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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022097
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】光学式位置測定機構
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
G01D5/347 110U
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021085855
(22)【出願日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】10 2020 209 276.1
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・シュペックバッハー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・セドルマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ファンク
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ・シュワーベ
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103CA03
2F103CA04
2F103DA12
2F103EA15
2F103EB21
2F103EC07
2F103GA07
2F103GA08
2F103GA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】走査板上に配置された走査格子ができるだけ汚れの影響を受けにくく形成されている、コンパクトな光学式位置測定機構を提供する。
【解決手段】2つの互いに対して相対的に移動可能な物体の位置を検出するための光学式位置測定機構は、両方の物体の一方と結合しているスケールと、もう一方の物体と結合している走査ユニットとを含んでいる。走査ユニットは、支持体124上に配置された走査格子122を備えた走査板120を有しており、走査格子は、走査板のうちスケールに面した側に配置されており、光源から放出された走査光線経路の光線束は、スケールおよび走査格子にそれぞれ1回または複数回ぶつかる。走査板のうちスケールに面した表面は平坦に形成されている。走査格子は、少なくとも、交互に配置された第1および第2の格子材料を含んでおり、第1の格子材料122.1が第2の格子材料122.2に対して異なる屈折率を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの互いに対して相対的に移動可能な物体の位置を検出するための光学式位置測定機構であって、
- 前記両方の物体の一方と結合しているスケールと、
- もう一方の前記物体と結合している走査ユニットとを備えており、前記走査ユニットが、支持体上に配置された少なくとも1つの走査格子を備えた少なくとも1つの走査板を含んでおり、前記走査格子が、前記走査板のうち前記スケールに面した側に配置されており、この場合、光源から放出された走査光線経路の光線束が、前記スケールおよび前記走査格子にそれぞれ1回または複数回ぶつかる光学式位置測定機構において、
- 前記走査板(22;122;222)のうち前記スケール(10)に面した表面が平坦に形成されており、かつ
- 前記走査格子(22.1、22.2、22.3;122;222)が、少なくとも、交互に配置された第1および第2の格子材料(122.1、122.2;222.1、222.2)を含んでおり、これに関しては少なくとも、前記第1の格子材料(122.1;222.1)が前記第2の格子材料(122.2;222.2)に対して異なる屈折率を有しており、かつ前記第2の格子材料(122.2;222.2)に対して異なる硬度を有していることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式位置測定機構であって、
前記走査格子(22.1、22.2、22.3;122;222)の前記交互に配置された格子材料(122.1、122.2;222.1、222.2)の上に、前記格子材料の一方(122.2)から成る連続的な平坦化層(122.3)が、規定の層厚で配置されていることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学式位置測定機構であって、
