(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022151
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】偏光板及びこれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220127BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220127BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220127BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 313
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119118
(22)【出願日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0091948
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ボン チョン
(72)【発明者】
【氏名】コ, ジュン モ
(72)【発明者】
【氏名】シン, ドン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ジュン フン
(72)【発明者】
【氏名】イ, サン フム
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB23
2H149BA02
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2H149DA03
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2H149FA02Y
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2H149FD01
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2H149FD06
4F100AJ04C
4F100AJ04E
4F100AK02C
4F100AK21A
4F100AR00A
4F100AR00B
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4F100GB41
4F100JN01A
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4F100YY00B
4F100YY00C
5G435AA02
5G435FF05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】正面と側面の両方において反射率が低い偏光板を提供する。
【解決手段】偏光子110と、偏光子の下部面に順次積層された第1位相差層120及び第2位相差層130とを含み、第1位相差層は、波長約550nmでの面内位相差(Re)が約180nm以上220nm以下で、第2位相差層は、波長約550nmでの面内位相差が約80nm以上100nm以下であり、入射角約60゜で楕円率が少なくとも約65%以上である偏光板。。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と、前記偏光子の下部面に順次積層された第1位相差層及び第2位相差層と、を含み、
前記第1位相差層は、波長約550nmでの面内位相差が約180nm以上220nm以下で、
前記第2位相差層は、波長約550nmでの面内位相差が約80nm以上100nm以下である、偏光板。
【請求項2】
前記第1位相差層は、波長約550nmで1/3位相差層で、前記第2位相差層は、波長約550nmで1/6位相差層である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記偏光子の透過軸を基準にして前記第1位相差層の遅相軸がなす角度は、約+55゜以上+80゜以下又は約-80゜以上-55゜以下である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項4】
前記偏光子の透過軸を基準にして前記第2位相差層の遅相軸がなす角度は、約0゜以上+10゜以下又は約-10゜以上~0゜以下である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項5】
前記第1位相差層及び前記第2位相差層は、下記の式1の(1)~(8)のうちいずれか一つを満たす、請求項1に記載の偏光板。
[式1]
(1)0゜<θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]×2+45+α、4゜≦α≦6゜
(2)-90゜<θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]×2-45+α、4゜≦α≦6゜
(3)-90゜<θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
(4)0゜<θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
(前記(1)、(2)、(3)、(4)において、
θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第1位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第1位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の進相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第2位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の遅相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第2位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)である。)
(5)0゜<θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]×2+45+α、4゜≦α≦6゜
(6)-90゜<θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]×2-45+α、4゜≦α≦6゜
(7)-90゜<θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
(8)0゜<θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
(前記(5)、(6)、(7)、(8)において、
θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第1位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第1位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の進相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第2位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第2位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)である。)
