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特開2022-190625非水系二次電池用負極材料シート、非水系二次電池用負極、及び非水系二次電池、並びに非水系二次電池用負極材料シートの製造方法
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  • 特開-非水系二次電池用負極材料シート、非水系二次電池用負極、及び非水系二次電池、並びに非水系二次電池用負極材料シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190625
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】非水系二次電池用負極材料シート、非水系二次電池用負極、及び非水系二次電池、並びに非水系二次電池用負極材料シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20221219BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20221219BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/1393
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099054
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 康之
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA23
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA04
5H050GA08
5H050GA09
5H050HA00
5H050HA08
5H050HA12
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】高密度の負極合材層を形成可能であり、且つ二次電池に優れたレート特性を発揮させうる非水系二次電池用負極材料シートを提供する。
【解決手段】第一主面と第二主面を有し、粒子状炭素材料を含む負極材料シートである。この負極材料シートは、厚み方向断面視において、第一主面からの厚み方向の距離が負極材料シートの厚みに対して10%~20%である領域を第一領域とし、第二主面からの厚み方向の距離が10~20%である領域を第二領域とした場合、負極材料シートの厚み方向中心線を0°として、厚み方向中心線と第一領域内の粒子状炭素材料の長軸線とがなす角度θの平均値が40°以上80°以下であり、厚み方向中心線と第二領域内の粒子状炭素材料の長軸線とがなす角度θの平均値が-80°以上-40°以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主面と、前記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有する非水系二次電池用負極材料シートであって、
前記非水系二次電池用負極材料シートは、粒子状炭素材料を含み、
厚み方向断面視において、前記第一主面と前記第二主面の間に位置し且つ前記第一主面からの厚み方向の距離が前記非水系二次電池用負極材料シートの厚みに対して10%以上20%以下である領域を第一領域とし、前記第一主面と前記第二主面の間に位置し且つ前記第二主面からの厚み方向の距離が10%以上20%以下である領域を第二領域とした場合、
前記非水系二次電池用負極材料シートの厚み方向中心線を0°として、前記厚み方向中心線と前記第一領域内の前記粒子状炭素材料の長軸線とがなす角度θの平均値が40°以上80°以下であり、前記厚み方向中心線と前記第二領域内の前記粒子状炭素材料の長軸線とがなす角度θの平均値が-80°以上-40°以下である、非水系二次電池用負極材料シート。
【請求項2】
前記第一主面と前記第二主面の少なくとも一方の主面のX線回折における(004)面の回折強度に対する(110)面の回折強度の比I(110)/I(004)が、10以上である、請求項1に記載の非水系二次電池用負極材料シート。
【請求項3】
密度が1.20g/cm以上1.70g/cm以下である、請求項1又は2に記載の非水系二次電池用負極材料シート。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の非水系二次電池用負極材料シートを備える、非水系二次電池用負極。
【請求項5】
請求項4に記載の非水系二次電池用負極を備える、非水系二次電池。
【請求項6】
樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形し、1次シートを得る1次シート成形工程と、
前記1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記1次シートを折畳または捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、
前記積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、2次シートを得るスライス工程と、
前記2次シートを焼成して焼成シートを得る焼成工程と、
前記焼成シートを厚み方向に加圧する加圧工程と、
を含む、非水系二次電池用負極材料シートの製造方法。
【請求項7】
前記加圧工程におけるシート圧縮率が1%以上40%以下である、請求項6に記載の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用負極材料シート、非水系二次電池用負極、及び非水系二次電池、並びに非水系二次電池用負極材料シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池(以下、単に「二次電池」と略記する場合がある。)は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そのため、従来、二次電池の更なる高性能化を目的として、電極(正極、負極)などの電池部材の改良が検討されている。
【0003】
ここで、リチウムイオン二次電池などの二次電池に用いられる負極は、通常、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る負極活物質を含む電極合材層(負極合材層)と、集電体とが積層されてなる。
【0004】
そこで近年では、負極が備える負極合材層を改良することで、二次電池の性能を更に向上させる試みがなされている。
例えば、特許文献1では、二次電池の出入力特性(レート特性)等を向上させる目的で、負極合材層の形成に際して磁場を印可することで、負極合材層に含まれる負極活物質としての黒鉛の配向状態を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/088540号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術には、二次電池に優れたレート特性を発揮させる一方で、当該二次電池のサイズ縮小及び高容量化の観点から負極合材層を高密度化することが求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、二次電池に優れたレート特性を発揮させることができ、且つ負極合材層の密度を高めることが可能な新たな技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして本発明者は、黒鉛などの粒子状炭素材料を含む非水系二次電池用負極材料シート(以下、「負極材料シート」と略記する場合がある。)