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特開2022-25606液晶組成物、光学異方性層及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025606
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】液晶組成物、光学異方性層及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220203BHJP
   C08F 36/20 20060101ALI20220203BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G02B5/30
C08F36/20
G02F1/13363
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128521
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 学
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
4J100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB06
2H149AB14
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA18
2H149DB02
2H149FA24Y
2H149FA33Y
2H149FD22
2H291FA22
2H291FA30
2H291FA40
2H291FB04
2H291FB05
2H291FC32
2H291FC33
2H291PA53
2H291PA84
4J100AJ08P
4J100AS13P
4J100AS23P
4J100BA02P
4J100BA15P
4J100BA31P
4J100BA40P
4J100BC04P
4J100BC43P
4J100BC83P
4J100CA04
4J100DA66
4J100HA49
4J100HE22
4J100JA39
(57)【要約】
【課題】逆波長分散特性を有する光学異方性層を製造するための液晶組成物であって紫外線の照射によるReの上昇を抑制することができるものを提供する。
【解決手段】逆波長分散性液晶化合物と、光異性化物質とを含む液晶組成物であり、前記光異性化物質は、trans-cis異性化を起こす物質であり、且つ、50℃から150℃の間でネマチック液晶相を呈する物質であり、前記光異性化物質の分子量は1000以下であり、前記液晶組成物における前記光異性化物質の含有割合が、前記逆波長分散性液晶化合物及び前記光異性化物質の合計100重量部に対して、1重量部以上15重量部以下である、液晶組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆波長分散性液晶化合物と、光異性化物質とを含む液晶組成物であり、
前記光異性化物質は、trans-cis異性化を起こす物質であり、且つ、50℃から150℃の間でネマチック液晶相を呈する物質であり、
前記光異性化物質の分子量は1000以下であり、
前記液晶組成物における前記光異性化物質の含有割合が、前記逆波長分散性液晶化合物及び前記光異性化物質の合計100重量部に対して、1重量部以上15重量部以下である、
液晶組成物。
【請求項2】
前記逆波長分散性液晶化合物が、その分子内に、N-N結合、C=N結合又はこれらの両方を有する、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記逆波長分散性液晶化合物が、下記式(I)で表される化合物である、請求項2に記載の液晶組成物:
【化1】
但し、式(I)において、
Arは、下記式(III-2)で表される基を表し、
【化2】
は、水素原子ならびに炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる基を表し、
は、水素原子、並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基からなる群より選ばれる基を表し、
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表し、
及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表し、
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表し、G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよく、ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはなく、
及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表し、
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
【請求項4】
前記逆波長分散性液晶化合物が、下記式(A-1)で表される化合物である、請求項3に記載の液晶組成物。
【化3】
【請求項5】
前記逆波長分散性液晶化合物及び前記光異性化物質が重合性基を含み、前記逆波長分散性液晶化合物及び前記光異性化物質が共重合可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
前記光異性化物質が、下記式(W-I)で表される化合物、下記式(W-II)で表される化合物、又はこれらの混合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶組成物:
【化4】
但し、式(W-I)及び式(W-II)において、
RWは、下記式(RW)で表される基を表し、
RWは、シアノ基、p-シアノフェニルカルボニルオキシ基、又は下記式(RW’)で表される基を表し、
RWは、下記式(RW)で表される基を表し、
RWは、下記式(RW)で表される基を表し、
-W-(CH)nw-Wa ・・・(RW
-W-O-(CH)nw-Wb ・・・(RW’)
-W-O-(CH)nw-Wc ・・・(RW
-W-O-(CH)nw-Wd ・・・(RW
は、単結合又は-WD1-O-で表される基であり、
D1は、無置換又は1以上の置換基Wを有する、フェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニレン基であり、
前記置換基Wは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1~3のアルキル基、炭素原子数1~3のアルコキシ基、又はニトロ基であり、
nwは、2~8の整数であり、
a~Wdのそれぞれは、独立して、水素原子又は重合性基であり、
は、単結合又は-O-C(=O)-WD1-で表される基であり、
nwは、1~8の整数であり、
は、単結合、-C(=O)-又は-WD2-WD1-で表される基であり、
D2は、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。
【請求項7】
下記要件(i)及び(ii)の一方又は両方を満たす、請求項6に記載の液晶組成物:
要件(i):前記光異性化物質として、前記式(W-I)で表される化合物を含み、Wa及びWbの一方又は両方が重合性基である、
要件(ii):前記光異性化物質として、前記式(W-II)で表される化合物を含み、Wc及びWdの一方又は両方が重合性基である。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の液晶組成物の硬化物である、光学異方性層。
【請求項9】
光学異方性層の製造方法であって、
基材の一方の表面上に、請求項1~7のいずれか1項に記載の液晶組成物の塗膜を形成し、基材及び塗膜を含む複層物を得る工程(S1)、及び
前記塗膜を硬化させ、光学異方性層を形成する工程(S2)を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性層を製造するための液晶組成物、光学異方性層及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差フィルム等の光学部材を構成するための材料として、光学異方性層、即ち層状の構造を有する構造物であって、光学異方性を有するものが用いられる。
【0003】
光学異方性層の製造方法の一例として、液晶化合物を含む液晶組成物を、配向させ、硬化する方法が知られている(例えば特許文献1~3)。光学異方性を有する材料の多くは所謂順波長分散性を有する一方、液晶組成物の硬化物のうちのある種のものは、所謂逆波長分散性を有し、光学材料として有利に用いうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/065243号
【特許文献2】国際公開第2014/069515号
【特許文献3】国際公開第2018/016567号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶組成物を用いて形成された光学異方性層は、その耐久性が不足する場合がある。例えば、光学異方性層の使用環境において、光学異方性層に長期間紫外線が照射されると、光学異方性層の位相差が変化することがある。例えば、逆波長分散性液晶化合物のある種のものを用いて製造した、逆波長分散特性を有する光学異方性層の場合、紫外線の照射の結果、その面内レターデーションReが不所望に上昇するという現象が発生する場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、逆波長分散特性を有する光学異方性層を製造するための液晶組成物であって、使用環境において紫外線の照射を受けることによるReの上昇を抑制することができるものを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、使用環境において紫外線の照射を受けることによるReの上昇が抑制された光学異方性層、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するべく検討する過程において、何らかの添加剤を加えて、光学異方性層の使用環境においてReの上昇を抑制することを着想した。そして、液晶組成物に、特定の光異性化物質を加えることにより、Reの上昇を抑制することができる一方、光学異方性層の逆波長分散特性を大きく損なうことが無いことを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明によれば、以下のものが提供される。
【0008】
〔1〕 逆波長分散性液晶化合物と、光異性化物質とを含む液晶組成物であり、
