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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190859
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】研磨装置及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/06 20060101AFI20221220BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221220BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20221220BHJP
【FI】
B24B55/06
H01L21/304 621D
H01L21/304 622P
H01L21/304 644Z
B24B37/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099333
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】大日野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄貴
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
3C047FF08
3C047FF19
3C047HH15
3C158AA07
3C158AC05
3C158CB06
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED00
5F057AA21
5F057CA14
5F057CA32
5F057DA03
5F057FA13
5F057FA36
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157BA08
5F157BA13
5F157BA31
5F157BB22
5F157BB37
5F157BB45
5F157CC11
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】被加工物を研磨することで生じチャックテーブルの外周部に固着した研磨屑を除去する。
【解決手段】被加工物を研磨する研磨装置であって、保持面を有し、該保持面に載せられた該被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された該被加工物にスラリーを供給しながら該被加工物を研磨パッドで研磨する研磨ユニットと、該チャックテーブルの該保持面に液体と気体の混合流体を噴射する二流体ノズルと、を備え、該保持面の外周部に堆積した研磨屑に該二流体ノズルから該混合流体を噴射して該研磨屑を該保持面から除去する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研磨する研磨装置であって、
保持面を有し、該保持面に載せられた該被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルで保持された該被加工物にスラリーを供給しながら該被加工物を研磨パッドで研磨する研磨ユニットと、
該チャックテーブルの該保持面に液体と気体の混合流体を噴射する二流体ノズルと、
を備え、
該保持面の外周部に堆積した研磨屑に該二流体ノズルから該混合流体を噴射して該研磨屑を該保持面から除去することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
保持面に載せられた被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された該被加工物にスラリーを供給しながら該被加工物を研磨パッドで研磨する研磨ユニットと、を備えた研磨装置を用いた研磨方法であって、
該被加工物を該保持面に載せ該チャックテーブルで保持する保持ステップと、
該チャックテーブルで保持された該被加工物にスラリーを供給しながら該被加工物を該研磨パッドで研磨する研磨ステップと、
該研磨ステップで研磨された該被加工物を該チャックテーブルから搬出する搬出ステップと、
該チャックテーブルの該保持面の外周部に堆積した研磨屑に液体と気体の混合流体を噴射し、該研磨屑を除去する研磨屑除去ステップと、
