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特開2022-25429カルボン酸エステルを含んでなる組成物を使用する方法、カルボン酸エステルを含んでなるリソグラフィ組成物、およびレジストパターンの製造方法
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  • 特開-カルボン酸エステルを含んでなる組成物を使用する方法、カルボン酸エステルを含んでなるリソグラフィ組成物、およびレジストパターンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025429
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】カルボン酸エステルを含んでなる組成物を使用する方法、カルボン酸エステルを含んでなるリソグラフィ組成物、およびレジストパターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20220203BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220203BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220203BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G03F7/038 601
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128241
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅彦
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197CA05
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA10
2H197CE01
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA10
2H197JA22
2H225AE05P
2H225AF16P
2H225AF24P
2H225AF25P
2H225AF44P
2H225AF64P
2H225AF71P
2H225AF75P
2H225AF82P
2H225AF99P
2H225AH12
2H225AJ13
2H225AJ44
2H225AJ48
2H225AM13P
2H225AM15P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN44P
2H225AN56P
2H225AN57P
2H225AN62P
2H225AN64P
2H225BA01P
2H225BA26P
2H225BA32P
2H225CA12
2H225CB08
2H225CC01
2H225CC03
2H225CC15
2H225CC17
(57)【要約】
【課題】リソグラフィ工程において定在波を低減する方法の提供。
【解決手段】リソグラフィ工程において定在波を低減させるために、特定の構造を有するカルボン酸エステル(A)を含んでなる組成物を使用する方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ工程において定在波を低減させるために、カルボン酸エステル(A)を含んでなる組成物を使用する方法:
ここで、カルボン酸エステル(A)は式(a)で表され、
【化1】
はC1-10アルキル、または-OR’であり、
は-OR’であり、
’およびR’はそれぞれ独立にC1-20炭化水素であり、
およびRはそれぞれ独立にHまたはC1-10アルキルであり、
とRもしくはR、またはRとRもしくはRが結合し、飽和または不飽和の炭化水素環を形成してもよく、
n1は1または2である:
ただし、n1=1のとき、RまたはR’、およびR’のうちの少なくとも一方がC3-20炭化水素である。
【請求項2】
前記組成物が、基板の上方に適用され、膜を形成するために使用される請求項1に記載の方法:
好ましくは、基板の上方に下層反射防止膜を形成せずに、カルボン酸エステル(A)を含んでなる組成物を適用する。
【請求項3】
前記組成物が溶媒(B)を含んでなる請求項1または2に記載の方法:
好ましくは、前記組成物が膜化成分(C)を含んでなり、
好ましくは、溶媒(B)を基準としてカルボン酸エステル(A)の含有量が1.0~200質量%であり、または
好ましくは、膜化成分(C)を基準としてカルボン酸エステル(A)含有量が10~3,000質量%である。
【請求項4】
カルボン酸エステル(A)および溶媒(B)を含んでなるリソグラフィ組成物:
ここで、カルボン酸エステル(A)は式(a)で表され、
【化2】
はC1-10アルキル、または-OR’であり、
は-OR’であり、
’およびR’はそれぞれ独立にC1-20炭化水素であり、
およびRはそれぞれ独立にHまたはC1-10アルキルであり、
とRもしくはR、またはRとRもしくはRが結合し、飽和または不飽和の炭化水素環を形成してもよく、
ただし、n1=1のとき、RまたはR’、およびR’のうちの少なくとも一方がC3-20炭化水素であり、
好ましくは、溶媒(B)は有機溶媒(B1)を含んでなり;
好ましくは、有機溶媒(B1)は炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、またはこれらのいずれの混合物を含んでなる。
【請求項5】
カルボン酸エステル(A)が式(a1)で表される請求項4に記載のリソグラフィ組成物。
【化3】
ここで、
11はC1-5アルキルであり、
12はC3-20炭化水素であり、
13およびR14はそれぞれ独立にHまたはC1-5アルキルである。
【請求項6】
膜化成分(C)をさらに含んでなる請求項4または5に記載のリソグラフィ組成物:
好ましくは、リソグラフィ組成物は酸発生剤(D)を含んでなり;
好ましくは、リソグラフィ組成物は架橋剤(E)を含んでなり;
好ましくは、リソグラフィ組成物は塩基性化合物(F)を含んでなり;
好ましくは、リソグラフィ組成物は界面活性剤(G)を含んでなり;または
好ましくは、膜化成分(C)はポリマー(C1)を含んでなり;
好ましくは、ポリマー(C1)の質量平均分子量は500~100,000である。
【請求項7】
さらに添加物(H)を含んでなる請求項4~6の少なくともいずれか一項に記載のリソグラフィ組成物:
好ましくは、添加物(H)は、可塑剤、染料、コントラスト増強剤、酸、ラジカル発生剤、基板密着増強剤、消泡剤、またはこれらいずれかの混合を含んでなる。
【請求項8】
溶媒(B)を基準としてカルボン酸エステル(A)の含有量が1.0~200質量%である請求項4~7の少なくともいずれか一項に記載のリソグラフィ組成物。
好ましくは、膜化成分(C)を基準としてカルボン酸エステル(A)の含有量が10~3,000質量%であり;
好ましくは、リソグラフィ組成物を基準として溶媒(B)の含有量が10~98質量%であり;
好ましくは、リソグラフィ組成物を基準として膜化成分(C)の含有量が2~40質量%であり;
好ましくは、膜化成分(C)を基準として酸発生剤(D)の含有量が0.5~20質量%であり;
好ましくは、膜化成分(C)を基準として架橋剤(E)の含有量が3~30質量%であり;
好ましくは、膜化成分(C)を基準として塩基性化合物(F)の含有量が0.01~1.0質量%であり;または
好ましくは、膜化成分(C)を基準として界面活性剤(G)の含有量が0.05~0.5質量%である。
【請求項9】
カルボン酸エステル(A)、溶媒(B)の、沸点をそれぞれbp、bpとし、25℃1気圧における飽和蒸気圧をそれぞれvpc、vpcとすると、
bp>bp、かつvpc<vpcを満たす請求項4~8の少なくともいずれか一項に記載のリソグラフィ組成物。
【請求項10】
リソグラフィ膜形成組成物である、請求項4~9の少なくともいずれか一項に記載のリソグラフィ組成物:
好ましくは、前記リソグラフィ組成物はレジスト組成物であり;
好ましくは、前記リソグラフィ組成物はネガ型レジスト組成物であり;または
好ましくは、前記リソグラフィ組成物は化学増幅型レジスト組成物である。
【請求項11】
下記工程を含んでなる膜の製造方法:
(1)基板の上方に請求項4~10の少なくともいずれか一項に記載のリソグラフィ組成物を適用し;
(2)減圧および又は加熱によりリソグラフィ組成物から膜を形成する:
好ましくは、リソグラフィ組成を適用する前に、基板の上方に反射防止膜を形成しない。
【請求項12】
下記工程を含んでなるレジストパターンの製造方法:
請求項11に記載の方法でリソグラフィ組成物から膜を形成し、
(3)放射線で膜を露光し;
(4)膜を現像し、レジストパターンを形成する:
ここで、前記リソグラフィ組成物はレジスト組成物である:
好ましくは、露光に13.5~365nmの波長の光を用いる。
【請求項13】
下記工程を含んでなる金属パターンの製造方法:
請求項12に記載の方法でレジストパターンを形成し、
(5a)レジストパターン上に金属層を形成し;
(6a)残ったレジストパターンとそれらの上の金属層を取り除く。
【請求項14】
下記工程を含んでなるパターン基板の製造方法:
請求項12に記載の方法でレジストパターンを形成し、
(5b)レジストパターンをマスクとしてエッチングし;
(6b)基板を加工する。
【請求項15】
下記工程を含んでなるパターン基板の製造方法:
請求項12に記載の方法でレジストパターンを形成し、
(5c)レジストパターンをエッチングし;
(5d)基板をエッチングする:
ここで、(5c)と(5d)の工程の組合せが少なくとも2回以上繰り返され;かつ
