-1】
【化4-2】
【0033】
アクセプター性材料に求められる条件としては、ドナー性材料として用いる材料よりもIP及びEAが大きいことであり、ドナー性材料が上記特定の分子構造の導入によりIPが小さくなるのに対し、アクセプター性材料の分子構造は特定されない。上記アクセプター性材料のIP/EAの計算値を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
上記IP/EAの計算値は、主にGaussian 09プログラムを用いて密度汎関数法により計算し、以下の条件[B3LYP/6-31G (d,p)]で計算した。
また、DIC-TRZ及びその他の幾つかの材料について、低エネルギー逆光電子分光法(LEIPS)により求めたEAの実測値とEAの計算値の相関を図4に示す。このように、EAの実測値と計算値には強い相関関係が見られることから、EAの計算値を用いて実験結果の議論が可能であることが分かる。表2及び図4から、上記材料のEAの計算値は、1.54~2.03eVであり、EAの実測値は、概ね1.9~2.4eVであることが分かる。
【0036】
<有機EL素子>
次に、本発明の有機EL素子について、例を挙げて詳細に説明する。
図5は、本発明の有機EL素子の一例を説明するための概略断面図である。図5に示す本実施形態の有機EL素子1は、陰極9と陽極3との間にドナー性材料(励起錯体を形成する第2の有機化合物)とアクセプター性材料(励起錯体を形成する第1の有機化合物)とを含む発光層6を有する。正孔輸送層5は、ドナー性材料(励起錯体を形成する第2の有機化合物)を含み、正孔注入層4と隣接している。電子輸送層5は、アクセプター性材料(励起錯体を形成する第1の有機化合物)を含み、電子注入層8と隣接している。
本実施形態の有機EL素子1は、基板2上に、陽極3と、正孔注入層4と、正孔輸送層5と、発光層6と、電子輸送層7と、電子注入層8と、陰極9とがこの順に形成された積層構造を有する。
【0037】
また、本実施形態の有機EL素子1は、図6に示すように、基板2上に陰極9を有する逆構造の有機EL素子としてもよい。図6に示す有機EL素子1は、基板2上に、陰極9と、電子注入層8と、電子輸送層7と、発光層6と、正孔輸送層5と、正孔注入層4と、陽極3とがこの順に形成された積層構造を有する。
【0038】
また、本実施形態の有機EL素子1は、有機EL素子を構成する層の一部を、無機化合物を用いて形成した有機無機ハイブリッド型の有機電界発光素子(HOILED素子)であってもよい。
なお、図5及び図6に示す有機EL素子1は、基板2と反対側に光を取り出すトップエミッション型のものであってもよいし、基板2側に光を取り出すボトムエミッション型のものであってもよい。
【0039】
「基板」
基板2の材料としては、樹脂材料、ガラス材料等が挙げられる。
基板2に用いられる樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等が挙げられる。基板2の材料として、樹脂材料を用いた場合、柔軟性に優れた有機EL素子1が得られるため好ましい。
基板2に用いられるガラス材料としては、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。
【0040】
有機EL素子1がボトムエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板を用いる。
有機EL素子1がトップエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板だけでなく、不透明基板を用いてもよい。不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料からなる基板、ステンレス鋼のような金属板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成した基板、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0041】
基板2の平均厚さは、基板2の材料等に応じて決定でき、0.1~30mmであることが好ましく、0.1~10mmであることがより好ましい。基板2の平均厚さは、デジタルマルチメーター、ノギスにより測定できる。
【0042】
「陽極」
図5に示す陽極3は、基板2上に直接接触して形成されているが、図6に示すような逆構造の有機EL素子の場合は、基板2上に直接接触して形成されていなくてもよい。
陽極3の材料としては、ITO(インジウム酸化錫)、IZO(インジウム酸化亜鉛)、FTO(フッ素酸化錫)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物の導電材料が挙げられる。この中でも、陽極3の材料として、ITO、IZO、FTOを用いることが好ましい。
陽極3の平均厚さは、特に制限されないが、10~500nmであることが好ましく、100~200nmであることがより好ましい。
陽極3の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0043】
「正孔注入層」
正孔注入層4は、無機材料からなるものであってもよいし、有機材料からなるものであってもよい。無機材料は、有機材料と比較して安定であるため、有機材料を用いた場合と比較して、酸素や水に対する高い耐性が得られ易い。
無機材料としては、特に制限されないが、例えば、酸化バナジウム(V)、酸化モリブテン(MoO)、酸化ルテニウム(RuO)等の金属酸化物を1種又は2種以上を用いることができる。
有機材料としては、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)や2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノ-キノジメタン(F4-TCNQ)等を用いることができる。また、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等の高分子材料も用いることができる。
正孔注入層4の平均厚さは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましく、5~50nmであることがより好ましい。
正孔注入層4の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0044】
「正孔輸送層」
正孔輸送層5は、上述の通り、励起錯体を形成する第2の有機化合物を含む。
正孔輸送層5に用いる正孔輸送性有機材料としては、励起錯体を形成する材料のうち、IP及びEAが小さい材料(ドナー性の高い材料)を用いる。
