(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191689
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】接着フィルムおよび接着フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20221221BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20221221BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20221221BHJP
C09J 109/06 20060101ALI20221221BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221221BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20221221BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20221221BHJP
B29C 48/154 20190101ALI20221221BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20221221BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J7/24
C09J123/26
C09J109/06
C08J5/18 CES
C08J5/18 CET
B29C48/08
B29C48/395
B29C48/154
B29C48/21
B32B27/00 A
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100063
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】武井 邦浩
(72)【発明者】
【氏名】吉川 悠以子
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F207
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F071AA12X
4F071AA15
4F071AA20
4F071AA22
4F071AA22X
4F071AA39
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4J040LA08
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4J040NA06
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】高温下でも、被着体に対する接着性と、接着フィルムの寸法保持性とを両立することが可能な接着フィルムおよび接着フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】耐熱層11として環状オレフィン樹脂層を有し、耐熱層11の少なくとも片面に接着層12を有し、接着層12が、変性ポリオレフィン樹脂を必須成分とし、さらに、スチレン構造または環状炭化水素構造を有する樹脂の少なくとも1種を含み、環状オレフィン樹脂層に含有される環状オレフィン樹脂のガラス転移温度が130℃以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱層として環状オレフィン樹脂層を有し、
前記耐熱層の少なくとも片面に接着層を有し、
前記接着層が、変性ポリオレフィン樹脂を必須成分とし、さらに、スチレン構造または環状炭化水素構造を有する樹脂の少なくとも1種を含み、
前記環状オレフィン樹脂層に含有される環状オレフィン樹脂のガラス転移温度が130℃以上である、接着フィルム。
【請求項2】
前記接着層100重量部中に、前記スチレン構造または環状炭化水素構造を有する樹脂の少なくとも1種を合計で3~50重量部含有する、請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記接着層の前記変性ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸成分で変性され、前記変性ポリオレフィン樹脂100重量部中に、前記不飽和カルボン酸成分を0.01~2重量部含有する、請求項1または2に記載の接着フィルム。
【請求項4】
前記変性ポリオレフィン樹脂が、変性ポリエチレン樹脂または変性ポリプロピレン樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の接着フィルム。
【請求項5】
前記接着層100重量部中に、熱可塑性エラストマー樹脂を1~15重量部の範囲内で含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の接着フィルム。
【請求項6】
前記接着層の上に、前記接着フィルムの被着体に接着される第2の接着層を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の接着フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の接着フィルムの製造方法であって、
