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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024114
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】光伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/079 20130101AFI20220201BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
H04B10/079
H04J14/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188374
(22)【出願日】2021-11-19
(62)【分割の表示】P 2018107958の分割
【原出願日】2018-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 航平
(72)【発明者】
【氏名】小谷川 喬
(72)【発明者】
【氏名】久保 勉
(57)【要約】
【課題】トランスポンダ部間の光伝送路において合分波機能の光フィルタによる光信号帯域の狭窄化が起因するフィルタペナルティを低減する。
【解決手段】光伝送システムは、光信号の合分波機能を有する光フィルタが介挿された光ファイバ14を介して、光信号の送受信を行う送信側及び受信側のトランスポンダ部に、通信装置からの電気信号でレーザ光源から出射されるレーザ光を変調した光信号を光ファイバ14へ送信する送信部と、送信部からの光信号を光ファイバ14を介して受信し、電気信号に変換する受信部23Bとを有する。受信部23Bは、受信側のトランスポンダ部22aで受信される光信号の光パワーを測定する光パワー測定部66と、その測定される光パワーが最大となるように、光フィルタの中心周波数をシフトする周波数シフト量を決め、この決められた周波数シフト量を光フィルタへ送信する周波数シフト制御部69とを備える。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の合分波機能を有する光フィルタが介挿された光伝送路を介して、光信号の送受信を行う送信側及び受信側のトランスポンダ部に、通信装置からの電気信号でレーザ光源から出射されるレーザ光を変調した光信号を前記光伝送路へ送信する送信部と、この送信部からの光信号を前記光伝送路を介して受信し、電気信号に変換する受信部とを有する光伝送システムであって、
前記受信部は、前記受信側のトランスポンダ部で受信される光信号の光パワーを測定する光パワー測定部と、その測定される光パワーが最大となるように、前記光フィルタの中心周波数をシフトする周波数シフト量を決め、この決められた周波数シフト量を前記光フィルタへ送信する制御部と
を備えることを特徴とする光伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号の送受信を行うトランスポンダ部から光伝送路へ送信される光信号が、光伝送路の途中に介挿された合分波機能を有する光フィルタによりスペクトル帯域の狭窄化を受け、信号品質が劣化することを抑制する光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図15は従来の光伝送システム10の構成を示すブロック図である。光伝送システム10は、遠隔地の両端に配置された一端側の複数のトランスポンダ部11a~11n、光合分波部12a及び光増幅部13aと、両端を接続する光ファイバ14と、光ファイバ14間に介挿された複数の光クロスコネクト部15a,15nと、他端側の光増幅部13b、光合分波部12b及び複数のトランスポンダ部16a~16nとを備えて構成されている。この光伝送システム10は双方向通信であるが、図面左側(送信側)のトランスポンダ部11a~11nから右側(受信側)のトランスポンダ部16a~16nへ光信号が送信される場合について説明する。
【0003】
光伝送システム10は、WDM(wavelength division multiplexing:波長分割多重)方式が適用されており、WDM信号に多重化された異なる波長の各光信号を各々のトランスポンダ部11a~11nで送信および受信し、各々のトランスポンダ部11a~11nは外部の通信装置からの電気信号を入力する。
【0004】
この電気信号は、各トランスポンダ部11a~11nで光信号に変換され、更に、光合分波部12aで合波され、光増幅部13aで増幅された後に、光ファイバ14へ送信される。光ファイバ14の途中では、光クロスコネクト部15a,15nによって光信号がアッド/ドロップされる。このように光ファイバ14を伝送する光信号は、受信側の光増幅部13bで増幅後に光合分波部12bで分波され、各トランスポンダ部16a~16nで受信されて図示せぬ通信装置へ送信される。
【0005】
近年、このような構成の光伝送システム10においては、Open ROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer) MSAという団体等が、トランスポンダ部と、これ以外の光合分波部12a,12b及び光クロスコネクト部15a,15n等のROADM部(共通部)とを分離した構成で実現しようとする取り組みがある。なお、ROADMは、再構成が可能(reconfigurable)な光信号の挿入/分岐(Add/Drop)を行う多重化(multiplexer)装置のことである。