基板は複数のSi含有層が積層されたものからなり、少なくとも1つのSi含有層は導電性であり、少なくとも1つのSi含有層は電気的に絶縁性である:
好ましくは導電性のSi含有層と、電気的に絶縁性のSi含有層が交互に積層され;または
好ましくはリソグラフィ組成物から形成されるレジスト膜は、0.5~200μmの膜厚である。
【請求項16】
請求項11~15の少なくとも一項に記載の方法を含んでなるデバイスの製造方法:
好ましくは、加工された基板に配線を形成する工程をさらに含んでなり;または
好ましくは、デバイスは半導体素子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ工程において定在波を低減させるためのカルボン酸エステルを含んでなる組成物を使用する方法に関する。また、本発明は、カルボン酸エステルを含んでなるリソグラフィ組成物、ならびにそれを用いたレジストパターンおよびデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化のニーズが高まっており、パターンの微細化が求められている。このようなニーズに対応するために、短波長の、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、極端紫外線(EUV;13nm)、X線、電子線等を用いるリソグラフィープロセスが実用化されつつある。このようなレジストパターンの微細化に対応するべく、微細加工の際にレジストとして用いられる感光性樹脂組成物にも高解像性のものが要求されている。短波長の光で露光することでより微細なパターンを形成することができるが、高い寸法精度が求められる。
例えば、レジスト組成物自体に特定の酸発生剤を含ませることで、レジスト表面の微細な凹凸を抑制させる検討も存在する(特許文献1)。
【0003】
リソグラフィ工程では、レジストを露光し、現像することによって、レジストパターンを形成する。露光時に、レジストへの入射光と、基板や空気界面からの反射光とが、多重干渉して、定在波が発生する現象が知られている。定在波の発生は、パターン寸法精度を低下させる。定在波を低減させるために、レジストの上層および/または下層に反射防止膜を形成する試みが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-125907号公報
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は定在波の影響を受けた場合のネガ型レジストパターンの断面形状を模式図である。
図2図2は、定在波の影響を受けなかった場合のネガ型レジストパターンの断面系状の模式図である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、微細加工を行うケミカルプロセスにおいて酸の動きを制御することに着目した。例えば、リソグラフィプロセスにおいて基板上に反射防止膜を形成し、その上にレジスト膜を形成して露光しても、定在波が残ることがあり、さらなる手法が求められる。また、下層反射防止膜は、レジストパターン形成後に、その除去が必要となるため、プロセス上使用できなかったり、別の手段を講じる必要が生じることがある。
発明者はいまだ改良が求められる1または複数の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる;リソグラフィ工程において定在波を低減する;レジストパターンにおける定在波を低減する;レジストパターン幅の不均一さを抑える;レジストパターンのパターン倒れを抑制する;良い形状のレジストパターンを得る;感度がよいレジスト膜を得る;解像度がよいレジスト膜を得る;より微細なパターンを得る;ケミカルプロセスにおいて酸の動きを制御する;ケミカルプロセスにおいて酸の移動速度を抑制する;リソグラフィ工程の歩留まりを向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リソグラフィ工程において定在波を低減させるために、カルボン酸エステル(A)を含んでなる組成物を使用する方法を提供するものである。
ここで、カルボン酸エステル(A)は式(a)で表され、
【化1】
はC1-10アルキル、または-OR’であり、
は-OR’であり、
’およびR’はそれぞれ独立にC1-20炭化水素であり、
およびRはそれぞれ独立にHまたはC1-10アルキルであり、
とRもしくはR、またはRとRもしくはRが結合し、飽和または不飽和の炭化水素環を形成してもよく、
n1は1または2である:
ただし、n1=1のとき、RまたはR’、およびR’のうちの少なくとも一方がC3-20炭化水素である。
【0008】
本発明によるリソグラフィ組成物は、
カルボン酸エステル(A)および溶媒(B)を含んでなる。
ここで、カルボン酸エステル(A)は式(a)で表され、
【化2】
はC1-10アルキル、または-OR’であり、
は-OR’であり、
’およびR’はそれぞれ独立にC1-20炭化水素であり、
およびRはそれぞれ独立にHまたはC1-10アルキルであり、
とRもしくはR、またはRとRもしくはRが結合し、飽和または不飽和の炭化水素環を形成してもよく、
n1は1または2である:
ただし、n1=1のとき、RまたはR’、およびR’のうちの少なくとも一方がC3-20炭化水素である。
【0009】
本発明による膜の製造方法は、下記工程を含んでなる。
(1)基板の上方に上記のリソグラフィ組成物を適用し;
(2)減圧および又は加熱によりリソグラフィ組成物から膜を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、以下の1または複数の効果を望むことが可能である。
発明者はいまだ改良が求められる1または複数の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる;リソグラフィ工程において定在波を低減する;レジストパターンにおける定在波を低減する;レジストパターン幅の不均一さを抑える;レジストパターンのパターン倒れを抑制する;良い形状のレジストパターンを得る;感度がよいレジスト膜を得る;解像度がよいレジスト膜を得る;より微細なパターンを得る;ケミカルプロセスにおいて酸の動きを制御する;ケミカルプロセスにおいて酸の移動速度を抑制する;リソグラフィ工程の歩留まりを向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について詳細に説明すると以下の通りである。
【0012】
定義
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、本パラグラフに記載の定義や例に従う。
単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
「Cx-y」、「C~C」および「C」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1-6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
添加剤は、その機能を有する化合物そのものをいう(例えば、塩基発生剤であれば、塩基を発生させる化合物そのもの)。その化合物が、溶媒に溶解または分散されて、組成物に添加される態様もあり得る。本発明の一形態として、このような溶媒は溶媒(B)またはその他の成分として本発明にかかる組成物に含有されることが好ましい。
【0013】
<カルボン酸エステルを含んでなる組成物を使用する方法>
本発明は、リソグラフィ工程において定在波を低減させるために、カルボン酸エステル(A)を含んでなる組成物(以下、「本発明に用いられる組成物」ということがある)を使用する方法に関するものである。
好ましくは、本発明に用いられる組成物は、基板の上方に適用され、膜を形成するために使用される。本発明によると、定在波を低減できるので、本発明に用いられる組成物の下層に、下層反射防止膜が形成されていなくてもよい。したがって、下層反射防止膜を形成せずに、本発明に用いられる組成物を適用することも、本発明の好適な一形態である。なお、下層反射防止膜が形成されている場合に、さらなる定在波低減効果を発揮できるので、下層反射防止膜が形成されている場合でも、本発明を用いることができる。本発明の使用方法の組成物は、好適には後述のリソグラフィ組成物である。
【0014】
カルボン酸エステル(A)
カルボン酸エステル(A)(以下、(A)成分ということがある。後述する(B)以降についても同様である)は、式(a)で表される。
【化3】
ここで、
はC1-10アルキル、または-OR’であり;好適にはC1-10アルキルであり;より好適にはC1-5アルキルである。前記C1-5アルキルは、好適にはメチル、エチル、イソプロピル、n-ブチルまたはt-ブチルであり;より好適にはメチルまたはt-ブチルであり;さらに好適にはメチルである。n1=2である場合、Rは-OR’であることが好適である。
は-OR’である。
’およびR’はそれぞれ独立にC1-20炭化水素である。
’は、好適にはC1-5アルキルであり;より好適にはメチルまたはエチルであり;さらに好適にはメチルである。
’は、好適にはC3-20炭化水素であり;より好適にはC3-20アルキル、C6-20アリールまたはC6-20アリールアルキルであり;さらに好適にはイソプロピル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ブチル、n-へプチルまたはベンジルであり;よりさらに好適には、イソプロピル、t-ブチルまたはベンジルである。
