(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022191960
(43)【公開日】2022-12-28
(54)【発明の名称】クリーニング方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20221221BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20221221BHJP
C23C 16/511 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H01L21/31 C
C23C16/44 J
C23C16/511
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100503
(22)【出願日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 保
(72)【発明者】
【氏名】本多 稔
(72)【発明者】
【氏名】野上 隆文
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA18
4K030BA29
4K030BA37
4K030BA40
4K030BA41
4K030BA44
4K030DA06
4K030FA01
5F045AA08
5F045AB06
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC01
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045BB15
5F045DP03
5F045EB03
5F045EB06
5F045EC05
5F045EH04
5F045EH20
5F045EK07
5F045EM05
5F045EM09
(57)【要約】
【課題】パーティクルを低減する。
【解決手段】アルミナ製の透過窓を介してマイクロ波をチャンバ内に導入し、処理ガスのプラズマにより基板に対して処理を行うプラズマ処理装置のクリーニング方法であって、前記クリーニング方法は、フッ素含有ガスのプラズマによるクリーニングを行う工程と、前記クリーニングを行った後に希ガスとH
2ガスのプラズマによるシーズニングを行う工程と、を有し、前記シーズニングを行う工程は、前記希ガスに対する前記H
2ガスの濃度が第1濃度である第1工程と、前記希ガスに対する前記H
2ガスの濃度が前記第1濃度と異なる第2濃度である第2工程と、を有し、前記第1工程と前記第2工程を含む一連の工程を複数回繰り返すクリーニング方法が提供される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ製の透過窓を介してマイクロ波をチャンバ内に導入し、処理ガスのプラズマにより基板に対して処理を行うプラズマ処理装置のクリーニング方法であって、
前記クリーニング方法は、
フッ素含有ガスのプラズマによるクリーニングを行う工程と、
前記クリーニングを行った後に希ガスとH2ガスのプラズマによるシーズニングを行う工程と、を有し、
前記シーズニングを行う工程は、
前記希ガスに対する前記H2ガスの濃度が第1濃度である第1工程と、
前記希ガスに対する前記H2ガスの濃度が前記第1濃度と異なる第2濃度である第2工程と、を有し、
前記第1工程と前記第2工程を含む一連の工程を複数回繰り返すクリーニング方法。
【請求項2】
前記シーズニングを行う工程は、
更に、前記第1濃度及び前記第2濃度と異なる第3濃度である第3工程を有し、
前記第1工程~前記第3工程を含む一連の工程を複数回繰り返す、
請求項1に記載のクリーニング方法。
【請求項3】
前記シーズニングを行う工程は、前記チャンバ内に付着したSi及びNを含むAlF化合物を安定化させる、
請求項1又は2に記載のクリーニング方法。
【請求項4】
前記シーズニングを行う工程は、前記AlF化合物をAlFに改質する、
請求項3に記載のクリーニング方法。
【請求項5】
前記一連の工程を5回以上繰り返す、
請求項1~4のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項6】
前記クリーニングを行う工程の前に前記処理ガスのプラズマによりシリコン含有膜を成膜する工程を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項7】
前記シリコン含有膜はシリコン窒化膜である、
請求項6に記載のクリーニング方法。
【請求項8】
前記希ガスに対する前記H2ガスの濃度は、0.1以上10以下である、
請求項1~7のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項9】
チャンバと、アルミナ製の透過窓と、制御部とを有するプラズマ処理装置であって、
前記制御部は、
前記透過窓を介してマイクロ波をチャンバ内に導入し、処理ガスのプラズマにより基板にシリコン含有膜を成膜する工程と、
