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特開2022-20585遷移金属層を備える構造を形成するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020585
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】遷移金属層を備える構造を形成するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/08 20060101AFI20220125BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20220125BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20220125BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220125BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C23C16/08
H01L21/88 R
H01L21/90 B
H01L21/28 301R
H01L21/285 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021118001
(22)【出願日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】63/054,135
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ポール・マ
(72)【発明者】
【氏名】ロガイエ・ロトフィ
(72)【発明者】
【氏名】ジェボム・イ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・クリストファー・スティーヴンス
(72)【発明者】
【氏名】チャリス・エランガ・ナナヤックカーラ
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4K030AA01
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA04
4K030AA05
4K030AA09
4K030AA11
4K030AA12
4K030AA13
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA12
4K030BA36
4K030BA38
4K030BA50
4K030BA58
4K030DA09
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA01
4K030JA10
4K030LA15
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4M104BB13
4M104BB14
4M104BB16
4M104BB17
4M104BB18
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4M104FF13
4M104HH08
4M104HH09
5F033GG01
5F033GG03
5F033HH07
5F033HH11
5F033HH15
5F033HH17
5F033HH18
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5F033HH31
5F033JJ01
5F033JJ07
5F033JJ31
5F033MM05
5F033NN07
5F033PP06
5F033QQ73
5F033VV16
5F033WW03
(57)【要約】
【課題】金属層を形成するための改善された方法およびシステムを提供する。
【解決手段】基材の表面上に遷移金属層を形成するための方法およびシステム、ならびに方法を使用して形成される構造およびデバイスが開示される。例示的な方法は、遷移金属層を形成する前に遷移層を形成することを含む。遷移層を使用して、遷移金属層の堆積中の形体の屈曲を軽減しながら、高アスペクト比の形体上へ遷移金属層を容易に続いて堆積させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造を形成する方法であって、前記方法は、
基材を供給する工程と、
前記基材の表面上に、遷移金属硫化物、遷移金属炭化物、および遷移金属窒化物のうちの一つまたは複数を含む遷移層を形成する工程と、
前記遷移層の上に遷移金属層を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
遷移金属硫化物、遷移金属炭化物、および遷移金属窒化物のうちの一つまたは複数の遷移金属ならびに前記遷移金属層の前記遷移金属は同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移層は、第4族から第7族の遷移金属から選択される遷移金属を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移層の厚さは、100オングストロームを超える、1nmを超える、5nmを超える、約1nm~約20nm、または約1nm~約10nmである、請求項1~3のいずれかに一項に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移層を形成する前記工程は、周期的堆積プロセスを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記周期的堆積プロセスは、
遷移金属前駆体を反応チャンバーへ供給することと、
炭素、硫黄、および窒素反応物質のうちの一つまたは複数を前記反応チャンバーに供給することと、
必要に応じて、還元反応物質を前記反応チャンバーに供給することと、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属前駆体は、ハロゲン化遷移金属、ハロゲン化遷移金属カルコゲニド、遷移金属カルボニル、遷移金属有機前駆体、および遷移金属有機金属前駆体のうちの一つまたは複数を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記炭素反応物質は、アセチレン、エチレン、ハロゲン化アルキル化合物、ハロゲン化アルケン化合物、および金属アルキル化合物のうちの一つまたは複数を含む、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記窒素反応物質は、窒素(N)、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、またはヒドラジン誘導体、水素と窒素の混合物、窒素イオン、窒素ラジカル、および窒素励起種のうちの一つまたは複数を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記硫黄反応物質は、硫化水素(HS)、硫黄、チオール、ジスルフィド結合を含む化合物、硫黄-アルキル基結合を含む化合物、式R-S-S-R’またはS-R(式中、RおよびR’は、脂肪族(C1~C8)および芳香族基から互いに独立して選択される)によって表される化合物、およびハロゲン化硫黄のうちの一つまたは複数を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記還元反応物質は、水素、水素ラジカル、水素イオン、式Si(2n+2)を有するシラン、式Ge2n+2を有するゲルマン、および式Bn+4またはBn+6を有するボランのうちの一つまたは複数を含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記遷移金属層を形成する前記工程は、周期的堆積プロセスを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記周期的堆積プロセスは、
モリブデン前駆体を反応チャンバーに供給することと、
還元反応物質を前記反応チャンバーに供給することと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記モリブデン前駆体は、ハロゲン化モリブデン、ハロゲン化モリブデンカルコゲニド、モリブデンカルボニル、モリブデン金属有機前駆体、およびモリブデン有機金属前駆体のうちの一つまたは複数を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記モリブデン前駆体は少なくとも一つのハロゲン配位子を含む、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記モリブデン前駆体は、四塩化モリブデン(MoCl)、三塩化モリブデン(MoCl)、四塩化モリブデン(MoCl)、五塩化モリブデン(MoCl)、六塩化モリブデン(MoCl)、六フッ化モリブデン(MoF)、モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO))、テトラクロロ(シクロペンタジエニル)モリブデン、三塩化酸化モリブデン(V)(MoOCl)、四塩化酸化モリブデン(VI)(MoOCl)、および二塩化酸化モリブデン(IV)(MoOCl)のうちの一つまたは複数、Mo(tBuN)(NMe、Mo(NBu)(StBu)、(MeN)Mo、(iPrCp)MoH、Mo(NMe、Mo(NEt、Mo(NMe、Mo(tBuN)(NMe、Mo(NtBu)(StBu)、Mo(NtBu)(iPrAMD)、Mo(thd)、MoO(acac)、MoO(thd)、MoO(iPrAMD)、Mo(Cp)、Mo(iPrCp)、Mo(η-エチルベンゼン)、MoCp(CO)(η3-アリル)、およびMoCp(CO)(NO)を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記遷移金属層を形成する工程中の堆積温度は、800℃未満、650℃未満、600℃未満、550℃未満、500℃未満、約300℃~550℃、約300℃~500℃、または約300℃~450℃である、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記遷移金属層を還元雰囲気中でアニーリングする工程をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アニーリング工程中の温度は、約450℃~約1000℃または約550℃~約900℃である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法に従って形成される構造。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実行するための反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ね、基材の表面上に層を形成するための好適な方法およびシステム、ならびに層を備える構造に関する。より具体的には、本開示は、遷移金属を含む層を形成するための方法およびシステム、ならびに方法およびシステムを使用して形成される構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス、例えば半導体デバイスのスケーリングにより、集積回路の性能と密度が大幅に向上している。しかし、従来のデバイス・スケーリング技術は、将来のテクノロジーノードにとっての大きな課題に直面している。
【0003】
例えば、一つの課題は、金属ギャップフィル用途に使用するための導電性材料を堆積させるのに好適な技術を見つけることであり、この材料は、基材の表面上にある(例えば、誘電体の)形体に望ましくない変形または応力を引き起こさず、望ましくは低い比抵抗を有する。ボイドおよび/またはシームのないギャップフィルを備える、所望の(すなわち、比較的低い)粗さを有する導電層を堆積させるための別の課題が存在する。したがって、このような特性を有する金属層を形成するための改善された方法およびシステムが望まれる。
【0004】
この節で説明される問題および解決策の説明を含むすべての説明は、本開示の背景を提供する目的でのみ本開示に含まれている。かかる説明は、発明が行われた時点で、あるいは先行技術を構成する時点で、情報の一部またはすべてが既知であったことを認めるものと解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
この節では、選択された概念を簡略化した形態で紹介し、これは以下でさらに詳細に説明されることができる。この発明の概要は、特許請求される主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを必ずしも意図しておらず、特許請求される主題の範囲を限定するために使用することも意図していない。
【0006】
本開示の様々な実施形態は、遷移金属層を備える構造を形成する方法、このような方法を使用して形成される構造、ならびに方法を実行するためのシステムおよび/または構造を形成するためのシステムに関する。遷移金属層は、ライナーまたはバリア層(例えば、3D-NANDまたはDRAMワードライン用)用途として、相互接続用途等用に、使用するためのギャップフィル(例えば、相補形金属酸化膜半導体(CMOS))用途を含む様々な用途で使用されることができる。さらに、以下でより詳細に説明するように、本開示の実施例を使用して、比較的滑らかで、シーム形成もボイド形成も示さず、所望の(低い)比抵抗値を示す遷移金属層を堆積させることができる。
