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  • 特開-水中ポンプの連結機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190806
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】水中ポンプの連結機構
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/08 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
F04D13/08 S
F04D13/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099251
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】野田 麻美子
(72)【発明者】
【氏名】楯石 修
(72)【発明者】
【氏名】真武 幸三
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB13
3H130AB23
3H130AB60
3H130AC06
3H130AC10
3H130BA42D
3H130BA46D
3H130BA98D
3H130BA98F
3H130DA02X
3H130DB01Z
3H130DC19X
3H130DD01Z
3H130DE01Z
3H130EB01D
3H130EB01F
(57)【要約】
【課題】安価な構成で、効率的に異物を排出することが可能な水中ポンプの連結機構を提供する。
【解決手段】連結機構は、ポンプ部1を、該ポンプ部1の下方に位置する電動機部2に連結させる水中ポンプの連結機構5である。この連結機構5は、電動機部2の上部に設けられ、電動機回転軸4が貫通する接続ブラケット6と、電動機回転軸4に固定されたサンドスリンガ14と、を備える。接続ブラケット6は、ポンプ側フランジ18と接続される電動機フランジ面8aを有する電動機側フランジ8を有している。この電動機側フランジ8は、ポンプ側フランジ18の内径よりも小さく、かつサンドスリンガ14の外径よりも大きな外径と、電動機フランジ面8aよりも下方に位置する底面20bを有する環状溝22と、環状溝20から電動機側フランジ8の外周面まで延びる複数の排出溝22と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを有するポンプ部を、前記ポンプ部の下方に位置し、前記ポンプ部を駆動する電動機を有する電動機部に連結させる水中ポンプの連結機構であって、
前記電動機部の上部に設けられ、前記電動機の回転軸が貫通する接続ブラケットと、
前記電動機の回転軸に固定されたサンドスリンガと、を備え、
前記接続ブラケットは、前記ポンプ部の下端に設けられたポンプ側フランジと接続される電動機フランジ面を有する電動機側フランジを有しており、
前記電動機側フランジは、
前記ポンプ側フランジの内径よりも小さく、かつ前記サンドスリンガの外径よりも大きな外径と、前記電動機フランジ面よりも下方に位置する底面を有する環状溝と、
前記電動機フランジ面に形成され、前記環状溝から前記電動機側フランジの外周面まで延びる複数の排出溝と、を備える、水中ポンプの連結機構。
【請求項2】
前記サンドスリンガの少なくとも一部が前記環状溝内に位置する、請求項1に記載の水中ポンプの連結機構。
【請求項3】
前記サンドスリンガは、その外周面に形成された複数の突起を有する、請求項1または2に記載の水中ポンプの連結機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ部と、該ポンプ部の下方に配置された電動機部とを連結する水中ポンプの連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水などをくみ上げる水中ポンプとして、羽根車などのロータを有するポンプ部と、該ポンプ部の下方に配置され、ポンプ部を駆動する電動機を有する電動機部と、ポンプ部を電動機部に連結する連結機構と、を備えた立形水中ポンプ(以下、単に「水中ポンプ」と称する)が知られている。この種の水中ポンプでは、ポンプ部は、連結機構の接続ブラケットを介して電動機部のフレームと連結される。電動機の回転軸は、鉛直方向に接続ブラケットを貫通して延びており、鉛直方向に電動機部に向けて延びるポンプの回転軸とカップリングを介して連結される。水中ポンプの連結機構は、一般に、接続ブラケットと電動機の回転軸との間に配置され、これら接続ブラケットと電動機の回転軸との間の隙間を封止する軸封装置(例えば、オイルシール)を有している。軸封装置によって、井戸水などの取扱液が電動機内に浸入することが防止されるとともに、電動機の封入液が該電動機の外部に漏洩することが防止される。
【0003】
水中ポンプを駆動すると、井戸水などの取扱液に含まれる土砂などの異物が連結機構の軸封装置に到達することがある。この異物は、軸封装置の摩耗を引き起こし、水中ポンプを比較的短期間で故障させることがある。そのため、水中ポンプの連結機構は、電動機の回転軸に固定され、該回転軸と一体に回転することで異物が軸封装置に到達することを防止するサンドスリンガをさらに備えている。
【0004】
