IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特開2022-190749付加硬化性シリコーン樹脂組成物及び半導体装置用ダイアタッチ材
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190749
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】付加硬化性シリコーン樹脂組成物及び半導体装置用ダイアタッチ材
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/05 20060101AFI20221220BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20221220BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221220BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08L83/05
C08L83/07
C08K3/013
H01L21/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099151
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達哉
【テーマコード(参考)】
4J002
5F047
【Fターム(参考)】
4J002CP04W
4J002CP053
4J002CP12X
4J002CP14X
4J002DJ016
4J002EX067
4J002FB096
4J002FD016
4J002FD158
4J002GQ05
5F047BA00
5F047BA33
5F047BA54
(57)【要約】
【課題】硬化後の熱履歴による硬さの変化が少なく、樹脂強度の優れた付加硬化性シリコーン樹脂組成物を得ることを目的とする。
【解決手段】付加硬化性シリコーン樹脂組成物であって、下記(A)、(B)、及び(C)成分、
(A)下記一般式(1)
(R SiO1/2(HR SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2 (1)
で示され、1分子中に2個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有し、かつ1分子中に2個以上のケイ素原子に直接結合した水素原子を有する分岐状オルガノポリシロキサン、
(B)下記一般式(2)
(R SiO1/2(R SiO2/2(R SiO2/2 (2)
で示される直鎖状オルガノポリシロキサン、
(C)付加硬化触媒
を必須成分として含有するものであることを特徴とする付加硬化性シリコーン樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加硬化性シリコーン樹脂組成物であって、下記(A)、(B)、及び(C)成分、
(A)下記一般式(1)
(R SiO1/2(HR SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2 (1)
(式中、Rは炭素数2~8のアルケニル基、Rは独立して炭素数1~12のアルキル基であり、0.01<a<0.15、0.01<b<0.2、0≦c<0.1、0≦d<0.1、0.45<e<0.98であり、但し、a+b+c+d+e=1を満足する数である。)
で示され、1分子中に2個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有し、かつ1分子中に2個以上のケイ素原子に直接結合した水素原子を有する分岐状オルガノポリシロキサン、
(B)下記一般式(2)
(R SiO1/2(R SiO2/2(R SiO2/2 (2)
(式中、R及びRはそれぞれ上記と同じであり、Rは独立して炭素数6~12のアリール基であり、x及びyはx>0、y≧0であり、0.85≦(x/(x+y))であり、かつ、50≦x+y≦5000となる数である。)
で示される直鎖状オルガノポリシロキサン、
(C)付加硬化触媒
を必須成分として含有するものであることを特徴とする付加硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
更に、(D)接着助剤として下記一般式(3)
(MeSiO3/2p1(EpSiO3/2p2(EpMeSiO2/2q1(MeSiO2/2q2(ViMeSiO2/2q3(OR (3)
(式中、Meはメチル基であり、Epはエポキシ基を有する1価の有機基であり、Viはビニル基であり、Rは炭素数1~12のアルキル基であり、0≦p1<0.35、0≦p2<0.35、0≦q1<0.35、0.4≦q2<0.7、0<q3<0.1、0≦r<0.05であり、0.15≦(p2+q1)≦0.35であり、但し、p1+p2+q1+q2+q3+r=1となる数である。)
で示される分岐状オルガノポリシロキサンであって、該分岐状オルガノポリシロキサンの重量平均分子量が1,500~8,000であり、かつエポキシ当量250~500g/eqである接着助剤を含有するものであることを特徴とする請求項1記載の付加硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(E)無機充填剤を含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の付加硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
前記付加硬化性シリコーン樹脂組成物全体における重合度10以下の低分子シロキサン化合物量が1質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の付加硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
