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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020257
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】抗カンジダ活性を有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/045 20060101AFI20220125BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220125BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20220125BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
A61K31/045
A61K31/19
A61P31/10
A61K36/87
A61K31/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123652
(22)【出願日】2020-07-20
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】安部 茂
(72)【発明者】
【氏名】羽山 和美
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 京子
(72)【発明者】
【氏名】間 和彦
【テーマコード(参考)】
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C088AB56
4C088AC04
4C088AC05
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA10
4C088BA21
4C088BA22
4C088BA32
4C088CA04
4C088CA05
4C088CA06
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA10
4C206CB21
4C206KA18
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZB35
(57)【要約】
【課題】本発明は、カンジダ症を含む皮膚、粘膜のカンジダ症に対し効果があり、副作用や耐性菌のリスクを心配せず長期間の使用が可能であり、また安定、無味・無臭で製品に配合しやすく、患者や一般消費者が入手しやすく使用しやすい新たな抗カンジダ活性組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】トリテルペン類又はブドウ抽出物を有効成分とすることにより上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリテルペン類を有効成分として含む、抗カンジダ活性組成物。
【請求項2】
トリテルペン類が、オレアノール酸、マスリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の抗カンジダ活性組成物。
【請求項3】
ブドウ抽出物を有効成分として含む、抗カンジダ活性組成物。
【請求項4】
更にモノテルペンアルコールを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の抗カンジダ活性組成物
【請求項5】
モノテルペンアルコールが、ヒノキチオール、ゲラニオール及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の抗カンジダ活性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリテルペン類を含む、抗カンジダ活性を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚や粘膜のカンジダ症、とくに高齢者の口腔カンジダ症は、いずれも患者数が多く、かつ再発しやすい感染症である。カンジダは常在性真菌であり、また抗真菌剤による治療は、副作用や耐性菌出現のリスクがあって長期間の使用は限定されるため、再発を抑えることは困難である。
そこで、これまでに、抗カンジダ活性を有し、食品への利用可能な成分が開発されている。例えばゲラニオール、ヒノキチオールなどのモノテルペンアルコール単独を使用した口腔ケア剤および食品が広く使用されている。天然由来成分が抗カンジダ活性を有する例として、特許文献1には、ゲラニオールなどの精油成分とカプリン酸の組み合わせにより相乗的な抗カンジダ活性が得られたこと、特許文献2にはショウガオールが抗カンジダ活性を有すること、特許文献3にはリゾチームとキトサンとを組み合わせた複合体が抗カンジダ活性を有すること、特許文献4にはショウガオールとカプリン酸を組み合わせることにより相乗的な抗カンジダ効果が見られたこと、非特許文献1にはクローブ、カシアなどのハーブやスパイスが口腔カンジダ症動物モデルにおいて抗カンジダ活性を示したこと等が開示されている。