サンドスリンガが異物を水中ポンプから排出しやすくするために、特許文献1に記載の水中ポンプは、ポンプ部の下端に形成されたポンプ側フランジと接続される接続ブラケットのフランジ面に形成された砂逃げ溝(排出溝)を有している。特許文献2に記載の水中ポンプの電動機では、接続ブラケットのフランジを2段構造とし、これらフランジ間に開口部を設けている。回転するサンドスリンガによってフランジの径方向外側に移動された異物は開口部から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59-201648号公報
【特許文献2】実開昭63-21458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、砂逃げ溝が接続ブラケットのフランジ面に形成されているため、サンドスリンガの外周面がポンプ側フランジの内周面に対向してしまう。そのため、サンドスリンガによって外周方向に移動された水流および異物がポンプ側フランジに衝突して、サンドスリンガの回転による遠心力が作用した水流を上手に活用できず、その結果、異物の排出効果が低減してしまう。すなわち、特許文献1に記載の構造は、サンドスリンガによる異物の排出効果が小さく、砂逃げ溝が設けられていないフランジ部分では異物が堆積し易いという欠点を有している。
【0007】
特許文献2に記載の構造では、高い異物の排出効果が期待できるが、水中ポンプの製造コストが高くなり、さらに、水中ポンプの鉛直方向の長さが大きくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、安価な構成で、効率的に異物を排出することが可能な水中ポンプの連結機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、ロータを有するポンプ部を、前記ポンプ部の下方に位置し、前記ポンプ部を駆動する電動機を有する電動機部に連結させる水中ポンプの連結機構であって、前記電動機部の上部に設けられ、前記電動機の回転軸が貫通する接続ブラケットと、前記電動機の回転軸に固定されたサンドスリンガと、を備え、前記接続ブラケットは、前記ポンプ部の下端に設けられたポンプ側フランジと接続される電動機フランジ面を有する電動機側フランジを有しており、前記電動機側フランジは、前記ポンプ側フランジの内径よりも小さく、かつ前記サンドスリンガの外径よりも大きな外径と、前記電動機フランジ面よりも下方に位置する底面を有する環状溝と、前記電動機フランジ面に形成され、前記環状溝から前記電動機側フランジの外周面まで延びる複数の排出溝と、を備える、水中ポンプの連結機構が提供される。
【0010】
一態様では、前記サンドスリンガの少なくとも一部が前記環状溝内に位置する。
一態様では、前記サンドスリンガは、その外周面に形成された複数の突起を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環状溝および排出溝を電動機側フランジに形成するだけで、連結機構のサンドストリンガから径方向に延びる異物の排出路が形成される。したがって、回転するサンドスリンガによって発生される水流遠心力によって、効果的に異物を排出することが可能な連結機構を安価な構成で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る立形水中ポンプのポンプ部と電動機部との接続構造を示す概略断面図である。
図2図2は、図1のA-A線断面図である。
図3図3(a)乃至図3(c)は、サンドスリンガの外周面に設けられた突起の水平断面形状の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る立形水中ポンプのポンプ部と電動機部との接続構造を示す概略断面図であり、図2は、図1のA-A線断面図である。図1は、図2に示すX-O-Y線に沿った断面図に相当する。以下では、立形水中ポンプを、単に「水中ポンプ」と称する。
【0014】
図1に示すように、水中ポンプは、羽根車などのロータ(図示せず)を有するポンプ部1と、該ポンプ部1の下部に配置された電動機部2と、電動機部2をポンプ部1に連結する連結部(連結機構)5と、を備える。ポンプ部1、連結部5、および電動機部2は、上からこの順に鉛直方向に配列されており、連結部5は、電動機部2の上部に設けられている。具体的には、連結部5は、電動機部2の上端に図示しないボルトなどの締結具を用いて固定されている。
【0015】
連結機構5は、電動機部2のフレーム2aの上端に固定された接続ブラケット6を有しており、電動機2の回転軸4は、接続ブラケット6を貫通して、鉛直方向上方に(言い換えれば、ポンプ部1に向けて)延びている。電動機回転軸4は、フレーム2a内に配置された少なくとも1つの軸受15によって回転自在に支持されている。
【0016】
電動機回転軸4を回転自在に支持する軸受15は、軸受ブラケット16に支持されている。軸受ブラケット16は、接続ブラケット6と別体であってもよいし、接続ブラケット6と一体に構成されていてもよい。軸受ブラケット16を接続ブラケット6と一体に構成する場合、水中ポンプの製造コストを低減することができる。
【0017】
ポンプ部1は、羽根車などのロータ(図示せず)が固定される回転軸7を有しており、この回転軸7は、鉛直方向下方に(言い換えれば、電動機部2に向けて)延びている。電動機回転軸4は、ポンプ回転軸7とカップリング10を介して連結され、ポンプ回転軸7は、電動機回転軸4の回転に伴って回転する。
【0018】