を負極合材層として用いるに際し、負極材料シートの厚み方向断面において粒子状炭素材料を所定の配向状態に制御すれば、負極材料シートからなる負極合材層を高密度化しうり、また当該負極合材層を備える負極によって二次電池に優れたレート特性を発揮させうることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用負極材料シートは、第一主面と、前記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有する非水系二次電池用負極材料シートであって、前記非水系二次電池用負極材料シートは、粒子状炭素材料を含み、厚み方向断面視において、前記第一主面と前記第二主面の間に位置し且つ前記第一主面からの厚み方向の距離が前記非水系二次電池用負極材料シートの厚みに対して10%以上20%以下である領域を第一領域とし、前記第一主面と前記第二主面の間に位置し且つ前記第二主面からの厚み方向の距離が10%以上20%以下である領域を第二領域とした場合、前記非水系二次電池用負極材料シートの厚み方向中心線を0°として、前記厚み方向中心線と前記第一領域内の前記粒子状炭素材料の長軸線とがなす角度θの平均値が40°以上80°以下であり、前記厚み方向中心線と前記第二領域内の前記粒子状炭素材料の長軸線とがなす角度θの平均値が-80°以上-40°以下であることを特徴とする。このように、厚み方向の断面を確認した際に、厚み方向中心線を0°として、当該厚み方向中心線と第一領域内の粒子状炭素材料の長軸線のなす角度θの平均値と、当該厚み方向中心線と第二領域内の粒子状炭素材料の長軸線のなす角度θの平均値とがそれぞれ上記範囲内の負極材料シートによれば、高密度の負極合材層を形成可能であり、また当該負極合材層を備える二次電池に優れたレート特性を発揮させることができる。
【0010】
本発明において、負極材料シートの「主面」(第一主面と第二主面)は、負極材料シートにおける最大面積を有する面及び当該面に対向する面を意味し、二つの主面の面積は同等であってもよい。
本発明において、「第一領域内の粒子状炭素材料」は、その一部又は全部が第一領域に含まれる粒子状炭素材料を意味し、「第二領域内の粒子状炭素材料」は、その一部又は全部が第二領域に含まれる粒子状炭素材料を意味する。
本発明において、厚み方向断面視での粒子状炭素材料の長軸線と厚み方向中心線とがなす角度の「正負(+-)」は、第一領域における「角度θの平均値」が正の値となるよう設定すれば特に限定されず、時計回りの角度を「正」、反時計回りの角度を「負」としてもよいし、時計回りの角度を「負」、反時計回りの角度を「正」としてもよい。
そして、本発明において、上述した角度θの平均値、及び角度θの平均値は、実施例に記載の方法で特定することができる。
【0011】
ここで、本発明の非水系二次電池用負極材料シートは、前記第一主面と前記第二主面の少なくとも一方の主面のX線回折における(004)面の回折強度に対する(110)面の回折強度の比I(110)/I(004)が、10以上であることが好ましい。このように、第一主面及び/又は第二主面のX線回折における回折強度の比I(110)/I(004)が上記値以上であれば、二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、負極材料シートの主面の「X線回折における(004)面の回折強度に対する(110)面の回折強度の比I(110)/I(004)」は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0012】
そして、本発明の非水系二次電池用負極材料シートは、密度が1.20g/cm以上1.70g/cm以下であることが好ましい。負極材料シートの密度が上記範囲内であれば、当該負極材料シートを用いて十分に高密度な負極合材層を形成することができ、また二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、負極材料シートの「密度」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0013】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用負極は、上述した何れかの非水系二次電池用負極材料シートを備えることを特徴とする。上述した本発明の負極材料シートの何れかを用いて得られる負極は、負極合材層の高密度化と、二次電池のレート特性向上とをバランス良く達成することができる。
【0014】
そして、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池は、上述した非水系二次電池用負極を備えることを特徴とする。本発明の二次電池は、レート特性などの電池特性に優れる。
【0015】
くわえて、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法は、樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形し、1次シートを得る1次シート成形工程と、前記1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記1次シートを折畳または捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、前記積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、2次シートを得るスライス工程と、前記2次シートを焼成して焼成シートを得る焼成工程と、前記焼成シートを厚み方向に加圧する加圧工程とを含む。上述した工程を経て得られる負極材料シートによれば、高密度の負極合材層を形成可能であり、また当該負極合材層を備える二次電池に優れたレート特性を発揮させることができる。
【0016】
ここで、本発明の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法は、前記加圧工程におけるシート圧縮率が1%以上40%以下であることが好ましい。加圧工程において焼成シートを上述した範囲内のシート圧縮率で圧縮すれば、得られる負極材料シートを用いて十分に高密度な負極合材層を形成することができ、また二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において加圧工程における「シート圧縮率」は、実施例に記載の方法で特定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高密度の負極合材層を形成可能であり、且つ二次電池に優れたレート特性を発揮させうる非水系二次電池用負極材料シートを提供することができる。
また、本発明によれば、上記非水系二次電池用負極材料シートを備える非水系二次電池用負極、当該非水系二次電池用負極を備える非水系二次電池、及び上記非水系二次電池用負極材料シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に従う非水系二次電池用負極材料シートの厚み方向断面の一例を模式的に示す説明図である。
図2】本発明に従う非水系二次電池用負極材料シートの、厚み方向断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の非水系二次電池用負極材料シートは、非水系二次電池用負極の負極合材層として用いることができる。なお、本発明の負極材料シートは、本発明の負極材料シートの製造方法を用いて製造することができる。
そして、本発明の非水系二次電池用負極は、負極合材層として、本発明の負極材料シートを備えている。例えば、本発明の負極は、本発明の負極材料シートを集電体と貼り合わせることにより製造することができる。
さらに、本発明の非水系二次電池は、本発明の負極を備えている。
【0020】
(非水系二次電池用負極材料シート)
本発明の負極材料シートは、第一主面と第二主面を有するシートである。そして本発明の負極材料シートは、粒子状炭素材料を含み、任意に、樹脂、シリコン活物質及び繊維状炭素材料などのその他の成分を更に含む。
【0021】
ここで、本発明の負極材料シートは、厚み方向断面を確認した際、第一主面と第二主面の間に位置し且つ第一主面からの厚み方向の距離が10%以上20%以下である第一領域において、負極材料シートの厚み方向中心線を0°として、厚み方向中心線と粒子状炭素材料の長軸線とがなす角度θの平均値が40°以上80°以下であることが必要である。くわえて、本発明の負極材料シートは、厚み方向断面を確認した際、第一主面と第二主面の間に位置し且つ第二主面からの厚み方向の距離が10%以上20%以下である第二領域において、負極材料シートの厚み方向中心線を0°として、厚み方向中心線と粒子状炭素材料の長軸線とがなす角度θの平均値が-40°以上-80°以下であることが必要である。
