(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191006
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】熱処理油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20221220BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20221220BHJP
C10M 105/04 20060101ALI20221220BHJP
C10M 135/20 20060101ALI20221220BHJP
C10M 135/36 20060101ALI20221220BHJP
C21D 1/58 20060101ALI20221220BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20221220BHJP
C10N 40/20 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M101/02
C10M105/04
C10M135/20
C10M135/36
C21D1/58
C10N30:00 Z
C10N40:20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099601
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 崇仁
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BG11C
4H104BG19C
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104LA20
4H104PA25
(57)【要約】
【課題】焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性及び貯蔵安定性に優れる、硫黄化合物を含有する熱処理油組成物を提供する。
【解決手段】鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上の基油(A)と、硫黄化合物(B)とを含有し、前記硫黄化合物(B)が、特定のスルフィド類(B1)及び特定のスルフィド類(B2)並びに特定のチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上を含む、熱処理油組成物とした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上の基油(A)と、硫黄化合物(B)とを含有し、
前記硫黄化合物(B)が、下記一般式(b1)で表されるスルフィド類(B1)及び下記一般式(b2)で表されるスルフィド類(B2)並びに下記一般式(b3)で表されるチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上を含む、熱処理油組成物。
【化1】
[前記一般式(b1)及び(b2)中、R
11、R
12、R
13、及びR
14は、各々独立に、置換又は無置換の炭化水素基(X)を示す。前記炭化水素基(X)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
また、前記一般式(b1)及び(b2)中、L
11、L
12、L
13、及びL
14は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。]
【化2】
[前記一般式(b3)中、R
21は、置換又は無置換の炭化水素基(Y)を示す。前記炭化水素基(Y)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
nは0~3の整数を示す。
nが2以上である場合、複数存在するR
21は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nが2以上であり、2つのR
21が互いに隣接する場合、前記2つのR
21が環構造を形成していてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(b1)において、R11及びR12のうち、少なくとも一方の前記炭化水素基(X)が、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基である、請求項1に記載の熱処理油組成物。
【請求項3】
前記スルフィド類(B1)が、下記一般式(b1-1)で表されるスルフィド類(B1-1)を含む、請求項1又は2に記載の熱処理油組成物。
【化3】
[前記一般式(b1-1)中、R
16及びR
17は、各々独立に、各々独立に、炭素数1~6のアルキレン基を示す。
L
11及びL
12は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。R
18及びR
19は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基又は水酸基を示す。
m1は0~5の整数を示す。
m2は0~5の整数を示す。
m1が2以上である場合、複数存在するR
18は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
m2が2以上である場合、複数存在するR
19は、同一であってもよく、異なっていてもよい。]
【請求項4】
前記チアゾール類(B3)が、下記構造式(b3α)又は下記構造式(b3β)で表される分子骨格を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱処理油組成物。
【化4】
【請求項5】
硫黄分が、前記熱処理油組成物の全量基準で、10質量ppm~5,000質量ppmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱処理油組成物。
【請求項6】
前記硫黄化合物(B)の含有量が、前記熱処理油組成物の全量基準で、0.01質量%~2.0質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱処理油組成物。
【請求項7】
さらに、蒸気膜破断剤、光輝性改良剤、冷却性向上剤、及び酸化防止剤からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱処理油組成物。
【請求項8】
焼入油又は焼戻油として用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱処理油組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱処理油組成物を、焼入油又は焼戻油として使用する、使用方法。
【請求項10】
鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上の基油(A)と、硫黄化合物(B)とを混合する工程を含み、
前記硫黄化合物(B)が、下記一般式(b1)で表されるスルフィド類(B1)及び下記一般式(b2)で表されるスルフィド類(B2)並びに下記一般式(b3)で表されるチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上を含む、熱処理油組成物の製造方法。
【化5】
[前記一般式(b1)及び(b2)中、R
11、R
12、R
13、及びR
14は、各々独立に、置換又は無置換の炭化水素基(X)を示す。前記炭化水素基(X)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
また、前記一般式(b1)及び(b2)中、L
11、L
12、L
13、及びL
14は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。]
【化6】
[前記一般式(b3)中、R
21は、置換又は無置換の炭化水素基(Y)を示す。前記炭化水素基(Y)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
nは0~3の整数を示す。
nが2以上である場合、複数存在するR
21は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nが2以上であり、2つのR
21が互いに隣接する場合、前記2つのR
21が環構造を形成していてもよい。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材等の金属材料は、その性質の改善を目的として、焼入れ、焼戻し、焼なまし、及び焼ならし等の熱処理を施されることがある。これらの熱処理の中で、焼入れは、加熱された金属材料を冷却剤中に浸漬して、所定の焼入れ組織に変態させる処理である。焼入れによって、金属材料は非常に硬くなり、機械的強度が向上する。
【0003】
焼入れ用の冷却剤としては、熱処理油組成物が広く用いられている。熱処理油組成物には、冷却剤としての性能に加え、焼入れ後の金属材料の商品価値を高める観点から、焼入れ前の金属材料の表面光沢を焼入れ後も保持する性能も要求される。すなわち、熱処理油組成物には、焼入れ後の金属材料の光輝性を良好なものとする性能が要求される。
【0004】
このような熱処理油組成物としては、例えば、アントラセン等の縮合多環芳香族を配合してなる熱処理油組成物が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、硫黄分が少ない熱処理油組成物を焼入れに用いると、焼入れ後の金属材料の光輝性が低下するといわれている。特許文献1では、アントラセン等の縮合多環芳香族を配合した熱処理油組成物とすることで、硫黄分が少ない熱処理油組成物であっても、光輝性が改善されている。
ここで、熱処理油組成物には、貯蔵安定性に優れることも求められる。しかしながら、特許文献1では、貯蔵安定性については十分に検討されていない。
【0007】
そこで、本発明者は、上記要望に基づき検討した結果、特定の硫黄化合物を含有する熱処理油組成物が、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性及び貯蔵安定性に優れることを見出した。
【0008】
したがって、本発明の課題は、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性及び貯蔵安定性に優れる、硫黄化合物を含有する熱処理油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、下記[1]~[3]が提供される。
[1] 鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上の基油(A)と、硫黄化合物(B)とを含有し、
前記硫黄化合物(B)が、下記一般式(b1)で表されるスルフィド類(B1)及び下記一般式(b2)で表されるスルフィド類(B2)並びに下記一般式(b3)で表されるチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上を含む、熱処理油組成物。
【化1】
[前記一般式(b1)及び(b2)中、R
11、R
12、R
13、及びR
14は、各々独立に、置換又は無置換の炭化水素基(X)を示す。前記炭化水素基(X)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
また、前記一般式(b1)及び(b2)中、L
11、L
12、L
13、及びL
14は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。]
【化2】
[前記一般式(b3)中、R
21は、置換又は無置換の炭化水素基(Y)を示す。前記炭化水素基(Y)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
nは0~3の整数を示す。
nが2以上である場合、複数存在するR