を備えることを特徴とする研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を研磨する研磨装置、及び該被加工物を研磨装置で研磨する研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップの製造工程では、まず、半導体ウエーハの表面にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の複数のデバイスを形成する。次に、該ウエーハを裏面側から研削して所定の厚みに薄化し、該ウエーハをデバイス毎に分割して個々のデバイスチップを形成する。
【0003】
ウエーハの裏面側を研削すると、被研削面には研削痕として微小な凹凸形状が形成される。そのため、ウエーハを分割して形成されるデバイスチップにも、微小な凹凸形状が残る。この微小な凹凸形状は、デバイスチップの抗折強度を低下させる要因となる。そこで、研削を実施した後、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等により該ウエーハの裏面を研磨することが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
ウエーハ等の被加工物を研磨する研磨装置は、該被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を研磨する研磨パッドが装着された研磨ユニットと、を備える。研磨装置を使用して被加工物を研磨すると、微小な凹凸が除去されて被加工物が鏡面に加工される。
【0005】
研磨装置では、被加工物の研磨時にはスラリーが研磨液として該被加工物の被研磨面に供給される。スラリーは、例えば、砥粒が分散された薬液である。スラリーは、化学的及び機械的に作用して研磨に寄与するだけでなく、研磨により生じた研磨屑の排出にも寄与する。スラリーは、研磨パッドの中心に設けられた供給路から供給され、研磨パッドと被加工物の間を進行して被加工物の外周に到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-99265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被加工物の外周に到達した研磨屑を含むスラリーは、被加工物の被研磨面から落ちてチャックテーブルの保持面の外周部に堆積し、固着する。そして、被加工物の研磨が完了した後に該被加工物をチャックテーブル上から搬出すると、該被加工物が存在していた領域を囲繞するように該チャックテーブルの上面に固着した研磨屑が残る。
【0008】
研磨パットで次に研磨する被加工物をチャックテーブル上に搬入する際、この固着した研磨屑が該チャックテーブル及び該被加工物の間に入り込む等して、搬入の妨げとなることがある。例えば、固着した研磨屑を除去するためにチャックテーブルの保持面の外周部に洗浄水を供給することが考えられるが、固着した研磨屑を除去するのは容易ではない。
【0009】
また、被加工物の外周部に到達した研磨屑を含むスラリーが固着する前に該スラリーを洗い流すために、研磨パッドで被加工物が研磨されている際、チャックテーブルの保持面の外周部に十分な量の洗浄液を供給することが考えられる。しかしながら、研磨パッドと被加工物の間に供給されているスラリーに該洗浄液が混入してスラリーが薄まると、研磨工程が適切に実施されないおそれがある。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チャックテーブルの外周部に固着した研磨屑を除去できる研磨装置及び研磨方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によると、被加工物を研磨する研磨装置であって、保持面を有し、該保持面に載せられた該被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された該被加工物にスラリーを供給しながら該被加工物を研磨パッドで研磨する研磨ユニットと、該チャックテーブルの該保持面に液体と気体の混合流体を噴射する二流体ノズルと、を備え、該保持面の外周部に堆積した研磨屑に該二流体ノズルから該混合流体を噴射して該研磨屑を該保持面から除去することを特徴とする研磨装置が提供される。
【0012】