前記付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物の-40℃における貯蔵弾性率が10MPa以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の付加硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物からなるものであることを特徴とする半導体装置用ダイアタッチ材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化性シリコーン樹脂組成物及び半導体装置用ダイアタッチ材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料分野におけるダイアタッチ剤としての付加硬化性シリコーン樹脂は、従来のエポキシ樹脂やアクリル樹脂に代表される有機ポリマー樹脂と比較して、耐湿性や耐熱性などの信頼性が高いこと、また低弾性化可能であるゆえ応力緩和能が高いこと、更に取り扱い性が良いこと、といった利点により近年注目を集めている。
【0003】
半導体用途として、MEMSセンサーやCMOSイメージセンサーを基板に実装する際のセンサー用ダイアタッチ剤では、基板側からの衝撃をチップへ伝えづらく、幅広い動作温度領域において応力を緩和できるような特性が求められている。硬化物がゲル状またはゴム状のメチルフェニルシリコーン樹脂で置換基としてフェニル基量が少ないものは、ガラス転移温度が-50℃以下であり、幅広い温度領域における貯蔵弾性率の変化が非常に少ないことが知られており、上記のセンサー用ダイアタッチ剤としての使用は特性面より好ましい。
【0004】
一方、センサー用ダイアタッチ剤では、周辺部材が熱に弱い場合や、パッケージ構造よりダイアタッチ剤硬化プロセスで反りが発生しやすい場合があり、より低温でチップを保持できる段階まで硬化が完了すること、また硬化後の熱履歴で硬さの変化が少ないものが求められている。特許文献1に挙げられるような従来の付加硬化性シリコーン樹脂組成物では、SiVi源として両末端にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサン化合物の他に、分岐状のビニル基を末端に有するVMQレジンを使用する場合、得られるゴム状の硬化物は樹脂強度に優れるが、両末端にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサン化合物と比較して、ビニル基の反応性は低く、また立体的に込み合った位置にあるビニル基は硬化プロセスで反応せず残存し、硬化後の熱履歴で徐々に反応し、硬さの変化を引き起こす懸念がある。
【0005】
更に、シリコーン樹脂で重合度10以下の揮発性が高い低分子シロキサン化合物を多く含むものでは、センサー用ダイアタッチ剤として用いる場合に各種不具合を起こすことが知られている。特にCMOSイメージセンサーでは、ダイアタッチ剤硬化プロセスやリフロー時など、熱履歴がかかる工程で揮発した低分子シロキサン化合物がチップ最表面に形成されているオンチップレンズへ付着すると完成したパッケージの動作において、入射光がカラーフィルタへ到達する際の妨げになり、動作不良を引き起こす恐れが高い。その為、樹脂全体における重合度10以下の低分子シロキサン含有量が少ないことが求められている。特許文献1及び特許文献2に挙げられるような付加硬化性シリコーン樹脂として、SiVi源として上述のVMQレジン及び両末端にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサン化合物を使用する場合、SiH架橋剤としては、側鎖にSiH基を有する直鎖状ポリオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物を組み合わせることで樹脂強度に優れたゴム状硬化物を与えることが可能であるが、このような側鎖にSiH基を有する直鎖状ポリオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物はSiVi源側と比較して重合度が低く低分子シロキサン化合物量が多いこと、更に熱分解性が高いことより、センサー用ダイアタッチ剤用途としては好ましくない。
【0006】
また、付加硬化性シリコーン樹脂組成物として、分岐状のビニル基を末端に有するVMQレジンを用いず、両末端にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサン化合物と側鎖にSiH基を有する直鎖状ポリオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物を組み合わせたものでは、得られるゲル状の硬化物は、硬化後の熱履歴による硬さの変化は少ない反面、樹脂強度は高くないため、センサー用ダイアタッチ剤用途としては好ましくない。
【0007】
このように、従来の付加硬化性シリコーン樹脂組成物では、半導体用ダイアタッチ剤として用いる場合、硬化後の熱履歴における硬さの変化が大きく、硬化物の樹脂強度との両立が難しいといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-063538号公報
【特許文献2】特開平11-243100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、硬化後の熱履歴による硬さの変化が少なく、樹脂強度の優れた付加硬化性シリコーン樹脂組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、付加硬化性シリコーン樹脂組成物であって、下記(A)、(B)、及び(C)成分、
(A)下記一般式(1)
(R SiO1/2(HR SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2 (1)
(式中、Rは炭素数2~8のアルケニル基、Rは独立して炭素数1~12のアルキル基であり、0.01<a<0.15、0.01<b<0.2、0≦c<0.1、0≦d<0.1、0.45<e<0.98であり、但し、a+b+c+d+e=1を満足する数である。)
で示され、1分子中に2個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有し、かつ1分子中に2個以上のケイ素原子に直接結合した水素原子を有する分岐状オルガノポリシロキサン、