【0007】
本開示の例示的な実施形態によれば、構造を形成する方法が開示される。構造を形成する例示的な方法は、基材を供給することと、遷移金属硫化物、遷移金属炭化物、および遷移金属窒化物のうちの一つまたは複数を含む遷移層を基材の表面上に形成することと、遷移層を覆う遷移金属層を形成することと、を含む。遷移層および/または遷移金属層における遷移金属は、例えば、第4族~第7族または他の遷移金属であってもよい。例示的な遷移金属は、チタン、タングステン、モリブデン、バナジウム、ルテニウム、銅、ニオブ、タンタル、コバルト、ハフニウム、およびジルコニウムからなる群から選択されることができる。場合によっては、遷移層および遷移金属層における遷移金属は、同じ金属であることができる。本開示の実施例によれば、遷移層の厚さは、100オングストロームを超える、1nmを超える、5nmを超える、約1nm~約20nm、または約1nm~約10nmである。別の実施例によれば、遷移層を形成する工程は、周期的堆積プロセスを含む。周期的堆積プロセスは、遷移金属前駆体を反応チャンバーに供給することと、炭素、硫黄、および窒素反応物質のうちの一つまたは複数を反応チャンバー供給することと、還元反応物質を反応チャンバーに供給することと、を含むことができる。遷移金属層を形成する工程は、周期的堆積プロセスを含むことができる。遷移層を形成する工程および/または遷移金属層を形成する工程中の温度は、650℃未満、600℃未満、550℃未満、500℃未満、約300℃~600℃、約300℃~650℃、約300℃~550℃、約300℃~500℃、または約300℃~450℃とすることができる。場合によっては、遷移層を形成する工程中の基材の温度は、遷移金属層を形成する工程中の温度よりも低くてもよい。本開示の実施例によれば、方法はまた、還元雰囲気中で遷移金属層をアニーリングする工程を含む。アニーリング工程中の温度は、約450℃~1000℃または約550℃~900℃とすることができる。遷移金属層を形成する工程中の反応チャンバー内の圧力は、760Torr未満、約0.2~約300Torr、約0.5~約60Torr、約20~約80Torr、約0.5~約50Torr、または約0.5~約20Torrとすることができる。遷移層を形成する工程中の反応チャンバー内の圧力は、遷移金属層を形成する工程中の圧力よりも低くてもよく、例えば、上記で指定される範囲内であることができる。
【0008】
本開示のなおさらなる例示的実施形態によれば、構造は、本明細書に記載の方法を使用して形成される。構造は、基材、基材状に形成される(例えば、一時的な)遷移層、および遷移層上に形成される遷移金属層を備えることができる。遷移層を用いて、遷移層上に形成される遷移金属膜の粗さを低減し、低減しなければ発生するであろうシームおよび/またはボイドの形成を低減することができ、遷移金属層が形体上に直接堆積される場合、低減しなければ発生する可能性がある、下にある形体の屈曲または応力を軽減することができる。遷移金属層は、ライナーまたはバリアとして、相互接続等としてギャップフィルを含む様々な用途に使用されることができる。
【0009】
本開示のさらに別の実施例によれば、本明細書に記載の方法を実行するための、および/または構造またはその一部を形成するためのシステムが開示される。
【0010】
当業者には、これらのおよび他の実施形態は、添付の図面を参照して、以下のある特定の実施形態の詳細な説明から容易に明らかとなる。本発明は、開示された任意の特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の実施形態のより完全な理解は、以下の例示的な図面に関連して考慮される場合、発明を実施するための形態および特許請求の範囲を参照することによって得られることができる。
【0012】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態による方法である。
図2図2は、本開示の例示的な実施形態によるプロセスである。
図3図3は、本開示の例示的な実施形態によるプロセスである。
図4図4は、本開示の実施例による構造である。
図5図5は、本開示の追加の例示的な実施形態による反応器システムを図示する。
【0013】
当然のことながら、図内の要素は、単純化および明瞭化のために例示されていて、必ずしも実寸に比例して描かれていない。例えば、図内の要素のうちのいくつかの寸法は、本開示の例示された実施形態の理解の向上を助けるために他の要素に対して相対的に誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記に提供される方法、構造、デバイス、およびシステムの例示的な実施形態の記述は、単に例示であって、また説明のみを意図しており、下記の記述は本開示または特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。さらに、記載された特徴を有する複数の実施形態の列挙は、追加の特徴を有する他の実施形態も、記載された特徴の異なる組み合わせを組み込む他の実施形態をも排除することを意図していない。例えば、様々な実施形態が例示的な実施形態として記載され、従属する特許請求の範囲に引用され得る。特に記載がない限り、例示的な実施形態またはその構成要素は、様々な組み合わせで組み合わせられてもよく、または互いに別々に適用されることができる。
【0015】
以下により詳細に説明するように、本開示の様々な実施形態は、様々な用途に好適な構造を形成するための方法を提供する。例示的な方法を使用して、例えば、遷移金属層、好適なギャップフィル用途、相互接続用途、バリアまたはライナー用途等を形成することができる。しかしながら、特に明記されない限り、本発明は必ずしもそのような例に限定されない。
【0016】
本開示において、「ガス」は、常温常圧(NTP)の気体である材料、気化した固体および/または気化した液体を含むことができ、状況に応じて単一の気体または気体の混合物で構成されることができる。プロセスガス以外のガス、すなわち、ガス分配アセンブリ、他のガス分配装置等を通過することなく導入されるガスは、例えば反応空間を密封するために使用可能で、シールガス、例えば希ガスを含むことができる。場合によっては、用語「前駆体」は、別の化合物を生成する化学反応に参加する化合物、および具体的には膜のマトリックスまたは膜の主骨格を構成する化合物を指すことができる。用語「反応物」は、用語前駆体と互換的に使用されることができる。用語「不活性ガス」は、化学反応に関与しない、および/または相当な程度まで膜マトリクスの一部にならないガスを指し得る。例示的な不活性ガスは、ヘリウム、アルゴンおよびそれらの任意の組み合わせを含む。一部の例では、不活性ガスは窒素および/または水素を含み得る。