本発明の他の一態様によると、保持面に載せられた被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された該被加工物にスラリーを供給しながら該被加工物を研磨パッドで研磨する研磨ユニットと、を備えた研磨装置を用いた研磨方法であって、該被加工物を該保持面に載せ該チャックテーブルで保持する保持ステップと、該チャックテーブルで保持された該被加工物にスラリーを供給しながら該被加工物を該研磨パッドで研磨する研磨ステップと、該研磨ステップで研磨された該被加工物を該チャックテーブルから搬出する搬出ステップと、該チャックテーブルの該保持面の外周部に堆積した研磨屑に液体と気体の混合流体を噴射し、該研磨屑を除去する研磨屑除去ステップと、を備えることを特徴とする研磨方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る研磨装置及び研磨方法では、被加工物にスラリーを供給しながら該被加工物を研磨パッドで研磨する。被加工物を研磨する際に生じた研磨屑の一部は、チャックテーブルの保持面の外周部に堆積して固着する。ここで、保持面の外周部に固着した研磨屑に液体と気体の混合流体を噴射すると、固着した研磨屑に水分が戻り軟化するとともに混合流体の勢いで該研削屑が飛ばされるため、研磨屑を比較的容易に保持面から除去できる。保持面から研磨屑を除去できると、新たな被加工物を該保持面に支障なく載せられる。
【0014】
したがって、本発明の一態様によると、チャックテーブルの外周部に固着した研磨屑を除去できる研磨装置及び研磨方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】研磨装置を模式的に示す斜視図である。
図2】研磨ホイールを模式的に示す斜視図である。
図3】保護部材を被加工物の表面に貼着する様子を模式的に示す斜視図である。
図4】被加工物をチャックテーブルの保持面に載せる様子を模式的に示す斜視図である。
図5】被加工物を研磨する様子を模式的に示す斜視図である。
図6】研磨された被加工物をチャックテーブルの保持面から搬出する様子を模式的に示す斜視図である。
図7図7(A)は、チャックテーブルの保持面の外周部を洗浄する様子を模式的に示す斜視図であり、図7(B)は、保持面が洗浄されたチャックテーブルを模式的に示す斜視図である。
図8図8(A)は、被加工物の研磨方法の一例の各ステップのフローを示すフローチャートであり、図8(B)は、被加工物の研磨方法の他の一例の各ステップのフローを示すフローチャートであり、図8(C)は、被加工物の研磨方法のさらに他の一例の各ステップのフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係る研磨装置及び研磨方法で研磨される被加工物について説明する。図3には、半導体ウエーハ等の被加工物1を模式的に示す斜視図が含まれている。
【0017】
被加工物1は、例えば、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)、若しくは、その他の半導体等の材料で形成されたウエーハ、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板である。被加工物1の表面1aは格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)5により複数の領域に区画されており、該複数の領域のそれぞれにはICやLSI等のデバイス7が形成されている。最終的に、被加工物1が分割予定ライン5に沿って分割されることで、個々のデバイスチップが形成される。
【0018】
被加工物1は、裏面1bが研削されることで薄化される。研削された被加工物1の裏面1bには、研削痕と呼ばれる微小な凹凸形状が形成される。このまま被加工物1が分割予定ライン5に沿って分割されてデバイスチップが製造されると、該デバイスチップに微小な凹凸形状が残り、該デバイスチップの抗折強度を低下させる要因となる。そこで、裏面1bが研削された被加工物1の裏面1b側を研磨し、該裏面1bの微小な凹凸を除去して平坦化する。すると、デバイスチップに該微小な凹凸形状が残らない。
【0019】
被加工物1の裏面1b側を研磨する際、該被加工物1の表面1a側を保護するために保護テープ3が予め貼着される。保護テープ3は、被加工物1の裏面1bに対する研磨や被加工物1の搬送等の際に加わる衝撃から被加工物1の表面1a側を保護し、デバイス7に損傷が生じるのを防止する。
【0020】
保護テープ3は、可撓性を有するフィルム状の基材と、該基材の一方の面に形成された糊層(接着剤層)と、を有する。例えば、基材にはポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、または、ポリスチレン等が用いられる。また、糊層(接着剤層)には、例えば、シリコーンゴム、アクリル系材料、エポキシ系材料等が用いられる。
【0021】
