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特開2022-19179可塑性注入材作製用の第一混合物、可塑性注入材、可塑性注入材の製造方法、及び、可塑性注入材の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019179
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】可塑性注入材作製用の第一混合物、可塑性注入材、可塑性注入材の製造方法、及び、可塑性注入材の施工方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/42 20060101AFI20220120BHJP
   C09K 17/14 20060101ALI20220120BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20220120BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20220120BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C09K17/42 P
C09K17/14 P
C09K17/02 P
C09K17/06 P
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122863
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川上 明大
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匠
(72)【発明者】
【氏名】沖原 直生
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 彩
【テーマコード(参考)】
2D040
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AB07
2D040CA04
2D040CA09
2D040CA10
2D040EA27
4H026CA02
4H026CA04
4H026CA05
4H026CB01
4H026CB03
4H026CB08
4H026CC06
(57)【要約】
【課題】可塑性注入材の収縮を抑制できる可塑性注入材作製用の第一混合物を提供することを課題とする。
【解決手段】高炉スラグと可塑化材と水とを含有する第一混合物と、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製するための可塑性注入材作製用の第一混合物であって、アゾジカルボンアミド系発泡剤を含有し、且つ、セメントを含有しない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉スラグと可塑化材と水とを含有する第一混合物と、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製するための可塑性注入材作製用の第一混合物であって、
アゾジカルボンアミド系発泡剤を含有し、且つ、セメントを含有しない、
可塑性注入材作製用の第一混合物。
【請求項2】
アゾジカルボンアミド系発泡剤の含有量は、可塑性注入材の単位体積に対する質量割合が0.1kg/m以上0.7kg/m以下である、
請求項1に記載の可塑性注入材作製用の第一混合物。
【請求項3】
前記可塑化材は、ベントナイトである、
請求項1又は2に記載の可塑性注入材作製用の第一混合物。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の第一混合物と、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物とが混合されてなる、
可塑性注入材。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の第一混合物と、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物とを混合する工程を備える、
可塑性注入材の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の第一混合物と、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製する工程と、該可塑性注入材を施工場所に注入する工程とを備える、
可塑性注入材の施工方法。
【請求項7】
第一混合物を施工場所付近まで圧送する工程を更に備える、
請求項6に記載の可塑性注入材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑性注入材作製用の第一混合物、可塑性注入材、可塑性注入材の製造方法、及び、可塑性注入材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空隙や空洞等の施工場所に注入する注入材として、セメントを含む注入材が知られている。斯かる注入材は、施工場所に注入し且つ硬化するまでの間に周囲に漏れないようにするために、注入するまでは十分な流動性を有すると共に、注入後には周囲に流れださないようにゲル状に凝集する性質(すなわち、可塑性)を有することが要求される。
【0003】
斯かる可塑性を有する注入材(以下、可塑性注入材ともいう。)としては、例えば、特許文献1に記載されているような可塑化材を含むものがある。具体的には、斯かる可塑性注入材は、セメントおよび水を含むA液と、可塑化材(具体的には、ベントナイト)および水を含むB液とを別々に施工場所まで圧送し、施工場所付近で混合することで作製する。
【0004】
