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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023037
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ゲノム編集方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20220131BHJP
   C12N 15/90 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/90 Z ZNA
C12N15/10 200Z
C12N15/11 Z
C12N1/21
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150104
(22)【出願日】2021-09-15
(62)【分割の表示】P 2021094033の分割
【原出願日】2017-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2016158562
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】319008199
【氏名又は名称】NEXUSPIRAL株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】間世田 英明
(72)【発明者】
【氏名】上手 麻希
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA41X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡便に、且つゲノム編集対象部位を選択する自由度がより高く、さらに目的の変異以外の意図しない変異の確率がより低減されたゲノム編集方法を提供する。
【解決手段】(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列、又は
(ii)前記改変塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列(ただし、前記センス鎖塩
基配列と同一の塩基配列は除く)
からなる、一本鎖ポリヌクレオチドを用いた、ゲノム編集技術。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記
任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端
の塩基までの塩基数が、40~300である、
一本鎖ポリヌクレオチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1
種を細胞又は生物に導入する工程を含む、ゲノム編集方法。
【請求項2】
前記一本鎖ポリヌクレオチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくと
も1種を合成する工程を含む、請求項1に記載のゲノム編集方法。
【請求項3】
さらに、ゲノム編集された細胞又は生物を回収する工程を含む、請求項1又は2に記載の
ゲノム編集方法。
【請求項4】
さらに、ゲノム編集された細胞又は生物を選別する工程を含む、請求項1~3のいずれか
に記載のゲノム編集方法。
【請求項5】
ヌクレアーゼ、ガイドRNA、及びそれらの発現ベクターからなる群より選択される少なく
とも1種を導入する工程を含まない、請求項1~4のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項6】
前記改変塩基配列の塩基数が80~1000である、請求項1~5のいずれかに記載のゲノム編
集方法。
【請求項7】
前記改変塩基配列の塩基数が90~300である、請求項1~6のいずれかに記載のゲノム編
集方法。
【請求項8】
欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の塩基数が1~920である、請求項1~7のい
ずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項9】
前記改変塩基配列の塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の塩基
数の比が10以下である、請求項1~8のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項10】
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する
前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’
末端の塩基までの塩基数の比が、0.2~5である、請求項1~9のいずれかに記載のゲノム
編集方法。
【請求項11】
前記一本鎖ポリヌクレオチドが一本鎖DNA又は一本鎖RNAである、請求項1~10のいずれ
かに記載のゲノム編集方法。
【請求項12】
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記
任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端
の塩基までの塩基数が、40~300である、
一本鎖ポリヌクレオチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1
種を含有する、ゲノム編集用組成物。
【請求項13】
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記
任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端
の塩基までの塩基数が、40~300である、
一本鎖ポリヌクレオチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1
種を含有する、ゲノム編集用キット。
【請求項14】
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記
任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端
の塩基までの塩基数が、40~300である、
一本鎖ポリヌクレオチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1
種を細胞又は非ヒト生物に導入する工程を含む、ゲノム編集された細胞又は非ヒト生物の
製造方法。
【請求項15】
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記
任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端
の塩基までの塩基数が、40~300である、
一本鎖ポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載の一本鎖ポリヌクレオチドの発現カセットを含有する、発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノム編集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRISPR/Casシステムといわれるゲノム編集技術について、急速に開発及び改良が
進められている(特許文献1)。この技術によれば、ガイドRNAとCasタンパク質との組合
せにより、細胞のゲノム上の特定配列にDNA二本鎖切断を発生させることができる。このD
NA切断端ではDNAのランダムな削り込み又は付加等の変異が高頻度に起こるため、CRISPR/
Casシステムによれば、容易に遺伝子破壊が可能である。また、DNA切断端付近のDNA配列
を含むドナーDNAをさらに組み合わせることにより、ゲノムDNAの塩基配列の置換や欠失等
を起こすことも可能である。
【0003】
しかしながら、CRISPR/CasシステムにおいてゲノムDNA二本鎖切断できる部位は、PAM配
列近傍に限定されている。また、DNA二本鎖切断後は、DNAのランダムな削り込みや付加が
起こるため、ゲノム編集後の塩基配列の変化を予想することができない。さらに、ガイド
RNAは、通常、20塩基程の比較的短い配列を標的とするものであるので、意図した標的配
列以外の配列にも結合し、意図しないゲノム編集を引き起こすこともある(オフターゲッ
ト効果)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016-500262号公報
【特許文献2】国際公開第2015/115610号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡便なゲノム編集方法を提供することを課題とする。好ましくは、本発明は
、簡便に、且つゲノム編集対象部位を選択する自由度がより高く、さらに目的の変異以外
の意図しない変異の確率がより低減されたゲノム編集方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、驚くべきことに、
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列、又は
からなる、一本鎖ポリヌクレオチドを細胞に導入するだけで、前記改変塩基配列において
前記任意塩基配列が欠失していた場合(図1)はその欠失がゲノム内で起こり、また前記
改変塩基配列において前記任意配列が挿入していた場合(図2)はその挿入がゲノム内で
起こり、さらに前記改変塩基配列において前記任意塩基配列が置換していた場合(図3
はその置換がゲノム内で起こることを見出した。この知見に基づいてさらに研究を進めた
結果、本発明が完成した。
【0007】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する:
項1.
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記
任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端
の塩基までの塩基数が、40~300である、
一本鎖ポリヌクレオチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1
種を細胞又は生物に導入する工程を含む、ゲノム編集方法。
【0008】
項2.
前記一本鎖ポリヌクレオチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくと
も1種を合成する工程を含む、項1に記載のゲノム編集方法。
【0009】
項3.
さらに、ゲノム編集された細胞又は生物を回収する工程を含む、項1又は2に記載のゲノ
ム編集方法。
【0010】
項4.
さらに、ゲノム編集された細胞又は生物を選別する工程を含む、項1~3のいずれかに記
載のゲノム編集方法。
【0011】
項5.
ヌクレアーゼ、ガイドRNA、及びそれらの発現ベクターからなる群より選択される少なく
とも1種を導入する工程を含まない、項1~4のいずれかに記載のゲノム編集方法。
項6.
前記改変塩基配列の塩基数が80~1000である、項1~5のいずれかに記載のゲノム編集方
法。
【0012】
項7.
前記改変塩基配列の塩基数が90~300である、項1~6のいずれかに記載のゲノム編集方
法。
【0013】
項8.
欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の塩基数が1~920である、項1~7のいずれ
かに記載のゲノム編集方法。
【0014】
項9.
前記改変塩基配列の塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の塩基
数の比が10以下である、項1~8のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【0015】
項10.
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する
前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’
末端の塩基までの塩基数の比が、0.2~5である、項1~9のいずれかに記載のゲノム編集
方法。
【0016】
項11.
前記一本鎖ポリヌクレオチドが一本鎖DNA又は一本鎖RNAである、項1~10のいずれかに
記載のゲノム編集方法。
【0017】
項12.
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記
任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端
の塩基までの塩基数が、40~300である、
一本鎖ポリヌクレオチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1
種を含有する、ゲノム編集用組成物。
【0018】
項13.
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記
任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端
の塩基までの塩基数が、40~300である、
一本鎖ポリヌクレオチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1
種を含有する、ゲノム編集用キット。
【0019】
項14.
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記
任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端
の塩基までの塩基数が、40~300である、
一本鎖ポリヌクレオチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1
種を細胞又は非ヒト生物に導入する工程を含む、ゲノム編集された細胞又は非ヒト生物の
製造方法。
【0020】
項15.
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配
列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記
任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端
の塩基までの塩基数が、40~300である、
一本鎖ポリヌクレオチド。
【0021】
項16.
