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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191116
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】流体制御弁及び流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/42 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
F16K1/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116166
(22)【出願日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2021099203
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】赤土 和也
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA11
3H052BA35
3H052CA03
3H052CB01
3H052CB20
3H052CD03
3H052DA01
3H052EA16
(57)【要約】
【課題】流体の流れ場の乱れを抑えることで、不測のスパイク挙動を低減する。
【解決手段】上流側流路51(A)及び下流側流路51(B)の間に設けられており、上流側流路51(A)に接続される第1内部流路411と、下流側流路51(B)に接続される第2内部流路412とを有する弁座部材4と、上流側流路51(A)から第1内部流路411に流入した流体が流れ込み、第1内部流路411とは流れ方向とが異なる隙間Xを、弁座部材4との間で形成するように配置されたダイアフラム721とを備えた流体制御弁3において、第2内部流路422が、第1内部流路421を形成する内側周面43に開口しており、弁座部材4が、第1内部流路411と隙間Xとの合流箇所Jに臨む面取り部46を有するようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側流路及び下流側流路の間に設けられており、前記上流側流路に接続される第1内部流路と、前記下流側流路に接続される第2内部流路とを有する弁座部材と、
前記上流側流路から前記第1内部流路に流入した流体が流れ込み、前記第1内部流路とは流れ方向が異なる隙間を、前記弁座部材との間で形成するように配置されたダイアフラムとを備えた流体制御弁において、
前記第2内部流路が、前記第1内部流路を形成する内側周面に開口しており、
前記弁座部材が、前記第1内部流路と前記隙間との合流箇所に臨む面取り部を有する、流体制御弁。
【請求項2】
前記第2内部流路が直線状をなす、請求項1記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記面取り部の少なくとも一部が、前記合流箇所に臨む平坦面である、請求項1又は2記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記弁座部材が、一端が前記隙間に開口するとともに、他端が前記第2内部流路に開口する第3内部流路をさらに有する、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記弁座に対して離接可能な弁体と、
前記第1内部流路を貫通するとともに、アクチュエータの変位を前記弁体に伝達する駆動軸とを備え、
前記第1内部流路を前記駆動軸に沿って流れる流体の流れ方向が、前記隙間を流れる流体の流れ方向とは異なる、請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記弁座部材が、前記隙間を取り囲む環状凸部を有し、前記環状凸部の1又は複数箇所に切り欠き部が設けられている、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項7】
上流側流路及び下流側流路の間に設けられており、前記上流側流路に接続される第1内部流路と、前記下流側流路に接続される第2内部流路とを有する弁座部材と、
