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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190866
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20221220BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B32B15/08 J
H05K1/03 630E
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099352
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】古谷 聡健
(72)【発明者】
【氏名】深澤 憲正
(72)【発明者】
【氏名】冨士川 亘
(72)【発明者】
【氏名】白髪 潤
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA00C
4F100AA20C
4F100AB00D
4F100AB17D
4F100AB24D
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK17B
4F100AK31C
4F100AK33C
4F100AK49A
4F100AK49B
4F100AK53C
4F100AR00A
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA31
4F100DE01D
4F100DJ00D
4F100EH71D
4F100EJ41
4F100EJ65C
4F100GB43
4F100JB16B
4F100JG04A
4F100JK15
4F100JK17
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂を最表層に有する絶縁性基材と、その上に形成された金属層との界面が平滑で、かつ、絶縁体-金属層間の密着性に優れた積層体、およびその製造方法、ならびに、当該積層体を用いて製造されるプリンと配線板を提供する。
【解決手段】絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)、プライマー層(C)、及び金属層(D)が順次積層されたものであることを特徴とする積層体を用いることで、密着性の優れた積層体を見出したものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)、プライマー層(C)、及び金属層(D)が順次積層されたものであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記金属層(D)が、めっき下地層(d1)の上にめっき層(d2)が積層されたことを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記めっき下地層(d1)が少なくとも多孔質膜の金属層、連続膜の金属層、または、多孔質膜と連続膜の混合金属層のいずれか一つの層から選択されることを特徴とする請求項2記載の積層体。
【請求項4】
前記多孔質膜が金属粒子からなる層であることを特徴とする請求項3記載の積層体。
【請求項5】
前記多孔質膜を構成する金属粒子が、高分子分散剤で被覆されたものである請求項4記載の積層体。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂層(B)とプライマー層(C)が、混合層(E)を形成することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載の積層体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂層(B)が少なくともポリイミド樹脂または含フッ素樹脂のいずれいか一つの樹脂を主成分とする層であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載の積層体。
【請求項8】
前記プライマー層(C)がプライマー樹脂(c1)及び無機粒子(c2)を含有する層であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項記載の積層体。
【請求項9】
前記プライマー樹脂(c1)が反応性官能基[X]を有する樹脂であり、前記高分子分散剤が反応性官能基[Y]を有するものであり、前記反応性官能基[X]と前記反応性官能基[Y]とは反応により互いに結合を形成できるものである請求項8記載の積層体。
【請求項10】
前記反応性官能基[Y]を有する高分子分散剤が、ポリアルキレンイミン、及びオキシエチレン単位を含むポリオキシアルキレン構造を有するポリアルキレンイミンからなる群から選ばれる1種以上である請求項9記載の積層体。
【請求項11】
前記反応性官能基[X]が、ケト基、アセトアセチル基、エポキシ基、カルボキシル基、N-アルキロール基、イソシアネート基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基からなる群から選ばれる1種以上である請求項9記載の積層体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項記載の積層体を用いて製造されることを特徴とするプリント配線板。
【請求項13】
絶縁性基材(A)上に前記熱可塑性樹脂層(B)を形成する工程(1)、
さらに熱可塑性樹脂層(B)上に前記プライマー層(C)を形成する工程(2)、
さらに、プライマー層(C)上に前記金属層(D)を形成する工程(3)、
を有することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
絶縁性基材(A)上に前記熱可塑性樹脂層(B)を有する基材の上に、前記プライマー層(C)を形成する工程(2)、さらに、プライマー層(C)上に前記金属層(D)を形成する工程(3)、
を有することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項記載の積層体の製造方法。
【請求項15】
前記プライマー層(C)上に、前記金属層(D)を形成する工程が、
めっき下地層(d1)を形成する工程(3-1)と、めっき層(d2)を形成する工程(3-2)で構成されることを特徴とする請求項13又は14記載の積層体の製造方法。
【請求項16】
前記プライマー層(C)を形成する工程(2)の後に、熱可塑性樹脂層(B)が軟化する温度以上の温度で熱処理を行う工程を有することを特徴とする請求項15記載の積層体の製造方法。
【請求項17】
前記めっき下地層(d1)を形成する工程(3-1)の後に、熱可塑性樹脂層(B)が軟化する温度以上の温度で熱処理を行う工程を有することを特徴とする請求項15載の積層体の製造方法。
【請求項18】
前記めっき層(d2)を形成する工程(3-2)の後に、熱可塑性樹脂層(B)が軟化する温度以上の温度で熱処理を行う工程を有することを特徴とする請求項15記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板に用いることのできる積層体、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高速化、電気信号の高周波化により、プリント配線板の高密度化、低伝送損失化等、高性能化が要求されており、この要求に応えるため、プリント配線板に使用される絶縁基材の高耐熱化、低誘電化が進んでいる。プリント配線板の基本的な構成は、絶縁性基材表面に回路パターンの導体が形成されたものであり、絶縁性基材上に、導体を適切に接着させる技術が必要であるが、高耐熱化、低誘電化された絶縁基材は、導体として用いられる銅との密着性に乏しいことが多いため、高耐熱化、低誘電化された絶縁基材をコア層とし、表層に熱可塑性層を形成して、表面粗化した銅箔を加熱・加圧条件下でラミネートすることで、密着性を確保したプリント配線板用基材を製造する方法が広く用いられている。一方、低誘電化材料は、一般的に熱可塑性であることが多く、低誘電化材料のみでは、プリント配線板用基材としての加工性が確保できないことがあるため、熱可塑性を示さないコア材料の表面に、熱可塑性の低誘電化材料を形成して、基材の加工性を確保しながら、低誘電化を図る方法が知られている。この場合、表層の熱可塑性層は、基材の低誘電化と粗化銅箔をラミネートして密着性を確保する役割を担っている。この様に、高性能プリント配線板用基材として、表層に熱可塑性層を有する絶縁性基材が注目されているが、従来の粗化銅箔をラミネートする方法では、絶縁基材と導体の接着界面に、銅箔由来の凹凸が形成されるため、回路の高密度化や、高周波帯域の信号伝送損失抑制に課題があった。
【0003】
基材と導体界面の平滑性を確保する方法として、絶縁性基材表面に金属薄膜を、蒸着法またはスパッタ法により形成した後、その金属薄膜をシードとしてめっき法で厚膜化する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、絶縁体―導体界面に、伝送損失を増大させる要素となるニッケル等の磁性体金属を使用する必要があったり、充分な密着性が得られない等の問題があった。
【0004】
