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特開2022-190872粘着製品及びこれを備えた粘着製品付き容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190872
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】粘着製品及びこれを備えた粘着製品付き容器
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20221220BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221220BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221220BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/00 H
B32B27/00 M
B65D25/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099365
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪股 志帆
【テーマコード(参考)】
3E062
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AB01
3E062AB07
3E062DA01
3E062DA02
3E062DA07
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AN02
4F100AN02B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB05
4F100CB05B
4F100DA20
4F100DA20B
4F100DC21
4F100DC21B
4F100DG10
4F100DG10A
4F100GB16
4F100JL13
4F100JL13B
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA02
4J004CB02
4J004CC08
4J004CE01
4J004CE03
4J004FA01
4J040DG001
4J040JB09
4J040MA09
4J040MB10
4J040NA06
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】接着力を確保しながらも、対象物に糊が残ったり、基材が破れたりすることを抑制することができる粘着製品及びこれを備えた粘着製品付き容器を提供する。
【解決手段】粘着製品4は、基材5と、前記基材5の一面に設けられ、間隔を空けて配置された複数の糊部7と、を備える。各糊部7は、三つ以上の頂点71と、隣り合う頂点71を結ぶ複数の辺72と、でなす多角形で、かつ少なくとも一つの辺72が凹状に湾曲している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一面に設けられ、間隔を空けて配置された複数の糊部と、
を備え、
各前記糊部は、三つ以上の頂点と、隣り合う前記頂点を結ぶ複数の辺と、でなす多角形で、かつ少なくとも一つの前記辺が凹状に湾曲している、
粘着製品。
【請求項2】
少なくとも隣り合う2つの前記辺が凹状に湾曲している、
請求項1に記載の粘着製品。
【請求項3】
各前記辺が凹状に湾曲している、
請求項1又は請求項2記載の粘着製品。
【請求項4】
各前記糊部が、三つの頂点を有する三角形状に形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着製品。
【請求項5】
凹状に湾曲している前記辺は、隣り合う前記頂点を結ぶ第一仮想線分の中点と前記糊部の図心とを結ぶ第二仮想線分上において、前記中点から前記図心に向かって、前記第二仮想線分の長さ寸法の10%以上の寸法進んだ点を通る、
請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着製品。
【請求項6】
前記複数の糊部は、
第一の方向に複数の前記糊部が並ぶ第一の列と、
前記第一の方向に複数の前記糊部が並び、かつ前記第一の列に対して、前記第一の方向に直交する第二の方向にずれる第二の列と、
を有し、
前記第一の列及び前記第二の列の各前記糊部は、前記第一の方向に対称でかつ前記第二の方向に非対称な形状に形成されており、
前記第二の列の各前記糊部は、前記第一の列の各糊部に対して、前記第二の方向に反転した形状に形成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の粘着製品。
【請求項7】
前記第二の列の各前記糊部は、前記第一の列の各前記糊部に対して前記第一の方向にもずれており、