フッ素含有ガスのプラズマによるクリーニングを行う工程と、
前記クリーニングを行った後に希ガスとH2ガスのプラズマによるシーズニングを行う工程と、を含む工程を制御し、
前記シーズニングを行う工程において、
前記希ガスに対する前記H2ガスの濃度が第1濃度である第1工程と、
前記希ガスに対する前記H2ガスの濃度が前記第1濃度と異なる第2濃度である第2工程と、を含む一連の工程を複数回繰り返すように制御する、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クリーニング方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、マイクロ波プラズマにより基板を処理するチャンバのクリーニング方法を提案する。特許文献1では、フッ素含有ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスを含むクリーニングガスを導入する工程と、マイクロ波パワーを供給する工程と、を有し、前記クリーニングガスを導入する工程は、アルゴンガスに対するヘリウムガスの流量比を2/3~9の範囲内にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、パーティクルを低減できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、アルミナ製の透過窓を介してマイクロ波をチャンバ内に導入し、処理ガスのプラズマにより基板に対して処理を行うプラズマ処理装置のクリーニング方法であって、前記クリーニング方法は、フッ素含有ガスのプラズマによるクリーニングを行う工程と、前記クリーニングを行った後に希ガスとH2ガスのプラズマによるシーズニングを行う工程と、を有し、前記シーズニングを行う工程は、前記希ガスに対する前記H2ガスの濃度が第1濃度である第1工程と、前記希ガスに対する前記H2ガスの濃度が前記第1濃度と異なる第2濃度である第2工程と、を有し、前記第1工程と前記第2工程を含む一連の工程を複数回繰り返すクリーニング方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、パーティクルを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面模式図。
【
図2】実施形態に係るシーズニングの対象であるAlF化合物を説明するための図。
【
図3】実施形態に係るクリーニング方法を示すフローチャート。
【
図4】実施形態に係るシーズニング方法を示すフローチャート。
【
図5】実施形態に係るシーズニング時のガス及びマイクロ波のタイミングチャート。
【
図6】
図4のサイクル回数とパーティクル数の相関の一例を示す実験結果のグラフ。
【
図7】実施形態に係るシーズニング方法による付着物の改質結果の一例を示すグラフ。
【
図8】実施形態に係るシーズニング方法の実行後の成膜結果の一例を示すグラフ。
【
図9】実施形態及び参考例に係るサイクル回数とパーティクル数の相関の一例を示す実験結果のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[プラズマ処理装置]
実施形態に係るプラズマ処理装置について、
図1を用いて説明する。
図1は、プラズマ処理装置の一例を示す断面模式図である。以下では、実施形態に係る成膜方法及びクリーニング方法を実行するプラズマ処理装置の一例としてマイクロ波プラズマ処理装置100を挙げて説明する。本開示のマイクロ波プラズマ処理装置100は、RLSA(登録商標)マイクロ波プラズマ処理装置である。マイクロ波プラズマ処理装置は、半導体ウェハ等の基板WにプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により例えばシリコン窒化膜(SiN)等のシリコン含有膜を成膜する。
【0010】
マイクロ波プラズマ処理装置100は、気密に構成され、接地された円筒状のチャンバ1を有している。チャンバ1の底壁1aの略中央部には円形の開口部10が形成されており、底壁1aには開口部10と連通し、下方に向けて突出する排気室11が設けられている。
【0011】
チャンバ1の内壁は、アルミニウム等の金属材料に例えばアルミナ(Al2O3)又はイットリア(Y2O3)の溶射が施されている。チャンバ1内には基板Wを水平に支持するためのAlN等のセラミックスからなるステージ2が設けられている。ステージ2は、排気室11の底部中央から上方に延びる円筒状のAlN等のセラミックスからなる支持部材3により支持されている。また、ステージ2には抵抗加熱型のヒーター5が埋め込まれている。ヒーター5はヒーター電源6から給電されることによりステージ2を加熱し基板Wを温調する。また、ステージ2は電極7が埋め込まれており、電極7には整合器8を介してバイアス印加用の高周波電源9が接続されている。ステージ2には、基板Wを静電吸着するための静電チャック、温度制御機構、基板Wの裏面に熱伝達用のガスを供給するガス流路等が設けられてもよい。