具体的には、トリアリールアミン、カルバゾール、フェノキサジン、フェナジン、アクリジン、アザジベンゾピレン、ジュロリジン骨格等、ドナー性が高い分子構造を含む材料が好ましい。より具体的には、上記のm-MTDATA、TPT-1、TAPC、TPDI、HN-D1、HN-D2、N-TPA、EH44、PHZ-2Naph、TBDI、HT-01、N-DPA、spiro-MeO-TAD、Tris-PCz、α-NPD、TcTa、2-SF-DMAC、2-SF-PHX、SF-BCz、FATPA等が好ましい。
正孔輸送層5に含まれる第2の有機化合物は、密度汎関数法を用いて算出したイオン化ポテンシャル(IP)の計算値が3.3~5.5eVであるか、イオン化ポテンシャル(IP)の実測値が4.0~6.3eVであることが好ましく、密度汎関数法を用いて算出したイオン化ポテンシャル(IP)の計算値が3.7~5.1eV、イオン化ポテンシャル(IP)の実測値が4.4~5.8eVであることがより好ましい。
正孔輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましく、20~100nmであることがより好ましい。
正孔輸送層5の平均厚さは、例えば、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0045】
「発光層」
発光層6は、上述の通り、励起錯体を形成する第1の有機化合物と第2の有機化合物とを含み、前記正孔輸送層5と後述する電子輸送層7を構成する2つの材料から主に形成される。
発光層6を形成する材料は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
【0046】
発光層6においては、正孔輸送層5と電子輸送層7を構成する2つの材料から形成される励起錯体の発光を取り出すこともできる一方、この励起錯体を発光層6のホストとして用いることも可能である。この場合、ホストに対するドーパントとして、イリジウム錯体や白金錯体等の燐光発光材料、蛍光発光材料、熱活性化遅延蛍光材料等を、前記発光層6に混合してもよい。ドーパントの混合比は、励起錯体に対して20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0047】
前記燐光発光材料として、Ir、Pt等の金属を含む金属錯体等を使用できる。イリジウム錯体としては、ファクトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、fac-トリス(3-メチル-2-フェニルピリジナト-N,C2’-)イリジウム(III)(Ir(mppy))、トリス[1-フェニルイソキノリン]イリジウム(III)(Ir(piq))等が挙げられる。白金錯体としては、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィンプラチナム(II)等が挙げられる。
【0048】
前記蛍光発光材料としては、8-ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、8-ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq)等の各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)等のベンゼン系化合物;ナフタレン、ナイルレッド等のナフタレン系化合物;フェナントレン等のフェナントレン系化合物;クリセン、6-ニトロクリセン等のクリセン系化合物;ペリレン、N,N’-ビス(2,5-ジ-t-ブチルフェニル)-3,4,9,10-ペリレン-ジ-カルボキシイミド(BPPC)等のペリレン系化合物;コロネン等のコロネン系化合物;アントラセン、ビススチリルアントラセン等のアントラセン系化合物;ピレン、BD-1等のピレン系化合物;4-(ジ-シアノメチレン)-2-メチル-6-(パラ-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)等のピラン系化合物;アクリジン等のアクリジン系化合物;スチルベン等のスチルベン系化合物;2,5-ジベンゾオキサゾールチオフェン等のチオフェン系化合物;ベンゾオキサゾール等のベンゾオキサゾール系化合物;ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系化合物;2,2’-(パラ-フェニレンジビニレン)-ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系化合物;ビスチリル(1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン)、テトラフェニルブタジエン等のブタジエン系化合物;ナフタルイミド等のナフタルイミド系化合物;クマリン等のクマリン系化合物;ペリノン等のペリノン系化合物;オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;アルダジン系化合物;1,2,3,4,5-ペンタフェニル-1,3-シクロペンタジエン(PPCP)等のシクロペンタジエン系化合物;キナクリドン、キナクリドンレッド等のキナクリドン系化合物;ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン等のピリジン系化合物;2,2’,7,7’-テトラフェニル-9,9’-スピロビフルオレン等のスピロ化合物等が挙げられる。
【0049】
前記熱活性化遅延蛍光材料としては、2,4,5,6-テトラ(9-カルバゾール)-イソフタロニトリル(4CzIPN)、4,5-ジ(9-カルバゾール)-フタロニトリル(2CzPN)、3,4,5,6-テトラ(9-カルバゾール)-フタロニトリル(4CzPN)、2,3,5,6-テトラ(9-カルバゾール)-テレフタロニトリル(4CzTPN)、2,3,5,6-テトラ(3,6-ジメチル-9-カルバゾール)-テレフタロニトリル(4CzTPN-Me)、2,3,5,6-テトラ(3,6-ジフェニル-9-カルバゾール)-テレフタロニトリル(4CzTPN-Ph)等が挙げられ、更には、特開2012-193352号公報、国際公開第2011/070963号に記載の化合物等が挙げられる。
【0050】
発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましく、20~100nmであることがより好ましい。
発光層6の平均厚さは、触針式段差計により測定してもよいし、水晶振動子膜厚計により発光層6の成膜時に測定してもよい。
【0051】
「電子輸送層」
電子輸送層7は、上述の通り、励起錯体を形成する第1の有機化合物を含む。
電子輸送層7は、後述する電子注入層8に隣接して配設され、電子輸送層7としては、正孔輸送層5に用いる材料よりもIP及びEAが大きい、あらゆる材料を用いることができる。これにより、発光層6において励起錯体を形成することができる。
