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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191816
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】圧電装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/02 20060101AFI20221221BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20221221BHJP
   H01L 41/053 20060101ALI20221221BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20221221BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20221221BHJP
   H04R 1/22 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
H04R17/02
H01L41/09
H01L41/053
H01L41/083
B06B1/06 Z
H04R1/22 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100270
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 愛美
(72)【発明者】
【氏名】大原 悠希
(72)【発明者】
【氏名】情家 智也
(72)【発明者】
【氏名】川合 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】片上 崇治
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝英
(72)【発明者】
【氏名】掛札 尚
(72)【発明者】
【氏名】桝本 尚己
【テーマコード(参考)】
5D004
5D018
5D107
【Fターム(参考)】
5D004AA02
5D004BB01
5D004CC10
5D004DD03
5D018BA03
5D107AA05
5D107BB08
5D107CC02
(57)【要約】
【課題】検出精度が低下することを抑制できる圧電装置を提供する。
【解決手段】圧電膜40と電極膜50とを含んで構成される複数の振動領域22を備える圧電素子1と、制御部2とを備える。複数の振動領域22は、互いの振動領域22の間がスリット30で分離され、電極膜50は、圧電膜40と接続されて圧電膜40の電荷に応じた圧力検出信号を出力する圧力電極膜510と、隣合う振動領域22の間の容量に応じた容量検出信号を出力する容量電極膜520と、振動領域22における支持領域21aと反対側の先端部を、支持体21aと振動領域22との積層方向に沿って変位させる駆動電圧が印加される駆動電極膜530と、を有する構成とする。そして、制御部2は、所定のタイミングにおいて、容量検出信号に基づき、容量検出信号が最大となるように、駆動電極膜530に印加する駆動電圧を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部(20)を有する圧電素子(1)を備えた圧電装置であって、
支持体(10)と、前記支持体上に配置され、圧電膜(40)と電極膜(50)とを含む構成とされ、前記支持体に支持される支持領域(21a)と、前記支持領域と繋がっていると共に前記支持領域と反対側の部分が前記支持体から浮遊している複数の振動領域(22)とを有する前記振動部と、を含む前記圧電素子と、
所定の処理を行う制御部(2)と、を備え、
前記複数の振動領域は、互いの前記振動領域の間がスリット(30)で分離されており、
前記電極膜は、前記圧電膜と接続されて前記圧電膜の電荷に応じた圧力検出信号を出力する圧力電極膜(510)と、隣合う前記振動領域の間の容量に応じた容量検出信号を出力する容量電極膜(520)と、前記振動領域における前記支持領域と反対側の先端部を、前記支持体と前記振動領域との積層方向に沿って変位させる駆動電圧が印加される駆動電極膜(530)と、を有し、
前記制御部は、所定のタイミングにおいて、前記容量検出信号に基づき、前記容量検出信号が最大となるように、前記駆動電極膜に印加する前記駆動電圧を調整する圧電装置。
【請求項2】
前記振動領域は、支持領域側の部分が第1領域(R1)とされると共に、前記支持領域と反対側の部分が第2領域(R2)とされ、
前記圧力電極膜は、前記第1領域に形成され、
前記容量電極膜および前記駆動電極膜は、前記第2領域に形成されている請求項1に記載の圧電装置。
【請求項3】
前記圧電膜は、下層圧電膜(41)と前記下層圧電膜上に配置された上層圧電膜(42)とを有し、
前記圧力電極膜は、前記下層圧電膜と前記上層圧電膜との間に配置された中間圧力電極膜(512)、前記下層圧電膜を挟んで前記中間圧力電極膜と反対側に配置された下層圧力電極膜(511)、および前記上層圧電膜を挟んで前記中間圧力電極膜と反対側に配置された上層圧力電極膜(513)を有し、
前記容量電極膜は、前記下層圧電膜と前記上層圧電膜との間に配置された中間容量電極膜(522)、前記下層圧電膜を挟んで前記中間容量電極膜と反対側に配置された下層容量電極膜(521)、および前記上層圧電膜を挟んで前記中間容量電極膜と反対側に配置された上層容量電極膜(523)を有し、