前記第一の列の複数の前記糊部に対し、前記第一の方向に沿うように見て、前記第二の列の各前記糊部の前記第二の方向の寸法の30%以上の寸法が重なっている、
請求項6記載の粘着製品。
【請求項8】
前記第二の列の各前記糊部の図心は、前記第一の方向に沿うように見て、前記第一の列の前記糊部に対して重なっている、
請求項7記載の粘着製品。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の粘着製品と、
前記粘着製品が貼り付けられた容器と、
を備える、
粘着製品付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着製品及びこれを備えた粘着製品付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の粘着製品が記載されている。特許文献1記載の粘着製品は、基材と、基材の一面に設けられた2以上の点状粘着剤と、を備える。特許文献1記載の粘着製品では、基材の単位面積当たりの点状粘着剤が占める割合を、所定の範囲内に設定することで、対象物(特許文献1では被着体)から粘着製品を剥がす際に、対象物に損傷を与えにくくすることができる。
【0003】
点状粘着剤は、ドット状粘着剤であり、円形状に形成されている。また、特許文献1には、点状粘着剤として、円形状のほか、多角形状等の形状を取り得ることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-181054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の粘着製品のように、点状粘着剤の形状が、円形状や、複数の直線状の辺で構成された多角形状に形成されていると、点状粘着剤の面積率を所定の範囲にしたとしても、粘着製品を剥がした際に、対象物に糊が残ったり、基材が破れたりすることが生じやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、接着力を確保しながらも、対象物に糊が残ったり、基材が破れたりすることを抑制することができる粘着製品及びこれを備えた粘着製品付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の粘着製品は、基材と、前記基材の一面に設けられ、間隔を空けて配置された複数の糊部と、を備える。 各前記糊部は、三つ以上の頂点と、隣り合う前記頂点を結ぶ複数の辺と、でなす多角形で、かつ少なくとも一つの前記辺が凹状に湾曲している。
【0008】
また、本発明に係る粘着製品では、上記態様において、少なくとも隣り合う2つの前記辺が凹状に湾曲していることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る粘着製品では、上記態様において、各前記辺が凹状に湾曲していることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る粘着製品では、上記態様において、前記各糊部が、三つの頂点を有する三角形状に形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る粘着製品では、上記態様において、前記各辺は、隣り合う前記頂点を結ぶ第一仮想線分の中点と前記糊部の図心とを結ぶ第二仮想線分上において、前記中点から前記図心に向かって、前記第二仮想線分の長さ寸法の10%以上の寸法進んだ点を通ることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る粘着製品では、上記態様において、前記複数の糊部は、第一の方向に複数の前記糊部が並ぶ第一の列と、前記第一の方向に複数の前記糊部が並び、かつ前記第一の列に対して、前記第一の方向に直交する第二の方向にずれる第二の列と、を有し、前記第一の列及び前記第二の列の各前記糊部は、前記第一の方向に対称でかつ前記第二の方向に非対称な形状に形成されており、前記第二の列の各前記糊部は、前記第一の列の各糊部に対して、前記第二の方向に反転した形状に形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る粘着製品では、上記態様において、
前記第二の列の各前記糊部は、前記第一の列の各前記糊部に対して前記第一の方向にもずれており、前記第一の列の複数の前記糊部に対し、前記第一の方向に沿うように見て、前記第二の列の各前記糊部の前記第二の方向の寸法の30%以上の寸法が重なっていることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る粘着製品では、前記第二の列の各前記糊部の図心は、前記第一の方向に沿うように見て、前記第一の列の前記糊部に対して重なっていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る一態様の粘着製品付き容器は、上記態様の粘着製品と、前記粘着製品が貼り付けられた容器と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る上記態様の粘着製品及びこれを備えた粘着製品付き容器は、接着力を確保しながらも、対象物に糊が残ったり、基材が破れたりすることを抑制することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る粘着製品付き容器の斜視図である。