しかしながら、従来抗カンジダ活性を有することが知られている成分はハーブや精油類が多く、味や香りがあり、食品に配合する場合にその味や香りへの影響の観点から配合量には限界がある。また、揮発成分であり、不安定なものも多い。カンジダ症を含む皮膚、粘膜のカンジダ症に対し効果があり、副作用や耐性菌のリスクを心配せず長期間の使用が可能であり、また安定、無味・無臭で製品に配合しやすく、患者や一般消費者が入手しやすく使用しやすい新たな抗カンジダ活性組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-40156号公報
【特許文献2】特開2013-100253号公報
【特許文献3】再表2017/38872号公報
【特許文献4】特開2013-194051号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】田口裕基, Med. Mycol. J.,55, 143-149, 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カンジダ症を含む皮膚、粘膜のカンジダ症に対し効果があり、副作用や耐性菌のリスクを心配せず長期間の使用が可能であり、また安定、無味・無臭で製品に配合しやすく、患者や一般消費者が入手しやすく使用しやすい新たな抗カンジダ活性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、植物成分であるオレアノール酸、マスリン酸等のトリテルペン類や、トリテルペン類を含むブドウ抽出物には抗カンジダ活性があり、また、ブドウ抽出物(パミスエキス)では、トリテルペン類単独より抗カンジダ活性が高まることを見出した。また、本発明者らはトリテルペン類を使用するに当たり、より強力な抗カンジダ効果を有する方法を検討した結果、トリテルペン類の一種であるオレアノール酸、マスリン酸などを一つでも含む植物の果皮・葉抽出物とヒノキチオールあるいはゲラニオールを併用することで、オレアノール酸、ブドウ抽出物(パミスエキス)、ヒノキチオール、ゲラニオール単独での効果よりも相乗的な抗カンジダ効果を奏し、効率的に抗カンジダ症を予防できることを見出した。
本発明は以下の通りである。
[1]トリテルペン類を有効成分として含む、抗カンジダ活性組成物。
[2]トリテルペン類が、オレアノール酸、マスリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]の抗カンジダ活性組成物。
[3]ブドウ抽出物を有効成分として含む、抗カンジダ活性組成物。
[4]更にモノテルペンアルコールを含む前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の抗カンジダ活性組成物
[5]モノテルペンアルコールが、ヒノキチオール、ゲラニオール及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である、前記[4]に記載の抗カンジダ活性組成物。
【発明の効果】
【0007】
トリテルペン類の一種であるオレアノール酸、マスリン酸あるいはこれらトリテルペン類を一つでも含む植物の果皮・葉抽出物には抗カンジダ活性があり、また、ブドウ抽出物(パミスエキス)では、トリテルペン類単独より抗カンジダ活性が高まる。
さらに、ブドウ抽出物(パミスエキス)とモノテルペンアルコール(例えばゲラニオール)の併用は、単独での効果よりも、相乗的に抗カンジダ活性が高まる。よってこれらの成分を組み合わせて、食品、医薬品、口腔ケア用品等の医薬部外品に応用することができる。
オレアノール酸などのトリテルペン類は、植物より成分を得ることが容易であり、かつ食品への利用も認められている。また、熱やpHの変化に対して安定であり、無味無臭であるため、医薬品から食品、口腔ケア用品まで幅広い製品に応用することが可能である。そのため消費者及び患者はその成分を製品化したものを容易に入手し、簡便に使用することができる。また、トリテルペン類は、あらゆる菌の増殖を非特異的に抑制するのではなく、う蝕の原因であるStreptococcus mutansなどの口腔レンサ球菌や歯周病の原因菌といわれるPorphyromonas gingivalisなどの菌の増殖を特異的に抑えることが報告されており、菌交代現象を引き起こす可能性が少なく、長期的に摂取する場合により安全に使用できる。特に口腔カンジダ症は再発を繰り返しやすいため、トリテルペン類を含む組成物は、抗真菌剤適用によって生ずる菌交代症などのリスクを心配せず、消費者及び患者は安心して利用することができる。また、う蝕や歯周病が口腔カンジダ症に影響することが報告されていることから、トリテルペン類はう蝕・歯周病をも予防し、より効果的に、口腔カンジダ症を予防することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の抗カンジダ活性組成物は、トリテルペン類を有効成分として含有する。