【0012】
ステージ2には、基板Wを支持して昇降させるためのウェハ支持ピン(不図示)がステージ2の表面に対して突没可能に設けられている。チャンバ1の側壁には環状をなすガス導入部15、16が設けられており、ガス導入部15、16には周方向に均等にガス放射孔15a、16aが形成されている。ガス導入部15、16にはガス供給部17が接続されている。ガス供給部17は、成膜時には成膜用の処理ガスを供給する。ガス供給部17は、クリーニング時にはクリーニングガスを導入してもよい。
【0013】
チャンバ1の天板は、誘電体、例えばアルミナ(Al2O3)により形成され、マイクロ波を透過させる透過窓28になっている。透過窓28の中央にはマイクロ波パワーの導入部42が設けられている。導入部42の周囲に設けられたガス導入部18からガス放射孔18aを介して成膜用の処理ガスやクリーニングガスを導入してもよい。
【0014】
排気室11の側面には排気管23が接続され、排気管23には真空ポンプや自動圧力制御バルブ等を含む排気装置24が接続されている。排気装置24の真空ポンプを作動させることによりチャンバ1内のガスが、排気室11の空間11a内へ均一に排出され、排気管23を介して排気され、自動圧力制御バルブによりチャンバ1内を所定の真空度に制御可能となっている。
【0015】
チャンバ1の側壁には、マイクロ波プラズマ処理装置100に隣接する搬送室(図示せず)との間で基板Wの搬入出を行うための搬入出口25と、搬入出口25を開閉するゲートバルブ26とが設けられている。
【0016】
チャンバ1の上部は開口部となっており、その開口部の周縁部がリング状の支持部27となっている。支持部27には円板状の透過窓28がシール部材29を介して設けられている。これにより、チャンバ1内は気密に保持される。透過窓28の上面には、透過窓28に対応する円板状をなす平面アンテナ31が設けられている。平面アンテナ31はチャンバ1の側壁上端に係止されている。
【0017】
平面アンテナ31は、導電性材料からなる円板で構成され、マイクロ波を放射するための複数のスロット32が貫通している。スロット32のパターンの例としては、T字状に配置された2つのスロット32を一対として複数対のスロット32が同心円状に配置されているものを挙げることができる。スロット32の長さや配列間隔は、マイクロ波の波長(λg)に応じて決定され、例えばスロット32は、それらの間隔がλg/4、λg/2またはλgとなるように配置される。なお、スロット32は、円形状、円弧状等の他の形状であってもよい。さらに、スロット32の配置形態は特に限定されず、同心円状のほか、例えば、螺旋状、放射状に配置することもできる。
【0018】
平面アンテナ31の上面には、真空よりも大きい誘電率を有する誘電体、例えば石英、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドなどの樹脂からなる板状部材33が設けられている。板状部材33はマイクロ波の波長を真空中より短くして平面アンテナ31の寸法を小さくする機能を有している。
【0019】
平面アンテナ31と透過窓28との間が密着した状態となっており、また、板状部材33と平面アンテナ31との間も密着されている。また、板状部材33、平面アンテナ31、透過窓28、およびプラズマで形成される等価回路が共振条件を満たすように透過窓28、板状部材33の厚さが調整されている。板状部材33の厚さを調整することにより、マイクロ波の位相を調整することができ、平面アンテナ31との接合部が定在波の「はら」になるようにすることでマイクロ波の反射が極小化され、マイクロ波の放射エネルギーが最大となる。また、板状部材33と透過窓28を同じ材質とすることにより、マイクロ波の界面反射を防止することができる。
【0020】
なお、平面アンテナ31と透過窓28との間、また、板状部材33と平面アンテナ31との間は、離間していてもよい。チャンバ1の上面には、平面アンテナ31および板状部材33を覆うように、例えばアルミニウムやステンレス鋼、銅等の金属材料からなるシールド蓋体34が設けられている。チャンバ1の上面とシールド蓋体34とはシール部材35によりシールされている。シールド蓋体34には、冷却水流路34aが形成されており、冷却水流路34aに冷却水を通流させることにより、シールド蓋体34、板状部材33、平面アンテナ31、透過窓28を冷却する。シールド蓋体34は接地されている。
【0021】
シールド蓋体34の上壁の中央には開口部36が形成されており、開口部36には導波管37が接続されている。導波管37の端部には、マッチング回路38を介してマイクロ波出力部39が接続されている。これにより、マイクロ波出力部39で発生した例えば周波数2.45GHzのマイクロ波が導波管37を介して平面アンテナ31へ伝搬される。なお、マイクロ波の周波数としては、例えば100M~2450MHzの範囲の周波数を用いることができる。
【0022】