前記第1および第2の格子材料(122.1、122.2;222.1、222.2)の前記硬度が互いに少なくとも2倍は異なっていることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項4】
請求項3に記載の光学式位置測定機構であって、
前記第1および第2の格子材料(122.1、122.2;222.1、222.2)の前記硬度が互いに少なくとも3倍超は異なっていることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
前記第2の格子材料(122.2;222.2)が、前記第1の格子材料(122.1;222.1)より低い硬度を有していることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
第1の格子材料(122.1;222.1)としてSiC(炭化ケイ素)が、ならびに第2の格子材料(122.2;222.2)としてSiO(酸窒化ケイ素)、式中x=[0.5...2]およびy=[0...0.5]が選択されていることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
前記格子材料(122.1、122.2;222.1、222.2)の前記屈折率の実数部に、
|n1-n2|≧0.5
式中、
n1:=前記第1の格子材料の前記屈折率の実数部
n2:=前記第2の格子材料の前記屈折率の実数部
が当てはまることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
前記支持体(124;224)が以下の材料、すなわち
- Borofloatガラス、
- ケイ酸ナトリウムガラス、
- 石英ガラス、
- Zerodur
の1種から成っていることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項9】
2つの互いに対して相対的に移動可能な物体の位置を検出するための光学式位置測定機構であって、
- 前記両方の物体の一方と結合しているスケールと、
- もう一方の前記物体と結合している走査ユニットとを備えており、前記走査ユニットが、支持体上に配置された少なくとも1つの走査格子を備えた少なくとも1つの走査板を含んでおり、前記走査格子が、前記走査板のうち前記スケールに面した側に配置されており、この場合、光源から放出された走査光線経路の光線束が、前記スケールおよび前記走査格子にそれぞれ1回または複数回ぶつかる光学式位置測定機構において、
- 前記走査板(22;322;422)のうち前記スケールに面した表面が平坦に形成されており、かつ
- 前記走査格子(22.1、22.2、22.3;322;422)が、少なくとも、交互に配置された第1および第2の格子材料(322.1、322.2;422.1、422.2)を含んでおり、これに関しては少なくとも、前記第1の格子材料(322.1;422.1)が前記第2の格子材料(322.2;422.2)に対して異なる屈折率を有しており、かつ
- 前記第1の格子材料(322.1;422.1)による走査格子領域が保護層(325;425)で覆われており、前記保護層(325;425)が、前記第1の格子材料(322.1;422.1)の硬度より少なくとも2倍は大きい硬度を有していることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項10】
請求項9に記載の光学式位置測定機構であって、
前記走査格子(22.1、22.2、22.3;322;422)の前記交互に配置された格子材料(322.1、322.2;422.1、422.2)の上に、前記格子材料の一方(322.2)から成る連続的な平坦化層(322.3)が、規定の層厚で配置されていることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項11】
請求項9または10に記載の光学式位置測定機構であって、
前記保護層(325;425)および前記第1の格子材料(322.1;422.1)の前記硬度が互いに少なくとも3倍超は異なっていることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
前記保護層(325;425)が10nmの最大厚を有していることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
第1の格子材料(322.1;422.1)としてTa(五酸化タンタル)が、ならびに第2の格子材料(322.2;422.2)としてSiO(酸窒化ケイ素)、式中x=[0.5...2]およびy=[0...0.5]が選択されており、かつ前記保護層(325;425)がSiC(炭化ケイ素)から形成されていることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項14】