前記上流側流路から前記第1内部流路に流入した流体が流れ込み、前記第1内部流路とは流れ方向が異なる隙間を、前記弁座部材との間で形成するように配置されたダイアフラムとを備えた流体制御弁において、
前記隙間に流れ込む流体への抵抗を低減する抵抗低減部をさらに備え、
前記抵抗低減部が、前記第1内部流路を形成する内側周面に前記第2内部流路を開口させてなる貫通流路、又は、前記弁座部材に形成されて、前記第1内部流路と前記隙間との合流箇所に臨む面取り部である、流体制御弁。
【請求項8】
請求項1乃至7のうち何れか一項に記載の流体制御弁を備える流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁及び流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体制御弁としては、特許文献1に示すように、上流側流路及び下流側流路の間に設けられて、これらの流路を連通する内部流路が形成された弁座部材と、この弁座部材から離間して設けられたダイアフラムとを備え、上流側流路から内部流路に流入した流体が、その流れ方向を変えながら弁座部材とダイアフラムとの隙間に流れ込むように構成されたものがある。
【0003】
かかる構成において、弁座部材とダイアフラムとの隙間は、ダイアフラムの動きに伴い変動するところ、例えば設定流量を大きくすれば隙間は広がり、設定流量を小さくすれば隙間は狭まることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-190872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、上述した流体制御弁を備える流体制御装置の性能評価において、図13に示すように、設定流量を段階的に変化させてみたところ、とある設定流量に変化させたタイミングで出力(測定流量)がマイナス側に落ち込むスパイク挙動が現れることを確認した。
【0006】
このスパイク挙動の原因を鋭意検討したところ、弁座部材とダイアフラムとの隙間がある広さになると、内部流路の壁面抵抗を受けて、流体の流れ場の乱れに起因した圧力損失が生じているであろうと推測し、これが原因となり、増加していくはずの流量が瞬間的に低減する現象が発生していると考えた。
【0007】
そこで本発明は、これまで着目されていなかったスパイク挙動の原因を、本願発明者が鋭意検討したことによりなされたものであり、上述した流体の流れ場の乱れを抑えることで、不測のスパイク挙動を低減することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る流体制御弁は、上流側流路及び下流側流路の間に設けられており、前記上流側流路に接続される第1内部流路と、前記下流側流路に接続される第2内部流路とを有する弁座部材と、前記上流側流路から前記第1内部流路に流入した流体が流れ込み、前記第1内部流路とは流れ方向が異なる隙間を、前記弁座部材との間で形成するように配置されたダイアフラムとを備えた流体制御弁において、前記隙間が前記ダイアフラムの動きに伴い変動するように構成された流体制御弁において、前記第2内部流路が、前記第1内部流路を形成する内側周面に開口しており、前記弁座部材が、前記第1内部流路と前記隙間との合流箇所に臨む面取り部を有することを特徴とするものである。
【0009】
このような構成であれば、第2内部流路が第1内部流路を形成する内側周面に開口しているので、上流側流路から第1内部流路に流れ込んだ流体が、第2内部流路を経て、下流側流路に流れ出る。その結果、第1内部流路を形成する内側周面に第2内部流路を開口させていない構成に比べると、弁座部材とダイアフラムとの隙間に流れ込む流体の流量を抑えることができる。
しかも、弁座部材が、第1内部流路と隙間との合流箇所に臨む面取り部を有するので、上述した隙間に流体が流れ込みやすくなる。
これらの理由により、隙間に流れ込む流体への抵抗を低減することができ、流体の流れ場の乱れを抑えることができ、その結果、隙間を段階的に変化させた場合に生じ得る不測のスパイク挙動を低減させることができる。
なお、この作用効果を示す具体的な解析データについては、後述する。
【0010】
前記第2内部流路が直線状をなすことが好ましい。
これならば、第1内部流路から第2内部流路に流れ込んだ流体がスムーズに下流側流路に流れ出るので、隙間に流れ込む流体の流量をより確実に抑えることができる。