次に、被加工物1の裏面1bを被研磨面として研磨する本実施形態に係る研磨装置について説明する。図1は、研磨装置2を模式的に示す斜視図である。研磨装置2は、各構成を支持する基台4を有する。基台4の前側部分の上面には、カセット載置台6a,6bが設けられている。
【0022】
カセット載置台6a上には、例えば、研磨前の被加工物1を収容したカセット8aが載置される。カセット載置台6bには、例えば、研磨後の被加工物1を収容するためのカセット8bが載置される。基台4上には、カセット載置台6a,6bに隣接して被加工物1を搬送する被加工物搬送ロボット10が据え付けられている。
【0023】
基台4の前側部分の上面には更に、複数の位置決めピンで被加工物1を挟んで該被加工物1の位置を調整する位置決めテーブル12と、被加工物1をチャックテーブル20に載せる被加工物搬入機構(ローディングアーム)14と、が配設されている。さらに、被加工物1をチャックテーブル20から搬出する被加工物搬出機構(アンローディングアーム)16と、研磨された被加工物1を洗浄及びスピン乾燥するスピンナ洗浄装置52と、が配設されている。
【0024】
基台4の後側部分の上面には、開口4aが設けられている。該開口4a内には、被加工物1を吸引保持するチャックテーブル20が上面に載るX軸移動テーブル18が備えられている。X軸移動テーブル18は、図示しないX軸方向移動機構によりX軸方向に移動可能である。X軸移動テーブル18は、X軸方向移動機構の機能により、チャックテーブル20上で被加工物1が着脱される搬出入領域22と、該チャックテーブル20上に吸引保持される被加工物1が研磨加工される加工領域24と、に位置付けられる。
【0025】
チャックテーブル20の上面には、被加工物1と同等の径の円板状の多孔質部材が露出している。チャックテーブル20の上面は、被加工物1を保持する保持面20aとなる。チャックテーブル20は、一端が該多孔質部材に通じ他端が図示しない吸引源に接続された吸引路(不図示)を内部に備える。該吸引源を作動させると、保持面20a上に載せられた被加工物1に負圧が作用して、該被加工物1がチャックテーブル20に吸引保持される。また、チャックテーブル20は、保持面20aに垂直な軸の周りに回転できる。
【0026】
加工領域24の上方には、被加工物1を研磨する研磨ユニット26が配設される。研磨装置2の基台4の後方端部には支持部28が立設されており、この支持部28により研磨ユニット26が支持されている。支持部28の前面には、Z軸方向に伸長する一対のZ軸ガイドレール30が設けられ、それぞれのZ軸ガイドレール30には、Z軸移動プレート32がスライド可能に取り付けられている。
【0027】
Z軸移動プレート32の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール30に平行なZ軸ボールねじ34が螺合されている。Z軸ボールねじ34の一端部には、Z軸パルスモータ36が連結されている。Z軸パルスモータ36でZ軸ボールねじ34を回転させれば、Z軸移動プレート32は、Z軸ガイドレール30に沿ってZ軸方向に移動する。Z軸移動プレート32の前面側下部には、研磨ユニット26が固定されている。Z軸移動プレート32をZ軸方向に移動させれば、研磨ユニット26をZ軸方向に移動できる。
【0028】
研磨ユニット26は、基端側に連結されたモータにより回転するスピンドル40と、該スピンドル40の先端側に配設されたマウント42に固定具46により固定された研磨ホイール44と、を備える。該モータはスピンドルハウジング38内に備えられおり、該モータを作動させると、研磨ホイール44がスピンドル40の回転に従って回転する。
【0029】
図2は、研磨ホイール44の研磨面側を模式的に示す斜視図である。研磨ホイール44は、例えば、被加工物1の裏面1bより径の大きいポリウレタン、不織布等で形成された研磨パッド44bと、該研磨パッド44bが固定されたホイールベース44aと、を備える。
【0030】
ホイールベース44aには、研磨パッド44bが固定されている側の面とは反対側の面に固定具46が進入する複数の固定穴(不図示)が設けられている。研磨ホイール44のホイールベース44aと、研磨パッド44bと、には、中央を厚さ方向に貫く貫通孔が形成されており、該貫通孔の研磨パッド44b側の端部が研磨液供給口54となる。
【0031】
図1に破線で示す通り、研磨ユニット26の内部には、該研磨ユニット26をZ軸方向に貫く研磨液供給路50が形成されている。研磨液供給路50の上端側は研磨液供給源48に接続されており、被加工物1の研磨時には、該研磨液供給源48から該研磨液供給路50を通じて該研磨パッド44bの中央部に形成された研磨液供給口54(図2参照)にスラリーと呼ばれる研磨液が供給される。