【0052】
電子輸送層7に用いる材料として、具体的には、トリアジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、芳香族炭化水素、イミダゾール誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、キノリン誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、各種金属錯体、シロール誘導体に代表される有機シラン誘導体、ホウ素含有化合物等が挙げられ、これらの1種を用いることができる。
電子輸送層7の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましく、20~100nmであることが、より好ましい。
電子輸送層7の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0053】
「電子注入層」
電子注入層8は、下記一般式(1)で表される構造を有するヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物、又は下記一般式(2)で表される構造を有する化合物を含む。
【0054】
【化5】
(一般式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アリールアルキレン基、2~4価の鎖状または環状炭化水素基、又は、これらの基を2つ以上組み合わせてできる基、これらの基の1つ若しくは2つ以上と窒素原子とを組み合わせてできる基を表す。nは、1~4の整数である。)
【0055】
【化6】
(一般式(2)中、X、Xは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子、酸素原子、硫黄原子又は2価の連結基を表す。Lは直接結合またはp価の連結基を表す。nは、0又は1の数を表し、pは、1~4の数を表す。qは、0又は1の数を表し、pが1のとき、qは0である。R~Rは、同一又は異なって、1価の置換基を表す。m~mは、同一又は異なって、0~3の数を表す。R~Rは、X、Xと結合して環構造を形成してもよい、Rが複数ある場合、複数のRが結合して環構造を形成していてもよい。また、Rが複数ある場合、複数のRが結合して環構造を形成していてもよい。また、Rが複数ある場合、複数のRが結合して環構造を形成していてもよい。)
【0056】
電子注入層8は、一般式(1)で表される構造を有するヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物、又は一般式(2)で表される構造を有する化合物を含むことで、陰極9から、アクセプター性材料からなる電子輸送層7へ直接の電子注入が可能となり、図5図6に示すような、単純構造の有機EL素子の実現が可能となる。
電子注入層8は、一般式(1)で表される構造を有するヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物、又は一般式(2)で表される構造を有する化合物を含み、これらの材料を単体で用いてもよいし、他の材料と混合してもよい。
【0057】
上記一般式(1)におけるRは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アリールアルキレン基、2~4価の鎖状または環状炭化水素基、又は、これらの基を2つ以上組み合わせてできる基、これらの基の1つ若しくは2つ以上と窒素原子とを組み合わせてできる基を表す。
芳香族炭化水素基、芳香族複素環基としては、炭素数3~30のものが好ましく、炭素数4~24のものがより好ましく、炭素数5~20のものがさらに好ましい。
芳香族炭化水素基としては、ベンゼン等の1つの芳香環のみからなる化合物;ビフェニル、ジフェニルベンゼン等の複数の芳香環が1つの炭素原子同士で直接結合した化合物;ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等の縮合環式芳香族炭化水素化合物のいずれかの芳香環から水素原子を1~4個除いてできる基が挙げられる。
芳香族複素環基としては、チオフェン、フラン、ピロール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等の1つの芳香族複素環のみからなる化合物;これらの1つの芳香族複素環のみからなる化合物が1つの炭素原子同士で複数直接結合した化合物(ビピリジン等);キノリン、キノキサリン、ベンゾチオフェン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、インドール、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アクリジン、フェナントロリン等の縮合環式複素芳香族炭化水素化合物のいずれかの芳香族複素環から水素原子を1~4個除いてできる基が挙げられる。
アリールアルキレン基としては、上記芳香族炭化水素基と炭素数1~3のアルキレン基とを組み合わせた基が挙げられる。
2~4価の鎖状または環状炭化水素基としては、炭素数1~12のものが好ましく、炭素数1~6のものがより好ましく、炭素数1~4のものがさらに好ましい。鎖状炭化水素基は直鎖状のものであってもよく、分岐鎖状のものであってもよい。
また、Rは上記芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アリールアルキレン基、2~4価の鎖状炭化水素基を2つ以上組み合わせてできる基でもよい。
更に、Rは上記芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アリールアルキレン基、2~4価の鎖状炭化水素基の1つ若しくは2つ以上と窒素原子とを組み合わせてできる基であってもよい。そのような基としては、例えば、トリメチルアミン等のトリアルキルアミンやトリフェニルアミンから水素原子を1~4個除いてできる基等が挙げられる。
【0058】
上記芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、又は、アリールアルキレン基は1価の置換基を1つ又は2つ以上有していてもよい。