前記制御部は、前記スリットを挟んで隣合う前記振動領域にそれぞれ形成された、前記中間容量電極膜の容量検出信号、前記下層容量電極膜の容量検出信号、および前記上層容量電極膜の容量検出信号に基づいて前記駆動電圧を調整する請求項1または2に記載の圧電装置。
【請求項4】
前記圧電膜は、下層圧電膜(41)と前記下層圧電膜上に配置された上層圧電膜(42)とを有し、
前記容量電極膜は、前記スリットを挟んで隣合う前記振動領域の互いに対向する側面(22c)にそれぞれ形成された側面容量電極膜(524)を有し、
前記制御部は、隣合う前記振動領域の側面にそれぞれ形成された前記側面容量電極膜の容量検出信号に基づいて前記駆動電圧を調整する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の圧電装置。
【請求項5】
前記容量電極膜は、前記振動領域における前記支持体側と反対側の面を一面(22a)とすると共に前記振動領域における前記支持体側の面を他面(22b)とすると、前記一面側の一面側容量電極膜(524a)と、他面側容量電極膜(524b)とに分割されており、
前記制御部は、前記一面側容量電極膜の容量検出信号および前記他面側容量電極膜の容量検出信号に基づいて前記振動領域の反りの方向を判定し、判定結果に基づいて前記駆動電圧を調整する請求項4に記載の圧電装置。
【請求項6】
前記圧電膜は、下層圧電膜(41)と前記下層圧電膜上に配置された上層圧電膜(42)とを有し、
前記圧力電極膜は、前記下層圧電膜と前記上層圧電膜との間に配置された中間圧力電極膜(512)、前記下層圧電膜を挟んで前記中間圧力電極膜と反対側に配置された下層圧力電極膜(511)、および前記上層圧電膜を挟んで前記中間圧力電極膜と反対側に配置された上層圧力電極膜(513)を有し、
前記容量電極膜は、前記下層圧電膜を挟んで上層圧電膜と反対側に配置された下層容量電極膜(521)、前記上層圧電膜を挟んで前記下層圧電膜と反対側に配置された上層容量電極膜(523)、および前記スリットを挟んで隣合う前記振動領域の互いに対向する側面にそれぞれ形成された側面容量電極膜(524)を有し、
前記制御部は、前記下層容量電極膜の下層容量検出信号、前記上層容量電極膜の容量検出信号、および前記側面容量電極膜の側面容量検出信号に基づいて前記振動領域の反りの方向を判定し、判定結果に基づいて前記駆動電圧を調整する請求項1または2に記載の圧電装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記容量検出信号を最大に近づける所定の基準駆動電圧を記憶しており、前記駆動電圧を調整する際、前記基準駆動電圧を前記駆動電極膜に印加した後、前記容量検出信号に基づいて前記駆動電圧を調整する請求項1ないし6のいずれか1つに記載の圧電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動領域を有する圧電素子を備えた圧電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動領域を有する圧電素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この圧電素子は、支持体上に、圧電膜と、当該圧電膜と接続された電極膜とが積層された構成とされている。そして、圧電素子は、支持体に凹部が形成されており、圧電膜および電極膜の一部が支持体から浮遊した浮遊領域となっている。また、この圧電素子では、浮遊領域にスリットが形成されることにより、浮遊領域が複数の領域に分割されて振動領域が構成されている。そして、各振動領域は、支持体に片持ち支持された状態となっている。
【0003】
このような圧電素子は、以下のように製造される。すなわち、まず、支持体上に圧電膜および電極膜を形成する。次に、圧電膜にスリットを形成して振動領域構成部分を形成する。その後、支持体に凹部を形成し、振動領域構成部分を浮遊させて振動領域を構成することにより、上記圧電素子が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5936154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような圧電素子では、圧電素子を製造する際の残留応力により、振動領域が反ってしまう可能性がある。また、圧電素子は、圧電膜と電極膜との線膨張係数が異なるため、使用環境によって反ってしまう可能性がある。そして、このように振動領域が反ってしまった場合には、隣合う振動領域の間のスリット幅が広くなるため、スリットを介して圧力が抜け易くなり、特に、低周波数での検出精度が低下し易くなる。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、検出精度が低下することを抑制できる圧電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1は、振動部(20)を有する圧電素子(1)を備えた圧電装置であって、支持体(10)と、支持体上に配置され、圧電膜(40)と電極膜(50)とを含む構成とされ、支持体に支持される支持領域(21a)と、支持領域と繋がっていると共に支持領域と反対側の部分が支持体から浮遊している複数の振動領域(22)とを有する振動部と、を含む圧電素子と、所定の処理を行う制御部(2)と、を備えている。そして、複数の振動領域は、互いの振動領域の間がスリット(30)で分離されており、電極膜は、圧電膜と接続されて圧電膜の電荷に応じた圧力検出信号を出力する圧力電極膜(510)と、隣合う振動領域の間の容量に応じた容量検出信号を出力する容量電極膜(520)と、振動領域における支持領域と反対側の先端部を、支持体と振動領域との積層方向に沿って変位させる駆動電圧が印加される駆動電極膜(530)と、を有し、制御部は、所定のタイミングにおいて、容量検出信号に基づき、容量検出信号が最大となるように、駆動電極膜に印加する駆動電圧を調整する。