【0017】
本明細書で使用される、用語「基材」は、デバイス、回路、もしくは膜を形成するのに使用され得る任意の下地材料または材料、またはデバイス、回路、もしくは膜が上に形成され得る任意の下地材料または材料を指し得る。基材は、シリコン(例えば、単結晶シリコン)などのバルク材料、ゲルマニウムなどの他のIV族材料、またはII-VI族、もしくはIII-V族半導体材料などの他の半導体材料を含むことができる、かつバルク材料の上に重なる、または下にある一つまたは複数の層を含むことができる。さらに、基材は、基材の層の少なくとも一部分の中またはその上に形成される様々な特徴(陥凹部、突出部およびこれに類するものなど)を含むことができる。例示として、基材は、バルク半導体材料と、バルク半導体材料の少なくとも一部分の上に重なる絶縁または誘電材料層とを含み得る。
【0018】
本明細書で使用する用語「膜」および/または「層」は、任意の連続的または非連続的な構造および材料、例えば本明細書に開示の方法により堆積された材料を指すことができる。例えば、膜および/または層としては、二次元材料、三次元材料、ナノ粒子、あるいは部分的もしくは完全な分子層、または部分的もしくは完全な原子層、または原子および/もしくは分子のクラスターさえをも挙げることができる。膜または層は、ピンホールを有する材料または層を含んでもよく、少なくとも部分的に連続していてもよい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「構造」は、本明細書に記載される基材であるか、またはそれを含み得る。構造は、本明細書に記載の方法に従って形成された一つまたは複数の層など、基材上を覆う一つまたは複数の層を含み得る。
【0020】
「周期的堆積プロセス(cyclic deposition process)」または「周期的堆積プロセス(cyclical deposition process)」という用語は、前駆体(および/または反応物質)を反応チャンバー内へ連続的に導入して基材上に層を堆積させることを指すことができ、かつ、ALD成分と周期的CVD成分とを含む、原子層堆積(ALD)、周期的化学気相堆積(周期的CVD)、およびハイブリッド周期的堆積プロセスなどの処理技術を含む。用語、方法およびプロセスは、互換的に使用されることができる。
【0021】
用語、「原子層堆積」は、堆積サイクル、典型的には複数の連続堆積サイクルがプロセスチャンバー内で行われる蒸着プロセスを指すことができる。本明細書で使用される原子層堆積という用語は、関連する用語、例えば、前駆体/反応性ガス、およびパージ(例えば、不活性キャリア)ガスの交互パルスで実施される場合、化学蒸着原子層堆積、原子層エピタキシー(ALE)、分子線エピタキシー(MBE)、ガス供給源MBE、または有機金属MBE、ならびに化学ビームエピタキシー、により示されるプロセスを含むことも意味する。
【0022】
一般的に、ALDサイクルでは、各サイクル中に、前駆体が反応チャンバーに導入され、堆積表面(例えば、以前のALDサイクルから以前に堆積した材料または他の材料を含みうる、基材表面)に化学吸着され、別の前駆体と容易に反応しない材料の単分子層またはサブ単分子層を形成する(すなわち、自己制御反応)。その後、一部の事例では、化学吸着した前駆体を堆積表面上で所望の材料に変態させるのに使用するために、反応物質(例えば、別の前駆体または反応ガス)をその後プロセスチャンバー内に導入することができる。反応物質は、前駆体とさらに反応することができる。パージ工程は、一つまたは複数のサイクルの間、例えば各サイクルの各工程の間に利用されて、過剰な前駆体をプロセスチャンバーから除去し、および/または過剰な反応物質および/または反応副生成物を反応チャンバーから除去する。
【0023】
本明細書で使用する場合、「遷移金属層」は、遷移金属、例えば一つまたは複数の第4族から第7族の遷移金属または他の遷移金属を含む化学式によって表わされることができる材料層であることができる。例として、遷移金属層は、チタン、タングステン、モリブデン、バナジウム、ルテニウム、銅、ニオブ、タンタル、コバルト、ハフニウム、およびジルコニウムからなる群から選択される一つまたは複数の遷移金属を含むことができる。遷移金属層は、金属であることができる。
【0024】
本明細書で使用する場合、「遷移金属前駆体」は、気体、または気体になることができ、かつ遷移金属、例えば上記の遷移金属を含む化学式で表わされることができる材料を含む。
【0025】
本明細書で使用する場合、「ハロゲン化遷移金属前駆体」は、ガス、または気体になることができ、かつ遷移金属およびハロゲン、例えばフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)のうちの一つまたは複数を含む化学式で表されることができる材料を含む。
【0026】
用語「窒素反応物質」は、気体になり得、窒素を含む化学式によって表され得る気体または材料を指し得る。場合によっては、化学式は窒素および水素を含む。場合によっては、窒素反応物質は、二原子窒素を含まない。
【0027】
用語「硫黄反応物質」は、気体、または気体になることができ、かつ硫黄を含む化学式で表されることができる材料を指すことができる。場合によっては、化学式は硫黄および水素を含む。場合によっては、硫黄反応物質は、原子の硫黄を含まない。
【0028】
用語「炭素反応物質」は、気体、または気体になることができ、かつ炭素を含む化学式によって表されることができる材料を指すことができる。場合によっては、化学式は炭素および水素を含む。
【0029】
さらに、本開示では、任意の二つの変数はその変数の実行可能な範囲を構成することができ、示された任意の範囲は、端点を含んでもよく、または除外してもよい。さらに、示された変数の任意の値は(それらが「約」で示されているか否かにかかわらず)、正確な値またはおおよその値を指し、等価物を含み、平均値、中央値、代表値、または大多数等を指してもよい。さらに、本開示では、「含む」「によって構成される」および「有する」という用語は、いくつかの実施形態では、「典型的にまたは広く含む」、「含む」、「から本質的になる」、または「からなる」を独立して指す。本開示では、任意の定義された意味は、いくつかの実施形態では、通常および慣習的な意味を必ずしも排除するものではない。
【0030】
ここで図を参照すると、図1は、本開示の例示的な実施形態による構造を形成する方法100を例示する。方法100は、基材を供給する工程(工程102)、遷移層を形成する工程(工程104)、遷移金属層を形成する工程(工程106)、およびアニーリングの工程(工程108)を含む。
【0031】
