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特開2022-191715廃石膏ボード由来の石膏粒体と石膏スラリーとの混合方法、及び混合装置
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  • 特開-廃石膏ボード由来の石膏粒体と石膏スラリーとの混合方法、及び混合装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191715
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】廃石膏ボード由来の石膏粒体と石膏スラリーとの混合方法、及び混合装置
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/06 20060101AFI20221221BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20221221BHJP
   B01F 25/40 20220101ALI20221221BHJP
   C01F 11/46 20060101ALI20221221BHJP
   B28C 1/02 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B28C5/06
B01F3/12
B01F5/00 D
C01F11/46 Z
B28C1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100107
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】平中 晋吾
【テーマコード(参考)】
4G035
4G056
4G076
【Fターム(参考)】
4G035AB44
4G035AC01
4G035AE13
4G035AE17
4G056AA02
4G056AA10
4G056AA25
4G056CC01
4G056CD01
4G076AA14
4G076AB08
4G076BC08
4G076CA02
4G076CA15
(57)【要約】

【課題】 廃石膏ボード由来の石膏粒体と石膏スラリーとを混合する装置での、石膏スケールの発生を抑制する。
【構成】 廃石膏ボード由来の半水及び/又は無水III型の石膏粒体を、二水石膏を含む水性の石膏スラリーの流路に投入し、石膏粒体と石膏スラリーとを混合し、二水石膏の析出槽へ供給する。流路の入口から石膏スラリーを供給し、上方から廃石膏ボード由来の半水及び/又は無水III型の石膏粒体を石膏スラリー中に投入して、石膏粒体の投入後は、石膏スラリーの上部の液面を常に空気に曝した状態で、石膏スラリーを流路の出口へ流す。流路の出口から石膏スラリーを自由落下させてパイプに投入し、かつ出口から見てパイプの遠い側の面に石膏スラリーが衝突して落下するか、あるいはパイプの中央部を落下するようにする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃石膏ボード由来の半水及び/又は無水III型の石膏粒体を、二水石膏を含む水性の石膏スラリーの流路に投入し、前記石膏粒体と石膏スラリーとを混合すると共に、二水石膏の析出槽へ供給する方法であって、
流路の入口から石膏スラリーを供給し、上方から前記石膏粒体を石膏スラリー中に投入して、前記石膏粒体の投入後は、石膏スラリーの上部の液面を常に空気に曝した状態で、石膏スラリーを流路の出口へ流し、
前記流路の出口から石膏スラリーを自由落下させてパイプに投入し、かつ前記出口から見てパイプの遠い側の面に石膏スラリーが衝突して落下するか、あるいはパイプの中央部を落下するようにし、前記出口から見てパイプの近い側の面に沿って落下しないようにする、廃石膏ボード由来の石膏粒体と石膏スラリーとの混合方法。
【請求項2】
前記流路及び前記パイプの内面をフッ素樹脂の膜叉は板により覆い、前記内面での石膏スケールの成長を遅らせることを特徴とする、請求項1の廃石膏ボード由来の石膏粒体と石膏スラリーとの混合方法。
【請求項3】
