(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190774
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】培養担体
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20221220BHJP
【FI】
C12N5/077
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099201
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518277583
【氏名又は名称】CPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 琢
(72)【発明者】
【氏名】千々松 良太
(72)【発明者】
【氏名】辻 晋作
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 皓平
(72)【発明者】
【氏名】小島 理恵
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏一
(72)【発明者】
【氏名】道畑 典子
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BC41
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】培養担体上で脂肪組織を培養することで、前記脂肪組織から前記培養担体上に増殖した脂肪幹細胞および/または前記培養担体内へ遊走し前記培養担体内で増殖した脂肪幹細胞を得るために使用する培養担体であって、より収量(培養担体に増殖する脂肪幹細胞の量)を高くできる、培養担体を提供する。
【解決手段】前記培養担体は、表面に熱可塑性樹脂を含有する繊維を含んだ布帛と、リン酸カルシウム系粒子とを有しており、前記熱可塑性樹脂の熱融着によって前記繊維の表面に前記リン酸カルシウム系粒子が固着しており、培養担体の見かけ密度が0.04g/cm3以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養担体上で脂肪組織を培養することで、前記脂肪組織から前記培養担体上に増殖した脂肪幹細胞および/または前記培養担体内へ遊走し前記培養担体内で増殖した脂肪幹細胞を得るために使用する培養担体であって、
表面に熱可塑性樹脂を含有する繊維を含んだ布帛と、リン酸カルシウム系粒子とを有しており、
前記熱可塑性樹脂の熱融着によって前記繊維の表面に前記リン酸カルシウム系粒子が固着しており、
培養担体の見かけ密度が0.04g/cm3以上である、
培養担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養担体上で脂肪組織を培養することで、前記脂肪組織から前記培養担体上に増殖した脂肪幹細胞および/または前記培養担体内へ遊走し前記培養担体内で増殖した脂肪幹細胞を得るために使用する培養担体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオサイエンスとその関連技術の進歩から、培養された脂肪幹細胞が創薬研究、再生医療あるいは美容整形などのエステティックで活用されている。例えば、培養した脂肪幹細胞を上述した目的に合わせ体内に移植して組織の再生を促すことや、根本的な治癒を目指す細胞移植治療が行われている。
そして、脂肪幹細胞を培養する方法として、生体から抽出するなどして用意した脂肪組織を培養担体上で培養し、培養している脂肪組織から培養担体上に増殖した脂肪幹細胞および/または培養担体内へ遊走し培養担体内で増殖した脂肪幹細胞を得ることが行われている。
このような組織や脂肪幹細胞を培養可能な担体として、特開2007-319074号公報(特許文献1)には、ナノファイバーを含むスキャフォールドが開示されている。なお、特許文献1には細胞接着率を向上させるため、リン酸カルシウムを用いて物理的にナノファイバーを表面修飾できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-319074号公報(特許請求の範囲、0019など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、特許文献1が開示するような従来技術にかかる培養担体について、より収量(培養担体に増殖する脂肪幹細胞の量)を高くできる、培養担体の提供を解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