前記光異性化物質は、trans-cis異性化を起こす物質であり、且つ、50℃から150℃の間でネマチック液晶相を呈する物質であり、
前記光異性化物質の分子量は1000以下であり、
前記液晶組成物における前記光異性化物質の含有割合が、前記逆波長分散性液晶化合物及び前記光異性化物質の合計100重量部に対して、1重量部以上15重量部以下である、
液晶組成物。
〔2〕 前記逆波長分散性液晶化合物が、その分子内に、N-N結合、C=N結合又はこれらの両方を有する、〔1〕に記載の液晶組成物。
〔3〕 前記逆波長分散性液晶化合物が、下記式(I)で表される化合物である、〔2〕に記載の液晶組成物:
【化1】
但し、式(I)において、
Arは、下記式(III-2)で表される基を表し、
【化2】
は、水素原子ならびに炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる基を表し、
は、水素原子、並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基からなる群より選ばれる基を表し、
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表し、
及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表し、
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表し、R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表し、G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよく、ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはなく、
及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表し、
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
〔4〕 前記逆波長分散性液晶化合物が、下記式(A-1)で表される化合物である、〔3〕に記載の液晶組成物。
【化3】
〔5〕 前記逆波長分散性液晶化合物及び前記光異性化物質が重合性基を含み、前記逆波長分散性液晶化合物及び前記光異性化物質が共重合可能である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
〔6〕 前記光異性化物質が、下記式(W-I)で表される化合物、下記式(W-II)で表される化合物、又はこれらの混合物である、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の液晶組成物:
【化4】
但し、式(W-I)及び式(W-II)において、
RWは、下記式(RW)で表される基を表し、
RWは、シアノ基、p-シアノフェニルカルボニルオキシ基、又は下記式(RW’)で表される基を表し、
RWは、下記式(RW)で表される基を表し、
RWは、下記式(RW)で表される基を表し、
-W-(CH)nw-Wa ・・・(RW
-W-O-(CH)nw-Wb ・・・(RW’)
-W-O-(CH)nw-Wc ・・・(RW
-W-O-(CH)nw-Wd ・・・(RW
は、単結合又は-WD1-O-で表される基であり、
D1は、無置換又は1以上の置換基Wを有する、フェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニレン基であり、
前記置換基Wは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1~3のアルキル基、炭素原子数1~3のアルコキシ基、又はニトロ基であり、
nwは、2~8の整数であり、
a~Wdのそれぞれは、独立して、水素原子又は重合性基であり、
は、単結合又は-O-C(=O)-WD1-で表される基であり、
nwは、1~8の整数であり、
は、単結合、-C(=O)-又は-WD2-WD1-で表される基であり、
D2は、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。
〔7〕 下記要件(i)及び(ii)の一方又は両方を満たす、〔6〕に記載の液晶組成物:
要件(i):前記光異性化物質として、前記式(W-I)で表される化合物を含み、Wa及びWbの一方又は両方が重合性基である、
要件(ii):前記光異性化物質として、前記式(W-II)で表される化合物を含み、Wc及びWdの一方又は両方が重合性基である。
〔8〕 〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の液晶組成物の硬化物である、光学異方性層。
〔9〕 光学異方性層の製造方法であって、
基材の一方の表面上に、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の液晶組成物の塗膜を形成し、基材及び塗膜を含む複層物を得る工程(S1)、及び
前記塗膜を硬化させ、光学異方性層を形成する工程(S2)を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、逆波長分散特性を有する光学異方性層を製造するための液晶組成物であって、使用環境において紫外線の照射を受けることによるReの上昇を抑制することができるものが提供される。
本発明によればさらに、使用環境において紫外線の照射を受けることによるReの上昇が抑制された光学異方性層、及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは層の厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0012】
以下の説明において、別に断らない限り、ある層の「逆波長分散特性」とは、波長450nmにおける面内レターデーションRe(450)、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)、及び、波長650nmにおける面内レターデーションRe(650)が、下記の式(1)を満たす特性をいう。逆波長分散特性を有する材料の層は、好ましくは下記式(1)及び式(2)の両方を満たす。さらに、逆波長分散特性が高い層とは、Re(450)/Re(550)の値が小さい層であることを意味する。
Re(450)/Re(550)<1.00 (1)
Re(650)/Re(550)>1.00 (2)
【0013】
以下の説明において、別に断らない限り、ある層の「順波長分散特性」とは、Re(450)、Re(550)、及びRe(650)が、下記の式(1’)を満たす特性をいう。順波長分散特性を有する材料の層は、好ましくは下記式(1’)及び式(2’)の両方を満たす。
Re(450)/Re(550)>1.00 (1’)
Re(650)/Re(550)<1.00 (2’)
【0014】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0015】
〔1.液晶組成物〕
本発明の液晶組成物は、逆波長分散性液晶化合物と、光異性化物質とを含む。
【0016】
〔2.逆波長分散性液晶化合物〕
逆波長分散性液晶化合物とは、逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物である。即ち、逆波長分散性液晶化合物とは、当該液晶化合物の層を形成し、その層において液晶化合物を配向させた際に、逆波長分散性の複屈折を発現する液晶化合物をいう。
【0017】
これに対し、順波長分散性液晶化合物とは、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物である。即ち、順波長分散性液晶化合物とは、当該液晶化合物の層を形成し、その層において液晶化合物を配向させた際に、順波長分散性の複屈折を発現する液晶化合物をいう。
【0018】
通常は、液晶化合物をホモジニアス配向させた場合に、液晶化合物の層が示す複屈折の波長分散性を調べることで、その液晶化合物が示す複屈折の波長分散性を確認できる。液晶化合物をホモジニアス配向させる、とは、当該液晶化合物を含む層を形成し、その層における液晶化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向を、前記層の面に平行なある一の方向に配向させることをいう。
【0019】
具体的には、液晶化合物が、逆波長分散性であることは、下記の方法により確認しうる。
(1)液晶化合物、界面活性剤、及び溶媒を含む液晶組成物を調製する。
(2)配向規制力が表面に付与された基材に、液晶組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥させて、液晶化合物の層を形成する。
(3)必要に応じて液晶化合物の層を加熱して、液晶化合物の層において液晶化合物を配向させて、液晶化合物の層の、波長450nm、550nm、及び650nmにおける面内レターデーションRe(450)、Re(550)、及びRe(650)を測定し、Re(450)/Re(550)<1.00であること(又は、Re(450)/Re(550)<1.00であり且つRe(650)/Re(550)>1.00であること)を確認する。
【0020】
逆波長分散性液晶化合物は、好ましくは、重合性の液晶化合物である。重合性の液晶化合物とは、液晶相を呈した状態で、液晶組成物中で重合し、液晶相における分子の配向を維持したまま重合体となりうる液晶化合物である。逆波長分散性液晶化合物として重合性の液晶化合物を採用することにより、液晶組成物を用いた固体の光学異方性層の製造を、容易に行うことができる。
【0021】
逆波長分散性液晶化合物は、好ましくは、その分子内に、N-N結合、C=N結合又はこれらの両方を有し、より好ましくはこれらの両方を有する。このような結合を有する逆波長分散性液晶化合物は、本発明に有用に使用しうる。
逆波長分散性液晶化合物の分子構造は、主鎖メソゲンと、主鎖メソゲンとは異なる方向に配向しうる側鎖メソゲンとを有しうる。この場合、主鎖メソゲンと側鎖メソゲンとの結合部分、又は側鎖メソゲン内にN-N結合、C=N結合又はこれらの両方を有する場合、良好な逆波長分散性を呈しうる一方、紫外線の照射を受けてかかる結合が切断されることによるReの上昇が発生し易い。したがって、主鎖メソゲンと側鎖メソゲンとの結合部分、又は側鎖メソゲン内にN-N結合、C=N結合又はこれらの両方を有する逆波長分散性液晶化合物は、本発明に特に有用に使用しうる。逆波長分散性液晶化合物のより具体的な例は、後述する。
【0022】
逆波長分散性液晶化合物としては、1種類の化合物を単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0023】