【0006】
この取り組みでは、非特許文献1,2に記載のように、トランスポンダ部と共通部とを異なるメーカ製品のものとするλ接続構成が求められており、共通部には既設品を使用し、トランスポンダ部を交換可能とすることが要求されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Open ROADM MSA”,[online],2016,[平成30年5月28日検索],インターネット〈URL: http://www.openroadm.org/home.html〉
【非特許文献2】Joao Santos,et.al.,”On the Impact of Deploying Optical Transport Networks Using Disaggregated Line Systems”,J.OPT.COMMUN.NETW.,VOL.10,O.1,JANUARY 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した光伝送システム10の光合分波部12a,12b及び光クロスコネクト部15a,15n等の中間部には、波長選択スイッチ等の光合分波機能の光フィルタが組み込まれている。各光フィルタは各々が周波数ずれを持っており、これら周波数ずれが光信号に重畳されることで、光信号のスペクトル帯域が狭くなる狭窄化が生じる。
【0009】
この狭窄化について図15に示す上段側の信号波形を参照して説明する。トランスポンダ部11a~11nから出力される光信号は、縦軸にパワーP、横軸に周波数fを取ったグラフに信号波形W1で示すように、中心周波数f0の両側に広がる周波数帯域を有しているとする。この光信号は、送信側の光合分波部12aの光フィルタにより中心周波数f0がf1にずれた帯域の信号波形W1aとなり、光クロスコネクト部15aの光フィルタにより中心周波数f0がf2にずれた帯域の信号波形W1bとなる。以降同様に、光クロスコネクト部15nの光フィルタにより中心周波数f0がf3にずれた帯域の信号波形W1cとなり、光合分波部12nの光フィルタにより中心周波数f0がf4にずれた帯域の信号波形W1dとなる。
【0010】
上記の信号波形W1a~W1dで示した周波数帯域のずれが重畳されることにより、信号波形W2で示すようにスペクトル帯域B1が狭まる狭窄化が生じる。このため、トランスポンダ部16a~16nで受信される信号は、送信側本来の中心周波数f0から周波数fDずれて中心周波数f5となった狭い帯域の信号波形W2となる。このように狭窄化が生じた場合、受信信号の品質が劣化するフィルタペナルティが生じる問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、トランスポンダ部間の光伝送路において合分波機能の光フィルタによる光信号帯域の狭窄化が起因するフィルタペナルティを低減できる光伝送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に係る発明は、光信号の合分波機能を有する光フィルタが介挿された光伝送路を介して、光信号の送受信を行う送信側及び受信側のトランスポンダ部に、通信装置からの電気信号でレーザ光源から出射されるレーザ光を変調した光信号を前記光伝送路へ送信する送信部と、この送信部からの光信号を前記光伝送路を介して受信し、電気信号に変換する受信部とを有する光伝送システムであって、前記受信部は、前記受信側のトランスポンダ部で受信される光信号の光パワーを測定する光パワー測定部と、その測定される光パワーが最大となるように、前記光フィルタの中心周波数をシフトする周波数シフト量を決め、この決められた周波数シフト量を前記光フィルタへ送信する制御部とを備えることを特徴とする光伝送システムである。
【0013】
この構成によれば、光伝送路からの受信光信号の光パワーを測定しながら周波数シフト量を決定し、この周波数シフト量で光伝送路に介挿された光信号の合分波機能を有する光フィルタの中心周波数をシフトさせる。このシフトにより、上記測定される光パワーが最大となった時に、送信側レーザ光源からのレーザ光の中心周波数と、受信側でずれた光信号の中心周波数とが一致する。これによって、受信側で光信号の狭窄化が低減されるので、受信信号の品質が劣化するフィルタペナルティを低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トランスポンダ部間の光伝送路において合分波機能の光フィルタによる光信号帯域の狭窄化が起因するフィルタペナルティを低減できる光伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る光伝送システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る光伝送システムの送信部の構成を示すブロック図である。である。
図3】第1実施形態に係る光伝送システムの受信部の構成を示すブロック図である。
図4】(a)送信側のレーザ光の中心周波数f0を、受信された光信号の中心周波数f5に合わせる様態を示す図、(b)送信側のレーザ光の信号波形W1の帯域中に、受信光信号の信号波形W2が収まる様態を示す図である。
図5】レーザ光源からのレーザ光の中心周波数をシフトして、受信される光信号の中心周波数に一致させる動作の説明図である。