工程102の間、基材を反応チャンバー内に供給する。工程102の間に使用される反応チャンバーは、周期的堆積プロセスを実施するように構成された化学蒸着反応器システムの反応チャンバーであるか、またはそれを含み得る。反応チャンバーは、スタンドアローンの反応チャンバーまたはクラスターツールの一部であり得る。
【0032】
工程102は、基材を反応チャンバー内で所望の堆積温度に加熱することを含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、工程102は、基材を800℃未満の温度に加熱することを含む。例えば、本開示のいくつかの実施形態では、基材を堆積温度に加熱することは、約20℃~約800℃、650℃未満、600℃未満、550℃未満、500℃未満、約300℃~600℃、約300℃~650℃、約300℃~550℃、約300℃~500℃、または300℃~450℃温度に基材を加熱することを含んでもよい。場合によっては、工程102および/または工程104中の基材の温度は、工程106中の基材の温度よりも低い。
【0033】
基材の温度を制御することに加えて、反応チャンバー内の圧力もまた調節されることができる。例えば、本開示のいくつかの実施形態では、工程102および/または工程104の間の反応チャンバー内の圧力は、760Torr未満、または約0.2~約300Torr、約0.5~50Torr、もしくは約0.5~約20Torrとすることができる。工程102および/または工程104中の反応チャンバー内の圧力は、工程106中の圧力よりも小さくてもよい。工程102の温度および圧力は、工程104に好適な温度および圧力である。
【0034】
工程104中、遷移金属硫化物、遷移金属炭化物、および遷移金属窒化物のうちの一つまたは複数を含む遷移層は、基材の表面上に形成される。遷移層を、周期的堆積プロセス、例えば、周期的CVD、ALD、またはハイブリッド周期的CVD/ALDプロセスを使用して形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、特定のALDプロセスの成長速度は、CVDプロセスと比較して低い場合がある。成長速度を増加させる一つのアプローチは、ALDプロセスにおいて典型的に用いられる温度よりも高い堆積温度で動作するものであり得、結果として化学蒸着プロセスの一部となるが、なお反応物質の逐次導入の利点を有する。このようなプロセスは、周期的CVDと呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、周期的CVDプロセスは、反応チャンバー内への二つ以上の反応物質の導入を含み得、反応チャンバー内の二つ以上の反応物質の間の重複の持続時間は、堆積のALD成分と堆積のCVD成分の両方をもたらす。これはハイブリッドプロセスと呼ばれる。別の実施例によれば、周期的堆積プロセスは、一つの反応物質/前駆体の連続的な流れ、および第二の前駆体の反応チャンバー内への周期的なパルスを含んでもよい。
【0035】
本開示のいくつかの例によれば、周期的堆積プロセスは熱堆積プロセスである。これらの事例では、周期的堆積プロセスには、周期的堆積プロセスにおける使用のための活性種を形成するためのプラズマの使用は含まれない。例えば、周期的堆積プロセスは、窒素プラズマ、硫黄プラズマ、および炭素プラズマの形成も使用も含まない場合があり、窒素励起種、硫黄励起種、および炭素励起種の形成も使用も含まない場合があり、ならびに/または窒素ラジカル、硫黄ラジカル、および炭素ラジカルの形成も使用も含まない場合がある。
【0036】
別の場合、工程104は、一つまたは複数の前駆体、反応物質、および不活性ガスから励起種を形成することを含むことができる。励起種は、直接プラズマおよび/または遠隔プラズマを使用して形成することができる。
【0037】
周期的堆積プロセスは、遷移金属前駆体を反応チャンバーに(例えば、別々におよび/または順次)供給すること、ならびに反応物質を反応チャンバーに供給することを含むことができる。
【0038】
工程104に好適な例示的な周期的堆積プロセス200を図2に例示する。プロセス200は、遷移金属前駆体を反応チャンバーに供給する工程(工程202)と、炭素反応物質、硫黄反応物質、および窒素反応物質のうちの一つまたは複数を反応チャンバーに供給する工程(工程204)と、還元反応物質を反応チャンバーに供給する工程(工程206)とを含む。特に明記しない限り、工程202~206は、例示した順序で実行される必要はない。例えば、プロセス200は、工程202と、続いて工程206と、続いて工程204とを含むことができる。あるいは、プロセス200は、工程202および204、または工程202および206のみを含むことができる。
【0039】
遷移金属前駆体中の遷移金属は、第4族から第7族の遷移金属または他の遷移金属から選択される金属を含むことができる。一例として、遷移金属は、チタン、タングステン、モリブデン、バナジウム、ルテニウム、銅、ニオブ、タンタル、コバルト、ハフニウム、およびジルコニウムからなる群から選択されることができる。
【0040】
本開示の別の実施例によれば、遷移金属前駆体は、ハロゲン化遷移金属、ハロゲン化遷移金属カルコゲニド、遷移金属カルボニル、遷移金属有機前駆体、および遷移金属有機金属前駆体のうちの一つまたは複数を含むことができる。
【0041】
一例として、遷移金属は、モリブデンであることができ、またはモリブデンを含むことができる。この場合、遷移金属前駆体は、ハロゲン化モリブデン、オキシハロゲン化モリブデン、モリブデン有機金属化合物、モリブデン金属有機化合物等のうちの一つまたは複数を含むことができる。
【0042】
特定の例として、ハロゲン化モリブデンは、フッ化モリブデン、塩化モリブデン、臭化モリブデン、およびヨウ化モリブデンのうちの一つまたは複数から選択されることができる。ハロゲン化モリブデンは、モリブデンおよび一つまたは複数のハロゲンのみを含むことができる。例示的な好適なハロゲン化モリブデンは、三塩化モリブデン(MoCl)、四塩化モリブデン(MoCl)、五塩化モリブデン(MoCl)、六塩化モリブデン(MoCl)、および六フッ化モリブデン(MoF)のうちの一つまたは複数を含む。
【0043】
オキシハロゲン化モリブデンは、オキシハロゲン化モリブデンのうちの一つまたは複数、例えば、オキシフッ化モリブデン、オキシ塩化モリブデン、オキシ臭化モリブデン、およびオキシヨウ化モリブデンのうちの一つまたは複数から選択されることができる。オキシハロゲン化モリブデンは、モリブデン、酸素、および一つまたは複数のハロゲンのみを含むことができる。一例として、オキシハロゲン化モリブデンは、臭素、塩素、およびヨウ素のうちの一つまたは複数を含む化合物から選択され、ならびに、三塩化酸化モリブデン(V)(MoOCl)、四塩化酸化モリブデン(VI)(MoOCl)、および二塩化酸化モリブデン(IV)(MoOCl)のうちの一つまたは複数を含むことができる。
