(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024064
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】金属加工液
(51)【国際特許分類】
C10M 173/00 20060101AFI20220201BHJP
C10M 129/48 20060101ALI20220201BHJP
C10M 129/38 20060101ALI20220201BHJP
C10M 133/12 20060101ALI20220201BHJP
C10M 133/06 20060101ALI20220201BHJP
C10M 129/52 20060101ALI20220201BHJP
C10M 133/08 20060101ALI20220201BHJP
C10N 30/16 20060101ALN20220201BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20220201BHJP
C10N 40/24 20060101ALN20220201BHJP
C10N 40/22 20060101ALN20220201BHJP
【FI】
C10M173/00 ZAB
C10M129/48
C10M129/38
C10M133/12
C10M133/06
C10M129/52
C10M133/08
C10N30:16
C10N30:12
C10N40:24
C10N40:22
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185727
(22)【出願日】2021-11-15
(62)【分割の表示】P 2018551753の分割
【原出願日】2016-11-09
(31)【優先権主張番号】62/270,101
(32)【優先日】2015-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】キルシュ、 ガブリエル ジェイ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ホウ酸を用いない、金属加工液用の安全性の高いpH緩衝液を提供する。
【解決手段】金属加工液は、1又は複数の有機酸と1又は複数の有機アミンとを有するpH緩衝系を含む。芳香族カルボン酸及びC10又はそれ以上の脂肪族カルボン酸を含む有機酸は、金属加工液からホウ酸が排除され得るように、ホウ酸を置き換えることができる。有機酸は、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸のうちの少なくとも1種を含み得る。1又は複数の有機アミンとしては、少なくとも50mgKOH/gのアミン価を有する脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。金属加工液を使用する方法は、金属加工液を用いて金属表面又は工具のうちの少なくとも一方を冷却及び潤滑しながら金属表面を工具に接触させることによって、金属を成形することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、油、及びpH緩衝系を含む金属加工液組成物であって、pH緩衝系は、1又は複数の有機酸と1又は複数の有機アミンとを含み、有機酸は、芳香族カルボン酸及びC10又はそれ以上の脂肪族カルボン酸からなる群から選択され、そして1又は複数の有機アミンは、少なくとも50mgKOH/gのアミン価を有する脂肪族アミン及び芳香族アミンから選択される、金属加工液組成物。
【請求項2】
水、油、及びpH緩衝系を含む金属加工液組成物であって、pH緩衝系は、ホウ素を含まず、かつ、芳香族カルボン酸及びC7又はそれ以上の脂肪族カルボン酸からなる群から選択される1又は複数の有機酸と、少なくとも50mgKOH/gのアミン価を有する脂肪族アミン及び芳香族アミンから選択される1又は複数の有機アミンを含むアルカリ性剤と、を含む、金属加工液組成物。
【請求項3】
芳香族カルボン酸が、構造:HOOCR-(C6H4)-R’COOH(R及びR’は、(CH2)n(式中、0≦n≦18)から独立して選択される)を有する、請求項1又は2に記載の金属加工液組成物。
【請求項4】
芳香族カルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の金属加工液組成物。
【請求項5】
芳香族カルボン酸がテレフタル酸である、請求項1又は2に記載の金属加工液組成物。
【請求項6】
1又は複数の有機アミンが、モノエタノールアミン、メチルペンタメチレンジアミン、及びそれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の金属加工液組成物。
【請求項7】
組成物が、8.5~10.0の範囲のpHを有する、請求項1又は2に記載の金属加工液組成物。
【請求項8】
1又は複数の有機酸が、C10~C18脂肪酸及びC6~C30芳香族ジカルボン酸のうちの少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の金属加工液組成物。
【請求項9】
組成物が、0.2~20重量%の1又は複数の有機酸を含む、請求項1又は2に記載の金属加工液組成物。
【請求項10】
組成物が、約0.1~約25重量%の1又は複数の有機アミンを含む、請求項1又は2に記載の金属加工液組成物。
