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特開2022-190999半導体基板の熱酸化膜形成方法及び半導体装置の製造方法
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  • 特開-半導体基板の熱酸化膜形成方法及び半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190999
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】半導体基板の熱酸化膜形成方法及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20221220BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01L21/316 S
H01L21/31 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099586
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
【テーマコード(参考)】
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
5F045AA20
5F045AB32
5F045AC11
5F045AD13
5F045BB03
5F045GB17
5F045HA04
5F058BC02
5F058BE03
5F058BF55
5F058BF62
(57)【要約】
【課題】
洗浄薬液の組成を変更することなく、熱酸化膜を狙い通りの厚さに再現性良く形成する熱酸化膜形成方法を提供する。
【解決手段】
洗浄で形成された化学酸化膜中のOH基の量が異なる複数の基板を準備し、これらを同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理し、OH基の量と熱酸化膜の厚さの第1の相関関係を取得する工程と、同じ洗浄条件で洗浄し、乾燥条件を変化させた基板のOH基の量を測定し、乾燥条件とOH基の量の第2の相関関係を取得する工程と、第1及び第2の相関関係を用いて乾燥条件と熱酸化膜厚の第3の相関関係を取得する工程と、第3の相関関係から乾燥及び熱酸化処理条件を決定する工程と、基板の洗浄を行う工程と、洗浄後の基板について、乾燥及び熱酸化処理条件決定工程で決定した条件を用いて乾燥及び熱酸化膜形成を行う工程を有する熱酸化膜形成方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に熱酸化膜を形成する方法であって、
予め、洗浄により形成された化学酸化膜を有する半導体基板であって、前記化学酸化膜中に含まれるOH基の量がそれぞれ異なる複数の半導体基板を準備し、前記複数の半導体基板を同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成し、第1の相関関係として前記化学酸化膜中のOH基の量と前記熱酸化膜の厚さの相関関係を取得する第1の相関関係取得工程と、
同じ洗浄条件で洗浄した後に乾燥条件を変化させて化学酸化膜を形成した複数の半導体基板のそれぞれについて前記化学酸化膜中のOH基の量を測定し、第2の相関関係として乾燥条件と化学酸化膜中のOH基の量の相関関係を取得する第2の相関関係取得工程と、
前記第1の相関関係及び第2の相関関係を用いて、第3の相関関係として半導体基板の洗浄後の乾燥条件と熱酸化膜の厚さの相関関係を取得する第3の相関関係取得工程と、
前記熱酸化膜形成対象の半導体基板の熱酸化膜の厚さが所定の厚さになるように、前記第3の相関関係を用いて、乾燥条件及び熱酸化処理条件を決定する乾燥及び熱酸化処理条件決定工程と、
前記熱酸化膜形成対象の半導体基板の洗浄を行う洗浄工程と、
前記洗浄工程後の前記熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥及び熱酸化処理を、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程で決定した乾燥条件及び熱酸化処理条件を用いて行う乾燥工程及び熱酸化膜形成工程とを有することを特徴とする半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【請求項2】
前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、前記熱酸化処理条件を前記第1の相関関係取得工程における前記熱酸化処理条件と同じ条件に決定することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【請求項3】
半導体基板の乾燥条件の初期値を設定し、熱酸化膜形成対象の半導体基板を前記初期値と同じ乾燥条件及び前記第1の相関関係取得工程における前記熱酸化処理条件で処理したと仮定したときの熱酸化膜の厚さを、前記第3の相関関係を用いて推定する熱酸化膜厚さ推定工程をさらに有し、
前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、前記熱酸化膜厚さ推定工程で推定した熱酸化膜厚さに基づいて乾燥条件及び熱酸化処理条件を決定することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【請求項4】
前記熱酸化膜厚さ推定工程において、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより厚い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥温度の前記初期値より高い乾燥温度に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより薄い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥温度の前記初期値より低い乾燥温度に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さと同じ厚さの場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥温度の前記初期値と同じ乾燥温度に決定することを特徴とする請求項3に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【請求項5】