しかしながら、斯かる可塑性注入材は、硬化材としてセメントをA液に含むため、A液を施工場所まで圧送する設備内(例えば、ホース内等)で、A液が硬化する虞がある。そこで、硬化材としてセメントの代わりに、高炉スラグを用いることが特許文献2~5に記載されている。高炉スラグは、単独では水硬性を示さないが、水の存在下でアルカリ性を示す硬化助材との接触によって硬化するものである。このため、A液を圧送する設備内でA液が硬化することがないため、比較的長距離の圧送を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-310779号公報
【特許文献2】特開2005-281586号公報
【特許文献3】特開2001-302324号公報
【特許文献4】特開2007-45657号公報
【特許文献5】特許第3366617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2~5に記載されている可塑性注入材は、施工場所に注入された直後の体積に比べて、その後の体積が小さくなる(即ち、可塑性注入材が硬化する過程、及び/又は、硬化した後に収縮する)。このような収縮が生じると、施工場所を可塑性注入材で隙間なく埋めることができない。
【0007】
そこで、本発明は、可塑性注入材の収縮を抑制できる可塑性注入材作製用の第一混合物、及び、該第一混合物を用いて形成される可塑性注入材を提供することを課題とする。また、斯かる可塑性注入材の製造方法、及び、該可塑性注入材の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る可塑性注入材作製用の第一混合物は、高炉スラグと可塑化材と水とを含有する第一混合物と、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製するための可塑性注入材作製用の第一混合物であって、アゾジカルボンアミド系発泡剤を含有し、且つ、セメントを含有しない。
【0009】
斯かる構成によれば、高炉スラグを含有する第一混合物がアゾジカルボンアミド系発泡剤を含有することで、可塑性注入材の収縮(可塑性注入材が硬化する過程で生じる収縮、及び/又は、硬化した後の生じる収縮)を抑制できる。
【0010】
アゾジカルボンアミド系発泡剤の含有量は、可塑性注入材の単位体積に対する質量割合が0.1kg/m以上0.7kg/m以下であることが好ましい。
【0011】
斯かる構成によれば、アゾジカルボンアミド系発泡剤の含有量が上記の範囲であることで、可塑性注入材の収縮を抑制できると共に、可塑性注入材が硬化した際に良好な圧縮強度を得ることができる。
【0012】
前記可塑化材は、ベントナイトであってもよい。
【0013】
本発明に係る可塑性注入材は、上記何れかの第一混合物と、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物とが混合されてなる。
【0014】
本発明に係る可塑性注入材の製造方法は、上記何れかの第一混合物と、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物とを混合する工程を備える。
【0015】
本発明に係る可塑性注入材の施工方法は、上記何れかの第一混合物と、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製する工程と、該可塑性注入材を施工場所に注入する工程とを備える。
【0016】
上記の可塑性注入材の施工方法は、第一混合物を施工場所付近まで圧送する工程を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可塑性注入材の収縮を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本発明の可塑性注入材作製用の第一混合物(以下では、単に「第一混合物」とも記す)は、高炉スラグと可塑化材と水とを含有する。また、第一混合物は、アゾジカルボンアミド系発泡剤を含有し、且つ、セメントを含有しない。なお、「セメントを含有しない」とは、第一混合物におけるセメントの含有量が0kg/m以上10kg/m未満であることをいう。そして、第一混合物は、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物と混合することで可塑性注入材を作製するものである。
【0020】
高炉スラグとしては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に規定されるものが挙げられる。具体的には、斯かる高炉スラグとしては、高炉スラグ微粉末3000、高炉スラグ微粉末4000、高炉スラグ微粉末6000、および、高炉スラグ微粉末8000が挙げられる。高炉スラグは、通常、水との接触によって水和反応を実質的に開始することがない。また、高炉スラグは、硬化助材の存在下で水と接触すると水和反応を開始して硬化性の水和物を生成する。
【0021】
第一混合物における高炉スラグの含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、可塑性注入材の単位体積に対する質量割合が150kg/m以上500kg/m以下であってもよく、200kg/m以上400kg/m以下であってもよい。
【0022】
可塑化材としては、第一混合と第二混合物とが混合された際に可塑化作用を生じさせるものであれば、特に限定されるものではない。このため、可塑化材としては、第一混合を可塑化する作用は低くてもよいが、第二混合物に含まれる硬化助材と混合されることで可塑化作用が高くなるものを用いることが好ましい。具体的には、可塑化材としては、例えば、ベントナイト、アタパルジャイト、メタカオリン等の粘土鉱物等が挙げられる。特に、ベントナイトは、適度な可塑性を可塑性注入材に付与できると同時に、第一混合物の流動性を適度な範囲に調整できるため好ましい。