21は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nが2以上であり、2つのR
21が互いに隣接する場合、前記2つのR
21が環構造を形成していてもよい。]
[2] 上記[1]に記載の熱処理油組成物を、焼入油又は焼戻油として使用する、使用方法。
[3] 鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上の基油(A)と、硫黄化合物(B)とを混合する工程を含み、
前記硫黄化合物(B)が、下記一般式(b1)で表されるスルフィド類(B1)及び下記一般式(b2)で表されるスルフィド類(B2)並びに下記一般式(b3)で表されるチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上を含む、熱処理油組成物の製造方法。
【化3】
[前記一般式(b1)及び(b2)中、R
11、R
12、R
13、及びR
14は、各々独立に、置換又は無置換の炭化水素基(X)を示す。前記炭化水素基(X)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
また、前記一般式(b1)及び(b2)中、L
11、L
12、L
13、及びL
14は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。]
【化4】
[前記一般式(b3)中、R
21は、置換又は無置換の炭化水素基(Y)を示す。前記炭化水素基(Y)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
nは0~3の整数を示す。
nが2以上である場合、複数存在するR
21は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nが2以上であり、2つのR
21が互いに隣接する場合、前記2つのR
21が環構造を形成していてもよい。]
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性及び貯蔵安定性に優れる、硫黄化合物を含有する熱処理油組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例で用いた試験片について、目視観察を行った「端部」及び「接触部」の位置を示す図である。
【
図2】実施例1~8及び比較例1~3の熱処理油組成物を用いた焼入れ試験後の試験片の状態を示す図面代用写真である。
【
図3】比較例4~5及び実施例9~10の熱処理油組成物(新油、24時間酸化劣化後の油)を用いた焼入れ試験後の試験片の状態を示す図面代用写真である。
【
図4】実施例9、11、及び12の熱処理油組成物(新油、24時間酸化劣化後の油、48時間酸化劣化後の油)を用いた焼入れ試験後の試験片の状態を示す図面代用写真である。
【
図5】比較例6及び実施例13~14の熱処理油組成物を用いた焼入れ試験後の試験片の状態を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は、特に断りのない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
本明細書において、「40℃における動粘度」のことを、「40℃動粘度」ともいう。
【0013】
[熱処理油組成物の態様]
本実施形態の熱処理油組成物は、鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上の基油(A)と、硫黄化合物(B)とを含有する。
そして、本実施形態の熱処理油組成物は、硫黄化合物(B)が、下記一般式(b1)で表されるスルフィド類(B1)及び下記一般式(b2)で表されるスルフィド類(B2)並びに下記一般式(b3)で表されるチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上を含む。
【化5】
[前記一般式(b1)及び(b2)中、R
11、R
12、R
13、及びR
14は、各々独立に、置換又は無置換の炭化水素基(X)を示す。前記炭化水素基(X)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
また、前記一般式(b1)及び(b2)中、L
11、L
12、L
13、及びL
14は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。]
【化6】
[前記一般式(b3)中、R
21は、置換又は無置換の炭化水素基(Y)を示す。前記炭化水素基(Y)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
nは0~3の整数を示す。
nが2以上である場合、複数存在するR
21は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nが2以上であり、2つのR
21が互いに隣接する場合、前記2つのR
21が環構造を形成していてもよい。]
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、エステル構造を有する特定のスルフィド類、チアゾール骨格を有する特定のチアゾール類が、上記課題を解決し得ることを見出した。かかる知見に基づき、本発明者はさらに種々検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0015】
本実施形態の熱処理油組成物は、基油(A)及び硫黄化合物(B)のみから構成されていてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、基油(A)及び硫黄化合物(B)以外の他の成分を含有してもよい。
本実施形態において、基油(A)及び硫黄化合物(B)の合計含有量は、熱処理油組成物の全量基準で、好ましくは75質量%~100質量%、より好ましくは80質量%~100質量%、更に好ましくは85質量%~100質量%、より更に好ましくは90質量%~100質量%、更になお好ましくは95質量%~100質量%である。
【0016】
以下、本発明の熱処理油組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0017】
<基油(A)>
本実施形態の熱処理油組成物は、基油(A)を含有する。
基油(A)は、鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上である。
以下、鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)について、詳細に説明する。
【0018】
(鉱油(A1))
鉱油(A1)としては、熱処理油組成物に用いられる鉱油として一般的なものを特に制限なく用いることができる。
鉱油(A1)の具体例を挙げると、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上施して得られる鉱油;ワックス異性化鉱油等が挙げられる。
【0019】
また、鉱油(A1)は、水素化分解及び水素化精製から選択される少なくとも1種を含む精製処理を行うことで硫黄分を低減させた高精製度鉱油であってもよい。
高精製度鉱油の硫黄分は、高精製度鉱油の全量基準で、好ましくは10質量ppm未満、より好ましくは5質量ppm未満、更に好ましくは3質量ppm未満である。
【0020】
また、鉱油(A1)は、ブライトストックであってもよい。
本明細書において、「ブライトストック」とは、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して留出油を得、次いで当該留出油を脱れきして脱れき油を得、当該脱れき油に対し溶剤精製及び水素化精製等から選択される1種以上の精製処理を施して得られる高粘度鉱油(40℃動粘度:350mm2/s~550mm2/s程度)を意味する。
ここで、ブライトストックは、硫黄分が少ないブライトストック(水素化精製品)であってもよく、硫黄分が多いブライトストックであってもよい。
硫黄分が少ないブライトストックは、硫黄分が、ブライトストックの全量基準で、好ましくは10質量ppm未満、より好ましくは5質量ppm未満、更に好ましくは3質量ppm未満である。
また、硫黄分が多いブライトストックは、硫黄分が、ブライトストックの全量基準で、好ましくは0.30質量%~2.0質量%である。
なお、硫黄分が少ないブライトストックは、APIカテゴリーでグループIIに分類されるものであることが好ましい。また、硫黄分が多いブライトストックは、APIカテゴリーでグループIに分類されるものであることが好ましい。
【0021】
熱処理油組成物には、硫黄分を増加させて、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性を良好なものとする観点から、硫黄分が多い(硫黄分が、ブライトストックの全量基準で、0.30質量%~2.0質量%である)ブライトストックを含む鉱油が配合されることがある。しかしながら、本発明者が検討した結果、硫黄分が多いブライトストックを含む鉱油を配合した熱処理油組成物では、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性が低下することがあり、特に熱処理温度が900℃以上(特に、950℃以上)の高温になると、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性が低下しやすいことがわかった。
本発明者の検討によると、熱処理油組成物が含有する基油(A)として硫黄分が多いブライトストックを含有する鉱油(A1)を用いた場合であっても、硫黄化合物(B)(好ましくは、スルフィド類(B1)及びチアゾール類(B3)から選択される1種以上)を配合することで、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性を良好なものとできることが確認されている。
【0022】
本実施形態の熱処理油組成物では、硫黄分が多いブライトストックは、熱処理油組成物に要求される所望の粘度及び所望の硫黄分に応じて、基油(A)に配合して用いてもよい。
基油(A)が硫黄分が多いブライトストックを含む場合、硫黄分が多いブライトストックの含有量は、基油(A)の全量基準で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上である。また、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性を良好なものとする観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは1質量%~20質量%、より好ましくは2質量%~15質量%、更に好ましくは3質量%~10質量%である。
また、本実施形態の熱処理油組成物では、硫黄分が少ないブライトストックは、熱処理油組成物に要求される所望の粘度に応じて、基油(A)に配合して用いてもよい。基油(A)が硫黄分が少ないブライトストックを含む場合、硫黄分が少ないブライトストックの含有量は、基油(A)の全量基準で、1質量%~100質量%であってもよい。
【0023】
鉱油(A1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(合成油(A2))
合成油(A2)としては、熱処理油組成物に用いられる合成油として一般的なものを特に制限なく用いることができる。
合成油(A2)の具体例を挙げると、ポリ-α-オレフィン類、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリフェニル系炭化水素、エステル油(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトール等の多価アルコールの脂肪酸エステル)、グリコール系合成油、及び天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られるGTL基油等が挙げられる。