項15に記載の一本鎖ポリヌクレオチドの発現カセットを含有する、発現ベクター。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ゲノムDNAのセンス鎖由来の特定の一本鎖ポリヌクレオチドを細胞に
導入するだけで、簡便にゲノム編集を行うことができる。このゲノム編集技術は、編集対
象部位を選択する自由度がより高く、さらに目的の変異以外の意図しない変異の確率がよ
り低減されている。また、一本鎖ポリヌクレオチドの塩基数をより多くすることにより、
オフターゲット効果をより低減することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のゲノム編集方法のパターン(パターン1)の概要を示す。線は、一本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列を表す。各線において、左側が5’側であり、右側が3’側である。(a)はゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列を示す。(b)は改変塩基配列(i)又はその相同配列(ii)を示す。(c)は改変塩基配列において欠失している任意塩基配列を示す。(d)はゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失する任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基配列を示す。(e)は欠失する任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基配列を示す。
図2】本発明のゲノム編集方法のパターン(パターン2)の概要を示す。線は、一本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列を表す。各線において、左側が5’側であり、右側が3’側である。(a)はゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列を示す。(b)は改変塩基配列(i)又はその相同配列(ii)を示す。(c)は改変塩基配列において挿入している任意塩基配列を示す。(d)はゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、挿入する任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基配列を示す。(e)は挿入する任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基配列を示す。
図3】本発明のゲノム編集方法のパターン(パターン3)の概要を示す。線は、一本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列を表す。各線において、左側が5’側であり、右側が3’側である。(a)はゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列を示す。(b)は改変塩基配列(i)又はその相同配列(ii)を示す。(c)は改変塩基配列において置換している任意塩基配列を示す。(d)はゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、置換する任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基配列を示す。(e)は置換する任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基配列を示す。
図4】本発明におけるゲノム編集ツールである一本鎖ポリヌクレオチドについて、所望の配列を欠失させたい場合のデザイン方法の概要を示す。
図5】本発明におけるゲノム編集ツールである一本鎖ポリヌクレオチドについて、所望の配列を挿入したい場合のデザイン方法の概要を示す。
図6】本発明におけるゲノム編集ツールである一本鎖ポリヌクレオチドについて、所望の配列を他の配列に置換したい場合のデザイン方法の概要を示す。
図7】一本鎖DNA(実施例1)の配列のゲノムDNAとの対応関係を示す。「-」は一本鎖DNAにおいて欠失している塩基を示し、「 }」はゲノムDNA配列に対して挿入した配列及び挿入位置を示す。「…~塩基…」は「~」で示される数の塩基が省略されていることを示す。
図8】改変GFP(実施例6)のコード配列を示す。該コード配列は、GFPのコード配列内に8塩基を挿入してなる配列である。罫線枠内が挿入された8塩基である。
図9】蛍光観察像(実施例6)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書中において、「含有(comprising)」及び「含む(comprising)」なる表現に
ついては、「含有(comprising)」、「含む(comprising)」、「実質的にからなる(es
sentially consisting of)」、及び「からなる(consisting of)」という概念を含む。
【0025】
塩基配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対するアミ
ノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど、そ
れらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列
分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは
、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(KarlinS,Altschul SF.“Methods for
assessing the statistical significance of molecular sequence features by using
general scoringschemes”Proc Natl Acad Sci USA.87:2264-2268(1990)、KarlinS,
Altschul SF.“Applications and statistics for multiple high-scoring segments i
n molecular sequences.”Proc Natl Acad Sci USA.90:5873-7(1993))を用いて決
定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラムが開
発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Bio
technology Information(NCBI)のウェエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を
参照すればよい。
【0026】
本発明は、その一態様において、(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列、又は
(ii)前記改変塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列(ただし、前記センス鎖塩
基配列と同一の塩基配列は除く)
からなる、一本鎖ポリヌクレオチド(本明細書において、「本発明の一本鎖ポリヌクレオ
チド」と示すこともある。)、及び本発明の一本鎖ポリヌクレオチドやその発現ベクター
(本明細書において、「本発明の発現ベクター」と示すこともある。)を利用したゲノム
編集用組成物、ゲノム編集用キット、ゲノム編集方法、ゲノム編集された細胞又は非ヒト
生物の製造方法等に関する。
【0027】
限定的な解釈を望むものではないが、本発明のゲノム編集のメカニズムは、次のように
考えられる。
【0028】
本発明者は、細菌等の原核生物においては、X-Y-Xという配列とX-Y-Xという配列とがX
において重なり合ってなる式:X-Y-X-Y-X[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配
列を示す。]で示される塩基配列(本明細書において、「PODiR(Partially Overlapped
Direct Repeat)配列」と示す場合もある。)中の重なっていない配列(X-Y)が欠失する
という法則が存在することを報告している(特許文献2)。また、ゲノム中のX-Y-Xとい
う配列の5’側に隣接してX-Yで示される塩基配列が挿入され、PODiR配列が創出されると
いう法則が存在することも報告している(特許文献2)。さらに、本発明者は、これらの
法則が、真核細胞においても保存されていることも見出している。
【0029】
この現象(現象1)のメカニズムについて解析していく中で、本発明者は、PODiR配列を
含むDNAでコードされるタンパク質を発現させる際に、PODiR配列中のX-Yで示される塩基
配列が欠失したmRNAが生成されてしまうという現象を見出した(現象2)。
【0030】
そして、現象1と現象2に基づいて、本発明者は、ゲノム中のPODiR配列のX-Yで示される
塩基配列が欠失するのは(現象1)、ゲノム中のPODiR配列を含むDNAから転写された、POD
iR配列中のX-Yで示される塩基配列が欠失したmRNA(現象2)が、ゲノム中のPODiR配列を
含むDNAと相互作用(例えばハイブリダイズ)し、その結果できた、相互作用できない余
分な部位(ゲノムDNAのX-Y)が、何らかの酵素によって切断されるために起こるのではな
いかと推察した。さらに、本発明者は、ゲノム中のX-Y-Xという配列の5’側に隣接してX-
Yで示される塩基配列が挿入されてPODiR配列が創出されるのは(現象1)、PODiR配列を有
するmRNAがゲノム中のX-Y-Xという配列(非PODiR配列)を含むDNAと相互作用(例えばハ
イブリダイズ)し、その結果できた、相互作用できない余分な部位(mRNAのX-Y)の塩基
配列が、DNA複製時等にゲノムDNA中に挿入されるために起こるのではないかと推察した。
【0031】
これらの推察に基づいて、本発明者は、現象2のmRNAに相当する一本鎖ポリヌクレオチ
ド、つまりゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列(図1の部位(a))に対して任意塩基配
列(図1の部位(c))が欠失してなる改変塩基配列(図1の部位(b))からなる一本鎖
ポリヌクレオチドを人為的に導入すれば、ゲノムDNAと相互作用(例えばハイブリダイズ
)し、その結果できた、相互作用できない余分な部位(一本鎖ポリヌクレオチドにおいて
欠失している、ゲノムDNA中の任意塩基配列:図1の部位(c))が、何らかの酵素によっ
て切断されるのではないかという着想に至った(図1)。さらに、本発明者は、ゲノムDN
Aの任意のセンス鎖塩基配列(図2の部位(a))に対して任意塩基配列(図2の部位(c
))が挿入してなる改変塩基配列(図2の部位(b))からなる一本鎖ポリヌクレオチド
を人為的に導入すれば、ゲノムDNAと相互作用(例えばハイブリダイズ)し、その結果で
きた、相互作用できない余分な部位(一本鎖ポリヌクレオチドにおいて挿入している任意
塩基配列:図2の部位(c)))の塩基配列が、DNA複製時等にゲノムDNA中に挿入される
のではないかという着想に至った(図2)。またさらに、本発明者は、ゲノムDNAの任意
のセンス鎖塩基配列(図3の部位(a))に対して任意塩基配列(図3の部位(c))が他
の塩基配列に置換してなる改変塩基配列(図3の部位(b))からなる一本鎖ポリヌクレ
オチドを人為的に導入すれば、ゲノムDNAと相互作用(例えばハイブリダイズ)し、その
結果できた、相互作用できない余分な部位(一本鎖ポリヌクレオチドにおける置換後の部
位)の塩基配列が、DNA複製時等により、ゲノムDNA中にも反映されるのではないかと推察
した(図3)。
【0032】