【0023】
ベントナイトとしては、膨潤度が16ml/2g以上50ml/2g以下であってもよく、16ml/2g以上40ml/2g以下であってもよい。ベントナイトの膨潤度が前記範囲であることで、第一混合物の流動性をより長時間適度な範囲に維持できると共に、可塑性注入材の可塑性がより適度なものとなる。なお、ベントナイトの膨潤度は、日本ベントナイト工業会試験法(JBAS-104)によって求められるものであり、蒸留水もしくは純水の中にベントナイトを徐々に落としたときの水中で示す見掛け容積で表示されるものである。具体的には、純水又は蒸留水100ml中にベントナイト試料2gを落とし、落下後24時間放置して容器内の推積した試料の見掛け容積を読取るものである。
【0024】
第一混合物における可塑化材の含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、可塑性注入材の単位体積に対する質量割合が50kg/m以上300kg/m以下であってもよく、75kg/m以上150kg/m以下であってもよい。可塑化材の含有量が上記の範囲であることで、第一混合物の流動性をより適度な範囲に調整できると共に、可塑性注入材の可塑性がより適度なものとなる。
【0025】
アゾジカルボンアミド系発泡剤は、アルカリと接触して窒素ガスの気泡を発生する。また、アゾジカルボンアミド系発泡剤の添加形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、粉末であってもよく、顆粒状であってもよい。
【0026】
第一混合物におけるアゾジカルボンアミド系発泡剤の含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、可塑性注入材の単位体積に対する質量割合が0.1kg/m以上0.7kg/m以下であってもよく、0.1kg/m以上0.5kg/m以下であってもよい。
【0027】
水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用できる。第一混合における水の含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、第一混合物の単位体積に対する質量割合が700kg/m以上950kg/m以下であってもよく、800kg/m以上900kg/m以下であってもよい。水の含有量が上記の範囲であることで、第一混合物の流動性をより適度な範囲に調整できる。
【0028】
本実施形態における第一混合物は、必要に応じて他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、遅延剤、粘性調整剤等が挙げられる。
【0029】
上記のように構成される第一混合物は、作製後比較的長期間経過しても流動性を維持できるため、例えば、第一混合物の状態で保管しておくことで、可塑性注入材の施工可能な期間を長くできる。また、第一混合物の状態で流動性を比較的長期間維持できるため、可塑性注入材を施工した後で残る第一混合物を容易に回収でき、設備の洗浄等の作業を容易に行うことができる。
【0030】
上記のように構成される第一混合物は、高炉スラグを硬化させうる硬化助材と水とを含有する第二混合物と混合することで可塑性注入材を製造することができる。つまり、本実施形態に係る可塑性注入材は、第一混合物と第二混合物とを別々に調整してから混合することで作製される、所謂、二液式のものである。
【0031】
第二混合物を構成する硬化助材は、水の存在下、第一混合物中の高炉スラグと反応して水和反応を生じさせる(硬化性を発現させうる)材料をいう。硬化助材としては、特に限定されるものではなく、例えば、生石灰(酸化カルシウムCaO)、消石灰(水酸化カルシウムCa(OH))、苦土石灰(CaCO・MgCO)等の石灰、及び、セメント等が挙げられる。セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメントB種、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等が挙げられる。
【0032】
第二混合物における硬化助材の含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、第一混合物中の高炉スラグの質量に対して5質量%以上40質量%以下であってもよく、10質量%以上30質量%以下であってもよい。硬化助材の含有量が上記の範囲であることで、第一混合物と第二混合物とを混合した際に、硬化反応がより生じやすい。
【0033】
第二混合物を構成する水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用できる。第二混合物における水の含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、第二混合物の単位体積に対する質量割合が600kg/m以上900kg/m以下であってもよく、700kg/m以上800kg/m以下であってもよい。水の含有量が上記の範囲であることで、第二混合物の流動性をより適度な範囲に調整できる。
【0034】
本実施形態における第二混合物は、必要に応じて他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、流動化剤、粘性調整剤等が挙げられる。
【0035】
第一混合物と第二混合物との混合比としては、特に限定されるものではないが、例えば、第一混合物と第二混合物との体積比が80:20~95:5であってもよく、85:15~90:10であってもよい。
【0036】
