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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019592
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】生ジャガイモ処理物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/12 20160101AFI20220120BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20220120BHJP
【FI】
A23L19/12 A
A23L35/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111597
(22)【出願日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2020121460
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】汐海 隆史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隆喜
(72)【発明者】
【氏名】千代田 路子
(72)【発明者】
【氏名】吉▲崎▼ 智子
【テーマコード(参考)】
4B016
4B036
【Fターム(参考)】
4B016LC07
4B016LG06
4B016LK10
4B016LP13
4B036LF19
4B036LH14
4B036LH30
4B036LK06
4B036LP11
(57)【要約】
【課題】本発明は、GABAを添加せずともGABAを多く含む生ジャガイモ処理物、及びその製造方法に関し、生ジャガイモのGABA増加方法に関する。さらに、当該生ジャガイモ処理物を用いたポテトサラダを提供することに関する。
【解決手段】特定量のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、生ジャガイモを浸漬することで生ジャガイモに含まれるGABAの量を増加させる。具体的には0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、生ジャガイモを5時間以上浸漬する工程を有する、生ジャガイモ処理物の製造方法を提供する。
【選択図】なし


【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、
生ジャガイモを5時間以上浸漬する浸漬工程を有する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法において、
前記工程における前記水溶液の温度は1℃以上40℃以下であり、
前記浸漬工程中、またはその後、前記生ジャガイモを、
20℃以上40℃以下で30分以上維持する保温工程を有する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法において、
前記浸漬工程における前記水溶液の温度は1℃以上20℃未満であり、
前記保温工程は、0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に浸漬する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法に関し、
前記保温工程は、前記浸漬工程後、前記浸漬処理した前記生ジャガイモを、
20℃以上40℃以下の雰囲気下で放置する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項5】
0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、
生ジャガイモを5時間以上浸漬する浸漬工程を有する、
生ジャガイモのGABA増加方法。
【請求項6】
生ジャガイモ100gに対し、GABAの含有量が0.04質量%以上である、
生ジャガイモ処理物。
【請求項7】
請求項6に記載の生ジャガイモ処理物を用いた、ポテトサラダ。
【請求項8】
前記ポテトサラダ100gに対し、GABAの含有量が0.015質量%以上である、
請求項7に記載のポテトサラダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GABAを多く含むことを特徴とする生ジャガイモ処理物及びその製造方法に関する。また、本発明は上記生ジャガイモ処理物を用いたポテトサラダに関する。
【背景技術】
【0002】
GABA(gamma amino butyric acid)はγアミノ酪酸とも称され、アミノ酸の一種である。近年、GABAには血圧低下作用や肝臓あるいは腎臓機能改善作用などの効果があることが明らかとなっており、非常に注目される物質の一つである。
【0003】
GABAはグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)がグルタミン酸を脱炭酸することによって生成することが知られている。特許文献1には植物性食品に内在する酵素の活性温度帯で一定時間保持する酵素活性工程と、上記酵素反応の後に調理工程を有する酵素活用調理法が記載されており、非特許文献1には嫌気処理あるいは摩砕処理等によってジャガイモ中のGABAを増加させる方法が記載されている。しかし、このような従来の技術について、食品中に含まれるGABAの基質の量が十分でなく、食品に含まれるGABAの量を増加させる方法に関し改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-063391号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本食品科学工学会誌2007年54巻10号p.447-451
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、GABAを添加せずともGABAを多く含む生ジャガイモ処理物及びその製造方法に関し、当該生ジャガイモ処理物を用いたポテトサラダに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、意外にも、特定量のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、特定の条件下で生ジャガイモを浸漬することで、GABAの基質が生ジャガイモに浸透し、当該基質が生ジャガイモに内在する酵素と反応することで、生ジャガイモに含まれるGABAの量を増加させることができることを知見した。本発明者等は、上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、
生ジャガイモを5時間以上浸漬する浸漬工程を有する、
生ジャガイモ処理物の製造方法、
(2)(1)に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法において、
前記浸漬工程における前記水溶液の温度は1℃以上40℃以下であり、
前記浸漬工程中、またはその後、前記生ジャガイモを、
20℃以上40℃以下で30分以上維持する保温工程を有する、
生ジャガイモ処理物の製造方法、
(3)(2)に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法において、
前記浸漬工程における前記水溶液の温度は1℃以上20℃未満であり、
前記保温工程は、0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に浸漬する、
生ジャガイモ処理物の製造方法、
(4)(2)又は(3)に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法に関し、
前記保温工程は、前記浸漬工程後、得られた前記生ジャガイモを、
20℃以上40℃以下の雰囲気下で放置する、
生ジャガイモ処理物の製造方法、
(5) 0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、
生ジャガイモを5時間以上浸漬する工程を有する、
生ジャガイモのGABA増加方法、
(6) 生ジャガイモ100gに対し、GABAの含有量が0.04質量%以上である、
生ジャガイモ処理物、
(7)(6)に記載の生ジャガイモ処理物を用いた、ポテトサラダ、
(8)前記ポテトサラダ100gに対し、GABAの含有量が0.015質量%以上である、
(7)に記載のポテトサラダ、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生ジャガイモに内在する酵素を利用することで、GABAを添加せずともGABAを多く含む生ジャガイモ処理物及びその製造方法を提供することができる。さらに、上記生ジャガイモ処理物を用いたポテトサラダを提供することができる。したがって、ポテトサラダをはじめとするジャガイモを用いた商品の需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において格別に断らない限り、単に「%」と記載されている場合は「質量%」を意味する。
【0011】
(本発明の生ジャガイモ処理物の特徴)
本発明の生ジャガイモ処理物は、生ジャガイモ100gに対し、GABAを0.04%以上含むことが好ましく、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.06%以上である。上記の範囲内であれば、1食あたりにGABAを多く含むジャガイモを用いた商品が提供できる。本発明によれば、上記生ジャガイモ処理物に含まれるGABAの量を上記範囲内とすることができる。
【0012】
(ジャガイモ)
本発明に用いるジャガイモは品種、生産地、保管期間、保管温度等に特に制限はない。例えば、ジャガイモの品種としては、さやか、男爵、メークイン、十勝コガネ、北海コガネ、キタアカリ、マチルダ、レッドアンデス、アイノアカ、とよしろ、ぽろしり等を用いることができ、中でも調理した後のジャガイモの食味や加工適正の観点から、さやか、男爵を用いるのが好ましい。また、後述するグルタミン酸ナトリウム水溶液への浸漬の前に、発明の効果を損なわない範囲で加熱処理されていてもよいが、ジャガイモに内在する酵素の活性を維持するため、生のジャガイモを用いるのが好ましい。
【0013】
(生ジャガイモの前処理)