理論に拘束されないが、-OR’において、酸素に隣接する隣接する炭素は第三級炭素原子であることが好ましい。これは、第三級炭素原子は脱離しやすく、酸の移動速度を下げることに貢献すると考えられる。
別の態様として、n1=2のとき、R’は好適にはC1-5アルキルであり;より好適にはメチルまたはエチルであり;さらに好適にはメチルである。
およびRはそれぞれ独立にHまたはC1-10アルキルであり;好適にはHまたはC1-5アルキルであり;より好適にはH、メチルまたはt-ブチルであり;さらに好適には共にHである。n1=2のとき、Rは1つのカルボン酸エステル(A)に二度出現するが、これら2つのRは互いに同じでも異なっていても良く;同じであることが好適である。Rも同様である。
とRもしくはR、またはRとRもしくはRが結合し、飽和または不飽和の炭化水素環を形成してもよい。n1=2のとき、n1が付記された(CR-C(=O)-)が二回繰り返され、RとRは二度出現するが、この場合、前記結合は近い方の基と結合することが好適である。例えば、2つのRのうち、Rに近い方のRがRと結合することが好ましい。RとRまたはRが結合しないことが、本発明の好適な態様である。RとRまたはRが結合しないことが本発明の好適な態様である。
n1は1または2であり;好適にはn1=1である。本発明の別の態様として、n1=2も好適である。
n1=1のとき、RまたはR’、およびR’のうちの少なくとも一方がC3-20炭化水素であり;好適にはR’がC3-20炭化水素である。
【0015】
好ましくは、カルボン酸エステル(A)は、式(a1)で表される。
【化4】
ここで、
11はC1-5アルキルであり;好ましくはメチルである。
12はC3-20炭化水素であり;好ましくはC3-7アルキルであり;より好ましくはイソプロピル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ブチルまたはn-へプチルであり;さらに好ましくはイソプロピルまたはt-ブチルであり;よりさらに好ましくはt-ブチルである。R12において酸素に隣接する炭素は第三級炭素原子であることが好ましい。
13およびR14はそれぞれ独立にHまたはC1-5アルキルであり;好ましくはともにHである。
【0016】
本発明を限定する意図はないが、カルボン酸エステル(A)の具体例として以下が挙げられる。式(a)でn1=1の場合、または式(a1)で表されるカルボン酸エステル(A)が該当する。
【化5】
【0017】
本発明の一形態として、カルボン酸エステル(A)は、式(a2)で表される。
【化6】
ここで、
21およびR22はC1-5アルキル、好ましくはメチルまたはエチルであり、
23、R24、R25、およびR26はそれぞれ独立にHまたはC1-5アルキル、好ましくはHであり、より好ましくは全てがHである。
【0018】
本発明を限定する意図はないが、カルボン酸エステル(A)の具体例として以下が挙げられる。式(a)でn1=2の場合、または式(a2)で表されるカルボン酸エステル(A)が該当する。
【化7】
【0019】
下記化合物は本発明のカルボン酸エステル(A)の一例である。下記化合物は式(a)で表すことができる。例えば、n1=2、R=Cアルキル(n-プロピル)、R’=t-ブチル、2つのRは共にH、Rに近いRはメチルであり、Rに近いR=H、Rに近いRとRが結合し飽和の炭化水素環(シクロヘキシル)を形成していると読むことができる。
【化8】
【0020】
理論には拘束されないが、本発明に用いられる組成物がカルボン酸エステル(A)を含むことで、定在波の低減ができるのは、リソグラフィ工程中に組成物中に生じる物質(例えば酸発生剤(D)から生じる酸)の移動速度を抑制することに貢献することによるものと考えられる。
【0021】
溶媒(B)
本発明に用いられる組成物は、好ましくは溶媒(B)を含んでなる。好ましい溶媒(B)は、以降のリソグラフィ組成物に記載するものと同じである。
溶媒(B)を基準としてカルボン酸エステル(A)の含有量は、好ましくは1.0~200質量%であり;より好ましくは2~150質量%であり;さらに好ましくは2.5~120質量%であり;よりさらに好ましくは2.5~50質量%である。
【0022】
膜化成分(C)
本発明に用いられる組成物は、好ましくは膜化成分(C)を含んでなる。好ましい膜化成分(C)は、以降のリソグラフィ組成物に記載するものと同じである。
膜化成分(C)を基準としてカルボン酸エステル(A)含有量は好ましくは10~3,000質量%であり;より好ましくは20~2,000質量%であり;さらに好ましくは30~1000質量%であり;よりさらに好ましくは60~900質量%である。
【0023】
<リソグラフィ組成物>
本発明によるリソグラフィ組成物は、式(a)で表されるカルボン酸エステル(A)および溶媒(B)を含んでなる。
本発明において、リソグラフィ組成物とは、フォトリソグラフィプロセスで用いられる組成物のことをいい、例えば、洗浄、膜形成用途が用いられ、具体的には、レジスト組成物、平坦化膜、下層反射防止膜形成組成物、上層反射防止膜形成組成物、リンス液、レジストリムーバー等が挙げられる。リソグラフィ組成物はプロセスを経た後で、除去されても除去されなくても良く;好適には除去される。リソグラフィ組成物から形成される物は、最終的なデバイスに残らなくても残っても良く;好適には残らない。
本発明によるリソグラフィ組成物は、リソグラフィ膜形成組成物であり、より好ましくはレジスト組成物である。ポジ型でもネガ型でも使用できるが、好ましくはネガ型レジスト組成物である。
また、本発明によるリソグラフィ組成物は、化学増幅型レジスト組成物であることが好ましく、より好ましくは化学増幅型ネガ型レジスト組成物であり、この場合、(A)成分および(B)成分の他に、後述するポリマー、酸発生剤および架橋剤を含んでなることが好ましい。
【0024】
カルボン酸エステル(A)
本発明のリソグラフィ組成物に用いられるカルボン酸エステル(A)は、上記に記載のとおりであり、好ましい形態も上記と同じである。
カルボン酸エステル(A)の含有量は、溶媒(B)を基準として、好ましくは1.0~200質量%であり;より好ましくは2~150質量%であり;さらに好ましくは2.5~120質量%であり;よりさらに好ましくは2.5~50質量%である。
【0025】
溶媒(B)
本発明に用いられる溶媒(B)は、配合される各成分を溶解することができるものであれば特に限定されない。ここで、溶媒(B)には、上記のカルボン酸エステル(A)に該当するものは含まれないものとする。
溶媒(B)は、好ましくは有機溶媒(B1)を含んでなる。溶媒(B)が、溶媒(B1)のみからなることも好適な一態様である。有機溶媒(B1)は、好ましくは、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、またはこれらのいずれの混合物を含んでなる。
溶媒の具体例としては、例えば、水、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール-2,4、2-メチルペンタンジオール-2,4、ヘキサンジオール-2,5、ヘプタンジオール-2,4、2-エチルヘキサンジオール-1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン、エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル(ジ-n-ブチルエーテル、DBE)、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸-n-ブチル(ノルマルブチルアセテート、nBA)、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、γ-ブチロラクトン、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、および1,3-プロパンスルトンが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
溶媒(B)として、好ましくは、PGME、PGMEA、EL、nBA、DBEまたはこれらのいずれかの混合物、より好ましくは、PGME、EL、nBA、DBEまたはこれらのいずれかの混合物である。溶媒(B)としてPGME、PGMEAまたはこれらの混合物も、本発明の他の一形態として好適である。
【0026】
他の層や膜との関係で、溶媒(B)が水を実体的に含まないことも一態様である。例えば、溶媒(B)全体に占める水の量が、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下である。溶媒(B)が水を含まない(0質量%)ことも好適な一形態である。
【0027】
溶媒(B)の含有量は、リソグラフィ組成物を基準として、好ましくは10~98質量%であり;より好ましくは20~98質量%であり;さらに好ましくは30~97質量%であり;よりさらに好ましくは40~95質量%である。
【0028】
カルボン酸エステル(A)、溶媒(B)の、沸点をそれぞれbp、bpとし、25℃1気圧における飽和蒸気圧をそれぞれvpc、vpcとすると、
bp>bp、かつvpc<vpcを満たすことが好ましい。
【0029】
膜化成分(C)
本発明によるリソグラフィ組成物は、好ましくは膜化成分(C)を含んでなる。本発明において、膜化成分(C)とは、形成される膜の少なくとも一部を構成する成分のことをいう。形成される膜が膜化成分(C)のみで構成される必要はない。例えば膜化成分(C)と後述の架橋剤(E)が結合して膜を形成していてもよい。好適な態様として膜化成分(C)は形成される膜の大部分を構成し、例えば膜において体積当たり60%以上を構成する(より好適には70%以上;さらに好適には80%以上;よりさらに好適には90%以上)。