【0022】
上述のように表される本発明の負極材料シートの厚み方向断面について、図を用いて説明する。図1は、本発明に従う負極材料シート1の厚み方向断面の一例を模式的に示す説明図である。
図1においては、負極材料シート1の上側の主面を第一主面11とし、下側の主面を第二主面12とする。ここで、負極材料シート1の厚み(第一主面11と第二主面12の間の距離)を100%として第一主面11から厚み方向の距離が10%以上20%以下となる領域(すなわち、厚み方向中心線Cと平行であり且つ第一主面から負極材料シート厚みの10%分離れた直線Aと、同20%分離れた直線Bとで挟まれた領域)が第一領域21であり、負極材料シートの厚みを100%として第二主面12から厚み方向の距離が10%以上20%以下となる領域(すなわち、厚み方向中心線Cと平行であり且つ第二主面から負極材料シート厚みの10%分離れた直線Dと、同20%分離れた直線Eとで挟まれた領域)が第二領域22である。
そして、厚み方向中心線Cと、第一領域21内の粒子状炭素材料2の長軸線Lとの交点Pを中心として、厚み方向中心線Cから長軸線Lまでの時計回り方向の角度(正の角度)が、角度θである。また、厚み方向中心線Cと第二領域22内の粒子状炭素材料2の長軸線Lとの交点Pを中心として、厚み方向中心線Cから長軸線Lまでの反時計回り方向の角度(負の角度)が、角度θである。
【0023】
第一領域における角度θの平均値が40°以上であり、第二領域における角度θの平均値が-40°以下であることにより、負極材料シートからなる負極合材層の厚み方向におけるリチウムイオン等の電荷担体の移動が容易となる。一方、第一領域における角度θの平均値が80°以下であり、第二領域における角度θの平均値が-80°以上であることにより、負極材料シート内において、厚み方向中心線に対して垂直配向又はそれに近い配向状態をとる粒子状炭素材料の割合を低減することができるため、そのような粒子状炭素材料により、負極材料シートの厚み低減と高密度化が過度に阻害されることもない。
上記のような寄与に起因すると推察されるが、角度θの平均値と角度θの平均値がそれぞれ上述した範囲内である本発明の負極材料シートによれば、高密度の負極合材層を形成可能であり、また当該負極合材層を備える二次電池に優れたレート特性を発揮させることができる。
【0024】
<粒子状炭素材料>
粒子状炭素材料は、負極材料シートからなる負極合材層において、負極活物質として機能する。
ここで、負極活物質である粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上述した中でも、粒子状炭素材料としては、鱗片状黒鉛を用いることが好ましい。粒子状炭素材料として鱗片状黒鉛を用いれば、二次電池のレート特性を更に向上させることができる。なお、鱗片状黒鉛としては、例えば、日本黒鉛工業株式会社製「UP20α」等が挙げられる。
【0026】
<<第一領域における角度θの平均値>>
第一領域において、負極材料シートの厚み方向中心線から粒子状炭素材料の長軸線までの角度θの平均値が、上述した通り40°以上80°以下であることが必要であり、45°以上であることが好ましく、50°以上であることがより好ましく、55°以上であることが更に好ましい。角度θの平均値が40°未満であると、二次電池のレート特性が損なわれ、角度θの平均値が80°超であると、負極材料シートからなる負極合材層の高密度化が困難となる。
【0027】
<<第二領域における角度θの平均値>>
第二領域において、負極材料シートの厚み方向中心線から粒子状炭素材料の長軸線までの角度θの平均値が、上述した通り-80°以上-40°以下であることが必要であり、-45°以下であることが好ましく、-50°以下であることがより好ましく、-55°以下であることが更に好ましい。角度θの平均値が-80°未満であると、負極材料シートからなる負極合材層の高密度化が困難となり、-40°超であると、二次電池のレート特性が損なわれる。
【0028】
<<角度θの平均値と角度θの平均値の和の絶対値>>
ここで、上述した角度θの平均値と角度θの平均値の和の絶対値(すなわち、|角度θの平均値+角度θの平均値|)は、0°以上10°以下であることが好ましく、0°以上5°以下であることがより好ましい。角度θの平均値と角度θの平均値の和の絶対値が上記範囲内であれば、負極材料シートからなる負極合材層の厚み方向における電荷担体の移動が容易になるためと推察されるが、二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
【0029】
<<体積平均粒子径>>
粒子状炭素材料の体積平均粒子径は、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが更に好ましく、12μm以上であることが一層好ましく、16μm以上であることがより一層好ましく、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。粒子状炭素材料の体積平均粒子径が3μm以上であれば、負極材料シートからなる負極合材層の厚み方向における電荷担体の移動が容易になるため、二次電池のレート特性を更に向上させることができる。一方、粒子状炭素材料の体積平均粒子径が200μm以下であれば、負極材料シートからなる負極合材層の更なる高密度化が可能となる。
なお、本発明において「体積平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠して測定することができ、レーザー回折法で測定された粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
【0030】
<<アスペクト比>>
また、粒子状炭素材料は、アスペクト比(長径/短径)が、1.2超であることが好ましく、2超であることがより好ましく、4超であることが更に好ましく、6超であることが一層好ましく、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。粒子状炭素材料のアスペクト比が上記範囲内であれば、角度θの平均値と角度θの平均値をそれぞれ上述した所望の範囲に容易に収めるうるため、負極材料シートからなる負極合材層の更なる高密度化が可能となり、また二次電池のレート特性を一層向上させることができる。
【0031】
なお、本発明において、粒子状炭素材料の「アスペクト比」は、粒子状炭素材料をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の粒子状炭素材料について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。なお、上記において、例えば、鱗片形状である粒子状炭素材料をSEMで観察する場合、「長径」は当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向の長さを指し、「短径」は、当該主面と同一平面上において当該主面の長軸に直交する方向の長さを指すものとする。
【0032】
<<含有割合>>
負極材料シート中の粒子状炭素材料の含有割合は、負極材料シートの全質量を100質量%として、92質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることが更に好ましく、100質量%以下とすることができる。負極材料シート中の粒子状炭素材料の含有割合が上記範囲内であれば、負極材料シートからなる負極合材層の更なる高密度化が可能となり、また二次電池のレート特性を一層向上させることができる。
【0033】
<その他の成分>
本発明の負極材料シートは、上述した粒子状炭素材料以外の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、樹脂、シリコン活物質及び繊維状炭素材料などを用いることができる。
【0034】
<<樹脂>>
負極材料シートに任意で含まれる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、「負極材料シートの製造方法」の項で後述する樹脂が挙げられる。なお、後述する「負極材料シートの製造方法」を用いて得られた負極材料シートにおいては、樹脂を含んでいてもよいし、樹脂の燃焼残渣を含んでいてもよいし、樹脂とその燃焼残渣の双方を含んでいてもよい。