1価の置換基としては、フッ素原子;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5~7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1~10のアルキル基を有するアルキルアミノ基;ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基等の環状アミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基等のジアリールアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;スチリル基等の炭素数2~30のアルケニル基;フッ素原子等のハロゲン原子や炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基等で置換されていてもよい炭素数5~20のアリール基(アリール基の具体例は、上記芳香族炭化水素基と同様);フッ素原子等のハロゲン原子や炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基等で置換されていてもよい炭素数4~40の窒素原子、硫黄原子、酸素原子のいずれか1つ以上を含む複素環基(複素環基は、1つの環のみからなるものであってもよく、1つの芳香族複素環のみからなる化合物が1つの炭素原子同士で複数直接結合した化合物であってもよく、縮合複素環基であってもよい。複素環基の具体例には、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、インドール環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環、フェナントリジン環等の芳香族複素環基の具体例が含まれる。);エステル基、チオエーテル基等が挙げられる。なお、これらの基は、ハロゲン原子やヘテロ元素、アルキル基、芳香環等で置換されていてもよい。
【0059】
上記一般式(1)におけるnは、1~4の整数であるが、2又は3であることが好ましい。
【0060】
上記一般式(1)で表される構造を有するヘキサヒドロピリミドピリミジン化合物の具体例としては、例えば、下記構造式(3-1)~(3-34)で表される化合物が挙げられる。
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
【0061】
上記一般式(1)で表される化合物は、下記反応式(4)に示すように、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素を有するハロゲン化合物と、ヘキサヒドロピリミドピリミジンとを原料とし、Ullmannカップリング反応、Buchwald-Hartwigアミノ化反応又は求核置換反応等により合成することができる。
【化8】
【0062】
上記一般式(2)におけるX、Xは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい窒素原子、酸素原子、硫黄原子又は2価の連結基を表す。
2価の連結基としては、2価の炭化水素基及び炭化水素基の炭素原子の一部が窒素原子、酸素原子、硫黄原子のいずれかのヘテロ原子で置換された基が挙げられる。
炭化水素基としては、炭素数1~6のものが好ましく、炭素数1、2、又は6のものがより好ましい。
炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状及びこれらを組み合わせたもののいずれのものであってもよい。
2価の炭化水素基は、飽和炭化水素基であるアルキレン基でもよく、アルケニレン基、アルキニレン基等の不飽和炭化水素基でもよい。
2価の炭化水素基として、具体的には下記式(5-1)~(5-4)で表されるものが好ましい。下記式(5-1)~(5-4)におけるRは置換基を表す。下記式(5-1)~(5-4)におけるRも含め、X、Xにおける置換基の具体例としては、後述するR~Rの1価の置換基と同様の基が挙げられる。
【0063】
【化9】
【0064】
上記一般式(2)におけるLは、直接結合またはp価の連結基を表す。なお、Lが直接結合となるのは、pが2の場合のみである。
p価の連結基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子の他、炭化水素基や炭化水素基の炭素原子の一部が窒素原子、酸素原子、硫黄原子のいずれかのヘテロ原子で置換された基から水素原子をp個除いてできる基が挙げられる。
p価の連結基が炭素原子を有するものである場合、炭素数1~30のものが好ましい。より好ましくは、炭素数1~20のものである。
炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状及びこれらを組み合わせたもののいずれのものであってもよい。
炭化水素基としては、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれのものであってもよい。
芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、トリフェニレン環、ピレン環、フルオレン環、インデン環等の芳香族化合物から水素原子を除いてできる基が挙げられる。
【0065】
上記一般式(2)におけるR~Rは、同一又は異なって、1価の置換基を表す。また、m~mは、同一又は異なって、0~3の数を表す。
1価の置換基としては、フッ素原子;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5~7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1~10のアルキル基を有するアルキルアミノ基;ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基等の環状アミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基等のジアリールアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;スチリル基等の炭素数2~30のアルケニル基;フッ素原子等のハロゲン原子や炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基等で置換されていてもよい炭素数5~20のアリール基(アリール基の具体例は、上記芳香族炭化水素基と同様);フッ素原子等のハロゲン原子や炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基等で置換されていてもよい炭素数4~40の窒素原子、硫黄原子、酸素原子のいずれか1つ以上を含む複素環基(複素環基は、1つの環のみからなるものであってもよく、1つの芳香族複素環のみからなる化合物が1つの炭素原子同士で複数直接結合した化合物であってもよく、縮合複素環基であってもよい。複素環基の具体例には、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、インドール環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾチアジアゾール環、フェナントリジン環等の芳香族複素環基の具体例が含まれる。);エステル基、チオエーテル基等が挙げられる。なお、これらの基は、ハロゲン原子やヘテロ元素、アルキル基、芳香環等で置換されていてもよい。