【0030】
膜化成分(C)は、好ましくはポリマー(C1)を含んでなる。本発明の好適な一態様は、膜化成分(C)がポリマー(C1)であることである。
ポリマー(C1)としては、例えばノボラック誘導体、フェノール誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリマレイン酸誘導体、ポリカーボネート誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体が挙げられる。
【0031】
本発明によるリソグラフィ組成物が、レジスト組成物である場合に、ポリマー(C1)が露光等により、アルカリ現像液への溶解性が変化するレジスト組成物として一般に用いられるポリマーであることが好ましい。
本発明によるリソグラフィ組成物が、化学増幅型ポジ型レジスト組成物である場合、ポリマー(C1)は、酸と反応して現像液に対する溶解度が増加するものであることが好ましい。このようなポリマーは、例えば保護基によって保護された酸基を有しており、外部から酸を添加されると、その保護基が脱離して、現像液に対する溶解度が増加するものである。
本発明によるリソグラフィ組成物が、化学増幅型ネガ型レジスト組成物である場合、ポリマー(C1)は、露光により発生した酸を触媒として、例えば、架橋剤により、ポリマー間を架橋させ、現像液に対する溶解度が低下するものであることが好ましい。
このようなポリマーは、リソグラフィ法において一般的に用いられるものから任意に選択することができる。このようなポリマーのうち、下記式(c1)、(c2)および(c3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するものが好ましい。本発明によるリソグラフィ組成物が、化学増幅型ネガ型レジスト組成物である場合、ポリマー(C1)が式(c1)で表される繰り返し単位を少なくとも有することが好ましい。
【0032】
式(c1)で表される繰り返し単位は、以下である。
【化9】
ここで、
c1は、H、C1-5アルキル、C1-5アルコキシ、または-COOHであり、好ましくはHまたはメチルであり、より好ましくはHであり、
c2は、C1-5アルキル(これは、-CH-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり、好ましくは、メチル、エチルまたはメトキシであり、より好ましくはメチルであり、
m1は、0~4の数であり、好ましくは0であり、かつ
m2は、1~2の数であり、好ましくは1であり、m1+m2≦5である。
【0033】
式(c1)の具体例は以下である。
【化10】
【0034】
式(c2)で表される構成単位は以下である。
【化11】
ここで、
c3は、H、C1-5アルキル、C1-5アルコキシ、または-COOHであり、好ましくは水素、またはメチルであり、より好ましくは水素である。
c4は、C1-5アルキルまたはC1-5アルコキシ(ここで、アルキル、アルコキシに含まれる-CH-が-O-によって置き換えられていてもよい)であり、より好ましくはC1-5アルコキシ(ここで、アルコキシに含まれる-CH-が-O-によって置き換えられていてもよい)であり、このとき、m3は1であることが好ましい。この態様におけるRc4として、メトキシ、t-ブチルオキシ、および-O-CH(CH)-O-CHCHが挙げられる。
m3は、0~5の数であり、好ましくは0、1、2、3、4または5であり、より好ましくは0または1である。m3が0であることも好適な一態様である。
【0035】
式(c2)の具体例は以下である。
【化12】
【0036】
式(c3)で表される構成単位は以下である。
【化13】
ここで、
c5は、H、C1-5アルキル、C1-5アルコキシ、または-COOHであり、より好ましくはH、メチル、エチル、メトキシ、または-COOHであり、さらに好ましくは水素またはメチルであり、さらにより好ましくはHである。
c6は、C1-15アルキルまたはC1-5アルキルエーテルであり、Rc6は環構造を有していてもよく、好ましくはメチル、イソプロピル、t-ブチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、エチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、メチルアダマンチルまたはエチルアダマンチルであり、より好ましくはt-ブチル、エチルシクロペンチル、エチルシクロヘキシル、またはエチルアダマンチルであり、さらに好ましくはt-ブチルである。
【0037】
式(c3)の具体例は以下である。
【化14】
【0038】
これらの構成単位は、目的に応じて適切に配合されるので、それらの配合比は特に限定されないが、アルカリ現像液対する溶解度が適当になるように配合されるのが好ましい。
これらのポリマーは2種類以上を組合せて用いることもできる。
【0039】
ポリマー(C1)の質量平均分子量(以下、Mwということがある)は、好ましくは500~100,000であり;より好ましくは1,000~50,000であり;さらに好ましくは3,000~20,000であり;よりさらに好ましくは4,000~20,000である。
本発明において、Mwはゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)にて測定することが可能である。同測定では、GPCカラムを摂氏40度、溶出溶媒テトラヒドロフランを0.6mL/分、単分散ポリスチレンを標準として用いることが好適な1例である。
【0040】
膜化成分(C)を基準として、カルボン酸エステル(A)の含有量は、好ましくは10~3,000質量%であり;より好ましくは20~2,000質量%であり;さらに好ましくは30~1,000質量%であり;よりさらに好ましくは60~900質量%である。
膜化成分(C)の含有量は、リソグラフィ組成物を基準として、好ましくは2~40質量%であり;より好ましくは2~30質量%であり;さらに好ましくは3~25質量%であり;よりさらに好ましくは3~20質量%である。
【0041】
ポリマー(C1)中の全ての繰り返し単位数を基準として、式(c1)、(c2)および(c3)で表される繰り返し単位の比率をそれぞれnc1、nc2およびnc3とすると、以下であることが本発明の好適な態様の一つである。
c1=0~100%;より好適には30~100%;さらに好適には50~100%;よりさらに好適には60~100%。
c2=0~100%;より好適には0~70%;さらに好適には0~50%;よりさらに好適には0~40%。
c3=0~50%;より好適には0~40%;さらに好適には0~30%;よりさらに好適には0~20%。式(c3)で表される繰り返し単位を含まない(nc3=0)態様も本発明の別の好適な一態様である。
【0042】
酸発生剤(D)
本発明によるリソグラフィ組成物は、酸発生剤(D)を含んでいてもよい。本発明において、酸発生剤とは、酸発生機能を有する化合物そのものをいう。酸発生剤には、例えば、露光によって酸を発生させる光酸発生剤(PAG)と加熱によって酸を発生させる熱酸発生剤(TAG)が挙げられる。本発明によるリソグラフィ組成物が化学増幅型レジスト組成物である場合に、光酸発生剤を含むことが好ましい。
【0043】
光酸発生剤としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、およびN-スルホニルオキシイミド酸発生剤が挙げられる。代表的な酸発生剤を以下に示すが、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
スルホニウム塩は、カルボン酸塩、スルホン酸塩またはイミドを含むアニオンと、スルホニウムカチオンの塩である。代表的なスルホニウムカチオンとしては、トリフェニルスルホニウム、(4-メチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、(4-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、トリス(4-メチルフェニル)スルホニウム、(4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルスルホニウム、(3-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4-ジ-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4-ジ-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4-ジ-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、(4-フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4-シクロヘキシルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(p-フェニレン)ビス(ジフェニルスルホニウム)、ジフェニル(4-チオフェノキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4-チオフェニルフェニル)スルホニウム、ジフェニル(8-チオフェニルビフェニル)スルホニウム、(4 -tert-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4 -tert-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4-tert-ブトキシフェニル)ビス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル(2-ナフチル)スルホニウム、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4-メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2-オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、およびトリベンジルスルホニウムが挙げられる。