【0044】
別の例示的なモリブデン前駆体は、モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO))、テトラクロロ(シクロペンタジエニル)モリブデン、Mo(tBuN)(NMe、Mo(NBu)(StBu)、(MeN)Mo、(iPrCp)MoH、Mo(NMe、Mo(NEt、Mo(NMe、Mo(tBuN)(NMe、Mo(NtBu)(StBu)、Mo(NtBu)(iPrAMD)、Mo(thd)、MoO(acac)、MoO(thd)、MoO(iPrAMD)、Mo(Cp)、Mo(iPrCp)、Mo(η-エチルベンゼン)、MoCp(CO)(η-アリル)、およびMoCp(CO)(NO)を含む。
【0045】
例示的な遷移金属(例えば、モリブデン)前駆体として、「ヘテロレプティック」または混合リガンド前駆体を挙げることができ、ここで、任意の達成可能な数(典型的には3~5個のリガンドであるが例外がある)の例示的なリガンドタイプの任意の組み合わせを遷移金属/モリブデン原子に結合させることができる。場合によっては、遷移金属/モリブデン前駆体は、少なくとも一つのハロゲン配位子を含む。
【0046】
ハロゲン化物前駆体およびオキシハロゲン化物前駆体の使用は、他の前駆体、例えば有機金属前駆体を使用する方法と比較して有利であることができる。なぜなら、ハロゲン化物前駆体およびオキシハロゲン化物前駆体は比較的安価であることができるため、不純物、例えば炭素の濃度がより低い遷移金属層をもたらすことができ、および/またはこのような前駆体を使用するプロセスは、有機金属前駆体もしくは他のモリブデン前駆体もしくは他の遷移金属前駆体を使用するプロセスと比較して、より制御可能であることができるからである。さらに、このような前駆体を使用して、プラズマの助けの有無に関わらず、励起種を形成することができる。さらに、ハロゲン化遷移金属前駆体を使用するプロセスは、有機金属遷移金属前駆体を使用する方法と比較して、容易にスケールアップすることができる。
【0047】
工程204の間、炭素反応物質、硫黄反応物質、および窒素反応物質のうちの一つまたは複数は、反応チャンバーに供給される。
【0048】
例示的な窒素反応物質は、窒素(N)、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N)、またはヒドラジン誘導体、水素と窒素の混合物、窒素イオン、窒素ラジカル、および窒素励起種、ならびに他の窒素および水素含有ガスのうちの一つまたは複数から選択されることができる。窒素反応物質は、窒素および水素を含むか、またはこれからなり得る。場合によっては、窒素反応物質は、二原子窒素を含まない。
【0049】
例示的な硫黄反応物質は、硫化水素(HS)、硫黄(例えば、S)、チオール(例えば、アルキルおよびアリールチオール)、ジスルフィド結合を含む化合物、硫黄-アルキル基結合を含む化合物、および式R-S-S-R’またはS-R(式中、RおよびR’は、脂肪族(例えば、C1~C8)および芳香族基から互いに独立して選択される)によって表される化合物、ハロゲン化硫黄(例えば、一つの硫黄、例えばSClもしくはSBr、または一つのハロゲン化物、例えば二塩化二硫黄を含む)を含む。アルキルチオールは、C1~C8アルキルチオールを含むことができる。
【0050】
例示的な炭素反応物質として、アセチレン、エチレン、ハロゲン化アルキル化合物、ハロゲン化アルケン化合物、金属アルキル化合物等が挙げられる。例示的なハロゲン化アルキル化合物として、CX、CHX、CH、CHX(式中、XはF、Cl、Br、またはIである)が挙げられる。例示的なハロゲン化アルケン化合物として、CX、C、CHX、およびC(式中、XはF、Cl、Br、またはIである)が挙げられる。例示的なハロゲン化アルキン化合物として、CおよびHCX(式中、XはF、Cl、Br、またはIである)が挙げられる。例示的な金属アルキル化合物として、AlMe、AlEt、Al(iPr)、Al(iBu)、Al(tBu)、GaMe、GaEt、Ga(iPr)、Ga(iBu)、Ga(tBu)、InMe、InEt、In(iPr)、In(iBu)、In(tBu)、およびZnMe、ZnEtが挙げられる。
【0051】
工程206の間、還元反応物質が反応チャンバーに供給される。還元反応物質は、水素、水素ラジカル、水素イオン、式Si(2n+2)を有するシラン、式Ge2n+2を有するゲルマン、式Bn+4またはBn+6を有するボラン、その他の水素化ホウ素、揮発性金属水素化物、およびそれらの付加物、例えば、DIBALおよびRN-AlH、(式中、Rは、金属とキレートを形成することができるヘテロ原子を有するものを含む任意のアルキル基またはアリール基である)のうちの一つまたは複数を含むことができる。
【0052】
場合によっては、二つ以上の前駆体および/または二つ以上の反応物質が反応チャンバー内で重なり合うように、二つ以上の前駆体および/または二つ以上の反応物質を反応チャンバーに流すことができる。例えば、一つまたは複数の窒素反応物質および一つまたは複数の炭素反応物質を、反応チャンバーに並流させることができる。
【0053】
熱周期的堆積プロセスの場合、反応チャンバーに反応物質を供給する工程の持続時間は、反応物質が前駆体またはその誘導体と反応することを可能にするために比較的長くてもよい。例えば、持続時間は、約0.1~約30秒、約1~約5秒、または約1.5~約10秒とすることができる。
【0054】
工程104/プロセス200の一部として、反応チャンバーは、真空および/または不活性ガスを使用してパージされ、例えばALDの場合、前駆体/反応物質間の気相反応を緩和し、自己飽和表面反応を可能にする。追加的にまたは代替的に、第一の気相反応物質と第二の気相反応物質を別々に接触させるために、基材を移動させることができる。反応チャンバーに前駆体を供給する工程の後、および/もしくは反応チャンバーに反応物質を供給する工程の後、および/もしくは反応チャンバーに還元反応物質を供給する工程の後、反応チャンバーをパージし、ならびに/または基材を移動させることができる。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態では、プロセス200は、(1)遷移金属前駆体を反応チャンバーに、(2)反応物質を反応チャンバーに供給することと、(3)工程(1)および/もしくは工程(2)ならびに/または工程(3)の後の任意のパージまたは移動工程を用いて、還元反応物質を反応チャンバーに供給することと、を含む単位堆積サイクルを繰り返すことを含む。堆積サイクルは、例えば、遷移層の所望の厚さ、例えば、100オングストロームを超える、1nmを超える、5nmを超える、約1nm~約20nm、または約1nm~約10nm、に基づいて、一回または複数回繰り返されてもよい。