これらの中でも、GTL基油が好ましい。
合成油(A2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(植物油(A3))
植物油(A3)としては、熱処理油組成物に用いられる植物油として一般的なものを特に制限なく用いることができる。
植物油(A3)の具体例を挙げると、アマニ油、サフラワー油、ひまわり油、大豆油、コーン油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、ヒマシ油、落花生油、ココヤシ油、パーム核油、パーム油、ヤシ油、菜種油、及び米ぬか油等が挙げられる。
植物油(A3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(基油(A)の好ましい態様)
本実施形態において、基油(A)は、鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上であればよいが、鉱油(A1)及び合成油(A2)からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
また、基油(A)は、鉱油(A1)を含むことが好ましい。基油(A)が鉱油(A1)を含む場合、鉱油(A1)の含有量は、基油(A)の全量基準で、好ましくは20質量%~100質量%、より好ましくは30質量%~100質量%、更に好ましくは40質量%~100質量%、より更に好ましくは50質量%~100質量%、更になお好ましくは60質量%~100質量%、一層好ましくは70質量%~100質量%、より一層好ましくは80質量%~100質量%、更に一層好ましくは90質量%~100質量%である。
【0027】
(基油(A)の40℃動粘度)
本実施形態において用いられる基油(A)の40℃動粘度は、好ましくは5mm2/s~600mm2/s、より好ましくは6mm2/s~570mm2/s、更に好ましくは7mm2/s~540mm2/s、より更に好ましくは8mm2/s~520mm2/s、更になお好ましくは9mm2/s~500mm2/sである。
基油(A)の40℃動粘度が5mm2/s以上であれば、油煙の発生を抑制した熱処理油組成物としやすい。一方、基油(A)の40℃動粘度が600mm2/s以下であれば、冷却性能が良好な熱処理油組成物としやすい。
なお、本明細書において、40℃動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定した値である。
なお、本実施形態の熱処理油組成物は、基油(A)の40℃動粘度の調整のしやすさを考慮して、40℃動粘度が異なる複数種の基油を混合して用いることが好ましい。
【0028】
(基油(A)の含有量)
本実施形態の熱処理油組成物において、基油(A)の含有量は、熱処理油組成物の全量基準で、好ましくは80.0質量%以上、より好ましくは82.0質量%以上、更に好ましくは83.0質量%以上である。また、好ましくは99.99質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは80.0質量%~99.99質量%、より好ましくは82.0質量%~99.99質量%、更に好ましくは83.0質量%~99.99質量%である。
【0029】
<硫黄化合物(B)>
本実施形態の熱処理油組成物は、硫黄化合物(B)を含有する。
熱処理油組成物が、硫黄化合物(B)を含有しない場合、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性を良好なものとできない。
本実施形態において、硫黄化合物(B)は、スルフィド類(B1)及びスルフィド類(B2)並びにチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上を含む。
本実施形態において、硫黄化合物(B)は、スルフィド類(B1)及びスルフィド類(B2)並びにチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上のみからなるものであってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、スルフィド類(B1)及びスルフィド類(B2)並びにチアゾール類(B3)以外の他の硫黄化合物を含有してもよい。
本実施形態において、スルフィド類(B1)及びスルフィド類(B2)並びにチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上の化合物の含有量は、硫黄化合物(B)の全量基準で、好ましくは70質量%~100質量%、より好ましくは80質量%~100質量%、更に好ましくは90質量%~100質量%、より更に好ましくは95質量%~100質量%である。
以下、スルフィド類(B1)及びスルフィド類(B2)並びにチアゾール類(B3)について、詳細に説明する。
【0030】
(スルフィド類(B1)及びスルフィド類(B2))
スルフィド類(B1)は、下記一般式(b1)で表される化合物である。
また、スルフィド類(B2)は、下記一般式(b2)で表される化合物である。
【化7】
【0031】
前記一般式(b1)及び(b2)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、置換又は無置換の炭化水素基(X)を示す。
炭化水素基(X)が置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数1~10のアルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、及びハロゲン原子が挙げられる。
炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数3~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、より好ましくは炭素数3~10の分岐鎖状のアルキル基である。
ハロゲン原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、好ましくは塩素原子である。
炭化水素基(X)が置換基を有する場合、当該置換基の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。また、当該置換基が複数である場合、複数の当該置換基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
前記一般式(b1)及び(b2)中、炭化水素基(X)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。炭化水素基(X)の炭素数には、炭化水素基(X)が有していてもよい前記置換基の炭素数は含まれない。
なお、炭化水素基(X)として選択され得る基の炭素数が20を超える場合、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性が悪化する恐れがある。また、貯蔵安定性が悪化する恐れもある。
これらの中でも、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基が好ましい。
すなわち、前記一般式(b1)において、R11及びR12のうち、少なくとも一方の炭化水素基(X)が、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基であることが好ましく、双方が炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基であることがより好ましい。
また、前記一般式(b2)において、R13及びR14のうち、少なくとも一方の炭化水素基(X)が、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基であることが好ましく、双方が炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基であることがより好ましい。
また、炭化水素基(X)が炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基である場合、炭化水素基(X)は置換基を有することが好ましい。好ましい置換基としては、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキル基及び水酸基が挙げられ、これらの置換基の双方を有することがより好ましい。更に好ましくは、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキル基を2つ有し、水酸基を1つ有することである。
【0033】
炭化水素基(X)として選択され得る、炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びイコシル基等が挙げられる。
当該アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは6~20、より好ましくは8~20、更に好ましくは10~20である。
【0034】
炭化水素基(X)として選択され得る、炭素数2~20のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、及びイコセニル基等が挙げられる。
当該アルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該アルケニル基の炭素数は、好ましくは6~20、より好ましくは8~20、更に好ましくは10~20である。
【0035】
炭化水素基(X)として選択され得る、炭素数3~20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等が挙げられる。
なお、「炭素数3~20のシクロアルキル基」の「炭素数3~20」は、「環形成炭素数3~20」であることを意味する。
本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該シクロアルキル基の炭素数は、好ましくは4~16、より好ましくは5~10、更に好ましくは5~6である。
【0036】
炭化水素基(X)として選択され得る、炭素数3~20のシクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、及びシクロヘプテニル基等が挙げられる。
なお、「炭素数3~20のシクロアルケニル基」の「炭素数3~20」は、「環形成炭素数3~20」であることを意味する。
本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該シクロアルケニル基の炭素数は、好ましくは4~16、より好ましくは5~10、更に好ましくは5~6である。
【0037】
炭化水素基(X)として選択され得る、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロプロピルプロピル基、シクロプロピルブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、及びシクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。
なお、シクロアルキルアルキル基は、下記一般式(c1)で表される基であり、アルキル基の水素原子の1つがシクロアルキル基で置換されている基である。
【化8】
上記一般式(c1)中、円はシクロアルキル基であり、R
31はアルキレン基である。波線は、上記一般式(b1)中の炭素原子との結合位置又は上記一般式(b2)中の酸素原子との結合位置を意味する。
なお、「炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基」の「炭素数4~20」は、シクロアルキル基の環形成炭素数とアルキレン基(R
31)の炭素数との合計炭素数を意味する。
