(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191287
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】複合粉体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/16 20060101AFI20221220BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20221220BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C01B33/16
A61K8/25
A61Q1/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154425
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2018056291の分割
【原出願日】2018-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】石津 聡子
(72)【発明者】
【氏名】福寿 忠弘
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ファンデーションなどの化粧料に配合することにより、油分の吸収と同時に機能性成分を放出するという従来に無い機能を発現する複合粉体、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔内に常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を融液の状態で担持させた複合粉体の製造方法であって、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を、水親和性の機能成分を含有する水溶性有機溶媒に分散させた後、乾燥する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔内に常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を融液の状態で担持させた複合粉体の製造方法であって、
疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を、水親和性の機能成分を含有する水溶性有機溶媒に分散させた後、乾燥することを特徴とする複合粉体の製造方法。
【請求項2】
疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔内に常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を融液の状態で担持させた複合粉体の製造方法であって、
(1)水性の金属酸化物ゾルを調整する工程
(2)該水性の金属酸化物ゾルをW相とする、O/W/O型エマルションもしくはW/O型エマルションを形成する工程
(3)前記金属酸化物ゾルをゲル化させることにより、前記エマルションをゲル化体がO相に分散した分散液へと変換する工程
(4)O相とW相の2層に分離させる工程
(5)W相を回収して前記ゲル化体がW相に分散した分散液を得る工程
(6)該分散液にシリル化剤を添加する工程
(7)シリル化されたゲル化体を回収する工程
を順に行って、得られた疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を、常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を含有する水溶性有機溶媒に分散させることにより、細孔中に上記機能性成分を融液の状態で担持せしめ、乾燥することを特徴とする複合粉体の製造方法。
【請求項3】
疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔内に常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を融液の状態で担持させた複合粉体の製造方法であって、
(1)水性の金属酸化物ゾルを調整する工程
(2)該水性の金属酸化物ゾルをW相とする、O/W/O型エマルションもしくはW/O型エマルションを形成する工程
(3)前記金属酸化物ゾルをゲル化させることにより、前記エマルションをゲル化体がO相に分散した分散液へと変換する工程
(4)O相とW相の2層に分離させる工程
(5)W相を回収して前記ゲル化体がW相に分散した分散液を得る工程
(6)該分散液にシリル化剤を添加する工程
を順に行って、得られたシリル化されたゲル化体に常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を含有する水溶性有機溶媒を混合することにより、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔に上記機能性成分を融液の状態で担持させた後、乾燥することを特徴とする複合粉体の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の製造方法により得られた複合粉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複合粉体に関する。詳しくは、特定の物性を有する疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔内に水親和性の機能性成分を融液の状態で担持することにより、例えば、化粧料への添加物として、従来に無い機能を発揮することが可能な複合粉体を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ゲル化体に含まれる液体の乾燥を、乾燥によって生じる収縮(乾燥収縮)を抑制しながら行ったものはエアロゲルと呼ばれ、空隙率60%以上の高い空隙率を有する材料であり、その特性を利用して各種用途に用いられる。
【0003】
例えば、金属酸化物、例えば、シリカを骨格としたシリカエアロゲルの製法としては、アルコキシシランの加水分解生成物を重縮合させて得られるヒドロゲル、或いは、ケイ酸アルカリ金属塩を中和して形成されるゾルをゲル化して得られるヒドロゲルを、分散媒の超臨界条件下での乾燥の如き、収縮(乾燥収縮)を抑制しながら乾燥する方法が知られている(特許文献1~4)。
【0004】
このようにして得られる金属酸化物エアロゲルの用途は様々であるが、その一つとして化粧料材料としての用途がある(特許文献5参照)。例えば、ファンデーションの材料として、粉体の状態で使用される。この用途において、高い吸油量を有するエアロゲルは、上記テカリの原因となる皮脂を大量に吸収できるため、化粧仕上がり時の外観を長時間にわたって持続させることができることが記載されている。
【0005】
一方、化粧料用途において、機能性の追求は永遠のテーマであり、高い吸油特性を有する疎水化金属酸化物エアロゲル粉体においても、皮脂の除去機能を超えた機能が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4402927号公報
【特許文献2】特開平10-236817号公報
【特許文献3】特開平06-040714号公報
【特許文献4】特開平07-257918号公報