【請求項6】
前記第1位相差層の遅相軸と前記第2位相差層の遅相軸とがなす角度は、約55゜以上80゜以下である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項7】
前記第1位相差層は、正分散性又はフラット分散性であって、前記第2位相差層は正分散性である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項8】
前記第1位相差層と前記第2位相差層の積層体は、波長約550nmでの面内位相差が約140nm以上190nm以下である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項9】
前記第1位相差層は、波長約550nmでの厚さ方向位相差が約100nm以上150nm以下である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項10】
前記第1位相差層は、波長約550nmでの二軸性の程度が約1.1以上1.2以下である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項11】
前記第2位相差層は、波長約550nmでの厚さ方向位相差が約-100nm以上-50nm以下である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項12】
前記第2位相差層は、波長約550nmでの二軸性の程度が約-0.5以上-0.2以下である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項13】
前記第1位相差層は、正の複屈折性を有する樹脂からなるフィルムを含む、請求項1に記載の偏光板。
【請求項14】
前記第2位相差層は、セルロースエステル系ポリマー及び芳香族系ポリマーのうち1種以上からなる延伸コーティング層を含む、請求項1に記載の偏光板。
【請求項15】
前記偏光板は、波長約550nmでの厚さ方向位相差が約-300nm以上0nm以下であるポジティブCプレートを含む第3位相差層をさらに含む、請求項1に記載の偏光板。
【請求項16】
前記第3位相差層は、波長約550nmでの厚さ方向位相差が約-80nm以上-20nm以下である、請求項15に記載の偏光板。
【請求項17】
前記第3位相差層は、前記偏光子と前記第1位相差層との間に配置される、請求項15に記載の偏光板。
【請求項18】
前記偏光子の上部面に保護層がさらに形成される、請求項1に記載の偏光板。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項の偏光板を含む光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及びこれを含む光学表示装置に関する。より詳細には、本発明は、正面と側面の両方において反射率が低く、入射角約60゜で楕円率が少なくとも約65%以上であり、薄型化効果を得ることができる偏光板及びこれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子表示装置は、外部光の反射によって視認性及びコントラストが低下し得る。これを解消するために、偏光子及び位相差フィルムを含む偏光板を使用することによって、反射された外部光が外部に漏れることを防止する反射防止機能を実現することができる。
【0003】
位相差フィルムは、1/4位相差層単独で構成されてもよく、又は1/2位相差層と1/4位相差層の2層の位相差層で構成されてもよい。しかし、1/4位相差層単独、又は1/2位相差層と1/4位相差層の積層体を含む偏光板は、入射角約60゜で楕円率約65%以上に到逹するのに限界があった。また、近年、偏光板を薄型化させる傾向があることにより、偏光子のみならず、位相差層の厚さを薄型化する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2013-0103595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、正面と側面の両方において反射率が低い偏光板を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、入射角約60゜で楕円率が少なくとも約65%以上である偏光板を提供することにある。
【0007】
本発明の更に他の目的は、位相差層の薄型化効果に優れた偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は偏光板に関する。
【0009】
発明1.偏光板は、偏光子と、該偏光子の下部面に順次積層された第1位相差層及び第2位相差層とを含み、前記第1位相差層は、波長約550nmで面内位相差が約180nm~220nmであり、前記第2位相差層は、波長約550nmで面内位相差が約80nm~100nmである。
【0010】
発明2.1において、前記第1位相差層は、波長約550nmで1/3位相差層であって、前記第2位相差層は、波長約550nmで1/6位相差層であってもよい。
【0011】
発明3.発明1~2において、前記偏光子の透過軸を基準にして前記第1位相差層の遅相軸がなす角度は、約+55゜~+80゜又は約-80゜~-55゜であってもよい。
【0012】
発明4.発明1~3において、前記偏光子の透過軸を基準にして前記第2位相差層の遅相軸がなす角度は、約0゜~+10゜又は約-10゜~0゜であってもよい。
【0013】
発明5.発明1~4において、前記第1位相差層及び前記第2位相差層は、下記の式1の(1)~(8)のうちいずれか一つを満たすことができる。
【0014】
[式1]
(1)0゜<θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]×2+45+α、4゜≦α≦6゜
(2)-90゜<θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]×2-45+α、4゜≦α≦6゜
(3)-90゜<θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
(4)0゜<θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
(前記(1)、(2)、(3)、(4)において、
θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第1位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第1位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の進相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第2位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の遅相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第2位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)である。)
