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特開2022-191275透明硬質熱可塑性ポリウレタンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191275
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】透明硬質熱可塑性ポリウレタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/66 20060101AFI20221220BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08G18/66 007
C08G18/42 008
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022152631
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2019524899の分割
【原出願日】2017-12-22
(31)【優先権主張番号】16206699.7
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】トモヴィッチ,ツェリコ
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シェファー,フランク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透明であり、高硬度及び高弾性率を有し、非常に良好な破断点伸びを有する熱可塑性ポリウレタンを提供する。
【解決手段】少なくとも下記成分:(i)ポリイソシアネート組成物、(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び(iii)少なくとも1種のポリオール組成物、を変換することによって得られる又は得られた熱可塑性ポリウレタンであって、ポリオール組成物が、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有しかつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が<75%であり、及び(ii)で使用される鎖延長剤は、分子量Mw<220g/molを有するジオールである、熱可塑性ポリウレタンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記成分(i)~(iii):
(i)ポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
を変換することによって得られる又は得られた熱可塑性ポリウレタンであって、
ポリオール組成物が、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有しかつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が<75%である
ことを特徴とする熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
前記ポリオール(P1)が、全ポリエステルポリオール(P1)に基づいて、20質量%~70質量%の芳香族ポリエステルブロック(B1)を含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
前記芳香族ポリエステルブロック(B1)が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステルである、請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
前記芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロック又はポリブチレンテレフタレートブロックである、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
前記芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロックである、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
前記ポリオール(P1)が750~1500g/molの範囲の分子量Mwを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
(ii)に使用する鎖延長剤が分子量Mw<220g/molを有するジオールである、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
(ii)に使用する鎖延長剤及びポリオール組成物に存在するポリオール(P1)を40:1~1:10のモル比で使用する、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
前記ポリオール組成物がポリエーテルオール、ポリエステルオール、ポリカーボネートアルコール及びハイブリッドポリオールからなる群から選択される更なるポリオールを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
前記ポリイソシアネートが脂肪族又は芳香族ジイソシアネートである、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が10%~75%の範囲である、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項12】
成形体(SC)を製造する方法であって、下記の工程:
(a)
(i)少なくとも1種のポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
の組成物を含む熱可塑性ポリウレタンを製造する工程であって、
ポリオール組成物が、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有しかつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が<75%である工程;
(b)熱可塑性ポリウレタンから成形体(SC)を製造する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
成形体(SC)を、工程(b)で、押出成形、射出成形又は焼結法によって又は溶液から製造する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12及び13のいずれか1項に記載の方法により得られる又は得られた成形体。
【請求項15】
前記成形体が、消費者物品であり、例えば、歯ブラシ、かみそり、家庭用品用ハウジング、ディスプレイ、コンピュータ又は電話の部品、プラグ、自動車内装部品、履物部品、例えば安全靴用つま先などの用途のための消費者物品である、請求項14に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物、鎖延長剤、及びポリオール組成物を変換することによって得られる又は得られた熱可塑性ポリウレタンであって、ここでポリオール組成物が、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有しかつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有するポリオール(P1)を含み、熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が<75%である、熱可塑性ポリウレタンに関する。本発明は、さらに、そのような熱可塑性ポリウレタンを含む成形体を製造する方法、及び本発明の方法によって得られる又は得られた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途のための熱可塑性ポリウレタンが、概ね、従来技術から知られている。供給原料を変えることにより、異なる側面での特性を得ることが可能である。
【0003】
US5574092には、ジイソシアネートと、芳香族ジオールを含む鎖延長剤混合物とをベースとするハードセグメントを含む、少なくとも50℃のTgを有する硬質熱可塑性ポリウレタンが開示されている。実施例によれば、170%未満の破断点伸びを有する非常に脆い材料が得られている。
【0004】
US5627254には、ブタンジオール(BDO)の単位及びHO-(CHCHO)-H型(nは2~6の整数である)のポリエチレングリコール(PEG)の単位を含む硬質熱可塑性ポリウレタンが開示されている。これらの材料は脆くて加工が難しいという欠点を有している。