【請求項11】
流体力学的潤滑剤、境界潤滑剤、極圧潤滑剤、鋳鉄腐食防止剤、イエローメタル腐食防止剤、アルミニウム腐食防止剤、乳化剤、ヒドロトロープ、殺生物剤、及び消泡剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の金属加工液組成物。
【請求項12】
組成物が、ホウ酸及びその塩を含まない、請求項1に記載の金属加工液組成物。
【請求項13】
組成物が、8.5~10.0の範囲のpHを有し、かつ、C7~C30飽和又は不飽和カルボン酸を含む0.2~20重量%の1又は複数の有機酸を含む、請求項1に記載の金属加工液組成物。
【請求項14】
請求項1、2、12、又は13のいずれか1項に記載の金属加工液を用いて金属表面又は工具のうちの少なくとも一方を冷却及び潤滑しながら金属被加工物の表面を工具に接触させることによって、金属被加工物を成形することを含む、金属加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工用の冷却剤及び潤滑剤として使用される流体に関する。具体的には、本発明は、ホウ酸及びその塩を本質的に含まない金属加工液(metalworking fluid)に関する。該流体は、鋳鉄及びアルミニウムなど、様々な金属の金属加工(例えば、機械加工、フライス加工、旋削、研削、鍛造、管引き、線引き等)に有用である。
【背景技術】
【0002】
切削などの金属加工プロセスは、摩擦によって熱を生成する。例えば、フライス加工プロセスでは、回転式切削工具を使用して、金属被加工物(workpiece)から材料を系統的に除去し、金属被加工物を最終部品に成形する。フライス工具と被加工物との間の接触によって摩擦が発生し、工具/被加工物の接触領域の温度上昇を引き起こす。多数の部品を製造する場合、製造中の過剰な発熱を制御して、工具及び加工表面を保護する必要がある。無制御の高温は、金属の望ましくない熱膨張又は酸化を引き起こすことによって、工具を軟化させるか若しくは工具の一体性を低下させて工具の破損を引き起こすか、被加工物を損傷するか、又は完成部品表面を損傷する場合がある。金属加工プロセス中に発生する熱を除去するために、工具/被加工物接触面に流体を適用して、工具及び被加工物を効率的かつ迅速に冷却する。金属加工液はまた潤滑剤としても作用し、摩擦及び工具摩耗を低減するという利点をもたらす。流体を用いたフラッシュにより接触面から金属チップが除去される。これにより、より少ない金くずと再加工でより高速かつ高品質に部品を生産できるようになる。
【0003】
多くの金属加工液は、冷却及び潤滑機能をもたらす水と油との混合物である。これらの2つの流体は非混和性であるので、一般には金属加工組成物中に乳化剤を組み込んで、流体が確実に十分に混合された状態を維持できるようにする。金属加工液の酸性度/アルカリ性度は、乳化剤の性能に影響を及ぼし得る。一般に、最適な乳化剤性能のためには、より高いpH、例えば8以上のpHが好まれる。pHが9.0以上のアルカリ性流体はまた、水希釈金属加工液中の細菌増殖を防止するという利点をももたらす。最後に、いくつかの鋼合金は8.0より低いpHレベルで腐食する可能性があるため、pHを9.0付近に維持することにより鋼合金の腐食を軽減できる場合もある。
【0004】
対照的に、高アルカリ性流体はいくつかの欠点を示し得る。例えば、pHが9.5以上の場合、流体との皮膚接触が炎症が引き起こす場合がある。金属加工プロセスの熱及び機械的作用は金属加工液の霧を生成する可能性があり、pHが9.5を超える場合に作業者が霧を浴びると、皮膚、目、鼻、又は喉の炎症を発現する場合がある。また、いくつかのアルミニウム合金及びイエローメタル(黄銅、銅、青銅)など、ある種の金属は高pHに耐性を有しない。アルミニウム又はイエローメタルは、高アルカリ性のpHレベルで変色する場合があり、また溶けることさえある。したがって、緩衝液として作用し、かつ金属加工液のpHを制御して、pHを8より高く、好ましくは9~9.5の範囲内に保つ添加剤を金属加工液中に含めることが一般的である。
【0005】
ホウ酸の塩及び有機アミンは、水系金属加工用冷却剤を約9.3の加工pHに緩衝して、抗菌性能及び腐食防止を促進するのを助けるために一般的に使用されている。しかしながら、ホウ酸の欠点は、ホウ酸のばく露が一部の健康被害に関連していることである。化学品の分類および表示に関する世界調和システム(Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals)(GHS)の下では、5.5%以上の遊離ホウ酸を含有する製品は「生殖毒性」に分類する必要がある。欧州連合(EU)のREACH規則では、0.1%を超える遊離ホウ酸を含有する製品については、安全性データシートにおいて遊離ホウ酸の存在を特定することが求められている。ホウ酸を含有する製品に関連する安全性の懸念のために、金属加工液用の代替のpH緩衝液が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の実施形態では、金属加工液はpH緩衝系を含み、ここでpH緩衝系は、1又は複数の有機酸と1又は複数の有機アミンとを含み、ここで有機酸は、芳香族カルボン酸及びC10又はそれ以上の脂肪族カルボン酸からなる群から選択され、そして1又は複数の有機アミンは、少なくとも50mgKOH/gのアミン価を有する脂肪族アミン及び芳香族アミンから選択される。