前記熱酸化膜厚さ推定工程において、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより厚い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥時間の前記初期値より長い乾燥時間に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより薄い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥時間の前記初期値より短い乾燥時間に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さと同じ厚さの場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥時間の前記初期値と同じ乾燥時間に決定することを特徴とする請求項3に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【請求項6】
前記熱酸化膜厚さ推定工程において、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより厚い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱酸化処理条件として熱処理時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理時間より短い熱処理時間に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより薄い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱酸化処理条件として熱処理時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理時間より長い熱処理時間に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さと同じ厚さの場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱処理条件として熱処理時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理時間と同じ熱処理時間に決定することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【請求項7】
前記熱酸化膜厚さ推定工程において、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより厚い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱酸化処理条件として熱処理温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理温度より低い熱処理温度に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより薄い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱酸化処理条件として熱処理温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理温度より高い熱処理温度に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さと同じ厚さの場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱処理条件として熱処理温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理温度と同じ熱処理温度に決定することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【請求項8】
前記所定の厚さを1~10nmとすることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【請求項9】
前記OH基の量を、ATR測定用プリズムを用いて前記化学酸化膜のATR-FT-IR測定を行い、3300cm-1付近のOH基の吸光度から算出することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【請求項10】
前記半導体基板をシリコンウエーハ、前記熱酸化膜をシリコン酸化膜とすることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法により製造された熱酸化膜付き半導体基板を用いて半導体装置を製造することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の熱酸化膜形成方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路素子の多層化、薄型化に伴って、素子を構成する各種膜についてより一層の薄膜化が要求されている。例えば特許文献1には、シリコンウエーハの貼り合わせにおいて、用いられるシリコンウエーハはOH基を持った表面が必要とされており、通常のSC1洗浄液を用いて洗浄して表面に薄い酸化膜を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-063910号公報
【特許文献2】特許6791453号公報
【特許文献3】特許6791454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような極薄のシリコン酸化膜を面内であるいは面間(基板間)で均一にかつ再現性良く形成するためには、半導体基板に予め形成される自然酸化膜や化学酸化膜(半導体基板を洗浄液で洗浄することによって形成された酸化膜)の存在を無視することができなくなってきた。
【0005】
実際に本発明者らの調査・研究では、例えば半導体基板の洗浄方法が異なった場合、その後の熱酸化膜の膜厚に違いがあること、そしてこのような熱酸化膜の膜厚の違いは、熱酸化前の自然酸化膜厚や化学酸化膜厚によらないことが分かっている。このために、実際に半導体基板の熱酸化を行い熱酸化膜厚の評価をしてみるまで、実際に形成された熱酸化膜の膜厚の違いが分からずに、熱酸化膜形成工程の管理が困難になっていた。