図2図2は、同上の粘着製品付き容器の分解斜視図である。
図3図3(A)は、同上の粘着製品のうら面からみた図である。図3(B)は、図3(A)のA部分拡大図である。
図4図4は、同上の糊部の形状を説明するための図である。
図5図5(A)は、糊部に対して、第一仮想線分に非平行な界面が近付く際の説明図である。図5(B)は、糊部に対して、第一仮想線分に平行な界面が近付く際の説明図である。
図6図6は、変形例に係る粘着製品のうら面からみた図である。
図7図7は、更なる変形例に係る粘着製品のうら面からみた図である。
図8図8は、実施例及び比較例の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
(1)全体
本実施形態に係る粘着製品付き容器1は、図1に示すように、容器2の天面に粘着製品4が貼り付けられている。容器2の内容物としては、特に制限はなく、例えば、液体、固体、気体又はこれらの複合物のいずれであってもよい。液体からなる内容物としては、例えば、飲料、薬剤、化粧水等が挙げられ、薬剤としては、例えば、消臭剤、芳香剤等が挙げられる。ここでは、内容物として、液状薬剤である消臭剤を一例として説明する。
【0019】
(2)容器
容器2は、粘着製品4が貼り付けられる対象物である。容器2は、図2に示すように、容器本体21と、カバー3と、を備える。
【0020】
容器本体21は、内容物を収容し得る部分であり、中空状に形成され、かつ上端部に開口を有する。容器本体21の開口は、取外し可能に取り付けられたキャップ22によって閉じられている。キャップ22の天板下面には、上下方向に延びた帯状の吸液芯材が取り付けられており、キャップ22を引き上げることで、吸液芯材を容器本体21から露出させることができる。容器本体21は、吸液芯材を引き上げた位置に保持することができる。吸液芯材によって、容器本体21内の液状薬剤を容器2外部に揮散させることができる。
【0021】
カバー3は、引き上げられた状態の吸液芯材を覆う。カバー3は、容器本体21に対して取外し可能に取り付けられている。容器本体21に対するカバー3の取付けは、例えば、嵌め込み、凹凸嵌合、ねじ込み、スナップフィット構造等により実現される。カバー3は、中心軸が上下方向に延びた略円筒状の周壁31と、周壁31の上端を閉じる天板32と、で構成されている。
【0022】
カバー3は、複数の通気穴33を有する。複数の通気穴33は、天板32と周壁31との両方に形成されており、天板32又は周壁31を貫通している。複数の通気穴33によれば、容器本体21から揮散された液状薬液を、カバー3の外に放出することができる。通気穴33の形状としては、特に制限はなく、例えば、丸穴、長穴、葉や花弁を模した穴、円弧状の穴等、デザイン性や機能性を考慮して種々の形状が採用される。
【0023】
(3)粘着製品
粘着製品4は、容器2に対して取外し可能に貼り付けられている。粘着製品4としては、例えば、商標等の図柄が印刷された商品ラベル、デザインラベル、POPラベル(アテンションラベル)、封止用の封かんラベル、容器と蓋との封をする帯ラベル、示温ラベル、ウォーターオフラベル、内容物の成分が記載された成分表等が挙げられる。粘着製品4は、容器本体21やカバー3のうちのどの部分に貼り付けられてもよいが、ここでは、一例として、カバー3の天板32上面に貼り付けられた商品ラベルを挙げて説明する。
【0024】
ここで、図3には粘着製品のうら面を示している。図3に示すように、粘着製品4は、基材5と、複数の糊部7と、を備える。基材5の一面に複数の糊部7が設けられることで、粘着製品4は、容器2に対して貼り付けられる。本実施形態に係る粘着製品4は、容器2に対する一定の接着力と、容器2からの剥離のし易さとを併せ持つような工夫がなされている。
【0025】
ここでいう「一定の接着力」とは、生産時や流通の過程で、容器2から粘着製品4が剥がれない程度の強さの接着力を意味する。本明細書では、一定の接着力を有することを、「接着性を有する」「接着性がある」などという。「剥離のし易さ」とは、容器2から粘着製品4を剥がした際に、基材5が破れたり、糊が残ったりすることなく粘着製品4を剥がすことができる容易さを意味する。本明細書では、剥離し易い性質を有することを「剥離性を有する」「剥離性がある」「剥離性が高い」などという。
【0026】
(3.1)基材
基材5は、おもて面に印刷層が設けられ、かつうら面に複数の糊部7が設けられる支持体として機能する。基材5の素材としては、特に制限はないが、例えば、樹脂系基材、紙系基材、ゴム系基材、繊維径基材、木質系基材、金属系基材等が挙げられる。