逆波長分散性液晶化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、特に好ましくは800以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。このような範囲の分子量を有する逆波長分散性液晶化合物を用いることにより、所望の配向を容易に得ることができる。
【0024】
〔3.光異性化物質〕
本発明に用いる光異性化物質は、trans-cis異性化を起こす物質である。具体的には、光異性化物質は、その分子構造内に、C=C結合を有するトランス体、シス体又はこれらの混合物であり、且つ、紫外線の照射によりトランス体とシス体との割合が変化し、その結果光学的性質が変化する物質である。液晶組成物が、かかる性質を有する物質を含むことにより、光学異方性層の使用環境におけるReの上昇を抑制することができる。
【0025】
本発明に用いる光異性化物質は、50℃から150℃の間でネマチック液晶相を呈する。即ち、光異性化物質は、50℃から150℃の間のある温度領域において、ネマチック液晶相を呈する。光異性化物質として、かかる性質を有する物質を使用することにより、逆波長分散性液晶化合物との良好な相溶性を得ることができ、その結果、逆波長分散性液晶化合物の良好な配向を達成しうる。加えて、液晶組成物を硬化させた際に、逆波長分散性液晶化合物と光異性化物質との均質な共重合体を形成することができ、その結果、使用環境において紫外線の照射を受けることによるReの上昇を、さらにより良好に抑制することができる。
【0026】
光異性化物質が50℃から150℃の間でネマチック液晶相を呈しうるか否かは、光異性化物質を、水平な支持体の上に置き、温度を変化させ、その状態を観察することにより判定しうる。具体的には、ホットプレート上に水平に載置されたガラス板等の適切な支持体の上面に、光異性化物質を滴下し層状に展開し、温度を50℃から150℃の間で昇温又は降温させ、層がネマチック液晶相を呈するか否かを適切な手段により観察することにより、判定を行いうる。光異性化物質は、50℃から150℃の間でネマチック液晶相を呈する限りにおいて、これより低い温度範囲又は高い温度範囲においてもネマチック液晶相を呈してもよい。
【0027】
光異性化物質の分子量は1000以下であり、好ましくは800以下である。かかる低分子量の光異性化物質を使用した場合、液晶組成物における相分離等の不所望な現象を発現させることなく、Reの上昇抑制に必要な割合の光異性化物質を添加することができる。分子量の下限は、特に限定されないが例えば300以上としうる。
【0028】
液晶組成物における光異性化物質の含有割合は、逆波長分散性液晶化合物及び光異性化物質の合計100重量部に対して、1重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、一方15重量部以下、好ましくは10重量部以下である。光異性化物質の含有割合が前記下限以上であることにより、Reの上昇抑制の好ましい効果を得ることができ、一方前記上限以下であることにより、光学異方性層の良好な逆波長分散特性を得ることができ、且つ、光学異方性層の過度のRe低下を防止することができ光学異方性層の良好な耐久性を実現できる。
【0029】
光異性化物質は、その分子構造内に、重合性基を有することが好ましい。重合性基を有することにより、強度が高く、且つ、耐熱性等の観点における耐久性が高い光学異方性層を容易に得ることができる。重合性基の例としては、(メタ)アクリロイルオキシ基(即ちCH=CH-CO-O-、CH=C(-CH)-CO-O-、又はこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0030】
逆波長分散性液晶化合物と光異性化物質とは共重合可能であることが特に好ましい。即ち、逆波長分散性液晶化合物が重合性基を有する重合性液晶化合物であり、且つ光異性化物質の重合性基は、重合性液晶化合物の重合性基と共重合可能なものであることが、特に好ましい。具体的には、逆波長分散性液晶化合物及び光異性化物質の両方が、重合性基として(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。逆波長分散性液晶化合物と光異性化物質とが共重合可能であることにより、様々な利点が得られる。例えば、液晶組成物における、逆波長分散性液晶化合物と光異性化物質とが良好に配向した状態で、重合反応によりかかる配向を維持したままこれらを固定化することが可能となる。加えて、光学異方性層の使用環境におけるReの上昇の抑制を、層内で均一に発現することができる。さらには、光学異方性層の耐熱性を良好なものとすることができる。
【0031】
光異性化物質としては、1種類の化合物を単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0032】
光異性化物質は、下記式(W-I)で表される化合物、下記式(W-II)で表される化合物、又はこれらの混合物であることが好ましい。これらはいずれもトランス体であり、紫外線の照射によりこれらの一部又は全部がシス体に変化し、その結果光学的性質が変化する物質である。以下の説明において、式(W-I)で表される化合物をシンナメート誘導体(W-I)、式(W-II)で表される化合物をスチルベン誘導体(W-II)という場合がある。
【0033】
【化5】
【0034】
式(W-I)及び式(W-II)において、RWは、下記式(RW)で表される基を表し、RWは、シアノ基、p-シアノフェニルカルボニルオキシ基、又は下記式(RW’)で表される基を表し、RWは、下記式(RW)で表される基を表し、RWは、下記式(RW)で表される基を表す。
-W-(CH)nw-Wa ・・・(RW
-W-O-(CH)nw-Wb ・・・(RW’)
-W-O-(CH)nw-Wc ・・・(RW
-W-O-(CH)nw-Wd ・・・(RW
【0035】
は、単結合又は-WD1-O-で表される基であり、WD1は、無置換又は1以上の置換基Wを有するフェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニレン基である。置換基Wは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1~3のアルキル基、炭素原子数1~3のアルコキシ基、又はニトロ基である。WD1は、好ましくは無置換である。フェニレン基はp-フェニレン基であることが好ましい。ナフチレン基は2,6-ナフチレン基であることが好ましい。ビフェニレン基はp-フェニレン基が連結した構造である基であることが好ましい。
【0036】
nwは、2~8の整数である。一分子中に複数の(CH)nwが存在する場合、複数のnwは同一の値であってもよく異なる値であってもよい。nwは好ましくは5~7の整数である。
【0037】
a~Wdのそれぞれは、独立して、水素原子又は重合性基である。液晶組成物がシンナメート誘導体(W-I)を含む場合、Wa及びWbの一方又は両方が重合性基であることが好ましい。液晶組成物がスチルベン誘導体(W-II)を含む場合、Wc及びWdの一方又は両方が重合性基であることが好ましい。シンナメート誘導体(W-I)及び/又はスチルベン誘導体(W-II)が、1分子当たり1以上の重合性基を含むことにより、耐熱性等の観点における耐久性が高い光学異方性層を容易に得ることができる。
【0038】
重合性基の例としては、式(I)で表される化合物(後述)におけるP及びPの例として挙げられるものと同じ基が挙げられ、(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。逆波長分散性液晶化合物が、式(I)で表される化合物である場合、逆波長分散性液晶化合物と光異性化物質とを共重合可能とする観点から、シンナメート誘導体(W-I)及び/又はスチルベン誘導体(W-II)の重合性基は、P及び/又はPと重合可能な基であることが好ましく、一部又は全部がP及び/又はPと同じ基であることがより好ましい。
【0039】
は、単結合又は-O-C(=O)-WD1-で表される基である。nwは、1~8の整数であり、3~6の整数であることが好ましい。Wは、単結合、-C(=O)-又は-WD2-WD1-で表される基であり、WD2は、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。W及びWがWD1を含む場合、その具体例及び好ましい例としてはWにおけるWD1におけるそれらと同じものが挙げられる。
【0040】
合成の容易さの観点からは、スチルベン誘導体(W-II)は対称な分子構造の化合物であることが好ましい。即ち、RW及びRWが同一の構造であることが好ましい。
【0041】
シンナメート誘導体(W-I)におけるRWの具体例としては、下記(RW-a)~(RW-h)が挙げられる。以下の式において、破線が交差した直線は、基が骨格へ結合する結合部位を表す。
【0042】
【化6】
【0043】
【化7】
【0044】
シンナメート誘導体(W-I)におけるRWの具体例としては、下記(RW-a)~(RW-j)が挙げられる。
【0045】
【化8】
【0046】
【化9】
【0047】
スチルベン誘導体(W-II)におけるRW及びRWの具体例としては、下記(RW34-a)~(RW34-p)が挙げられる。
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
【化12】
【0051】
【化13】
【0052】
〔4.任意成分〕
液晶組成物は、上に述べた成分に加えて、任意成分を含みうる。任意成分の種類及び割合は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜選択しうる。かかる任意成分の例としては、界面活性剤、酸化防止剤、各種の有機溶媒等の溶媒、及び重合開始剤が挙げられる。重合開始剤としては、紫外線重合開始剤等の光重合開始剤が、重合の操作が容易である観点から好ましい。
【0053】
〔5.光学異方性層及びその製造方法〕
本発明の光学異方性層は、前記本発明の液晶組成物の硬化物である。本発明の光学異方性層は、
基材の一方の表面上に、前記本発明の液晶組成物の塗膜を形成し、基材及び塗膜を含む複層物を得る工程(S1)、及び
塗膜を硬化させ、光学異方性層を形成する工程(S2)
を含む、製造方法により製造しうる。以下において、この製造方法を、本発明の製造方法として説明する。
【0054】
工程(S1)に用いる基材としては、当該技術分野に応じて一般的に用いられるものを適宜選択しうる。基材は、その表面において配向規制力を有するものとしうる。例えば、延伸処理、ラビング処理等により、その表面に、逆波長分散性液晶化合物の配向方向を規制する規制力を付与したものとしうる。
【0055】
塗膜の形成は、液晶組成物を基材の表面上に塗布することにより行いうる。塗布は、バーコーターによる塗布等の、一般的な液体の塗布方法により行いうる。塗膜の厚みは、製品たる光学異方性層の厚みが所望の厚みとなるよう適宜調整しうる。