代表的なスルホン酸塩としては、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4-(4-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、およびメタンスルホネートが挙げられる。代表的なイミドとしては、ビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブタンスルホニルオキシ)イミド、ビス[パーフルオロ(2-エトキシエタン)スルホニル]イミド、およびN,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミドが挙げられる。代表的なその他のアニオンとしては、3-オキソ-3H-1,2-ベンゾチアゾール-2-イド、1,1-ジオキシド、トリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタンイドおよびトリス[(パーフルオロブチル)スルホニル]メタンイドが挙げられる。フルオロカーボンを含有するアニオンが好ましい。前述の例の組合せに基づくスルホニウム塩が含まれる。
【0045】
ヨードニウム塩は、スルホン酸塩およびイミドを含むアニオンと、ヨードニウムカチオンの塩である。代表的なヨードニウムカチオンとしては、ジフェニルヨードニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-tert-ペンチルフェニル)ヨードニウム、4-tert-ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、および4-メトキシフェニルフェニルヨードニウム等のアリールヨードニウムカチオンが挙げられる。代表的なスルホン酸塩としては、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4-(4-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、およびメタンスルホネートが挙げられる。代表的なイミドとしては、ビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブタンスルホニルオキシ)イミド、ビス[パーフルオロ(2-エトキシエタン)スルホニル]イミド、およびN,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミドが挙げられる。代表的なその他のアニオンとしては、3-オキソ-3H-1,2-ベンゾチアゾール-2-イド、1,1-ジオキシド、トリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタンイドおよびトリス[(パーフルオロブチル)スルホニル]メタンイドが挙げられる。フルオロカーボンを含有するアニオンが好ましい。前述の例の組合せに基づくヨードニウム塩が含まれる。
【0046】
代表的なスルホニルジアゾメタン化合物としては、ビス(エチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1-メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2-メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(パーフルオロイソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2-ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、4-メチルフェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、tert-ブチルカルボニル-4-メチルフェニルスルホニルジアゾメタン、2-ナフチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、4-メチルフェニルスルホニル-2-ナフトイルジアゾメタン、メチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、およびtert-ブトキシカルボニル-4-メチルフェニルスルホニルジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン化合物およびスルホニルカルボニルジアゾメタン化合物が挙げられる。
【0047】
N-スルホニルオキシイミド光酸発生剤としては、イミド骨格とスルホン酸との組合せが挙げられる。代表的なイミド骨格としては、コハク酸イミド、ナフタレンジカルボン酸イミド、フタルイミド、シクロヘキシルジカルボン酸イミド、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド、および7-オキサビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸イミドが挙げられる。代表的なスルホン酸塩としては、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、およびメタンスルホネートが挙げられる。
【0048】
ベンゾインスルホネート光酸発生剤としては、ベンゾイントシレート、ベンゾインメシレート、およびベンゾインブタンスルホネートが挙げられる。
【0049】
ピロガロールトリスルホネート光酸発生剤としては、ピロガロール、フロログルシノール、カテコール、レゾルシノール、およびヒドロキノンが挙げられるが、これらの中で全てのヒドロキシル基は、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、またはメタンスルホネートによって置換されている。
【0050】
ニトロベンジルスルホネート光酸発生剤としては、2,4-ジニトロベンジルスルホネート類、2-ニトロベンジルスルホネート類、および2,6-ジニトロベンジルスルホネート類が挙げられ、代表的にはトリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、およびメタンスルホネートを含むスルホネートが挙げられる。また、有用なのは、ベンジル側のニトロ基がトリフルオロメチルで置換されている、類似のニトロベンジルスルホネート化合物である。
【0051】
スルホン光酸発生剤としては、ビス(フェニルスルホニル)メタン、ビス(4-メチルフェニルスルホニル)メタン、ビス(2-ナフチルスルホニル)メタン、2,2-ビス(フェニルスルホニル)プロパン、2,2-ビス(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン、2,2-ビス(2-ナフチルスルホニル)プロパン、2-メチル-2-(p-トルエンスルホニル)プロピオフェノン、2-シクロヘキシルカルボニル-2-(p-トルエンスルホニル)プロパン、および2,4-ジメチル-2-(p-トルエンスルホニル)ペンタン-3-オンが挙げられる。
【0052】
グリオキシム誘導体の形の光酸発生剤としては、ビス-O-(p-トルエンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(p-トルエンスルホニル)-α-ジフェニルグリオキシム、ビス-O-(p-トルエンスルホニル)-α-ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス-O-(p-トルエンスルホニル)-2,3-ペンタンジオングリオキシム、ビス-O-(p-トルエンスルホニル)-2-メチル-3,4-ペンタンジオングリオキシム、ビス-O-(n-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(n-ブタンスルホニル)-α-ジフェニルグリオキシム、ビス-O-(n-ブタンスルホニル)-α-ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス-O-(n-ブタンスルホニル)-2,3-ペンタンジオングリオキシム、ビス-O-(n-ブタンスルホニル)-2-メチル-3,4-ペンタンジオングリオキシム、ビス-O-(メタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(トリフルオロメタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(1,1,1-トリフルオロエタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(tert-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(パーフルオロオクタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(シクロヘキシルスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(ベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(p-フルオロベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(p-tert-ブチルベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-O-(キシレンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、およびビス-O-(カンファースルホニル)-α-ジメチルグリオキシムが挙げられる。