そこで、高性能プリント配線板用基材として、絶縁性基材と導体の界面が平滑で、かつ、充分な密着性を有する積層体が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-118044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、熱可塑性樹脂を最表層に有する絶縁性基材と、その上に形成された金属層との界面が平滑で、かつ、絶縁体-金属層間の密着性に優れた積層体、およびその製造方法、ならびに、当該積層体を用いて製造されるプリンと配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意検討した結果、絶縁性基材上に熱可塑性樹脂層、プライマー層、金属層を順次積層させた積層体が前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)、プライマー層(C)、及び金属層(D)が順次積層されたものであることを特徴とする積層体。
2.前記金属層(D)が、めっき下地層(d1)の上にめっき層(d2)が積層されたことを特徴とする1記載の積層体。
3.前記めっき下地層(d1)が少なくとも多孔質膜の金属層、連続膜の金属層、または、多孔質膜と連続膜の混合金属層のいずれか一つの層から選択されることを特徴とする2記載の積層体。
4.前記多孔質膜が金属粒子からなる層 であることを特徴とする3記載の積層体。
5.前記多孔質膜を構成する金属粒子が、高分子分散剤で被覆されたものである4記載の積層体。
6.前記熱可塑性樹脂層(B)とプライマー層(C)が、混合層(E)を形成することを特徴とする1~5のいずれか1記載の積層体。
7.前記熱可塑性樹脂層(B)が少なくともポリイミド樹脂または含フッ素樹脂のいずれいか一つの樹脂を主成分とする層であることを特徴とする1~6のいずれか1記載の積層体。
8.前記プライマー層(C)がプライマー樹脂(c1)及び無機粒子(c2)を含有する層であることを特徴とする1~7のいずれか1記載の積層体。
9.前記プライマー樹脂(c1)が反応性官能基[X]を有する樹脂であり、前記高分子分散剤が反応性官能基[Y]を有するものであり、前記反応性官能基[X]と前記反応性官能基[Y]とは反応により互いに結合を形成できるものである8記載の積層体 。
10.前記反応性官能基[Y]を有する高分子分散剤が、ポリアルキレンイミン、及びオキシエチレン単位を含むポリオキシアルキレン構造を有するポリアルキレンイミンからなる群から選ばれる1種以上である9記載の積層体。
11.前記反応性官能基[X]が、ケト基、アセトアセチル基、エポキシ基、カルボキシル基、N-アルキロール基、イソシアネート基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基からなる群から選ばれる1種以上である9記載の積層体。
12.1~11のいずれか1記載の積層体を用いて製造されることを特徴とするプリント配線板。
13.絶縁性基材(A)上に前記熱可塑性樹脂層(B)を形成する工程(1)、
さらに熱可塑性樹脂層(B)上に前記プライマー層(C)を形成する工程(2)、
さらに、プライマー層(C)上に前記金属層(D)を形成する工程(3)、
を有することを特徴とする1~11のいずれか1記載の積層体の製造方法。
14.絶縁性基材(A)上に前記熱可塑性樹脂層(B)を有する基材の上に、前記プライマー層(C)を形成する工程(2)、さらに、プライマー層(C)上に前記金属層(D)を形成する工程(3)、
を有することを特徴とする1~11のいずれか1記載の積層体の製造方法。
15.前記プライマー層(C)上に、前記金属層(D)を形成する工程が、
めっき下地層(d1)を形成する工程(3-1)と、めっき層(d2)を形成する工程(3-2)で構成されることを特徴とする13又は14記載の積層体の製造方法。
16.前記プライマー層(C)を形成する工程(2)の後に、熱可塑性樹脂層(B)が軟化する温度以上の温度で熱処理を行う工程を有することを特徴とする15記載の積層体の製造方法。
17.前記めっき下地層(d1)を形成する工程(3-1)の後に、熱可塑性樹脂層(B)が軟化する温度以上の温度で熱処理を行う工程を有することを特徴とする15載の積層体の製造方法。
18.前記めっき層(d2)を形成する工程(3-2)の後に、熱可塑性樹脂層(B)が軟化する温度以上の温度で熱処理を行う工程を有することを特徴とする15記載 の積層体の製造方法。
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂を最表層に有する絶縁性基材上に、平滑界面で金属層が積層されており、かつ、絶縁性基材と金属層との間の密着性に優れた積層体である。本発明は、特に、比誘電率εと誘電正接tanδが低い、低誘電化されたコア層上に熱可塑性層が形成された絶縁性基材や、低誘電熱可塑性樹脂を最表層に有する絶縁性基材を使用することで、誘電損失および導体損失を抑制した伝送損失の低いプリント配線板を形成するための積層体を提供することが可能である。
【0010】
また、本発明の積層体は、金属層をパターニングすることにより、例えば、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、タッチパネル向け導電性フィルム、タッチパネル用メタルメッシュ、有機太陽電池、有機EL素子、有機トランジスタ、非接触ICカード等のRFID、電磁波シールド、LED照明基材、デジタルサイネージなどの電子部材として好適に用いることができる。特に、低誘電化された材料を用いた積層体は、第5世代通信システム(5G)および次世代通信システム(beyond5G)等に利用できる高周波帯域での伝送損失を抑制したプリント配線板用途に最適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層体は、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)、プライマー層(C)、および金属層(D)が順次積層されたものである。
【0012】
本発明の積層体は、前記絶縁性基材(A)の片面に熱可塑性樹脂層(B)等を順次積層した積層体であってもよく、絶縁性基材(A)の両面に熱可塑性樹脂層(B)等を順次積層した積層体であってもよい。
【0013】
本発明の積層体は、前記絶縁性基材(A)と、その上に積層された熱可塑性樹脂層(B)が、組成上の明確な界面を有していても良いし、界面領域で両成分が相互に混合された状態で、明確な界面を有していなくても良い。
【0014】
前記絶縁性基材(A)は、例えば、ポリイミド、透明ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ABSとポリカーボネートとのポリマーアロイ、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレンー六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレンーエチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレンーエチレン共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロジオキシソール共重合体、フッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、エポキシ樹脂、セルロースナノファイバー、シリコン、セラミックス、ガラス等からなる絶縁性基材、それらからなる多孔質の基材、それらの表面にシリコンカーバイド、ダイヤモンドライクカーボンを蒸着処理した絶縁性基材などが挙げられる。
【0015】
また、本発明の積層体をプリント配線板等に用いる場合は、前記絶縁性基材として、ポリイミド、透明ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレンーエチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ガラス、セルロースナノファイバーなどからなる絶縁性基材を用いることが好まく、ポリイミドが、特に好ましい。
【0016】
さらに、本発明の積層体をフレキシブルプリント配線板等に用いる場合は、前記絶縁性基材として、折り曲げ可能な柔軟性を有するフィルム状またはシート状の絶縁性基材が好ましい。
【0017】
前記絶縁性基材の形状がフィルム状またはシート状の場合、その厚さは、通常、1~5000μmの範囲が好ましく、1~300μmの範囲がより好ましく、1~200μmがさらに好ましい。
【0018】
前記熱可塑性樹脂層(B)は特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、ジエン系樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド系樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0019】