【0007】
本発明の一態様では、組成物は、0.2~20重量%の1又は複数の有機酸を含む。1又は複数の有機酸は、C10~C18脂肪酸及びC6~C30芳香族ジカルボン酸のうちの少なくとも1種を含み得る。1又は複数の有機酸の芳香族カルボン酸は、構造:HOOCR-(C6H4)-R’COOH(R及びR’は、(CH2)n(式中、0≦n≦18)から独立して選択される)を有し得る。芳香族カルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられる。1又は複数の有機アミンは、モノエタノールアミン、メチルペンタメチレンジアミン、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0008】
本発明の別の態様では、金属加工液組成物は、8.5~10.0の範囲のpHを有し得る。
【0009】
本発明のさらに別の態様では、金属加工液組成物は、約0.1~約25重量%の1又は複数の有機アミンを含み得る。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、金属加工液組成物は、流体力学的潤滑剤、境界潤滑剤、極圧潤滑剤、鋳鉄腐食防止剤、イエローメタル腐食防止剤、アルミニウム腐食防止剤、乳化剤、ヒドロトロープ、殺生物剤、及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含み得る。
【0011】
本発明の第2の実施形態では、金属加工液は、1又は複数の有機酸と1又は複数の有機アミンと、から本質的に構成されるか、又はそれらから構成され得るpH緩衝液を含み、ここで有機酸は、芳香族カルボン酸及びC10又はそれ以上の脂肪族カルボン酸からなる群から選択され、そして1又は複数の有機アミンは、少なくとも50mgKOH/gのアミン価を有する脂肪族アミン及び芳香族アミンから選択される。
【0012】
本発明の第3の実施形態では、金属加工液組成物は、水、油、及びpH緩衝系を含み、pH緩衝系は、1又は複数の有機酸と、1又は複数の有機アミンを含むアルカリ性剤と、から本質的に構成されるか、又はそれらから構成され得、ここで有機酸は、芳香族カルボン酸及びC7又はそれ以上の脂肪族カルボン酸からなる群から選択され、そして1又は複数の有機アミンは、少なくとも50mgKOH/gのアミン価を有する脂肪族アミン及び芳香族アミンから選択される。
【0013】
本発明の一態様では、アルカリ性剤は、アミノメチルプロパノール(AMP-95)、ジグリコールアミン(DGA)、モノエタノールアミン(MEA)、モノイソプロパノールアミン(MIPA)、ブチルエタノールアミン(NBEA)、ジシクロヘキシルアミン(DCHA)、ジエタノールアミン(DEA)、ブチルジエタノールアミン(NBDEA)、トリエタノールアミン(TEA)、メチルペンタメチレンジアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、かつ任意選択で、金属アルカリ水酸化物並びに金属炭酸塩及び重炭酸塩のうちの1又は複数をさらに含む。
【0014】
本発明の別の態様では、組成物は、C7~C30飽和又は不飽和カルボン酸を含んでもよい、0.2~20重量%の1又は複数の有機酸を含む。
【0015】
第3の実施形態では、本発明に係る金属加工液を用いて金属表面又は工具のうちの少なくとも一方を冷却及び潤滑しながら金属の表面を工具に接触させることによって、金属被加工物を成形することを含む金属加工方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態によれば、芳香族カルボン酸、C10若しくはそれ以上の脂肪族カルボン酸、又はそれらの混合物を、金属加工液中のホウ酸の代替物として使用して、有害性の低い金属加工液を提供することができる。
【0017】
様々な理由から、本発明に係る金属加工液は、従来技術における同様の目的のために組成物で使用される数多くの成分を実質的に含まないことが好まれる。具体的には、本発明に係る水性組成物は、この発明に係るプロセスにおいて金属と直接接触する場合、各々好ましくは最小限に抑えられている下記に列挙した成分について独立に、以下の構成成分のうちの各々を、1.0、0.5、0.35、0.10、0.08、0.04、0.02、0.01、0.001、又は0.0002パーセントを超えない量で(より好ましくは、前記数値範囲がグラム/リットルである)含むことが、記載順により好ましい:ホウ素(これらに限定されるものではないが、ホウ酸及びその塩を含む);カドミウム;ニッケル;コバルト;無機フッ化物、塩化物、及び臭化物;錫;銅;バリウム;鉛;クロム;アジピン酸及びその塩;モルホリン;窒素系の酸及びそれらの塩、例えば、硝酸塩及び亜硝酸塩;硫黄系の酸及びそれらの塩、例えば、硫酸塩及び亜硫酸塩。
【0018】