【0053】
これらの中で、好ましいPAGは、スルホニウム塩類、ヨードニウム塩類、およびN-スルホニルオキシイミド類である。
【0054】
発生した酸の最適なアニオンは、ポリマー中の酸不安定基の切断の容易さのような要因によって変化するが、不揮発性であり、かつ極めて高度には拡散性でないアニオンが一般的に選択される。適当なアニオンとしては、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、4-(4-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸、2,2,2-トリフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、カンファースルホン酸、ジスルホン酸、スルホニルイミド、およびスルホニルメタンイドのアニオンが挙げられる。
【0055】
熱酸発生剤の例は、金属不含のスルホニウム塩およびヨードニウム塩、例えば、強非求核酸のトリアリールスルホニウム、ジアルキルアリールスルホニウム、およびジアリールアルキルスルホニウム塩、強非求核酸のアルキルアリールヨードニウム、ジアリールヨードニウム塩;および強非求核酸のアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム塩である。また、共有結合型(covalent)熱酸発生剤も、有用な添加剤として考えられ、例えばアルキルまたはアリールスルホン酸の2-ニトロベンジルエステル、および熱分解して遊離スルホン酸をもたらすスルホン酸のその他のエステルがある。その例は、ジアリールヨードニウムパーフルオロアルキルスルホネート、ジアリールヨードニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ジアリールヨードニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ジアリールヨードニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、ジアリールヨードニウム第4級アンモニウムパーフルオロアルキルスルホネートである。不安定なエステルの例は、トシル酸2-ニトロベンジル、トシル酸2,4-ジニトロベンジル、トシル酸2,6-ジニトロベンジル、トシル酸4-ニトロベンジル;2-トリフルオロメチル-6-ニトロベンジル4-クロロベンゼンスルホネート、2-トリフルオロメチル-6-ニトロベンジル4-ニトロベンゼンスルホネートなどのベンゼンスルホネート;フェニル4-メトキシベンゼンスルホネートなどのフェノール系スルホネートエステル;第4級アンモニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、および第4級アルキルアンモニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、有機酸のアルキルアンモニウム塩、例えば10-カンファースルホン酸のトリエチルアンモニウム塩である。様々な芳香族(アントラセン、ナフタレン、またはベンゼン誘導体)スルホン酸アミン塩が、米国特許第3,474,054号、第4,200,729号、第4,251,665号、および第5,187,019号に開示されたものも、TAGとして用いることができる。
【0056】
酸発生剤(D)は、2種以上の化合物であってもよい。
【0057】
酸発生剤(D)の含有量は、膜化成分(C)を基準として、好ましくは0.5~20質量%であり;より好ましくは1.0~10質量%であり;さらに好ましくは1.0~5質量%であり;よりさらに好ましくは1.5~4質量%である。
【0058】
架橋剤(E)
本発明によるリソグラフィ組成物は、架橋剤(E)を含んでいてもよい。本発明において、架橋剤とは、架橋機能を有する化合物そのものをいう。架橋剤は、(C)成分の分子内および/または分子間を架橋するものであれば、特に限定されない。
【0059】
架橋剤としては、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物またはウレア化合物、エポキシ化合物、チオエポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基などの二重結合を含む化合物を挙げることができる。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いられる。
エポキシ化合物としては、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテルなどが挙げられる。メラミン化合物としては、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物およびその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1~6個がアシロキシメチル化した化合物またはその混合物が挙げられる。グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物およびその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物およびその混合物が挙げられる。グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がメトキシメチル基化した化合物、またはその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がアシロキシメチル化した化合物またはその混合物が挙げられる。ウレア化合物としてはテトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1~4個のメチロール基がメトキシメチル基化した化合物またはその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。アルケニルエーテル基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどが挙げられる。
【0060】
ヒドロキシ基を含む架橋剤としては、例えば、以下が挙げられる。
【化15】
【0061】
膜形成する際の架橋温度は、好ましくは50~230℃であり、さらに好ましくは80~220℃であり、よりさらに好ましくは80~190℃である。
【0062】
架橋剤(E)の含有量は、膜化成分(C)を基準として、好ましくは3~30質量%であり;より好ましくは5~20質量%である。
【0063】
塩基性化合物(F)
本発明によるリソグラフィ組成物は、塩基性化合物(F)をさらに含むことができる。塩基性化合物(F)は、露光部で発生した酸を中和したり環境影響を抑える効果を有する。
塩基性化合物は、上記の効果の他に、空気中に含まれるアミン成分による膜表面の酸の失活を抑える効果も有する。
【0064】
塩基性化合物(F)は、好ましくは、アンモニア、C1-16の第一級脂肪族アミン、C2-32の第二級脂肪族アミン、C3-48の三級脂肪族アミン、C6-30の芳香族アミン、およびC5-30のヘテロ環アミン、ならびにそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0065】
塩基性化合物の具体例としては、アンモニア、エチルアミン、n-オクチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7、1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン‐5、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが挙げられる。
【0066】
塩基性化合物(F)の分子量は、好ましくは17~500であり、より好ましくは100~350である。
【0067】
塩基性化合物(F)の含有量は、膜化成分(C)を基準として、好ましくは0.01~1.0質量%であり;より好ましくは0.20~0.8質量%であり;さらに好ましくは0.20~0.5質量%である。組成物の保存安定性を考慮すると、塩基性化合物(F)を含まない(0.00質量%)ことも、好適な一形態である。
【0068】
界面活性剤(G)
本発明によるリソグラフィ組成物は、好ましくは界面活性剤(G)を含んでなる。界面活性剤を含むことで、塗布性を向上させることができる。本発明に用いることができる界面活性剤としては、(I)陰イオン界面活性剤、(II)陽イオン界面活性剤、または(III)非イオン界面活性剤を挙げることができ、より具体的には(I)アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸、およびアルキルベンゼンスルホネート、(II)ラウリルピリジニウムクロライド、およびラウリルメチルアンモニウムクロライド、ならびに(III)ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアセチレニックグリコールエーテル、フッ素含有界面活性剤(例えば、フロラード(スリーエム)、メガファック(DIC)、スルフロン(旭硝子)、および有機シロキサン界面活性剤(例えば、KF-53、KP341(信越化学工業))が挙げられる。