【特許文献5】特開2014-88307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体における皮脂等の油分の吸収機能と共に、従来に無い機能を発揮することが可能な複合粉体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、金属酸化物エアロゲル粉体を特定の疎水化度に調整した疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔中に、水親和性の液を担持した複合粉体が、皮脂等の油分と接触することにより、上記油分を吸収すると共に、細孔内部に存在する水親和性の液を放出するという現象を見出した。そして、前記細孔に存在させる液として、常温で液状を呈する水親和性の機能性成分、例えば、保湿効果のあるグリセリンを融液の状態で担持させることにより、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の疎水性相互作用とそれに伴う細孔内部の置換作用により、皮膚から分泌される油分(皮脂)を吸収し、保湿成分であるグリセリンを放出する機能を発揮するという従来に無い機能を発現することを確認し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、[1]疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔内に常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を融液の状態で担持させた複合粉体の製造方法であって、
疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を、水親和性の機能成分を含有する水溶性有機溶媒に分散させた後、乾燥することを特徴とする複合粉体の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、[2]疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔内に常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を融液の状態で担持させた複合粉体の製造方法であって、
(1)水性の金属酸化物ゾルを調整する工程
(2)該水性の金属酸化物ゾルをW相とする、O/W/O型エマルションもしくはW/O型エマルションを形成する工程
(3)前記金属酸化物ゾルをゲル化させることにより、前記エマルションをゲル化体がO相に分散した分散液へと変換する工程
(4)O相とW相の2層に分離させる工程
(5)W相を回収して前記ゲル化体がW相に分散した分散液を得る工程
(6)該分散液にシリル化剤を添加する工程
(7)シリル化されたゲル化体を回収する工程
を順に行って、得られた疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を、常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を含有する水溶性有機溶媒に分散させることにより、細孔中に上記機能性成分を融液の状態で担持せしめ、乾燥することを特徴とする複合粉体の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、[3]疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔内に常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を融液の状態で担持させた複合粉体の製造方法であって、
(1)水性の金属酸化物ゾルを調整する工程
(2)該水性の金属酸化物ゾルをW相とする、O/W/O型エマルションもしくはW/O型エマルションを形成する工程
(3)前記金属酸化物ゾルをゲル化させることにより、前記エマルションをゲル化体がO相に分散した分散液へと変換する工程
(4)O相とW相の2層に分離させる工程
(5)W相を回収して前記ゲル化体がW相に分散した分散液を得る工程
(6)該分散液にシリル化剤を添加する工程
を順に行って、得られたシリル化されたゲル化体に常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を含有する水溶性有機溶媒を混合することにより、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔に上記機能性成分を融液の状態で担持させた後、乾燥することを特徴とする複合粉体の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、[4]前記[1]~[3]いずれかに記載の製造方法により得られた複合粉体が提供される。
【0013】
以上の特性を有する本発明の複合粉体は、粉体化粧料の添加剤として有用であり、特に、機能性成分として保湿機能を有する保湿成分を選択することにより、肌への塗布後、皮脂の吸収と同時に上記保湿成分を放出するという特性を発揮することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複合粉体は、特定の疎水性を有する疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔内に前記水親和性の機能性成分の融液を担持させることにより、油分の吸収と同時に機能性成分の融液を放出するという従来に無い機能を発現する。
【0015】
そのため、例えば、粉体化粧料、より具体的には、固形ファンデーションの一成分として使用し、上記機能性成分として、例えば、保湿効果のあるグリセリンを担持せしめておくことにより、ファンデーションを皮膚に塗布した後、皮膚からの皮脂を吸収して塗布後のベタつきを抑えると共に、グリセリンを放出し、皮膚の潤いを長時間持続可能な、機能性化粧料を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。また、特に断らない限り、数値範囲について「A~B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
【0017】
[複合粉体]
本発明の複合粉体において、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を構成する金属元素は特に限定されることなく、常温・常圧、大気中で安定な酸化物を構成する金属元素であればよい。このような金属酸化物を具体的に例示すると、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア(MgO)、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化タングステン、酸化バナジウム等の単独酸化物、及びこれらのうちの2種以上の金属元素を含む複合酸化物(例えばシリカ-アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-チタニア-ジルコニア等。)が挙げられる。また複合酸化物の場合、単独酸化物が水分に対して比較的敏感なアルカリ金属やアルカリ土類金属(周期律第4周期(Ca)以降)を構成金属元素として含むことも可能である。
【0018】
本発明において使用可能な金属酸化物の中でも、軽量なため嵩密度をより小さくできる点、及び、安価で入手しやすい点から、シリカ、又はシリカを主成分とする複合酸化物が好ましい。ある複合酸化物が「シリカを主成分とする」とは、当該複合酸化物が含む酸素以外の元素群に占めるケイ素(Si)のモル比率が50%以上100%未満であることを意味する。当該モル比率は好ましくは65%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
【0019】
シリカを主成分とする複合酸化物を用いる場合、ケイ素以外に含有される金属元素として好ましいものとしては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期律表第II族金属;アルミニウム、イットリウム、インジウム、ホウ素、ランタン等の周期律表第III族金属(なお、ホウ素は金属元素として扱うものとする。);及び、チタニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、スズ等の周期律表第IV族金属等を例示でき、これらの中でも、Al、Ti、及びZrを特に好ましく採用できる。シリカを主成分とする複合酸化物は、ケイ素以外に2種以上の金属元素を含有していてもよい。
【0020】