「培養担体上で脂肪組織を培養することで、前記脂肪組織から前記培養担体上に増殖した脂肪幹細胞および/または前記培養担体内へ遊走し前記培養担体内で増殖した脂肪幹細胞を得るために使用する培養担体であって、
表面に熱可塑性樹脂を含有する繊維を含んだ布帛と、リン酸カルシウム系粒子とを有しており、
前記熱可塑性樹脂の熱融着によって前記繊維の表面に前記リン酸カルシウム系粒子が固着しており、
培養担体の見かけ密度が0.04g/cm3以上である、
培養担体」
である。
【発明の効果】
【0006】
本出願人は検討を続けた結果、
・表面に熱可塑性樹脂を含有する繊維を含んだ布帛と、リン酸カルシウム系粒子とを有しており、熱可塑性樹脂の熱融着によって繊維の表面に前記リン酸カルシウム系粒子が固着しているという構成、
および、
・培養担体の見かけ密度が0.04g/cm3以上であるという構成、
を満足する培養担体によって、収量高く脂肪幹細胞を得ることができることを見出した。
【0007】
また、本発明にかかる培養担体について、本出願人は次の知見も得た。「熱可塑性樹脂の熱融着によって繊維の表面に前記リン酸カルシウム系粒子が固着している」ことにより、リン酸カルシウム系粒子が培養担体をなす布帛の構成繊維表面から脱落し難い。そのため、本発明にかかる培養担体を用いることで、脂肪幹細胞に多量のリン酸カルシウム系粒子が混ざり込むのを防止して、脂肪幹細胞を収量高く得られる。更に、バインダーを用いることなくリン酸カルシウム系粒子が担持された培養担体を実現できるため、培養された脂肪幹細胞がバインダーにより汚染されることを防止して、脂肪幹細胞を収量高く得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。
なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、大気圧下のもと測定を行った。また、25℃温度条件下で測定を行った。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。そして、本発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0009】
本発明でいう、表面に熱可塑性樹脂を含有する繊維(以降、熱可塑性樹脂含有繊維と称することがある)は、培養担体の構成部材である布帛を構成する繊維であって、布帛の骨格をなす役割を担う。また、前記熱可塑性樹脂が繊維表面に露出していると共に当該前記熱可塑性樹脂が熱融着することによって、表面にリン酸カルシウム系粒子を固着する機能を有する。
【0010】
熱可塑性樹脂含有繊維は、表面に熱可塑性樹脂を含有するものであればよく、熱可塑性樹脂のみで構成された繊維(熱可塑性樹脂の単繊維)、繊維表面に熱可塑性樹脂が露出した複合繊維などを挙げることができる。複合繊維として、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの繊維を採用できる。また、上述したような熱可塑性樹脂を含有する複合繊維の繊維内部を構成する樹脂や、熱可塑性樹脂と混合可能な樹脂として、非熱可塑性樹脂を採用してもよい。なお、表面にリン酸カルシウム系粒子を固着する機能が効率よく発揮されるよう、熱可塑性樹脂含有繊維の表面は熱可塑性樹脂のみで構成されているのが好ましい。
【0011】
熱可塑性樹脂として周知の樹脂を採用できるものであり、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等)又はポリアミド等が好適である。更には、共重合ポリエステル、共重合ポリプロピレン、共重合ポリエチレン(例えば、エチレン-エチレン酢酸ビニル共重合体等)等も好適に使用可能である。また、例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸、ポリラクチド/ポリグリコリド共重合体やポリジオキサノンなどの生体適合性の樹脂を、単体の樹脂として、あるいは複数種類の樹脂を混合してなる混合樹脂として採用できる。
【0012】
なお、リン酸カルシウム系粒子の融点や分解する温度よりも、融点の低い熱可塑性樹脂であるのが好ましい。なお、本発明において融点はJIS K7121-1987に則して示差走査熱量分析計を用いて求めることができる。
【0013】
