(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190748
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】有機発光装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20221220BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221220BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099150
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】矢内 雄二郎
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB05
2H149BA02
2H149BA05
2H149DA02
2H149DA23
2H149DA26
2H149DB28
2H149EA03
2H149EA10
2H149FA03W
2H149FA27W
2H149FA33W
2H149FA34W
2H149FA34Y
2H149FA63
2H149FD12
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC06
3K107CC32
3K107EE26
3K107FF00
3K107FF06
(57)【要約】
【課題】有機発光素子を用いる有機発光装置において、斜め方向から観察した際の色味変化を抑制できる有機発光装置を提供する。
【解決手段】有機発光素子と、円偏光板とを含む有機発光装置であって、円偏光板が、有機発光素子側から、位相差層と、偏光子とを含み、要件1または要件2を満たす、有機発光装置。
要件1:位相差層のヘイズが20%より大きく40%以下である。
要件2:有機発光素子と円偏光板との間にコレステリック液晶層を有し、コレステリック液晶層のヘイズと位相差層のヘイズとの合計が20%より大きく40%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光素子と、円偏光板とを含む有機発光装置であって、
前記円偏光板が、前記有機発光素子側から、位相差層と、偏光子とを含み、
要件1または要件2を満たす、有機発光装置。
要件1:前記位相差層のヘイズが20%より大きく40%以下である。
要件2:前記有機発光素子と前記円偏光板との間にコレステリック液晶層を有し、前記コレステリック液晶層のヘイズと前記位相差層のヘイズとの合計が20%より大きく40%以下である。
【請求項2】
前記位相差層が、液晶化合物を用いて形成された層である、請求項1に記載の有機発光装置。
【請求項3】
前記位相差層が、延伸フィルムである、請求項1に記載の有機発光装置。
【請求項4】
前記位相差層が、AプレートとCプレートとを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機発光装置。
【請求項5】
前記コレステリック液晶層の選択反射中心波長が青色波長領域にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の有機発光装置。
【請求項6】
前記コレステリック液晶層が、円盤状液晶化合物を用いて形成された層である、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面型の表示装置を構成する表示素子として、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に代表される自発光型表示素子が注目を集めている。
なかでも、特許文献1に示すように、マイクロキャビティ構造を有する自発光型表示素子は、輝度及び色純度が優れる。なお、マイクロキャビティ構造とは、有機材料からなる発光層を挟む上下電極(即ち、アノード電極及びカソード電極)間の光路長を、発光層から取り出したい光のスペクトルのピーク波長に合致させることで、所定の波長の光のみを共振させ、他の波長の光を弱める構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、画像表示装置においては、発光面に対する法線方向(以下、「正面方向」ともいう。)から視認した場合と、発光面に対して斜めの方向(即ち、法線方向から所定の角度だけ傾斜した方向。以下、「斜め方向」ともいう。)から視認した場合とで、色味が変化しないことが望まれている。
【0005】
しかしながら、マイクロキャビティ構造を有する有機EL素子を用いた有機発光装置においては、斜め方向から観察すると青色からシアン色の成分が相対的に多くなるため、正面方向から視認した場合と比較して、色味が変化してしまうという問題があった。この現象は斜め方向に出射する光の波長が干渉によって短波長化することが要因である。
【0006】
本発明の課題は、このような問題点を解決することにあり、有機発光素子を用いる有機発光装置において、斜め方向から観察した際の色味変化を抑制できる有機発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成によって課題を解決する。
【0008】
[1] 有機発光素子と、円偏光板とを含む有機発光装置であって、
円偏光板が、有機発光素子側から、位相差層と、偏光子とを含み、
要件1または要件2を満たす、有機発光装置。
要件1:位相差層のヘイズが20%より大きく40%以下である。
要件2:有機発光素子と円偏光板との間にコレステリック液晶層を有し、コレステリック液晶層のヘイズと位相差層のヘイズとの合計が20%より大きく40%以下である。
[2] 位相差層が、液晶化合物を用いて形成された層である、[1]に記載の有機発光装置。
[3] 位相差層が、延伸フィルムである、[1]に記載の有機発光装置。
[4] 位相差層が、AプレートとCプレートとを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の有機発光装置。
[5] コレステリック液晶層の選択反射中心波長が青色波長領域にある、[1]~[4]のいずれかに記載の有機発光装置。
[6] コレステリック液晶層が、円盤状液晶化合物を用いて形成された層である、[1]~[5]のいずれかに記載の有機発光装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機発光素子を用いる有機発光装置において、斜め方向から観察した際の色味変化を抑制できる有機発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の有機発光装置の構成の一例を概念的に示す図である。
【
図2】本発明の有機発光装置の構成の他の一例を概念的に示す図である。
【
図3】本発明の有機発光装置の構成の他の一例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」、「同じ」等の用語は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。また、本明細書において、角度についての「同じ」とは、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5度未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。
【0012】
本発明において、Re(λ)及びRth(λ)は、それぞれ波長λにおける面内のレタデーション及び厚み方向のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本発明において、Re(λ)及びRth(λ)はAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0013】