【0069】
これら界面活性剤は、単独で、または2種以上混合して使用することができる。界面活性剤(G)の含有量は、膜化成分(C)を基準として、好ましくは0.05~0.5質量%であり;より好ましくは0.09~0.2質量%である。
【0070】
添加物(H)
本発明によるリソグラフィ組成物は、(A)~(G)成分以外の添加物(H)を含むことができる。添加物(H)は、好ましくは、可塑剤、染料、コントラスト増強剤、酸、ラジカル発生剤、基板密着増強剤、消泡剤、またはこれらいずれかの混合を含んでなる。
添加物(H)の含有量(複数の場合、その和)は、組成物を基準として、好ましくは0.1~20質量%であり;より好ましくは0.1~10質量%であり;さらに好ましくは1~5質量%である。本発明による組成物が、添加剤(H)を含まない(0.0質量%)ことも、本発明の形態の一つである。
【0071】
<膜の製造方法>
本発明による膜の製造方法は、下記の工程を含んでなる。
(1)基板の上方に本発明によるリソグラフィ組成物を適用し;
(2)減圧および/または加熱によりリソグラフィ組成物から膜を形成する。
以降において、()内の数字は工程の順番を示す。例えば、(1)、(2)、(3)の工程が記載されている場合、工程の順番は前記の通りになる。
本発明において、膜は、乾燥または硬化されたものであって、例えばレジスト膜を包含するものである。
本発明によれば、膜形成時に、定在波による影響を低減できるので、リソグラフィ組成を適用する前に、基板の上方に反射防止膜(例えば、レジスト下層反射防止膜)を形成していなくてもよい。リソグラフィ組成物の下に反射防止膜が形成されると、その除去が必要になることや、製造工程がより簡易になるという理由から、リソグラフィ組成物の下層に反射防止膜を形成されていない方が好ましい。
【0072】
以下、本発明による製造方法の一態様について説明する。
基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、シリコンウェハ基板、ガラス基板およびITO基板等)の上方に、適当な方法により本発明によるリソグラフィ組成物を適用する。ここで、本発明において、上方とは、直上に形成される場合および他の層を介して形成される場合を含む。例えば、基板の直上に、平坦化膜を形成し、その平坦化膜の直上に本発明による組成物が適用されていてもよい。適用方法は特に限定されないが、例えばスピナー、コーターによる塗布による方法が挙げられる。塗布後、減圧および/または加熱することにより本発明による膜が形成される。加熱を行わず、基板を高速で回転させ、溶媒を蒸発させることで膜が形成されていてもよい。本発明によるリソグラフィ組成物が、レジスト組成物である場合に、加熱は、例えばホットプレートによって行われる。加熱温度は、好ましくは80~250℃;より好ましくは80~200℃;さらに好ましくは90~180℃である。加熱時間は、好ましくは30~600秒間;より好ましくは30~300秒間;さらに好ましくは60~180秒間である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
レジスト膜の膜厚は、露光波長によって異なるが、好ましくは100~50,000nmである。露光がKrFエキシマレーザーを用いる場合、レジスト膜の膜厚は、好ましくは100~5,000nmであり;より好ましくは100~1,000nmであり;さらに好ましくは400~600nmである。
【0073】
本発明によるリソグラフィ組成物がレジスト組成物である場合、本発明によるレジストパターンの製造方法は、以下の工程を含んでなる。
上記に記載の方法でリソグラフィ組成物を用いて膜を形成し、
(3)放射線で膜を露光し、
(4)膜を現像し、レジストパターンを形成する。
【0074】
レジスト組成物を用いて形成された膜は、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光に用いられる光の波長は特に限定されないが、波長が13.5~365nmの光で露光することが好ましい。具体的には、i線(波長nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、および極紫外線(波長13.5nm)等を使用することができ、好ましくはKrFエキシマレーザーである。これらの波長は±1%の範囲を許容する。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱の温度は好ましくは80~150℃、より好ましくは100~140℃であり、加熱時間は0.3~5分間、好ましくは0.5~2分間である。
露光された膜に、現像液を用いて現像が行なわれる。用いられる現像液として、好ましくは2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液である。現像液の温度は好ましくは5~50℃、より好ましくは25~40℃、現像時間は好ましくは10~300秒、より好ましくは30~60秒である。
このような現像液を用いることで、膜を室温で容易に溶解除去することができる。さらに、これらの現像液に例えば界面活性剤を加えることもできる。
ネガ型レジスト組成物を利用した場合、未露光部分のポジ型フォトレジスト層が現像によって除去され、レジストパターンが形成される。このレジストパターンに、例えばシュリンク材料を用いることでさらに微細化することも可能である。
【0075】
図1が、定在波の影響を受けた場合のネガ型レジストパターンの断面形状を模式図である。基板2上に、レジストパターン1が形成されている。このように断面に振幅の大きい波形形状が形成されると、少しの膜厚の差で、レジストトップ形状が大きく変動してしまい、寸法精度が悪くなるので、このような振幅は小さい方が好ましい。ここで、基板とレジストパターンが接するところから、上方に向けて、レジストパターンの太さが極大となる最初の点を腹3とし、その直上のレジストパターンの太さが極小となっている点を節4とする。そして、腹と節の基板と平行方向の距離を腹節間距離5という。この腹節間距離が小さいことが好ましく、具体的には、腹節間距離/目的とするパターン幅(以下、定在波指数ということがある)が、10%未満であることがこのましく、より好ましくは5%以下である。ここで、目的とするパターン幅は、定在波の影響を受けないと想定した場合の、レジストのトップの幅のことであってよい。レジストパターンに現れる定在波を低減することで、目的と異なる形状となったり、切れ込みができることにより、パターン倒れを抑制し、より微細なパターンを安定的に形成しやすくなる。
図2は、定在波の影響を受けなかった場合のネガ型レジストパターンの断面形状の模式図である。ネガ型レジストでは、露光によって発生した酸を媒介して、ポリマーが不溶化するため、下方には光が届きにくく酸の発生が上方より少なく、下方が上方に比べて不溶化しにくい。そのため、形成されたパターンは、逆テーパー形状になる傾向がある。図2では、腹および節は存在せず、この場合、定在波指数は0とみなす。
【0076】
本発明による金属パターンの製造方法は、
上記に記載の方法でレジストパターンを形成し、
(5a)レジストパターン上に金属層を形成し;
(6a)残ったレジストパターンとそれらの上の金属層を取り除く
ことを含んでなる。(1)から(4)の工程に続いて、(5a)、(6a)の工程が行われる。工程の順番は前期の通りになる。
金属層の形成は、金、銅等の金属(金属酸化物等であってもよい)を、例えば蒸着またはスパッリングによって形成させる。その後、レジストパターンをその上部に形成された金属とともに、剥離液を用いて除去することで、金属パターンを形成することができる。剥離液は、レジストの剥離液として用いられているものであれば、特に限定されないが、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、アルカリ溶液が使用される。本発明によるレジストがネガ型の場合、上記のように、逆テーパー形状となる傾向がある。逆テーパーであると、レジストパターン上の金属と、レジストパターンが形成されていない部分に形成された金属との間が、隔たっているため、容易に剥離ができる。
【0077】
本発明によるパターン基板の製造方法は、
上記に記載の方法でレジストパターンを形成し、
(5b)レジストパターンをマスクとしてエッチングし;
(6b)基板を加工すること
を含んでなる。エッチングは、ドライエッチングやウェットエッチングのいずれであってもよく、エッチングは複数回行われていてもよい。(1)から(4)の工程に続いて、(5b)、(6b)の工程が行われる。工程の順番は前期の通りになる。
【0078】
また、本発明によるパターン基板の製造方法は、
上記に記載の方法でレジストパターンを形成し、
(5c)レジストパターンをエッチングし;
(5d)基板をエッチングすること
を含んでなる。(1)から(4)の工程に続いて、(5c)、(6d)の工程が行われる。工程の順番は前期の通りになる。
ここで、(5c)と(5d)の工程の組合せが少なくとも2回以上繰り返され;かつ
基板は複数のSi含有層が積層されたものからなり、少なくとも1つのSi含有層は導電性であり、少なくとも1つのSi含有層は電気的に絶縁性である。好ましくは導電性のSi含有層と、電気的に絶縁性のSi含有層が交互に積層される。ここで、リソグラフィ組成物から形成されるレジスト膜の膜厚は、好ましくは0.5~200μmである。
【0079】
