IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラピスセミコンダクタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-表示ドライバ及び表示装置 図1
  • 特開-表示ドライバ及び表示装置 図2
  • 特開-表示ドライバ及び表示装置 図3
  • 特開-表示ドライバ及び表示装置 図4
  • 特開-表示ドライバ及び表示装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023448
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】表示ドライバ及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20220201BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20220201BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 621F
G09G3/20 623C
G09G3/20 670L
G09G3/20 612U
G02F1/133 570
G02F1/133 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126396
(22)【出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】重田 賢一
【テーマコード(参考)】
2H193
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H193ZA04
2H193ZC24
2H193ZD23
2H193ZE01
2H193ZF05
2H193ZF11
2H193ZF31
2H193ZH17
2H193ZH34
2H193ZH53
5C006AC21
5C006AF42
5C006AF43
5C006AF45
5C006AF53
5C006AF68
5C006AF83
5C006BB11
5C006BC03
5C006BC13
5C006BC23
5C006BF04
5C006BF06
5C006BF14
5C006BF25
5C006BF38
5C006FA12
5C006FA14
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD08
5C080DD20
5C080FF12
5C080JJ02
(57)【要約】
【目的】発熱に伴う画質劣化を抑えて、高速応答処理が可能な表示ドライバ及びこの表示ドライバを有する表示装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明に係る、映像信号に基づき複数の駆動電圧を生成して夫々を表示パネルの複数のソース線に印加する表示ドライバは、駆動電圧の振幅を増加するオーバードライブ処理を実行するオーバードライブ部と、表示ドライバ内の温度を検出し、その温度が所定の温度閾値より高い場合にはオーバードライブ部によるオーバードライブ処理を停止させるオーバードライブ制御回路と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号を受け、前記映像信号に基づき複数の駆動電圧を生成して夫々を表示パネルの複数のソース線各々に印加する表示ドライバであって、
前記複数の駆動電圧の各々の振幅を増加するオーバードライブ処理を行うオーバードライブ部と、
前記表示ドライバ内の温度を検出し、前記温度が所定の温度閾値より高い場合には前記オーバードライブ部による前記オーバードライブ処理を停止させるオーバードライブ制御回路と、を有することを特徴とする表示ドライバ。
【請求項2】
前記映像信号に基づき各画素の輝度レベルを示す画素データ片の系列を生成するタイミング制御部を含み、
前記オーバードライブ部は、前記画素データ片によって示される輝度レベルを増加又は低下させる処理を前記オーバードライブ処理として前記画素データ片に施すことで前記駆動電圧の振幅を増加させることを特徴とする請求項1に記載の表示ドライバ。
【請求項3】
前記オーバードライブ部は、前記オーバードライブ処理において、前記表示パネルにおける2次元画面の垂直方向に隣接する一対の画素毎に、前記一対の画素に対応した一対の画素データ片同士による輝度レベルの変化量に対応したオーバードライブ量を求め、前記オーバードライブ量を前記一対の画素データ片のうちの一方に加算又は減算することを特徴とする請求項2に記載の表示ドライバ。
【請求項4】
前記タイミング制御部で生成された前記画素データ片の系列を取り込み、前記画素データ片の各々に対応した電圧値を夫々が有する複数の電圧を前記複数の駆動電圧として生成するドライバICを含み、
前記ドライバIC内に前記オーバードライブ制御回路が含まれており、
前記タイミング制御部に前記オーバードライブ部が含まれていることを特徴とする請求項2又は3に記載の表示ドライバ。
【請求項5】
前記オーバードライブ制御回路は、
前記ドライバIC内の温度を検出する温度検出回路と、
前記温度閾値を保持するレジスタと、
前記温度が前記レジスタに保持されている前記温度閾値以下である場合には温度異常無しを示す一方、前記温度が前記レジスタに保持されている前記温度閾値より高い場合には温度異常有りを示す温度異常信号を前記タイミング制御部に供給する比較器と、を含み、
前記オーバードライブ部は、温度異常有りを示す前記温度異常信号を受けた場合に前記オーバードライブ処理を停止することを特徴とする請求項4に記載の表示ドライバ。
【請求項6】
前記タイミング制御部で生成された前記画素データ片の系列を取り込み、前記画素データ片の各々に対応した電圧値を夫々が有する複数の電圧を前記複数の駆動電圧として生成するドライバICを含み、