【0008】
これによれば、制御部は、所定のタイミングにおいて、容量検出信号に基づき、容量検出信号が最大となるように駆動電極膜に印加する駆動電圧を調整する。つまり、制御部は、所定のタイミングにおいて、振動領域の反りが低減するように駆動電極膜に印加する駆動電圧を調整する。このため、振動領域が反った状態で圧力を検出することを抑制でき、検出精度が低下することを抑制できる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における圧電装置の平面模式図である。
図2A図1中のIIA-IIA線に沿った断面図である。
図2B図1中のIIB-IIB線に沿った断面図である。
図3A】中間駆動電極膜をグランド電位とし、上層駆動電極膜および下層駆動電極膜に電圧を印加していない場合の振動領域の状態を示す模式図である。
図3B】中間駆動電極膜をグランド電位とし、上層駆動電極膜および下層駆動電極膜に正の電圧を印加した場合の振動領域の状態を示す模式図である。
図3C】中間駆動電極膜をグランド電位とし、上層駆動電極膜および下層駆動電極膜に負の電圧を印加した場合の振動領域の状態を示す模式図である。
図4】第2実施形態における圧電素子の断面図である。
図5】第3実施形態における圧電素子の断面図である。
図6】第4実施形態における圧電素子の断面図である。
図7】振動領域が大きく反った場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の圧電装置について、図1図2Aおよび図2Bを参照しつつ説明する。なお、本実施形態の圧電装置は、スマートフォンやAI(artificial intelligenceの略)スピーカ等に搭載されて用いられると好適である。なお、図1は、断面図ではないが、理解をし易くするため、後述する圧力電極膜510、容量電極膜520、駆動電極膜530にハッチングを施してある。
【0013】
本実施形態の圧電装置は、圧電素子1と制御部2とを備えている。まず、圧電素子1の構成について説明する。
【0014】
圧電素子1は、支持体10と、振動部20とを備え、平面形状が矩形状とされている。支持体10は、一面11aおよび他面11bを有する支持基板11と、支持基板11の一面11a上に形成された絶縁膜12とを有している。なお、支持基板11は、例えば、シリコン基板等で構成され、絶縁膜12は、酸化膜等で構成されている。
【0015】
振動部20は、支持体10上に配置されている。そして、支持体10には、振動部20における内縁側を浮遊させるための凹部10aが形成されている。このため、振動部20は、支持体10上に配置された支持領域21aと、支持領域21aと繋がっていると共に凹部10a上で浮遊する浮遊領域21bとを有する構成となっている。なお、本実施形態の凹部10aは、振動部20側の開口端の形状が平面矩形状とされている。したがって、浮遊領域21bの全体は、平面矩形状とされている。
【0016】
浮遊領域21bには、当該浮遊領域21bを厚さ方向に貫通するスリット30が形成されている。本実施形態のスリット30は、浮遊領域21bを4分割するように形成されている。詳しくは、スリット30は、浮遊領域21bの中心部Cを通り、浮遊領域21bの相対する角部に向かって延設されるように、2本形成されている。言い換えると、スリット30は、平面矩形状とされた浮遊領域21bの各角部から中心部Cに向かって延設されると共に、中心部Cにて各スリット30が交差するように形成されている。これにより、浮遊領域21bは、略平面三角形状とされた4つの振動領域22に分離されている。特に限定されるものではないが、本実施形態では、各振動領域22同士の間隔(すなわち、スリット30の幅)が1μm程度とされている。
【0017】
そして、各振動領域22は、支持領域21a側の端部が固定端とされ、支持領域21aと反対側の先端部(以下では、単に先端部ともいう)が自由端とされたカンチレバーとされている。以下では、振動領域22における支持体10と反対側の面を振動領域22の一面22aとし、振動領域22における支持体10側の面を振動領域22の他面22bとして説明する。
【0018】
振動部20は、圧電膜40および圧電膜40と接続される電極膜50を有する構成とされている。具体的には、圧電膜40は、下層圧電膜41と、下層圧電膜41上に積層される上層圧電膜42とを有している。なお、下層圧電膜41および上層圧電膜42は、窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN)や、窒化アルミニウム(AlN)等の鉛フリーの圧電セラミックス等を用いて構成されている。
【0019】