導波管37は、シールド蓋体34の開口部36から上方へ延在する断面円形状の同軸導波管37aと、同軸導波管37aの上端部にモード変換器40を介して接続された水平方向に延びる矩形導波管37bとを有している。モード変換器40は、矩形導波管37b内をTEモードで伝搬するマイクロ波をTEMモードに変換する機能を有している。同軸導波管37aの中心には内部導体41が延在しており、内部導体41の下端部は、平面アンテナ31の中心に接続固定されている。これにより、マイクロ波は、同軸導波管37aの内部導体41を介して平面アンテナ31へ均一に伝搬される。
【0023】
マイクロ波プラズマ処理装置100は制御部50を有している。制御部50は、マイクロ波プラズマ処理装置100の各構成部、例えばマイクロ波出力部39、ヒーター電源6、高周波電源9、排気装置24、ガス供給部17のバルブや流量制御器等を制御するCPU(コンピュータ)を有する。また、制御部50は、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)及び記憶装置(記憶媒体)を有する。制御部50は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、マイクロ波プラズマ処理装置100に、以下の成膜方法を実行させる。
【0024】
かかる構成のマイクロ波プラズマ処理装置100を用いた成膜方法の一実施形態について説明する。まず、ゲートバルブ26を開き、搬入出口25から基板Wをチャンバ1内に搬入し、ステージ2上に載置する。次いで、チャンバ1内を所定圧力に調整し、ガス供給部17からガス導入部15、16、18を介してチャンバ1内に処理ガスを導入する。そして、マイクロ波出力部39から所定パワーのマイクロ波をチャンバ1内に導入してプラズマを生成し、プラズマCVDにより基板W上にSi含有膜の一例としてSiN膜を成膜する。
【0025】
マイクロ波出力部39からの所定のパワーのマイクロ波は、マッチング回路38を経て導波管37に導かれる。導波管37に導かれたマイクロ波は、矩形導波管37bをTEモードで伝搬される。TEモードのマイクロ波はモード変換器40でTEMモードにモード変換され、TEMモードのマイクロ波が同軸導波管37aをTEMモードで伝搬される。そして、TEMモードのマイクロ波は、板状部材33、平面アンテナ31のスロット32、および透過窓28を透過し、チャンバ1内に放射される。
【0026】
マイクロ波は表面波として透過窓28直下の領域に広がり、これにより表面波プラズマが生成され、高電子密度かつ低電子温度のプラズマとなる。これにより、成膜ガスから解離された活性種が基板W上で反応して所定膜が成膜される。
【0027】
以上に説明した成膜処理を複数枚の基板Wに一枚ずつ実行していくと、徐々にチャンバ1の内壁やパーツに成膜した膜の成分等が付着する。その付着物が堆積して剥がれるとパーティクルとなる。所定個数以上のパーティクルは歩留まり低下の要因となるため、所定周期でチャンバ1内をクリーニングすることが行われている。
【0028】
SiN膜を成膜する場合、処理ガスの一例としてシランガス(SiH4)及びN2ガス、又はシランガス及びNH3ガス等が供給される。マイクロ波は、アルミナ製の透過窓28を介してチャンバ1内に導入される。
【0029】
所定周期でチャンバ1内をクリーニングする際、例えばNF
3ガスのプラズマが使用される。よって、クリーニング後のチャンバ1の側壁等には、NF
3ガスに含まれるフッ素と透過窓28を形成するアルミナ中のアルミニウムを含むAlF化合物が付着する。AlF化合物は、AlFにSi、N及びHが混入したものであり、
図2(a)に示すようにチャンバ1の側壁等に付着し、AlFx(Si/N/H)で示すことができる。
【0030】
クリーニングガスとして使用するNF3ガスから生成されるプラズマ中のフッ素ラジカルと、チャンバ1の透過窓28を形成するアルミナ(Al2O3)とが化学反応することで、透過窓28の内面やチャンバ1内の側面には、AlF化合物(AlFx)が付着する。AlF化合物に混入するSi及びNはSiN膜、Si基板又はシランガス(SiH4)及びN2(又はNH3)ガス中のSi及びNである。AlF化合物に混入するHは、処理ガスとして使用するSiH4中のHである。
【0031】
特に、マイクロ波の表面波プラズマでは、
図2(a)に示すようにプラズマが強い透過窓28の表面やチャンバ1内の上部側壁においてAlF化合物が多く付着する。AlF化合物はSiやNの不純物を含み、化学的に安定しない。
図2(b)は、チャンバ1側壁の付着物をX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)により分析した結果の一例を示す。この結果から、チャンバ1内の付着物には、Alが23.4%、Fが51.8%含まれ、AlF化合物の約75%を占める。AlF化合物の残りの成分には、Nが11.2%、Oが8%、Cが4.7%、Siが0.6%、Yが0.4%含まれる。AlF化合物中のY成分は、チャンバ1内壁をイットリア(Y
2O