本発明において、微生物増殖の観点から生ジャガイモは洗浄後皮を剥くことが好ましい。さらに、必要に応じカットしてもよい。生ジャガイモのカットの態様としては特に限定されず、半割切り、乱切り、輪切り、半月切り、いちょう切り、四つ切り等にしてもよく、中でも作業効率の観点から半割切りが好ましい。また、カットする前に芽を取り除いてもよい。
【0014】
(グルタミン酸ナトリウム水溶液の原料)
本発明に用いるグルタミン酸ナトリウム水溶液の調製は、後述する濃度の範囲となるよう、以下に述べるような原料を用いて適宜調製すればよい。例えば、グルタミン酸ナトリウム(MSG、グルタミン酸ソーダ、グルソーと称されるものを含む)、醤油、味噌、カツオだし、昆布だし、白菜エキス、豆乳等を用いて水溶液を調製するとよい。この中でも、調理後のジャガイモの食味に与える影響を最小限に抑える観点から、グルタミン酸ナトリウムを用いることが好ましい。調製の方法は特に限定されず、水と上記いずれかの原料とを混合し、生ジャガイモを浸漬する前までに水溶液の濃度が均一になればよい。
【0015】
(グルタミン酸ナトリウム水溶液の濃度)
本発明に用いるグルタミン酸ナトリウム水溶液の濃度の下限値は、水溶液全量に対し0.80%以上であり、好ましくは1.0%以上である。上記範囲内であれば生ジャガイモに対し、グルタミン酸ナトリウムが浸透しやすくなる。生ジャガイモ処理物及びポテトサラダの食味に影響のない程度にグルタミン酸ナトリウム水溶液の濃度は上記範囲内で適宜選択すればよい。
【0016】
(他の原料)
本発明において、後述する条件でグルタミン酸ナトリウム水溶液に生ジャガイモを浸漬する際、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の原料を共に浸漬してもよい。例えば、調味の目的で食塩、砂糖等の調味料、柑橘系の果汁、水あめ、香辛料抽出物、デキストリン、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、及びアラビアガム等の増粘剤、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、静菌剤、酢酸、クエン酸などが含有されていてもよく、微生物の増殖抑制の目的で食酢が含有されていてもよい。食酢としては、例えば、米酢等の穀物酢、果実酢などがあげられる。また、生ジャガイモと共に具材として植物性の具材を浸漬してもよく、植物性の具材としては人参、きゅうり、大根、薩摩芋、里芋等の芋類、米、麦などの穀類などがあげられる。これらの中でも浸漬によって硬さ等の物性が変化しにくい具材を用いることがよい。
【0017】
(グルタミン酸ナトリウム水溶液の温度)
本発明において、生ジャガイモを浸漬する浸漬工程のグルタミン酸ナトリウム水溶液の温度の下限値は1℃以上が好ましく、3℃以上がより好ましく、5℃以上がさらに好ましい。また、上限値は40℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。グルタミン酸ナトリウム水溶液の温度が上記範囲内であれば、GABAの基質であるグルタミン酸ナトリウムの生ジャガイモへの浸透が適切に進み、生ジャガイモ内におけるGABAの増加量が上がる。
【0018】
本発明において、上記温度の範囲内で生ジャガイモをグルタミン酸ナトリウム水溶液に浸漬した後、生ジャガイモに内在する酵素を反応させる目的で、特定の温度の雰囲気下で当該生ジャガイモを放置する、保温工程を設けることが好ましい。具体的には、保温工程における雰囲気温度の下限値が20℃以上であることが好ましく、23℃以上がより好ましく、25℃以上がさらに好ましい。また、上限値は40℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。上記保温工程の温度範囲内であれば、生ジャガイモに内在する酵素が活性化され、生ジャガイモに含まれるGABAの量が増加する。上記浸漬工程後、保温工程に移行するまでの時間は発明の効果に影響を及ぼさない範囲であれば特に限定されず、保温工程における生ジャガイモの温度が均一になればよい。
【0019】
本発明において、浸漬工程後の生ジャガイモをグルタミン酸ナトリウム水溶液に浸漬させたまま保温工程に移行してもよいし、浸漬工程後の生ジャガイモを水溶液から取り出して、上述の温度帯まで温度を上昇させた別のグルタミン酸ナトリウム水溶液もしくは温湯に直接浸漬させて保温工程としてもよい。また、当該生ジャガイモを容器に移し替え、容器ごと温湯に浸すことで保温工程としてもよい。上記保温工程で用いられるグルタミン酸ナトリウム水溶液の濃度は、0.80%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましい。上記範囲内であれば、生ジャガイモへのグルタミン酸ナトリウムの浸透が進みやすい。浸漬工程後の生ジャガイモのグルタミン酸ナトリウムを流出させないという観点から、浸漬工程後の生ジャガイモをグルタミン酸ナトリウム水溶液に浸漬させたまま温度を上昇させることが好ましい。また、さらに、生成したGABAを流出させないという観点から、浸漬工程後の生ジャガイモをグルタミン酸ナトリウム水溶液から取り出して、容器に移し替えたうえで温湯に浸すことが最も好ましい。その際、上記容器は特に限定されず、生ジャガイモの大きさに合わせ、適宜選択すればよい。上記グルタミン酸ナトリウム水溶液または温湯の温度を上昇させるための方法は一般的な加熱方法を用いればよく、例えば、直火、伝導熱、マイクロ波を用いて加熱する方法、高温の温湯と水を混合して上記水溶液の温度が上述の範囲内となるよう調製する方法等を適宜選択すればよい。