電極膜50は、圧電膜40と接続されるように振動領域22の所定箇所に形成されており、モリブデン、銅、プラチナ、白金、チタン等を用いて構成されている。本実施形態では、電極膜50として、下層圧電膜41の下方に形成された下層電極膜51と、下層圧電膜41と上層圧電膜42との間に形成された中間電極膜52と、上層圧電膜42の上方に形成された上層電極膜53とが形成されている。なお、下層電極膜51と中間電極膜52とは、下層圧電膜41を挟んで対向するように配置されている。中間電極膜52と上層電極膜53とは、上層圧電膜42を挟んで対向するように配置されている。そして、下層電極膜51、中間電極膜52、および上層電極膜53は、振動領域22の一面22aに対する法線方向において同様の形状とされている。以下、本実施形態における電極膜50の配置箇所について、さらに詳しく説明する。
【0020】
まず、上記のような振動領域22が片持ち支持されている場合、振動領域22(すなわち、圧電膜40)が振動した際に発生する応力は、振動領域22が支持されている固定端側が自由端側より大きくなり易い。このため、振動領域22は、応力が大きくなり易い第1領域R1と、応力が小さくなり易い第2領域R2とに分けられている。そして、本実施形態では、第1領域R1および第2領域R2のそれぞれに電極膜50が形成されている。なお、第1領域R1に形成される電極膜50と第2領域R2に形成される電極膜50とは、それぞれ異なる機能を発揮するため、互いに絶縁された状態となっている。
【0021】
第1領域R1に形成されている電極膜50は、振動領域22の振動を検出する圧力電極膜510として機能する。以下では、第1領域R1に形成されている下層電極膜51を下層圧力電極膜511とし、中間電極膜52を中間圧力電極膜512とし、上層電極膜53を上層圧力電極膜513として説明する。そして、圧力電極膜510は、振動領域22が振動することで上層圧電膜42および下層圧電膜41の電荷が変化するため、当該電荷の変化に応じた圧力検出信号を出力する。具体的には、下層圧力電極膜511、中間圧力電極膜512、上層圧力電極膜513は、特に図示しないが、支持領域21aに形成された配線等を介し、制御部2と接続されるための電極と接続されている。そして、本実施形態では、各振動領域22の第1領域R1における電荷の変化を1つの圧力検出信号として出力するように、各振動領域22におけるそれぞれの下層圧力電極膜511、中間圧力電極膜512、上層圧力電極膜513が電極と接続されている。
【0022】
第2領域R2には、外縁部側および内縁部側に電極膜50が形成されている。但し、外縁部側に形成されている電極膜50と内縁部側に形成されている電極膜50とは絶縁されている。
【0023】
第2領域R2の外縁部側に形成されている電極膜50は、隣合う振動領域22の間の容量を検出する容量電極膜520として機能する。なお、本実施形態における隣合う振動領域22とは、中心部Cを基準として、周方向に隣合う振動領域22のことを意味している。言い換えると、本実施形態における隣合う振動領域22とは、中心部Cを挟まずに隣合う振動領域22のことを意味している。以下では、第2領域R2の外縁部に形成されている下層電極膜51を下層容量電極膜521とし、中間電極膜52を中間容量電極膜522とし、上層電極膜53を上層容量電極膜523として説明する。
【0024】
そして、隣合う振動領域22に形成されて対向する下層容量電極膜521、中間容量電極膜522、上層容量電極膜523は、隣合う振動領域22の間の容量に応じた容量検出信号を出力する。具体的には、下層容量電極膜521、中間容量電極膜522、上層容量電極膜523は、振動領域22に形成された引出配線61および支持領域21aに形成された図示しない配線等を介し、制御部2と接続されるための電極と接続されている。そして、本実施形態では、各振動領域22の間の容量が容量検出信号として出力されるように、各振動領域22に形成された下層容量電極膜521、中間容量電極膜522、上層容量電極膜523が接続されている。なお、容量検出信号は、下層容量電極膜521の間の容量、中間容量電極膜522の間の容量、上層容量電極膜523の間の容量の合計が出力されるようになっていてもよいし、各容量がそれぞれ別に出力されるようになっていてもよい。
【0025】
また、第2領域R2の内縁部側に形成されている電極膜50は、振動領域22を変位させる(すなわち、駆動させる)駆動電圧が印加される駆動電極膜530として機能する。以下では、第2領域R2の内縁部に形成されている下層電極膜51を下層駆動電極膜531とし、中間電極膜52を中間駆動電極膜532とし、上層電極膜53を上層駆動電極膜533として説明する。
【0026】
下層駆動電極膜531、中間駆動電極膜532、上層駆動電極膜533は、振動領域22に形成された引出配線62および支持領域21aに形成された図示しない配線等を介し、制御部2と接続されるための電極と接続されている。そして、各駆動電極膜531~533には、後述するように、容量検出信号に基づいて所定の駆動電圧が印加される。
【0027】
なお、本実施形態では、下層圧力電極膜511、下層容量電極膜521、および下層駆動電極膜531は、それぞれ下層圧電膜41の下方に配置されており、共通の金属膜がパターニングされることで構成される。同様に、中間圧力電極膜512、中間容量電極膜522、および中間駆動電極膜532は、それぞれ下層圧電膜41と上層圧電膜42との間に配置されており、共通の金属膜がパターニングされることで構成される。また、上層圧力電極膜513、上層容量電極膜523、および上層駆動電極膜533は、それぞれ上層圧電膜42の上方に配置されており、共通の金属膜がパターニングされることで構成される。