本発明の積層体を高周波信号伝送用途のプリント配線板形成に用いる場合、前記熱可塑性樹脂層(B)を形成する樹脂の中でも、絶縁性基材(A)と熱可塑性樹脂層(B)との積層体としての10GHzにおける比誘電率が3.5以下、誘電正接が0.006以下とすることが好ましい。比誘電率は3.0以下がより好ましく、2.8以下が特に好ましい。誘電正接は0.004以下がより好ましく、0.003以下が特に好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂層としては、前述の比誘電率と誘電正接が達成可能な熱可塑性のポリイミド層や熱可塑性のフッ素樹脂層であることが好ましい。
【0020】
前記熱可塑性樹脂層(B)の厚さは、1~50μmの範囲が好ましく、3~40μmの範囲がより好ましく、3~30μmがさらに好ましい。
【0021】
熱可塑性のポリイミド層は、熱可塑性ポリイミドの前駆体となる熱可塑性ポリアミド酸をイミド化して得られる。熱可塑性ポリアミド酸は、ポリアミド酸の合成に通常用いられる原料であるジアミンおよび酸二無水物を使用して、合成することができる。
【0022】
前記ジアミンとしては特に限定されないが、芳香族ジアミンが耐熱性などの点において好ましい。例えば、2,2 ’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-オキシジアニリン、3, 3’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノジフェニルN-メチルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルN-フェニルアミン、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4-(3-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン等が挙げられる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0023】
前記酸二無水物としては特に制限されないが、芳香族酸二無水物が耐熱性などの点において好ましい。例えば、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシフタル酸二無水物、3,4’-オキシフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)およびそれらの類似物等が挙げられる。
【0024】
熱可塑性のフッ素樹脂層は、フッ素樹脂層を構成する成分の50質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上が含フッ素樹脂である。また含フッ素樹脂とは、分子鎖内に炭素原子(C)とフッ素原子(F)との結合を有する樹脂である。
【0025】
含フッ素樹脂としては特に限定されないが、例えばテトラフルオロエチレン・ヘキサオロプロピレン共重合体(FEP:Fluorinatedethylenepropylene)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA:Perfluoroalkane)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロジオキソール共重合体(TFE/PDD:Tetrafluoroethylene-Perfluorodioxolcopolymer)、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライドターポリマー、フルオロエラストマー等を挙げることができる。さらにこれらの化合物を2種以上含む混合物や、これらの含フッ素樹脂を構成する各モノマー2種以上の組み合わせにより形成されるコポリマーなども含まれる。
【0026】
また、本発明の積層体をプリント配線板やフレキシブルプリント配線板等に用いる場合は、前記含フッ素樹脂層を有する絶縁性基材(A)の含フッ素樹脂層として、FEP、PFA、PTFE、およびTFE/PDDを用いることが好ましい。
【0027】
本発明の積層体をプリント配線板やフレキシブルプリント配線板等に用いる場合は、前記含フッ素樹脂層を有する絶縁性基材(A)の含フッ素樹脂層として、FEP、PFA、PTFE、およびTFE/PDDを用いることが好ましい。
【0028】
前記含フッ素樹脂は、酸素および窒素のうち、少なくともいずれか一方を含有する極性基を含んでもよい。このような極性基は特に限定されないが、カルボキシ(-COOH)基、カルボン酸無水物(-CO-O-CO-)基、アルコキシカルボニル(RCOO-(Rは一価の炭化水素基))基、ヒドロキシ(-OH)基、エポキシ基、およびイソシアネート(-N=C=O)基からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
【0029】
本発明は、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)、プライマー層(C)、及び金属層(D)が順次積層されたものであるが、前記熱可塑性樹脂層(B)は、前記絶縁性基材(A)の上に形成して用いても良いし、予め、熱可塑性樹脂層(B)が絶縁性基材(A)上に形成された基材を用いても良い。
【0030】
前記絶縁性基材(A)の上に前記熱可塑性樹脂層(B)を形成する方法は、特に制限されないが、例えば絶縁性基材(A)に熱可塑性樹脂前駆体や熱可塑性樹脂を含む溶液を塗布した後に熱処理を行う方法や、予め成型された熱可塑性樹脂フィルムと絶縁性基材(A)とを重ねて熱プレスする方法や、熱可塑性樹脂の組成物を溶融してフィルム状に押し出したものを絶縁性基材(A)にラミネートする方法を挙げることができる。
【0031】
熱可塑性樹脂層(B)が、予め絶縁性基材(B)上に形成された基材としては、例えば、熱可塑性ポリイミド層を有する基材として、株式会社カネカ製のピクシオ(PIXIO)シリーズや、宇部興産株式会社製のユーピレックスVT、NVTを好適に用いることができる。
【0032】
前記熱可塑性樹脂層(B)を、前記絶縁性基材(A)の上に形成する方法としては、例えば、ポリイミド樹脂の熱可塑性層(B)を、前記絶縁性基材(A)の上に形成する方法としては、例えば、特開2019-14062号公報を参考にして形成することができる。また、含フッ素樹脂の熱可塑性樹脂層(B)の形成は、例えば、特開2019-166844号公報を参考にして形成することができる。
【0033】
前記熱可塑性樹脂層(B)は、後述するプライマー層(C)の形成前に、必要に応じて、表面平滑性を失わない程度の表面処理を実施しても良い。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の乾式処理、オゾン水、酸・アルカリ等の水溶液または有機溶剤等を用いる湿式処理等の方法が挙げられる。適切な表面処理を実施することにより、プライマー層(C)形成を阻害する可能性のある、表面に付着した汚れを除去したり、熱可塑性樹脂層(B)表面にヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基を導入することで、熱可塑性樹脂層(B)とプライマー層(C)間の密着性を、より向上させることができる。
【0034】
前記プライマー層(C)はプライマー樹脂(c1)を含有する層であり、その好ましい一様体として、前記プライマー樹脂(c1)および無機粒子(c2)を含有する層を挙げることができる。
【0035】
前記プライマー樹脂(c1)を構成する材料としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネートポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。なお、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂は、例えば、ウレタン樹脂存在下でアクリル単量体を重合することにより得られる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0036】
プライマー樹脂(c1)を構成する樹脂は、後述するめっき下地層(d1)が金属粒子で形成され、金属粒子の分散剤に反応性官能基[Y]を有するものを用いる場合、反応性官能基[Y]に対して反応性を有する反応性官能基[X]を有する樹脂が好ましい。前記反応性官能基[X]としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルキロールアミド基、ケト基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、カルボニル基、アセトアセチル基、エポキシ基、脂環エポキシ基、オキセタン環、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(ブロック化)イソシアネート基、(アルコキシ)シリル基等が挙げられる。
【0037】
前記プライマー樹脂(c1)を形成する樹脂の中でも、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)を含有するものを用いることが好ましい。