熱可塑性樹脂含有繊維は、融点の異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維であってもよい。このような樹脂の組み合わせとして、例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、共重合ポリエチレン/ポリエチレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、共重合ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、又はポリエチレン/ポリエステル等の樹脂の組み合わせからなる複合繊維を挙げることができる。当該複合繊維が、芯に高融点樹脂を有し、鞘に低融点樹脂(熱可塑性樹脂)を有する芯鞘型複合繊維であると、リン酸カルシウム系粒子を固着する際に繊維の収縮や糸切れが生じ難くなるため好適である。このような芯鞘型複合繊維としては、高融点ポリエステル(例えば、融点255℃程度)と低融点ポリエステル(例えば、融点110℃)とからなる複合繊維や、ポリプロピレン(融点165℃)とポリエチレン(融点130℃)とからなる複合繊維等が挙げられる。
【0014】
これらの熱可塑性樹脂含有繊維は、収量高く脂肪幹細胞を培養できる培養担体を提供できるのであれば、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴剤、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、加熱を受け発泡する粒子、無機粒子、酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0015】
熱可塑性樹脂含有繊維は、断面形状が略円形の繊維や楕円形である以外にも異形断面を有する繊維であってもよい。なお、異形断面として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などであってもよい。
【0016】
また、熱可塑性樹脂含有繊維の繊度や繊維長は、本発明の目的を達成できるのであれば特に限定されるものではないが、収量高く脂肪幹細胞を培養できる培養担体となるよう、適宜調整できる。
熱可塑性樹脂含有繊維の繊度は0.1~20dtexであるのが好ましく、0.3~10dtexであるのが好ましく、0.6~8dtexであるのが好ましい。なお、「繊度」はJIS L1015:2010、8.5.1(正量繊度)に規定されているA法により得られる。
熱可塑性樹脂含有繊維の繊維長は、3~150mmであるのが好ましく、10~100mmであるのが好ましく、30~80mmであるのが好ましい。なお、「繊維長」は、JIS L1015:2010、8.4.1[補正ステープルダイヤグラム法(B法)]により得られる。あるいは、メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法などの直接紡糸法により調製される連続長を有する繊維であっても良い。
【0017】
熱可塑性樹脂含有繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0018】
また、熱可塑性樹脂含有繊維は公知の技術により改質されていても良く、例えばプラズマ処理によって親水化処理されていたり、グラフト重合などにより任意の表面官能基を結合されていてもよい。
【0019】
本発明でいう布帛とは、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの繊維シートを指し、熱可塑性樹脂含有繊維を含み構成されている。特に、繊維同士がランダムに存在することで空隙率が高く孔径が均一となり、収量高く脂肪幹細胞を培養できる培養担体を実現できる傾向があることから、布帛は不織布であるのが好ましい。
布帛は熱可塑性樹脂含有繊維以外にも、他の繊維を含んでいても良い。布帛を構成する繊維の質量に占める熱可塑性樹脂含有繊維の質量の百分率は適宜調整できるが、収量高く脂肪幹細胞を培養できる培養担体を実現できるよう、50質量%以上であるのが好ましく、65質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのがより好ましく、布帛の構成繊維が熱可塑性樹脂含有繊維のみであるのが最も好ましい。
【0020】
なお、布帛を構成する繊維の種類はJIS L1030-1「繊維製品の混用率試験方法 第1部:繊維鑑別」によって、またその混用率(質量比率)はJIS L1030-2「繊維製品の混用率試験方法 第二部:繊維混用率」によって求めることができる。
【0021】
布帛を構成している繊維は、バインダーや繊維接着によって繊維同士が一体化されている状態であっても良い。しかし、バインダーが存在することで脂肪組織や脂肪幹細胞の培養が意図せず影響を受ける恐れがあることから、繊維同士がただ絡合してなる布帛や、繊維接着によって接着一体化してなる布帛であるのが好ましい。
【0022】
布帛を構成している繊維同士の繊維間距離は、培養担体上で脂肪組織を培養できるよう、また、培養担体上や培養担体内で脂肪幹細胞が容易に増殖できるよう、適宜調整する。