図6】第1実施形態に係る光伝送システムにおいてフィルタペナルティを低減する動作を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の送信部の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の送信部の構成を示すブロック図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の送信部の構成を示すブロック図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の受信部の構成を示すブロック図である。
図11】本発明の第5実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の送信部の構成を示すブロック図である。
図12】本発明の第6実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の送信部の構成を示すブロック図である。
図13】本発明の第7実施形態に係る光伝送システムの構成を示すブロック図である。
図14】第7実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の受信部の構成を示すブロック図である。
図15】従来の光伝送システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書の全図において対応する構成部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
<第1実施形態の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る光伝送システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示す光伝送システム10Aが、従来の光伝送システム10(図15)と異なる点は、受信側のトランスポンダ部22a~22nにより受信信号のBER(Bit Error Rate)を測定して送信側にフィードバックする。このフィードバックは光ファイバ14を介して行われる。更に、送信側のトランスポンダ部21a~21nにおいて、フィードバックされたBERが最小となるようにレーザ光の中心周波数をシフトする制御を行うようにしたことにある。このため、送受信側のトランスポンダ部21a~21n,22a~22nに後述の送信部22及び受信部23を備えた。
【0018】
送信部22は、図2に示すように、通信装置(図示せず)から送信されて来た電気信号である入力情報信号30a,30bを光信号40に変換して光ファイバ14へ送信する。この送信部22は、エンコーダ部31a,31bと、D/A(デジタル/アナログ変換部)32a,32b,32c,32dと、レーザ光源34と、光分岐部35と、直交変調部36a,36bと、偏波合成部37と、本特徴要素の周波数シフト制御部61(制御部61ともいう)とを備えて構成されている。なお、光ファイバ14は請求項記載の光伝送路を構成する。周波数シフト制御部61は、請求項記載の制御部を構成する。
【0019】
受信部23は、図3に示すように、光ファイバ14を介して送信されて来た光信号40を電気信号の出力情報信号54a,54bに変換して通信装置(図示せず)へ送信する。この送信部22は、レーザ光源42と、90度ハイブリッド部43と、バランス型光受信部45a,45b,45c,45dと、A/D(アナログ/デジタル変換部)47a,47b,47c,47dと、波長分散補償部49と、偏波分離部50と、サンプリング部51a,51bと、周波数位相推定部52a,52bと、多値信号判定部53a,53bと、本特徴要素のBER測定部62とを備えて構成されている。
【0020】
但し、波長分散補償部49と、偏波分離部50と、サンプリング部51a,51bと、周波数位相推定部52a,52bと、多値信号判定部53a,53bとでデジタル信号処理部48を構成する。
【0021】
図2に示す送信部22は、レーザ光源34から出力される無変調のレーザ光を光分岐部35で2分岐し、2つの直交変調部36a,36bに入力する。直交変調部36a,36bは、リチウムニオベイト等の基板上に並列に配置された2組のMZ(Mach-Zehnder)変調器から構成される。MZ変調器の変調信号入力端に、高速変調された電圧信号を印加することにより、出力端から光電界の同相成分(I成分又は実部)と直交成分(Q成分又は虚部)とが独立に出力される直交変調処理が行われる。
【0022】
通信装置からの入力情報信号30a,30bは、エンコーダ部31a,31bによって16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等の多値信号に符号化される。この多値信号の同相成分と直交成分は、D/A32a~32dによりアナログ信号に変換され、この後、直交変調部36a,36bの同相・直交変調端に入力される。
【0023】
この結果、直交変調部36a,36bから出力される信号光は、それぞれ二次元複素平面上で変調された独立の多値変調光になる。即ち、互いに偏波状態が直交するように変換されたS偏波の光変調信号38とP偏波の光変調信号39として偏波合成部37に入力される。この偏波合成部37で偏波多重光多値信号である光信号40に偏波合成され、光ファイバ14を介して光合分波部12(図1)へ出力される。
【0024】