トリテルペン類は炭素数30を基本骨格とする化合物であり、その代表例として五環性トリテルペン類が挙げられる。ここで、五環性トリテルペンとは、トリテルペン類の1種であり、イソプレン単位6個から成る五環性の化合物で、炭素数は30個を基本とするが、生合成過程で転位、酸化、脱離あるいはアルキル化され炭素数が前後するものも含まれる。
これらは、天然の植物から得ることも、人工的に得ることもできる。また、市販品も好適に利用することができる。五環性トリテルペン類は、一般に、その骨格により分類されている。例えば、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類、ルパン系トリテルペン類、ホパン系トリテルペン類、セラタン系トリテルペン類、フリーデラン系トリテルペン類、タラキセラン系トリテルペン類、タラキサスタン系トリテルペン類、マルチフロラン系トリテルペン類、ジャーマニカン系トリテルペン類等が挙げられる。
五環性トリテルペン類のうち、例えばオレアナン系トリテルペン類の代表例としてはオレアノール酸、マスリン酸、ウルサン系トリテルペン類の代表例としてはウルソール酸、コロソリン酸等が挙げられる。
これらはブドウ、オリーブ、シソ、リンゴ、ナツメ、チョウジなど多くの植物の果皮や葉に含まれている。
本発明においてトリテルペン類は医薬品又は食品として服用又は食用可能なものであれば、その由来および製法は何ら限定されるものではない。例えば、原料のブドウ果汁搾り粕やブドウ酒搾り粕を溶媒抽出し、必要により精製することにより得ることができる。
本発明において、好ましくはトリテルペン類が、オレアノール酸、マスリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である。
【0009】
また本発明の抗カンジダ活性組成物は、ブドウ抽出物(パミスエキス)を有効成分として含有する。
ブドウ抽出物とは、ブドウの果皮あるいは葉を溶媒抽出により得られる抽出物である。パミスとは、ブドウやオリーブなどの果実から果汁や油などを搾った後の残り粕のことであり、ブドウ抽出物はパミスを溶媒抽出により得たもの(パミスエキス)であっても良い。
抽出に用いる溶媒は水、有機溶媒、または有機溶媒と水との混合物が挙げられる。有機溶媒の例としてヘキサン、メタノール、エタノール、アセトン、ベンゼン、エチルエーテル、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール及び酢酸エチルなどが挙げられる。抽出溶媒として、有機溶媒と水との混合物が好ましく、特に水を10~50質量%程度含む含水エタノール、含水メタノール、又は含水アセトンが好ましく用いられる。
抽出温度は一般に40℃以上、好ましくは60~120℃、特に好ましくは60℃~100℃である。抽出する際の原料(無水物換算)に対する抽出溶媒の量は、特に限定されるものではないが、通常2~20倍量(V/W)が適当であり、好ましくは3~10倍量(V/W)である。使用する抽出装置としては、例えば回分式、半連続式、連続式など何れの型式の抽出装置を用いてもよいが、好ましくは何れの型式でも密閉型の装置である。そしてまた必要により耐圧性の装置が用いられる。なお抽出に際しては、所望により内容物を攪拌してもよい。
抽出時間は、通常10分~4時間が適当であり、好ましくは1時間~2時間程度である。
【0010】
上記のように抽出操作を行った後、固液分離を行って抽出液を得る。固液分離にはカートリッジフィルター、ネル濾布、濾過板、濾紙、濾過助剤を併用したフィルタープレス等の濾過法や遠心分離法などの適当な手段を用いることができる。使用した抽出溶媒によって、例えば、水、エタノール、含水エタノールなどを用いたとき、固液分離して得た抽出液をそのまま抽出物として使用することができる。
抽出液は適当な濃縮手段により、例えば減圧濃縮によって濃縮液とすることもできる。
さらに真空乾燥や減圧乾燥を施し、乾固物として抽出物を採取することができる。
上記の抽出液又は濃縮液はまた、凍結乾燥、噴霧乾燥、減圧乾燥などによって乾燥させて粉末状態の抽出物とすることができる。その際に適当な賦形剤を使用して粉末状態にしてもよい。
【0011】
上記のようにして得られた抽出物には、オレアノール酸やマスリン酸などのトリテルペン類、アントシアニン、カテキンなどのポリフェノール類、クロロフィル、ステリルグルコシド等の糖脂質類、一部の糖類などが含まれている。ブドウ抽出物(パミスエキス)を有効成分として含有する抗カンジダ活性組成物はトリテルペン類のみを含むものよりもより高い抗カンジダ活性を示す。
【0012】
本発明の抗カンジダ活性組成物は、更にテルペンアルコールを含んでも良い。