【0023】
布帛の目付や厚みは適宜調整する。目付は5~200g/m2であるのが好ましく、10~100g/m2であるのがより好ましく、15~80g/m2であるのが更に好ましい。なお、「目付」は1m2あたりの質量であり、JIS L1085:1998、6.2「単位面積当たりの質量」に規定する方法により得られる。
【0024】
また、厚みは0.05~10mmであるのが好ましく、0.1~8mmであるのがより好ましく、0.15~5mmであるのがより好ましく、0.2~3mmであるのが更に好ましい。なお、「厚み」は、測定対象における無作為に選んだ主面上の5点に対し圧縮弾性試験機(ライトマチック)を用いて、測定対象の両主面間に20gf/cm2の荷重をかけた際の、両主面間の長さの算術平均値をいう。
【0025】
布帛の見かけ密度は、本発明の構成を満足する培養担体を提供できるよう適宜調整できる。具体的にその下限値は、0.01g/cm3以上であることができ、0.02g/cm3以上であることができ、0.03g/cm3以上であることができる。また、その上限値は1g/cm3以下であることができ、0.8g/cm3以下であることができ、0.5g/cm3以下であることができる。なお、本発明でいう「見かけ密度」とは、測定対象の目付を厚みで割り算出した値である。
【0026】
本発明でいうリン酸カルシウム系粒子とは、塩基性リン酸カルシウムの粒子であり、その種類は適宜選択できるが、例えば、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム一水和物、リン酸一水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、α-TCP、β-TCP、リン酸八カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、炭酸アパタイト、炭酸アパタイトA型、炭酸アパタイトB型、ウイットロカイト、アモルファスリン酸カルシウム、リン酸四カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸ニ水素カルシウムなどの粒子を採用できる。
このようなリン酸カルシウム系粒子として、例えば、micro-SHAp(IHMO-100P000、ソフセラ社)や太平化学産業社製のハイドロキシアパタイト粒子などを採用でき、その形状や特性なども、収量高く脂肪幹細胞を培養できる培養担体を実現できるよう、適宜選択できる。
【0027】
リン酸カルシウム系粒子として、リン酸カルシウム系粒子を焼成(例えば、800℃で1時間)してなる焼成リン酸カルシウム系粒子を採用できる。なお、リン酸カルシウム系粒子が焼成されているか否かは、当該粒子の結晶性の度合いにより判断することができる。リン酸カルシウム系粒子の結晶性の度合いは、X線回折法(XRD)により測定することが出来、各結晶面を示すピークの半値幅が狭ければ狭いほど結晶性が高いといえる。具体的には、本形態における焼成リン酸カルシウム系粒子は、X線回折(CuKα線)における2θ=32°付近(300)面のピークの半値幅が、好適には0.8以下(より好適には、0.5以下)の高結晶性のリン酸カルシウム系粒子である。焼成リン酸カルシウム系粒子を有する布帛を用いることで、収量高く脂肪幹細胞を培養できる培養担体を実現できる傾向があり好ましい。
【0028】
リン酸カルシウム系粒子のアスペクト比は適宜調整できるが、1.5以下であるのが好ましく、1.4以下であるのがより好ましく、1.3以下であるのがより好ましく、1.2以下であるのがより好ましい。このようにアスペクト比が小さいリン酸カルシウム系粒子であると、熱可塑性樹脂含有繊維の表面に固着されているリン酸カルシウム系粒子の形状がある程度整うことによって、収量高く脂肪幹細胞を培養できる培養担体を実現できる傾向があり好ましい。特に、アスペクト比がより1に近い略球状のリン酸カルシウム系粒子であると、より収量高く脂肪幹細胞を培養できる培養担体を実現できる傾向があり好ましい。
【0029】
ここで、リン酸カルシウム系粒子のアスペクト比の計測方法は下記(測定方法1)に従うものとする。
(測定方法1)
熱可塑性樹脂含有繊維の表面に固着されているリン酸カルシウム系粒子を撮影したSEMによる画像において、熱可塑性樹脂含有繊維の繊維径方向の両端からはみ出していないような、略直上から撮影されているリン酸カルシウム系粒子を選択する。但し、輪郭がぼやけて見えるリン酸カルシウム系粒子、別のリン酸カルシウム系粒子に接近し過ぎていて境界が曖昧なリン酸カルシウム系粒子、一部がその他のリン酸カルシウム系粒子の影に隠れているリン酸カルシウム系粒子等を測定対象から除外する。