そして、本実施例においてこの着想が正しいことが証明されたことから、このようなメ
カニズムによって本発明のゲノム編集が起こると考えられる。
【0033】
本発明によれば、以下に説明するように一本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列をデザイン
することにより、ゲノムDNAに所望の変異(欠失、挿入、又は置換)を導入することがで
きる。
【0034】
ゲノムDNA内のある配列を欠失したい場合のデザイン方法を、図4に示す。ゲノムDNAの
ある配列を欠失したい場合(図4の上段)は、ゲノムDNAとハイブリダイズした時に、欠
失したい配列がハイブリダイズできずに「おでき(図1の部位(c))」のようにはみ出
してしまうような一本鎖ポリヌクレオチドをデザインする。すなわち、図4の下段に示さ
れるように、ゲノムDNA内の欠失したい配列の両側の配列(図1の部位(d)及び(e)に
相当)を連結してなる配列からなる一本鎖ポリヌクレオチドをデザインする。
【0035】
また、ある配列をゲノムDNAの特定部位に挿入したい場合のデザイン方法を、図5に示
す。ある配列をゲノムDNAの特定部位に挿入したい場合(図5の上段)は、ゲノムDNAとハ
イブリダイズした時に、挿入したい配列がハイブリダイズできずに「おでき(図2の部位
(c))」のようにはみ出してしまうような一本鎖ポリヌクレオチドをデザインする。す
なわち、図5の下段に示されるように、ゲノムDNA内の挿入したい部位の両側の配列(図
2の部位(d)及び(e)に相当)の間に、挿入したい配列が挟まれてなる配列からなる一
本鎖ポリヌクレオチドをデザインする。
【0036】
さらに、ゲノムDNA内のある配列を別の他の配列に置換したい場合のデザイン方法を、
図6に示す。ゲノムDNA内のある配列を別の他の配列に置換したい(図6の上段)は、ゲ
ノムDNAとハイブリダイズした時に、ゲノムDNA内のある配列と(置換したい配列=置換さ
れる配列)と他の配列(置換する配列)がハイブリダイズできずに「おでき(図3の部位
(c))」のようにはみ出してしまうような一本鎖ポリヌクレオチドをデザインする。す
なわち、図6の下段に示されるように、置換したい配列の両側の配列(図3の部位(d)
及び(e)に相当)の間に、所望の配列(=他の配列)が挟まれてなる配列からなる一本
鎖ポリヌクレオチドをデザインする。
【0037】
より具体的には、一例として、本発明の一本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列を以下のよ
うにデザインすることにより、ゲノムDNAに所望の変異(欠失、挿入、又は置換)を導入
することができる:
A)センス鎖配列上の(ia)欠失させる配列の直前と直後の塩基、(ib)挿入させる箇
所の連続した2つの塩基(直前と直後の塩基)、及び(ic)置換させる配列の直前と直後
の塩基を特定し、
B)欠失/挿入/置換の対象のとなる塩基を特定し(欠失の場合は、ヌル)、
C)上記B)で特定された塩基の上流に、センス鎖上の該直前の塩基の上流側X塩基を
、イの塩基の下流にセンス鎖上の該直前の塩基の下流側X塩基を、配置する。
【0038】
X塩基は、一実施形態において、少なくとも40塩基、もしくは改変を意図する塩基数の1
/10倍のうち長いものである。改変する塩基とは、1.欠失させる塩基数、2.挿入させ
る塩基数、3.置換により除去/導入する塩基のうち長いほうの数である。
【0039】
センス鎖上の該直前の塩基の上流側X塩基/イの塩基の下流にセンス鎖上の該直前の塩
基の下流側X塩基は、改変されると意図しないゲノム編集が起きるので好ましくない。
【0040】
1.一本鎖ポリヌクレオチド
本発明の一本鎖ポリヌクレオチドは、
(i)ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列、又は
(ii)前記改変塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列
からなる、一本鎖ポリヌクレオチドである。
【0041】
「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列」(図1~3の部位(a))は、本発明の一本鎖
ポリヌクレオチドの塩基配列(改変塩基配列又はその相同配列)の元となる塩基配列であ
る。
【0042】
「ゲノムDNA」は、ゲノム編集対象細胞又は生物が有するゲノムDNAである限り特に制限
されない。
【0043】
ゲノム編集対象細胞及び生物は、特に制限されない。上述の本発明のゲノム編集のメカ
ニズムによれば、PODiR配列の欠失及び創出現象(原核細胞のみならず、真核細胞におい
ても起こることが見出されている。)が起こる細胞及び生物であれば、本発明のゲノム編
集が可能である。
【0044】
ゲノム編集対象生物は、原核生物、真核生物を問わず、広く例示することができる。原
核生物としては、例えばグラム陰性菌(緑膿菌、大腸菌、セラチア菌、スフィンゴモナス
菌、ブルセラ菌、淋菌、バークホルデリア、赤痢菌、サルモネラ菌、アシネトバクター、
コレラ菌、肺炎桿菌、レジオネラ菌、ピロリ菌、カンピロバクター等)、グラム陽性菌(
結核菌、マイコプラズマ菌、黄色ブドウ球菌、放線菌、枯草菌、炭疽菌等)等を例示する
ことができる。これらの中でも、好ましくはグラム陰性菌等が挙げられ、より好ましくは
緑膿菌、大腸菌、セラチア菌、スフィンゴモナス菌等が挙げられ、さらに好ましくは緑膿
菌、大腸菌等が挙げられる。真核生物としては、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、
イヌ、ネコ、ウサギ等の哺乳類動物; ニワトリ等の鳥類; カメ、ワニ等の爬虫類;
アフリカツメガエル等の両生類動物; ゼブラフィッシュ、メダカ、トラフグ等の魚類動
物; ホヤ等の脊索動物; ショウジョウバエ、カイコ等の節足動物;等の動物: シロ
イヌナズナ、イネ、コムギ、タバコ等の植物: 酵母、アカパンカビ、マツタケ、シイタ
ケ、エノキタケ、シメジ、ナメコ、エリンギ等の菌類等が挙げられる。一実施形態におい
て、ゲノム編集対象生物は、ヒトを含む「生物」である。また、別の一実施形態において
、ゲノム編集対象生物は、ヒト以外の「非ヒト生物」である。
【0045】
ゲノム編集対象細胞としては、各種組織由来又は各種性質の細胞、例えば血液細胞、造
血幹細胞・前駆細胞、配偶子(精子、卵子)、受精卵、線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮
細胞、神経細胞、肝細胞、ケラチン生成細胞、筋細胞、表皮細胞、内分泌細胞、ES細胞、
iPS細胞、組織幹細胞、がん細胞等の動物細胞; 柔組織細胞、厚角組織細胞等の植物細
胞等が挙げられる。
【0046】
「センス鎖」は、ゲノムDNAにおいて、RNAに転写される領域中のDNA二本鎖の内、転写
の鋳型にならない方のDNA鎖である。センス鎖は、好ましくはコード領域のセンス鎖であ
る。「コード領域」には、タンパク質のコード領域に限定されず、タンパク質をコードし
ないRNA(例えば、miRNA、piRNA、tRNA、rRNA、snRNA、gRNA、SRP RNA、pRNA、tncRNA、s
bRNA、snlRNA、SLRNA等)のコード領域も包含する。
【0047】
「任意のセンス鎖塩基配列」は、センス鎖塩基配列の内の任意の配列である限り特に制
限されない。任意のセンス鎖塩基配列の塩基数は、特に制限されないが、例えば20~1200
0、好ましくは20~3000、より好ましくは40~2000、よりさらに好ましくは60~1000、よ
りさらに好ましくは80~600、よりさらに好ましくは90~300、特に好ましくは95~200程
度である。
【0048】
「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して内部の任意塩基配列が欠失してなる改
変塩基配列」(図1の部位(b))とは、ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して、
該センス鎖塩基配列内の任意の塩基配列が欠失してなる塩基配列である。なお、ここでい
う「欠失」とは、ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列の内部が除かれることであり、該
センス鎖塩基配列の末端を含む部位が除かれることではない。つまり、改変塩基配列にお
いては、5’端及び3’端の両方において、改変の元となったセンス鎖塩基配列由来の配列
が残っている。換言すれば、改変塩基配列は、5’端及び3’端の両方において、改変の元
となったセンス鎖塩基配列由来の配列を有する。なお、上記「任意の塩基配列」は、連続
する1つの塩基配列である。
【0049】
このような図1のパターンの場合の、該「改変塩基配列」の塩基数は、特に制限されな
いが、例えば20~2000、好ましくは40~2000、より好ましくは60~1000、さらに好ましく
は80~1000、よりさらに好ましくは80~600、よりさらに好ましくは90~300、特に好まし
くは95~200程度である。
【0050】
「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して任意塩基配列が挿入してなる改変塩基
配列」(図2の部位(b))とは、ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して、任意の
塩基配列が挿入してなる塩基配列である。なお、ここでいう「挿入」とは、ゲノムDNAの
任意のセンス鎖塩基配列の内部に任意塩基配列が挿入されることであり、該センス鎖塩基
配列の末端に任意塩基配列が付加されることではない。つまり、改変塩基配列においては
、5’端及び3’端の両方において、改変の元となったセンス鎖塩基配列由来の配列が残っ
ている。換言すれば、改変塩基配列は、5’端及び3’端の両方において、改変の元となっ
たセンス鎖塩基配列由来の配列を有する。なお、上記「任意の塩基配列」は、連続する1
つの塩基配列である。
【0051】
このような図2のパターンの場合の該「改変塩基配列」の塩基数は、特に制限されない
が、例えば20~12000、好ましくは20~2000、より好ましくは40~2000、さらに好ましく
は60~1000、よりさらに好ましくは80~1000、よりさらに好ましくは80~600、よりさら
に好ましくは90~300、特に好ましくは95~200程度である。
【0052】
「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して内部の任意塩基配列が他の塩基配列に
置換してなる改変塩基配列」(図3の部位(b))とは、ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基
配列に対して、該センス鎖塩基配列内の任意の塩基配列が他の塩基配列に置換してなる塩
基配列である。なお、ここでいう「置換」とは、ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列の
内部が置換することであり、該センス鎖塩基配列の末端を含む部位が置換することではな
い。つまり、改変塩基配列においては、5’端及び3’端の両方において、改変の元となっ
たセンス鎖塩基配列由来の配列が残っている。換言すれば、改変塩基配列は、5’端及び3
’端の両方において、改変の元となったセンス鎖塩基配列由来の配列を有する。また、「
他の塩基配列」は、置換対象の塩基配列と異なる塩基配列であれば特に制限されず、例え
ば置換対象の塩基配列との同一性が0~50%、0~20%、0~10%、0~5%の塩基配列であ
る。なお、上記「任意の塩基配列」は、連続する1つの塩基配列である。
【0053】
このような図3のパターンの場合の該「改変塩基配列」の塩基数は、特に制限されない
が、例えば20~12000、好ましくは20~2000、より好ましくは40~2000、さらに好ましく
は60~1000、よりさらに好ましくは80~1000、よりさらに好ましくは80~600、よりさら