【0035】
ここで、熱重量測定により求められる負極材料シート中の樹脂の含有割合は、負極材料シートの全質量を100質量%として、8質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。熱重量測定により求められる負極材料シート中の樹脂の含有割合が8質量%以下であれば、電荷担体の移動を妨げ得る樹脂が少なくなることから、二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
また、熱重量測定により求められる負極材料シート中の樹脂の含有割合は、特に限定されず、0質量%以上とすることができる。
そして、二次電池のレート特性をより一層向上させる観点から、負極材料シート中の樹脂の含有割合は0質量%であることが特に好ましい。
なお、負極材料シート中の樹脂の含有割合は、例えば、後述する負極材料シートの製造方法において実施する工程、使用する樹脂の種類及び量、並びに、焼成の条件(例えば、温度及び時間)などによって調整することができる。
また、本発明において、「負極材料シート中の樹脂の含有割合」を求めるための「熱重量測定」は、実施例に記載の方法で実施することができる。
【0036】
<<シリコン活物質>>
シリコン活物質は、負極材料シートからなる負極合材層において、上述した粒子状炭素材料と同様に負極活物質として機能する。
シリコン活物質としては、例えば、ケイ素(Si)、ケイ素を含む合金、SiO、SiO、Si含有材料を導電性カーボンで被覆又は複合化してなるSi含有材料と導電性カーボンとの複合化物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ケイ素を含む合金としては、例えば、ケイ素と、チタン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅からなる群より選択される少なくとも一種の元素とを含む合金組成物が挙げられる。
また、ケイ素を含む合金としては、例えば、ケイ素と、アルミニウムと、鉄などの遷移金属とを含み、さらにスズ及びイットリウム等の希土類元素を含む合金組成物も挙げられる。
SiOは、SiO及びSiOの少なくとも一方と、Siとを含有する化合物であり、xは、通常、0.01以上2未満である。そして、SiOは、例えば、一酸化ケイ素(SiO)の不均化反応を利用して形成することができる。具体的には、SiOは、SiOを、任意にポリビニルアルコールなどのポリマーの存在下で熱処理し、ケイ素と二酸化ケイ素とを生成させることにより、調製することができる。なお、熱処理は、SiOと、任意にポリマーとを粉砕混合した後、有機物ガス及び/又は蒸気を含む雰囲気下、900℃以上、好ましくは1000℃以上の温度で行うことができる。
Si含有材料と導電性カーボンとの複合化物としては、例えば、SiOと、ポリビニルアルコールなどのポリマーと、任意に炭素材料との粉砕混合物を、例えば有機物ガス及び/又は蒸気を含む雰囲気下で熱処理してなる化合物を挙げることができる。また、複合化物は、SiOの粒子に対して、有機物ガスなどを用いた化学的蒸着法によって表面をコーティングする方法、SiOの粒子と黒鉛又は人造黒鉛をメカノケミカル法によって複合粒子化(造粒化)する方法などの公知の方法でも得ることができる。
なお、二次電池の高容量化の観点からは、シリコン活物質としては、ケイ素を含む合金及びSiOが好ましい。
【0037】
<<繊維状炭素材料>>
負極材料シートに任意で含まれる繊維状炭素材料は、負極材料シートの強度を向上させ得る材料である。
繊維状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と略記する場合がある。)、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、及び、それらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、繊維状炭素材料は、アスペクト比(長径/短径)が、20超であることが好ましく、50超であることがより好ましい。繊維状炭素材料のアスペクト比が20超であれば、負極材料シートの強度を更に向上させることができる。
なお、本発明において、繊維状炭素材料の「アスペクト比」は、上述した粒子状炭素材料の「アスペクト比」と同様にして測定することができる。
【0038】
ここで、上述した通り、繊維状炭素材料は負極材料シートの強度を向上させ得る。負極材料シートの強度を向上させる観点からは、負極材料シート中の繊維状炭素材料の含有割合は、負極材料シートの全質量を100質量%として、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。
一方で、二次電池のレート特性を更に高める観点からは、負極材料シートに含まれる繊維状炭素材料の量を低減することが好ましい。二次電池のレート特性向上の観点からは、負極材料シート中の繊維状炭素材料の含有割合は、負極材料シートの全質量を100質量%として、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましく、0質量%であること(すなわち、負極材料シートが繊維状炭素材料を含まないこと)が最も好ましい。
【0039】
<主面の回折強度の比I(110)/I(004)>
本発明の負極材料シートは、第一主面と第二主面の少なくとも一方の主面のX線回折における(004)面の回折強度に対する(110)面の回折強度の比I(110)/I(004)は、10以上であること好ましく、20以上であることがより好ましい。
ここで、上述した粒子状炭素材料は、そのX線回折パターンにおいて、(004)面に帰属するピークと(110)面に帰属するピークとが検出される。粒子状炭素材料の結晶構造における(110)面とは、炭素六員環からなる平面(すなわち、(004)面と等価な面)に垂直な面であることから、X線回折における(110)面のピーク強度と(004)面のピーク強度との比は、その粒子状炭素材料の結晶配向性を示す。そして、負極材料シートの主面のX線回折においてI(110)/I(004)の値が高いということは、負極材料シートの主面に垂直な方向(典型的には、負極材料シートを備える負極の集電体の主面に垂直な方向に一致する。)への(004)面の配向性が高いことを示している。
したがって、回折強度の比I(110)/I(004)が上記所定値以上であれば、負極材料シートの主面に垂直な方向への(004)面の配向性が高まることから、負極材料シートからなる負極合材層の厚み方向における電荷担体の移動が容易になり、二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
また、回折強度の比I(110)/I(004)は、特に限定されないが、90以下であることが好ましい。
【0040】
回折強度のI(110)/I(004)は、例えば、後述する負極材料シートの製造方法において実施する工程、使用する粒子状炭素材料の性状(例えば、アスペクト比)、後述する1次シートの膜厚を始めとする成形条件、及び、焼成の条件(例えば、温度及び時間)などによって調整することができる。
【0041】
<密度>
本発明の負極材料シートは、密度が1.20g/cm以上であることが好ましく、1.30g/cm以上であることがより好ましく、1.40g/cm以上であることが更に好ましく、1.70g/cm以下であることが好ましく、1.50g/cm以下であることがより好ましい。負極材料シートの密度が上記範囲内であれば、当該負極材料シートを用いて十分に高密度な負極合材層を形成することができ、また二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
【0042】
<厚み>
負極材料シートの厚みは、70μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、90μm以上であることが更に好ましく、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが更に好ましい。負極材料シートの厚みが70μm以上であれば、二次電池を高容量化することができる。一方、負極材料シートの厚みが500μm以下であれば、二次電池を薄型化することができる。
