(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024947
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法および窒化物系高電子移動度トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20220202BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20220202BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20220202BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220202BHJP
H01L 21/3063 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L21/265 601J
H01L21/28 A
H01L21/28 301B
H01L29/78 301B
H01L29/78 301P
H01L21/306 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147715
(22)【出願日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2020122386
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515131378
【氏名又は名称】株式会社サイオクス
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】堀切 文正
(72)【発明者】
【氏名】福原 昇
【テーマコード(参考)】
4M104
5F043
5F102
5F140
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
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5F140CC08
5F140CE02
(57)【要約】
【課題】窒化物系高電子移動度トランジスタの製造に用いられるPECエッチング技術を提供する。
【解決手段】
窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法は、基板上の、平面視において素子領域外に、導電性部材を設ける工程と、基板上に、ソースリセス被エッチング領域、および、ドレインリセス被エッチング領域、の少なくとも一方に開口を有するマスクを形成する工程と、導電性部材が設けられるとともにマスクが形成された基板を、電子を受け取る酸化剤を含むエッチング液に接触させた状態で、基板に光を照射することで、光電気化学エッチングを行い、ソースリセスおよびドレインリセスの少なくとも一方を形成する工程と、素子分離構造を形成する工程と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法であって、
窒化物半導体結晶基板上の、平面視において前記高電子移動度トランジスタの素子領域外に、導電性部材を設ける工程と、
前記窒化物半導体結晶基板上に、前記高電子移動度トランジスタのソース電極が配置されるリセスであるソースリセスが形成されるソースリセス被エッチング領域、および、前記高電子移動度トランジスタのドレイン電極が配置されるリセスであるドレインリセスが形成されるドレインリセス被エッチング領域、の少なくとも一方に開口を有するマスクを形成する工程と、
前記導電性部材が設けられるとともに前記マスクが形成された前記窒化物半導体結晶基板を、電子を受け取る酸化剤を含むエッチング液に接触させた状態で、前記窒化物半導体結晶基板に光を照射することで、光電気化学エッチングを行い、前記ソースリセスおよび前記ドレインリセスの少なくとも一方を形成する工程と、
前記高電子移動度トランジスタの素子分離構造を形成する工程と、
を有する窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記各工程を、請求項1に記載の順番で行う、請求項1に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記窒化物半導体結晶基板は、下地基板上に、少なくとも、2次元電子ガスが形成されるチャネル層と、前記チャネル層上に形成された障壁層と、前記障壁層を構成するIII族窒化物よりもバンドギャップが小さいIII族窒化物で構成され、前記障壁層上に形成されたキャップ層と、を含み、
前記光電気化学エッチングでは、前記キャップ層を除去する、請求項1または2に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記導電性部材は、前記キャップ層および前記2次元電子ガスの少なくとも一方を介して、前記ソースリセス被エッチング領域または前記ドレインリセス被エッチング領域と電気的に接続されている、請求項3に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、前記ソースリセス被エッチング領域および前記ドレインリセス被エッチング領域の少なくとも一方の一部と平面視において重なりを有するように形成する、請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、イオン注入、ドライエッチング、および、光電気化学エッチングのうちのいずれかの手法で形成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、前記導電性部材の配置領域と平面視において重なりを有しないように形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項8】
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、前記導電性部材をマスクの少なくとも一部として用いて、イオン注入により形成する、請求項7に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項9】
前記素子分離構造を形成する工程では、少なくとも、前記ソースリセスまたは前記ドレインリセス、および、前記導電性部材を、露出させないように覆うマスクが形成された状態で、前記素子分離構造を、ドライエッチングにより形成する、請求項7に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項10】
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、前記導電性部材の少なくとも一部を露出させるマスクを形成した状態で、光電気化学エッチングにより形成する、請求項7に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記ソースリセスおよび前記ドレインリセスの少なくとも一方を形成する工程における光電気化学エッチングは、酸性のエッチング液を用いて行い、
前記素子分離構造を形成する工程における光電気化学エッチングは、アルカリ性のエッチング液を用いて行う、請求項10に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、前記導電性部材の配置領域と平面視において重なりを有するように形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記素子分離構造を形成する工程は、前記導電性部材を除去した後に行われる、請求項12に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法では、前記窒化物半導体結晶基板上でゲート長方向およびゲート幅方向の少なくとも一方向に並んだ複数の高電子移動度トランジスタを製造し、
前記導電性部材は、前記ゲート長方向に隣接する高電子移動度トランジスタ素子同士の間、および、前記ゲート幅方向に隣接する高電子移動度トランジスタ素子同士の間、の少なくとも一方に配置される、請求項1~13のいずれか1項に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記ゲート長方向に隣接する高電子移動度トランジスタ素子同士の間に配置される前記導電性部材は、前記ゲート幅方向に延在する形状を有する、請求項14に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記ゲート幅方向に隣接する高電子移動度トランジスタ素子同士の間に配置される前記導電性部材は、前記ゲート長方向に延在する形状を有する、請求項14または15に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項17】
前記窒化物半導体結晶基板上に、前記高電子移動度トランジスタのゲート電極が配置されるリセスであるゲートリセスが形成されるゲートリセス被エッチング領域に開口を有する他のマスクを形成する工程と、
前記導電性部材が設けられるとともに前記他のマスクが形成された前記窒化物半導体結晶基板を、電子を受け取る酸化剤を含むエッチング液に接触させた状態で、前記窒化物半導体結晶基板に光を照射することで、他の光電気化学エッチングを行い、前記ゲートリセスを形成する工程と、
前記素子分離構造を形成する工程と、
をさらに有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項18】
前記窒化物半導体結晶基板は、下地基板上に、少なくとも、2次元電子ガスが形成されるチャネル層と、前記チャネル層上に形成された障壁層と、前記障壁層を構成するIII族窒化物よりもバンドギャップが小さいIII族窒化物で構成され、前記障壁層上に形成されたキャップ層と、を含み、
前記光電気化学エッチングでは、前記キャップ層を除去し、
前記他の光電気化学エッチングでは、前記キャップ層、および、前記障壁層の一部、を除去する、請求項17に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項19】
前記光電気化学エッチングおよび前記他の光電気化学エッチングでは、同一の光源を用いて光照射を行い、
前記光電気化学エッチングは、時間管理により停止させ、前記他の光電気化学エッチングは、自己停止により停止させる、請求項17または18に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項20】
前記他の光電気化学エッチングは、前記光電気化学エッチングよりも先に行われ、
前記他の光電気化学エッチングでは、前記他のマスクを、無機材料または金属材料で構成されたハードマスクを用いて形成する、請求項17~19のいずれか1項に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項21】
前記光電気化学エッチングでは、前記マスクを、レジストマスクを用いて形成する、請求項17~20のいずれか1項に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項22】
窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法であって、
窒化物半導体結晶基板上の、平面視において前記高電子移動度トランジスタの素子領域外に、導電性部材を設ける工程と、
前記窒化物半導体結晶基板上に、前記高電子移動度トランジスタのゲート電極が配置されるリセスであるゲートリセスが形成されるゲートリセス被エッチング領域に開口を有するマスクを形成する工程と、
前記導電性部材が設けられるとともに前記マスクが形成された前記窒化物半導体結晶基板を、電子を受け取る酸化剤を含むエッチング液に接触させた状態で、前記窒化物半導体結晶基板に光を照射することで、光電気化学エッチングを行い、前記ゲートリセスを形成する工程と、
前記高電子移動度トランジスタの素子分離構造を形成する工程と、
を有する窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【請求項23】
窒化物系高電子移動度トランジスタであって、
少なくとも、チャネル層、前記チャネル層上に配置された障壁層、および、前記障壁層上に配置されたキャップ層、を有するIII族窒化物層と、
ソース電極、ゲート電極、および、ドレイン電極と、
素子分離構造と、
を備え、
少なくとも、前記ソース電極およびドレイン電極の直下に位置するIII族窒化物層には、プラズマダメージが導入されていない、
窒化物系高電子移動度トランジスタ。
【請求項24】
窒化物系高電子移動度トランジスタであって、
チャネル層、前記チャネル層上に配置された障壁層、および、前記障壁層上に配置されたキャップ層、を有するIII族窒化物層と、
ソース電極、ゲート電極、および、ドレイン電極と、
素子分離構造と、
絶縁膜と、
を備え、
前記絶縁膜は、
前記素子分離構造を覆い、前記ソース電極、前記ゲート電極、および、前記ドレイン電極が配置された領域に対し、前記素子分離構造の外側まで延在して設けられ、前記素子分離構造の外側において、前記キャップ層を介して前記障壁層上に設けられた部分と、前記障壁層の直上に設けられた部分と、を有する、
窒化物系高電子移動度トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法および窒化物系高電子移動度トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物は、発光素子、トランジスタ等の半導体装置を製造するための材料として用いられている。
【0003】
GaN等のIII族窒化物に各種構造を形成するためのエッチング技術として、光電気化学(PEC)エッチングが提案されている(例えば非特許文献1参照)。PECエッチングは、一般的なドライエッチングと比べてダメージが少ないウェットエッチングであり、また、中性粒子ビームエッチング(例えば非特許文献2参照)、アトミックレイヤーエッチング(例えば非特許文献3参照)等のダメージの少ない特殊なドライエッチングと比べて装置が簡便である点で好ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】K. Miwa, Appl. Phys. Express 13, 026508 (2020).