このように各トランスポンダ部21a~21nから光ファイバ14へ出力された各光信号40は、図1に示すように、光合分波部12で合波された後、光増幅部13aで増幅されて光ファイバ14を介して受信側へ送信される。この送信される光信号40は、途中で、光クロスコネクト部15a,15nによりアッド/ドロップ処理が行われる。この光信号40は、受信側の光増幅部13bで増幅後に光合分波部12bで分波され、各トランスポンダ部16a~16nで受信される。
【0025】
その光合分波部12bで分波された光信号40は、偏波多重光多値信号であり、図3に示す90度ハイブリッド部43で、X偏波成分{同相・直交成分(X-pol.)}とY偏波成分(同相・直交成分(Y-pol.))の4組の光信号に分離され、4つのバランス型光受信部45a~45dへ出力される。
【0026】
レーザ光源42から出射されるレーザ光の周波数は、光ファイバ14を介してきた光信号40である偏波多重光多値信号と略同一に設定されている。このレーザ光源42からのレーザ光は、90度ハイブリッド部43のもう一方の入力ポートから入力され、各バランス型光受信部45a~45dに分配される。
【0027】
バランス型光受信部45a~45dは、入力された信号光に局発光を干渉させ、この干渉により得られた信号光をフォトダイオードでアナログの電気信号に変換する。この電気信号は、A/D47a~47dでデジタル信号(I成分、Q成分)に変換され、デジタル信号処理部48に出力される。
【0028】
デジタル信号処理部48では、まず、波長分散補償部49において、光ファイバ14で重畳された波長分散の逆関数に相当する成分が印加され、光ファイバ14での波形劣化が補償される。この劣化補償後の信号(X,Y)は、偏波分離部50で、伝送中の直交偏波成分が検出されて偏波変換され、送信側の元のS偏波成分及びP偏波成分が分離抽出される。
【0029】
S偏波成分はサンプリング部51aに出力され、P偏波成分はサンプリング部51bに出力される。サンプリング部51a,51bでは、波形の中心時刻のデータが抽出される。次に、周波数位相推定部52a,52bでは、IF(Intermediate Frequency)オフセット周波数成分や位相揺らぎ成分が除去されて、I成分とQ成分のデータが出力される。最後に、多値信号判定部53a,53bにおいて、そのI成分とQ成分のデータに対する多値信号の判定及び復号処理が実行され、出力情報信号54a,54bが得られる。
【0030】
なお、一般には、受信部23の後段に、フレーマ・誤り訂正回路が配置される。フレーマ・誤り訂正回路は、受信信号を解析してデータフレームの先頭を検索し、この検索された先頭以降のデータを、送信前に予め付与した誤り訂正情報を利用して誤り訂正処理を行い、ヘッダ中の情報を読み出してチャネルや監視情報の処理等を行う。
【0031】
BER測定部62は、デジタル信号処理部48の多値信号判定部53a,53bで復調される出力情報信号54a,54bからBERを測定し、この測定されたBERを送信側のトランスポンダ部21a~21nの送信部22へフィードバックする。
【0032】
測定されるBERは、送信側のトランスポンダ部21a~21nと受信側のトランスポンダ部22a~22n間の信号のビットエラー率である。BERが大きい場合、トランスポンダ部間の信号伝送状態の低下を表わすので、BERを下げて信号伝送状態を向上させるためにフィードバックを行う。
【0033】
フィードバックされたBERは、トランスポンダ部21a~21nの送信部22の周波数シフト制御部61に入力される。制御部61は、入力されたBERに応じて、レーザ光源34から出射されるレーザ光の中心周波数をシフトし、受信側でずれた光信号40の中心周波数に合わせ、双方の中心周波数を一致させる制御を行う。この双方の一致により受信側での光信号40の狭窄化が低減可能となる。
【0034】
受信側のトランスポンダ部22a~22nでの受信信号は、送信側のトランスポンダ部21a~21nからの図4(a)に信号波形W1で示す送信信号の中心周波数f0から、周波数fDずれて中心周波数f5の狭い帯域の信号波形W2となる。このため、中心周波数f0を周波数fDだけずらして中心周波数f5に一致させると、図4(b)に示すように、送信信号の信号波形W1の帯域中に、受信信号の信号波形W2が収まる状態となる。
【0035】
レーザ光源34は、ITLA(Integrable Tunable Laser. Assembly)標準規格に基づいて制作されており、このため、制御部61の周波数シフト制御によってレーザ光の中心周波数をずらす(シフトする)機能を有している。
【0036】
制御部61は、上記フィードバックされて来たBERを、図5に示すように、初期値BER0とする。次に、初期値BER0の時にレーザ光源34から出射されているレーザ光の中心周波数f0が、例えば周波数シフト量が大きくなる方向(周波数増加方向)へ一定量ΔPずつ2回ずらされる。このようにレーザ光の中心周波数f0がずらされることにより、フィードバックされてくるBERの値が変化する。
【0037】
そこで、制御部61は、上記1回目に周波数増加方向へΔPずらされた時に、受信側のBER測定部62で測定されてフィードバックされるBER1を記憶部(図示せず)に記憶し、2回目にΔPずらされた時にフィードバックされるBER2も記憶部に記憶する。制御部61は、その記憶された2回分のBER1,BER2が大きい値に移行していれば、トランスポンダ部間の信号伝送状態が悪化(低下)していると判定する。
【0038】