【0020】
本発明において、上記保温工程における室内の温度は発明の効果に影響を及ぼさない範囲であれば特に限定されない。例えば、前記上記グルタミン酸ナトリウム水溶液または温湯の温度よりも室温が高い場合は、水溶液中に生ジャガイモを浸漬している間に当該水溶液または温湯の温度が変わらないように、同濃度の上記水溶液を温度調整したものを適宜添加し、水温が一定に保つことができればよい。
【0021】
(生ジャガイモの浸漬時間)
本発明において、上記水溶液に生ジャガイモを浸漬する時間は5時間以上であり、好ましくは8時間以上、より好ましくは24時間以上である。浸漬する時間が上記範囲内であれば、生ジャガイモのGABAの増加にとって適切な量のグルタミン酸ナトリウムを生ジャガイモの中に浸透させることができ、微生物増殖がない範囲で適宜選択すればよい。さらに、上記浸漬工程後の保温工程における生ジャガイモの保温時間は30分以上が好ましく、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上である。浸漬時間を上記範囲とすることで、生ジャガイモの中の温度が均一になり、ジャガイモに浸透したグルタミン酸ナトリウムが生ジャガイモに内在する酵素と反応やすくなり、微生物リスクを抑えつつも、さらに生ジャガイモに含まれるGABAの量を増加させることができる。
【0022】
(浴比)
本発明において、グルタミン酸ナトリウム水溶液に浸漬する際の当該水溶液に対する生ジャガイモの浴比は、発明の効果に影響を及ぼさない範囲であれば特に限定されない。例えば、浸漬する全ての生ジャガイモが上記水溶液中に収まればよい。
【0023】
(浸漬に用いる装置)
本発明において、浸漬に用いる装置は特に限定されず、従来公知である装置を用いることができる。例えば、ラクーン、バケツ、タンク等であり、処理をする生ジャガイモの量に応じて適宜選択できる。
【0024】
(攪拌)
本発明において、発明の効果を損なわない範囲で、浸漬中の生ジャガイモを攪拌してもよい。攪拌の方法としては手動、ミキサー、攪拌翼、バブリングなどがあげられる。これにより水溶液の濃度の均一性を保つことができる。
【0025】
(浸漬後の生ジャガイモ処理物の水分除去)
本発明において、上記浸漬工程を経た生ジャガイモ処理物は、発明の効果を損なわない範囲で、当該処理物の周りに付着した水を除去してもよい。水の除去方法は特に限定されず、ザルの上で静置、脱水機、ドライヤー、キッチンペーパーでふき取るなどの方法を用いればよい。
【0026】
(浸漬後の生ジャガイモ処理物の冷却)
本発明において、発明の効果を損なわない範囲で、上記の浸漬工程の後に生ジャガイモ処理物を冷却してもよい。冷却方法は特に制限されず、例えば真空冷却等があげられ、真空冷却の方法としては、例えば真空冷却器を用いればよい。冷却することで、食味により優れ、保存性がより良好な生ジャガイモ処理物を得ることができる。
【0027】
(本発明で用いる容器)
本発明において、上記浸漬処理後の生ジャガイモ処理物及び当該処理物を用いたポテトサラダの保存に用いる容器は特に限定されず、例えば、食品用として通常用いられる容器があげられる。例えば、紙パック、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール等の容器から選択できる。また、単層材料、及びこれらを積層した多層材料を用いることができる。容器の表面はシーラント層を設けたものでも、防曇処理をしたものでもよく、透明であっても、不透明であってもよい。容器の形状としては、例えばトレー、袋、箱などから任意に選択し、単独またはこれらを組み合わせて使用することができる。
【0028】
(本発明のポテトサラダの特徴)
本発明のポテトサラダは、ポテトサラダ100g中にGABAを0.015%以上含むことに特徴を有し、好ましくは0.017%以上、さらに好ましくは0.02%以上である。上記範囲となることで、ポテトサラダ1食あたりのGABAの含有量を高く保つことができる。
【0029】
(ポテトサラダに用いるジャガイモ)
本発明において、ポテトサラダの原料として上記生ジャガイモ処理物を用いることが好ましい。具体的には、当該処理物100g中にGABAを0.04%以上含んでいるものを用いることが好ましく、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.06%以上である。上記処理物を用いることにより、GABAを多く含むポテトサラダを提供することができる。上記範囲であれば、上記処理物の製造方法は特に限定されないが、0.80%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に生ジャガイモを5時間以上浸漬する工程を有する製造方法で得られた生ジャガイモ処理物を用いるのがよい。これにより、原料となるジャガイモに含まれるGABAの量に左右されずに、GABAを多く含むポテトサラダを得ることができる。
