(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020692
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】免疫機能制御剤
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20220125BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220125BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20220125BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220125BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
A61P37/06
A61K31/573
A61K45/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173373
(22)【出願日】2021-10-22
(62)【分割の表示】P 2020505131の分割
【原出願日】2019-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018042851
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】505314022
【氏名又は名称】国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郁尚
(72)【発明者】
【氏名】岡田 文裕
(72)【発明者】
【氏名】石井 健
(57)【要約】
【課題】免疫機能を制御することができる免疫機能制御剤を提供する。
【解決手段】免疫関連細胞から一次繊毛を除去することで免疫機能を抑制するための免疫機能制御剤であって、一次繊毛を有する免疫関連細胞から一次繊毛を除去する作用を有する一次繊毛除去作用物質を有効成分として含有してなり、前記一次繊毛除去作用物質としてステロイド剤および生理活性物質からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする免疫機能制御剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫関連細胞から一次繊毛を除去することで免疫機能を抑制するための免疫機能制御剤であって、一次繊毛を有する免疫関連細胞から一次繊毛を除去する作用を有する一次繊毛除去作用物質を有効成分として含有してなり、前記一次繊毛除去作用物質としてステロイド剤および生理活性物質からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする免疫機能制御剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫関連疾患の指標の検出方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、免疫関連疾患の検査、免疫関連疾患の診断の補助、免疫関連疾患の治療薬の開発、免疫関連疾患を抑制するための医薬部外品または化粧料成分の開発などに有用な免疫関連細胞の一次繊毛を利用する免疫関連疾患の指標の検出方法および当該免疫関連疾患の診断の補助方法、これらに用いる免疫関連疾患の検査キット、前記免疫関連細胞の一次繊毛を利用する免疫関連疾患に対する抑制効果の評価方法および被験試料の評価方法、免疫機能制御剤ならびに免疫関連細胞の一次繊毛除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一次繊毛は、主に、ヒト網膜色素上皮細胞などの非免疫細胞の表面に存在する非運動性の細胞器官である。ヒト網膜色素上皮細胞の一次繊毛の異常は、網膜変性を引き起こすことが知られている。
【0003】
一方、免疫細胞では、培養株化T細胞および培養株化B細胞を血清飢餓状態に維持したときに、一次繊毛の形成が誘導されることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、本発明者らは、初代免疫細胞と一次繊毛の機能との関連性が具体的に記載された文献を現時点では発見していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】スザンナ・エル・プロッサ(Suzanna L. Prosser)ら、「セントリン2は一次繊毛形成におけるCP110除去を制御する(Centrin2 regulates CP110 removal in primary cilium formation)」、ザ・ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(The Journal of cell Biology)、第208巻、第6号、p.693-701、2015年3月9日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、被験検体における免疫関連疾患の客観的な指標を迅速に容易に検出することができる免疫関連疾患の指標の検出方法、医師による免疫関連疾患の罹患の有無または予後の診断が迅速に客観的に行なわれるように当該診断を補助することができる免疫関連疾患の診断の補助方法、免疫関連疾患を迅速に容易に検査することができる免疫関連疾患の検査キット、免疫関連疾患の治療を受けた被験体または免疫関連疾患抑制剤が投与された被験体における免疫関連疾患に対する抑制効果を迅速に客観的に評価することができる免疫関連疾患に対する抑制効果の評価方法、被験試料が免疫機能制御作用を有するかどうかを簡便な操作で客観的に的確に評価することができる被験試料の評価方法、免疫機能を制御することができる免疫機能制御剤および免疫関連細胞の一次繊毛を除去することができる免疫関連細胞の一次繊毛除去剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)被験体から採取された被験検体における免疫関連疾患の指標を検出する方法であって、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛を観察し、当該被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果とを比較し、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果との差異を免疫関連疾患の指標として検出することを特徴とする免疫関連疾患の指標の検出方法、
(2)被験体における免疫関連疾患の診断を補助する方法であって、被験体から採取された被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛を観察し、当該被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と比較対象検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果とを比較し、得られた比較結果に基づいて、被験体における免疫関連疾患の罹患の有無の診断の補助情報または被験体における免疫関連疾患の予後の診断の補助情報を得ることを特徴とする被験体における免疫関連疾患の診断の補助方法、
(3)被験体における免疫関連疾患を検査するためのキットであって、免疫関連細胞の一次繊毛に対する特異的結合物質を含有することを特徴とする免疫関連疾患の検査キット、
(4)免疫関連疾患に罹患した被験体に施された治療または当該被験体に投与された免疫関連疾患抑制剤による免疫関連疾患に対する抑制効果を評価する方法であって、被験体から採取された治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛を観察し、治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果を比較し、治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の変化を免疫関連疾患に対する抑制効果の指標として用いることを特徴とする免疫関連疾患に対する抑制効果の評価方法、
(5)被験試料が免疫機能制御作用を有する物質であるかどうかを評価する被験試料の評価方法であって、(A)一次繊毛を有する免疫関連細胞を含有する細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛を観察するステップ、
(B)一次繊毛を有する免疫関連細胞を含有する細胞群と被験試料とを接触させ、当該被験試料に接触させた細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛を観察するステップ、および
(C)ステップ(A)で観察された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と、ステップ(B)で観察された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果との差異に基づき、被験試料が免疫機能制御作用を有する物質であるかどうかを評価するステップ
を含むことを特徴とする被験試料の評価方法、
(6)免疫機能を抑制するための免疫機能制御剤であって、一次繊毛を有する免疫関連細胞から一次繊毛を除去する作用を有する一次繊毛除去作用物質を有効成分として含有することを特徴とする免疫機能制御剤、および
(7)一次繊毛を有する免疫関連細胞から一次繊毛を除去するための免疫関連細胞の一次繊毛除去剤であって、ステロイド剤および生理活性物質からなる群より選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする免疫関連細胞の一次繊毛除去剤
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被験検体における免疫関連疾患の客観的な指標を迅速に容易に検出することができる免疫関連疾患の指標の検出方法、医師による免疫関連疾患の罹患の有無または予後の診断が迅速に客観的に行なわれるように当該診断を補助することができる免疫関連疾患の診断の補助方法、免疫関連疾患を迅速に容易に検査することができる免疫関連疾患の検査キット、免疫関連疾患の治療を受けた被験体または免疫関連疾患抑制剤が投与された被験体における免疫関連疾患に対する抑制効果を迅速に客観的に評価することができる免疫関連疾患に対する抑制効果の評価方法、被験試料が免疫機能制御作用を有するかどうかを簡便な操作で客観的に的確に評価することができる被験試料の評価方法、免疫機能を抑制することができる免疫機能制御剤および免疫関連細胞の一次繊毛を除去することができる免疫関連細胞の一次繊毛除去剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)は実施例1において、ランゲルスハンス細胞マーカーによるヒト健常皮膚組織の染色像の図面代用写真、(B)は一次繊毛マーカーによるヒト健常皮膚組織の染色像の図面代用写真、(C)は細胞核染色剤によるヒト健常皮膚組織の染色像の図面代用写真、(D)は(A)に示される染色像と(B)に示される染色像と(C)に示される染色像に示される染色像との重ね合わせ画像の図面代用写真である。
【
図2】(A)は実施例2において、一次繊毛マーカーによるアトピー性皮膚炎病巣組織の染色像の図面代用写真、(B)はランゲルスハンス細胞マーカーによるアトピー性皮膚炎病巣組織の染色像の図面代用写真、(C)は細胞核染色剤によるアトピー性皮膚炎病巣組織の染色像の図面代用写真、(D)は(A)に示される染色像と(B)に示される染色像と(C)に示される染色像との重ね合わせ画像の図面代用写真である。
【
図3】(A)は実施例2において、一次繊毛マーカーによるアトピー性皮膚炎病巣組織中のランゲルハンス細胞の染色像の図面代用写真、(B)はランゲルスハンス細胞マーカーによるアトピー性皮膚炎病巣組織中のランゲルハンス細胞の染色像の図面代用写真、(C)は微分干渉観察法により撮影されたアトピー性皮膚炎病巣組織の撮影像の図面代用写真、(D)は(A)に示される染色像と(B)に示される染色像と(C)に示される撮影像との重ね合わせ画像の図面代用写真である。
【
図4】実施例3において、組織の種類と一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数との関係を調べた結果を示すグラフである。
【
図5】実施例3において、組織の種類と一次繊毛を有するケラチノサイトの数との関係を調べた結果を示すグラフである。
【
図6】(A)は実施例4において、培養開始時から1日間経過後の未成熟樹状細胞を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は培養開始時から3日間経過後の未成熟樹状細胞を観察した結果を示す図面代用写真、(C)は培養開始時から7日間経過後の未成熟樹状細胞を観察した結果を示す図面代用写真である。
【
図7】実施例4において、未成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
【
図8】(A)は実施例5において、未培養の細胞を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は培養開始時から1日間経過後の成熟樹状細胞を観察した結果を示す図面代用写真(C)は培養開始時から3日間経過後の成熟樹状細胞を観察した結果を示す図面代用写真、(D)は培養開始時から7日間経過後の成熟樹状細胞を観察した結果を示す図面代用写真である。
【
図9】実施例5において、成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
【
図10】(A)実施例6において、対照培地中での培養後に当該培地中で浮遊している浮遊細胞の形態を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は対照培地中での培養後の培養容器に接着している細胞の形態を観察した結果を示す図面代用写真、(C)はヒドロコルチゾン含有培地中での培養後に当該培地中で浮遊している浮遊細胞の形態を観察した結果を示す図面代用写真、(D)はヒドロコルチゾン含有培地中での培養後の培養容器に接着している細胞の形態を観察した結果を示す図面代用写真、(E)はデキサメタゾン含有培地中での培養後に当該培地中で浮遊している浮遊細胞の形態を観察した結果を示す図面代用写真、(F)はデキサメタゾン含有培地中での培養後の培養容器に接着している細胞の形態を観察した結果を示す図面代用写真である。
【
図11】実施例7において、試料の種類と免疫細胞の一次繊毛の形成率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【
図12】実施例9において、組織の種類と細胞集団における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の含有率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【
図13】実施例9において、組織の種類と細胞集団における一次繊毛を有するケラチノサイトの含有率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.免疫関連疾患の指標の検出方法
本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法は、前記したように、被験体から採取された被験検体における免疫関連疾患の指標を検出する方法であって、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛を観察し、当該被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果とを比較し、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果との差異を免疫関連疾患の指標として検出することを特徴とする。
【0010】
本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法によれば、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛を観察し、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果とを比較するという操作が採られているので、被験検体における免疫関連疾患の客観的な指標を迅速に容易に検出することができる。
【0011】
本明細書において、「免疫関連疾患」とは、症状の発現に免疫系の機能が関与する疾患をいう。免疫関連疾患としては、例えば、腫瘍、免疫不全疾患、感染症、自己免疫疾患、臓器移植に伴う拒絶反応、アレルギー性疾患、炎症性疾患などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0012】
腫瘍としては、例えば、舌癌、歯肉癌、悪性リンパ腫、メラノーマ(悪性黒色腫)、上顎癌、鼻癌、鼻腔癌、喉頭癌、咽頭癌、神経膠腫〔例えば、グリオブラストーマ(膠芽腫)、星細胞腫など〕、髄膜腫、神経芽細胞腫、甲状乳頭腺癌、甲状腺濾胞癌、甲状腺髄様癌、原発性肺癌、扁平上皮癌、腺癌、肺胞上皮癌、大細胞性未分化癌、小細胞性未分化癌、カルチノイド、睾丸腫瘍、前立腺癌、乳癌(例えば、乳頭腺癌、面疱癌、粘液癌、髄様癌、小葉癌、硬癌肉腫、転移腫瘍など)、乳房ページェット病、乳房肉腫、骨腫瘍、甲状腺癌、胃癌、肝癌、急性骨髄性白血病、急性前髄性白血病、急性骨髄性単球白血病、急性単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性未分化性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、成人型T細胞白血病、悪性リンパ腫(例えば、リンパ肉腫、細網肉腫、ホジキン病など)、多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、小児性白血病、食道癌、胃癌、胃・大腸平滑筋肉腫、胃・腸悪性リンパ腫、膵・胆嚢癌、十二指腸癌、大腸癌、原発性肝癌(例えば、肝細胞癌、胆管細胞癌など)、肝芽腫、子宮上皮内癌、子宮頸部扁平上皮癌、子宮腺癌、子宮腺扁平上皮癌、子宮体部腺類癌、子宮肉腫、子宮癌肉腫、子宮破壊性奇胎、子宮悪性絨毛上皮腫、子宮悪性黒色腫、卵巣癌、中胚葉性混合腫瘍、腎癌、腎細胞癌、腎盂移行上皮癌、尿管移行上皮癌、膀胱乳頭癌、膀胱移行上皮癌、尿道扁平上皮癌、尿道腺癌、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、線維肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、滑液膜肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、ユーイング肉腫、皮膚扁平上皮癌、皮膚基底細胞癌、皮膚ボーエン病、皮膚ページェット病、皮膚悪性黒色腫、悪性中皮癌、転移性腺癌、転移性扁平上皮癌、転移性肉腫、中皮腫(例えば、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0013】
免疫不全疾患としては、例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)、重症疾患(例えば、癌、再生不良性貧血、白血病、骨髄線維症、腎不全、糖尿病、肝疾患、脾疾患など)に伴う重症複合免疫不全症(SCID)、分類不能型免疫不全症、原発性免疫不全症候群などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0014】
