(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191351
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体及びその製造方法、並びに二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体を用いるハロゲン化アリルのヒドロシリル化
(51)【国際特許分類】
C07F 7/12 20060101AFI20221220BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20221220BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
C07F7/12 J
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161938
(22)【出願日】2022-10-06
(62)【分割の表示】P 2019009700の分割
【原出願日】2019-01-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪股 航也
(72)【発明者】
【氏名】永縄 友規
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕美子
(57)【要約】
【課題】3-ハロプロピルシランを効率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】ロジウム前駆錯体と二座ホスフィン配位子を溶媒の存在下で反応させて得られる反応液からロジウム錯体を取得する工程、及び前記工程で取得したロジウム錯体の存在下、ハロゲン化アリルとヒドロシランを反応させて3-ハロプロピルシランを生成する反応工程を含む、ハロプロピルシランの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジウム前駆錯体(A)と式(P-1)で表される二座ホスフィン配位子を溶媒の存在下で反応させて得られる反応液から式(C-1)で表されるロジウム錯体を取得する工程、及び
前記工程で取得した式(C-1)で表されるロジウム錯体の存在下、式(D)で表されるハロゲン化アリルと式(E)で表されるヒドロシランを反応させて式(F)で表される3-ハロプロピルシランを生成する反応工程を含む、ハロプロピルシランの製造方法。
【化1】
(式(P-1)及び式(C-1)中、R
1はそれぞれ独立して炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を、R
2はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6~20の2価の芳香族炭化水素基を、Yは塩化物イオン(Cl
-)、臭化物イオン(Br
-)、及びヨウ化物イオン(I
-)からなる群より選択される配位子若しくは対イオンを表す。)
【化2】
(式(D)~(F)中、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を、R
6は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
7は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
8は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
9は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。R
10はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子素数1~20のアルコキシ基、炭素原子素数0~30のシリルオキシ基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体及びその製造方法、並びに二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体を用いるハロゲン化アリルのヒドロシリル化に関する。
【背景技術】
【0002】
トリクロロ(3-クロロプロピル)シランは、各種シランカップリング剤へと容易に変換できることから、有機ケイ素化学工業における重要な中間原料である。そのため、その最も直截的な合成法である、トリクロロシランによる塩化アリルのヒドロシリル化反応の開発が活発に行われ、これまでに様々な触媒が報告されている(非特許文献1~3参照。)。しかしながら、塩化アリルのヒドロシリル化反応では、単純なオレフィンのヒドロシリル化反応において一般的な副反応である内部オレフィンへの異性化や水素化、脱水素シリル化だけでなく、塩化アリルと触媒が反応してπ-アリル錯体を形成し、これが各種副反応を引き起こすことが知られている。そのため、目的とするヒドロシリル化体の収率が低下し、さらには副生成物除去工程を組み込む必要が生じるなど、解決すべき課題が残されていた。特に、オレフィンのヒドロシリル化反応の触媒として広く用いられている白金系の触媒を用いると、この副反応が顕著に起こることが知られている。
また、各種ロジウム錯体もオレフィンのヒドロシリル化触媒として有効であることが知られており(特許文献1、非特許文献4~7参照)、(R3P)3RhClで表されるWilkinson錯体及びその類縁体を触媒に用いる反応系ではリン原子上の置換基Rが触媒の安定性および活性に大きな影響を及ぼすことや(非特許文献7参照)、二座ホスフィン配位子を有するロジウム-ヒドリド錯体が触媒活性を有することが報告されている(非特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】P.Gigler,et al.,J.Catal.,2012,295,1.
【非特許文献2】K.Riener,et al.,J.Catal.,2015,331,203.
【非特許文献3】D.Troegel,et al.,Coord.Chem.Rev.,255,2011,1440.
【非特許文献4】F.de Charentenay,et al.,J.Chem.Soc.A.,1968,787.
【非特許文献5】R.N.Haszeldine,et al.,J.Chem.Soc.A.,1969,683.
【非特許文献6】A.Onopchenko,et al.,J.Org.Chem.,1983,5101.