なお、本発明において、負極材料シートの「厚み」は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0043】
(負極材料シートの製造方法)
上述した本発明の負極材料シートは、本発明の負極材料シートの製造方法を用いて製造することができる。
本発明の負極材料シートの製造方法は、(A)樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形し、1次シートを得る1次シート成形工程と、(B)1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記1次シートを折畳又は捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、(C)積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、2次シートを得るスライス工程と、(D)2次シートを焼成して焼成シートを得る焼成工程と、(E)焼成シートを厚み方向に加圧する加圧工程と、を含む、
なお、上述した負極材料シートの製造方法は、任意で、上記(A)~(E)以外の工程を更に含んでいてもよい。
【0044】
<(A)1次シート成形工程>
1次シート成形工程では、樹脂と、粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形し、1次シートを得る。
【0045】
<<組成物>>
上記組成物は、樹脂と、粒子状炭素材料とを含む。なお組成物は、上述した樹脂及び粒子状炭素材料以外の成分(その他の成分)を更に含んでいてもよい。
【0046】
[樹脂]
樹脂としては、特に限定されず、任意の樹脂を用いることができる。例えば、樹脂としては、液状樹脂及び固体樹脂のいずれも用いることができる。なお、樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、樹脂としては、液状樹脂と固体樹脂との双方を用いることができる。なお、樹脂として液状樹脂と固体樹脂とを併用する場合、液状樹脂と固体樹脂との質量比は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で調整することができる。なお、樹脂全体に占める液状樹脂の含有割合が高いほど、1次シート内における粒子状炭素材料の充填率を容易に上げることができる。一方、樹脂全体に占める固体樹脂の含有割合が高いほど、1次シートの強度を上げることができる。
【0047】
―液状樹脂―
そして、液状樹脂としては、常温常圧下で液体である限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を用いることができる。
なお、本発明において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
液状樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ニトリルゴム(アクリロニトリル-ブタジエン共重合体)が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
―固体樹脂―
固体樹脂としては、常温常圧下で液体でない限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂等を用いることができる。
【0049】
常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸又はそのエステル、ポリアクリル酸又はそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン-プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン-アクリロニトリル共重合体;ニトリルゴム;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン-ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物;スチレン-イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、ゴムは、「樹脂」に含まれるものとする。
【0050】
常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
[粒子状炭素材料]
粒子状炭素材料としては、「非水系二次電池用負極材料シート」の項で上述した粒子状炭素材料を用いることができる。
【0052】
そして、組成物中の粒子状炭素材料の含有量は、樹脂100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、120質量部以上であることが更に好ましく、180質量部以上であることがより一層好ましく、250質量部以上であることが特に好ましく、500質量部以下であることが好ましく、450質量部以下であることがより好ましく、400質量部以下であることが更に好ましい。組成物中の粒子状炭素材料の含有量が樹脂100質量部当たり50質量部以上であれば、製造される負極材料シートの強度を向上させると共に、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池を高容量化することができる。一方、組成物中の粒子状炭素材料の含有量が樹脂100質量部当たり500質量部以下であれば、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
【0053】
[その他の成分]
組成物は、上述した樹脂、粒子状炭素材料以外のその他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、「非水系二次電池用負極材料シート」の項で上述した繊維状炭素材料や、当該繊維状炭素材料の分散に用いられる分散剤が挙げられる。なお、分散剤としては、特に限定されることはなく、既知のものを用いることができる。また、組成物中の分散剤の含有量は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で調整することができる。
【0054】
[組成物の調製]
組成物は、特に限定されることはなく、上述した成分を混合することにより調製することができる。
なお、上述した成分の混合は、特に制限されることなく、ニーダー;ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー、ハイスピードミキサー等のミキサー;二軸混練機;ロール;などの既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、酢酸エチル等の溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒に予め樹脂を溶解又は分散させて樹脂溶液として、粒子状炭素材料及び任意で添加される繊維状炭素材料及びその他の成分と混合してもよい。なお、繊維状炭素材料としてCNTを用いる場合は、メチルエチルケトン等の溶媒にCNTと分散剤とを分散させてなる分散液を調製した後、当該分散液に少量の樹脂を添加し、溶媒を留去して得られるマスターバッチを、樹脂、粒子状炭素材料と混合してもよい。そして、混合時間は、例えば、5分以上60分以下とすることができる。また、混合温度は、例えば、5℃以上150℃以下とすることができる。
【0055】
[組成物の成形]
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡及び解砕した後に、加圧してシート状に成形することができる。このように組成物を加圧成形したシート状のものを、1次シートとすることができる。なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば、真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
【0056】