【0006】
この問題の解決策として、特許文献2及び特許文献3に記載の発明では、薄い熱酸化膜厚に影響する因子として洗浄後の自然酸化膜のOH基の量に着目し、OH基の量が多いほど熱酸化膜の膜厚が厚くなることを見出し、具体的には洗浄薬液の組成を変化させることでこのOH基の量を調整していた。しかしながら、本発明者らがさらに調査・研究を続けたところ、洗浄薬液の組成を変化させると洗浄力に違いが生じてしまうという新たな問題を見出した。洗浄力を一定のレベルに維持したまま、熱酸化膜厚の制御を、再現性良く高い精度で行う必要がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、洗浄薬液の組成を変更することなく、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに再現性良く形成することができる半導体基板の熱酸化膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、半導体基板に熱酸化膜を形成する方法であって、予め、洗浄により形成された化学酸化膜を有する半導体基板であって、前記化学酸化膜中に含まれるOH基の量がそれぞれ異なる複数の半導体基板を準備し、前記複数の半導体基板を同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成し、第1の相関関係として前記化学酸化膜中のOH基の量と前記熱酸化膜の厚さの相関関係を取得する第1の相関関係取得工程と、同じ洗浄条件で洗浄した後に乾燥条件を変化させて化学酸化膜を形成した複数の半導体基板のそれぞれについて前記化学酸化膜中のOH基の量を測定し、第2の相関関係として乾燥条件と化学酸化膜中のOH基の量の相関関係を取得する第2の相関関係取得工程と、前記第1の相関関係及び第2の相関関係を用いて、第3の相関関係として半導体基板の洗浄後の乾燥条件と熱酸化膜の厚さの相関関係を取得する第3の相関関係取得工程と、前記熱酸化膜形成対象の半導体基板の熱酸化膜の厚さが所定の厚さになるように、前記第3の相関関係を用いて、乾燥条件及び熱酸化処理条件を決定する乾燥及び熱酸化処理条件決定工程と、前記熱酸化膜形成対象の半導体基板の洗浄を行う洗浄工程と、前記洗浄工程後の前記熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥及び熱酸化処理を、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程で決定した乾燥条件及び熱酸化処理条件を用いて行う乾燥工程及び熱酸化膜形成工程とを有する半導体基板の熱酸化膜形成方法を提供する。
【0009】
このような半導体基板の熱酸化膜形成方法によれば、洗浄薬液の組成を変更することなく、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに再現性良く形成することができる。その結果、熱酸化膜形成工程の管理が容易になる。
【0010】
このとき、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、前記熱酸化処理条件を前記第1の相関関係取得工程における前記熱酸化処理条件と同じ条件に決定することができる。
【0011】
これにより、簡便により再現性及び精度高く一定の厚さの熱酸化膜を形成することができる。
【0012】
このとき、半導体基板の乾燥条件の初期値を設定し、熱酸化膜形成対象の半導体基板を前記初期値と同じ乾燥条件及び前記第1の相関関係取得工程における前記熱酸化処理条件で処理したと仮定したときの熱酸化膜の厚さを、前記第3の相関関係を用いて推定する熱酸化膜厚さ推定工程をさらに有し、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、前記熱酸化膜厚さ推定工程で推定した熱酸化膜厚さに基づいて乾燥条件及び熱酸化処理条件を決定することができる。
【0013】
これにより、より容易に安定して精度及び再現性高く一定の厚さの熱酸化膜を形成することができる。
【0014】
このとき、前記熱酸化膜厚さ推定工程において、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより厚い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥温度の前記初期値より高い乾燥温度に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより薄い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥温度の前記初期値より低い乾燥温度に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さと同じ厚さの場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥温度の前記初期値と同じ乾燥温度に決定することができる。
【0015】
また、前記熱酸化膜厚さ推定工程において、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより厚い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥時間の前記初期値より長い乾燥時間に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより薄い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥時間の前記初期値より短い乾燥時間に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さと同じ厚さの場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、乾燥条件として乾燥時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記乾燥条件の乾燥時間の前記初期値と同じ乾燥時間に決定することができる。
【0016】