AxoScanにて用いられる平均屈折率は、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルターとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、及び、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)。
【0014】
本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及び、その関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、許容される誤差の範囲は、厳密な角度±10°の範囲内であること等を意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0015】
本明細書において、青色光は波長400~500nmの光を示し、緑色光は波長500nm超600nm以下の光を示し、赤色光は波長600nm超700nm以下の光を示す。
【0016】
[有機発光装置]
本発明の有機発光装置は、
有機発光素子と、円偏光板とを含む有機発光装置であって、
円偏光板が、有機発光素子側から、位相差層と、偏光子とを含み、
要件1または要件2を満たす、有機発光装置である。
要件1:位相差層のヘイズが20%より大きく40%以下である。
要件2:有機発光素子と円偏光板との間にコレステリック液晶層を有し、コレステリック液晶層のヘイズと位相差層のヘイズとの合計が20%より大きく40%以下である。
【0017】
前述のとおり、マイクロキャビティ構造を有する自発光型の有機発光素子では、発光面に対する法線方向(正面方向)において特に輝度及び色純度が向上する。一方で、正面方向と斜め方向とでは共振の条件が異なるため、斜め方向に出射される光が短波長側にシフトし、結果として、正面方向と斜め方向との間で色味の変化が発生する。そのため、例えば、赤色光、緑色光、及び、青色光を出射させることで白色光の照射を実現する自発光型の有機発光素子では、正面方向において白色光が観察されるのに対して、斜め方向では青色側にシフトした光が観察される。
【0018】
これに対して、本発明の有機発光装置は、有機発光素子の発光面側に、位相差層と偏光子とからなる円偏光板を含み、位相差層のヘイズが20%より大きく40%以下である、という要件1、または、さらにコレステリック液晶層を有し、コレステリック液晶層のヘイズと位相差層のヘイズとの合計が20%より大きく40%以下である、という要件2を満たす。
【0019】
本発明の有機発光装置においては、有機発光素子の発光面側に配置される、位相差層に、または、位相差層とコレステリック液晶層とを合わせて、20%より大きいヘイズを持たせることで、有機発光素子から出射された光を散乱して、正面方向に出射される光と、斜め方向に出射される光とを混合して、正面方向から視認した場合と比較して、斜め方向から視認した場合の色味が変化することを抑制することができる。
【0020】
また、位相差層のヘイズ、または、位相差層とコレステリック液晶層とを合わせたヘイズが大きすぎると、位相差層としての作用、あるいは、コレステリック液晶層としての作用が低下するという問題が生じる。後に詳述するが、例えば、位相差層は、偏光子とともに円偏光板を構成しており、外部から有機発光装置に入射した光が反射されることを防止する反射防止の機能を有しているが、位相差層のヘイズが大きすぎると、位相差層としての所望の作用を得られなくなるため、反射防止の機能が低下するという問題が生じる。
【0021】
これに対して、本発明の有機発光装置においては、有機発光素子の発光面側に配置される、位相差層のヘイズ、または、位相差層とコレステリック液晶層とを合わせたヘイズを40%以下とすることで、位相差層としての作用、あるいは、コレステリック液晶層としての作用が低下することを抑制することができる。
【0022】
また、位相差層のヘイズ、または、位相差層とコレステリック液晶層とを合わせたヘイズが大きすぎると、有機発光装置に表示される画像がぼやけてしまうおそれがある。これに対して、位相差層のヘイズ、または、位相差層とコレステリック液晶層とを合わせたヘイズを40%以下とすることで、画像がぼやけることを抑制することができる。
【0023】
ここで、斜め方向の色味変化を抑制する観点、位相差層、コレステリック液晶層の作用が低下することを抑制する観点等から、位相差層のヘイズ、または、位相差層とコレステリック液晶層とを合わせたヘイズは、20.5%~37.5%が好ましく、21%~35%がより好ましい。
【0024】
本明細書において、「ヘイズ」は、日本電色工業株式会社製のヘーズメーターNDH-2000を用いて測定される値を意味する。
理論上は、ヘイズは、以下式で表される値を意味する。
(380~780nmの自然光の散乱透過率)/(380~780nmの自然光の散乱透過率+自然光の直透過率)×100%
散乱透過率は分光光度計と積分球ユニットを用いて、得られる全方位透過率から直透過率を差し引いて算出することができる値である。直透過率は、積分球ユニットを用いて測定した値に基づく場合、0°での透過率である。つまり、ヘイズが低いということは、全透過光量のうち、直透過光量が多いことを意味する。
屈折率は、波長589.3nmの光に対する屈折率である。
【0025】
なお、要件2における、コレステリック液晶層のヘイズと位相差層のヘイズとの合計(位相差層とコレステリック液晶層とを合わせたヘイズ)は、コレステリック液晶層と位相差層とを積層した状態で上記の測定方法でヘイズを測定すればよい。
【0026】
以下に、本発明の有機発光装置の各実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
図1に、本発明の有機発光装置の構成の一例を概念的に表す図を示す。
図1に示す有機発光装置10Aは、有機発光素子12と、位相差層14と、偏光子(直線偏光子)16と、保護フィルム18と、をこの順に有する。位相差層14、偏光子16および保護フィルム18は、有機発光素子12の発光面側に配置される。偏光子16および位相差層14は円偏光板13として作用する。
【0028】
偏光子16および位相差層14からなる円偏光板13は、外部から有機発光装置10Aに入射した光が有機発光素子12の表面等で反射されるのを防止する反射防止の機能を有する。具体的には、外部から入射した光(無偏光)は、偏光子16の透過軸に平行な直線偏光に変換される。この直線偏光は位相差層14によって円偏光(例えば、右円偏光)に変換され、有機発光素子12の表面等で反射される。反射の際、円偏光の旋回方向は逆方向に変換される(例えば、左円偏光)。この円偏光は位相差層14によって直線偏光に変換される。反射後の円偏光は、反射される前の円偏光とは旋回方向が逆であるため、反射される前の直線偏光と直交する直線偏光に変換される。この直線偏光は、偏光子16の透過軸と直交するため、偏光子16を透過せず、吸収または反射される。これによって、外部から有機発光装置10Aに入射した光が反射することを防止する。
【0029】
図1に示す例においては、位相差層14は、Aプレート20と、Cプレート22とからなるものである。Cプレート22は、屈折率nx≒nyであるため、位相差層14の面内レタデーションReは、Aプレート20の面内レタデーションReと略同じである。位相差層14は、λ/4板としての機能を有し、偏光子16とともに円偏光板13を構成するものであるため、Aプレート20は、λ/4の位相差を有する。
【0030】
また、位相差層14がCプレート22を含むことで、位相差層14の主面に対して斜め方向から入射する光に対してもλ/4位相差機能を発揮するように調整することができる。