感染症としては、例えば、ウイルス感染症、病原性原生動物感染症、細菌感染症、真菌感染症など挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ウイルス感染症を引き起こすウイルスとしては、例えば、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスなどのヒト肝炎ウイルス;HIV1、HIV2などのヒト免疫不全ウイルス;HTLV1、HTLV2などのヒトT細胞白血病ウイルス;単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型などのヘルペスウイルス;エプスタイン・バーウイルス;サイトメガロウイルス;水痘-帯状疱疹ウイルス;ヒトヘルペスウイルス6などのヒトヘルペスウイルス;ポリオウイルス;麻疹ウイルス;風疹ウイルス;日本脳炎ウイルス;ムンプスウイルス;インフルエンザウイルス;アデノウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルスなどの風邪症候群の原因ウイルス;コロナウイルスなどの重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルス;エボラウイルス;西ナイルウイルスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。病原性原生動物感染症を引き起こす病原性原生動物としては、例えば、トリパノソーマ、マラリア、トキソプラズマなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。細菌感染症を引き起こす細菌としては、例えば、マイコバクテリウム、サルモネラ、リステリアなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。真菌感染症を引き起こす真菌としては、例えば、カンジダなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0015】
自己免疫疾患としては、例えば、関節炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性糸球体腎炎、自己免疫性膵島炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性卵巣炎、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、クローン病、ベーチェット病、ウェグナー肉芽腫症、過敏性血管炎、結節性動脈周囲炎、橋本病、粘液水腫、バセドウ病、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、突発性血小板減少症、悪性貧血、重症筋無力症、脱髄疾患、大動脈炎症群、乾癬、天疱瘡、類天疱瘡、膠原病(例えば、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、汎発性強皮症、全身性進行性硬化症、皮膚筋炎、結節性多発性動脈炎、リウマチ熱など)、ギラン・バレー症候群、多腺性自己免疫症候群II型、原発性胆汁性肝硬変、尋常性白斑、1型糖尿病、自己免疫性血栓症(例えば、自己免疫性の動脈血栓症、自己免疫性の静脈血栓症など)、習慣性流産、血小板減少症、抗リン脂質抗体症候群などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0016】
臓器移植に伴う拒絶反応として、例えば、腎移植、肝移植、心移植、肺移植などに伴う拒絶反応;骨髄移植における拒絶反応;移植片対宿主病などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0017】
アレルギー性疾患としては、例えば、喘息、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸炎、アナフィラキシーショック、食物アレルギーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0018】
炎症性疾患として、例えば、湿疹、面皰、接触性皮膚炎などの皮膚炎;大腸炎;高安動脈炎、巨細胞動脈炎(側頭動脈炎)、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫性血管炎)、アレルギー性皮膚血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、過敏性血管炎、血管炎症候群、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)、結節性血管炎などの血管炎;リウマチ関節炎、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、結核性関節炎、化膿性関節炎、乾癬性関節炎、膝内症、特発性骨壊死症、骨関節炎などの関節炎;ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎などの肝炎;急性糸球体腎炎、慢性腎炎、急速進行性腎炎症候群、溶連菌感染後急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、Goodpasture症候群、メサンギウム増殖性糸球体腎炎(IgA腎症)、間質性腎炎などの腎炎;急性感染性胃炎、慢性胃炎などの胃炎;膵炎、腸炎、喉頭炎、神経炎などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0019】
本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法において、抗原提示機能を有する免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果を用いる場合、これらの免疫関連疾患のなかでも、好ましくはアレルギー性疾患、より好ましくはアトピー性皮膚炎および喘息の各指標の検出に好適に用いることができる。また、本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法において、皮膚に存在する免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果を用いる場合、免疫関連疾患のなかでも、好ましくは皮膚における免疫関連疾患、より好ましくはアトピー性皮膚炎、乾癬、湿疹および面皰の各指標の検出に好適に用いることができる。
【0020】
免疫関連細胞には、免疫反応を主に担当する免疫細胞と、主な機能は免疫反応ではないが、免疫反応に間接的に関与する機能、例えば、免疫細胞の活性化などの機能を保有する細胞(以下、「免疫機能保有細胞」という)とが包含される。免疫細胞としては、例えば、ランゲルハンス細胞、真皮樹状細胞などの皮膚樹状細胞;T細胞、NK細胞、B細胞などのリンパ球系の免疫細胞;通常型樹状細胞、形質細胞様樹状細胞などの単球系樹状細胞などの単球系の免疫細胞などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。免疫機能保有細胞としては、例えば、ケラチノサイト、繊維芽細胞、上皮細胞などの皮膚の組織を構成し、免疫反応に間接的に関与する機能を保有する細胞などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0021】
用いられる免疫関連細胞は、本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法の用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法の用途などに応じて決定することが好ましい。本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法の用途が、病原体、化学物質、ウイルスなどの細胞外の異物によって惹起される免疫関連疾患の指標の検出である場合、これらの免疫関連細胞のなかでは、異物を認識して免疫反応を開始する細胞が好ましく、樹状細胞がより好ましく、皮膚樹状細胞および単球系樹状細胞がさらに好ましく、単球系樹状細胞がより一層好ましい。免疫関連細胞は、被験検体における免疫関連疾患の指標を的確に早期に検出する観点から、初代免疫関連細胞であることが好ましい。
【0022】
また、本明細書において、「免疫関連細胞の一次繊毛」とは、免疫関連細胞の表面に存在する免疫関連細胞由来の一次繊毛をいう。正常検体における免疫関連細胞は、1細胞あたり1本以下の一次繊毛を有している。
【0023】
本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法では、まず、被験体から採取された被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛を観察する。
【0024】
一次繊毛の観察項目としては、例えば、一次繊毛を有する免疫関連細胞の数、免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数、免疫関連細胞の一次繊毛の長さ、免疫関連細胞の一次繊毛の太さ、これらの項目の組み合わせなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。免疫関連細胞の一次繊毛を観察する際に用いられる観察項目は、免疫関連疾患の種類、本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法の用途などによって適切な項目が異なるので一概には決定することができないことから、免疫関連疾患の種類、本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法の用途などに応じて決定することが好ましい。本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法を一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が増加する免疫関連疾患の指標の検出に用いる場合、一次繊毛を有する免疫関連細胞の数を観察項目とすることが好ましい。正常検体における免疫関連細胞は、細胞1個あたり1本以下の一次繊毛を有している。したがって、免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数が増加する免疫関連疾患の指標を検出する場合、免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数を観察項目として用いることが好ましい。本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法を免疫関連細胞の一次繊毛の長さが変化する免疫関連疾患の指標の検出に用いる場合、一次繊毛を有する免疫関連細胞の長さを観察項目として用いることが好ましい。
【0025】
被験体としては、例えば、免疫関連疾患に罹患した患者または患畜、免疫関連疾患に罹患している疑いがある患者または患畜、健常者、健常非ヒト動物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0026】
被験検体は、被験体から採取された被験対象の検体である。検体としては、例えば、血液、皮膚組織、毛乳頭細胞を含む毛髪組織などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0027】
被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察項目は、例えば、被験検体含有試料と免疫関連細胞の一次繊毛に対する特異的結合物質(以下、「第1の特異的結合物質」という)とを接触させ、免疫関連細胞の一次繊毛に結合した第1の特異的結合物質を検出することなどによって観察することができる。
【0028】
被験検体含有試料としては、例えば、固定液によって被験検体を固定することによって得られた固定試料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。固定液としては、例えば、アセトン、メタノール、アセトンとメタノールとの混合溶液、ホルムアルデヒド水溶液、ホルムアルデヒドのリン酸緩衝液溶液、パラホルムアルデヒド水溶液、パラホルムアルデヒドのリン酸緩衝生理食塩水溶液、パラホルムアルデヒドのリン酸緩衝液溶液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。固定試料は、洗浄液で洗浄されていてもよく、洗浄されていなくてもよい。洗浄液としては、例えば、リン酸緩衝生理的食塩水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。第1の特異的結合物質がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または抗体断片である場合、固定試料は、免疫関連細胞の一次繊毛の観察項目を的確に観察する観点から、好ましくはブロッキング剤によってブロッキング処理が施された試料である。ブロッキング剤としては、例えば、アルブミンを含有するリン酸緩衝生理的食塩水、アルブミンを含有するリン酸緩衝液、アルブミンと界面活性剤とを含有するリン酸緩衝生理食塩水溶液などのブロッキング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0029】
第1の特異的結合物質としては、例えば、免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーに対する特異的結合物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーとしては、例えば、ADPリボシル化因子様タンパク質(Arl13B)、アセチル化チューブリン、アデニル酸シクラーゼIII、ネフロシスチン3(NPHP3)、鞭毛内輸送タンパク質(IFT88)、ソマトスタチンレセプター3(sstr3)、ポリシステン-1(TRPC1)、一過性受容体電位バニロイド4(TRPV4)、血小板由来成長因子レゼプターα(PDGFRα)、スムーズンド(Smo)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0030】
免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーに対する特異的結合物質としては、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体などの抗体;Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、単鎖抗体などの抗体断片などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。モノクローナル抗体は、例えば、免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを培養して培養上清を得、必要に応じて培養上清を精製することなどによって得られる。ハイブリドーマは、例えば、免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーを動物の静脈内、皮下または腹腔内に投与して当該動物を免疫して抗体産生細胞を得、この抗体産生細胞とミエローマ細胞とを細胞融合させ、得られた融合細胞をHAT培地で培養することなどによって製造することができる。ポリクローナル抗体は、例えば、免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーを動物の静脈内、皮下または腹腔内に投与して当該動物を免疫して抗血清を得、必要に応じて抗血清を精製することなどによって製造することができる。Fabフラグメントは、例えば、免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーに対するモノクローナル抗体をパパインで消化し、必要に応じてパパイン消化物を精製することなどによって作製することができる。F(ab’)2フラグメントは、例えば、免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーに対するモノクローナル抗体をペプシンで消化し、必要に応じてペプシン消化物を精製することなどによって製造することができる。単鎖抗体は、免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーに対するモノクローナル抗体の軽鎖の可変領域をコードする核酸とリンカーをコードする核酸と当該抗体の重鎖の可変領域をコードする核酸とが連結された核酸構築物を含有する単鎖抗体発現用ファージミドベクターを宿主細胞に導入し、当該宿主細胞内で核酸構築物にコードされるポリペプチドを発現させ、必要に応じてポリペプチドを精製することなどによって製造することができる。
【0031】
免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーに対する特異的結合物質の具体例としては、抗Arl13B抗体、抗アセチル化チューブリン抗体などの免疫関連細胞の一次繊毛に対する抗体;免疫関連細胞の一次繊毛に対する抗体断片;免疫関連細胞の一次繊毛に対するアプタマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの第1の特異的結合物質のなかでは、免疫関連細胞の一次繊毛を的確に検出する観点から、免疫関連細胞の一次繊毛に対する抗体が好ましく、抗Arl13B抗体および抗アセチル化チューブリン抗体がより好ましい。これらの第1の特異的結合物質は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
第1の特異的結合物質は、被験検体含有試料と当該第1の特異的結合物質との接触に際し、蛍光、色などの検出可能なシグナルを生成する標識物質と複合化させて用いられるか、第1の特異的結合物質に特異的に結合する標識特異的結合物質と併用される。
【0033】
第1の特異的結合物質に複合化させる標識物質としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、2-(3-イミニオ-4,5-ジスルホナト-6-アミノ-3H-キサンテン-9-イル)-5-[[5-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)ペンチル]カルバモイル]安息香酸〔例えば、インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:Alexa Fluor 488など〕、6-(2-カルボキシラト-4-カルボキシフェニル)-1,2,10,11-テトラヒドロ-1,2,2,10,10,11-ヘキサメチル-4,8-ビス(スルフォメチル)-1,11-ジアザ-13-オキソニアペンタセン〔例えば、インビトロジェン社製、商品名:Alexa Fluor 594など〕などの蛍光物質;ペルオキシダーゼ、アルカリホスフォターゼなどの酵素などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの標識物質のなかでは、免疫関連細胞の一次繊毛を高感度で的確に検出する観点から、蛍光物質が好ましい。
【0034】
標識特異的結合物質は、通常、免疫関連細胞の一次繊毛に結合した第1の特異的結合物質に特異的に結合する特異的結合物質(以下、「第2の特異的結合物質」という)と標識物質との複合体である。第2の特異的結合物質は、第1の特異的結合物質の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、第1の特異的結合物質の種類などに応じて決定することが好ましい。標識特異的結合物質に用いられる標識物質は、第1の特異的結合物質に複合化させる標識物質と同様である。
【0035】
被験検体含有試料と第1の特異的結合物質とを接触させる方法は、第1の特異的結合物質の種類、免疫関連細胞の一次繊毛に結合した特異的結合物質の検出手段の種類、被験検体の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、第1の特異的結合物質の種類、免疫関連細胞の一次繊毛に結合した特異的結合物質の検出手段の種類、被験検体の種類などに応じて決定することが好ましい。被験検体含有試料と第1の特異的結合物質との接触は、操作が容易であることから、通常、液相中で行なうことが好ましい。液相は、第1の特異的結合物質の種類、免疫関連細胞の一次繊毛に結合した特異的結合物質の検出手段の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、第1の特異的結合物質の種類、免疫関連細胞の一次繊毛に結合した特異的結合物質の検出手段の種類などに応じて決定することが好ましい。