【非特許文献2】S. Samukawa, JJAP, 45(2006)2395.
【非特許文献3】T. Ohba, Jpn. J. Appl. Phys. 56, 06HB06 (2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、窒化物系高電子移動度トランジスタの製造に用いられるPECエッチング技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法であって、
窒化物半導体結晶基板上の、平面視において前記高電子移動度トランジスタの素子領域外に、導電性部材を設ける工程と、
前記窒化物半導体結晶基板上に、前記高電子移動度トランジスタのソース電極が配置されるリセスであるソースリセスが形成されるソースリセス被エッチング領域、および、前記高電子移動度トランジスタのドレイン電極が配置されるリセスであるドレインリセスが形成されるドレインリセス被エッチング領域、の少なくとも一方に開口を有するマスクを形成する工程と、
前記導電性部材が設けられるとともに前記マスクが形成された前記窒化物半導体結晶基板を、電子を受け取る酸化剤を含むエッチング液に接触させた状態で、前記窒化物半導体結晶基板に光を照射することで、光電気化学エッチングを行い、前記ソースリセスおよび前記ドレインリセスの少なくとも一方を形成する工程と、
前記高電子移動度トランジスタの素子分離構造を形成する工程と、
を有する窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法
が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
窒化物系高電子移動度トランジスタであって、
少なくとも、チャネル層、前記チャネル層上に配置された障壁層、および、前記障壁層上に配置されたキャップ層、を有するIII族窒化物層と、
ソース電極、ゲート電極、および、ドレイン電極と、
素子分離構造と、
を備え、
少なくとも、前記ソース電極およびドレイン電極の直下に位置するIII族窒化物層には、プラズマダメージが導入されていない、
窒化物系高電子移動度トランジスタ
が提供される。
【発明の効果】
【0008】
窒化物系高電子移動度トランジスタの製造に用いられるPECエッチング技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態によるHEMTを例示する概略断面図であり、
図1(b)は、PECエッチング装置を例示する概略断面図である。
【
図2】
図2(a)~
図2(c)は、本実施形態によるHEMTの製造工程を例示する概略断面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(c)は、本実施形態によるHEMTの製造工程を例示する概略断面図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(c)は、本実施形態によるHEMTの製造工程を例示する概略断面図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(c)は、本実施形態によるHEMTの製造工程を例示する概略断面図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、本実施形態によるHEMTの製造工程を例示する概略平面図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、本実施形態によるHEMTの製造工程を例示する概略平面図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、ゲートリセスを形成するPECエッチングの機構を模式的に示す概略断面図である。
【
図9】
図9(a)は、第1変形例による素子分離構造の平面的な配置例を示す概略平面図であり、
図9(b)は、第2変形例による素子分離構造160の平面的な配置例を示す概略平面図である。
【
図10】
図10(a)および
図10(b)は、第2変形例によるHEMTの製造工程を例示する概略断面図である。
【
図11】
図11は、第3変形例によるカソードパッドの平面的な配置例を示す概略平面図である。
【
図12】
図12は、第4変形例によるHEMTを例示する概略断面図である。
【
図13】
図13は、素子分離構造をPECエッチングで形成する他の実施形態の工程を例示する概略断面図である。
【
図14】
図14は、カソードパッドの一部が素子領域と重なりを有する他の実施形態を例示する概略平面図である。
【
図15】
図15(a)、および、
図15(b)は、それぞれ、カソードパッド(カソード部)をIII族窒化物で構成する他の実施形態によるHEMTの製造工程を例示する概略断面図、および、当該HEMTを例示する概略断面図である。
【
図16】
図16は、カソードパッド(カソード部)をIII族窒化物で構成するさらに他の実施形態によるHEMTを例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
III族窒化物を用いた高電子移動度トランジスタ(窒化物系高電子移動度トランジスタ)において、障壁層上にキャップ層を形成する技術が用いられている。障壁層は例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)で構成され、キャップ層は例えばGaNで構成される。以下、窒化物系高電子移動度トランジスタを、単に、HEMTともいう。
【0011】
従来の技術において、HEMTのソース電極およびドレイン電極は、キャップ層上に形成されており、これに起因して、ソース電極およびドレイン電極のコンタクト抵抗を低下させることができない。
【0012】
キャップ層を除去することでソース電極およびドレイン電極のコンタクト抵抗を低減させることが考えられる。しかし、キャップ層をエッチングするための従来の技術はドライエッチングであり、ドライエッチングに起因するエッチングダメージにより、キャップ層を除去してもコンタクト抵抗を低減させることができない。
【0013】
GaN等のIII族窒化物を、エッチングダメージを抑制してエッチングする新たな技術として、光電気化学(PEC)エッチングが提案されている。HEMTに係るPECエッチングの技術として、本願発明者は、これまでに、ソース電極またはドレイン電極をカソードパッドとして利用することで、ゲートリセスをPECエッチングにより形成する技術を提案している(特願2019-140027)。カソードパッドとは、詳細は後述するように、無電極PECエッチングを進行させるために用いられる導電性部材である。
【0014】
当該ゲートリセス形成技術では、ソース電極の下またはドレイン電極の下に介在するキャップ層をPECエッチングにより除去することはできていなかった。ソース電極およびドレイン電極は、キャップ層上に形成されており、ソース電極およびドレイン電極のキャップ層に起因するコンタクト抵抗を低下させることはできていなかった。
【0015】
PECエッチングを用いることで、エッチングダメージを抑制してキャップ層を除去することができる。しかし、ソース電極の下またはドレイン電極の下に介在するキャップ層を除去するPECエッチングを、どのように行えばよいかは知られていない。本願発明者は、以下の実施形態において、このような技術について提案する。
【0016】
<実施形態>
本発明の一実施形態による窒化物系高電子移動度トランジスタ(HEMT)150について説明する。
図1(a)は、HEMT150を例示する概略断面図であり、HEMT素子の1つ分を示す。HEMT150は、積層体10と、ソース電極151、ゲート電極152、および、ドレイン電極153と、素子分離構造160と、絶縁膜170と、を備える。
【0017】
積層体(窒化物半導体結晶基板)10は、基板(下地基板)11と、基板11上に形成されたIII族窒化物層12(以下、エピ層12ともいう)と、を有する。基板11は、エピ層12をエピタキシャル成長させる下地となる結晶基板であり、基板11としては、例えば、半絶縁性基板が用いられる。ここで、「半絶縁性」とは、例えば、比抵抗が105Ωcm以上である状態をいう。半絶縁性基板としては、例えば、半絶縁性の炭化シリコン(SiC)基板が用いられ、また例えば、半絶縁性の窒化ガリウム(GaN)基板が用いられる。半絶縁性のGaN基板は、例えば、(Fe)ドープやマンガン(Mn)ドープのGaN基板である。
【0018】
基板11にSiC基板を用いる際の、エピ層12としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)で構成された核生成層12a、GaNで構成されたチャネル層12b、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)で構成された障壁層12c、および、GaNで構成されたキャップ層12dの積層構造が用いられる。
【0019】
チャネル層12bと障壁層12cとの積層構造において、チャネル層12bの上面近傍に、HEMT150のチャネルとなる2次元電子ガス(2DEG)が形成される。なお、チャネル層12bの材料として、GaN以外に、AlGaNが用いられてもよい。チャネル層12bに用いられるAlGaNとしては、障壁層12cに用いられるAlGaNよりも、Al組成が低い(バンドギャップが小さい)ものが用いられる。
【0020】
基板11としては、SiC基板に限らず、他の基板(サファイア基板、シリコン(Si)基板、(半絶縁性の)GaN基板等)が用いられてもよい。エピ層12の積層構造は、基板11の種類、得たいHEMT150の特性等に応じ、適宜選択されてよい。例えば、基板11にGaN基板を用いる場合のエピ層12において、核生成層12aが省略されてよい。
【0021】
エピ層12の上面は、エピ層12を構成するIII族窒化物のc面で構成されている。ここで「c面で構成されている」とは、当該上面に対して最も近い低指数の結晶面が、エピ層12を構成するIII族窒化物結晶のc面であることを意味する。エピ層12を構成するIII族窒化物は転位(貫通転位)を有し、当該上面に、転位が所定の密度で分布している。
【0022】
積層体10は、エピ層12上に配置されたパッシベーション絶縁膜13(以下、絶縁膜13ともいう)を有してもよい。絶縁膜13は、例えば窒化シリコンで構成される。
【0023】
エピ層12のうち、チャネル層12b以下の部分をエピ下層12Lと称し、チャネル層12bよりも上側の部分をエピ上層12Uと称する。エピ下層12Lは、2DEGが形成されるチャネル層12bを含む。エピ上層12Uは、チャネル層12b上に形成された障壁層12cと、障壁層12c上に形成されたキャップ層12dと、を含む。障壁層12cは、チャネル層12bを構成するIII族窒化物よりもバンドギャップが大きいIII族窒化物で構成され、チャネル層12bに2DEGを発生させる。キャップ層12dは、障壁層12cを構成するIII族窒化物よりもバンドギャップが小さいIII族窒化物で構成される。