【0056】
工程(S1)の後、工程(S2)に先立ち、必要に応じて任意の工程を行いうる。例えば、溶媒の揮発、逆波長分散性液晶化合物の配向の促進等のために、塗膜を加熱し乾燥させる操作を行いうる。
【0057】
工程(S2)としては、使用する液晶組成物の硬化を達成しうる適切な方法を選択しうる。例えば、液晶組成物として、重合性液晶化合物及び必要であれば光重合開始剤を含むものを採用した場合、エネルギー線の照射により、塗膜の硬化を達成しうる。エネルギー線としては、液晶組成物の硬化を達成するのに適したものを適宜選択でき、具体的には紫外光等の光を用いうる。
【0058】
本発明の光学異方性層の厚みは、特に限定されず、用途に応じた位相差を発現できる所望の厚みとしうる。厚みの範囲は、例えば2.3μm~2.8μmの範囲としうる。
【0059】
〔6.光学異方性層の用途〕
本発明の光学異方性層は、位相差フィルムとして用いうる。具体的には、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置における、位相差を有する光学フィルムとして用いうる。例えば、偏光子層と組み合わせて構成された反射防止フィルムとして用いうる。
【0060】
本発明の光学異方性層は、逆波長分散性を有する層としうるため、位相差フィルムとしての機能を、広い視野角において良好に発現しうる等の利点を有する。さらに、本発明の光学異方性層は、使用環境において紫外線の照射を受けることによるReの上昇を抑制することができる。そのため、表示装置の耐久性を向上させることができ、例えば日光の照射を受ける環境下において良好な耐久性を発現させることができる。
【0061】
〔7.逆波長分散性液晶化合物〕
本発明の液晶組成物の成分としての逆波長分散性液晶化合物の具体的な例としては、下記式(I)で表される液晶化合物が挙げられる。式(I)で表される液晶化合物は、通常、逆波長分散性の複屈折を発現できる。
【0062】
【化14】
【0063】
式(I)において、Arは、芳香族複素環、複素環、および芳香族炭化水素環の少なくとも1つを有し、置換されていてもよい、炭素原子数6~67の2価の有機基を表す。芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾピラノン環等が挙げられる。複素環としては、例えば、1,3-ジチオラン環、ピロリジン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族炭化水素環としては、例えば、フェニル環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0064】
Arの好ましい例としては、例えば、下記式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基が挙げられる。式(II-1)~式(II-4)において、*は、Z又はZとの結合位置を表す。また、Arは、ベンゾチアゾール環を有することが好ましい。
【0065】
【化15】
【0066】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、E及びEは、それぞれ独立して、-CR1112-、-S-、-NR11-、-CO-及び-O-からなる群より選ばれる基を表す。また、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、又は、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。中でも、E及びEは、それぞれ独立して、-S-であることが好ましい。
【0067】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、D~Dは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非環状基を表す。D及びDは、一緒になって環を形成していてもよい。D~Dが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、1~100である。
【0068】
~Dにおける非環状基の炭素原子数は、1~13が好ましい。D~Dにおける非環状基としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基;シアノ基;カルボキシル基;炭素原子数1~6のフルオロアルキル基;炭素原子数1~6のアルコキシ基;-C(=O)-CH;-C(=O)NHPh;-C(=O)-OR;が挙げられる。中でも、非環状基としては、シアノ基、カルボキシル基、-C(=O)-CH、-C(=O)NHPh、-C(=O)-OC、-C(=O)-OC、-C(=O)-OCH(CH、-C(=O)-OCHCHCH(CH)-OCH、-C(=O)-OCHCHC(CH-OH、及び-C(=O)-OCHCH(CHCH)-C、が好ましい。前記のPhは、フェニル基を表す。また、前記のRは、炭素原子数1~12の有機基を表す。Rの具体例としては、炭素原子数1~12のアルコキシ基、または、水酸基で置換されていてもよい炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。
【0069】
~Dにおける非環状基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数1~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0070】
は、炭素原子数1~6のアルキル基;並びに、炭素原子数1~6のアルキル基若しくは炭素原子数1~6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0071】
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0072】
における炭素原子数1~20のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは4~10である。Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、およびn-イコシル基等が挙げられる。
【0073】
における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;及び、ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0074】
における炭素原子数2~20のアルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2~12である。Rにおける炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、およびイコセニル基等が挙げられる。
【0075】
における炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0076】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が好ましい。
【0077】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0078】
における炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基が好ましい。
【0079】
における炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;ニトロ基;フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0080】
及びDが一緒になって環を形成している場合、前記のD及びDによって環を含む有機基が形成される。この有機基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。下記式において、*は、各有機基が、D及びDが結合する炭素と結合する位置を表す。
【0081】
【化16】
【0082】
は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
**は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
***は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
****は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、水酸基、及び、-COOR13からなる群より選ばれる基を表す。R13は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
フェニル基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びアミノ基が挙げられる。中でも、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基及びアルコキシ基が好ましい。フェニル基が有する置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0083】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、Dは、-C(R)=N-N(R)R、-C(R)=N-N=C(R)R、及び、-C(R)=N-N=Rからなる群より選ばれる基を表す。Dが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、通常、3~100である。
【0084】
は、水素原子;並びに、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0085】
は、水素原子;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0086】
における置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、又は、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;-G-Y-F;-SO;-C(=O)-R;-CS-NH-R;が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。
【0087】
における炭素原子数1~20のアルキル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基と同じである。
【0088】