テルペンアルコールは、水酸基が導入された炭素数5個のイソプレン単位が結合して生じた一群の天然有機化合物の総称であり、モノテルペンアルコール(C10)、セスキテルペンアルコール(C15)、ジテルペンアルコール(C20)が精油成分として一般に用いられる。好ましくはモノテルペンアルコールである。モノテルペンアルコールとは、イソプレン単位2コから成るテルペンの炭化水素構造にアルコール基が導入された化合物の総称である。植物由来の精油に含まれることが多く、芳香を有する。
医薬部外品として登録されており、抗菌作用の報告されているものとしては、ヒノキチオール、ゲラニオールやリナロール、シトロネロール、メントールが挙げられる。ヒノキチオールはヒバ、クサヒバ、ヒノキアスナロ(青森ヒバ)、台湾ヒノキ、ウェスタンレッドシダー、アスナロなどのヒノキ科植物、ゲラニオールはパルマローザやシトロネラなどのイネ科植物、リナロールはローズウッド、ラベンダー、ベルガモット、クラリセージ、コリアンダー、ネロリ、イランイラン、ゼラニウム、シトロネロールはゼラニウム・メリッサ、ローズオット、メントールはペパーミントなどから得ることができる。
本発明においてモノテルペンアルコールは医薬品又は食品として服用又は食用可能なものであれば、その由来および製法は何ら限定されるものではない。これらは、天然の植物から得ることも、人工的に得ることもできる。天然から得る場合、植物の花や葉、茎や木部、樹皮、種子や果皮を釜に入れ下から水蒸気を吹き込んで揮発成分を集める水蒸気蒸留、果皮や種子の場合は器具を用いて精油を搾り出す圧縮法、石油エーテルやヘキサンの溶剤により抽出した後、溶剤を揮発させて香気成分を取り出す溶剤抽出法などにより得ることができ、市販品も好適に利用することができる。また、これら成分の多くは、抗菌作用があり医薬品や医薬部外品、化粧品などに応用されている。
本発明において、好ましくはモノテルペンアルコールが、ヒノキチオール、ゲラニオール及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である。
【0013】
カンジダは、健常人にも見られる常在性真菌であるが、ときによって病原性を示し、口腔や腟、皮膚のカンジダ症の原因となる。口腔カンジダ症は、舌の疼痛や味覚異常などの症状を呈してQOLの低下をもたらす感染症で、とくに高齢者に発症頻度が高く、老人ホームにおいてはその治療や予防が重要な課題となっている。口腔カンジダ症の原因菌は、その大半がカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)である。女性の腟カンジダ症も発症頻度が大変高く、局所の痒み、発赤、帯下といった症状を呈し、QOLが低下する。膣カンジダ症の原因菌は、主にカンジダ・アルビカンスであるが、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)などの菌種も比較的高い頻度で検出される。後の2菌種は通常の抗真菌剤には抵抗性で、難治性かつ再発を繰り返しやすいとされている。
【0014】
カンジダは、酵母形と菌糸形の2形性を示し、このうち菌糸形が病原性に直接関わっている。したがって菌糸形発育の阻害は、カンジダ感染症の予防に結びつくとされている。カンジダの酵母形および菌糸形発育それぞれに対するin vitro阻害試験の方法は確立されており、それによって、様々な材料のMIC(最少発育阻止濃度)を測定することにより抗カンジダ活性を評価することができる。
【0015】
また一般に、微生物に対して抗菌物質を併用した場合の相乗的効果の定義は、2剤の個別的効果の和よりも有意に大きい効果を示した場合を指す。また相乗効果に対する評価は、以下の通り、チェッカーボード法によって2剤のMICの値から求めたFIC係数(Fractional Inhibitory Concentration Index)によって行うことができる。すなわち、FIC係数が0.5未満の場合に、相乗効果があると判定される。
【0016】
<FIC係数の求め方>
FIC係数=A1/A0+B1/B0
A0:A剤単独のMIC
A1:A剤及びB剤併用時のA剤のMIC
B0:B剤単独のMIC
B1:A剤及びB剤併用時のB剤のMIC
<FIC係数による併用効果の評価>
FIC<0.5 相乗効果
0.5<FIC<1.0 超相加効果
FIC=1.0 相加効果
1.0<FIC=2.0 不関
FIC>2.0 拮抗作用
【0017】
本発明の抗カンジダ活性組成物は、組成物の態様でもよく、助剤とともに任意の形態に製剤化して、経口投与または非経口投与が可能な医薬品とすることができる。例えば、経口用の剤形としては、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投薬形態、シロップ及び懸濁液のような液体投薬形態とすることができる。非経口の剤形としては、注射剤等の形態で投与される。なお、医薬品には医薬部外品も含まれる。
【0018】
固形投薬形態とする場合、一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を適当量含んでいてもよい。このような添加剤として、例えば賦形剤、結合剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、pH調整剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0019】