前記耐熱層の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出成形により前記耐熱層をフィルム化する工程と、
前記接着層の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出ラミネートにより前記耐熱層の少なくとも片面に前記接着層を積層する工程と、
を有する、接着フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の接着フィルムの製造方法であって、
前記耐熱層および前記接着層の材料を各々押出機にて溶融混練し、同時に押出成形することで、前記耐熱層の少なくとも片面に前記接着層を積層した状態で前記耐熱層および前記接着層をフィルム化する工程を有する、接着フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の接着フィルムの製造方法であって、
前記耐熱層の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出成形により前記耐熱層をフィルム化する工程と、
前記接着層の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出成形により前記接着層をフィルム化する工程と、
前記耐熱層の少なくとも片面に前記接着層を熱ロールでプレスして積層する工程と、
を有する、接着フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着フィルムおよび接着フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の被着体に接着する材料として、酸変性ポリオレフィン樹脂が知られている。例えば、特許文献1には、酸変性ポリオレフィン樹脂と、環状ポリオレフィン系樹脂とを含有する接着性樹脂組成物が開示されている。
【0003】
環状オレフィン樹脂の使用に関して、例えば、特許文献2には、環状オレフィン樹脂層と機能性樹脂層との間に、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を主成分とする層を介在させることにより、機能性樹脂層との離型性および密着性を両立することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6809899号公報
【特許文献2】特許第6323598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温に加熱して接着を行う接着フィルムにおいては、被着体に対する接着性と、接着フィルムの寸法保持性が求められている。特許文献1に記載の発明においては、包装フィルムにおけるヒートシール強度については記載があるが、寸法保持性については、何ら検討されていない。特許文献2に記載の発明においては、機能性樹脂層との離型性が求められており、被着体に対する接着性は重視されていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温下でも、被着体に対する接着性と、接着フィルムの寸法保持性とを両立することが可能な接着フィルムおよび接着フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、耐熱層として環状オレフィン樹脂層を有し、前記耐熱層の少なくとも片面に接着層を有し、前記接着層が、変性ポリオレフィン樹脂を必須成分とし、さらに、スチレン構造または環状炭化水素構造を有する樹脂の少なくとも1種を含み、前記環状オレフィン樹脂層に含有される環状オレフィン樹脂のガラス転移温度が130℃以上である、接着フィルムを提供する。
【0008】
前記接着層100重量部中に、前記スチレン構造または環状炭化水素構造を有する樹脂の少なくとも1種を合計で3~50重量部含有してもよい。
前記接着層の前記変性ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸成分で変性され、前記変性ポリオレフィン樹脂100重量部中に、前記不飽和カルボン酸成分を0.01~2重量部含有してもよい。
【0009】
前記変性ポリオレフィン樹脂が、変性ポリエチレン樹脂または変性ポリプロピレン樹脂であってもよい。
前記接着層100重量部中に、熱可塑性エラストマー樹脂を1~15重量部の範囲内で含有してもよい。
前記接着層の上に、前記接着フィルムの被着体に接着される第2の接着層を有してもよい。
【0010】
また、本発明は、前記接着フィルムの製造方法であって、前記耐熱層の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出成形により前記耐熱層をフィルム化する工程と、前記接着層の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出ラミネートにより前記耐熱層の少なくとも片面に前記接着層を積層する工程と、を有する、接着フィルムの製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記接着フィルムの製造方法であって、前記耐熱層および前記接着層の材料を各々押出機にて溶融混練し、同時に押出成形することで、前記耐熱層の少なくとも片面に前記接着層を積層した状態で前記耐熱層および前記接着層をフィルム化する工程を有する、接着フィルムの製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記接着フィルムの製造方法であって、前記耐熱層の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出成形により前記耐熱層をフィルム化する工程と、前記接着層の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出成形により前記接着層をフィルム化する工程と、前記耐熱層の少なくとも片面に前記接着層を熱ロールでプレスして積層する工程と、を有する、接着フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温下でも、被着体に対する接着性と、接着フィルムの寸法保持性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】接着フィルムの第1実施形態を示す断面図である。
【
図2】接着フィルムの第2実施形態を示す断面図である。
【
図3】接着フィルムの第3実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0016】
図1~3に示すように、実施形態の接着フィルム10,20,30は、耐熱層11の少なくとも片面に接着層12を有する。
図1に示す接着フィルム10のように、耐熱層11の片面に接着層12を有してもよい。
図2に示す接着フィルム20のように、耐熱層11の両面に接着層12を有してもよい。これらの接着層12は、接着フィルム10,20の被着体(図示せず)に接着されるために使用されてもよい。
【0017】
図3に示す接着フィルム30のように、接着層12の上に、被着体に接着される第2の接着層13を有してもよい。第2の接着層13は、耐熱層11の少なくとも片面において、接着層12の上に積層することができる。特に図示しないが、耐熱層11の両面に、それぞれ接着層12および第2の接着層13が積層されていてもよい。
【0018】
耐熱層11は、環状オレフィン樹脂層である。環状オレフィン樹脂層は、少なくとも、環状オレフィン樹脂を必須成分として含有する。環状オレフィン樹脂は、例えば種々の環状オレフィンモノマーの重合体、環状オレフィンモノマーとエチレン等の他のモノマーとの共重合体、それらの水素添加物、環状オレフィンと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。環状オレフィン樹脂は、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)であってもよい。
【0019】
環状オレフィンモノマーとしては、単環式オレフィン、二環式オレフィン、三環式オレフィン、四環式オレフィン、五環式オレフィン、六環式オレフィン等が挙げられる。
単環式オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等が挙げられる。
二環式オレフィンとしては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ナヂック酸無水物、ナヂック酸イミドなどが挙げられる。
三環式オレフィンとしては、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などが挙げられる。
四環式オレフィンとしては、ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などが挙げられる。
五環式オレフィンとしては、トリシクロペンタジエンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などが挙げられる。
六環式オレフィンとしては、ヘキサシクロヘプタデセンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などが挙げられる。
これらの環状オレフィンモノマーは、少なくとも1個のノルボルネン構造を有するモノマーであることが好ましい。環状オレフィンモノマーが、炭化水素系モノマーでもよく、エステル基等の官能基を有してもよい。
【0020】
環状オレフィン樹脂におけるモノマー分子の重合方法や重合機構としては、開環重合であってもよく、付加重合であってもよい。また、複数種のモノマーを併用する場合の重合方法や重合機構としては、公知の方法を用いることができる。モノマー時に配合して共重合を行っても良い。一部のモノマーがある程度重合した後に他のモノマーを配合してブロック共重合させても良い。
【0021】
環状オレフィン樹脂は、環状オレフィンモノマー以外のモノマー、例えば、α-オレフィンに基づくモノマー単位を含有していてもよい。α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンなどが挙げられる。環状オレフィン樹脂は、非結晶性の重合体であってもよく、環状オレフィンモノマーの単独重合体、2種以上の環状オレフィンモノマーの共重合体、少なくとも1種の環状オレフィンモノマーと少なくとも1種の炭素原子数2~10のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。環状オレフィンモノマーを2種以上用いてもよく、環状オレフィンモノマー以外のモノマーを2種以上用いてもよい。
【0022】
耐熱層11を形成する環状オレフィン樹脂層は、ガラス転移温度(Tg)が高い環状オレフィン樹脂を含有することが好ましい。具体的には、環状オレフィン樹脂のTgが130℃以上であることが好ましい。環状オレフィン樹脂のTgは、環状オレフィン樹脂に共重合されるモノマー組成等により調整することができる。