次いで、選択したリン酸カルシウム系粒子が写る画像上に、その両端が当該リン酸カルシウム系粒子の外周上に位置する2本の線分を引く。このとき、一方の線分はその長さが最大となるものとし、当該線分の中点で互いに直交するようにもう一方の線分を引く。
このようにして引かれた2本の線分のうち、短い方の線分の長さを短径、長い方の線分の長さを長径とし、長径/短径の比を求める。
更に、長径が大きなものから順に選んだ150個のリン酸カルシウム系粒子における当該長径/短径の平均値を求め、リン酸カルシウム系粒子のアスペクト比とした。なお、当該アスペクト比が1に近い程、リン酸カルシウム系粒子の立体形状は球状に近いと考えられる。
【0030】
リン酸カルシウム系粒子の平均粒径は、布帛を構成する熱可塑性樹脂含有繊維の表面に固着できるよう、0.01~50μmであるのが好ましく、0.03~20μmであるのが好ましく、0.04~10μmであるのが好ましい。
ここで、リン酸カルシウム系粒子の平均粒径の計測方法は、下記(測定方法2)に従うものとする。
(測定方法2)
測定方法(1)で作成したリン酸カルシウム系粒子の長径について、長径の大きなものから順に選んだ150個のリン酸カルシウム系粒子における当該長径の平均値を求め、リン酸カルシウム系粒子の平均粒径とした。
また、リン酸カルシウム系粒子の平均粒径が熱可塑性樹脂含有繊維の繊維径に対して、1/3を超えると、リン酸カルシウム系粒子が熱可塑性樹脂含有繊維の表面より脱落し易くなる。そのため、リン酸カルシウム系粒子の平均粒径が、熱可塑性樹脂含有繊維の繊維径に対して1/3以下の大きさであるのが好ましい。
【0031】
前述のリン酸カルシウム系粒子は、単独で使用することもでき、2種類以上のリン酸カルシウム系粒子を混合して使用することもできる。
また、前述のリン酸カルシウム系粒子は、同一布帛表面、同一繊維表面上に単独で存在することができ、2種類以上のリン酸カルシウム系粒子が存在することができる。
さらには、前述のリン酸カルシウム系粒子に機能性高分子や生理活性物質等の有機物質を修飾してもよい。なお、繊維の表面に前記リン酸カルシウム系粒子が固着している布帛を調製した後、当該布帛が有するリン酸カルシウム系粒子に、機能性高分子や生理活性物質等の有機物質を修飾させてもよい。
リン酸カルシウム系粒子は高い生体親和性を示すことから、リン酸カルシウム系粒子を含有する培養担体は脂肪組織や脂肪幹細胞を効率良く培養することができる。
【0032】
本発明の培養担体は、熱可塑性樹脂含有繊維の表面に存在する熱可塑性樹脂の熱融着によって、熱可塑性樹脂含有繊維の表面にリン酸カルシウム系粒子が固着している。このことは、熱可塑性樹脂含有繊維の表面とリン酸カルシウム系粒子とが接触していると共に、当該接触している部分に存在する熱可塑性樹脂が熱によって融解し、再度固化することによってリン酸カルシウム系粒子が固着されている状態を意味する。そして、リン酸カルシウム系粒子の多くは、その一部が熱可塑性樹脂含有繊維の表面に埋没する形で固着している。
【0033】
培養担体が備えるリン酸カルシウム系粒子の質量は、本発明の課題を解決可能な培養担体を提供できるよう適宜調整するが、0.1~20g/m2であることができ、0.3~10g/m2であることができ、0.6~8g/m2であることができる。なお、当該質量は下記(測定方法b-1)又は(測定方法b-2)に従うものとする。
(測定方法b-1)
リン酸カルシウム系粒子が固着している培養担体から、直径5cmの円形の試験片を4枚採取する。蛍光X線装置(株式会社リガク製、蛍光X線分析装置RIX1000)を用いて、カルシウム元素由来のX線強度を測定し、検量線法により各試験片に含まれているリン酸カルシウム系粒子の質量を算出し、その平均値を換算し培養担体が備えるリン酸カルシウム系粒子の質量(g/m2)を求める。
(測定方法b-2)
リン酸カルシウム系粒子が固着している布帛または培養担体から、直径5cmの円形の試験片を4枚採取する。各試験片を電気炉等にて十分焼成し、灰分として残ったリン酸カルシウム系粒子の質量を算出し、その平均値を換算し培養担体が備えるリン酸カルシウム系粒子の質量(g/m2)を求める。
【0034】
培養担体の目付や厚みは、本発明の課題を解決可能となるよう適宜調整する。目付は5~200g/m2であることができ、10~100g/m2であることができ、15~80g/m2であることができる。また、厚みは0.05~10mmであることができ、0.1~8mmであることができ、0.15~5mmであることができる。
【0035】