前記流路へ供給管から石膏スラリーを供給すると共に、供給管の断面積よりも前記流路の入口における流路断面積を大きくすることにより、流路内の石膏スラリーの上部を空気に曝すことを特徴とする、請求項1または2の廃石膏ボード由来の石膏粒体と石膏スラリーとの混合方法。
【請求項4】
廃石膏ボード由来の半水及び/又は無水III型の石膏粒体を、二水石膏を含む水性の石膏スラリーと混合し、二水石膏の析出槽へ供給するための混合装置であって、
石膏スラリーの流路とパイプとを備え、
前記流路は、流路の入口から石膏スラリーを供給し、上方から前記石膏粒体を石膏スラリー中に投入して、前記石膏粒体の投入後は、石膏スラリーの上部の液面を常に空気に曝した状態で、石膏スラリーを流路の出口へ流すように構成され、
前記パイプは、前記流路の出口から石膏スラリーを自由落下させてパイプに投入し、かつ前記出口から見てパイプの遠い側の面に石膏スラリーが衝突して落下するか、あるいはパイプの中央部を落下するようにし、前記出口から見てパイプの近い側の面に沿って落下しないように構成されている、混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は廃石膏ボード由来の石膏粒体と石膏スラリーとの混合に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者らは、廃石膏ボードからの二水石膏の回収を検討してきた。特許文献1(特許6336385)では、図5に示す円筒状の混合装置40を用い、廃石膏ボードを破砕した後に加熱して半水及び/叉は無水III型とした石膏粒体を、投入口41から石膏スラリー44中に投入する。また円筒側面のスラリー入口42から、円筒の接線方向に二水石膏を含むスラリーを供給し、スラリー出口43からスラリーを晶析槽へ排出する。スラリー44を混合容器40内で旋回させることにより、スラリー44への空気の巻き込みを防止する。このことにより、混合容器40から晶析槽へ流体ポンプでスラリーを送り出す際の、キャビテーションを防止できる。なお混合容器40の中心部に流れのない個所が発生することを防ぐため中心部にパイプ45を設け、また排気口47を設けて容器内の圧力上昇を防止する。
【0003】
しかしながら、図5の混合装置40では、容器底部から側部に渡り、石膏のスケール46が発生しやすいことが判明した。スケール46は混合装置40の内壁に張り付き、極めて硬質である。定期的に操業を中断してスケールを剥がすことは非効率である。
【0004】
関連する先行技術を示す。発明者らは、特許文献2(特開2020-105045)で、混合装置でのスラリーの滞在時間を短縮することにより結晶核の生成を抑制し、回収する二水石膏の粒径を大きくすることを提案した。また混合器は例えば円筒状であるが、樋状などでも良いことを記載した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6336385
【特許文献2】特開2020-105045
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、廃石膏ボード由来の石膏粒体と石膏スラリーとを混合する装置での、石膏スケールの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、廃石膏ボード由来の半水及び/又は無水III型の石膏粒体を、二水石膏を含む水性の石膏スラリーの流路に投入し、前記石膏粒体と石膏スラリーとを混合すると共に、二水石膏の析出槽へ供給する方法であって、
流路の入口から石膏スラリーを供給し、上方から前記石膏粒体を石膏スラリー中に投入して、前記石膏粒体の投入後は、石膏スラリーの上部の液面を常に空気に曝した状態で、石膏スラリーを流路の出口へ流し、
前記流路の出口から石膏スラリーを自由落下させてパイプに投入し、かつ前記出口から見てパイプの遠い側の面に石膏スラリーが衝突して落下するか、あるいはパイプの中央部を落下するようにし、前記出口から見てパイプの近い側の面に沿って落下しないようにすることを特徴とする。
【0008】
この発明の混合装置は、廃石膏ボード由来の半水及び/又は無水III型の石膏粒体を、二水石膏を含む水性の石膏スラリーと混合し、二水石膏の析出槽へ供給するための装置であって、