請求項9から12のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
前記格子材料(322.1、322.2;422.1、422.2)の前記屈折率の実数部に、
|n1-n2|≧0.5
式中、
n1:=前記第1の格子材料の前記屈折率の実数部
n2:=前記第2の格子材料の前記屈折率の実数部
が当てはまることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
前記支持体(324;424)が以下の材料、すなわち
- Borofloatガラス、
- ケイ酸ナトリウムガラス、
- 石英ガラス、
- Zerodur
の1種から成っていることを特徴とする、光学式位置測定機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式位置測定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの互いに対して移動可能な物体の位置を検出(又は、捕捉)するための既知の光学式位置測定機構は、通常、両方の物体の一方と結合しているスケールと、もう一方の物体に配置された走査ユニットとから成る。走査ユニットはしばしば、支持体上に配置された少なくとも1つの走査格子を備えた走査板を含んでいる。光源から放出された光線束は、利用する走査原理に応じた走査光線経路に沿って、スケールおよび少なくとも1つの走査格子にそれぞれ1回または複数回ぶつかる。
【0003】
これに相応する位置測定機構は、例えば工作機械内で、互いに対して移動可能な機械コンポーネントの相対位置を検出するために用いられ得る。その際、とりわけ粗雑な周囲条件下では、走査格子が汚れる危険性がある。これは、例えば油または破片によって起こる可能性があり、この油または破片が、走査格子の桟部-隙間構造内にたまり、それにより走査格子の光学的作用を低下させ、それも、位置測定機構の機能性をも危うくし得るように低下させる。走査格子のこのような汚れを回避するため、走査格子を、その上に配置されたガラス板によって汚れから保護することが知られている。ただしこれには、走査ユニットの設置体積の拡大が伴う。さらなる1つの保護措置は、走査格子を、走査板のうちスケールに面していない側に配置することにある。この場合にも、走査ユニットの設置体積の拡大が結果として生じる。それに加え、スケールに対する間隔が拡がることに基づき、スケールおよび走査ユニットの傾動に対するシステムの脆弱性が比較的高くなる。
【0004】
EP1901041A2からは、使用される走査格子が、走査ユニット内の走査板のうち、使用されるスケールの方に向いた側に、つまり走査板の下面に配置されている光学式位置測定機構が知られている。ただしここでは、汚れに対する走査格子の確実な保護は、さらなる措置なしでは保証されていない。これに加え、そこに配置された走査格子は、走査板の汚れた下面を例えば超音波洗浄法で洗浄する際に、損傷する危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP1901041A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎となる課題は、走査板上に配置された走査格子の1つまたは複数ができるだけ汚れの影響を受けにくく形成されている、コンパクトに作製された光学式位置測定機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明によれば、請求項1の特徴を有する光学式位置測定機構によって解決される。
さらにこの課題は、請求項9の特徴を有する光学式位置測定機構によって解決される。
【0008】
本発明による光学式位置測定機構の有利な実施形態は、従属請求項に記載した措置から明らかである。
2つの互いに対して相対的に移動可能な物体の位置を検出するための本発明による光学式位置測定機構は、第1のバリエーションによれば、両方の物体の一方と結合しているスケールと、もう一方の物体と結合している走査ユニットとを含んでいる。この走査ユニットは、支持体上に配置された少なくとも1つの走査格子を備えた少なくとも1つの走査板を有しており、走査格子は、走査板のうちスケールに面した側に配置されており、この場合、光源から放出された走査光線経路の光線束は、スケールおよび走査格子にそれぞれ1回または複数回ぶつかる。走査板のうちスケールに面した表面は平坦に形成されている。走査格子は、少なくとも、交互に配置された第1および第2の格子材料を含んでおり、これに関しては少なくとも、第1の格子材料が第2の格子材料に対して異なる屈折率を有しており、かつ第2の格子材料に対して異なる硬度を有している。