【0056】
遷移層が所望の厚さに堆積されると、方法100は工程106に進む。工程104と同様に、工程106は、周期的プロセスを含むことができる。工程106に好適な例示的な周期的プロセスを、プロセス300として図3に例示する。
【0057】
プロセス300は、遷移金属前駆体を反応チャンバーに供給すること(工程302)と、還元反応物質を反応チャンバーに供給すること(工程304)とを含む。
【0058】
工程302の間、遷移前駆体は、反応チャンバー、例えば、工程104で使用されるのと同じ反応チャンバーに供給される。遷移前駆体は、上記の遷移金属前駆体のいずれかであることができるか、またはそれらを含むことができる。
【0059】
本明細書に記述される他の利点に加えて、上記で形成される遷移層の使用により、プロセス300中の比較的低い堆積温度が可能になることができる。例えば、工程106/プロセス300中の堆積温度は、650℃未満、600℃未満、550℃未満、500℃未満、約300℃~600℃、約300℃~650℃、約300℃~550℃、約300℃~500℃、または約300℃~450℃とすることができる。工程106/プロセス300中の反応チャンバー内の圧力は、約0.2~約300Torr、約0.5~約60Torr、または約20~約80Torrとすることができる。上記のように、工程106中の基材温度ならびに/または反応チャンバー圧力は、工程102および/もしくは工程104中の基材温度ならびに/または反応チャンバー圧力よりも高い場合がある。
【0060】
図1に戻ると、工程108は、工程104および106の間に形成される層をアニールし、遷移金属硫化物、遷移金属炭化物、および遷移金属窒化物のうちの一つまたは複数を含む遷移層を、それぞれの遷移金属に変態させることを含む。工程108中の温度は、約450℃~約1000℃、または約550℃~約900℃とすることができる。工程108中の反応チャンバー内の圧力は、約0.1~約760Torr、約0.2~約300Torr、約1~約100Torr、または約0.5~約60Torrとすることができる。
【0061】
工程108の間に、還元反応物質が反応チャンバー内に導入される。還元反応物質は、工程304中に使用される還元反応物質と同一または類似であってもよい。場合によっては、不活性ガスは、工程108中に反応チャンバー内に導入されてもよい。
【0062】
特定の例として、工程104中に形成される窒化モリブデン層は、工程104および106中に形成される組み合わされた層の比抵抗が金属の比抵抗を示すように、モリブデンに変態することができる。換言すると、表面上の遷移金属硫化物、遷移金属炭化物、および/または遷移金属窒化物は、工程108中に金属層に変態する。遷移層はまた、堆積工程106中に少なくとも部分的に金属に変態することができる。
【0063】
場合によっては、例えば、遷移層が約50オングストローム以下である場合、遷移層は工程106中に変態することができ、したがって、さらなる還元工程は使用されない。
【0064】
本開示の様々な実施例によれば、プロセス条件、例えば、温度、圧力、前駆体流量、反応物質流量、および励起種が形成されるかどうかを使用して、遷移金属層における応力を操作することができる。例えば、遷移金属層の使用は、低温で遷移金属層の堆積を可能にすることができる。(例えば、誘電体材料、例えば酸化アルミニウムまたは酸化シリコン上に)低い温度、例えば上記の温度で堆積された遷移金属層は、遷移なしでおよび/またはより高い温度で堆積された遷移金属層と比較して、比較的高い圧縮応力を有する遷移金属層を可能にする。さらに、工程104および106中にプロセス条件を制御することによって、遷移金属層の応力を調整し、例えば20nmのモリブデン層の場合、最大約450MPaまたは200MPaを超える圧縮応力を層内に達成することが可能である。
【0065】
図4は、本開示の別の実施例によるデバイス400の構造/部分を例示する。デバイス部または構造400は、基材402、遷移金属層404、および基材402と遷移金属層404との間の(例えば、一方または両方と接触する)遷移層406を備える。
【0066】
基材402は、本明細書に記載の基材材料のいずれかであることができるか、またはそれを含むことができる。本開示の実施例によれば、基材402は誘電体層または絶縁層を含む。
【0067】
誘電体層または絶縁体層は、一つまたは複数の誘電体材料層または絶縁材料層を含むことができる。一例として、誘電体層または絶縁層はhigh-k材料、例えば、約7よりも大きい誘電率を有する金属酸化物であることができる。いくつかの実施形態では、high-k材料は、酸化シリコンの誘電率よりも高い誘電率を有する。例示的なhigh-k材料は、酸化ハフニウム(HfO)、酸化タンタル(Ta)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、ハフニウムシリケート(HfSiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ランタン(La)、窒化チタン、および一つまたは複数のこのような層を含む混合物/ラミネートのうちの一つまたは複数を含む。場合によっては、絶縁材料は酸化ケイ素を含む。
【0068】
遷移金属層404および遷移層406は、本明細書に記載の方法に従って形成されることができる。遷移層406が周期的堆積プロセスを使用して形成される場合、遷移層406の構成要素(例えば、遷移金属、C、S、またはN)の濃度は、例えば、一つまたは複数の堆積サイクル中の前駆体および/もしくは反応物質の量ならびに/またはそれぞれのパルス時間を制御することによって、遷移層406の底部から遷移層406のトップまで変化することができる。場合によっては、遷移金属層404は金属とすることができる。遷移金属層404の応力は、遷移層406の形成中に特性(例えば、厚さおよび/もしくは組成)ならびに/またはプロセス条件を変更することによって変化されることができる。
【0069】
遷移金属層404は、不純物、例えば、ハロゲン化物、水素等を、1原子パーセント未満、0.2原子パーセント未満、0.1原子パーセント未満、または0.05原子パーセント未満の量で、単独でまたは組み合わせて含むことができる。
【0070】
追加的にまたは代替的に、遷移金属層404は、例えば、方法100を使用して、5nm未満、4nm未満、3nm未満、2nm未満、1.5nm未満、1.2nm未満、1.0nm未満、または0.9nm未満の厚さで、連続膜を形成することができる。
【0071】