【0023】
耐熱層11の環状オレフィン樹脂層が、樹脂成分として、環状オレフィン樹脂のみを含有してもよい。耐熱層11の環状オレフィン樹脂層が、環状オレフィン樹脂以外の樹脂成分を含有してもよい。耐熱層11の環状オレフィン樹脂層は、環状オレフィン樹脂を1種または2種以上の合計で、50重量%以上、さらには、70~100重量%の割合で含有してもよい。耐熱層11は、環状オレフィン樹脂層のみから形成されてもよく、環状オレフィン樹脂層からなる耐熱層と、他の耐熱層を併用してもよい。
【0024】
耐熱層11の環状オレフィン樹脂層が、環状オレフィン樹脂以外に、他の樹脂成分を含有する場合、他の樹脂成分は、エチレン、スチレン、環状炭化水素等の少なくともいずれかの構造を有するモノマーを重合した樹脂であることが好ましい。他の樹脂成分は、エチレン構造を有するモノマー、スチレン構造を有するモノマー、環状炭化水素構造を有するモノマーから選択される少なくとも1種のモノマーを共重合した樹脂であってもよく、これらのモノマーの単独重合体であってもよい。
【0025】
エチレン構造を有するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。これらのエチレン構造を有するモノマーを重合した樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが挙げられる。
【0026】
スチレン構造を有するモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーが挙げられる。これらのスチレン構造を有するモノマーを重合した樹脂としては、ポリスチレン、スチレン系エラストマー等が挙げられる。スチレン系エラストマーとしては、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)、水添スチレン-ブタジエンゴム(HSBR)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0027】
環状炭化水素構造を有するモノマーとしては、上述したスチレン構造を有するモノマーでもよく、インデン等の芳香族オレフィンモノマーでもよく、環状オレフィンモノマーであってもよい。ただし、環状炭化水素構造を有するモノマーを重合した樹脂は、環状オレフィン樹脂以外の樹脂である。環状炭化水素構造を有するモノマーを重合した樹脂としては、例えば、C5~C9系石油樹脂、C9系石油樹脂等であってもよい。
【0028】
環状オレフィン樹脂層が、他の樹脂成分を含有することにより、環状オレフィン樹脂による脆性を抑制し、柔軟性を改善することができる。環状オレフィン樹脂層の耐熱層11が他の樹脂成分を含有するとき、耐熱層11の全量100重量部中に、エチレン、スチレン、環状炭化水素の少なくともいずれかの構造を有するモノマーを重合した樹脂を5~30重量部の割合で含有することが好ましい。
【0029】
接着層12は、変性ポリオレフィン樹脂を必須成分とし、さらに、スチレン構造または環状炭化水素構造を有する樹脂の少なくとも1種を含む。接着層12は、耐熱層11の環状オレフィン樹脂層に隣接する樹脂層であってもよい。変性ポリオレフィン樹脂は、接着性が高いことから、接着層12に接着性を付与するための必須成分となる。
【0030】
接着層12に使用される変性ポリオレフィン樹脂としては、酸変性ポリオレフィン樹脂、ヒドロキシ変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。なかでも、不飽和カルボン酸成分で変性された酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。接着層12の変性ポリオレフィン樹脂が、変性ポリオレフィン樹脂100重量部中、不飽和カルボン酸成分を0.01~2重量部の割合で含有することが好ましい。
【0031】
不飽和カルボン酸成分は、遊離のカルボン酸基を有するカルボキシ基含有モノマーであってもよく、潜在的なカルボン酸基を有する酸無水物基含有モノマー等であってもよい。カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド-ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸(エンディック酸)等のα,β-不飽和カルボン酸モノマーが挙げられる。酸無水物基含有モノマーとしては、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸等の不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂が、1種の不飽和カルボン酸成分が共重合された樹脂であってもよく、2種以上の不飽和カルボン酸成分が共重合された樹脂であってもよい。
【0032】
変性ポリオレフィン樹脂の製造方法としては、未変性ポリオレフィン樹脂を官能基含有モノマーとを溶融混練によりグラフト変性する方法、オレフィンモノマーと官能基含有モノマーとを共重合させる方法等が挙げられる。官能基含有モノマーは、オレフィン以外の極性官能基を有するモノマーであり、不飽和カルボン酸成分、ヒドロキシ置換オレフィン、塩素化オレフィン等が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂の少なくとも一部として、ラジカル重合開始剤を用いた不飽和カルボン酸成分のグラフト変性による酸変性ポリオレフィン樹脂を採用することもできる。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、脂肪族アゾ化合物等が挙げられる。