前記ドライバIC内に前記オーバードライブ部及び前記オーバードライブ制御回路が含まれていることを特徴とする請求項2又は3に記載の表示ドライバ。
【請求項7】
前記ドライバICは、前記複数のソース線をN(Nは2以上の整数)個に分割した第1~第Nのソース線群に夫々対応して設けられている第1~第NのドライバICからなり、
前記第1~第NのドライバICの各々は、前記オーバードライブ部及び前記オーバードライブ制御回路を含み、
前記オーバードライブ制御回路は、
前記ドライバIC内の温度を検出して検出した温度を表す温度信号を生成する温度検出回路と、
前記第1~第NのドライバIC各々の前記温度検出回路で検出された前記温度信号各々の平均値又は加重平均値平均値を求める平均回路と、
前記平均値又は加重平均値平均値が前記レジスタに保持されている前記温度閾値以下である場合には温度異常無しを示す一方、前記温度が前記レジスタに保持されている前記温度閾値より高い場合には温度異常有りを示す温度異常信号を前記オーバードライブ部に供給する比較器と、を含み、
前記オーバードライブ部は、温度異常有りを示す前記温度異常信号を受けた場合に前記オーバードライブ処理を停止することを特徴とする請求項6に記載の表示ドライバ。
【請求項8】
映像信号を受け、前記映像信号に基づき各画素の輝度レベルを示す複数の画素データ片を生成すると共に、前記画素データ片にて示される輝度レベルを増加又は低下させるオーバードライブ処理を前記画素データ片の各々に施した画素データ片の系列を出力するタイミング制御部と、
前記タイミング制御部から出力された前記画素データ片の系列に基づき、前記画素データ片の各々で表される輝度レベルに対応した電圧値を夫々が有する複数の駆動電圧を生成して、表示パネルの複数のソース線に印加するドライバICと、を含み、
前記ドライバICは、
当該ドライバIC内の温度を検出し、前記温度が所定の温度閾値より高い場合には前記タイミング制御部での前記オーバードライブ処理を停止させるオーバードライブ制御回路を含むことを特徴とする表示ドライバ。
【請求項9】
夫々に複数の画素が形成されている複数のソース線を有する表示パネルと、
映像信号を受け、前記映像信号に基づき各画素の輝度レベルを示す複数の画素データ片を生成すると共に、前記画素データ片にて示される輝度レベルを増加又は低下させるオーバードライブ処理を前記画素データ片の各々に施した画素データ片の系列を出力するタイミング制御部と、
前記タイミング制御部から出力された前記画素データ片の系列に基づき、前記画素データ片の各々で表される輝度レベルに対応した電圧値を夫々が有する複数の駆動電圧を生成して、前記表示パネルの前記複数のソース線に印加するドライバICと、を含み、
前記ドライバICは、
当該ドライバIC内の温度を検出し、前記温度が所定の温度閾値より高い場合には前記タイミング制御部での前記オーバードライブ処理を停止させるオーバードライブ制御回路を含むことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号に応じて表示パネルを駆動する駆動信号を生成する表示ドライバ、及び当該表示ドライバを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置としての液晶表示装置には、液晶表示パネルと共に当該液晶表示パネルを駆動する表示ドライバが含まれている。表示ドライバは、映像信号によって表される輝度に対応した電圧値を有する駆動信号を生成し、これを液晶表示パネルに供給する。液晶表示パネルでは、かかる駆動信号を受けると当該駆動信号の電圧値を各画素に書き込ませ、書き込んだ電圧値に対応した輝度レベルで画素を発光させる。
【0003】
ところで、近年、液晶表示パネルの大画面化及び高精細化に伴う水平走査期間の短縮により、当該液晶表示パネルを駆動する表示ドライバに対して高速処理が求められている。
【0004】
つまり、液晶表示パネルが容量を有することから、駆動信号を受けてから各画素がその駆動信号の電圧値の状態に到るまでの応答時間が比較的長くなる。よって、水平走査期間が短くなり、その水平走査期間内で駆動信号の電圧値が所望とする電圧値に到達しない場合には、映像信号に基づく輝度レベルでの表示が為されなくなる。
【0005】
そこで、近年、高精細液晶表示装置では、映像信号にて表される輝度よりも高い(又は低い)輝度に対応した電圧値の駆動信号で液晶表示パネルを駆動するという、いわゆるオーバードライブを採用することで、応答速度の改善を図るようにしている。
【0006】
また、このようなオーバードライブを採用した液晶表示装置として、液晶表示装置外に、液晶表示パネルの温度を測定する温度センサを設け、液晶表示パネルの温度に応じてオーバードライブ量を調整するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のオーバードライブは、液晶表示パネルの温度が高い場合には液晶の応答速度が速くなることに着目し、液晶表示パネルの温度が高いほど、オーバードライバ量を減らすことで、液晶表示パネルの温度に拘らずその応答速度を均一化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-40036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したオーバードライブの量を大きくする、つまり駆動信号の振幅を大きくするほど、表示ドライバの応答速度を高めることができる。
【0009】