【0009】
さらに、走査格子の交互に配置された格子材料の上に、格子材料の一方から成る連続的な平坦化層が、規定の層厚で配置され得る。
さらに、第1および第2の格子材料の硬度が互いに少なくとも2倍は異なり得る。
【0010】
これに関し、第1および第2の格子材料の硬度が互いに少なくとも3倍超は異なっていることが好ましいことが企図される。
第2の格子材料が、第1の格子材料より低い硬度を有することが有利である。
【0011】
さらに、第1の格子材料としてSiC(炭化ケイ素)が、ならびに第2の格子材料としてSiO(酸窒化ケイ素)、式中x=[0.5...2]およびy=[0...0.5]が選択され得る。
【0012】
可能な一実施形態では、格子材料の屈折率の実数部に、
|n1-n2|≧0.5
式中、
n1:=第1の格子材料の屈折率の実数部
n2:=第2の格子材料の屈折率の実数部
が当てはまることが企図される。
【0013】
支持体は以下の材料、すなわち
- Borofloatガラス、
- ケイ酸ナトリウムガラス、
- 石英ガラス、
- Zerodur
の1種から成ることが好ましい。
【0014】
2つの互いに対して相対的に移動可能な物体の位置を検出するための本発明による光学式位置測定機構は、第2のバリエーションによれば、両方の物体の一方と結合しているスケールと、もう一方の物体と結合している走査ユニットとを含んでいる。この走査ユニットは、支持体上に配置された少なくとも1つの走査格子を備えた少なくとも1つの走査板を含んでおり、走査格子は、走査板のうちスケールに面した側に配置されており、この場合、光源から放出された走査光線経路の光線束は、スケールおよび走査格子にそれぞれ1回または複数回ぶつかる。走査板のうちスケールに面した表面は平坦に形成されている。走査格子は、少なくとも、交互に配置された第1および第2の格子材料を含んでおり、これに関しては少なくとも、第1の格子材料が第2の格子材料に対して異なる屈折率を有している。第1の格子材料による走査格子領域は保護層で覆われており、保護層は、第1の格子材料の硬度より少なくとも2倍は大きい硬度を有している。
【0015】
これに関し、走査格子の交互に配置された格子材料の上に、格子材料の一方から成る連続的な平坦化層が、規定の層厚で配置されることが企図され得る。
さらに、保護層および第1の格子材料の硬度が互いに少なくとも3倍超は異なり得る。
【0016】
保護層が10nmの最大厚を有することが好ましい。
第1の格子材料としてTa(五酸化タンタル)が、ならびに第2の格子材料としてSiO(酸窒化ケイ素)、式中x=[0.5...2]およびy=[0...0.5]が選択されており、かつ保護層がSiC(炭化ケイ素)から形成され得る。
【0017】
さらに、格子材料の屈折率の実数部に、
|n1-n2|≧0.5
式中、
n1:=第1の格子材料の屈折率の実数部
n2:=第2の格子材料の屈折率の実数部
が当てはまることが企図され得る。
【0018】
支持体は以下の材料、すなわち
- Borofloatガラス、
- ケイ酸ナトリウムガラス、
- 石英ガラス、
- Zerodur
の1種から成ることが好ましい。
【0019】
これで本発明による光学式位置測定機構の少なくとも1つの走査格子は、汚れた場合に容易に洗浄され得る平坦な表面を有している。1つまたは複数の走査格子を走査板のうちスケールに面した側に配置することにより、このシステムは、走査ユニットおよび実量器の起こり得る傾動に対して比較的影響を受けにくい。さらにこのようにして、走査ユニットの、したがって位置測定機構のコンパクトな構造方式が保証され得る。
【0020】
本発明のさらなる詳細および利点を、本発明による光学式位置測定機構の例示的実施形態の、図と関連させた以下の説明に基づいて解説する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による光学式位置測定機構の1つの例示的実施形態を非常に概略的に示す図である。
図2】本発明による光学式位置測定機構の第1のバリエーションからの走査板の断面図である。
図3図2の走査板の一変形形態を示す図である。
図4】本発明による光学式位置測定機構の第2のバリエーションからの走査板の断面図である。
図5図4の走査板の一変形形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
2つの互いに対して相対的に移動可能な物体の位置を検出(捕捉)するために用いられる本発明による光学式位置測定機構の1つの例示的実施形態を、図1に、走査光線経路と関連させて非常に概略的な表現で示している。