この判定により制御部61は、矢印Y1で示すように、レーザ光源34からのレーザ光の中心周波数f0が、最初の2回ずらされた周波数増加方向と逆方向の周波数減少方向へ一定量-ΔPずつ2回ずらす周波数シフト制御を行う。この制御により制御部61は、受信側のBER測定部62からフィードバックされてくる1回目のBER-1と、2回目のBER-2とを記憶部に記憶する。
【0039】
制御部61は、その記憶された2回の周波数シフト時のBER-1,BER-2が小さい値に移行していれば、トランスポンダ部間の信号伝送状態が向上していると判定する。この判定後、制御部61は、フィードバックされてくるBERが最小となるように、レーザ光の中心周波数f0を周波数減少方向にシフトする制御を行い、BERが最小となった際に、レーザ光の中心周波数f0と受信側の光信号40の中心周波数f5とが一致したと判定して制御を停止する。
【0040】
<第1実施形態の動作>
次に、第1実施形態に係る光伝送システム10Aにおいてフィルタペナルティを低減する動作を、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
但し、図1に示すように、各トランスポンダ部21a~21nの送信部22で通信装置(図示せず)からの入力情報信号30a,30bが光信号40に変換され、これらの光信号40が光合分波部12aで分波後に光増幅部13aで増幅され、光ファイバ14へ送信される。この送信された光信号40が、光クロスコネクト部15a,15nで必要に応じてアッド/ドロップされ、その後、受信側の光増幅部13bで増幅後に光合分波部12bで分波され、更に、各トランスポンダ部16a~16nで受信されて通信装置(図示せず)へ送信されるといった光伝送が実行中であるとする。
【0042】
このような光伝送中に、図6に示すステップS1において、受信側のトランスポンダ部22a~22nにおける受信部23のBER測定部62(図3)が、デジタル信号処理部48の多値信号判定部53a,53bで復調される出力情報信号54a,54bからBERを測定する。BER測定部62は、その測定したBERを送信側のトランスポンダ部21a~21nの送信部22へフィードバックする。
【0043】
ステップS2において、フィードバックされたBERが、送信側のトランスポンダ部21a~21nにおける送信部22の周波数シフト制御部61に入力される。制御部61は、BERに応じてレーザ光源34から出射されるレーザ光の中心周波数f0を、受信側の光信号の中心周波数f5に近づけるようにシフトする周波数シフト制御を行う。
【0044】
ステップS3において、制御部61は、上記周波数シフト制御により、フィードバックされるBERの値が小さくなるか否かを判定する。この結果、小さくならないと判定(No)、言い換えれば大きくなると判定された場合、ステップS4において、制御部61は、周波数シフトの方向を逆方向に変えて周波数シフト制御を行う。この制御後は、上記ステップS3に戻って判定が行われる。
【0045】
このステップS3の判定結果、フィードバックされるBERの値が小さくなると判定(Yes)された場合、ステップS5において、制御部61は、フィードバックされてくるBERが最小となるように周波数シフト制御を行う。
【0046】
ステップS6において、制御部61は、BERが最小となったか否かを判定する。最小となっていない場合(No)、上記ステップS5の周波数シフト制御を継続する。
【0047】
一方、最小となった場合(Yes)、ステップS7において、制御部61は、レーザ光の中心周波数f0と受信側の光信号40の中心周波数f5とが一致したと判定する。この一致時には、周波数シフト制御が停止される。
【0048】
<第1実施形態の効果>
第1実施形態に係る光伝送システム10Aによる効果について説明する。光伝送システム10Aは、光信号の合分波機能を有する光フィルタが介挿された光ファイバ14を介して、光信号の送受信を行う送信側及び受信側のトランスポンダ部21a~21n,22a~22nを有する。トランスポンダ部21a~21n,22a~22nは、通信装置からの電気信号でレーザ光源34から出射されるレーザ光を変調した光信号を光ファイバ14へ送信する送信部22と、この送信部22からの光信号を光ファイバ14を介して受信し、電気信号に変換する受信部23とを備える。第1実施形態の特徴を説明する。
【0049】
受信部23は、受信側のトランスポンダ部22a~22nの受信信号からBERを測定し、この測定されたBERを送信側のトランスポンダ部21a~21nへフィードバックするBER測定部62を備える。送信部22は、フィードバックされるBERに応じて、レーザ光源34から出射されるレーザ光の中心周波数f0を、受信側のトランスポンダ部22a~22nで受信される光信号40の中心周波数f5に近づけるようにシフトする周波数シフト制御を行う周波数シフト制御部61を備える。この制御部61が、フィードバックされるBERの値が最小となるように周波数シフト制御を行う構成とした。
【0050】
この構成によれば、周波数シフト制御によって、送信側にフィードバックされるBERの値が最小となった時に、レーザ光の中心周波数f0が、受信側でずれた光信号の中心周波数f5に一致する。この一致により、光ファイバ14途中の各光フィルタによる光信号への周波数ずれが抑制されるので、受信側で光信号40の狭窄化が低減される。このため、光ファイバ14の受信側において、受信信号の品質が劣化するフィルタペナルティを低減できる。
【0051】
この他、受信側のBER測定部62に代え、FEC(Forward Error Correction:前方誤り訂正)の訂正ビット数を測定し、この測定した訂正ビット数を送信側へフィードバックするFEC測定部を備えてもよい。
