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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025976
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
E02F9/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129211
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】597039984
【氏名又は名称】学校法人 川崎学園
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136250
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 博臣
(74)【代理人】
【識別番号】100198719
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 良裕
(72)【発明者】
【氏名】洪水 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】山本 透
(72)【発明者】
【氏名】逸見 知弘
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 一茂
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB00
(57)【要約】
【課題】特定操作を行うオペレータの操作タイプに応じてより適切なサポートを行うことが可能な建設機械の提供。
【解決手段】油圧ショベル1は、運転データ取得部61と加減速データ特定部62と評価用データ取得部63と評価値演算部64と操作タイプ判定部65と表示制御部66とを備える。加減速データ特定部62は、運転データのうち加速期間の加速データと減速期間の減速データとをそれぞれ特定する。評価用データ取得部63は、加速評価用データと減速評価用データとをそれぞれ取得する。評価値演算部64は、加速評価用データに基づいて加速評価値を演算すると共に減速評価用データに基づいて減速評価値を演算する。操作タイプ判定部65は、加速評価値と減速評価値とに基づいてオペレータの操作タイプを判定する。表示制御部66は、操作タイプに対応付けられたサポート情報を含む操作支援画像を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械であって、
特定操作に関する運転データを取得する運転データ取得部と、
前記運転データのうち加速期間の加速データと減速期間の減速データとをそれぞれ特定する加減速データ特定部と、
前記加速データを評価するための加速評価用データと前記減速データを評価するための減速評価用データとをそれぞれ取得する評価用データ取得部と、
前記加速評価用データに基づいて前記加速データの技量を示す加速評価値を演算すると共に前記減速評価用データに基づいて前記減速データの技量を示す減速評価値を演算する評価値演算部と、
前記加速評価値と前記減速評価値とに基づいて前記オペレータの操作タイプを判定する操作タイプ判定部と、
前記操作タイプ判定部で判定された前記操作タイプに対応付けられたサポート情報を報知する報知部と、
を備えることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記サポート情報は、前記オペレータが注視すべき機体の状態を提示するための情報であって前記特定操作のスキルを間接的に向上させるための情報であることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記報知部は、前記加速評価値と前記減速評価値とを座標軸とする2次元グラフに前記加速評価値及び前記減速評価値をプロットした画像と前記サポート情報とを含む操作支援画像を生成し、表示部に出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記特定操作が実施される毎に前記評価値演算部で演算された前記加速評価値及び前記減速評価値を時系列で記憶する記憶部を更に備え、
前記報知部は、時系列で記憶された前記加速評価値及び前記減速評価値がプロットされると共に前記加速評価値及び前記減速評価値の変遷が示された操作支援画像を生成することを特徴とする請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記加速評価値及び前記減速評価値と予め設定された目標値との距離に基づいてサポート情報を報知する頻度を決定する頻度決定部を更に備え、
前記報知部は、前記頻度決定部によって決定された頻度で前記サポート情報を報知することを特徴とする請求項1から4のうち何れかに記載の建設機械。