本発明にかかる培養担体は、見かけ密度が0.04g/cm3以上であることを特徴としているが、収量高く脂肪幹細胞が得られるよう培養担体の見かけ密度は、下限値や上限値を調製できる。下限値は0.04g/cm3であって、0.05g/cm3以上であることができ、0.07g/cm3以上であることができる。また、上限値は、0.13g/cm3以下であることができ、0.11g/cm3以下であることができる。
【0036】
本発明にかかる培養担体は、熱可塑性樹脂含有繊維の表面にリン酸カルシウム系粒子が固着してなる布帛単体のみで構成されていても、当該布帛にカバー材や支持体などを積層してなる態様を有していてもよい。カバー材や支持体は公知のものを採用でき、例えば、別に用意した布帛あるいはフィルム(多孔あるいは無孔)や発泡体(多孔あるいは無孔)などを採用できる。なお、例示したカバー材や支持体をただ重ね合わせてなる積層構造の培養担体であっても、バインダーやホットメルトウェブあるいは繊維接着によって、あるいは、ヒートシールや超音波溶着などの接着処理へ供することによって層間接着してなる積層構造の培養担体であっても良い。
【0037】
また、培養担体の外形は適宜調整でき、特に限定するものではないが、例えば、二次元的なシート形状(例えば、ロールに巻回可能な長尺状の形状、ウェルプレートの底面に敷くことができる形状(例えば、円形形状や四角形形状などの多角形形状)、三次元的なコルゲート形状やプリーツ形状、円筒形状などであることができる。なお、培養担体は切り抜き部、打ち抜き部、又は切れ込み部を有することができる。
【0038】
次いで、本発明に係る培養担体の製造方法について、一製造方法を例示して説明する。
本発明に係る培養担体の製造方法は、主に、布帛を構成する熱可塑性樹脂含有繊維の表面に、熱融着によりリン酸カルシウム系粒子を固着させる工程を含むものである。
熱可塑性樹脂含有繊維を含む繊維の表面に、その表面に含有されている熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱したリン酸カルシウム系粒子を付着させ、当該熱可塑性樹脂の熱融着により固着させる方法を採用できる。リン酸カルシウム系粒子の加熱温度は適宜調整できるが、熱可塑性樹脂を溶融できる温度であって、リン酸カルシウム系粒子ならびに布帛の他の構成成分を意図せず溶解あるいは変性させない温度に調整するのが好ましい。
【0039】
熱可塑性樹脂含有繊維を含む繊維の表面にリン酸カルシウム系粒子を付着させる方法は適宜選択でき、例えば、
(1)加熱したリン酸カルシウム系粒子を含有する気流を、熱可塑性樹脂含有繊維を含む布帛へ吹き付ける方法、
(2)加熱したリン酸カルシウム系粒子を、熱可塑性樹脂含有繊維を含む布帛へ落下させる方法、
(3)加熱したリン酸カルシウム系粒子と、熱可塑性樹脂含有繊維を含む布帛とを装入した耐熱性容器を振盪する方法、
(4)加熱したリン酸カルシウム系粒子中に、熱可塑性樹脂含有繊維を含む布帛を浸漬する方法、
(5)加熱したリン酸カルシウム系粒子の流動層中に、熱可塑性樹脂含有繊維を含む布帛を曝す方法、
(6)熱可塑性樹脂含有繊維を含む布帛へ、リン酸カルシウム系粒子のディスパージョンを付与し、その後、リン酸カルシウム系粒子を含んだ布帛を加熱する方法、
などの方法を採用できる。
【0040】
特に、加熱したリン酸カルシウム系粒子を含有する加熱した気流を、熱可塑性樹脂含有繊維を含む布帛へ吹き付ける方法を採用すると、リン酸カルシウム系粒子が冷却するのを防いで、熱可塑性樹脂含有繊維を含む繊維の表面にリン酸カルシウム系粒子を固着でき、好ましい。加熱した気流を得るには、例えば、気流発生手段(例えば、ブロアー又はコンプレッサーなど)によって気流を発生させ、次いで、公知の加熱手段によって前記気流を所定温度に加熱する方法を用いることができる。
【0041】
そして、加熱したリン酸カルシウム系粒子を得るには、例えば、粒子供給手段(例えば、ホッパー又は供給容器など、図示せず)の内外にヒーターを取り付けて、粒子供給手段内のリン酸カルシウム系粒子を所定温度に加熱する方法、あるいは、一般的に粉体の乾燥機として用いられる流動層型乾燥機などの装置を利用して、リン酸カルシウム系粒子を所定温度に加熱する方法などを用いることができる。
【0042】
更に、気流にリン酸カルシウム系粒子を供給して混合気流を調製する方法としては、例えば、粒子供給手段(例えば、ホッパー又は供給容器など)からリン酸カルシウム系粒子を気流中に一定量ずつ供給する方法、あるいは、流動層型乾燥機などの装置を利用して熱可塑性樹脂の融点以上の温度までリン酸カルシウム系粒子を加熱した後、加熱されたリン酸カルシウム系粒子が分散混合されてなる混合気体を調製する方法を採用できる。
【0043】