本発明の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体は、レーザー回折式測定による粒度分布におけるメジアン径(D50)が1~30μmの範囲にある。そのため、化粧料の添加剤として利用した時の外観保持性が良く、滑らかな触感を得ることができる。当該メジアン径が、1~20μmの範囲にあることがより好ましく、5~20μmが特に好ましい。
【0021】
本発明における疎水化金属酸化物エアロゲル粉体は、疎水化されていることが重要である。そして、上記疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の疎水化の程度は、M値によって特定される。
【0022】
ここで、M値は、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体は水には浮遊するが、メタノールには完全に懸濁することを利用し、以下の方法によって測定されるものである。
【0023】
即ち、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体0.2gを容量250mLのビーカー中の50mLの水に添加した。次いで、メタノールをビュレットからシリカの全量が懸濁するまで滴下した。この際、メタノールが直接粉体に触れないようにチューブを用いて液の中に導き、ビーカー内の溶液をマグネティックスターラーで常時攪拌した。疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の全量が溶液中に懸濁された時点を終点とし、終点におけるビーカーの液体混合物のメタノールの容量百分率の値をM値とした。
【0024】
本発明において、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の上記M値は、20~60容量%、好ましくは、30~50容量%であることが重要である。即ち、上記疎水化金属酸化物エアロゲル粉体のM値が、20容量%より小さい場合、疎水性(親油性)の低下により、油分との接触において油分の吸収性が低下し、本発明の目的を達成することが困難となる。また、M値が60容量%を超える場合、水親和性の機能性成分の融液を細孔内に充分な量で担持することが困難となり、また、担持できたとしても、かかる融液を細孔内に安定して保持することも困難となる。
【0025】
前記疎水化金属酸化物エアロゲル粉体において、疎水性が付与される態様の具体例としては、シリル化剤により処理されていることにより、表面に有機シリル基が導入された態様を挙げることができる。上記シリル化剤の具体例は後述の製造方法に示す。
【0026】
本発明の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体は、細孔容積が0.5~8mL/gであることが好ましい。下限値は、2.5mL/g以上、特に、3mL/g以上であることがより好ましい。また、上限は6mL/g以下であることがより好ましい。上記細孔容積が0.5mL/g未満の場合には、水親和性の機能性成分の融液を充分な量で担持することができず、かかる機能性成分の放出効果が低下する傾向がある。また、細孔容積は高いほど好ましいが、8mL/gを超えて大きいものを得ることは困難である。
【0027】
上記細孔容積は、吸着等温線を取得し、BJH法(Barrett,E.P.;Joyner,L.G.;Halenda,P.P.,J.Am.Chem.Soc.73,373(1951)により解析して得られたものである(以下、「BJH細孔容積」ということがある。)。当該方法により測定される細孔は、半径1~100nmの細孔であり、この範囲の細孔の容積の積算値が本発明における細孔容積となる。
【0028】
本発明の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔半径のピークは10~40nm、好ましくは、10~30nmのものが推奨される。即ち、細孔半径が5nmより小さい場合は、水親和性の機能性成分の担持が困難となる傾向があり、また、細孔半径が50nmを超える場合は、細孔への油分の吸収力が低下し、その結果、水親和性の機能性成分の融液の放出を充分行うことが困難となる傾向がある。
【0029】
上記細孔径の分布がシャープである本発明の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体は、一般に、細孔半径が5~50nm、特に、10~40nmの範囲内に全細孔容積の70容量%以上の細孔が存在する。
【0030】
尚、本発明において、細孔半径のピーク、及び範囲は、前記と同様に取得した吸着側の吸着等温性をBJH法によって解析して得られる、細孔半径の対数による累積細孔容積(体積分布曲線)より求めたものである。
【0031】
本発明において、上記特徴的細孔を有する疎水化金属酸化物エアロゲル粉体のBET法による比表面積(BET比表面積)は、一般に、350~1000m2/gであり、好ましくは、400~850m2/gであることが好ましい。
【0032】
ここで、上記BET法による比表面積は、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において、200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を取得し、BET法により解析して求めた値である。
【0033】
本発明において、前記疎水化金属酸化物エアロゲル粉体は、前述のとおり比表面積、細孔容積共に大きいため、その吸油量は、通常、200mL/100g以上を有する。より好ましい吸油量は300mL/100g以上であり、さらには350mL/100g以上、特に好ましくは400mL/100g以上である。上限は特に限定されるものではないが、粒子強度を考慮すると800mL/100g以下であることが好ましく、700mL/100g以下であることがより好ましい。当該吸油量は、JIS K5101-13-1「精製あまに油法」記載の方法により測定した値である。
【0034】
本発明において、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を構成する粒子の形状は特に制限されないが、その平均円形度が0.8以上であることが好ましく、特に、0.85以上であることが好ましい。
【0035】
上記「平均円形度」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、二次電子検出、低加速電圧(1kV~3kV)、倍率1000倍で観察したSEM像を得、個々の粒子について下記式(1)によって定義される値C(円形度)を求め(画像解析)、この円形度Cを2000個以上の粒子について相加平均値として出した値である(画像解析法)。この際、一個の凝集粒子を形成している粒子群は1粒子として計数する。
【0036】
C=4πS/L2 (1)
上記式(1)において、Sは当該粒子が画像中に占める面積(投影面積)を表す。Lは画像中における当該粒子の外周部の長さ(周囲長)を表す。
【0037】
上記平均円形度が0.8より大きくなって1に近くなるほど、個々の粒子は真球に近い形状となり、凝集粒子も少なくなる。よって平均円形度が高ければ化粧料添加剤として利用したときにローリング性が良くなり、優れた触感が得られる。
【0038】
[常温で液状を呈する水親和性の機能性成分の融液]
本発明の複合粉体において、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔に、常温で液状を呈する水親和性の機能性成分を融液の状態で担持させることが最大の特徴である。即ち、従来の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の使用態様は、高い吸油性を有する粉としての特性を利用したものが殆どであったが、本発明の複合粉体は、前記特定の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔に、機能性成分の融液を担持しておくことにより、油分との接触によりこれを吸収し、担持により内在している上記融液を放出するという従来に無い機能を発揮する。
【0039】