しかしながら、オーバードライブ量を大きくするほど、表示ドライバで消費される電力が増加して当該表示ドライバが発熱する。表示ドライバが高温状態で動作し続けた場合、表示ドライバが正常に動作しなくなる可能性が高くなり、画質劣化を招くという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、発熱に伴う画質劣化を抑えて、高速応答処理が可能な表示ドライバ及びこの表示ドライバを有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る表示ドライバは、映像信号を受け、前記映像信号に基づき複数の駆動電圧を生成して夫々を表示パネルの複数のソース線各々に印加する表示ドライバであって、前記複数の駆動電圧の各々の振幅を増加するオーバードライブ処理を行うオーバードライブ部と、前記表示ドライバ内の温度を検出し、前記温度が所定の温度閾値より高い場合には前記オーバードライブ部による前記オーバードライブ処理を停止させるオーバードライブ制御回路と、を有する。
【0012】
本発明に係る表示装置は、夫々に複数の画素が形成されている複数のソース線を有する表示パネルと、映像信号を受け、前記映像信号に基づき各画素の輝度レベルを示す複数の画素データ片を生成すると共に、前記画素データ片にて示される輝度レベルを増加又は低下させるオーバードライブ処理を前記画素データ片の各々に施した画素データ片の系列を出力するタイミング制御部と、前記タイミング制御部から出力された前記画素データ片の系列に基づき、前記画素データ片の各々で表される輝度レベルに対応した電圧値を夫々が有する複数の駆動電圧を生成して、前記表示パネルの前記複数のソース線に印加するドライバICと、を含み、前記ドライバICは、当該ドライバIC内の温度を検出し、前記温度が所定の温度閾値より高い場合には前記タイミング制御部での前記オーバードライブ処理を停止させるオーバードライブ制御回路を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、映像信号に基づく駆動電圧を生成して表示パネルのソース線に印加する表示ドライバに対して、その内部の温度を検出し、当該温度が所定の温度閾値より高くなった場合に、駆動電圧の振幅を増加するオーバードライブ処理を停止する。これにより、表示ドライバの温度を所定の温度閾値以下に抑えつつ、表示ドライバの応答速度を高めるオーバードライブ処理を実行することが可能となる。
【0014】
よって、本発明によれば、表示ドライバの発熱に伴う画質劣化を抑えて、当該表示ドライバの応答速度の高速化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る表示ドライバを含む表示装置の一例としての表示装置100の概略構成を示す図である。
図2】ドライバIC3aの内部構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明に係る表示ドライバを含む表示装置の他の一例としての表示装置200の概略構成を示す図である。
図4】ドライバIC30aの内部構成の一例を示すブロック図である。
図5】オーバードライブ部160の内部構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例0017】
図1は、本発明に係る表示ドライバを含む表示装置の一例としての表示装置100の概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、表示装置100は、タイミング制御部11、ゲートドライバ12、ソースドライバ13及び表示パネル20を含む。
【0018】
表示パネル20は、例えば液晶又は有機ELパネル等の容量性の画像表示パネルからなる。表示パネル20には、夫々が2次元画面の水平方向に伸張するm個(mは2以上の整数)のゲート線G1~Gmと、夫々が2次元画面の垂直方向に伸張するn個(nは2以上の整数)のソース線S1~Snとが配されている。ゲート線及びソース線の各交叉部には、画素を担う表示セルが形成されている。
【0019】
タイミング制御部11は、映像信号VSを受け、映像信号VSから水平同期信号を抽出してこれをゲートドライバ12に供給すると共に、当該映像信号VSに基づき各画素の輝度レベルを例えば8ビットデータで表す画素データ片の系列を生成する。
【0020】
また、タイミング制御部11は、当該画素データ片に対して例えば以下のようなオーバードライブ処理を実行するオーバードライブ(ODR)部を有する。
【0021】
ODR部は、先ず、互いに2次元画面の垂直方向に隣接する一対の画素に対応した一対の画素データ片毎に、夫々が表す輝度レベルの変化量に対応したオーバードライブ量を算出する。
【0022】
次に、ODR部は、当該一対の画素データ片のうちで1水平走査期間後方の画素データ片に、上記したオーバードライブ量を加算又は減算する。すなわち、ODR部は、上記した一対の画素データ片のうちで後方の画素データ片によって表される輝度が前方の画素データ片によって表される輝度より大きい場合には、両者間での輝度の変化量に対応したオーバードライブ量を後方の画素データ片に加算する。一方、後方の画素データ片によって表される輝度が前方の画素データ片によって表される輝度以下である場合には、ODR部は、両者の変化量に対応したオーバードライブ量を後方の画素データ片から減算する。
【0023】
このように、ODR部は、2次元画面の垂直方向に隣接する一対の画素毎に、その一対の画素に対応した一対の画素データ片同士による輝度の変化量に対応した大きさのオーバードライブ量を画素データ片に加算又は減算するというオーバードライブ処理を行う。かかるオーバードライブ処理により、ソースドライバの応答速度が高速化する。
【0024】
ここで、タイミング制御部11は、上記したオーバードライブ処理が施された画素データ片の各々を、所定の順番に並べたものを画素データPDの系列として生成する。
【0025】
ところで、タイミング制御部11は、ソースドライバ13から供給された温度異常信号Qa、Qb、Qc、Qd及びQeのうちの少なくとも1つが、温度異常有りを表す場合には、その温度異常信号に対応した画素データ片群に対しては、オーバードライブ処理を行わない。つまり、この際、タイミング制御部11は、映像信号VSに対応した画素データ片をそのまま画素データPDとして、当該画素データPDの系列に含める。