【0036】
被験検体含有試料と第1の特異的結合物質とを接触させるのに際し、被験検体含有試料と第1の特異的結合物質との混合比および接触時間は、被験検体の種類、第1の特異的結合物質の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、被験検体の種類、第1の特異的結合物質の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。
【0037】
免疫関連細胞の一次繊毛の観察項目を的確に観察する観点から、第1の特異的結合物質の接触後の被験検体含有試料を適切な洗浄液で洗浄することが好ましい。洗浄液としては、例えば、リン酸緩衝生理的食塩水、リン酸緩衝液、界面活性剤含有リン酸緩衝生理食塩水溶液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0038】
免疫関連細胞の一次繊毛に結合した第1の特異的結合物質の検出は、被験検体含有試料と第1の特異的結合物質との接触に際して第1の特異的結合物質を標識物質と複合化させて用いる場合、免疫関連細胞の一次繊毛に結合した第1の特異的結合物質と複合化した標識物質に由来するシグナルを検出することによって行なうことができる。また、被験検体含有試料と第1の特異的結合物質との接触に際して第1の特異的結合物質を標識特異的結合物質と併用する場合、免疫関連細胞の一次繊毛に結合した第1の特異的結合物質の検出は、第1の特異的結合物質と併用される標識特異的結合物質の標識物質に由来するシグナルを検出することによって行なうことができる。
【0039】
免疫関連細胞の一次繊毛の観察項目として一次繊毛を有する免疫関連細胞の数を用いる場合、一次繊毛を有する免疫関連細胞の数は、例えば、標識物質に由来するシグナルが検出された免疫関連細胞の数を計数することなどによって調べることができる。免疫関連細胞の一次繊毛の観察項目として免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数を用いる場合、免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数は、例えば、免疫関連細胞1個あたりの標識物質に由来するシグナルが検出された一次繊毛の数を計数することなどによって調べることができる。免疫関連細胞の一次繊毛の観察項目として免疫関連細胞の一次繊毛の長さを用いる場合、免疫関連細胞の一次繊毛の長さは、例えば、標識物質に由来するシグナルを画像化し、得られた画像におけるシグナルが生じている部分の長さ方向端部から他端部までの長さを測定することなどによって調べることができる。
【0040】
シグナルの検出手段としては、例えば、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡などの光学顕微鏡;蛍光イメージングアナライザーなどの画像解析装置;蛍光フローサイトメーター、イメージングフローサイトメーターなどのフローサイメトリー装置をなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0041】
本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法においては、必要に応じて、免疫関連細胞の種類を同定することができる。免疫細胞の種類を同定する場合、免疫細胞の種類を同定するための同定試薬を用いることができる。免疫細胞の種類の同定試薬としては、例えば、免疫細胞の種類に応じたマーカーに対する抗体、具体的には、抗CD1a抗体、抗CD14抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD56抗体、抗ランゲリン抗体、抗CD205抗体、抗CD11C抗体、抗CD123抗体、抗HLA-DR抗体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。免疫細胞の種類に応じたマーカーとしては、例えば、ランゲリン(CD207)、CD1a、CD205などのランゲルハンス細胞マーカー、CD11c、CD123、HLA-DRなどの単球系樹状細胞マーカーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、免疫機能保有細胞の種類を同定する場合、免疫機能保有細胞の種類を同定するための同定試薬を用いることができる。免疫機能保有細胞の種類の同定試薬としては、例えば、免疫機能保有細胞の種類に応じたマーカーに対する抗体、具体的には、抗ケラチン1抗体、抗ケラチン10抗体、抗インボルクリン抗体、抗α平滑筋アクチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗サイトケラチン、抗E-カドヘリン抗体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。免疫機能保有細胞の種類に応じたマーカーとしては、例えば、ケラチン1、ケラチン10、インボルクリンなどのケラチノサイトマーカー;α平滑筋アクチン抗体、ビメンチンなどの繊維芽細胞マーカー、サイトケラチン、E-カドヘリンなどの上皮細胞マーカーなどが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。
【0042】
つぎに、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果とを比較し、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果との差異を免疫関連疾患の指標として検出する。
【0043】
正常検体としては、例えば、健常者または健常非ヒト動物から採取された検体、被験体の非病変部から採取された検体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。被験検体として被験体から採取された血液を用いる場合、これらの正常検体のなかでは、免疫関連疾患の指標を的確に検出する観点から、健常者または健常非ヒト動物から採取された血液が好ましい。被験検体として被験体から採取された皮膚組織を用いる場合、正常検体は、健常者または健常非ヒト動物から採取された皮膚組織であってもよく、被験体の非病変部から採取された皮膚組織であってもよい。被験体として被験体から採取された毛髪組織を用いる場合、正常検体は、健常者または健常非ヒト動物から採取された毛髪組織であってもよく、被験体の非病変部から採取された毛髪組織であってもよい。
【0044】
正常検体における免疫関連細胞としては、例えば、被験検体が採取された被験体と同一の被験体から採取された当該被験検体と同一種類の正常検体における免疫関連細胞、健常者または健常非ヒト動物から採取された被験検体と同一種類の正常検体における免疫関連細胞などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果は、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察と同様に観察して得られた観察結果であってもよく、正常検体に関する既知の観察結果の蓄積データであってもよい。また、正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果に用いられる観察項目は、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と同一の観察項目である。
【0045】
被験検体と正常検体との間で免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果を比較する方法としては、例えば、被験検体と正常検体との間で一次繊毛を有する免疫関連細胞の数を比較する方法、被験検体と正常検体との間で免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数を比較する方法、被験検体と正常検体との間で免疫関連細胞の一次繊毛の長さを比較する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0046】
被験検体と正常検体との間で一次繊毛を有する免疫関連細胞の数を比較する方法としては、例えば、被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数および正常検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数をそのまま用いて比較する方法、被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数に基づいて算出された被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と正常検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数に基づいて算出された正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率とを用いて比較する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。正常検体が健常者または健常非ヒト動物から採取された検体である場合、正常検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数として、複数の健常者または複数の健常非ヒト動物から採取された各検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数から算出された平均値を用いてもよい。
【0047】
被験検体または正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率は、式(I):
[検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率]
=〔[検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数]/[検体における全免疫関連細胞数]〕×100 (I)
(式中、「検体」は被験検体または正常検体を示す)
に基づいて算出することができる。
【0048】
被験検体と正常検体との間で免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数を比較する方法としては、例えば、被験検体における免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数および正常検体における免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数をそのまま用いて比較する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。正常検体が健常者または健常非ヒト動物から採取された検体である場合、正常検体における免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数として、複数の健常者または複数の健常非ヒト動物から採取された各検体における免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数から算出された平均値を用いてもよい。
【0049】
被験検体と正常検体との間で免疫関連細胞の一次繊毛の長さを比較する方法としては、例えば、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さおよび正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さをそのまま用いて比較する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。正常検体が健常者または健常非ヒト動物から採取された検体である場合、正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さとして、複数の健常者または複数の健常非ヒト動物から採取された各検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さから算出された平均値を用いてもよい。
【0050】
免疫関連細胞が血液に存在する免疫関連細胞である場合、被験体に対する侵襲度を低減するとともに、多種類で多数の免疫関連細胞の一次繊毛を同時に観察する観点から、被験検体として血液を用い、当該被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率を正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と比較し、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率との差異を免疫関連疾患の指標として用いることが好ましい。また、免疫関連細胞が表皮に存在する免疫関連細胞である場合、免疫関連疾患の指標の検出を迅速に正確に行なう観点から、被験検体として表皮組織を用い、当該被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数を正常検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と比較し、被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と正常検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数との差異を免疫関連疾患の指標として用いることが好ましい。
【0051】
被験検体と正常検体との間に以下の差異A~Cからなる群より選ばれた少なくとも1種の差異がある場合、当該差異は、免疫関連疾患の指標として用いられる。
<差異A>
被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と正常検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数との間の差異
<差異B>
被験検体における免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数と正常検体における免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数との間の差異
<差異C>
被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さと正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さとの間の差異
【0052】
本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法は、一次繊毛を有する免疫関連細胞の数の異常増加、免疫関連細胞の一次繊毛の形成率の異常増加、免疫関連細胞の一次繊毛の長さの異常伸長などを起因とする免疫関連疾患(以下、「免疫関連疾患A」という)に適用することができる。免疫関連疾患Aの指標としては、例えば、以下の指標A、指標B、指標Cなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの指標は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
<指標A>
被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が正常検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と比べて有意に多いこと
<指標B>
被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と比べて有意に高いこと
<指標C>
被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さが正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さと比べて有意に長いこと
【0053】
また、本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法は、一次繊毛を有する免疫関連細胞の数の異常減少、免疫関連細胞の一次繊毛の形成率の異常減少などを起因とする免疫関連疾患(以下、「免疫関連疾患B」という)に適用することができる。免疫関連疾患Bの指標としては、以下の指標D、指標Eなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの指標は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
<指標D>
被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が正常検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と比べて有意に少ないこと
<指標E>
被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と比べて有意に低いこと
【0054】
免疫関連疾患Aとしては、例えば、アレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。免疫関連疾患Bとしては、例えば、グリオブラストーマ(膠芽腫)、腎細胞癌、メラノーマ(悪性黒色腫)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0055】
以上説明したように、本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法によれば、被験検体における免疫関連疾患の客観的な指標を迅速に容易に検出することができる。したがって、本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法は、免疫関連疾患抑制剤または治療薬の開発、検査機関、医療機関の検査部などにおける免疫関連疾患の検査、医療機関における医師による免疫関連疾患の罹患の有無または免疫関連疾患の予後の診断などに用いられることが期待されるものである。
【0056】
2.免疫関連疾患の診断の補助方法
本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法は、被験体における免疫関連疾患の診断を補助する方法であって、被験体から採取された被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛を観察し、当該被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と比較対象検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果とを比較し、得られた比較結果に基づいて、被験体における免疫関連疾患の罹患の有無の診断の補助情報または被験体における免疫関連疾患の予後の診断の補助情報を得ることを特徴とする。
【0057】
本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法によれば、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と比較対象検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果とを比較し、得られた比較結果に基づいて、被験体における免疫関連疾患の罹患の有無の診断の補助情報または被験体における免疫関連疾患の予後の診断の補助情報を得るという操作が採られているので、被験体が免疫関連疾患に罹患していることもしくは被験者が免疫関連疾患に罹患していないことの診断、または被験体における免疫関連疾患の予後が良好であることもしくは被験体における免疫関連疾患の予後が不良であることの診断を下すための客観的な判断材料を得ることができる。したがって、本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法によれば、医師による免疫関連疾患の罹患の有無の診断または免疫関連疾患の予後の診断が迅速に客観的に行なわれるように当該診断を補助することができる。