作業例以外では、別段の指示がない限り、本明細書で使用される成分の量、反応条件、又は成分規定パラメータを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。明細書全体にわたって、明示的に別段の記述がない限り、パーセント、「部」、及び比率の値は、重量又は質量によるものであり;本発明に関連した所与の目的に好適であるか又は好ましいものとしての材料の群又は種類の記載は、該群又は種類のメンバーの任意の2以上の混合物も等しく好適であるか又は好ましいという意味を含み;化学用語の構成要素の記載は、明細書中に規定された任意の組み合わせへの添加時の構成成分、又は、1又は複数の新たに添加された構成成分と、他の成分が添加されたときに既に組成物中に存在している1又は複数の構成成分と、の間の化学反応によって、組成物中にin situで生成された時の構成成分を指し;イオン形態の構成成分の規定は、組成物全体に、及び組成物に添加された任意の物質に電気的中性をもたらすのに十分な対イオンの存在をさらに示唆し;したがって、黙示的に規定された任意の対イオンは、可能な限り、イオン形態で明示的に規定されている他の構成成分の中から好ましくは選択されるが;そうでない場合は、そのような対イオンは、本発明の目的に不利に作用する対イオンを回避する他は、自由に選択してもよく;分子量(MW)は重量平均分子量であり;「モル」という語は「グラムモル」を意味し、そしてその語自体及びその文法上の変形の全ては、その中に存在する原子の種類及び数の全てによって定義される任意の化学種について、該種がイオン性であるか、中性であるか、不安定であるか、仮定上若しくは実際に明確に定義された分子を有する安定な中性物質であるかどうかにかかわらず使用することができ;そして、「貯蔵安定性」という用語は、視覚的に検出可能な相分離傾向を示さない分散体、並びに、カルシウム及びマグネシウムの硬水沈殿物を示すが、少なくとも72、96、120、150、200、250、300、320、又は好ましくは少なくとも336時間の観察期間(この間、材料は機械的にかく乱されず、かつ材料の温度は周囲室温(18~25℃)に維持される)にわたり水油相分離を示さないものを含むと理解されるべきである。
【0019】
本明細書で使用される場合、「芳香族カルボン酸」は、1分子当たり少なくとも1個の芳香環(例えば、フェニル若しくはナフチル環又は複素芳香環)と、1分子当たり1又は複数個のカルボン酸基(-COOH)(これは、芳香環に直接結合していても、していなくてもよい)と、を含む酸及びその塩を意味する。芳香環は、任意選択で、水素及びカルボン酸基以外の1又は複数の置換基、例えばアルキル基、アルコキシ基、ハロ基等で置換されていてもよい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「C10又はそれ以上の脂肪族カルボン酸」は、不飽和又は飽和鎖中の少なくとも10個の炭素と、1分子当たり1又は複数個のカルボン酸基(-COOH)(これは、炭素鎖に直接結合していても、していなくてもよい)と、を含む分子の酸及びその塩を意味する。炭素鎖は、任意選択で、水素及びカルボン酸基以外の1又は複数の置換基、例えばアルキル基、アルコキシ基、ハロ基等で置換されていてもよい。
【0021】
有機アミンなどのアルカリ化合物と組み合わせた場合、有機酸は、ホウ酸/有機アミン緩衝系に匹敵する好適なpH緩衝液を提供し得る。本発明に係る金属加工液は、好ましくは少なくとも8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、又は9.4(記載順により好ましい)であり、かつ、独立して好ましくは10.0、9.9、9.8、9.7、9.6、又は9.5(記載順により好ましい)を超えないpHを好ましくは有する。例えば、特定の実施形態では、金属加工液は、約8.5~10.0のpH、より望ましくは9.0~9.5のpHを有し得る。本発明に係る組成物中に組み込まれる有機酸は、ホウ酸及びその塩に関連する有害性を回避しながら、金属加工用冷却剤における同様の緩衝能、耐腐食性挙動、及び安定性を有する。金属加工液中のホウ酸を置き換える目的で研究されている他の酸とは異なり、有機酸は金属加工液中に比較的少量で存在して好適なpH緩衝液として機能し、それによってより安価な代替物を提供し得る。
【0022】
したがって、本発明の一態様は、pH緩衝系を含む金属加工液を提供することであり、ここでpH緩衝系は、1又は複数の有機酸と1又は複数の有機アミンとを含む。
【0023】
本発明の別の実施形態では、金属加工液は、1又は複数の有機酸と1又は複数の有機アミンとから本質的に構成されるpH緩衝液を含む。本発明に係る金属加工液は、pH緩衝系の一部としてのホウ酸を低減又は除去するものであるため、0.1重量%以上のホウ酸を含有する金属加工液組成物は、本発明の基本的な及び新規な特性を実質的に変えることになるであろう。
【0024】
理論に縛られることを望むものではないが、本発明の様々な実施形態に係る金属加工液は、表面の疎水性を高めることによって金属被加工物の表面の腐食を防止又は抑制することができると考えられる。金属加工の間に、金属加工工具と金属被加工物表面との間の摩擦によって引き起こされる高い熱は、緩衝系にアルカリ部分、例えば有機アミンを生じさせて、揮発して金属被加工物の表面上に有機酸の残基を残し得る。本発明に係る金属加工液に使用される有機酸は、金属被加工物表面上に残されたそれらの残基が湿度に対する疎水性バリアをもたらして腐食を抑制できるように、好ましくは水に不溶性であるか又は低水溶性である。
【0025】
1又は複数の有機酸は、好ましくは、以下の構造Iに係る化合物である:
【0026】
【化1】
(式中、R及びR’は、(CH
2)
n(0≦n≦18)から独立して選択される)。より好ましくは、有機酸のうちの1又は複数は、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸からなる群から選択され、最も好ましくはテレフタル酸である。