本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該シクロアルキルアルキル基を構成するシクロアルキル基の炭素数(環形成炭素数)は、好ましくは4~16、より好ましくは5~10、更に好ましくは5~6である。
また、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該シクロアルキルアルキル基を構成するアルキレン基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、更に好ましくは2~3である。
【0038】
炭化水素基(X1)として選択され得る、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基としては、例えば、シクロプロペニルメチル基、シクロプロペニルエチル基、シクロプロペニルプロピル基、シクロプロペニルブチル基、シクロブテニルメチル基、シクロペンテニルメチル基、シクロペンテニルエチル基、シクロペンテニルプロピル基、シクロヘキセニルメチル基、シクロヘキセニルエチル基、及びシクロヘキセニルプロピル基等が挙げられる。
なお、シクロアルケニルアルキル基は、下記一般式(c2)で表される基であり、アルキル基の水素原子の1つがシクロアルケニル基で置換されている基である。
【化9】
上記一般式(c2)中、円はシクロアルケニル基であり、R
32はアルキレン基である。波線は、上記一般式(b1)中の炭素原子との結合位置又は上記一般式(b2)中の酸素原子との結合位置を意味する。
なお、「炭素数4~20のシクロケニルアルキル基」の「炭素数4~20」は、シクロアルケニル基の環形成炭素数とアルキレン基(R
32)の炭素数との合計炭素数を意味する。
本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該シクロアルケニルアルキル基を構成するシクロアルケニル基の炭素数(環形成炭素数)は、好ましくは4~16、より好ましくは5~10、更に好ましくは5~6である。
また、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該シクロアルケニルアルキル基を構成するアルキレン基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、更に好ましくは2~3である。
【0039】
炭化水素基(X1)として選択され得る、炭素数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ベンゾクリセニル基、及びフルオランテニル基等が挙げられる。
なお、「炭素数6~20のアリール基」の「炭素数6~20」は、「環形成炭素数6~20」であることを意味する。
本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該アリール基の炭素数は、好ましくは6~16、より好ましくは6~10、更に好ましくは6である。
【0040】
炭化水素基(X1)として選択され得る、炭素数7~20のアリールアルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ビフェニルメチル基、ビフェニルエチル基、ビフェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フェナントリルメチル基、フェナントリルエチル基、フェナントリルプロピル基、トリフェニレニルメチル基、トリフェニレニルエチル基、トリフェニレニルプロピル基、フルオレニルメチル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基、アントリルメチル基、アントリルエチル基、アントリルプロピル基、ベンゾクリセニルメチル基、ベンゾクリセニルエチル基、ベンゾクリセニルプロピル基、フルオランテニルメチル基、フルオランテニルエチル基、及びフルオランテニルプロピル基等が挙げられる。
なお、アリールアルキル基は、下記一般式(c3)で表される基であり、アルキル基の水素原子の1つがアリール基で置換されている基である。
【化10】
上記一般式(c3)中、二重円はアリール基であり、R
33はアルキレン基である。波線は、上記一般式(b1)中の炭素原子との結合位置又は上記一般式(b2)中の酸素原子との結合位置を意味する。
なお、「炭素数7~20のアリールアルキル基」の「炭素数7~20」は、アリール基の環形成炭素数とアルキレン基(R
33)の炭素数との合計炭素数を意味する。
本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該アリールアルキル基を構成するアリール基の炭素数(環形成炭素数)は、好ましくは6~16、より好ましくは6~10、更に好ましくは6である。
また、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該アリールアルキル基を構成するアルキレン基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、更に好ましくは2~3である。
【0041】
上記一般式(b1)及び(b2)中、L11、L12、L13、及びL14は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。
なお、当該アルキレン基の炭素数が1である場合、熱処理油組成物の光輝性が悪化する。また、当該アルキレン基の炭素数が7以上である場合、上記一般式(b1)及び(b2)で表される化合物の合成が困難であるため、入手が困難となる。
当該アルキレン基の炭素数は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは2~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは2~3である。
【0042】
ここで、光輝性向上の観点から、スルフィド類(B1)及びスルフィド類(B2)の中でも、スルフィド類(B1)を用いることが好ましい。
また、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、スルフィド類(B1)は、下記一般式(b1-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
なお、本発明の効果を更に発揮させやすくする観点からは、下記一般式(b1-1)で表される化合物の含有量は、スルフィド類(B1)の全量基準で、好ましくは70質量%~100質量%、より好ましくは80質量%~100質量%、更に好ましくは90質量%~100質量%、より更に好ましくは95質量%~100質量%である。
【化11】
【0043】
前記一般式(b1-1)中、R16及びR17は、各々独立に、各々独立に、炭素数1~6のアルキレン基を示す。
当該アルキレン基の炭素数は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは2~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは2~3である。
【0044】
前記一般式(b1-1)中、L11及びL12は、上記一般式(b1)と同様、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。
なお、当該アルキレン基の炭素数が1である場合、熱処理油組成物の光輝性が悪化する。また、当該アルキレン基の炭素数が7以上である場合、上記一般式(b1-1)で表される化合物の合成が困難であるため、入手が困難となる。
当該アルキレン基の炭素数は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは2~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは2~3である。
【0045】
前記一般式(b1-1)中、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基又は水酸基を示す。
当該アルキル基は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、炭素数3~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキル基であることが更に好ましい。
【0046】
前記一般式(b1-1)中、m1は0~5の整数を示す。m1は、好ましくは1~4、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。
m1が2以上である場合、複数存在するR18は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
m1が3である場合、複数存在するR18のうちの1つは水酸基であり、残りの2つは炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。また、当該アルキル基は、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。
【0047】
前記一般式(b1-1)中、m2は0~5の整数を示す。m2は、好ましくは1~4、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。
m2が2以上である場合、複数存在するR19は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
m2が3である場合、複数存在するR19のうちの1つは水酸基であり、残りの2つは炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。また、当該アルキル基は、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。
【0048】
スルフィド類(B1)を具体的に例示すると、2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。
また、スルフィド類(B2)を具体的に例示すると、3,3’-チオジプロピオン酸ジドデシル、3,3’-チオジプロピオン酸ジオクタデシル、及び3,3’-チオジプロピオン酸ジテトラデシル等が挙げられる。
【0049】
スルフィド類(B1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、スルフィド類(B2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、スルフィド類(B1)及びスルフィド類(B2)を併用する場合、スルフィド類(B1)から選択される1種以上と、スルフィド類(B2)から選択される1種以上とを、併用してもよい。
【0050】
(チアゾール類(B3))
チアゾール類(B3)は、下記一般式(b3)で表される化合物である。
【化12】
【0051】
前記一般式(b3)中、R21は、置換又は無置換の炭化水素基(Y)を示す。
炭化水素基(Y)が置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数1~10のアルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、及びハロゲン原子が挙げられる。
ハロゲン原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、好ましくは塩素原子である。
炭化水素基(Y)が置換基を有する場合、当該置換基の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。また、当該置換基が複数である場合、複数の置換基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
炭化水素基(Y)が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、水酸基が挙げられる。
【0052】