(B)下記一般式(2)
(R SiO1/2(R SiO2/2(R SiO2/2 (2)
(式中、R及びRはそれぞれ上記と同じであり、Rは独立して炭素数6~12のアリール基であり、x及びyはx>0、y≧0であり、0.85≦(x/(x+y))であり、かつ、50≦x+y≦5000となる数である。)
で示される直鎖状オルガノポリシロキサン、
(C)付加硬化触媒
を必須成分として含有するものである付加硬化性シリコーン樹脂組成物を提供する。
【0011】
このような付加硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、硬化後の熱履歴による硬さの変化が少なく、樹脂強度の優れた付加硬化性シリコーン樹脂硬化物を得ることができる。
【0012】
また、本発明では更に、(D)接着助剤として下記一般式(3)
(MeSiO3/2p1(EpSiO3/2p2(EpMeSiO2/2q1(MeSiO2/2q2(ViMeSiO2/2q3(OR (3)
(式中、Meはメチル基であり、Epはエポキシ基を有する1価の有機基であり、Viはビニル基であり、Rは炭素数1~12のアルキル基であり、0≦p1<0.35、0≦p2<0.35、0≦q1<0.35、0.4≦q2<0.7、0<q3<0.1、0≦r<0.05であり、0.15≦(p2+q1)≦0.35であり、但し、p1+p2+q1+q2+q3+r=1となる数である。)
で示される分岐状オルガノポリシロキサンであって、該分岐状オルガノポリシロキサンの重量平均分子量が1,500~8,000であり、かつエポキシ当量250~500g/eqである接着助剤を含有するものであることが好ましい。
【0013】
このような付加硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、有機基板を代表として各種基材との接着性に優れる付加硬化性シリコーン樹脂硬化物を得ることができる。
【0014】
また、本発明では更に、(E)無機充填剤を含有するものであることが好ましい。
【0015】
このような付加硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、硬化後の樹脂強度が高く、取扱性に優れた付加硬化性シリコーン樹脂組成物を得ることができる。
【0016】
また、本発明では、前記付加硬化性シリコーン樹脂組成物全体における重合度10以下の低分子シロキサン化合物量が1質量%以下であることが好ましい。
【0017】
このような付加硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、硬化時に周辺部材への汚染物の付着が少なく、顧客工程の不良を抑えることができる。
【0018】
また、本発明では、前記付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物の-40℃における貯蔵弾性率が10MPa以下であることが好ましい。
【0019】
このような付加硬化性シリコーン樹脂組成物であれば、硬化後の基材同士の反りを小さく抑えることが出来る。
【0020】
また、本発明は、上記付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物からなるものである半導体装置用ダイアタッチ材を提供する。
【0021】
このような半導体装置用ダイアタッチ材であれば、硬化後の熱履歴による硬さの変化が少なく、硬化物の樹脂強度が高いことから信頼性の高い半導体装置を与えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物によれば、半導体装置用ダイアタッチ材として使用した際、硬化後の熱履歴による硬さの変化が少なく、硬化物の樹脂強度が高いことから信頼性の高い半導体装置を与えることができ、それ故、本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物は半導体装置用ダイアタッチ材として極めて有用である。
【0023】
なお、このような効果が発現する理由として、上記特定のオルガノポリシロキサンを特定の組み合わせで使用することにより、通常の付加硬化性シリコーン樹脂組成物と比較して、硬化後の熱履歴による硬さの変化が少なく、硬化物の樹脂強度に優れることが考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述のように、硬化時に硬さと樹脂強度が高く熱履歴による硬さの変化が少ない樹脂硬化物となり、また基材との接着力に優れた付加硬化性シリコーン樹脂組成物の開発が求められていた。
【0025】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記(A)~(C)成分を含有する付加硬化性シリコーン樹脂組成物を、半導体装置用ダイアタッチ材として使用した場合、硬化後の熱履歴による硬さの変化が少なく、硬化物の樹脂強度に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0026】
即ち、本発明は、付加硬化性シリコーン樹脂組成物であって、下記(A)、(B)、及び(C)成分、
(A)下記一般式(1)
(R SiO1/2(HR SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2 (1)
(式中、Rは炭素数2~8のアルケニル基、Rは独立して炭素数1~12のアルキル基であり、0.01<a<0.15、0.01<b<0.2、0≦c<0.1、0≦d<0.1、0.45<e<0.98であり、但し、a+b+c+d+e=1を満足する数である。)
で示され、1分子中に2個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有し、かつ1分子中に2個以上のケイ素原子に直接結合した水素原子を有する分岐状オルガノポリシロキサン、
(B)下記一般式(2)
(R SiO1/2(R SiO2/2(R SiO2/2 (2)
(式中、R及びRはそれぞれ上記と同じであり、Rは独立して炭素数6~12のアリール基であり、x及びyはx>0、y≧0であり、0.85≦(x/(x+y))であり、かつ、50≦x+y≦5000となる数である。)