遷移層406(例えば、変態後)と層404の総計の厚さは、50nm未満、20nm未満、約0.5nm~約20nm、約1nm~約15nm、または約1nm~約10nmとすることができる。
【0072】
上記のように、工程108の後、遷移層406は、遷移金属層404と組成が実質的に同じである金属層に変態することができる。例えば、遷移金属層404がモリブデンを含む(例えば、本質的にモリブデンからなる)場合、アニール工程108の後、遷移層406はモリブデンから本質的になることができる。
【0073】
遷移層406を使用し、次に遷移層を金属に変態させることにより、より滑らかな遷移金属層404の堆積が可能になり、これにより、遷移金属層404および他の利点を使用してより良いギャップフィルが可能になる。さらに、高アスペクト比の特徴、例えば、5:1を超えるもしくは10:1を超える、または約5:1~約20:1、約5:1~約10:1のアスペクト比を有する形体の上に直接遷移金属を堆積させることは、遷移金属層404の堆積中に形体の屈曲をもたらすることができる。しかし、本明細書に記載のように遷移層(例えば、遷移層406)の使用およびその後のアニーリングにより遷移層を金属へ変態させることは、遷移金属層404の堆積中の高アスペクト比の形体の屈曲を軽減または排除する。
【0074】
本開示の例に従って形成される構造の二次イオン質量分析法(SIMS)分析および電子エネルギー損失分光法(EELS)分析は、工程108後、下にある遷移層の金属層への変態を検証した。
【0075】
化合され変えられた層406および遷移金属(例えば、モリブデン)層404の比抵抗は、遷移金属層の比抵抗とほぼ同じであることができる。すなわち、本明細書に記載のように遷移層を使用する場合、比抵抗に有害な影響は観察されることができない。
【0076】
図5は、本開示のさらに別の例示的な実施形態によるシステム500を例示する。システム500を使用して、本明細書に記載の方法もしくはプロセスを実行し、および/または本明細書に記載の構造またはデバイス部を形成することができる。
【0077】
例示した実施例では、システム500は、一つまたは複数の反応チャンバー502、前駆体ガス源504、反応物質ガス源506、還元反応物質源507、パージガス源508、排気源510、およびコントローラー512を備える。
【0078】
反応チャンバー502は、任意の好適な反応チャンバー、例えばALDまたはCVD反応チャンバーを備えることができる。
【0079】
前駆体ガス源504は、容器、および本明細書に記載の一つもしくは複数の遷移金属前駆体を、単独で、または一つもしくは複数のキャリア(例えば、不活性)ガスと混合して含むことができる。反応物質ガス源506は、容器、および本明細書に記載の一つもしくは複数の反応物質を、単独で、または一つもしくは複数のキャリアガスと混合して含むことができる。還元反応物質源507は、一つまたは複数の還元反応物質を、単独で、または一つもしくは複数のキャリアガスと混合して含むことができる。パージガス源508は、本明細書に記載の一つまたは複数の不活性ガスを含むことができる。四つのガス源504、506、507、および508が例示されているが、システム500は任意の好適な数のガス源を備えることができる。例えば、システム500は、別の遷移金属前駆体源および/または別の還元反応物質を含むことができる。ガス源504、506、507、および508は、それぞれが流量コントローラー、バルブ、ヒーター等を備えることができるライン514、516、518、および519を介して、反応チャンバー502に連結することができる。
【0080】
排気源510は、一つまたは複数の真空ポンプを備えることができる。
【0081】
コントローラー512は、バルブ、マニホールド、ヒーター、ポンプ、およびシステム500に含まれる他の構成要素を選択的に動作させる電子回路およびソフトウェアを備える。このような回路および構成要素は、前駆体、反応物質、およびパージガスを、それぞれの供給源504、506、507、および508から導入するように動作する。コントローラー512は、ガスパルスシーケンスのタイミング、基材および/または反応チャンバーの温度、反応チャンバー内の圧力、ならびに様々な他の動作を制御して、システム500を適切に動作させることができる。コントローラー512は、反応チャンバー502内外への前駆体、反応物質、およびパージガスの流量を制御するために、バルブを電気的にまたは空気圧で制御する制御ソフトウェアを備えることができる。コントローラー512は、特定のタスクを実行するソフトウェアまたはハードウェアコンポーネント、例えばFPGAまたはASIC等のモジュールを含むことができる。モジュールは、有利には、制御システムのアドレス指定可能な記憶媒体上に存在するように構成され、一つまたは複数のプロセスを実行するように構成され得る。
【0082】
システム500は、一つまたは複数の遠隔励起源520および/または直接励起源522、例えば遠隔および/または直接プラズマ発生装置を備えることができる。
【0083】
異なる数および種類の前駆体源および反応物質源ならびにパージガス源を備える、システム500の他の構成が可能である。さらに、反応チャンバー502内へ選択的にガスを供給するという目的を達成するために使用されることができるバルブ、導管、前駆体源、およびパージガス源の多くの配置があることが理解されるであろう。更に、システムの概略図として、説明を簡単にするために多くの構成要素が省略されている。このような構成要素としては、例えば、様々なバルブ、マニホールド、精製器、ヒーター、容器、通気孔、および/またはバイパスを挙げることができる。
【0084】
反応器システム500の作動中に、半導体ウェーハなどの基材(図示せず)が、例えば基材ハンドリングシステムから反応チャンバー502へ搬送される。基材が反応チャンバー502に搬送されると、ガス源504、506、507、および508からの一つまたは複数のガス、例えば、前駆体、反応物質、キャリアガス、および/またはパージガスが、反応チャンバー502の中に導入され、例えば、方法100、プロセス200、またはプロセス300のうちの一つまたは複数を実行する。
【0085】
上に記載した本開示の例示的実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその法的等価物により定義される、本発明の実施形態の単なる例であるため、これらの実施形態によって本発明の範囲は限定されない。任意の均等物の実施形態は、本発明の範囲内であることが意図される。実際に、記載の要素の代替的な有用な組み合わせなど、本明細書に示されかつ記載されたものに加えて、本開示の様々な修正は、記載内容から当業者には明らかになる場合がある。こうした修正および実施形態も、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】