【0005】
WO2015/063062A1は、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネート、少なくとも1種の鎖延長剤及び少なくとも1種のポリオール組成物を反応させることによって得られる、又は得られた熱可塑性ポリウレタンに関する。ここで、ポリオール組成物は、ポリエーテルオールからなる群から選択されるポリオールと、分子量Mw>315g/molを有するビスフェノールA誘導体及び分子量Mw>315g/molを有するビスフェノールS誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のビスフェノール誘導体とを含むものであり、ここで、ビスフェノール誘導体のOH基(複数)のうちの少なくとも1つはアルコキシル化されたものである。また、当該文献は、当該熱可塑性ポリウレタンを製造する方法、並びに当該発明の熱可塑性ポリウレタンを押出製品、フィルム及び成形体の製造に使用する方法に関する。そのような脂肪族TPUは、硬度>70ショアDを有するが、弾性率が低く、また破断点伸びも全く不十分である。さらに不利益なことは、毒物学的観点から幾らか懸念のあるビスフェノールAを使用することである。
【0006】
典型的には、硬質熱可塑性ポリウレタンは、75%以上の硬質セグメント含有量を有し、イソシアネートと鎖延長剤、例えばヘキサン-1,6-ジオール又はシクロヘキサン-1,4-ジメタノールとの反応により得られる。これらの材料は、高い硬度及び高い寸法安定性を有するが、非常に脆く、200%未満又はさらには100%未満の破断点伸びしか有しない。
【0007】
しかしながら、多くの用途では、高い硬度、すなわち、特に、室温で硬度>75ショアD及び弾性率>2000MPaを有するだけでなく、300%を超える良好な破断点伸びをも有する材料を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US5574092
【特許文献2】US5627254
【特許文献3】WO2015/063062A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術から進展して、第一に、透明であり、高硬度及び高弾性率を有し、第二に、非常に良好な破断点伸びを有する熱可塑性ポリウレタンを提供することが本発明の目的であった。本発明の更なる目的は、第一に、透明で、高硬度及び高弾性率を有し、第二に、非常に良好な破断点伸びを有する熱可塑性ポリウレタンであって、ワンショット法で、簡単かつ安価な方法で製造可能な熱可塑性ポリウレタンを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によれば、少なくとも成分(i)~(iii):
(i)ポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
を変換することによって得られる又は得られた熱可塑性ポリウレタンであって、
ポリオール組成物が、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有しかつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が<75%である、
熱可塑性ポリウレタンによって達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によれば、ポリオール(P1)は、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有する。また、ポリオール(P1)は芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する。これは、本発明との関連において、芳香族ポリエステルブロック(B1)は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステル又は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジオールとのポリマーであり得ることを意味するものと理解される。本発明との関連における芳香族ポリエステルブロック(B1)は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステルであることが好ましい。ここで適切な芳香族ジカルボン酸は、例えばテレフタル酸、イソフタル酸又はフタル酸であり、好ましいのはテレフタル酸である。したがって、本発明との関連において適切なポリオール(P1)は、例えば、少なくとも1つのポリエチレンテレフタレートブロック又は少なくとも1つのポリブチレンテレフタレートブロックを有するものであり、芳香族系中の繰り返し単位の数は連続して(in series)少なくとも2である。芳香族ポリエステルブロック(B1)は、芳香族系の繰り返し単位の十分なブロック長を確実にするために、ポリオールへの更なる変換の前に別の工程で調製することが好ましい。
【0012】
本発明によれば、熱可塑性ポリウレタンは、特にコンパクト(緻密:compact)熱可塑性ポリウレタンであることができる。したがって、更なる実施形態では、本発明は、熱可塑性ポリウレタンがコンパクト熱可塑性ポリウレタンである上記のような熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0013】
したがって、更なる実施形態においては、本発明は、芳香族ポリエステルブロック(B1)が芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステルである、上述のような熱可塑性ポリウレタンに関する。また、更なる実施形態では、本発明は、芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロック又はポリブチレンテレフタレートブロックである、上記のような熱可塑性ポリウレタンに関する。また、更なる実施形態では、本発明は、芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロックである、上記のような熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0014】
本発明によれば、熱可塑性ポリウレタンは、<75%のハードセグメント含有量を有する。ここでのハードセグメント含有量は、イソシアネートと鎖延長剤によって形成される熱可塑性ポリウレタンの割合である。本発明との関連では、ハードセグメント含有量はWO2007/118827A1に開示された式によって決定され、1.0の値は100%に対応し、<75%のハードセグメント含有量はWO2007/118827A1で特定された式により<0.75の値に対応することを意味する。
【0015】
驚くべきことに、500~2000g/molの範囲内の分子量Mwを有し、かつ、少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有するポリオール(P1)を使用することにより、透明で、硬度が高く、同時に脆くない、<75%のハードセグメント含有量を有する熱可塑性ポリウレタンが得られる。したがって、本発明の熱可塑性ポリウレタンは、>75ショアDの硬度、室温で>2000MPaの弾性率、及び>300%の破断点伸びを有する。
【0016】
本発明との関連では、適切なポリオール(P1)としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンテレフタレート(PET)のような芳香族ポリエステルをベースとするものが特に適している。ポリオール(P1)は、芳香族ポリエステルをジカルボン酸及びジオールと反応させて混合芳香族/脂肪族ポリエステルジオールを得ることによって調製することが好ましい。例えば、本発明に関しては、固体又は液体の形態の芳香族ポリエステルをジカルボン酸及びジオールと反応させることが可能である。本発明によれば、使用する芳香族ポリエステルは、典型的には、ポリオール(P1)中に存在するブロック(B1)よりも大きい分子量を有する。
【0017】
本発明に従って適切なポリエステルポリオール(P1)は、典型的には20質量%~70質量%、好ましくは30質量%~60質量%、より好ましくは35質量%~55質量%、さらに好ましくは40質量%~50質量%の芳香族ポリエステルブロック(B1)を含む(各場合、全ポリエステルポリオール(P1)に基づく)。更なる実施形態では、本発明は、したがって、ポリオール(P1)が全ポリエステルポリオール(P1)に基づいて20質量%~70質量%の芳香族ポリエステルブロック(B1)を含む、上記のような熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0018】