【0038】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)は、アミノトリアジン環構造とフェノール構造とがメチレン基を介して結合したノボラック樹脂である。前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)は、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物と、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、ビスフェノールA、フェニルフェノール、ナフトール、レゾルシン等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとをアルキルアミン等の弱アルカリ性触媒の存在下または無触媒で、中性付近で共縮合反応させるか、メチルエーテル化メラミン等のアミノトリアジン化合物のアルキルエーテル化物と、前記フェノール化合物とを反応させることにより得られる。
【0039】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)は、メチロール基を実質的に有していないものが好ましい。また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)には、その製造時に副生成物として生じるアミノトリアジン構造のみがメチレン結合した分子、フェノール構造のみがメチレン結合した分子等が含まれていても構わない。さらに、若干量の未反応原料が含まれていてもよい。
【0040】
前記フェノール構造としては、例えば、フェノール残基、クレゾール残基、ブチルフェノール残基、ビスフェノールA残基、フェニルフェノール残基、ナフトール残基、レゾルシン残基等が挙げられる。また、ここでの残基とは、芳香環の炭素に結合している水素原子が少なくとも1つが抜けた構造を意味する。例えば、フェノールの場合は、ヒドロキシフェニル基を意味する。
【0041】
前記トリアジン構造としては、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物由来の構造が挙げられる。
【0042】
前記フェノール構造および前記トリアジン構造は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、密着性をより向上できることから、前記フェノール構造としてはフェノール残基が好ましく、前記トリアジン構造としてはメラミン由来の構造が好ましい。
【0043】
また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)の水酸基価は、密着性をより向上できることから、50~200mgKOH/gの範囲が好ましく、80~180mgKOH/gの範囲がより好ましく、100~150mgKOH/gの範囲がさらに好ましい。
【0044】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0045】
また、前記アミノトリアジン環を有する化合物として、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)を用いる場合、エポキシ樹脂(c1-2)を併用することが好ましい。
【0046】
前記エポキシ樹脂(c1-2)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド誘導体由来の構造を有する含リンエポキシ化合物、ジシクロペンタジエン誘導体由来の構造を有するエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油等の油脂のエポキシ化物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0047】
前記エポキシ樹脂(c1-2)の中でも、密着性をより向上できることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0048】
また、前記エポキシ樹脂(c1-2)のエポキシ当量は、密着性をより向上できることから、100~300g/当量の範囲が好ましく、120~250g/当量の範囲がより好ましく、150~200g/当量の範囲がさらに好ましい。
【0049】
前記プライマー層(C)が、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)およびエポキシ樹脂(c1-2)を含有する層とする場合、密着性をより向上できることから、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)中のフェノール性水酸基(x)と前記エポキシ樹脂(c1-2)中のエポキシ基(y)とのモル比[(x)/(y)]は、0.1~5の範囲以下が好ましく、0.2~3の範囲以下がより好ましく、0.3~2の範囲がさらに好ましい。
【0050】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂(c1-1)とエポキシ樹脂(c1-2)との反応を促進するため、硬化促進剤を併用してもよい。前記硬化促進剤としては、例えば、一級、二級または三級のアミノ基を有するアミン化合物が挙げられる。また、前記アミン化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれのものも用いることができる。また、前記硬化促進剤として、メルカプタン、酸無水物、酸フッ化ホウ素、ホウ酸エステル、有機酸ヒドラジット、ルイス酸、有機金属化合物、オニウム塩、カチオン性化合物等も用いることができる。
【0051】
前記無機粒子(c2)としては、例えば、シリカ、酸化亜鉛からなるウィスカ、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、アルミナ、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫化モリブデン等が挙げられる。無機系充填剤の形態としては、粒子状、繊維状、針状、フレーク状等種々の形態を用いることができる。
【0052】
前記無機粒子(c2)の中でも、シリカを用いることが好ましい。シリカの製造方法としては、天然原料から製造する天然法や、化学合成で製造する合成法が挙げられるが、いずれの方法で得られたシリカも用いることができる。また、シリカ粒子を水や有機溶剤に分散させたものを用いてもよく、予めシリカ粒子を分散させたスラリーやコロイド溶液も用いることもできる。
【0053】
また、シリカ粒子に溶媒や配合する樹脂との分散性や親和性を付与する目的で、シリカ粒子表面にシランカップリング剤を反応させたり、樹脂を分散剤として付着させたものを用いることがより好ましい。前記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン等が挙げられる。また、シリカ粒子の分散剤となる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0054】
前記シリカは、エレクトロニクス用途で用いる際には、不純物の少ないものを用いることが好ましい。例えば、不純物としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、塩化物イオン等が挙げられる。
【0055】
前記シリカとしては、特に限定されるものではないが、用いることのできる市販品としては、例えば、デンカ株式会社製の合成法で製造したSFPシリーズやUFPシリーズ(UFP-30、UFP-40、SFP-20M、SFP―30M、SFP-130MC、SFP-120MC、SFP-120MC、SFP-30MHE、UFP-30HH)、天然法で製造したFBシリーズ(FB-5D、FB-8S、FB-15D、FB-20D、FB-40R);日産化学株式会社製の水を分散媒としたコロイド溶液であるスノーテックスシリーズ(ST-XS、ST-OXS、ST-NXS、ST-CXS、ST-S、ST-OS、ST-NS、ST-30、ST-O、ST-N、ST-C、ST-AK、ST-50-T、ST-O-40、ST-CM、ST-30L、ST-OL、ST-AK-L、ST-YL、ST-OYL、ST-AK-YL、ST-ZL、MP-1040、MP-2040、MP-4540M、ST-UP、ST-OUP、ST-PS-S、ST-PS-SO、ST-PS-M、ST-PS-MO)、有機溶剤を分散媒としたコロイド溶液であるオルガノシリカゾルシリーズ(メタノールシリカゾル、MA-ST-M、MA-ST-L、IPA-ST、IPA-ST-L、IPAST-ZL、IPA-ST-UP、EG-ST、NPC-ST-30、PGM-ST、DMAC-ST、MEK-ST-40、MEK-ST-L、MEK-ST-ZL、MEK-ST-UP、MIBK-ST-L、CHO-ST-M、EAC-ST、PMA-ST、TOL-ST、MEK-AC-2140Z,MEK-AC-4130Y、MEK-AC5140Z、PMG-AC2140Y、PGM-AC-4130Y、MIBK-AC-2140Z、MIBK-SD-L、MEK-EC-2130Y、EP-M2130Y);株式会社アドマテックス製のSO-Cタイプ(SO-C1、SO-C2、SO-C4、SO-C5、SO-C6)、SO-Eタイプ(SO-E1、SO-E2、SO-E3、SO-E4、SO-E5、SO-E6)等が挙げられる。
【0056】
密着性をより向上できることから、前記プライマー層(C)中の前記無機粒子(c2)の含有量は、前記プライマー樹脂(c1)100質量部に対して、1~300質量部の範囲が好ましく、3~200質量部の範囲がより好ましく、3~150質量部の範囲がさらに好ましい。