【請求項6】
前記加速評価値及び前記減速評価値と予め設定された目標値との距離に基づいてサポート情報に追加する追加情報を決定する追加情報決定部を更に備え、
前記報知部は、前記追加情報決定部によって決定された前記追加情報を含む前記サポート情報を報知することを特徴とする請求項1から5のうち何れかに記載の建設機械。
【請求項7】
建設機械であって、
加速評価用データと減速評価用データとを記憶する記憶部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
特定操作に関する運転データを取得し、
前記運転データのうち加速期間の加速データと減速期間の減速データとをそれぞれ特定し、
前記加速評価用データと前記減速評価用データとをそれぞれ前記記憶部から取得し、
前記加速評価用データに基づいて前記加速データの技量を示す加速評価値を演算すると共に前記減速評価用データに基づいて前記減速データの技量を示す減速評価値を演算し、
前記加速評価値と前記減速評価値とに基づいて前記オペレータの操作タイプを判定し、
前記操作タイプに対応付けられたサポート情報を報知することを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、より詳細には、オペレータの操作タイプに応じて特定操作をサポートする建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械の分野において、オペレータによる所定の運転データを収集し、収集した運転データと基準データ(熟練者のデータ)とを比較することにより、運転データを評価するシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の技術によれば、所定の運転操作に関する運転結果をオペレータに認識させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-235833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転の評価対象となるオペレータの中には、建設機械の操作に関して、慎重な人もいれば、積極的な人もいる。そのため、評価対象となるオペレータの操作タイプを全く考慮せずに操作を評価すると、オペレータに提示される助言が的外れなものになる可能性がある。
【0005】
この点、特許文献1に記載の技術では、オペレータの操作タイプが全く考慮されておらず、すべてオペレータに対して画一的な評価処理が実行される。そのため、オペレータの運転操作を評価した後、オペレータに提示される助言が一部のオペレータに適合せず、運転操作を適切にサポートできない可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、特定操作を行うオペレータの操作タイプに応じてより適切なサポートを行うことが可能な建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、建設機械であって、特定操作に関する運転データを取得する運転データ取得部と、前記運転データのうち加速期間の加速データと減速期間の減速データとをそれぞれ特定する加減速データ特定部と、前記加速データを評価するための加速評価用データと前記減速データを評価するための減速評価用データとをそれぞれ取得する評価用データ取得部と、前記加速評価用データに基づいて前記加速データの技量を示す加速評価値を演算すると共に前記減速評価用データに基づいて前記減速データの技量を示す減速評価値を演算する評価値演算部と、前記加速評価値と前記減速評価値とに基づいて前記オペレータの操作タイプを判定する操作タイプ判定部と、前記操作タイプ判定部で判定された前記操作タイプに対応付けられたサポート情報を報知する報知部と、を備えることを特徴とする建設機械を提供している。
【0008】
ここで、前記サポート情報は、前記オペレータが注視すべき機体の状態を提示するための情報であって前記特定操作のスキルを間接的に向上させるための情報であることが好ましい。
【0009】
また、前記報知部は、前記加速評価値と前記減速評価値とを座標軸とする2次元グラフに前記加速評価値及び前記減速評価値をプロットした画像と前記サポート情報とを含む操作支援画像を生成し、表示部に出力することが好ましい。
【0010】
また、前記特定操作が実施される毎に前記評価値演算部で演算された前記加速評価値及び前記減速評価値を時系列で記憶する記憶部を更に備え、前記報知部は、時系列で記憶された前記加速評価値及び前記減速評価値がプロットされると共に前記加速評価値及び前記減速評価値の変遷が示された操作支援画像を生成することが好ましい。
【0011】
また、前記加速評価値及び前記減速評価値と予め設定された目標値との距離に基づいてサポート情報を報知する頻度を決定する頻度決定部を更に備え、前記報知部は、前記頻度決定部によって決定された頻度で前記サポート情報を報知することが好ましい。