【0066】
また、上記一般式(2)におけるpは、1~4の数を表すが、1~3の数であることが好ましい。一般式(2)のpが1である化合物の具体例としては、例えば、下記構造式(6-1)~(6-9)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
【0067】
上記一般式(2)におけるnは、0又は1の数を表すが、上記一般式(2)で表される化合物が、nが0の化合物であることは本発明の好適な実施形態の1つである。一般式(2)のnが0の化合物の具体例としては、例えば、上記構造式(6-1)~(6-6)で表される化合物が挙げられる。
【0068】
上記一般式(2)で表される化合物には、フェナントロリン骨格を一つだけ有する下記一般式(7)で表される構造を有する化合物が含まれ、この化合物も前記電子注入層8の材料として好適である。
【0069】
【化11】
【0070】
(一般式(7)中、R、Rは同一又は異なって、ジアルキルアミノ基又はアルコキシ基を表す。m、mは、同一又は異なって、1又は2の数を表す。Rが複数ある場合、複数のRが結合して環構造を形成してもよい。また、Rが複数ある場合、複数のRが結合して環構造を形成してもよい。)
【0071】
上記一般(7)におけるR、Rは、同一又は異なって、ジアルキルアミノ基又はアルコキシ基を表す。
ジアルキルアミノ基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~20のアルキル基を有するものが好ましい。より好ましくは、炭素数1~10のアルキル基を有するものである。また、ジアルキルアミノ基が有する2つのアルキル基は、炭素数が同じであってもよく、異なっていてもよい。また、2つのアルキル基が連結したアミノ基、例えばピペリジノ基やピロリジノ基、モルホリノ基のような環状アミノ基も好ましい。
アルコキシ基としては、上記一般式(2)におけるR~Rがアルコキシ基である場合と同様のものが挙げられる。
【0072】
フェナントロリン骨格を一つだけ有する化合物に加え、下記構造式(8-1)~(8-4)に示すようなフェナントロリン骨格を複数個有する化合物も好適であると考えられる。
【化12】
【0073】
また、上記一般式(2)に含まれ、上記に類似した構造の化合物である下記構造式(9-1)~(9-56)で表される化合物も好適である。
【化13-1】
【化13-2】
【化13-3】
【化13-4】
【化13-5】
【0074】
電子注入層8の平均厚さは、0.5~100nmであることが好ましく、1~10nmであることがより好ましい。電子注入層8は塗料組成物を塗布する方法、もしくは、真空蒸着法を用いて共蒸着することにより形成可能である。
電子注入層8の平均厚さは、例えば、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0075】
「陰極」
陰極9に用いられる材料としては、ITO、IZO、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金等が挙げられる。この中でも、陰極9の材料として、ITO、IZO、Au、Ag、Alを用いることが好ましい。
陰極9の平均厚さは、特に限定されないが、10~1000nmであることが好ましく、30~150nmであることがより好ましい。また、陰極9の材料として不透過な材料を用いる場合でも、例えば、平均厚さを10~30nm程度にすることで、トップエミッション型の有機EL素子における透明な陰極として使用できる。
陰極9の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により陰極9の成膜時に測定できる。
【0076】
特に図6に示す逆構造の有機EL素子においては、陰極9上に無機の酸化物からなる層を製膜したものも、陰極の一部として取り扱う。
この場合に用いる酸化物は、半導体もしくは絶縁体積層薄膜の層である。具体的には、単体の金属酸化物からなる層、二種類以上の金属酸化物を混合した層と単体の金属酸化物からなる層のいずれか一方または両方を積層した層、二種類以上の金属酸化物を混合した層のいずれであってもよい。
【0077】
無機の酸化物を形成する金属酸化物を構成する金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素が挙げられる。
【0078】
無機の酸化物からなる層が、二種類以上の金属酸化物を混合した層を含む場合、金属酸化物を構成する金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、チタン、亜鉛からなる層であることが好ましい。
無機の酸化物からなる層が、単体の金属酸化物からなる層である場合、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群から選ばれる金属酸化物からなる層であることが好ましい。
【0079】
無機の酸化物からなる層が、二種類以上の金属酸化物を混合した層と単体の金属酸化物からなる層のいずれか一方または両方を積層した層、または二種類以上の金属酸化物を混合した層である場合、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウム、から選ばれる二種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したもの、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛、から選ばれる三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したもの等が挙げられる。
【0080】
無機の酸化物は、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZO(酸化インジウムガリウム亜鉛)及び/又はエレクトライドである12CaO・7Alを含むものであってもよい。
無機の酸化物を成膜する場合の平均厚さは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましく、2~100nmであることがより好ましい。
無機の酸化物からなる層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0081】
「封止」
図5図6に示す有機EL素子1は、必要に応じて、封止されていてもよい。
例えば、図5図6に示す有機EL素子1は、有機EL素子1を収容する凹状の空間を有する封止容器(不図示)と、封止容器の縁部と基板2とを接着する接着剤とによって封止されていてもよい。また、封止容器に有機EL素子1を収容し、紫外線(UV)硬化樹脂などからなるシール材を充填することにより封止してもよい。