【0057】
また、前記無機粒子(c2)の平均粒子径としては、密着性をより向上できることから、0.001~0.5μmの範囲が好ましく、0.01~0.3μmの範囲がより好ましく、0.01~0.1μmの範囲がさらに好ましい。なお、平均粒子径は、前記無機粒子(c2)を分散良溶媒で希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。
【0058】
前記プライマー層(C)の形成には、プライマー組成物(c)を用いる。前記プライマー組成物(c)は、前記プライマー樹脂(c1)や無機粒子(c2)を含有するものであるが、必要に応じて、さらに架橋剤(c3)を含有してもよい。前記架橋剤(c3)としては、多価カルボン酸が好ましい。前記多価カルボン酸としては、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、コハク酸等が挙げられる。これらの架橋剤(c3)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの架橋剤(c3)の中でも、密着性をより向上できることから、無水トリメリット酸が好ましい。
【0059】
さらに、前記プライマー層(C)の形成に用いるプライマー組成物(c)には、必要に応じて、上記の成分(c1)~(c3)以外の成分として、その他の樹脂(c4)を配合してもよい。前記その他の樹脂(c4)としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。これらのその他の樹脂(c4)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0060】
また、前記プライマー組成物(c)には、前記熱可塑性樹脂層(B)へ塗工する際に、塗工しやすい粘度とするため、有機溶剤を配合することが好ましい。前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロピルアルコール、ダイアセトンアルコール、エチレングリコール、トルエン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0061】
前記有機溶剤の使用量は、後述する前記熱可塑性樹脂層(B)へ塗工する際に用いる塗工方法、前記プライマー層(C)の所望とする膜厚により、適宜調整することが好ましい。
【0062】
また、前記プライマー組成物(c)には、必要に応じて、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜添加してもよい。
【0063】
前記プライマー層(C)は、前記熱可塑性樹脂層(B)の表面の一部または全部に前記プライマー組成物(c)を塗工し、前記プライマー組成物(c)中に含まれる有機溶剤を除去することによって形成できる。
【0064】
前記プライマー組成物(c)を前記熱可塑性樹脂層(B)の表面に塗工する方法としては、例えば、グラビア法、オフセット法、フレキソ法、パッド印刷法、グラビアオフセット法、凸版法、凸版反転法、スクリーン法、マイクロコンタクト法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、インクジェット法、ダイコーター法、スピンコーター法、バーコーター法、ディップコーター法等が挙げられる。
【0065】
前記プライマー組成物(c)を前記熱可塑性樹脂層(B)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる有機溶剤を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、有機溶剤を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、用いた有機溶剤を揮発させることが可能で、かつ前記熱可塑性樹脂層(B)に熱変形等の悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0066】
前記プライマー組成物(c)を用いて形成するプライマー層(C)の膜厚は、本発明の積層体を用いる用途によって適宜選択すれば良いが、前記熱可塑性樹脂層(B)と後述する金属層(D)との密着性をより向上する範囲が好ましく、また、積層体の比誘電率と誘電正接に対する影響を小さくするために薄いほうが好ましい。このことから前記プライマー層(C)の膜厚は、10nm~30μmの範囲が好ましく、50nm~5μmの範囲がより好ましく、100nm~1μmの範囲がさらに好ましい。
【0067】
前記熱可塑性樹脂層(B)と前記プライマー層(C)は、各層が順次積層された層構造を示していても良いし、各層の成分が明確な境界を持たずに傾斜分布した混合層(E)を形成していてもよい。また、前記金属層との密着性をより向上できることから、前記熱可塑性樹脂層(B)の官能基と前記プライマー層(C)の官能基が共有結合やイオン結合などを形成した混合層(E)を形成していてもよい。
【0068】
前記混合層(E)は、熱可塑性樹脂層(B)が軟化する温度以上の温度で熱処理を行うことで形成できる。熱処理の温度は、熱可塑性樹脂の融点±60℃が好ましく、融点±40℃がより好ましく、融点±20℃がさらに好ましい。前記混合層(E)を形成するために行う、熱可塑性樹脂(B)が軟化する温度以上の温度での熱処理は、前記プライマー層(C)を形成した後でもよく、後述するめっき下地層(d1)を形成した後でもよく、後述するめっき層(d2)を形成した後でもよい。
【0069】
前記プライマー層(C)、あるいは混合層(E)の表面は、前記金属層(D)との密着性をより向上できることから、必要に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の乾式処理、オゾン水、酸・アルカリ等の水溶液または有機溶剤等を用いる湿式処理等で、表面処理してもよい。
【0070】
本発明の積層体において、前記金属層(D)は、めっき下地層(d1)のみでも良いし、めっき下地層(d1)と、めっき層(d2)で形成された層であっても良く、前記プライマー層(C)上に形成されたものである。前記めっき下地層(d1)を構成する金属としては、遷移金属またはその化合物が挙げられ、中でもイオン性の遷移金属が好ましい。このイオン性の遷移金属としては、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等が挙げられる。これらの中でも、めっき下地層としての、コスト、無電解めっき触媒活性、導電性の観点から、銀が好ましい。
【0071】
前記めっき下地層(d1)は多孔質膜の金属層、連続膜の金属層、または、多孔質膜と連続膜の混合金属層のいずれか一つの層から選択されるものである。多孔質膜の金属層は、例えば、金属粒子の流動体を塗工、乾燥することで形成される層であり、連続膜の金属層は、例えば、金属を蒸着、もしくはスパッタするか、金属錯体膜を還元することで形成される層である。これらの中でも、製造が低コストで容易な金属粒子で形成した多孔質膜の金属層を好適に用いることができる。
【0072】
また、前記めっき層(d2)を構成する金属としては、銅、金、銀、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等が挙げられる。これらの中でも、本発明の積層体を低コストで、電気抵抗が低いプリント配線板製造用途に用いる観点から銅が好ましい。前記めっき(d2)層を構成する金属は、単独の金属である必要はなく、複数の金属種が積層されていても良い。例えば、プリント配線板の構成では、銅めっき膜上にニッケル/金、もしくはスズの最終表面処理と呼ばれるめっきが実施されるていてもよい。
【0073】
本発明の積層体の製造方法の好ましい一様体としては、まず、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)が積層された基材に、プライマー層(C)を積層し、その後、ナノサイズの金属粒子(d)を含有する流動体を塗工し、流動体中に含まれる有機溶剤等を乾燥により除去することによって、前記めっき下地層(d1)を形成した後、電解めっき、もしくは無電解めっき、またはその両方により前記めっき層(d2)を形成して金属層(D)を積層する方法が挙げられる。
【0074】
また、本発明の積層体の製造方法の好ましい一様体としては、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)、プライマー層(C)を順次積層し、その後、ナノサイズの金属粒子(d)を含有する流動体を塗工し、流動体中に含まれる有機溶剤等を乾燥により除去することによって、前記めっき下地層(d1)を形成した後、電解めっき、もしくは無電解めっき、またはその両方により前記めっき層(d2)を形成して金属層(D)を積層する方法が挙げられる。
【0075】