【0024】
本実施形態のHEMT150において、ゲート電極152は、ゲートリセス110Gに配置され、ソース電極151は、ソースリセス110Sに配置され、ドレイン電極153は、ドレインリセス110Dに配置されている。ゲートリセス110G、ソースリセス110S、および、ドレインリセス110Dは、それぞれ、エピ上層12Uに形成された凹部(エピ上層12Uがエッチングされることで形成された構造)である。以下、ソースリセス110Sとドレインリセス110Dとをまとめて(ソースリセス110Sとドレインリセス110Dとを特には区別せずに、これらの少なくとも一方を表すために)、オーミックリセス110SDと称することもある。
【0025】
ゲートリセス110Gは、キャップ層12d、および、障壁層12cの一部、がエッチングされることでエピ上層12Uに形成された凹部であり、ゲートリセス110Gの底に障壁層12cが露出する。ゲートリセス110Gの下方の障壁層12cの厚さ(チャネル層12bの上面からゲートリセス110Gの底までの厚さ)は、HEMT150の閾値ゲート電圧が所定値となるように、所定の厚さに設定されてよい。
【0026】
オーミックリセス110SDは、キャップ層12d(のみ)がエッチングされることでエピ上層12Uに形成された凹部であり、オーミックリセス110SDの底に障壁層12cが露出する。オーミックリセス110SDは、ゲートリセス110Gよりも浅い。ソース電極151およびドレイン電極153がそれぞれオーミックリセス110SDに配置されることで、ソース電極151およびドレイン電極153のコンタクト抵抗を低減できる。これは、ソース電極151およびドレイン電極153が障壁層12cに直接接触し、キャップ層12dに起因するバンドの持ち上がりが抑制されるからと考えられる。
【0027】
ゲート電極152は、例えば、ニッケル(Ni)層上に金(Au)層が積層されたNi/Au層により形成される。ソース電極151およびドレイン電極153のそれぞれは、例えば、チタン(Ti)層上にアルミニウム(Al)層が積層され、Al層上にTi層が積層され、さらにTi層上にAu層が積層されたTi/Al/Ti/Au層により形成される。
【0028】
素子分離構造160は、隣接するHEMT素子間でキャップ層12dおよび2DEGを分断する構造であり、素子分離構造160を挟んで隣接するHEMT素子同士を電気的に分離する。素子分離構造160として、本実施形態では素子分離溝を例示するが、素子分離構造160は、溝の形成ではなく、イオン注入で形成されてもよい。素子分離溝である素子分離構造160は、その底がチャネル層12bの途中の深さに到達するように形成されている。
【0029】
素子分離構造160は、HEMT素子として機能する素子領域180を画定する。平面視において、素子分離構造160のHEMT素子を囲む閉じた形状の縁(HEMT素子側、つまり内側の縁)の内部領域が、素子領域180となる(
図7(a)参照)。
【0030】
絶縁膜170は、ソース電極151およびドレイン電極153の上面上に開口を有し、素子分離構造160を覆い、素子分離構造160の外側まで延在する。本実施形態の絶縁膜170は、ゲート絶縁膜として設けられており、ゲートリセス110Gとゲート電極152との間に介在する。絶縁膜170は、例えば酸化アルミニウムで構成される。
【0031】
本実施形態において、オーミックリセス110SDは、光電気化学(PEC)エッチングによりエピ上層12Uをエッチングすることで形成される。なお、本実施形態では、ゲートリセス110Gも、PECエッチングによりエピ上層12Uをエッチングすることで形成される。HEMT150の製造工程において、HEMT150が完成するまでに各種処理が施される中間的な構造体を、処理対象物100と称する。
【0032】
図1(b)は、PECエッチング装置200を例示する概略断面図である。PECエッチング装置200は、処理対象物100およびエッチング液201を収容する容器210と、光221を出射する光源220と、を有する。
【0033】
PECエッチングにおける処理対象物100は、積層体10(少なくともエピ下層12Lおよびエピ上層12U)と、カソードパッド30と、マスク50と、を備える。積層体10は(より具体的にはエピ上層12Uは)、PECエッチングによりエッチングされる被エッチング領域21を有する。当該被エッチング領域21は、マスク50により画定されている。PECエッチングにおける処理対象物100は、より具体的には
図2(c)および
図3(b)に例示される。
【0034】
PECエッチングは、処理対象物100をエッチング液201に浸漬させ、被エッチング領域21およびカソードパッド30をエッチング液201に接触させた状態で、エッチング液201を介して被エッチング領域21に光221を照射することにより、行われる(PECエッチングは、カソードパッド30が設けられるとともにマスク50が形成された積層体10をエッチング液201に接触させた状態で、積層体10に光221を照射することで行われる)。
【0035】
PECエッチングの機構について説明するとともに、エッチング液201、カソードパッド30等について、より詳しく説明する。PECエッチングされるIII族窒化物の例として窒化ガリウム(GaN)を挙げて説明する。
【0036】
PECエッチングは、ウェットエッチングであり、処理対象物100がエッチング液201に浸漬された状態で行われる。エッチング液201としては、被エッチング領域21を構成するIII族窒化物が含有するIII族元素の酸化物を生成するために用いられる酸素を含み、さらに、電子を受け取る酸化剤を含む、アルカリ性または酸性のエッチング液201が用いられる。
【0037】
当該酸化剤として、ペルオキソ二硫酸イオン(S2O8
2-)が好ましく用いられ、エッチング液201としては、(少なくとも)ペルオキソ二硫酸イオン(S2O8
2-)の塩を所定濃度で水に溶解させた水溶液が用いられる。当該酸化剤は、より具体的には、S2O8
2-から生成された硫酸イオンラジカル(SO4
-*)が、電子を受け取って硫酸イオン(SO4
2-)に変化する態様で、機能する。
【0038】
エッチング液201に用いるS2O8
2-の塩としては、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(NH4)2S2O8、ペルオキソ二硫酸カリウム(K2S2O8)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(Na2S2O8)等が挙げられる。エッチング液201に起因するアルカリ金属元素の残留を抑制する観点からは、アルカリ金属を含まない(NH4)2S2O8を用いることが好ましい。
【0039】
なお、これらのS2O8
2-の塩の水溶液は、どれも酸性である。例えば、これらのS2O8
2-の塩の水溶液に、KOH水溶液等のアルカリ性の水溶液を適当な濃度で混合することにより、アルカリ性のエッチング液201を得ることができる。
【0040】
本実施形態のPECエッチングにおける反応は、(化1)のようにまとめることができる。
【化1】
【0041】
エッチング液に含まれるS
2O
8
2-からSO
4
-*を生成させる反応は、(化2)で示される。つまり、S
2O
8
2-を加熱すること、および、S
2O
8
2-に光を照射すること、の少なくとも一方により、SO
4
-*を生成させることができる。
【化2】
【0042】
(化1)に示されるように、III族窒化物に、当該III族窒化物のバンドギャップに対応する波長以下の光221(本例ではGaNのバンドギャップに対応する365nm以下の紫外光221)が照射されることで、III族窒化物中にホール(h+)と電子(e-)とが生成される。ホールの生成によりIII族窒化物(本例ではGaN)がIII族元素の陽イオン(本例ではGa3+)と窒素ガス(N2ガス)とに分解され、III族元素の陽イオンが水(H2O)に含まれる酸素と結合することでIII族元素の酸化物(本例ではGa2O3)が生成される。III族元素の酸化物が、アルカリ性または酸性のエッチング液201に溶解されることで、III族窒化物がエッチングされる。III族窒化物中に生成された電子は、SO4
-*と結合してSO4
2-を生成することで、消費される。PECエッチングの進行に伴い、水素イオン(H+)濃度が増加し、これにより、エッチング液201のpHは減少する。
【0043】
PECエッチングは、エッチング液201がアルカリ性でも酸性でも行うことができるが、レジストマスクはアルカリに対する耐性が低いため、レジストマスクを用いる場合は、(PECエッチングの開始時から)酸性であるエッチング液201を用いることが好ましい。
【0044】
また、後述の他の実施形態で説明するように、2DEGの減少によりPECエッチングを自己停止させる(過剰に深いPECエッチングが生じることを抑制する)観点からも、(PECエッチングの開始時から)酸性であるエッチング液201を用いることは好ましい。
【0045】
カソードパッド30は、金属等の導電性材料で形成された導電性部材であって、被エッチング領域21とキャップ層12dおよび2DEGの少なくとも一方を介して電気的に接続された処理対象物100の導電性領域の表面の少なくとも一部と、接触するように設けられる(
図8(a)参照)。また、カソードパッド30は、PECエッチング時に、カソードパッド30の少なくとも一部、例えば上面が、エッチング液201と接触するように、設けられる。カソードパッド30は、例えばチタン(Ti)で構成される。
【0046】
PECエッチングの被エッチング領域21では、光照射でホールが生成されることにより、III族元素の酸化物が生成される。つまり、当該被エッチング領域21は、ホールが消費されるアノードとして機能する。被エッチング領域21への光照射により、ホールと対で生成された電子は、キャップ層12dおよび2DEGの少なくとも一方を介してカソードパッド30まで流れることができる。カソードパッド30のエッチング液201と接触する表面は、当該電子がエッチング液201に放出されることで消費されるカソードとして機能する。このように、カソードパッド30をカソードとして機能させることで、PECエッチングを進行させることができる。
【0047】
本実施形態によるPECエッチングでは、エッチング液201が酸化剤として含むS2O8
2-により(より具体的にはS2O8
2-から生成されたSO4
-*により)、III族窒化物に対する光照射でホールとともに生成された電子を、消費させることで、PECエッチングを進行させることができる。つまり、処理対象物100からエッチング液201中に直接的に(外部の配線を介さずに)電子を放出する態様で、PECエッチングを行うことができる。