前記一般式(b3)中、炭化水素基(Y)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。炭化水素基(Y)の炭素数には、炭化水素基(Y)が有していてもよい前記置換基の炭素数は含まれない。
なお、炭化水素基(Y)として選択され得る基の炭素数が20を超える場合、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性が悪化する恐れがある。また、貯蔵安定性が悪化する恐れもある。
【0053】
炭化水素基(Y)として選択され得る、炭素数1~20のアルキル基としては、炭化水素基(X)の説明として上述したアルキル基と同様のアルキル基が挙げられ、好適な範囲も上述したアルキル基と同様である。
【0054】
炭化水素基(Y)として選択され得る、炭素数2~20のアルケニル基としては、炭化水素基(X)の説明として上述したアルケニル基と同様のアルケニル基が挙げられ、好適な範囲も上述したアルケニル基と同様である。
【0055】
炭化水素基(Y)として選択され得る、炭素数3~20のシクロアルキル基としては、炭化水素基(X)の説明として上述したシクロアルキル基と同様のアルケニル基が挙げられ、好適な範囲も上述したシクロアルキル基と同様である。
【0056】
炭化水素基(Y)として選択され得る、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、炭化水素基(X)の説明として上述したシクロアルキルアルキル基と同様のシクロアルキルアルキル基が挙げられ、好適な範囲も上述したシクロアルキルアルキル基と同様である。
なお、シクロアルキルアルキル基は、下記一般式(d1)で表される基であり、アルキル基の水素原子の1つがシクロアルキル基で置換されている基である。
【化13】
上記一般式(d1)中、円はシクロアルキル基であり、R
41はアルキレン基である。波線は、上記一般式(b3)中のチアゾールの2位、4位、又は5位との結合位置を意味する。
【0057】
炭化水素基(Y)として選択され得る、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基としては、炭化水素基(X)の説明として上述したシクロアルケニルアルキル基と同様のシクロアルケニルアルキル基が挙げられ、好適な範囲も上述したシクロアルケニルアルキル基と同様である。
なお、シクロアルケニルアルキル基は、下記一般式(d2)で表される基であり、アルキル基の水素原子の1つがシクロアルケニル基で置換されている基である。
【化14】
上記一般式(d3)中、円はシクロアルケニル基であり、R
42はアルキレン基である。波線は、上記一般式(b3)中のチアゾールの2位、4位、又は5位との結合位置を意味する。
【0058】
炭化水素基(Y)として選択され得る、炭素数6~20のアリール基、としては、炭化水素基(X)の説明として上述したアリール基と同様のアリール基が挙げられ、好適な範囲も上述したアリール基と同様である。
【0059】
炭化水素基(Y)として選択され得る、炭素数7~20のアリールアルキル基としては、炭化水素基(X)の説明として上述したアリールアルキル基と同様のアリールアルキル基が挙げられ、好適な範囲も上述したアリールアルキル基と同様である。
なお、アリールアルキル基は、下記一般式(d3)で表される基であり、アルキル基の水素原子の1つがアリール基で置換されている基である。
【化15】
上記一般式(d3)中、二重円はアリール基であり、R
43はアルキレン基である。波線は、上記一般式(b3)中のチアゾールの2位、4位、又は5位との結合位置を意味する。
【0060】
上記一般式(b3)中、nは0~3の整数を示す。nは、好ましくは1~3である。
nが2以上である場合、複数存在するR21は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0061】
ここで、nが2以上であり、2つのR21が互いに隣接する場合、前記2つのR21が環構造を形成していてもよいし、環構造を形成していなくてもよい。環構造を形成する場合、前記2つのR21が、各々独立して、アルキル基及びアルケニル基から選択される基であり、アルキル基とアルキル基、アルキル基とアルケニル基、又はアルケニル基とアルケニル基が結合して、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、又はアリール基を形成していてもよい。
【0062】
より具体的には、上記一般式(b3)において、前記2つのR
21が環構造を形成する場合、チアゾール類(B3)は、下記一般式(b3-1)で表される化合物であってもよい。
【化16】
上記一般式(b3-1)中、チアゾール環に隣接する略円は、炭素数3~20のシクロアルキル環、炭素数3~20のシクロアルケニル環、又は炭素数6~20のアリール環である。
なお、当該シクロアルキル環、当該シクロアルケニル環、当該アリール環は、炭化水素基(Y)の置換基として上述した置換基を1つ以上有していてもよいし、有していなくてもよい(無置換であってもよい)。
上記一般式(b3-1)中、R
25は、上記一般式(b3)におけるR
21と同様の基であり、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~16のアルキル基、更に好ましくは炭素数1~10のアルキル基、より更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
【0063】
ここで、上記一般式(d3)において、前記2つのR
21が環構造を形成する場合、チアゾール類(B3)は、下記構造式(b3α)で表される分子骨格(ベンゾチアゾール骨格)又は下記構造式(b3β)で表される分子骨格(ナフトチアゾール骨格)を有することが好ましく、入手容易性等の観点からは、下記構造式(b3α)で表される分子骨格(ベンゾチアゾール骨格)を有することが好ましい。
【化17】
【0064】
また、チアゾール類(B3)が、上記構造式(b3α)又は上記構造式(b3β)で表される分子骨格を有する場合、チアゾール類(B3)は、下記一般式(b3α-1)又は下記構造式(b3β-1)で表される化合物であることが好ましく、下記一般式(b3α-1)で表される化合物であることがより好ましい。
【化18】
上記一般式(b3α-1)及び(b3β-1)中、R
26及びR
27は、上記一般式(b3)におけるR
21と同様の基であり、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~16のアルキル基、更に好ましくは炭素数1~10のアルキル基、より更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
pは、0~4の整数であり、好ましくは0~3、より好ましくは0~2、更に好ましくは0~1、より更に好ましくは0である。
qは、0~6の整数であり、好ましくは0~3、より好ましくは0~2、更に好ましくは0~1、より更に好ましくは0である。
上記一般式(b3α-1)中、R
22は、ベンゾチアゾール環を構成するベンゼン環を置換し得る置換基である。具体的な置換基としては、炭化水素基(Y)の置換基として上述した置換基が挙げられる。
上記一般式(b3β-1)中、R
23は、ナフトチアゾール環を構成するナフタレン環を置換し得る置換基である。具体的な置換基としては、炭化水素基(Y)の置換基として上述した置換基が挙げられる。
【0065】
また、上記一般式(b3)において、前記2つのR
21が環構造を形成しない場合、又は、チアゾール骨格の4位及び5位の一方にのみR
21が結合するか若しくはチアゾール骨格の4位及び5位の双方にR
21が結合していない場合、チアゾール類(B3)は、下記一般式(b3γ-1)で表される化合物であることが好ましい。
【化19】
上記一般式(b3γ-1)、R
28は、上記一般式(b3)におけるR
21と同様の基であり、好ましくは炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基である。なお、R
28は、炭化水素基(Y)の置換基として上述した置換基を有していてもよく、当該置換基を有していなくてもよいが、当該置換基を有していないことが好ましい。
当該アルキル基の炭素数は、より好ましくは1~16、更に好ましくは1~10、より更に好ましくは1~3である。
また、当該アリール基の炭素数は、より好ましくは6~10、更に好ましくは6である。
n1は、0~3の整数であり、好ましくは1~3、より好ましくは2~3である。
n1が2以上である場合、複数存在するR
28は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
n1が2以上であり、2つのR
28が互いに隣接する場合、前記2つのR
28は、環構造を形成しない。
なお、上記一般式(b3γ-1)において、チアゾール骨格の2位には、R
28として、上記アルキル基が結合していることが好ましい。そして、チアゾール骨格の4位と5位の一方又は双方には、R
28として、上記アルキル基又は上記アリール基が結合していることが好ましい。
【0066】
チアゾール類(B3)を具体的に例示すると、2-メチルベンゾチアゾール、2-メチル-4,5-ジフェニルチアゾール、2-メチルナフト[1,2-d]チアゾール、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾール、2-エチル-4-メチルチアゾール、2-フェニルベンゾチアゾール、ベンゾチアゾール、ナフト[1,2-d]チアゾール、チアゾール等が挙げられる。
【0067】
チアゾール類(B3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
(硫黄化合物(B)の含有量)
本実施形態の熱処理油組成物において、硫黄化合物(B)の含有量は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、熱処理油組成物の全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%、更に好ましくは0.05質量%以上である。また、硫黄化合物の過剰投入によるスラッジの発生及び熱処理油組成物の寿命の低下を抑制しやすくする観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは0.01質量%~2.0質量%、より好ましくは0.02質量%~1.0質量%、更に好ましくは0.05質量%~0.5質量%である。
【0069】
(硫黄化合物(B)の分子量)
本実施形態の熱処理油組成物において、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、硫黄化合物(B)の分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは120以上である。また、好ましくは1,500以下、より好ましくは1,200以下、更に好ましくは1,000以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは100~1,500、より好ましくは110~1,200、更に好ましくは120~1,000である。
【0070】
<添加剤>
本実施形態の熱処理油組成物は、基油(A)及び硫黄化合物(B)を混合することにより調製されるが、さらに所望により、熱処理油組成物において慣用されている添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、例えば、蒸気膜破断剤、光輝性改良剤、冷却性向上剤、及び酸化防止剤が挙げられる。
当該添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(蒸気膜破断剤)