本実施形態の可塑性注入材における水の含有量としては、特に限定されるものではなく、例えば、可塑性注入材の単位体積に対する質量割合が700kg/m以上900kg/m以下であってもよく、750kg/m以上850kg/m以下であってもよい。可塑性注入材における水の含有量が上記の範囲であることで、注入時に適度な流動性があり、硬化後に適度な強度を得ることができる。
【0037】
本実施形態の可塑性注入材は、空隙や空洞(以下、施工場所とも記す)に注入する際には適度な流動性を有すると同時に、注入後に周囲に流出することがない可塑性を有する。
【0038】
次に、上記のような可塑性注入材を製造する可塑性注入材の製造方法の一実施形態について説明する。
【0039】
本実施形態に係る可塑性注入材の製造方法は、上記の第一混合物と上記の第二混合物とを別々に作製しておき、任意のタイミングで第一混合物と第二混合物とを混合することで可塑性注入材を作製するものである。つまり、本実施形態の可塑性注入材の製造方法は、第一混合物を作製する工程と、第二混合物を作製する工程と、前記第一混合物と前記第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製する工程とを備える。
【0040】
第一混合物を作製する工程において、高炉スラグ、可塑化材、アゾジカルボンアミド系発泡剤、及び、水を混合する順序としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の順序で混合してもよい。
【0041】
即ち、まず初めに、高炉スラグと水とを混合して高炉スラグ分散液を作製する工程を実施し、その後、該高炉スラグ分散液と可塑化材とを混合する工程を実施する。可塑化材は、高炉スラグと混合する前に水と接触すると膨潤するため、まず、高炉スラグと水とを混合して高炉スラグ分散液を作製しておき、斯かる高炉スラグ分散液と可塑化材とを混合することで、可塑化材の膨潤による第一混合物の流動性の低下を抑制できる。これは、高炉スラグ分散液がアルカリ性を示すため、斯かるアルカリ性の分散液中では可塑化材の膨潤が抑制されるため、と考えられる。そして、アゾジカルボンアミド系発泡剤は、最後に混合することが好ましい。アゾジカルボンアミド系発泡剤を最後に混合することで、第一混合物の粘度の上昇をより抑制でき、第一混合物の流動性をより良好にできる。
【0042】
第一混合物を作製する工程において、各材料を混合する手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知のモルタル等の混合方法を採用できる。例えば、モルタルミキサー、ハンドミキサー等の混合装置を用いて、5℃~35℃、1分間~10分間の混合条件で混合することが挙げられる。
【0043】
第二混合物を作製する工程において、第二混合物の成分を混合する順序としては、特に限定されるものではない。また、第二混合物を作製する工程において、各材料を混合する手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、第一混合物を作製する工程と同様に公知の混合装置を用いて公知の混合条件でのモルタル等の混合方法を採用できる。
【0044】
第一混合物を作製する工程と第二混合物を作製する工程とは、同時に並行して行ってもよく、或いは、一方の工程を先に行い、他の工程を後から行ってもよい。
【0045】
第一混合物を作製する工程と第二混合物を作製する工程とを並行して行う場合には、それぞれの工程を実施した後、得られた第一混合物及び第二混合物を混合して可塑性注入材を作製する工程を実施する。
【0046】
一方の工程を先に行い、他の工程を後から行う場合には、例えば、以下のような方法が挙げられる。即ち、第一混合物を作製する工程を実施して第一混合物を得ておき、該第一混合物を施工場所付近まで移送する。そして、施工場所付近において第二混合物を作製する工程を実施して第二混合物を作製し、該第二混合物と、移送してきた第一混合物と混合して可塑性注入材を作製する工程を実施する。このように、第二混合物を作製する工程を施工場所付近において実施することで、第一混合物と第二混合物とを混合してから短時間で施工場所に可塑性注入材を注入できる。
【0047】
第一混合物と第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製する工程を実施する手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、第一混合物と第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製しつつ、該可塑性注入材を排出するノズルを用いてもよく、第一混合物や第二混合物の作製と同様に、公知のモルタル等の混合方法(例えば、モルタルミキサー、ハンドミキサー等の混合装置)を用いてもよい。
【0048】
次に、上述のような可塑性注入材の施工方法の一実施形態について説明する。
【0049】
本実施形態の可塑性注入材の施工方法は、上記の第一混合物を作製する工程と、上記の第二混合物を作製する工程と、上記の第一混合物と第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製する工程と、可塑性注入材を所望の施工場所に注入する工程とを備える。
【0050】
この場合、第一混合物を作製する工程および第二混合物を作製する工程を施工場所からは離れた場所(例えば、工場等)で実施し、得られた第一混合物及び第二混合物を別々に施工場所付近まで移送し、第一混合物及び第二混合物を混合して可塑性注入材を作製する工程を施工場所付近で実施してもよい。
【0051】
このように、第一混合物及び第二混合物を混合して可塑性注入材を作製する工程を、施工場所付近において実施することで、第一混合物と第二混合物とを混合してから短時間で施工場所に可塑性注入材を注入できる。
【0052】