における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;-SO;-SR;-SRで置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;水酸基;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0089】
における炭素原子数2~20のアルケニル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、Rにおける炭素原子数2~20のアルケニル基と同じである。
【0090】
における炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0091】
における炭素原子数2~20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、2-ペンチニル基、ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2-オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7-デカニル基等が挙げられる。
【0092】
における炭素原子数2~20のアルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0093】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、Rにおける炭素原子数3~12のシクロアルキル基と同じ例が挙げられる。
【0094】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0095】
における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基がより好ましい。
【0096】
における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、D~Dにおける非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0097】
における炭素原子数2~30の芳香族複素環基としては、例えば、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、キノリル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、およびベンゾピラゾリル基等が挙げられる。中でも、芳香族複素環基としては、フラニル基、ピラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、フラザニル基、チアゾリル基、及びチアジアゾリル基等の、単環の芳香族複素環基;並びに、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノリル基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、フタルイミド基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピラジニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、及びベンゾチアジアゾリル基等の、縮合環の芳香族複素環基;がより好ましい。
【0098】
における炭素原子数2~30の芳香族複素環基が有しうる置換基としては、例えば、D~Dにおける非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0099】
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の2価の脂肪族炭化水素基;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR14-C(=O)-、-C(=O)-NR14-、-NR14-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);からなる群より選ばれる有機基を表す。R14は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。前記「2価の脂肪族炭化水素基」は、2価の鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
【0100】
は、-O-、-C(=O)-、-S-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR15-C(=O)-、-C(=O)-NR15-、-O-C(=O)-NR15-、-NR15-C(=O)-O-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれる基を表す。R15は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。中でも、Yとしては、-O-、-O-C(=O)-O-及び-C(=O)-O-が好ましい。
【0101】
は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する有機基を表す。この有機基の炭素原子数は、好ましくは2以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは10以上であり、好ましくは30以下である。前記の有機基の炭素原子数には、置換基の炭素原子を含まない。
【0102】
における芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環等の、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環が挙げられる。Fが、複数の芳香族炭化水素環を有する場合、複数の芳香族炭化水素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0103】
における芳香族炭化水素環は、置換基を有していてもよい。Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-O-C(=O)-R;等が挙げられる。Rの意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0104】
における芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾピラノン環等の、炭素原子数2~30の芳香族複素環が挙げられる。Fが、複数の芳香族複素環を有する場合、複数の芳香族複素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0105】
における芳香族複素環は、置換基を有していてもよい。Fにおける芳香族複素環が有しうる置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0106】
の好ましい例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい、炭素原子数2~20の環状基」が挙げられる。以下、この環状基を、適宜「環状基(a)」ということがある。
【0107】
環状基(a)が有しうる置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0108】
環状基(a)の好ましい例としては、少なくとも一つの炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の炭化水素環基が挙げられる。この炭化水素環基を、以下、適宜「炭化水素環基(a1)」ということがある。
【0109】
炭化水素環基(a1)としては、例えば、フェニル基(炭素原子数6)、ナフチル基(炭素原子数10)、アントラセニル基(炭素原子数14)、フェナントレニル基(炭素原子数14)、ピレニル基(炭素原子数16)、フルオレニル基(炭素原子数13)、インダニル基(炭素原子数9)、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル基(炭素原子数10)、1,4-ジヒドロナフチル基(炭素原子数10)等の、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
【0110】
前記の炭化水素環基(a1)の具体例としては、下記式(1-1)~(1-21)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。
【0111】
【化17】
【0112】
環状基(a)の別の好ましい例としては、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~18の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基が挙げられる。この複素環基を、以下、適宜「複素環基(a2)」ということがある。
【0113】
複素環基(a2)としては、例えば、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジニル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾピラノニル基等の、炭素原子数2~18の芳香族複素環基;キサンテニル基;2,3-ジヒドロインドーリル基;9,10-ジヒドロアクリジニル基;1,2,3,4-テトラヒドロキノリル基;ジヒドロピラニル基;テトラヒドロピラニル基;ジヒドロフラニル基;およびテトラヒドロフラニル基;が挙げられる。
【0114】
前記の複素環基(a2)の具体例としては、下記式(2-1)~(2-51)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。下記式中、Xは、-CH-、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表す。YおよびZは、それぞれ独立して、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表す。Eは、-NR-、酸素原子または硫黄原子を表す。ここで、Rは、水素原子;または、メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO-は、それぞれ隣接しないものとする。)。
【0115】
【化18】
【0116】
の好ましい別の例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基で、少なくとも一つの水素原子が置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい、炭素原子数1~18のアルキル基」が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「置換アルキル基(b)」ということがある。