3)でコーティングしているコーティング膜中のYが検出されたと考えられる。AlF化合物中のO成分はAlFが酸化しているため又はイットリア中のOが検出されたと考えられる。C成分は、XPS分析時にカーボンテープを使用しているため、テープ内のCが検出されたと考えられる。なお、XPS分析上、H成分の検出は困難であるが、これまでの経験上Hも含んでいると考えられる。
【0032】
このようにAlF化合物は、化学的に安定したAlFの状態と比べて、Si、N及びH成分を含み不安定な状態である。このため、AlF化合物に例えば希ガスのアルゴンガスから生成されるプラズマ中のアルゴンイオンが衝突すると、チャンバ1内壁から剥がれ易く、パーティクルの発生要因となると考えられる。
【0033】
そこで、クリーニング後のチャンバ1の側壁等に付着したAlF化合物を安定化させる方法として、本実施形態に係るシーズニングでは、希ガスの一例としてのアルゴンガスと水素(H2)ガスのプラズマを発生させ、これにより水素のラジカルを発生させる。そして、プラズマ中の水素ラジカル(H*)によってAlF化合物を還元する。具体的には、以下の化学反応(1)により化学的に不安定なAlF化合物の状態から安定したAlFの状態に改質し、Si、N及びH成分はNH*及びSiH*の状態にして揮発させて排気する。
AlFx(Si/N/H)+Ar*+H*→AlF+Al+NH*+SiH*・・(1)
【0034】
これにより、本実施形態に係るシーズニングでは、パーティクルの発生要因となるAlFx(Si/N/H)という不安定な状態をAlFという安定した状態にすることでAlFがチャンバ内壁から剥がれ難くなり、パーティクルを低減できる。これにより、メンテナンスの間隔を長くし、プラズマ処理装置の稼働率を上げ、生産性を向上させることができる。本明細書においてAlF化合物の改質とは、AlF化合物からSi、N及びHを除去しAlFの状態にすることをいう。ただし、AlF化合物内のSi、N及びHの成分を減少させることもAlF化合物の改質に含み、AlFには多少のSi、N及びHが混入してもよい。
【0035】
[クリーニング方法]
次に、マイクロ波プラズマ処理装置100にて実行される成膜及びクリーニング方法について、
図3~
図5を参照しながら説明する。クリーニング方法MTは、成膜工程において所定枚数の基板WにSiN膜を成膜した後に行われるフッ素含有ガスのプラズマクリーニング工程と希ガスとH
2ガスのプラズマシーズニング工程とを含む。成膜工程、プラズマクリーニング工程、プラズマシーズニング工程は制御部50により制御される。以下では、プラズマクリーニング工程においてフッ素含有ガスの一例としてNF
3ガスを使用するが、これに限らず、フッ素含有ガスはClF
3ガス、CF
4ガス等であってもよい。また、プラズマシーズニング工程において希ガスの一例としてArガスを使用するが、これに限らず、希ガスはHeガスであってもよい。また、成膜工程においてSi含有膜の一例としてSiN膜を成膜するが、これに限らず、SiCN膜、SiO
2膜、SiC膜を成膜してもよい。
【0036】
図3は、実施形態に係る成膜及びクリーニング方法MTを示すフローチャートである。
図3に示す成膜及びクリーニング方法MTは、まず、ステップS1において基板Wをチャンバ1内に搬入し、ステージ2に載置して準備する。次に、ステップS3において処理ガスのシラン(SiH
4)ガスと窒素(N
2)ガスをチャンバ1内に供給し、マイクロ波を導入する。一例としては、ガス放射孔18aから窒素ガスをチャンバ1内に供給し、ガス放射孔15a、16aかシランガスをチャンバ1内に供給する。マイクロ波は、透過窓28を介してチャンバ1内に導入される。
【0037】
次に、ステップS5において生成したシランガスと窒素ガスのプラズマにより基板WにSiN膜を成膜する。次に、ステップS6において成膜後の基板Wをチャンバ1から搬出する。
【0038】
次に、ステップS7においてクリーニングを実行するかを判定する。クリーニングを実行するか否かは、例えば、成膜工程の累積時間又はマイクロ波投入の累積時間が所定時間以上になったらクリーニングを行うと判定してもよい。チャンバ1内壁の付着物の厚みを測定し、厚みが所定の厚さ以上になったらクリーニングを行うと判定してもよい。
【0039】
ステップS7においてクリーニングを実行しないと判定された場合、ステップS1に戻り、次の基板Wの成膜処理を実行する。ステップS7においてクリーニングを実行すると判定されるまで、ステップS1~S7の処理を繰り返し、各基板WにSiN膜を成膜する。
【0040】
ステップS7においてクリーニングを実行すると判定された場合、ステップS11においてマイクロ波によりNF
3ガスのプラズマを生成し、プラズマによりチャンバ1内をクリーニングする。次に、ステップS15においてシーズニング方法を実行する。シーズニング方法の詳細については、
図4を参照しながら後述する。
【0041】