【0026】
更に、タイミング制御部11は、クロック信号を生成するための基準タイミングを示す基準タイミング信号、及び画素データの取り込み開始タイミングを示すロード信号を生成する。
【0027】
そして、タイミング制御部11は、画素データPDの系列に、これら基準タイミング信号及びロード信号を含ませたものを画像データ信号PDSとして、ソースドライバ13に供給する。
【0028】
ゲートドライバ12は、タイミング制御部11から供給された水平同期信号に同期させてゲートパルスを生成し、これを表示パネル20のゲート線G1~Gm各々に順次印加する。
【0029】
ソースドライバ13は、画像データ信号PDS中の画素データPDの各々を夫々が示す輝度レベルに対応した電圧値を有する駆動電圧を生成し、表示パネル20のソース線S1~Snに印加する。
【0030】
尚、ソースドライバ13は、夫々が独立した半導体IC(Integrated Circuit)チップである5つのドライバIC3a~3eから構成されている。ドライバIC3aは、表示パネル20のソース線S1~SnのうちのS1~Sk(kは2以上の整数)の駆動を担う。ドイバIC3bはソース線Sk+1~Sr(rは2以上の整数)の駆動を担う。ドライバIC3cは、ソース線Sr+1~Sy(yは2以上の整数)の駆動を担う。ドライバIC3dは、ソース線Sy+1~Sj(jは2以上の整数)の駆動を担う。ドライバIC3eは、ソース線Sj+1~Snの駆動を担う。各ドライバIC3a~3eには、同一の回路が形成されている。
【0031】
ドライバIC3a~3eの各々は、画像データ信号PDSを受け、当該画像データ信号PDSに含まれるロード信号に応じて、画像データ信号PDS中から自身に対応した画素データPD群を取り込む。そして、ドライバIC3a~3eの各々は、取り込んだデータPDの各々が示す輝度レベルに対応した駆動電圧群を生成し、夫々に対応したソース線群に印加する。
【0032】
例えば、ドライバIC3aは、画像データ信号PDS中から、表示パネル20の第1列~第k列に対応したk個の画素データPDを取り込む。そして、ドライバIC3aは、k個の画素データPDの各々が示す輝度レベルに対応した駆動電圧X1~Xkを生成し、夫々を表示パネル20のソース線S1~Skに印加する。ドライバIC3bは、画像データ信号PDS中から、表示パネル20の第k+1列~第r列に対応した(r-k)個の画素データPDを取り込む。そして、ドライバIC3bは、(r-k)個の画素データPDの各々が示す輝度レベルに対応した駆動電圧Xk+1~Xrを生成し、夫々を表示パネル20のソース線Sk+1~Srに印加する。ドライバIC3cは、画像データ信号PDS中から、表示パネル20の第r+1列~第y列に対応した(y-r)個の画素データPDを取り込む。そして、ドライバIC3cは、(y-r)個の画素データPDの各々が示す輝度レベルに対応した駆動電圧Xr+1~Xyを生成し、夫々を表示パネル20のソース線Sr+1~Syに印加する。ドライバIC3dは、画像データ信号PDS中から、表示パネル20の第y+1列~第j列に対応した(j-y)個の画素データPDを取り込む。そして、ドライバIC3dは、(j-y)個の画素データPDの各々が示す輝度レベルに対応した駆動電圧Xy+1~Xjを生成し、夫々を表示パネル20のソース線Sy+1~Sjに印加する。ドライバIC3eは、画像データ信号PDS中から、表示パネル20の第j+1列~第n列に対応した(n-j)個の画素データPDを取り込む。そして、ドライバIC3eは、(n-j)個の画素データPDの各々が示す輝度レベルに対応した駆動電圧Xj+1~Xnを生成し、夫々を表示パネル20のソース線Sj+1~Snに印加する。
【0033】
更に、ドライバIC3a~3eは、上記した温度異常信号Qa~Qeのうちで自身に対応した1つを出力する。つまり、ドライバIC3aは温度異常信号Qaを出力し、ドライバIC3bは温度異常信号Qbを出力し、ドライバIC3cは温度異常信号Qcを出力し、ドライバIC3dは温度異常信号Qdを出力し、ドライバIC3eは温度異常信号Qeを出力する。
【0034】
以下に、ドライバIC3a~3eの構成について説明する。
【0035】
尚、前述したように、ドライバIC3a~3eの各々には同一の回路が形成されているので、以下に、ドライバIC3aを抜粋して各ドライバICに形成されている回路について説明する。
【0036】
図2は、ドライバIC3a内に形成されている回路の一例を示すブロック図である。図2に示すように、ドライバIC3aには、受信部130、データ取込部131、データラッチ部132、階調電圧変換回路133、出力アンプ部134、温度検出回路140、比較器141及び閾値レジスタ142が形成されている。
【0037】
受信部130は、上記した画像データ信号PDSからロード信号LD及び画素データPDの系列を抽出し、夫々をデータ取込部131に供給する。更に、受信部130は、画像データ信号PDSに含まれる基準タイミング信号に基づき、1水平走査期間の周期を有するクロック信号CKを生成し、これをデータラッチ部132に供給する。
【0038】
データ取込部131は、ロード信号LDに応じて、画素データPDの系列中から自身(図2の一例では、ドライバIC3a)に対応した画素データPDをk個ずつ取り込む。そしてデータ取込部131は、取り込んだk個の画素データPDを画素データP1~Pkとして、データラッチ部132に供給する。
【0039】
データラッチ部132は、クロック信号CKに応じたタイミングで画素データP1~Pkを同時にラッチし、夫々を画素データR1~Rkとして階調電圧変換回路133に供給する。
【0040】
階調電圧変換回路133は、画素データR1~Rkの各々によって表される各輝度レベルを、夫々に対応した電圧値を有する階調電圧V1~Vkに変換して出力アンプ部134に供給する。
【0041】