【0032】
スラリーは、砥粒(遊離砥粒)が分散された薬液であり、砥粒の材質、砥粒の粒径、分散媒の種別等は、被加工物1の材質等に応じて適宜選択される。
【0033】
砥粒としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、二酸化マンガン、セリア、クロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、ベーマイト、バイヤライト、ダイヤモンド等を使用できる。分散媒としては、例えば、酢酸カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、イミダゾール、ピラゾール、ピラジンが溶解したアルカリ水溶液を使用できる。ただし、スラリーに含まれる部材はこれに限定されず、その他の添加剤等が添加されてもよい。
【0034】
加工領域24に位置付けられたチャックテーブル20に保持された被加工物1を研磨する際には、研磨パッド44bを被加工物1の上方に配設する。そして、研磨ホイール44と、チャックテーブル20と、をZ軸方向に沿ったそれぞれの軸の周りに回転させ、該研磨ホイール44を下降させて研磨パッド44bを被加工物1に当接させる。このとき、被加工物1と、研磨パッド44bと、の間にスラリーを供給するために、研磨液供給源48を作動させて、研磨液供給路50にスラリーを送る。
【0035】
図5は、被加工物1を研磨する様子を模式的に示す斜視図である。被加工物1を研磨する際には、例えば、チャックテーブル20の回転数は300rpm程度とされ、研磨ホイール44の回転数は1000rpm程度とされるとよい。
【0036】
研磨パッド44bの研磨液供給口54が被加工物1により塞がれるように、チャックテーブル20の位置が予め調整される。そのため、研磨液供給口54から供給された該スラリーは、被加工物1上に留まる。研磨パッド44bと、被加工物1と、を互いに当接させながらZ軸方向に沿った軸の周りに回転させると、スラリーは、研磨パッド44bと、被加工物1の被研磨面(裏面1b)と、の間に侵入する。
【0037】
研磨パッド44bで被加工物1が研磨されると、被研磨面(裏面1b)から研磨屑が生じる。該研磨屑は、スラリーに取り込まれて研磨パッド44bの外側に向けて排出される。研磨屑を取り込んだスラリー56は、やがて被加工物1の裏面1bの外周部に達し、チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bに落下する。
【0038】
その後、一部のスラリー56は、チャックテーブル20から脱落して研磨装置2の基台4の開口4aに形成された排水口4bから排出される。その一方で、チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bに落下したスラリーの他の一部は、外周部20b上で乾燥し、研削屑とともに該外周部20bに固着する。被加工物1の裏面1bでは、研磨により加工熱が生じてスラリーの温度が比較的高く維持されるが、保持面20aの外周部20bに落下したスラリーの温度は急減に低下するため、固着が進みやすい。
【0039】
図6は、研磨された被加工物1をチャックテーブル20から搬出する様子を模式的に示す斜視図である。図6に示す通り、チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bには、固着した研磨屑9が残る。
【0040】
研磨装置2では、カセット8aに収容された複数の被加工物1が次々に搬出されてチャックテーブル20に載せられ、研磨ユニット26で研磨され、該チャックテーブル20から搬出され、スピンナ洗浄装置52で洗浄されてカセット8bに収容される。そして、固着した研磨屑9が外周部20bに残る保持面20aには、次に研磨される被加工物1が載せられる。
【0041】
複数の被加工物1の研磨を繰り返すと、保持面20aの外周部20bに研磨屑9が次々に堆積する。そして、外周部20bに固着した研磨屑9の量が増えると、新たな被加工物1をチャックテーブル20に載せる際、被加工物1と保持面20aの間に研磨屑9が入り込むおそれがある。この場合、被加工物1をチャックテーブル20で適切に保持できないため、研磨ユニット26で被加工物1を適切に研磨できなくなる。
【0042】
例えば、研磨屑9に水を噴射してチャックテーブル20の保持面20aを洗浄することが考えられるが、単に水を噴射するだけでは洗浄効果が低く、研磨屑9を除去しきれない。また、チャックテーブル20の保持面20aを機械的に研磨することも考えられるが、保持面20aに固着した研磨屑9が引きずられて保持面20aに傷が生じるおそれがある。