【0033】
変性ポリオレフィン樹脂に用いられるオレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、α-オレフィン等の1種または2種以上が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂は、変性ポリエチレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、変性ポリ-1-ブテン樹脂、変性ポリイソブチレン樹脂等であってもよい。変性ポリオレフィンのグラフト変性に用いる未変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンまたはα-オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンまたはα-オレフィンとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0034】
接着層12に使用される変性ポリエチレン樹脂は、変性ポリエチレン樹脂100重量部中に、エチレンを50重量部以上共重合した樹脂であることが好ましい。変性ポリエチレン樹脂には、不飽和カルボン酸成分等の官能基含有モノマーが共重合される。さらに変性ポリエチレン樹脂には、エチレン以外のオレフィンモノマーとして、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が共重合されてもよい。
【0035】
接着層12に使用される変性ポリプロピレン樹脂は、変性ポリプロピレン樹脂100重量部中に、プロピレンを50重量部以上共重合した樹脂であることが好ましい。変性ポリプロピレン樹脂には、不飽和カルボン酸成分等の官能基含有モノマーが共重合される。さらに変性ポリプロピレン樹脂には、プロピレン以外のオレフィンモノマーとして、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が共重合されてもよい。
【0036】
接着層12には、変性ポリオレフィン樹脂に加えて、スチレン構造または環状炭化水素構造を有する樹脂の少なくとも1種が含まれる。これにより、耐熱層11と、接着層12との接着性を向上することができる。接着層12が、接着層12の全量100重量部中に、スチレン構造または環状炭化水素構造を有する樹脂の少なくとも1種を3~50重量部含有することが好ましい。また、接着層12が、接着層12の全量100重量部中に、変性ポリオレフィン樹脂を50~97重量部含有することが好ましい。
【0037】
スチレン構造を有する樹脂としては、スチレン構造を有するモノマーと、他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン構造を有するモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーが挙げられる。スチレン系モノマー以外の他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、α-オレフィン、ブタジエン、イソプレン等の脂肪族オレフィンが挙げられる。スチレン構造を有する樹脂が、水素添加により、重合後に残留する不飽和結合を低減または飽和化した樹脂でもよい。スチレン構造を有する樹脂がスチレン系エラストマーであってもよい。スチレン構造を有する樹脂におけるスチレン系モノマーの割合は、例えば、10~50重量%であってもよい。
【0038】
接着層12に用いられるスチレン系エラストマーとしては、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)、水添スチレン-ブタジエンゴム(HSBR)等の1種または2種以上が挙げられる。スチレン系エラストマーでは、スチレンを含むブロックがハードブロックを構成し、脂肪族オレフィンを含むブロックがソフトブロックを構成する。
【0039】
環状炭化水素構造を有する樹脂は、環状炭化水素構造を有するモノマーと、他のモノマーとの共重合体が挙げられる。環状炭化水素構造を有するモノマーとしては、スチレン構造を有するモノマー、ノルボルネン構造を有するモノマーであってもよく、その他、脂環式炭化水素構造または芳香族炭化水素構造を有するモノマーであってもよい。スチレン構造およびノルボルネン構造以外の環状炭化水素構造を有するモノマーとしては、インデン、アリルベンゼン、シクロオレフィン等が挙げられる。環状炭化水素構造を有しない、他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、α-オレフィン、ブタジエン、イソプレン等の脂肪族オレフィンが挙げられる。
【0040】
環状炭化水素構造を有する樹脂の少なくとも一部が、スチレン構造を有する樹脂であってもよい。環状炭化水素構造を有する樹脂が、スチレン構造を有しない樹脂であってもよい。環状炭化水素構造を有する樹脂の少なくとも一部が、環状オレフィン樹脂であってもよい。環状炭化水素構造を有する樹脂が、環状オレフィン樹脂を含有しなくてもよい。環状炭化水素構造を有する樹脂は、例えば、C5~C9系石油樹脂、C9系石油樹脂等であってもよい。
【0041】