【0058】
本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法を免疫関連疾患の罹患の有無の診断の補助に用いる場合、被験体としては、例えば、免疫関連疾患に罹患している疑いがある患者または患畜、健常者、健常非ヒト動物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法を免疫関連疾患の予後の診断の補助に用いる場合、被験体としては、例えば、免疫関連疾患に罹患した治療前後の患者または患畜、健常者、健常非ヒト動物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0059】
被験検体は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる被験検体と同様である。被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法で行なわれる被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察と同様の操作によって行なうことができる。被験検体と比較対象検体との間での免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果の比較は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法において、正常検体を用いる代わりに比較対象検体を用いることを除き、前記免疫関連疾患の指標の検出方法で行なわれる被験検体と正常検体との間での免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果の比較と同様の操作によって行なうことができる。また、免疫関連細胞の一次繊毛を観察する際に用いられる観察項目は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法における観察項目と同様である。
【0060】
被験検体と比較対象検体との間に以下の差異a~cからなる群より選ばれた少なくとも1種の差異がある場合、当該差異に基づき、被験体における免疫関連疾患の罹患の有無または被験体における免疫関連疾患の予後を医師が診断するための判断材料に用いられる診断の補助情報を得ることができる。
<差異a>
被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と比較対象検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数との間の差異
<差異b>
被験検体における免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数と比較対象検体における免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数との間の差異
<差異c>
被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さと比較対象検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さとの間の差異
【0061】
本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法を免疫関連疾患の罹患の有無の診断の補助に用いる場合、比較対象検体として、正常検体が用いられる。正常検体は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる正常検体と同様である。また、本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法を免疫関連疾患の予後の診断の補助に用いる場合、比較対象検体として、未治療の被験体から採取された前記被験検体と同一種類の検体(以下、「未治療検体」という)が用いられる。
【0062】
本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法を前記免疫関連疾患Aの罹患の有無の診断の補助に用いる場合、以下の比較結果A、比較結果Bおよび比較結果Cからなる群より選ばれた少なくとも1つの比較結果から、被験体が当該免疫関連疾患に罹患していると医師が診断するための判断材料に用いられる診断の補助情報を得ることができる。
<比較結果A>
被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、比較対象検体としての正常検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と比べて有意に多いことを示す比較結果
<比較結果B>
被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、比較対象検体としての正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と比べて有意に高いことを示す比較結果
<比較結果C>
被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さが、比較対象検体としての正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さと比べて有意に長いことを示す比較結果
【0063】
また、本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法を前記免疫関連疾患Bの罹患の有無の診断の補助に用いる場合、以下の比較結果Dおよび比較結果Eからなる群より選ばれた少なくとも1つの比較結果から、被験体が当該免疫関連疾患に罹患していると医師が診断するための判断材料に用いられる診断の補助情報を得ることができる。
<比較結果D>
被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、比較対象検体としての正常検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と比べて有意に少ないことを示す比較結果
<比較結果E>
被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、比較対象検体としての正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と比べて有意に低いことを示す比較結果
【0064】
一方、被験検体と、比較対象検体としての正常検体との間に差異がないことを示す比較結果が得られた場合、当該比較結果から被験体が免疫関連疾患に罹患していないと医師が診断するための判断材料に用いられる診断の補助情報を得ることができる。
【0065】
本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法を被験体における前記免疫関連疾患Aの予後の診断の補助に用いる場合、以下の比較結果a-1、比較結果b-1および比較結果c-1からなる群より選ばれた少なくとも1つの比較結果から、被験体において、前記免疫関連疾患Aの予後が良好であると医師が診断するための判断材料に用いられる診断の補助情報を得ることができる。また、以下の比較結果a-2、比較結果b-2および比較結果c-2からなる群より選ばれた少なくとも1つの比較結果から、被験体において、前記免疫関連疾患Aの予後が不良であると医師が診断するための判断材料に用いられる診断の補助情報を得ることができる。
(予後良好の診断の補助情報)
<比較結果a-1>
治療後の被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、比較対象検体としての未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも有意に少ないことを示す比較結果
<比較結果b-1>
治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、比較対象検体としての未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも有意に低いことを示す比較結果
<比較結果c-1>
治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さが、比較対象検体としての未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さよりも有意に短いことを示す比較結果
(予後不良の診断の補助情報)
<比較結果a-2>
治療後の被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、比較対象検体としての未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と同じであるか、未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも多いことを示す比較結果
<比較結果b-2>
治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、比較対象検体としての未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と同じであるか、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも高いことを示す比較結果
<比較結果c-2>
治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さが、比較対象検体としての未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さと同じであるか、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さよりも長いことを示す比較結果
【0066】
本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法を被験体における前記免疫関連疾患Bの予後の診断に用いる場合、以下の比較結果e-1および比較結果f-1からなる群より選ばれた少なくとも1つの比較結果から、被験体において、前記免疫関連疾患Bの予後が良好であると医師が診断するための判断材料に用いられる診断の補助情報を得ることができる。また、以下の比較結果e-2および比較結果f-2からなる群より選ばれた少なくとも1つの比較結果から、被験体において、前記免疫関連疾患Bの予後が不良であると医師が診断するための判断材料に用いられる診断の補助情報を得ることができる。
(予後良好の診断の補助情報)
<比較結果e-1>
治療後の被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、比較対象検体としての未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも有意に多いことを示す比較結果
<比較結果f-1>
治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、比較対象検体としての未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも有意に高いことを示す比較結果
(予後不良の診断の補助情報)
<比較結果e-2>
治療後の被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と同じであるか、未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも少ないことを示す比較結果
<比較結果f-2>
治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と同じであるか、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも低いことを示す比較結果
【0067】
なお、本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法においては、必要に応じて、免疫関連細胞の種類を同定することができる。免疫関連細胞の種類を同定する場合、免疫関連細胞の種類を同定するための同定試薬を用いることができる。本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法に用いられる同定試薬は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる同定試薬と同様である。
【0068】
以上説明したように、本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法によれば、被験体が免疫関連疾患に罹患していることまたは被験体が免疫関連疾患に罹患していないことの診断を下すための客観的な判断材料が得られるので、医師による被験体における免疫関連疾患の罹患の有無の診断が迅速に客観的に行なわれるように当該診断を補助することができる。また、本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法によれば、被験体における免疫関連疾患の予後が良好であることまたは被験体における免疫関連疾患の予後が不良であることの診断を下すための客観的な判断材料が得られるので、医師による被験体における免疫関連疾患の予後の診断が迅速に客観的に行なわれるように当該診断を補助することができる。したがって、本発明の免疫関連疾患の診断の補助方法は、検査機関、医療機関の検査部などにおける免疫関連疾患の検査、医療機関における医師による免疫関連疾患の罹患の有無または免疫関連疾患の予後の診断などに用いられることが期待されるものである。
【0069】
3.免疫関連疾患の検査キット
本発明の免疫関連疾患の検査キットは、被験体における免疫関連疾患を検査するためのキットであって、第1の特異的結合物質を含有することを特徴とする。
【0070】
本発明の免疫関連疾患の検査キットによれば、第1の特異的結合物質を含有しているので、被験体から採取された被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の有無を迅速に容易に調べることができる。したがって、本発明の免疫関連疾患の検査キットによれば、免疫関連疾患を迅速に容易に検査することができる。
【0071】
本発明の免疫関連疾患の検査キットに用いられる第1の特異的結合物質は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる第1の特異的結合物質と同様である。第1の特異的結合物質は、標識物質と複合化されていてもよく、標識物質と複合化されていなくてもよい。第1の特異的結合物質と複合化される標識物質は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる標識物質と同様である。
【0072】
第1の特異的結合物質が標識物質と複合化されていない場合、本発明の免疫関連疾患の検査キットは、第1の特異的結合物質に特異的に結合する標識特異的結合物質を含有していてもよい。標識特異的結合物質は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる標識特異的結合物質と同様である。
【0073】
本発明の免疫関連疾患の検査キットは、免疫関連細胞の種類を同定するための同定試薬;固定液、洗浄液、ブロッキング剤などの検査に用いられる試料の調製用の試薬;結合反応用緩衝液などを含有していてもよい。同定試薬は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる同定試薬と同様である。固定液、洗浄液およびブロッキング剤は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる固定液、洗浄液およびブロッキング剤と同様である。結合反応用緩衝液は、第1の特異的結合物質の種類、第1の特異的結合物質の検出に用いられる標識物質または標識特異的結合物質の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、第1の特異的結合物質の種類などに応じて決定することが好ましい。
【0074】
第1の特異的結合物質は、グリセロール、エチレングリコール、ウシ血清アルブミン、2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、エチレンジアミン四酢酸などの安定化剤を含む保存用緩衝液が入った容器中に封入されていてもよく、凍結乾燥された状態で容器に封入されていてもよい。保存用緩衝液としては、第1の特異的結合物質のpH安定性に応じたpHを有する緩衝液が挙げられる。固定液、洗浄液およびブロッキング剤は、通常、それぞれ、第1の特異的結合物質が入った容器とは異なる容器に封入される。
【0075】
以上説明したように、本発明の免疫関連疾患の検査キットは、第1の特異的結合物質を含有しているので、免疫関連疾患を迅速に容易に検査することができる。したがって、本発明の免疫関連疾患の検査キットは、免疫関連疾患抑制剤または治療薬の開発、検査機関、医療機関の検査部などにおける免疫関連疾患の検査、医療機関における医師による免疫関連疾患の診断などに用いられることが期待されるものである。
【0076】
4.免疫関連疾患に対する抑制効果の評価方法
本発明の免疫関連疾患に対する抑制効果の評価方法は、免疫関連疾患に罹患した被験体に施された治療または当該被験体に投与された免疫関連疾患抑制剤による免疫関連疾患に対する抑制効果を評価する方法であって、被験体から採取された治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛を観察し、治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果を比較し、治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の変化を免疫関連疾患に対する抑制効果の指標として用いることを特徴とする。
【0077】
本発明の免疫関連疾患に対する抑制効果の評価方法によれば、治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の変化が免疫関連疾患に対する抑制効果の指標として用いられているので、免疫関連疾患の治療を受けた被験体または免疫関連疾患抑制剤が投与された被験体における免疫関連疾患に対する抑制効果を迅速に客観的に評価することができる。
【0078】
治療としては、例えば、ステロイド剤などの免疫関連疾患の治療薬を用いる薬物療法;食物療法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、本明細書において、「免疫関連疾患抑制剤」とは、医薬部外品および化粧料成分をいう。
【0079】
免疫関連細胞の一次繊毛を観察する際に用いられる観察項目は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法における観察項目と同様である。被験体は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる被験体と同様である。被験検体は、治療前後の被験検体または免疫関連疾患抑制剤の投与前後の被験検体であることを除き、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる被験検体と同様である。なお、以下において、免疫関連疾患抑制剤の投与前の被験検体を「投与前検体」、免疫関連疾患抑制剤の投与後の被験検体を「投与後検体」という。
【0080】
被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察および治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果の比較は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法における被験検体と正常検体との間での免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果の比較と同様の操作によって行なうことができる。