に好ましくは90~300、特に好ましくは95~200程度である。
【0054】
欠失、挿入、又は置換する「任意塩基配列」(図1~3の部位(c))は、ゲノム編集
により、ゲノム内で欠失、挿入、又は置換させる対象となる塩基配列であり、その配列は
特に制限されない。欠失、挿入、又は置換する「任意塩基配列」の塩基数は、特に制限さ
れないが、例えば1~10000、好ましくは1~1000、より好ましくは1~920、さらに好まし
くは2~500、よりさらに好ましくは4~200、よりさらに好ましくは4~100、よりさらに好
ましは5~50、よりさらに好ましくは6~20、よりさらに好ましくは7~12、よりさらに好
ましくは8~9である。
【0055】
「改変塩基配列」(図1~3の部位(b))の塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換
する「任意塩基配列」(図1~3の部位(c))の塩基数の比(部位(c)の塩基数/部位
(b)の塩基数)は、特に制限されないが、例えば500以下、好ましくは100以下、より好
ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、よりさらに好ましくは2以下、よりさらに好ま
しくは1以下である。該比の下限値は特に制限されないが、例えば0.01、0.02、0.04等で
ある。
【0056】
「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列」(図1~3の部位(a))の5’末端の塩基か
ら、欠失、挿入、又は置換する「任意塩基配列」(図1~3の部位(c))の最も5’側の
塩基の5’側隣の塩基まで(図1~3の(d))の塩基数は、特に制限されないが、例えば
10~1000、好ましくは20~1000、より好ましくは30~500、さらに好ましくは40~300、よ
りさらに好ましくは40~100、特に好ましくは40~70程度である。
【0057】
欠失、挿入、又は置換する「任意塩基配列」(図1~3の部位(c))の最も3’側の塩
基の3’側隣の塩基から、「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列」(図1~3の部位(a
))の3’末端の塩基まで(図1~3の(e))の塩基数は、特に制限されないが、例えば
10~1000、好ましくは20~1000、より好ましくは30~500、さらに好ましくは40~300、よ
りさらに好ましくは40~100、特に好ましくは40~70程度である。
【0058】
本発明の好ましい態様においては、
「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列」(図1~3の部位(a))の5’末端の塩基から
、欠失、挿入、又は置換する「任意塩基配列」(図1~3の部位(c))の最も5’側の塩
基の5’側隣の塩基まで(図1~3の(d))の塩基数と、
欠失、挿入、又は置換する「任意塩基配列」(図1~3の部位(c))の最も3’側の塩基
の3’側隣の塩基から、「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列」(図1~3の部位(a)
)の3’末端の塩基まで(図1~3の(e))の塩基数
の両方或いは少なくとも一方が、例えば10~1000、好ましくは20~1000、より好ましくは
30~500、さらに好ましくは40~300、よりさらに好ましくは40~100、特に好ましくは40
~70程度である。
【0059】
「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列」(図1~3の部位(a))の5’末端の塩基か
ら、欠失、挿入、又は置換する「任意塩基配列」(図1~3の部位(c))の最も5’側の
塩基の5’側隣の塩基まで(図1~3の(d))の塩基数に対する、
欠失、挿入、又は置換する「任意塩基配列」(図1~3の部位(c))の最も3’側の塩基
の3’側隣の塩基から、「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列」(図1~3の部位(a)
)の3’末端の塩基まで(図1~3の(e))の塩基数の比(部位(e)の塩基数/部位(d
)の塩基数)は、
特に制限されないが、例えば0.01~100、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~5、さ
らに好ましくは0.5~2である。
【0060】
本発明の一本鎖ポリヌクレオチドには、「改変塩基配列」と90%以上の同一性を有する
塩基配列(ただし、前記センス鎖塩基配列と同一の塩基配列は除く)も包含される。同一
性の程度は、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上
、よりさらに好ましくは99.5%以上、特に好ましくは99.9%以上である。
【0061】
上述の本発明のゲノム編集のメカニズムの観点から、本発明の一本鎖ポリヌクレオチド
は、ゲノムDNAと相互作用(例えばハイブリダイズ)することにより、ゲノム編集を起こ
すと考えられる。この観点から、本発明の一本鎖ポリヌクレオチド(図1~3の(b))
は、「ゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列」(図1~3の部位(a))と、ゲノム編集対
象細胞内において相互作用(例えばハイブリダイズ)可能であることが望ましい。具体的
には、例えばストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能である。ストリンジェントな
条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods i
n Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、プロー
ブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイ
ズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができ
る。かかる条件で洗浄してもハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。
特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃
」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗
浄条件を挙げることができる。
【0062】
本発明の一本鎖ポリヌクレオチドは、代表的にはDNA又はRNAであるが、ゲノムDNAとよ
り強力に相互作用(例えばハイブリダイズ)可能であるという観点から、好ましくはRNA
である。
【0063】
本発明の一本鎖ポリヌクレオチドは、ゲノムDNAとの相互作用が著しく損なわれない限
りにおいて、次に例示するように、公知の化学修飾が施されていてもよい。ヌクレアーゼ
などの加水分解酵素による分解を防ぐために、各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェー
ト)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネー
ト等の化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各リボヌクレオチドの糖(リ
ボース)の2位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2’-O-Me)、CH2CH2OCH3(2’-O-MOE
)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩
基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5
位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニ
ルへの置換などが挙げられる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えば、ビ
オチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたものなどを挙げる
ことができるが、これに限定されない。また、ヌクレオチドの糖部の2’酸素と4’炭素
を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したものであるBNA(LN
A)等もまた、好ましく用いられ得る。
【0064】
本発明の一本鎖ポリヌクレオチドは、公知の遺伝子工学的手法に従って容易に作製する
ことができる。例えば、PCR、制限酵素切断、DNA連結技術、in vitro転写・翻訳技術等を
利用して作製することができる。
【0065】
2.発現ベクター
本発明の発現ベクターは、本発明の一本鎖ポリヌクレオチドの発現カセットを含有する
発現ベクターである。
【0066】
発現カセットは、ゲノム編集対象細胞又はゲノム編集対象生物の細胞内で本発明の一本
鎖ポリヌクレオチドを発現(転写)可能なポリヌクレオチドである限り特に制限されない
。発現カセットの典型例としては、プロモーター、及びそのプロモーターの制御下に配置
された本発明の一本鎖ポリヌクレオチドのコード配列を有するDNA等のポリヌクレオチド
が挙げられる。
【0067】
発現カセットに含まれるプロモーターとしては、特に制限されず、ゲノム対象細胞又は
ゲノム編集対象生物や、本発明の一本鎖ポリヌクレオチドの塩基数等に応じて、適宜選択
することができる。原核細胞用プロモーターとしては、例えばlacプロモーター、tacプロ
モーター、tetプロモーター、araプロモーター等が挙げられる。また、真核細胞用プロモ
ーターとしては、例えばCMVプロモーター、EF1プロモーター、SV40プロモーター、MSCVプ
ロモーター、hTERTプロモーター、βアクチンプロモーター、CAGプロモーター等のpol II
系プロモーター; マウス及びヒトのU6-snRNAプロモーター、ヒトH1-RNase P RNAプロモ
ーター、ヒトバリン-tRNAプロモーター等のpol III系プロモーター等が挙げられる。
【0068】
発現カセットは、必要に応じて、他のエレメント(例えば、マルチクローニングサイト
(MCS))を含んでいてもよい。例えば、発現カセットにおいて、5’側から、プロモータ
ーと本発明の一本鎖ポリヌクレオチドのコード配列との間に(好ましくはいずれか一方或
いは両方に隣接して)、及び/又は本発明の一本鎖ポリヌクレオチドのコード配列の3’
側に(好ましくは隣接して)、MCSが配置されている態様が挙げられる。MCSは複数(例え
ば2~50、好ましくは2~20、より好ましくは2~10)個の制限酵素サイトを含むものであ
れば特に制限されない。
【0069】
発現ベクターは、上記発現カセット以外の他の配列を有していてもよい。他の配列とし
ては、特に制限されず、発現ベクターが含み得る公知の配列を各種採用することができる
。このような配列の一例としては、例えば複製起点、薬剤耐性遺伝子等が挙げられる。
【0070】
薬剤耐性遺伝子としては、例えばクロラムフェニコール耐性遺伝子、テトラサイクリン
耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシ
ン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシ
ン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0071】
ベクターの種類は、特に制限されず、例えばプラスミドベクター; レトロウイルス、
レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウ
イルス等のウイルスベクター; アグロバクテリウムベクター等が挙げられる。