【0028】
さらに、本実施形態の振動部20は、下層圧電膜41および下層電極膜51が配置される下地膜70を有している。つまり、支持体10上には、下地膜70を介して圧電膜40および電極膜50が配置されている。下地膜70は、必ずしも必要なものではないが、下層圧電膜41等を成膜する際の結晶成長をし易くするために備えられている。なお、本実施形態では、下地膜70は窒化アルミニウム等で構成される。また、圧電膜40は、厚さが1μm程度とされており、下地膜70は、厚さが数十nm程度とされている。つまり、下地膜70は、圧電膜40に対して極めて薄くされている。
【0029】
以上が本実施形態における圧電素子1の構成である。制御部2は、CPUや、ROM、RAM、不揮発性RAM等の記憶部を備えたマイクロコンピュータ等で構成されており、圧電素子1と接続されている。そして、制御部2は、CPUがROM、または不揮発性RAMからプログラムを読み出して実行することで各種の制御作動を実現する。なお、ROM、または不揮発性RAMには、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータ(例えば、初期値、ルックアップテーブル、マップ等)が予め格納されている。また、ROM等の記憶媒体は、非遷移的実体的記憶媒体である。CPUは、Central Processing Unitの略であり、ROMは、Read Only Memoryの略であり、RAMは、Random Access Memoryの略である。
【0030】
具体的には、制御部2は、容量電極膜520からの容量検出信号に基づき、振動領域22の反りの状態を把握する。詳しくは、隣合う振動領域22の間の容量は、隣合う振動領域22が反っていない場合に最も各容量電極膜520の間隔が短くなるため、最大となる。そして、隣合う振動領域22の間の容量は、振動領域22が反ると各容量電極膜520の間隔が長くなるため、小さくなる。このため、制御部2は、容量検出信号の大きさに基づいて振動領域22の反りの状態を把握する。
【0031】
そして、制御部2は、容量検出信号に基づき、駆動電極膜530に駆動電圧を印加することで圧電膜40を変位させることにより、振動領域22の反りを低減する低減処理を行う。以下、振動領域22の反りを低減する方法について、図3A図3Cを参照しつつ説明する。なお、図3A図3Cでは、圧力電極膜510および容量電極膜520を省略した模式図を示している。また、図3A図3Cでは、下層圧電膜41と上層圧電膜42との積層方向に沿った方向をY軸方向とし、下層圧電膜41および上層圧電膜42の面方向に沿った方向をX軸方向とする。また、以下では、Y軸方向において、下層圧電膜41から上層圧電膜42に向かう側を正側とし、上層圧電膜42から下層圧電膜41に向かう側を負側とする。
【0032】
まず、図3Aに示されるように、中間駆動電極膜532がグランド電位とされ、下層駆動電極膜531および上層駆動電極膜533に駆動電圧が印加されていない場合について説明する。この場合、下層圧電膜41における双極子D、および上層圧電膜42における双極子Dは、中立状態となっている。
【0033】
そして、図3Bに示されるように、下層駆動電極膜531および上層駆動電極膜533に正の駆動電圧を印加すると、上層圧電膜42では、双極子Dの正極側が上層駆動電極膜533と反発すると共に負極側が上層駆動電極膜533に引き寄せられる。このため、上層圧電膜42は、双極子Dが図中の矢印のようにY軸方向における負側に回転し、X軸方向に延びようとする。これに対し、下層圧電膜41では、双極子Dの正極側が下層駆動電極膜531と反発すると共に負極側が下層駆動電極膜531に引き寄せられる。このため、下層圧電膜41は、双極子Dが図中の矢印のようにY軸方向における正側に回転し、X軸方向に縮もうとする。したがって、振動領域22の先端部は、Y軸方向における負側に変位する。つまり、下層駆動電極膜531および上層駆動電極膜533に正の駆動電圧を印加した場合、振動領域22の先端部は、振動領域22の他面22b側に変位する。
【0034】
また、図3Cに示されるように、下層駆動電極膜531および上層駆動電極膜533に負の駆動電圧を印加すると、上層圧電膜42では、双極子Dの正極側が上層駆動電極膜533に引き寄せられ、負極側が上層駆動電極膜533と反発する。このため、上層圧電膜42は、双極子Dが図中の矢印のようにY軸方向における正側に回転し、X軸方向に縮もうとする。これに対し、下層圧電膜41では、双極子Dの正極側が下層駆動電極膜531に引き寄せられると共に負極側が下層駆動電極膜531と反発する。このため、下層圧電膜41は、双極子Dが図中の矢印のようにY軸方向における負側に回転し、X軸方向に延びようとする。したがって、振動領域22の先端部は、Y軸方向における正側に変位する。つまり、下層駆動電極膜531および上層駆動電極膜533に負の駆動電圧を印加した場合、振動領域22の先端部は、振動領域22の一面22a側に変位する。
【0035】