【0027】
一実施形態では、1又は複数の有機酸は、C7~C30、好ましくはC7~C18、最も好ましくはC10~C18の飽和又は不飽和の芳香族カルボン酸、望ましくは二酸(ただし好ましくは該酸はアジピン酸ではない)を含み得る。
【0028】
本発明に係る金属加工液は、金属加工液の総重量を基準として、好ましくは少なくとも0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、又は4.5%(記載順により好ましい)、かつ、独立して好ましくは20.0、19.0、18.0、17.0、16.0、15.0、14.5、14.0、13.5、13.0、12.5、12.0、11.5、11.0、10.5、10.0、9.8、9.6、9.4、9.2、9.0、8.9、8.8、8.7、8.6、8.5、8.4、8.3、8.2、8.1、又は8.0%(記載順により好ましい)を超えない有機酸を含み得る。例えば、本発明の特定の実施形態は、金属加工液の総重量を基準として約0.2~20%、約1~15%、最も望ましくは約2~8%の有機酸を含み得る。
【0029】
本発明の有機酸は、従来の金属加工液のpH緩衝系内に見出されるホウ酸を置き換えることが意図されている。したがって、有機酸は、金属加工液を所望のpH範囲内に維持する緩衝系を提供するために、好適なアルカリ性剤と組み合わせてよい。本発明に従って単独で、又は組み合わせて金属加工液中に組み込まれ得るアルカリ性剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アルカノールアミン;第一級、第二級、及び第三級アミン、好ましくは第一級アミン、金属アルカリ水酸化物、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム;並びに金属炭酸塩及び重炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び重炭酸カリウムが挙げられる。
【0030】
好適なアルカノールアミン及びアミンとしては、これらに限定されるものではないが、アミノメチルプロパノール(AMP-95)、ジグリコールアミン(DGA)、モノエタノールアミン(MEA)、モノイソプロパノールアミン(MIPA)、ブチルエタノールアミン(NBEA)、ジシクロへキシルアミン(DCHA)、ジエタノールアミン(DEA)、ブチルジエタノールアミン(NBDEA)、トリエタノールアミン(TEA)、及びメチルペンタメチレンジアミンが挙げられる。
【0031】
アルカリ性剤は、少なくとも1種の有機アミンを含むことが好ましい。本明細書で使用される場合、「有機アミン」は、少なくとも1つのアミン官能基を含む化合物を意味する。該化合物には、脂肪族及び芳香族化合物の第一級、第二級、及び第三級アミンが含まれる。有機アミンは、好ましくは脂肪族であり、かつ少なくとも50mgOH/gの全アミン価を有する。アミン価は、ASTM2074-92(1998)に従って計算される。好ましい有機アミンとしては、モノエタノールアミン及びメチルペンタメチレンジアミンが挙げられる。
【0032】
本発明に係る金属加工液は、好ましくは、金属加工液の総重量を基準として、好ましくは少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2.0%(記載順により好ましい)、かつ、独立して好ましくは25.0、24.0、23.0、22.0、21.0、20.0、19.0、18.0、17.0、16.0、15.9、15.8、15.7、15.6、15.5、15.4、15.3、15.2、15.1、又は15.0%(記載順により好ましい)を超えない1又は複数のアルカリ性剤を含んでよい。例えば、金属加工液の特定の実施形態は、1又は複数のアルカリ性剤を、金属加工液の総重量を基準として約25%以下、約20%以下、最も望ましくは約2~15%の量で含み得る。
【0033】
前述したように、本発明に係る金属加工液中に組み込まれたpH緩衝系は、金属加工液中の乳化剤の性能を改善するのを助け、また特定の金属の腐食を防止する。pH緩衝系は、水性流体と油との混合物、及び金属加工液中に典型的に組み込まれる当業者に知られている任意選択の添加剤を含む金属加工液組成物に特に有用である。望ましくは、乳化剤は、組成物が、少なくとも3日間又はそれ以上、本明細書で定義されるように貯蔵安定性であるように選択される。
【0034】
本発明に係る組成物の油は、流体力学的潤滑剤として機能する。流体力学的潤滑は、流体潤滑剤の膜によって移動表面を分離することが関与する。本発明の金属加工液のような油含有金属加工液は、典型的には、主要潤滑成分として、1又は複数の可溶性油及び半合成油だけでなく鉱油も含み、これはまたある程度の耐腐食性の利点をももたらす。本発明に係る金属加工液は、広範な操作条件(例えば、温度及び圧力)に好適な鉱油を含むことが好ましい。好適な油の例としては、これらに限定されるものではないが、炭化水素系油、例えば低流動点、良好な溶解力、低臭気レベル、高引火点、及び色安定性を有するナフテン及びパラフィン油が挙げられる。
【0035】