【0012】
更に、前記加速評価値及び前記減速評価値と予め設定された目標値との距離に基づいてサポート情報に追加する追加情報を決定する追加情報決定部を更に備え、前記報知部は、前記追加情報決定部によって決定された前記追加情報を含む前記サポート情報を報知することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、建設機械であって、前記加速データを評価するための加速評価用データと前記減速データを評価するための減速評価用データとを記憶する記憶部と、制御部と、を備え、前記制御部は、特定操作に関する運転データを取得し、前記運転データのうち加速期間の加速データと減速期間の減速データとをそれぞれ特定し、前記加速評価用データと前記減速評価用データとをそれぞれ前記記憶部から取得し、前記加速評価用データに基づいて前記加速データの技量を示す加速評価値を演算すると共に前記減速評価用データに基づいて前記減速データの技量を示す減速評価値を演算し、前記加速評価値と前記減速評価値とに基づいて前記オペレータの操作タイプを判定し、前記操作タイプに対応付けられたサポート情報を報知することを特徴とする建設機械を更に提供している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加速評価値及び減速評価値に基づいてオペレータの操作タイプが判定され、当該操作タイプに対応するサポート情報がオペレータに通知される。そのため、特定操作を行うオペレータの操作タイプに応じてより適切なサポートを行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態による建設機械(油圧ショベル)を示す概略図。
図2】コントローラ及びそれに関連機器を示すブロック図。
図3】特定操作をサポートする操作支援処理を示すフローチャート。
図4】評価用基準テーブルを示す図。
図5】加速評価値を横軸、減速評価値を横軸とする二次元グラフを示す図。
図6】操作タイプ毎にサポート情報を記録するサポート情報テーブルを示す図。
図7】モニタに出力される操作支援画像の一例を示す図。
図8】変化例に係る操作支援画像の一例を示す図。
図9】加速評価値及び減速評価値と目標値との距離を説明するための図。
図10】距離に応じた頻度を記録する頻度テーブルを示す図。
図11】距離に応じた追加情報を記録する追加情報テーブルを示す図。
図12】別の変形例に係る操作支援画像の一例を示す図。
図13】更に別の変形例に係る操作支援画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<1.実施形態>
本発明の実施形態による建設機械について、図1から図7を参照しながら説明する。以下では、建設機械の一例として、油圧ショベル1(図1参照)を例示する。油圧ショベル1には、オペレータによる特定操作のサポートを行う操作支援機能が搭載されている。なお、以下では、特定操作の一例として、ブームを持ち上げて所定位置で止める操作(以下、単に「ブーム上げ止め操作」とも称する)を例にとって説明する。
【0017】
図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能な状態で搭載された上部旋回体3とを備えて構成されている。
【0018】
上部旋回体3には、アタッチメント4、キャブ5などが設置されている。アタッチメント4は、ブーム41、アーム42、バケット43、および、これらを駆動する油圧シリンダ44(アクチュエータ)などで構成されている。
【0019】
ブーム41は上部旋回体3の前部に、アーム42はブーム41の先端部に、バケット43はアーム42の先端部に、それぞれ回動可能に支持されている。ブーム41、アーム42、バケット43は、それぞれに対応する油圧シリンダ44の作動を制御することによって回動する。
【0020】
キャブ5は、上部旋回体3の前部に設置された運転室である。油圧ショベル1は、キャブ5に搭乗するオペレータによって操作される。
【0021】
キャブ5の内部にはオペレータが着座するシートが設置されている。また、シートの左右には操作レバー(不図示)が設置されている。左右の操作レバーは、油圧シリンダ44や旋回モータ(不図示)の作動を操作する操作部であり、オペレータによって前後左右に揺動操作される。左右の操作レバーの操作方向および操作量に応じて、上部旋回体3は旋回し、ブーム41等は回動する。
【0022】
また、キャブ5の内部には、左右の操作レバーの他にも、各種の操作スイッチ(不図示)や表示用のモニタ83(図2参照)といった入出力装置が設置されている。なお、モニタ83は、本発明に係る表示部の一例である。
【0023】
図2に示すように、油圧ショベル1は、CPUやメモリなどのハードウエアと、当該ハードウエアに実装された制御プログラムなどのソフトウエアとで構成されるコントローラ6を備えている。
【0024】