石膏スラリーの流路とパイプとを備え、
前記流路は、流路の入口から石膏スラリーを供給し、上方から前記石膏粒体を石膏スラリー中に投入して、前記石膏粒体の投入後は、石膏スラリーの上部の液面を常に空気に曝した状態で、石膏スラリーを流路の出口へ流すように構成され、
前記パイプは、前記流路の出口から石膏スラリーを自由落下させてパイプに投入し、かつ前記出口から見てパイプの遠い側の面に石膏スラリーが衝突して落下するか、あるいはパイプの中央部を落下するようにし、前記出口から見てパイプの近い側の面に沿って落下しないように構成されている。
【0009】
石膏スケールは非常に硬質で、環状のスケールを除去することは難しい。これに対して、流路あるいはパイプの全周ではなく一部のみにスケールが付着している場合、スケールは簡単に剥離する。流路内でスラリーの上部が常に空気に曝されていると、流路内に環状にスケールが付着することはない。またパイプの遠い側の面にスラリーを衝突させ、あるいはパイプの中央部をスラリーが落下するようにすると、パイプ内を360度取り巻くようにスケールが環状に発生することはない。従ってこの発明では、混合装置に付着した石膏スケールを容易に取り除くことができる。
【0010】
好ましくは流路は直線状である。実施例では流路は断面U字状であるが、パイプ状でも良く、スラリーの上部液面が常に空気に曝されていることが重要である。また前記パイプから晶析槽までの間に、流れと直角な面において、流路あるいはパイプの全周360度に渡ってスラリーが流れているような個所を設けない。上面が開放した流路ではスラリーの上部は常に空気に曝され、パイプ内では内壁の一部のみに沿ってあるいはパイプの中央部をスラリーが流れるようにする。
【0011】
流路の断面は、底部の隅に角が有る四角形よりも、U字などの曲面が好ましい。スラリーの液面よりも低い高さで、流路の断面に角が有ると、スラリーが滞留しスケールが発生しやすい。また流路は石膏粒体の投入個所から出口まで、より好ましくは流路の入口から出口まで、スラリーの液面以下の高さでの、断面形状が一定であることが好ましい。断面形状が変化すると、スラリーが滞留しスケールが発生しやすい。同様にパイプは角形のパイプよりも円形のパイプが好ましく、またパイプの太さは一定であることが好ましい。角形のパイプでは、パイプの隅にスケールが発生しやすく、太さが変化してもスケールが発生しやすい。
【0012】
なお晶析槽に直接石膏粒体を投入せずに、混合装置を経由させることには、スケールの発生個所を混合装置に限定する意味がある。なおこの発明で、石膏粒体を混合したスラリーが晶析槽に達すると、過飽和度が低下するためスケールは発生しない。
【0013】
好ましくは、前記流路及び前記パイプの内面をフッ素樹脂の膜叉は板により覆い、石膏スケールの成長を遅らせる。フッ素樹脂の膜あるいは板は石膏スラリー中でも長期間使用できる。またフッ素樹脂の膜あるいは板は石膏スケールが付着しにくいので、スケールの成長を遅らせることができる。
【0014】
好ましくは、前記流路へ供給管から石膏スラリーを供給すると共に、供給管の断面積よりも前記流路の入口における流路断面積を大きくすることにより、流路内の石膏スラリーの上部を空気に曝す。ここでの流路断面積は、スラリーの断面積ではなく、スラリーが流れ得る最大断面積のことである。例えば流路がパイプならパイプ内部の断面積のことである。供給管内を100%スラリーが占めていても、断面積の大きな流路内ではスラリーの上部を空気に曝すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例の混合装置を用いる二水石膏の回収システムの概略図
図2】実施例の混合装置の鉛直方向断面図
図3図2のIII-III方向鉛直断面図
図4図2のIVa-IVb方向水平断面図
図5】従来例の混合槽の鉛直方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。この発明の範囲は実施例により限定されるものではない。
【実施例0017】
図1図4に実施例を示す。図1は廃石膏ボードからの二水石膏の回収システム2を示す。厚紙と二水石膏とから成る廃石膏ボードを破砕機4で破砕し、篩4により紙片と二水石膏とを分離する。二水石膏を加熱装置5により加熱し、半水及び/又は無水III型石膏粒体とする。