また、前記熱酸化膜厚さ推定工程において、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより厚い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱酸化処理条件として熱処理時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理時間より短い熱処理時間に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより薄い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱酸化処理条件として熱処理時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理時間より長い熱処理時間に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さと同じ厚さの場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱処理条件として熱処理時間を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理時間と同じ熱処理時間に決定することができる。
【0017】
また、前記熱酸化膜厚さ推定工程において、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより厚い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱酸化処理条件として熱処理温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理温度より低い熱処理温度に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さより薄い場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱酸化処理条件として熱処理温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理温度より高い熱処理温度に決定し、
前記推定した熱酸化膜の厚さが前記所定の厚さと同じ厚さの場合は、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱処理条件として熱処理温度を、前記熱酸化膜厚さ推定工程の前記熱処理条件における熱処理温度と同じ熱処理温度に決定することができる。
【0018】
これにより、さらに容易に安定して精度及び再現性高く一定の厚さの熱酸化膜を形成することができる。
【0019】
このとき、前記所定の厚さを1~10nmとすることができる。
【0020】
形成する熱酸化膜の厚さがこのような範囲であれば、より再現性良く一定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することができる。
【0021】
このとき、前記OH基の量を、ATR測定用プリズムを用いて前記化学酸化膜のATR-FT-IR測定を行い、3300cm-1付近のOH基の吸光度から算出することができる。
【0022】
ATR-FT-IRは一般的な透過FT-IRと比較して表面に存在するOH基に対して感度が高いため、より精度の高いOH基の量の評価を行うことができる。
【0023】
このとき、前記半導体基板をシリコンウエーハ、前記熱酸化膜をシリコン酸化膜とすることができる。
【0024】
本発明に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法は、特にシリコンウエーハに形成されるシリコン酸化膜に対して好適である。
【0025】
このとき、上記の半導体基板の熱酸化膜形成方法により製造された熱酸化膜付き半導体基板を用いて半導体装置を製造する半導体装置の製造方法とすることができる。
【0026】
これにより、基板間のばらつきがない高品質な薄い熱酸化膜を有する半導体基板を用いて半導体装置を製造することができるため、品質の均一性が保たれたり歩留まりが向上したりするなどの効果が期待できる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明により、洗浄薬液の組成を変更することなく、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに再現性良く形成することができる。その結果、熱酸化膜形成工程の管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法のフローを示す。
図2】第1の相関関係の一例である、OH基の量(3300cm-1の吸光度)と熱酸化膜の膜厚の関係を示す。
図3】第2の相関関係の一例である、乾燥温度とOH基の量(3300cm-1の吸光度)の関係を示す。
図4】第3の相関関係の一例である、乾燥温度と熱酸化膜の膜厚の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
上述のように、洗浄薬液の組成を変更することなく、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに再現性良く形成することができる半導体基板の熱酸化膜形成方法が求められていた。
【0031】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、半導体基板に熱酸化膜を形成する方法であって、予め、洗浄により形成された化学酸化膜を有する半導体基板であって、前記化学酸化膜中に含まれるOH基の量がそれぞれ異なる複数の半導体基板を準備し、前記複数の半導体基板を同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成し、第1の相関関係として前記化学酸化膜中のOH基の量と前記熱酸化膜の厚さの相関関係を取得する第1の相関関係取得工程と、同じ洗浄条件で洗浄した後に乾燥条件を変化させて化学酸化膜を形成した複数の半導体基板のそれぞれについて前記化学酸化膜中のOH基の量を測定し、第2の相関関係として乾燥条件と化学酸化膜中のOH基の量の相関関係を取得する第2の相関関係取得工程と、前記第1の相関関係及び第2の相関関係を用いて、第3の相関関係として半導体基板の洗浄後の乾燥条件と熱酸化膜の厚さの相関関係を取得する第3の相関関係取得工程と、前記熱酸化膜形成対象の半導体基板の熱酸化膜の厚さが所定の厚さになるように、前記第3の相関関係を用いて、乾燥条件及び熱酸化処理条件を決定する乾燥及び熱酸化処理条件決定工程と、前記熱酸化膜形成対象の半導体基板の洗浄を行う洗浄工程と、前記洗浄工程後の前記熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥及び熱酸化処理を、前記乾燥及び熱酸化処理条件決定工程で決定した乾燥条件及び熱酸化処理条件を用いて行う乾燥工程及び熱酸化膜形成工程とを有する半導体基板の熱酸化膜形成方法により、洗浄薬液の組成を変更することなく、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに再現性良く形成することができ、その結果熱酸化膜形成工程の管理が容易になることを見出し、本発明を完成した。