ステップS15のシーズニングを実行した後、ステップS17において基板Wの処理を終了するかを判定し、基板Wの処理を終了しないと判定された場合、ステップS1に戻り、次の基板Wの成膜処理を再開する。基板Wの処理を終了すると判定された場合、本処理を終了する。なお、ステップS15のシーズニングは、上記フローのように、ステップS11のプラズマによるクリーニングの直後に行ってもよいし、成膜処理の再開後、パーティクルの増加が確認されたタイミング等、任意のタイミングで行ってもよい。
【0042】
[シーズニング方法]
図3のステップS15のシーズニング方法の詳細について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4に示すシーズニング方法MT2は、
図3のステップS15から呼び出され、実行される。
図4は、実施形態に係るシーズニング方法MT2の流れを示す。
図5は、
図4に示すシーズニング方法MT2におけるArガス、H
2ガス及びマイクロ波の供給タイミングを示す。
【0043】
図4に示すように、シーズニング方法MT2は、まずステップS20において「一連の工程」の実行回数nに1を設定する。一連の工程は、Arガスに対するH
2ガスの濃度をいずれも異なる濃度である第1濃度、第2濃度、第3濃度に変えてシーズニングを行う1サイクルを示す。
【0044】
具体的にはステップS21においてArガスに対するH
2ガスの濃度が第1濃度になるようにArガス又はH
2ガスの流量を制御し、チャンバ1内に供給する。次に、ステップS23においてチャンバ1内にマイクロ波を導入し、マイクロ波により生成した第1濃度のArガス及びH
2ガスのプラズマによりチャンバ1内壁に付着したAlF化合物を改質する。Arガス、H
2ガス及びマイクロ波の供給タイミングの一例としては、
図5に示すようにT0時刻に流量A1のArガスが供給され、T1時刻(T1>T0)にマイクロ波のパワーが導入され、T2時刻(T2>T1)に流量BのH
2ガスが供給される。第1濃度はB/A1である。
【0045】
図4に戻り、次に、ステップS24において所定時間経過後にArガス、H
2ガス及びマイクロ波の供給を停止する。つまり、
図5に示すようにT3時刻にArガス、H
2ガス及びマイクロ波の供給が停止されている。
【0046】
次に、ステップS25において実行回数nが3以上であるかを判定する。この時点でnは1であるため「No」と判定し、ステップS26において実行回数nに1を加算してステップS27においてArガスに対するH
2ガスの濃度が第n濃度(この時点ではn=2)になるようにArガス又はH
2ガスの流量を制御する。次に、ステップS23に戻り、第2濃度のH
2ガス及びArガスをチャンバ1内に供給し、マイクロ波により生成した第2濃度のArガス及びH
2ガスのプラズマによりチャンバ1の内壁等に付着したAlF化合物を改質する。例えば、
図5に示すようにT4時刻に流量A2(A2>A1)のArガスが供給され、T5時刻(T5>T4)にマイクロ波が導入され、T6時刻(T6>T5)に流量BのH
2ガスが供給される。第2濃度はB/A2であり、第1濃度>第2濃度が成立する。
【0047】
図4に戻り、次に、ステップS24において所定時間経過後にArガス、H
2ガス及びマイクロ波の供給を停止する。つまり、
図5に示すようにT7時刻にArガス、H
2ガス及びマイクロ波の供給が停止されている。
【0048】
次に、ステップS25において実行回数nが3以上であるかを判定する。この時点でnは2であるため「No」と判定し、ステップS26において実行回数nに1を加算してステップS27においてArガスに対するH
2ガスの濃度が第n濃度(この時点ではn=3)になるようにArガス又はH
2ガスの流量を制御する。次に、ステップS23に戻り、第3濃度のH
2ガス及びArガスをチャンバ1内に供給し、マイクロ波により生成した第3濃度のArガス及びH
2ガスのプラズマによりチャンバ1の内壁等に付着したAlF化合物を改質する。例えば、
図5に示すようにT8時刻に流量A3(A3>A2)のArガスが供給され、T9時刻(T9>T8)にマイクロ波が導入され、T10時刻(T10>T9)に流量BのH
2ガスが供給される。第3濃度はB/A3であり、第1濃度>第2濃度>第3濃度が成立する。
【0049】
図4に戻り、次に、ステップS24において所定時間経過後にArガス、H
2ガス及びマイクロ波の供給を停止する。つまり、
図5に示すようにT11時刻にArガス、H
2ガス及びマイクロ波の供給が停止されている。
【0050】
次に、ステップS25において実行回数nが3以上であるかを判定する。この時点でnは3であるため「Yes」と判定し、ステップS28において予め設定されたサイクル回数繰り返したかを判定する。サイクル回数だけ繰り返したと判定されるまでステップS20に戻り、ステップS20~S27に示す「一連の工程」を繰り返す。ステップS28においてサイクル回数だけ繰り返したと判定された場合、シーズニング処理を終了する。
【0051】
[シーズニング方法におけるサイクル回数]
図4のステップS28ではサイクル回数だけ第1濃度~第3濃度のシーズニングを繰り返した。このサイクル回数の最適値について実験を行った。
図6は、