(5)0゜<θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]×2+45+α、4゜≦α≦6゜
(6)-90゜<θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]×2-45+α、4゜≦α≦6゜
(7)-90゜<θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
(8)0゜<θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
(前記(5)、(6)、(7)、(8)において、
θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第1位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第1位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の進相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第2位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第2位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)である。)
【0015】
発明6.発明1~5において、前記第1位相差層の遅相軸と前記第2位相差層の遅相軸とがなす角度は、約55゜~80゜であってもよい。
【0016】
発明7.発明1~6において、前記第1位相差層は、正分散性又はフラット分散性であって、前記第2位相差層は正分散性であってもよい。
【0017】
発明8.発明1~7において、前記第1位相差層と前記第2位相差層の積層体は、波長約550nmで面内位相差が約140nm~190nmであってもよい。
【0018】
発明9.発明1~8において、前記第1位相差層は、波長約550nmで厚さ方向位相差(Rth)が約100nm~150nmであってもよい。
【0019】
発明10.発明1~9において、前記第1位相差層は、波長約550nmで二軸性の程度(NZ)が約1.1~1.2であってもよい。
【0020】
発明11.発明1~10において、前記第2位相差層は、波長約550nmで厚さ方向位相差(Rth)が約-100nm~-50nmであってもよい。
【0021】
発明12.発明1~11において、前記第2位相差層は、波長約550nmで二軸性の程度(NZ)が約-0.5~-0.2であってもよい。
【0022】
発明13.発明1~12において、前記第1位相差層は、正(+)の複屈折性を有する樹脂からなるフィルムを含んでもよい。
【0023】
発明14.発明1~13において、前記第2位相差層は、セルロースエステル系及び芳香族系のうち1種以上の延伸コーティング層を含んでもよい。
【0024】
発明15.発明1~14において、前記偏光板は、波長約550nmで厚さ方向位相差が約-300nm~0nmであるポジティブCプレートを含む第3位相差層をさらに含んでもよい。
【0025】
発明16.発明15において、前記第3位相差層は、波長約550nmで厚さ方向位相差が約-80nm~-20nmであってもよい。
【0026】
発明17.発明15において、前記第3位相差層は、前記偏光子と前記第1位相差層との間に配置されてもよい。
【0027】
発明18.発明1~16において、前記偏光子の上部面に保護層がさらに形成されてもよい。
【0028】
本発明の一態様は光学表示装置に関する。
【0029】
該光学表示装置は、本発明の偏光板を含む。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施形態によると、正面と側面の全てにおいて反射率が低い偏光板を提供することができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、入射角約60゜で楕円率が少なくとも約65%以上である偏光板を提供することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によると、位相差層の薄型化効果に優れた偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係る偏光板の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る偏光板のうち偏光子の透過軸、第1位相差層の遅相軸、及び第2位相差層の遅相軸の配置関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付の図面を参照して、本発明を実施形態に基づいて本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な相違する形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0035】
図面において、本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、明細書全体にわたって同一又は類似する構成要素に対しては同一の参照番号を使用した。図面において、各構成要素の長さ及び大きさは、本発明を説明するためのものであって、本発明が図面に記載の各構成要素の長さ及び大きさに限定されない。
【0036】
本明細書において、「上部」と「下部」は、図面における垂直方向を基準にして定義したものであって、見る位置に応じて「上部」が「下部」に、「下部」が「上部」に変更されてもよい。
【0037】
本明細書において、「面内位相差(Re)」は下記の式Aで表され、「厚さ方向位相差(Rth)」は下記の式Bで表され、「二軸性の程度(NZ)」は下記の式Cで表され得る。
[式A]
Re=(nx-ny)×d
[式B]
Rth=((nx+ny)/2-nz)×d
[式C]
NZ=(nx-nz)/(nx-ny)
(式A~式Cにおいて、nx、ny、nzは、それぞれ測定波長における光学素子の遅相軸(slow axis)方向、進相軸(fast axis)方向、厚さ方向の屈折率であり、dは、光学素子の厚さ(単位:nm)である。)
【0038】
式A~式Cにおいて、測定波長は、約450nm、約550nm又は約650nmであってもよい。
【0039】
本明細書において、「短波長分散性」はRe(450)/Re(550)で、「長波長分散性」はRe(650)/Re(550)である。Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、それぞれ位相差層単独又は位相差層積層体の波長約450nm、約550nm及び約650nmでの面内位相差(Re)を意味する。
【0040】
本明細書において、角度を表す場合、基準(例:偏光子の透過軸)を0゜にしたとき、「+」は基準を中心とした反時計回りの方向を意味し、「-」は基準を中心とした時計回りの方向を意味する。
【0041】
本明細書において、数値範囲を示すとき、「X~Y」は、X以上Y以下(X≦、そして、≦Y)を意味する。
【0042】