このため、制御部2は、容量電極膜520からの容量検出信号に基づいて振動領域22が反っていると判定した場合には、駆動電極膜530に印加する電圧を調整して振動領域22の反りを低減する低減処理を行う。なお、本実施形態では、4つの振動領域22が構成されている。このため、制御部2は、各振動領域22の反りが低減するように、各振動領域22に対して低減処理を行う。例えば、制御部2は、まず、所定の隣合う2つの振動領域22に対し、印加する駆動電圧を増減させることで反りを低減する低減処理を行う。次に、反りを低減する処理を行った一方の振動領域22と、当該振動領域22と隣合う振動領域22であって、反りの低減処理を行っていない振動領域22とに対し、印加する駆動電圧を増減させることで反りを低減する低減処理を行う。その後、制御部2は、残りの振動領域22に対しても順次同様の処理を行い、全ての振動領域22に対し、印加する駆動電圧を増減させることで反りを低減する低減処理を行う。
【0036】
また、制御部2が低減処理を行う場合には、記憶部等に基準駆動電圧を記憶させると共に基準駆動電圧を最初に印加するようにし、その後に印加する駆動電圧を微調整するようにしてもよい。基準駆動電圧は、例えば、圧電素子1が製造された際の残留応力等での反りを最小にする駆動電圧とされる。言い換えると、基準駆動電圧は、例えば、圧電素子1が製造された直後の容量検出信号が最大となる駆動電圧とされる。これによれば、低減処理に関する時間を短くできると共に、制御部2側のプログラムを簡素化できる。
【0037】
なお、基準駆動電圧は、次のように設定してもよい。まず、隣合う振動領域22における一方の容量電極膜520に正電圧を印加すると共に他方の容量電極膜520に負電圧を印加する。これにより、隣合う振動領域22の間に静電引力が発生し、振動領域22が反っている場合には、振動領域22が変位して反りが低減する。そして、振動領域22が変位した場合には、駆動電極膜530から当該変位に基づく調整信号が出力される。また、振動領域22が反っていない場合には、隣合う振動領域22の容量電極膜520に印加する電圧を大きくしても調整信号が変化しない。このため、隣合う容量電極膜520に印加する電圧の大きさを調整し、調整信号が変化しなくなった際の電圧に基づいて基準駆動電圧を設定するようにしてもよい。
【0038】
さらに、基準駆動電圧は、後述するように低減処理を定期的に行う場合、振動領域22の低減処理を行う毎に更新されるようにしてもよく、前回の低減処理で設定した駆動電圧を基準駆動電圧とするようにしてもよい。これによれば、振動領域22における経時的な反りに対しても、基準駆動電圧を設定することによる効果を得ることができる。
【0039】
以上が本実施形態における圧電装置の構成である。次に、上記圧電装置における作動について説明する。
【0040】
まず、制御部2は、音圧等の圧力を検出する前の所定のタイミングにおいて、上記のように振動領域22の低減処理を行う。なお、この処理は、例えば、圧電装置が工場等で生産された際に行われる。また、この処理は、例えば、圧電装置が搭載される機器がオフ状態からオン状態にされた直後や所定期間毎等、定期的に行われる。
【0041】
そして、圧電装置は、振動領域22の反りが低減された状態において、振動領域22に印加される圧力(例えば、音圧)の検出を行う。具体的には、振動領域22に圧力が印加されると、振動領域22が振動する。そして、下層圧電膜41および上層圧電膜42には、振動領域22の変位に応じた応力に基づく電荷が発生する。このため、圧電装置は、圧力電極膜510からの圧力検出信号に基づき、振動領域22に印加されている圧力を検出する。この際、振動領域22の反りが低減されているため、検出精度が低下することを抑制できる。
【0042】
以上説明した本実施形態によれば、制御部2は、容量検出信号に基づき、振動領域22の反りを低減する低減処理を行う。このため、振動領域22が反った状態で圧力を検出することを抑制でき、検出精度が低下することを抑制できる。また、このように振動領域22の反りを低減するため、制御部2が低減処理を定期的に行うことにより、振動領域22の経時的な反りを抑制することもできる。
【0043】
(1)本実施形態では、圧力電極膜510、容量電極膜520、および駆動電極膜530は、それぞれ圧電膜40に対して同様に配置されている。すなわち、下層圧力電極膜511、下層容量電極膜521、および下層駆動電極膜531は、それぞれ下層圧電膜41の下方に配置されている。中間圧力電極膜512、中間容量電極膜522、および中間駆動電極膜532は、それぞれ下層圧電膜41と上層圧電膜42との間に配置されている。上層圧力電極膜513、上層容量電極膜523、および上層駆動電極膜533は、それぞれ上層圧電膜42の上方に配置されている。このため、下層圧力電極膜511、下層容量電極膜521、および下層駆動電極膜531を配置する際には、金属膜を配置した後に当該金属膜をパターニングすることにより、下層圧力電極膜511、下層容量電極膜521、および下層駆動電極膜531を同時に配置できる。同様に、中間圧力電極膜512、中間容量電極膜522、および中間駆動電極膜532を配置する際には、金属膜を配置した後に当該金属膜をパターニングすることにより、中間圧力電極膜512、中間容量電極膜522、および中間駆動電極膜532を同時に配置できる。上層圧力電極膜513、上層容量電極膜523、および上層駆動電極膜533を配置する際には、金属膜を配置した後に当該金属膜をパターニングすることにより、上層圧力電極膜513、上層容量電極膜523、および上層駆動電極膜533を同時に配置できる。したがって、圧電素子1を製造する際の工程の簡略化を図ることができる。
【0044】