前記めっき下地層(d1)の形成に用いる前記金属粒子(d)の形状は、粒子状、または、繊維状のものが好ましい。また、前記金属粒子(d)の大きさはナノサイズのものを用いるが、具体的には、前記金属粒子(d)の形状が粒子状の場合は、微細な導電性パターンを形成でき、抵抗値をより低減できることから、平均粒子径が、1nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましく、さらに10nm以上50nm以下がより好ましい。なお、前記「平均粒子径」は、前記導電性物質を分散良溶媒にて希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。この測定にはマイクロトラック社製「ナノトラックUPA-150」を用いることができる。
【0076】
一方、前記金属粒子(d)の形状が繊維状の場合も、微細な導電性パターンを形成でき、抵抗値をより低減できることから、繊維の直径が5nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。また、繊維の長さは、0.1μm以上100μm以下が好ましく、0.1μm以上30μm以下がより好ましい。
【0077】
前記流動体中の前記金属粒子(d)の含有率は、1質量%以上90質量%以下が好ましく、5質量%以上60質量%以下がより好ましく、さらに5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0078】
前記流動体に配合される成分としては、前記金属粒子(d)を溶媒中に分散させるための分散剤や溶媒、また必要に応じて、後述する界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0079】
前記金属粒子(d)を溶媒中に分散させるため、低分子量または高分子量の分散剤を用いることが好ましい。前記分散剤としては、例えば、ドデカンチオール、1-オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、ドデシルアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン;ミリスチン酸、オクタン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;コール酸、グリシルジン酸、アビンチン酸等のカルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物などが挙げられる。
【0080】
前記プライマー層(C)上に金属粒子からなるめっき下地層(d1)を形成する場合は、これら2層の密着性が良好になることから、前述のプライマー樹脂(c1)に用いる樹脂が有する反応性官能基[X]と結合を形成しうる反応性官能基[Y]を有する化合物を用いることが好ましい。
【0081】
反応性官能基[Y]を有する化合物としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルキロールアミド基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、カルボニル基、アセトアセチル基、エポキシ基、脂環エポキシ基、オキセタン環、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(ブロック化)イソシアネート基、(アルコキシ)シリル基等を有する化合物、シルセスキオキサン化合物等が挙げられる。特に、プライマー層(C)とめっき下地層(d1)との密着性をより向上できることから、前記反応性官能基[Y]は塩基性窒素原子含有基が好ましい。前記塩基性窒素原子含有基としては、例えば、イミノ基、1級アミノ基、2級アミノ基等が挙げられる。
【0082】
前記塩基性窒素原子含有基は、分散剤1分子中に単数、もしくは複数存在してもよい。分散剤中に複数の塩基性窒素原子を含有することで、塩基性窒素原子含有基の一部は、金属粒子との相互作用により、金属粒子の分散安定性に寄与し、残りの塩基性窒素原子含有基は、前記絶縁性基材(A)との密着性向上に寄与する。また、前記プライマー樹脂(c1)に反応性官能基[X]を有する樹脂を用いた場合には、分散剤中の塩基性窒素原子含有基は、この反応性官能基[X]との間で結合が形成でき、前記絶縁性基材(A)上への金属層(D)の密着性をより一層向上できるため好ましい。
【0083】
前記分散剤は、金属粒子分散液の安定性、塗工性の観点から、高分子分散剤が好ましく、この高分子分散剤としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン、前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物などが好ましい。
【0084】
前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物としては、ポリエチレンイミンとポリオキシアルキレンとが、直鎖状で結合したものであってもよく、前記ポリエチレンイミンからなる主鎖に対して、その側鎖にポリオキシアルキレンがグラフトしたものであってもよい。
【0085】
前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物の具体例としては、例えば、ポリエチレンイミンとポリオキシエチレンとのブロック共重合体、ポリエチレンイミンの主鎖中に存在するイミノ基の一部にエチレンオキサイドを付加反応させてポリオキシエチレン構造を導入したもの、ポリアルキレンイミンが有するアミノ基と、ポリオキシエチレングリコールが有する水酸基と、エポキシ樹脂が有するエポキシ基とを反応させたもの等が挙げられる。
【0086】
前記ポリアルキレンイミンの市販品としては、株式会社日本触媒製の「エポミン(登録商標)PAOシリーズ」の「PAO2006W」、「PAO306」、「PAO318」、「PAO718」等が挙げられる。
【0087】
前記ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、3,000~30,000の範囲が好ましい。
【0088】
前記高分子の分散剤としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、前記ウレタン樹脂や前記アクリル樹脂にリン酸基を含有する化合物等も好適に用いることができる。
【0089】
前記金属粒子(d)を分散させるために必要な前記分散剤の使用量は、前記金属粒子(c)100質量部に対し、0.01質量部以上50質量部以下が好ましく、0.01質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0090】
また、前記めっき下地層(d1)と後述するめっき層(d2)との密着性をより向上する目的で、焼成により分散剤を除去して多孔質状の前記めっき下地層(d1)を形成する場合は、前記金属粒子(d)100質量部の範囲に対し、0.1~10質量部の範囲が好ましく、0.1~5質量部の範囲がより好ましい。
【0091】
前記流動体に用いる溶媒としては、水性媒体や有機溶剤を用いることができる。前記水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、水と混和する有機溶剤の混合溶剤、等が挙げられる。また、前記有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0092】
前記アルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0093】
また、前記流動体には、前記金属粒子(d)、溶媒の他に、必要に応じて塗工適正を向上させるために少量のエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、イソプレングリコール、グリセリン等を用いることができる。
【0094】
前記界面活性剤としては、一般的な界面活性剤を用いることができ、例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
【0095】
前記レベリング剤としては、一般的なレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0096】
前記粘度調整剤としては、一般的な増粘剤を用いることができ、例えば、アルカリ性に調整することによって増粘可能なアクリル重合体や合成ゴムラテックス、分子が会合することによって増粘可能なウレタン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、水添加ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン、金属石鹸、ジベンジリデンソルビトールなどが挙げられる。
【0097】
前記成膜助剤としては、一般的な成膜助剤を用いることができ、例えば、アニオン系界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩など)、疎水性ノニオン系界面活性剤(ソルビタンモノオレエートなど)、ポリエーテル変性シロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0098】
前記消泡剤としては、一般的な消泡剤を用いることができ、例えば、シリコーン系消泡剤、ノニオン系界面活性剤、ポリエーテル,高級アルコール、ポリマー系界面活性剤等が挙げられる。
【0099】