【0048】
これに対し、このような酸化剤を用いないPECエッチングの技術として、III族窒化物中に生成された電子を、エッチング液の外部に延在する配線を介して、エッチング液に浸漬されたカソード電極からエッチング液中に放出する態様のPECエッチングがある。このようなカソード電極を用いる有電極PECエッチングに対し、本実施形態によるPECエッチングは、このようなカソード電極を設ける必要のない、無電極(コンタクトレス)PECエッチングである。
【0049】
PECエッチングは、例示したGaN以外のIII族窒化物に対しても行うことができる。III族窒化物が含有するIII族元素は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)およびインジウム(In)のうちの少なくとも1つであってよい。III族窒化物におけるAl成分またはIn成分に対するPECエッチングの考え方は、Ga成分について(化1)を参照して説明した考え方と同様である。つまり、III族窒化物への光照射によりホールを生成させることで、Alの酸化物またはInの酸化物を生成させ、これらの酸化物をアルカリ性または酸性のエッチング液に溶解させることで、PECエッチングを行うことができる。照射する光221の波長は、エッチングの対象とするIII族窒化物の組成に応じて、適宜変更されてよい。GaNのPECエッチングを基準として、Alを含有する場合は、より短波長の光221を用いればよく、Inを含有する場合は、より長波長の光221も利用可能となる。つまり、エッチングしたいIII族窒化物の組成に応じて、当該III族窒化物がPECエッチングされるような波長の光221を、適宜選択して用いることができる。
【0050】
次に、本実施形態によるHEMT150の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、積層体10上の、平面視においてHEMT150の素子領域180の外に、カソードパッド30を設ける工程(
図2(b)および
図6(a)参照)と、積層体10上に、オーミックリセス110SDが形成される被エッチング領域21SDに開口を有するマスク50を形成する工程(
図3(b)参照)と、PECエッチングによりオーミックリセス110SDを形成する工程(
図3(c)参照)と、素子分離構造160を形成する工程(
図4(b)参照)と、を有する。
【0051】
HEMT150が形成される積層体10のウエハ上に、HEMT素子が、ゲート長方向およびゲート幅方向の少なくとも一方向に、周期的に複数並んで配置される。これに対応して、カソードパッド30は、ゲート長方向およびゲート幅方向の少なくとも一方向に、周期的に複数並んで配置されてよい。
【0052】
図2(a)~
図5(c)は、本実施形態によるHEMT150の製造工程を例示する概略断面図である。図示の煩雑さを避けるため、
図2(a)~
図5(c)において、積層体10のチャネル層12b以上の部分を示す。
図2(a)~
図5(c)の断面図において、HEMT素子の1つ分を示す。
【0053】
図6(a)~
図7(b)は、本実施形態によるHEMT150の製造工程を例示する概略平面図である。
図6(a)~
図7(b)の平面図において、ゲート長方向に並んだHEMT素子の2つ分を示す。
【0054】
図2(a)を参照する。積層体10のウエハを準備する。積層体10は、被エッチング領域21G、21SD、21ISおよび21CPを有する。被エッチング領域21Gは、ゲート電極152が配置されるリセスであるゲートリセス110Gを形成するためにエッチングされる領域である。被エッチング領域21SDは、ソース電極151またはドレイン電極153が配置されるリセスであるオーミックリセス110SDを形成するためにエッチングされる領域である。被エッチング領域21ISは、素子分離溝である素子分離構造160を形成するためにエッチングされる領域である。被エッチング領域21CPは、カソードパッド30が配置される凹部110CPを形成するためにエッチングされる領域である。以下、被エッチング領域21G~21CPのそれぞれを、単に、領域21G~21CPともいう。
【0055】
図2(b)を参照する。フォトリソグラフィおよびエッチングにより、絶縁膜13の領域21G、21SD、21IS、および、21CPに、底にキャップ層12dが露出する凹部を形成する。絶縁膜13のエッチングには、例えば、バッファードフッ酸水溶液、フッ酸水溶液等によるウェットエッチングが用いられ、また例えば、アトミックレイヤーエッチング、中性粒子ビームエッチング等による低ダメージのドライエッチングが用いられる。
【0056】
さらに、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、キャップ層12dの領域21CPに、底に障壁層12cが露出する凹部110CPを形成する。凹部110CPを形成するキャップ層12dのエッチングには、例えば、アトミックレイヤーエッチング、中性粒子ビームエッチング等による低ダメージのドライエッチングが用いられる。
【0057】
凹部110CPの形成の後、処理対象物100の上面の全面上に、例えばTi膜を堆積し、凹部110CPの外側の不要部のTi膜をリフトオフにより除去することで、カソードパッド30を形成する。
【0058】
なお、キャップ層12dは通常n型にドーピングされる(n型の導電性を有する)ので、カソードパッド30は、キャップ層12d上に形成してもよい。キャップ層12dが除去された凹部110CPに、つまり障壁層12cの直上に形成することで、カソードパッド30のコンタクト抵抗を低減することができる。一方、カソードパッド30をキャップ層12d上に形成することで、凹部110CPのキャップ層12dを除去するためのフォトリソグラフィおよびエッチングの工程を省くことができる。
【0059】
キャップ層12d上または障壁層12c上に形成されたカソードパッド30と、カソードパッド30を用いてPECエッチングされる被エッチング領域21とは、キャップ層12dおよび2DEGの少なくとも一方を介して、電気的に接続される。なお、導電率は、2DEGの方がキャップ層12dよりも大きい。
【0060】
図2(c)を参照する。処理対象物100の上面の全面上に、例えば酸化シリコン膜を堆積する。フォトリソグラフィおよびエッチングにより、酸化シリコン膜の、領域21G、および、カソードパッド30の上面、の上に配置された部分を除去することで、キャップ層12dの上方に配置されたハードマスク51を形成する。酸化シリコン膜のエッチングには、例えば、バッファードフッ酸水溶液が用いられる。なお、本明細書においてハードマスクとは、(有機材料で構成されたレジストマスクに対し、)無機材料または金属材料で構成されたマスクを意味する。
【0061】
図3(a)を参照する。ハードマスク51(および、ハードマスク51の下方に介在する絶縁膜13等)をマスク50として、領域21Gのキャップ層12dおよび障壁層12cを、PECエッチングによりエッチングすることで、ゲートリセス110Gを形成する。
【0062】
図8(a)および
図8(b)は、ゲートリセス110Gを形成するPECエッチングの機構を模式的に示す概略断面図である。
図8(a)は、PECエッチングが進行している状況を示し、
図8(b)は、PECエッチングが停止している状況を示す。
【0063】
上述のように、被エッチング領域21Gへの光照射により生成された電子が、キャップ層12dおよび2DEGの少なくとも一方を介してカソードパッド30まで流れ、カソードパッド30の表面からエッチング液201に放出されることで、PECエッチングが進行する。
図8(a)に、電子の模式的な流れを矢印35で示す。
【0064】
PECエッチングの進行に伴い障壁層12cが薄くなって、ゲートリセス110Gの下方における2DEGが減少すると、PECエッチングが進行しにくくなり、やがて、
図8(b)に示すように、ゲートリセス110Gの下方に所定厚さの障壁層12cが残った状態で、PECエッチングが自動的に停止する(自己停止)。当該所定厚さは、例えば光221の強度により調整することができ、HEMT150の閾値ゲート電圧が所定値となるように設定することができる。
【0065】
図3(b)を参照する。領域21SD、および、カソードパッド30の上面、の上に開口を有するレジストマスク52を(マスク50を)形成する。レジストマスク52をマスクとして、領域21SD上のハードマスク51をエッチングすることで、領域21SDのキャップ層12dを露出させる。
【0066】
図3(c)を参照する。レジストマスク52(および、レジストマスク52の下方に介在するハードマスク51および絶縁膜13等)をマスク50として、領域21SDのキャップ層12dを、PECエッチングによりエッチングすることで、オーミックリセス110SDを形成する。その後、レジストマスク52を除去する。
【0067】
図4(a)を参照する。領域21ISの上に開口を有するレジストマスク53を形成する。レジストマスク53は、ゲートリセス110Gおよびオーミックリセス110SDに充填され、カソードパッド30の上面の全面を覆う。
【0068】
図4(b)を参照する。レジストマスク53(および、レジストマスク53の下方に介在するハードマスク51および絶縁膜13等)をマスク50として、領域21ISのキャップ層12d、障壁層12cおよびチャネル層12bを、エッチングすることで、素子分離溝である素子分離構造160を形成する。素子分離構造160を形成するエッチングには、例えば、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング等のドライエッチングが用いられる。素子分離構造160は、エピ層12のエッチングではなく、エピ層12のへのイオン注入により形成されてもよい。
【0069】
図4(c)を参照する。レジストマスク53およびハードマスク51を除去する。さらに、例えば、塩酸(HCl)と過酸化水素(H
2O
2)との混合水溶液(塩酸過水)により、処理対象物100を洗浄する。例えば塩酸過水での洗浄により、カソードパッド30の除去も行うことができる。
【0070】
上述のように、エピ層12の上面に、転位が所定の密度で分布している。転位ではホールのライフタイムが短いため、PECエッチングが生じにくい。このため、PECエッチングで形成されたゲートリセス110Gおよびオーミックリセス110SDの底において、転位に対応する位置には、PECエッチングの溶け残り部分として、凸部が形成されやすい。
【0071】
本願発明者が得た知見によれば、例えば塩酸過水での洗浄により、当該凸部をエッチングすること、つまり、ゲートリセス110Gおよびオーミックリセス110SDの底の平坦性を高めることもできる。このように、本実施形態において、素子分離構造160の形成後に行う洗浄処理は、カソードパッド30の除去処理、および、ゲートリセス110Gおよびオーミックリセス110SDの底の平坦化処理も兼ねる。