接着層12は、熱可塑性エラストマー樹脂を含有してもよい。熱可塑性エラストマー樹脂は、上述したスチレン構造を有する樹脂を兼ねる、スチレン系エラストマーであってもよい。熱可塑性エラストマー樹脂は、上述したスチレン構造を有する樹脂および環状炭化水素構造を有する樹脂とは異なる樹脂でもよい。例えば、熱可塑性エラストマー樹脂が、オレフィン系エラストマーであってもよい。オレフィン系エラストマーに使用可能なオレフィン系共重合体としては、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体等の脂肪族オレフィン共重合体が挙げられる。
【0042】
接着層12は、スチレン構造を有する樹脂として、スチレン系エラストマーの少なくとも1種を含有する場合に、スチレン系エラストマー以外の熱可塑性エラストマー樹脂を、さらに含有してもよい。その含有量としては、接着層12の全量100重量部中に、熱可塑性エラストマー樹脂を1~15重量部の範囲内が好ましい。
【0043】
接着層12の上に第2の接着層13が積層される場合、第2の接着層13は、接着層12の上に積層可能であれば、所望の接着性樹脂を用いることができる。接着性樹脂としては、特に限定されないが、酸変性ポリオレフィン、エポキシ系接着剤、オレフィン系ヒートシール剤等が挙げられる。第2の接着層13は、2種以上の接着性樹脂を含有してもよく、接着性樹脂以外の樹脂成分を含有してもよい。
【0044】
接着フィルム10,20,30を構成する各層、すなわち、耐熱層11、接着層12、第2の接着層13には、所望の目的で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤等を含有してもよい。耐熱層11、接着層12、第2の接着層13のいずれかの層が、これらの添加剤のいずれか1種以上または全部を含有しない組成であってもよい。
【0045】
接着フィルム10,20,30の製造方法は特に限定されないが、押出成形、インフレーション成形、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート等により、各層を形成し、または各層を積層する方法が挙げられる。例えば、耐熱層11と接着層12とを有する接着フィルム10,20を製造する際、耐熱層11を先に成形してもよく、接着層12を先に成形してもよく、耐熱層11および接着層12を同時に成形してもよい。
【0046】
製造方法の第1例として、耐熱層11の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出成形により耐熱層11をフィルム化する工程と、接着層12の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出ラミネートにより耐熱層11の少なくとも片面に接着層12を積層する工程と、を有する製造方法が挙げられる。第1例の製造方法によれば、耐熱層11が接着層12より耐熱性が高いため、先に接着層12を成形した上に耐熱層11を押出ラミネートする場合に比べて、製造が容易である。また、第1例は、後述の第2例に比べて、各層の膜厚等の調整が容易である。また、第1例は、後述の第3例に比べて、接着層12が溶融状態で耐熱層11に積層されるため、層間の密着性が向上する。
【0047】
製造方法の第2例として、耐熱層11および接着層12の材料を各々押出機にて溶融混練し、同時に押出成形することで、耐熱層11の少なくとも片面に接着層12を積層した状態で耐熱層11および接着層12をフィルム化する工程を有する製造方法が挙げられる。第2例の製造方法によれば、上述の第1例および後述の第3例に比べて、押出成形が1工程で済み、作業が短縮される。また、耐熱層11および接着層12が溶融状態で積層されるため、層間の密着性が向上する。
【0048】
製造方法の第3例として、耐熱層11の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出成形により耐熱層11をフィルム化する工程と、接着層12の材料を溶融押出機にて溶融混練し、押出成形により接着層12をフィルム化する工程と、耐熱層11の少なくとも片面に接着層12を熱ロールでプレスして積層する工程と、を有する製造方法が挙げられる。第3例の製造方法によれば、耐熱層11および接着層12を別々に成形し、必要に応じて所望の組み合わせで積層することができるので、設計変更や製造管理が容易になる。耐熱層11のフィルム化および接着層12のフィルム化の順序は特に限定されず、同時並行して実施することも可能である。
【0049】
耐熱層11の両面に接着層12を有する場合、各面の接着層12は、同一の方法で耐熱層11に積層してもよく、異なる方法で耐熱層11に積層してもよい。両面の接着層12が、互いに組成または厚みの異なる樹脂層でもよく、組成または厚みが同一の樹脂層でもよい。耐熱層11および接着層12の厚みは特に限定されないが、例えば、耐熱層11または接着層12の各層につき、1~300μm程度が挙げられる。接着フィルム10,20,30の厚みは特に限定されないが、例えば、10~500μm程度が挙げられる。
【0050】
第2の接着層13を有する接着フィルム30を製造する際、第2の接着層13より先に接着層12を成形してもよく、接着層12より先に第2の接着層13を成形してもよく、接着層12および第2の接着層13を同時に成形してもよい。第2の接着層13を形成する方法は特に限定されず、接着層12の成形方法と同様でもよいし、接着層12とは異なる方法でもよい。上述した製造方法の第1例から第3例において、接着層12と同様にして、第2の接着層13を形成してもよい。
【0051】