図4のS28のサイクル回数とパーティクル数の相関の一例を示す実験結果のグラフである。実験条件は以下である。
<実験条件>
1.第1濃度5.6 H
2ガス280sccm、Arガス50sccm、圧力4Pa、
マイクロ波パワー4500W、シーズニング時間60s
2.第2濃度2.8 H
2ガス280sccm、Arガス100sccm、圧力4Pa、
マイクロ波パワー4500W、シーズニング時間60s
3.第3濃度1.4 H
2ガス280sccm、Arガス200sccm、圧力4Pa、
マイクロ波パワー4500W、シーズニング時間60s
なお、4Paはチャンバ1内の圧力であり、圧力を低くすることでチャンバ1のダメージを低減できる。60sは各濃度のシーズニング時間であり、最初にArガスを供給してから各ガスの供給を停止するまでの時間である。
【0052】
図6の横軸はシーズニングのサイクル回数を示し、縦軸はパーティクル数を示す。
図6に示す実験結果から、SiNとAlFのパーティクルの合計値であるトータルのパーティクルの結果から、サイクル回数が5回程度でトータルのパーティクル数は100個程度まで減少することがわかった。サイクル回数が6回以上でもトータルのパーティクル数は最低約100個であり5回とさほど変わらない。このため、サイクル回数は5回以上であればよいが、サイクル回数が多くなるとシーズニングを含むクリーニング時間が長くなり、スループットが低下する。よって、サイクル回数はシーズニング時間が最短であってパーティクル数が100個程度まで減少する効果が得られる5回にするのが好ましいことがわかった。
【0053】
[シーズニングの効果]
次に、本開示のシーズニング方法MT2の効果について
図7を参照しながら説明する。
図7は、実施形態に係るシーズニング方法MT2による付着物の改質結果の一例を示すグラフである。
図7(a)は、シーズニング方法MT2を実行する前のチャンバ1側壁の付着物をX線光電子分光法により分析した結果の一例を示す。この結果から、シーズニング方法MT2を実行する前のチャンバ1内の付着物は、AlF内にSi及びNが含まれるAlF化合物の状態であった。
【0054】
図7(b)は、シーズニング方法MT2を実行した後のチャンバ1側壁の付着物をX線光電子分光法により分析した結果の一例を示す。この結果から、シーズニング方法MT2を実行した後のチャンバ1内壁の付着物は、上記(1)の化学反応に示す通り、AlF化合物がH
2ガスのプラズマ中の水素ラジカルにより還元され、AlF化合物が改質されてSi、N及びHの成分が揮発して安定したAlFとなっていた。これにより、シーズニング後のチャンバ1内壁の付着物は化学的に安定したAlFであり、AlF化合物と比べて剥がれ難い。この結果、シーズニング方法MT2を実行することでパーティクルを低減できる。
【0055】
シーズニング方法MT2では、H2ガスの流量を固定し、Arガスの流量を変えることでArガスに対するH2ガスの濃度を変化させることに限らない。シーズニング方法MT2では、Arガスの流量を固定し、H2ガスの流量を変えることでArガスに対するH2ガスの濃度を変化させてもよいし、両方のガスの流量を変えることで濃度を変化させてもよい。Arガスに対するH2ガスの濃度を変えることでSi,N、Hの混入量が異なる様々なAlF化合物や付着場所(天板、ステージ、側壁等)が異なる様々なAlF化合物に適した改質が可能になる。つまり、Si,N,Hの混入量や付着場所が異なる様々なAlF化合物に適した状態の水素プラズマを、H2濃度を変えることで発生させることができ、様々なAlF化合物をAlFに安定化させることができる。これにより、Si,N、Hの付着場所や混入量が異なっていてもAlF化合物をAlFに改質することができる。
【0056】
以上、本実施形態に係るクリーニング方法MTについて説明した。クリーニング方法MTは、フッ素含有ガスのプラズマによるクリーニングを行う工程と、クリーニングを行った後に希ガスとH2ガスのプラズマによるシーズニングを行う工程と、を有する。
【0057】
シーズニングを行う工程は、
図4のシーズニング方法MT2に示すように、希ガスに対するH
2ガスの濃度が第1濃度である第1工程と、希ガスに対するH
2ガスの濃度が第1濃度と異なる第2濃度である第2工程と、第1濃度及び第2濃度と異なる第3濃度である第3工程とを有し、第1工程~第3工程を含む一連の工程を複数回繰り返す。複数回は5回以上であればよいが5回が好ましい。第1濃度、第2濃度、第3濃度は、いずれも異なる濃度であればよく、段階的に濃度を下げてもよいし、段階的に濃度を上げてもよいし、濃度を上げたり下げたりしてもよい。
【0058】
本開示のシーズニング方法MT2では、Arガスに対するH2ガスの濃度を第1濃度~第3濃度の3段階に制御したが、これに限らない。Arガスに対するH2ガスの濃度を2段階又は4段階以上に制御してもよい。例えば、シーズニングを行う工程は、希ガスに対するH2ガスの濃度が第1濃度である第1工程と、希ガスに対するH2ガスの濃度が第1濃度と異なる第2濃度である第2工程とを有し、第1工程と第2工程を含む一連の工程を複数回繰り返してもよい。