出力アンプ部134は、階調電圧V1~Vkの各々を所望に増幅したものを駆動電圧X1~Xkとして出力する。尚、ドライバIC3aの出力アンプ部134から出力された駆動電圧X1~Xkは、夫々表示パネル20のソース線S1~Skに印加される。同様に、ドライバIC3bの出力アンプ部134から出力された駆動電圧X1~Xkは、夫々表示パネル20のソース線Sk+1~Srに印加される。また、ドライバIC3cの出力アンプ部134から出力された駆動電圧X1~Xkは、夫々表示パネル20のソース線Sr+1~Syに印加される。
【0042】
温度検出回路140は、半導体チップとしてのドライバIC3a(3b~3e)内の温度、特に、出力アンプ部134の温度、又は出力アンプ部134周囲の温度を検出し、検出した温度を表す温度信号TDを比較器141に供給する。
【0043】
閾値レジスタ142は、ドライバIC3aの温度として許容し得る最大限度温度を表す所定の温度閾値を保持する為のレジスタであり、ドライバIC3aの製造後において、温度閾値として任意の値が保持される。閾値レジスタ142は、自身に保持されている温度閾値を表す温度閾値THを比較器141に供給する。
【0044】
比較器141は、当該温度閾値THと、温度信号TDによって表される温度とを比較し、温度信号TDが温度閾値TH以下である場合には、温度異常無しを示す温度異常信号を出力する。一方、温度信号TDによって表される温度が温度閾値THより高い場合には、比較器141は、温度異常有りを示す温度異常信号を出力する。尚、温度閾値については、ドライバIC3a~3e各々の閾値レジスタ142により、各ドライバIC毎に固有の値を設定することが可能となっている。
【0045】
この際、上記した温度異常信号として、ドライバIC3aの比較器141は温度異常信号Qaを出力し、ドライバIC3bの比較器141は温度異常信号Qbを出力し、ドライバIC3cの比較器141は温度異常信号Qcを出力する。同様に、当該温度異常信号として、ドライバIC3dの比較器141は温度異常信号Qdを出力し、ドライバIC3eの比較器141は温度異常信号Qeを出力する。
【0046】
つまり、ソースドライバとしてのドライバIC3a~3e各々内には、ドライバIC内の温度を検出しその温度に基づきオーバードライブ処理の有無を制御する温度異常信号(Qa~Qe)を生成するオーバードライブ制御回路(140~142)が設けられている。ドライバIC3a~3e各々のオーバードライブ制御回路(140~142)で生成された温度異常信号Qa~Qeはタイミング制御部11に供給される。
【0047】
以下に、上記したオーバードライブ制御について説明する。
【0048】
まず、ドライバIC3a~3e各々の内部の温度が所定の温度閾値TH以下である場合には、ドライバIC3a~3eは、温度異常無しを示す温度異常信号Qa~Qeをタイミング制御部11に供給する。よって、温度異常無しを示す温度異常信号Qa~Qeを受けたタイミング制御部11は、映像信号VSに基づく画素毎の輝度レベルを表す画素データ片の系列に対して前述したようなオーバードライブ処理を施す。これにより、オーバードライブ処理が施されていない画素データ片の系列に比べて、オーバードライブ処理が施された画素データ片の系列での輝度レベルの変化量が大きくなる。それに伴い、出力アンプ部134で生成される駆動電圧X1~Xkの振幅が増大し、ドライバIC3a~3eの応答速度が高速化すると共に、当該出力アンプ部134の温度が上昇する。
【0049】
ここで、温度異常信号Qa~Qeのうちの例えばQaが温度異常有りを示す状態に遷移すると、タイミング制御部11は、ドライバIC3aに対応した画素データ片の系列に対するオーバードライブ処理を停止する。つまり、タイミング制御部11は、ドライバIC3aの内部温度が温度閾値THより高くなった場合、当該ドライバIC3aに対応した画素データ片の系列に対するオーバードライブ処理を停止する。尚、この際、タイミング制御部11は、ドライバIC3b~3eの各々に対応した画素データ片の系列に対するオーバードライブ処理についてはこれを継続する。
【0050】
これにより、ドライバIC3aの出力アンプ部134で生成される駆動電圧X1~Xkの振幅が低下し、それに伴い当該出力アンプ部134の温度が下降する。よって、その後、ドライバIC3aの内部温度が温度閾値TH以下になると、ドライバIC3aは、温度異常信号Qaを温度異常有りの状態から温度異常無しの状態に遷移させる。すると、当該温度異常無しを示す温度異常信号Qaに応じて、タイミング制御部11は、ドライバIC3aに対応した画素データ片の系列に対するオーバードライブ処理を再開する。
【0051】
従って、このようなオーバードライブ制御によれば、ソースドライバとしてのドライバIC3a~3e各々の内部温度が上昇しても、その内部温度を所定の温度閾値付近の温度まで下げることができる。よって、本発明によれば、ソースドライバの発熱に伴う画質劣化を抑えつつ、オーバードライブによる高速応答化を図ることが可能となる。
【0052】
尚、図1及び図2に示す構成では、オーバードライブを実行するか否かを決定する要因となる温度閾値を、ドライバIC3b~3eの各々に含まれる閾値レジスタ142で個別に設定することができる。
【0053】
例えば比較的高い輝度が要求される画面中央領域の表示を担うドライバIC3cの閾値レジスタ142に保持する温度閾値を、他のドライバIC(3a、3b、3d及び3e)の温度閾値より高くする。これにより、ドライバIC3cでのオーバードライブ処理の実行頻度が高くなり、他のドライバICに比べて高速応答が為されるようになる。よって、ドライバIC3cでは、他のドライバICに比べて駆動電圧X1~Xkの振幅を大きくすることが出来るので、表示パネル20の画面中央領域に対して高輝度の表示を実現することが可能となる。
【実施例0054】