【0023】
この光学式位置測定機構は、少なくとも1つの測定方向xに沿って互いに対して移動可能に配置された2つの物体の位置を検出するために用いられる。この例では、直線的に延びている測定方向xに沿った物体の相対移動が規定されており、つまり本発明による光学式位置測定機構が、ここでは長さ測定機器として形成されている。図には示していない互いに対して移動可能な物体は、この場合、例えば2つの互いに対して移動可能な機械コンポーネントであり得る。位置測定機構によって生成された変位依存の走査信号を使って、後置された機械制御部を介し、両方の機械コンポーネントの移動が制御され得る。この場合、両方の物体の一方と位置測定機構のスケール10が結合しており、もう一方の物体と位置測定機構の走査ユニット20が結合している。
【0024】
スケール10は、ここではリニアスケールとして形成されており、測定方向xに沿って延びている測定目盛11を有しており、測定目盛11は適切なスケール支持体12上に配置されている。格子状の測定目盛11は、測定方向xに沿って周期的または非周期的に配置された異なる光学的作用をもつ目盛領域から成っている。
【0025】
本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態は、落射光システムとして形成されている。これは、スケール10上の測定目盛11として、反射性の測定目盛が設けられていることを意味しており、この反射性の測定目盛は、異なる反射特性をもつ様々な目盛領域、つまり例えば低反射性および高反射性の目盛領域を有している。その代わりに、測定目盛11の目盛領域の異なる移相作用が規定されてもよい。
【0026】
走査ユニット20の側では、本発明による光学式位置測定機構内に、光源21と、複数の走査格子22.1~22.3を備えた走査板22と、電気光学式検出構成23とが設けられている。図1から明らかであるように、走査格子22.1~22.3は、走査板22のうちスケール10に面した側に配置されている。この走査板22または走査格子22.1~22.3のうちスケール10に面した側は平坦に形成されており、これが、起こり得る汚れの場合に、例えば拭き取りによるまたは超音波を使った容易な洗浄を可能にする。本発明による位置測定機構の様々なバリエーションに関するこのような走査格子22.1~22.3の可能な実施形態を以下にさらに詳細に説明する。
【0027】
光源21から放出された光線束は、この場合、走査光線経路内で幾つかの走査格子22.1~22.3およびスケール10上の測定目盛11に1回または複数回ぶつかる。その際、図示した例では、中央の走査格子22.1を介し、光源から入射してくる光線束の、2つの部分光線束への分割が行われ、これらの部分光線束がスケール10上の測定目盛11の方向に伝播する。その後、そこから部分光線束は走査ユニット20の方向に後方に反射され、かつ走査格子22.2または22.3を通過する。走査格子22.2または22.3から部分光線束はその後、検出構成23の検出面内へと偏向され、そこで部分光線束は干渉重畳する。検出面内で結果として生じる干渉パターンが、検出構成23を介して変位依存の走査信号に変換され、その後、この走査信号はさらに処理され得る。
【0028】
したがって、使用される走査格子22.1~22.3は、走査格子を通過する光線束または部分光線束に対する異なる光学的機能性を有している。こうして走査光線経路内では、相応の走査格子により、例えばそこに入射してくる光線束の、複数の部分光線束への分割を行うことができ、これは図示した例では中央の走査格子22.1を介して行われている。さらに走査格子を介し、通過する光線束または部分光線束に、光線屈折作用または光線偏向作用の形態での規定の光学的作用を及ぼすことができ、これはここでは例えば外側の両方の走査格子22.2、22.3を介して行われている。それだけでなく、そのほかの光学的走査原理では、1つまたは複数の走査格子によってさらなる光学的機能も担われ得る。
【0029】
本発明による光学式位置測定機構の第1のバリエーションに関する、包埋された(又は、埋め込まれた)走査格子122を備えた適切な走査板120の1つの例示的実施形態を、以下に図2の断面図に基づいてより詳しく解説する。この図では図1とは異なり、これ以降の例でもそうであるように走査板120の平坦な側を上に向けて示しているが、これが何らかの制限を意味するわけではない。重要なのは、それぞれ、走査板120の平坦な側が本発明による位置測定機構内でスケールに面しているということだけである。
【0030】
図2から明らかであるように、走査板120内で走査格子122は、プレート状の支持体124上に配置されている。支持体124は、適切な透明な材料から成っており、これには例えば様々なガラス材料が、例えばBorofloatガラス、ケイ酸ナトリウムガラス、石英ガラス、またはZerodurが考慮される。