【0027】
樹脂系基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。紙系基材としては、例えば、和紙、洋紙、上質紙、アート紙、グラシン紙、クラフト紙、クルパック紙、クレープ紙、クレーコート紙、トップコート紙、樹脂ラミネート紙、樹脂コート紙等が挙げられる。ゴム系基材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。繊維径基材としては、例えば、天然繊維(例えば、綿、麻、絹等)、化学繊維(例えば、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等)等が挙げられる。これら基材5は、2種以上積層されて積層体を構成してもよいし、単層で構成されてもよい。
【0028】
基材5は、シート状又はフィルム状に形成されており、可とう性を有している。基材5の厚さ寸法は、可とう性があれば特に制限はないが、例えば、30μm以上200μm以下であり、好ましくは50μ以上150μm以下である。
【0029】
基材5は、平面視略円形状に形成されている。ただし、基材5の形状は、本発明では特に制限はなく、例えば、略三角形状、略矩形状、五角形以上の多角形状、長円形、ハート形、星形等であってもよい。基材5のおもて面に設けられた印刷層には、例えば、文字、図柄、着色等の印刷が施されるが、印刷層はなくてもよく、無模様かつ一色の化粧層であってもよいし、基材5のおもて面が、粘着製品4のおもて面を構成してもよい。
【0030】
(3.2)糊部
糊部7は、粘着製品4において粘着性をもつ部分であり、容器2と基材5との間に配置される。複数の糊部7は、基材5のうら面の略全面にわたって設けられており、間隔を空けて配置されている。各糊部7は、図3(B)に示すように、糊殺し部6に囲まれており、多角形状に形成されている。
【0031】
糊殺し部6は、糊部7よりも粘着力が弱い部分を意味し、ここでは、粘着力を持たない部分のことである。糊殺し部6は、例えば、基材5のうら面の全面にわたって糊を隙間なく塗り(いわゆる「べた塗り」)、その後、糊の粘着面のうちの糊部7の周囲に対応する部分に対してニスを積層することで形成される。なお、糊殺し部6は、基材5の一面において、糊を設けない部分で形成されてもよい。また、糊殺し部6は、フィルムを用いる方法等の他の方法で形成されてもよい。
【0032】
各糊部7は、図4に示すように、三つ以上の頂点71と、隣り合う頂点71を結ぶ複数の辺72とでなす多角形に形成されている。糊部7としては、多角形であれば特に制限はなく、例えば、三角形状、四角形状(正方形状、長方形状、菱形状、平行四辺形状)、五角形状、台形状等であってもよいが、ここでは、一例として、三角形状を挙げて説明する。
【0033】
頂点71は、本実施形態では、三つある。各頂点71は、鈍角であってもよいし、鋭角であってもよい。ここでいう「頂点71」は、糊部7を基準にした出隅を意味し、頂点71を形成する一対の辺72は、真っ直ぐな線でなくてもよい。
【0034】
全ての辺72は、凹状に湾曲している。ここでいう「凹状に湾曲」とは、辺72の少なくとも一部が、糊部7が凹む向きに湾曲していることを意味する。本実施形態では、一の辺72の全長が円弧(劣弧)であるが、例えば、円弧の両端と頂点71との間に直線が介在してもよい。また、辺72の湾曲している部分は、円弧でなくてもよく、自由曲線であってもよいし、多数の鈍角を連ねて略円弧状に形成されてもよい。ただし、曲線と直線との接点は、滑らかに連続することが好ましい。
【0035】
各辺72は、全ての部分が、隣り合う頂点71を結ぶ仮想線分(これを「第一仮想線分73」という場合がある)よりも、糊部7の図心75側に位置している。また、各辺72は、第一仮想線分73の中点M1と図心75とを結ぶ仮想線分(これを「第二仮想線分74」という場合がある)上において、中点M1から図心75に向かって、第二仮想線分74の長さ寸法の10%以上の寸法進んだ点を通ることが好ましい。すなわち、第二仮想線分74と各辺72との交点を点P1とすると、第一仮想線分73の中点M1と点P1との間の寸法L1は、第二仮想線分74の長さ寸法L2の10%以上であることが好ましい。
【0036】
粘着製品4の接着性を確保しつつ、剥離性を高くしたい場合、寸法L1は、寸法L2の50%以上80%以下であることが好ましい。一方、粘着製品4の易剥離性を有しつつ、接着力を高くしたい場合、寸法L1は、寸法L2の10%以上50%以下であることが好ましい。そして、剥離性と接着性とを両立する場合、寸法L1は、寸法L2の40%以上70%以下であることが好ましい。なお、本明細書でいう「仮想線分」とは、実際に製品には現れない概念上の線分を意味する。
【0037】
このように、糊部7の面積を変えることで、容器2の材質や形状に応じて、粘着製品4の接着性と剥離性とを調整することができるが、糊部7の各辺72を凹状に湾曲させることで、接着性を確保しながらも、剥離性をより高くする効果を得ることができる。