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば、特に制限されることなく、プレス成形、圧延成形又は押し出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形(一次加工)によりシート状に成形することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に制限されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃以下、ロール間隙は50μm以上2500μm以下、ロール線圧は1kg/cm以上3000kg/cm以下、ロール速度は0.1m/分以上20m/分以下とすることができる。
【0057】
<(B)積層体形成工程>
積層体形成工程では、1次シート成形工程で得られた1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、1次シートを折畳又は捲回して、樹脂及び粒子状炭素材料を含む1次シートが厚み方向に複数形成された積層体を得る。ここで、1次シートの折畳による積層体の形成は、特に制限されることなく、折畳機を用いて1次シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、1次シートの捲回による積層体の形成は、特に制限されることなく、1次シートの短手方向又は長手方向に平行な軸の回りに1次シートを捲き回すことにより行うことができる。また、1次シートの積層による積層体の形成は、特に制限されることなく、積層装置を用いて行うことができる。例えば、シート積層装置(日機装社製、製品名「ハイスタッカー」)を用いれば、層間に空気が入り込むことを抑えることができるため、良好な積層体を効率的に得ることができる。
【0058】
なお、積層工程では、得られた積層体を、加熱しながら、積層方向に加圧(二次加圧)することが好ましい。積層体を加熱しながら積層方向に加圧する二次加圧を行うことにより、積層された1次シート相互間の融着を促進することができる。
【0059】
ここで、積層体を積層方向に加圧する際の圧力は、0.05MPa以上0.50MPa以下とすることができる。
また、積層体の加熱温度は、特に限定されないが、50℃以上170℃以下であることが好ましい。
さらに、積層体の加熱時間は、例えば、10秒間以上30分間以下とすることができる。
【0060】
なお、1次シートを積層、折畳又は捲回して得られる積層体では、粒子状炭素材料が積層方向に略直交する方向に配向していると推察される。例えば、粒子状炭素材料が鱗片形状である場合、当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向は、積層方向に略直交していると推察される。
【0061】
<(C)スライス工程>
スライス工程では、積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、積層体のスライス片よりなる2次シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、2次シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
【0062】
なお、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
このようにして得られた2次シートでは、厚み方向に粒子状炭素材料が良好に配向している。例えば、粒子状炭素材料が鱗片形状である場合、当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向は、2次シートの厚み方向と略一致している。
【0063】
<(D)焼成工程>
焼成工程では、2次シートを焼成して、2次シートに含まれる樹脂を燃焼させて除去することにより、焼成シートを得る。
得られた焼成シートは、上述した2次シートから少なくとも一部の樹脂が除去されて得られるシートである。したがって、焼成シートでは、厚み方向に粒子状炭素材料が良好に配向している。例えば、粒子状炭素材料が鱗片形状である場合、当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向は、2次シートの厚み方向と略一致している。
【0064】
ここで、2次シートを焼成する際の加熱温度は、2次シートに含まれていた樹脂の分解開始温度をT℃とした場合、T-50℃以上であることが好ましく、T-40℃以上であることがより好ましく、T-20℃以上であることが更に好ましく、T+2000℃以下であることが好ましく、T+1500℃以下であることがより好ましく、T+1000℃以下であることが更に好ましい。2次シートを焼成する際の加熱温度が上記下限以上であれば、製造される負極材料シート中の樹脂の含有割合を低減して、二次電池のレート特性を更に向上させることができる。一方、2次シートを焼成する際の加熱温度が上記上限以下であれば、過度な加熱によって製造される負極材料シートが有する構造等が損なわれることを抑制し、負極材料シートの強度を十分に高く確保することができる。
なお、本発明において、樹脂の「分解開始温度」は、実施例に記載の方法により測定することができる。そして、本発明において、樹脂を2種以上用いている場合、当該2種以上の樹脂の各々について本明細書の実施例に記載の方法により測定して得られた分解開始温度のうち、最も低い値を樹脂の分解開始温度Tとする。
【0065】
より具体的には、2次シートを焼成する際の加熱温度は、300℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがより好ましく、700℃以上であることが更に好ましく、2000℃以下であることが好ましく、1500℃以下であることがより好ましく、1200℃以下であることが更に好ましい。2次シートを焼成する際の加熱温度が上記下限以上であれば、製造される負極材料シート中の樹脂の含有割合を低減して、二次電池のレート特性を更に向上させることができる。一方、2次シートを焼成する際の加熱温度が上記上限以下であれば、過度な加熱によって製造される負極材料シートが有する構造等が損なわれることを抑制し、負極材料シートの強度を十分に高く確保することができる。
【0066】
なお、2次シートを焼成する際の加熱時間は、加熱温度に応じて調整可能であるが、例えば、30分間以上72時間以下とすることができる。
【0067】
<(E)加圧工程>
加圧工程では、焼成シートを厚み方向に加圧して圧縮し、負極材料シートを得る。このように焼成シートを厚み方向に圧縮することで、厚み方向に配向した粒子状炭素材料を倒すことができる。そして本発明者によれば、特に上述した所定の工程を経て得られた焼成シートを厚み方向に加圧することにより、粒子状炭素材料を特徴的な倒れ方とし得ることが明らかとなった。具体的には、厚み方向に粒子状炭素材料が配向した上述の焼成シートを厚み方向に加圧すると、一方の主面(例えば第一主面)付近と他方の主面(例えば第二主面)付近とで、粒子状炭素材料が反対方向に倒れ、得られる負極材料シートの厚み方向断面視で、粒子状炭素材料が全体として「くの字」(「<」、小なりの形)、又は「逆くの字」(「>」、大なりの形)を形成することが判明した。
図2に示す負極材料シートの厚み方向断面のSEM画像を用いて、より具体的に説明する、図2の例では、断面中の上部では粒子状炭素材料が右側に傾斜し、同下部では左側に傾斜しており、全体として「逆くの字」を形成している。
すなわち、所定の焼成シートに対して上述した加圧を行う本発明の負極材料シートの製造方法によれば、粒子状炭素材料の角度θの平均値と角度θの平均値がそれぞれ所定の範囲内である本発明の負極材料シートを、効率良く製造することができる。
【0068】
ここで、上述した加圧におけるシート圧縮率は、1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましい。加圧工程において焼成シートを上述した範囲内のシート圧縮率で圧縮すれば、得られる負極材料シートを用いて十分に高密度な負極合材層を形成することができ、また二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
【0069】