【0031】
ここで、有機発光装置10Aは、位相差層14のヘイズが20%より大きく40%以下である、という要件1を満たす。
有機発光装置10Aは、位相差層14のヘイズが20%より大きいことで、有機発光素子12から出射された光を散乱して、正面方向から視認した場合と比較して、斜め方向から視認した場合の色味が変化することを抑制することができる。また、位相差層14のヘイズを40%以下とすることで、位相差層としての作用が低下することを抑制することができる。すなわち、位相差層14がλ/4位相差機能を適正に発揮して、反射防止の機能が低下することを抑制することができる。
【0032】
なお、
図1に示す例においては、位相差層14は、Aプレート20とCプレート22とを有する構成としたが、これに限定はされず、Aプレート20のみからなる構成としてもよい。あるいは、位相差層14は、少なくともλ/4位相差となる面内レタデーションReを有する構成であれば、Aプレート、Bプレート、Cプレート、および、Oプレート等の屈折率異方性を有する層を1層あるいは複数層有する構成であってもよい。
【0033】
図2に、本発明の有機発光装置の構成の他の一例を概念的に表す図を示す。
図2に示す有機発光装置10Bは、有機発光素子12と、コレステリック液晶層24と、位相差層14と、偏光子(直線偏光子)16と、保護フィルム18と、をこの順に有する。コレステリック液晶層24、位相差層14、偏光子16および保護フィルム18は、有機発光素子12の発光面側に配置される。位相差層14は、Aプレート20と、Cプレート22とからなる。偏光子16および位相差層14は円偏光板13として作用し、
図1に示した例と同様に、反射防止の機能を有する。
【0034】
コレステリック液晶層24は、特定の波長において左右いずれかの円偏光に対して選択反射性を示すものである。好ましくは、コレステリック液晶層24は、青色波長領域に選択反射中心波長を有する。
【0035】
有機発光装置が、円偏光板13を有し、コレステリック液晶層24を有さない構成の場合、有機発光素子12が発光した光のうち、略半分の光は円偏光板13に吸収されるため、光の利用効率が低くなってしまう。
【0036】
これに対して、円偏光板13と有機発光素子12との間にコレステリック液晶層24を有することで、光の利用効率を向上することができる。具体的には、コレステリック液晶層24は、有機発光素子12が出射した光のうち円偏光板13を透過する旋回方向の円偏光成分(例えば、右円偏光)を透過し、逆の旋回方向の円偏光成分(例えば、左円偏光)を選択的に反射する。コレステリック液晶層24を透過した円偏光は、円偏光板13を透過して、有機発光装置10Bの外部に出射される。
【0037】
一方、コレステリック液晶層24によって反射された光は有機発光素子12の方向に進行する。ここで、コレステリック液晶層24による反射では円偏光の旋回方向は変化しないため、例えば、左円偏光のまま、有機発光素子12の方向に進行し、有機発光素子12の表面等で反射される。有機発光素子12の表面等で反射される際には円偏光の旋回方向が逆の旋回方向(右円偏光)に変換される。有機発光素子12の表面等で反射された円偏光(右円偏光)は、再度、コレステリック液晶層24に入射するが、コレステリック液晶層24が反射する旋回方向とは逆の旋回方向であるため、コレステリック液晶層24を透過する。コレステリック液晶層24を透過した円偏光は、円偏光板13を透過して、有機発光装置10Bの外部に出射される。
【0038】
このように、円偏光板13と有機発光素子12との間にコレステリック液晶層24を有することで、円偏光板13に入射する光を円偏光板13を透過する円偏光にすることができ、円偏光板13に吸収される光量を少なくして、光の利用効率を高くすることができる。
【0039】
ここで、有機発光装置10Bは、コレステリック液晶層のヘイズと位相差層のヘイズとの合計が20%より大きく40%以下である、という要件2を満たす。
有機発光装置10Bは、コレステリック液晶層24のヘイズと位相差層14のヘイズとの合計が20%より大きいことで、有機発光素子12から出射された光を散乱して、正面方向から視認した場合と比較して、斜め方向から視認した場合の色味が変化することを抑制することができる。また、コレステリック液晶層24のヘイズと位相差層14のヘイズとの合計を40%以下とすることで、位相差層としての作用、および、コレステリック液晶層としての作用が低下することを抑制することができる。例えば、位相差層14がλ/4位相差機能を適正に発揮して、反射防止の機能が低下することを抑制することができる。
【0040】
また、コレステリック液晶層のヘイズが高すぎると、円偏光選択反射性が不完全なものとなり、コレステリック液晶層が、有機発光素子12が出射した光のうち円偏光板13で吸収される旋回方向の円偏光成分の一部を透過してしまい、円偏光板13で吸収されるため、光の利用効率が低下してしまう。これに対して、コレステリック液晶層24のヘイズと位相差層14のヘイズとの合計を40%以下とすることで、コレステリック液晶層が波長選択反射性および円偏光選択反射性を適正に発揮して、光の利用効率を向上させることができる。
【0041】
なお、
図2に示す例においても
図1の場合と同様に、位相差層14は、Aプレート20とCプレート22とを有する構成としたが、これに限定はされず、Aプレート20のみからなる構成としてもよい。あるいは、位相差層14は、少なくともλ/4位相差となる面内レタデーションReを有する構成であれば、Aプレート、Bプレート、Cプレート、および、Oプレート等の屈折率異方性を有する層を1層あるいは複数層有する構成であってもよい。
【0042】
図3に、本発明の有機発光装置の構成の他の一例を概念的に表す図を示す。
図3に示す有機発光装置10Cは、有機発光素子12と、コレステリック液晶層24bと、位相差層14と、偏光子(直線偏光子)16と、保護フィルム18と、をこの順に有する。コレステリック液晶層24b、位相差層14、偏光子16および保護フィルム18は、有機発光素子12の発光面側に配置される。位相差層14は、Aプレート20からなる。偏光子16および位相差層14は円偏光板13として作用し、
図1に示した例と同様に、反射防止の機能を有する。また、コレステリック液晶層24bは、
図2に示す例と同様に、有機発光素子12が出射した光のうち円偏光板13を透過する旋回方向の円偏光成分を透過し、逆の旋回方向の円偏光成分を選択的に反射することで、円偏光板13に吸収される光量を少なくして、光の利用効率を高くすることができる。
【0043】
ここで、コレステリック液晶層24bは、円盤状液晶化合物を用いて形成された層である。コレステリック液晶層24bを円盤状液晶化合物を用いて形成した場合には、コレステリック液晶層中の屈折率は、nz>(nx+ny)/2となるため、ポジティブCプレートと同様の作用を発揮する。そのため、位相差層14がCプレートを有さない場合でも、位相差層14のAプレート20との組み合わせによって、位相差層14の主面に対して斜め方向から入射する光に対してもλ/4位相差機能を発揮するように調整することができる。
以下、有機発光装置を構成する各部材について詳述する。
【0044】
<有機発光素子>
有機発光素子は、赤色光、緑色光、及び、青色光などのいずれかを発光する表示素子である。有機発光素子としては、上記各色の光を発光できればその種類は特に制限されないが、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)が好ましい。有機EL素子は、トップエミッション型の有機EL素子でもよいし、ボトムエミッション型の有機EL素子でもよい。
【0045】