【0081】
治療前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の変化は、当該治療による免疫関連疾患に対する抑制効果の指標として用いられる。
【0082】
免疫関連疾患が前記免疫関連疾患Aである場合、以下の「効果ありの評価基準」および「効果なしの評価基準」に基づき、当該治療による免疫関連疾患に対する抑制効果の有無を評価される。「効果ありの評価基準」のA-1~A-3は、単独で用いてもよく、併用してもよい。「効果なしの評価基準」のB-1~B-3は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
<効果ありの評価基準>
A-1:治療後の被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも有意に少ないこと
A-2:治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも有意に低いこと
A-3:治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さが、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さよりも有意に短いこと
<効果なしの評価基準>
B-1:治療後の被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と同じであるか、未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも有意に多いこと
B-2:治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と同じであるか、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも有意に高いこと
B-3:治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さが、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さと同じであるか、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さよりも有意に長いこと
【0083】
免疫関連疾患が前記免疫関連疾患Bである場合、以下の「効果ありの評価基準」および「効果なしの評価基準」に基づき、当該治療による免疫関連疾患に対する抑制効果の有無が評価される。「効果ありの評価基準」のC-1およびC-2は、単独で用いてもよく、併用してもよい。「効果なしの評価基準」のD-1およびD-2は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
<効果ありの評価基準>
C-1:治療後の被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも有意に多いこと
C-2:治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも有意に高いこと
<効果なしの評価基準>
D-1:治療後の被験検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と同じであるか、未治療検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも有意に少ないこと
D-2:治療後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と同じであるか、未治療検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも有意に低いこと
【0084】
免疫関連疾患抑制剤の投与前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の変化は、当該免疫関連疾患抑制剤による免疫関連疾患に対する抑制効果の指標として用いられる。
【0085】
免疫関連疾患が前記免疫関連疾患Aである場合、以下の「効果ありの評価基準」および「効果なしの評価基準」に基づき、当該免疫関連疾患抑制剤による免疫関連疾患に対する抑制効果の有無が評価される。「効果ありの評価基準」のa-1~a-3は、単独で用いてもよく、併用してもよい。「効果なしの評価基準」のb-1~b-3は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
<効果ありの評価基準>
a-1:投与後検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、未投与検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも有意に少ないこと
a-2:投与後検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、未投与検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも有意に低いこと
a-3:投与後検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さが、未投与検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さよりも有意に短いこと
<効果なしの評価基準>
b-1:投与後検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、未投与検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と同じであるか、未投与検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも有意に多いこと
b-2:投与後検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、未投与検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と同じであるか、未投与検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも有意に高いこと
b-3:投与後検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さが、未投与検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さと同じであるか、未投与検体における免疫関連細胞の一次繊毛の長さよりも有意に長いこと
【0086】
免疫関連疾患が前記免疫関連疾患Bである場合、以下の「効果ありの評価基準」および以下の「効果なしの評価基準」に基づき、当該免疫関連疾患抑制剤による免疫関連疾患に対する抑制効果の有無が評価される。「効果ありの評価基準」のc-1およびc-2は、単独で用いてもよく、併用してもよい。「効果なしの評価基準」のd-1およびd-2は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
<効果ありの評価基準>
c-1:投与後検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が未投与検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも有意に多いこと
c-2:投与後検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が未投与検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも有意に高いこと
<効果なしの評価基準>
d-1:投与後検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が未投与検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と同じであるか、未投与検体における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数よりも有意に少ないこと
d-2:投与後検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が未投与検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と同じであるか、未投与検体における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率よりも有意に低いこと
【0087】
以上説明したように、本発明の免疫関連疾患に対する抑制効果の評価方法によれば、治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の変化が免疫関連疾患に対する抑制効果の指標として用いられているので、免疫関連疾患の治療を受けた被験体または免疫関連疾患抑制剤が投与された被験体における免疫関連疾患に対する抑制効果を迅速に客観的に評価することができる。したがって、本発明の免疫関連疾患に対する抑制効果の評価方法は、医師による免疫関連疾患の治療計画の作成、免疫関連疾患の治療方法の開発、免疫関連疾患の治療薬の開発、免疫関連疾患を抑制するための医薬部外品または化粧料成分の開発などに用いられることが期待されるものである。
【0088】
5.被験試料の評価方法
本発明の被験試料の評価方法は、被験試料が免疫機能制御作用を有する物質であるかどうかを評価する被験試料の評価方法であって、(A)一次繊毛を有する免疫関連細胞を含有する細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛を観察するステップ、
(B)一次繊毛を有する免疫関連細胞を含有する細胞群と被験試料とを接触させ、当該被験試料に接触させた細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛を観察するステップ、および
(C)ステップ(A)で観察された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と、ステップ(B)で観察された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果との差異に基づき、被験試料が免疫機能制御作用を有する物質であるかどうかを評価するステップ
を含むことを特徴とする。
【0089】
本発明の被験試料の評価方法によれば、ステップ(A)で観察された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と、ステップ(B)で観察された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果との差異に基づき、被験試料が免疫機能制御作用を有する物質であるかどうかを評価するという操作が採られているので、被験試料が免疫機能制御作用を有するかどうかを簡便な操作で客観的に的確に評価することができる。「免疫機能制御作用」には、免疫機能を増加させる免疫機能促進作用および免疫機能を減少させる免疫機能抑制作用が含まれる。
【0090】
ステップ(A)および(B)を行なう順序は、任意であり、ステップ(A)を行なった後にステップ(B)を行なう順序であってもよく、ステップ(B)を行なった後にステップ(A)を行なう順序であってもよい。また、ステップ(A)および(B)は、同時に行なわれてもよい。
【0091】
被験試料は、免疫機能制御作用を有するかどうかの評価対象の試料である。被験試料としては、例えば、免疫機能促進作用を有することが期待される物質、免疫機能抑制作用を有することが期待される物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。被験試料の具体例としては、無機化合物、有機化合物、植物抽出物、微生物抽出物、培養上清などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。被験試料は、そのままの状態で用いてもよく、溶媒に溶解させて用いてもよい。被験試料を溶解させる溶媒としては、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0092】
ステップ(A)では、一次繊毛を有する免疫関連細胞を含有する細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛を観察する。細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察は、一次繊毛を有する免疫関連細胞を含有する細胞群を被験試料の非存在下の培地中で培養した後に行なうことができる。
【0093】
一次繊毛を有する免疫関連細胞は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法に用いられる免疫関連細胞と同様である。本発明の被験試料の評価方法に用いられる免疫関連細胞は、本発明の被験試料の評価方法の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、本発明の被験試料の評価方法の用途などに応じて決定することが好ましい。
【0094】
一次繊毛を有する免疫関連細胞の培養に用いられる培地および培地条件は、一次繊毛を有する免疫関連細胞の種類などによって異なるので一概に決定することができないことから、一次繊毛を有する免疫関連細胞の種類などに応じて決定することが好ましい。
【0095】
細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法における被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察と同様の操作によって行なうことができる。また、観察項目は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法における観察項目と同様である。
【0096】
ステップ(B)では、一次繊毛を有する免疫関連細胞を含有する細胞群と被験試料とを接触させ、当該被験試料に接触させた細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛を観察する。細胞群と被験試料との接触は、例えば、一次繊毛を有する免疫関連細胞を被験試料の存在下の培地中で培養することなどによって行なうことができる。
【0097】
ステップ(B)に用いられる一次繊毛を有する免疫関連細胞は、ステップ(A)で用いられる一次繊毛を有する免疫関連細胞と同じ供給源の皮膚組織から得られる同じ種類の一次繊毛を有する免疫関連細胞である。ステップ(A)を行なった後にステップ(B)を行なう場合、ステップ(B)に用いられる一次繊毛を有する免疫関連細胞は、ステップ(A)で用いられる一次繊毛を有する免疫関連細胞であってもよく、別の細胞であってもよい。
【0098】
ステップ(B)で用いられる培地は、ステップ(A)で用いられる培地と同じ種類の培地である。被験試料の存在下での一次繊毛を有する免疫関連細胞の培養条件は、例えば、ステップ(A)で用いられる培地と同じ種類の培地に被験試料を添加して得られた被験試料含有培地を用いることを除き、ステップ(A)における一次繊毛を有する免疫関連細胞の培養条件と同様である。被験試料含有培地における被験試料の濃度は、一次繊毛を有する免疫関連細胞の種類、本発明の被験試料の評価方法の用途などによって異なるので一概に決定することができないことから、一次繊毛を有する免疫関連細胞の種類、本発明の被験試料の評価方法の用途などに応じて決定することが好ましい。
【0099】
ステップ(C)では、ステップ(A)で観察された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と、ステップ(B)で観察された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果との差異に基づき、被験試料が免疫機能制御作用を有する物質であるかどうかを評価する。
【0100】
ステップ(A)で測定された観察結果とステップ(B)で測定された観察結果との差異としては、被験試料の有無による細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数の違い、被験試料の有無による細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の形成率の違い、被験試料の有無による細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の長さの違いなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ステップ(A)で測定された観察結果とステップ(B)で測定された観察結果との差異は、前記免疫関連疾患の指標の検出方法における被験検体と正常検体との間での免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果の比較と同様の操作によって調べることができる。
【0101】
被験試料が免疫機能制御作用を有することの指標としては、例えば、以下の指標a~指標dなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの指標は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
<指標a>
ステップ(B)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と、ステップ(A)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数との間に有意な差異があること
<指標b>
ステップ(B)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数から算出された免疫関連細胞の一次繊毛の形成率とステップ(A)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数から算出された免疫関連細胞の一次繊毛の形成率との間に有意な差異があること
<指標c>
ステップ(B)で測定された細胞群における免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数と、ステップ(A)で測定された細胞群における免疫関連細胞1個あたりの一次繊毛の数との間に有意な差異があること
<指標d>
ステップ(B)で測定された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の長さと、ステップ(A)で測定された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の長さとの間に有意な差異があること
【0102】
免疫関連細胞が末梢血単核細胞または樹状細胞である場合、以下の指標a-1および指標b-1に基づき、被験試料は、前記免疫関連疾患Aの発症部位において、免疫機能抑制作用を示すと評価される。
<指標a-1>
ステップ(B)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、ステップ(A)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と比べて有意に少ないこと
<指標b-1>
ステップ(B)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数から算出された免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、ステップ(A)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数から算出された免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と比べて有意に低いこと