また、第2内部流路の加工も簡単である。
【0011】
面取り部の加工性を担保するためには、前記面取り部の少なくとも一部が、前記合流箇所に臨む平坦面であることが好ましい。
【0012】
スパイク挙動のより確実な低減を図るためには、前記弁座部材が、一端が前記隙間に開口するとともに、他端が前記第2内部流路に開口する第3内部流路をさらに有することが好ましい。
【0013】
より具体的な実施態様としては、前記弁座に対して離接可能な弁体と、前記第1内部流路を貫通するとともに、アクチュエータの変位を前記弁体に伝達する駆動軸とを備え、前記第1内部流路を前記駆動軸に沿って流れる流体の流れ方向が、前記隙間を流れる流体の流れ方向とは異なる態様を挙げることができる。
【0014】
前記弁座部材が、前記隙間を取り囲む環状凸部を有し、前記環状凸部の1又は複数箇所に切り欠き部が設けられていることが好ましい。
このような構成であれば、隙間に流れ込む流体が、第2内部流路のみならず、切り欠き部を介して隙間から流れ出ていくので、流体の流れ場の乱れをより確実に抑えることができ、不測のスパイク挙動を低減させることができる。
【0015】
また、本発明に係る流体制御弁は、上流側流路及び下流側流路の間に設けられており、前記上流側流路に接続される第1内部流路と、前記下流側流路に接続される第2内部流路とを有する弁座部材と、前記上流側流路から前記第1内部流路に流入した流体が流れ込み、前記第1内部流路とは流れ方向が異なる隙間を、前記弁座部材との間で形成するように配置されたダイアフラムとを備えた流体制御弁において、前記隙間に流れ込む流体への抵抗を低減する抵抗低減部をさらに備え、前記抵抗低減部が、前記第1内部流路を形成する内側周面に前記第2内部流路を開口させてなる貫通流路、又は、前記弁座部材に形成されて、前記第1内部流路と前記隙間との合流箇所に臨む面取り部であることを特徴とするものである。
このように構成された流体制御弁であれば、弁座部材とダイアフラムとの隙間に流れ込む流体への抵抗を低減する抵抗低減部を備えているので、この隙間を流体が流れやすくなり、流体の流れ場の乱れを防ぐことができる。
これにより、上述した隙間を段階的に変化させた場合に生じ得る不測のスパイク挙動を抑制することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る流体制御装置は、上述した流体制御弁を備えることを特徴とするものである。
このような流体制御装置であれば、上述した流体制御弁と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、ダイアフラムの動きに伴って変動する隙間に流体が流れ込むように構成された流体制御弁において、流体の流れ場の乱れを抑えることができ、不測のスパイク挙動を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における流体制御装置の全体縦断面図。
図2】同実施形態における流体制御弁の縦断面図。
図3】同実施形態における弁座部材の内部構成を示す拡大断面図。
図4】比較対象の構成における流体制御弁の縦断面図。
図5】比較対象の構成の性能を評価した評価結果を示すグラフ。
図6】同実施形態の流体制御弁の性能を評価した評価結果を示すグラフ。
図7】その他の実施形態における流体制御弁の縦断面図。
図8】その他の実施形態における流体制御弁の縦断面図。
図9】その他の実施形態における流体制御弁の斜視図。
図10】その他の実施形態における流体制御弁の斜視図。
図11】その他の実施形態における流体制御弁を評価した評価結果を示すグラフ。
図12】その他の実施形態における流体制御装置の構成を示す図。
図13】従来構成におけるスパイク挙動を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る流体制御弁を組み込んだ流体制御装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の流体制御装置100は、図1に示すように、例えば半導体製造装置に用いられるマスフローコントローラであって、半導体プロセス用のガス等の流体が流れる流路51を形成したボディ5と、このボディ5の流路51を流れる流体の流量をセンシングする流量検知機構2と、流路51を流れる流体の流量を制御する流体制御弁3と、流量検知機構2の出力する測定流量を予め定めた設定流量に近づけるべく流体制御弁3の弁開度を制御する制御部Cとを具備する。以下に各部を詳述する。