【0038】
ここで、図5(A)(B)に、粘着製品4を容器2から剥がすときの剥離した粘着製品4と容器2との界面を直線X1で示す。界面X1が第一仮想線分73に非平行である場合、界面X1が糊部7に近付くと、界面X1は、各辺72に当たることなく、最初に頂点71に当たる。頂点71は、他の部分に比べて剥がれやすいため、頂点71の剥がれをきっかけにすることで、基材5が破れたり、糊が残ったりせずに糊部7を剥がすことができる。
【0039】
また、界面(直線X2)が第一仮想線分73に平行である場合、界面X2が糊部7に近付くと、この場合も、界面X2は、各辺72に当たることなく、最初に頂点71に当たる。この場合も、第二仮想線分74の両端の頂点71に対して界面X1が当たり、頂点71の剥がれをきっかけにして糊部7を剥がすことができる。このため、粘着製品4が容器2から剥離する際に、粘着製品4の外周縁のどの位置から剥がしても、基材5が破れたり、糊が残ったりしにくく、剥離性を向上させることができる。
【0040】
各糊部7の大きさは、接着性及び剥離性の観点から、一辺が3mm以上10mm以下の矩形状の枠内に収まる大きさであることが好ましい。糊部7が、一辺10mm以下の矩形状の枠内に収まると、適切な剥離性を得ることができる。一方、糊部7が、一辺3mm以上の矩形状の枠内に収まると、適切な接着性を得ることができる。ここでいう「矩形状の枠内に収まる大きさ」とは、複数の頂点71のうちの少なくとも一つの頂点71が枠上に位置し、枠内において取り得る最大サイズの糊部7の大きさであることを意味する。
【0041】
糊部7を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、シリコーン系、エポキシ系等の一般的な粘着剤が用いられる。これらの粘着剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0042】
このような構成の糊部7は、図3(A)に示すように、基材5のうら面の略全面にわたって敷き詰められるようにして配置される。基材5のうら面に対する糊部7が占める割合(単位面積当たりの面積率)は、例えば、20%以上70%以下であることが好ましく、より好ましくは、30%以上60%以下である。
【0043】
ここで、図3(B)に示すように、同じ向きに配置された複数の糊部7が並ぶ方向のうちの一つを第一の方向とし、基材5上において第一の方向に直交する方向を第二の方向として定義する。ここでは、第一の方向として横方向を例示し、第二の方向として縦方向を例示して説明する。また、複数の糊部7のうち、横方向に並ぶ一の列の糊部7を「第一の列81」とし、第一の列81に隣接する他の列の糊部7を「第二の列82」として定義する。本実施形態に係る複数の糊部7は、隣り合う第一の列81と第二の列82とで構成される一組の糊列8が、縦方向に複数並ぶことで構成されている。このため、以下では、一の糊列8における、第一の列81と第二の列82との関係を主に説明し、他の糊列8については、同じ構成であるため説明を省略する。
【0044】
第一の列81は、横方向に並ぶ複数の糊部7で構成されており、全ての糊部7は同じ大きさ及び形状に形成されている。隣り合う糊部7の横方向に沿う辺72の間には、糊殺し部6が介在しており、すなわち、隣り合う糊部7の頂点71同士は、互いに離れている。ただし、本発明では、隣り合う糊部7の一部はつながっていてもよい。
【0045】
第二の列82は、第一の列81と同様、横方向に並ぶ複数の糊部7で構成されており、全ての糊部7は同じ大きさ及び形状に形成されている。第二の列82は、第一の列81に対して、縦方向にずれている。そして、第二の列82の各糊部7は、第一の列81の各糊部7に対して、縦方向に反転した形状に形成されている。
【0046】
第一の列81における隣り合う糊部7の間の寸法は、0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.3mm以上1.0mm以下である。また、第二の列82における隣り合う糊部7の間の寸法は、第一の列81と同じであることが好ましい。ここでいう「隣り合う糊部7の間の寸法」は、横方向における隣り合う糊部7の間の糊殺し部6の寸法のうちの最小値を意味する。本実施形態では、隣り合う糊部7の一方の糊部7の頂点71と、他方の糊部7の頂点71との間の寸法を指す。
【0047】
ところで、本実施形態に係る各糊部7は、横方向に対称でかつ縦方向に非対称な多角形である。ここでいう「横方向に対称」とは、糊部7の図心75を通る縦方向に平行な対称軸に対して線対称であることを意味する。また、「縦方向に非対称」とは、糊部7の図心75を通る横方向に平行な対称軸に対して、非対称であることを意味する。
【0048】