【非特許文献7】R.N.Haszeldine,et al.,J.Chem.Soc.Dalton Trans.,1974,2311.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、3-ハロプロピルシランの製造における触媒として使用可能な錯体およびその製造方法を提供し、3-ハロプロピルシランを効率良く製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、新規な二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体を見出し、本発明を完成させた。
本発明の実施形態には以下が含まれる。
[1] 式(C-1)~(C-3)の何れかで表されるロジウム錯体。
【化1】
(式(C-1)~(C-3)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
2は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
3は単結合、オキサ基(-O-)、又は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
4及びR
5はそれぞれ独立して酸素原子及びハロゲン原子からなる群よ
り選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Yは塩化物イオン(Cl
-)、臭化物イオン(Br
-)、ヨウ化物イオン(I
-)、メトキシド(MeO
-)、ヒドロキシド(OH
-)、テトラフルオロボレート(BF
4
-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF
6
-)、テトラキス[ビス(3,5-トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びトリフラート(OTf
-)からなる群より選択される配位子若しくは対イオンを、m及びnはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。但し、式(C-1)中、R
1がフェニル基かつR
2の炭素原子数が2~4の場合、R
2は置換基及び/又は分岐構造を有し、式(C-2)中に2つ以上のR
4が存在する場合、2つ以上のR
4が互いに連結していてもよく、式(C-3)中に2つ以上のR
5が存在する場合、2つ以上のR
5が互いに連結していてもよい。)
[2] ロジウム前駆錯体(A)と二座ホスフィン配位子(B)を溶媒の存在下で反応させて二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体(C)を生成する工程、及び
前記工程で得られる反応液から前記二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体(C)を取得する工程、を含み、
前記二座ホスフィン配位子(B)が式(P-1)~(P-3)の何れかで表される配位子であり、前記二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体(C)がそれぞれ式(C-1)~(C-3)で表される錯体である、二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体の製造方法。
【化2】
【化3】
【化4】
(式(P-1)~(P-3)並びに式(C)及び式(C-1)~(C-3)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
2は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
3は単結合、オキサ基(-O-)、又は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
4及びR
5はそれぞれ独立して酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Yは塩化物イオン(Cl
-)、臭化物イオン(Br
-)、ヨウ化物イオン(I
-)、メトキシド(MeO
-)、ヒドロキシド(OH
-)、テトラフルオロボレート(BF
4
-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF
6
-)、テトラキス[ビス(3,5-トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びトリフラート(OTf
-)からなる群より選択される配位子若しくは対イオンを、m及びnはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。但し、式(C-1)中、R
1がフェニル基かつR
2の炭素原子数が2~4の場合、R
2は置換基及び/又は分岐構造を有し、式(P-2)及び式(C-2)中に2つ以上のR
4が存在する場合、2つ以上のR
4が互いに連結
していてもよく、式(P-3)及び式(C-3)中に2つ以上のR
5が存在する場合、2つ以上のR
5が互いに連結していてもよい。)
[3] 式(C-1’)~(C-3)の何れかで表されるロジウム錯体の存在下、式(D)で表されるハロゲン化アリルと式(E)で表されるヒドロシランを反応させて式(F)で表される3-ハロプロピルシランを生成する反応工程を含む、ハロプロピルシランの製造方法。
【化5】
(式(C-1’)~(C-3)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
2は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
3は単結合、オキサ基(-O-)、又は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
4及びR
5はそれぞれ独立して酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Yは塩化物イオン(Cl
-)、臭化物イオン(Br
-)、ヨウ化物イオン(I
-)、メトキシド(MeO
-)、ヒドロキシド(OH
-)、テトラフルオロボレート(BF
4
-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF
6
-)、テトラキス[ビス(3,5-トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びトリフラート(OTf
-)からなる群より選
択される配位子若しくは対イオンを、m及びnはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。但し、式(C-2)中に2つ以上のR
4が存在する場合、2つ以上のR
4が互いに連結していてもよく、式(C-3)中に2つ以上のR
5が存在する場合、2つ以上のR
5が互いに連結していてもよい。)
【化6】
(式(D)~(F)中、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を、R
6は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
7は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
8は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
9は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。R
10はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子素数1~20のアルコキシ基、炭素原子素数0~30のシリルオキシ基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体が提供される。また、本発明の他の一態様によれば、二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体の製造方法が提供される。さらに、本発明の他の一態様によれば、3-ハロプロピルシランを効率良く製造することができる有機ケイ素化合物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係るロジウム錯体について説明する。
本発明の一実施形態に係るロジウム錯体の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0009】
<ロジウム錯体>
本実施形態に係る発明は、式(C-1)~(C-3)の何れかで表されることを特徴とするロジウム錯体である。
【化7】
式(C-1)~(C-3)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
2は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
3は単結合、オキサ基(-O-)、又は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
4及びR
5はそれぞれ独立して酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Yは塩化物イオン(Cl
-)、臭化物イオン(Br
-)、ヨウ化物イオン(I
-)、メトキシド(MeO
-)、ヒドロキシド(OH
-)、テトラフルオロボレート(BF
4
-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF
6
-)、テトラキス[ビス(3,5-トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びトリフラート(OTf
-)からなる群より選択される配位子若しくは対イオンを、m及びnはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。但し、式(C-1)中、R
1がフェニル基かつR
2の炭素原子数が2~4の場合、R
2は置換基及び/又は分岐構造を有し、式(C-2)中に2つ以上のR
4が存在する場合、2つ以上のR
4が互いに連結していてもよく、式(C-3)中に2つ以上のR
5が存在する場
合、2つ以上のR
5が互いに連結していてもよい。
式中のR
1は、それぞれ独立して「水素原子」、又は「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、「炭化水素基」は、分岐構造、環状構造、及び炭素-炭素不飽和結合(炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合)のそれぞれを有していてもよく、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基等の何れであってもよいものとする。
また、「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、炭化水素基の水素原子がハロゲン原子からなる1価の官能基で置換されていてもよいほか、炭化水素基の炭素骨格内部の炭素原子が酸素原子からなる2価の官能基(連結基)で置換されていてもよいことを意味する。
R
1の炭化水素基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、R
1が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R
1に含まれる官能基や連結基としては、エーテル基(オキサ基、-O-)、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
R
1としては、水素原子、メチル基(-CH
3,-Me)、エチル基(-C
2H
5,-Et)、n-プロピル基(-
nC
3H
7,-
nPr)、i-プロピル基(-
iC
3H
7,-
iPr)、n-ブチル基(-
nC
4H
9,-
nBu)、i-ブチル基(-
iC
4H
9,-
iBu)、t-ブチル基(-
tC
4H
9,-
tBu)、n-ペンチル基(-
nC
5H
11)、n-ヘキシル基(-
nC
6H
13,-
nHex)、シクロペンチル基(-
cC
5H
9,-
cPent)、シクロヘキシル基(-
cC
6H
11,-Cy)、フェニル基(-C
6H
5,-Ph)、p-トリル基(-C
6H
4CH
3,-
pTol)、キシリル基(-C
6H
3(CH
3)
2,-Xylyl)、p-トリフルオロメチルフェニル基(-C
6H
4CF
3)、p-メトキシフェニル基(-C
6H
4OCH
3))、p-ジメチルアミノフェニル基(-C
6H
4N(CH
3)
2)、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基
(-C
6H
3(CF
3)
2)等が挙げられる。
【0010】
式(C-1)中のR2は、「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基」を表しているが、「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」は、R1の場合と同義であり、「2価の炭化水素基」とは、2個の結合部位を有する炭化水素基を意味する。
R2の炭化水素基の炭素原子数は、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、R2が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R2に含まれる官能基や連結基としては、エーテル基(オキサ基、-O-)、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。中でも、フルオロ基(フッ素原子,-F)が好ましい。
R2としては、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-C2H4-)、n-プロピレン基(-C3H6-)、n-ブチレン基(-C4H8-)、n-ペンチレン基(-C5H10-)、n-ヘキシレン基(-C6H12-)、フェニレン基(-C6H4-)等が挙げられる。この中でも、n-プロピレン基、n-ブチレン基、置換基を有していてもよいフェニレン基が好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基が特に好ましい。
「R1がフェニル基かつR2の炭素原子数が2~4の場合、R2は置換基及び/又は分岐構造を有」するとは、R2はエチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基以外であり、例えば、-CH(CH3)-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-などが挙げられる。
【0011】
式(C-2)中のR3は、「単結合」、「オキサ基(-O-)」、又は「酸素原子及び
ハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基」を表しているが、「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「2価の炭化水素基」はR2の場合と同義であり、「単結合」は2つのベンゼン環が直接単結合で結合していることを、「オキサ基(-O-)」は2つのベンゼン環がオキサ基を介して結合していることを意味する。
R3の炭化水素基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、R3が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R3に含まれる官能基や連結基としては、エーテル基(オキサ基、-O-)、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