図1に示すように、水中ポンプの連結機構5は、接続ブラケット6と電動機回転軸4との間に配置された軸封装置12を有している。軸封装置12は、井戸水などの取扱液が電動機2内に浸入することを防止するとともに、電動機2の封入液が該電動機2の外部に漏洩することを防止する装置である。軸封装置12の例としては、オイルシールが挙げられる。
【0019】
連結機構5は、電動機回転軸4に固定され、電動機回転軸4とともに回転可能なサンドスリンガ14をさらに有している。サンドスリンガ14は、軸封装置12の直上方に位置する。本実施形態では、サンドスリンガ14は、軸封装置12の上端とわずかな隙間をあけて対向している。電動機回転軸4とともに回転するサンドスリンガ14によって、連結機構5の径方向外側に向かう取扱液の流れが形成され、該取扱液の流れによって、連結機構5に侵入してきた土砂などの異物が軸封装置12に到達することが防止される。
【0020】
図1に示す接続ブラケット6は、ポンプ部1の下端に設けられたポンプ側フランジ18と接続される電動機側フランジ8を有している。電動機側フランジ8の上面がポンプ側フランジ18と接続される電動機フランジ面8aとして機能する。本実施形態では、電動機側フランジ8は、ポンプ側フランジ18の位置決めを容易にする位置決め突起8bを有している。図2に示すように、位置決め突起8bは、電動機フランジ面8aから上方に延びており、後述する排出溝を除いて、電動機フランジ面8a上で環状に形成される。一実施形態では、位置決め突起8bを省略してもよい。
【0021】
ポンプ側フランジ18を、図示しないボルトなどの締結具を用いて電動機フランジ面8aに固定すると、接続ブラケット6の内部に、接続ブラケット6、ポンプ側フランジ18、サンドスリンガ14、および軸封装置12によって概略円筒形状に形成される空間Sが形成される。空間Sは、「砂溜まり」とも称される空間であり、特に、水中ポンプの停止時に、土砂などの異物が堆積しやすい空間である。異物がサンドスリンガ14を突破して軸封装置12に到達すると、軸封装置12が摩耗して、水中ポンプの寿命を縮めてしまう。そこで、本実施形態では、空間Sから水中ポンプの外部に異物を効果的に排出するために、接続ブラケット6は、以下に説明する環状溝と排出溝との組み合わせを有する。
【0022】
接続ブラケット6の電動機側フランジ8は、電動機フランジ面8aに形成された環状溝20を有する。環状溝20は、ポンプ側フランジ18の内周面18aの直径よりも小さく、かつサンドスリンガ14の外径よりも大きい直径を有する外周面20aと、電動機フランジ面8aよりも下方に位置する底面20bと、を有する。本実施形態では、環状溝20の外周面20aの直径(すなわち、環状溝20の外径)は、位置決め突起8bの内周面の直径(すなわち、位置決め突起8bの内径)に一致する。また、本実施形態では、環状溝20の内周面は、電動機側フランジ8に形成された、軸封装置12を支持する支持突起8cの外周面に一致し、電動機回転軸4に固定されたサンドスリンガ14の下端の一部が環状溝20内に位置する。
【0023】
さらに、接続ブラケット6の電動機側フランジ8は、電動機フランジ面8aに形成された複数の排出溝22を有する。各排出溝22の内端は、上述した環状溝20に接続され、各排出溝22の外端は、電動機側フランジ8の外周面に開口する。すなわち、排出溝22は、環状溝20から電動機側フランジ8の外周面まで延びる。なお、本実施形態では、排出溝22は、環状溝20の底面20bよりも下方に位置する底面を有している。一実施形態では、排出溝22は、環状溝20の底面20bと同一平面に位置する底面を有していてもよい。
【0024】
このような構成により、サンドストリンガ14から径方向に延びる異物の排出路が形成される。この排出路は、サンドスリンガ14から水平方向にほぼ直線状に水中ポンプの外部まで延びており、したがって、回転するサンドスリンガによって発生される遠心力が作用した水流を妨害する構成要素がほぼ存在しない。故に、環状溝20と排出溝22を電動機側フランジ8に形成するだけの簡易かつ安価な構成で、空間Sに侵入した異物を効果的に水中ポンプの外部に排出することができる。
【0025】
図1および図2に示すように、サンドスリンガ14の外周面に複数の突起14aを設けてもよい。これら複数の突起14aは、サンドスリンガ14の周方向に等間隔で配列されるのが好ましい。
【0026】
図1に示す突起14aは、サンドスリンガ14の上端から下端まで直線状に延びているが、本実施形態はこの例に限定されない。例えば、突起14aは、排出路に対向するサンドスリンガ14の外周面の一部にのみ形成されてもよい。突起14aの水平断面形状も任意である。例えば、突起14aは、三角形の水平断面形状(図3(a)参照)を有していてもよいし、円弧状の外周面を有する水平断面形状(図3(b)参照)を有していてもよい。あるいは、突起14aは、電動機回転軸4の回転方向に湾曲して延びる水平断面形状(図3(c)参照)を有していてもよい。
【0027】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0028】
1 ポンプ部
2 電動機部
4 (電動機)回転軸
5 連結部(連結機構)
6 接続ブラケット
7 (ポンプ)回転軸
8 電動機側フランジ
10 カップリング
12 軸封装置
14 サンドスリンガ
15 軸受
16 軸受ブラケット
18 ポンプ側フランジ
20 環状溝
22 排出溝
図1
図2
図3