有機EL素子は、陽極、陰極の一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物薄膜を形成した部材であり、電極間の電圧により発光層が発光する。発光層は赤、緑、青、黄、白などいずれの色を発光するものであってもよい。例えば、有機EL素子は、赤色光、緑色光および青色光を発光する画素がマトリックス状に配列された構成であり、カラー画像を表示することができるものである。また、有機EL素子は、白色光を発光する画素がマトリックス状に配列され、各画素に合わせて赤色光、緑色光および青色光のいずれかを透過するカラーレジストがマトリックス状に配列されたカラーフィルタを有する構成であり、カラー画像を表示することができるものであってもよい。
有機EL素子は、発光層のほか正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、保護層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【0046】
有機EL素子は、マイクロキャビティ構造を有するものであることが好ましい。マイクロキャビティ構造とは、上述したように、有機材料からなる発光層を挟む上下電極間の光路長を、発光層から取り出したい光のスペクトルのピーク波長に合致させることで、所定の波長の光のみを共振させ、他の波長の光を弱める構造である。より具体的には、有機EL素子より発光される赤色光、緑色光、及び、青色光の各ピーク波長に、有機EL素子の上下の電極間の光路長を合わせることで、電極間において光を繰り返し反射させて、ピーク波長の光のみを共振させて強調するとともに、ピーク波長から外れた光を減衰させる効果(マイクロキャビティ効果)を生じる構造である。
マイクロキャビティ構造とは、上記効果が得られる構造であればよく、公知の構造が採用される。マイクロキャビティ構造を有する有機EL素子は、斜め方向からの観察に対して色再現性が悪くなるという問題が生じやすいため、本発明を好適に適用可能である。
【0047】
<偏光子>
偏光子は、一方向の偏光軸を有し、特定の直線偏光を透過する機能を有する直線偏光子である。
偏光子としては、ヨウ素化合物を含む吸収型偏光板およびワイヤーグリッドなどの反射型偏光板等の一般的な直線偏光板が利用可能である。なお、偏光軸とは、透過軸と同義である。
吸収型偏光板としては、例えば、ヨウ素系偏光板、二色性染料を利用した染料系偏光板、および、ポリエン系偏光板の、いずれも用いることができる。ヨウ素系偏光板、および染料系偏光板は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
また、偏光子は、基材を有していてもよい。基材としては従来、偏光子の基材として用いられる公知の透明樹脂フィルムが使用できる。
【0048】
<位相差層>
位相差層は、偏光子との組み合わせによって円偏光板として作用するものであり、λ/4位相差機能を有する。
前述のとおり、位相差層は、少なくともλ/4位相差となる面内レタデーションReを有する構成であれば、Aプレート、Bプレート、Cプレート、および、Oプレート等の屈折率異方性を有する層(光学異方性層)を1層あるいは複数層有する構成とすることができる。
【0049】
位相差層は、可視光域のいずれかの波長λnmにおける面内レターデーション値がRe(λ)=λ/4(または、この奇数倍)であればよい。位相差層の面内レタデーションRe(550)は、100nm~170nmが好ましく、110nm~165nmがより好ましく、120nm~160nmがさらに好ましい。
【0050】
なお、位相差層は、光学異方性層のみからなる構成であっても、支持体に光学異方性層を形成した構成であってもよいが、支持体を有する場合には、支持体と光学異方性層との組み合わせが、λ/4位相差機能を有するものであることを意図する。
【0051】
(Aプレート)
Aプレートとしては、ポジティブAプレート(以下、+Aプレートともいう)であってもネガティブAプレート(以下、-Aプレートともいう)であってもよい。
ここで、ポジティブAプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、nx > ny ≒ nzを満たす光学部材のことを言う。また、ネガティブAプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、nz ≒ nx > nyを満たす光学部材のことを言う。
【0052】
Aプレート単体が位相差層として用いられる場合には、Aプレートは、λ/4板である。λ/4板は、所定の波長λnmにおける面内レターデーション値がRe(λ)=λ/4(または、この奇数倍)を示す板である。この式は、可視光域のいずれかの波長(例えば、550nm)において達成されていればよい。λ/4板としては、公知のλ/4板が利用可能である。
【0053】
ここで、λ/4板は、複屈折率が逆分散となる材料を用いて構成されていることが好ましい。これにより、λ/4板は広帯域の波長の光に対応できる。
【0054】
(Cプレート)
Cプレートとしては、ポジティブCプレート(以下、+Cプレートともいう)であってもネガティブCプレート(以下、-Cプレートともいう)であってもよい。
ここで、ポジティブCプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、nz > nx ≒ nyを満たす光学部材のことを言う。また、ネガティブCプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、nx ≒ ny > nzを満たす光学部材のことを言う。
【0055】
(Bプレート)
Bプレートとしては、ポジティブBプレート(以下、+Bプレートともいう)であってもネガティブBプレート(以下、-Bプレートともいう)であってもよい。
ここで、ポジティブBプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、nz > nx > nyを満たす光学部材のことを言う。また、ネガティブBプレートとは、屈折率nx、ny、およびnzが、nx > ny > nzを満たす光学部材のことを言う。
【0056】
(Oプレート)
Oプレートは、屈折率楕円体自体が主面に対して傾いているものであり、例えば、Nx>Ny>Nzに対してY軸を回転軸として、主面の法線からある角度で傾いているものである。法線方向から見た時には、XY平面による楕円体断面における遅相軸はY軸方向になる。
【0057】
位相差層となる、Aプレート、Bプレート、Cプレート、および、Oプレート等の光学異方性層は、製造のしやすさ等の観点から、液晶化合物を用いて形成された層、または、延伸したポリマーフィルム(延伸フィルム)であることが好ましい。
【0058】
位相差層は、基材を有していてもよい。基材としては従来、位相差層の基材として用いられる公知の透明樹脂フィルムが使用できる。
【0059】
<<液晶化合物を用いた光学異方性層>>
液晶化合物を用いて形成される光学異方性層としては、液晶化合物が配向した状態で固定化したフィルムが好ましい。なかでも、重合性基を有する液晶化合物を含む組成物を塗布して塗膜を形成し、加熱等により塗膜中の液晶化合物を配向させて、硬化処理を施して液晶化合物の配向を固定化してなるフィルムがより好ましい。
液晶化合物としては、棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物が挙げられ、配向状態を固定化するために重合性基を有していることが好ましい。棒状液晶化合物は、+Aプレート、または、+Cプレートを作製するために、好適に用いることができる。また、円盤状液晶化合物は、-Aプレート、または、-Cプレートを作製するために、好適に用いることができる。
また、液晶化合物を使用した位相差層は薄型化に有利であり、厚みを10μm以下にすることも容易である。
【0060】