液体投薬形態とする場合、本発明の抗カンジダ活性組成物は必要に応じてpH調整剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、等張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。
【0020】
本発明の抗カンジダ活性組成物は、機能性食品、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養機能食品等の保健機能食品、特別用途食品(例えば、病者用食品)、健康補助食品、サプリメント等として調製されてもよい。サプリメントとして、例えば、一般的なサプリメントの製造に用いられる種々の添加剤とともに錠剤、丸状、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)等の形状とすることができる。
【0021】
本発明の抗カンジダ活性組成物は、食品に配合することができる。配合可能な食品に特に限定はないが、例えば、飴、グミ、チューインガム等の菓子類;クッキー、クラッカー、ビスケット、チョコレート、プリン、ゼリー、スナック菓子、米菓、饅頭、羊羹などの菓子類;アイスクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、ジェラート等の冷菓;ドーナツ、ケーキ、ガレット、食パン、フランスパン、クロワッサン等のベーカリー食品;うどん、そば、中華めん、きしめん等の麺類;白飯、赤飯、ピラフ等の米飯類;カレー、シチュー、ドレッシング等のソース類;ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ等の練り製品;天ぷら、コロッケ、ハンバーグなどの各種惣菜類;ジュース、お茶等の飲料等が挙げられる。
【0022】
本発明の抗カンジダ活性組成物の摂取量は、摂取する患者等の年齢、性別、症状の程度、摂取形態によって異なるが、トリテルペン類又はブドウ抽出物について、それぞれ含まれるトリテルペン類の総量に換算して成人では1日あたり好ましくは40μg/kg体重以上であり、より好ましくは240μg/kg体重以上であり、更に好ましくは540μg/kg体重以上である。また特に摂取量の上限はないが、600μg/kg体重を超えると製品コストの観点から好ましくない。
本発明の抗カンジダ活性組成物がさらにモノテルペンアルコールを含む場合、本発明の抗カンジダ活性組成物の摂取量を換算すると成人では1日あたり好ましくはトリテルペン類1μg~4μg/kg体重以上、モノテルペンアルコール0.5μg~50μg/kg体重以上であり、より好ましくはトリテルペン類1μg~24μg/kg体重以上、モノテルペンアルコール0.5μg~750μg/kg体重以上であり、更に好ましくはトリテルペン類1μg~54μg/kg体重以上、モノテルペンアルコール0.5μg~1.5mg/kg体重以上である。また特に摂取量の上限はないが、トリテルペン類について600μg/kg体重、モノテルペンアルコールについて250mg/kg体重を超えると製品コストの観点から好ましくない。
本発明の抗カンジダ活性組成物は、必要に応じて、1日の摂取量を数回、例えば2~3回に分けて分割投与してもよい。
【0023】
上述の本発明に係る抗カンジダ活性組成物の記載に準じて、本発明は、トリテルペン類又はブドウ抽出物を患者又は被験体(ヒト)に投与することを含む、カンジダの予防、治療又は改善方法にも関する。
【実施例0024】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0025】
<実施例1> ブドウの果皮からのトリテルペン類の抽出(ブドウ抽出物)と、その中に含まれている成分の分析
原料ブドウの果皮100gを90%エタノール溶液で40℃、2時間抽出した後、濾過した。このエタノール抽出液を濃縮して得た乾固物をHPLC-UV法を用い、トリテルペン類量を分析した。その結果、オレアノール酸が含まれていた。オレアノール酸含量を測定し、オレアノール酸終濃度が2.5%となるようデキストリンを加え調節し、ブドウ抽出物を得た。
【0026】
<実施例2> 各々のカンジダ菌糸系発育に対する阻害活性