<指標c-1>
ステップ(B)で測定された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の長さが、ステップ(A)で測定された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の長さよりも有意に短いこと
【0103】
免疫関連細胞が前記免疫関連疾患Bの組織由来の繊維芽細胞または上皮細胞である場合、以下の指標a-2および指標b-2に基づき、被験試料は、前記免疫関連疾患Bの発症部位において、免疫機能抑制作用を示すと評価される。
<指標a-2>
ステップ(B)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数が、ステップ(A)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数と比べて有意に多いこと
<指標b-2>
ステップ(B)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数から算出された免疫関連細胞の一次繊毛の形成率が、ステップ(A)で測定された細胞群における一次繊毛を有する免疫関連細胞の数から算出された免疫関連細胞の一次繊毛の形成率と比べて有意に高いこと
【0104】
以上説明したように、本発明の被験試料の評価方法によれば、被験試料が免疫機能制御作用を有するかどうかを簡便な操作で客観的に的確に評価することができることから、免疫機能制御物質のスクリーニング、免疫機能制御物質の有効性の評価、免疫関連疾患の治療薬の開発、免疫関連疾患を抑制するための医薬部外品または化粧料成分の開発などに用いられることが期待されるものである。
【0105】
6.免疫機能制御剤
本発明の免疫機能制御剤は、免疫機能を抑制するための免疫機能制御剤であって、一次繊毛を有する免疫関連細胞から一次繊毛を除去する作用を有する一次繊毛除去作用物質を有効成分として含有することを特徴とする。
【0106】
本発明の免疫機能制御剤は、一次繊毛除去作用物質を有効成分として含有するので、免疫機能を効果的に制御することができる。なお、「免疫機能制御剤」の概念には、免疫機能抑制作用を有する免疫機能抑制剤および免疫機能促進作用を有する免疫機能促進剤が包含される。
【0107】
一次繊毛除去作用物質は、前記被験試料の評価方法におけるステップ(A)およびステップ(B)を行ない、ステップ(B)で観察された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果がステップ(A)で観察された細胞群における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と比べて少ないことを指標として得ることができる。一次繊毛除去作用物質としては、例えば、ステロイド剤、生理活性物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0108】
ステロイド剤としては、例えば、コロチゾン、酢酸コルチゾンなどのコルチゾン系ステロイド剤;ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾンなどのヒドロコルチゾン系ステロイド剤;デキサメサゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、吉草酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、パルミチン酸デキサメタゾンなどのデキサメタゾン系ステロイド剤;ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾンなどのベタメゾン系ステロイド剤;プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、ブチル酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウムなどのプレドニゾロン系ステロイド剤;メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、メチルプレドニゾロンナトリウムスクシネートなどのメチルプレドニゾロン系ステロイド剤;トリアムシノロン、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドなどのトリアムシノロン系ステロイド剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。生理活性物質としては、例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)、プロスタグランジンE2などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0109】
一次繊毛除去作用物質は、溶媒和物を形成していてもよい。溶媒和物としては、例えば水和物、エタノール付加物、ジメチルスルホキシド付加物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0110】
本発明の免疫機能制御剤における一次繊毛除去作用物質の含有率は、本発明の免疫機能制御剤の用途、当該物質の種類などによって異なるので一概に決定することができないことから、本発明の免疫機能制御剤の用途、当該物質の種類などに応じて決定することが好ましい。本発明の免疫機能制御剤における一次繊毛除去作用物質の含有率は、正常細胞への負荷を低減する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。本発明の免疫機能制御剤における一次繊毛除去作用物質の含有率の下限値は、一次繊毛を有する免疫関連細胞から一次繊毛を除去する作用を示す範囲であればよい。本発明の免疫機能制御剤における一次繊毛除去作用物質の含有率の下限値は、通常、好ましくは0.000001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上である。
【0111】
本発明の免疫機能制御剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、結合剤、安定化剤、賦形剤、溶解補助剤、等張剤、緩衝液などを含有していてもよい。
【0112】
本発明の免疫機能制御剤は、一次繊毛の異常増加による過剰な免疫機能の発現に起因する免疫関連疾患に罹患した被験体に対して免疫機能抑制作用を有する免疫機能抑制剤として用いることができる。一次繊毛の異常増加による過剰な免疫機能の発現に起因する免疫関連疾患としては、例えば、高IgE症候群、慢性肉芽腫症、関節炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性糸球体腎炎、自己免疫性膵島炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性卵巣炎、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、クローン病、ベーチェット病、ウェゲナー肉芽腫症、過敏性血管炎、結節性動脈周囲炎、橋本病、粘液水腫、バセドウ病、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、突発性血小板減少症、悪性貧血、重症筋無力症、脱髄疾患、大動脈炎症群、乾癬、天疱瘡、類天疱瘡、膠原病(例えば、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、汎発性強皮症、全身性進行性硬化症、皮膚筋炎、結節性多発性動脈炎、リウマチ熱など)、ギラン・バレー症候群、多腺性自己免疫症候群II型、原発性胆汁性肝硬変、尋常性白斑、1型糖尿病、自己免疫性血栓症(例えば、自己免疫性の動脈血栓症、自己免疫性の静脈血栓症など)、習慣性流産、血小板減少症、抗リン脂質抗体症候群などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0113】
以上説明したように、本発明の免疫機能制御剤は、一次繊毛除去作用物質を有効成分として含有するので、免疫機能を効果的に制御することができる。したがって、本発明の免疫機能制御剤は、免疫関連疾患の治療薬、当該免疫関連疾患を抑制するための医薬部外品または化粧料成分などに好適に用いられることが期待されるものである。本発明の免疫機能制御剤が免疫機能促進剤である場合、当該免疫機能制御剤は、一次繊毛の異常増加による免疫機能の低下に起因する免疫関連疾患の治療薬、当該免疫関連疾患を抑制するための医薬部外品または化粧料成分などに好適に用いられることが期待されるものである。本発明の免疫機能制御剤が免疫機能抑制剤である場合、当該免疫機能制御剤は、一次繊毛の異常増加による過剰な免疫機能の発現に起因する免疫関連疾患の治療薬、当該免疫関連疾患を抑制するための医薬部外品または化粧料成分などに好適に用いられることが期待されるものである。
【0114】
7.免疫関連細胞の一次繊毛除去剤
本発明の免疫関連細胞の一次繊毛除去剤は、一次繊毛を有する免疫関連細胞から一次繊毛を除去するための免疫関連細胞の一次繊毛除去剤であって、ステロイド剤および生理活性物質からなる群より選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする。
【0115】
本発明の免疫関連細胞の一次繊毛除去剤は、免疫関連細胞の一次繊毛除去剤は、ステロイド剤および生理活性物質からなる群より選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有するので、免疫関連細胞の一次繊毛を除去することができる。
【0116】
本発明の免疫関連細胞の一次繊毛除去剤に用いられるステロイド剤および生理活性物質は、前記免疫機能制御剤の有効成分として用いられるステロイド剤および生理活性物質と同様である。
【0117】
本発明の免疫関連細胞の一次繊毛除去剤における有効成分の含有率は、本発明の免疫関連細胞の一次繊毛除去剤の用途、有効成分の種類などによって異なるので一概に決定することができないことから、本発明の免疫関連細胞の一次繊毛除去剤の用途、有効成分の種類などに応じて決定することが好ましい。本発明の免疫関連細胞の一次繊毛除去剤における有効成分の含有率は、正常細胞への負荷を低減する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0118】
以上説明したように、本発明の免疫関連細胞の一次繊毛除去剤は、免疫関連細胞の一次繊毛を除去することができるので、免疫関連細胞の一次繊毛の機能異常に起因する免疫関連疾患を抑制するための医薬部外品または化粧料成分などに好適に用いられることが期待されるものである。
【実施例0119】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。以下において、各略語の意味は、以下のとおりである。
【0120】
<略語の説明>
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FBS:ウシ胎仔血清
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PFA:パラホルムアルデヒド
TNF:腫瘍壊死因子
IL-4:インターロイキン-4
GM-CSF:顆粒球単球コロニー刺激因子
【0121】
実施例1
ヒト健常皮膚組織〔国立大学法人大阪大学医学研究科から入手〕から皮膚片を得た。得られた皮膚片を凍結組織切片作製用包埋剤〔サクラファインテックジャパン(株)製、商品名:ティッシュー・テックO.C.Tコンパウンド〕に包埋させた。包埋後の皮膚片を液体窒素で冷却されたイソペンタン中で凍結させ、凍結皮膚片を得た。つぎに、クライオミクロトームを用い、凍結皮膚片を切削して切片(厚さ:10μm)を得た。得られた切片を4v/v%PFA含有PBS溶液に浸漬させ、室温で10分間固定した。固定後の切片をブロッキング・透過処理剤〔0.1v/v%ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル(TritonX-100)と10v/v%FBS含PBS溶液〕中でインキュベーションすることによってブロッキング処理および透過処理を行ない、試料を得た。
【0122】
得られた試料を抗チューブリン抗体〔シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社製、商品名:MONOCLONAL ANTI-ACETYLATED TUBULIN CLONE 6-11B-1、品番:T6793〕および抗ランゲリン抗体〔アブカム(Abcam)社製、商品名:Anti-Langerin[EPR15863]抗体、カタログナンバー:ab192027〕と4℃で16時間反応させた。反応後の試料を洗浄液A〔0.1w/w%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween-20)含有PBS溶液〕で洗浄した。
【0123】
なお、抗ランゲリン抗体はランゲルハンス細胞マーカーに対する抗体であり、抗チューブリン抗体は一次繊毛マーカーに対する抗体である。
【0124】
洗浄後の試料を、蛍光色素標識抗マウスIgG抗体〔アブカム社製、商品名:Goat Anti-Mouse IgG H&L(蛍光色素:Alexa Fluor(登録商標)594)、カタログナンバー:ab150116〕、蛍光色素標識抗ウサギIgG抗体〔アブカム社製、商品名:Goat Anti-Rabbit IgG H&L(蛍光色素:Alexa Fluor(登録商標) 488)、カタログナンバー:ab150077〕および細胞核染色剤〔2’-(4-エトキシフェニル)-5-(4-メチル-1-ピペラジニル)-2,5’-ビ-1H-ベンズイミダゾール三塩酸塩(Hoechst33342)〕と室温(25℃)で3時間反応させることによって試料を染色した。染色後の試料を洗浄液Aで洗浄した。
【0125】
洗浄後の試料を褪色防止用封入剤〔サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)(株)製、商品名:ProLong(登録商標) Gold褪色防止用封入剤、品番:P36934〕に封入し、観察用試料を得た。得られた観察用試料および共焦点顕微鏡〔オリンパス(株)製、品番:FV1200〕を用いて観察用試料に含まれるランゲルスハンス細胞マーカー、一次繊毛マーカーおよび細胞核染色剤を検出することによって試料を観察した。
【0126】
実施例1において、ランゲルスハンス細胞マーカーによるヒト健常皮膚組織の染色像を
図1(A)、一次繊毛マーカーによるヒト健常皮膚組織の染色像を
図1(B)、細胞核染色剤によるヒト健常皮膚組織の染色像を
図1(C)、
図1(A)に示される染色像と
図1(B)に示される染色像と
図1(C)に示される染色像との重ね合わせ画像を
図1(D)に示す。図中、スケールバーは10μmを示す。
【0127】
図1(A)~(D)に示された結果から、皮膚組織中のランゲルハンス細胞マーカーが染色された部分に一次繊毛マーカーが検出されることがわかる。したがって、ヒト健常皮膚組織に含まれる健常ランゲルハンス細胞は、一次繊毛を有することがわかる。
【0128】
実施例2
パラフィン用ミクロトームを用い、固定・パラフィン包埋済アトピー性皮膚炎皮膚組織〔アステランド・バイオサイエンス(Asterand Bioscience)社製、Patient ID:95253〕を切削し、切片(厚さ:7μm)を得た。得られた切片をキシレンに5分間浸漬させることによって脱パラフィン処理を行なった。エタノール、95体積%エタノール水溶液および精製水をこの順に用い、脱パラフィン処理後の切片を洗浄することによって切片の水和を段階的に行なった。水和後の切片を1mM EDTA水溶液中で15分間煮沸させることによって抗原賦活化処理を行なった。得られた切片をブロッキング・透過処理剤中でインキュベーションすることによってブロッキング処理および透過処理を行ない、試料を得た。
【0129】
得られた試料を抗チューブリン抗体〔シグマ-アルドリッチ社製、商品名:MONOCLONAL ANTI-ACETYLATED TUBULIN CLONE 6-11B-1、品番:T6793〕および抗ランゲリン抗体〔アブカム社製、商品名:Anti-Langerin[EPR15863]抗体ab192027〕と4℃で16時間反応させた。反応後の試料を洗浄液A〔0.1w/w%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween-20)含有PBS溶液〕で洗浄した。
【0130】
洗浄後の試料を蛍光色素標識抗マウスIgG抗体〔アブカム社製、商品名:Goat Anti-Mouse IgG H&L(蛍光色素:Alexa Fluor(登録商標)488)、カタログナンバー:ab150113〕および蛍光色素標識抗ウサギIgG抗体〔アブカム社製、商品名:Goat Anti-Rabbit IgG H&L(蛍光色素:Alexa Fluor(登録商標)594)、カタログナンバー:ab150080〕と室温(25℃)で3時間反応させることによって試料を染色した。染色後の試料を洗浄液Aで洗浄した。
【0131】
洗浄後の試料を褪色防止用封入剤〔サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(株)製、商品名:ProLong(登録商標) Gold褪色防止用封入剤、品番:P36934〕に封入し、観察用試料を得た。得られた観察用試料および共焦点顕微鏡〔オリンパス(株)製、品番:FV1200〕を用いて観察用試料に含まれるランゲルスハンス細胞マーカー、一次繊毛マーカーおよび細胞核染色剤を検出することによって試料を観察した。
【0132】
実施例2において、一次繊毛マーカーによるアトピー性皮膚炎病巣組織の染色像を
図2(A)、ランゲルスハンス細胞マーカーによるアトピー性皮膚炎病巣組織の染色像を
図2(B)、細胞核染色剤によるアトピー性皮膚炎病巣組織の染色像を
図2(C)、
図2(A)に示される染色像と
図2(B)に示される染色像と
図2(C)に示される染色像との重ね合わせ画像を
図2(D)に示す。図中、1は表皮、2は真皮、白矢印は一次繊毛マーカー、スケールバーは20μmを示す。
【0133】
また、実施例2において、一次繊毛マーカーによるアトピー性皮膚炎病巣組織中のランゲルハンス細胞の染色像を
図3(A)、ランゲルスハンス細胞マーカーによるアトピー性皮膚炎病巣組織中のランゲルハンス細胞の染色像を
図3(B)、微分干渉観察法により撮影されたアトピー性皮膚炎病巣組織中のランゲルハンス細胞の撮影像を
図3(C)、
図3(A)に示される染色像と
図3(B)に示される染色像と
図3(C)に示される撮影像との重ね合わせ画像を
図3(D)に示す。図中、白矢印は一次繊毛マーカー、スケールバーは5μmを示す。
【0134】
図2(A)~(D)に示された結果から、アトピー性皮膚炎病巣組織中の表皮におけるランゲルハンス細胞マーカーが染色された部分に一次繊毛マーカーが検出されることがわかる。また、
図3(A)~(D)に示された結果から、ランゲルハンス細胞において、一次繊毛マーカーが検出されることがわかる。したがって、これらの結果から、アトピー性皮膚炎の病巣組織には、一次繊毛を有するランゲルハンス細胞が多数存在していることがわかる。
【0135】
実施例3
観察項目として一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数を用い、実施例1で得られたヒト健常皮膚組織(正常組織)由来の観察用試料および実施例2で得られたアトピー性皮膚炎病巣組織由来の観察用試料を観察することにより、正常組織における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数およびアトピー性皮膚炎病巣組織における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数を求めた。
【0136】
組織の種類と一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数との関係を調べた結果を
図4に示す。
図4は、実施例3において、組織の種類と一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数との関係を調べた結果を示すグラフである。