また、例えば、図5に示す有機EL素子1は、陰極9上に配置された板部材(不図示)と、板部材の陰極9と対向する側の縁部に沿って配置された枠部材(不図示)とからなる封止部材と、板部材と枠部材との間および枠部材と基板2との間とを接着する接着剤とを用いて封止されていてもよい。
また、例えば、図6に示す有機EL素子1は、陽極3上に配置された板部材(不図示)と、板部材の陽極3と対向する側の縁部に沿って配置された枠部材(不図示)とからなる封止部材と、板部材と枠部材との間および枠部材と基板2との間とを接着する接着剤とを用いて封止されていてもよい。
【0082】
封止容器又は封止部材を用いて有機EL素子1を封止する場合、封止容器内又は封止部材の内側に、水分を吸収する乾燥材を配置してもよい。また、封止容器又は封止部材として、水分を吸収する材料を用いてもよい。また、封止された封止容器内又は封止部材の内側には、空間が形成されていてもよい。
【0083】
図5図6に示す有機EL素子1を封止する場合に用いる封止容器又は封止部材の材料としては、樹脂材料、ガラス材料等を用いることができる。封止容器又は封止部材に用いられる樹脂材料及びガラス材料としては、基板2に用いる材料と同様のものが挙げられる。
【0084】
本実施形態の有機EL素子1は、電子注入層として大気中で不安定な材料であるアルカリ金属を用いた場合と比較して、優れた耐久性が得られる。このため、封止容器又は封止部材の水蒸気透過率が10-3~10-4g/m/day程度であれば、有機EL素子1の劣化を十分に抑制できる。従って、封止容器又は封止部材の材料として、水蒸気透過率が10-4g/m/day程度以下の樹脂材料を用いることが可能であり、柔軟性に優れた有機EL素子1を実現できる。
【0085】
「有機EL素子の製造方法」
次に、本発明の有機EL素子の製造方法の一例として、図5図6に示す有機EL素子1の製造方法を説明する。
【0086】
図5に示す有機EL素子1を製造するには、まず、基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、スパッタ法、真空蒸着法、ゾルゲル法、スプレー熱分解(SPD)法、原子層堆積(ALD)法、気相成膜法、液相成膜法等により形成することができる。陽極3の形成には、金属箔を接合する方法を用いてもよい。
【0087】
次に、陽極3上に、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8をこの順で形成する。
正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8の形成方法は、特に限定されず、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8のそれぞれに用いられる材料の特性に合わせて、従来公知の種々の形成方法を適宜用いることができる。
具体的には、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8の各層を形成する方法として、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8となる有機化合物を含む有機化合物溶液を塗布する塗布法、真空蒸着法、ESDUS(Evaporative Spray Deposition from Ultra-dilute Solution)法等が挙げられる。
【0088】
次に、電子注入層8上に、陰極9を形成する。陰極9は、例えば、陽極3と同様にして形成できる。
【0089】
図6に示す逆構造の有機EL素子を作製する場合、順序が逆となる。なお、図6に示す逆構造の有機EL素子において、陰極9上に無機の酸化物からなる層を形成する場合、酸化物は、例えば、スプレー熱分解法、ゾルゲル法、スパッタ法、真空蒸着法等の方法を用いて形成する。
以上の工程により、図5図6に示す有機EL素子1が得られる。
【0090】
「封止方法」
図5図6に示す有機EL素子1を封止する場合には、有機EL素子の封止に用いられる通常の方法を使用して封止できる。
【0091】
<表示装置、照明装置>
本実施形態の有機EL素子1は、素子内にエネルギー差が存在しないため、小さなエネルギーで電荷の再結合が可能となる。従って、駆動電圧の低い有機EL素子1となる。
本発明の有機EL素子は、発光層等の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができるし、カラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。そのため、本発明の有機EL素子は、表示装置の発光部位や照明装置として好適に用いることができる。
【0092】
本発明の表示装置は、その簡易な素子構造により生産性に優れ、駆動電圧が低い本発明の有機EL素子を具える。このため、表示装置として好ましいものである。
また、本発明の照明装置は、その単純な素子構造により生産性に優れ、駆動電圧が低い本発明の有機EL素子を具える。このため、照明装置として好ましいものである。
【実施例0093】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0094】
「実施例1、2、3」
(有機EL素子の作製)
以下に示す方法により、図5に示す有機EL素子1を製造し、評価した。
【0095】
[工程1]
基板2として、ITOからなる幅3mmにパターニングされた電極(陽極3)を有する平均厚さ0.7mmの市販の透明ガラス基板を用意した。
そして、陽極3を有する基板2を、アセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ10分間ずつ超音波洗浄し、イソプロパノール中で5分間煮沸した。その後、陽極3を有する基板2を、イソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分間行った。
【0096】
[工程2]
[工程1]において洗浄した陽極3の形成されている基板2を、スピンコーターにセットし、正孔注入層4として、へレウス社製正孔注入材料「Clevios HIL1.3N」をスピンコート、大気中で加熱処理を施し、10nmの正孔注入層4を成膜した。
【0097】
[工程3]
次に、正孔注入層4までの各層が形成された基板2を、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。真空蒸着装置のチャンバー内を1×10-5Paの圧力となるまで減圧した。
正孔注入層4上に正孔輸送層5として、ドナー性材料を30nm蒸着し、発光層6として、ドナー性材料とアクセプター性材料を質量比1:1で30nm共蒸着した膜を形成し、更に、電子輸送層7として、アクセプター性材料(2Cz-Ph-TRZ)を30nm蒸着した。