従って、常温で液状を呈する水親和性の機能性成分は、用途に応じて適宜決定される。例えば、化粧料の用途において、上記水親和性の機能成分としては、肌荒れ防止、老化防止、美白、育毛、にきびケア、紫外線障害予防、スリミング、刺激緩和・抗炎症等を目的としたものが挙げられる。
【0040】
尚、本発明において、以下に具体的に示す機能性成分は融液の状態で使用するものであればよく、機能性成分の融液をそのまま使用することは勿論、常温で固体の機能性成分については、機能性成分の融液、例えば、多価アルコール等に溶解させた状態の融液として使用することも可能である。
【0041】
前記機能性成分において、肌荒れ防止を目的としたものとしては、保湿剤、ビタミン類、上記老化防止を目的としたものとしては、紫外線吸収剤、抗酸化剤、保湿剤、細胞賦活剤、血流促進剤、真皮マトリックス再生成分、α-ヒドロキシ酸、上記美白を目的としたものとしては、メラニン生成抑制剤、エンドセリン作用抑制剤、メラニン色素生成誘導因子抑制剤、メラニン還元作用剤、ターンオーバー促進剤、上記育毛を目的としたものとしては、血行促進剤、毛包賦活剤、フケ防止剤、かゆみ改善剤、上記にきびケアを目的としたものとしては、角層溶解剤、皮脂腺機能亢進抑制剤、活性酸素消去剤、抗菌・殺菌剤、上記紫外線障害予防を目的としたものとしては、紫外線吸収剤、活性酸素生成抑制剤、しわ抑制剤、上記スリミングを目的としたものとしては、脂肪分解促進剤、血行促進剤、ファーミング剤、上記刺激緩和・抗炎症を目的としたものとしては、界面活性剤による刺激緩和剤、バリア機能維持剤等が挙げられる。
【0042】
上記機能性成分を更に具体的に例示すれば、以下のものが挙げられ、これらの成分により融液を構成して使用すればよい。
【0043】
[保湿剤] エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等の1,2-アルカンジオール以外の多価アルコール類;グルコース、マルトース、マルチトール、スクロール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の糖類;ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド等の糖誘導体;デキストリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等の多糖類;グリシン、アラニン、セリン、アルギニン、グルタミン酸等のアミノ酸類;コラーゲン等のポリペプタイド類;クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム等の有機酸塩等。
【0044】
[ビタミン類] ビタミンB6群、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ビタミンC群、等。
【0045】
[紫外線吸収剤] サリチル酸グリコール、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸等。
【0046】
[抗酸化剤] ビタミン(B2,C)、カロチノイド(α-カロチン、β-カロチン、アスタキサンチン)、ポリフェノール(フロロタンニン、アントシアニン等)、各種植物成分のほか、ラクトフェリン、エルゴチオネイン等。
【0047】
[抗酸化剤] アスコルビン酸、没食子酸エステル類等。
【0048】
[細胞賦活剤] コラーゲン、エラスチン、酵母エキス、乳酸菌エキス、霊芝エキス等。
【0049】
[血流促進剤] イチョウエキス、センブリエキス、マロニエエキス等の植物抽出物、塩化カルプロニウム、セファランチン等、ビタミンEおよびその誘導体、トウガラシチンキ、デキストラン硫酸ナトリウム、ニンジンエキスや海藻等のエキス等。
【0050】
[真皮マトリックス再生成分] ビタミンC誘導体、ショウキョウエキス等。
【0051】
[α-ヒドロキシ酸] グリコール酸、乳酸、サリチル酸、酢酸、ピルビン酸、クエン酸等が挙げられる。
【0052】
[メラニン生成抑制剤] アルブチン、ソウハクヒエキス、シャクヤク根エキス、カンゾウ根エキス、コウジ酸、プラセンタエキス、4-メトキシサリチル酸カリウム等。
【0053】
[エンドセリン作用抑制剤] カミツレエキス等。
【0054】
[メラニン色素生成誘導因子抑制剤] トラネキサム酸、トラネキサム酸セチルHCL等。
【0055】
[メラニン還元作用剤] アスコルビン酸、ハイドロキノン等。
【0056】
[ターンオーバー促進剤] アスコルビン酸グルコシド、リン酸アスコルビルMg,アスコルビルリン酸Na,アスコルビルエチル、アスコルビン酸硫酸2Na,グリセリルアスコルビン酸、アデノシン1リン酸2ナトリウムOT、プロテオグリカン等。
【0057】
[毛包賦活剤] パントテン酸およびその誘導体、プラセンタエキス、ビオチン、感光素301、6-ベンジルアミノプリン等。
【0058】
[フケ防止剤] 塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ピロクトンオラミン等。
【0059】
[かゆみ改善剤] グリチルリチン酸ジカリウム等。
【0060】
[角層溶解剤] イオウ、サリチル酸、グリコール酸、レゾルシン等。
【0061】
[皮脂腺機能亢進抑制剤] アロエ、カンゾウ、サンショウ、ローズマリー等植物由来成分、ニコチン酸、ビタミンB6等。
【0062】
[活性酸素消去剤] リン酸アスコルビルマグネシウム、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル等。
【0063】
[抗菌・殺菌剤] 塩化ベンゼルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール等。
【0064】
[紫外線による活性酸素生成の抑制剤] ビタミンCとビタミンEの併用、チオタウリン、グルタチオン、温泉中のセレン等。
【0065】
[紫外線によるしわ抑制剤] 前述の抗酸化剤、α-ヒドロキシ酸、ビタミンC誘導体、植物エキス、グリシン亜鉛等。
【0066】
[脂肪分解促進剤] タイソウエキス、カフェイン、アミノフィリン、ローズマリー、グレープフルーツ等の精油、スファセラリアスコパリアのエキス等。
【0067】
[ファーミング剤] イチョウエキス、アルニカエキス、赤ブドウエキス、茶葉エキス、柑橘類の果実および葉のエキス、セイヨウキズタエキス、シモツケソウエキス、ラベンダーエキス等。
【0068】
[刺激緩和剤] セラミド、セラミド類似成分、セラミド合成促進物質(N-アセチルシステイン、ニコチン酸誘導体、酵母エキス)等。
【0069】
[抗炎症剤] ε-アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、グリチルレチン酸およびその誘導体、甘草エキス、カミツレエキス、シコンエキス、シソエキス、ソウハクヒエキス、トウキエキス、モモ葉エキス、ポリフェノール含有植物エキス等。
【0070】
水親和性の機能成分の水への親和性の程度は、特に限定されないが、20℃において水50mlとオレイン酸50mlの2相に分かれた溶液に対象となる有効成分を1g添加した際に、90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上が、水中に存在する程度であることが、機能性成分の効力を十分に発揮する上で好ましい。
【0071】
更に、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体への水親和性の機能性成分の融液の担持量の範囲は、通常10~90質量%、好ましくは20~90質量%、更に好ましくは50~90質量%である。当該担持量は多い程水親和性の機能性成分の放出量を確保できるため好ましいが、当該担持量がこの範囲を超えて多い場合には、複合粉体が粉体の性状を保てなくなる可能性がある。
【0072】
上記粉体の性状を表す指標としては、ホソカワミクロン製のパウダテスタ(PT-X)で篩の目開き(上段より150,75,45μm)、振幅(1mm)、振動時間(60s)にて測定した際の凝集度で表すことができる。この凝集度が、通常90%以下であり、50%以下であることが好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