本発明によれば、ポリオール(P1)は、500~2000g/molの範囲、好ましくは750~1500g/molの範囲、より好ましくは900~1200g/molの範囲、最も好ましくは950~1050g/molの範囲の分子量Mwを有する。更なる実施形態において、本発明は、したがって、ポリオール(P1)が750~1500g/molの範囲の分子量Mwを有する、上記のような熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0019】
分子量(Mw)は以下の式を用いて計算される(ここでzはポリエステルポリオールの官能価であり、z=2である)。
MW=1000mg/g・[z・56.106g/mol)/(OHN[mg/g])]
【0020】
ポリオール(P1)の製造においては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンテレフタレート(PET)のような芳香族ポリエステルを使用することが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは、重縮合によって製造できる熱可塑性ポリマーである。PETの品質、及び靭性又は耐久性などのその物理的特性は、鎖長に左右される。古いPET合成法は、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル交換に基づいている。今日では、PETはテレフタル酸とエチレングリコールとの直接エステル化によって、ほぼ例外なく合成されている。同様に、テレフタル酸をブタン-1,4-ジオールと反応させてポリブチレンテレフタレート(PBT)を得ることもできる。これと同様な熱可塑性ポリマーは、CRASTIN(登録商標)(DuPont)、POCAN(登録商標)(Lanxess)、ULTRADUR(登録商標)(BASF)又はENDURAN(登録商標)及びVESTODUR(登録商標)(SABIC IP)などの商品名で入手可能である。その熱可塑性ポリマーの化学的及び物理的/技術的特性は、PETの特性にほぼ対応している。
【0021】
本発明によれば、リサイクルプロセスから得られるポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンテレフタレート(PET)のような芳香族ポリエステルを使用することも、また可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレートは、プラスチックリサイクルプロセスから得られるフレークの形態で使用することができる。この種の材料は典型的には約12000g/molの分子量を有する。
【0022】
本発明によれば、より高い分子量を有するポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル類とジオールとを使用しエステル交換により、適切なポリオール(P1)を得ることもできる。適切な反応条件はそれ自体当業者に知られている。
【0023】
さらに、ポリオール(P1)の製造には、2~10個の炭素原子を有するジオール、例えばエタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール又はジ-もしくはトリエチレングリコール、特にブタン-1,4-ジオール又はそれらの混合物が使用される。短(short)ポリエーテルジオール、例えばPTHF250若しくはPTHF650、又は短鎖ポリプロピレングリコール、例えばPPG500も使用することができる。使用するジカルボン酸としては、例えば、4~12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状二酸又はそれらの混合物とすることができる。アジピン酸、コハク酸、グルタル酸又はセバシン酸又は前記酸の混合物が使用することが好ましい。本発明に関してはアジピン酸が特に好ましい。本発明によれば、ポリオール(P1)の製造に、原料として更なるポリエステルジオール、例えばブタンジオールアジペート又はエチレンアジペートを使用することも可能である。
【0024】
本発明との関連では、熱可塑性ポリウレタンの製造に、少なくとも1種の鎖延長剤及び上記のようなポリオール組成物を使用することが必須である。
【0025】
本発明によれば、1種の鎖延長剤を使用することも可能であるが、異なる鎖延長剤の混合物を使用することも可能である。
【0026】
本発明に関して使用される鎖延長剤としては、例えば、ヒドロキシル基又はアミノ基を有する、特に2個のヒドロキシル基又はアミノ基を有する化合物とすることができる。しかしながら、本発明によれば、異なる化合物の混合物を鎖延長剤として使用することも可能である。その場合、本発明によれば、その混合物の平均官能価は2である。
【0027】
本発明によれば、鎖延長剤として、ヒドロキシル基を有する化合物、特にジオールを使用することが好ましい。50g/mol~220g/molの分子量を有する、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式ジオールを使用することが好ましい。アルキレン基中に2~10個の炭素原子を有するアルカンジオール、特にジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-及び/又はデカアルキレングリコールが好ましい。本発明では、1,2-エチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオールが特に好ましい。ヒドロキシキノン(ビス(2-ヒドロキシエチル))エーテルのような芳香族化合物を使用することも可能である。
【0028】
本発明によれば、アミノ基を有する化合物、例えばジアミンを使用することも可能である。また、ジオールとジアミンの混合物を使用することも同様に可能である。
【0029】
鎖延長剤としては、分子量Mw<220g/molを有するジオールが好ましい。本発明によれば、分子量Mw<220g/molを有する1種のジオールのみを透明熱可塑性ポリウレタンの製造に使用することが可能である。
【0030】
更なる実施形態では、鎖延長剤として2種以上のジオールが使用される。したがって、鎖延長剤の混合物(この場合、少なくとも1種のジオールが分子量Mw<220g/molを有する)を使用することも可能である。2種以上の鎖延長剤を使用する場合、第二の鎖延長剤又はそれ以降の更なる鎖延長剤は≧220g/molの分子量を有することができる。
【0031】
更なる実施形態では、鎖延長剤はブタン-1,4-ジオール及びヘキサン-1,6-ジオールからなる群から選択される。
【0032】
更なる実施形態では、本発明は、したがって、(ii)で使用する鎖延長剤が分子量Mw<220g/molを有するジオールである、上記のような熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0033】
鎖延長剤、特に分子量Mw<220g/molを有するジオールは、ポリオール(P1)に対して40:1~1:10の範囲のモル比で使用するのが好ましい。鎖延長剤とポリオール(P1)とは、20:1~1:9の範囲、さらに好ましくは10:1~1:8の範囲、例えば5:1~1:5の範囲、又は4:1~1:4の範囲、さらに好ましくは3:1~1:2の範囲のモル比で使用することが好ましい。
【0034】
更なる実施形態では、本発明は、したがって、(ii)で使用する鎖延長剤とポリオール組成物中に存在するポリオール(P1)とを40:1~1:10のモル比で使用する、上述のような熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0035】
本発明によれば、ポリオール組成物は、更なるポリオール、及び前記少なくとも1種のポリオール(P1)を含むことができる。したがって、本発明との関連において、少なくとも1種の鎖延長剤、及び上記少なくとも1種のポリオール(P1)及び少なくとも1種の更なるポリオールを含むポリオール組成物を使用することも可能である。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、ポリオール組成物が、ポリエーテルオール、ポリエステルオール、ポリカプロラクトンアルコール及びハイブリッドポリオールからなる群から選択される更なるポリオールを含む、上記のような熱可塑性ポリウレタンを提供する。
【0037】
使用されるイソシアネートに対して反応性を示す水素原子を有する高分子量化合物は、イソシアネートに対して反応性の化合物を有する一般に知られているポリオールであってもよい。
【0038】