実施例1においては、ドナー性材料をN-TPAとし、実施例2においては、ドナー性材料をEH44とし、実施例3においては、ドナー性材料をPHZ-2Naphとした。
また、アクセプター性材料は、実施例1~3の全てにおいて2Cz-Ph-TRZとした。
【0098】
電子輸送層7を製膜した後に、電子注入層8として、下記構造式(3-2)で表される化合物を1nm蒸着した。なお、構造式(3-2)で表される化合物は、以下に示す方法により合成した。
【化14】
【0099】
(構造式(3-2)で表される化合物の合成方法)
200mLの三口フラスコに、rac-BINAP(747mg)、トルエン(67mL)を入れ、窒素雰囲気下90℃に加熱し溶解させた。室温まで放冷後、酢酸パラジウム(180mg)を入れ、室温で1時間撹拌した。これに2,6-ジブロモピリジン(4.74g)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(6.13g)、KOtBu(6.28g)を加え、90℃で終夜加熱撹拌した。室温まで放冷後、ジエチルエーテルを加え、析出する固体をろ別し、ろ液を濃縮した。得られた残渣にアセトンを加え、析出した固体をろ取し、構造式(3-2)で表される化合物(3.7g,52.5%)を得た。
【化15】
【0100】
次に、電子注入層8まで形成した基板2上に、真空蒸着法によりアルミニウムからなる膜厚100nmの陰極9を成膜した。
なお、陰極9は、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅3mmの帯状になるように形成し、作製した有機EL素子の発光面積を9mmとした。
【0101】
[工程4]
次に、陰極9までの各層を形成した基板2を、凹状の空間を有するガラスキャップ(封止容器)に収容し、紫外線(UV)硬化樹脂からなるシール材を充填することにより封止し、実施例1~3の有機EL素子を得た。
【0102】
「比較例1、2、3」
電子注入層8を一般的な電子注入材料であるLiFとしたこと以外は実施例1~3と同様にして、比較例1~3の有機EL素子を作製した。
実施例1~3及び比較例1~3の素子構成については、表3にまとめた。
【0103】
(有機EL素子の特性評価)
このようにして得られた実施例及び比較例の素子に対して、ケースレー社製の「2400型ソースメーター」を用いて電圧を印加し、コニカミノルタ社製の「LS-100」を用いて輝度を測定し、印加電圧と輝度の関係を調べた。また、印加電圧と電流密度の関係、及び発光スペクトルを調べた。これらの結果を図7~9に示す。
また、各実施例及び比較例の駆動電圧を比較するため、電流密度が1mA/cm時及び10mA/cm時の印加電圧を表3にまとめた。
【0104】
「実施例4、5、6」
(有機EL素子の作製)
ドナー性材料としてm-MTDATAを用い、更に、実施例4においては、アクセプター性材料として2Cz-Ph-TRZを用い、実施例5においては、アクセプター性材料としてDIC-TRZを用い、実施例6においては、アクセプター性材料としてCz-Ph-DRZを用いた。
発光層6を、ドナー性材料:アクセプター性材料:ドーパント[Ir(piq)]を、47.5:47.5:5の質量比で共蒸着して形成した。それ以外は、実施例1~3と同じ方法で実施例4~6の有機EL素子を作製した。
【化16】
【0105】
「比較例4、5、6」
電子注入層8を一般的な電子注入材料であるLiFとしたこと以外は、実施例4~6と同様にして、比較例4~6の有機EL素子を作製した。
実施例4~6及び比較例4~6の素子構成については、表3にまとめた。
【0106】
(有機EL素子の特性評価)
このようにして得られた実施例及び比較例の素子に対して、ケースレー社製の「2400型ソースメーター」を用いて電圧を印加し、コニカミノルタ社製の「LS-100」を用いて輝度を測定し、印加電圧と輝度の関係を調べた。また、印加電圧と電流密度の関係、及び発光スペクトルを調べた。これらの結果を図10~12に示す。
また、各実施例及び比較例の駆動電圧を比較するため、電流密度が1mA/cm時及び10mA/cm時の印加電圧を表3にまとめた。
【0107】
【表3】
【0108】
図7及び表3から分かる通り、電子注入層8に構造式(3-2)で表される化合物を用いた実施例の素子では、電子注入層8にLiFを用いた比較例の素子に比べ、低い印加電圧で高い電流値が得られている。比較例の素子では、1mA/cmの電流密度を得るために5V程度の印加電圧が必要であり、また、10mA/cmの電流密度を得るために6~7V程度の印加電圧が必要であるのに対し、実施例の素子では、大幅に低い印加電圧でこれらの電流密度を得ることができている。LiFを電子注入層に用い、かつ発光層に励起錯体を用いた有機EL素子は過去に報告されているが、低い電圧で高い電流値を得るためには、LiFと励起錯体を形成する材料の間に励起錯体を形成するアクセプター性材料とは別の電子輸送材料が必要であった。これに対し、電子注入層8に構造式(3-2)で表される化合物を用いることで、励起錯体を形成する材料に対して直接の電子注入が可能であり、図5に示す単純な構造でも、低い印加電圧で駆動可能な有機EL素子が実現できる。
【0109】
図8に、低い電圧で駆動できた実施例1~3の素子のELスペクトルを示す。これらの素子ではアクセプター性材料を固定しているため、ドナー性材料のIPが小さいほど(表1参照)、励起状態のエネルギーが小さくなり、長波長の発光が得られる。
図9より、実施例の素子の方が、低い印加電圧で高い輝度が得られていることも分かる。
【0110】
また、図10及び表3から分かる通り、電子注入層8に構造式(3-2)で表される化合物を用いた実施例の素子では、電子注入層8にLiFを用いた比較例の素子に比べ、低い印加電圧で高い電流値が得られている。このように、電子注入層8から電子を受け取るアクセプター性材料の分子構造やEAに依存せず、構造式(3-2)で表される化合物を用いることで、LiFに比べて低い印加電圧で高い電流値が得られることが分かる。
図11から、励起錯体を形成する材料にドーパントを加えた場合は、励起錯体からのエネルギー移動により、ドーパントの発光が得られることが分かる。
また、図12より、実施例の素子の方が、比較例の素子よりも低い印加電圧で高い輝度が得られることが分かる。比較例6で示すEAが小さいアクセプター性材料を用いた素子において特に駆動電圧が高く、特にEAが小さい材料にはLiからの電子注入が困難であることが分かる。
【0111】
表3に示す一連の結果より、電子注入層8にLiF等の従来の電子注入材料を用いた場合には、励起錯体を形成するアクセプター性材料に直接電子を注入するのが困難である一方、構造式(3-2)で表される化合物を用いることで励起錯体を形成するアクセプター性材料に効率的に電子を注入可能であり、図5に示す単純構造の有機EL素子を低い印加電圧で駆動することができる。また、発光層6に少量の発光ドーパントが含まれても、同様の結果が得られることが分かる。