前記防腐剤としては、一般的な防腐剤を用いることができ、例えば、イソチアゾリン系防腐剤、トリアジン系防腐剤、イミダゾール系防腐剤、ピリジン系防腐剤、アゾール系防腐剤、ヨード系防腐剤、ピリチオン系防腐剤等が挙げられる。
【0100】
前記流動体の粘度(25℃でB型粘度計を用いて測定した値)は、0.1mPa・s以上500,000mPa・s以下が好ましく、0.2mPa・s以上10,000mPa・s以下がより好ましい。また、前記流動体を、後述するインクジェット印刷法、凸版反転印刷等の方法によって塗工(印刷)する場合には、その粘度は5mPa・s以上20mPa・s以下が好ましい。
【0101】
前記プライマー層(C)の上に前記流動体を塗工や印刷する方法としては、例えば、グラビア法、オフセット法、フレキソ法、パッド印刷法、グラビアオフセット法、凸版法、凸版反転法、スクリーン法、マイクロコンタクト法、リバース法、エアドクターコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、スクイズコーター法、含浸コーター法、トランスファーロールコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、インクジェット法、ダイコーター法、スピンコーター法、バーコーター法、ディップコーター法等が挙げられる。
【0102】
前記めっき下地層(d1)の単位面積当たりの質量は、1mg/m以上30,000mg/m以下が好ましく、1mg/m以上5,000mg/m以下が好ましい。
【0103】
本発明の積層体を構成する金属層(D)は、例えば、前記積層体をプリント配線板等に用いる場合に、長期間にわたり断線等を生じることなく、良好な通電性を維持可能な信頼性の高い配線パターンを形成することを目的として設けられる層である。
【0104】
前記めっき層(d2)は、前記めっき下地層(d1)の上に形成される層であるが、その形成方法としては、めっき処理によって形成する方法が好ましい。このめっき処理としては、簡便に前記めっき層(d2)を形成できる電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法が挙げられる。また、これらのめっき法を2つ以上組み合わせてもよい。例えば、無電解めっきを施した後、電解めっきを施して、前記めっき層(d2)を形成してもよい。
【0105】
前記の無電解めっき法は、例えば、前記めっき下地層(d1)を構成する金属に、無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる銅等の金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(皮膜)を形成する方法である。
【0106】
前記無電解めっき液としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものが挙げられる。
【0107】
前記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノボラン、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、フェノール等が挙げられる。
【0108】
また、前記無電解めっき液としては、必要に応じて、酢酸、蟻酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸等のジカルボン酸化合物;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸化合物;イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸化合物などの有機酸、またはこれらの有機酸の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物等の錯化剤を含有するものを用いることができる。
【0109】
前記無電解めっき液は、20℃以上98℃以下で用いることが好ましい。
【0110】
前記電解めっき法は、例えば、前記めっき下地層(d1)を構成する金属、または、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に、電解めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電解めっき液中に含まれる銅等の金属を、カソードに設置した前記めっき下地層(d1)を構成する金属粒子(d)または前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に析出させ、電解めっき層(金属皮膜)を形成する方法である。
【0111】
前記電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、金、銀、クロム等の金属のめっき液が挙げられる。
【0112】
前記電解めっき液は、20℃以上98℃以下で用いることが好ましい。
【0113】
前記めっき層(d2)の形成方法とは、めっき下地層(d1)の導電性に応じて、適宜選択すれば良く、めっき下地層(d1)に導電性がない場合には、前記無電解めっきを実施した後、必要に応じて電解めっきによる厚膜化を行えば良いし、めっき下地層(d1)が充分な導電性を有する場合には、生産性の観点から、直接電解めっきを実施することが好ましい。
【0114】
前記めっき層(d2)の膜厚は、1μm以上50μm以下が好ましい。前記めっき層(d2)の膜厚は、前記めっき層(d2)を形成する際のめっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【0115】
本発明の積層体のうち、薄い金属層(D)を形成したものは、セミアディティブ工法用のプリント配線板製造基材として利用することができる。本発明の積層体をセミアディティブ工法用の積層体として用いる場合、金属層(D)は、めっき下地層(d1)のみで使用しても良いし、めっき下地層(d1)上に薄いめっき層(d2)を形成した形態で使用しても良い。本発明の積層体を、セミアディティブ工法用の積層体として使用する場合、金属層Dの厚みとしては、10nm~5μmの範囲で用いることが好ましく、めっきシードとしての導電性の観点から、金属層Dの厚みは50nm以上であることが好ましく、導電層形成後のシードエッチングを効率良く行う観点から、金属層Dの厚みは3μm以下であることがより好ましい。
【0116】
本発明の積層体をサブトラクティブ法用の基材として用いる場合、金属層Dの厚みは、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択すれば良いが、高密度パターン形成性と回路導電性の観点から4μm~10μm厚にするのが好ましい。必要とする回路パターンがファインピッチでない場合には、必要に応じて、より厚い金属層Dを形成しても良い。
【0117】
本発明の積層体は、プリント配線板、タッチパネル向け導電性フィルム、タッチパネル用メタルメッシュ、有機太陽電池、有機EL素子、有機トランジスタ、非接触ICカード等のRFID、電磁波シールド、LED照明基材、デジタルサイネージなどの電子部材を製造するための基材として好適に用いることができる。特に、低誘電化された材料を用いた積層体は、高周波帯域における伝送損失を抑制したプリント配線板製造用途に好適に用いることが可能である。
【実施例0118】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0119】
(製造例1:アミノトリアジン変性ノボラック樹脂およびエポキシ樹脂の混合樹脂の製造)
温度計、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコに、フェノール750質量部、メラミン75質量部、41.5質量%ホルマリン346質量部、およびトリエチルアミン1.5質量部を加え、発熱に注意しながら100℃まで昇温した。還流下100℃にて2時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら180℃まで2時間かけて昇温した。次いで、減圧下で未反応のフェノールを除去し、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂を得た。水酸基当量は120g/当量であった。
次に、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂35質量部、およびエポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 850-S」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ基当量188g/当量)65質量部を混合後、メチルエチルケトンで不揮発分2質量%となるように希釈し、均一に混合することで、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂およびエポキシ樹脂の混合樹脂溶液を得た。
【0120】
(調製例1:プライマー組成物(1)の調製)
シリカ粒子(日産化学株式会社製「オルガノシリカゾルMIBK-ST-L」;平均粒子径0.05μm)にメチルエチルケトンを加えて、不揮発分2質量%のシリカ粒子分散液を得た。次いで、得られたシリカ粒子分散液100質量部と、製造例1で得られた不揮発分2質量%のアミノトリアジン変性ノボラック樹脂およびエポキシ樹脂の混合樹脂溶液100質量部とを混合してプライマー組成物(1)を得た。