R3としては、単結合、オキサ基(-O-)、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-C2H4-)、n-プロピレン基(-C3H6-)、n-ブチレン基(-C4H8-)、n-ペンチレン基(-C5H10-)、n-ヘキシレン基(-C6H12-)等が挙げられる。
【0012】
式(C-2)及び式(C-3)中のR
4及びR
5は、それぞれ独立して「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表し、「式(P-2)中に2つ以上のR
4が存在する場合、2つ以上のR
4が互いに連結していてもよく、式(P-3)中に2つ以上のR
5が存在する場合、2つ以上のR
5が互いに連結していてもよい」が、「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」は、R
1の場合と同義である。
R
4やR
5が「互いに連結していてもよい」とは、例えば下記の左側の式のように、同一の環に結合している2つのR
4やR
5が互いに結合してナフタレン構造のような多環を形成していること、また下記の右側の式のように、異なる環に結合している2つのR
4やR
5が互いに結合して、2つの環を連結していることが含まれるものとする。
【化8】
R
4やR
5の炭化水素基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、R
4やR
5が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。なお、R
4やR
5が互いに連結している場合の炭素原子数は、連結しているR
4やR
5の総炭素原子数が1~20になるものとする。
R
4やR
5の炭化水素基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、R
4やR
5が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R
4やR
5に含まれる官能基や連結基としては、エーテル基(オキサ基、-O-)、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
R
4やR
5としては、メチル基(-CH
3,-Me)、エチル基(-C
2H
5,-Et)、n-プロピル基(-
nC
3H
7,-
nPr)、i-プロピル基(-
iC
3H
7,-
i
Pr)、n-ブチル基(-
nC
4H
9,-
nBu)、t-ブチル基(-
tC
4H
9,-
tBu)、n-ペンチル基(-
nC
5H
11)、n-ヘキシル基(-
nC
6H
13,-
nHex)、シクロヘキシル基(-
cC
6H
11,-Cy)、フェニル基(-C
6H
5,-Ph)等が挙げられる。
【0013】
式(C-1)~(C-3)中、Yは塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)、メトキシド(MeO-)、ヒドロキシド(OH-)、テトラフルオロボレート(BF4
-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6
-)、テトラキス[ビス(3,5-トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びトリフラート(OTf-)からなる群より選択される配位子若しくは対イオンを表し、好ましくは塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)、メトキシド(MeO-)、又はヒドロキシド(OH-)であり、特に好ましくは塩化物イオン(Cl-)である。
【0014】
式(C-1)~(C-3)で表されるロジウム錯体の具体例としては、以下が挙げられる。
【化9】
上記の式(C-1)~(C-3)で表されるロジウム錯体は既知の有機合成反応を適宜組み合わせることによって製造可能であるが、次に説明するロジウム錯体の製造方法により好適に製造することが出来る。
【0015】
<ロジウム錯体(C)の製造方法>
本発明の一実施形態に係る式(C)で表されるロジウム錯体の製造方法(以下、「本発明の合成方法」と略す場合がある。)は、ロジウム前駆錯体(A)と二座ホスフィン配位子(B)を溶媒の存在下で反応させて、二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体(C)(以下、「ロジウム錯体」と表記することがある。)を生成する工程、及び前記で得られる反応液から前記二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体(C)を取得する工程を含むことを特徴とする。
ここで、二座ホスフィン配位子(B)が式(P-1)で表される配位子の場合、生成するロジウム錯体(C)は式(C-1)で表される錯体であり、二座ホスフィン配位子(B)が式(P-2)で表される配位子の場合、生成するロジウム錯体(C)は式(C-2)で表される錯体であり、二座ホスフィン配位子(B)が式(P-3)で表される配位子の
場合、生成するロジウム錯体(C)は式(C-3)で表される錯体である。
【化10】
【化11】
【化12】
式(P-1)~(P-3)並びに式(C)及び式(C-1)~(C-3)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
2は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
3は単結合、オキサ基(-O-)、又は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
4及びR
5はそれぞれ独立して酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Yは塩化物イオン(Cl
-)、臭化物イオン(Br
-)、ヨウ化物イオン(I
-)、メトキシド(MeO
-)、ヒドロキシド(OH
-)、テトラフルオロボレート(BF
4
-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF
6
-)、テトラキス[ビス(3,5-トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びトリフラート(OTf
-)からなる群より選択される配位子若しくは対イオンを表し、m及びnはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。但し、式(C-1)中、R
1がフェニル基かつR
2の炭素原子数が2~4の場合、R
2は置換基及び/又は分岐構造を有し、式(P-2)及び式(C-2)中に2つ以上のR
4が存在する場合、2つ以上のR
4が互いに
連結していてもよく、式(P-3)及び式(C-3)中に2つ以上のR
5が存在する場合、2つ以上のR
5が互いに連結していてもよい。
【0016】
<<式(C)で表されるロジウム錯体を生成する工程>>
本発明の一実施形態に係るロジウム錯体の製造方法は、ロジウム前駆錯体(A)と二座ホスフィン配位子(B)を溶媒の存在下で反応させて二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体(C)を生成する工程を含む(以下、「ロジウム錯体生成工程」ともいう。)。
以下、「ロジウム前駆体(A)」、「二座ホスフィン配位子(B)」、「反応工程」の条件等について詳細に説明する。「二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体(C)」は、上記で説明した式(C-1)~(C-3)の何れかで表されるロジウム錯体である。
【0017】
・ロジウム前駆体(A)
ロジウム前駆体(A)は、ロジウム(Rh)を含む前駆体であり、目的とするロジウム錯体に応じて適宜選択すればよく、ロジウム(Rh)の酸化数は、通常+1である。また、Yで表される配位子若しくは対イオンは、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)、メトキシド(MeO-)、テトラフルオロボレート(BF4