例えば、基材5の全面にわたって、糊部7が全て同じ向きで形成されると、糊部7の頂点71が3つの方向のいずれかを向くことになる。本実施形態では、各糊部7の各辺72が凹状に湾曲しており、粘着製品4をどの方向から剥がしても、頂点71が剥がれることをきっかけに糊部7が剥がれるように構成されているが、界面が真っ直ぐでない等が生じた場合、想定通り剥離しない場合もあり得る。
【0049】
これに対し、本実施形態に係る粘着製品4では、第二の列82の各糊部7が、第一の列81の各糊部7に対して、縦方向に反転した形状に形成されていることで、各糊部7の頂点71の向きを分散させることができる。これにより、界面がどの向きから近付いても、より高い剥離性を有する粘着製品とすることができる。
【0050】
また、第二の列82の糊部7は、第一の列81の糊部7に対して、横方向にずれており、具体的には、第一の列81の隣り合う糊部7の間に配置されている。そして、第二の列82の糊部7は、第一の列81の隣り合う糊部7に対し、横方向に沿うように見て(言い換えると、糊部7の横から、図3(B)にて矢印E1に沿って見た際に)重なっている。ここでは、図3(B)に示すように、第一の列81が形成されている縦方向の領域R1に対し、第二の列82の糊部7の縦方向の寸法の30%以上が重なっていることが好ましく、より好ましくは、第二の列82の糊部7の図心75が重なる。
【0051】
また、本実施形態の第二の列82の一の糊部7は、第一の列81の隣り合う一の糊部7に対し、縦方向に沿うように見て、第二の列82の糊部7の横方向の寸法の30%以上50%以下の寸法が重なっている。
【0052】
これによって、基材5のうら面に対して糊部7が占める面積率を高くすることができ、高い接着性を得ることができる。とくに、本実施形態では、カバー3に複数の通気穴33が形成されており、通気穴33と糊部7とが重なる部分では、粘着製品4の接着力を得ることができない。このため、第二の列82の各糊部7が、第一の列81の糊部7に対して、横方向に見て重なるようにすることで、各糊部7の形状を剥離性が高い形状としながら、複数の糊部7の面積率を高くすることができる。この結果、複数の通気穴33を有する容器2に対しても適切な接着性を確保することができる。
【0053】
<効果>
以上説明したように、本実施形態に係る粘着製品4では、各糊部7の少なくとも一つの辺72が凹状に湾曲しているため、粘着製品4を剥がす際に、粘着製品4の外周縁のどの位置から剥がしても、頂点71が剥がれることをきっかけにして糊部7が剥がれるため、基材5が破れたり、糊が残ったりしにくく、剥離性を向上させることができる。この結果、接着力を確保しながらも、対象物に糊が残ったり、基材5が破れたりすることを抑制することができる。
【0054】
また、各糊部7が三つの頂点71を有する三角形に形成されているため、各頂点71を鋭角に設計しやすく、剥離性を向上させることができる。
【0055】
また、糊部7の各辺72は、第二仮想線分74上において、中点M1から図心75に向かって、第二仮想線分74の長さ寸法L2の10%以上の寸法進んだ点を通るため、接着力を有しつつ、剥離性を高くすることができる。
【0056】
また、複数の糊部7で構成された第一の列81及び第二の列82において、第二の列82の各糊部7は、第一の列81の各糊部7に対して、縦方向に反転した形状に形成されているため、各糊部7の頂点71の向きを分散させることができ、より高い剥離性を得ることができる。
【0057】
また、第二の列82の各糊部7は、第一の列81の各糊部7に対して横方向にもずれており、第一の列81の複数の糊部7に対し、横方向に沿うように見て、第二の列82の各糊部7の縦方向の寸法の30%以上の寸法が重なっているため、基材5に対して糊部7を敷き詰めることができ、剥離性を確保しながら、接着力を高くすることができる。
【0058】
また、第二の列82の各糊部7は、前記第一の列の複数の糊部に対し、横方向に沿うように見て、図心が重なっているため、基材5に対して、より一層、糊部7を敷き詰めることができ、接着力をより高くすることができる。
【0059】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態のうちの一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0060】
(1)変形例1
上記実施形態に係る糊部7は、三角形状に形成されたが、本発明では、上述したように、多角形であればよく、例えば、図6に示すように、五角形の各辺72が凹状に湾曲した形状であってもよい。このように、五角形であっても、横方向に対称でかつ縦方向に非対称な多角形であるため、上記実施形態と同様、第二の列82の各糊部7を、第一の列81の各糊部7に対して、縦方向に反転した形状に形成することができる。また、第一の列81が形成されている縦方向の領域R1に対し、横方向に沿うように見て、第二の列82の各糊部7の縦方向の寸法の30%以上の寸法が重なっている。
【0061】