本発明に係る金属加工液は、金属加工液の総重量を基準として、好ましくは少なくとも0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、及び5.0%(記載順により好ましい)、かつ、独立して好ましくは50.0、48.0、46.0、44.0、42.0、40.0、39.0、38.0、37.0、36.0、35.0、34.0、33.0、32.0、31.0、30.9、30.8、30.7、30.6、30.5、30.4、30.3、30.2、30.1、又は30.0%(記載順により好ましい)の1又は複数の流体力学的潤滑剤を含んでよい。例えば、金属加工液の特定の実施形態は、1又は複数の流体力学的潤滑剤を、金属加工液の総重量を基準として約50%以下、約40%以下、最も望ましくは約5~30%の量で含み得る。
【0036】
当業者に知られているように、油含有金属加工液は、しばしば流体安定性に影響を与える水硬度、乳化剤の含有による使用中の過度の泡立ち、及び微生物増殖など、いくつかの欠点を有し得る。したがって、これらの欠点のうちのいくつかを克服するために追加の添加剤を組み込むことが一般的である。したがって、本発明に係る金属加工組成物は、任意選択で、1又は複数の一般的な添加剤、例えば、境界潤滑剤添加剤、極圧潤滑剤添加剤、腐食防止剤(例えば、鋳鉄、イエローメタル、及びアルミニウム腐食防止剤)、乳化剤/ヒドロトロープ、殺生物剤、及び消泡剤を含んでもよい。
【0037】
境界潤滑剤及び極圧潤滑剤は、表面が互いに擦れ合うときに観察される摩擦摩耗を最小限に抑える。本発明に係る金属加工液は、1又は複数の境界潤滑剤添加剤及び/又は極圧潤滑剤添加剤を含み得る。境界潤滑剤には、これらに限定されるものではないが、石鹸、アミド、エステル、グリコール、及び硫酸化植物油が含まれ得る。極圧潤滑剤としては、これらに限定されるものではないが、塩化及び硫化脂肪酸及びエステル、ポリスルフィド、有機リン酸エステル、及び中和型リン酸エステルが挙げられる。
【0038】
本発明に係る組成物に有用な特定のポリマー材料もまた、境界潤滑剤及び極圧潤滑剤の両方として機能し得、これらに限定されるものではないが、いずれかの末端にポリオキシエチレン鎖を有する中央ポリオキシプロピレンブロックからなるブロックコポリマー、いずれかの末端にポリオキシプロピレン鎖を有する中央ポリオキシエチレンブロックからなるブロックコポリマー、エチレンジアミンに対するエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの逐次的付加に由来するテトラブロックコポリマー、少なくとも1つの末端ヒドロキシル基を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダムコポリマーの水溶性潤滑剤基材、水溶性ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルコール又はそのようなアルコールの水溶性カルボン酸エステル、末端ヒドロキシル基を1つ有し全てポリオキシプロピレン基からなるアルコール開始基材、一塩基及び二塩基酸エステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコールエステル、有機酸グラフト化ポリアルキレングリコール、リン酸エステル、ポリイソブチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びアクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸エステルとのコポリマーが挙げられる。
【0039】
好ましい境界潤滑剤としては、アルカノールアミド及びオレイルアルコールが挙げられる。好ましい極圧潤滑剤としては、オレイン酸及びその誘導体、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテルホスフェート、及びリン酸エステルが挙げられる。
【0040】
本発明に係る金属加工液は、1又は複数の境界潤滑剤を、金属加工液の総重量を基準として0~約40%、より好ましくは約1~25%、最も好ましくは約2~15%の量で含んでよい。望ましくは、本発明に係る金属加工液は、1又は複数の境界潤滑剤を、金属加工液の総重量を基準として少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14%、かつ金属加工液の総重量を基準として最大約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40%の量で含み得る。本発明に係る金属加工液は、1又は複数の極圧潤滑剤を、金属加工液の総重量を基準として0~約40%、より好ましくは約5~約25%以下、最も好ましくは約1%~約5%の量で含んでよい。望ましくは、本発明に係る金属加工液は、1又は複数の極圧潤滑剤を、金属加工液の総重量を基準として少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%、かつ金属加工液の総重量を基準として最大約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40%の量で含み得る。
【0041】