【0032】
以下、図面を参照して説明する。
【0033】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法について、図1~4を参照しながら説明する。
【0034】
(第1の相関関係取得工程)
まず、半導体基板を複数枚準備する。この半導体基板としては、シリコンウエーハを用いることが好ましい。この場合、形成される熱酸化膜はシリコン酸化膜である。シリコンウエーハは半導体基板として広く使用されているものであり、特に半導体装置(デバイス)作製工程では熱酸化膜が形成されたりするため、熱酸化膜を形成してシリコンウエーハ自体の評価を行うことでより正確な評価を行うことができる。
【0035】
次に、準備した半導体基板の表面に酸化膜がない状態にするために、HF水溶液(フッ化水素酸)で洗浄することが好ましい。HF水溶液で洗浄して酸化膜を除去した後に、さらに洗浄する。HF水溶液を用いた洗浄の後に行う洗浄方法は特に限定されないが、例えば、SC1洗浄、O洗浄などの薬液を用いた洗浄を行うことができ、あるいは純水リンスなどの洗浄を行うこともできる。HF水溶液を用いた洗浄の後に行う洗浄により、半導体基板の表面には化学酸化膜が形成される。このとき、複数の半導体基板の化学酸化膜中に含まれるOH基の量は、それぞれ異なるものとなるようにする。薬液を用いた方法で洗浄を行う場合、OH基の濃度が異なる薬液を用いることで、簡便に化学酸化膜中のOH基の量が異なる半導体基板とすることができるため好ましい。さらに、SC1洗浄であれば、NHOH基の濃度が高くアルカリ性が強いほど、3300cm-1の吸光度も大きくなり(すなわちOH基が多く含まれ)、NHOH濃度を変化させることでより簡便に化学酸化膜中のOH基の量が異なる半導体基板とすることができるため好ましい。洗浄方法によって薬液の濃度とOH基の量の相関が得られる範囲はそれぞれ異なるため、相関関係を取得する上で、できるだけ多くの異なる洗浄の種類及び/又は洗浄条件で実施して、複数の洗浄条件とOH基の量の相関関係を得ておくことが好ましい。
【0036】
次に、各洗浄方法によって形成されたそれぞれの化学酸化膜中に含まれるOH基の量を測定する。このとき、ATR測定用プリズムを用いて化学酸化膜のATR-FT-IR測定を行うことが好ましい。ATR-FT-IR測定は、一般的な透過FT-IRに比べて半導体基板表面に存在するOH基に対して十分な感度で評価することができる。
【0037】
化学酸化膜中に含まれるOH基の量は、例えば、化学酸化膜の赤外線吸収特性を調べることで求めることができる。赤外線吸収特性の測定として、例えば、ATR-FT-IR測定を行い、3300cm-1付近の相対吸光度からOH基の量を算出することができる。この場合、3300cm-1付近の相対吸光度の値を、OH基の量を表す指標とすることができる。
【0038】
次に、化学酸化膜中に含まれるOH基の量がそれぞれ異なる複数の半導体基板を、同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成する。熱酸化膜の形成条件は特に限定されず、通常の方法で行うことができる。そして、形成した熱酸化膜の厚さを測定する。測定は、例えば、分光エリプソなどで行うことができる。
【0039】
図2は、実際のシリコン基板表面の化学酸化膜中のOH基の量とシリコン熱酸化膜の厚さの関係を示した第1の相関関係を表す図である。なお、このときの熱処理条件は、温度900℃、酸素5%、60minである。3300cm-1の相対吸光度(OH基の量)が増えるにしたがって、熱酸化膜の膜厚が厚くなっていることが分かる。この現象は、ガスを使用した熱酸化の場合にWet酸化の酸化速度がDry酸化よりも大きくなることと同様に、表面に形成された化学酸化膜中に含まれるOH基の量の違いによって熱酸化後の膜厚が異なると考えられる。
【0040】
なお、化学酸化膜中のOH基の量(3300cm-1付近の相対吸光度)の測定や熱酸化膜の厚さの測定は、熱酸化膜を形成する半導体基板と同じ洗浄処理、熱酸化処理を行ったモニターウエーハなどを用いたり、同一の処理を行った半導体基板の一部を抜き取ったりして行うこともできる。
【0041】
(第2の相関関係取得工程)
第2の相関関係取得工程では、同じ洗浄条件で洗浄した後に乾燥条件を変化させて化学酸化膜を形成した複数の半導体基板のそれぞれについて、化学酸化膜中のOH基の量を測定し、第2の相関関係として乾燥条件と化学酸化膜中のOH基の量の相関関係を取得する。乾燥条件としては、OH基の量に影響を及ぼすパラメータを適宜選択できるが、例えば乾燥温度や乾燥時間を採用することができる。以下の説明では、乾燥温度をパラメータに採用した例について説明する。
【0042】
次に、準備した半導体基板の表面に酸化膜がない状態にするために、HF水溶液(フッ化水素酸)で洗浄することが好ましい。HF水溶液で洗浄して酸化膜を除去した後に、さらに洗浄する。HF水溶液の洗浄の後に行う洗浄方法は特に限定されないが、例えば、SC1洗浄、O洗浄などの薬液を用いた洗浄を目的に応じて行うことができ、あるいは純水リンスなどの洗浄を行うこともできる。このあと、半導体基板の乾燥温度を変化させる。HF洗浄の後に行う洗浄後の乾燥温度を変化させることにより、準備した複数の半導体基板には異なる組成の化学酸化膜が形成される。このときの半導体基板の乾燥温度が低いほど3300cm-1の吸光度も大きくなり(すなわちOH基が多く含まれ)、乾燥温度を変化させることで簡便に化学酸化膜中のOH基の量が異なる半導体基板とすることができるため好ましい。
【0043】
次に、各乾燥温度でのそれぞれの化学酸化膜中に含まれるOH基の量を測定する。OH基の量を測定については、第1の相関関係取得工程で述べたとおりである。
【0044】