【0112】
「実施例7~18」
(有機EL素子の作製)
ドナー性材料として様々な材料を用い、アクセプター性材料として2Cz-Ph-TRZを用いて有機EL素子を作製した。
発光層6は、ドナー性材料:アクセプター性材料を、1:1の質量比で共蒸着して形成し、ドーパントは加えていない。それ以外は、実施例1~3と同じ方法で、実施例7~18の有機EL素子を作製した。
これら実施例の素子構成、電流密度が1mA/cm時及び10mA/cm時の印加電圧を表4にまとめた。
【0113】
【表4】
【0114】
表4から分かるとおり、ドナー性材料に依存せず、全ての有機EL素子で低い印加電圧で高い電流密度を得ることができている。
【0115】
図13に、素子構成が同じでドナー性材料が異なる実施例1~3、7~18のELスペクトルを示す。励起錯体のエネルギーに対応する波長の発光が得られており、この一連の実施例においては、アクセプター性材料を固定しているため、ドナー性材料のIPが小さいほど長波長の発光が得られている。各ELスペクトルの立ち上がり波長をλonsetとすると、ELスペクトルから各実施例における発光層の励起錯体エネルギーを以下の式で見積もることができ、その値を表5にまとめた。
励起錯体エネルギー(eV) = 1240/λonset
【0116】
また、励起錯体エネルギーは、表1に示すドナー性材料のIPの計算値と表2に示すアクセプター性材料(2Cz-Ph-TRZ)のEAとのエネルギー差と考えられる。そこで、以下の式から励起錯体エネルギーの計算値を見積もった(表5参照)。
励起錯体エネルギーの計算値(eV) = 各ドナー性材料のIPの計算値 - アクセプター性材料(2Cz-Ph-TRZ)のEAの計算値
【0117】
これら2つの励起錯体エネルギーの相関を図14に示す。
【0118】
【表5】
【0119】
表5及び図14から分かるように、両者で強い相関が得られたことから、励起錯体エネルギーは、密度汎関数法を用いても比較的高い精度で算出できることが分かる。従って、励起錯体を形成する材料を用いた有機EL素子の設計においては、密度汎関数法を用いて得られる軌道のエネルギーも、極めて有用な指標となる。
【0120】
「実施例19~33」
(有機EL素子の作製)
ドナー性材料及びアクセプター性材料として様々な材料を用いて、有機EL素子を作製した(表6参照)。
発光層6は、ドナー性材料:アクセプター性材料:ドーパントを、47.5:47.5:5の質量比で共蒸着して形成した。ドーパントには、上記Ir(piq)の他、緑色リン光材料であるIr(mppy)、緑色熱活性化遅延蛍光材料である4CzTPN、青色蛍光材料ドーパントであるBD-1を用いた。
【化17】
【0121】
また、電子注入層8には、上記構造式(3-2)で表される化合物に加えて、構造式(3-11)で表される化合物、構造式(9-5)で表される化合物も用いた。
【化18】
【0122】
それ以外は、実施例1~3と同じ方法で、実施例19~33を作製した。
なお、構造式(3-11)で表される化合物、構造式(9-5)で表される化合物は、以下に示す方法により合成した。
【0123】
(構造式(3-11)で表される化合物の合成方法)
100mLの反応容器にrac-BINAP(0.213g,0.342mmol)、トルエン(20mL)を入れ、70℃に昇温、完溶させた後、酢酸パラジウム(51mg,0.228mmol)を加え、室温まで放冷しながら攪拌した。これに2,4,6-トリブロモピリジン(1.2g,3.8mmol)、KOtBu(1.8g,16.0mmol)、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(1.9g,13.7mmol)を加え、100℃で14時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで放冷後、セライトろ過し、ろ液を濃縮し、構造式(3-11)で表される化合物を2.2g得た。
【化19】
【0124】
(構造式(9-5)で表される化合物の合成方法)
100mLなすフラスコ中、4,7-ジクロロ-1,10-フェナントロリン(3.00g)とピロリジン(19.5mL)の混合物をオイルバス100℃にて1時間加熱還流した。室温に戻した混合物を減圧濃縮し、水を加えてから超音波処理することで析出した固体を濾取した。得られた固体を減圧乾燥後、メタノール(100mL)に溶解させた。混合物に活性炭を加えて室温にて1時間撹拌後、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮し、得られた固体をメタノール(9mL)にて再結晶した。得られた固体を少量のメタノールにて洗浄後、減圧乾燥することで、構造式(9-5)で表される化合物(1.69g,44%)を白色固体として得た。
【化20】
【0125】
(有機EL素子の特性評価)
図15にドーパントが異なる幾つかの実施例のELスペクトルを示す。ドーパントよりもエネルギーが大きい(波長が短い)励起錯体の組み合わせを選択することで、ドーパント自体の発光を得ることができている。
また、図11図13及び図15の結果より、励起錯体の組み合わせ及び添加するドーパントを適切に選択することで、可視~赤外領域の様々な発光色を得ることができることが分かる。
【0126】
これら実施例の素子構成、電流密度が1mA/cm時及び10mA/cm時の印加電圧を表6にまとめた。
【0127】
【表6】
【0128】
表6においては、青や緑のドーパントも用いており、エネルギーが大きい励起錯体エネルギーを得るため、ドナー性材料のIPとアクセプター性材料のEAのエネルギー差が大きい組み合わせも存在する。従って、電流密度が1mA/cm時及び10mA/cm時の印加電圧がそれぞれ、4V、5V程度の素子も存在するが、これらの値は比較例1~6に比べて小さい値であり、青や緑のドーパントを用いても十分に低電圧で駆動できることが分かる。
また、実施例22と実施例23の比較より、電子注入材料は他の材料と混合して成膜しても、高い電子注入性が保持されていることが分かる。
また、電子注入層8に、構造式(3-2)で表される化合物、構造式(3-11)で表される化合物、構造式(9-5)で表される化合物のどの電子注入材料を用いても、低い印加電圧で高い電流密度を得ることができている。
【符号の説明】
【0129】
1:有機EL素子、 2:基板、 3:陽極、 4:正孔注入層、 5:正孔輸送層、 6:発光層、 7:電子輸送層、 8:電子注入層、 9:陰極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15