【0121】
[流動体(1)の調製]
特許第4573138号公報記載の実施例1にしたがって、銀ナノ粒子とカチオン性基(アミノ基)を有する有機化合物の複合体である灰緑色の金属光沢があるフレーク状の塊からなるカチオン性銀ナノ粒子を得た。その後、この銀ナノ粒子の粉末を、エチレングリコール45質量部と、イオン交換水55質量部との混合溶媒に分散させて、カチオン性銀ナノ粒子が5質量%の流動体(1)を調製した。
【0122】
(実施例1)
絶縁性基材(A)としてユーピレックス(登録商標)ポリイミドフィルム(宇部興産製、厚み50μm)を用い、熱可塑性樹脂層(B)としてテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA:Perfluoroalkane)フィルムであるFluon+(登録商標)EA-2000フィルム(AGC製、厚さ25μm、軟化点280℃、融点300℃)を用いて、EA-2000フィルムとユーピレックスを積層し、温度360℃、圧力10MPaの条件で5分間プレスし、絶縁性基材(A)の上に熱可塑性樹脂層(B)が順次積層された積層体を得た。前記熱可塑性樹脂層(B)の表面に、調製例1で得られたプライマー組成物(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて、その乾燥後の厚さが400nmとなるように塗工した。次いで、熱風乾燥機を用いて160℃で3分間乾燥することによって、前記絶縁性基材(A)の上に、前記熱可塑性樹脂層(B)と前記プライマー層(C)が順次積層された積層体を得た。
【0123】
さらに、上記で得られた積層体のプライマー層(C)の表面に、前記流動体(1)を、バーコーターを用いて塗工した。次いで、140℃で1分間乾燥し、前記プライマー層(C)の表面に前記めっき下地層(d1)に相当する銀層(膜厚100nm)を形成した。
【0124】
上記で得られた銀層をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2.5A/dmで30分間電解めっきを行うことによって、前記めっき下地層(d1)の表面に、電解銅めっきによるめっき層(d2)を形成した(膜厚15μm)。前記電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(奥野製薬工業(株)製「トップルチナSF」)5ml/Lを用いた。なお、前記めっき下地層(d1)およびその上に形成した電解銅めっきによるめっき層(d2)を合わせたものが、前記金属層(D)に相当する。
【0125】
以上の方法によって、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)、プライマー層(C)、および金属層(D)が順次積層された積層体(1)を得た。
【0126】
(実施例2)
実施例1と同様の方法によってめっき下地層(d1)を形成した後に300℃で5分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法によって、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)とプライマー層(C)が混合層(E)を形成した層、および金属層(D)が順次積層された積層体(2)を得た。
【0127】
(実施例3)
実施例1と同様の方法によってめっき層(d2)を形成した後に300℃で5分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法によって、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)とプライマー層(C)が混合層(E)を形成した層、および金属層(D)が順次積層された積層体(3)を得た。
【0128】
(実施例4)
実施例1と同様の方法によってプライマー層(C)を形成した後に300℃で5分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法によって、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)とプライマー層(C)が混合層(E)を形成した層、および金属層(D)が順次積層された積層体(4)を得た。
【0129】
(実施例5)
実施例2で行った銀層の形成の代わりに、スパッタ法による金属連続膜を形成したこと以外は、実施例2と同様の方法によって、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)とプライマー層(C)が混合層(E)を形成した層、および金属層(D)が順次積層された積層体(5)を得た。金属連続膜は、スパッタリング装置を用いて形成した。実施例2と同様に作製した絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)とプライマー層(C)が順次積層された積層体の表面に、徳田製作所製RFスパッタリング装置を用いて、80%のニッケルと20%のクロムとを含有する厚さ20nmの層、および厚さ100nmの銅層を逐次形成して、前記めっき下地層(d1)に相当する金属層を形成した。
【0130】
(実施例6)
実施例2で行った銀層の形成の代わりに、金属錯体層を還元して連続金属膜を形成したこと以外は、実施例2と同様の方法によって、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)とプライマー層(C)が混合層(E)を形成した層、および金属層(D)が順次積層された積層体(6)を得た。連続金属膜は、銀錯体インクTEC-PR-010(InkTec製)を用いて形成した。、前記銀錯体インクをバーコーターを用いて塗工して、140℃で1分間乾燥することによって、前記プライマー層(C)の表面に前記めっき下地層(d1)に相当する金属層(膜厚100nm)を形成した。
【0131】
(実施例7)
実施例1で用いた絶縁性基材(A)と熱可塑性樹脂層(B)の代わりに、カネカ製PIXEO(登録商標)フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)、プライマー層(C)、および金属層(D)が順次積層された積層体(7)を得た。カネカ製PIXEOフィルムは、最表面にガラス転移温度275℃の熱可塑性ポリイミド樹脂を有するポリイミドフィルムであり、絶縁性基材(A)は厚さ34mの熱硬化性ポリイミドで、熱可塑性樹脂層(B)は厚さ8mの熱可塑性ポリイミドである。
【0132】
(実施例8)
実施例7と同様の方法によってめっき下地層(d1)を形成した後に300℃で5分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例7と同様の方法によって、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)とプライマー層(C)が混合層(E)を形成した層、および金属層(D)が順次積層された積層体(8)を得た。
【0133】
(比較例1)
実施例1で用いた絶縁性基材(A)の上に熱可塑性樹脂層(B)が順次積層された積層体の熱可塑性樹脂層表面と12μm圧延銅箔3EC-M3S-HTE(三井金属製)の祖化処理されていない平滑なシャイン面とをあわせて、温度360℃、圧力3.7MPaで10分間真空プレスして、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)、および金属層(D)が順次積層された積層体(R1)を得た。
【0134】
(比較例2)
比較例1で用いた絶縁性基材(A)と熱可塑性樹脂層(B)の代わりに、カネカ製PIXEO(登録商標)フィルムを用いたこと以外は、比較例1と同様の方法によって、絶縁性基材(A)の上に、熱可塑性樹脂層(B)、および金属層(D)が順次積層された積層体(R2)を得た。
【0135】
前記の実施例1~8および比較例1で得られた積層体(1)~(8)、(R1)について、下記の測定および評価を行った。
【0136】
[ピール強度の測定]
前記で得られた各積層体について、株式会社島津製作所製「オートグラフAGS-X 500N」を用いてピール強度を測定した。なお、測定に用いるリード幅は5mm、そのピールの角度は90°とした。また、本発明でのピール強度の測定は、金属めっき層の厚さ15μmにおける測定値を基準として実施した。
【0137】
[密着力の評価]
前記で測定したピール強度の値から、下記の基準にしたがって密着力を評価した。
A:ピール強度の値が750N/m以上である。
B:ピール強度の値が600N/m以上、750N/m未満である。
C:ピール強度の値が450N/m以上、600N/m未満である。
D:ピール強度の値が450N/m未満である。
【0138】
実施例1~8、比較例1および2の評価結果を表1に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
本発明の積層体である実施例1~8で得られた積層体(1)~(8)は、密着性が充分に高いことを確認した。
【0141】
一方、比較例1および2で得られた積層体(R1)および(R2)は、密着性が不十分なことを確認した。