【0031】
支持体124上に設けられた走査格子122は、断面が長方形または正方形の走査格子領域をもつ、2種の交互に配置された格子材料122.1、122.2から成っている。その際、異なる格子材料122.1、122.2による走査格子領域の方向xおよびyに沿った広さは、それぞれの走査原理に依存しており、測定方向xに沿った典型的な構造幅は、数百ナノメートル~数マイクロメートルの範囲内にある。支持体124上の第1の格子材料122.1から形成された桟部は、典型的には2μm未満で選択される高さを有している。
【0032】
走査格子122の両方の格子材料122.1、122.2は、ここの本発明による光学式位置測定機構のこのバリエーションでは、第1の格子材料122.1が第2の格子材料122.2に対して異なる屈折率も異なる硬度も有するように選択されている。
【0033】
第1の格子材料122.1としてこの例では炭化ケイ素SiCが機能を果たしており、第2の格子材料として酸窒化ケイ素SiOが用いられている。これに関し、酸素または窒素の化学量論的割合x、yには、x=[0.5...2]およびy=[0...0.5]が当てはまる。
【0034】
さらに、走査格子122の両方の格子材料122.1、122.2の異なる硬度に関しては、両方の格子材料122.1、122.2の硬度が互いに少なくとも2倍は異なっている場合が好適であることが分かっている。両方の格子材料122.1、122.2を上述のように選択する場合、これは保証されている。つまり第1の格子材料、炭化ケイ素SiCは、例えばPECVD法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)で施した場合に約28GPaの硬度を有しており、第2の格子材料、酸窒化ケイ素SiOは、例えばPECVD法で施した場合にそれぞれの窒素含有率に応じて4...10GPaの範囲内の高度を有している。よってこの具体的な実施形態では、第2の格子材料、酸窒化ケイ素SiOは、第1の格子材料、炭化ケイ素SiCより3~4倍も低い硬度を有している。
【0035】
両方の格子材料122.1、122.2の異なる屈折率に関しては、使用される光源の波長での、それぞれの屈折率の実数部n1、n2に対する以下の条件ができるだけ満たされている。
【0036】
|n1-n2|≧0.5
式中、
n1:=第1の格子材料の屈折率の実数部
n2:=第2の格子材料の屈折率の実数部
この例で使用した第2の格子材料、酸窒化ケイ素SiOの場合には、窒素含有率の適切な選択により、屈折率を規定通りに調整でき、これにより上記の条件の順守が保証されている。
【0037】
本発明による光学式位置測定機構の第1のバリエーションの図2に示した走査板120では、さらに、走査格子122の交互に配置された第1および第2の格子材料122.1、122.2の上に、両方の格子材料122.1、122.2の一方から成る連続的な平坦化層122.3が規定の層厚で配置されることが企図されており、典型的な適用例では、平坦化層122.3の厚さは1μm未満で選択される。この形成形態に基づき、このような構造の場合、埋め込まれた走査格子とも言える。具体的には、連続的な平坦化層122.3は、ここでは第2の格子材料、酸窒化ケイ素SiOから成っている。これにより平坦化層122.3が、スケールの方向での、走査板120の露出した終端である。起こり得る汚れの場合、平坦化層122.3は簡単に洗浄でき、場合によっては走査格子122の光学的機能性を低下させ得る汚染物質が走査格子122に残ることはない。
【0038】
桟部-隙間構造をもつ光学的に有効な格子として、本発明による位置測定機構の走査板120内では主に第1の、したがってより硬い格子材料122.1による走査格子領域が機能を果たし、つまり光学的に有効な格子は、ここでは炭化ケイ素SiCから成っている。走査原理および走査光線経路内での必要な機能に応じて、この走査格子領域は、製造の際に、必要な幾何形状に構造化されて支持体124上に施される。続いて第2の、より軟らかい格子材料122.2が、第1の格子材料122.1による走査格子領域の間の充填層として、および所望の層厚でそれを覆う平坦化層122.3として施され、したがって光学的に有効な格子がいわば包埋される。さらなるプロセスステップでは、平坦化層122.3の上面が適切な研磨法で研磨され、これにより走査板120または走査格子122の平坦な表面が提供される。
【0039】