で示される直鎖状オルガノポリシロキサン、
(C)付加硬化触媒
を必須成分として含有するものである付加硬化性シリコーン樹脂組成物である。
【0027】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物は、上記(A)~(C)を含有するものであるが、必要に応じてさらに、各種の公知の添加剤を含んでもよい。以下、各成分について説明する。
【0029】
<(A)分岐状オルガノポリシロキサン>
(A)成分は、下記一般式(1)で表され、1分子中に2個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有し、かつ1分子中に2個以上のケイ素原子に直接結合した水素原子を有する分岐状オルガノポリシロキサンである。
(R SiO1/2(HR SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2 (1)
(式中、Rは炭素数2~8のアルケニル基、Rは独立して炭素数1~12のアルキル基であり、繰り返し単位のモル分率(含有率)a~eについては、0.01<a<0.15、0.01<b<0.2、0≦c<0.1、1、0≦d<0.1、0.45<e<0.98であり、但し、a+b+c+d+e=1を満足する数である。)
【0030】
上記一般式(1)中、Rの炭素数2~8、特に炭素数2~6が好ましいアルケニル基として、具体的には、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などが例示され、特にビニル基が好ましい。
【0031】
上記一般式(1)中、Rの炭素数1~12、特に炭素数1~10が好ましいアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基等が例示できる。上記Rのアルキル基としては、得られる付加硬化性シリコーン樹脂組成物より作製されるシリコーン硬化物の、高温条件下の耐熱性を考慮すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などのアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0032】
このように、1分子中に2個以上のアルケニル基及び1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するRSiO1/2単位(M単位)と、レジン源であるRSiO3/2単位(T単位)を有するオルガノポリシロキサンは、従来のアルケニル基を有するRSiO1/2単位(M単位)と、SiO4/2単位(Q単位)をレジン源とするオルガノポリシロキサンと比較して付加硬化反応の進行が早く、高温放置時の硬さの変化が少ない硬化物を与え、また樹脂強度にも優れる硬化物を与えることが可能である。
【0033】
また、上記一般式(1)中のR SiO1/2単位の上記含有率aは、シロキサン単位の合計a+b+c+d+e=1に対して0.01<a<0.15の範囲にあり、好ましくは0.02≦a≦0.14の範囲である。また、HR SiO1/2単位の上記含有率bは、シロキサン単位の合計a+b+c+d+e=1に対して0.01<b<0.2の範囲にあり、好ましくは0.08≦b≦0.18の範囲である。また、R SiO1/2単位の上記含有率cは、シロキサン単位の合計a+b+c+d+e=1に対して0≦c<0.1の範囲にあり、好ましくは0≦c≦0.08の範囲である。また、R SiO2/2単位の上記含有率dは、シロキサン単位の合計a+b+c+d+e=1に対して0≦d<0.1の範囲にあり、好ましくは0≦d≦0.08の範囲である。また、RSiO3/2単位の上記含有率eについては、シロキサン単位の合計a+b+c+d+e=1に対して0.45<e<0.98の範囲にあり、好ましくは0.5≦e≦0.9の範囲である。
【0034】
上記(A)成分は、各単位源となる化合物を上記範囲内の含有率で混合し、例えば酸存在下で共加水分解縮合を行うことによって容易に合成することができる。
【0035】
ここで、上記R SiO1/2単位源は、下記構造式で表されるトリオルガノクロロシラン、トリオルガノアルコキシシラン及びヘキサオルガノジシロキサン等の有機ケイ素化合物が例示できるが、使用できるR SiO1/2単位源はこれらに限定されない。
【0036】
【化1】
【0037】
【化2】
【0038】
ここで、上記HR SiO1/2単位源は、下記構造式で表されるテトラオルガノジシロキサン等の有機ケイ素化合物が例示できるが、使用できるHR SiO1/2単位源はこれらに限定されない。
【化3】
【0039】
ここで、上記R SiO1/2単位源は、下記構造式で表されるヘキサオルガノジシロキサン等の有機ケイ素化合物が例示できるが、使用できるR SiO1/2単位源はこれらに限定されない。
【化4】
【0040】
ここで、上記R SiO2/2単位源は、下記構造式で表されるジオルガノジアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物が例示できるが、使用できるR SiO2/2単位源はこれらに限定されない。
【化5】
【0041】
ここで、上記RSiO3/2単位源は、下記構造式で表されるモノオルガノトリクロロシランやモノオルガノトリアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物が例示できるが、使用できるRSiO3/2単位源はこれらに限定されない。
【化6】
【0042】
上記(A)成分の性状としては特に限定されないが、25℃で液状であることが好ましい。
【0043】
また、上記(A)成分の重量平均分子量は4,000~14,000の範囲であることが好ましく、6,000~12,000の範囲であることがより好ましい。なお、本発明で言及する重量平均分子量とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指すこととする。
【0044】
[測定条件]
・展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
・流量:0.6mL/min
・検出器:示差屈折率検出器(RI)
・カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
・TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
・TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
・TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
・カラム温度:40℃
・試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0045】
<(B)直鎖状オルガノポリシロキサン>
(B)成分は、下記一般式(2)で表され、1分子中に2個のR(炭素数2~8のアルケニル基)を有する直鎖状オルガノポリシロキサンである。
(B)下記一般式(2)
(R SiO1/2(R SiO2/2(R SiO2/2 (2)
(式中、R及びRはそれぞれ上記と同じであり、Rは独立して炭素数6~12のアリール基であり、x及びyはx>0、y≧0であり、0.85≦(x/(x+y))であり、かつ、50≦x+y≦5000となる数である。)
【0046】
上記一般式(2)中、Rの炭素数2~8、特に炭素数2~6が好ましいアルケニル基として、具体的には、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などが例示され、特にビニル基が好ましい。
【0047】
上記一般式(2)中、Rの炭素数1~12、特に炭素数1~10が好ましいアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基等が例示できる。上記Rのアルキル基としては、得られる付加硬化性シリコーン樹脂組成物より作製されるシリコーン硬化物の、高温条件下の耐熱性を考慮すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などのアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0048】
上記一般式(2)中、Rの炭素数6~12のアリール基として、具体的には、フェニル基、ナフチル基などが例示され、特にフェニル基が好ましい。このように所定量のフェニル基が導入された直鎖状オルガノポリシロキサンを用いる場合、得られる付加硬化性シリコーン樹脂硬化物の低温領域の貯蔵弾性率を低く抑えることができる。
【0049】
上記一般式(2)中、xとyはx>0、y≧0であり、0.85≦(x/(x+y))となる数であり、かつ、50≦x+y≦5000となる数であり、好ましくは100≦x+y≦4000である。上記範囲内でなければ、(A)成分との相溶性が悪くなり、樹脂強度の高い付加硬化性シリコーン樹脂硬化物を与えることができない。
【0050】
上記(B)成分の性状としては、25℃で液状であることが好ましく、JIS K 7117-1:1999記載の方法で回転粘度計により測定した25℃における粘度が8~50mPa・sの範囲であることがより好ましい。
【0051】
(B)成分としては、具体的には、以下のものが例示できる。
【化7】
【0052】
(B)成分の配合量としては、上記(A)成分100質量部に対して100~1000質量部であることが好ましく、150~950質量部であることがより好ましく、200~900質量部であることがさらに好ましい。
【0053】
<(C)付加硬化触媒>
(C)成分の付加硬化触媒は、本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物の付加硬化反応を進行させるために配合されるものであり、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものがあるが、コスト等の観点から白金、塩化白金酸等の白金系のもの、例えば、HPtCl・mHO,KPtCl,KHPtCl・mHO,KPtCl,KPtCl・mHO(mは、正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を例示することができ、これらは単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。また、白金系では紫外線光により、配位子が外れ活性が発現する錯体を用いても良い。
【0054】
付加硬化触媒の配合量は、付加硬化性シリコーン樹脂組成物全体100質量部に対して、白金族金属の質量単位で0.1~60ppmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1~50ppmの範囲である。付加硬化触媒の配合量が上記範囲内であれば、付加硬化性シリコーン樹脂組成物の付加硬化反応が円滑に進行し、シリコーン硬化物に着色が生じるおそれがなくなる。
【0055】
<(D)接着助剤>
本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物には、上記(A)~(C)成分の他に、接着助剤を添加してもよい。(D)成分の接着助剤は、本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化時の基材との接着性をより好ましく発現させるために配合されるものであり、下記一般式(3)で表され、重量平均分子量が1,500~8,000であり、エポキシ当量が250~500g/eqである分岐状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
(MeSiO3/2p1(EpSiO3/2p2(EpMeSiO2/2q1(MeSiO2/2q2(ViMeSiO2/2q3(OR (3)
(式中、Meはメチル基であり、Epはエポキシ基を有する1価の有機基であり、Viはビニル基であり、Rは炭素数1~12のアルキル基であり、0≦p1<0.35、0≦p2<0.35、0≦q1<0.35、0.4≦q2<0.7、0<q3<0.1、0≦r<0.05であり、0.15≦(p2+q1)≦0.35であり、但し、p1+p2+q1+q2+q3+r=1となる数である。)
【0056】