接着フィルム10,20,30の被着体は、特に限定されないが、樹脂、ゴム、金属、ガラス、セラミックス等、各種の材料が挙げられる。接着層12が変性ポリオレフィン樹脂を必須成分としているため、被着体が金属等であっても好適に接着することができる。金属としては、特に限定されないが、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス、クロム、ニッケル等が挙げられる。被着体の表面が凹凸加工、化成処理等の表面加工処理を施した処理面であってもよい。
【0052】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例0053】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0054】
(使用した樹脂)
耐熱層および接着層には、下記の樹脂を使用した。表1で樹脂の組成を示す際、下記の成分の記号の右に、配合比の数値を重量部として添えた。例えば、「A-1 100」は、A-1を100重量部の割合で使用したことを表す。
【0055】
「A-1」は、環状オレフィン樹脂であって、Tg145℃、MFR10g/10min(260℃,2.16kg)である。
「A-2」は、環状オレフィン樹脂であって、Tg178℃、MFR1.5g/10min(260℃,2.16kg)である。
「A-3」は、環状オレフィン樹脂であって、Tg105℃、MFR26g/10min(260℃,2.16kg)である。
「B-1」は、ポリエチレン(LLDPE)であって、融点120℃である。
【0056】
「C-1」は、酸変性ポリプロピレン(PP)であって、融点140℃、MFR7.0g/10min(230℃,2.16kg)である。
「C-2」は、酸変性ポリエチレン(PE)であって、融点120℃、MFR6g/10min(230℃,2.16kg)である。
「D-1」は、スチレン含有樹脂(SEBS)であって、スチレン含有比率43%、MFR3.0g/10min(230℃,2.16kg)である。
「D-2」は、C9系炭化水素樹脂であって、ビニルトルエンとインデンを共重合した樹脂である。
【0057】
(実施例1~7および比較例1~2の接着フィルムの製造方法)
表1に示す組成で、耐熱層の樹脂および接着層の樹脂をペレットのまま、ミキサーで各々ドライブレンドした。耐熱層の樹脂を300℃で2分間、接着層の樹脂を270℃で2分間、各々溶融混練した後、2層同時押出成形により所定の厚さの接着フィルムを得た。表1では、この2層同時押出成形による工法を「P-1」と表記した。
【0058】
(実施例8の接着フィルムの製造方法)
表1に示す組成で、耐熱層の樹脂および接着層の樹脂をペレットのまま、ミキサーで各々ドライブレンドした。耐熱層の樹脂を300℃で2分間溶融混練した後、押出成形により耐熱層のフィルムを得た。次に、接着層の樹脂を270℃で2分間溶融混練した後、耐熱層のフィルム上に押出ラミネートにより積層し、所定の厚さの接着フィルムを得た。表1では、この押出ラミネートによる工法を「P-2」と表記した。
【0059】
(実施例9の接着フィルムの製造方法)
表1に示す組成で、耐熱層の樹脂および接着層の樹脂をペレットのまま、ミキサーで各々ドライブレンドした。耐熱層の樹脂を300℃で2分間溶融混練した後、押出成形により耐熱層のフィルムを得た。次に、接着層の樹脂を270℃で2分間溶融混練した後、押出成形により接着層のフィルムを得た。得られた耐熱層のフィルムと接着層のフィルムとを重ね合わせ、270℃の熱ロールで加熱圧着し、所定の厚さの接着フィルムを得た。表1では、この熱ラミネートによる工法を「P-3」と表記した。
【0060】
(接着強度の測定方法)
耐熱層の厚みが20μm、接着層の厚みが80μm、合計の厚みが100μmとした接着フィルムをサンプルとして用いた。厚みが50μmのアルミニウム箔を被着体として用いた。これらを50mm×50mmのサイズにカットし、サンプルに被着体を重ね、被着体側から温度170℃、圧力0.1MPa、時間10secの条件で加熱圧着した。さらにサンプルを15mm幅にカットした後、引張試験機(株式会社島津製作所、商品名:オートグラフ(登録商標)AG-X20kN)を用いて、被着体に加熱圧着したサンプルの接着強度を、速度300mm/min、幅15mm、測定温度110℃の条件で180°剥離の方法により測定した。
【0061】
(線膨張係数の測定方法)
耐熱層の厚みが20μm、接着層の厚みが80μm、合計の厚みが100μmとした接着フィルムをサンプルとして用いた。サンプルを4mm×50mmのサイズにカットし、長さ方向の両端をチャックに固定し、チャック間の距離を20mmとした。張力0.01N/mm、昇温速度5℃/minで23℃から110℃に昇温した後、110℃で5min保持した状態で、サンプルの線膨張係数を測定した。表1において、200×10-6/℃を超えた場合は、「>200」と表記した。
【0062】
(結果)
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0063】
【0064】
実施例1~9の接着フィルムは、高温下でも、接着強度が大きく、熱膨脹係数が小さいため、被着体に対する接着性と、接着フィルムの寸法保持性とを両立できることが分かった。
【0065】
比較例1の接着フィルムは、被着体に対する接着層の接着性は十分であったが、耐熱層と接着層との接着性が不十分であったため、高温下における接着強度が弱くなった。
比較例2の接着フィルムは、耐熱層の耐熱性が低く、高温下における寸法保持性が低かった。