その後、必用に応じて、基板にさらに加工がされ、デバイスが形成される。このさらなる加工は、公知の方法を適用することができる。本発明によるデバイスの製造方法は、上記のいずれかの方法を含んでなり、好ましくは、加工された基板に配線を形成する工程をさらに含んでなる。デバイスとしては、半導体素子、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマディスプレイ素子、太陽電池素子が挙げられる。デバイスとは、好ましくは半導体素子である。
【0080】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0081】
以降に使用する成分を以下に示す。
【0082】
使用する(A)成分または比較化合物は以下である。
比較化合物CA:メチルアセトアセテート(東京化成工業、以降TCI)
【化16】
A1:t-ブチルアセトアセテート(TCI)
【化17】
A2:メチル-4,4-ジメチル-3-オキソバレレート(TCI)
【化18】
A3:イソプロピルアセトアセテート(TCI)
【化19】
A4:s-ブチルアセトアセテート(TCI)
【化20】
A5:ジメチル-1,3-アセトンジカルボキシレート(TCI)
【化21】
A6:ジエチル-1,3-アセトンジカルボキシレート(TCI)
【化22】
【0083】
使用する(B)成分は、以下である。
B1:PGMEA
B2:PGME
B3:EL
【0084】
使用する(C)成分は以下である。
C1-1:CST7030ランダムコポリマー(p-ハイドロキシスチレン(70)、スチレン(30))、Mw約9700(丸善石油化学)
【化23】
C1-2:VP-3500、p-ハイドロキシスチレン、Mw約5000(日本曹達)
【化24】
C1-3:Poly-TZ-GIJランダムコポリマー、(p-ハイドロキシスチレン(60)、スチレン(20)、t-ブチルアクリレート)、Mw約12,000(Dupont)
【化25】
【0085】
使用する(D)は以下である。
D1:WPAG367(富士フィルム和光純薬)
【化26】
D2:TPS-SA(東洋合成)
【化27】
D3:TPS-C1(ヘレウス)
【化28】
D4:MDT Sensitizer(ヘレウス)
【化29】
D5:Garo IN-K(DSP五協フード&ケミカル)
【化30】
D6:WPI-169(富士フィルム和光純薬)
【化31】
【0086】
使用する(E)成分は以下である。
E1:DML-POP、本州化学
【化32】
【0087】
使用する(F)成分は以下である。
F1:トリエタノールアミン(TCI)
F2:トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン(TCI)
【0088】
使用する(G)成分は、界面活性剤G1(MegafacR2011、DIC)である。
【0089】
<比較例組成物1の調製>
溶媒B1(65.1g)と溶媒B2(27.9g)を混合し、B1B2混合溶媒を調製する。これにC1-1を3.710g、C1-2を2.474g、E1を0.577g、D1を0.127g、D2を0.106gおよびG1を0.006gをそれぞれ添加する。常温で溶液を混合し、目視で固形成分が溶解することを確認する。比較例組成物1を得る。
【0090】
<実施例組成物1~8および比較例組成物2~3の調製>
以下の表1および2に記載のように成分を変更する以外は比較例組成物1の調整例と同様に、実施例組成物1~8、比較例組成物2~3を調製する。
【表1】
【表2】
【0091】
<レジストパターン形成例1>
シリコン基板(SUMCO Corp., 8インチ)の表面にAZ KrF-17B(Merck Performance Materials株、以下MPMとする)をスピン塗布し180℃で60秒ソフトベークを行い、45nmのBARC膜を形成する。その上に実施例組成物をスピン塗布し、110℃で60秒ソフトベークして、膜厚235nmのレジスト膜を同基板上に形成する。この構成によってKrF線(248nm)の光反射率が7%となるようにしている。得られた基板を露光装置(キヤノン、FPA-3000EX5)を用いてKrF線で露光を行う。露光マスクは、ライン:スペース=1:1、スペースが1.0μmが複数回続き、同スペースが以下のように順次小さくなるもの含むマスクを用いる。
1000nm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、280nm、260nm、240nm、220nm、200nm、190nm、180nm、170nm、160nm、150nm、140nm、130nm、120nm、110nm、100nm。
この基板を100℃で60秒間のポストエクスポージャーベーク(PEB)する。その後、レジスト膜を2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて、60秒間パドル現像する。パドル現像液が基板上にパドルされている状態で純水を基板上に流し始め、回転させながらパドル現像液を純水に置換し、2000rpmでスピンドライする。
【0092】
<定在波低減の評価1>
定在波の低減を評価する。上記レジストパターン形成例1で形成するレジストパターンのスペースが150nmに対応するパターンを観察する。基板から切片を作成し、SEM(SU8230、Hitachi High-Technologies)で観察を行う。上記で定義した腹節間距離を測長する(Offline CD Measurement Software Version 6.00, Hitachi High-Technologies)。腹節間距離を目的とするパターン幅で割り、定在波指数を算出する。以下の評価基準によって評価する。
A:定在波指数が0%以上5%以下
B:定在波指数が5%より大きく10%未満
C:定在波指数が10%以上
【0093】
<最小寸法の評価1>
上記レジストパターン形成例1で形成するレジストパターンの最小寸法を評価する。大きなパターンからパターン倒れがないかを確認し、段々と小さなパターンへと観察対象を移す。パターン倒れが確認できる直前のパターン(倒れていないパターン)を最小寸法とする。得られた結果は表3および4のとおりである。
【表3】
【表4】
比較組成物1で示されるように、BARCを有する場合であっても定在波が完全には防げない条件の試験を行っている。
【0094】
<現像液溶解性(ADR)評価>
実施例組成物1、5、および7をそれぞれシリコン基板に塗布し110℃で60秒ソフトべークし膜厚が235nmになるように調製する。その後露光せずに100℃で60秒間ベークしレジスト膜を2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて、パドル現像し、目視にて膜が溶解するまでの時間を測定する。実施例組成物1、5、および7の評価結果は、それぞれ50秒、33秒、および51秒である。
【0095】
<実施例組成物9の調整例9、比較例組成物4の比較調製例4>
以下の表5に記載のように成分を変更する以外は比較組成物1の調整と同様に、実施例組成物9、比較例組成物4を調製する。
【表5】
【0096】
<レジストパターン形成例2>
シリコン基板(SUMCO Corp.,8インチ)の表面を最初に1、1、1、3、3、3-ヘキサメチルジシラザン溶液を用いて90℃で60秒間処理し、BARC膜を形成せず、かつ形成するレジスト膜の膜厚を800nmにし、この構成によってKrF線(248nm)の光反射率が53%となるようにしている以外は、上記のレジストパターン形成例1と同様にして、レジストパターンを形成する。
【0097】
<定在波低減の評価2>
レジストパターン形成例2で形成したレジストパターンについて、300nmに対応するパターンを観察する以外は、上記の定在波低減の評価1と同様にして、定在波低減の評価を行う。
【0098】
<最小寸法の評価2>
レジストパターン形成例2で形成するレジストパターンについて、最小寸法の評価1と同様にして、最小寸法の評価を行う。得られた結果は表6のとおりである。
【表6】
【0099】
<比較例組成物5の調製>
溶媒B2(54.53g)と溶媒B3(23.37g)を混合し、B2B3混合溶媒を調製する。これにC1-3を21.539g、D2を0.052g、D3を0.065g、D5を0.226g、D6を0.129g、F2を0.057gおよびG1を0.033gをそれぞれ添加する。常温で溶液を混合し、目視で固形成分が溶解することを確認する。比較例組成物5を得る。
【0100】
<実施例組成物10の調製>
以下の表に記載のように成分を変更する以外は比較組成物5の調製と同様に、実施例組成物10を調製する。
【表7】
【0101】
<レジストパターン形成例3>
シリコン基板(SUMCO Corp.,8インチ)の表面を最初に1、1、1、3、3、3-ヘキサメチルジシラザン溶液を用いて90℃で60秒間処理し、BARC膜を形成せず、かつ形成するレジスト膜の膜厚を800nmにし、この構成によってKrF線(248nm)の光反射率が53%となるようにし、110℃で60秒間露光後加熱を行う以外は、上記のレジストパターン形成例1と同様にして、レジストパターンを形成する。
【0102】
<定在波低減の評価3>
レジストパターン形成例3で形成したレジストパターンについて、400nmに対応するパターンを観察する以外は、上記の定在波低減の評価1と同様にして、定在波低減の評価を行う。得られた結果は表8のとおりである。
【0103】
<最小寸法の評価3>
レジストパターン形成例3で形成するレジストパターンについて、最小寸法の評価1と同様にして、最小寸法の評価を行う。得られた結果は表8のとおりである。
【表8】
【符号の説明】
【0104】
1.基板
2.定在波の影響を受けたレジストパターン
3.腹
4.節
5.腹節間距離
11.基板
12.定在波の影響を受けていないレジストパターン
図1
図2