【0072】
このような洗浄処理は、塩酸過水の他、塩酸(HCl)水溶液、硫酸(H2SO4)と過酸化水素(H2O2)との混合水溶液(ピラニア溶液)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液、フッ化水素水溶液(フッ酸)、水酸化カリウム(KOH)水溶液等を用いて行われてもよい。
【0073】
図5(a)を参照する。オーミックリセス110SDの上に開口を有するレジストマスクを用いたリフトオフにより、ソース電極151およびドレイン電極153を形成する。ソース電極151およびドレイン電極153は、例えばTi/Al/Ti/Au層により形成される。
【0074】
図5(b)を参照する。処理対象物100の上面の全面上に、例えば酸化アルミニウム膜を堆積する。フォトリソグラフィおよびエッチングにより、酸化アルミニウム膜の、ソース電極151およびドレイン電極153の上面上に配置された部分を除去することで、絶縁膜170を形成する。酸化シリコン膜のエッチングには、例えば、バッファードフッ酸水溶液が用いられる。
【0075】
図5(c)を参照する。ゲートリセス110Gの上に開口を有するレジストマスクを用いたリフトオフにより、ゲート電極152を形成する。ゲート電極152は、例えばNi/Au層により形成される。ゲート電極152は、ゲートリセス110Gに、ゲート絶縁膜である絶縁膜170を介して形成される。以上のようにして、HEMT150が製造される。
【0076】
図6(a)は、
図2(b)に対応する概略平面図であり、カソードパッド30の平面的な配置例を示す。
図2(b)および
図6(a)に示されるように、カソードパッド30は、積層体10上の、(平面視において)HEMT150の素子領域180の外に設けられる。
【0077】
図6(b)は、
図3(c)に対応する概略平面図であり、ゲートリセス110Gおよびオーミックリセス110SDの平面的な配置例を示す。
【0078】
本実施形態では、カソードパッド30を素子領域180の外に設ける。このように設けられたカソードパッド30を用いることで、オーミックリセス110SDをPECエッチングにより形成することを可能としている。また、カソードパッド30を素子領域180の外に設けることで、カソードパッド30の形状、配置等の自由度を高めている。なお、このようなカソードパッド30を、ゲートリセス110GのPECエッチングによる形成に用いることもできる。
【0079】
本例において、より具体的には、カソードパッド30が、ゲート長方向(紙面左右方向)に隣接するHEMT素子同士の間に配置されている。例えば、
図6(b)に示されるように、あるカソードパッド32が、紙面左方の第1のHEMT素子のドレインリセス111Dと、第1のHEMT素子に隣接する第2のHEMT素子(紙面右方のHEMT素子)のソースリセス112Sと、の間に配置されている。
【0080】
これにより、例えば、第1のHEMT素子のドレインリセス111Dと、第2のHEMT素子のソースリセス112Sと、から均等な位置にカソードパッド30を設けることができるため、両リセスを形成するPECエッチング条件の均一性を高めることが容易になる。
【0081】
また本例において、カソードパッド30は、ゲート幅方向(紙面上下方向)に延在する形状、つまり、オーミックリセス110SDの長さ方向と平行な方向に延在する形状を有する。
【0082】
これにより、例えば、オーミックリセス110SDの長さ方向について、PECエッチング条件の均一性を高めることが容易になる。
【0083】
本実施形態では、ゲートリセス110Gを形成した後に、オーミックリセス110SDを形成する態様を例示している。ゲートリセス110Gを形成することで、ゲートリセス110Gの部分のキャップ層12dが除去されるとともに、ゲートリセス110Gの下方の2DEGが減少する。
【0084】
これに起因して、同一のHEMT素子が有するソースリセス110Sとドレインリセス110Dとが、同一のカソードパッド30と導通しにくくなる。例えば、
図6(b)に示されるように、第1のHEMT素子のソースリセス111S側に配置されたカソードパッド31と、ゲートリセス111Gに対しカソードパッド31と反対側に配置されたドレインリセス111Dとは、導通しにくくなる。
【0085】
しかし、第1のHEMT素子のドレインリセス111Dは、ゲートリセス111Gに対しドレインリセス111Dと同じ側に配置されたカソードパッド32とは、導通することが容易である。また、同様にして、第2のHEMT素子のソースリセス112Sは、ゲートリセス112Gに対しソースリセス112Sと同じ側に配置されたカソードパッド32とは、導通することが容易である。
【0086】
このように、本例では、ゲート長方向に隣接するHEMT素子間に配置されたカソードパッド30を、これらのHEMT素子のオーミックリセス110SDを形成するPECエッチングにおいて共用させることで、オーミックリセス110SDの形成を良好に行うことができる。これにより、例えば、ゲート長方向に隣接するHEMT素子におけるPECエッチング条件の均一性を高めたり、ゲートリセス110Gを形成した後にオーミックリセス110SDを形成することを容易にしたりできる。
【0087】
図7(a)は、
図4(b)に対応する概略平面図であり、素子分離構造160の平面的な配置例を示す。素子分離構造160は、HEMT素子として機能する素子領域180を画定する。平面視において、素子分離構造160のHEMT素子を囲む閉じた形状の縁(破線の太線で示す、HEMT素子側、つまり内側の縁)の内部領域が、素子領域180となる。
【0088】
本実施形態では、カソードパッド30が設けられた状態で、素子分離構造160を形成する態様を例示している。カソードパッド30は、素子分離構造160を形成する際の(ドライエッチング、イオン注入等を行う際の)マスク50の少なくとも一部として機能する。このため、本例において、素子分離構造160は、カソードパッド30の配置領域と、(平面視において)重なりを有しないように形成される。
【0089】
カソードパッド30が設けられた状態で素子分離構造160を形成する態様では、カソードパッド30を露出させないように覆うマスク(レジストマスク53)が形成された状態で、素子分離構造160を形成するドライエッチングを行うことが好ましい(
図4(b)参照)。これにより、当該ドライエッチングでカソードパッド30がエッチングされることが抑制され、カソードパッド30を構成する材料(例えばTi等の金属)に起因する不要な汚染を抑制することができる。
【0090】
素子分離構造160では、2DEGが分断され、またキャップ層12dによる導通も失われる。このため、素子分離構造160が形成された後は、ある素子領域180の外に設けられたカソードパッド30を用いて、当該素子領域180に配置されるオーミックリセス110SD(またはゲートリセス110G)を、PECエッチングにより形成することはできない。
【0091】
このため、本実施形態では、オーミックリセス110SD(およびゲートリセス110G)を、素子領域180の外に設けられたカソードパッド30を用いてPECエッチングで形成した後に、素子分離構造160を形成する。
【0092】
図7(b)は、
図5(c)に対応する概略平面図であり、ソース電極151、ゲート電極152およびドレイン電極153の平面的な配置例を示す。ゲート電極152の幅により、HEMT素子のゲート長L
gが画定される。ゲート長方向に、ソース電極151、ゲート電極152およびドレイン電極153が並んでいる。ゲート長方向と直交する方向が、ゲート幅方向であり、素子領域180のゲート幅方向の長さにより、ゲート幅W
gが画定される。隣接するHEMT素子間で、ソース電極151同士、ゲート電極152同士、および、ドレイン電極153同士は、それぞれ、必要に応じ電気的に接続されてよい。
【0093】
本実施形態では、ゲートリセス110Gを形成するエッチングと、オーミックリセス110SDを形成するエッチングとを、ともにPECエッチングで行う。以下、ゲートリセス110Gを形成するPECエッチングを、ゲートリセス110GのPECエッチングともいい、オーミックリセス110SDを形成するPECエッチングを、オーミックリセス110SDのPECエッチングともいう。
【0094】
ゲートリセス110GのPECエッチング、および、オーミックリセス110SDのPECエッチングのそれぞれで、光源220を切り替えても(光221の波長特性を替えても)よいが、PECエッチング装置200の構造を簡便にする観点からは、両者のPECエッチングに、同一の光源220(同一の波長特性を有する光221)を用いることが好ましい。
【0095】
キャップ層12dがGaNで構成され、障壁層12cがAlGaNで構成された例では、障壁層12c(AlGaN)をPECエッチング可能な短波長の光221により、キャップ層12d(GaN)もPECエッチングすることができる。
【0096】
ゲートリセス110GのPECエッチングは、上述のように、自己停止により停止させることができる。一方、このような短波長の光221を用いてオーミックリセス110SDのPECエッチングを行う場合、何ら時間制限を設けなければ、自己停止するまで深くエッチングが進行してしまう。このため、オーミックリセス110SDのPECエッチングは、時間管理により停止させる。これにより、両者のPECエッチングを、同一の光源220を用いて行うことができる。
【0097】
なお、オーミックリセス110SDのPECエッチングでは、キャップ層12dはPECエッチングできるが障壁層12cはPECエッチングできないような長波長の光221を用いることで、キャップ層12dの全厚さがエッチングされた時点でエッチングが停止するようにしてもよい。
【0098】
ゲートリセス110GのPECエッチングに要する時間は、ゲートリセス110GのPECエッチングよりも浅いオーミックリセス110SDのPECエッチングに要する時間よりも長くなる。本実施形態では、時間が長いゲートリセス110GのPECエッチングを、ハードマスク51を用いて行っている。ゲートリセス110GのPECエッチングを、レジストマスク(のみ)を用いて行ってもよいが、マスクのエッチング液201に対する耐性をより向上させ、パターニング精度をより高めるために、ゲートリセス110GのPECエッチングには、ハードマスク51を用いることが好ましい。
【0099】
本実施形態では、ゲートリセス110GのPECエッチングの後に、オーミックリセス110SDのPECエッチングを行う。ゲートリセス110GのPECエッチングの際、オーミックリセス110SDに対応する領域21SDのキャップ層12dは、ハードマスク51で保護された状態となる(