本発明の偏光板は、第1位相差層と第2位相差層の全体の厚さを減少させ、偏光板の薄型化効果を得ると同時に、正面と側面の全てにおいて反射率が低く、入射角約60゜で楕円率が少なくとも約65%以上になるようにし、その結果、光学表示装置に適用したとき、画面品質を著しく改善することができる。
【0043】
一実施形態において、偏光板は、光学表示装置に適用したとき、正面でのSCE(Specular Component Excluded)反射率が約1.5%以下、好ましくは約0%以上1.4%以下であって、入射角約60゜でSCE反射率が約3%以下、好ましくは約0%以上2.8%以下であってもよい。該範囲では、画面品質を改善することができる。
【0044】
一実施形態において、偏光板は、光学表示装置に適用したとき、入射角約60゜で楕円率の最小値が約65%以上、例えば、約65%~80%、約75%~80%であってもよい。該範囲では、画面品質を改善(入射角約60゜及び方位角約0゜~360゜で色変化を最小化)することができる。
【0045】
以下では、本発明の一実施形態に係る偏光板について
図1を参照しながら説明する。
【0046】
図1を参照すると、偏光板は、偏光子110と、偏光子110の上部面に積層された保護フィルム140と、偏光子110の下部面に設けられ、偏光子110から順次積層された第1位相差層120及び第2位相差層130とを含む。保護フィルム140は、保護コーティング層などを含む保護層の一例に該当する。
【0047】
偏光板においては、偏光子110の下部面に第1位相差層120及び第2位相差層130が順次積層されている。これによって、本発明の正面及び入射角約60゜で反射率の低下効果及び約65%以上の楕円率を達成することができる。一方、偏光子110の下部面に偏光子110から第2位相差層130及び第1位相差層120が順次積層された場合、すなわち第1位相差層120と第2位相差層130の積層順が入れ替わった場合、偏光板は本発明の効果を得ることができない。
【0048】
第2位相差層130は、第1位相差層120上に直接形成されてもよい。「直接形成」されるとは、第1位相差層と第2位相差層との間に任意の他の粘着層及び接着層が介在しないことを意味する。しかし、第2位相差層130が転写方式で形成された後、減圧粘着剤(PSA、pressure sensitive adhesive)などによって第1位相差層120に積層される場合も本発明の範囲に含まれ得る。
【0049】
また、本発明の第1位相差層120及び第2位相差層130のそれぞれの効果、又は第1位相差層120と第2位相差層130の組み合わせによって実現される効果に影響を与えない限り、第1位相差層120と第2位相差層130との間に任意の他の光学層がさらに積層されてもよい。
【0050】
[第1位相差層]
第1位相差層120は、波長約550nmで面内位相差が約180nm~220nm(例えば、180nm、190nm、200nm、210nm、又は220nm)である。これにより、下記で詳述する波長約550nmで約80nm~100nm(例えば、80nm、90nm、又は100nm)の面内位相差を有する第2位相差層と組み合わせるとき、側面及び正面で反射率を著しく低下させると同時に、側面、特に、入射角約60゜で楕円率を少なくとも約65%以上にすることができる。好ましくは、第1位相差層120は、波長約550nmで面内位相差が約200nm~210nmであってもよい。一実施形態において、第1位相差層120は、波長約550nmで1/3位相差層であってもよい。
【0051】
一実施形態において、第1位相差層120は、正分散性又はフラット分散性(短波長分散性:1、長波長分散性:1)であって、短波長分散性が約1~1.1で、長波長分散性が約0.96~1であってもよい。該範囲では、偏光板を使用したとき、正面と側面で反射率を低下させることができ、楕円率を高めることができる。好ましくは、第1位相差層120は、短波長分散性が約1~1.06であって、長波長分散性が約0.98~1、約0.99~1、または約0.995~1であってもよい。
【0052】
第1位相差層120は、波長約550nmで厚さ方向位相差(Rth)が約100nm~150nm(例えば、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm及び150nm)、好ましくは、約105nm~140nmであってもよい。該範囲では、側面反射率の改善効果を達成することができる。
【0053】
第1位相差層120は、波長約550nmで二軸性の程度が約1.1~1.2(例えば、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19又は1.2)、好ましくは、約1.1~1.15であってもよい。該範囲では、側面反射率の改善効果を達成することができる。
【0054】
第1位相差層120は、非液晶層であって、光学的に透明な樹脂で形成されたフィルムを含むことができる。「非液晶層」は、液晶モノマー、液晶オリゴマー及び液晶ポリマーのうち1種以上で形成されないか、光の照射などによって液晶モノマー、液晶オリゴマー又は液晶ポリマーに変換されない物質で形成される層を意味することができる。
【0055】
例えば、第1位相差層120は、トリアセチルセルロースなどを含むセルロース系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル系、環状ポリオレフィン(COP)系、ポリカーボネート系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリアリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、及びアクリル系のうち一つ以上の樹脂からなるフィルムであってもよい。好ましくは、第1位相差層120は、短波長分散性及び長波長分散性を確保するために、環状ポリオレフィン系フィルムを含むことができる。環状ポリオレフィン系フィルムは、本発明の偏光板において、正面反射率の改善に寄与し得る。
【0056】
一実施形態において、第1位相差層120は、正(+)の複屈折性を有する樹脂からなるフィルムを含むことができる。
【0057】
第1位相差層120は、厚さが約0μm超過60μm以下であり、具体的には約10μm~60μm、さらに具体的には約20μm~50μmであってもよい。該範囲では、第1位相差層120が偏光板に使用され得る。
【0058】
第1位相差層120は、光学的に透明な樹脂で形成された未延伸状態のフィルムを延伸することにより製造可能である。その後、第1位相差層120は、ロール・ツー・ロール(roll to roll)で偏光子110に積層されることによって偏光板の製造工程性を改善することができる。
【0059】
一実施形態において、第1位相差層120は、未延伸状態のフィルムの縦方向(machine direction)に対して所定の角度だけ傾いた方向に斜め延伸されたフィルムであって、第1位相差層120の縦方向(MD方向、machine direction)に対して傾斜した遅相軸を確保することができる。斜め延伸は、当業者に知られている通常の方法によって行われ得る。
【0060】
第1位相差層120が斜め延伸されたフィルムである場合において、第1位相差層120の遅相軸が、偏光子110の透過軸に対して所定範囲の角度を有することによって正面と側面の両方において反射率を低下させ、側面で楕円率を高めることができる。偏光子110の透過軸は、偏光子110の横方向(TD方向、transverse direction)である。