【0073】
以下、本発明の複合粉体の使用態様を、代表的な使用態様である粉体化粧料を例に挙げて具体的に説明する。
【0074】
本発明の複合粉体は、粉体化粧料の1成分として配合して使用する場合、その配合量は、粉体化粧料の種類に応じて適宜決定すればよいが、粉体化粧料中に5~50質量%、好ましくは、10~30質量%の割合で存在させることが好ましい。
【0075】
また、本発明の複合粉体を配合する粉体化粧料の組成は、公知の組成が特に制限無く採用される。例えばフェイスパウダーの場合、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム等の体質顔料、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、群青、紺青等の有色顔料、雲母チタン、着色雲母チタン等のパール顔料、ポリエチレンフタレート、ポリエチレン、ナイロン等の高分子等を適宜選択して配合された組成が一般的であり、更に、シリカやポリメタクリル酸メチルなどの増粘剤、安定剤等、ジメチコンなどの処理剤等、さらにコラーゲンやヒアルロン酸等の保湿剤、ハイドロキノンやトラネキサム酸等の美白剤等の添加剤が使用されることもある。
【0076】
上記粉体化粧料への複合粉体の配合は、前記成分の粉体同士を乾式混合することにより行うことができる。尚、保湿剤などの液状成分を使用する場合は、予め疎水性粉体と混合し、機能成分を含侵させた状態として上記乾式混合することが好ましい。
【0077】
前記粉体化粧料が保湿剤などの水親和性の機能性成分をフリーで含有する場合、本発明の複合粉体に担持される水親和性の機能性成分はそれと同じ成分であってもよいが、各成分が粉体状で存在するため、複合粉体に担持した機能成分とフェイスパウダーにフリーで配合された上記水親和性の機能性成分が接触する可能性は低いことから、異なる成分とすることも可能である。
【0078】
本発明の複合粉体を配合したフェイスパウダーは、球状である複合粉体のローリング効果により滑らかな塗り心地が得られ、塗布から長時間経過後も、皮脂を吸収する機能により塗布部位のテカリを抑えつつ、皮脂の吸収と同時に放出される水親和性の機能成分、例えば保湿成分の水溶液により、持続的にスキンケア効果が得られる。
【0079】
[複合粉体の製造方法]
本発明の複合粉体の製造方法は特に制限されないが、以下の方法により疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を製造し、その後、或いは、その製造過程において水親和性の機能性成分の融液を、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔に担持する方法が挙げられる。
【0080】
<球状疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の製造方法>
本発明に使用する疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の製造方法は特に制限されないが、例えば、前記球状の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体は、以下に述べる方法により好ましく製造することができる。
【0081】
即ち、水性の金属酸化物ゾルをW相(水相)とするO/W/O型エマルションもしくはW/O型エマルションを形成させ、その後、該エマルション中で該金属酸化物ゾルをゲル化させ、シリル化処理に代表される疎水化処理を施した後に、疎水性有機溶媒中にゲルを抽出することにより製造することができる。
【0082】
上記水性の金属酸化物ゾルは、水性の金属酸化物ゾルの公知の調整方法を適宜選択して実施すればよい(以下、水性の金属酸化物ゾルを単に「金属酸化物ゾル」という)。該金属酸化物ゾル作成の原料としては、金属アルコキシド;ケイ酸アルカリ金属塩等の金属オキソ酸アルカリ金属塩;無機酸又は有機酸の水溶性塩等の各種水溶性金属塩;等を使用することができる。
【0083】
上記の金属酸化物ゾル作成の原料のなかでも、安価な点でケイ酸アルカリ金属塩を好適に用いることができ、更には入手が容易であるケイ酸ナトリウムが好適である。以下、金属酸化物ゾル作成の原料としてケイ酸ナトリウムを用い、金属酸化物としてシリカを製造する形態を代表例として説明するが、他の金属源を用いた場合でも、公知の方法で水性ゾルの作成及びゲル化を行うことにより、同様にして本発明の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を得ることができる。
【0084】
ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩を用いる場合には、塩酸、硫酸等の鉱酸で中和する方法や、あるいは対イオンが水素イオン(H+)とされている陽イオン交換樹脂(以下、「酸型陽イオン交換樹脂」ということがある。)を用いる方法によって、ケイ酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属原子を水素原子で置換することで、シリカゾルを調製することができる。
【0085】
上記の方法により作成したシリカゾルの濃度としては、シリカ分の濃度(SiO2換算濃度)として50g/L以上とすることが好ましい。その一方で、シリカ粒子の密度を相対的に小さくして、良好な細孔容積を得、また吸油量を多くでき易い点で、160g/L以下とすることが好ましく、100g/L以下とすることがより好ましい。
【0086】
先ず、上記方法で得られた水性金属酸化物ゾル(ここではシリカゾル)をW相(水相)、水と混和しない液体をO相(有機相)とする、W/O型エマルション、若しくはO/W/O型エマルション(以下、両者を合わせて単にエマルションと呼ぶ場合もある。)を形成する。該エマルションの形成方法としては、公知の方法を適宜選択して実施することができる。そして、分散しているW相の粒径が概ね、金属酸化物粒子の粒径になるため、所望のメジアン径になるように、分散強度、分散時間、界面活性剤の添加量を調整すればよい。
【0087】
上記O/Wエマルションの形成に引き続き、該O/W型エマルションのW相と混和しない溶媒(第2のO相)を用いてO/W/O型のエマルションを形成することもできる。この場合にも、該溶媒に加えてさらに界面活性剤を添加することが好ましい。
【0088】
上記のO/W/O型エマルションを形成する際に、水と混和しない液体中にゾルを分散させる方法としては、前述のO/W型エマルションの形成方法を採用すればよい。分散している金属酸化物ゾル(W相)の粒径が概ね、製造される本発明の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を構成する粒子の粒径となる。従って、所望のメジアン粒径になるように、分散強度、分散時間及び界面活性剤の添加量を調整すればよい。すなわち、該ゾルの粒径をレーザー回折式測定による粒度分布におけるメジアン径が1~50μmの範囲にすることが好ましく、1~30μmの範囲にすることがより好ましい。前述のとおり、当該W相の粒径を顕微鏡で観察した場合には1~50μm、特に1~30μmが好ましい。
【0089】
前述の操作によってエマルションを形成させた後、金属酸化物ゾルのゲル化を行う。当該ゲル化は、エマルションの状態が崩れない限り公知のゲル化の方法を特に制限なく採用できる。
【0090】
第1の好ましい方法としては、金属酸化物ゾル形成時にゲル化までの時間がある程度長くなるようにpH調整を行っておく方法を例示できる。すなわち、前述の金属酸化物ゾルの形成時にエマルション形成中はゲル化せず、その後30分程度一定温度で保持することでゲル化が起こる程度のpHに調整しておく方法である。具体的には、各操作を室温において行う場合、シリカ濃度が上記範囲内であれば、pHを2~5の範囲内にしておくことが好ましく、2.5~4.5の範囲内としておくことがより好ましい。
【0091】