【0072】
本発明の発現ベクターは、公知の遺伝子工学的手法に従って容易に作製することができ
る。例えば、PCR、制限酵素切断、DNA連結技術、in vitro転写・翻訳技術等を利用して作
製することができる。
【0073】
3.ゲノム編集方法、ゲノム編集された細胞又は非ヒト生物の製造方法
本発明の一本鎖ポリヌクレオチドをゲノム編集対象細胞又はゲノム編集対象非ヒト生物
に導入する工程を含む方法により、これらの細胞又は生物のゲノムを編集すること、より
具体的には、一本鎖ポリヌクレオチドにおいてゲノムDNA中の任意塩基配列が欠失してい
る場合(図1)は、その欠失をゲノム内で起こすことができ、また一本鎖ポリヌクレオチ
ドにおいて任意塩基配列が挿入している場合(図2)は、その挿入をゲノム内で起こすこ
とができ、さらに一本鎖ポリヌクレオチドにおいて任意塩基配列が置換している場合(図
3)は、その置換をゲノム内で起こすことができる。
【0074】
本発明の一本鎖ポリヌクレオチドの導入方法は、特に制限されず、対象細胞又は生物の
種類等に応じて、適宜選択することができる。導入方法としては、例えばマイクロインジ
ェクション、エレクトロポレーション、DEAE-デキストラン処理、リポフェクション、ナ
ノ粒子媒介性トランスフェクション、ウイルス媒介性核酸送達等が挙げられる。
【0075】
本発明の一本鎖ポリヌクレオチドを導入してから、一定時間経過後に、対象細胞又は対
象生物内でゲノム編集が起こるので、この細胞又は生物を回収することにより、ゲノム編
集された(すなわち、一本鎖ポリヌクレオチドにおいてゲノムDNA中の任意塩基配列が欠
失している場合(図1)は、その欠失がゲノム内で起きた、また一本鎖ポリヌクレオチド
において任意塩基配列が挿入している場合(図2)は、その挿入がゲノム内で起きた、さ
らに一本鎖ポリヌクレオチドにおいて任意塩基配列が置換している場合(図3)は、その
置換がゲノム内で起きた)細胞又は非ヒト生物を得ることができる。
【0076】
ゲノム編集対象が細胞である場合、上記回収の際に、一本鎖ポリヌクレオチドの導入対
象となった細胞又は生物を全て回収してもよいし、ゲノム編集された細胞又は生物を選別
してもよい。選別方法としては、特に制限されず、公知の選別方法を採用することができ
る。例えば、ゲノム編集により特定のタンパク質の発現がON/OFFになる場合は、そのタン
パク質の発現の有無を指標として、ゲノム編集された細胞を選別することができる。
【0077】
本発明のゲノム編集技術によれば、ヌクレアーゼ(ZFNタンパク質、TALENタンパク質、
Casタンパク質等)及び/又はその発現ベクターや、ガイドRNA及び/又はその発現ベクタ
ーを導入せずとも、本発明の一本鎖ポリヌクレオチドのみによりゲノム編集が可能である
。この観点から、本発明のゲノム編集方法は、上記ヌクレアーゼ及び/又はその発現ベク
ターや、ガイドRNA及び/又はその発現ベクターを導入する工程を含まない、非ZFN、非TA
LEN、非CRISPR/Cas型ゲノム編集方法である。
【0078】
ゲノム編集方法、及びゲノム編集された細胞又は非ヒト生物の製造方法においては、本
発明の一本鎖ポリヌクレオチドを導入する工程の前に、さらに本発明の一本鎖ポリヌクレ
オチド、及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1種を合成する工程
を含むこともある。また、該合成工程の前に、さらに本発明の一本鎖ポリヌクレオチド、
及びその発現ベクターからなる群より選択される少なくとも1種の配列を設計する工程を
含むこともある。
【0079】
本発明のゲノム編集技術により得られた細胞又は非ヒト生物においては、目的のゲノム
編集部位において、DNAのランダムな削り込みもしくは付加等の意図しない変異が起こら
ない、或いは起こったとしても極めてわずかである。特に、CRISPR/Casシステムに比べる
と、このような意図しない変異を遥かに低減することが可能である。
【0080】
4.ゲノム編集用キット、ゲノム編集用組成物
本発明の一本鎖ポリヌクレオチドは、ゲノム編集用組成物として利用することもできる
し、或いはキットとして利用することもできる。
【0081】
ゲノム編集用組成物は、本発明の一本鎖ポリヌクレオチドを含有する限りにおいて特に
制限されず、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、薬学
的に許容される成分であれば特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、
分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、
着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。
【0082】
ゲノム編集用キットは、本発明の一本鎖ポリヌクレオチドが含まれている限りにおいて
特に制限されず、必要に応じて核酸導入試薬、緩衝液等、本発明のゲノム編集方法の実施
に必要な他の試薬、器具等を適宜含んでいてもよい。
【0083】
本発明のゲノム編集技術によれば、ヌクレアーゼ(ZFNタンパク質、TALENタンパク質、
Casタンパク質等)及び/又はその発現ベクターや、ガイドRNA及び/又はその発現ベクタ
ーを導入せずとも、本発明の一本鎖ポリヌクレオチドのみによりゲノム編集が可能である
。この観点から、本発明のゲノム編集用組成物及びキットは、上記ヌクレアーゼ及び/又
はその発現ベクターや、ガイドRNA及び/又はその発現ベクターを含まない、非ZFN、非TA
LEN、非CRISPR/Cas型ゲノム編集用組成物及びキットである。
【実施例0084】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によっ
て限定されるものではない。
【0085】
実施例1.一本鎖ポリヌクレオチドによるゲノム編集1
緑膿菌のmexR遺伝子内の任意のセンス鎖塩基配列に対して、該配列の中央部の任意塩基
配列が欠失又は挿入してなる塩基配列(配列番号1~6)からなる一本鎖DNAを、DNA合成受
託会社(macrogen)にて合成した。これらの一本鎖DNAの各部位の塩基数を表1に示す。
表1中、パターン及び(a)~(e)は、図1及び図2のパターン及び(a)~(e)に対応
する。
【0086】
【表1】
【0087】
また、これらの一本鎖DNAの配列のゲノムDNAとの対応関係を図7に示す。図7中、「-
」は一本鎖DNAにおいて欠失している塩基を示し、「 }」はゲノムDNA配列に対して挿入
した配列及び挿入位置を示す。
【0088】
これらの一本鎖DNAの導入により、緑膿菌のmexR遺伝子内において、パターン1の場合は
部分(c)の欠失、パターン2の場合は部分(d)と部分(e)の間に部分(c)の挿入が起
こると、該遺伝子から発現するタンパク質はmexRタンパク質本来の活性(MexAB-OprM薬剤
排出ポンプの発現抑制活性)が損なわれることとなり、緑膿菌の薬剤耐性能が高まるので
、薬剤含有培地で生育する菌数(コロニー数)が増加することが予想される。
【0089】
一本鎖DNA(配列番号1~6)それぞれを、500μMになるように水に溶解し、一本鎖DNA溶
液を得た。一本鎖DNA溶液1μL又は水1μLを、緑膿菌(PAO1S-Lac)のコンピテントセル溶
液40μLに添加し、氷上で20分間放置した。エレクトロポレーション法(2500V、25μF、7
00Ω)により一本鎖DNAを細胞内に導入した後、SOC培地を960μL添加し、37℃で4時間、
振盪培養した。得られた培養液を、アズトレオナム含有LB寒天培地上にプレーティングし
、37℃で2日間培養した。培養後、コロニー数をカウントし、一本鎖DNAの代わりに水を添
加した場合(コントロール)のコロニー数に対する、一本鎖DNAを添加した場合のコロニ
ー数の相対値(コロニー数相対値)を算出した。さらに、任意の10個のコロニーをピック
アップしてシークエンシングを行い、目的の変異(パターン1の場合は部分(c)の欠失、
パターン2の場合は部分(d)と部分(e)の間に部分(c)の挿入)が起こっているコロニ
ーの割合を算出した。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2に示されるように、ゲノムのセンス鎖塩基配列に対して任意塩基配列が欠失又は挿
入してなる塩基配列からなる一本鎖DNAにより、ゲノムにおいて目的の変異(パターン1の
場合は部分(c)の欠失、パターン2の場合は部分(d)と部分(e)の間に部分(c)の挿
入)が起こっていた。また、コロニー数相対値から、一本鎖DNAの長さがより長い方が、
目的の変異の導入効率がより高まることが示唆された。
【0092】
なお、109R-1を用いた場合のコロニー数は、コントロールのコロニー数は同程度であっ
た(コロニー数相対値=0.9)が、シークエンシングの結果、これは、コントロールの方
でも、自然に発生する変異(部分(c)の欠失又は挿入とは異なる変異(点変異等))に
より、薬剤耐性がある程度向上していたためであることが明らかとなった。表2に示され
るように、109R-1を用いた場合であっても目的の変異を起こすことができた。
【0093】
実施例2.一本鎖ポリヌクレオチドによるゲノム編集2
緑膿菌のmexR遺伝子内の任意のセンス鎖塩基配列に対して、該配列の中央部の任意塩基
配列が欠失してなる塩基配列(配列番号7)からなる一本鎖DNAを、DNA合成受託会社(mac
rogen)にて合成した。この一本鎖DNAの各部位の塩基数を表3に示す。表3中、パターン
及び(a)~(e)は、図1及び図2のパターン及び(a)~(e)に対応する。
【0094】
【表3】
【0095】
実施例1と同様にして試験を行い、シークエンシングした結果、任意にピックアップし
た10個のコロニー中、2個のコロニーで目的の変異((c)の欠失)が導入できていた。
【0096】
実施例3.一本鎖ポリヌクレオチドによるゲノム編集3
下記(A)~(D)の一本鎖DNA:を、DNA合成受託会社(FASMAC)にて合成した。(A)
緑膿菌のmexT遺伝子内の任意のセンス鎖塩基配列に対して、該配列の中央部の任意塩基配
列が欠失してなる塩基配列(配列番号8~9)からなる一本鎖DNA、
(B)緑膿菌のmexT遺伝子内の任意のアンチセンス鎖塩基配列に対して、該配列の中央部
の任意塩基配列が欠失してなる塩基配列(配列番号10~11)からなる一本鎖DNA((A)の
アンチセンス鎖)、
(C)緑膿菌のmexT遺伝子内の任意のセンス鎖塩基配列(配列番号12~13)からなる一本
鎖DNA((A)の、欠失前の配列)、
(D)緑膿菌のmexT遺伝子内の任意のアンチセンス鎖塩基配列(配列番号14~15)からな
る一本鎖DNA((B)の、欠失前の配列)。
【0097】
これらの一本鎖DNAの各部位の塩基数を表4に示す。表4中、パターン及び(a)~(e
)は、図1及び図2のパターン及び(a)~(e)に対応しており、sはセンス鎖を示し、a
はアンチセンス鎖を示す。
【0098】
【表4】
【0099】
これらの一本鎖DNAの導入により、緑膿菌のmexT遺伝子内において、部分(c)の欠失が
起こると、該遺伝子から活性型mexTタンパク質が発現し、これによりMexEF-OprM薬剤排出
ポンプの発現が増強されて、緑膿菌の薬剤耐性能が高まるので、薬剤含有培地で生育する
菌数(コロニー数)が増加することとなる。
【0100】
実施例1と同様にして試験を行い、一本鎖DNAの代わりに水を添加した場合(コントロー
ル)のコロニー数に対する、一本鎖DNAを添加した場合のコロニー数の相対値を算出した
。結果を表5及び表6に示す。
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
表5及び表6に示されるように、(A)センス鎖塩基配列に対して、該配列の中央部の
任意塩基配列が欠失してなる塩基配列からなる一本鎖DNAを用いた場合のみ、コロニー数
相対値が大きく増加していた。これは、(A)の一本鎖DNAを用いた場合のみ、ゲノムにお