【0061】
図2を参照すると、偏光子110の透過軸110aを基準にして第1位相差層120の遅相軸120aがなす角度(α1)は、約+55゜~+80゜(例えば、+55゜、+60゜、+65゜、+70゜、+75゜又は+80゜)又は約-80゜~-55゜(例えば、-80゜、-75゜、-70゜、-65゜、-60゜、又は-55゜)であってもよい。第1位相差層120の遅相軸120aが透過軸110aに対して該範囲で傾くことによって、第2位相差層130の遅相軸に対して所定角度をなし、その結果、正面と側面の両方において反射率を低下させ、入射角約60゜で少なくとも約65%以上の楕円率を達成することができる。好ましくは、角度(α1)は、約+62゜~+75゜又は約-75゜~-62゜、さらに好ましくは、約+64゜~+70゜又は約-70゜~-64゜であってもよい。
【0062】
図1には示していないが、第1位相差層120は、第1接着層によって偏光子110に接着されてもよい。第1接着層は、例えば、水系接着剤及び光硬化型接着剤のうち1種以上で形成されてもよい。好ましくは、第1接着層は、光硬化型接着剤で形成されること。同様の接着層が保護フィルム140と偏光子110との間に介在されてもよい。これにより、保護フィルム140と偏光子110との間の接着、偏光子110と第1位相差層120との間の接着を1回の光照射によって達成することができ、偏光板の製造工程性を改善することができる。第1接着層は、厚さが約0.1μm~10μm、具体的には約0.5μm~5μmであってもよい。該範囲では、第1接着層が偏光板に使用され得る。
【0063】
[第2位相差層]
第2位相差層130は、波長約550nmで面内位相差が約80nm~100nmである。これにより、第1位相差層120と組み合わせるとき、側面及び正面で反射率を著しく低下させると同時に、入射角約60゜で楕円率を少なくとも約65%以上にすることができる。好ましくは、第2位相差層130は、波長約550nmで面内位相差が約90nm~95nmであってもよい。一実施形態において、第2位相差層130は、波長約550nmで1/6位相差層であってもよい。
【0064】
第2位相差層130は、正分散性であって、短波長分散性が約1~1.1で、長波長分散性が約0.96~1であってもよい。好ましくは、第2位相差層130は、短波長分散性が約1~1.06で、長波長分散性が約0.97~1であってもよい。
【0065】
第2位相差層130は、波長約550nmで厚さ方向位相差が約-100nm~-50nm(例えば、-100nm、-90nm、-80nm、-70nm、-60nm、又は-50nm)、好ましくは、約-100nm超過-50nm以下、約-70nm~-50nm、約-70nm~-60nmであってもよい。該範囲では、側面に対する楕円率が高くなり、側面反射率に対する効果を達成できる。
【0066】
第2位相差層130は、波長約550nmで二軸性の程度が約-0.5~-0.2(例えば、-0.5、-0.4、-0.3又は-0.2)、好ましくは、約-0.4~-0.2、さらに好ましくは約-0.3~-0.2であってもよい。該範囲では、側面に対する楕円率が改善され、側面反射率が低下するという効果を得ることができる。
【0067】
第2位相差層130は、屈折率が約1.4~1.6、好ましくは約1.5~1.6であってもよい。該範囲では、第1位相差層120に対する屈折率が制御され、透明性が高くなるという効果を実現できる。
【0068】
第2位相差層130は、下記で詳述する第2位相差層用組成物で形成され、このとき、コーティング方向及び/又はコーティング方法などを制御することによって、第2位相差層130の遅相軸が偏光子110の透過軸に対して所定範囲の角度をなし、その結果、正面と側面の両方において反射率を低下させ、側面で楕円率を高めることができる。
【0069】
本発明の偏光板において、第1位相差層120及び第2位相差層130は、下記の式1の(1)~(8)のうちいずれか一つを満たす。
【0070】
[式1]
(1)0゜<θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]×2+45+α、4゜≦α≦6゜
(2)-90゜<θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]×2-45+α、4゜≦α≦6゜
(3)-90゜<θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
(4)0゜<θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-吸収軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
((1)、(2)、(3)、(4)において、
θ[第1位相差層の進相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第1位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第1位相差層の遅相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第1位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の進相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第2位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の遅相軸-吸収軸]は、偏光子の吸収軸を基準にして第2位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)である。)
(5)0゜<θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]×2+45+α、4゜≦α≦6゜
(6)-90゜<θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]×2-45+α、4゜≦α≦6゜
(7)-90゜<θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]<0゜であるとき、
θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
(8)0゜<θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]<90゜であるとき、
θ[第2位相差層の進相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]×2-45-α、4゜≦α≦6゜
((5)、(6)、(7)、(8)において、
θ[第1位相差層の進相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第1位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第1位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の進相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第2位相差層の進相軸がなす角度(単位:゜)であり、
θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]は、偏光子の透過軸を基準にして第2位相差層の遅相軸がなす角度(単位:゜)である。)
【0071】
式1において、(1)~(8)の角度を計算するとき、計算値が180゜以上の場合は計算値から180゜を差し引いて計算される。例えば、(5)において、θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]が68゜であるとき、αが6゜の場合は187゜になり、θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]は7゜になる。すなわち、θ[第2位相差層の遅相軸-透過軸]=θ[第1位相差層の遅相軸-透過軸]×2+45+α-180゜として計算され得る。
【0072】
式1の関係を満たすことによって、正面と側面の両方において反射率が低く、側面、特に、側面入射角約60゜で楕円率が少なくとも約65%以上にすることができる。その結果、偏光板を光学表示装置に適用したとき、画面品質を著しく改善することができる。
【0073】
図2を参照すると、偏光子110の透過軸110aを基準にして第2位相差層130の遅相軸130aがなす角度(α2)は、約0゜~+10゜又は約-10゜~0゜であってもよい。第2位相差層130の遅相軸130aが透過軸110aに対して該範囲で傾くことによって、正面と側面の両方において反射率を低下させることができる。好ましくは、角度(α2)は、約+6゜~+8゜又は約-8゜~-6゜であってもよい。
【0074】
一実施形態において、第1位相差層120の遅相軸120aと第2位相差層130の遅相軸130aとがなす角度は、約55゜~80゜(例えば、55゜、60゜、65゜、70゜、75゜又は80゜)、好ましくは約60゜~75゜、さらに好ましくは約60゜~65゜であってもよい。該範囲では、傾斜面の反射率を低下できるという効果を実現できる。
【0075】
第2位相差層130は、厚さが約0μm超過20μm以下、好ましくは約1μm~20μm、さらに好ましくは約2μm~10μm、最も好ましくは約2μm~8μmであってもよい。該範囲では、第2位相差層130のフィルム全幅に対して均一な厚さ方向位相差をうまく発現することができ、偏光板の薄膜化効果を得ることができる。
【0076】
以下では、第2位相差層用組成物を説明する。
【0077】
第2位相差層130は非液晶層であってもよい。第2位相差層130を液晶とする場合、液晶を一定角度で配向するために必要な配向膜が偏光板に必須の要素として含まれなければならなく、これによって異物が発生し得る。そこで、本発明の偏光板は配向膜を含まなくてもよい。
【0078】
一実施形態において、第2位相差層用組成物は、非液晶性であって、セルロースエステル系重合体及び芳香族系化合物のうち1種以上を含むコーティング層、好ましくは延伸コーティング層を含むことができる。セルロースエステル系重合体及び芳香族系化合物のうち1種以上は、負(-)の複屈折を実現することができる。
【0079】
以下では、セルロースエステル系重合体を説明する。
【0080】
本明細書において、「重合体」は、オリゴマー、ポリマー、又は樹脂を含む意味で使用される。
【0081】
セルロースエステル系重合体は、下記の化学式1で表されるように、セルロースをなす糖単量体の水酸基(C2位の水酸基、C3位の水酸基又はC6位の水酸基)のうち少なくとも一部が置換されたアシルユニットが重合された重合体を含むことができる。
【0082】
【化1】
・・・(化学式1)
(化学式1において、nは、1以上の整数)
【0083】
セルロースエステル系重合体又はアシルユニットのための置換基は、それぞれハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基(例:炭素数1~20のアルキル基)、アルケニル基(例:炭素数2~20のアルケニル基)、シクロアルキル基(例:環形成炭素数3~10のシクロアルキル基)、アリール基(例:環形成炭素数6~20のアリール基)、ヘテロアリール基(例:環形成炭素数3~炭素数10のアリール基)、アルコキシ基(例:炭素数1~20のアルコキシ基)、アシル基、及びハロゲン含有官能基のうち1種以上を含むことができる。置換基は、同一であってもよく、異なってもよい。
【0084】
「アシルユニット」は、当業者に知られているように、R-C(=O)-*(*は結合位置を示す符号、Rは、炭素数1~20のアルキル基、環形成炭素数3~20のシクロアルキル基、環形成炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアリールアルキル基)であってもよい。「アシルユニット」は、セルロースにおいてエステル結合を通じて(酸素原子を通じて)セルロースの環に結合される。
【0085】
「アルキル基」、「アルケニル基」、「シクロアルキル基」、「アリール基」、「ヘテロアリール基」、「アルコキシ基」、及び「アシル基」は、それぞれ便宜上、ハロゲン原子を含まない非ハロゲン系の基である。第2位相差層用組成物は、セルロースエステル系重合体単独であってもよく、又はセルロースエステル系重合体が混合されて含まれてもよい。
【0086】
「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)を意味し、好ましくはFを意味する。
【0087】
「ハロゲン含有官能基」は、1個以上のハロゲン原子を含有する有機官能基であって、芳香族、脂肪族又は脂環族官能基を含むことができる。例えば、ハロゲン含有官能基は、ハロゲン原子で置換された炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数2~20のアルキニル基、ハロゲン原子で置換された環形成炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~20のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されたアシル基、ハロゲン原子で置換された環形成炭素数6~20のアリール基、又はハロゲン原子で置換された炭素数7~20のアリールアルキル基を意味し得るが、これに制限されない。
【0088】
「ハロゲン原子で置換されたアシル基」は、R'-C(=O)-*(*は結合位置を示す符号、R’は、ハロゲン原子で置換された炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換された環形成炭素数3~20のシクロアルキル基、ハロゲン原子置換された環形成炭素数6~20のアリール基又はハロゲン原子で置換された炭素数7~20のアリールアルキル基)であってもよい。「ハロゲン原子で置換されたアシル基」は、セルロースにおいてエステル結合を通じて(酸素原子を通じて)セルロースの環に結合される。
【0089】
一実施形態において、第2位相差層用組成物は、ハロゲン原子又はハロゲン含有官能基と置換されたセルロースエステル系重合体を含むことができる。さらに好ましくは、ハロゲン原子はフッ素であってもよい。ハロゲンは、セルロースエステル系重合体のうち約1重量%~10重量%で含まれてもよい。該範囲では、本発明の物性を有する第2位相差層130の製造が容易になり得る。
【0090】