コントローラ6は、記憶装置7、センサ81、レバー計82及びモニタ83と電気的に接続されている。
【0025】
センサ81は、各油圧シリンダ44に取り付けられ、各油圧シリンダ44が伸縮する速度を実速度S(t)として検出する。実速度S(t)は、予め定められた周期(サンプリング間隔)でセンサ81によって検出され、コントローラ6に入力される。
【0026】
レバー計82は、操作レバーに付設されている計器である。レバー計82は、操作レバーの操作量U(t)を検出する。操作量U(t)は、予め定められた周期(サンプリング間隔)でレバー計82によって検出され、コントローラ6に入力される。
【0027】
コントローラ6には、機能的な構成として、運転データ取得部61、加減速データ特定部62、評価用データ取得部63、評価値演算部64、操作タイプ判定部65、表示制御部66などが設けられている。
【0028】
運転データ取得部61は、評価対象のオペレータが実施する特定操作に関する運転データ(後述)を取得する処理部である。
【0029】
加減速データ特定部62は、運転データの中から加速期間の加速データと減速期間の減速データとをそれぞれ特定する処理部である。
【0030】
評価用データ取得部63は、評価用基準テーブル71(図4参照)を参照し、加速データを評価するための加速評価用データと減速データを評価するための減速評価用データとをそれぞれ取得する処理部である。
【0031】
評価値演算部64は、加速評価用データに基づいて加速評価値Eを演算すると共に減速評価用データに基づいて減速評価値Eを演算する処理部である。なお、加速評価値E及び減速評価値Eの具体的な演算方法については後に詳述する。
【0032】
操作タイプ判定部65は、加速評価値E及び減速評価値Eに基づいて、特定操作を実施したオペレータの操作タイプを判定する処理部である。ここでは、操作タイプ判定部65は、オペレータの操作タイプを「積極」又は「慎重」のいずれか一方に判定する。操作タイプの具体的な判定方法については後に詳述する。
【0033】
表示制御部66は、操作タイプに対応付けられたサポート情報を含む操作支援画像を生成し、モニタ83に出力する処理部である。なお、表示制御部66は、本発明に係る「報知部」の一例である。
【0034】
続いて、図3のフローチャートに沿って、オペレータによる特定操作(ここでは、ブーム上げ止め操作)をサポートする操作支援処理について説明する。
【0035】
まず、ステップS1において、表示制御部66は、ブーム上げ止め操作の開始を指示する表示画像(不図示)をモニタ83に出力し、オペレータに作業の実施を指示する。
【0036】
ステップS2において、運転データ取得部61は、作業指示に応じてオペレータが実施するブーム上げ止め操作に関する運転データを取得する。具体的には、運転データ取得部61は、所定の周期で検出された操作量U(t)と、ブーム41の特定箇所の停止位置Voutと、立ち上がり時間Tとを運転データとして取得する。
【0037】
ここで、操作量U(t)とは、ブーム上げ止め操作の期間中にレバー計82を介して所定の周期(サンプリング間隔)で検出された値である。
【0038】
また、ブーム41の特定箇所の停止位置Voutとは、例えばブーム41の先端部が停止した位置(高さ位置)の座標である。なお、ブーム41の先端部が停止した高さ位置は、ブーム41に設けられる角度センサの値などから演算することが可能である。
【0039】
更に、立ち上がり時間Tとは、ブーム上げ止め操作においてブーム41の操作開始から加速している期間の時間である。
【0040】
ステップS3において、加減速データ特定部62は、ステップS2で取得した運転データのうち加速期間の加速データと減速期間の減速データとをそれぞれ特定する。
【0041】
詳細には、加減速データ特定部62は、センサ81で検出された実速度S(t)に基づいて算出される加速度α(t)が0以上(加速度α≧0)の場合は加速データとして特定し、0より小さい(加速度α<0)場合は減速データとして特定する。たとえば、加速度α(t)の計算方法は、以下に示す数式1に基づいて算出される。数式1において、S(t)は現時刻tにおける速度、S(t-1)はtより1ステップ前の時刻における速度、ΔtはS(t-1)からS(t)に至るまでの経過時間を示している。また、本実施形態では、1ステップ差で計算を行っているが、さらに前のステップにおけるデータとの比較において算出するようにしてもよい。
【数1】
【0042】
ステップS4において、評価用データ取得部63は、記憶装置7に記憶されている評価用基準テーブル71(図4参照)を参照し、ブーム上げ止め操作の加速評価用データと減速評価用データとを取得する。
【0043】
図4に示すように、評価用基準テーブル71には、熟練者が事前に実施した特定操作に関して、加速期間のデータ(以下、「加速評価用データ」とも称する)と、減速期間のデータ(以下、「減速評価用データ」とも称する)とが記録されている。
【0044】