ポリオールは、原則として当業者に知られており、例えば、「Kunststoffhandbuch[プラスチックハンドブック]、第7巻、ポリウレタン」、Carl Hanser Verlag、第3版、1993年、第3.1章に記載されている。ポリオールとしてポリエステルオール又はポリエーテルオールを使用することが特に好ましい。ポリエステルポリオールが特に好ましい。ポリカーボネートを使用することも同様に可能である。コポリマーも本発明との関連で使用することができる。本発明に従って使用できるポリオールの数平均分子量は、好ましくは0.5×10g/mol~8×10g/mol、好ましくは0.6×10g/mol~5×10g/mol、特に0.8×10g/mol~3×10g/molである。
【0039】
これらの物質は、1.8~2.3、より好ましくは1.9~2.2、特に2の、イソシアネートに関する平均官能価を有することが好ましい。
【0040】
使用するポリエステルオールとしては、二酸及びジオールをベースとするポリエステルオールであることができる。使用するジオールは、2~10個の炭素原子を有するジオールが好ましく、例えばエタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール又はジ-若しくはトリエチレングリコール、特にブタン-1,4-ジオール又はそれらの混合物がある。使用する二酸は、任意の既知の二酸であればよく、例えば4~12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状二酸又はそれらの混合物がある。二酸としてアジピン酸を使用することが好ましい。
【0041】
好適なポリエーテルオールは、本発明によれば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラヒドロフランである。
【0042】
特に好適な実施形態において、ポリオールは、600g/mol~2500g/molのMw範囲の分子量を有するポリテトラヒドロフラン(PTHF)である。
【0043】
本発明によれば、PTHFと同様に、他の様々なポリエーテルも適しているが、ポリエステル、ブロックコポリマー及びハイブリッドポリオール、例えばポリ(エステル/アミド)もまた使用可能である。
【0044】
使用するポリオールは1.8~2.3、好ましくは1.9~2.2、特に2の平均官能価を有することが好ましい。本発明に従って使用されるポリオールは、第一級ヒドロキシル基のみを有することが好ましい。
【0045】
本発明によれば、ポリオールは、純粋な形態で又はそのポリオールと少なくとも1種の溶媒とを含む組成物の形態で使用することができる。適切な溶媒はそれ自体当業者に知られている。
【0046】
追加のポリオールは、ポリオール(P1)に対して10:1~1:10の範囲のモル比で使用するのが好ましい。さらに好適な実施形態では、更なるポリオールとポリオール(P1)とは、9:1~1:9の範囲、さらに好ましくは5:1~1:5の範囲のモル比で使用する。
【0047】
本発明によれば、少なくとも1種のポリイソシアネートを使用する。本発明によれば、2種以上のポリイソシアネートの混合物を使用することも可能である。
【0048】
本発明との関連で好適なポリイソシアネートは、ジイソシアネート、特に脂肪族又は芳香族ジイソシアネート、より好ましくは芳香族ジイソシアネートである。
【0049】
更なる実施形態では、本発明は、したがって、ポリイソシアネートが脂肪族又は芳香族ジイソシアネートである、上記のような熱可塑性ポリウレタンに関する。
【0050】
本発明によれば、熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が<75%、好ましくは<70%、さらに好ましくは<50%、より好ましくは<40%となるような比率で前記成分が変換される。したがって、熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量は、好ましくは10%~75%の範囲、好ましくは20%~70%の範囲、さらに好ましくは20%~50%の範囲、より好ましくは20%~40%の範囲である。
【0051】
さらに、本発明との関連では、使用するイソシアネート成分は、先行する反応工程で幾分かのOH成分がイソシアネートと反応した予備反応プレポリマーであってもよい。これらのプレポリマーは、更なる工程、実際のポリマー反応で、残りのOH成分と反応し、次いで熱可塑性ポリウレタンを形成する。プレポリマーを使用することで第二級アルコール基を有するOH成分を使用することが可能となる。
【0052】
使用できる脂肪族ジイソシアネートとしては、慣用の脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート、例えばトリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルテトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、ブチレン-1,4-ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロン)ジイソシアネート、IPDI)、1,4-及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシル4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)などがある。
【0053】
好適な脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン及びメチレンジシクロヘキシル4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)である。特に好適なものは、メチレンジシクロヘキシル4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)及び1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン又はそれらの混合物である。
【0054】
更なる実施態様において、本発明は、したがって、ポリイソシアネートがメチレンジシクロヘキシル4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及び1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)又はそれらの混合物からなる群から選択される、上述の方法に関する。適切な芳香族ジイソシアネートは、特に、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、p-フェニレンジイソシアネート(PDI)、ジフェニルエタン4,4’-ジイソシアネート(EDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニル3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルエタン1,2-ジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートである。
【0055】
好適な芳香族ジイソシアネートは、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)及びそれらの混合物である。
【0056】
より官能性の高いイソシアネートの好適な具体例は、トリイソシアネート、例えばトリフェニルメタン4,4’,4’’-トリイソシアネート、及びまた上記のジイソシアネートのシアヌレート、及び水とのジイソシアネートの部分反応によって得られるオリゴマー、例えば上記ジイソシアネートのビウレット、及びまたセミブロック化ジイソシアネートと、平均で2個より多い、好ましくは3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールとの反応を制御することによって得られるオリゴマーである。
【0057】
更なる実施形態では、本発明は、ポリイソシアネートが脂肪族ジイソシアネートである、上記の方法に関する。
【0058】
本発明によれば、ポリイソシアネートは、純粋な形態で、又はそのポリイソシアネートと少なくとも1種の溶媒とを含む組成物の形態で使用することができる。適切な溶媒は当業者に知られている。適切な具体例としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン及び炭化水素のような非反応性溶媒がある。
【0059】