セルロースエステル系重合体は、当業者に知られている通常の方法で製造されてもよく、商業的に販売される製品が第2位相差層130の製造に使用されてもよい。例えば、置換基としてアシル基を有するセルロースエステル系重合体は、上述した化学式1のセルロースをなす糖単量体又は糖単量体の重合体にトリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸無水物を反応させたり、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸無水物を反応させた後でアシル化剤(例えば、カルボン酸の無水物、又はカルボン酸)をさらに反応させたり、又はトリフルオロ酢酸又はトリフルオロ酢酸無水物及びアシル化剤を共に反応させることによって製造され得る。
【0091】
芳香族系化合物は、フェニル基を含み、ポリスチレン系化合物、フルオロベンゼン或いはジフルオロスチレン構造を含み得るが、これに制限されない。一実施形態において、ポリスチレン系化合物は、下記の化学式2の部分構造を含むことができる。
【0092】
【0093】
ベンゼン環上の置換基Rの例は、アルキル基、置換されたアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アミノ基、スルホネート基、ホスフェート基、アシル基、アシルオキシ基、フェニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基などを含むことができる。
【0094】
一実施形態において、R1、R2、及びR3のうち一つ以上は、ハロゲン原子、さらに好ましくはフッ素であってもよい。
【0095】
第2位相差層用組成物は、上述したセルロースエステル系重合体及び芳香族系化合物以外に、芳香族縮合環を有する添加剤をさらに含むことができる。芳香族縮合環を有する添加剤は、波長分散性を調節することができる。芳香族縮合環を有する添加剤としては、2-ナフチルベンゾエート、アントラセン、フェナントレン、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジエステルなどを含むことができる。芳香族縮合環を有する添加剤は、第2位相差層用組成物のうち0.1重量%~30重量%、好ましくは1重量%~10重量%で含まれてもよい。該範囲では、位相差の発現率及び波長分散性を調節できるという効果がある。
【0096】
第2位相差層用組成物は、当業者に知られている通常の添加剤をさらに含むことができる。添加剤は、顔料、酸化防止剤などを含み得るが、これに制限されない。
【0097】
図2には示していないが、第2位相差層130の下部面には粘着層又は接着層が設けられ、偏光板を光学表示装置の素子、例えば、発光素子パネルに積層させることができる。
【0098】
[第1位相差層と第2位相差層の積層体]
第1位相差層120と第2位相差層130の積層体は、波長約550nmで面内位相差が約140nm~190nm(例えば、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、又は190nm)、好ましくは約150nm~170nmであってもよい。該範囲では、反射率を低下させ、楕円率を高めることができる。
【0099】
一実施形態において、第1位相差層120と第2位相差層130の積層体は、第1位相差層120に第2位相差層用組成物をコーティングした後、延伸させることによって製造され得る。具体的に、未延伸又は斜め延伸された第1位相差層フィルムに第2位相差層用組成物をコーティングすることによって第2位相差層のための塗膜を形成し、これを第1位相差層フィルムのMD方向に延伸させることによって該積層体を製造することができる。
【0100】
他の実施形態において、第1位相差層120と第2位相差層130の積層体は、第1位相差層120と第2位相差層130とを粘着剤(例えば、減圧粘着剤(PSA))で接着させることによって製造される場合もある。
【0101】
[偏光子]
偏光子110は、入射された自然光又は偏光を特定方向の直線偏光に変換するものであって、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムから製造され得る。具体的には、偏光子110は、高分子フィルムをヨウ素や異色性染料で染色し、これをMD方向に延伸させることによって製造可能である。具体的には、偏光子110は、膨潤過程、染色段階、延伸段階、及び架橋段階を経て製造され得る。
【0102】
偏光子110は、全光線透過率が約40%以上、例えば、約40%~47%で、偏光度が約99%以上、例えば、約99%~100%であってもよい。該範囲では、第1位相差層120と第2位相差層130を組み合わせると、反射防止性能を高めることができる。
【0103】
偏光子110は、厚さが約2μm~30μm、具体的には約4μm~25μmであってもよく、該範囲では、偏光子110が偏光板に使用され得る。
【0104】
[保護フィルム]
保護フィルム140は、偏光子110の上部面に形成されることによって、偏光子を外部環境から保護し、偏光板の機械的強度を高めるという効果を実現する。しかし、保護フィルム140がなくても偏光板の物性及び機械的強度に影響を与えない場合、保護フィルム140は省略されてもよい。
【0105】
保護フィルム140は、偏光子110を外部環境から保護するが、光学的透明フィルムとして、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)などを含むセルロース系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレートなどを含むポリエステル系、環状ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、ポリアリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、及びポリ塩化ビニリデン系のうち一つ以上の樹脂からなるフィルムであってもよく、具体的には、TAC、PETフィルムであってもよい。
【0106】
保護フィルム140は、厚さが約5μm~70μm、具体的には約15μm~45μmであってもよく、該範囲では、保護フィルム140が偏光板に使用され得る。
【0107】
図1には示していないが、保護フィルム140の上部面には機能性コーティング層が形成されてもよく、偏光板に追加機能を提供することができる。例えば、機能性コーティング層は、ハードコーティング層、耐指紋性層、反射防止層、アンチグレア層などであってもよい。これらは、単独で形成されてもよく、又は2種以上で積層されて形成されてもよい。
【0108】
図1には示していないが、保護フィルム140は、偏光子110に第2接着層を介して接着されてもよい。第2接着層は、水系接着剤及び光硬化型接着剤のうち1種以上で形成されてもよい。好ましくは、第2接着層が光硬化型接着剤で形成されることによって、保護フィルム140と偏光子110との間の第1接着層を介した接着、偏光子110と第1位相差層120との間の第2接着層を介した接着を1回の光照射によって達成することができ、偏光板の製造工程性を改善することができる。
【0109】
一実施形態において、光硬化型接着剤は、上述した第1接着層を形成する接着剤組成物で形成されてもよい。一実施形態において、光硬化型接着剤は、波長約300nm~400nmの光に対して吸収作用を有し、これを通じて反応を開始する光開始剤を含むことができる。光開始剤は、光ラジカル開始剤及び光カチオン開始剤のうち1種以上を含むことができる。