液晶化合物としては、逆分散の波長分散性を示す液晶化合物を用いることも好ましい。例えば、WO2017/043438号パンフレットに記載される逆分散の波長分散性を示す液晶化合物が挙げられる。逆分散の波長分散性を示す液晶化合物を用いた位相差層は、可視光の波長域全体にわたって光学補償を行うことができる。
ここで、逆分散の波長分散性とは、Re(λ)およびRth(λ)が、波長λが大きくなるに従って大きな値となることを言う。
【0061】
光学異方性層が液晶化合物を用いて形成されるフィルムである場合には、光学異方性層は配向膜を有していてもよい。配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、および、その誘導体が好ましい。特に、変性または未変性のポリビニルアルコールが好ましい。本発明に使用可能な配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行、特許第3907735号公報の段落[0071]~[0095]に記載の変性ポリビニルアルコール等を参照することができる。なお、前述の配向膜には、通常、公知のラビング処理が施される。
配向膜の厚さは、薄い方が好ましいが、光学異方性層形成のための配向能の付与、および、フィルムの表面凹凸を緩和して均一な膜厚の位相差層を形成するという観点からは、ある程度の厚みが必要となる。具体的には、配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがより好ましく、0.01~0.5μmであることがさらに好ましい。
また、本発明では光配向膜を利用することも好ましい。光配向膜としては特に限定されないが、WO2005/096041号公報の段落[0024]~[0043]に記載のものやRolic echnologies社製の商品名LPP-JP265CPなどを好適に用いることができる。
【0062】
ここで、液晶化合物を用いた光学異方性層にヘイズを付与する方法としては、配向制御能が小さい配向膜を使用する、光学異方性層の膜厚を厚くする、配向処理の際の加熱温度を下げる、等の方法が挙げられる。配向制御能が小さい配向膜は、例えば、配向処理時の配向膜と処理装置とのクリアランスを大きくする、光配向膜に照射する光量を少なくする等の方法により形成することができる。
配向制御能が小さい配向膜を使用すると、光学異方性層中の液晶化合物が十分に配向されず、配向が乱れるため、ヘイズが生じる。また、光学異方性層の膜厚を厚くすると、厚さ方向に配向膜から遠ざかるにつれて配向が不十分になり、ヘイズが生じる。また、配向処理の際の加熱温度を下げると、配向が不十分になり、ヘイズが生じる。
【0063】
<<ポリマーフィルムを用いた光学異方性層>>
ポリマーフィルムとしては、セルロースアシレート系フィルム、シクロオレフィン系ポリマーフィルム(シクロオレフィン系ポリマーを用いたポリマーフィルム)、ポリカーボネート系ポリマーフィルム、ポリスチレン系ポリマーフィルム、または、アクリル系ポリマーフィルムが好ましい。アクリル系ポリマーフィルムとしては、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及び、グルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0064】
光学異方性層は、ポリマーフィルムを延伸することによっても得られる。具体的には、溶融成膜方式および溶液成膜方式等の適宜な方式で製造したポリマーフィルム(例えば、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、および、メタクリル酸メチル、スチレン、無水マレイン酸を含む共重合体)を、例えば、ロールの周速制御による縦延伸方式、テンターによる横延伸方式、および、二軸延伸方式等により、延伸処理することにより得られる。より具体的には、特開2005-338767号公報の記載を参照することができる。
また、例えば、特開平5-157911号公報、特開2006-072309号公報、または特開2007-298960に記載のように、ポリマーフィルムの片面又は両面に収縮性フィルムを貼り合わせて、加熱延伸することにより、厚み(nz)方向に延伸する方法によって作製することもできる。
ポリマーフィルムは、例えば、Bプレートを作製するために好適に用いることができる。
【0065】
ポリマーフィルムとしては、逆分散の波長分散性を示すポリマーフィルムを使用することも好ましい。逆分散の波長分散性を示すポリマーフィルムとしては、例えば、変性ポリカーボネートフィルムが知られている。
【0066】
ここで、ポリマーフィルムからなる光学異方性層にヘイズを付与する方法としては、ポリマーフィルムの表面に光散乱粒子を含有する光散乱層を形成する、ポリマーフィルムに光散乱粒子を含有する、ポリマーフィルム内部にボイドを形成する等の方法が挙げられる。光散乱層は、例えば、特開2008-268934号公報に記載の方法で形成できる。
【0067】
<コレステリック液晶層>
本発明において、コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相を固定した層を意味する。コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている層であればよい。例えば、コレステリック液晶層は、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射または加熱等によって重合させて、硬化させて得られる層である。コレステリック液晶層は、流動性が無く、同時に、外場または外力によって配向状態に変化を生じさせることがない状態に変化した層であることが好ましい。
なお、コレステリック液晶層においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、層中の液晶化合物はもはや液晶性を示していなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0068】
コレステリック液晶相は、特定の波長において選択反射性を示すことが知られている。一般的なコレステリック液晶相において、選択反射の中心波長(選択反射中心波長)λは、コレステリック液晶相における螺旋ピッチPに依存し、コレステリック液晶相の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。そのため、この螺旋ピッチを調節することによって、選択反射中心波長を調節できる。コレステリック液晶相の選択反射中心波長は、螺旋ピッチが長いほど、長波長になる。
なお、螺旋ピッチとは、すなわち、コレステリック液晶相の螺旋構造1ピッチ分(螺旋の周期)であり、言い換えれば、螺旋の巻き数1回分である。すなわち、螺旋ピッチとは、コレステリック液晶相を構成する液晶化合物のダイレクター(棒状液晶化合物であれば長軸方向)が360°回転する螺旋軸方向の長さである。
【0069】
コレステリック液晶相の螺旋ピッチは、コレステリック液晶層を形成する際に、液晶化合物と共に用いるキラル剤の種類、および、キラル剤の添加濃度に依存する。従って、これらを調節することによって、所望の螺旋ピッチを得ることができる。
すなわち、可視光選択反射層の反射層としてコレステリック液晶層を用いる場合には、コレステリック液晶層の選択反射中心波長が380nm~850nmの範囲となるようにキラル剤の種類、および、キラル剤の添加濃度を調整してコレステリック液晶相の螺旋ピッチを調整すればよい。
【0070】
なお、ピッチの調節については富士フイルム研究報告No.50(2005年)p.60-63に詳細な記載がある。螺旋のセンスおよびピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および、「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載される方法を用いることができる。