【0043】
そこで、本実施形態に係る研磨装置2では、保持面20aの外周部20bに研磨屑9が固着したチャックテーブル20を純水等の液体と、高圧空気等の気体と、が混合された混合流体で洗浄する。研磨装置2は、例えば、被加工物1の搬出入が実施される搬出入領域22の近傍に、二流体噴射ユニット58が設けられる。
【0044】
図7(A)は、二流体噴射ユニット58により混合流体60が噴射されるチャックテーブル20を模式的に示す斜視図である。二流体噴射ユニット58は、例えば、Z軸方向に伸長した軸部58aと、軸部58aの上端から水平方向に伸長した腕部58bと、腕部58bの先端に設けられた二流体ノズル58cと、を備えるパイプ状の部材である。二流体噴射ユニット58は、例えば、軸部58aが回転することで腕部58bが回転し、所定の位置に二流体ノズル58cが位置付けられてもよい。
【0045】
軸部58aの下端には、図示しない液体供給源及び気体供給源が接続されている。該液体供給源は、例えば、純水等の液体を収容するタンクと、タンクから二流体噴射ユニット58に該液体を送り出す送液ポンプと、から構成される。また、気体供給源は、例えば、高圧の窒素ガスや空気等を収容するボンベと、ボンベから二流体噴射ユニット58に供給される気体の圧力を調整するレギュレーター等から構成される。
【0046】
軸部58aには、液体供給源から供給された液体と、気体供給源から供給された気体と、が混合された混合流体が供給される。混合流体は、腕部58bを経て二流体ノズル58cに到達し、二流体ノズル58cから下方のチャックテーブル20に向けて勢いよく噴出する。ここで、二流体ノズル58cの噴出口の径は、20mm程度であるとよい。また二流体ノズル58cからは、0.3MPa程度の圧力で毎分1L程度の噴出量で液体が噴出するとよい。
【0047】
チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bを洗浄する際には、例えば、チャックテーブルを30rpm程度の回転数で回転させるとよい。すると、保持面20aの外周部20bに全周にわたって混合流体60が噴射される。
【0048】
保持面20aの外周部20bに固着した研磨屑9に混合流体60が噴射されると、研磨屑9に水が染み込み該研磨屑9が軟化する。そして、混合流体60の噴射を続けると、やがて研磨屑9が混合流体60の勢いで保持面20aの外周部20bから剥離し、除去される。
【0049】
なお、二流体噴射ユニット58から混合流体60を噴射する間、チャックテーブル20の保持面20aを形成する多孔質部材から水を噴出させるとよい。この場合、外周部20bから剥離した研磨屑9が該多孔質部材に入り込むことがなく、チャックテーブル20の保持面20aの外側に排出されるため、剥離した研磨屑9の保持面20aへの再付着等の問題を抑制できる。
【0050】
ここで、二流体噴射ユニット58の二流体ノズル58cは、例えば、鉛直方向(Z軸方向)の下方に向けられるとよい。保持面20aの外周部20bに真上から混合流体60を噴射すると、効率的に混合流体60を研磨屑9に作用しやすくなる。
【0051】
また、二流体噴射ユニット58の二流体ノズル58cは、チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bの被噴射位置におけるチャックテーブル20の回転方向に対向するように、Z軸方向に対して所定の角度で傾けられていてもよい。この場合、混合流体60は、保持面9aの外周部9bに載って回転移動する研磨屑9に進行方向に逆らう向きから噴射されるため、混合流体60を強く研磨屑9に作用しやすくなる。ただし、本実施形態に係る研磨装置2において、二流体ノズル58cの向きはこれに限定されない。
【0052】
以上に説明するように、本実施形態に係る研磨装置2では、チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bに固着した研磨屑9に液体と気体の混合流体を噴射でき、該研磨屑9を容易に除去できる。図7(B)は、保持面20aの外周部20bから研磨屑9が除去されたチャックテーブル20を模式的に示す斜視図である。保持面20aが洗浄されたチャックテーブル20は新しい被加工物1を問題なく吸引保持できるため、該被加工物1を研磨ユニット26で適切に研磨できる。
【0053】
次に、研磨装置2で被加工物1を研磨し、チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bを洗浄する本実施形態に係る研磨方法について説明する。図8(A)は、本実施形態に係る研磨方法の各ステップの流れを模式的に示すフローチャートである。