【0030】
本発明において、ポテトサラダに供する生ジャガイモ処理物は、ポテトサラダを製造するための一般的な加熱処理を施すことができる。例えば、蒸煮処理、スチーム処理、ボイル処理などがあげられる。また、上記加熱処理の前にジャガイモをカットしてもよいし、破砕していてもよい。カットにおけるジャガイモのサイズは特に限定されない。
【0031】
(ポテトサラダに用いる他の原料)
本発明のポテトサラダは、上記原料のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の原料を含有していてもよい。具材としては、例えば、きゅうり、玉ねぎ、にんじん、キャベツ、レタス、コーン、ハム、コンビーフ、ツナ肉、きくらげ、マカロニ、パスタ、卵等があげられる。調味液としては、例えば、食塩水、食酢、卵黄、糖液、ブイヨン、アミノ酸液等があげられる。また、静菌剤が含まれていてもよく、静菌剤として、グリシン、酢酸ナトリウム、卵白リゾチーム、プロタミン、ポリリジン等があげられる。
【0032】
(ポテトサラダの製造方法)
本発明のポテトサラダの製造方法は特に限定されない。例えば、乳化調味料をジャガイモ、卵、きゅうり等の具材と混合して製造すればよい。また、上記原料を混合する方法は特に制限されず、例えば真空下、減圧下、常圧下等の環境で適宜原料を攪拌すればよい。また、上記ポテトサラダを発明の効果を損なわない範囲で容器充填後に殺菌処理してもよい。例えば、レトルト殺菌、高圧殺菌等があげられる。これにより、保存性に優れたポテトサラダを得ることができる。
【0033】
以下、本発明について、実施例、比較例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例0034】
(生ジャガイモ処理物の製造方法)
[実施例1]
表1の実施例1の濃度と温度になるようにグルタミン酸ナトリウム水溶液を5L調製した。具体的には、まず、水とグルタミン酸ナトリウムを均一になるように混合して5℃の1.0%グルタミン酸ナトリウム水溶液を調製した。また、ジャガイモ(さやか)3個を流水で洗浄し、皮を剥き、芽を除去した後半割にした。続いて、浸漬工程として上記水溶液に上記ジャガイモを150g浸漬し、8時間静置した。また、静置中に温度変化がないよう、温度計にて適宜温度を測定した。その後、ザルに生ジャガイモを静置し余分な水分を除去して、実施例1の生ジャガイモ処理物を得た。
【0035】
[実施例2、3及び比較例1~3]
表1に記載の条件を参照し、方法は実施例1と同様にして、実施例2、3及び比較例1~3の生ジャガイモ処理物を得た。
【0036】
[実施例4]
表1の実施例4の濃度と温度になるようにグルタミン酸ナトリウム水溶液を5L調製した。具体的には、まず、水とグルタミン酸ナトリウムを均一になるように混合して5℃の1.0%グルタミン酸ナトリウム水溶液を調製した。また、ジャガイモ(さやか)3個を流水で洗浄し、皮を剥き、芽を除去した後半割にした。続いて、浸漬工程として上記水溶液に上記ジャガイモを150g浸漬し、6時間静置した。その後、ジャガイモを上記水溶液に浸漬したまま、当該水溶液を35℃となるまで加熱し、35℃に到達してから2時間静置した。静置中に温度変化がないよう、温度計にて適宜温度を測定した。その後、ザルに生ジャガイモを静置し、余分な水分を除去して、実施例4の生ジャガイモ処理物を得た。
【0037】
[実施例5~10及び比較例4]
表1に記載の条件を参照し、方法は実施例4と同様にして、実施例5~10及び比較例4の生ジャガイモ処理物を得た。ただし、実施例7については、浸漬工程後に生ジャガイモをグルタミン酸ナトリウム水溶液中から取り出し、ザルに当該生ジャガイモを静置し、余分な水分を除去した後、当該生ジャガイモを容器(ポリプロピレン製の袋)に充填し、容器内の空気をできるだけ取り除いた後に封止し、25℃となるように調整した温湯中に当該容器を浸漬し、3時間静置し、余分な水分を除去して、生ジャガイモ処理物を得た。
【0038】
[比較例5]
ジャガイモ(さやか)3個を流水で洗浄し、皮を剥き、芽を除去した後半割にすることで比較例5の生ジャガイモを得た。
【0039】
(ポテトサラダの製造方法)
[試験例1]
表2に記載の配合を参照し、実施例7、9及び比較例5で得た生ジャガイモ処理物を用いてポテトサラダを製造した。具体的には、得られた生ジャガイモ処理物を98℃で蒸煮し、粗熱を取った後、予めお酢と食塩を混合したマヨネーズを当該生ジャガイモ処理物に添加し、全体がなじむように混合することでポテトサラダを得た。
【0040】
[表2]
【0041】
(GABAの測定)
[試験例2]
実施例1~10、比較例1~5の生ジャガイモ処理物を測定試料とし、当該測定試料に前処理を行い、得られた試料を全自動アミノ酸分析機に供しGABAの量を測定した。具体的には、前処理として、生ジャガイモ処理物を家庭用ミキサーで粉砕後、当該生ジャガイモ処理物1%に対し、49%となるように水を加えた。その後15分間振盪処理を行い、続けて10分間超音波処理に供した。上記処理後、3000rpmで15分間遠心分離を行い、上清を採取した。上記上清0.001%に対し、スルホサリチル酸を0.001%となるように加え、15分間の振盪処理後、再度3000rpmで15分間遠心分離を行い、上清を得た。上記上清を0.45μmフィルターでろ過したものをサンプルとして、全自動アミノ酸分析機に供した。上記試料は各3回ずつ測定し、得られた値の平均を上記生ジャガイモ処理物に含まれるGABAの量とした。また、上記生ジャガイモ処理物100gに含まれるGABAの量から、未処理の生ジャガイモ100gに含まれるGABAの量を引いた値をGABAの増減量とし、下記の評価基準に基づき評価した。また、上記方法と同様にして、実施例7、9及び比較例5で得た生ジャガイモ処理物を用いて製造したポテトサラダについてもGABAの量を測定した。