【0052】
この場合、送信側の制御部61が、フィードバックされた訂正ビット数が最小となるように、レーザ光源34から出射されるレーザ光の中心周波数f0を、受信側のトランスポンダ部22a~22nで受信される光信号40の中心周波数f5に近づけるようにシフトする周波数シフト制御を行う。
【0053】
<第2実施形態の構成>
図7は、本発明の第2実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の送信部22Aの構成を示すブロック図である。なお、受信部23(図3)は、第1実施形態と同構成である。
【0054】
図7に示す送信部22Aが、第1実施形態の送信部22(図2)と異なる点は、上記フィードバックされるBERが入力される位相制御部63を備えることにある。
【0055】
位相制御部63は、入力されるBERに応じて、エンコーダ部31a,31bで符号化された16QAM等の多値信号の位相を進ませたり、遅らせたりする位相可変制御を行う。なお、位相を進ませることを進相、遅らせることを遅相という。位相可変制御により進相状態又は遅相状態の多値信号が、D/A32a~32dによりアナログ信号に変換後、直交変調部36a,36bの同相・直交変調端に入力される。
【0056】
直交変調部36a,36bでレーザ光が多値信号により直交変調された信号光は、多値信号の位相が進んだ信号である場合、信号光の成分であるレーザ光の中心周波数f0が周波数増加方向へシフトする。一方、多値信号の位相が遅れた信号である場合、信号光の成分であるレーザ光の中心周波数f0が周波数減少方向へシフトする。
【0057】
このような中心周波数f0のシフトに応じて、受信側のBER測定部62で測定されるBERの値が変わる。例えば、中心周波数f0が周波数増加方向にシフトする場合、BERの値が大きくなる。この場合、位相制御部63は、トランスポンダ部間の信号伝送状態が悪化(低下)していると判定する。
【0058】
この判定時に位相制御部63は、BERに応じて、エンコーダ部31a,31bの多値信号の位相を遅らせる位相可変制御により、中心周波数f0が周波数減少方向にシフトするので、BERの値が小さくなる。この場合、位相制御部63は、トランスポンダ部間の信号伝送状態が向上していると判定する。
【0059】
この向上の判定後、位相制御部63は、フィードバックされてくるBERが最小となるように、エンコーダ部31a,31bの多値信号の位相を遅らせる位相可変制御を行い、BERが最小となった際に、レーザ光の中心周波数f0と受信側の光信号40の中心周波数f5とが一致したと判定して制御を停止する。
【0060】
このような構成の第2実施形態の送信部22Aによれば、位相可変制御によって、送信側にフィードバックされるBERの値が最小となった時に、レーザ光の中心周波数f0が、受信側でずれた光信号の中心周波数f5に一致するので、受信側で光信号40の狭窄化が低減される。このため、光ファイバ14の受信側において、受信信号の品質が劣化するフィルタペナルティを低減できる。
【0061】
この他、第1実施形態と同様に、受信側のBER測定部62に代え、FEC測定部を備え、位相制御部63が、フィードバックされた訂正ビット数が最小となるように、レーザ光源34から出射されるレーザ光の周波数シフト制御を行うようにしてもよい。
【0062】
<第3実施形態の構成>
図8は、本発明の第3実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の送信部22Bの構成を示すブロック図である。なお、受信部23は、図3に示す構成と同じである。
【0063】
図8に示す送信部22Bが、第2実施形態の送信部22A(図7)と異なる点は、位相制御部63に代え、上記フィードバックされるBERが入力されるナイキスト制御部64を備えることにある。但し、エンコーダ部31a,31bは、デジタル信号処理機能によって多値信号を得る符号化処理を行うために、周波数フィルタであるナイキストフィルタ(又はロールオフフィルタ)を備えている。
【0064】
ナイキスト制御部64は、フィードバックされてくるBERに応じて、エンコーダ部31a,31bのナイキストフィルタを通過する信号スペクトルがナイキスト形状(後述)となるように、ナイキストフィルタのロールオフ率と呼ばれるパラメータを決定し、このパラメータでナイキストフィルタの遮断特性を可変設定する。
【0065】
言い換えれば、ナイキスト制御部64は、フィードバックされてくるBERが最小となるように、エンコーダ部31a,31bのナイキストフィルタを通過する入力情報信号30a,30bの信号スペクトルを、信号の遮断特性による矩形波形がより多くの主信号成分を含むようなナイキスト形状とするナイキスト制御を、ナイキストフィルタに対して行う。
【0066】
ナイキスト形状は、信号の遮断特性が急峻な矩形形状となっており、この矩形形状の中心周波数を含む狭帯域内に、より多くの主信号成分を含むことになる。このように狭帯域内に多くの主信号成分を含むことにより、光ファイバ14の途中で光合分波機能の光フィルタの狭窄化の影響を受けた場合でも、その主信号成分を保持でき、信号品質の劣化が抑制できる。つまり、フィルタペナルティを低減できる。
【0067】
この他、第2実施形態と同様に、受信側のBER測定部62に代え、FEC測定部を備え、ナイキスト制御部64が、フィードバックされた訂正ビット数が最小となるように、ナイキスト制御を行うようにしてもよい。
【0068】
<第4実施形態の構成>