図3は、本発明に係る表示ドライバを含む表示装置の他の一例としての表示装置200の概略構成の一例を示す図である。尚、図3に示す表示装置200では、タイミング制御部11に代えてタイミング制御部11Aを採用すると共に、ソースドライバ13に代えてソースドライバ13Aを採用した点を除く他の構成は、図1に示す表示装置100のものと同一である。
【0055】
そこで、以下に、タイミング制御部11A及びドライバIC30a~30eを中心に、その構成について説明する。
【0056】
タイミング制御部11Aは、タイミング制御部11から、上記したようなオーバードライブ処理を行う機能を省いたものである。
【0057】
すなわち、タイミング制御部11Aは、映像信号VSを受け、映像信号VSから水平同期信号を抽出してこれをゲートドライバ12に供給する。
【0058】
また、タイミング制御部11Aは、かかる映像信号VSに基づき、各画素毎にその画素の輝度を例えば8ビットデータで表す画素データ片を生成し、画素データ片の各々を所定の順番に並べたものを画素データPDの系列として生成する。更に、タイミング制御部11Aは、クロック信号を生成するための基準タイミングを示す基準タイミング信号、及び画素データの取り込み開始タイミングを示すロード信号を生成する。
【0059】
そして、タイミング制御部11Aは、画素データPDの系列に、これら基準タイミング信号及びロード信号を含ませたものを画像データ信号PDSとして、ソースドライバ13Aに供給する。
【0060】
ソースドライバ13Aは、ソースドライバ13と同様に、画像データ信号PDS中の画素データPDの各々を夫々が示す輝度レベルに対応した電圧値を有する駆動電圧を生成し、表示パネル20のソース線S1~Snに印加する。
【0061】
ただし、ソースドライバ13Aでは、図1及び図2に示すドライバIC3a~3eに代えてドライバIC30a~30eが採用されている。
【0062】
ドライバIC30a~30eは、ドライバIC3a~3eと同様に、夫々が独立した半導体ICチップからなる。また、ドライバIC30a~30eは、ドライバIC3a~3eと同様に、表示パネル20のソース線S1~Snを5つに分割した分割ソース線群(S1~Sk、Sk+1~Sr、Sr+1~Sy、Sy+1~Sj、Sj+1~Sn)の駆動を夫々が担うものである。
【0063】
尚、ドライバIC30a~30eの各々は、自身の内部温度を示す温度信号を出力する1つの出力端子と共に、自身以外の他のドライバIC各々の内部温度を示す温度信号を受ける4つの入力端子が設けられている。
【0064】
これにより、例えば、ドライバIC30aは、ドライバIC30b~30eから夫々出力された温度信号Tb~Teを配線を介して受けると共に、自身の内部温度を示す温度信号Taを出力する。また、ドライバIC30bは、ドライバIC30a、30c~30eから夫々出力された温度信号Ta、Tc~Teを配線を介して受けると共に、自身の内部温度を示す温度信号Tbを出力する。また、ドライバIC30cは、ドライバIC30a、30b、30d及び30eから夫々出力された温度信号Ta、Tb、Td及びTeを配線を介して受けると共に、自身の内部温度を示す温度信号Tcを出力する。また、ドライバIC30dは、ドライバIC30a~30c及び30eから夫々出力された温度信号Ta~Tc及びTeを配線を介して受けると共に、自身の内部温度を示す温度信号Tdを出力する。また、ドライバIC30eは、ドライバIC30a~30dから夫々出力された温度信号Ta~Tdを配線を介して受けると共に、自身の内部温度を示す温度信号Teを出力する。
【0065】
以下に、ドライバIC30a~30eの構成について説明する。
【0066】
尚、前述したように、ドライバIC30a~30eの各々には同一の回路が形成されているので、以下に、ドライバIC30aを抜粋して各ドライバICに形成されている回路について説明する。
【0067】
図4は、ドライバIC30a内に形成されている回路の一例を示すブロック図である。図4に示すように、ドライバIC30aには、ドライバIC3aと同様に、受信部130、データ取込部131、データラッチ部132、階調電圧変換回路133、出力アンプ部134が形成されている。
【0068】
また、ドライバIC30aでは、図2に示す温度検出回路140及び比較器141に代えて、温度検出回路150、平均回路151、比較器152及び閾値レジスタ153を採用している。更に、ドライバIC30aには、データラッチ部132及び階調電圧変換回路133間に、オーバードライブ部160が設けられている。
【0069】
図4において、受信部130は、画像データ信号PDSからロード信号LD及び画素データPDの系列を抽出し、夫々をデータ取込部131に供給する。更に、受信部130は、画像データ信号PDSに含まれる基準タイミング信号に基づき、1水平走査期間の周期を有するクロック信号CKを生成し、これをデータラッチ部132及びオーバードライブ部160に供給する。
【0070】
データ取込部131は、ロード信号LDに応じて、画素データPDの系列中から自身(図4の一例では、ドライバIC30a)に対応した画素データPDをk個ずつ取り込む。そしてデータ取込部131は、取り込んだk個の画素データPDを画素データP1~Pkとして、データラッチ部132に供給する。
【0071】
データラッチ部132は、クロック信号CKに応じたタイミングで画素データP1~Pkを同時にラッチし、夫々を画素データR1~Rkとしてオーバードライブ部160に供給する。
【0072】
温度検出回路150は、ドライバIC30a内の温度、特に、出力アンプ部134の温度、又は出力アンプ部134周囲の温度を検出し、検出した温度を表す温度信号TDを平均回路151に供給する。更に、温度検出回路150は、当該温度信号TDを、ドライバIC30a内の温度を表す温度信号Taとして、ドライバIC30aの外部に出力する。尚、ドライバIC30b(又は30c~30e)の温度検出回路150は、ドライバIC30b(又は30c~30e)内の温度を検出する。そして、ドライバIC30b(又は30c~30e)の温度検出回路150は、その温度を表す温度信号TDを平均回路151に供給すると共に、ドライバIC30b(又は30c~30e)内の温度を表す温度信号Tb(又はTc~Te)として外部出力する。