腐食防止剤は、化学化合物であり、低濃度で添加された場合、金属及び合金の腐食を停止又は減速させる。油含有製品は、腐食保護のバリアコーティングを形成するのに油自体に大いに依存するが;機械加工されている金属によって、腐食の可能性をさらに阻むために追加の添加剤が望まれる場合もある。腐食防止剤は、一般に、例えば、不動態層(金属に対する腐食性物質の接近を阻止する材料表面上の薄膜)を形成するか、酸化還元腐食系の酸化部分又は還元部分のいずれかを抑制する(アノード抑制剤及びカソード抑制剤)か、又は溶存酸素を捕捉することによって機能する。腐食防止剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アルキルホスホン酸、カルボン酸のアルカリ及びアルカノールアミン塩、ウンデカン二酸/ドデカン二酸及びその塩、C4~C22カルボン酸及びそれらの塩、トリトリアゾール及びその塩、ベンゾトリアゾール及びその塩、イミダゾリン及びその塩、アルカノールアミン及びアミド、スルホネート、ナフテン酸のアルカリ及びアルカノールアミン塩、リン酸エステルアミン塩、アルカリニトリル、アルカリカーボネート、カルボン酸誘導体、アルキルスルホンアミドカルボン酸、アリールスルホンアミドカルボン酸、脂肪酸サルコシド、フェノキシ誘導体、並びにモリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
【0042】
好ましい鋳鉄腐食防止剤としては、ウンデカン二酸/ドデカン二酸及びその塩が挙げられる。好ましいイエローメタル腐食防止剤としては、トリトリアゾールナトリウム塩が挙げられる。好ましいアルミニウム腐食防止剤としては、オクタンホスホン酸が挙げられる。
【0043】
本発明に係る金属加工液は、1又は複数の鋳鉄腐食防止剤を、金属加工液の総重量を基準として約15%以下、より好ましくは約1~10%の量で含んでよい。望ましくは、本発明に係る金属加工液は、1又は複数の鋳鉄腐食防止剤を、金属加工液の総重量を基準として、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%から、約11、12、13、14、又は15%を超えない量で含み得る。本発明に係る金属加工液は、1又は複数のイエローメタル及び/又はアルミニウム腐食防止剤を、各々、金属加工液の総重量を基準として約5%以下、より好ましくは約3%以下、最も好ましくは約0.1~0.5%の量で含んでよい。本発明に係る金属加工液は、1又は複数のイエローメタル及び/又はアルミニウム腐食防止剤を、各々、金属加工液の総重量を基準として、約0.1、0.2、0.3、又は0.4%から、約0.5、1、2、3、4、又は5%を超えない量で含み得る。
【0044】
金属加工液エマルジョンを安定化させる目的で当業者に知られている任意の乳化剤又はヒドロトロープを、本発明に係る様々な金属加工液組成物に利用してよい。好適な乳化剤/ヒドロトロープしては、これらに限定されるものではないが、アルカノールアミド、アルキルアリールスルホネート、アルキルアリールスルホン酸、アミンオキシド、アミド及びアミン石鹸、ブロックコポリマー、カルボキシル化アルコール、カルボン酸/脂肪酸、エトキシル化アルコール、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化アミン/アミド、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪酸エステル及び油、エトキシル化フェノール、脂肪族アミン及び脂肪酸エステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、イミダゾリン及びイミダゾリン誘導体、リグニン及びリグニン誘導体、マレイン酸又はコハク酸無水物、メチルエステル、モノグリセリド及び誘導体、ナフテン酸、オレフィンスルホネート、リン酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、ポリマー(多糖、アクリル酸、アクリルアミド)、プロポキシル化及びエトキシル化脂肪酸、アルコール又はアルキルフェノール、第四級界面活性剤、サルコシン誘導体、石鹸、ソルビタン誘導体、スクロース及びグルコースエステル及び誘導体、油及び脂肪酸のサルフェート及びスルホネート、エトキシル化アルキルフェノールのサルフェート及びスルホネート、アルコールのサルフェート、エトキシル化アルコールのサルフェート、脂肪酸エステルのサルフェート、ドデシル及びトリデシルベンゼンのスルホネート、ナフタレン及びアルキルナフタレンのスルホネート、石油のスルホネート、スルホスクシナメート、スルホスクシネート及び誘導体、トリデシル及びドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0045】
好ましい乳化剤/ヒドロトロープとしては、C16~C18エトキシル化アルコール;アルキルエーテルカルボン酸;トール油留分;ポリグリコールエーテル;及びイソノナン酸が挙げられる。
【0046】
本発明に係る金属加工液は、1又は複数の乳化剤/ヒドロトロープを、金属加工液の総重量を基準として約25%以下、より好ましくは約0.1~約20%、最も好ましくは約1~15%の量で含んでよい。乳化剤/ヒドロトロープは、金属加工液の総重量を基準として、約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15%から、約16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25%を超えない量で存在し得る。
【0047】