図9は、本発明の第4実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の送信部22Cの構成を示すブロック図である。図10は、第4実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の受信部の構成を示すブロック図である。
【0069】
図9に示す送信部22Cが、第1実施形態の送信部22(図2)と異なる点は、フィードバックされる光パワーが入力される周波数シフト制御部61(図2)に代え、受信側のトランスポンダ部22a~22nからフィードバックされた光パワー(図1参照)が入力される周波数シフト制御部65(制御部65ともいう)を備えたことにある。
【0070】
図10に示す受信部23Aが、第1実施形態の受信部23(図3)と異なる点は、BER測定部62に代え、光パワー測定部66を備えたことにある。光パワー測定部66は、バランス型光受信部45a~45dで信号光が変換された電気信号である受信信号の光パワーを測定し、この光パワーを送信側のトランスポンダ部21a~21nの送信部22Cにおける周波数シフト制御部65へフィードバックする。但し、バランス型光受信部45a~45dは信号光を電気信号に変換する場合、前述のようにフォトダイオードで行っている。
【0071】
光パワー測定部66で測定される光パワーは、光パワーが小さい程、トランスポンダ部間の信号伝送状態の低下を表わすので、光パワーを上げて信号伝送状態を向上させるためにフィードバックを行う。この場合、光パワーが最大となる場合に最高の信号伝送状態となる。
【0072】
フィードバックされた光パワーは、送信側の周波数シフト制御部65に入力される。制御部65は、入力された光パワーが最大となるように、レーザ光源34から出射されるレーザ光の中心周波数f0をシフト{図4(a)}し、受信側でずれた光信号40の中心周波数f5に合わせ、双方の中心周波数を一致させる周波数シフト制御を行う。
【0073】
この構成によれば、周波数シフト制御によって、送信側にフィードバックされる光パワーが最大となった時に、レーザ光の中心周波数f0が、受信側でずれた光信号の中心周波数f5に一致する。この一致により、光ファイバ14途中の各光フィルタによる光信号への周波数ずれが抑制されるので、受信側で光信号40の狭窄化が低減され、受信信号の品質が劣化するフィルタペナルティを低減できる。
【0074】
また、光パワーの測定は、フォトダイオードで受けた光パワーそのものの測定で済むため簡易な構成で実現できる。更に、制御に光を使用するので、高速な制御が実現可能となる。
【0075】
<第5実施形態の構成>
図11は、本発明の第5実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の送信部22Dの構成を示すブロック図である。なお、受信部23A(図10)は、第4実施形態と同構成である。
【0076】
図11に示す送信部22Dが、第4実施形態の送信部22C(図9)と異なる点は、上記フィードバックされる光パワーが入力される位相制御部67を備えることにある。
【0077】
位相制御部67は、入力される光パワーに応じて、エンコーダ部31a,31bで符号化された16QAM等の多値信号の位相を進相又は遅相する位相可変制御を行う。位相可変制御により位相が進相状態又は遅相状態の多値信号が、D/A32a~32dによりアナログ信号に変換後、直交変調部36a,36bの同相・直交変調端に入力される。
【0078】
直交変調部36a,36bでレーザ光が多値信号により直交変調された信号光は、多値信号が進相状態の信号である場合、信号光の成分であるレーザ光の中心周波数f0が周波数増加方向へシフトする。一方、多値信号が遅相状態の信号である場合、信号光の成分であるレーザ光の中心周波数f0が周波数減少方向へシフトする。
【0079】
このような中心周波数f0のシフトに応じて、受信側の光パワー測定部66で測定される光パワーの値が変わる。例えば、中心周波数f0が周波数増加方向にシフトする場合、光パワーの値が小さくなる。この場合、位相制御部67は、トランスポンダ部間の信号伝送状態が悪化(低下)していると判定する。
【0080】
この判定時に位相制御部67は、光パワーに応じて、エンコーダ部31a,31bの多値信号の位相を遅らせる位相可変制御により、中心周波数f0が周波数減少方向にシフトするので、光パワーが小さくなる。この場合、位相制御部67は、トランスポンダ部間の信号伝送状態が向上していると判定する。
【0081】
この判定後、位相制御部67は、フィードバックされてくる光パワーが最大となるように、エンコーダ部31a,31bの多値信号の位相を遅らせる位相可変制御を行い、光パワーが最大となった際に、レーザ光の中心周波数f0と受信側の光信号40の中心周波数f5とが一致したと判定して制御を停止する。
【0082】
このような構成の第5実施形態の送信部22Dによれば、位相可変制御によって、送信側にフィードバックされる光パワーの値が最大となった時に、レーザ光の中心周波数f0が、受信側でずれた光信号の中心周波数f5に一致するので、受信側で光信号40の狭窄化が低減される。このため、光ファイバ14の受信側において、受信信号の品質が劣化するフィルタペナルティを低減できる。
【0083】
<第6実施形態の構成>
図12は、本発明の第6実施形態に係る光伝送システムにおけるトランスポンダ部の送信部22Eの構成を示すブロック図である。なお、受信部23A(図10)は、第4実施形態と同構成である。
【0084】