図3は、上記の方法でSC1洗浄を行った後のシリコン基板の乾燥工程において乾燥温度を変化させたときの、乾燥温度とシリコン基板表面の化学酸化膜中のOH基の量の関係である第2の相関関係を示す図である。なお、乾燥時間は3minに統一した。乾燥温度が高くなるにしたがってOH基の量が減少していることが分かる。
【0045】
上述のとおり乾燥条件として乾燥温度に代えて乾燥時間を採用することができる。乾燥時間が長くなるとOH基の量は少なくなる傾向にある。
【0046】
第1の相関関係取得工程と第2の相関関係取得工程を実施する順序は限定されない。同じ洗浄条件で洗浄した後に乾燥条件を変化させて化学酸化膜を形成した複数の半導体基板のそれぞれについて前記化学酸化膜中のOH基の量を測定して第2の相関関係を取得した後に、上記複数の半導体基板の熱酸化処理を行って第1の相関関係を取得することもできる。この場合、同じ半導体基板から第1の相関関係と第2の相関関係を取得できることから、より精度の高い相関関係を得ることができる。
【0047】
(第3の相関関係取得工程)
第3の相関関係取得工程では、第1の相関関係及び第2の相関関係を用いて、第3の相関関係として半導体基板の洗浄後の乾燥条件と熱酸化膜の厚さの相関関係を取得する。図4は、上記の第1の相関関係及び第2の相関関係を用いて求めた第3の相関関係を示す図である。具体的には、SC1洗浄を行った後のシリコン基板に対して乾燥温度を変化させて乾燥した後に、熱酸化条件(例えば、900℃、酸素5%、60minの条件)を固定して熱酸化を行ったときの、乾燥温度と熱酸化膜の厚さの関係を示している。図4から、乾燥温度が高くなるにしたがって、熱酸化膜の厚さが減少していることが分かる。これは今までの議論から、乾燥温度が高くなることでシリコン基板表面の化学酸化膜中のOH基の量が減少していることに起因している。
【0048】
(乾燥及び熱酸化処理条件決定工程)
次に、第1の実施形態では図1に示す「熱酸化膜厚さ推定工程」を行わず、熱酸化膜形成対象の半導体基板の熱酸化膜の厚さが所定の厚さになるように、上記の第3の相関関係を用いて乾燥条件及び熱酸化処理条件を決定する。図4の第3の相関関係を示す図は、横軸に乾燥温度(℃)、縦軸に熱酸化膜厚(nm)としてこれらの関係が示されているが、第3の相関関係を得るために用いた第1の相関関係には熱酸化処理条件が含まれているため、第3の相関関係には熱酸化処理条件が反映されているといえる。具体的には、図4の第3の相関関係において、酸化膜厚が厚くなる熱酸化処理条件(例えば、熱処理温度が高い、熱処理時間が長い)とする場合には図4に示された第3の相関関係が右上方にシフトし、反対に酸化膜厚が薄くなる熱酸化処理条件とする場合には図4に示された第3の相関関係が左下方にシフトする。このような関係を用いれば、図4に示された第3の相関関係を用いて乾燥条件及び熱酸化処理条件を決定することができる。
【0049】
例えば、酸化条件を固定する場合は、半導体基板の乾燥条件を調整することでOH基の量を変化させて、所定の熱酸化膜厚になるようにする。半導体基板の乾燥条件としては例えば乾燥温度と時間が挙げられ、温度が高く、時間が長くなるほどOH基の量は減少する傾向にある。洗浄工程のタクトを考慮した場合には、乾燥条件のうち乾燥温度を変化させるのが一般的でかつ好ましいと考えられる。一方で、乾燥条件を固定する場合は、熱酸化条件(酸化時間や酸化温度等)を調整することで目標の厚さの酸化膜を再現性よく形成することが可能になる。
【0050】
特に、熱酸化処理条件を、第1の相関関係取得工程における熱酸化処理条件と同じ条件に決定することが好ましい。このようにすれば、図4に示された第3の相関関係をそのまま使用し、縦軸の熱酸化膜厚(nm)から目標とする熱酸化膜厚を選択し、それに対応する乾燥温度を熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥条件として簡便かつ正確に決定することができる。
【0051】
上述の所定の厚さは1~10nmとすることが好ましい。形成する熱酸化膜の目標(狙い)厚さがこのような範囲であれば、より再現性良く一定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することができる。
【0052】
(洗浄工程)
次に、熱酸化膜形成対象の半導体基板に熱酸化膜を形成する処理を行う。まず、熱酸化膜形成対象の半導体基板の洗浄を行う。洗浄条件は、第2の相関関係を取得したときの洗浄条件と同じ条件である。
【0053】
(乾燥工程、熱酸化膜形成工程)
洗浄工程に続く乾燥工程、熱酸化膜形成工程では、乾燥及び熱酸化処理条件決定工程で決定した乾燥条件及び熱酸化処理条件を用いて乾燥及び熱酸化処理を行う。
【0054】
第1の実施形態に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法によれば、洗浄薬液の組成を変更することなく、簡便に、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに再現性良く形成することができ、その結果、熱酸化膜形成工程の管理が容易になる。
【0055】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、図1に示すように、上述の第1の実施形態における乾燥及び熱酸化処理条件決定工程の前に、「熱酸化膜厚さ推定工程」を行い、乾燥及び熱酸化処理条件決定工程において、熱酸化膜厚さ推定工程で推定した熱酸化膜厚さに基づいて乾燥条件及び熱酸化処理条件を決定する点で、第1の実施形態と異なる。熱酸化膜厚さ推定工程は、半導体基板の乾燥条件の初期値を設定し、熱酸化膜形成対象の半導体基板を初期値と同じ乾燥条件及び第1の相関関係取得工程における熱酸化処理条件で処理したと仮定したときの熱酸化膜の厚さを、第3の相関関係を用いて推定する工程である。
【0056】
(熱酸化膜厚さ推定工程)
まず、半導体基板の乾燥条件の初期値を設定する。このときの初期値の選択は特に限定されず、実際の処理で採用したい乾燥条件を選択しても良いし、直前の実際の処理における乾燥条件を選択してもよい。設定した乾燥条件の初期値と、第1の相関関係取得工程における熱酸化処理条件で処理したと仮定したときの熱酸化膜の厚さを、第3の相関関係を用いて推定する。具体的には、図4において、初期値に相当する乾燥温度(横軸)に対応する熱酸化膜厚(縦軸)を読み取ることで、熱酸化膜厚さを推定できる。
【0057】
(乾燥及び熱酸化処理条件決定工程)