図3(a)参照)。これにより、領域21SDのキャップ層12dにおける不要なエッチングを、キャップ層12dがレジストマスク(のみ)で保護された状態と比べて、より抑制することができる。
【0100】
オーミックリセス110SDのPECエッチングは、領域21SDの上に開口が形成されたハードマスク51、および、レジストマスク52を用いて行われ、ゲートリセス110Gにレジストマスク52が充填された状態で、好ましくは少なくとも、レジストマスク52がゲートリセス110GのIII族窒化物で構成された側面を覆った状態で、行われる(
図3(c)参照)。ゲートリセス110Gの当該側面が、レジストマスク52により保護されることで、オーミックリセス110SDのPECエッチングにおける、当該側面の不要なサイドエッチングを抑制することができる。本例では、オーミックリセス110SDのPECエッチングの際、ゲートリセス110Gがレジストマスクのみで保護されることとなるが、オーミックリセス110SDのPECエッチングは短時間であるため、問題は生じにくい。
【0101】
なお、ゲートリセス110GのPECエッチングと、オーミックリセス110SDのPECエッチングとは、必要に応じ、どちらが先に行われてもよい。また、ゲートリセス110GのPECエッチングと、オーミックリセス110SDのPECエッチングとは、それぞれ、必要に応じ、レジストマスクを用いて行われてもよく、ハードマスクを用いて行われてもよい。
【0102】
本実施形態によるHEMT150は、上述のような製造方法を反映して、例えば以下のような特徴を有する。
【0103】
本実施形態による製造方法では、ソースリセス110Sおよびドレインリセス110D(またさらにゲートリセス110G)を、PECエッチングにより形成することができる。このため、ソースリセスおよびドレインリセスを従来のドライエッチングで形成した際に導入されることとなるプラズマダメージが、本実施形態のHEMT150には導入されない。つまり、本実施形態のHEMT150では、少なくともソース電極およびドレイン電極の直下に位置するIII族窒化物層には(より好ましくはさらに、ゲート電極の直下に位置するIII族窒化物層にも)、プラズマダメージが導入されていない。
【0104】
本実施形態による製造方法では、ソースリセス110Sおよびドレインリセス110D(またさらにゲートリセス110G)を、素子分離構造160の外に設けたカソードパッド30を用いたPECエッチングにより形成する。カソードパッド30の配置領域では、キャップ層12dを除去して、凹部110CPを形成している。
【0105】
これを反映し、
図5(c)に示すように、HEMT150が有する絶縁膜170は、ソース電極151、ゲート電極152、および、ドレイン電極153が配置された領域に対し、素子分離構造160の外側において、キャップ層12dを介して障壁層12c上に設けられた部分171と、障壁層12cの直上に設けられた部分172と、を有してよい。
【0106】
<第1変形例>
第1変形例について説明する。
図9(a)は、第1変形例による素子分離構造160の平面的な配置例を示す概略平面図である。
図9(a)に示すように、オーミックリセス110SDが形成される被エッチング領域21SDの、ゲート幅方向およびゲート長方向の少なくとも一方の端部と、素子分離構造160とが、(平面視において)重なりを有するように、素子分離構造160を形成してもよい。つまり、素子分離構造160を、オーミックリセス110SDが形成される被エッチング領域21SDの一部と(平面視において)重なりを有するように、形成してもよい。
【0107】
これにより、オーミックリセス110SDが、素子領域180のゲート幅方向またはゲート長方向の端まで隙間なく配置されることを、より確実にすることができる。つまり、素子領域180に配置され実際にオーミックリセス110SDとして機能する実効的なリセス部よりも少し広く、被エッチング領域21SDが画定されていてもよい。
【0108】
<第2変形例>
第2変形例について説明する。
図9(b)は、第2変形例による素子分離構造160の平面的な配置例を示す概略平面図である。上述の実施形態では、素子分離構造160を、カソードパッド30の配置領域と、(平面視において)重なりを有しないように形成する態様について例示した。
図9(b)に示すように、素子分離構造160は、カソードパッド30の配置領域と、(平面視において)重なりを有するように形成してもよい。
【0109】
図10(a)および
図10(b)は、第2変形例によるHEMT150の製造工程を例示する概略断面図である。本変形例では、
図10(a)に示すように、オーミックリセス110SD(およびゲートリセス110G)が形成された後、素子分離構造160が形成される前に、カソードパッド30を除去する。カソードパッド30は、例えば塩酸過水により除去される。
【0110】
カソードパッド30が除去された後、
図10(b)に示すように、カソードパッド30の配置領域と重なる領域に、素子分離構造160を形成する。カソードパッド30が除去されていることで、カソードパッド30の配置領域にも、素子分離構造160を形成することが可能となる。
【0111】
上述の実施形態のように、カソードパッド30の配置領域と、素子分離構造160とが重なりを有しないように、つまり、カソードパッド30の配置領域を素子分離構造160の外側に設ける構造では、カソードパッド30の配置領域を、例えば素子分離構造160として有効に活用することができない。本変形例では、カソードパッド30の除去後に素子分離構造160を形成することにより、カソードパッド30の配置領域を有効に活用することができる。
【0112】
<第3変形例>
第3変形例について説明する。
図11は、第3変形例によるカソードパッド30の平面的な配置例を示す概略平面図である。上述の実施形態では、カソードパッド30が、ゲート長方向に隣接するHEMT素子同士の間に配置されている態様を例示した。
【0113】
図11に示すように、カソードパッド30は、ゲート幅方向に隣接するHEMT素子同士の間に配置されていてもよい。カソードパッド30は、例えば、ゲート長方向に延在する形状、つまり、オーミックリセス110SDの長さ方向と直交する方向に延在する形状を有する。本変形例のカソードパッド30により、例えば、ゲート幅方向に隣接するHEMT素子におけるPECエッチング条件の均一性を高めることができる。
【0114】
<第4変形例>
第4変形例について説明する。
図12は、第4変形例によるHEMT150を例示する概略断面図である。上述の実施形態では(
図1参照)、オーミックリセス110SDとともに、ゲートリセス110GもPECエッチングで形成する態様を例示した。第4変形例は、ゲートリセス110Gは形成されない態様を例示する。
【0115】
図12に示すように、本変形例によるHEMT150は、オーミックリセス110SDは有するが、ゲートリセスは有しない。ゲート電極152は、例えば、キャップ層12d上に形成されている。また、本変形例では、ゲート電極152の下方にゲート絶縁膜が介在しない
【0116】
例えばこのような態様のHEMT150においても、上述の実施形態と同様にして、素子領域180の外に設けられたカソードパッド30を用いたPECエッチングにより、オーミックリセス110SDを形成することができる。
【0117】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態および変形例を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態および変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、改良、組み合わせ等が可能である。上述の実施形態および各種変形例、さらに、以下に説明する他の実施形態は、必要に応じ、適宜組み合わされて用いられてよい。
【0118】
上述の実施形態では、素子分離溝である素子分離構造160を形成するエッチングとして、ドライエッチングを例示したが、当該エッチングとして、ウェットエッチングであるPECエッチングを用いてもよい。
【0119】
本願発明者は、2DEGの減少によりPECエッチングを自己停止させるには、つまり、障壁層12cの途中の深さでPECエッチングを停止させるには、エッチング液201を酸性とすることが好ましいという知見を得ている。換言すると、エッチング液201をアルカリ性とすることで、メカニズムは不明であるが、障壁層12cを貫通しチャネル層12bの途中の深さに到達する(高速な)PECエッチングが生じやすいという知見を得ている。
【0120】
このような知見から、ゲートリセス110Gおよびオーミックリセス110SDを形成するPECエッチングは、(PECエッチングの開始時から)酸性であるエッチング液201を用いることが好ましい。また、アルカリ性のエッチング液201を用いることで、素子分離溝である素子分離構造160を、PECエッチングにより形成することも可能となる。
【0121】
図13は、素子分離構造160をPECエッチングで形成する工程を例示する概略断面図である(上述の
図4(b)に対応)。
図13に示す例では、PECエッチングを行うため、カソードパッド30の少なくとも一部を露出させるマスク53aが形成されている。当該工程では、アルカリ性のエッチング液201を用いて、底にチャネル層12bが露出する深さのPECエッチングを行うことで、素子分離構造160を形成する。これに対し、
図3(a)および
図3(c)に示した工程では、それぞれ、好ましくは酸性のエッチング液201を用いて、底に障壁層12cが露出する深さのPECエッチングを行うことで、ゲートリセス110Gおよびオーミックリセス110SDを形成する。
【0122】
上述の実施形態では、素子領域180の外に設けられるカソードパッド30について説明したが、カソードパッド30の一部が、素子領域180と(平面視において)重なりを有することがあってもよい。
【0123】
図14は、カソードパッド30の一部が素子領域180と重なりを有する態様を例示する概略平面図である。
図14に示す例では、ゲート長方向に2つのHEMT素子が並んで配置されており、これら2つのHEMT素子が、共通の素子領域180に形成されている。つまり、これら2つのHEMT素子は、共通の素子分離構造160に囲まれている。
【0124】
本例では、紙面左方のHEMT素子の左方に配置されたカソードパッド33は、素子領域180の外に設けられ、2つのHEMT素子の間に配置されたカソードパッド34は、素子領域180と重なりを有している。
【0125】
上述の実施形態では、カソードパッド(無電極PECエッチングのカソードとして機能する導電性部材)30として、積層体(窒化物半導体結晶基板)10とは別体の導電性部材を用いる態様を例示したが、以下に説明するように、積層体10の一部としてIII族窒化物で構成された導電性部材(導電性領域)を、カソードパッド30として用いてもよい。