【0137】
図4に示された結果から、アトピー性皮膚炎病巣組織における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数は、正常組織における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数と比べて多いことがわかる。したがって、アトピー性皮膚炎病巣組織では、正常組織と比べて一次繊毛を有するランゲルハンス細胞が増加していることがわかる。また、図示しないが、染色像から、アトピー性皮膚炎病巣組織のランゲルハンス細胞の一次繊毛は、正常組織のランゲルハンス細胞の一次繊毛と比べて長いことが確認された。
【0138】
また、観察項目として一次繊毛を有するケラチノサイトの数を用い、実施例1で得られた正常組織由来の観察用試料と実施例2で得られたアトピー性皮膚炎病巣組織由来の観察用試料とを観察することにより、正常組織における一次繊毛を有するケラチノサイトの数およびアトピー性皮膚炎病巣組織における一次繊毛を有するケラチノサイトの数を求めた。なお、表皮は、細胞核の染色像の違いによって真皮と区別され得る。また、表皮を構成する細胞の95%がケラチノサイトである。したがって、表皮の抗ランゲリン抗体非陽性細胞は、ケラチノサイトであると考えられる。そこで、観察に際し、表皮の抗ランゲリン抗体非陽性細胞をケラチノサイトとして用いた。
【0139】
組織の種類と一次繊毛を有するケラチノサイトの数との関係を調べた結果を
図5に示す。
図5は、実施例3において、組織の種類と一次繊毛を有するケラチノサイトの数との関係を調べた結果を示すグラフである。
【0140】
図5に示された結果から、アトピー性皮膚炎病巣組織における一次繊毛を有するケラチノサイトの数は、正常組織における一次繊毛を有するケラチノサイトの数と比べて多いことがわかる。したがって、アトピー性皮膚炎の病巣組織では、正常組織と比べて一次繊毛を有するケラチノサイトが増加していることがわかる。また、図示しないが、染色像から、アトピー性皮膚炎病巣組織のケラチノサイトの一次繊毛は、正常組織のケラチノサイトの一次繊毛と比べて長いことが確認された。
【0141】
ランゲルハンス細胞は、皮膚に存在する免疫細胞である。また、ケラチノサイトは、皮膚に存在する免疫機能保有細胞である。したがって、一次繊毛を有する免疫細胞および/または免疫機能保有細胞の増加は、アトピー性皮膚炎に関連していることがわかる。
【0142】
以上説明したように、病巣組織などの被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛を観察し、当該被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と皮膚組織などの正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果とを比較することにより、被験検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果と正常検体における免疫関連細胞の一次繊毛の観察結果との差異を免疫関連疾患の指標として検出することができることがわかる。また、得られた比較結果に基づいて、被験体における免疫関連疾患の罹患の有無の診断の補助情報または被験体における免疫関連疾患の予後の診断の補助情報を得ることができることがわかる。
【0143】
実施例4
健常ボランティアから採取された末梢血10mLおよびヒトリンパ球分離用媒体〔GEヘルスケア社製、商品名:Ficoll-Paque PLUS〕15mLを用い、密度勾配遠心法にしたがい、末梢血から末梢血単核細胞を分離した。培地〔50ng/mL IL-4、50ng/mL GM-CSFおよび10v/v%FBSを含有するRPMI1640培地〕中、末梢血単核細胞を37℃で7日間培養することによって末梢血単核細胞を樹状細胞に分化させた。
【0144】
経時的な細胞の特性変化を調べるために、培養開始時から1日間、3日間および7日間経過後の各細胞を回収し、すぐに4v/v%PFA含有PBS溶液で固定した。各固定細胞をブロッキング・透過処理剤中でインキュベーションすることによってブロッキングおよび透過処理を行ない、培養開始時から1日間経過後の未成熟樹状細胞を含有する試料、培養開始時から3日間経過後の未成熟樹状細胞を含有する試料および培養開始時から7日間経過後の未成熟樹状細胞を含有する試料を得た。
【0145】
得られた各試料を抗チューブリン抗体〔シグマ-アルドリッチ社製、商品名:MONOCLONAL ANTI-ACETYLATED TUBULIN CLONE 6-11B-1、品番:T6793〕および抗ペリセントリン抗体〔ベチル・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド(Bethyl Laboratories,Inc.)社製、商品名:Pericentrin/Kendrin Antibody、品番:A301-348A-T〕と室温で1時間反応させた。反応後の各試料を洗浄液A〔0.1w/w%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート含有PBS溶液〕で洗浄した。抗ペリセントリン抗体は、細胞核マーカーに対する抗体である。
【0146】
洗浄後の各試料を蛍光色素標識抗マウスIgG抗体〔アブカム社製、商品名:Goat Anti-Mouse IgG H&L(蛍光色素:Alexa Fluor(登録商標)488、カタログナンバー:ab150113)〕および蛍光色素標識抗ウサギIgG抗体〔アブカム社製、商品名:Goat Anti-Rabbit IgG H&L(蛍光色素:Alexa Fluor(登録商標)594、カタログナンバー:ab150080)〕と室温(25℃)で3時間反応させることによって各試料を染色した。染色後の各試料を洗浄液Aで洗浄した。
【0147】
洗浄後の各試料を褪色防止用封入剤〔サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(株)製、商品名:ProLong(登録商標) Gold褪色防止用封入剤、品番:P36934〕に封入した。得られた各試料および共焦点顕微鏡〔オリンパス(株)製、品番:FV1200〕を用いて試料に含まれる細胞核マーカーおよび一次繊毛マーカーを検出することによって各試料に含まれる未成熟樹状細胞を観察した。
【0148】
実施例4において、培養開始時から1日間経過後の未成熟樹状細胞を観察した結果を
図6(A)、培養開始時から3日間経過後の未成熟樹状細胞を観察した結果を
図6(B)、培養開始時から7日間経過後の未成熟樹状細胞を観察した結果を
図6(C)に示す。図中、白矢印は一次繊毛マーカー、スケールバーは5μmを示す。また、白色実線で囲まれた部分は、破線で囲まれた部分の拡大図である。
【0149】
つぎに、各試料に含まれる未成熟樹状細胞を観察した結果を用い、全未成熟樹状細胞数および未成熟樹状細胞の一次繊毛の数を求めた。その後、式(Ia):
[未成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率]
=[未成熟樹状細胞の一次繊毛の数]/[全未成熟樹状細胞数]×100
(Ia)
にしたがい、未成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率を算出した。
【0150】
実施例4において、未成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率の経時的変化を調べた結果を
図7に示す。
【0151】
図6(A)~(C)に示された結果から、未成熟樹状細胞は、一次繊毛を有することがわかる。また、
図7に示された結果から、未成熟樹状細胞では、培養時間の経過に伴って未成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率が増加することがわかる。
【0152】
実施例5
健常ボランティアから採取された末梢血10mLおよびヒトリンパ球分離用媒体〔GEヘルスケア社製、商品名:Ficoll-Paque PLUS〕15mLを用い、密度勾配遠心法にしたがい、末梢血から末梢血単核細胞を分離した。分離後の末梢血単核細胞の一部を分離直後に4v/v%PFA含有PBS溶液で固定した。固定細胞をブロッキング・透過処理剤中でインキュベーションすることによってブロッキングおよび透過処理を行ない、未培養の細胞を含有する試料を得た。
【0153】
また、培地〔50ng/mL IL-4、50ng/mL GM-CSFおよび10v/v%FBSを含有するRPMI1640培地〕中、分離後の末梢血単核細胞の残部を37℃で7日間培養することによって成熟樹状細胞を得た。経時的な細胞の特性変化を調べるために、培養開始時から1日間経過後、3日間経過後および7日間経過後の各成熟樹状細胞を回収した。回収された各成熟樹状細胞を回収直後に4v/v%PFA含有PBS溶液で固定した。各固定細胞をブロッキング・透過処理剤中でインキュベーションすることによってブロッキングおよび透過処理を行ない、培養開始時から1日間経過後の成熟樹状細胞を含有する試料、培養開始時から3日間経過後の成熟樹状細胞を含有する試料および培養開始時から7日間経過後の成熟樹状細胞を含有する試料を得た。
【0154】
得られた各試料を抗チューブリン抗体〔シグマ-アルドリッチ社製、商品名:MONOCLONAL ANTI-ACETYLATED TUBULIN CLONE 6-11B-1、品番:T6793〕および抗ペリセントリン抗体〔ベチル・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド社製、商品名:Pericentrin/Kendrin Antibody、品番:A301-348A-T〕と室温で1時間反応させた。反応後の各試料を洗浄液A〔0.1w/w%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween-20)含有PBS溶液〕で洗浄した。
【0155】
洗浄後の各試料を蛍光色素標識抗マウスIgG抗体〔アブカム社製、商品名:Goat Anti-Mouse IgG H&L(蛍光色素:Alexa Fluor(登録商標)488、カタログナンバー:ab150113)〕および蛍光色素標識抗ウサギIgG抗体〔アブカム社製、商品名:Goat Anti-Rabbit IgG H&L(蛍光色素:Alexa Fluor(登録商標)594、カタログナンバー:ab150080)〕と室温(25℃)で3時間反応させることによって各試料を染色した。染色後の各試料を洗浄液Aで洗浄した。
【0156】
洗浄後の各試料を褪色防止用封入剤〔サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(株)製、商品名:ProLong(登録商標) Gold褪色防止用封入剤、品番:P36934〕に封入した。得られた各試料および共焦点顕微鏡〔オリンパス(株)製、品番:FV1200〕を用いて試料に含まれる細胞核マーカーおよび一次繊毛マーカーを検出することによって各試料に含まれる成熟樹状細胞を観察した。
【0157】
実施例5において、未培養の細胞を観察した結果を
図8(A)、培養開始時から1日間経過後の成熟樹状細胞を観察した結果を
図8(B)、培養開始時から3日間経過後の成熟樹状細胞を観察した結果を
図8(C)、培養開始時から7日間経過後の成熟樹状細胞を観察した結果を
図8(D)に示す。図中、白矢印は一次繊毛マーカー、スケールバーは5μmを示す。また、白色実線で囲まれた部分は、破線で囲まれた部分の拡大図である。
【0158】
図8(A)~(C)に示された結果から、未培養の細胞および培養開始時から1日間経過時の成熟樹状細胞は、一次繊毛を有することがわかる。
【0159】
つぎに、試料に含まれる未培養の細胞および試料に含まれる各成熟樹状細胞を観察した結果を用い、全成熟樹状細胞数および成熟樹状細胞の一次繊毛の数を求めた。その後、式(Ib):
[成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率]
=〔[成熟樹状細胞の一次繊毛の数]/[全成熟樹状細胞数]〕×100
(Ib)
にしたがい、成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率を算出した。
【0160】
成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率の経時的変化を調べた結果を
図9に示す。
図9は、実施例5において、成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。
【0161】
図9に示された結果から、成熟樹状細胞では、培養時間の経過に伴って成熟樹状細胞の一次繊毛の形成率が減少することがわかる。これらの結果から、樹状細胞の成熟に伴い、一次繊毛が減少することがわかる。したがって、免疫細胞の一次繊毛は、免疫細胞の増殖に関与することがわかる。
【0162】
実施例6
喘息患者から採取された末梢血10mLおよびヒトリンパ球分離用媒体〔GEヘルスケア社製、商品名:Ficoll-Paque PLUS〕15mLを用い、密度勾配遠心法にしたがい、末梢血から末梢血単核細胞を分離した。培養容器内のステロイド剤含有培地〔10μMヒドロコルチゾンまたは10μMデキサメタゾンと、0.1v/v%DMSOと、10v/v%FBSとを含有するRPMI1640培地〕または対照培地〔0.1v/v%DMSOと、10v/v%FBSとを含有するRPMI1640培地〕中、分離後の末梢血単核細胞の一部を37℃で24時間培養した。得られた細胞の形態および状態を位相差倒立顕微鏡〔ライカ・マイクロシステムズ(Leica Microsystems)社製、商品名:DM IL LED〕で観察した。
【0163】
また、前記において、喘息患者から採取された末梢血を用いる代わりに健常ボランティアから採取された末梢血を用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、得られた細胞の形態および状態を観察した。
【0164】
実施例6において、対照培地中での培養後に当該培地中で浮遊している浮遊細胞の形態を観察した結果を
図10(A)、対照培地中での培養後の培養容器に接着している細胞の形態を観察した結果を
図10(B)、ヒドロコルチゾン含有培地中での培養後に当該培地中で浮遊している浮遊細胞の形態を観察した結果を
図10(C)、ヒドロコルチゾン含有培地中での培養後の培養容器に接着している細胞の形態を観察した結果を
図10(D)、デキサメタゾン含有培地中での培養後に当該培地中で浮遊している浮遊細胞の形態を観察した結果を
図10(E)、デキサメタゾン含有培地中での培養後の培養容器に接着している細胞の形態を観察した結果を
図10(F)に示す。図中、スケールバーは、100μmを示す。
【0165】
図10に示された結果から、喘息患者から採取された末梢血から得られた細胞群には、浮遊細胞〔
図10(A)、
図10(C)および
図10(E)参照〕とは異なる形態を有し、培養容器に対する高い接着能を有する接着性細胞〔
図10(B)、
図10(D)および
図10(F)参照〕が含まれていることがわかる。なお、健常ボランティアから採取された末梢血から得られた細胞群には、当該接着性細胞と同様に培養容器への接着能を有し、当該接着性細胞と同様の形態を有する細胞の存在が確認されなかった。したがって、接着性細胞は、喘息に特徴的な細胞であることがわかる。
【0166】
また、
図10に示された結果から、ステロイド剤であるヒドロコルチゾンまたはデキサメタゾンとともに接着性細胞を培養した場合、接着性細胞が消滅することがわかる。これに対し、ステロイド剤を含有しない対照培地で接着性細胞を培養した場合、接着性細胞が減少しないことがわかる。
【0167】
実施例7
喘息患者から採取された末梢血10mLおよびヒトリンパ球分離用媒体〔GEヘルスケア社製、商品名:Ficoll-Paque PLUS〕15mLを用い、密度勾配遠心法にしたがい、末梢血から末梢血単核細胞を分離した。分離後の末梢血単核細胞の一部を4v/v%PFA含有PBS溶液で固定した。固定細胞をブロッキング・透過処理剤中でインキュベーションすることによってブロッキングおよび透過処理を行ない、未培養の細胞を含有する試料を得た。
【0168】
ステロイド剤含有培地〔10μMヒドロコルチゾンまたは10μMデキサメタゾンと、0.1v/v%DMSOと、10v/v%FBSとを含有するRPMI1640培地〕中、分離後の末梢血単核細胞の一部を37℃で24時間培養し、各培地中に浮遊している浮遊細胞を回収した。回収された各細胞を回収直後に4v/v%PFA含有PBS溶液で固定した。各固定細胞をブロッキング・透過処理剤中でインキュベーションすることによってブロッキングおよび透過処理を行ない、培養開始時から1日間経過後の細胞を含有する試料、培養開始時から3日間経過後の細胞を含有する試料および培養開始時から7日間経過後の細胞を含有する試料を得た。
【0169】
得られた各試料を抗チューブリン抗体〔シグマ-アルドリッチ社製、商品名:MONOCLONAL ANTI-ACETYLATED TUBULIN CLONE 6-11B-1、品番:T6793〕および抗ペリセントリン抗体〔ベチル・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド社製、商品名:Pericentrin/Kendrin Antibody A301-348A-T〕と室温で1時間反応させた。反応後の試料を洗浄液A〔0.1w/w%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween-20)含有PBS溶液〕で洗浄した。
【0170】
洗浄後の試料を蛍光色素標識抗マウスIgG抗体〔アブカム社製、商品名:Goat Anti-Mouse IgG H&L(蛍光色素:Alexa Fluor(登録商標)488)、カタログナンバー:ab150113〕および蛍光色素標識抗ウサギIgG抗体〔アブカム社製、商品名:Goat Anti-Rabbit IgG H&L(蛍光色素:Alexa Fluor(登録商標)594、カタログナンバー:ab150080)〕と室温(25℃)で1時間反応させることによって各試料を染色した。染色後の各試料を洗浄液Aで洗浄した。
【0171】
洗浄後の各試料を褪色防止用封入剤〔サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(株)製、商品名:ProLong(登録商標) Gold褪色防止用封入剤、品番:P36934〕に封入した。得られた試料および共焦点顕微鏡〔オリンパス(株)製、品番:FV1200〕を用いて試料に含まれる細胞核マーカーおよび一次繊毛マーカーを検出することによって各試料に含まれる細胞を観察した。
【0172】
つぎに、各試料に含まれる細胞を観察した結果を用い、全免疫細胞数および免疫細胞の一次繊毛の数を求めた。その後、式(Ic):
[免疫細胞の一次繊毛の形成率]
=〔[免疫細胞の一次繊毛の数]/[全免疫細胞数]〕×100
(Ic)
にしたがい、免疫細胞の一次繊毛の形成率を算出した。
【0173】
また、前記において、ステロイド剤含有培地を用いる代わりに対照培地〔0.1v/v%DMSOと、10v/v%FBSとを含有するRPMI1640培地〕を用いたこと、対照培地での培養後の細胞を浮遊細胞と接着性細胞とにわけて回収された各細胞を回収直後に4v/v%PFA含有PBS溶液で固定し、各固定細胞をブロッキング・透過処理剤中でインキュベーションすることによってブロッキングおよび透過処理を行ない、各試料を得たことを除き、前記と同様の操作を行ない、免疫細胞の一次繊毛の形成率を算出した。
【0174】
試料の種類と免疫細胞の一次繊毛の形成率との関係を調べた結果を
図11に示す。
図11は、実施例7において、試料の種類と免疫細胞の一次繊毛の形成率との関係を調べた結果を示すグラフである。図中、試料番号1は対照培地中での培養後の浮遊細胞における免疫細胞の一次繊毛の形成率、試料番号2はヒドロコルチゾン含有培地中での培養後の浮遊細胞における免疫細胞の一次繊毛の形成率、試料番号3はデキサメタゾン含有培地中での培養後の浮遊細胞における免疫細胞の一次繊毛の形成率、試料番号4は対照培地中での培養後の接着性細胞における免疫細胞の一次繊毛の形成率を示す。
【0175】