平坦化された走査格子222を備えた本発明による光学式位置測定機構の第1のバリエーションに関する走査板220の、第1の例示的実施形態に対して僅かに改変されたバージョンを、図3にさらなる断面図で示している。以下では、実質的には1つ前の例示的実施形態に対する重要な相違点だけを取り上げることとする。
【0040】
第1および第2の格子材料222.1、222.2は、ここでは1つ前の例と同一に選択されている。ただしそれとは異なり走査板220は、ここでは走査格子222を覆う平坦化層を有していない。ここでは研磨プロセスにおいて、元々は存在していた平坦化層が取り除かれた。このプロセスステップでは、平坦化層の酸窒化ケイ素材料に対して明らかに硬い第1の格子材料222.1(炭化ケイ素)が、走査板220上の平坦化された走査格子222のための研磨停止部として役立ち、この走査格子222は、支持体224上で交互に配置された第1の格子材料222.1(炭化ケイ素)および第2の格子材料222.2(酸窒化ケイ素)による走査格子領域から成っている。したがって、このように形成された走査格子222に関しては、埋め込まれた走査格子222ではなく、平坦化された走査格子222と言うこととする。ここでも、走査格子222の平坦な表面に基づき、汚れの場合の特に簡単な洗浄が可能である。
【0041】
図4は、本発明による光学式位置測定機構の第2のバリエーションの走査板320の断面図を示しており、これは新たに、埋め込まれた走査格子322を備えた例である。この図でもまた図1とは異なり、走査板320の平坦な側を上に向けて示しているが、これが何らかの制限を意味するわけではない。重要なのは、それぞれ、走査板320の平坦な側が本発明による位置測定機構内でスケールに面しているということだけである。
【0042】
図4から明らかであるように、走査板320内で走査格子322は、プレート状の支持体324上に配置されており、支持体324は、適切な透明な材料から形成されており、これには例えば様々なガラス材料が、例えばBorofloatガラス、ケイ酸ナトリウムガラス、石英ガラス、またはZerodurが考慮される。
【0043】
支持体324上に設けられた走査格子322は、断面が長方形または正方形の走査格子領域をもつ、2種の交互に配置された格子材料322.1、322.2から成っている。異なる格子材料322.1、322.2による走査格子領域の方向xおよびyに沿った広さは、それぞれの走査原理に依存しており、測定方向xに沿った典型的な構造幅は、数百ナノメートル~数マイクロメートルの範囲内にある。支持体324上の第1の格子材料322.1から形成された桟部は、典型的には2μm未満で選択される高さを有している。
【0044】
走査格子322の両方の格子材料322.1、322.2は、ここでは、第1の格子材料322.1が第2の格子材料322.2に対して異なる屈折率を有するように選択されている。
【0045】
第1の格子材料322.1による走査格子領域が、ここではさらに保護層325で覆われている。保護層325の材料は、その下にある第1の格子材料322.1の硬度より少なくとも2倍は大きい硬度を有するように選択されることが好ましい。保護層325の厚さは10nm未満で選択されることが好ましく、有利な実施形態では3~6nmである。
【0046】
第1の格子材料322.1による走査格子領域上での硬い保護層325の配置は、ここでは第1の格子材料322.1の選択に起因している。つまりここでは第1の格子材料として五酸化タンタルTaが規定されており、五酸化タンタルは、スパッタリングで施した場合に約7GPaの硬度を有しており、したがってここで選択された第2の格子材料、酸窒化ケイ素SiOと同等の硬さであり、この酸窒化ケイ素の酸素または窒素の化学量論的割合x、yには、x=[0.5...2]およびy=[0...0.5]が当てはまる。この材料は、PECVD法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)で施した場合にそれぞれの窒素含有率に応じて4...10GPaの範囲内の硬度を有している。
【0047】
保護層325のための材料として、ここでは炭化ケイ素SiCが規定されており、炭化ケイ素はPECVD法で施した場合に約28GPaの硬度を有しており、したがって第1の格子材料Taの硬度を3~4倍も上回っている。
【0048】
両方の格子材料322.1、322.2の異なる屈折率に関しては、使用される光源の波長での、それぞれの屈折率の実数部n1、n2に対する以下の条件が満たされていることが好ましい。
【0049】
|n1-n2|≧0.5
式中、
n1:=第1の格子材料の屈折率の実数部
n2:=第2の格子材料の屈折率の実数部
この例で使用した第2の格子材料、酸窒化ケイ素SiOの場合には、窒素含有率の適切な選択により、屈折率を規定通りに調整でき、これにより上記の条件の順守が保証されている。