【0021】
ボディ5は、前述した流路51が貫通するブロック状をなすものであり、当該流路51の上流端に外部流入配管(図示しない)が接続されるとともに、下流端に外部流出配管(図示しない)が接続される。
【0022】
流量検知機構2としては、熱式、差圧式、コリオリ式や超音波式など種々考えられるが、ここでは、いわゆる熱式流量検知機構を採用している。この熱式の流量検知機構2は、流路51を流れる流体のうちの所定割合の流体が導かれるように当該流路51と並列接続した細管21と、この細管21に設けたヒータ24及びその前後に設けた一対の温度センサ22、23とを具備したものである。そして、細管21に流体が流れると、二つの温度センサ22、23の間にその質量流量に対応した温度差が生じることから、この温度差に基づいて流量を測定するように構成してある。
【0023】
この実施形態では、細管21、ヒータ24、温度センサ22、23及びその周辺の電気回路を収容する長尺状の筐体25を設ける一方、ボディ5の流路51から一対の分岐流路2a、2bを分岐させ、この筐体25をボディ5に取り付けることによって、細管21の導入口が上流側の分岐流路2aに接続され、該細管21の導出口が下流側の分岐流路2bに接続されるように構成してある。なお、流量センサはこの方式に限定されるものではない。
【0024】
流体制御弁3は、流路51上に設けられたノーマルクローズタイプのもので、ボディ5内に収容された弁座部材4及び弁体6と、弁体6を駆動して弁開度、すなわち弁座部材4と弁体6との離間距離を設定する駆動機構たるアクチュエータ7とを備えたものである。
【0025】
弁座部材4は、弁座となるものであり、図2に示すように、その下面に弁体6側に突出した弁座面4aを有する金属製(ここでは、ステンレス鋼を素材として用いているが、その他ハステロイ等の高耐熱耐食合金を用いてもよい。)のものであり、その内部には内部流路41が形成されている。なお、この弁座部材4の素材として、ハステロイ等の高耐熱耐食合金を用いてもよい。
【0026】
この弁座部材4は、ボディ5に設けた円柱状の収容凹部52に収容されている。この収容凹部52は、ボディ5の流路51を分断するように配置してあり、この収容凹部52によって分断された流路51のうち、上流側の流路(以下、上流側流路とも言う)51(A)が、例えば収容凹部52の底面中央部に開口し、この収容凹部52より下流側の流路(以下、下流側流路とも言う)51(B)が、例えばこの収容凹部52の側面又は底面に開口する。
【0027】
そして、弁座部材4を収容凹部52に収容した状態では、当該弁座部材4の外側周面と収容凹部52の内側周面との間に隙間が形成され、この隙間を介してボディ5の下流側流路51(B)が内部流路41に連通することとなる。
【0028】
本実施形態の流体制御弁3は、この弁座部材4の内部流路41やその周辺構造に特徴があるので、より詳細な構成は後述する。
【0029】
弁体6は、図2に示すように、ボディ5の収容凹部52において弁座部材4に対向配置されるとともに、その表面(上面)に弁座部材4の弁座面4aに着座する着座面6aを有するものである。
【0030】
この弁体6は、アクチュエータ7により駆動されて、弁座部材4に接触して上流側流路51(A)及び下流側流路51(B)を遮断する閉状態から、弁座部材4から離間して上流側流路51(A)及び下流側流路51(B)を連通させる開状態に移動する。このように閉状態から開状態に向かう方向、つまり、弁体6に対するアクチュエータ7の駆動力の作用方向が開弁方向である。一方、開状態から閉状態に向かう方向、つまり、弁体6に対するアクチュエータ7の駆動力の作用方向とは反対方向が閉弁方向である。
【0031】
アクチュエータ7は、図1に示すように、例えば、ピエゾ素子を複数枚積層して形成されるピエゾスタック71と、当該ピエゾスタック71の伸長により変位する作動体72とを備えたものである。
【0032】
このピエゾスタック71は、ケーシング部材74内に収容されており、その先端部が作動体72の基端部に例えば別体又は一体的に設けられた突起部73に接続してある。
【0033】