熱可塑性樹脂含有繊維の表面に加熱されたリン酸カルシウム系粒子が付着している布帛を、例えば、冷風を作用させる、低温空間に曝す、低温の部材と接触させるなどして、熱可塑性樹脂の融点より低い温度にできる冷却手段へ供することで冷却しても良い。また、熱可塑性樹脂の融点が室温(例えば、25℃)よりも高い場合、当該布帛を室温下に静置することで冷却しても良い。特に、静置した状態で冷却を行うと、冷却中に熱可塑性樹脂が流動することや熱可塑性樹脂含有繊維の形状が意図せず変化することを防ぐことができるため、好ましい。このように冷却を行うことで、熱可塑性樹脂含有繊維の表面にリン酸カルシウム系粒子を固着できる。
【0044】
また、布帛の空隙に存在しているなど、熱可塑性樹脂含有繊維の表面に固着していないリン酸カルシウム系粒子を、例えば、振動により落下させる、気流で吹き飛ばす、液体で洗浄するなどして除去しても良い。
【0045】
見かけ密度が0.04g/cm3以上である培養担体を得られるよう、本発明にかかる培養担体を調製するため使用する布帛、あるいは、リン酸カルシウム系粒子が固着した布帛の厚みを調整してもよい。厚みを調整する方法は適宜選択でき、乾燥機・恒温機などを用いて熱を加える方法、カレンダー加工機などを用いて圧力を加える方法、あるいは、熱および圧力を同時に加える方法などを挙げることができる、
【0046】
上述の工程を経て調製された、熱可塑性樹脂含有繊維の表面にリン酸カルシウム系粒子が固着してなる布帛はそのまま培養担体として使用できるが、必要であれば、当該布帛をカバー材や支持体との積層工程へ供して培養担体を調製しても良い。また、必要であれば、当該布帛あるいは培養担体を望む外形となるよう加工する工程へ供しても良い。
【0047】
本発明の培養担体は、培養担体上で脂肪組織を培養することで、
培養担体上に増殖した脂肪幹細胞、
前記脂肪組織から前記培養担体内へ遊走し前記培養担体内で増殖した脂肪幹細胞、又は、培養担体上に増殖した脂肪幹細胞および培養担体内で増殖した脂肪幹細胞
を得るために使用できる。
【0048】
本発明の培養担体を用いて培養する脂肪組織は、ヒトから採取した脂肪組織であることができ、ヒト以外の動物(特には哺乳動物)から採取した脂肪組織であることができる。なお、脂肪組織は臓器の周囲や皮下などから採取した脂肪組織であることができる。
【0049】
本発明の培養担体上で脂肪組織を培養すると、脂肪組織を構成する細胞の一部は、培養担体の表面上で増殖して特に脂肪幹細胞を多く含む細胞集団となり、別の細胞は培養担体内へ遊走し、培養担体の内部で増殖して特に脂肪幹細胞を多く含む細胞集団となる。培養担体上の脂肪組織の培養は、通常の培養条件で実施することができ、例えば、幹細胞培養用培地や動物細胞培養用培地などの培地を用いて培養を行うことができ、血清や抗生物質などの添加剤を用いて培養しても良い。培養容器については、本発明にかかる培養担体が入る形状であれば問題なく用いることができ、シャーレやフラスコ、ボトルやバッグ型の容器やウェルプレートなどであることができる。
【0050】
本発明の培養担体を用いることで、
表面に熱可塑性樹脂を含有する繊維を含んだ布帛と、リン酸カルシウム系粒子とを有しており、前記熱可塑性樹脂の熱融着によって前記繊維の表面に前記リン酸カルシウム系粒子が固着しており、培養担体の見かけ密度が0.04g/cm3以上である、培養担体の使用であって、
前記培養担体上で脂肪組織を培養することで、前記脂肪組織から前記培養担体上に増殖した脂肪幹細胞および/または前記培養担体内へ遊走し前記培養担体内で増殖した脂肪幹細胞を得るための前記培養担体の使用;並びに
培養担体上で脂肪組織を培養することで、前記脂肪組織から前記培養担体上に増殖した脂肪幹細胞および/または前記培養担体内へ遊走し前記培養担体内で増殖した脂肪幹細胞を得る方法であって、
前記培養担体が、表面に熱可塑性樹脂を含有する繊維を含んだ布帛と、リン酸カルシウム系粒子とを有しており、前記熱可塑性樹脂の熱融着によって前記繊維の表面に前記リン酸カルシウム系粒子が固着しており、培養担体の見かけ密度が0.04g/cm3以上である、前記方法;
を提供できる。
【0051】
前記使用および前記方法における「培養担体」、特には、「表面に熱可塑性樹脂を含有する繊維を含んだ布帛」、「リン酸カルシウム系粒子」、「熱可塑性樹脂の表面におけるリン酸カルシウム系粒子の固着」、「培養担体の見かけ密度」;あるいは「培養担体上での脂肪組織の培養」については、本発明の培養担体における先述の各説明をそのまま適用することができる。
【実施例0052】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0053】
(不織布の調製方法)