蒸気膜破断剤としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体(α-オレフィンの炭素数は3~20);当該エチレン-α-オレフィン共重合体の水素添加物;1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、及び1-オクタデセン等の炭素数5~20のα-オレフィン重合体;当該α-オレフィン重合体の水素添加物;ポリプロピレン、ポリブテン、及びポリイソブチレン等の炭素数3又は4のオレフィン重合体;当該オレフィン重合体の水素添加物;ポリメタクリレート、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、及び石油樹脂等の高分子化合物;アスファルト等が挙げられる。
これらの蒸気膜破断剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
蒸気膜破断剤の数平均分子量(Mn)は、通常800~100,000であることが好ましい。蒸気膜破断剤の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて計測されるポリスチレン換算の値である。
蒸気膜破断剤の含有量は、熱処理油組成物の全量基準で、好ましくは0.5質量%~18質量%、より好ましくは1.0質量%~16質量%、更に好ましくは2.0質量%~15質量%である。
【0072】
(光輝性改良剤)
光輝性改良剤としては、例えば、油脂;油脂脂肪酸;アルキルコハク酸、アルキルコハク酸イミド、及びアルキルコハク酸無水物、並びにこれらの誘導体;アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸イミド、及びアルケニルコハク酸無水物、並びにこれらの誘導体;置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸エステル及びその誘導体等が挙げられる。
これらの光輝性改良剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光輝性改良剤の含有量は、熱処理油組成物の全量基準で、好ましくは0.1質量%~5.0質量%、より好ましくは0.3質量%~3.0質量%、更に好ましくは0.4質量%~2.0質量%である。
【0073】
(冷却性向上剤)
冷却性向上剤としては、例えば、金属スルホネート、金属サリチレート、及び金属フェネート等の金属系清浄剤が挙げられる。
金属系清浄剤を構成する金属としては、例えば、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、及びバリウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。
また、冷却性向上剤としては、アルケニルコハク酸イミド類、ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド類等のイミド系分散剤、脂肪酸あるいはコハク酸で代表される一価又は二価カルボン酸アミド類等も挙げられる。
これらの冷却性向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
冷却性向上剤の含有量は、熱処理油組成物の全量基準で、0.01質量%~8.0質量%である。
【0074】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-パラクレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート等の単環フェノール類;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等の多環フェノール類;等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン系酸化防止剤及びナフチルアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
ジフェニルアミン系酸化防止剤としては、例えば、炭素数3~20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン等が挙げられ、具体的には、ジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミン、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、及びテトラノニルジフェニルアミン等が挙げられる。
ナフチルアミン系酸化防止剤としては、例えば、炭素数3~20のアルキル置換フェニル-α-ナフチルアミン等が挙げられ、具体的には、α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、ブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、及びノニルフェニル-α-ナフチルアミン等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、酸化劣化を抑制して良好な光輝性を長期に亘って維持する観点から、酸化防止剤は、アミン系酸化防止剤を含むことが好ましく、アミン系酸化防止剤からなることがより好ましい。また、アミン系酸化防止剤は、ジフェニルアミン系酸化防止剤を含むことが好ましく、ジフェニルアミン系酸化防止剤からなることがより好ましい。
酸化防止剤の含有量は、熱処理油組成物の全量基準で、好ましくは0.01質量%~5.0質量%、より好ましくは0.02質量%~3.0質量%、更に好ましくは0.05質量%~2.0質量%である。
【0075】
(スルフィド類(B1)及びスルフィド類(B2)並びにチアゾール類(B3)以外の他の硫黄化合物)
本実施形態の熱処理油組成物において、硫黄化合物(B)は、スルフィド類(B1)及びスルフィド類(B2)並びにチアゾール類(B3)以外の他の硫黄化合物を含有してもよいが、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該他の硫黄化合物は少ないことが好ましい。
当該他の硫黄化合物としては、スルホン類及びエステル構造を有しないスルフィド類等が挙げられる。
本実施形態の熱処理油組成物において、スルホン類及びエステル構造を有しないスルフィド類の含有量は、各々独立に、好ましくは0.20質量%未満、より好ましくは0.10質量%未満、更に好ましくは0.01質量%未満、より更に好ましくは0.001質量%未満、更になお好ましくはこれらを含まないことである。
【0076】
[本発明の熱処理油組成物の物性値]
<硫黄分>
本実施形態の熱処理油組成物は、硫黄分が、熱処理油組成物の全量基準で、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは20質量ppm以上、更に好ましくは25質量ppm以上である。また、好ましくは5,000質量ppm以下、より好ましくは3,500質量ppm以下、更に好ましくは2,500質量ppm以下である。
これらの数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、好ましくは10質量ppm~5,000質量ppm、より好ましくは20質量ppm~3,500質量ppm、更に好ましくは25質量ppm~2,500質量ppmである。
本明細書において、熱処理油組成物中の硫黄分の含有量は、質量ppmオーダーの測定の場合には、JIS K 2541-6:2013の紫外蛍光法に準拠して測定される値を意味し、質量%オーダーの場合には、JIS K 2541-7:2013の波長分散蛍光X線法に準拠して測定される値を意味する。
【0077】
<リン量、モリブデン量、及び亜鉛量>
本実施形態の熱処理油組成物は、リン量、モリブデン量、及び亜鉛量が、熱処理油組成物の全量基準で、各々独立に、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.001質量%未満、更に好ましくは、リン、モリブデン、及び亜鉛を含まないことである。
本明細書において、熱処理油組成物中のリン量、モリブデン量、及び亜鉛量は、JPI-5S-38-03に準拠して測定することができる。
【0078】
<40℃動粘度>
本実施形態の熱処理油組成物は、焼入れ等の熱処理時における所望の油温に応じて40℃動粘度が設定される。
熱処理油組成物は、低い油温で使用するコールド油、高い油温で使用するホット油、これらの中間の油温で使用するセミホット油に区分される。コールド油は、JIS K2242:2012の1種に区分され、セミホット油及びホット油は、JIS K2242:2012の2種に区分される。
本実施形態の熱処理油組成物がコールド油として用いられる場合、40℃動粘度は、5mm2/s以上40mm2/s未満であることが好ましい。
本実施形態の熱処理油組成物がセミホット油又はホット油として用いられる場合、40℃動粘度は、40mm2/s以上500mm2/s以下であることがより好ましい。
本明細書において、熱処理油組成物の40℃動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定される値を意味する。
【0079】
[熱処理油組成物の製造方法]
本実施形態の熱処理油組成物の製造方法は、特に限定されない。
例えば、本実施形態の熱処理油組成物の製造方法は、鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上の基油(A)と、硫黄化合物(B)とを混合する工程を含む。
そして、前記硫黄化合物(B)は、下記一般式(b1)で表されるスルフィド類(B1)及び下記一般式(b2)で表されるスルフィド類(B2)並びに下記一般式(b3)で表されるチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上を含む。
【化20】
[前記一般式(b1)及び(b2)中、R
11、R
12、R
13、及びR
14は、各々独立に、置換又は無置換の炭化水素基(X)を示す。前記炭化水素基(X)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
また、前記一般式(b1)及び(b2)中、L
11、L
12、L
13、及びL
14は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。]
【化21】
[前記一般式(b3)中、R
21は、置換又は無置換の炭化水素基(Y)を示す。前記炭化水素基(Y)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
nは0~3の整数を示す。
nが2以上である場合、複数存在するR
21は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nが2以上であり、2つのR
21が互いに隣接する場合、前記2つのR
21が環構造を形成していてもよい。]
【0080】
上記各成分を混合する方法としては、特に制限はないが、例えば、基油(A)に、硫黄化合物(B)を配合する工程を有する方法が挙げられる。熱処理油組成物が、基油(A)及び硫黄化合物(B)以外の他の成分(上記添加剤)を更に含有する場合、当該他の成分は、硫黄化合物(B)と共に基油(A)に同時に配合してもよいし、別々に配合してもよい。なお、各成分は、希釈油等を加えて溶液(分散体)の形態とした上で配合してもよい。各成分を配合した後、公知の方法により、撹拌して均一に分散させることが好ましい。
なお、基油(A)及び硫黄化合物(B)の好ましい態様については、既述のとおりである。
【0081】
[熱処理油組成物の用途]
本実施形態の熱処理油組成物は、金属材料の焼入れ等の熱処理の際に用いることで、焼入れ等の熱処理後の金属材料の光輝性を良好なものとできる。例えば、炭素鋼、ニッケル-マンガン鋼、クロム-モリブデン鋼、マンガン鋼等の各種合金鋼に焼入れ等の熱処理を行う際の熱処理油組成物として好適に用いることができる。
また、本実施形態の熱処理油組成物は、貯蔵安定性にも優れる。