【0126】
なお、カソードパッド30として、積層体10とは別体の導電性部材を用いる態様と、積層体10の一部としてIII族窒化物で構成された導電性部材を用いる態様と、を総合的に捉える場合、カソードパッド30という表現に替えて、カソード部30という表現を用いることがある。
【0127】
図15(a)および
図15(b)は、エピ層12にn型不純物をイオン注入することで、カソード部30を形成する態様を例示する概略断面図である。
【0128】
図15(a)は、上述の実施形態の
図2(b)に対応し、カソード部30を形成する工程を例示する。
図15(a)において、カソード部30となる領域を太線で示す。なお、本例では、平面視においてカソード部30が配置される領域を、領域21CPと呼ぶ。
【0129】
領域21CPに開口を有するマスクが形成された状態で、エピ層12に、Si等のn型不純物をイオン注入することで、カソード部30を形成する。例えば、n型不純物濃度が1×1017cm-3以上1×1019cm-3以下で、深さ(厚さ)が100nm以上200nm以下のカソード部30が形成されるように、イオン注入を行う。例えば、領域21CPにおいて、キャップ層12dの全厚さ、障壁層12cの全厚さ、および、チャネル層12bの上部に、n型不純物がイオン注入されることで、カソード部30が形成される。
【0130】
カソード部30は、チャネル層12bの上部に達する深さに形成されていることで、2DEGに達しており、PECエッチングによりエッチングされる被エッチング領域21と、カソード部30とは、キャップ層12dおよび2DEGの少なくとも一方を介して電気的に接続されている。本例では、カソード部30が2DEGと直接的に接続されていることで、カソード部30からの電子の放出を、より効果的に行うことができる。
【0131】
本例では、被エッチング領域21、および、カソード部30が、ともに、III族窒化物で構成される。また、被エッチング領域21に光221を照射する際、カソード部30にも、光221が照射される。ただし、カソード部30を構成するIII族窒化物は、当該被エッチング領域21よりも高い(好ましくは例えば10倍以上高い)n型不純物濃度を有する。これにより、当該被エッチング領域21と比べて電子濃度が高いカソード部30では、光励起したホールを短時間で消費させることで陽極酸化反応を抑制できるため、カソード部30は、PECエッチングされることが抑制されて、PECエッチングのカソードとして機能させることができる。これは、後述の再成長によりカソード部30を形成する態様でも同様である。
【0132】
PECエッチングによりエッチングされる被エッチング領域21は、キャップ層12dまたは障壁層12cであり、エピ層12のうち障壁層12cの下面よりも上方の部分ということができる。典型的には、障壁層12cにはn型不純物が添加されず、キャップ層12dにはn型不純物が添加される。カソード部30は、キャップ層12dよりも高いn型不純物濃度となるように、つまり、当該被エッチング領域21の最も高いn型不純物濃度よりも高い(好ましくは例えば10倍以上高い)n型不純物濃度となるように、n型不純物が添加される。
【0133】
カソード部30を形成した後の工程は、上述の実施形態と同様である。被エッチング領域21のPECエッチングに際し、カソード部30をエッチング液201に接触させることで、カソード部30をPECエッチングのカソードとして機能させる。なお、カソード部30は(カソード部30を構成するIII族窒化物層は)除去されずに、素子分離領域160の形成後に残っていてもよい。カソード部30は、素子分離溝である素子分離領域160の形成時のエッチングで除去されてもよい。カソード部30は、イオン注入による素子分離領域160の形成時に素子分離用のイオン注入がされてもよい。
【0134】
図15(b)は、上述の実施形態の
図1(a)に対応し、本例のHEMT150を概略的に示す。本例のHEMT150のエピ層12は、上述の製造方法を反映して、平面視において素子領域180の外に、チャネル層12bの上部に達する深さのカソード部30を有してよい。カソード部30は、平面視において素子領域180内のエピ層12における、障壁層12cの下面よりも上方の部分における(最も高い)n型不純物濃度よりも、高いn型不純物濃度を有する。
【0135】
図16は、n型不純物が添加されたIII族窒化物層を再成長させることで、カソード部30を形成する態様を例示する概略断面図である。本例は、上述の実施形態において例えばTiにより構成されたカソード部30を、Tiに替えて、高いn型不純物濃度を有するIII族窒化物で構成するようにした態様と捉えてもよい。
【0136】
図2(b)を参照して、本例のカソード部30の形成方法について説明する。領域21CPに開口を有するマスクが形成された状態で、障壁層12cの上方に、例えば、Si等のn型不純物が添加されたGaNを再成長させることで、カソード部30を形成する。再成長の方法としては、スパッタリング、パルスレーザ堆積(PLD)、有機金属化学気相堆積(MOCVD)、分子線エピタキシ(MBE)、等が適宜用いられてよい。例えば、n型不純物濃度が1×10
17cm
-3以上1×10
19cm
-3以下で、厚さが50nm程度のカソード部30を成長させる。なお、カソード部30をTiで構成する態様で説明したのと同様に、カソード部30は、キャップ層12d上に設けられてもよい。
【0137】
カソードパッド30を形成した後の工程は、上述の実施形態と同様である。本例においても、カソード部30が除去されずに、素子分離領域160の形成後に残っていてもよい。
【0138】
図16は、上述の実施形態の
図1(a)に対応し、本例のHEMT150を概略的に示す。本例のHEMT150のエピ層12は、上述の製造方法を反映して、平面視において素子領域180の外に、障壁層12cの上方に(あるいはキャップ層12dの上方に)成長されたカソード部30を有してよい。カソード部30は、平面視において素子領域180内のエピ層12における、障壁層12cの下面よりも上方の部分におけるn型不純物濃度よりも、高いn型不純物濃度を有する。
【0139】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0140】
(付記1)
窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法であって、
窒化物半導体結晶基板上の、平面視において前記高電子移動度トランジスタの素子領域外に、導電性部材を設ける工程と、
前記窒化物半導体結晶基板上に、前記高電子移動度トランジスタのソース電極が配置されるリセスであるソースリセスが形成されるソースリセス被エッチング領域、および、前記高電子移動度トランジスタのドレイン電極が配置されるリセスであるドレインリセスが形成されるドレインリセス被エッチング領域、の少なくとも一方に開口を有する(とともに前記導電性部材を露出する開口を有する)マスクを形成する工程と、
前記導電性部材が設けられるとともに前記マスクが形成された前記窒化物半導体結晶基板を、電子を受け取る酸化剤を含むエッチング液に接触させた状態で、前記窒化物半導体結晶基板に光を照射することで、光電気化学エッチングを行い、前記ソースリセスおよび前記ドレインリセスの少なくとも一方を形成する工程と、
(前記光電気化学エッチングの後、)前記高電子移動度トランジスタの(前記素子領域を画定する)素子分離構造を形成する工程と、
を有する窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0141】
(付記2)
前記各工程を、付記1に記載の順番で行う、付記1に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0142】
(付記3)
前記窒化物半導体結晶基板は、下地基板上に、少なくとも、2次元電子ガスが形成されるチャネル層と、前記チャネル層上に形成された障壁層と、前記障壁層を構成するIII族窒化物よりもバンドギャップが小さいIII族窒化物で構成され、前記障壁層上に形成されたキャップ層と、を含み、
前記光電気化学エッチングでは、前記キャップ層(のみ)を除去する、付記1または2に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0143】
(付記4)
前記導電性部材は、前記キャップ層および前記2次元電子ガスの少なくとも一方を介して、前記ソースリセス被エッチング領域または前記ドレインリセス被エッチング領域と電気的に接続されている、付記3に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0144】
(付記5)
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、前記ソースリセス被エッチング領域および前記ドレインリセス被エッチング領域の少なくとも一方の一部と平面視において重なりを有するように形成する、付記1~4のいずれか1つに記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0145】
(付記6)
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、イオン注入、ドライエッチング、および、光電気化学エッチングのうちのいずれかの手法で形成する、付記1~5のいずれか1つに記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0146】
(付記7)
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、前記導電性部材の配置領域と平面視において重なりを有しないように形成する、付記1~6のいずれか1つに記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0147】
(付記8)
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、前記導電性部材をマスクの少なくとも一部として用いて、イオン注入により形成する、付記7に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0148】
(付記9)
前記素子分離構造を形成する工程では、少なくとも、前記ソースリセスまたは前記ドレインリセス、および、前記導電性部材を、露出させないように覆うマスクが形成された状態で、前記素子分離構造を、ドライエッチングにより形成する、付記7に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0149】