いて目的の変異が起こっていたことを示唆する。以上より、ゲノムにおいて目的の変異を
起こすには、一本鎖DNAの塩基配列は、ゲノムのセンス鎖塩基配列に基づく配列であるこ
とが重要であることが示された。
【0104】
実施例4.一本鎖ポリヌクレオチドによるゲノム編集4
緑膿菌のmexR遺伝子内の任意のセンス鎖塩基配列に対して、該配列の中央部の任意塩基
配列が挿入してなる塩基配列(配列番号5、6及び16~21)からなる一本鎖DNAを、DNA合成
受託会社(macrogen)にて合成した。これらの一本鎖DNAは、長さ、、挿入される塩基配
列等が異なる関係にある。これらの一本鎖DNAの各部位の塩基数を表7に示す。表7中、
パターン及び(a)~(e)は、図1及び図2のパターン及び(a)~(e)に対応する。
【0105】
【表7】
【0106】
実施例1と同様にして試験を行った。任意の10個のコロニーをピックアップし、それぞ
れのコロニーから抽出したDNAを鋳型として、挿入が予想される部位を挟むように配置さ
れたプライマーセットでPCRを行った。得られたPCR産物の電気泳動像より、バンドの位置
が高分子側にシフトしているサンプル(すなわち、部分(c)の挿入が起こっていると予
想されるサンプル)の割合を算出した。さらにシークエンシングで確認し、部分(c)の
挿入が起こっているサンプルの割合を求めた。その結果を表8に示す。なお、PCRにより
算出された割合と、シークエンシングにより確認された割合は、ほぼ同じであった。
【0107】
【表8】
【0108】
表8に示されるように、一本鎖DNAにおいて挿入される塩基配列が異なっても、ゲノム
において目的の変異(部分(c)の挿入)が起こっていた。
【0109】
実施例5.一本鎖ポリヌクレオチドの発現ベクターによるゲノム編集
pMMB67EHベクターのプロモーター下流に位置するMCSのEcoR IサイトとHind IIIサイト
を制限酵素で切断し、そこへ、野生型mexS遺伝子ORF全長に対して一部の塩基配列が欠失
してなる塩基配列(mexS遺伝子欠失体配列:配列番号22~24)を含むDNA断片を挿入した
。得られたベクターの名称、挿入されたmexS遺伝子欠失体配列の配列番号、及びmexS遺伝
子欠失体配列における欠失部位(野生型mexS遺伝子ORFの5’末端の塩基を1番目の塩基と
する)を表9に示す。
【0110】
【表9】
【0111】
これらのベクターが導入された緑膿菌(8380株)又は野生型緑膿菌(8380株)を40μL
の水に懸濁し、得られた懸濁液をLB培地(lennox)5 mLに添加し、37℃で17時間、振盪培
養した。得られた培養液をクロラムフェニコール含有LB寒天培地上にプレーティングし、
37℃で1日間培養した。コロニー数をカウントし、野生型緑膿菌を用いた場合のコロニー
数に対する、ベクターが導入された緑膿菌を用いた場合のコロニー数の相対値(コロニー
数相対値)を算出した。独立の実験で算出されたコロニー数相対値それぞれを表10に示
す。
【0112】
これらのベクターの導入により、ベクター内のmexS遺伝子欠失体において欠失させてい
る部位が、緑膿菌ゲノムのmexS遺伝子内において欠失すると、該遺伝子から発現するタン
パク質は本来の活性(mexT発現抑制活性)が損なわれることとなり、これによりMexEF-Op
rM薬剤排出ポンプの発現が増強されて、緑膿菌の薬剤耐性能が高まるので、薬剤含有培地
で生育する菌数(コロニー数)が増加することとなる。
【0113】
【表10】
【0114】
表10に示されるように、mexS遺伝子欠失体配列が挿入されたベクターの導入により、
コロニー数が大幅に増加した。中でも、mexS遺伝子欠失体配列における欠失塩基数が8で
ある場合は、特に顕著にコロニー数が増加した。このことから、mexS遺伝子欠失体配列が
挿入されたベクターの導入により、目的の変異(ベクター内のmexS遺伝子欠失体において
欠失させている部位が、緑膿菌ゲノムのmexS遺伝子内において欠失すること)が起こるこ
とが示唆された。
【0115】
さらに、上記とは別に、上記と同様の試験により得られたコロニーを基にシークエンシ
ングした結果、mexS遺伝子欠失体配列が挿入されたベクターを導入した場合は、全てのコ
ロニーにおいて、目的の変異が起こっていることが確認された。
【0116】
実施例6.一本鎖ポリヌクレオチドによるゲノム編集5
GFPのコード配列内に8塩基を挿入してなる改変GFPの発現カセットが導入されたHEK293T
細胞(アッセイ細胞)を作製した。該改変GFPは、8塩基の挿入により読み枠がずれている
ので、翻訳後のタンパク質が不活性型となり、蛍光を示さない。改変GFPのコード配列(
配列番号25)を図8に示す。
【0117】
なお、アッセイ細胞は次のようにして作製した。Transfection試薬にプラスミド(細胞
の染色体にランダムに挿入されるpCDH-CMV-EGFP-nonPOD-RFP+Puro)を混合し、HEK293Tと
混和し、培地に0.5 ng/μlのピューロマイシンを含む培地で培養し、細胞にpCDH-CMV-EGF
P-nonPOD-RFP+Puroベクターが挿入された細胞集団を濃縮した。この細胞集団をアッセイ
細胞とした。
【0118】
本実施例では、該改変GFPに対して、上記8塩基が欠失してなる塩基配列からなる一本鎖
DNA(100EGFPdelnonPOD:配列番号26、及び120EGFPdelnonPOD:配列番号27)を、DNA合成
受託会社(macrogen)にて合成した。この一本鎖DNAの各部位の塩基数を表11に示す。
表11中、パターン及び(a)~(e)は、図1のパターン及び(a)~(e)に対応する。
【0119】
【表11】
【0120】
この一本鎖DNAの導入により、アッセイ細胞内において、改変GFPコード配列内の上記8
塩基の欠失が起こると、正常なGFPタンパク質が発現することになるので、細胞の蛍光が
観察されると予想される。
【0121】
一本鎖DNAの導入は以下のようにして行った。
【0122】
<FuGENE HD Transfection Reagentの準備>
1.使用前にFuGENE HD Transfection Reagentを室温に戻した。
2.転倒混和またはボルテックスにより混和した。(誤って凍結させ、沈殿が生じた場合は
37°Cで短時間温め、沈殿を融解させた後、室温に戻した。
【0123】
<細胞へのトランスフェクションとゲノム編集の確認>
1. 滅菌チューブに、あらかじめ室温にしたopti-MEM培地672μlを加えた。一本鎖DNA溶
液を14μg加え、ボルテックスで混和した。そこへ、FuGENE HD Transfection Reagentを4
3μl加え、すばやく混合し、FuGENE HD Transfection Reagent/DNA混合液を作成した。
2. FuGENE HD Transfection Reagent/DNA混合液を、室温で10分間インキュベートした。
3. アッセイ細胞が増殖しているプレートに 325μLのFuGENE HD Transfection Reagent/
DNA混合液を加え、優しく混和し、細胞をインキュベータに戻して4日間培養し、それを10
cmディッシュに植え継ぎ、さらに3日間インキュベートした。
4. 培養後、蛍光顕微鏡を用いて観察した。
蛍光観察像を図9に示す。図9に示されるように、蛍光を発する細胞集団が観察された

5. 目視で発色した細胞集団を検出・回収し、そこからDNAを抽出し、目的の意図したゲ
ノム編集が起きていることを、次世代sequencer、もしくは、sanger法による塩基配列の
決定により確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2022023037000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-10-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本鎖形態のDNAであって、
化学修飾を有し、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを単離されたヒト細胞(但し、配偶子および受精卵を除く)に導入する工程を含み、これにより、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が、(ia)、(ib)、および(ic)からなる群から選択されるいずれかの改変塩基配列に置き換わり、
上記工程においてヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方を用いない、
ゲノム編集方法。
【請求項2】
化学修飾が、
(a)ヌクレオチドのリン酸部分をホスホロチオエートに置き換える化学修飾であるか;
(b)リボースの2位の水酸基を-O-メチル、または-O-CH 2 CH 2 OCH 3 に置き換えるものであるか;または
(c)リボースの2位の酸素と4位の炭素とを架橋し、リボースのコンフォメーションをN型に固定するBNAである、
請求項1に記載のゲノム編集方法。
【請求項3】
(a)化学修飾が、ヌクレオチドのリン酸部分をホスホロチオエートに置き換える化学修飾である、請求項2に記載のゲノム編集方法。
【請求項4】
前記任意塩基配列の塩基数が、5~50である、請求項1~3のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項5】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、若しくは
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列
からなる、請求項1~3のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項6】
前記改変塩基配列の塩基数が95~200である、請求項1~5のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項7】
前記改変塩基配列の塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の塩基数の比が10以下である、請求項1~6のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項8】
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数の比が、0.2~5である、請求項1~7のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項9】
一本鎖形態のDNAであって、
化学修飾を有し、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを含有し、かつ、
ヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方と一緒に用いられない、
ヒト細胞またはヒトのゲノム編集用組成物。
【請求項10】
一本鎖形態のDNAであって、
化学修飾を有し、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを含有し、かつ、
ヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方と一緒に用いられない、
ヒト細胞またはヒトのゲノム編集用キット。
【請求項11】
一本鎖形態のDNAであって、
化学修飾を有し、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを単離されたヒト細胞(但し、配偶子および受精卵を除く)に導入する工程を含み、これにより、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が、(ia)、(ib)、および(ic)からなる群から選択されるいずれかの改変塩基配列に置き換わり、