【0071】
また、コレステリック液晶相は、特定の波長において左右いずれかの円偏光に対して選択反射性を示す。反射光が右円偏光であるか左円偏光であるかは、コレステリック液晶相の螺旋の捩れ方向(センス)による。コレステリック液晶相による円偏光の選択反射は、コレステリック液晶相の螺旋の捩れ方向が右の場合は右円偏光を反射し、螺旋の捩れ方向が左の場合は左円偏光を反射する。
なお、コレステリック液晶相の旋回の方向は、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物の種類および/または添加されるキラル剤の種類によって調節できる。
【0072】
また、コレステリック液晶層において、選択反射を示す選択反射帯域(円偏光反射帯域)の半値幅Δλ(nm)は、コレステリック液晶相のΔnと螺旋のピッチPとに依存し、Δλ=Δn×Pの関係に従う。そのため、選択反射帯域の幅の制御は、Δnを調節して行うことができる。Δnは、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物の種類およびその混合比率、ならびに、配向固定時の温度により調節できる。したがって、液晶化合物の種類およびその混合比率、ならびに、配向固定時の温度等を調整して、選択反射帯域の半値幅Δλを調整することで、波長帯域幅を調整することができる。
【0073】
また、反射層において波長帯域幅を広くする場合には、選択反射波長が異なるコレステリック液晶層を2層以上有する構成としてもよい。反射層を、選択反射波長が異なる2層以上のコレステリック液晶層を積層した構成とすることで、反射層の反射帯域を広帯域化することができる。
【0074】
(コレステリック液晶層の形成方法)
コレステリック液晶層の形成方法は基本的には、種々の公知の方法で形成すればよい。例えば、コレステリック液晶層は、液晶化合物、キラル剤および重合開始剤、さらに必要に応じて添加される界面活性剤等を溶媒に溶解させた液晶組成物を、支持体上に、あるいは支持体上に形成された下地層に塗布し、乾燥させて塗膜を得て、塗膜中の液晶化合物を配向させて、この塗膜に活性光線を照射して液晶組成物を硬化することで形成できる。
【0075】
ここで、ヘイズを有するコレステリック液晶層を形成する方法としては、配向制御能が小さい配向膜を使用する、コレステリック液晶層の膜厚を厚くする、配向処理の際の加熱温度を下げる、等の方法が挙げられる。配向制御能が小さい配向膜は、例えば、配向処理時の配向膜と処理装置とのクリアランスを大きくする、光配向膜に照射する光量を少なくする等の方法により形成することができる。
配向制御能が小さい配向膜を使用すると、コレステリック液晶層中の液晶化合物が十分に配向されず、配向が乱れるため、ヘイズが生じる。また、コレステリック液晶層の膜厚を厚くすると、厚さ方向に配向膜から遠ざかるにつれて配向が不十分になり、ヘイズが生じる。また、配向処理の際の加熱温度を下げると、配向が不十分になり、ヘイズが生じる。
【0076】
(液晶化合物)
また、コレステリック液晶層の形成に用いられる液晶化合物としても制限はなく、種々の公知の棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物が用いられる。また、重合性液晶化合物が好ましい。
【0077】
液晶化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号、米国特許第5622648号および米国特許第5770107号の各明細書、国際公開第1995/22586号、国際公開第1995/24455号、国際公開第1997/00600号、国際公開第1998/23580号、国際公開第1998/52905号、国際公開第2016/194327号および国際公開第2016/052367号公報、特開平1-272551号公報、特開平6-16616号公報、特開平7-110469号公報および特開平11-80081号公報、ならびに、特開2001-328973号公報等に記載されている各化合物が例示される。
液晶組成物は、2種類以上の液晶化合物を含んでいてもよい。
【0078】
また、液晶組成物中の液晶化合物の含有量は特に制限されないが、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、80~99.9質量%が好ましく、84~99.5質量%がより好ましく、87~99質量%がさらに好ましい。
【0079】
(キラル剤)
キラル剤としては各種公知のものを使用することができる。
キラル剤はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル剤によって、誘起する螺旋のセンスまたは螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。キラル剤がコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する力は、螺旋誘起力(HTP:Helical Twisting Power)と呼ばれる。同じ濃度のキラル剤を用いた場合、HTPが大きいキラル剤ほど螺旋ピッチは小さくなる。
【0080】
キラル剤の例としては、液晶デバイスハンドブック(第3章4-3項、TN、STN用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989)、ならびに、特開2003-287623号公報、特開2002-302487号公報、特開2002-80478号公報、特開2002-80851号公報、特開2010-181852号公報および特開2014-034581号公報等に記載される化合物が例示される。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物または面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。
【0081】
キラル剤と液晶化合物とが、いずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。また、キラル剤は、光の照射によって、戻り異性化、二量化、ならびに、異性化および二量化等を生じて、HTPが変化するキラル剤であってもよい。
【0082】
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、液晶化合物全モル量に対して、0.01~200モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましい。
【0083】
(その他の添加剤)
液晶組成物は、必要に応じて、さらに、重合開始剤、架橋剤、配向制御剤、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、および、金属酸化物微粒子等を、光学性能を低下させない範囲で含んでいてもよい。また、液晶組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
【0084】
コレステリック液晶層は、支持体に積層された状態のものであってもよいし、支持体から剥離して用いてもよい。
【0085】
(その他の層)
本発明の有機発光装置は、上述した偏光子、位相差層、および、コレステリック液晶層以外の層を有していてもよい。
例えば、
図1等に示す例では、最表層に保護フィルムを有している。保護フィルムとしては、光学的に影響を及ぼさない、透明性を有し、位相差を有さない(小さい)、従来公知の樹脂フィルムを用いることが好ましい。また、最表層の保護フィルムには、空気と保護フィルムの界面反射を防止する反射防止層が付与されていることが好ましい。上述した偏光子と位相差層からなる円偏光板は、基板の反射を抑制する反射防止層として作用する。一方、最表層の保護フィルムに付与する反射防止層は、保護フィルムと空気層との界面での反射を抑制するものとして作用する。