【0054】
本実施形態に係る研磨方法では、まず、被加工物1を保持面20aに載せチャックテーブル20で保持する保持ステップS10を実施する。図4は、保持ステップS10を模式的に示す斜視図である。
【0055】
保持ステップS10では、X軸移動テーブル18を搬出入領域22に位置付けておき、位置決めテーブル12で所定の位置に位置付けられた被加工物1を被加工物搬入機構14で保持面20a上に搬入する。このとき、保護テープ3が貼着された被加工物1の表面1aを保持面20aに向け、被研磨面となる裏面1bを上方に向ける。そして、チャックテーブル20の吸引源を作動させて、チャックテーブル20で被加工物1を吸引保持する。そして、X軸移動テーブル18を加工領域24に移動させる。
【0056】
次に、チャックテーブル20で保持された被加工物1にスラリーを供給しながら該被加工物1を研磨パッドで研磨する研磨ステップS20を実施する。図5は、研磨ステップS20を模式的に示す斜視図である。研磨ステップS20では、チャックテーブル20及び研磨ホイール44をそれぞれの軸の周りに回転させる。そして、研磨液供給源48から研磨液供給路50を介してスラリーを被加工物1の裏面1bに供給しつつ、研磨ユニット26を下降させて研磨パッド44bを該裏面1bに接触させる。
【0057】
このとき、スラリーが研磨パッド44bと被加工物1の裏面1bの間に入り込み、被加工物1の裏面1b側が研磨されて平坦となる。被加工物1等から生じた研磨屑は、スラリーに取り込まれて被加工物1の外周側に運ばれる。そして、研磨屑を取り込んだスラリー56は、チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bに落下し、一部の研磨屑等が外周部20bに固着する。
【0058】
次に、研磨ステップS20で研磨された被加工物1をチャックテーブル20から搬出する搬出ステップS30を実施する。搬出ステップS30では、X軸移動テーブル18を搬出入領域22に移動させ、チャックテーブル20による被加工物1の吸引保持を解除し、被加工物1を被加工物搬出機構16でスピンナ洗浄装置52に搬送する。そして、スピンナ洗浄装置52で被加工物1を洗浄及び乾燥して、被加工物搬送ロボット10で被加工物1をカセット8bに収容する。
【0059】
本実施形態に係る研磨方法では、被加工物1をチャックテーブル20から搬出した後、チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bに堆積した研磨屑9に混合流体60を噴射し、該研磨屑9を除去する研磨屑除去ステップS40を実施する。図7(A)は、研磨屑除去ステップS40を模式的に示す斜視図である。
【0060】
研磨屑除去ステップS40では、二流体噴射ユニット58の二流体ノズル58cをチャックテーブル20の保持面20aの外周部20bに向ける。そして、二流体ノズル58cから保持面20aの外周部20bに混合流体60を噴出させる。このとき、所定の回転速度でチャックテーブル20を回転させる。すると、外周部20bに固着した研磨屑9が加熱されるとともに水にさらされて軟化し、さらなる混合流体60の噴射により除去される。
【0061】
また、研磨屑除去ステップS40では、保持面20aを構成する多孔質部材から水を噴出させることで保持面20aの外周部20bから除去された研磨屑9の該多孔質部材への入り込みを防止できる。図7(B)は、洗浄されて研磨屑9が除去されたチャックテーブル20の斜視図が模式的に示されている。以上に説明する通り、本実施形態に係る研磨方法では、研磨屑9を容易に保持面20aの外周部20bから除去できる。
【0062】
なお、本実施形態に係る研磨装置2では、チャックテーブル20の保持面20aに混合流体60を噴射する二流体噴射ユニット58が加工領域24の近傍に設けられてもよい。そして、本実施形態に係る研磨方法では、研磨ステップS20を実施する間に研磨屑除去ステップS40が実施されてもよい。図8(B)は、研磨ステップS20で研磨屑除去ステップS40が実施される場合における、本実施形態に係る研磨方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。
【0063】
二流体噴射ユニット58が加工領域24の近傍に設けられていると、研磨ユニット26により被加工物1の研磨が実施されているときに、二流体噴射ユニット58からチャックテーブル20の保持面20aの外周部20bに混合流体60を噴射できる。この場合、外周部20bに到達した研磨屑を含むスラリーが乾燥して固着する前に、混合流体60でスラリーを外周部20bから除去できる。