このため、本変形例においても、基材5に対して糊部7を敷き詰めることができ、剥離性を確保しながら、接着力を高くすることができる。なお、本変形例では、第一の列81の領域R1に対し、横方向に沿うように見て、第二の列82の各糊部7の図心は外れた位置あるが、領域R1と重なっていてもよい。例えば、第一の列81の複数の糊部7のピッチと、第二の列82の複数の糊部7のピッチと、の各々を拡げた上で、第一の列81と第二の列82とを近付けることで、実現することができる。
【0062】
なお、五角形状の糊部7は、三角形状の糊部7に対し、同じ矩形状の枠内に収まる大きさで比較すると、面積が大きくなる分、接着力が高いが、頂点71を有する角の幅が太いため剥離性ではやや劣る。
【0063】
(2)その他の変形例
上記実施形態に係る粘着製品4は、容器2に貼り付けられたが、本発明に係る粘着製品4の貼り付け対象物は、容器2でなくてもよく、例えば、電化製品、家具、食品、書籍、雑貨等に対して貼り付けるものであってもよい。また、粘着製品4は、容器2、電化製品、家具、食品、書籍、又は雑貨等を覆う包装材に貼り付けられてもよい。包装材は、例えば透明なフィルムなどである。
【0064】
また、上記実施形態に係る容器2は、カバー3を備えたが、本発明では、カバー3はなくてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、同じ向きに配置された複数の糊部7が並ぶ第一の方向として「横方向」を例示し、第二の方向として「縦方向」を例示したが、図7のように、第一の方向を「縦方向」、第二の方向を「横方向」として定義してもよい。第一の列81を構成する同じ向きの複数の糊部7は、縦方向に並び、第二の列82は、横方向にずれている。この場合、第一の列81及び第二の列82の糊部7は、縦方向(第一の方向)に対称でかつ横方向(第二の方向)に非対称な多角形形状に形成されているといえる。第二の列82の各糊部7は、第一の列81の各糊部7に対して、横方向(第二の方向)に反転した形状に形成されているといえる。
【0066】
上記実施形態に係る糊部7は、全ての辺72が凹状に湾曲していたが、本発明では、多角形に含まれるすべての辺72のうちの少なくとも一つが凹状に湾曲していればよく、全ての辺72が凹状に湾曲していなくてもよい。
【0067】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0068】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0069】
<実施例>
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明に係る粘着製品は、以下の実施例に限定されない。
【0070】
(1)実施例1
実施例1として、基材及び糊部を次の材料で構成した。
・基材5:アート紙、厚さ寸法100μm
・糊部7:アクリル系粘着剤を使用。糊部の形状を、三角形状で、かつ各辺を凹状に湾曲した形状とした。
【0071】
実施例1の試験片として、基材の一面に、一つの糊部を形成したものを用いた。
【0072】
(2)比較例1
比較例1に係る粘着製品として、基材及び糊部の材料を実施例1と同じものを用いた。また、糊部の形状を、正方形で、かつ各辺を直線状に形成したものを用いた。比較例1の試験片として、実施例1の試験片と同様、基材の一面に、一つの糊部を形成したものを用いた。
【0073】
(3)比較例2
比較例2に係る粘着製品として、基材及び糊部の材料を実施例1と同じものを用いた。また、糊部の形状を、五角形とし、かつ各辺を中間で屈曲させた星形形状のものを用いた。比較例2の試験片として、実施例1の試験片と同様、基材の一面に、一つの糊部を形成したものを用いた。
【0074】
(4)比較例3
比較例3に係る粘着製品として、基材及び糊部の材料を実施例1と同じものを用いた。また、糊部の形状を、円形としたものを用いた。比較例3の試験片として、実施例1の試験片と同様、基材の一面に、一つの糊部を形成したものを用いた。
【0075】
(5)試験方法
実施例1、比較例1~3の各々の試験片において、図8に示す矢印の方向に沿って界面が近付くように、基材を剥がした。各試験片に対して3回以上試行し、基材が破れて残ったり、糊が残ったりした回数を記録し、材破又は糊残りの発生割合を算出した。その結果を、図8に示す。
【0076】
(6)結果
実施例1に係る試験片では、基材が破れたものが0%であるのに対し、比較例1では、界面の近付く方向によって基材が破れたものが生じ、比較例2,3では、やはり基材が破れたものが生じた。このことから、糊部の形状として、多角形でかつ各辺が凹状に湾曲した形状だと、基材が破れて残ったり、糊が残ったりしにくいことがわかった。
【符号の説明】
【0077】
1 粘着製品付き容器
2 容器
4 粘着製品
5 基材
6 糊殺し部
7 糊部
71 頂点
72 辺
73 第一仮想線分
74 第二仮想線分
75 図心
81 第一の列
82 第二の列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8