上記工程においてヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方を用いない、
ゲノム編集されたヒト細胞の製造方法。

【手続補正書】
【提出日】2021-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本鎖形態のDNA(但し、ソラレンと連結したものを除く)であって
i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを単離されたヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞、MMR欠損細胞、配偶子および受精卵を除く)に導入する工程を含み、これにより、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が、(ia)、(ib)、および(ic)からなる群から選択されるいずれかの改変塩基配列に置き換わり、
その後、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が改変塩基配列に置き換わった細胞を選別して取得する工程をさらに含み、
上記工程においてヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方を用いない、
ゲノム編集方法。
【請求項2】
一本鎖形態のDNAが化学修飾を有し、化学修飾が、リボースの2位の水素を-O-メチル、または-O-CH 2 CH 2 OCH 3 に置き換える修飾を含む、
請求項1に記載のゲノム編集方法。
【請求項3】
一本鎖形態のDNAが化学修飾を有し、化学修飾が、リボースの2位の炭素と4位の炭素とを架橋し、リボースのコンフォメーションをN型に固定する修飾を含む、
請求項1に記載のゲノム編集方法。
【請求項4】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項1~3のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項5】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列からなる、請求項1~3のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項6】
前記改変塩基配列の塩基数が95~200である、請求項1~5のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項7】
前記改変塩基配列の塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の塩基数の比が10以下である、請求項1~6のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項8】
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数の比が、0.2~5である、請求項1~7のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項9】
一本鎖形態のDNA(但し、ソラレンと連結したものを除く)であって
i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを含有し、かつ、
ヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方と一緒に用いられず、
前記一本鎖形態のDNAをヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞でもMMR欠損細胞でもない)に導入するように用いられる、
ヒト細胞またはヒトのゲノム編集用組成物。
【請求項10】
一本鎖形態のDNA(但し、ソラレンと連結したものを除く)であって
i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを含有し、かつ、
ヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方と一緒に用いられず、
前記一本鎖形態のDNAをヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞でもMMR欠損細胞でもない)に導入するように用いられる、
ヒト細胞またはヒトのゲノム編集用キット。
【請求項11】
一本鎖形態のDNA(但し、ソラレンと連結したものを除く)であって
i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを単離されたヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞、MMR欠損細胞、配偶子および受精卵を除く)に導入する工程を含み、これにより、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が、(ia)、(ib)、および(ic)からなる群から選択されるいずれかの改変塩基配列に置き換わり、
その後、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が改変塩基配列に置き換わった細胞を選別して取得する工程をさらに含み、
上記工程においてヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方を用いない、
ゲノム編集されたヒト細胞の製造方法。
【請求項12】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項9に記載のゲノム編集用組成物。
【請求項13】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列からなる、請求項9に記載のゲノム編集用組成物。
【請求項14】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項10に記載のゲノム編集用キット。
【請求項15】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列からなる、請求項10に記載のゲノム編集用キット。
【請求項16】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項11に記載の製造方法。
【請求項17】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項1~8のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項18】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項9に記載のゲノム編集用組成物。
【請求項19】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項10に記載のゲノム編集用キット。
【請求項20】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項11に記載の製造方法。
【請求項21】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ib)6~20塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列からなる、請求項1~3および6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ib)8~9塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列からなる、請求項21に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本鎖形態のDNAであって、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを単離されたヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞、ミスマッチ修復(MMR欠損細胞、配偶子および受精卵を除く)に導入する工程を含み、これにより、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が、(ia)、(ib)、および(ic)からなる群から選択されるいずれかの改変塩基配列に置き換わり、
上記工程においてヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方を用いず、かつ、ソラレンを用いず、
その後、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が改変塩基配列に置き換わった細胞を選別して取得する工程をさらに含む、
ノム編集方法。
【請求項2】
一本鎖形態のDNAが化学修飾を有し、化学修飾が、リボースの2位の水素を-O-メチル、または-O-CH2CH2OCH3に置き換える修飾を含む、
請求項1に記載のゲノム編集方法。
【請求項3】
一本鎖形態のDNAが化学修飾を有し、化学修飾が、リボースの2位の炭素と4位の炭素とを架橋し、リボースのコンフォメーションをN型に固定する修飾を含む、
請求項1に記載のゲノム編集方法。
【請求項4】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項1~3のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項5】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列からなる、請求項1~3のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項6】
前記改変塩基配列の塩基数が95~200である、請求項1~5のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項7】
前記改変塩基配列の塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の塩基数の比が10以下である、請求項1~6のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項8】
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数の比が、0.2~5である、請求項1~7のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項9】
一本鎖形態のDNAであって、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを含有し、かつ、
ヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方と一緒に用いられず、かつ、ソラレンとも一緒に用いられず、
前記一本鎖形態のDNAをヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞でもミスマッチ修復(MMR欠損細胞でもない)に導入するように用いられる、
ヒト細胞またはヒトのゲノム編集用組成物。
【請求項10】
一本鎖形態のDNAであって、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを含有し、かつ、
ヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方と一緒に用いられず、かつ、ソラレンとも一緒に用いられず、
前記一本鎖形態のDNAをヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞でもミスマッチ修復(MMR欠損細胞でもない)に導入するように用いられる、