また、第2の好ましい方法としては、エマルションに対して塩基性物質を加えることによって、W相のpHを上昇させて弱酸性ないし塩基性にする方法を例示できる。この場合、金属酸化物ゾルを調製する際に該ゾルが比較的安定である低いpH(0.5~2.5程度)に調製しておくことが好ましい。W相のpHを上昇させる具体的な方法としては、W相が目的のpHになる塩基の量を予め決定しておき、その量の塩基をエマルションに加えることにより行うことが好ましい。目的のpHとなる塩基の量の決定は、エマルションに用いる金属酸化物ゾルを一定量分取し、該分取した金属酸化物ゾルのpHをpHメーターにより測定しながら、ゲル化に用いる塩基を該分取した金属酸化物ゾルに加え、目的のpHが達成される塩基の量を測定することにより、行うことができる。
【0092】
尚、塩基性物質としては、例えばアンモニア、苛性ソーダ、アルカリ金属ケイ酸塩等が挙げられる。
【0093】
上記のゲル化にかかる時間は、温度やシリカゾルの濃度にもよるが、pH5、温度50℃、シリカゾル中のシリカ濃度(SiO2換算)が80g/Lの場合には、数分後にはゲル化が起こる。
【0094】
上記方法に次いで、前記分散溶媒をO相とW相の2層に分離する操作を行う。この操作は、一般的には解乳とも呼ばれている操作であり、上記方法により得られるゲル化体は、分離して得られたW相側に存在している。
【0095】
当該W相分離方法としては、公知の方法を採用することが可能であるが、具体的には、水溶性有機溶媒の添加、塩の添加、遠心力の付与、酸の添加、濾過、容積比の変化(水又は疎水性溶媒の添加)等から選ばれる一つ、あるいは複数を組み合わせて実施することができる。好適には、一定量の水溶性有機溶媒をエマルション中に加えてO相とW相の2層に分離することができる。この工程を経ると、一般に、上層がO相(有機層)、下層がW相(水層)となる。
【0096】
上記の水溶性有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。このうち、イソプロピルアルコールは、後述のシリル化処理の際にも、処理の効率を高める上で効果があるため、好適に用いることができる。
本発明の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を構成する粒子を高強度にするという観点から、解乳後に0.5~24時間程度、熟成(エージング(aging))を行うことによってゲル化反応(脱水縮合反応)をさらに進行させることも好ましい。当該熟成は室温~80℃程度で保持することによって行うことができる。
【0097】
引き続き行われるゲル化体のシリル化処理の処理効率を向上させるため、上記操作で得られたO相とW相の2層分離液から、例えば、デカンテーション等によりO相を除去し、W相を回収することができる。
【0098】
本発明において、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を得るため、上記W相を分離後、シリル化剤を用いてゲル化体をシリル化処理する。使用されるシリル化剤としては金属酸化物(ここではシリカである。)表面に存在するヒドロキシ基と反応して該表面に疎水基を付与する公知のシリルカ剤が特に制限無く使用される。
【0099】
上記のシリル化剤を具体的に示せば、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン等のクロロシラン類、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等のシラザン類、ヘキサメチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のシロキサン類、シロキサンオクタメチルシクロテトラシラザン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサンなどが挙げられる。そのうち、反応性が良好である点で、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサンが特に好ましい。
【0100】
このようなシリル化剤を用いてシリル化処理を行うことにより、金属酸化物表面のヒドロキシ基が疎水性のシリル基でエンドキャッピングされて不活性化されるので、表面ヒドロキシ基相互間での脱水縮合反応を抑制できる。よって、臨界点未満の条件で乾燥を行っても乾燥収縮を抑制できるので、0.5L/g以上、特に2mL/g以上の細孔容積を有する疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を得ることが可能になる。
【0101】
上記のシリル化処理の際に使用する処理剤の量としては、処理剤の種類にもよるが、例えば金属酸化物がシリカであり、ジメチルジクロロシランを処理剤として用いる場合には、金属酸化物(シリカ)100重量部に対して30~150重量部が好適である。
【0102】
上記のシリル化処理の条件は、上記解乳操作で分離したW相に対して、シリル化処理剤を加え、一定時間反応させることにより行うことができる。例えば金属酸化物がシリカであり、シリル化処理剤としてジメチルジクロロシランを用い、処理温度を50℃とした場合には、4~12時間程度以上保持することで行うことでき、また、ヘキサメチルジシロキサンを用い、処理温度を70℃とした場合には6~12時間程度以上保持することで行うことができる。
【0103】
また、シリル化処理剤としてオクタメチルシロクテトラシロキサン等の環状シロキサン類やヘキサメチルジシロキサン等のシロキサンを用いる場合には、塩酸を添加することで溶液のpHを0.3~1.0とすることが、反応の効率を高める上で好ましい。
【0104】
当該シリル化処理工程においては、W相中への処理剤の溶解度を高めて、反応の効率を高める目的で、水溶性有機溶媒を加えることが好ましい。この水溶性有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。このうち、イソプロピルアルコールを好適に用いることができる。
【0105】
上記水溶性有機溶媒は、W相中の濃度が、20~80質量%程度になるように加えることが好ましい。
【0106】
上記シリル化処理の後にゲル化体を疎水性有機溶媒中に抽出する。ゲル化体抽出に用いる疎水性有機溶媒の選定基準としては、後の乾燥工程の際、乾燥収縮を起こさないために表面張力が小さいことが挙げられる。具体的にはヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン等を用いることができ、好適にはヘキサン、ヘプタン、トルエンを用いることが出来る。
【0107】
上記の疎水性有機溶媒への抽出を行った後に、ゲル化体に含まれる塩分や、疎水性有機溶媒中に含まれる硫酸塩等を除去するために、当該有機溶媒を水或いはアルコールの水溶液で洗浄を行うことが好ましい。この洗浄操作は、公知の方法で行うことができる。洗浄効率を上げる上では、数十質量%程度のイソプロピルアルコールの水溶液を用いることが好ましい。また、疎水性有機溶媒の沸点を超えない範囲で、高温にすることが洗浄効率を高める上では好ましい。通常は、50~70℃の範囲で行うことができる。
【0108】
上記ゲル化体抽出を行った後、疎水性有機溶媒に分散しているゲルを濾別等により溶媒と分離し、疎水性有機溶媒を除去(すなわち乾燥)する。乾燥する際の温度は、溶媒の沸点以上で、表面処理剤の分解温度以下であることが好ましく、圧力は常圧ないし減圧下で行うことが好ましい。
【0109】
以上の方法を行うことにより、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を得ることができる。
【0110】
上記疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の製造方法は、例えば、特開2014-218433号公報に詳細に記載されており、かかる方法に準じて目的とする疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を製造すればよい。
【0111】
本発明において、前記方法によって得られる疎水化金属酸化物エアロゲル粉体に水親和性の機能性成分を担持させる方法は特に制限されない。代表的な方法を例示すれば、次の方法が挙げられる。