【0110】
第2接着層は、厚さが約0.1μm~10μm、具体的に約0.5μm~5μmであってもよく、該範囲では、第2接着層が偏光板に使用され得る。
【0111】
以下では、本発明の他の実施形態に係る偏光板を説明する。
【0112】
本実施形態の偏光板は、上述した実施形態に係る偏光板と同様に、偏光子と、偏光子の上部面に積層された保護フィルムと、偏光子の下部面に順次積層された第1位相差層及び第2位相差層とを含む。第1位相差層は、波長約550nmで面内位相差が約180nm~220nmで、第2位相差層は、波長約550nmで面内位相差が約80nm~100nmである。さらに本実施形態に係る偏光板は、第3位相差層を含むことができる。
【0113】
一実施形態において、第3位相差層は、偏光子と第1位相差層との間に配置されてもよい。
【0114】
第3位相差層は、nz>nx≒ny(nx、ny、nzは、それぞれ波長約550nmでの第3位相差層の遅相軸方向、進相軸方向、厚さ方向の屈折率である)であるポジティブC層を含む。
【0115】
一実施形態において、第3位相差層は、波長約550nmでの厚さ方向位相差が約-300nm~0nm、例えば、約-80nm~0nm(例えば、-80nm、-70nm、-60nm、-50nm、-40nm、-30nm、-20nm、-10nm、又は0)、約-80nm~-20nm、約-40nm~-30nmであってもよい。第3位相差層は、波長約550nmでの面内位相差が約0nm~10nm、例えば、約0nm~5nmであってもよい。該範囲では、上述した反射率の低減効果を実現することができる。
【0116】
一例として、第3位相差層は液晶層で形成されてもよい。液晶層は、上述した厚さ方向位相差を実現することが知られている通常の物質で形成されてもよい。
【0117】
他の例としてが、第3位相差層は、上述した第2位相差層を形成する組成物で形成されてもよい。
【0118】
本発明の光学表示装置は、本発明の実施形態に係る偏光板を含む。光学表示装置は、有機電界発光素子(OLED)表示装置及び液晶表示装置を含むことができる。
【0119】
具体例として、有機電界発光素子表示装置は、フレキシブル型基板を含む有機電界発光素子パネルと、該有機電界発光素子パネル上に積層された本発明の一実施形態に係る偏光板とを含むことができる。
【0120】
他の例において、有機電界発光素子表示装置は、ノンフレキシブル型基板を含む有機電界発光素子パネルと、該有機電界発光素子パネル上に積層された本発明の一実施形態に係る偏光板とを含むことができる。
【実施例0121】
以下では、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。但し、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであって、如何なる意味でも、これによって本発明が制限されると解釈することはできない。
【0122】
[実施例1]
ポリビニルアルコール系フィルム(PS#60、日本の株式会社クラレ、延伸前の厚さ:60μm)を55℃のヨウ素水溶液で6倍に延伸し、光透過率45%の偏光子を製造した。
【0123】
環状ポリオレフィン(COP)系フィルム(日本ゼオン株式会社、ZD film)の下部面に第2位相差層を形成するための組成物を塗布し、第2位相差層を形成するための塗膜を形成した。ここで、第2位相差層を形成するための組成物は、セルロースエステル系重合体(トリフルオロアセチル基を含む)を含む非液晶性組成物である。該セルロースエステル系重合体において、フッ素は、該セルロースエステル系重合体のうち5重量%含まれる。該セルロースエステル系重合体は、無置換のセルロースにトリフルオロ酢酸及びトリフルオロ酢酸無水物を添加し、これを反応及び重合することによって製造された。
【0124】
塗膜を乾燥させた後、該塗膜とCOP系フィルムの積層体を、COP系フィルムのMD方向を基準にして45゜方向で110℃で1.7倍の延伸比で斜め延伸させ、下記の表1の仕様を有する第1位相差層(フラット分散性)と第2位相差層(正分散性)の積層体を製造した。
【0125】
製造した偏光子の上部面に保護フィルムとしてHC-TACフィルム(凸版印刷株式会社、25FJCHCN-TC、厚さ:32μm)を設け、偏光子の下部面に、偏光子の下部面から第1位相差層及び第2位相差層の順に第1位相差層(厚さ:37μm)と第2位相差層(厚さ:3μm)の積層体を設けることによって偏光板を製造した。
【0126】
[実施例2~実施例5]
実施例1における、延伸比、延伸温度などを変更し、第1位相差層と第2位相差層の位相差を下記の表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法を実施することによって偏光板を製造した。
【0127】
[実施例6~実施例9]
実施例1における、偏光子と第1位相差層との間に下記の表1のRth(@550nm)を有するポジティブCプレート位相差層をさらに積層させ、第1位相差層及び第2位相差層の各構成を維持又は変更したことを除いては、実施例1を参考にして偏光板を製造した。ポジティブCプレート位相差層は、第3位相差層であって、セルロースエステル系組成物で製造された。
【0128】
[比較例1~比較例4]
実施例1における、延伸比、延伸温度などを変更し、第1位相差層と第2位相差層の位相差を下記の表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法を実施することによって偏光板を製造した。
【0129】
第1位相差層、第2位相差層、及び第3位相差層のそれぞれのRe(面内位相差)、Rth(厚さ方向位相差)、NZ(二軸性の程度)は、Axoscan(Axometrics社)を使用して波長550nmで測定した。
【0130】
実施例と比較例の偏光板に対して下記の物性を評価し、その結果を下記の表1に示した。
【0131】
(1)反射率(単位:%):反射率は、偏光板のそれぞれの層をパラメータ化し、完全反射を仮定した上で、拡張ジョーンズ行列(Extended Jones Matrix)計算方式を用いて計算した。但し、最外郭1次反射は計算から除いた。
【0132】
(2)楕円率(単位:%):楕円率は、偏光板のそれぞれの層をパラメータ化し、自然光が偏光子、第1位相差、及び第2位相差を順次通過したとき、入射角60゜で入射した光の楕円率を方向角1゜単位で計算し、最小値を表示した。
【0133】
【0134】
表1のように、本発明の偏光板は、正面と側面の両方において反射率が低く、入射角60゜での楕円率が少なくとも65%以上になることによって、画面品質を改善(入射角60゜及び方位角0゜~360゜で色変化を最小化)することができる。また、ポジティブCプレート(第3位相差層)をさらに備える実施例6~実施例9は、ポジティブCプレートを含まない実施例1~実施例5に比べて優れた効果を示した。
【0135】
その一方で、本発明の第1位相差層と第2位相差層のそれぞれの面内位相差範囲を逸脱する比較例1~比較例4の偏光板は、正面と側面の両方において反射率が実施例に比べて高いか、入射角60゜で少なくとも65%以上の楕円率を達成することができなかった。
【0136】
本発明の単純な変形及び変更は、本分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。