上記一般式(3)中、Epで表されるエポキシ基を有する1価の有機基として具体的には、3-グリシドキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、5,6-エポキシヘキシル基、7,8-エポキシオクチル基等の有機基が例示でき、特にEpとしては付加硬化性シリコーン樹脂組成物に配合した状態における保存安定性の観点から、3-グリシドキシプロピル基が好ましい。また、Rは炭素数1~12のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
【0057】
また、上記一般式(3)中のMeSiO3/2単位の上記含有率p1は、シロキサン単位の合計p1+p2+q1+q2+q3+r=1に対して0≦p1<0.35の範囲であり、特に好ましくは0≦p1≦0.3の範囲である。またEpSiO3/2単位の上記含有率p2は、シロキサン単位の合計p1+p2+q1+q2+q3+r=1に対して0≦p2<0.35の範囲であり、特に好ましくは0≦p2≦0.3の範囲である。更にEpMeSiO2/2単位の上記含有率q1は、シロキサン単位の合計p1+p2+q1+q2+q3+r=1に対して0≦q1<0.35の範囲であり、特に好ましくは0≦q1≦0.3の範囲である。また更に、MeSiO2/2単位の上記含有率q2は、シロキサン単位の合計p1+p2+q1+q2+q3+r=1に対して0.4≦q2<0.7であり、特に好ましくは0.45≦q2≦0.65の範囲である。また更に、ViMeSiO2/2単位の上記含有率q3は、シロキサン単位の合計p1+p2+q1+q2+q3+r=1に対して0<q3<0.1であり、特に好ましくは0<q3≦0.08の範囲である。更に、OR単位の上記含有率rは、シロキサン単位の合計p1+p2+q1+q2+q3+r=1に対して0≦r<0.05であり、特に好ましくは0≦r≦0.03の範囲である。Ep基(エポキシ基)シロキサン含有量は0.15≦(p2+q1)≦0.35である。好ましくは0.2≦(p2+q1)≦0.3である。
【0058】
また、(D)接着助剤の重量平均分子量は好ましくは1,500~8,000の範囲にあり、より好ましくは2,000~7,500の範囲である。重量平均分子量が8,000以下であれば、本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物であるシリコーン樹脂硬化物の外観が濁る恐れがなく、重量平均分子量が1,500以上であれば、基材との接着性を十分に得ることができる。
【0059】
更に、(D)接着助剤のエポキシ当量は好ましくは250~500g/eqの範囲にあり、より好ましくは300~450g/eqの範囲である。エポキシ当量が500g/eq以下であれば、基材との接着性を十分に得ることができ、エポキシ当量が250g/eq以上であれば、シリコーン樹脂硬化物の外観が濁る恐れがない。
【0060】
このように、重量平均分子量が大きく、エポキシ当量が小さな分岐状オルガノポリシロキサンは、(A)成分との極性差が大きいため、硬化時に基材との界面に移行しやすいことから良好な接着性を発現させることができる。また、D単位上にビニル基を有するため、付加硬化反応で付加硬化性シリコーン樹脂組成物中に組み込まれることから、硬化後のブリードアウトを抑制することができ、更にはM単位上にビニル基を有するものと比較して組成物中にマイルドに組み込まれることから、基材と十分に馴染む余地を与えることができる。
【0061】
上記(D)成分は、各単位源となる化合物を上記範囲内の含有率で混合し、例えば塩基存在下で共加水分解縮合を行うことによって容易に合成することができる。
【0062】
ここで、上記EpSiO3/2単位源及びEpMeSiO2/2単位源としては、下記構造式で表される有機ケイ素化合物が例示できるが、使用できるEpSiO3/2単位源及びEpMeSiO2/2単位源はこれらに限定されない。
【0063】
【化8】
【0064】
【化9】
【0065】
(D)成分の配合量は、付加硬化性シリコーン樹脂組成物全体100質量部に対して0.4~10質量部の範囲であることが好ましく、特に好ましくは1~5質量部の範囲である。(D)成分の配合量が0.4質量部以上であれば、基材との接着性に優れるため好ましく、10質量部以下であれば、塗布作業性に問題なく用いることが出来るため好ましい。
【0066】
<(E)無機充填材>
本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物には、得られる硬化物の強度を向上させる目的や、チキソ性を付与しダイアタッチ材の塗布作業性を向上させる目的で、無機充填材を適宜配合することができる。(E)成分の無機充填材としては、例えば、ヒュームドシリカ、石英粉末等が例示できる。特には、得られる硬化物の透明性の観点から、無機充填材としてヒュームドシリカを用いることが好適である。
【0067】
無機充填材を配合する場合その配合量は、付加硬化性シリコーン樹脂組成物全体100質量部に対して好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは1~10質量部の範囲とすることができる。特に、無機充填材としてヒュームドシリカを用いる場合は、上記シリコーン樹脂との馴染み性といった観点から、上記シリカ表面が疎水性基で処理されていることが好適である。疎水性基としては、具体的には、トリメチルシリル基やジメチルシリル基などのシロキサン系が挙げられる。
【0068】
また、表面処理することによって、上記(D)成分に含まれるエポキシ基とヒュームドシリカ表面のヒドロキシシリル基との相互作用を抑え、保存安定性を改善する効果もある。このため、ヒュームドシリカとしては、十分に表面処理がされているものが好ましく、具体的には、比表面積が150m/g以上290m/g以下、好ましく170m/g以上230m/g以下であるヒュームドシリカを用いることが好ましい。上記シロキサン系の官能基で表面処理されたヒュームドシリカとしては、市販品として、日本アエロジル社のトリメチルシリル基で表面処理されたR812(比表面積230~290m/g)及びRX300(比表面積180~220m/g)、ジメチルシリル基で表面処理されたR976(比表面積225~275m/g)、R976S(比表面積215~265m/g)等が挙げられる。