【0112】
一つの態様としては、前記乾燥処理により得られた疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を、水親和性の機能性成分を含むアルコールなどの極性有機溶媒に分散させることにより、極性有機溶媒と共に水親和性の機能性成分を疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔内に浸透させた後、濾別、乾燥により極性溶媒を除去する方法が挙げられる。上記方法により、細孔内に水親和性の機能性成分の融液が担持された複合粉体が得られる。
【0113】
他の態様としては、前記製造方法におけるシリル化処理後、乾燥することなく、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を水親和性の機能性成分を溶解し得る有機溶媒に分散させ、これに水親和性の機能性成分を混合溶解して、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の細孔に上記水親和性の機能性成分を含有する有機溶媒を浸透させた後、濾別し、乾燥する方法が挙げられる。この方法によっても、水親和性の機能性成分の融液が細孔内に担持された疎水化金属酸化物エアロゲル粉体よりなる複合粉体を得ることができる。
【0114】
上記方法によれば、一連の製造工程において、乾燥時に水が存在しないことにより、得られる乾燥粉体の固着が効果的に防止され、高い流動性を有する粉体となる。
【0115】
また、乾燥時に水が存在しないことにより、水が存在する系では加水分解されやすく不安定である成分、例えばビタミンAやビタミンCなどを安定に配合することが容易になる。
【0116】
本発明の複合粉体は、融液が吸湿性の場合に多少の吸湿が起きることに備えて、透湿性の低い容器に充填することが好ましい。ただし、吸湿した場合においても粉体としての流動性が損なわれることは無い。
【0117】
尚、上記態様における疎水性金属酸化物エアロゲル粉体の物性は、得られた複合粉体をヘプタン中に分散させることで、細孔内の担持物をヘプタン中に抽出し、その後、ヘプタンを除去して乾燥することで、疎水性金属酸化物エアロゲル粉体とし、上記粉体について比表面積、細孔容積等の測定を行うことで確認することができる。
【実施例0118】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。実施例及び比較例において、洗浄水の電気伝導度の測定は、電気伝導度計により行った。また、実施例及び比較例において得られた複合粉体のグリセリン濃度は、エタノールに抽出後、ガスクロマトグラフィーにより測定した。複合粉体の水分量はカールフィッシャールフィッシャー法により測定した。
【0119】
<評価方法>
実施例及び比較例で製造した疎水化金属酸化物エアロゲル粉体及び複合粉体に対して、以下の項目について試験を行った。
【0120】
(平均円形度の測定)
2000個以上の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体粒子についてSEM(日立ハイテクノロジーズ製S-5500、加速電圧3.0kV、二次電子検出)を用いて倍率1000倍で観察したSEM像を画像解析し、上述の定義に従って平均円形度を算出した。
【0121】
(レーザー回折による粒度分布、メジアン径の測定)
40mlのエタノールに対して当該疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を0.3g添加し、シャープマニュファクチュアリング株式会社製の超音波洗浄機UT-105Sを用いて、出力100wで5分間分散させた。尚、上記分散は、外径35mmΦ、容量50mlのラボランスクリュー管瓶を使用し、適正量の水を入れた洗浄槽内に設置して行った。
【0122】
その分散液の粒度分布を日揮装置株式会社社製 Microtrac MT3000を用いて測定を行った。溶媒の屈折率は1.38とし、粒子の屈折率は1.46とした。得られた粒度分布から、体積分布に対するメジアン径を評価した。
【0123】
(その他の物性値の測定)
BET比表面積、及びBJH細孔容積の測定は、上述の定義に従って日本ベル株式会社製BELSORP-maxにより行った。吸油量の測定は、JIS K5101-13-1に規定されている「精製あまに油法」により行った。
【0124】
(複合粉体の皮脂との接触試験)
複合粉体の機能を確認するために、実施例、比較例において得られた複合粉体を用いて、以下の試験を行った。複合粉体1gにエタノール10g添加し、撹拌子を用いて1000rpmで30分間混合し、複合粉体に坦持したグリセリンをエタノールに抽出した。0.45μmのフィルターで濾別し、エタノール中のグリセリン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定することで複合粉体のグリセリン濃度を算出し、この値を接触試験の初期値とした。次に、複合粉体1gにオレイン酸6gを添加し十分に混合した。さらに精製水6gを加えて、複合粉体から放出されたグリセリンを精製水に抽出した。水層を0.45μmのフィルターで濾別後、水層中のグリセリン濃度をガスクロマトグラフィーにより測定し、初期値との比により放出率rを算出した。
【0125】
また、トラネキサム酸を担持した複合粉体については、複合粉体1gにエタノール10g添加し、撹拌子を用いて1000rpmで30分間混合し、複合粉体に坦持したグリセリンをエタノールに抽出した。0.45μmのフィルターで濾別し、エタノール中のトラネキサム酸濃度をHPLCにより測定することで、複合粉体のHPLC濃度を算出し、この値を接触試験の初期値とした。次に、複合粉体1gに、オレイン酸6gを添加し十分に混合後、精製水6gを加えて、複合粉体から放出された水親和性の機能成分を精製水に抽出した。水層中のトラネキサム酸はHPLCにて測定し、初期値との比により放出率rを算出した。
【0126】
(複合粉体の官能評価)
実施例、比較例において得られた複合粉体を75メッシュのふるいを通した後、容器に担持した。次に、試験者10名により、得られた複合粉体を実際に顔に塗布してもらい、塗布時の「滑らかさ」、「ソフトフォーカス効果」、「ひんやり感」、塗布後の「テカリの無さ」「しっとり感」について評価した。
【0127】
<実施例1>
以下の方法により、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を製造した。
【0128】
SiO2:191g/L、Na2O:62g/Lの濃度のケイ酸ソーダの溶液を調整した。また、88g/Lに濃度調整した硫酸を準備した。pH3になるように、上記調製したケイ酸ソーダに硫酸を加えて、SiO2:80g/Lのシリカゾルを調製した。このシリカゾル108gを分取し、160mlのヘプタンを加え、ソルビタンモノオレエートを1.2g添加し、ホモジナイザー(IKA製、T25DS1)を用いて、9000回転/分の条件で2.5分間攪拌することで、O/Wエマルションを形成させた。
【0129】
70℃の恒温槽内で撹拌羽を使用して1時間撹拌し、水性シリカゾルをゲル化させた。
イソプロピルアルコールを40g、イオン交換水を60g加えて攪拌羽で攪拌し、同時に2%水酸化ナトリウムを2.5g加えて、2.5時間W相を熟成させた。その後、静置することによりO相を上層、W相を下層とする2層に分離した。
【0130】
デカンテーションにより、上層のO相を除去することで、下層のW相を回収した。
【0131】
得られたW相に、イソプロピルアルコール30g,イオン交換水45g、ヘキサメチルジシロキサンを6g、35%塩酸を25g添加し、攪拌しながら70℃のウォーターバスで12時間以上保持することにより、シリル化処理を行った。
【0132】
上記処理後、48%水酸化ナトリウムを18.5g、イオン交換水18.5g加え、攪拌羽で攪拌しながら30分間中和処理を行った。
【0133】