本実施形態の作動体72は、ダイアフラム721と、当該ダイアフラム721の中心に設けられて、弁座部材4の中心を貫通して弁体6の上面に当接する駆動軸722とを有する。そして、所定の全開電圧が印加されるとピエゾスタック71が伸長し、作動体72が弁体6を開弁方向に付勢して、弁座面4aが着座面6aから離間して開状態となる。また、全開電圧を下回る電圧であれば、その電圧値に応じた距離だけ弁座面4aと着座面6aとが離間する。そして、この隙間を通じて上流側流路51(A)と下流側流路51(B)とが連通する。
【0034】
また、弁体6には、図2に示すように、当該弁体6を閉弁方向に付勢する弁体戻しばね8が接触して設けられている。この弁体戻しばね8により、アクチュエータ7に電圧を印加しないノーマル状態においては、弁体6が閉状態となる。なお、弁体戻しばね8は、環状をなすものであり、例えば板ばね等の弾性体である。ここでの弁体戻しばね8は、ボディ5の収容凹部52内に収容されたばねガイド部材10に支持されているが、このばねガイド部材10は必ずしも設けてある必要はない。
【0035】
続いて、上述した弁座部材4の詳細な構成について説明する。
【0036】
弁座部材4は、図2に示すように、上流側流路51(A)及び下流側流路51(B)の間に介在しており、上流側流路51(A)に接続される第1内部流路411と、下流側流路51(B)に接続される第2内部流路412とを少なくとも内部流路41の一部として有している。
【0037】
第1内部流路411は、一端が弁座面4aに開口するとともに、他端が弁座部材4の上面42に開口している。この第1内部流路411は、アクチュエータ7の変位を弁体6に伝達する駆動軸722が挿入されている。すなわち、第1内部流路411は、駆動軸722に沿った(弁体6の閉弁方向に沿った)の流体の流れを形成するものである。
【0038】
第2内部流路412は、一端が第1内部流路411を形成する内側周面43に開口するとともに、他端が弁座部材4の外側周面44に開口している。すなわち、この第2内部流路412は、弁座部材4の外側周面44から第1内部流路411に亘り弁座部材4を貫通させてなる貫通流路Lであり、直線状をなす。ここでの第2内部流路412は、第1内部流路411と直交する。言い換えれば、この第2内部流路412は、第1内部流路411とは直交する流体の流れを形成するものである。なお、第2内部流路412としては、第1内部流路411と直交する方向に対して傾いて形成されていても良い。
【0039】
本実施形態の弁座部材4は、図3に示すように、内部流路41として、一端が弁座部材4の上面42に開口するとともに、他端が第2内部流路412を形成する内側周面45に開口する第3内部流路413をさらに有する。
【0040】
より具体的に説明すると、弁座部材4の上面42には凹部が形成されており、この凹部が上述したダイアフラム721により塞がれている。これにより、弁座部材4とダイアフラム721との間には隙間Xが生じており、この隙間Xに第3内部流路413が開口している。すなわち、第1内部流路411と第3内部流路413は、隙間Xを介して連通している。
【0041】
この隙間Xは、ダイアフラム721の動きに伴い変動する空間である。具体的には、ダイアフラム721の動きに伴い弁座部材4とダイアフラム721との離間距離が変動するので、これに伴って隙間Xの狭さ(幅)が変動する。この隙間Xは、ダイアフラム721に沿って形成されており、上述した駆動軸722から径方向外側に拡がる空間である。
【0042】
そして、この隙間Xに第1内部流路が合流している。より具体的には、上述したように第1内部流路411が弁座部材4の上面42に開口していることから、第1内部流路411と隙間Xとの合流箇所Jは、この上面42に形成された開口となる(図3参照)。
【0043】
かかる構成により、上述した上流側流路51(A)から第1内部流路411に流入した流体は、流れ方向を変えながらこの隙間Xに流れ込むことになる。すなわち、第1内部流路411を駆動軸722に沿って流れる流体の流れ方向と、隙間Xを流れる流体の流れ方向とは互いに異なり、具体的にはこれらの流れ方向は互いに略直交する。
【0044】
このように、第1内部流路411と隙間Xとの間には、流体の流れ方向が変わる曲がり箇所Zが介在する。もちろん、曲がり箇所Zと第1内部流路411との境界や、曲がり箇所Zと隙間Xとの境界は明確に表現できるものではないが、少なくともダイアフラム721と駆動軸722との接合部Yに臨む領域(図3において網掛けされている領域)が曲がり箇所Zとなる。