本発明によれば、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネート、少なくとも1種の鎖延長剤、及び少なくとも1種のポリマー組成物の反応では、更なる原料、例えば触媒又は助剤及び添加剤を加えることが可能である。
【0060】
適切な助剤及び添加剤は、それ自体当業者に知られている。具体例としては、例えば、表面活性物質、難燃剤、核形成剤、酸化安定剤、酸化防止剤、潤滑剤及び離型助剤、染料及び顔料、(加水分解、光、熱又は変色に対する)安定剤、無機及び/又は有機充填剤、補強剤、及び可塑剤がある。適切な助剤及び添加剤は、例えば、Kunststoffhandbuch[プラスチックハンドブック]、第VII巻、Vieweg及びHoechtlen発行、Carl Hanser Verlag、Munich 1966(p.103-113)に記載されている。
【0061】
同様に、適切な触媒も原則的には従来技術から知られている。適切な触媒は、例えば、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、亜鉛、アルミニウム及び鉄のオルガニル、例えばスズオルガニル化合物、好ましくはスズジアルキル、例えばスズ(II)イソオクトエート、スズジオクトエート、ジメチルスズ、ジエチルスズ、又は脂肪族カルボン酸のスズオルガニル化合物、好ましくはスズジアセテート、スズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、チタネートエステル、ビスマス化合物、例えばビスマスアルキル化合物、好ましくはビスマスネオデカノエート又は類似物、又は鉄化合物、好ましくは鉄(III)アセチルアセトネートからなる群から選択される有機金属化合物である。
【0062】
好適な実施形態では、触媒としては、スズ化合物及びビスマス化合物、より好ましくはスズアルキル化合物又はビスマスアルキル化合物から選択される。スズ(II)イソオクトエート及びビスマスネオデカノエートが特に適している。
【0063】
触媒は、典型的には3ppm~2000ppm、好ましくは10ppm~1000ppm、さらに好ましくは20ppm~500ppm、最も好ましくは30ppm~300ppmの量で使用する。
【0064】
更なる態様においては、本発明は、また、下記の工程:
(a)
(i)少なくとも1種のポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
の組成物を含む熱可塑性ポリウレタンを製造する工程、
ここで、
ポリオール組成物は、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有しかつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量は<75%である;及び
(b)熱可塑性ポリウレタンから成形体(SC)を製造する工程
を含む成形体(SC)を製造する方法に関する。
【0065】
本発明に係る方法は、工程(a)及び(b)を含む。最初に、工程(a)で、少なくとも1種のポリイソシアネート組成物、少なくとも1種の鎖延長剤及び少なくとも1種のポリオール組成物を反応させることによって熱可塑性ポリウレタンを調製する。本発明によれば、ここでポリオール組成物は、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有し、かつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含む。
【0066】
工程(b)では、工程(a)で得られた熱可塑性ポリウレタンから成形体(SC)を製造する。本発明との関連において、成形体(SC)は、また、例えば箔(フォイル:foil)であることができる。本発明との関連では、成形体(SC)は、あらゆる通常の方法によって、例えば押出成形(extrusion)、射出成形又は焼結法によって、あるいは溶液から製造することができる。特に射出成形による成形体(SC)の製造が本発明との関連において好適である。
【0067】
更なる実施形態では、本発明は、したがって、成形体(SC)が工程(b)で押出成形、射出成形又は焼結法によって、又は溶液から製造する、上述の方法に関する。
【0068】
工程(a)のプロセスは、原則として、それ自体既知の反応条件下で実施することができる。
【0069】
好適な実施形態では、工程(a)のプロセスは、室温よりも高い温度で、さらに好ましくは50℃~200℃の範囲内、より好ましくは55℃~150℃の範囲内、特に60℃~120℃の範囲で実施する。
【0070】
本発明によれば、加熱は、当業者に知られている任意の適切な方法で行うことができ、好ましくは電気加熱、加熱油、加熱ポリマー流体又は水を介した加熱、誘導場、熱風又はIR放射によって行うことができる。
【0071】
得られた熱可塑性ポリウレタンは、本発明に従って加工して成形体(SC)を得る。本プロセスは、それに応じて工程(a)及び工程(b)を含む。本発明によれば、本方法は更なる工程、例えば熱処理を含むことができる。
【0072】
本発明の方法により、透明で、高い硬度を有し、同時に脆くない成形体(SC)が得られる。更なる態様において、本発明は、また、上記の方法によって得られる、又は得られた成形体に関する。
【0073】
原則として、成形体(SC)は、例えば、フィルム及び他の成形体のような押出製品のような、想定可能な全ての形状の成形体であることができる。本発明によれば、成形体は、特に、消費者物品(consumer article)、例えば歯ブラシ、かみそり、家庭用品用ハウジング(housings)、ディスプレイ、コンピュータ又は電話部品、プラグ、自動車内装部品、履物部品、例えば安全靴用つま先(cap)などの用途のための消費者物品を含むことができる。
【0074】
更なる実施形態では、本発明は、したがって、成形体が、消費者物品、例えば、歯ブラシ、かみそり、家庭用品用のハウジング、ディスプレイ、コンピュータ又は電話部品、プラグ、自動車内装部品、履物部品、例えば安全靴用つま先などの用途のための消費者物品である、上述のような成形体に関する。
【0075】
本発明の更なる実施形態ついては、特許請求の範囲及び実施例から明らかである。上記に列挙され以下に説明される本発明に係る主題/方法/使用の特徴は、それぞれの場合に特定された組合せだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の組合せにおいても使用可能であることが理解されよう。例えば、好適な特徴と特に好適な特徴との組合せ、又はさらに特徴付けられていない特徴と特に好適な特徴との組合せなども、この組合せが明示的に言及されていなくても暗黙的に包含される。
【0076】
以下、本発明の例示的な実施形態を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。特に、本発明は、また、従属関係の参照、したがって以下に特定される組合せから生じる実施形態も包含する。より具体的には、下記の実施形態で、ある範囲について記載する場合、例えば、表現「実施形態1~4のいずれかに記載の方法」は、この範囲内の実施形態の任意の組合せが当業者に明示的に開示されるように理解されるべきであって、当該表現は「実施形態1、2、3及び4のいずれかに記載の方法」と同義であると見なされるべきであることを意味する。
【0077】
1.少なくとも成分(i)~(iii):
(i)ポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
を変換することによって得られる又は得られた熱可塑性ポリウレタンであって、
ここで、
ポリオール組成物が、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有しかつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が<75%である、
熱可塑性ポリウレタン。
【0078】
2.前記ポリオール(P1)が、全ポリエステルポリオール(P1)に基づいて、20質量%~70質量%の芳香族ポリエステルブロック(B1)を含む、実施形態1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0079】
3.前記芳香族ポリエステルブロック(B1)が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステルである、実施形態1又は2に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0080】
4.前記芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロック又はポリブチレンテレフタレートブロックである、実施形態1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0081】