【0069】
本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物は、樹脂組成物全体における重合度10以下の低分子シロキサン化合物量が1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。重合度10以下の低分子シロキサン化合物量が上記量以下であれば、周辺部材への汚染が少なく、動作を損なうことのない半導体パッケージを与えることが可能である。
【0070】
なお、本発明で言及する重合度10以下の低分子シロキサン化合物の含有量とは、下記条件で測定したガスクロマトグラフィーによって定量された該シロキサン化合物の含有量を指すこととする。
【0071】
[測定条件]
・装置:GC-2014((株)島津製作所製)
・カラム:品名…HP-5MS(アジレント・テクノロジー(株)製、内径:0.25mm、長さ:30m、充填材:〔(5%-フェニル)-メチルポリシロキサン〕
・検出器:FID検出器(検出器温度:300℃)
・試料:試料1.0gを10mLのn-テトラデカン/アセトン標準溶液(濃度:20μg/mL)に溶解させたものをサンプルとした。
・注入量:1μL
・オーブン温度:50℃-280℃/23分-280℃/17分
・キャリアガス:種類…ヘリウム、線速…34.0cm/s
【0072】
本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物は、硬化後の樹脂硬化物の-40℃における貯蔵弾性率が10MPa以下であることが好ましく、より好ましくは5MPa以下である。硬化後の樹脂硬化物の-40℃における貯蔵弾性率が上記値以下であれば、動作温度領域における半導体パッケージの反りが少なく、動作不良を抑制することができる。
【0073】
本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物は、用途に応じて、基板上に塗布した後、硬化させることができ、好ましくは温度70~130℃、より好ましくは温度90~1200℃の範囲で加熱硬化を行うことができる。加熱温度が上記範囲内であれば、基材と樹脂硬化物との接着強度が向上し、反りの少ない半導体パッケージを与えることが可能であるため好ましい。なお、上記加熱硬化時間は0.5~2.5時間で良く、また、ステップ硬化の方式を採用しても良い。
【0074】
本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物は、上記特定のオルガノポリシロキサンを特定の組み合わせで使用することにより、通常の付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物と比較して、硬化後の熱履歴による硬さの変化が少なく、樹脂強度の優れた付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物を得られる。このため本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物は電気電子部品用途に好適に用いることができ、具体的には、半導体装置用ダイアタッチ材として好適に使用することができる。
【実施例0075】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、部とは「質量部」のことであり、Meは「メチル基」、Viは「ビニル基」、Ep’は「γ-グリシドキシプロピル基」をそれぞれ示す。また、重量平均分子量は、上述した条件で測定したGPC測定による重量平均分子量を指す。また、下記実施例において、SiH基量とは、分子中のケイ素原子に直結した水素原子のモル数を示し、ブルカー社製核磁気共鳴(NMR)測定装置によるH-NMR測定によってジメチルスルホキシド(DMSO)を内部標準として定量した値であり、SiVi基量とは、分子中のケイ素原子に直結したビニル基のモル数を示し、ブルカー社製核磁気共鳴(NMR)測定装置によるH-NMR測定によってDMSOを内部標準として定量した値である。
【0076】
<(A)成分>
(a-1):シロキサン単位が、ViMeSiO1/2単位が5モル%、HMeSiO1/2単位が12モル%、MeSiO3/2単位が83モル%で示され、SiH基量が0.16mol/100gであり、SiVi基量が0.11mol/100gであり、重量平均分子量が8,200であり、重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量が0.2質量%であり、25℃で液状のオルガノポリシロキサン
【0077】
(a-2):シロキサン単位が、ViMeSiO1/2単位が10モル%、MeSiO1/2単位が40モル%、SiO4/2単位が50モル%で示され、SiVi基量が0.08mol/100gであり、GPC測定による重量平均分子量が5,600であり、重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量が0.1質量%であり、25℃で固体のオルガノポリシロキサン(比較用)
【0078】
(a-3):シロキサン単位が、ViMeSiO1/2単位が11モル%、MeSiO1/2単位が20モル%、MeSiO3/2単位が69モル%で示され、SiVi基量が0.15mol/100gであり、重量平均分子量が4,200であり、重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量が0.4質量%であり、25℃で液状のオルガノポリシロキサン(比較用)
【0079】
(a-4):シロキサン単位が、ViMeSiO1/2単位が12モル%、HMeSiO1/2単位が21モル%、MeSiO1/2単位が17モル%、SiO4/2単位が50モル%で示され、SiH基量が0.17mol/100gであり、SiVi基量が0.11mol/100gであり、重量平均分子量が4,800であり、重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量が0.2質量%であり、25℃で液状のオルガノポリシロキサン(比較用)
【0080】
<(B)成分>
(b-1):下記式
(ViMeSiO1/2(MeSiO2/2390