-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6
-)、テトラキス[ビス(3,5
-トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びトリフラート(OTf-)からなる群より選択される。
このような前駆体としては、例えば、[Rh(diolefin)Y]2、[Rh(diolefin)2Y]、[Rh(olefin)2Y]2で表されるロジウム錯体が挙げられる。
具体的には[Rh(cod)Cl]2、[Rh(nbd)Cl]2、[Rh(coe)2Cl]2、[Rh(ethylene)2Cl]2、[Rh(cod)OH]2や[Rh(cod)OMe]2が挙げられる。
好ましくは、[Rh(cod)Cl]2、[Rh(coe)2Cl]2、[Rh(cod)OH]2や[Rh(cod)OMe]2が挙げられ、好ましくは、[Rh(cod)Cl]2、[Rh(coe)2Cl]2が挙げられる。
【0018】
・二座ホスフィン配位子(B)
二座ホスフィン配位子(B)は、2つのホスフィノ基によって中心金属に配位する配位子を意味し、目的とするロジウム錯体(C-1)~(C-3)に応じて適宜選択すればよく、式(P-1)~(P-3)で表される化合物である配位子が挙げられる。以下、「式(P-1)~(P-3)の何れかで表される配位子」について説明する。
【化13】
式(P-1)~(P-3)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
2は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化
水素基を、R
3は単結合、オキサ基(-O-)、又は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
4及びR
5はそれぞれ独立して酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、m及びnはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。但し、式(C-1)中、R
1がフェニル基かつR
2の炭素原子数が2~4の場合、R
2は置換基及び/又は分岐構造を有し、式(P-2)中に2つ以上のR
4が存在する場合、2つ以上のR
4が互いに連結していてもよく、式(P-3)中に2つ以上のR
5が存在する場合、2つ以上のR
5が互いに連結していてもよい。
式(P-1)~(P-3)中のR
1は、それぞれ独立して「水素原子」、又は「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、式(C-1)~(C-3)のR
1の説明が適用され、好ましい態様も同様である。
【0019】
式(P-1)中のR2は、「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基」を表しているが、式(C-1)のR2の説明が適用され、好ましい態様も同様である。
【0020】
式(P-2)中のR3は、「単結合」、「オキサ基(-O-)」、又は「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基」を表しているが、式(C-2)のR3の説明が適用され、好ましい態様も同様である。
【0021】
式(P-2)及び式(P-3)中のR4及びR5は、それぞれ独立して「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表し、式(C-2)及び式(C-3)中のR4及びR5の説明が適用され、好ましい態様も同様である。
【0022】
式(P-1)~(P-3)の何れかで表される配位子としては、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンが最適であるが、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン(dppm)や、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(dppbz)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタフルオロベンゼン(dppbz
F)1,2-ビス(ジ(4-メトキシフェニル)ホスフィノ)ベンゼン(MeO-dppbz)、1,2-ビス(ジ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ)ベンゼン(CF
3-dppbz)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP))等が挙げられる。1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン等が挙げられる(下記式参照。)。より好ましくは、dppbz、MeO-dppbz、CF
3-dppbz、dppbz
F、dppe、dppp、dppb、特に好ましくは、dppbz、MeO-dppbz、CF
3-dppbz、dppbz
Fである。但し、目的とするロジウム錯体中のYが塩化物イオンの場合、dppe、dppp、dppbを除く。
【化14】
【0023】
「二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体(C)」生成工程において、「二座ホスフィン配位子(B)」の使用量(仕込量)は、ロジウムを含む前駆体(A)に対して物質量換算で、通常0.5当量以上、好ましくは0.8当量以上、より好ましくは1当量以上であり、通常4当量以下、好ましくは3当量以下、より好ましくは2当量以下である。上記範囲内であると、ロジウム錯体が収率良く生成し易くなる。
【0024】
ロジウム錯体生成工程は、通常、溶媒の存在下で行う。溶媒の種類は、原料や生成する錯体が反応しない化合物であれば特に限定されず、ペンタン、ヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル溶媒、テトラヒドロフラン等の環状エーテル溶媒、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。好ましくは、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼンである。
【0025】
ロジウム錯体生成工程の反応温度は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。
ロジウム錯体生成工程の反応時間は、通常96時間以下、好ましくは72時間以下、より好ましくは48時間以下、特に好ましくは24時間以下である。
ロジウム錯体生成工程は、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
また、ロジウム錯体生成工程は、撹拌しながら行うことが好ましい。
上記範囲内であると、ロジウム錯体がより収率良く生成し易くなる。
【0026】
<<式(C)で表されるロジウム錯体を取得する工程>>
本発明の一実施形態に係るロジウム錯体の製造方法は、ロジウム錯体生成工程で得られる反応液から、式(C)で表されるロジウム錯体を取得する工程を含む。
ロジウム錯体生成工程で得られる反応液から、式(C)で表されるロジウム錯体を取得する、すなわちロジウム錯体を単離する方法は、公知の方法を任意に用いることが出来る。例えば、上記ロジウム錯体生成工程後、析出した固体を濾取し、該固体を少量の溶媒で洗浄した後、乾燥させる。
ロジウム錯体生成工程後、ロジウム錯体を含有する固体を十分に析出させるためには、
反応液を通常0℃~40℃で、好ましくは10℃~30℃で、通常48時間以下、好ましくは24時間以下、特に好ましくは12時間以下、通常1分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、静置すればよい。
溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ペンタン等を用いることが出来るが、上記ロジウム錯体生成工程で用いた溶媒と同じであることが好ましい。溶媒は、脱水脱酸素化して用いることが好ましい。
乾燥条件は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。また、乾燥は減圧下で行うことが好ましい。
乾燥時間は、通常96時間以下、好ましくは72時間以下、より好ましくは48時間以下、特に好ましくは24時間以下であり、通常30分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上である。
本工程は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
本実施形態のロジウム錯体の製造方法により、高純度のロジウム錯体含有組生成物を得ることができる。本実施形態の製造方法により得られるロジウム錯体含有粗生成物が70%以上の純度を有することが好ましく、80%以上の純度を有することが好ましく、85%以上の純度を有することが特に好ましい。
また、上記ロジウム錯体生成工程で得られる反応液から取得されたロジウム錯体粗生成物は、公知の方法で精製してもよい。精製されたロジウム錯体は、90%以上の純度を有することが好ましく、95%以上の純度を有することが特に好ましい。なお、ロジウム錯体の純度は、NMRにより求めることができる。
【0027】
<有機ケイ素化合物の製造方法>
本発明の一態様である有機ケイ素化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、式(C-1’)~(C-3)の何れかで表されるロジウム錯体の存在下、式(D)で表されるハロゲン化アリルと式(E)で表されるヒドロシランを反応させて式(F)で表される3-ハロプロピルシランを生成する反応工程(以下、「反応工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。
【化15】
式(C-1’)~(C-3)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
2は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
3は単結合、オキサ基(-O-)、又は酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を、R
4及びR
5はそれぞれ独立して酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Yは塩化物イオン(Cl
-)、臭化物イオン(Br
-)、ヨウ化物イオン(I
-)、メトキシド(MeO
-)、ヒドロキシド(OH
-)、テトラフルオロボレート(BF
4
-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF
6
-)、テトラキス[ビス(3,5-トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びトリフラート(OTf
-)からなる群より選択される配位子若しくは対イオンを、m及びnはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。但し、式(C-2)中に2つ以上のR
4が存在する場合、2つ以上のR
4が互いに連結していてもよく、式(C-3)中に2つ以上のR
5が存在する場合、2つ以上のR
5が互いに連結していてもよい。
【化16】
式(D)~(F)中、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を、R
6は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
7は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
8は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
9は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。R
10はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子素数1~20のアルコキシ基、炭素原子素数0~30のシリルオキシ基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。
本発明者らは、二座ホスフィン配位子で安定化されたロジウム二核錯体を単離し、ハロゲン化アリルとヒドロシランの反応において、該ロジウム錯体を触媒として利用することで、π-アリル錯体の形成による各種の副反応を抑制しつつ、目的とするヒドロシリル化反応を選択的に進行させ、3-ハロプロピルシランを効率良く製造することができることを見出したのである。また、ロジウム錯体の触媒量を低減することに成功した。
【0028】
本実施形態で用いられる二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体は、式(C-1’)~(C-3)の何れかで表されるロジウム錯体である。式(C-2)及び式(C-3)で表されるロジウム錯体は、上記の<ロジウム錯体>の項で説明した式(C-2)及び式(C-3)で表されるロジウム錯体とそれぞれ同じである。
式(C-1’)のR1は、それぞれ独立して「水素原子」、又は「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、<ロジウム錯体>の項の式(C-1)のR1の説明が適用され、好ましい態様も同様である。
【0029】
式(C-1’)中のR2は、「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の2価の炭化水素基」を表しているが、「酸素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」は、R1の場合と同義であり、「2価の炭化水素基」とは、2個の結合部位を有する炭化水素基を意味する。
R2の炭化水素基の炭素原子数は、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、R2が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R2に含まれる官能基や連結基としては、エーテル基(オキサ基、-O-)、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。中でも、フッ素原子が好ましい。
R2としては、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-C2H4-)、n-プロピレン基(-C3H6-)、n-ブチレン基(-C4H8-)、n-ペンチレン基(-C5H10-)、n-ヘキシレン基(-C6H12-)、フェニレン基(-C6H4-)等が
挙げられる。この中でも、n-プロピレン基、n-ブチレン基、置換基を有していてもよいフェニレン基が好ましく、n-プロピレン基、置換基を有していてもよいフェニレン基が特に好ましい。
【0030】
以下、「式(D)で表されるハロゲン化アリル」、「式(E)で表されるヒドロシラン」、「反応工程」の条件、「式(F)で表される3-ハロプロピルシラン」等について詳細に説明する。
式(D)で表されるハロゲン化アリルの具体的種類は、特に限定されず、製造目的である有機ケイ素化合物に応じて適宜選択することができる。以下、「式(D)で表されるハロゲン化アリル」について詳細に説明する。
【化17】
式(D)中、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を、R