ヒト細胞またはヒトのゲノム編集用キット。
【請求項11】
一本鎖形態のDNAであって、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを単離されたヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞、ミスマッチ修復(MMR欠損細胞、配偶子および受精卵を除く)に導入する工程を含み、これにより、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が、(ia)、(ib)、および(ic)からなる群から選択されるいずれかの改変塩基配列に置き換わり、
上記工程においてヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方を用いず、かつ、ソラレンを用いず、
その後、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が改変塩基配列に置き換わった細胞を選別して取得する工程をさらに含む、
ノム編集されたヒト細胞の製造方法。
【請求項12】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項9に記載のゲノム編集用組成物。
【請求項13】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列からなる、請求項9に記載のゲノム編集用組成物。
【請求項14】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項10に記載のゲノム編集用キット。
【請求項15】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列からなる、請求項10に記載のゲノム編集用キット。
【請求項16】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項11に記載の製造方法。
【請求項17】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項1~4および6~8のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項18】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項9に記載のゲノム編集用組成物。
【請求項19】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項10に記載のゲノム編集用キット。
【請求項20】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項11に記載の製造方法。
【請求項21】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ib)6~20塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列からなる、請求項1~3および6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)真核細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ib)8~9塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列からなる、請求項21に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本鎖形態のDNAであって、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを単離されたヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞、ミスマッチ修復(MMR欠損細胞、配偶子および受精卵を除く)に導入する工程を含み、これにより、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が、(ia)、(ib)、および(ic)からなる群から選択されるいずれかの改変塩基配列に置き換わり、
上記工程においてヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方を用いず、かつ、ソラレンを用いず、
その後、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が改変塩基配列に置き換わった細胞を選別して取得する工程をさらに含む、
ノム編集方法。
【請求項2】
一本鎖形態のDNAが化学修飾を有し、化学修飾が、リボースの2位の水素を-O-メチル、または-O-CH2CH2OCH3に置き換える修飾を含む、
請求項1に記載のゲノム編集方法。
【請求項3】
一本鎖形態のDNAが化学修飾を有し、化学修飾が、リボースの2位の炭素と4位の炭素とを架橋し、リボースのコンフォメーションをN型に固定する修飾を含む、
請求項1に記載のゲノム編集方法。
【請求項4】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項1~3のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項5】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列からなる、請求項1~3のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項6】
前記改変塩基配列の塩基数が95~200である、請求項1~5のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項7】
前記改変塩基配列の塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の塩基数の比が10以下である、請求項1~6のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項8】
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数に対する、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数の比が、0.2~5である、請求項1~7のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項9】
一本鎖形態のDNAであって、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを含有し、かつ、
ヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方と一緒に用いられず、かつ、ソラレンとも一緒に用いられず、
前記一本鎖形態のDNAをヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞でもミスマッチ修復(MMR欠損細胞でもない)に導入するように用いられる、
ヒト細胞またはヒトのゲノム編集用組成物。
【請求項10】
一本鎖形態のDNAであって、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを含有し、かつ、
ヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方と一緒に用いられず、かつ、ソラレンとも一緒に用いられず、
前記一本鎖形態のDNAをヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞でもミスマッチ修復(MMR欠損細胞でもない)に導入するように用いられる、
ヒト細胞またはヒトのゲノム編集用キット。
【請求項11】
一本鎖形態のDNAであって、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列、
(ib)1または2塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列、若しくは
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列
からなり、改変塩基配列の塩基数は、80~200であり、且つ
前記センス鎖塩基配列の5’末端の塩基から、欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も5’側の塩基の5’側隣の塩基までの塩基数、及び欠失、挿入、又は置換する前記任意塩基配列の最も3’側の塩基の3’側隣の塩基から、前記センス鎖塩基配列の3’末端の塩基までの塩基数が、30~100である、
前記一本鎖形態のDNAを単離されたヒト細胞(但し、MSH2欠損細胞、ミスマッチ修復(MMR欠損細胞、配偶子および受精卵を除く)に導入する工程を含み、これにより、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が、(ia)、(ib)、および(ic)からなる群から選択されるいずれかの改変塩基配列に置き換わり、
上記工程においてヌクレアーゼ及びその発現ベクターのいずれかまたは両方を用いず、かつ、ソラレンを用いず、
その後、ゲノムDNAの上記任意のセンス鎖塩基配列が改変塩基配列に置き換わった細胞を選別して取得する工程をさらに含む、
ノム編集されたヒト細胞の製造方法。
【請求項12】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項9に記載のゲノム編集用組成物。
【請求項13】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列からなる、請求項9に記載のゲノム編集用組成物。
【請求項14】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項10に記載のゲノム編集用キット。
【請求項15】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ic)内部の連続する2塩基長以上の任意塩基配列が他の塩基配列に置換してなる改変塩基配列からなる、請求項10に記載のゲノム編集用キット。
【請求項16】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項11に記載の製造方法。
【請求項17】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項1~4および6~8のいずれかに記載のゲノム編集方法。
【請求項18】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項9に記載のゲノム編集用組成物。
【請求項19】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項10に記載のゲノム編集用キット。
【請求項20】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ia)6~20塩基長の内部の任意塩基配列が欠失してなる改変塩基配列からなる、請求項11に記載の製造方法。
【請求項21】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ib)6~20塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列からなる、請求項1~3および6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記一本鎖形態のDNAが、
(i)ヒト細胞中のゲノムDNAの任意のセンス鎖塩基配列に対して
(ib)8~9塩基長の任意塩基配列が挿入してなる改変塩基配列からなる、請求項21に記載の方法。