【0117】
置換アルキル基(b)における炭素原子数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
【0118】
置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」としては、例えば、環状基(a)として説明した範囲の基が挙げられる。
【0119】
置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方」は、炭素原子数1~18のアルキル基の炭素原子に、直接に結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば、-S-、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR15-C(=O)-、-C(=O)-NR15などが挙げられる。R15の意味は、上述した通りである。よって、置換アルキル基(b)における「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」には、フルオレニル基、ベンゾチアゾリル基等の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する基;置換されていてもよい芳香族炭化水素環基;置換されていてもよい芳香族複素環基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族炭化水素環よりなる基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族複素環よりなる基;が含まれる。
【0120】
置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、およびフルオレニル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
【0121】
置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0122】
置換アルキル基(b)における芳香族複素環基の好ましい例としては、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾピラノニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基が挙げられる。
【0123】
置換アルキル基(b)における芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0124】
置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラセニルチオ基、フェナントレニルチオ基、ピレニルチオ基、フルオレニルチオ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ベンゾイソオキサゾリルチオ基、ベンゾイソチアゾリルチオ基、ベンゾオキサジアゾリルチオ基、ベンゾオキサゾリルチオ基、ベンゾチアジアゾリルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンゾチエニルチオ基、ベンゾイソオキサゾリルオキシ基、ベンゾイソチアゾリルオキシ基、ベンゾオキサジアゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基、ベンゾチアジアゾリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンゾチエニルオキシ基、等が挙げられる。
【0125】
置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」は、それぞれ、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0126】
置換アルキル基(b)が有しうる環状基以外の置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0127】
置換アルキル基(b)の具体例としては、下記式(3-1)~(3-11)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。また、下記式中、*は、結合位置を表す。中でも、Arは、式(III-2)で表される基が好ましい。
【0128】
【化19】
【0129】
特に、Arが式(II-2)で表される場合、Fは、下記式(i-1)~(i-9)のいずれかで表される基であることが好ましい。また、特に、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fは、下記式(i-1)~(i-13)のいずれかで表される基であることが好ましい。下記式(i-1)~(i-13)で表される基は、置換基を有していてもよい。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0130】
【化20】
【0131】
更には、Arが式(II-2)で表される場合、Fは、下記式(ii-1)~(ii-18)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fは、下記式(ii-1)~(ii-24)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。下記式(ii-1)~(ii-24)で表される基は、置換基を有していてもよい。下記の式において、Yの意味は、上述した通りである。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0132】
【化21】
【0133】
【化22】
【0134】
Arが式(II-2)で表される場合、F中の環構造に含まれるπ電子の総数は、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、F中の環構造に含まれるπ電子の総数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
【0135】
上述したものの中でも、Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;並びに、-G-Y-F;が好ましい。その中でも、Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;並びに、-G-Y-F;が特に好ましい。
【0136】
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
【0137】
の好ましい例としては、(1)一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基、が挙げられる。この芳香族炭化水素環を有する炭化水素環基を、以下、適宜「(1)炭化水素環基」ということがある。(1)炭化水素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0138】
【化23】
【0139】
(1)炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。(1)炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基、が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0140】
の別の好ましい例としては、(2)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。この芳香環を有する複素環基を、以下、適宜「(2)複素環基」ということがある。(2)複素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0141】
【化24】
【0142】
【化25】
【0143】
【化26】
【0144】
【化27】
【0145】
【化28】
【0146】
【化29】
【0147】
【化30】
【0148】
【化31】
【0149】
(2)複素環基は、置換基を有していてもよい。(2)複素環基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0150】
の更に別の好ましい例としては、(3)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「(3)置換アルキル基」ということがある。
【0151】
(3)置換アルキル基における「炭素原子数1~12のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0152】
(3)置換アルキル基は、更に置換基を有していてもよい。(3)置換アルキル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0153】
の更に別の好ましい例としては、(4)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルケニル基が挙げられる。この置換されたアルケニル基を、以下、適宜「(4)置換アルケニル基」ということがある。
【0154】
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~12のアルケニル基」としては、例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0155】
(4)置換アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。(4)置換アルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0156】
の更に別の好ましい例としては、(5)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルキニル基が挙げられる。この置換されたアルキニル基を、以下、適宜「(5)置換アルキニル基」ということがある。
【0157】
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~12のアルキニル基」としては、例えば、エチニル基、プロピニル基などが挙げられる。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0158】
(5)置換アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。(5)置換アルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0159】