で表され、SiVi基量が0.006mol/100gであり、25℃で液体であり、重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量が0.1質量%であり、25℃の粘度が5,200mPa・sであるオルガノポリシロキサン
【0081】
<SiH架橋剤>
(f-1):下記式
(MeSiO1/2(HMeSiO2/272(MeSiO2/224
で表され、ヒドロシリル基量が1.14mol/100gであり、25℃で液体であり、重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量が0.1質量%であり、25℃の粘度が163mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0082】
(f-2):シロキサン単位が、HMeSiO1/2単位が43モル%、MeSiO3/2単位が57モル%で示され、SiH基量が0.63mol/100gであり、重量平均分子量が1,800であり、重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量が32.1質量%であり、25℃で液状のオルガノポリシロキサン
【0083】
<(C)成分>
(c-1):白金の含有量が2質量%であり、SiVi基量が1.05mol/100gである、白金(0)の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液
【0084】
<(D)成分>
(d-1):シロキサン単位が、Ep’SiO3/2単位が29モル%、MeSiO2/2単位が64モル%、ViMeSiO2/2単位が6モル%、OMe単位が1モル%で示され、重量平均分子量が2,400であり、SiVi基量が0.05mol/100gであり、エポキシ当量が330g/eqであり、25℃で液体であり、重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量が0.3質量%であり、25℃の粘度が350mPa・sであるオルガノポリシロキサン
【0085】
(d-2):シロキサン単位が、MeSiO3/2単位が25モル%、Ep’MeSiO2/2単位が22モル%、MeSiO2/2単位が47モル%、ViMeSiO2/2単位が5モル%、OMe単位が1モル%で示され、重量平均分子量が4,500であり、SiVi基量が0.05mol/100gであり、エポキシ当量が435g/eqであり、25℃で液体であり、重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量が0.1質量%であり、25℃の粘度が355mPa・sであるオルガノポリシロキサン
【0086】
<無機充填材>
(e-1):日本アエロジル社製ヒュームドシリカ「RX300」
【0087】
[実施例1~3,比較例1~5]
実施例1~3及び比較例1~5の付加硬化性シリコーン樹脂組成物を表1に示した配合比(数値は質量部)により調製し、上記組成物の硬化物の初期硬さ、150℃1000時間放置後の硬さ、引張り強さ、切断時伸び、-40℃における貯蔵弾性率、接着性、組成物の重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量を下記に示す試験方法により評価した。各測定結果について表1に示した。
【0088】
(a)初期硬さ
付加硬化性シリコーン樹脂組成物を、熱風循環式乾燥機を使用して100℃で1時間加熱することにより、シリコーン硬化物を作製した。該シリコーン硬化物をJIS K 6253-3:2012に準拠し、タイプAデュロメータを用いて測定した。
【0089】
(b)150℃1000時間放置後の硬さ
上記(a)で得られたシリコーン硬化物を、熱風循環式乾燥機を使用して150℃で1000時間加熱した。その後にJIS K 6253-3:2012に準拠し、タイプAデュロメータを用いて測定し、初期硬さとの比較を実施した。
【0090】
(c)引張り強さ、切断時伸び
付加硬化性シリコーン樹脂組成物を、熱風循環式乾燥機を使用して100℃で1時間加熱することにより、シリコーン硬化物を作製した。該シリコーン硬化物の引張り強さ、切断時伸びをJIS K 6250に準拠して測定した。
【0091】
(d)-40℃における貯蔵弾性率
付加硬化性シリコーン樹脂組成物を、熱風循環式乾燥機を使用して100℃で1時間加熱することにより、厚さ2mmでシート形状のシリコーン硬化物を作製した。該シリコーン硬化物の-40℃における貯蔵弾性率を、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製動的粘弾性測定装置(DMA)「Q800」により測定した。
【0092】
(e)接着性
ガラスエポキシ基板であるFR-4上に、付加硬化性シリコーン樹脂組成物を所定量塗布し、3.0mm×3.0mmのサイズであるSiチップをダイボンドした後、熱風循環式乾燥機を使用して100℃で1時間加熱硬化した。加熱後、取り出したパッケージを25℃まで冷却し、ボンドテスター(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製:Dage4000)にてチップと基板との接着強度を各樹脂硬化物について試験数50で測定し、平均接着強度を算出した。
【0093】
(f)重合度10以下の低分子シロキサン化合物含有量
付加硬化性シリコーン樹脂組成物の重合度10以下の低分子シロキサン化合物の含有量は上述と同様の方法を用いて測定した。
【0094】
【表1】
【0095】
上記評価試験の結果、本発明(実施例1~3)の付加硬化性シリコーン樹脂組成物は、硬化後の熱履歴による硬さの変化が小さく、また樹脂強度に優れることが分かった。一方、比較例は、本発明の(A)成分に該当する成分を含有しておらず、比較例1及び比較例4は硬化物の樹脂強度(引張り強さ)が低く、その他の比較例は硬化後の熱履歴による硬さの変化が大きい結果であった。従って、本発明の付加硬化性シリコーン樹脂組成物は、半導体装置用ダイアタッチ材として極めて有用であることが確認された。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。