【0050】
本発明による光学式位置測定機構の第2のバリエーションの図4に示した走査板320では、さらに、走査格子322の交互に配置された第1および第2の格子材料322.1、322.2の上に、両方の格子材料322.1、322.2の一方から成る連続的な平坦化層322.3が規定の層厚で配置されることが企図されており、典型的な適用例では、平坦化層322.3の厚さは1μm未満で選択される。この形成形態に基づき、この構造もまた、埋め込まれた走査格子と呼べる。具体的には、連続的な平坦化層322.3は、ここでは第2の格子材料、酸窒化ケイ素SiOから成っている。これにより平坦化層322.3が、スケールの方向での、走査板320の露出した終端である。起こり得る汚れの場合、平坦化層322.3は簡単に洗浄でき、場合によっては走査格子322の光学的機能性を低下させ得る汚染物質が走査格子322に残ることはない。
【0051】
桟部-隙間構造をもつ光学的に有効な格子として、本発明による位置測定機構の第2のバリエーションの走査板320内では主に第1の格子材料322.1による走査格子領域が機能を果たし、つまり光学的に有効な格子は、ここでは五酸化タンタルTaから成っている。走査原理および走査光線経路内での必要な機能に応じて、この走査格子領域は、製造の際に、保護層325も含めて必要な幾何形状に構造化されて支持体324上に施される。続いて第2の格子材料322.2が、第1の格子材料322.1および保護層325による走査格子領域の間の充填層として、およびそれを覆う平坦化層322.3として施され、したがって光学的に有効な格子が埋め込まれる。さらなるプロセスステップでは、平坦化層322.3の上面が適切な研磨法で研磨され、これにより走査板320または走査格子322の平坦な表面が提供される。
【0052】
平坦化された走査格子422を備えた本発明による光学式位置測定機構の第2のバリエーションに関する走査板420の、1つ前の例示的実施形態に対して僅かに変形されたバージョンを、図5にさらなる断面図で示している。以下では、実質的には1つ前の例示的実施形態に対する重要な相違点だけを取り上げることとする。
【0053】
第1および第2の格子材料422.1、422.2ならびに保護層425の材料は、ここでは1つ前の例と同一に選択されており、つまり第1の格子材料として五酸化タンタルTaが、および第2の格子材料として酸窒化ケイ素SiOが規定されており、保護層425は炭化ケイ素SiCから成っている。ただし1つ前の例とは異なり走査板420は、ここでは走査格子422を覆う平坦化層を有していない。ここでは研磨プロセスにおいて、元々は存在していた平坦化層が取り除かれた。このプロセスステップでは、平坦化層の酸窒化ケイ素材料に対して明らかに硬い保護層425の材料(炭化ケイ素)が、走査板420上の平坦化された走査格子422のための研磨停止部として役立ち、この走査格子422は、支持体424上で交互に配置された第1の格子材料422.1(五酸化タンタル)およびその上に配置された保護層425と、第2の格子材料422.2(酸窒化ケイ素)とによる走査格子領域から成っている。したがって、このように形成された走査格子422に関してはここでも、埋め込まれた走査格子422ではなく、平坦化された走査格子422と言う。この例でも、平坦な表面に基づき、汚れの場合の走査格子422の特に簡単な洗浄が可能である。
【0054】
本発明による光学式位置測定機構の解説した例示的実施形態およびバリエーションのほかに、もちろん本発明の枠内でさらなる形態可能性が存在している。
つまり、異なる走査光線経路をもつ本発明による光学式位置測定機構を形成すること、およびその場合にそれに適切な走査板または走査格子を設けることがもちろん可能であり、これには、上で解説した例の代わりにもちろん透過光型走査も属している。このような代替的な走査光線経路に関しては例えばEP1901041A2を参照されたい。
【0055】
さらに、本発明による光学式位置測定機構を使って、回転軸の周りを互いに対して相対的に回転可能な2つの物体の回転性の相対移動を検出することを企図できる。この場合には、相応の測定目盛が、円環状に配置された放射状目盛として形成される、等々。
【符号の説明】
【0056】
10 スケール
22;122;222;322;422 走査板
22.1、22.2、22.3;122;222;322;422 走査格子
122.1、122.2;222.1、222.2;322.1、322.2;422.1、422.2 格子材料
122.3;322.3 平坦化層
124;224;324;424 支持体
325;425 保護層
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】