(付記10)
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、前記導電性部材の少なくとも一部を露出させるマスクを形成した状態で、光電気化学エッチングにより形成する、付記7に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0150】
(付記11)
前記ソースリセスおよび前記ドレインリセスの少なくとも一方を形成する工程における光電気化学エッチングは、酸性のエッチング液を用いて行い、
前記素子分離構造を形成する工程における光電気化学エッチングは、アルカリ性のエッチング液を用いて行う、付記10に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
好ましくは、付記17の前記ゲートリセスを形成する工程における光電気化学エッチングは、酸性のエッチング液を用いて行う。
【0151】
(付記12)
前記素子分離構造を形成する工程では、前記素子分離構造を、前記導電性部材の配置領域と平面視において重なりを有するように形成する、付記1~6のいずれか1つに記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0152】
(付記13)
前記素子分離構造を形成する工程は、前記導電性部材を除去した後に行われる、付記12に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0153】
(付記14)
前記窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法では、前記窒化物半導体結晶基板上でゲート長方向およびゲート幅方向の少なくとも一方向に並んだ複数の高電子移動度トランジスタを製造し、
前記導電性部材は、前記ゲート長方向に隣接する高電子移動度トランジスタ素子同士の間、および、前記ゲート幅方向に隣接する高電子移動度トランジスタ素子同士の間、の少なくとも一方に配置される、付記1~13のいずれか1つに記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
複数の導電性部材が、ゲート長方向およびゲート幅方向の少なくとも一方向に、並んで配置されていてもよい。
【0154】
(付記15)
前記ゲート長方向に隣接する高電子移動度トランジスタ素子同士の間に配置される前記導電性部材は、前記ゲート幅方向に延在する形状を有する、付記14に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0155】
(付記16)
前記ゲート幅方向に隣接する高電子移動度トランジスタ素子同士の間に配置される前記導電性部材は、前記ゲート長方向に延在する形状を有する、付記14または15に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0156】
(付記17)
前記窒化物半導体結晶基板上に、前記高電子移動度トランジスタのゲート電極が配置されるリセスであるゲートリセスが形成されるゲートリセス被エッチング領域に開口を有する(とともに前記導電性部材を露出する開口を有する)他のマスクを形成する工程と、
前記導電性部材が設けられるとともに前記他のマスクが形成された前記窒化物半導体結晶基板を、電子を受け取る酸化剤を含むエッチング液に接触させた状態で、前記窒化物半導体結晶基板に光を照射することで、他の光電気化学エッチングを行い、前記ゲートリセスを形成する工程と、
(前記光電気化学エッチングおよび前記他の光電気化学エッチングの後、)前記素子分離構造を形成する工程と、
をさらに有する、付記1~16のいずれか1つに記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0157】
(付記18)
前記窒化物半導体結晶基板は、下地基板上に、少なくとも、2次元電子ガスが形成されるチャネル層と、前記チャネル層上に形成された障壁層と、前記障壁層を構成するIII族窒化物よりもバンドギャップが小さいIII族窒化物で構成され、前記障壁層上に形成されたキャップ層と、を含み、
前記光電気化学エッチングでは、前記キャップ層(のみ)を除去し、
前記他の光電気化学エッチングでは、前記キャップ層、および、前記障壁層の一部、を除去する、付記17に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0158】
(付記19)
前記光電気化学エッチングおよび前記他の光電気化学エッチングでは、同一の光源(同一の波長特性を有する光)を用いて光照射を行い、
前記光電気化学エッチングは、時間管理により停止させ、前記他の光電気化学エッチングは、自己停止により停止させる、付記17または18に記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0159】
(付記20)
前記他の光電気化学エッチングは、前記光電気化学エッチングよりも先に行われ、
前記他の光電気化学エッチングでは、前記他のマスクを、無機材料または金属材料で構成されたハードマスクを用いて形成する、付記17~19のいずれか1つに記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0160】
(付記21)
前記光電気化学エッチングでは、前記マスクを、レジストマスクを用いて形成する、付記17~20のいずれか1つに記載の窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0161】
(付記22)
窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法であって、
窒化物半導体結晶基板上の、平面視において前記高電子移動度トランジスタの素子領域外に、導電性部材を設ける工程と、
前記窒化物半導体結晶基板上に、前記高電子移動度トランジスタのゲート電極が配置されるリセスであるゲートリセスが形成されるゲートリセス被エッチング領域に開口を有する(とともに前記導電性部材を露出する開口を有する)マスクを形成する工程と、
前記導電性部材が設けられるとともに前記マスクが形成された前記窒化物半導体結晶基板を、電子を受け取る酸化剤を含むエッチング液に接触させた状態で、前記窒化物半導体結晶基板に光を照射することで、光電気化学エッチングを行い、前記ゲートリセスを形成する工程と、
(前記光電気化学エッチングの後、)前記高電子移動度トランジスタの(前記素子領域を画定する)素子分離構造を形成する工程と、
を有する窒化物系高電子移動度トランジスタの製造方法。
【0162】
(付記23)
窒化物系高電子移動度トランジスタであって、
少なくとも、チャネル層、前記チャネル層上に配置された障壁層、および、前記障壁層上に配置されたキャップ層、を有するIII族窒化物層と、
ソース電極、ゲート電極、および、ドレイン電極と、
素子分離構造と、
を備え、
少なくとも、前記ソース電極およびドレイン電極の直下(、好ましくはさらにゲート電極の直下)に位置するIII族窒化物層には、プラズマダメージが導入されていない、
窒化物系高電子移動度トランジスタ。
【0163】
(付記24)
窒化物系高電子移動度トランジスタであって、
チャネル層、前記チャネル層上に配置された障壁層、および、前記障壁層上に配置されたキャップ層、を有するIII族窒化物層と、
ソース電極、ゲート電極、および、ドレイン電極と、
素子分離構造と、
絶縁膜と、
を備え、
前記絶縁膜は、
前記素子分離構造を覆い、前記ソース電極、前記ゲート電極、および、前記ドレイン電極が配置された領域に対し、前記素子分離構造の外側まで延在して設けられ、前記素子分離構造の外側において、前記キャップ層を介して前記障壁層上に設けられた部分と、前記障壁層の直上に設けられた部分と、を有する、
窒化物系高電子移動度トランジスタ。
【0164】
(付記25)
III族窒化物で構成された被エッチング領域、および、前記被エッチング領域よりも高いn型不純物濃度を有するIII族窒化物で構成され前記被エッチング領域と電気的に接続されているカソード部、を備える処理対象物を準備する工程と、
前記被エッチング領域および前記カソード部が、電子を受け取る酸化剤を含むエッチング液に接触した状態で、前記被エッチング領域(および前記カソード部)に光を照射することにより、前記被エッチング領域をエッチングする工程と、
を有する構造体の製造方法。
【0165】
(付記26)
窒化物系高電子移動度トランジスタであって、
少なくとも、チャネル層、および、前記チャネル層上に配置された障壁層、を有する、(好ましくはさらに、前記障壁層上に配置されたキャップ層、を有する)III族窒化物層と、
ソース電極、ゲート電極、および、ドレイン電極と、
素子分離構造と、
を備え、
前記III族窒化物層は、平面視において前記高電子移動度トランジスタの素子領域外に、前記チャネル層の上部に達する深さのカソード部を有し、
前記カソード部は、平面視において前記高電子移動度トランジスタの素子領域内の前記III族窒化物層における、前記障壁層の下面よりも上方の部分におけるn型不純物濃度よりも、高いn型不純物濃度を有する、
窒化物系高電子移動度トランジスタ。
【0166】
(付記27)
窒化物系高電子移動度トランジスタであって、
少なくとも、チャネル層、および、前記チャネル層上に配置された障壁層、を有する、(好ましくはさらに、前記障壁層上に配置されたキャップ層、を有する)III族窒化物層と、
ソース電極、ゲート電極、および、ドレイン電極と、
素子分離構造と、
を備え、
前記III族窒化物層は、平面視において前記高電子移動度トランジスタの素子領域外に、前記障壁層の上方に成長されたカソード部を有し、
前記カソード部は、平面視において前記高電子移動度トランジスタの素子領域内の前記III族窒化物層における、前記障壁層の下面よりも上方の部分におけるn型不純物濃度よりも、高いn型不純物濃度を有する、
窒化物系高電子移動度トランジスタ。
【符号の説明】
【0167】
10…積層体、11…基板、12…III族窒化物層(エピ層)、12a…核生成層、12b…チャネル層、12c…障壁層、12d…キャップ層、13…絶縁膜、21…被エッチング領域、30…カソードパッド、50…マスク、51…ハードマスク、52…レジストマスク、53…レジストマスク、100…処理対象物、110S…ソースリセス、110D…ドレインリセス、110SD…オーミックリセス、110G…ゲートリセス、150…窒化物系高電子移動度トランジスタ、151…ソース電極、152…ゲート電極、153…ドレイン電極、160…素子分離構造、170…絶縁膜、171…(絶縁膜170の)部分、172…(絶縁膜170の)部分、180…素子領域、200…PECエッチング装置、201…エッチング液、210…容器、220…光源、221…光