【0045】
ここで、本実施形態の弁座部材4は、図3に示すように、上述した合流箇所Jに臨む面取り部46を有している。
【0046】
この面取り部46は、弁座部材4の上面42と内側周面43とにより形成される角部を面取り加工することにより形成されており、これにより上面42及び内側周面43が面取り部46を介して連続的に形成されている。つまり、面取り部46は、上面42の内縁421と内側周面43の上端431との間に形成された面であり、上述した曲がり箇所Zに臨むように形成されている。
【0047】
面取り部46の少なくとも一部は、合流箇所Jに臨む位置に形成された平坦面であり、ダイアフラム721と駆動軸722との接合部Yに対面する切頭円錐形状をなす面である。
【0048】
このように構成された弁座部材4において、上述した第2内部流路412が、下流側流路51(B)から第1内部流路411まで貫通する貫通流路Lとして形成されているので、第1内部流路411を流れる流体の一部が第2内部流路412に流入することになる。
【0049】
これにより、第2内部流路412を第1内部流路411まで貫通させていない構成に比べると、弁座部材4とダイアフラム721との隙間Xに流れ込む流体の流量を抑えることができる。
【0050】
すなわち、第2内部流路412は、隙間Xに流れ込む流体への抵抗を低減する抵抗低減部Pとしての機能を発揮する。
【0051】
さらに、本実施形態の弁座部材4は、流体の流れ方向が変わる曲がり箇所Zに臨む面取り部46を有するので、隙間Xに流体が流れ込みやすくなる。
すなわち、この面取り部46に関しても、隙間Xに流れ込む流体に対する抵抗を低減する抵抗低減部Pとしての機能を発揮する。
【0052】
ここで、流体制御装置100の性能を評価するべく、設定流量を段階的に変化させた際の出力(測定流量)の挙動を確認した結果について述べる。
【0053】
まず、本実施形態の流体制御装置100の評価結果を説明する前に、比較対象として、図4に示す構成を用いた場合の結果について述べる。なお、図4に示す構成は、本実施形態の流体制御装置100と比較すると、第2内部流路412が第1内部流路411まで貫通しておらず、且つ、面取り部46が形成されていない点において相違する。
【0054】
この比較対象となる構成においてバルブ電圧(設定流量)を段階的に変化させると、図5に示すように、ある設定流量に変化させたタイミングで出力(測定流量)がマイナス側に落ち込むスパイク挙動が現れていることが見て取れる。
【0055】
そして、このスパイク挙動が生じているタイミング(図5におけるbのタイミング)では、同図5に示すシミュレーション結果から分かるように、流体の流れ場に乱れが生じており、この乱れに起因した圧力損失が生じているであろうことがスパイク挙動の原因であると推測される。
【0056】
これに対して、本実施形態の流体制御装置100においてバルブ電圧(設定流量)を段階的に変化させた際の出力(測定流量)の挙動を図6に示す。この図6から分かるように、本実施形態の流体制御装置100においては、上述した不測のスパイク挙動は起こっていないことが分かる。
この要因の一つが、同図6にシミュレーション結果から分かるように、流体の流れ場の乱れが抑制されていることにあると推測される。なお、このシミュレーション結果において、白い線で示される流体の方が黒い線で示される流体よりも圧力が低いことを示している。
【0057】
このように本実施形態の流体制御装置100によれば、第2内部流路412及び面取り部46が、弁座部材4とダイアフラム721との隙間Xに流れ込む流体への抵抗を低減する抵抗低減部Pとしての機能を発揮するので、流体が隙間Xに流れ込みやすくなり、流体の流れ場の乱れを抑えることができる。
その結果、隙間Xを段階的に変化させた場合に生じ得る不測のスパイク挙動を低減させることができる。
【0058】
なお、本発明は前記実施形態に限られない。
【0059】
例えば、前記実施形態の弁座部材4は、第2内部流路412と隙間Xとを連通する第3内部流路413を有していたが、図7に示すように、弁座部材4としては、第3内部流路413が形成されていないものであっても良い。かかる構成においては、隙間Xにおける合流箇所Jとは反対側の先端部は閉じられていることになる。ただし、前記実施形態の第3内部流路413とは別に、隙間Xと下流側流路51(B)とを接続する流路が、弁座部材4等に形成されていても良い。