芯鞘型複合繊維(芯部:ポリプロピレン(融点:165℃)、鞘部:ポリエチレン(融点:130℃)、繊維の断面形状:円形、繊度:6.6dtex、繊維長:64mm)75質量%と、別の芯鞘型複合繊維(芯部:ポリプロピレン(融点:165℃)、鞘部:ポリエチレン(融点:130℃)、繊維の断面形状:円形、繊度:1.7dtex、繊維長:38mm)25質量%とを絡合してなる、不織布(目付:30.0g/m2、厚み:0.74mm)を調製した。
【0054】
(比較例1)
上述のようにして調製した不織布を、カレンダー加工機(由利ロール社製)へ供し厚みを調整することで、培養担体を調製した。
【0055】
(実施例1)
略球状の焼成ハイドロキシアパタイト粒子(ソフセラ社製、品名:micro-SHAp、品番:IHMO-100P000、平均粒径:4.0μm、アスペクト比:1、以降HAPと略す)を220℃に加熱すると共に、158℃に加熱した気流と共に、不織布の両主面へ吹き付けた。このとき、HAPを含んだ気流が、不織布の主面を5m/minのテンポで通過するように調整した。
そして、室温まで放冷した後、不織布の表面に固着されていないHAPをエアーにより除去し、カレンダー加工機(由利ロール社製)へ供し厚みを調整することで、培養担体を調製した。
【0056】
(実施例2)
テンポを速めたこと以外は、実施例1と同様にして、培養担体を調製した。
このようにして調製した各培養担体の物性と、次に説明する各培養担体における脂肪幹細胞の収量の評価結果をまとめ、表1に記載した。
【0057】
(培養担体による脂肪幹細胞の収量の評価方法)
患者の腹部脂肪組織から一辺2mm角の立方体形状のヒト脂肪組織を採取し、試料とした。次いで、当該試料を一辺10mm角の正方形形状に切り出した培養担体上に乗せた。
そして、2%ウシ胎児血清(FBS)を添加したNutriStem(登録商法)培地(バイオロジカルインダストリーズ社)を満たしたシャーレへ、培養担体ごと試料を収め、培養担体上で試料を2週間培養した。
【0058】
2週間経過後、培地から取り出した培養担体上に存在する試料を剥がし、残った培養担体の表面上および内部に存在する脂肪幹細胞の量を測定した。なお、脂肪幹細胞の量は、Cell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所、CK04)を用いたWST-8assayにより行った。
具体的には、WST-8assayにより、脂肪組織から遊走・増殖した細胞の代謝により培地中へ排出される色素の吸光度を測定することで、脂肪幹細胞の呼吸量を算出し、これを「培養担体で培養された脂肪幹細胞の量」とみなした。
結果を表1に示す。そして、このようにして求めた「培養担体で培養された脂肪幹細胞の量」が多かった培養担体であるほど、より収量(培養担体に増殖する脂肪幹細胞の量)を高くできる培養担体であると評価した。
【0059】
【0060】
(実施例3~6)
カレンダー加工機(由利ロール社製)による厚みの調整程度を変更したこと以外は、実施例2と同様にして、培養担体を調製した。
そして、比較例1で調製した培養担体、および、実施例3~6で調製した各培養担体を用いて、別の患者の腹部脂肪組織から採取した試料を用いたこと以外は、(培養担体による脂肪幹細胞の収量の評価方法)に記載した方法と同様にして、「培養担体で培養された脂肪幹細胞の量」を求めた。
このようにして調製した各培養担体の物性と、各培養担体における脂肪幹細胞の収量の評価結果をまとめ、表2に記載した。
【0061】
【0062】
以上の結果から、
・表面に熱可塑性樹脂を含有する繊維を含んだ布帛と、リン酸カルシウム系粒子とを有しており、熱可塑性樹脂の熱融着によって繊維の表面に前記リン酸カルシウム系粒子が固着しているという構成、
および、
・培養担体の見かけ密度が0.04g/cm3以上であるという構成、
を満足する培養担体によって、収量高く脂肪幹細胞を得ることができた。
【0063】
更に、実施例3~6を比較した結果から、培養担体の見かけ密度が0.04~0.13g/cm3の範囲であるとき、より収量高く脂肪幹細胞を得られることが判明した。特に、培養担体の見かけ密度が0.07~0.13g/cm3の間(実施例4~6)で、脂肪幹細胞の収量が特異的に向上していたことから、培養担体の見かけ密度は0.07g/cm3以上0.13g/cm3以下であるとき、更に収量高く脂肪幹細胞を得られることが判明した。
【0064】
加えて、本発明にかかる培養担体を用いることで、多量のリン酸カルシウム系粒子が混ざり込むのが防止されていると共に、バインダーにより汚染されていない脂肪幹細胞を、収量高く得ることができた。
本発明の培養担体は、培養担体上で脂肪組織を培養することで、培養担体上に増殖した脂肪幹細胞、若しくは、前記脂肪組織から前記培養担体内へ遊走し前記培養担体内で増殖した脂肪幹細胞、又は、培養担体上に増殖した脂肪幹細胞および培養担体内で増殖した脂肪幹細胞を得るために使用できる。