熱酸化膜厚さ推定工程に続く乾燥及び熱酸化処理条件決定工程では、上記のようにして熱酸化膜厚さ推定工程で推定した熱酸化膜厚さに基づいて乾燥条件及び熱酸化処理条件を決定する。このとき、乾燥条件及び熱酸化処理条件の一方を所望の条件に決定し、他方を調整して乾燥条件及び熱酸化処理条件を決定する。
【0058】
まず、乾燥条件の決定について具体的に説明する。熱酸化膜厚さ推定工程で得られた熱酸化膜の厚さと目標とする所定の熱酸化膜の厚さとを比較し、推定された熱酸化膜の厚さが目標の熱酸化膜の厚さと同じ厚さになっている場合は、熱酸化膜厚さ推定工程の乾燥条件と同じ乾燥条件(つまり初期値)を熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥条件として決定する。
【0059】
推定された熱酸化膜の厚さが目標値からずれている場合は、目標の厚さの熱酸酸化膜厚が得られるように、熱酸化膜の厚さ推定工程の乾燥条件の初期値を基準にして乾燥条件を調整することで、乾燥条件を決定する。
【0060】
例えば、第2の相関関係で、乾燥条件として乾燥温度を変化させ、乾燥時間と化学酸化膜中のOH基の量との相関関係を求めた場合、第3の相関関係は図4に示すように乾燥温度と熱酸化膜の厚さの相関関係となる。そして、熱酸化膜厚さ推定工程において目標の厚さより厚くなると推定された場合は、熱酸化膜厚さ推定工程の乾燥条件の乾燥温度の初期値より高い温度に調整して熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥条件として決定し、目標の厚さより薄くなると推定された場合は、熱酸化膜厚さ推定工程の乾燥条件の乾燥温度の初期値より低い温度に調整して熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥条件として決定する。
【0061】
また、第2の相関関係で、乾燥条件として乾燥時間を変化させ、乾燥時間と化学酸化膜中のOH基の量との相関を求めた場合、第3の相関関係は乾燥時間と熱酸化膜の厚さの相関関係となる。そして、熱酸化膜厚さ推定工程において目標の厚さより厚くなると推定された場合は、熱酸化膜厚さ推定工程の乾燥条件の乾燥時間の初期値より長い時間に調整して熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥条件として決定し、目標の厚さより薄くなると推定された場合は、熱酸化膜厚さ推定工程の乾燥条件の乾燥時間の初期値より短い時間に調整して熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥条件として決定する。
【0062】
次に、熱酸化条件の決定について具体的に説明する。上記熱酸化膜厚さ推定工程で得られた熱酸化膜の厚さと目標とする所定の熱酸化膜の厚さとを比較し、推定された熱酸化膜の厚さが目標の熱酸化膜の厚さと同じ厚さになっている場合は、熱酸化膜厚さの推定工程の熱酸化条件と同じ熱酸化条件(つまり初期値)を熱酸化膜形成対象の半導体基板の熱酸化条件として決定する。
【0063】
推定された熱酸化膜の厚さが目標値からずれている場合は、目標の厚さの熱酸化膜厚が得られるように、熱酸化膜の厚さの推定工程の熱酸化条件を基準にして、熱酸化条件、例えば熱酸化温度や熱酸化時間を調整することで、熱酸化条件を決定する。
【0064】
例えば、熱酸化膜厚さ推定工程において、目標の厚さより厚くなると推定された場合は、熱酸化膜厚さ推定工程の熱酸化条件の熱処理時間の初期値より短い時間に調整して熱酸化膜形成対象の半導体基板の熱酸化条件として決定し、目標の厚さより薄くなると推定された場合は、前記熱酸化膜の厚さを推定した工程の熱酸化条件の熱処理時間の初期値より長い時間に調整して熱酸化膜形成対象の半導体基板の熱酸化条件として決定することができる。
【0065】
また、熱酸化膜厚さ推定工程において、目標の厚さより厚くなると推定された場合は、熱酸化膜厚さ推定工程の熱酸化条件の熱処理温度の初期値より低い温度に調整して熱酸化膜形成対象の半導体基板の熱酸化条件として決定し、目標の厚さより薄くなると推定された場合は、熱酸化膜厚さ推定工程の熱酸化条件の熱処理温度の初期値より高い温度に調整して熱酸化膜形成対象の半導体基板の熱酸化条件として決定することもできる。
【0066】
なお、本発明では熱処理時間や熱処理温度だけでなく、熱処理雰囲気の酸素含有濃度を調整することで酸化膜厚を所定の厚さに制御することも可能である。
【0067】
第1の実施形態と同様に、熱酸化膜形成対象の半導体基板を洗浄後、熱酸化膜の厚さが目標の厚さになるように上記で決定した乾燥条件、熱酸化膜形成条件で乾燥及び熱酸化を行う。
【0068】
[第3の実施形態]
乾燥条件の調整と熱酸化条件の調整はそれぞれ単独で行うことができるが、乾燥条件の調整と熱酸化条件の調整とを組み合わせて、乾燥条件及び熱酸化条件を決定することも好ましい。特に、第3の相関関係を用いて、目標の熱酸化膜厚になるように乾燥条件のみを調整して決定した場合や熱酸化条件のみを調整して決定した場合に、目標の熱酸化膜の厚さにならないときは、乾燥条件の調整と熱酸化条件の調整とを組み合わせ、熱酸化膜厚さ推定工程の乾燥条件及び熱酸化条件を基準にして乾燥条件及び熱酸化条件を調節して、熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥条件及び熱酸化条件を決定することもできる。
【0069】
例えば、決定した乾燥条件で乾燥を行い熱酸化膜を形成するとしたときに推定される熱酸化膜の厚さと目標の熱酸化膜の厚さとを比較し、熱酸化膜の厚さが目標の厚さにならない場合は、第3の相関関係を用いて、熱酸化膜の厚さを推定した工程の熱酸化条件を基準として熱酸化条件を調整し、決定することができる。又は、決定した熱酸化条件で熱酸化を行うとしたときに推定される熱酸化膜の厚さと目標の熱酸化膜の厚さとを比較し、熱酸化膜の厚さが目標の厚さにならない場合は、さらに第3の相関関係を用いて乾燥条件を調整し決定することができる。
【0070】
(半導体装置の製造方法)
上述のような半導体基板の熱酸化膜形成方法により製造された熱酸化膜付き半導体基板を用いて、半導体装置を製造することができる。基板間のばらつきがない高品質な薄い熱酸化膜を有する半導体基板を用いて半導体装置を製造することができるため、品質の均一性が保たれたり歩留まりが向上したりするなどの効果が期待できる。
【実施例0071】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0072】