【0042】
(GABAの増減量の評価)
実施例1~10、比較例1~5の生ジャガイモ処理物100gのGABAの量の増減量を下記の評価基準により評価した。
【0043】
(GABAの量の評価基準)
◎:未処理の生ジャガイモ100gと比較し、生ジャガイモ100gあたりのGABAの量が6.0mg以上増加した。
〇:未処理の生ジャガイモ100gと比較し、生ジャガイモ100gあたりのGABAの量が4.5mg以上増加した。
△:未処理の生ジャガイモ100gと比較し、生ジャガイモ100gあたりのGABAの量が2.0mg以上増加した。
×:未処理の生ジャガイモ100gと比較し、生ジャガイモ100gあたりのGABAの量の増加が2.0mg未満または処理前と比べて減少した。
【0044】
(GABAの量の評価結果)
実施例1~10、比較例1~5におけるGABA増加量の評価結果を表1に示す。
【0045】
[表2]
【0046】
実施例1~10により、生ジャガイモ処理物の製造方法に関し、0.80%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液にジャガイモを5時間以上浸漬させることにより、生ジャガイモに含まれるGABAを増加させることができることが示された。したがって、GABAを添加せずともGABAを多く含む生ジャガイモ処理物及びその製造方法と、その生ジャガイモ処理物を用いて製造したポテトサラダを提供できることが示された。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、
生ジャガイモを5時間以上浸漬する浸漬工程を有する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法において、
前記工程における前記水溶液の温度は1℃以上40℃以下であり、
前記浸漬工程中、またはその後、前記生ジャガイモを、
20℃以上40℃以下で30分以上維持する保温工程を有する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法において、
前記浸漬工程における前記水溶液の温度は1℃以上20℃未満であり、
前記保温工程は、0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に浸漬する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法に関し、
前記保温工程は、前記浸漬工程後、前記浸漬処理した前記生ジャガイモを、
20℃以上40℃以下の雰囲気下で放置する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項5】
0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、
生ジャガイモを5時間以上浸漬する浸漬工程を有する、
生ジャガイモのGABA増加方法。
【請求項6】
生ジャガイモ処理物のGABAの含有量が、
生ジャガイモ100gに対し、0.04%以上であることを特徴とする、
請求項1に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、
生ジャガイモを5時間以上浸漬する浸漬工程を有する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法において、
前記工程における前記水溶液の温度は1℃以上40℃以下であり、
前記浸漬工程中、またはその後、前記生ジャガイモを、
20℃以上40℃以下で30分以上維持する保温工程を有する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法において、
前記浸漬工程における前記水溶液の温度は1℃以上20℃未満であり、
前記保温工程は、0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に浸漬する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法に関し、
前記保温工程は、前記浸漬工程後、前記浸漬処理した前記生ジャガイモを、
20℃以上40℃以下の雰囲気下で放置する、
生ジャガイモ処理物の製造方法。
【請求項5】
0.80質量%以上のグルタミン酸ナトリウム水溶液に、
生ジャガイモを5時間以上浸漬する浸漬工程を有する、
生ジャガイモのGABA増加方法。
【請求項6】
生ジャガイモ処理物のGABAの含有量が、
生ジャガイモ100gに対し、0.04質量%以上であることを特徴とする、
請求項1に記載の生ジャガイモ処理物の製造方法。