したがって、本実施形態の熱処理油組成物は、金属材料の焼入れ等のための熱処理油(好ましくは、焼入油又は焼戻油)として用いることが好ましい。また、本実施形態では、本実施形態の熱処理油組成物を金属材料の焼入れ等の熱処理油(好ましくは、焼入油又は焼戻油)として使用する、熱処理油組成物の使用方法が提供される。熱処理油組成の油温は、熱処理が焼入れである場合、好ましくは40℃~280℃、より好ましくは50℃~200℃、更に好ましくは60℃~150℃に設定される。熱処理が焼戻しである場合、油温はさらに高めてもよく、例えば上限は300℃であってもよい。また、金属材料の焼入れ温度は、800℃以上900℃以下であってもよく、900℃超1100℃以下であってもよい。本実施形態の熱処理油組成物によれば、金属材料の焼入れ温度が900℃超1100℃以下である場合であっても、焼入れ後の金属材料の光輝性を良好なものとし得る。
【0082】
[提供される本発明の一態様]
本発明の一態様によれば、下記[1]~[10]が提供される。
[1] 鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上の基油(A)と、硫黄化合物(B)とを含有し、
前記硫黄化合物(B)が、下記一般式(b1)で表されるスルフィド類(B1)及び下記一般式(b2)で表されるスルフィド類(B2)並びに下記一般式(b3)で表されるチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上を含む、熱処理油組成物。
【化22】
[前記一般式(b1)及び(b2)中、R
11、R
12、R
13、及びR
14は、各々独立に、置換又は無置換の炭化水素基(X)を示す。前記炭化水素基(X)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
また、前記一般式(b1)及び(b2)中、L
11、L
12、L
13、及びL
14は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。]
【化23】
[前記一般式(b3)中、R
21は、置換又は無置換の炭化水素基(Y)を示す。前記炭化水素基(Y)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
nは0~3の整数を示す。
nが2以上である場合、複数存在するR
21は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nが2以上であり、2つのR
21が互いに隣接する場合、前記2つのR
21が環構造を形成していてもよい。]
[2] 前記一般式(b1)において、R
11及びR
12のうち、少なくとも一方の前記炭化水素基(X)が、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基である、上記[1]に記載の熱処理油組成物。
[3] 前記スルフィド類(B1)が、下記一般式(b1-1)で表されるスルフィド類(B1-1)を含む、上記(1)又は(2)に記載の熱処理油組成物。
【化24】
[前記一般式(b1-1)中、R
16及びR
17は、各々独立に、各々独立に、炭素数1~6のアルキレン基を示す。
L
11及びL
12は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。R
18及びR
19は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基又は水酸基を示す。
m1は0~5の整数を示す。
m2は0~5の整数を示す。
m1が2以上である場合、複数存在するR
18は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
m2が2以上である場合、複数存在するR
19は、同一であってもよく、異なっていてもよい。]
[4] 前記チアゾール類(B3)が、下記構造式(b3α)又は下記構造式(b3β)で表される分子骨格を有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の熱処理油組成物。
【化25】
[5] 硫黄分が、前記熱処理油組成物の全量基準で、10質量ppm~5,000質量ppmである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱処理油組成物。
[6] 前記硫黄化合物(B)の含有量が、前記熱処理油組成物の全量基準で、0.01質量%~2.0質量%である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の熱処理油組成物。
[7] さらに、蒸気膜破断剤、光輝性改良剤、冷却性向上剤、及び酸化防止剤からなる群から選択される1種以上を含有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の熱処理油組成物。
[8] 焼入油又は焼戻油として用いられる、上記[1]~[7]のいずれかに記載の熱処理油組成物。
[9] 上記[1]~[7]のいずれかに記載の熱処理油組成物を、焼入油又は焼戻油として使用する、使用方法。
[10] 鉱油(A1)、合成油(A2)、及び植物油(A3)からなる群から選択される1種以上の基油(A)と、硫黄化合物(B)とを混合する工程を含み、
前記硫黄化合物(B)が、下記一般式(b1)で表されるスルフィド類(B1)及び下記一般式(b2)で表されるスルフィド類(B2)並びに下記一般式(b3)で表されるチアゾール類(B3)からなる群から選択される1種以上を含む、熱処理油組成物の製造方法。
【化26】
[前記一般式(b1)及び(b2)中、R
11、R
12、R
13、及びR
14は、各々独立に、置換又は無置換の炭化水素基(X)を示す。前記炭化水素基(X)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
また、前記一般式(b1)及び(b2)中、L
11、L
12、L
13、及びL
14は、各々独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示す。]
【化27】
[前記一般式(b3)中、R
21は、置換又は無置換の炭化水素基(Y)を示す。前記炭化水素基(Y)は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数4~20のシクロアルケニルアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を示す。
nは0~3の整数を示す。
nが2以上である場合、複数存在するR
21は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nが2以上であり、2つのR
21が互いに隣接する場合、前記2つのR
21が環構造を形成していてもよい。]
【実施例0083】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
[各種物性値の測定方法]
(1)基油(A)及び熱処理油組成物の40℃動粘度
各実施例及び各比較例で用いた基油(A)、並びに各実施例及び各比較例において調製した熱処理油組成物の40℃動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定した。
(2)硫黄分
各実施例及び各比較例において用いた基油(A)、並びに各実施例及び各比較例において調製した熱処理油組成物の硫黄分は、質量ppmオーダーの測定の場合には、JIS K 2541-6:2013の紫外蛍光法に準拠し、質量%オーダーの場合には、JIS K 2541-7:2013の波長分散蛍光X線法に準拠して測定した。
【0085】
[実施例1~14、比較例1~6]
実施例1~14、比較例1~6の熱処理油組成物の調製に用いた原料を以下に示す。
【0086】
(1)基油(A)
・「鉱油(A1)-1」: APIカテゴリーでグループIIに分類される高粘度鉱油(硫黄分の少ないブライトストックに該当)、硫黄量:3質量ppm未満、40℃動粘度:396.7mm2/s
・「鉱油(A1)-2」: APIカテゴリーでグループIIに分類される鉱油、硫黄量:3質量ppm未満、40℃動粘度:7.573mm2/s
・「鉱油(A1)-3」: APIカテゴリーでグループIIIに分類される鉱油、硫黄量:3質量ppm未満、40℃動粘度:20.57mm2/s
・「鉱油(A1)-4」: APIカテゴリーでグループIIに分類される鉱油、硫黄量:3質量ppm未満、40℃動粘度:31.49mm2/s
・「鉱油(A1)-5」: APIカテゴリーでグループIIIに分類される鉱油、硫黄量:3質量ppm未満、40℃動粘度:12.53mm2/s
・「鉱油(A1)-6」: APIカテゴリーでグループIに分類される高粘度鉱油(硫黄分の多いブライトストックに該当)、硫黄量:1.01質量%、40℃動粘度:481.8mm2/s
【0087】
(2)硫黄化合物(B)
・「スルフィド類(B1)-1」: 2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](分子量:642.94)
下記化学式(b1-1-1)で表される化合物である。
【化28】
化学式(b1-1-1)で表される化合物は、前記一般式(b1-1)中、R
16及びR
17がエチレン基であり、L
11及びL
12がエチレン基である。m1=3であり、R
18のうちの1つは水酸基(置換位置:4位)であり、2つはtert-ブチル基(置換位置:3位、5位)である。また、m2=3であり、R
19のうちの1つは水酸基(置換位置:4位)であり、2つはtert-ブチル基(置換位置:3位、5位)である。
【0088】
・「スルフィド類(B2)-1」: 3,3’-チオジプロピオン酸ジドデシル(分子量:514.85)
下記化学式(b2-1)で表される化合物である。
【化29】
化学式(b2-1)で表される化合物は、前記一般式(b2)中、L
13及びL
14がエチレン基であり、R
13及びR
14がn-ドデシル基である。
【0089】
・「チアゾール類(B3)-1」: 2-メチルベンゾチアゾール(分子量:149.21)
下記化学式(b3-1)で表される化合物である。
【化30】
化学式(b3-1)で表される化合物は、前記一般式(b3)中、n=3であり、R
21のうちの1つはメチル基(置換位置:チアゾールの2位)であり、2つの置換基(置換位置:チアゾールの4位及び5位)はベンゼン環を形成している。すなわち、化学式(b3-1)で表される化合物は、上記構造式(b3α)で表される分子骨格を有し、上記一般式(b3α-1)で表される化合物でもある。
【0090】
・「チアゾール類(B3)-2」: 2-メチル-4,5-ジフェニルチアゾール(分子量:251.35)
下記化学式(b3-2)で表される化合物である。
【化31】
化学式(b3-2)で表される化合物は、前記一般式(b3)中、n=3であり、R
21のうちの1つはメチル基(置換位置:チアゾールの2位)であり、2つは無置換のフェニル基(置換位置:チアゾールの4位及び5位)である。なお、化学式(b3-2)で表される化合物は、2つのR
21によって環構造が形成されていないため、上記一般式(b3γ-1)で表される化合物でもある。
【0091】
・「チアゾール類(B3)-3」: 2-メチルナフト[1,2-d]チアゾール(分子量:199.27)
下記化学式(b3-3)で表される化合物である。
【化32】
化学式(b3-3)で表される化合物は、前記一般式(b3)中、n=3であり、R
21のうちの1つはメチル基(置換位置:(置換位置:チアゾールの2位)であり、2つの置換基(置換位置:チアゾールの4位及び5位)はナフタレン環を形成している。すなわち、化学式(b3-3)で表される化合物は、上記構造式(b3β)で表される分子骨格を有し、上記一般式(b3β-1)で表される化合物でもある。
【0092】
・「チアゾール類(B3)-4」: 2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾール(分子量:227.28)
下記化学式(b3-4)で表される化合物である。
【化33】
化学式(b3-4)で表される化合物は、前記一般式(b3)中、n=3であり、R