本実施形態の可塑性注入材の施工方法は、第一混合物を施工場所付近まで移送する工程を備えてもよい。第一混合物を移送する工程を実施する手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホースやパイプ等の管体とポンプとを備える圧送手段であってもよく、タンクローリーやベルトコンベア等であってもよい。第一混合物は、比較的長期間流動性を維持するため、例えば、長い圧送手段を用いた長距離圧送の場合にも、ホース等の内部に詰まりが生じて圧送しにくくなることを抑制できる。
【0053】
本実施形態の可塑性注入材の施工方法は、第二混合物を施工場所付近まで移送する工程を備えてもよく、第二混合物を施工場所付近で作製する工程を備えてもよい。第二混合物を移送する工程を実施する手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、第一混合物を移送する手段(具体的には、圧送手段)と同様のものを用いることができる。
【0054】
第一混合物と第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製する工程は、施工場所から離れた場所で実施してもよいが、施工場所付近で実施することが好ましい。
【0055】
可塑性注入材を施工場所に注入する工程を実施する手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、可塑性注入材を作製する工程を実施しつつ、可塑性注入材を排出可能な注入ノズルを用いてもよく、公知のモルタル等の混合方法(例えば、モルタルミキサー、ハンドミキサー等の混合装置)を用いて作製した可塑性注入材を容器から施工場所に直接的に、又は、スコップ等を用いて流し込んでもよい。
【0056】
可塑性注入材を注入する施工場所としては、特に限定されるものではなく、例えば、地盤とコンクリート構造物との間の空洞や空隙、地盤中やコンクリート構造物中の空洞や空隙等が挙げられる。本実施形態に係る可塑性注入材は、適度な流動性と可塑性とを備えているため、狭い空洞や空隙等にも良好に注入できる。
【0057】
以上のように、本発明に係る可塑性注入材作製用の第一混合物、可塑性注入材、可塑性注入材の製造方法、及び、可塑性注入材の施工方法によれば、可塑性注入材の収縮を抑制できる。
【0058】
即ち、高炉スラグを含有する第一混合物がアゾジカルボンアミド系発泡剤を含有することで、第一混合物と第二混合物とが混合されてなる可塑性注入材の収縮(可塑性注入材が硬化する過程で生じる収縮、及び/又は、硬化した後の生じる収縮)を抑制できる。
【0059】
また、アゾジカルボンアミド系発泡剤の含有量が上記の範囲であることで、可塑性注入材の収縮を抑制できると共に、可塑性注入材が硬化した際に良好な圧縮強度を得ることができる。
【0060】
なお、本発明に係る可塑性注入材作製用の第一混合物、可塑性注入材、可塑性注入材の製造方法、及び、可塑性注入材の施工方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよい(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよい)。
【実施例0061】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
≪可塑性注入材の材料≫
高炉スラグ:高炉スラグ微粉末(日鉄スラグ製品社製)
可塑化材:ベントナイト(クニミネ工業社製、品名:クニゲルV1、膨潤度16ml/2g)
混和剤:ポリカルボン酸系減水剤(フローリック社製)
発泡剤1:アルミニウム系発泡剤(立花マテリアル社製)
発泡剤2:アゾジカルボンアミド系発泡剤(永和化成工業社製)
硬化助剤:消石灰(吉澤石灰工業社製)
水:上水道水
【0063】
<可塑性注入材の作製>
上記の各材料を用いて、下記表1~3の配合で第一混合物及び第二混合物を作製し、作製した第一混合物と第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製した。
具体的には、まず、水と高炉スラグとを混合装置(ハンドミキサー)で30秒間混合し、その後ベントナイトを添加して60秒間混合し、さらに、化学混和剤を添加して120秒間混合し、第一混合物を得た。
また、硬化助材と水とを混合装置(ハンドミキサー)で60秒間混合し、第二混合物を得た。
そして、得られた第一混合物と第二混合物とを混合装置(ハンドミキサー)で10秒間混合し、可塑性注入材を得た。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
<収縮率の測定>
第一混合物と第二混合物とを混合した直後の可塑性注入材に対して、NEXCO試験方法に準拠して、収縮率の測定を行った。型枠としては、φ10×高さ20cmの金属製型枠(商品名:サミットモールド)を用いた。収縮率の測定結果については、下記表4に示す。
【0068】
<圧縮強度の測定>
第一混合物と第二混合物とを混合して可塑性注入材を作製してから28日目に、JSCE G-505に基づいて、可塑性注入材の圧縮強度の測定を行った。圧縮強度の測定結果については、下記表4,5に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
<まとめ>
表4,5の各実施例と、それに対応する各比較例とを比較すると、各実施例の方が収縮率が小さいことが認められる。つまり、高炉スラグを用いて第一混合物を作製する場合、発泡剤として、アゾジカルボンアミド系発泡剤を用いることで、第一混合物と第二混合物とを混合して得られる可塑性注入材の収縮(可塑性注入材が硬化する過程で生じる収縮、及び/又は、硬化した後に生じる収縮)を抑制できる。
また、アゾジカルボンアミド系発泡剤の添加量が0.1kg/m以上0.7kg/m以下(特には、0.1kg/m以上0.5kg/m未満)であることで、可塑性注入材の収縮を抑制しつつ、良好な圧縮強度を得ることができる。