(2)本実施形態では、制御部2が振動領域22の反りに関する低減処理を行う際、基準駆動電圧を用いることにより、低減処理に関する時間を短くできると共に、制御部2側のプログラムを簡素化できる。
【0045】
(3)本実施形態では、容量検出信号に基づき、制御部2が振動領域22の反りに関する低減処理を行う。このため、例えば、振動領域22を形成する際に圧電膜40や電極膜50等の厚さを調整して振動領域22の反りを低減しようとする場合と比較して、製造工程の簡略化を図ることができ、歩留まりが低下することも抑制できる。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、容量電極膜520の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
本実施形態の圧電素子1では、図4に示されるように、振動領域22におけるスリット30から露出する面を側面22cとすると、振動領域22の第2領域R2における各側面22cに、容量電極膜520としての側面容量電極膜524が形成されている。なお、本実施形態では、下層圧電膜41の下方、下層圧電膜41と上層圧電膜42との間、および上層圧電膜42の上方に容量電極膜520が形成されていない。また、図4は、図1中のIIB-IIB線に沿った断面図に相当している。
【0048】
そして、本実施形態の制御部2は、隣合う振動領域22における側面容量電極膜524の間の容量に応じた容量検出信号に基づき、振動領域22の反りを低減する低減処理を行う。
【0049】
以上説明した本実施形態によれば、容量検出信号に基づいて振動領域22の反りを低減するため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
(1)本実施形態では、容量電極膜520が振動領域22の第2領域R2における各側面22cに形成されている。このため、隣合う振動領域22における対向する容量電極膜520の面積を大きくし易くなり、対向する容量電極膜520の間の容量を大きくできる。したがって、信号とノイズとの比であるSN比を大きくでき、ノイズの影響を小さくできる。
【0051】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対し、容量電極膜520の構成を変更したものである。その他に関しては、第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0052】
本実施形態の圧電素子1では、図5に示されるように、側面容量電極膜524は、振動領域22の一面22a側に位置する一面側容量電極膜524aと、振動領域22の他面22b側に位置する他面側容量電極膜524bとに分割されている。そして、圧電素子1は、隣合う振動領域22に形成された一面側容量電極膜524aの間の容量に応じた第1容量検出信号を出力すると共に、隣合う振動領域22に形成された他面側容量電極膜524bの間の容量に応じた第2容量検出信号を出力する。
【0053】
なお、図5は、図1中のIIB-IIB線に沿った断面図に相当している。また、特に限定されるものではないが、本実施形態では、一面側容量電極膜524aと他面側容量電極膜524bとは、下層圧電膜41と上層圧電膜42との境界で分割されている。
【0054】
制御部2は、第1容量検出信号および第2容量検出信号に基づき、振動領域22の反りの方向を判定して駆動電極膜530に印加する駆動電圧を調整する。具体的には、振動領域22が一面22a側に反った場合、隣合う振動領域22における対向する一面側容量電極膜524aの間隔は、対向する他面側容量電極膜524bの間隔よりも長くなる。このため、第1容量検出信号は第2容量検出信号より小さくなる。これに対し、振動領域22が他面22b側に反った場合、隣合う振動領域22における対向する一面側容量電極膜524aの間隔は、対向する他面側容量電極膜524bの間隔よりも短くなる。このため、第1容量検出信号は第2容量検出信号よりも大きくなる。
【0055】
したがって、制御部2は、第1容量検出信号および第2容量検出信号に基づいて振動領域22の反っている方向を判定し、判定結果に基づいて駆動電極膜530に印加する駆動電圧を調整する。具体的には、制御部2は、第1容量検出信号が第2容量検出信号より小さい場合には、振動領域22の先端部が一面22a側に反っていると判定する。そして、制御部2は、上記図3Bを参照して説明したように、上層駆動電極膜533および下層駆動電極膜531に正の駆動電圧を印加することにより、振動領域22の先端部を他面22b側に変位させる。また、制御部2は、第1容量検出信号が第2容量検出信号より大きい場合には、振動領域22の先端部が他面22b側に反っていると判定する。そして、制御部2は、上記図3Cを参照して説明したように、上層駆動電極膜533および下層駆動電極膜531に負の駆動電圧を印加することにより、振動領域22の先端部を一面22a側に変位させる。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、容量検出信号に基づいて振動領域22の反りを低減するため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(1)本実施形態では、制御部2は、振動領域22が反っている方向を判定し、判定結果に基づいて下層駆動電極膜531および上層駆動電極膜533に印加する駆動電圧を調整する。このため、反りの低減処理に関する時間を短くできる。