【0064】
この場合、研磨が完了した被加工物1をチャックテーブル20から搬出した後、すぐに新しい被加工物1をチャックテーブル20に搬入できるため、複数の被加工物1を効率的に研磨できる。
【0065】
さらに、本実施形態に係る研磨方法では、研磨屑除去ステップS40は、保持ステップS10の前に実施されてもよい。図8(C)は、保持ステップS10の前に研磨屑除去ステップS40を実施する場合における被加工物の研磨方法の各ステップの流れを模式的に示すフローチャートである。
【0066】
例えば、複数の被加工物1を次々に研磨装置2で研磨するとき、新しい被加工物1をチャックテーブル20に搬入する際に、その前に研磨ユニット26で研磨された被加工物1に由来する研磨屑9が保持面20aの外周部20bに固着していると問題となる。そこで、保持ステップS10を実施する前に研磨屑除去ステップS40が実施されて保持面20aが混合流体60の噴射により洗浄されてもよい。
【0067】
すなわち、研磨屑除去ステップS40は、被加工物1を適切に研磨するために予め実施されるステップであると考えることもできる。また、研磨屑除去ステップS40は、研磨ステップS20において被加工物1の研磨により生じて保持面20aの外周部20bに固着した研磨屑9を除去するステップであると考えることもできる。
【0068】
いずれにせよ、本実施形態に係る研磨方法は、被加工物1を適切にチャックテーブル20で保持して被加工物1を適切に研磨するとの効果を研磨装置2で研磨されるすべての被加工物1に対して奏するものである。チャックテーブル20の交換や洗浄にかかる工数も減り、研磨ユニット26の停止時間も減るため、被加工物1の加工効率も高まる。
【0069】
なお、本発明は、上記の実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、被加工物1を研磨する研磨装置2で被加工物1が研磨される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、研磨装置2は、被加工物1を研磨する研磨ユニット26に加え、被加工物1を研削する研削ユニット(不図示)を有してもよい。そして、チャックテーブル20で保持された被加工物1が該研削ユニットで研削され、その後に研磨ユニット26でされてもよい。
【0070】
この場合、チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bには、研磨屑9に加えて研削屑も堆積することとなる。この場合においても、二流体噴射ユニット58から該外周部20bに混合流体を噴出すると、研磨屑9とともに研削屑を除去できる。したがって、チャックテーブル20に新しい被加工物1を載せる際、研磨屑9及び研削屑がチャックテーブル20による該被加工物1の適切な保持を妨げることはない。
【0071】
また、二流体ノズル58cから噴出される混合流体は、電熱線等の加熱源(ヒーター)により予め加熱されてもよく、チャックテーブル20の保持面20aの外周部20bには、加熱された混合流体が供給されてもよい。この場合、保持面20aの外周部20bで固着した研磨屑9がより軟化しやすく、混合流体による除去がより容易となる。
【0072】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0073】
1 被加工物
1a 表面
1b 裏面
3 保護テープ
5 分割予定ライン
7 デバイス
9 研磨屑
2 研磨装置
4 基台
4a 開口
4b 排水口
6a,6b カセット載置台
8a,8b カセット
10 被加工物搬送ロボット
12 位置決めテーブル
14 被加工物搬入機構(ローディングアーム)
16 被加工物搬出機構(アンローディングアーム)
18 X軸移動テーブル
20 チャックテーブル
20a 保持面
22 搬出入領域
24 加工領域
26 研磨ユニット
28 支持部
30 Z軸ガイドレール
32 Z軸移動プレート
34 Z軸ボールねじ
36 Z軸パルスモータ
38 スピンドルハウジング
40 スピンドル
42 マウント
44 研磨ホイール
44a ホイールベース
44b 研磨パッド
46 固定具
48 研磨液供給源
50 研磨液供給路
52 スピンナ洗浄装置
54 研磨液供給口
56 スラリー
58 二流体噴射ユニット
58a 軸部
58b 腕部
58c 二流体ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8