5.前記芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロックである、実施形態1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0082】
6.前記ポリオール(P1)が750~1500g/molの範囲の分子量Mwを有する、実施形態1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0083】
7.前記ポリオール(P1)が10000~14000g/molの範囲の分子量を有する芳香族ポリエステルから得られる、実施形態1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0084】
8.前記ポリオール(P1)が10000~14000g/molの範囲の分子量を有する芳香族ポリエステルからエステル交換によって得られる、実施形態1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0085】
9.前記ポリオール(P1)が10000~14000g/molの範囲の分子量を有するポリエチレンテレフタレートからエステル交換によって得られる、実施態様1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0086】
10.(ii)に使用する鎖延長剤が分子量Mw<220g/molを有するジオールである,実施態様1~9のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0087】
11.(ii)に使用する鎖延長剤及びポリオール組成物中に存在するポリオール(P1)を40:1~1:10のモル比で使用する、実施態様1~10のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0088】
12.前記ポリオール組成物がポリエーテルオール、ポリエステルオール、ポリカーボネートアルコール及びハイブリッドポリオールからなる群から選択される更なるポリオールを含む、実施態様1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0089】
13.前記ポリイソシアネートが脂肪族又は芳香族ジイソシアネートである、実施態様1~12のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0090】
14.前記熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が10%~75%の範囲である、実施態様1~13のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0091】
15.成形体(SC)を製造する方法であって、下記の工程:
(a)
(i)少なくとも1種のポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
の組成物を含む熱可塑性ポリウレタンを製造する工程、
ここで、
ポリオール組成物は、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有し、かつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量は<75%である;
(b)熱可塑性ポリウレタンから成形体(SC)を製造する工程
を含む、方法。
【0092】
16.成形体(SC)を、工程(b)で、押出成形、射出成形又は焼結法によって、又は溶液から製造する、実施態様15に記載の方法。
【0093】
17.実施態様15及び16のいずれか1項に記載の方法により得られる又は得られた成形体。
【0094】
18.前記成形体が、消費者物品、例えば、歯ブラシ、かみそり、家庭用品用ハウジング、ディスプレイ、コンピュータ又は電話の部品、プラグ、自動車内装部品、履物部品、例えば安全靴用つま先などの用途のための消費者物品である、実施態様17に記載の成形体。
【0095】
19.少なくとも成分(i)~(iii):
(i)ポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
を変換することによって得られる又は得られた熱可塑性ポリウレタンであって、
ここで、
ポリオール組成物が、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有し、かつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が<75%であり、
ポリオール(P1)が、全ポリエステルポリオール(P1)に基づいて、20質量%~70質量%の芳香族ポリエステルブロック(B1)を含み、
芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロック又はポリブチレンテレフタレートブロックである、熱可塑性ポリウレタン。
【0096】
20.少なくとも下記成分(i)~(iii):
(i)ポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
を変換することによって得られる又は得られた熱可塑性ポリウレタンであって、
ここで、
ポリオール組成物が、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有し、かつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
前記熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が10%~75%の範囲であり、
ポリオール(P1)が、全ポリエステルポリオール(P1)に基づいて、20質量%~70質量%の芳香族ポリエステルブロック(B1)を含み、芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロックである、熱可塑性ポリウレタン。
【0097】
21.前記ポリオール(P1)が750~1500g/molの範囲の分子量Mwを有する,実施形態19及び20のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0098】
22.前記ポリオール(P1)が10000~14000g/molの範囲の分子量を有する芳香族ポリエステルから得られる、実施形態19~21のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0099】
23.前記ポリオール(P1)が10000~14000g/molの範囲の分子量を有する芳香族ポリエステルからエステル交換によって得られる,実施形態19~22のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0100】
24.前記ポリオール(P1)が10000~14000g/molの範囲の分子量を有するポリエチレンテレフタレートからエステル交換によって得られる,実施態様19~23のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0101】
25.(ii)で使用する鎖延長剤が分子量Mw<220g/molを有するジオールである、実施形態19~24いずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0102】
26.(ii)で使用する鎖延長剤及びポリオール組成物中に存在するポリオール(P1)を40:1~1:10のモル比で使用する、実施形態19~25のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0103】
27.前記ポリオール組成物がポリエーテルオール、ポリエステルオール、ポリカーボネートアルコール及びハイブリッドポリオールからなる群から選択される更なるポリオールを含む、実施態様19~26のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0104】
28.前記ポリイソシアネートが脂肪族又は芳香族ジイソシアネートである、実施態様19~27のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0105】
29.前記ポリイソシアネートが芳香族ジイソシアネートである、実施態様19~28のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0106】
30.成形体(SC)を製造する方法であって、下記の工程:
(a)