カンジダは帝京大学医真菌研究センター保存の臨床分離株、Candida albicans TIMM1768を用い、サブロー・デキストロース寒天培地平板で37℃、20時間培養した。増殖した菌体を回収して2%仔牛血清を含むRPMI-1640培地に懸濁し、菌数5×103cells/mLに調整してカンジダ菌液とした。トリテルペン類の一種であるオレアノール酸、マスリン酸の精製品、およびオレアノール酸を含むブドウ抽出物は、予め最終濃度をそれぞれ0~250μg/mL、0~50μg/mLおよび0~10mg/mL(トリテルペン類の量に換算すると0~250μg/mL)に合わせて、それぞれDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解し、この溶液を、2%仔牛血清を含むRPMI-1640培地に加えてサンプル液とした(培地中のDMSO濃度0.5%)。サンプル液およびカンジダ菌液各100μLを、それぞれ96穴マイクロプレート(住友ベークライト、Multi Well Plate)各ウェルに入れて、5%炭酸ガス存在下、37℃、16時間培養した。培養終了後、倒立顕微鏡によって発育状況を観察し、各ウェル中の培養物を吸引除去し、生理食塩水180μLを入れて洗浄回収し、70%エタノール200μLを入れてカンジダを殺菌した。エタノールを除去して水道水で洗浄した後、染色液(0.1Mリン酸バッファーに溶解した0.01%クリスタルバイオレット液)100μLを入れて15分間静置し、ウェルの表面に付着したカンジダ菌を染色した。水道水で洗浄して余分な染色液を除去した後、0.04N HClを含む3-イソプロパノール150μLおよび0.25%ドデシル硫酸ナトリウム溶液50μLを入れて菌体に付着した色素を遊離させた。色素を遊離させた後、プレートをマルチスキャンフォトメーター(大日本製薬、LabSystems Multiskan)にかけて、各ウェルのOD620nmを測定した。増殖阻害率は、以下の式により求めた。
増殖阻害率(%)=(1-サンプルOD/対照OD)×100
市販のオレアノール酸およびマスリン酸、ブドウ抽出物の各IC50(50%増殖阻害濃度)は、それぞれ110μg/mL、45μg/mL、1.20mg/mL(トリテルペン類の量に換算すると30μg/mL)、であった。従って、トリテルペン類の精製品を単独で使用した場合よりも、ブドウ抽出物として使用した場合により効果が高いことが示された。さらに、ブドウ抽出物は、2.5mg/mL(トリテルペン類の量に換算すると62.5μg/mL)で、90%増殖を阻害した(IC90=2.5mg/mL)。
【0027】
<実施例3> マウス口腔カンジダ症モデルにおけるブドウ抽出物の治療効果
実験動物にはICR系マウス(雌、6週齢、日本チャールスリバー)を用い、カンジダ菌接種前日に、免疫抑制を目的にプレドニゾロン100mg/kgを皮下注射した。また、その日から塩酸クロルテトラサイクリン15mg/mLを含有した水道水の自由摂取を開始した。接種当日、マウスを安静状態に保つため、予めクロルプロマジン塩酸塩(和光純薬工業)12mg/kgを筋肉内投与した。使用した菌株および培養方法は前項までの実施例2と同じとし、増殖した菌体を、2%仔牛血清を含むRPMI-1640培地に懸濁し、菌数を2×108cells/mLに調整して菌液とした。この菌液に綿棒を漬け、それを安静になったマウス口腔に擦り付けてカンジダ菌を接種した。ブドウ抽出物は、それぞれ濃度2mg/mL、10mg/mLおよび20mg/mLになるよう予めTween80(終濃度1%)を用いて蒸留水に懸濁した。それぞれの懸濁液を、カンジダ菌接種3時間後、24時間後および27時間後に、マウス用胃ゾンデを用い、口腔内の舌背に滴下した。接種2日後にマウスを安楽死させ、基準に従って舌症状スコアを評価した。
舌症状スコアについては、対照群3.33±0.52に対し、ブドウ抽出物摂取群2.33±0.52と有意の改善が認められた。
【0028】
<実施例4> カンジダ菌糸形発育に対する、ブドウ抽出物とヒノキチオール(あるいはゲラニオール)との併用による抗カンジダ活性の相乗効果
併用による抗カンジダ活性の相乗効果については、チェッカーボード法により評価した。96穴マイクロプレート上にチェッカーボードを想定し、各ウェルに、ブドウ抽出物とヒノキチオール(あるいはゲラニオール)それぞれの濃度系列を交差させた。実験条件および測定方法などは実施例2の試験と同様とした。
ブドウ抽出物とヒノキチオール単独使用時の各IC90は、それぞれ10mg/mLおよび0.89μg/mL、併用時の各IC90は、それぞれ0.31mg/mLおよび0.34μg/mLであった。それらの数値を用いて以下の計算により求めたFIC係数は0.413となり、相乗効果があると判定された。
FIC係数=0.31/10+0.34/0.89=0.413<0.5
【0029】
ブドウ抽出物とゲラニオール単独使用時の各IC80は、それぞれ6.03mg/mLおよび1.34μg/mL、併用時の各IC80は、それぞれ0.63mg/mLおよび0.34μg/mLであった。それらの数値を用いて以下の計算により求めたFIC係数は0.358となり、相乗効果があると判定された。
FIC係数=0.63/6.03+0.34/1.34=0.358<0.5
【0030】
<実施例5>ブドウ抽出物の使用例1
(ブドウ抽出物配合タブレット)
下記の組成により、常法に従って原料を混合、打錠し、タブレットを製造した。
【0031】
<実施例6>ブドウ抽出物の使用例2
(ブドウ抽出物配合歯磨き粉)
下記の組成により、常法に従って歯磨き粉を製造した。