前述したように、水系流体及び植物油をベースとする流体は、細菌及び真菌で汚染される可能性がある。殺細菌剤又は殺真菌剤を金属加工液に添加して、微生物増殖及び金属加工液の劣化を制御する場合もある。これは、流体の品質を維持し、また、機械操作者の肺に過敏性肺炎又はレジオネラ症を引き起こす生物剤やエンドトキシンへのばく露から作業者を保護するのに必要である。純粋な鉱油をベースとする金属加工液又は溶剤系流体は、一般に殺生物剤を含有せず、金属加工液に添加される殺生物剤の量は、種類及び用途によって変わる。しかしながら、金属加工液中の微生物増殖をさらに防止するために、本発明に係る金属加工液組成物中に1又は複数の殺生物剤を任意選択で含めてもよい。本発明の組成物における使用に好適な殺生物剤は、2-ピリジンチオール,1-オキシド,ナトリウム塩である。
【0048】
本発明に係る金属加工液は、1又は複数の殺生物剤を、金属加工液の総重量を基準として約0.05~2%、より好ましくは約0.1~0.5%の量で含んでよい。望ましくは、本発明に係る金属加工液は、1又は複数の殺生物剤を、金属加工液の総重量を基準として約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、又は0.4%から、最大約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2%の量で含み得る。
【0049】
切削液の他の成分と適合性があり、かつ、流体の貯蔵中又は使用中に金属加工液の発泡を最小限に抑えるか又は排除する任意の化合物を、本発明の様々な実施形態において使用してよい。好適な消泡剤としては、これらに限定されるものではないが、ポリアルキレンイミン、オルガノ変性ポリシロキサン、及びポリエーテルが挙げられる。例示的な消泡剤としては、ポリエチレンイミン、アルキルポリシロキサン、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジプロピルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、ジオクチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルプロピルポリシロキサン、ジブチルポリシロキサン、及びジドデシルポリシロキサン;有機リン化合物、例えば、リン酸n-トリ-ブチル、リン酸n-トリブトキシエチル、又は亜リン酸トリフェニル、又はその混合物;並びに、ポリアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシド)のコポリマーが挙げられる。好ましい消泡剤としては、ポリエチレンイミン溶液及びポリマー分散液が挙げられる。
【0050】
本発明に係る金属加工液は、1又は複数の消泡剤を、金属加工液の総重量を基準として約0.05~2%、より好ましくは約0.1~0.5%の量で含んでよい。望ましくは、本発明に係る金属加工液は、1又は複数の消泡剤を、金属加工液の総重量を基準として、約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、又は0.4%から、最大約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2%の量で含み得る。
【0051】
本発明に係る組成物の成分は、任意の順序で組み合わせても、又は添加してもよい。さらに、本発明に係る流体を製造するために、金属加工液の様々な成分を組み合わせるか、又は混合するために一般的に使用される当業者に知られている任意の方法を用いてよい。
【0052】
本発明に係る金属加工液は、これらに限定されるものではないが、切削、フライス加工、旋削、研削、削孔、及び穿孔を含めた様々な金属加工プロセスで使用され得る。金属加工液は、金属加工プロセス中に、機械加工しようとする金属及び/又は原料を成形するために使用される工具を含めた金属表面に適用され得る。発熱を制御し、また接触面を潤滑する目的で製造プロセス中に金属加工液を供給することが当業者に知られている任意の方法を、本発明に係る金属加工液を適用するために用いてよい。
【実施例0053】
本発明を、組成物に使用される異なる化学成分の名称、それらの様々な比率、及び本発明に係る金属加工液の異なる実施形態の性能の評価を示す以下の非限定的な実施例を参照して具体的に記載する。
【0054】
実施例1
表1に示す量の以下の化学成分を組み合わせることによって、第1組成物、実施例1を調製した。
【0055】
【0056】
流体の物理的特性評価及び一連の試験を実施例1について行った。分析結果を、ホウ酸を含むpH緩衝系を含有するベンチマークとなる市販の金属加工液と比較した。所見及び試験結果を表2に示す。
【0057】
【0058】
表3及び表4に示す量の以下の化学成分を組み合わせることによって、2つの追加の組成物、実施例2及び3を調製した。得られた流体は実施例1の組成物と同様に機能した。
【0059】
【0060】
【0061】
本発明の好ましい実施形態を、本明細書に示し、また記載してきたが、そのような実施形態は単なる例示として提供されていることが理解されよう。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、数多くの変形、変更、及び置換に想到するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の精神及び範囲内に入るそのような全ての変形に及ぶことが意図される。