(i)少なくとも1種のポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
の組成物を含む熱可塑性ポリウレタンを製造する工程、
ここで、
ポリオール組成物は、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有し、かつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
前記熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が10%~75%の範囲であり、
ポリオール(P1)が、全ポリエステルポリオール(P1)に基づいて、20質量%~70質量%の芳香族ポリエステルブロック(B1)を含み、芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロック又はポリエチレンテレフタレートブロックであり;
(b)熱可塑性ポリウレタンから成形体(SC)を製造する工程
を含む、方法。
【0107】
31.前記芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロックである、実施態様30に記載の方法。
【0108】
32.前記ポリオール(P1)が1700~2300g/molの範囲の分子量Mwを有する、実施形態30及び31のいずれか1項に記載の方法。
【0109】
33.(ii)で使用する鎖延長剤が分子量Mw<220g/molを有するジオールである、実施形態30~32のいずれか1項に記載の方法。
【0110】
34.(ii)で使用する鎖延長剤及びポリオール組成物中に存在するポリオール(P1)を40:1~1:10のモル比で使用する、実施形態30~33のいずれか1項に記載の方法。
【0111】
35.成形体(SC)を、工程(b)で、押出成形、射出成形又は焼結法によって、又は溶液から製造する、実施態様30~34のいずれか1項に記載の方法。
【0112】
36.実施態様30~35のいずれか1項に記載の方法により得られる又は得られた成形体。
【0113】
37.前記成形体が、消費者物品、例えば、歯ブラシ、かみそり、家庭用品用ハウジング、ディスプレイ、コンピュータ又は電話の部品、プラグ、自動車内装部品、履物部品、例えば安全靴用つま先などの用途のための消費者物品である、実施態様36に記載の成形体。
【0114】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって、決して本発明の主題を限定するものではない。
【実施例0115】
1.下記の原材料を使用した。
【0116】
ポリオール1:アジピン酸、PET、ブタン-1,4-ジオール及びジエチレングリコールに基づくポリエステルポリオール、OH価111.2、官能価:2
ポリオール2:アジピン酸、PET、ブタン-1,4-ジオール及びジエチレングリコールに基づくポリエステルポリオール、OH価112.8、官能価:2
ポリオール3:アジピン酸、PET、ブタン-1,4-ジオール及びプロパン-1,3-ジオールに基づくポリエステルポリオール、OH価112.1、官能価:2
ポリオール4:アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、PET及びジエチレングリコールに基づくポリエステルポリオール、OH価75.6、官能価:2
ポリオール5:アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、PET及びジエチレングリコールに基づくポリエステルポリオール、OH価110.6、官能価:2
PET:フレーク形態のポリエチレンテレフタレート、平均分子量Mw12000g/mol
イソシアネート1:芳香族イソシアネート(メチレンジフェニル4,4’-ジイソシアネート)
イソシアネート2:脂肪族イソシアネート(メチレンジシクロヘキシル4,4’-ジイソシアネート)
CE1:ブタン-1,4-ジオール
CE2:ヘキサン-1,6-ジオール
安定剤1:ポリカルボジイミドベースの加水分解安定剤
触媒1:アジピン酸ジエチルヘキシル中50%スズ(II)イソオクトエート
【0117】
2.PETブロックを有するポリエステルポリオールの合成
2.1 ポリオール1の合成
PT100熱電対、窒素入口、攪拌機、カラム、カラムヘッド、Anschutz-Thiele付属部品及び加熱マントルを備えた4000ml丸底フラスコに、最初に、880.84gのアジピン酸、395.56gのブタン-1,4-ジオール、及び465.79gのジエチレングリコールを充填する。次いで、この混合物を均一な混合物が形成するまで120℃に加熱する。次いで、1000gのポリエチレンテレフタレート(PET)をPETフレークの形態で混合物に添加し、次いで10ppm=2.5gのTTB(テトラ-n-ブチルオルトチタネート、トルエン中1%)を添加する。反応混合物を最初に約1.5時間180℃に加熱し、次にさらに240℃まで加熱し、生成する反応水を連続的に除去する。全合成にわたって、PETフレークは徐々に分解され、透明な混合物が形成する。これを、酸価<1.0mgKOH/gを有する生成物が得られるまで凝縮する。
【0118】
得られたポリマーは以下の特性を有する。
【0119】
ヒドロキシル価:111.2mgKOH/g
酸価:0.45mgKOH/g
75℃での粘度:757mPas
【0120】
2.2 ポリオール2の合成
PT100熱電対、窒素入口、攪拌機、カラム、カラムヘッド、Anschutz-Thiele付属部品及び加熱マントルを備えた4000ml丸底フラスコに、最初に、705.39gのアジピン酸、339.84gのブタン-1,4-ジオール、及び400.18gのジエチレングリコールを充填する。次いで、この混合物を均一な混合物が形成するまで120℃に加熱する。次いで、1250gのポリエチレンテレフタレート(PET)をPETフレークの形態で混合物に添加し、次いで10ppm=2.5gのTTB(テトラ-n-ブチルオルトチタネート、トルエン中1%)を添加する。反応混合物を最初に約1.5時間180℃に加熱し、次にさらに240℃まで加熱し、生成する反応水を連続的に除去する。全合成にわたって、PETフレークは徐々に分解され、透明な混合物が形成する。これを、酸価<1.0mgKOH/gを有する生成物が得られるまで凝縮する。
【0121】
得られたポリマーは以下の特性を有する。
【0122】
ヒドロキシル価:112.8mgKOH/g
酸価:0.55mgKOH/g
75℃での粘度:1388mPas
【0123】
2.3 ポリオール3の合成
PT100熱電対、窒素入口、攪拌機、カラム、カラムヘッド、Anschutz-Thiele付属部品及び加熱マントルを備えた4000ml丸底フラスコに、最初に、788.52gのアジピン酸、309.27gのプロパン-1,3-ジオール、及び366.24gのブタン-1,4-ジオールを充填する。次いで、この混合物を均一な混合物が形成するまで120℃に加熱する。次いで、1250gのポリエチレンテレフタレート(PET)をPETフレークの形態で混合物に添加し、次いで10ppm=2.5gのTTB(テトラ-n-ブチルオルトチタネート、トルエン中1%)を添加する。反応混合物を最初に約1.5時間180℃に加熱し、次にさらに240℃まで加熱し、生成する反応水を連続的に除去する。全合成にわたって、PETフレークは徐々に分解され、透明な混合物が形成する。これを、酸価<1.0mgKOH/gを有する生成物が得られるまで凝縮する。
【0124】
得られたポリマーは以下の特性を有する。
【0125】
ヒドロキシル価:112.1mgKOH/g
酸価:0.38mgKOH/g
75℃での粘度:1803mPas
【0126】
2.4 ポリオール4の合成
温度計、窒素入口、攪拌機及び加熱マントルを備えた3000mlの丸底フラスコに、最初に819.5gのジカルボン酸混合物(アジピン酸、グルタル酸及びコハク酸からなる)及び925.9gのジエチレングリコールを充填する。次いで、この混合物を均一な混合物が形成するまで120℃に加熱する。次いで、1000gのポリエチレンテレフタレート(PET)をPETフレークの形態で混合物に添加する。反応混合物を240℃でさらに加熱し、生成する反応水を連続的に除去する。全合成にわたって、PETフレークは徐々に分解され、透明な混合物が形成する。これを、酸価<1.0mgKOH/gを有する生成物が得られるまで凝縮する。
【0127】
得られたポリマーは以下の特性を有する。
【0128】
酸価:110.6mgKOH/g
ヒドロキシル価:0.6mgKOH/g
75℃での粘度:660mPas
【0129】
2.5 ポリオール5の合成