の好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0160】
【化32】
【0161】
の更に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0162】
【化33】
【0163】
の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0164】
【化34】
【0165】
上述したRの具体例は、更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0166】
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
【0167】
の好ましい例としては、一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基が挙げられる。
また、Rの別の好ましい例としては、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。
【0168】
の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。Rの意味は、上述した通りである。
【0169】
【化35】
【0170】
式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基は、D~D以外に更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルアミノ基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のアルキルスルフィニル基、カルボキシル基、炭素原子数1~6のチオアルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルスルファモイル基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0171】
式(I)におけるArの好ましい例としては、下記の式(III-1)~式(III-7)で表される基が挙げられる。また、式(III-1)~式(III-7)で表される基は、置換基として炭素原子数1~6のアルキル基を有していてもよい。下記式中、*は、結合位置を表す。
【0172】
【化36】
【0173】
式(III-1)の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。下記式中、*は、結合位置を表す。
【0174】
【化37】
【0175】
【化38】
【0176】
式(I)において、Z及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0177】
式(I)において、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。A、A、B及びBが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、3~100である。中でも、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数5~20の環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の芳香族基が好ましい。
【0178】
、A、B及びBにおける環状脂肪族基としては、例えば、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘプタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,5-ジイル基等の、炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン-1,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基等の、炭素原子数5~20のビシクロアルカンジイル基;等が挙げられる。中でも、置換されていてもよい炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が特に好ましい。環状脂肪族基は、トランス体であってもよく、シス体であってもよく、シス体とトランス体との混合物であってもよい。中でも、トランス体がより好ましい。
【0179】
、A、B及びBにおける環状脂肪族基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0180】
、A、B及びBにおける芳香族基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;フラン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;等が挙げられる。中でも、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、1,4-フェニレン基が特に好ましい。
【0181】
、A、B及びBにおける芳香族基が有しうる置換基としては、例えば、A、A、B及びBにおける環状脂肪族基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0182】
式(I)において、Y~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0183】
式(I)において、G及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
【0184】
及びGにおける炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数1~20のアルキレン基が挙げられる。
【0185】
及びGにおける炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数3~20のアルキレン基が挙げられる。
【0186】
式(I)において、P及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表す。P及びPにおける重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基;ビニル基;ビニルエーテル基;p-スチルベン基;アクリロイル基;メタクリロイル基;カルボキシル基;メチルカルボニル基;水酸基;アミド基;炭素原子数1~4のアルキルアミノ基;アミノ基;エポキシ基;オキセタニル基;アルデヒド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;等が挙げられる。R31は、水素原子、メチル基、又は塩素原子を表す。中でも、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基が好ましく、CH=CH-C(=O)-O-(アクリロイルオキシ基)、CH=C(CH)-C(=O)-O-(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0187】
式(I)において、p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
【0188】
式(I)で表される液晶化合物は、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
【0189】
式(I)で表される液晶化合物としては、具体的には、例えば、下記の式で表される化合物が挙げられる。特に化合物(A-1)が、良好な逆波長分散性及び光学異方性層の物性を与えうるので好ましい。
【0190】
【化39】
【実施例0191】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0192】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0193】
〔製造例1:光異性化物質(B-1)の合成〕
200mLナス型フラスコに、p-(ヘキシルオキシ)フェノール(富士フィルム和光純薬株式会社製;下記式(P-1)で表される化合物)3.37g(17.4mmol)、(E)-4-プロポキシけい皮酸(東京化成工業株式会社製;下記式(P-2)で表される化合物)3.58g(17.4mmol)、及び4-ジメチルアミノピリジン(富士フィルム和光純薬株式会社製;下記式(P-3)で表される化合物)2.12g(17.4mmol)を入れ、脱水塩化メチレン20mLに溶解させた。その後、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(東京化成工業株式会社製;下記式(P-4)で表される化合物)5.00g(26.0mmol)を入れ、フラスコに塩化カルシウム管を取り付け、室温で24hr撹拌し、反応させた。
その後、大量のメタノールに反応液を滴下して得られた沈殿物を濾過し、真空乾燥機で乾燥させることで、光異性化物質(B-1)を、白色固体粉末5.05g(収率:76%)として得た。
【0194】
【化40】
【0195】
〔製造例2:光異性化物質(B-2)の合成〕
200mLナス型フラスコに、4-(6-Acryloyloxy-n-hex-1-yloxy)phenol(Amadis Chemical Company Limited製;下記式(P-5)で表される化合物)3.50g(13.3mmol)、(E)-4-プロポキシけい皮酸(東京化成工業株式会社製)2.73g(13.3mmol)、及び4-ジメチルアミノピリジン(富士フィルム和光純薬株式会社製)1.62g(13.3mmol)を入れ、脱水塩化メチレン30mLに溶解させた。その後、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(東京化成工業株式会社製) 3.83g(20.0mmol)を入れ、フラスコに塩化カルシウム管を取り付け、室温で24hr撹拌し、反応させた。
その後、大量のメタノールに反応液を滴下して得られた沈殿物を濾過し、真空乾燥機で乾燥させることで、光異性化物質(B-2)を、白色固体粉末4.5g(収率:75%)として得た。
【0196】
【化41】
【0197】
〔製造例3:光異性化物質(B-3)の合成〕