6は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
7は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
8は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
9は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。)
式(D)中のXは、「塩素原子」、「臭素原子」、又は「ヨウ素原子」を表しているが、塩素原子が特に好ましい。
式(D)中のR
6は、それぞれ独立して「水素原子」、又は「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」は、R
1の場合と同義である。
R
6の炭化水素基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、R
6が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R
6に含まれる官能基や連結基としては、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
R
6としては、水素原子、メチル基(-CH
3,-Me)、エチル基(-C
2H
5,-Et)、n-プロピル基(-
nC
3H
7,-
nPr)、i-プロピル基(-
iC
3H
7,-
iPr)、n-ブチル基(-
nC
4H
9,-
nBu)、t-ブチル基(-
tC
4H
9,-
tBu)、n-ペンチル基(-
nC
5H
11)、n-ヘキシル基(-
nC
6H
13,-
nHex)、シクロヘキシル基(-
cC
6H
11,-Cy)、フェニル基(-C
6H
5,-Ph)等が挙げられる。
式(D)中のR
7は、それぞれ独立して「水素原子」、又は「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原
子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」は、R
1の場合と同義である。
R
7の炭化水素基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、R
7が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R
7に含まれる官能基や連結基としては、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
R
7としては、水素原子、メチル基(-CH
3,-Me)、エチル基(-C
2H
5,-Et)、n-プロピル基(-
nC
3H
7,-
nPr)、i-プロピル基(-
iC
3H
7,-
iPr)、n-ブチル基(-
nC
4H
9,-
nBu)、t-ブチル基(-
tC
4H
9,-
tBu)、n-ペンチル基(-
nC
5H
11)、n-ヘキシル基(-
nC
6H
13,-
nHex)、シクロヘキシル基(-
cC
6H
11,-Cy)、フェニル基(-C
6H
5,-Ph)等が挙げられる。
式(D)中のR
8は、それぞれ独立して「水素原子」、又は「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」は、R
1の場合と同義である。
R
8の炭化水素基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、R
8が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R
8に含まれる官能基や連結基としては、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
R
8としては、水素原子、メチル基(-CH
3,-Me)、エチル基(-C
2H
5,-Et)、n-プロピル基(-
nC
3H
7,-
nPr)、i-プロピル基(-
iC
3H
7,-
iPr)、n-ブチル基(-
nC
4H
9,-
nBu)、t-ブチル基(-
tC
4H
9,-
tBu)、n-ペンチル基(-
nC
5H
11)、n-ヘキシル基(-
nC
6H
13,-
nHex)、シクロヘキシル基(-
cC
6H
11,-Cy)、フェニル基(-C
6H
5,-Ph)等が挙げられる。
式(D)中のR
9は、それぞれ独立して「水素原子」、又は「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、「酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」は、R
1の場合と同義である。
R
9の炭化水素基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、R
9が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R
9に含まれる官能基や連結基としては、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
R
9としては、水素原子、メチル基(-CH
3,-Me)、エチル基(-C
2H
5,-Et)、n-プロピル基(-
nC
3H
7,-
nPr)、i-プロピル基(-
iC
3H
7,-
iPr)、n-ブチル基(-
nC
4H
9,-
nBu)、t-ブチル基(-
tC
4H
9,-
tBu)、n-ペンチル基(-
nC
5H
11)、n-ヘキシル基(-
nC
6H
13,-
nHex)、シクロヘキシル基(-
cC
6H
11,-Cy)、フェニル基(-C
6H
5,-Ph)等が挙げられる。
【0031】
式(D)で表されるハロゲン化アリルとしては、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【化18】
【0032】
式(E)で表されるヒドロシランの具体的種類は、特に限定されず、製造目的である有機ケイ素化合物に応じて適宜選択することが出来る。以下、「式(E)で表されるヒドロシラン」について詳細に説明する。
【化19】
式(E)中、R
10はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子素数1~20のアルコキシ基、炭素原子素数0~30のシリルオキシ基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。
(E)中のR
10は、それぞれ独立して「塩素原子」、「臭素原子」、「ヨウ素原子」、「炭素原子素数1~20のアルコキシ基」、「炭素原子素数0~30のシリルオキシ基」、又は「ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、「ハロゲン原子を含んでいてもよい」と「炭化水素基」は、R
1の場合と同義である。
R
10の炭化水素基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、R
10が芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R
10に含まれる官能基や連結基としては、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
R
10としては、水素原子、メチル基(-CH
3,-Me)、エチル基(-C
2H
5,-Et)、n-プロピル基(-
nC
3H
7,-
nPr)、i-プロピル基(-
iC
3H
7,-
iPr)、n-ブチル基(-
nC
4H
9,-
nBu)、t-ブチル基(-
tC
4H
9,-
tBu)、n-ペンチル基(-
nC
5H
11)、n-ヘキシル基(-
nC
6H
13,-
nHex)、シクロヘキシル基(-
cC
6H
11,-Cy)、フェニル基(-C
6H
5,-Ph)、メトキシ基(-OMe)、エトキシ基(-OEt)、トリメチルシリルオキシ基(-OSi(CH