【0073】
平均回路151は、温度信号Ta~Teの各々によって表される温度の平均、或いは温度信号Ta~Teの各々に対して所定の重みを付けた加重平均を求め、かかる平均値又は加重平均値を示す平均温度Tavを比較器152に供給する。尚、当該加重平均を求めるにあたり、平均回路151では、例えば、表示画像中において画質劣化が目立つ画面中央領域の表示を担うドライバIC30cからの温度信号Tcに対する重み付けを大とする。
【0074】
閾値レジスタ153は、ドライバIC30aの温度として許容し得る最大限度温度を表す所定の温度閾値を保持する為のレジスタであり、ドライバIC30aの製造後において、任意の値が温度閾値として保持される。閾値レジスタ153は、自身に保持されている温度閾値を表す温度閾値THを比較器152に供給する。
【0075】
比較器152は、かかる温度閾値THと平均温度Tavとを比較し、平均温度Tavが温度閾値TH以下である場合には、温度異常無しを示す温度異常信号Qxをオーバードライブ部160に供給する。一方、平均温度Tavが温度閾値THより高い場合には、比較器152は、温度異常有りを示す温度異常信号Qxをオーバードライブ部160に供給する。尚、温度閾値については、ドライバIC30a~30e各々の閾値レジスタ153により、各ドライバIC毎に固有の値を設定することが可能となっている。
【0076】
このように、ドライバIC30a~30eの各々内には、ドライバIC内の温度を検出しその温度に基づきオーバードライブ部160でのオーバードライブ処理の有無を制御するオーバードライブ制御回路(150~153)が設けられている。
【0077】
オーバードライブ部160は、温度異常信号Qxが温度異常無しを示す場合に、データラッチ部132から供給された画素データR1~Rkに対して、オーバードライブ処理を施したものを画素データY1~Ykとして、階調電圧変換回路133に供給する。
【0078】
図5は、オーバードライブ部160の内部構成の一例を示す回路図である。
【0079】
図5に示すように、オーバードライブ部160は、画素データR1~Rkに夫々対応して設けられたオーバードライブ回路OD1~ODkを有する。尚、オーバードライブ回路OD1~ODkの各々は同一の回路構成からなり、例えば図5に示すような遅延素子51、オーバードライブ量算出回路52(以下、ODV算出回路52と称する)及び加算器53から構成される。
【0080】
以下に、オーバードライブ回路OD1を例にとってその回路構成について説明する。
【0081】
遅延素子51は、例えばDフリップフロップ等からなり、クロック信号CKに応じて画素データR1(又はR2~Rk)を1水平走査期間だけ遅延させたものを直前画素データHDとしてODV算出回路52に供給する。
【0082】
ODV算出回路52は、温度異常信号Qxが温度異常無しを示す場合には、画素データR1によって表される輝度から、直前画素データHDによって表される輝度を減算することで、輝度の変化量を求める。そして、ODV算出回路52は、その輝度の変化量に対応した大きさを有するオーバードライブ量ODを加算器53に供給する。一方、温度異常信号Qxが温度異常有りを示す場合には、ODV算出回路52は、ゼロを表すオーバードライブ量ODを加算器53に供給する。
【0083】
加算器53は、画素データR1にて表される輝度に、輝度補正値としてのオーバードライブ量ODを加算した輝度を表す画素データ片を画素データY1として出力する。
【0084】
かかる構成により、オーバードライブ回路OD1は、温度異常信号Qxが温度異常無しを示す場合には、画素データR1にオーバードライブ量ODを加算するオーバードライブ処理を行う。
【0085】
つまり、当該オーバードライブ処理では、先ず、オーバードライブ回路OD1は、直前画素データHD、つまり現時点での画素データR1の1水平走査期間前の画素データR1から現時点の画素データR1への輝度の変化量を求める。そして、オーバードライブ回路OD1は、当該輝度変化量に対応した大きさのオーバードライブ量ODを、現時点の画素データR1に加算したものを画素データY1として出力する。
【0086】
すなわち、画素データR1にて表される輝度が、1水平走査期間前の画素データR1にて表される輝度よりも高い場合には、オーバードライブ回路OD1は、その輝度の変化量に対応した分だけ現時点の画素データR1の輝度を増加させた画素データY1を出力する。また、画素データR1にて表される輝度が、1水平走査期間前の画素データR1にて表される輝度以下である場合には、オーバードライブ回路OD1は、その輝度の変化量に対応した分だけ現時点の画素データR1の輝度を低下させた画素データY1を出力する。また、画素データR1にて表される輝度と、1水平走査期間前の画素データR1にて表される輝度とが等しい場合には、オーバードライブ回路OD1は、その輝度変化量がゼロになることから、現時点の画素データR1をそのまま画素データY1として出力する。
【0087】
一方、温度異常信号Qxが温度異常有りを示す場合には、オーバードライブ回路OD1は、上記した輝度変化量に拘らず、現時点の画素データR1をそのまま画素データY1として出力する。
【0088】
図5に示す構成により、オーバードライブ部160は、温度異常信号Qxが温度異常無しを示す場合には、画素データR1~Rkに上記したオーバードライブ処理を施したものを画素データY1~Ykとして、階調電圧変換回路133に供給する。一方、温度異常信号Qxが温度異常有りを示す場合には、オーバードライブ部160は、画素データR1~Rkをそのまま画素データY1~Ykとして階調電圧変換回路133に供給する。
【0089】