【実施例0086】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0087】
<λ/4フィルムの作製>
下記組成の光学異方性層用塗布液01を調製した。
【0088】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層用塗布液01
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶化合物L-3 43.75質量部
・下記液晶化合物L-4 43.75質量部
・下記重合性化合物A-1 12.50質量部
・下記重合開始剤S-1(オキシム型) 3.00質量部
・レベリング剤G-1 0.20質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、下記液晶化合物L-3およびL-4のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記液晶化合物L-3およびL-4は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
(ラビング処理)
次に、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(富士フイルム製)にラビング処理を施した。この時、ラビング装置とフィルムのクリアランスを0.3mmに設定した。
【0094】
前記ラビング処理したPETフィルムのラビング処理面に、光学異方性層用塗布液01を塗布した。続いて、溶媒を90℃、2分間乾燥し、溶媒を気化させた後に60℃で3分間加熱熟成を行って、均一な配向状態を得た。その後この塗布膜を60℃に保持し、これに窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射(500mJ/cm2)して、膜厚2.0μmの光学異方性層01を作製した。
【0095】
光学異方性層01をガラスに貼合してPETフィルムを剥離した構成の位相差を、Axometryで測定した結果、下記表1に示す値であった。測定波長は450nm、550nm、650nmを用いた。
【0096】
【0097】
これより、光学異方性層01は、逆分散性を有する+Aプレートのλ/4フィルムであることを確認した。以下λ/4フィルム01とする。
【0098】
次に、ラビング装置とフィルムのクリアランスを0.1mm、0.5mmにそれぞれ設定した以外は、λ/4フィルム01と同様に、λ/4フィルム02およびλ/4フィルム03をそれぞれ作製した。
【0099】
次に、下記組成の光学異方性層用塗布液04を調製した。
【0100】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層用塗布液04
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・円盤状液晶化合物(下記化合物101) 80質量部
・円盤状液晶化合物(下記化合物102) 20質量部
・下記配向助剤1 0.9質量部
・下記配向助剤2 0.1質量部
・下記界面活性剤1 0.3質量部
・Omnirad907(IGM Resins B.V.社製) 3質量部
・メチルエチルケトン 301質量部
────────────────────────────────────
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
(ラビング処理)
次に、PETフィルム(富士フイルム製)にラビング処理を施した。この時、ラビング装置とフィルムのクリアランスを0.1mmに設定した。
【0106】
前記ラビング処理を施したPETフィルムのラビング処理面に、光学異方性層用塗布液04を塗布した。続いて、溶媒を130℃、90秒間乾燥し、溶媒を気化させた後、80℃に保持し、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(300mJ/cm2)して、膜厚1.0μmの光学異方性層04を作製した。
【0107】
光学異方性層04をガラスに貼合してPETフィルムを剥離した構成の位相差を、Axometryで測定した結果、下記表2に示す値であった。測定波長は450nm、550nm、650nmを用いた。
【0108】
【0109】
これより、光学異方性層04は、順分散性を有する-Aプレートのλ/4フィルムであることを確認した。以下λ/4フィルム04とする。
【0110】
特許6698677の実施例6を参考に、光配向膜作製時の偏光紫外照射を3mJ/cm2にし、その後、実施例1と同様に光学異方性層用塗布液01を用いて、λ/4フィルム05を作製した。
また、偏光紫外照射を1mJ/cm2にした以外は同様にして、λ/4フィルム06を作製した。
【0111】
<コレステリック液晶層の作製>
下記組成のコレステリック液晶塗布液B1を調製した。
【0112】
─────────────────────────────────
コレステリック液晶塗布液B1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記棒状液晶化合物の混合物 100.0質量部
・IRGACURE(登録商標)819(BASF社製)
10.0質量部
・下記構造のキラル剤 6.5質量部
・下記構造の界面活性剤 0.08質量部
・メトキシエチルアクリレート 145.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
(ラビング処理)
次に、PETフィルム(富士フイルム製)にラビング処理を施した。この時、ラビング装置とフィルムのクリアランスを0.3mmに設定した。
【0117】
次に、ラビング処理を施したPETフィルムのラビング処理面にコレステリック液晶塗布液B1を、バーを用いて塗布した。続いて、溶媒を95℃、1分間乾燥した後、25℃で、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(500mJ/cm2)して、青光を反射するコレステリック液晶層B1を形成した。この断面をSEM観察した結果、膜厚は2.3μmであった。
【0118】
また、コレステリック液晶層B1をガラスに貼合してPETフィルムを剥離した構成の位相差を、Axometryで測定した結果、Re(550)=1nm、Rth(550)=90nmであった。また、法線方向から光に対する透過率が最小となる波長は450nmであり、その透過率は53%であった。以下、青コレステリック層B1とする。
【0119】
次に、ラビング装置とフィルムのクリアランスを0.1mm、0.5mmにそれぞれ設定した以外は、前記青コレステリック層B1と同様に、青コレステリック層B2、B3を作製した。
【0120】
<円盤状液晶を用いたコレステリック液晶層の作製>
下記組成のコレステリック液晶塗布液B4を調製した。
【0121】
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コレステリック液晶塗布液B4
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・円盤状液晶化合物(上記化合物101) 80質量部
・円盤状液晶化合物(上記化合物102) 20質量部
・下記重合性モノマー1 10質量部
・上記界面活性剤1 0.3質量部
・Omnirad907(IGM Resins B.V.) 3質量部
・下記キラル剤1 5.04質量部
・メチルエチルケトン 290質量部
・シクロヘキサノン 50質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0122】