3)
3)等が挙げられる。
【0033】
式(E)で表されるヒドロシランとしては、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【化20】
【0034】
反応工程における(C-1’)~(C-3)の何れかで表される「二座ホスフィン配位子を有するロジウム錯体」の使用量(仕込量)は、「式(D)で表されるハロゲン化アリル」に対して物質量換算で、通常0.00005当量以上、好ましくは0.0005当量以上であり、通常0.1当量以下、好ましくは0.05当量以下、より好ましくは0.01当量以下である。前記範囲内であると、有機ケイ素化合物が収率良く生成し易くなる。
【0035】
反応工程は、溶媒を使用しても、無溶媒であってもよい。溶媒を使用する場合の溶媒の種類は、特に限定されないが、原料や触媒が反応しない化合物であるヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。溶媒は、脱水脱酸素化して用いることが好ましい。
【0036】
反応工程の反応温度は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。
反応工程の反応時間は、通常96時間以下、好ましくは72時間以下、より好ましくは48時間以下、さらに好ましくは24時間以下、特に好ましくは12時間以下である。
反応工程は、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
前記範囲内であると、副生成物の発生が抑制され、3-ハロプロピルシランがより収率良く生成し易くなる。
【0037】
反応工程によって生成する式(F)で表される3-ハロプロピルシランの具体的種類は、特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択することができる。
【化21】
(式(F)中、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を、R
6は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
7は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
8は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
9は水素原子、又は酸素原子、窒素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R
10はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子素数1~20のアルコキシ基、炭素原子素数0~30のシリルオキシ基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。)
なお、X、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10は、「式(D)で表されるハロゲン化アリル」、「式(E)で表されるヒドロシラン」のものと同義である。
【実施例0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0039】
〔ロジウム錯体の合成〕
(実験例1-1:[RhCl(dppbz
F)]
2の合成)
【化22】
6mLスクリューバイアルに[RhCl(cod)]
2(30mg,0.061mmol)、dppbz
F(63mg,0.12mmol)およびTHF(3mL)を加え、窒素雰囲気下、2時間室温で撹拌した。反応後、析出した固体を濾取し、少量のTHFで洗浄し、減圧下、3時間室温で乾燥させることで[RhCl(dppbz
F)]
2を収率92%で得た。
得られた生成物の
1H-NMRおよび
31P{
1H}-NMRの測定結果を下記に示す。
1H-NMR(600MHz,C
6D
6):δ/ppm 6.97-7.08(m,24H),7.93-8.00(m,16H)
31P{
1H}-NMR(243MHz,C
6D
6):δ/ppm 81.0(d,J=202Hz)
【0040】
(実験例1-2)
二座ホスフィン配位子をdppbzに変更した以外は実験例1と同様の方法で、ロジウム錯体を合成した。結果を表1に示す。
得られた生成物の1H-NMRおよび31P{1H}-NMRの測定結果を下記に示す。
1H-NMR(600MHz,C6D6):δ/ppm 6.76-6.82(m,4H),6.91-7.03(m,24H),7.37-7.42(m,4H),7.90-7.96(m,16H)
31P{1H}-NMR(243MHz,C6D6):δ/ppm 73.6(d,J=197Hz)
【0041】
(実験例1-3)
二座ホスフィン配位子をMeO-dppbzに変更した以外は実験例1と同様の方法で、ロジウム錯体を合成した。結果を表1に示す。
得られた生成物の1H-NMRおよび31P{1H}-NMRの測定結果を下記に示す。
1H-NMR(600MHz,C6D6):δ/ppm 3.25(s,24H),6.58-6.62(m,16H),6.88-6.92(m,4H),7.52-7.56(m,4H),7.97-8.02(m,16H)
31P{1H}-NMR(243MHz,C6D6):δ/ppm 71.2(d,J=199Hz)
【0042】
(実験例1-4)
二座ホスフィン配位子をCF3-dppbzに変更した以外は実験例1と同様の方法で、ロジウム錯体を合成した。結果を表1に示す。
得られた生成物の1H-NMRおよび31P{1H}-NMRの測定結果を下記に示す。
1H-NMR(600MHz,C6D6):δ/ppm 6.57-6.63(m,4H),6.93-6.98(m,4H),7.66-7.69(m,8H),8.16-8.20(m,16H)
31P{1H}-NMR(243MHz,C6D6):δ/ppm 75.1(d,J=194Hz)
【0043】
(実験例1-5)
二座ホスフィン配位子をdppeに変更した以外は実験例1と同様の方法で、ロジウム錯体を合成した。結果を表1に示す。
【0044】
(実験例1-6)
二座ホスフィン配位子をdpppに変更した以外は実験例1と同様の方法で、ロジウム錯体を合成した。結果を表1に示す。
【0045】
(実験例1-7)
二座ホスフィン配位子をdppbに変更した以外は実験例1と同様の方法で、ロジウム錯体を合成した。結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
〔触媒活性の評価〕
(実験例2-1~2-4)
実験例1-1~1-4で得られたロジウム錯体の塩化メチレン溶液を加え、塩化メチレンを留去した。塩化アリル(1mmol)およびトリクロロシラン(1mmol)を反応容器に加えた。反応溶液を60℃で加熱し、20時間撹拌した。対応するヒドロシリル化体はメシチレンを用いてNMRにより算出した。全ての操作は真空ライン、Schlenk操作、または窒素雰囲気下に保たれたMBraunドライボックスを用いて実施した。溶媒は、脱水脱酸素化して用いた。
得られた生成物の1H-NMRの測定結果を下記に示す。
1H-NMR(600MHz,C6D6):δ/ppm 0.81-0.87(m,2H),1.37-1.43(m,2H),2.78(t,2H,J=4.5Hz)
【0048】
【0049】
二座ホスフィン配位子で安定化されたロジウム二核錯体を単離したことにより、塩化アリルのヒドロシリル化においてロジウム錯体の触媒量を低減することに成功した。本反応では副生成物が抑制され、高収率で主生成物が得られることが示された。
本発明によれば、3-ハロプロピルシランの製造における触媒として使用可能な二座ホスフィン配位子で安定化されたロジウム二核錯体およびその製造方法が提供される。また、二座ホスフィン配位子で安定化されたロジウム二核錯体を用いて、3-ハロプロピルシランを効率良く製造することができる。また、本発明の製造方法によって製造された有機ケイ素化合物は、各種シランカップリング剤の原料として利用することができる。