【0060】
このような構成であっても、仮に面取り部46が形成されていないと、設定流量を段階的に変化させた際の不測のスパイク挙動が現れるところ、図7に示す構成であれば、面取り部46が、隙間Xに流れ込む流体への抵抗を低減する抵抗低減部Pとしての機能を発揮するので、前記実施形態と同様、流体の流れ場の乱れを抑えることができ、不測のスパイク挙動を低減させることができる。
【0061】
また、面取り部46は、前記実施形態では平坦面であったが、例えば曲がり箇所Zに向かうように或いは曲がり箇所Zから離れるよう湾曲した湾曲面であっても良い。
【0062】
さらに、第2内部流路412は、前記実施形態では直線状であったが、下流側流路51(B)と第1内部流路411とを接続するものであれば、例えば流路方向が1又は複数回変わるような折れ曲がった形状等であっても良い。
【0063】
加えて、前記実施形態では、第2内部流路412を第1内部流路411に貫通させてなる貫通流路Lと、面取り部46との双方が抵抗低減部Pとして形成されている態様を説明したが、貫通流路L又は面取り部46の一方が抵抗低減部Pとしての機能を十分に発揮する場合は、他方は必ずしも形成されている必要はない。
すなわち、弁座部材4としては、第1内部流路411を形成する内側周面43に第2内部流路412を開口させてなる貫通流路L、又は、流体の流れ方向が変わる曲がり箇所Zに臨む面取り部46の少なくとも一方が抵抗低減部Pとして形成されていれば良い。
【0064】
また、弁座部材4としては、図8及び図9に示すように、隙間Xを囲う環状凸部47を切り欠いた切り欠き部48が設けられていても良い。この切り欠き部48は、隙間Xの一部を構成しており、具体的には環状凸部47の1又は複数箇所に例えば等間隔で設けられていても良い。この構成により、隙間Xの一部は、その先端部が弁座部材4の外側周面まで延びていることになる。
【0065】
また、このように弁座部材4に切り欠き部48を設ける構成においては、図10に示すように、第3内部流路413は必ずしも形成されている必要はない。
この構成によれば、図11上段に示すように、不測のスパイク挙動を低減させることができる。
そして、同図11下段のシミュレーション結果に示すように、隙間Xに流れ込む流体が、第2内部流路412のみならず、切り欠き部48を介して隙間Xから流れ出ていくので、流体の流れ場の乱れを抑制できていることが分かる。なお、このシミュレーション結果において、白い線で示される流体の方が黒い線で示される流体よりも圧力が低いことを示している。
【0066】
また、前記実施形態の流体制御装置100は、流量検知機構2として熱式のものを用いていたが、前記実施形態でも述べた通り、差圧式の流量検知機構2を用いても構わない。
【0067】
すなわち、流体制御装置100としては、図12に示すように、流体が流れる流路51に設けられた流量検知機構2と、この流量検知機構2よりも上流側に設けられた流体制御弁3と、流量検知機構2による測定流量が予め定めた目標流量になるように流体制御弁3を制御する制御部Cとから構成されたマスフローコントローラであっても良い。
そして、この流量検知機構2は、流路51上に設けた抵抗流路Rと、該抵抗流路Rの上流側及び下流側における流路51内の流体圧力を計測する一対の圧力センサP1、P2とからなるものである。そして、圧力センサP1、P2による圧力計測値と抵抗流路Rの抵抗値とに基づいて、流路51を流れる流体の流量を測定可能に構成してある。
【0068】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形や実施形態の組合せが可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
100・・・流体制御装置
2 ・・・流量検知機構
3 ・・・流体制御弁
4 ・・・弁座部材
5 ・・・ボディ
6 ・・・弁体
7 ・・・アクチュエータ
721・・・ダイアフラム
4a ・・・弁座面
41 ・・・内部流路
411・・・第1内部流路
412・・・第2内部流路
413・・・第3内部流路
46 ・・・面取り部
P ・・・抵抗低減部
X ・・・隙間
Z ・・・曲がり箇所
L ・・・貫通流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13