(実施例1)
本実施例では、熱酸化膜形成対象の半導体基板に形成する熱酸化膜の膜厚の目標値を5.1nmとして実験を行った。まず半導体基板として、直径300mm、ボロンドープ、通常抵抗のシリコンウエーハを準備し、SC1洗浄後に乾燥温度を30、60、80、200、300℃として乾燥を行い、化学酸化膜中のOH基の量が異なるウエーハを作製した。なお、乾燥時間は3minで共通とした。その後、シリコンウエーハを切り出してATR-FT-IR測定を行い、3300cm-1の吸光度を測定して化学酸化膜中のOH基の量を求めておいた。これにより、乾燥条件(乾燥温度)と化学酸化膜中のOH基の量の相関関係を示す第2の相関関係を取得した(図3)。
【0073】
次に、各乾燥条件のウエーハごとに所定の熱酸化処理(900℃、酸素5%、60min)を行い、熱酸化膜の厚さを測定して、化学酸化膜中のOH基の量と熱酸化膜の厚さの関係を求めた。このときの熱酸化膜の厚さの狙い値は5.1nmとした。これにより、化学酸化膜中のOH基の量と熱酸化膜の厚さの相関関係を示す第1の相関関係を取得した(図2)。そして、図2の第1の相関関係及び図3の第2の相関関係から図4の第3の相関関係を得た。
【0074】
次に、乾燥条件の初期値として、乾燥温度50℃、200℃の2条件を設定した。なお、検証のために、直径300mmボロンドープの通常抵抗シリコンウエーハを準備し、SC1洗浄後に、乾燥温度をそれぞれ50℃、300℃として乾燥を行い、化学酸化膜中のOH基の量が異なるウエーハを作製した。シリコンウエーハから測定サンプルを切り出してATR-FT-IR測定を行い、OH基の量に対応する3300cm-1の吸光度を測定したところ、50℃の乾燥温度では0.18、300℃の乾燥温度では0.11であった。
【0075】
乾燥条件の初期値と図4の第3の相関関係をもとに、900℃、酸素5%、60minの条件で熱酸化したときの熱酸化膜の厚さを推定すると、50℃の乾燥温度では5.17nm、300℃の乾燥温度では5.07nmとなり、乾燥温度が異なるとOH基の量が異なり熱酸化膜の膜厚も異なることが推定された。そこで、図4の第3の相関関係を用いて乾燥温度を200℃とすれば5.1nmの熱酸化膜厚となることが予測できたため、乾燥温度を200℃、乾燥時間を3minに決定した。実際に、この乾燥条件で乾燥させたシリコンウエーハを熱酸化処理(900℃、酸素5%、60min)して熱酸化膜を形成し、分光エリプソで熱酸化膜の膜厚を測定したところ、狙い値通りの5.1nmの熱酸化膜を形成することができた。
【0076】
(実施例2)
実施例1と同様に、第1,2,3の相関関係を取得し、乾燥条件の初期値(50℃、300℃)を設定し、図4の第3の相関関係を用いて900℃、酸素5%、60minの条件で熱酸化したときの熱酸化膜の厚さを推定した。そして、図4の第3の相関関係に基づいて熱酸化時間を調整し(乾燥条件は固定)、50℃の乾燥温度では熱酸化時間を58分、300℃の乾燥温度では熱酸化時間を63分に決定した。実際に決定した条件で乾燥及び熱酸化処理を行ったところ、乾燥温度が50℃、300℃の両方で、狙いの5.1nmの熱酸化膜厚とすることができることができた。
【0077】
(実施例3)
実施例1,2と同様に、第1,2,3の相関関係を取得し、乾燥条件の初期値(50℃、300℃)を設定し、第3の相関関係を用いて900℃、酸素5%、60minの条件で熱酸化したときの熱酸化膜の厚さを推定した。そして、第3の相関関係に基づいて乾燥温度と熱酸化時間の両方を調整し、乾燥温度を250℃、熱酸化時間を62minに決定した。このような条件で乾燥及び熱酸化膜形成を行ったところ、狙いの5.1nmの熱酸化膜を得ることができた。
【0078】
(比較例)
直径300mmボロンドープの通常抵抗シリコンウエーハを準備し、SC1洗浄後に、乾燥温度をそれぞれ50℃、300℃として乾燥を行い、化学酸化膜中のOH基の量が異なるウエーハを作製した。その後、シリコンウエーハを切り出してATR-FT-IR測定を行い、OH基の量に対応する3300cm-1の吸光度を測定したところ、50℃の乾燥温度では0.18、300℃の乾燥温度では0.11であった。
【0079】
上記の2つのシリコンウエーハについて、GOI(Gate Oxide Integrity)測定のような電気特性評価を行うために、乾燥及び熱酸化条件の調整を行わず、すべて同じ条件(900℃、酸素5%、60min)で熱酸化処理を行ったところ、熱酸化膜の膜厚は、乾燥温度が50℃のウエーハでは5.17nm、乾燥温度300℃のウエーハでは5.07nmとなり、目標とする5.1nmからずれる結果となった。
【0080】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、洗浄薬液の組成を変更することなく、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに形成することができ、その結果、熱酸化膜形成工程の管理が容易になることが検証できた。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
例えば、第2の相関関係で、乾燥条件として乾燥温度を変化させ、乾燥温度と化学酸化膜中のOH基の量との相関関係を求めた場合、第3の相関関係は図4に示すように乾燥温度と熱酸化膜の厚さの相関関係となる。そして、熱酸化膜厚さ推定工程において目標の厚さより厚くなると推定された場合は、熱酸化膜厚さ推定工程の乾燥条件の乾燥温度の初期値より高い温度に調整して熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥条件として決定し、目標の厚さより薄くなると推定された場合は、熱酸化膜厚さ推定工程の乾燥条件の乾燥温度の初期値より低い温度に調整して熱酸化膜形成対象の半導体基板の乾燥条件として決定する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
次に、乾燥条件の初期値として、乾燥温度50℃、300℃の2条件を設定した。なお、検証のために、直径300mmボロンドープの通常抵抗シリコンウエーハを準備し、SC1洗浄後に、乾燥温度をそれぞれ50℃、300℃として乾燥を行い、化学酸化膜中のOH基の量が異なるウエーハを作製した。シリコンウエーハから測定サンプルを切り出してATR-FT-IR測定を行い、OH基の量に対応する3300cm-1の吸光度を測定したところ、50℃の乾燥温度では0.18、300℃の乾燥温度では0.11であった。