なお、焼成シートを厚み方向に加圧する方法は特に限定されず、既知のプレス機を用いて行うことができる。
【0070】
(非水系二次電池用負極)
本発明の非水系二次電池用負極は、上述した本発明の負極材料シートを備えることを特徴とする。例えば、本発明の負極は、集電体上に、負極合材層としての本発明の負極材料シートを備えている。
そして、上述した本発明の負極材料シートを用いて得られる本発明の負極は、負極合材層の高密度化と、二次電池のレート特性向上とをバランス良く達成することができる。
【0071】
本発明の負極は、特に限定されることはなく、例えば、集電体と本発明の負極材料シートとを貼り合わせることにより製造することができる。
ここで、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の材料からなる集電体を用いることができる。中でも、負極に用いる集電体としては銅箔が特に好ましい。なお、上述した材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、集電体と負極材料シートとは、特に限定されず、既知の方法により貼り合わせることができる。なお、集電体と負極材料シートとの貼り合わせの際は、接着剤などを用いてもよい。
【0072】
(非水系二次電池)
本発明の二次電池は、上述した本発明の負極を備えることを特徴とする。
例えば、本発明の二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、負極として、本発明の非水系二次電池用負極を用いたものである。そして、本発明の二次電池は、本発明の負極を用いているので、レート特性などの電池特性に優れる。
以下、本発明の二次電池がリチウムイオン二次電池である場合を例に挙げ、正極、電解液、及びセパレータについて記載するが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0073】
<正極>
正極としては、リチウムイオン二次電池用正極として用いられる既知の正極を用いることができる。具体的には、正極としては、例えば、正極合材層を集電体上に形成してなる正極を用いることができる。
なお、集電体としては、アルミニウム等の金属材料からなるものを用いることができる。また、正極合材層としては、既知の正極活物質と、導電材と、結着材とを含む層を用いることができる。
【0074】
<電解液>
電解液としては、溶媒に電解質を溶解した電解液を用いることができる。
ここで、溶媒としては、電解質を溶解可能な有機溶媒を用いることができる。具体的には、溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等のアルキルカーボネート系溶媒に、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、酢酸メチル、ジメトキシエタン、ジオキソラン、プロピオン酸メチル、ギ酸メチル等の粘度調整溶媒を添加したものを用いることができる。
電解質としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、特開2012-204303号公報に記載のものを用いることができる。これらのリチウム塩の中でも、有機溶媒に溶解しやすく、高い解離度を示すという点より、電解質としてはLiPF、LiClO、CFSOLiが好ましい。
【0075】
<セパレータ>
セパレータとしては、特に限定されず、既知のものを用いることができ、例えば、特開2012-204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、リチウムイオン二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系の樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)からなる微多孔膜が好ましい。
【0076】
<二次電池の製造方法>
本発明の二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。二次電池の内部の圧力上昇、過充放電などの発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例0077】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
なお、実施例における各種の測定及び評価は以下の方法に従って行った。
【0078】
<樹脂の分解開始温度>
実施例及び比較例で用いている各々の樹脂について、空気雰囲気下、30~1000℃の温度範囲において、10℃/分の昇温速度により熱重量測定(TGA測定)を行った。このとき、重量が5%減少した時点での温度を樹脂の分解開始温度とした。
<シート圧縮率>
加圧工程における「シート圧縮率」は、加圧前のシートの厚みT(μm)と加圧後のシートの厚みT(μm)を用いて、式:シート圧縮率(%)=(1-T/T)×100(%)で算出した。なお、加圧前のシート厚みTと加圧後のシートの厚みTは、何れも膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID-C112XBS」)を用いて、シートの略中心点及び四隅(四角)の計五点における厚みを測定し、測定した厚みの平均値(μm)として得られた値を使用した。
<第一領域での角度θの平均値及び第二領域での角度θの平均値>
負極材料シートから、当該シートの平面視で正八角形となる試験シートを切り出した。得られた正八角柱状の試験シートについて、それら八つの側面(厚み方向の断面)を、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ製「SU-3500」)にて当該シートの上端から下端までが収まる倍率(後述の実施例及び比較例では600倍)で観察した。
側面のSEM画像について、負極材料シートの厚み方向中心線と第一領域内の無作為に選択した粒子状炭素材料の長軸線とがなす角度θを測定した。この操作を合計で25個の粒子状炭素材料について行い、25個の角度θの平均値を求めた。この操作を八つの側面全部について行い、最も絶対値の大きい平均値を、当該負極材料シートにおける「角度θの平均値」とした。
また側面のSEM画像について、負極材料シートの厚み方向中心線と第二領域内の無作為に選択した粒子状炭素材料の長軸線とがなす角度θを測定した。この操作を合計で25個の粒子状炭素材料について行い、25個の角度θの平均値を求めた。この操作を八つの側面全部について行い、最も絶対値の大きい平均値を、当該負極材料シートにおける「角度θの平均値」とした。
ここで、負極材料シートの厚み方向中心線は、SEM画像において、観察された負極材料シートの厚み方向の中心を通過し且つ両主面に平行(又は略平行)な線として特定することができる。なお、負極材料シートの厚みにむらがある等の理由で、妥当な厚み方向中心線の特定が困難である場合は、SEM画像において両主面間を最短距離で結ぶ線分(図1図2においては、負極材料シートを縦方向に切断する線分)を20本任意に特定し、これら20本の線分各々の中点からそれぞれ降ろした垂線の長さの合計が最少となる直線を、厚み方向中心線とすることもできる。
<厚み>
膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID-C112XBS」)を用いて、負極材料シートの略中心点及び四隅(四角)の計五点における厚みを測定し、測定した厚みの平均値(μm)を負極材料シートの厚みとした。
<密度>
負極材料シートの質量、主面の面積及び厚みを測定し、質量を体積(=面積×厚み)で割ることにより、負極材料シートの密度(g/cm)を算出した。この密度の値について、下記の基準で評価した。
<<評価基準>>
A:密度が1.40g/cm以上
B:密度が1.30g/cm以上1.40g/cm未満
C:密度が1.20g/cm以上1.30g/cm未満
D:密度が1.20g/cm未満
<X線回折>
負極材料シートの一方の主面のX線回折を、PANalytical製「X’ Pert PRO MPD」を用いて行った。得られたピークの中から、(110)面に相当する2Θ=77度のピーク高さ(回折強度)、及び、(004)面に相当する2Θ=54.5度のピーク高さ(回折強度)を用いて、(004)面の回折強度に対する(110)面の回折強度の比I(110)/I(004)の値を算出した。