【0018】
実施例の混合装置6は、流路7とパイプ8とから成り、流路7で二水石膏の水性スラリーに石膏粒体を投入し、パイプ8から晶析槽10へ石膏スラリーを供給する。晶析槽10で二水石膏結晶を成長させ、流体ポンプ11を介して、フィルタープレス等の固液分離装置12により二水石膏粉体を石膏スラリーから分離する。そして石膏スラリーを流路7へ循環させる。
【0019】
図2図4に、流路7とパイプ8の構造を示す。流路7は、二水石膏を含む水性のスラリー23の流れが曲がる個所を含んでいても良いが、好ましくは直線状とする。図2では流路7を水平に示すが、実際には入口25から出口30へ下向きに傾斜し、砂利などの異物が溜まらないようにする。流路7の流れ方向に直角な鉛直断面は例えばU字状である。図3に示すように、流路7は、断面U字状の流路本体20(例えばステンレス製)と、フッ素樹脂から成る内張21から成り、内張21は膜状でも板状でも良い。流路7の上部は例えば踏板22で覆う。なお流路7をパイプ状とし、断面の下方1/2~1/4等をスラリーが流れ、スラリーの上部に常に空気が有るようにしても良い。
【0020】
フッ素樹脂から成る内張21は、石膏スケールの成長を遅くできる。またフッ素樹脂から成る内張21は、石膏スラリー中での耐久性が高く、例えば1年以上使用できる。これに対して軟質塩化ビニル樹脂等の内張では、石膏スラリー中での寿命は半年程度である。なお内張21は設けなくても良い。
【0021】
スラリー23はパイプ24から供給し、パイプ24と流路7の継目を流路7の入口25とする。またスクリューコンベヤ等の投入装置26から、流路7へ半水及び/又は無水III型の石膏粒体を投入する。27は投入装置26のモータ、28は投入口である。またパイプ24と流路7内のスラリーの速度分布を、図2に模式的に示す。投入口28は流路7の流れ方向中心部よりも上流側に設け、石膏粒体とスラリーとの混合を進める。流路7の底部を石膏スラリー23が流れ、スラリー23の液面32は常に空気34に曝され、流路7内に環状にスケールが発生することはない。なおパイプ24の直径は例えば100mm~200mm、流路7の直径はパイプ24の直径の2倍程度、流路7内でのスラリー23の平均流速は例えば2~4m/秒である。
【0022】
流路7の出口30からスラリー23はパイプ8内へ自由落下し、流速が大きいためパイプ8の流路7とは反対側の側面に衝突して落下する。パイプ8も、内面をフッ素樹脂の膜あるいはパイプから成る内張31で覆うことが好ましい。パイプ8内の各部にスラリーの飛沫が付着するが、図4の一点鎖線のように、パイプ8の内周360度に拡がってスラリー23が流れることはない。そして飛沫が付着するだけでは、スケールが隙間なく環状に成長することはない。なおパイプ8の径を大きくし、パイプ8の中心部をスラリー23が落下するようにしても良い。パイプ8の直径は例えば流路7の直径と同程度で、パイプ8の向きは鉛直に限らない。
【0023】
石膏スラリーはパイプ8から晶析槽10へ流れる。なおパイプ8と晶析槽10の間に、液面上部が常に空気に曝される流路、あるいはパイプ8とは別のパイプなどが有っても良い。
【0024】
実施例では以下の効果がある。
1) 混合装置6内に、石膏スケールが環状に付着することを防止できる。石膏スケールは強固であるが、環状でなければ簡単に剥離する。
2) フッ素樹脂から成る内張21,31により、石膏スケールの成長を遅らせる。フッ素樹脂から成る内張21,31は、軟質塩化ビニル樹脂などに比べ、石膏スラリー中での耐久性が高い。
3) パイプ24に大径の流路7を接続し、流路7内では常にスラリーの液面が空気に曝されているようにする。
【符号の説明】
【0025】
2 二水石膏の回収システム
3 破砕機
4 篩
5 加熱装置
6 混合装置
7 流路
8 パイプ
10 晶析槽
11 流体ポンプ
12 固液分離装置
20 流路本体
21,31 内張
22 踏板
23 石膏スラリー
24 パイプ
25 入口
26 投入装置
27 モータ
28 投入口
30 出口
32 液面
34 空気
図1
図2
図3
図4
図5