評価用基準テーブル71において、「V in」は、加速期間中又は減速期間中にレバー計82を介して所定周期で検出された操作量U(t)の平均または分散である。「V out」は、減速期間中にブーム41の特定箇所(先端部)が停止した位置(高さ位置)である。「T 」は、加速期間中のブーム41の立ち上がり時間である。
【0045】
また、評価用基準テーブル71において、「ωin」、「ωout」及び「ω」は、後述の加速評価値E及び減速評価値Eの演算に用いられる重み付けパラメータである。
【0046】
ステップS5において、評価値演算部64は、以下に示す数式2に基づいて加速評価値E及び減速評価値Eを演算する。
【数2】
【0047】
まず、加速評価値Eの演算において、評価値演算部64は、ステップS3で加速データとして特定された操作量U(t)の平均Vinまたは分散Vinを求める。
【0048】
そして、評価値演算部64は、「Vin」、ステップS2で収集した「Vout」及び「T」、ステップS4で取得した加速評価用データの「V in」、「V out」、「T 」、「ωin」、「ωout」及び「ω」を数式2に代入し、加速評価値Eを演算する。
【0049】
なお、加速評価用データの「ωout」には0が入力されているため、加速評価値Eの演算において、停止位置に関するパラメータは無視される。
【0050】
また、減速評価値Eの演算において、評価値演算部64は、ステップS3で減速データとして特定された操作量U(t)の平均Vinまたは分散Vinを求める。
【0051】
そして、評価値演算部64は、「Vin」、ステップS2で収集した「Vout」及び「T」、ステップS4で取得した減速評価用データの「V in」、「V out」、「T 」、「ωin」、「ωout」及び「ω」を数式2に代入し、減速評価値Eを演算する。
【0052】
なお、減速評価用データの「ω」には0が入力されているため、減速評価値Eの演算において、立ち上がり時間に関するパラメータは無視される。
【0053】
以上のように、本実施形態では、重み付けパラメータ「ωin」、「ωout」及び「ω」を調整することで、加速評価値Eと減速評価値Eとの両者が共通の数式2で演算される。
【0054】
ステップS6において、操作タイプ判定部65は、ステップS5で演算した加速評価値E及び減速評価値Eに基づいて、ブーム上げ止め操作を実施したオペレータの操作タイプを判定する。
【0055】
図5では、加速評価値Eを横軸、減速評価値Eを縦軸とする2次元グラフが示されている。2次元グラフ内の直線SLは、原点(加速評価値E=0かつ減速評価値E=0)と最高点(加速評価値E=100かつ減速評価値E=100)とを結んだ直線(傾きが1、切片が0の直線)である。
【0056】
操作タイプ判定部65は、図5に示す2次元グラフにおいて直線SLよりも右下の領域AR1に加速評価値E及び減速評価値Eがプロットされる場合(例えば、図5の黒丸BS)、オペレータの操作タイプを「積極」と判定する。すなわち、本実施形態では、操作タイプ判定部65は、加速評価値Eが減速評価値Eより大きい場合(E>E)、オペレータの操作タイプを「積極」と判定する。
【0057】
一方、操作タイプ判定部65は、図5に示す2次元グラフにおいて直線SL上又は直線SLよりも左上の領域AR2に加速評価値E及び減速評価値Eがプロットされる場合(例えば、図5の黒三角BT)、オペレータの操作タイプを「慎重」と判定する。すなわち、本実施形態では、操作タイプ判定部65は、加速評価値Eが減速評価値E以下の場合(E≦E)にはオペレータの操作タイプを「慎重」と判定する。
【0058】
ステップS7において、表示制御部66は、操作タイプに対応付けられたサポート情報を含む操作支援画像を生成し、モニタ83に出力する。
【0059】
具体的には、表示制御部66は、図6に示すサポート情報テーブル72を参照し、ステップS6で判定された操作タイプに対応付けられたサポート情報を取得する。例えば、ステップS6で「慎重」と判定された場合、表示制御部66は、「ブーム上げ止め」の「慎重」に対応付けられたサポート情報(太枠部分)を取得する。
【0060】
なお、サポート情報テーブル72に記録されるサポート情報は、オペレータが注視すべき機体の状態(エンジン音の抑揚やバケット内の土)を提示するための情報(メッセージ)である。換言すれば、当該サポート情報は、オペレータが注視すべき機体の状態を示すことでブーム上げ止め操作のスキルを間接的に向上させるための情報(メッセージ)である。
【0061】
そして、表示制御部66は、図7に示すように、加速評価値E及び減速評価値Eがプロットされた2次元グラフにサポート情報(図7の吹き出し画像部分)を重畳表示した操作支援画像を生成し、モニタ83に出力する。
【0062】
上述した実施形態によれば、加速評価値E及び減速評価値Eに基づいてオペレータの操作タイプが判定され、判定された操作タイプに対応するサポート情報がオペレータに通知される。そのため、油圧ショベル1において特定操作(ブーム上げ止め操作)を行うオペレータの操作タイプ(「積極」又は「慎重」)に適したサポート(操作支援)を実施することが可能である。