200mLナス型フラスコに、4-(6-Acryloyloxy-n-hex-1-yloxy)phenol(Amadis Chemical Company Limited製)1.82g(6.9mmol)、4,4’-スチルベンジカルボン酸 (東京化成工業株式会社製;下記式(P-6)で表される化合物)0.85g(3.2mmol)、及び4-ジメチルアミノピリジン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.85g(6.9mmol)を入れ、脱水塩化メチレン30mLに溶解させた。その後、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(東京化成工業株式会社製) 2.00g(10.4mmol)を入れ、フラスコに塩化カルシウム管を取り付け、室温で24hr撹拌し、反応させた。
その後、大量のメタノールに反応液を滴下して得られた沈殿物を濾過し、真空乾燥機で乾燥させることで、光異性化物質(B-3)を、白色固体粉末2.01g(収率:84%)として得た。
【0198】
【化42】
【0199】
〔光学異方性物質のネマチック液晶相の発現確認〕
製造例1~3で得られた光学異方性物質(B-1)~(B-3)及び比較例4で使用した重合体(PA-1)のそれぞれを、スライドガラスの表面に置き、その上にカバーガラスを載置し、サンプルとした。サンプルを、メトラー・トレド社の顕微鏡用ホットステージ(FP82HT)上に載置し、徐々に昇温させて、ネマチック液晶相を発現するか否かを観察した。
【0200】
光異性化物質(B-1)は、90℃で結晶相からネマチック液晶相に転移し、125℃でネマチック液晶相から等方相へ転移することを確認した。
光異性化物質(B-2)は、85℃で結晶相からネマチック液晶相に転移し、111℃でネマチック液晶相から等方相へ転移することを確認した。
光異性化物質(B-3)は、135℃で結晶相からネマチック液晶相に転移し、186℃でネマチック液晶相から等方相へ転移することを確認した。
【0201】
〔実施例1〕
(1-1.液晶組成物の調製)
下記式(A-1)で表される構造を有する光重合性液晶化合物(A-1)を95.0重量部、光異性化物質(B-1)を5.0重量部、光重合開始剤(ADEKA社製「NCI-730」)を4.0重量部、界面活性剤(DIC社製「メガファックF-562」)を0.3重量部、及び酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール;BHT)を0.1重量部量り取り、これらに希釈溶媒(シクロペンタノン:1,3-ジオキソラン=4:6)を、固形分が22wt%になるように加え、50℃に加温し溶解させ、混合物を得た。
【0202】
得られた混合物を目視観察し、混合物中の析出物の有無を評価したところ、析出物が存在しないことを確認した。その後、得られた混合物を、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、液晶組成物を調製した。
【0203】
【化43】
【0204】
液晶化合物(A-1)は、逆波長分散性であることが知られている化合物である(例えば国際公開第2018/173778号参照)。
【0205】
(1-2.光学異方性層の形成)
基材フィルムとして、脂環式構造含有重合体を含む樹脂の、斜め延伸された長尺のフィルム(製品名「斜め延伸ゼオノアフィルム、Tg126℃」、日本ゼオン株式会社製、厚さ77μm、波長550nmにおける面内方向の位相差Re141nm、延伸方向は短尺方向に対して45°の方向)を用意した。
基材フィルム上に、(1-1)で得られた液晶組成物を、バーコーターで塗布し、液晶組成物の層を形成した。液晶組成物の層の厚みは、得られる光学異方性層の厚みが2.6μm程度になるように調整した。その後、110℃オーブンで4分ほど乾燥させて、液晶組成物中の溶媒を蒸発させて、同時に光重合性液晶化合物を基材延伸軸方向に配向させた。乾燥された液晶組成物の層に、紫外線照射装置により、紫外線を窒素雰囲気下、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)照射した。照射に際して、基材フィルムは、50℃のSUS板に密着させた状態とした。これにより光重合性液晶化合物を硬化させ、光学異方性層を形成し、(基材フィルム)/(光学異方性層)の層構成を有する複層物を得た。
【0206】
(1-3.サンプル)
ガラス板の一方の表面に、粘着剤層(日東電工社製「CS9861US」)を設けた。
(1-2)で得られた複層物の、光学異方性層側の面にコロナ処理を施した。当該面を、前記粘着剤層と貼合し、(基材フィルム)/(光学異方性層)/(粘着剤層)/(ガラス板)の層構成を有する複層物とした。当該複層物から、基材フィルムを剥離し、(光学異方性層)/(粘着剤層)/(ガラス板)の層構成を有するサンプルを作製した。
【0207】
(1-4.初期波長分散)
(1-3)で得られたサンプルを、位相差計(Axometrics社製)のステージに設置して、光学異方性層の面内レターデーションReを、波長450nm、550nm及び590nmを含む波長範囲において測定し、測定波長とReとの関係を求めた。この測定結果から、波長450nm及び550nmにおける光学異方性層の面内レターデーションRe(450)及びRe(550)を求め、波長分散Re(450)/Re(550)の値を算出し、下記の基準に従い評価した。
【0208】
優良 0.86以下
良 0.86超0.90以下
不良 0.90超
【0209】
(1-5.耐光性)
(1-4)で測定に供したサンプルに、紫外線照射装置(高圧水銀ランプ)を用いて紫外線を照射した(積算照度700mJ/cm、照射強度350mW/cm、照射時間12秒、大気雰囲気下)。照射後のサンプルについて、照射前後でのRe(590)を、(1-4)における測定と同様の操作にて測定した。照射前のRe(590)の値Re0(590)と、照射後のRe(590)の値Re1(590)から、Re変化率ReD(%)を、式ReD=((Re1-Re0)/Re0)×100に基づいて計算し、下記の基準に従い評価した。
【0210】
良 ±1.0%未満
不良±1.0%以上
【0211】
〔実施例2〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、液晶組成物及び光学異方性層サンプルを得て評価した。
・製造例1で得た光異性化物質(B-1)に代えて、製造例2で得た光異性化物質(B-2)を用いた。
【0212】
〔実施例3〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、液晶組成物及び光学異方性層サンプルを得て評価した。
・製造例1で得た光異性化物質(B-1)に代えて、製造例3で得た光異性化物質(B-3)を用いた。
【0213】
〔実施例4〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、液晶組成物及び光学異方性層サンプルを得て評価した。
・(1-1)の液晶組成物の調製において、光重合性液晶化合物(A-1)の量を95.0重量部から90.0重量部に変更し、光異性化物質(B-1)の量を5.0重量部から10.0重量部に変更した。
【0214】
〔比較例1〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、液晶組成物及び光学異方性層サンプルを得て評価した。
・(1-1)の液晶組成物の調製において、光重合性液晶化合物(A-1)の量を95.0重量部から100.0重量部に変更し、光異性化物質(B-1)を添加しなかった。
【0215】
〔比較例2〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、液晶組成物及び光学異方性層サンプルを得て評価した。
・(1-1)の液晶組成物の調製において、光重合性液晶化合物(A-1)及び光異性化物質(B-1)を添加せず、光重合性液晶化合物として、Paliocolor LC242(BASF社製;下記式(A-2)で表される化合物)100.0重量部を用いた。液晶化合物(A-2)は、順波長分散性であることが知られている化合物である(例えば国際公開第2018/173778号参照)
【0216】
【化44】
【0217】
〔比較例3〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、液晶組成物及び光学異方性層サンプルを得て評価した。
・(1-1)の液晶組成物の調製において、光重合性液晶化合物(A-1)の量を95.0重量部から90.0重量部に変更した。
・(1-1)の液晶組成物の調製において、光異性化物質(B-1)を添加せず、代わりに、光異性化物質ではない物質である、下記式(B-4)で表される化合物10.0重量部を添加した。
【0218】
【化45】
【0219】
〔比較例4〕
下記の変更点以外は、実施例1の(1-1)と同じ操作により、液晶組成物の調製を試みた。
・製造例1で得た光異性化物質(B-1)に代えて、下記式(PA-1)で表される重合体(PA-1)(数平均分子量約5000)を用いた。
【0220】
【化46】
【0221】
各成分を混合し溶解させる操作を行った結果得られた混合物を目視観察し、混合物中の析出物の有無を評価したところ、重合体(PA-1)に起因するとみられる析出物が観察された。
【0222】
〔比較例5〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、液晶組成物及び光学異方性層サンプルを得て評価した。
・(1-1)の液晶組成物の調製において、光重合性液晶化合物(A-1)の量を95.0重量部から80.0重量部に変更し、光異性化物質(B-1)の量を5.0重量部から20.0重量部に変更した。
【0223】
実施例及び比較例の概要及び評価結果を、表1~表2に示す。
【0224】
【表1】
【0225】
【表2】
【0226】
表中に示される液晶化合物種類は、下記の通りである。
A-1:前記式(A-1)で表される構造を有する光重合性液晶化合物(A-1)。逆波長分散性。
A-2:前記式(A-2)で表される構造を有する光重合性液晶化合物(A-2)。順波長分散性。
【0227】
表中に示される光異性化物質種類は、下記の通りである。
B-1:前記式(B-1)で表される構造を有する光異性化物質(B-1)。
B-2:前記式(B-2)で表される構造を有する光異性化物質(B-2)。
B-3:前記式(B-3)で表される構造を有する光異性化物質(B-3)。
B-4:比較例における対照用の、光異性化物質で無い物質。前記式(B-4)で表される構造を有する物質(B-4)。
PA-1:前記式(PA-1)で表される構造を有する重合体(PA-1)。
【0228】
表中における光異性化物質添加量は、液晶化合物及び光異性化物質の合計100重量部に対する重量部である。
【0229】
表中における「相分離等」は、液晶組成物の調製において、各成分を混合し溶解させる操作を行った結果得られた混合物を目視観察し、混合物中の析出物の有無を評価した結果を示す。
【0230】
実施例及び比較例の結果から明らかな通り、本発明において規定される特定の成分を含む液晶組成物を用いることにより、良好な逆波長分散性を有し、且つ紫外線の照射によるRe変化が抑制された光学異方性層を形成することができる。