【0059】
また、シーズニング方法MT2の一つの実験では、第1濃度~第3濃度は、1.4~5.6であったが、これに限らない。Arガスに対するH2ガスの濃度は、0.1以上10以下であってよい。
【0060】
[シーズニングによる成膜への影響]
次に、シーズニング方法MT2の実行による成膜特性への影響を調べた結果について
図8を参照して説明する。
図8は、シーズニング方法MT2の実行後に行った成膜結果の一例を示すグラフである。
【0061】
図8(a)は、シーズニング方法MT2の実行後の成膜の膜厚の測定結果の一例を示す。
図8(b)は、シーズニング方法MT2の実行後の成膜のRI(屈折率)の測定結果の一例を示す。
【0062】
図8(a)に示すSiN膜の膜厚は、ウェハの面内49ポイントの膜厚を図った平均値を示す。R/A[%]は、ウェハの面内49ポイントの膜厚の最大値と最小値の差を平均値で割った値を示す。つまり、R/Aは膜厚分布を示す。
図8(a)の横軸のシーズニングのサイクル回数に対して左縦軸の膜厚及び右縦軸の膜厚分布(R/A)ともにサイクル回数による変動はなく、シーズニング方法MT2を実行しても成膜処理に悪い影響はないことがわかった。
【0063】
図8(b)に示すSiN膜のRIは、ウェハの面内49ポイントのRIを図った平均値を示す。Rangeは、ウェハの面内49ポイントのRIの最大値と最小値の差を示す。RangeはRI分布を示す。
図8(b)の横軸のシーズニングのサイクル回数に対して左縦軸のRI及び右縦軸のRI分布(Range)ともにサイクル回数による変動はなく、シーズニング方法MT2を実行しても成膜処理に悪い影響はないことがわかった。
【0064】
[実施形態及び参考例に係るシーズニングの比較]
最後に、実施形態及び参考例に係るシーズニングの比較について、
図9を参照して説明する。
図9は、実施形態及び参考例に係るサイクル回数とパーティクル数の相関の一例を示す実験結果のグラフである。
【0065】
線gは、
図6の実験を行ったときの<実験条件>下で本実施形態のシーズニング方法MT2を実行したときの横軸のサイクル回数1、5、10に対する縦軸のパーティクル数を示す。線e,fは、参考例1,2に示すようにArガス及びH2ガスの流量を固定にしたときのサイクル回数1、5、10に対するパーティクル数を示す。参考例1の場合、Arガス及びH2ガスの流量を50sccm、280sccmにそれぞれ固定し、これを1サイクルとした。参考例2の場合、Arガス及びH2ガスの流量を200sccm、280sccmにそれぞれ固定し、これを1サイクルとした。本実施形態のシーズニング方法MT2では<実験条件>に示すように、Arガス及びH2ガスの流量を(1)50sccm、280sccm、(2)100sccm、280sccm、(3)200sccm、280sccmの3つの濃度に変化させ、これを1サイクルとした。
【0066】
本実施形態のシーズニング方法MT2では、Arガスに対するH2ガスの濃度を3段階に変えることで、Si、N、Hの混入量や付着場所が異なる様々なAlF化合物に適した状態の水素プラズマを、H2濃度を変えることで発生させることができ、様々なAlF化合物をAlFに改質することができた。この結果、線gに示すようにサイクル回数が5回以上でパーティクルのカウント数が低減できた。
【0067】
これに対して参考例1,2では、線e、fに示すようにArガスに対するH2ガスの濃度を変えずに固定にした。この結果、参考例1,2のいずれもサイクル回数が増えるほどパーティクルのカウント数が増加した。その理由は、Arガスに対するH2ガスの濃度を変えずにシーズニングを行うとSi,N,Hの混入量や付着場所が異なる様々なAlF化合物を安定したAlFに改質できず、チャンバ1の内壁等の付着物にAlF化合物が残ってしまったためと考えられる。チャンバ1の内壁等のAlF化合物をArのラジカルやArイオン等で叩いた結果パーティクル数が増加する結果となった。
【0068】
以上、実施形態に係るシーズニング方法MT2によれば、Arガスに対するH2ガスの濃度を2段階以上に変える。これにより、Si,N,Hの混入量や付着場所が異なる様々なAlF化合物を安定したAlFに改質することができる。この結果、パーティクルを低減でき、メンテナンスの周期をより長くすることにより生産性を高めることができる。
【0069】
今回開示された実施形態に係るクリーニング方法及びプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0070】
本開示のプラズマ処理装置は、アルミナ製の透過窓を介してマイクロ波をチャンバ内に導入し、処理ガスのプラズマにより基板を処理する装置であればいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 チャンバ
2 ステージ
15、16、18 ガス導入部
17 ガス供給部
28 透過窓
39 マイクロ波出力部
50 制御部
100 マイクロ波プラズマ処理装置