温度計、窒素入口、攪拌機及び加熱マントルを備えた3000mlの丸底フラスコに、最初に1040.9gのジカルボン酸混合物(アジピン酸、グルタル酸及びコハク酸からなる)及び1016.2gのジエチレングリコールを充填する。次いで、この混合物を均一な混合物が形成するまで120℃に加熱する。次いで、750gのポリエチレンテレフタレート(PET)をPETフレークの形態で混合物に添加する。反応混合物を240℃でさらに加熱し、生成する反応水を連続的に除去する。全合成にわたって、PETフレークは徐々に分解され、透明な混合物が形成する。これを、酸価<1.0mgKOH/gを有する生成物が得られるまで凝縮する。
【0130】
得られたポリマーは以下の特性を有する。
【0131】
酸価:75.6mgKOH/g
ヒドロキシル価:0.7mgKOH/g
75℃での粘度:840mPas
【0132】
3.方法
3.1 粘度の決定:
特に断りのない限り、ポリオールの粘度は、75℃で、DIN EN ISO 3219(01.10.1994版)に従ってCC 25 DINスピンドル(スピンドル直径:12.5mm;メスシリンダー内径:13.56mm)を使用するRheotec RC 20回転粘度計を用い、剪断速度50(1/s)で測定した。
【0133】
3.2 ヒドロキシル価の測定:
ヒドロキシル価は、無水フタル酸法DIN53240(01.12.1971版)によって測定され単位mgKOH/gで報告されたものである。
【0134】
3.3 酸価の測定:
酸価は、DIN EN 1241(01.05.1998版)に従って決定され、単位mgKOH/gで報告されたものである。
【0135】
4.一般的製造例
ポリオールを最初に60~80℃の容器に入れ、激しく撹拌することで表1に記載の成分と混合した。その反応混合物を、80℃を超える温度まで加熱し、次いで加熱したテフロン(登録商標)被覆のテーブル上に注ぎ出した。得た鋳造スラブ(cast slab)を80℃で15時間熱処理し、次いでペレット化し、射出成形により加工した。
【0136】
【表1】
【0137】
5.機械的特性
表2にまとめた測定値は、実施例1~5の射出成形シートから確立されたものである。
【0138】
得られたポリウレタンについて、以下の特性は、各々列挙した方法により決定した。
【0139】
硬度:DIN ISO 7619-1
引張強さ及び破断点伸び:DIN 53504
引裂伝播抵抗:DIN ISO 34-1、B(b)
弾性率:DIN EN ISO 527
摩耗測定:DIN ISO 4649
【0140】
【表2】
【0141】
PETポリオールの存在下では、ハードセグメント含有量(イソシアネート及び鎖伸長剤)を削減することが可能であり、また、それにもかかわらず、同時に、>75ショアDの高い値、及び、>300%の破断伸びを達成することができる。実施例1~5に従って得られた材料は全て透明である。各実施例は、40%~50%の範囲のPET含有量及び約1000g/molのポリオールの平均分子量Mwで、特に良好な特性が達成できることを実証している。
【0142】
引用した文献
US5574092
US5627254
WO2015/063062 A1
WO2007/118827 A1
Kunststoffhandbuch、Volume 7、“Polyurethane”[プラスチックハンドブック、第7巻、ポリウレタン]、Carl Hanser Verlag、第3版、1993年、第3.1章
Kunststoffhandbuch、Volume 7、Carl Hanser Verlag、第1版、1966年、第103~113頁
【手続補正書】
【提出日】2022-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記成分(i)~(iii):
(i)ポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
を変換することによって得られる又は得られた熱可塑性ポリウレタンであって、
ポリオール組成物が、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有しかつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が<75%であり、及び
(ii)で使用される鎖延長剤は、分子量Mw<220g/molを有するジオールであり、及び(ii)で使用される鎖延長剤及びポリオール組成物中に存在するポリオール(P1)は、40:1~1:10のモル比で使用され、及び
前記少なくとも1種のポリオール(P1)の分子量(Mw)は以下の式を用いて計算される(ここでzはポリエステルポリオールの官能価であり、z=2である)
Mw=1000mg/g・[(z・56.106g/mol)/(OHN[mg/g])]
ことを特徴とする熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
前記ポリオール(P1)が、全ポリエステルポリオール(P1)に基づいて、20質量%~70質量%の芳香族ポリエステルブロック(B1)を含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
前記芳香族ポリエステルブロック(B1)が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステルである、請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
前記芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロック又はポリブチレンテレフタレートブロックである、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
前記芳香族ポリエステルブロック(B1)がポリエチレンテレフタレートブロックである、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
前記ポリオール(P1)が750~1500g/molの範囲の分子量Mwを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
前記ポリオール組成物がポリエーテルオール、ポリエステルオール、ポリカーボネートアルコール及びハイブリッドポリオールからなる群から選択される更なるポリオールを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
前記ポリイソシアネートが脂肪族又は芳香族ジイソシアネートである、請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が10%~75%の範囲である、請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
成形体(SC)を製造する方法であって、下記の工程:
(a)
(i)少なくとも1種のポリイソシアネート組成物、
(ii)少なくとも1種の鎖延長剤、及び
(iii)少なくとも1種のポリオール組成物
の組成物を含む熱可塑性ポリウレタンを製造する工程であって、
ポリオール組成物が、500~2000g/molの範囲の分子量Mwを有しかつ少なくとも1種の芳香族ポリエステルブロック(B1)を有する、少なくとも1種のポリオール(P1)を含み、
熱可塑性ポリウレタン中のハードセグメント含有量が<75%である工程;
(b)熱可塑性ポリウレタンから成形体(SC)を製造する工程
を含み、及び
(ii)で使用される鎖延長剤は、分子量Mw<220g/molを有するジオールであり、及び(ii)で使用される鎖延長剤及びポリオール組成物中に存在するポリオール(P1)は、40:1~1:10のモル比で使用され、及び
前記少なくとも1種のポリオール(P1)の分子量(Mw)は以下の式を用いて計算される(ここでzはポリエステルポリオールの官能価であり、z=2である)
Mw=1000mg/g・[(z・56.106g/mol)/(OHN[mg/g])]
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
成形体(SC)を、工程(b)で、押出成形、射出成形又は焼結法によって又は溶液から製造する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項10及び11のいずれか1項に記載の方法により得られる又は得られた成形体。
【請求項13】
前記成形体が、消費者物品、自動車内装部品、履物部品である、請求項12に記載の成形体。
【請求項14】
前記消費者物品が、歯ブラシ、かみそり、家庭用品用ハウジング、ディスプレイ、コンピュータ又は電話の部品、プラグである、請求項13に記載の成形体。
【請求項15】
前記履物部品が、安全靴用つま先である、請求項13に記載の成形体。
【外国語明細書】