シリル化処理後、撹拌羽で撹拌しながら ヘプタン100mLを加え、ゲル化体を抽出し、イオン交換水100mLで3回洗浄を行った。得られたシリル化後のゲル化体を吸引濾過機により濾別した。ゲル化体の乾燥を常圧下、窒素を流通させながら行うことにより、本発明の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体を得た。乾燥の温度及び時間は150℃で12時間とした。得られたエアロゲル粉体10gにイソプロピルアルコール100g加えて、疎水化金属エアロゲル粉体を分散させた。さらにグリセリン10gを加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて温度70℃、真空度100hpa以下としてイソプロピルアルコールおよび水を除去し、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体が47量%、グリセリン52質量%、水1質量%の複合粉体を得た。この複合粉体は、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体と同等の流動性を維持した。
【0134】
また、その複合粉体をヘプタンに抽出後、ヘプタンを乾燥させることで得られた疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の物性を及び複合粉体の物性を表1に示す。
【0135】
得られた複合粉体の皮脂との接触試験を実施した結果、放出率r=100%となり、皮脂との接触により、細孔への皮脂の確実な吸収と共に、細孔内に担持された水親和性の機能性成分の放出を確実に行うことができた。
【0136】
また、上記複合粉体を顔面に塗布した結果、滑らかな感触で、ソフトフォーカス効果が高く、塗布後にテカリが生じないのに、しっとり感が得られ、使用感は良好であることが認められた。
【0137】
<実施例2>
実施例1のシリル化処理におけるシリル化剤の使用量を4gとしてシリル化処理後、48%水酸化ナトリウムを18.5g、イオン交換水18.5g加え、攪拌羽で攪拌しながら30分間中和処理を行った。その後、硫酸塩等を除去するためにイオン交換水100mLで3回洗浄後し、濾別した。得られた湿潤ケーク50gに、IPA400g、グリセリン2.5gを加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて温度70℃、真空度100hpa以下としてIPAおよび水を除去し、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体が19質量%、グリセリン80質量%、水1質量%の複合粉体を得た。
また、その複合粉体をヘプタンに抽出後、ヘプタンを乾燥させることで得られた疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の物性を及び複合粉体の物性を表1に示す。
【0138】
得られた複合粉体の皮脂との接触試験を実施した結果、放出率r=94%となり、皮脂との接触により、細孔への皮脂の確実な吸収と共に、細孔内に担持された水親和性の機能性成分の放出を確実に行うことができた。
【0139】
また、上記複合粉体を顔面に塗布した結果、ソフトフォーカス効果が高く、テカらないのに肌上がしっとりし、使用感は良好であった。
【0140】
<実施例3>
実施例1の方法で得られたM値が47の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体10gにイソプロピルアルコール100g、グリセリン2gを加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて温度70℃、真空度50hpa以下としてIPAおよび水を除去し、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体が83質量%、グリセリン16質量%、水1質量%の複合粉体を得た。
【0141】
得られた複合粉体の皮脂との接触試験を実施した結果、放出率r=98%となり、皮脂との接触により、細孔への皮脂の確実な吸収と共に、細孔内に担持された水親和性の機能性成分の放出を確実に行うことができた。
【0142】
また、上記複合粉体を顔面に塗布した結果、滑らかな感触で、ソフトフォーカス効果が高く、テカらないのに肌上がしっとりし、使用感は良好であった。
【0143】
<実施例4>
実施例1の方法で得られたM値が47の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体5gにイソプロピルアルコール50g、グリセリン5g、表3記載の処方により調製したパウダーファンデーション40gを加えた。その後、ロータリーエバポレーターを用いて温度70℃、真空度50hpa以下としてIPAを除去し、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体が10質量%、グリセリン78質量%、その他の粉体11質量%、水1質量%のパウダーファンデーションを得た。
【0144】
得られた複合粉体の皮脂との接触試験を実施した結果、放出率r=99%となり、皮脂との接触により、細孔への皮脂の確実な吸収と共に、細孔内に担持された水親和性の機能性成分の放出を確実に行うことができた。
【0145】
また、上記複合粉体を使用して調製したパウダーファンデーションを顔面に塗布した結果、肌上へのフィット感がありこすれにも強く、ソフトフォーカス効果が高かった。また、テカらないのに肌上がしっとりし、使用感は良好であった。
【0146】
<実施例5>
実施例1の方法で得られたM値が47の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体5gに、イソプロピルアルコール50gを加えた後、予めトラネキサム酸(trans-4-アミノメチル-1-シクロヘキサンカルボン酸)が20質量%となるようにグリセリンを用いて調製しておいた融液40gを加え、ロータリーエバポレーターを用いて、温度70℃、真空度70hpa以下としてIPAを除去し、疎水化金属酸化物エアロゲル粉体が50質量%、グリセリン41質量%、トラネキサム酸9質量%となる複合粉体を得た。
【0147】
得られた複合粉体の皮脂との接触試験を実施した結果、放出率r=96%となり、皮脂との接触により、細孔への皮脂の確実な吸収と共に、細孔内に担持された水親和性の機能性成分の放出を確実に行うことができた。
【0148】
また、上記複合粉体を顔面に塗布した結果、ひんやりとして肌上へのフィット感がありこすれにも強く、ソフトフォーカス効果が高かった。また、テカらないのに肌上がしっとりし、使用感は良好であった。
【0149】
<比較例1>
M値が62の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の物性及び複合粉体の物性を表2に示す。この疎水化金属酸化物エアロゲル粉体は細孔内に水親和性の機能性成分の融液を担持することができなかった。
【0150】
<比較例2>
M値が15の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の物性及びこれを使用して、実施例1と同様の方法により得られた複合粉体の物性を表2に示す。得られた複合粉体の皮脂との接触試験を実施した結果、放出率r=5%となり、水親和性の機能性成分の放出は極めて少なかった。
【0151】
また、得られたM値が15の複合粉体を顔面に塗布した結果、べたっとした重い感触でテカリも抑制されなかった。また、塗布後のしっとり感が無く、皮脂の吸収に伴って水親和性の機能性成分が放出される効果が得られなかった。
【0152】
<比較例3>
M値が0の疎水化金属酸化物エアロゲル粉体の物性及びこれを使用して、実施例1と同様の方法により得られた複合粉体の物性を表2に示す。得られた複合粉体の皮脂との接触試験を実施した結果、放出率r=0%となり、皮脂との接触による水親和性の機能性成分は放出されなかった。
【0153】
また、上記複合粉体を使用したルースパウダーを顔面に塗布した結果、べたついてテカリも抑制されなかった。また、塗布後のしっとり感が無く、皮脂の吸収に伴って水親和性の機能性成分が放出される効果が得られなかった。
【0154】
【0155】
【0156】