【0063】
また、上述した実施形態によれば、サポート情報としてオペレータが注視すべき機体の状態(エンジン音の抑揚やバケット内の土)が提示されるため、直接的な指示に対応できない非熟練オペレータに対してより有効な操作支援を行うことが可能である。
【0064】
<2.変形例>
本発明による建設機械は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、特定操作の一例としてブーム上げ止め操作を例示したが、これに限定されず、加速・減速を伴う操作であれば本発明の思想を適用することが可能である。具体的には、所定方向に旋回して停止する旋回位置決め操作においてもオペレータの操作タイプを判定し、当該操作タイプに応じたサポート情報を当該オペレータに提供することが可能である。
【0066】
また、上述した実施形態では、加速データ及び減速データが実速度S(t)に基づいて算出される加速度α(t)によって特定される場合を例示したが、これに限定されない。操作量U(t)の遷移データ(移動平均など)のみを用いて加速データ及び減速データが特定されるようにしてもよい。或いは、加速度α(t)と操作量U(t)との組み合わせによって特定されるようにしてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、図7に示すように、加速評価値E及び減速評価値Eをプロットした2次元グラフにサポート情報(図7の吹き出し画像部分)を重畳表示した操作支援画像がモニタ83に表示される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、2次元グラフを表示することなく、サポート情報のテキスト(吹き出しに相当する部分)のみをモニタ83に出力するようにしてもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、ブーム上げ止め操作を1回行ったことを前提として、加速評価値E及び減速評価値Eが1つだけプロットされた操作支援画像(図7)が生成される場合を例示したが、これに限定されない。
【0069】
例えば、ブーム上げ止め操作を繰り返し行う場合には、加速評価値E及び減速評価値Eが複数プロットされた操作支援画像(図8)が生成されるようにしてもよい。図8に示すように、操作支援画像には、複数の加速評価値E及び減速評価値Eがプロットされると共に、それらの変遷を示す矢印とが示されている。
【0070】
具体的には、ブーム上げ止め操作が実施される毎に加速評価値E及び減速評価値Eを時系列で記憶装置7に記憶するようにすればよい。そして、時系列で記録された加速評価値E及び減速評価値Eがプロットされると共に加速評価値E及び減速評価値Eの変遷が矢印で示された操作支援画像が生成されるようにすればよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、ブーム上げ止め操作が完了したタイミングでサポート情報を含む操作支援画像(図7)がモニタ83に出力される場合を例示したが、これに限定されない。
【0072】
例えば、ブーム上げ止め操作を繰り返し行う場合には、前回の加速評価値E及び減速評価値Eと目標値TVとの距離L(図9参照)に応じて操作支援画像を出力する頻度を決定し、その頻度で操作支援画像がモニタ83に出力されるようにしてもよい。なお、目標値TVは、加速評価値及び減速評価値が共に100である点である。
【0073】
具体的には、機能的な構成として、操作支援画像を出力する頻度を決定する頻度決定部をコントローラ6に設ける。頻度決定部は、以下の数式3に基づいて距離Lを演算する。
【数3】
【0074】
また、頻度決定部は、図10の頻度テーブル73を参照し、演算した距離Lの値に対応付けられた頻度を操作支援画像の出力頻度に決定する。
【0075】
例えば、距離Lの値が「62」であった場合には、出力頻度は「1回/1時間」に決定され、操作支援画像は1時間に1回の頻度で出力される。また、距離Lの値が「86」であった場合には、出力頻度は「2回/1時間」に決定され、操作支援画像は1時間に2回の頻度で出力される。
【0076】
かかる変形例によれば、加速評価値E及び減速評価値Eと目標値TVとの距離が大きい場合(換言すれば、オペレータのスキルが低い場合)には、操作支援画像を高頻度で出力し、オペレータのスキル向上を促すことが可能である。一方、加速評価値E及び減速評価値Eと目標値TVとの距離が小さい場合(換言すれば、オペレータのスキルが高い場合)には、操作支援画像を低頻度で出力し(あるいは操作支援画像を出力せず)、オペレータのスキルに応じた適切なサポートを行うことが可能である。
【0077】