図12に示す送信部22Eが、第5実施形態の送信部22D(図11)と異なる点は、位相制御部67に代え、上記フィードバックされる光パワーが入力されるナイキスト制御部68を備えることにある。但し、エンコーダ部31a,31bは、デジタル信号処理機能によって多値信号を得る符号化処理を行うために、周波数フィルタであるナイキストフィルタ(又はロールオフフィルタ)を備えている。
【0085】
ナイキスト制御部68は、フィードバックされてくる光パワーに応じて、エンコーダ部31a,31bのナイキストフィルタを通過する信号スペクトルがナイキスト形状となるように、ナイキストフィルタのロールオフ率と呼ばれるパラメータを決定し、このパラメータでナイキストフィルタの遮断特性を可変設定する。
【0086】
言い換えれば、ナイキスト制御部68は、フィードバックされてくる光パワーが最大となるように、エンコーダ部31a,31bのナイキストフィルタを通過する入力情報信号30a,30bの信号スペクトルを、信号の遮断特性による矩形波形がより多くの主信号成分を含むようなナイキスト形状とするナイキスト制御を、ナイキストフィルタに対して行う。
【0087】
このような構成の第6実施形態によれば、ナイキストフィルタを通過する信号スペクトルを、より多くの主信号成分を含むナイキスト形状とすることにより、光ファイバ14の途中で光合分波機能の光フィルタの狭窄化の影響を受けた場合でも、その主信号成分を保持でき、信号品質の劣化が抑制できる。つまり、フィルタペナルティを低減できる。
【0088】
<第7実施形態の構成>
図13は、本発明の第7実施形態に係る光伝送システム10Bの構成を示すブロック図である。
【0089】
図13に示す光伝送システム10Bが、第1実施形態の光伝送システム10A(図1)と異なる点は、受信側のトランスポンダ部22a~22nの受信部23Bで、受信光信号の光パワーを測定しながら周波数シフト量を決定し、この周波数シフト量で中間部(光合分波部12a,12b及び光クロスコネクト部15a,15n)の光フィルタの中心周波数を、送信側のレーザ光の中心周波数に合わせる制御を行うようにしたことにある。
【0090】
但し、中間部である光合分波部12a,12bは、光デバイスであるAWG(Arrayed Waveguide Grating:アレイ導波路グレーティング)を備えている。このAWGは、光路長が異なる多数の導波路を伝搬した光を干渉させて波長による合分波を行う光フィルタである。AWGは、温度を可変して周波数を分ける制御を行っており、周波数シフトが可能となっている。
【0091】
また、中間部である光クロスコネクト部15a,15nは、周波数シフトが可能な波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)である。
【0092】
図14に示す受信部23Bが、図10に示した受信部23Aと異なる点は、光パワー測定部66(図10)の他に、周波数シフト制御部69(制御部69ともいう)を備えて構成されていることにある。この制御部69は、光パワー測定部66で測定される光パワーが最大となるように、中間部の光信号の中心周波数をシフトする周波数シフト量を決めて中間部へ出力する。
【0093】
中間部の光合分波部12a,12bでは、周波数シフト量に応じてAWGでの光信号の中心周波数がシフトされ、光クロスコネクト部15a,15nでは、WSSでの光信号の中心周波数がシフトされる。このシフトにより、受信側でずれた光信号の中心周波数と、送信側レーザ光の中心周波数とが一致すると、光パワー測定部66で測定される光パワーが最大となる。
【0094】
このような構成の第7実施形態の構成によれば、受信光信号の光パワーを測定しながら周波数シフト量を決定し、この周波数シフト量で光ファイバ14の中間部における光フィルタの中心周波数をシフトさせる。このシフトにより、上記測定される光パワーが最大となった時に、レーザ光の中心周波数f0と、受信側でずれた光信号の中心周波数f5とが一致するので、受信側で光信号40の狭窄化が低減される。このため、光ファイバ14の受信側において、受信信号の品質が劣化するフィルタペナルティを低減できる。
【0095】
この他、中間部である光クロスコネクト部15a,15nは、WSSの内部に、液晶を用いた空間光変調器であるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)を用いたタイプのものがある。
【0096】
光クロスコネクト部15a,15nが、上記タイプのWSSの場合に、周波数シフト制御部69から送信されてくる周波数シフト量を、LCOSに入力して光フィルタの中心周波数をシフトするようにしてもよい。
【0097】
その他、具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、実施例では多値信号への適用例を説明したが、2値の振幅変調、位相変調および符号化変調等へも適用できる。
【符号の説明】
【0098】
10A,10B 光伝送システム
12a,12b 光合分波部
13a,13b 光増幅部
15a,15n 光クロスコネクト部
21a~21n,22a~22n トランスポンダ部
22,22A,22B,22C,22D,22E 送信部
23,23A,23B 受信部
61,65,67 周波数シフト制御部
62 BER測定部
63 位相制御部
64,68,69 ナイキスト制御部
66 光パワー測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15