階調電圧変換回路133は、画素データY1~Ykの各々によって表される各輝度レベルを、夫々に対応した電圧値を有する階調電圧V1~Vkに変換して出力アンプ部134に供給する。
【0090】
出力アンプ部134は、階調電圧V1~Vkの各々を所望に増幅したものを駆動電圧X1~Xkとして出力する。尚、ドライバIC30aの出力アンプ部134から出力された駆動電圧X1~Xkは、夫々表示パネル20のソース線S1~Skに印加される。同様に、ドライバIC30bの出力アンプ部134から出力された駆動電圧X1~Xkは、夫々表示パネル20のソース線Sk+1~Srに印加される。また、ドライバIC30cの出力アンプ部134から出力された駆動電圧X1~Xkは、夫々表示パネル20のソース線Sr+1~Syに印加される。
【0091】
以下に、図3図5に示される表示装置200におけるオーバードライブ制御について説明する。
【0092】
まず、ソースドライバとしてのドライバIC30a~30e各々の内部温度(Ta~Te)の平均値又は加重平均値平均(Tav)が温度閾値TH以下である場合、図4に示す比較器152が、温度異常無しを示す温度異常信号Qxをオーバードライブ部160に供給する。これにより、オーバードライブ部160が、以下のようなオーバードライブ処理を行う。
【0093】
つまり、オーバードライブ部160は、先ず、データラッチ部132から供給された画素データR1~Rkの各々と、その1水平走査期間前に供給された画素データR1~Rk各々との輝度レベルの変化量に対応したオーバードライブ量ODを算出する。そして、オーバードライブ部160は、画素データR1~Rkの各々毎に算出したオーバードライブ量ODを、画素データR1~Rkに夫々加算又は減算したものを画素データY1~Ykとして、次段の階調電圧変換回路133に供給する。これにより、画素データR1~Rkに比べて画素データR1~Rkでの輝度レベルの変化量が大きくなる。それに伴い、出力アンプ部134で生成される駆動電圧X1~Xkの振幅も増大し、ドライバIC30a~30eの応答速度が高速化すると共に、当該出力アンプ部134の温度が上昇する。
【0094】
ここで、ソースドライバとしてのドライバIC30a~30e各々の内部温度(Ta~Te)の平均値又は加重平均値平均(Tav)が温度閾値THより高くなると、比較器152が、温度異常有りを示す温度異常信号Qxをオーバードライブ部160に供給する。これにより、オーバードライブ部160は、前述したオーバードライブ処理を停止し、データラッチ部132から供給された画素データR1~Rkをそのまま画素データY1~Ykとして階調電圧変換回路133に供給する。これにより、出力アンプ部134で生成される駆動電圧X1~Xkの振幅が低下し、それに伴い当該出力アンプ部134の温度が下降する。よって、その後、ドライバIC30a~30eの内部温度の平均値又は加重平均値平均値が温度閾値TH以下になると、比較器152は温度異常無しを示す温度異常信号Qxをオーバードライブ部160に供給する。すると、当該温度異常無しを示す温度異常信号Qxに応じて、オーバードライブ部160は、前述したオーバードライブ処理を再開する。
【0095】
従って、このようなオーバードライブ制御によれば、ソースドライバとしてのドライバIC30a~30e各々の内部温度が上昇しても、その内部温度を所定の温度閾値付近の温度まで下げることができる。よって、本発明によれば、ソースドライバの発熱に伴う画質劣化を抑えつつ、オーバードライブによる高速応答化を図ることが可能となる。
【0096】
尚、図3図5に示す表示装置200では、ソースドライバとしてのドライバIC30a~30e各々の内部でオーバードライブ処理を行うことができるので、タイミング制御部11Aとして、オーバードライブ機能を備えていないものを採用することが可能となる。
【0097】
更に、図3図5に示す表示装置200では、ドライバIC30a~30eの各々内に、オーバードライブ部160と共に、ドライバIC内の温度を検出しその温度に基づきオーバードライブ処理の有無を制御するオーバードライブ制御回路(150~153)を設けている。これにより、図1及び図2に示す表示装置100のように、タイミング制御部11でオーバードライブ処理を行うものに比べて、ドライバIC内の急激な温度上昇に対して迅速に、その温度を所定の温度閾値付近の温度にまで下げることが可能となる。
【0098】
尚、図1又は図3に示す一例では、タイミング制御部11(11A)はソースドライバ13の外部に設けられているが、当該タイミング制御部11(11A)をドライバの一部として捉えるようにしても良い。
【0099】
また、上記実施例で説明したオーバードライブ部では、画素データPDに対して前述したようなオーバードライブ処理を施すことで、駆動電圧X1~Xkの振幅を増加させている。しかしながら、オーバードライブ処理としては、駆動電圧X1~Xkの振幅を増加させるものであれば、その構成は限定されない。
【0100】
要するに、映像信号(VS)を受け、映像信号に基づき複数の駆動電圧(例えばX1~Xk)を生成して夫々を表示パネル(20)の複数のソース線(例えばS1~Sk)に印加する表示ドライバ(例えば11、11A、13、13A等)として、以下のオーバードライブ部と、オーバードライブ制御回路と、を含むものを採用すれば良い。
【0101】
オーバードライブ部(例えば11、160)は、複数の駆動電圧各々の振幅を増加するオーバードライブ処理を実行する。オーバードライブ制御回路(例えば140~142、150~153)は、表示ドライバ(例えば3a~3e、30a~30e)内の温度を検出し、この温度が所定の温度閾値(TH)より高い場合にはオーバードライブ部によるオーバードライブ処理を停止させる。
【符号の説明】
【0102】
11 タイミング制御部
13 ソースドライバ
3a~3e、30a~30e ドライバIC
20 表示パネル
140、150 温度検出回路
141、152 比較器
160 オーバードライブ部
図1
図2
図3
図4
図5