図11に示された結果から、ヒドロコルチゾン含有培地中での培養後の浮遊細胞における免疫細胞の一次繊毛の形成率およびデキサメタゾン含有培地中での培養後の浮遊細胞における免疫細胞の一次繊毛の形成率は、対照培地中での培養後の浮遊細胞における免疫細胞の一次繊毛の形成率と比べて有意に低いことがわかる。
【0176】
また、対照培地中での培養後の接着性細胞は、高い免疫細胞の一次繊毛の形成率を有することがわかる。
【0177】
免疫関連疾患抑制剤であるステロイド剤投与前の喘息患者から得られた末梢血から得られた細胞群と、当該喘息患者へのステロイド剤の投与によって症状が寛解したときの末梢血から得られた細胞群とを対比した。その結果、ステロイド剤投与前の末梢血から得られた細胞群には一次繊毛を有する接着性細胞が多数含まれていたが、ステロイド剤投与後の末梢血から得られた細胞群には一次繊毛を有する接着性細胞を含む接着性細胞が確認されなかった。これらの結果から、免疫細胞の一次繊毛の数と免疫関連疾患とが相関していることがわかる。また、免疫細胞の一次繊毛は、免疫関連疾患に関与していることがわかる。
【0178】
以上の結果から、被験体から採取された治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫細胞の一次繊毛の数を測定し、治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫細胞の一次繊毛の数を比較し、治療前後または免疫関連疾患抑制剤投与前後の被験検体における免疫細胞の一次繊毛の数の変化を求めることにより、免疫関連疾患に対する抑制効果の指標として用いることができることがわかる。
【0179】
実施例8
一次繊毛を有するケラチノサイトを含有する細胞群におけるケラチノサイトの一次繊毛の数Aを測定する。低分子化合物、高分子化合物、植物抽出物などをPBSなどの溶媒に溶解させ、被験試料を得る。つぎに、当該細胞群と低分子化合物、高分子化合物、植物抽出物などの被験試料とを接触させる。接触後、当該被験試料に接触させた細胞群におけるケラチノサイトの一次繊毛の数Bを測定する。ケラチノサイトの一次繊毛の数Aと、ケラチノサイトの一次繊毛の数Bとの差異を求める。ケラチノサイトの一次繊毛の数Bがケラチノサイトの一次繊毛の数Aよりも有意に多い場合、被験試料が免疫機能促進作用を有すると評価することができる。ケラチノサイトの一次繊毛の数Bがケラチノサイトの一次繊毛の数Aよりも有意に少ない場合、被験試料が免疫機能抑制作用を有すると評価することができる。なお、前記において、ケラチノサイトの代わりに他の免疫関連細胞を用いた場合にも、ケラチノサイトを用いたときと同様に被験試料が有する免疫機能促進作用または免疫機能抑制作用を評価することができる。
【0180】
実施例9
観察項目として一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数を用い、実施例1と同様にして得られたヒト健常皮膚組織(正常組織)由来の観察用試料および実施例2と同様にして得られたアトピー性皮膚炎病巣組織由来の観察用試料それぞれに含まれる細胞を観察し、一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数を計数した。観察された細胞集団の細胞数と一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数とを用い、式(II):
[細胞集団における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の含有率]
=〔[一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の数]/[細胞集団の細胞数]〕×100 (II)
にしたがい、細胞集団における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の含有率を求めた。
【0181】
組織の種類と細胞集団における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の含有率との関係を調べた結果を
図12に示す。
図12は、実施例9において、組織の種類と細胞集団における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の含有率との関係を調べた結果を示すグラフである。図中、「一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の含有率」は、細胞集団における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の含有率を意味する。
【0182】
図12に示された結果から、アトピー性皮膚炎病巣組織では、正常組織と対比して、細胞集団における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の含有率が高いことがわかる。
【0183】
また、観察項目として一次繊毛を有するケラチノサイトの数を用い、実施例1と同様にして得られたヒト健常皮膚組織(正常組織)由来の観察用試料および実施例2と同様にして得られたアトピー性皮膚炎病巣組織由来の観察用試料それぞれに含まれる細胞を観察し、一次繊毛を有するケラチノサイトの数を計数した。観察された細胞集団の細胞数と一次繊毛を有するケラチノサイトの数とを用い、式(III):
[細胞集団における一次繊毛を有するケラチノサイトの含有率]
=〔[一次繊毛を有するケラチノサイトの数]/[細胞集団の細胞数]〕×100 (III)
にしたがい、細胞集団における一次繊毛を有するケラチノサイトの含有率を求めた。
【0184】
組織の種類と細胞集団における一次繊毛を有するランゲルハンス細胞の含有率との関係を調べた結果を
図13に示す。
図13は、実施例9において、組織の種類と細胞集団における一次繊毛を有するケラチノサイトの含有率との関係を調べた結果を示すグラフである。図中、「一次繊毛を有するケラチノサイトの含有率」は、細胞集団における一次繊毛を有するケラチノサイトの含有率を意味する。
【0185】
図13に示された結果から、アトピー性皮膚炎病巣組織では、正常組織と対比して、細胞集団における一次繊毛を有するケラチノサイトの含有率が高いことがわかる。
【0186】
これらの結果から、一次繊毛を有するランゲルハンス細胞および一次繊毛を有するケラチノサイトの増加は、アトピー性皮膚炎に関連していることがわかる。
【0187】
以上説明したように、免疫関連細胞の一次繊毛と免疫関連疾患とが相関していることから、免疫関連細胞の一次繊毛を観察することにより、免疫関連疾患の指標の検出、免疫関連疾患の罹患の有無の診断の補助または免疫関連疾患の予後の診断の補助、免疫関連疾患の治療または免疫関連疾患抑制剤による免疫関連疾患に対する抑制効果の評価ならびに被験試料が免疫機能制御作用を有する物質であるかどうかの評価を行なうことができることがわかる。また、免疫関連細胞の一次繊毛が免疫関連細胞の増殖および免疫関連疾患に関与していることから、免疫関連細胞の一次繊毛の形成を制御することにより、免疫機能の制御を行なうことができることがわかる。したがって、本発明は、免疫関連疾患の検査、免疫関連疾患の罹患の有無の診断の補助または免疫関連疾患の予後の診断の補助、免疫関連疾患の治療薬の開発、免疫関連疾患を抑制するための医薬部外品または化粧料成分の開発などに用いられることが期待されるものである。
腫瘍としては、例えば、舌癌、歯肉癌、悪性リンパ腫、メラノーマ(悪性黒色腫)、上顎癌、鼻癌、鼻腔癌、喉頭癌、咽頭癌、神経膠腫〔例えば、グリオブラストーマ(膠芽腫)、星細胞腫など〕、髄膜腫、神経芽細胞腫、甲状乳頭腺癌、甲状腺濾胞癌、甲状腺髄様癌、原発性肺癌、扁平上皮癌、腺癌、肺胞上皮癌、大細胞性未分化癌、小細胞性未分化癌、カルチノイド、睾丸腫瘍、前立腺癌、乳癌(例えば、乳頭腺癌、面疱癌、粘液癌、髄様癌、小葉癌、硬癌肉腫、転移腫瘍など)、乳房ページェット病、乳房肉腫、骨腫瘍、甲状腺癌、肝癌、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄性単球白血病、急性単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性未分化性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、成人型T細胞白血病、悪性リンパ腫(例えば、リンパ肉腫、細網肉腫、ホジキン病など)、多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、小児性白血病、食道癌、胃癌、胃・大腸平滑筋肉腫、胃・腸悪性リンパ腫、膵・胆嚢癌、十二指腸癌、大腸癌、原発性肝癌(例えば、肝細胞癌、胆管細胞癌など)、肝芽腫、子宮上皮内癌、子宮頸部扁平上皮癌、子宮腺癌、子宮腺扁平上皮癌、子宮体部腺類癌、子宮肉腫、子宮癌肉腫、子宮破壊性奇胎、子宮悪性絨毛上皮腫、子宮悪性黒色腫、卵巣癌、中胚葉性混合腫瘍、腎癌、腎細胞癌、腎盂移行上皮癌、尿管移行上皮癌、膀胱乳頭癌、膀胱移行上皮癌、尿道扁平上皮癌、尿道腺癌、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、線維肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、滑液膜肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、ユーイング肉腫、皮膚扁平上皮癌、皮膚基底細胞癌、皮膚ボーエン病、皮膚ページェット病、皮膚悪性黒色腫、悪性中皮癌、転移性腺癌、転移性扁平上皮癌、転移性肉腫、中皮腫(例えば、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
炎症性疾患として、例えば、湿疹、面皰、接触性皮膚炎などの皮膚炎;大腸炎;高安動脈炎、巨細胞動脈炎(側頭動脈炎)、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫性血管炎)、アレルギー性皮膚血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、過敏性血管炎、血管炎症候群、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)、結節性血管炎などの血管炎;リウマチ関節炎、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、結核性関節炎、化膿性関節炎、乾癬性関節炎、膝内障、特発性骨壊死症、骨関節炎などの関節炎;ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎などの肝炎;急性糸球体腎炎、慢性腎炎、急速進行性腎炎症候群、溶連菌感染後急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、Goodpasture症候群、メサンギウム増殖性糸球体腎炎(IgA腎症)、間質性腎炎などの腎炎;急性感染性胃炎、慢性胃炎などの胃炎;膵炎、腸炎、喉頭炎、神経炎などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
被験検体含有試料としては、例えば、固定液によって被験検体を固定することによって得られた固定試料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。固定液としては、例えば、アセトン、メタノール、アセトンとメタノールとの混合溶液、ホルムアルデヒド水溶液、ホルムアルデヒドのリン酸緩衝液溶液、パラホルムアルデヒド水溶液、パラホルムアルデヒドのリン酸緩衝生理食塩水溶液、パラホルムアルデヒドのリン酸緩衝液溶液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。固定試料は、洗浄液で洗浄されていてもよく、洗浄されていなくてもよい。洗浄液としては、例えば、リン酸緩衝生理食塩水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。第1の特異的結合物質がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または抗体断片である場合、固定試料は、免疫関連細胞の一次繊毛の観察項目を的確に観察する観点から、好ましくはブロッキング剤によってブロッキング処理が施された試料である。ブロッキング剤としては、例えば、アルブミンを含有するリン酸緩衝生理食塩水、アルブミンを含有するリン酸緩衝液、アルブミンと界面活性剤とを含有するリン酸緩衝生理食塩水溶液などのブロッキング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
第1の特異的結合物質としては、例えば、免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーに対する特異的結合物質などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。免疫関連細胞の一次繊毛のマーカーとしては、例えば、ADPリボシル化因子様タンパク質(Arl13B)、アセチル化チューブリン、アデニル酸シクラーゼIII、ネフロシスチン3(NPHP3)、鞭毛内輸送タンパク質(IFT88)、ソマトスタチンレセプター3(sstr3)、ポリシスチン-1、一過性受容体電位バニロイド4(TRPV4)、血小板由来成長因子レセプターα(PDGFRα)、スムーズンド(Smo)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
第1の特異的結合物質に複合化させる標識物質としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、2-(3-イミニオ-4,5-ジスルホナト-6-アミノ-3H-キサンテン-9-イル)-5-[[5-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)ペンチル]カルバモイル]安息香酸〔例えば、インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:Alexa Fluor 488など〕、6-(2-カルボキシラト-4-カルボキシフェニル)-1,2,10,11-テトラヒドロ-1,2,2,10,10,11-ヘキサメチル-4,8-ビス(スルフォメチル)-1,11-ジアザ-13-オキソニアペンタセン〔例えば、インビトロジェン社製、商品名:Alexa Fluor 594など〕などの蛍光物質;ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの標識物質のなかでは、免疫関連細胞の一次繊毛を高感度で的確に検出する観点から、蛍光物質が好ましい。
免疫関連細胞の一次繊毛の観察項目を的確に観察する観点から、第1の特異的結合物質の接触後の被験検体含有試料を適切な洗浄液で洗浄することが好ましい。洗浄液としては、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝液、界面活性剤含有リン酸緩衝生理食塩水溶液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
シグナルの検出手段としては、例えば、蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡などの光学顕微鏡;蛍光イメージングアナライザーなどの画像解析装置;蛍光フローサイトメーター、イメージングフローサイトメーターなどのフローサイトメトリー装置をなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の免疫関連疾患の指標の検出方法においては、必要に応じて、免疫関連細胞の種類を同定することができる。免疫細胞の種類を同定する場合、免疫細胞の種類を同定するための同定試薬を用いることができる。免疫細胞の種類の同定試薬としては、例えば、免疫細胞の種類に応じたマーカーに対する抗体、具体的には、抗CD1a抗体、抗CD14抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD56抗体、抗ランゲリン抗体、抗CD205抗体、抗CD11C抗体、抗CD123抗体、抗HLA-DR抗体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。免疫細胞の種類に応じたマーカーとしては、例えば、ランゲリン(CD207)、CD1a、CD205などのランゲルハンス細胞マーカー、CD11c、CD123、HLA-DRなどの単球系樹状細胞マーカーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、免疫機能保有細胞の種類を同定する場合、免疫機能保有細胞の種類を同定するための同定試薬を用いることができる。免疫機能保有細胞の種類の同定試薬としては、例えば、免疫機能保有細胞の種類に応じたマーカーに対する抗体、具体的には、抗ケラチン1抗体、抗ケラチン10抗体、抗インボルクリン抗体、抗α平滑筋アクチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗サイトケラチン抗体、抗E-カドヘリン抗体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。免疫機能保有細胞の種類に応じたマーカーとしては、例えば、ケラチン1、ケラチン10、インボルクリンなどのケラチノサイトマーカー;α平滑筋アクチン抗体、ビメンチンなどの繊維芽細胞マーカー、サイトケラチン、E-カドヘリンなどの上皮細胞マーカーなどが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。
正常検体としては、例えば、健常者または健常非ヒト動物から採取された検体、被験体の非病変部から採取された検体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。被験検体として被験体から採取された血液を用いる場合、これらの正常検体のなかでは、免疫関連疾患の指標を的確に検出する観点から、健常者または健常非ヒト動物から採取された血液が好ましい。被験検体として被験体から採取された皮膚組織を用いる場合、正常検体は、健常者または健常非ヒト動物から採取された皮膚組織であってもよく、被験体の非病変部から採取された皮膚組織であってもよい。被験検体として被験体から採取された毛髪組織を用いる場合、正常検体は、健常者または健常非ヒト動物から採取された毛髪組織であってもよく、被験体の非病変部から採取された毛髪組織であってもよい。
洗浄後の試料を褪色防止用封入剤〔サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)(株)製、商品名:ProLong(登録商標) Gold褪色防止用封入剤、品番:P36934〕に封入し、観察用試料を得た。得られた観察用試料および共焦点顕微鏡〔オリンパス(株)製、品番:FV1200〕を用いて観察用試料に含まれるランゲルハンス細胞マーカー、一次繊毛マーカーおよび細胞核染色剤を検出することによって試料を観察した。
得られた試料を抗チューブリン抗体〔シグマ-アルドリッチ社製、商品名:MONOCLONAL ANTI-ACETYLATED TUBULIN CLONE 6-11B-1、品番:T6793〕および抗ランゲリン抗体〔アブカム社製、商品名:Anti-Langerin[EPR15863]抗体、カタログナンバー:ab192027〕と4℃で16時間反応させた。反応後の試料を洗浄液A〔0.1w/w%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween-20)含有PBS溶液〕で洗浄した。
洗浄後の試料を褪色防止用封入剤〔サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(株)製、商品名:ProLong(登録商標) Gold褪色防止用封入剤、品番:P36934〕に封入し、観察用試料を得た。得られた観察用試料および共焦点顕微鏡〔オリンパス(株)製、品番:FV1200〕を用いて観察用試料に含まれるランゲルハンス細胞マーカー、一次繊毛マーカーおよび細胞核染色剤を検出することによって試料を観察した。