21のうちの1つはヒドロキシフェニル基(置換位置:チアゾールの2位)であり、2つの置換基(置換位置:チアゾールの4位及び5位)はベンゼン環を形成している。すなわち、化学式(b3-4)で表される化合物は、上記構造式(b3α)で表される分子骨格を有し、上記一般式(b3α-1)で表される化合物でもある。
【0093】
・「チアゾール類(B3)-5」: 2-エチル-4-メチルチアゾール(分子量:127.21)
下記化学式(b3-5)で表される化合物である。
【化34】
化学式(b3-5)で表される化合物は、前記一般式(b3)中、n=2であり、R
21のうちの1つはエチル基(置換位置:チアゾールの2位)であり、もう1つはメチル基(置換位置:チアゾールの4位)である。なお、化学式(b3-5)で表される化合物は、チアゾールの5位に置換基を有しておらず、2つのR
21によって環構造が形成されていないため、上記一般式(b3γ-1)で表される化合物でもある。
【0094】
・「チアゾール類(B3)-6」: 2-フェニルベンゾチアゾール(分子量:211.28)
下記化学式(b3-6)で表される化合物である。
【化35】
化学式(b3-6)で表される化合物は、前記一般式(b3)中、n=3であり、R
21のうちの1つはフェニル基(置換位置:チアゾールの2位)であり、2つの置換基(置換位置:チアゾールの4位及び5位)はベンゼン環を形成している。すなわち、化学式(b3-6)で表される化合物は、上記構造式(b3α)で表される分子骨格を有し、上記一般式(b3α-1)で表される化合物でもある。
【0095】
(3)比較例硫黄化合物
・「硫黄化合物(B’)-1」: 4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)(分子量:358.54)
下記化学式(b’-1)で表される、エステル構造を有しないスルフィド類である。
【化36】
【0096】
・「硫黄化合物(B’)-2」: ジフェニルスルホン(分子量:218.27)
下記化学式(b’-2)で表されるスルホン類である。
【化37】
【0097】
・「硫黄化合物(B’)-3」: ジベンゾチオフェン(分子量:184.26)
下記化学式(b’-3)で表されるチオフェン類である。
【化38】
【0098】
(4)添加剤
・蒸気膜破断剤:ポリマー
・光輝性改良剤:カルボン酸
・アミン系酸化防止剤:ジフェニルアミン系酸化防止剤
・フェノール系酸化防止剤:2,6-ジ-tert-ブチル-パラクレゾール
【0099】
上記原料を、表1~表4に示す配合量(質量%)で十分に混合し、実施例1~14及び比較例1~6の熱処理油組成物をそれぞれ調製した。
【0100】
[評価方法]
(1)光輝性の評価方法
「熱処理油槽内の酸素による光輝性への影響(出光トライボレビュー、No.31、pp.1963~1966、平成20年9月30日発行)」を参考にして、焼入れ後の鋼材の光輝性の評価を行った。
具体的には、ダンベル型の鋼材S45C(径:16mm、長さ:30mm、硬度H
RC:16)と円柱型の鋼材SUJ2(径:10mm、長さ:30mm、硬度H
RC:15)とを組み合わせて試験片とした。詳細には、SUS303製ワイヤーを用いて、ダンベル型の鋼材S45Cと円柱型の鋼材SUJ2とを中央部で縛り、ダンベル型の鋼材S45Cと円柱型の鋼材SUJ2とを結束した(
図1を参照)。
なお、「鋼材S45C」は、JIS G 4051に記載の炭素鋼である。「鋼材SUJ2」は、JIS G 4805に記載の高炭素クロム軸受け鋼鋼材である。「SUS303製ワイヤー」は、JIS G 4309に記載のステンレス鋼線である。
そして、窒素と水素との混合ガス雰囲気とした炉内で当該試験片を加熱した後、当該試験片を熱処理油組成物に投入して焼入れを行い、焼入れ試験を行った。
焼入れ試験の条件は、以下の3条件とした。
【0101】
(焼入れ試験条件1:ホット油想定試験、表1)
試験対象:比較例1~3、実施例1~8
炉内温度:850℃
炉内における試験片保持時間:炉内温度が850℃に到達してから40分間
熱処理油組成物の温度:120℃
熱処理油組成物への試験片の浸漬時間(焼入れ時間):10分間
【0102】
(焼入れ試験条件2:コールド油想定試験1、表2及び表3)
試験対象:比較例4~5、実施例9~12
炉内温度:850℃
炉内における試験片保持時間:炉内温度が850℃に到達してから40分間
熱処理油組成物の温度:80℃
熱処理油組成物への試験片の浸漬時間(焼入れ時間):10分間
【0103】
(焼入れ試験条件3:コールド油想定試験2、表4)
試験対象:比較例6、実施例13~14
炉内温度:975℃
炉内における試験片保持時間:炉内温度が975℃に到達してから40分間
熱処理油組成物の温度:60℃
熱処理油組成物への試験片の浸漬時間(焼入れ時間):10分間
【0104】
焼入れを終えた試験片について、「明度」、「端部の着色」、及び「接触部の着色」に着目して、以下の基準に基づき、光輝性を評価した。また、「明度」、「端部の着色」、及び「接触部の着色」の評価結果に基づき、試験片の光輝性を以下の基準で総合評価した。
(明度)
所定の着色を施した外観見本を作製して、焼入れ後の試験片の色と目視で比較評価した。外観見本の着色の程度は以下に示す数値で示される。
0:着色が全くない。
1:薄い着色がある。
2:黒褐色~黒色の着色がある。
(端部の着色)
試験片の端部(
図1を参照)を目視で観察し、以下の基準で評価した。
0:着色が全くないかほとんどない。
1:薄い着色が認められる。
2:黒褐色~黒色の着色が認められる。
(接触部の着色)
試験片の接触部(ダンベル型の鋼材と円柱型の鋼材との接触部、
図1を参照)を目視で観察し、以下の基準で評価した。
0:着色が全くないかほとんどない。
1:薄い着色が認められる。
2:黒褐色~黒色の着色が認められる。
【0105】
(光輝性の総合評価)
「明度」、「端部の着色」、及び「接触部の着色」の評価結果を用い、以下の基準に基づき総合評価を行った。
評価S:「明度」、「端部の着色」、及び「接触部の着色」の評価結果の総和が0
評価A:「明度」、「端部の着色」、及び「接触部の着色」の評価結果の総和が1
評価B:「明度」、「端部の着色」、及び「接触部の着色」の評価結果の総和が2
評価C:「明度」、「端部の着色」、及び「接触部の着色」の評価結果の総和が3以上
但し、「明度」、「端部の着色」、及び「接触部の着色」のいずれかの評価結果が2以上である場合には、評価Cとした。
評価Sである熱処理油組成物は、光輝性が極めて優れる。評価Aである熱処理油組成物は、光輝性が優れる。一方、評価Bである熱処理油組成物は、光輝性がやや劣る。評価Cである熱処理油組成物は、光輝性が劣る。
【0106】
(2)貯蔵安定性の評価方法
1,000mLの無色透明なガラス製容器に、当該ガラス製容器の容量に対して80%程度の熱処理油組成物を採取し、直射日光の当たらない環境下、室温(25℃)で1月静置した。
1月静置後、ガラス製容器内の熱処理油組成物を目視で観察し、以下の基準に基づき評価した。本実施例では、「良好」を合格とした。
「良好」:沈殿物なし。
「軽度」:沈殿物がガラス製容器底部全体を覆い隠さない程度に認められる。
「中度」:沈殿物がガラス製容器底部全体を覆い隠し、かつ薄く認められる。
「高度」:沈殿物が層をなす程度に認められる。
【0107】
(3)酸化劣化試験
JIS K2242:2012の「6.3 安定度試験方法」を参考にし、以下の方法で熱処理油組成物を酸化劣化させた。
容量730mL(φ45mm×長さ500mm)の容器に、熱処理油400mLを仕込み、触媒を仕込まずに、温度170℃、空気流量10L/時で、24時間又は48時間、酸化劣化させた。
そして、酸化劣化していない熱処理油組成物(以下、「新油」ともいう)、酸化劣化後の熱処理油組成物について、40℃動粘度を測定し、「(1)光輝性の評価方法」に基づいて光輝性を評価した。また、酸化劣化後の40℃動粘度の増加率(新油からの40℃動粘度増加率)を、下記式により算出した。
(新油からの40℃動粘度増加率)=[(酸化劣化後の油の40℃動粘度)-(新油の40℃動粘度)]/(新油の40℃動粘度)
新油からの40℃動粘度増加率が大きいほど、熱処理油組成物の酸化劣化が進行しやすいことを意味する。換言すれば、熱処理油組成物の酸化安定性が低いことを意味する。逆に、新油からの40℃動粘度増加率が小さいほど、熱処理油組成物の酸化劣化が進行しにくいことを意味する。換言すれば、熱処理油組成物の酸化安定性が高いことを意味する。光輝性については、強制劣化前と比較して悪化が少ないほど、優れた熱処理油組成物であるといえる。
【0108】
表1に、実施例1~8及び比較例1~3の熱処理油組成物について、光輝性の評価及び貯蔵安定性の評価を実施した結果を示す。また、
図2に、実施例1~8及び比較例1~3の熱処理油組成物を用いた焼入れ試験後の試験片の状態を示す。
表2に、比較例4~5及び実施例9~10の熱処理油組成物について、40℃動粘度の測定及び光輝性の評価を実施した結果を示す。なお、表2には、当該熱処理油組成物について、新油の結果と、24時間酸化劣化試験を行った後の油の結果を掲載している。また、
図3に、比較例4~5及び実施例9~10の熱処理油組成物を用いた焼入れ試験後の試験片の状態を示す。
表3に、実施例9、11、及び12の熱処理油組成物について、40℃動粘度の測定及び光輝性の評価を実施した結果を示す。なお、表3には、当該熱処理油組成物について、新油の結果と、24時間酸化劣化試験を行った後の油の結果と、48時間酸化劣化試験を行った後の油の結果とを掲載している。また、
図4に、実施例9、11、及び12の熱処理油組成物を用いた焼入れ試験後の試験片の状態を示す。
表4に、比較例6及び実施例13~14の熱処理油組成物について、光輝性の評価を実施した結果を示す。また、
図5に、比較例6及び実施例13~14の熱処理油組成物を用いた焼入れ試験後の試験片の状態を示す。
なお、表1~2中、「>」は「未満」を意味する。
【0109】
【0110】
表1より、以下のことがわかる。
実施例1~8に示す結果から、硫黄化合物(B)として、スルフィド類(B1)、スルフィド類(B2)、又はチアゾール類(B3)を含有する熱処理油組成物は、焼入れ後の試験片の光輝性に優れ、貯蔵安定性にも優れることがわかる。
一方、比較例2~3に示す結果から、エステル構造を有しないスルフィド類である硫黄化合物(B’)-1又はスルホン類である硫黄化合物(B’)-2を含有する熱処理油組成物は、焼入れ後の試験片の光輝性に優れるものの、貯蔵安定性に劣ることがわかる。
【0111】
表2より、以下のことがわかる。
実施例9~10に示す結果から、硫黄化合物(B)として、スルフィド類(B1)又はチアゾール類(B3)を含有する熱処理油組成物は、新油の状態のみならず、24時間酸化劣化試験後であっても、焼入れ後の試験片の光輝性に優れることがわかる。
一方、比較例5に示す結果から、チオフェン類である硫黄化合物(B’)-3を含有する熱処理油組成物は、新油の状態であれば焼入れ後の試験片の光輝性に優れるものの、24時間酸化劣化試験後には焼入れ後の試験片の光輝性に劣ることがわかる。
また、比較例5の熱処理油組成物は、実施例9~10の熱処理油組成物と比較して、24時間酸化劣化試験後の40℃動粘度が大きく増加しており、酸化劣化が進行しやすい(酸化安定性が低い)ことがわかる。
【0112】
表3より、以下のことがわかる。
実施例9、11、及び12に示す結果から、実施例11及び12の熱処理油組成物のように、酸化防止剤を配合することによって、48時間酸化劣化試験後であっても、焼入れ後の試験片の光輝性に優れることがわかる。
また、酸化防止剤を配合していない実施例9の熱処理油組成物は、酸化防止剤を配合している実施例11及び12の熱処理油組成物と比較して、酸化劣化試験後の40℃動粘度が大きく増加しており、酸化劣化が進行しやすい(酸化安定性が低い)ことがわかる。
【0113】
表4より、以下のことがわかる。
実施例13~14に示す結果から、スルフィド類(B1)又はチアゾール類(B3)を含有する熱処理油組成物は、焼入れ温度が975℃と極めて高温である場合においても、焼入れ後の試験片の光輝性に優れることがわかる。