【0058】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に、第1実施形態の下層容量電極膜521および上層容量電極膜523を組み合わせたものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0059】
本実施形態の圧電素子1は、第2実施形態に、第1実施形態の下層容量電極膜521および上層容量電極膜523を組み合わせたものである。具体的には、容量電極膜520は、図6に示されるように、下層容量電極膜521、上層容量電極膜523、および側面容量電極膜524を有する構成とされている。そして、圧電素子1は、隣合う振動領域22に形成された側面容量電極膜524の間の容量に関する側面側容量検出信号を出力する。圧電素子1は、隣合う振動領域22に形成された上層容量電極膜523の間の容量に関する上層側容量検出信号を出力する。圧電素子1は、隣合う振動領域22に形成された下層容量電極膜521の間の容量に関する下層容量検出信号を出力する。なお、図6は、図1中のIIB-IIB線に沿った断面図に相当している。また、本実施形態では、中間容量電極膜522が形成されていない。
【0060】
制御部2は、側面側容量検出信号、上層容量検出信号、および下層容量検出信号に基づき、振動領域22の反りの方向を判定して駆動電極膜530に印加する駆動電圧を調整する。
【0061】
具体的には、図7に示されるように、振動領域22が大きく反った場合には、側面容量電極膜524の対向する面積が小さくなることにより、側面容量電極膜524の間の容量が小さくなる。この場合、図7の例では、振動領域22が一面22a側に大きく反っているため、下層容量電極膜521の対向する面積が大きくなることで下層容量検出信号が大きくなる。これに対し、特に図示しないが、振動領域22が他面22b側に大きく反った場合には、上層容量電極膜523の対向する面積が大きくなることで上層容量検出信号が大きくなる。
【0062】
したがって、制御部2は、側面容量検出信号、上層容量検出信号、および下層容量検出信号に基づいて振動領域22の反っている方向を判定し、判定結果に基づいて駆動電極膜530に印加する駆動電圧を調整する。具体的には、制御部2は、上記第3実施形態と同様に、振動領域22の先端部が一面22a側に反っていると判定した場合には、上層駆動電極膜533および下層駆動電極膜531に正の駆動電圧を印加することにより、振動領域22の先端部を他面22b側に変位させる。また、制御部2は、振動領域22の先端部が他面22b側に反っていると判定した場合には、上層駆動電極膜533および下層駆動電極膜531に負の駆動電圧を印加することにより、振動領域22の先端部を一面22a側に変位させる。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、容量検出信号に基づいて振動領域22の反りを低減するため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
(1)本実施形態では、制御部2は、振動領域22が反っている方向を判定し、判定結果に基づいて下層駆動電極膜531および上層駆動電極膜533に印加する駆動電圧を調整する。このため、上記第3実施形態と同様に、反りの低減処理に関する時間を短くできる。
【0065】
(2)本実施形態では、側面容量電極膜524に加え、下層容量電極膜521および上層容量電極膜523も形成されている。このため、振動領域22が大きく反ることで側面容量検出信号が小さくなる場合においても、好適に振動領域22の反りを低減できる。
【0066】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0067】
例えば、上記各実施形態において、浮遊領域21bは、平面形状が矩形状ではなく、五角形状、六角形状、八角形状等の多角形状とされていてもよい。また、浮遊領域21bに形成される振動領域22の数は適宜変更可能である。さらに、圧電素子1は、平面形状が矩形状ではなく、五角形状や六角形状等の多角形状とされていてもよい。
【0068】
さらに、上記各実施形態において、圧力電極膜510、容量電極膜520、駆動電極膜530の形成される位置は適宜変更可能である。例えば、圧力電極膜510は、第2領域R2に形成されていてもよいし、容量電極膜520および駆動電極膜530は、第1領域R1に形成されていてもよい。また、容量電極膜520は、各振動領域22における自由端側に形成されていてもよい。この場合、制御部2は、浮遊領域21bにおける中心部Cを挟んで隣合う各振動領域22の間の容量検出信号に基づいて振動領域22の反りを低減する低減処理を行うようにしてもよい。
【0069】
そして、上記各実施形態を適宜組み合わせるようにしてもよい。例えば、上記第3実施形態を上記第4実施形態に組み合わせ、側面容量電極膜524は、一面側容量電極膜524aと他面側容量電極膜524bとを有する構成としてもよい。
【0070】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 圧電素子
2 制御部
10 支持体
21a 支持領域
22 振動領域
30 スリット
40 圧電膜
50 電極膜
510 圧力電極膜
520 容量電極膜
530 駆動電極膜
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7