また、上述した実施形態では、操作タイプに紐付けられたサポート情報を含む操作支援画像が生成される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、加速評価値E及び減速評価値Eと目標との距離に応じてサポート情報に追加する追加情報を決定し、サポート情報と追加情報とを含む操作支援画像を生成するようにしてもよい。
【0078】
なお、ここでは、直線SLを目標とし、加速評価値E及び減速評価値Eから直線SLに下ろした垂線の距離e(図9参照)に応じてサポート情報に追加する追加情報を決定する場合を例示する。
【0079】
具体的には、機能的な構成として、サポート情報に追加する追加情報を決定する追加情報決定部をコントローラ6に設ける。追加情報決定部は、以下の数式4に基づいて距離eが演算する。
【数4】
【0080】
また、追加情報決定部は、図11に示す追加情報テーブル74を参照し、演算した距離eの値に対応付けられたメッセージを追加情報として決定する。例えば、距離eの値が「74」であった場合には、追加情報は「操作がかなり消極的です」に決定され、図12に示す操作支援画像が出力される。図12に示す操作支援画像では、慎重に対応するサポート情報(図6の太枠)の前に追加情報「操作がかなり消極的です。」が追加されている。また、距離eの値が「22」であった場合には、追加情報は「操作が少し消極的です」に決定され、図13に示す操作支援画像が出力される。図13に示す操作支援画像では、慎重に対応するサポート情報(図6の太枠)の前に追加情報「操作が少し消極的です。」が追加されている。
【0081】
かかる変形例によれば、加速評価値E及び減速評価値Eと目標値との距離(換言すれば、オペレータのスキル)に応じて、操作支援画像に表示される内容を変更することが可能である。例えば、加速評価値E及び減速評価値Eと目標値との距離が大きく、スキルの低いオペレータには、語気の強いメッセージをサポート情報に追加して表示することができる。あるいは、加速評価値E及び減速評価値Eと目標値との距離が小さく、スキルの高いオペレータには、語気の強くないメッセージをサポート情報に追加して表示する、あるいは、メッセージが表示されないようにすることができる。
【0082】
また、上述した実施形態では、表示制御部66がサポート情報を含む表示画像をモニタ83に出力することで当該サポート情報をオペレータに視覚的に報知する場合を例示したが、これに限定されず、音声で聴覚的に報知するようにしてもよい。
【0083】
その場合、モニタ83の代わりにスピーカを運転室内に設置し、表示制御部66の代わりに音声制御部をコントローラ6に設けた上で、当該音声制御部がサポート情報の音声データをスピーカに出力するようにすればよい。かかる変形例では、音声制御部が本発明に係る「報知部」の一例に相当する。
【0084】
また、上述した実施形態では、サポート情報の一例として、オペレータが注視すべき機体の状態(エンジンの音の抑揚など)を示すことでブーム上げ止め操作のスキルを間接的に向上させるためのメッセージを例示したが、これに限定されない。例えば、ブーム上げ止め操作の操作内容(レバーの操作方法など)を具体的に指示するようにしてもよい。その場合、ブーム上げ止め操作のスキルを直接的に向上させるためのメッセージなどがサポート情報として用いられる。
【0085】
また、上述した実施形態では、図7に示す操作支援画像がリアルタイム(作業中)に表示される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、作業終了後に、サポート(操作支援)を受けたことによるスキルの変遷(成長度合い)や、より良い操作を実現するために注視すべき情報をレポートとして提示するようにしてもよい。
【0086】
また、上述した実施形態では、オペレータの操作タイプが「積極」又は「慎重」のいずれか一方に判定される場合を例示したが、これに限定されない。操作タイプとして「積極」と「慎重」との間の「中間」を更に考慮し、オペレータの操作タイプが「積極」、「中間」又は「慎重」のいずれかに判定されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように本発明の建設機械は、オペレータによる特定操作をサポートするのに適している。
【符号の説明】
【0088】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 アタッチメント
5 キャブ
6 コントローラ
7 記憶装置
41 ブーム
42 アーム
43 バケット
44 各油圧シリンダ
61 運転データ取得部
62 加減速データ特定部
63 評価用データ取得部
64 評価値演算部
65 操作タイプ判定部
66 表示制御部
71 評価用基準テーブル
72 サポート情報テーブル
73 頻度テーブル
74 追加情報テーブル
81 センサ
82 レバー計
83 モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13