【0123】
【0124】
(ラビング処理)
次に、PETフィルム(富士フイルム製)にラビング処理を施した。この時、ラビング装置とフィルムのクリアランスを0.3mmに設定した。
【0125】
上記PETフィルムのラビング処理面にコレステリック液晶塗布液B4を、バーを用いて塗布した。続いて、溶媒を70℃、2分間乾燥し、溶媒を気化させた後に115℃で3分間加熱熟成を行って、均一な配向状態を得た。その後この塗布膜を45℃に保持し、これに窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射(300mJ/cm2)して、青光を反射するコレステリック液晶層B4を形成した。この断面をSEM観察した結果、膜厚は2.3μmであった。
【0126】
次に、ガラス(イーグルガラス、コーニング社製)に粘着剤(SK粘着剤、総研化学製)を貼合し、さらに、上記作製したコレステリック液晶層B4側を粘着剤側に貼合し、仮支持体のPETフィルムを剥離した。この構成の位相差をAxometryで測定した結果、Re(550)=1nm、Rth(550)=-90nmであった。また、法線方向から光に対する透過率が最小となる波長は450nmであり、その透過率は50%であった。以下、青コレステリック層B4とする。
【0127】
次に、ラビング装置とフィルムのクリアランスを0.1mm、0.5mmにそれぞれ設定した以外は、前記青コレステリック層B4と同様に、青コレステリック層B5、B6を作製した。
【0128】
上記PETフィルムのラビング処理面にコレステリック液晶塗布液B4を、バーを用いて塗布した。続いて、溶媒を70℃、2分間乾燥し、溶媒を気化させた後に115℃で3分間加熱熟成を行って、均一な配向状態を得た。その後この塗布膜を100℃に保持し、これに窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射(300mJ/cm2)して、青光を反射するコレステリック液晶層B7を形成した。この断面をSEM観察した結果、膜厚は4.0μmであった。
【0129】
次に、コレステリック液晶層B1と同様に粘着剤を介して、ガラスに貼合し、仮支持体のPETを剥離した後、位相差をAxometryで測定した結果、Re(550)=1nm、Rth(550)=-90nmであった。また、法線方向から光に対する透過率が最小となる波長は450nmであり、その透過率は50%であった。以下、青コレステリック層B7とする。
【0130】
上記PETフィルムのラビング処理面にコレステリック液晶塗布液B4を、バーを用いて塗布した。続いて、溶媒を70℃、2分間乾燥し、溶媒を気化させた後に125℃で3分間加熱熟成を行った。その後この塗布膜を45℃に保持し、これに窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射(300mJ/cm2)して、青光を反射するコレステリック液晶層B8を形成した。この断面をSEM観察した結果、膜厚は2.3μmであった。
【0131】
次に、コレステリック液晶層B1と同様に粘着剤を介して、ガラスに貼合し、仮支持体のPETを剥離した後、位相差をAxometryで測定した。その結果、Re(550)=1nm、Rth(550)=-90nmであった。また、法線方向から光に対する透過率が最小となる波長は450nmであり、その透過率は50%であった。以下、青コレステリック層B8とする。
【0132】
(+Cプレートの作製)
特開2021-054909の[0142]~[0149]を参考に、λ/4フィルムの表面に放電量150W・min/m2でコロナ処理を行い、コロナ処理したλ/4フィルムの上に+Cプレート01を作製した。
【0133】
放電量を25W・min/m2に変えた以外は+Cプレート01と同様に、λ/4フィルム上に+Cプレート02を作製した。
【0134】
(内部ヘイズを有する位相差フィルムの作製)
特開2013-238770の実施例9を参考に、Re(550)=130nm、Rth(550)=80nmの位相差フィルム01を作製した。
【0135】
上記作製した位相差フィルムの片面に、特開2008-268934の[0196]~[0197]を参考に、光散乱粒子の添加量を調整した塗布液を塗布し、位相差フィルム02を作製した。
【0136】
また、+Cプレート01を、上記と同様の方法で、位相差フィルム01、位相差フィルム02上にそれぞれ形成した。
【0137】
下記表3に記載の層構成とした際のヘイズをそれぞれ、ヘイズメーター(NDH-2000 日本電色株式会社製)で測定した。
【0138】
(片面偏光板の作製)
フジタックTD80UL(富士フイルム社製)を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
【0139】
また、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子01を得た。
【0140】
ポリビニルアルコール(クラレ製PVA-117H)3%水溶液を接着剤として、上記フジタックTD80ULを偏光子01の片側のみに貼合し、片側偏光板01を作製した。偏光度は99.97%、単板透過率は43%であった。
ここで、偏光度と単板透過率は、分光光度計(VAP-7070、日本分光社製)を用いて測定した。
【0141】
片側偏光板01の偏光子側に、粘着剤を介して、下記表3の層構成で各フィルムを貼合し積層フィルムを作製した。この時、仮支持体のPETは剥離した。
また、TD80UL側に反射防止フィルム(g.moth、ジオマテック社製)を貼合した。この反射防止フィルムは、保護フィルム(TD80UL)と空気層との界面での反射を抑制するためのものである。
【0142】
<有機発光装置の作製>
GalaxyS4(Samsung社製)を分解し、製品に貼合されている反射防止フィルムの一部をはがし、粘着剤を介して、上記作製した積層フィルムを有機発光素子に貼合し、有機発光装置を作製した。
【0143】
[評価]
(色味変化)
有機発光装置を白表示にして、有機発光装置の法線方向の色味と、有機発光装置の法線方向に対して60度の方向の色味とを測定し、白色味変化を評価した。白色味変化は、Δu’v’=√{(u’_60-u’_0)2+(v’_60-v’_0)2}で表した。
ここで、(u’_0,v’_0)は法線方向の色味、(u’_60,v’_60)は法線方向に対して60度の方向の色味である。
Δu’v’の値を以下の基準で評価した。
A:0.01未満
B:0.01以上0.015未満
C:0.015以上0.02未満
D:0.02以上
【0144】
(反射防止:斜め輝度)
電源offの状態で、有機発光装置の法線方向に対して60度の方向からLED(発光ダイオード)光源からの光を入射し、偏光子の透過軸に対して方位角45度、-58度方向に反射する光の輝度値を測定した。また、積層フィルムが貼合されていない基板の部分の輝度を100として反射率を算出し、以下の基準で評価した。ここで、測定にはSR-3UL1(トプコン社製)を用いた。
A:2.0%未満
B:2.0%以上4.0%未満
C:4.0%以上6.0%未満
D:6.0%以上
【0145】
(反射防止:黒色味)
また、電源offの状態で、斜めから見た際の外光反射による黒色味を以下の基準で目視評価した。なお、蛍光灯(LK-H766、TWINBARD社製)を極角+45度方向からOLEDに当たるように照らし、極角-45度方向近辺から観察した。
A:色味づきが気にならない
B:色味づきがほぼ気にならない
C:色味づきがやや気になる
D:色味づきが気になる
【0146】
層構成および評価結果の詳細を表3に示す。
【0147】
【0148】
表3から、比較例に比べて本発明の実施例は白色味変化が小さく、かつ、反射防止の効果が高い、すなわち、各フィルムが適正に作用を発揮していることがわかる。