<樹脂の含有割合>
負極材料シートを、窒素雰囲気下、30~1000℃の温度範囲において、10℃/分の昇温速度により熱重量測定(TGA測定)を行った。このとき、30℃~1000℃の間に減少した重量の割合を、負極材料シート中の樹脂の含有割合とした。
<レート特性>
<<電極評価用セルの製造>>
下記に示す構成で評価用のリチウムイオン二次電池のハーフセル(半電池)を作製した。なお、ハーフセルの作製は、各部材を17mmφサイズに打ち抜き、真空乾燥(120℃×10時間)した後、露点-80℃以下のドライボックス内にて行った。
〔ハーフセルの構成〕
作用極:負極(負極材料シートを銅箔に貼り付けてなる負極)
対極:Li金属
参照極:Li金属
セパレータ:ガラス不織布、ポリエチレン(PE)微多孔膜
電解液:濃度1.0MのLiPF溶液(溶媒はエチレンカーボネート(EC)/メチルエチルカーボネート(MEC)=3/7(体積比)の混合溶媒、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を1体積%(溶媒比)含有)
<<充放電試験>>
得られた評価用のハーフセルについて、以下の条件1で充放電試験を行った。
(条件1)
充電条件:0.2C 充電電圧0.01V-CCCV(0.05Ccut)
放電条件:0.2C 終止電圧2.5V-CC
サイクル数:10サイクル
試験温度:25℃
次いで、以下の条件2で更に充放電試験を行った。
(条件2)
充電条件:0.2C 充電電圧0.01V-CCCV(0.05Ccut)
放電条件:2.0C 終止電圧2.5V-CC
サイクル数:10サイクル
試験温度:25℃
そして、0.2Cにおける放電容量(条件1にて測定)に対する2.0Cにおける放電容量(条件2にて測定)の割合(放電容量比)を百分率で算出(=(2.0Cにおける放電容量/0.2Cにおける放電容量)×100%)し、下記の基準で評価した。放電容量比の値が大きいほど、内部抵抗が小さく、高速充放電が可能である(即ち、レート特性に優れる)ことを示す。
<<評価基準>>
A:放電容量比が65%以上
B:放電容量比が47.5%以上65%未満
C:放電容量比が30%以上47.5%未満
D:放電容量比が30%未満
【0079】
(実施例1)
<組成物の調製>
常温常圧下で液体のニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 1312」、分解開始温度:336℃)175部と、常温常圧下で固体のニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 3350」、分解開始温度:375℃)75部と、粒子状炭素材料としての鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名「UP20α」、体積平均粒子径:20μm、アスペクト比:10)700部とを加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V-10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
<1次シートの形成>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙1000μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.8mmの1次シートを得た。
<積層体の形成>
続いて、得られた1次シートを縦150mm×横150mm×厚み0.8mmに裁断し、1次シートの厚み方向に188枚積層し、更に、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約150mmの積層体を得た。
<2次シートの形成>
その後、二次加圧された積層体の積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0°の角度で(換言すれば、積層された1次シートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦150mm×横150mm×厚み0.10mmの2次シートを得た。
<焼成シートの作製>
得られた2次シートを窒素雰囲気下にて1000℃で8時間焼成し、樹脂を燃焼させて除去することにより、焼成シート(厚み:103μm)を得た。
<負極材料シートの作製>
そして、精密ホットプレス機(新東工業株式会社製、製品名「CYPT-20」)を用いて、シートの厚みが103μmから100μmになるまで、焼成シートを厚み方向に加圧して圧縮し、負極材料シートを得た。この負極材料シートの樹脂の含有割合は0質量%であった(実施例2~4、比較例1及び2について同じ)。またこの負極材料シートを用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例2~4)
焼成シートを加圧して負極材料シートを得るに際し、加圧後のシート(すなわち負極材料シート)の厚みをそれぞれ96μm(実施例2)、84μm(実施例3)、74μm(実施例4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、組成物、1次シート、積層体、2次シート、焼成シート、及び負極材料シートを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(比較例1)
実施例1と同様にして、組成物、1次シート、積層体、2次シート、及び焼成シートを作製した。そして焼成シートを、プレスせずにそのまま負極材料シートとして、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例2)
<組成物、1次シート、及び積層体の準備>
実施例1と同様にして、組成物、1次シート、及び積層体を準備した。
<2次シートの形成>
その後、二次加圧された積層体の積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して50°の角度でスライスすることにより、縦150mm×横150mm×厚み0.10mmの2次シートを得た。
<焼成シート(負極材料シート)の作製>
得られた2次シートを窒素雰囲気下にて1000℃で8時間焼成し、樹脂を燃焼させて除去することにより、焼成シート(厚み:101μm)を得た。そして焼成シートを、プレスせずにそのまま負極材料シートとして、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1より、厚み方向断面視の第一領域及び第二領域において、粒子状炭素材料の長軸線が厚み方向中心線となす角度θの平均値、角度θの平均値がそれぞれ所定の範囲内である負極材料シートを用いた実施例1~4では、高密度の負極合材層を形成可能であり、また当該負極合材層を備える二次電池に優れたレート特性を発揮させ得ることが分かる。
一方、上述した角度の平均値θが所定の上限値(80°)を上回り、上述した角度の平均値θが所定の下限値(-80°)を下回る比較例1、及び、上述した角度の平均値θが所定の下限値(-80°)を下回る比較例2では、負極合材層の密度が相対的に低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、高密度の負極合材層を形成可能であり、且つ二次電池に優れたレート特性を発揮させうる非水系二次電池用負極材料シートを提供することができる。
また、本発明によれば、上記非水系二次電池用負極材料シートを備える非水系二次電池用負極、当該非水系二次電池用負極を備える非水系二次電池、及び上記非水系二次電池用負極材料シートの製造方法を提供することができる。
【0086】
1 負極材料シート
2 粒子状炭素材料
11 第一主面
12 第二主面
21 第一領域
22 第二領域
A、B、D、E 直線
C 厚み方向中心線
第一領域21内の粒子状炭素材料2の長軸線
第二領域22内の粒子状炭素材料2の長軸線
厚み方向中心線Cと長軸線Lの交点
厚み方向中心線Cと長軸線Lの交点
θ 厚み方向中心線Cから長軸線Lまでの角度
θ 厚み方向中心線Cから長軸線Lまでの角度
図1
図2