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特開2022-26395荷電粒子線装置および電気ノイズの計測方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026395
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置および電気ノイズの計測方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20220203BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01J37/22 502G
H01J37/28 B
H01J37/22 502H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129847
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩塚 崇泰
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智世
(72)【発明者】
【氏名】李 ウェン
(72)【発明者】
【氏名】門井 涼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
【テーマコード(参考)】
5C033
【Fターム(参考)】
5C033UU05
5C033UU06
(57)【要約】
【課題】荷電粒子線装置において、高周波の電気ノイズを計測できる技術を提供する。
【解決手段】荷電粒子線装置100は、電子ビームEB1を発生させるための電子源2と、試料10を設置するためのステージ4と、試料10から放出される二次電子EB2を検出するための検出器5と、電子源2、ステージ4および検出器5に電気的に接続され、且つ、これらを制御可能な制御部7と、を備える。ここで、ステージ4上に試料10が設置され、試料10の特定箇所(11)に対して電子源2から電子ビームEB1が連続的に照射された場合、制御部7は、特定箇所(11)から放出された二次電子EB2の量に基づいて、電子ビームEB1の照射位置の時系列変化を算出でき、照射位置の時系列変化に基づいて、電子ビームEB1の揺れの特徴量を算出できる。また、特徴量は、周波数スペクトルを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを発生させるための電子源と、
試料を設置するためのステージと、
前記試料から放出される二次電子を検出するための検出器と、
前記電子源、前記ステージおよび前記検出器に電気的に接続され、且つ、これらを制御可能な制御部と、
を備え、
前記ステージ上に前記試料が設置され、前記試料の特定箇所に対して前記電子源から前記電子ビームが連続的に照射された場合、前記制御部は、前記特定箇所から放出された前記二次電子の量に基づいて、前記電子ビームの照射位置の時系列変化を算出でき、前記照射位置の時系列変化に基づいて、前記電子ビームの揺れの特徴量を算出でき、
前記特徴量は、周波数スペクトルを含む、荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記制御部は、前記二次電子の量の時系列変化に基づいて、輝度の時系列変化を算出でき、前記輝度の時系列変化に基づいて、前記照射位置の時系列変化を算出できる、荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記制御部は、前記照射位置の時系列変化に含まれる取得データ数を調整できる、荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記特定箇所は、
前記試料の第1領域と、
前記第1領域に隣接する前記試料の第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との境界と、
を含み、
前記第2領域は、前記第1領域と高低差を有する領域であるか、前記第1領域と異なる材質からなる領域である、荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
前記特定箇所は、前記試料のうち互いに異なる2つ以上の計測点を含み、
各計測点に対して、前記電子ビームが連続的に照射される、荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子線装置において、
前記特定箇所のうち第1計測点における前記第1領域、前記第2領域および前記境界は、第1方向に延在し、
前記特定箇所のうち前記第1計測点と異なる第2計測点における前記第1領域、前記第2領域および前記境界は、前記第1方向と交差する第2方向に延在している、荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
それぞれ前記制御部に電気的に接続された記憶部および表示部を更に備え、
算出された前記特徴量は、前記記憶部に保存され、
前記制御部は、一定期間毎に前記特徴量を算出し、前記記憶部に保存されている一定期間毎の前記特徴量を前記表示部に表示できる、荷電粒子線装置。
【請求項8】
電子ビームを発生させるための電子源と、
試料を設置するためのステージと、
前記試料から放出される二次電子を検出するための検出器と、
前記検出器に電気的に接続されたデータ取得部と、
前記電子源、前記ステージ、前記検出器および前記データ取得部に電気的に接続され、且つ、これらを制御可能な制御部と、
を備えた荷電粒子線装置を用いて行われる電気ノイズの計測方法であって、
(a)前記ステージ上に前記試料を設置するステップ、
(b)前記ステップ(a)の後、前記試料の特定箇所に対して、前記電子源から前記電子ビームを連続的に照射するステップ、
(c)前記ステップ(b)の後、前記検出器において、前記特定箇所から放出された前記二次電子を検出するステップ、
(d)前記ステップ(c)の後、前記データ取得部において、検出された前記二次電子の量を計測するステップ、
(e)前記ステップ(d)の後、前記制御部において、前記二次電子の量に基づいて、前記電子ビームの照射位置の時系列変化を算出するステップ、
(f)前記ステップ(e)の後、前記制御部において、前記照射位置の時系列変化に基づいて、前記電子ビームの揺れの特徴量を算出するステップ、
を有し、
前記特徴量は、周波数スペクトルを含む、電気ノイズの計測方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電気ノイズの計測方法において、
前記ステップ(e)では、前記制御部において、前記二次電子の量の時系列変化に基づいて、輝度の時系列変化が算出され、前記輝度の時系列変化に基づいて、前記照射位置の時系列変化が算出される、電気ノイズの計測方法。
【請求項10】
請求項8に記載の電気ノイズの計測方法において、
前記制御部は、前記照射位置の時系列変化に含まれる取得データ数を調整できる、電気ノイズの計測方法。
【請求項11】
請求項8に記載の電気ノイズの計測方法において、
前記特定箇所は、
前記試料の第1領域と、
前記第1領域に隣接する前記試料の第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との境界と、
を含み、
前記第2領域は、前記第1領域と高低差を有する領域であるか、前記第1領域と異なる材質からなる領域である、電気ノイズの計測方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電気ノイズの計測方法において、
前記特定箇所は、前記試料のうち互いに異なる2つ以上の計測点を含み、
前記ステップ(b)において、各計測点に対して、前記電子ビームが連続的に照射される、電気ノイズの計測方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電気ノイズの計測方法において、
前記特定箇所のうち第1計測点における前記境界は、第1方向に延在し、
前記特定箇所のうち前記第1計測点と異なる第2計測点における前記境界は、前記第1方向と交差する第2方向に延在している、電気ノイズの計測方法。
【請求項14】
請求項8に記載の電気ノイズの計測方法において、
前記荷電粒子線装置は、それぞれ前記制御部に電気的に接続された記憶部および表示部を更に備え、
前記電気ノイズの計測方法は、(g)前記ステップ(f)の後、算出された前記特徴量を前記記憶部に保存するステップを更に有し、
前記ステップ(a)~前記ステップ(g)は、一定期間毎に実施され、
前記制御部は、前記記憶部に保存されている一定期間毎の前記特徴量を、前記表示部に表示できる、電気ノイズの計測方法。
【請求項15】
請求項8に記載の電気ノイズの計測方法において、
前記荷電粒子線装置は、それぞれ前記制御部に電気的に接続された記憶部および表示部を更に備え、
前記電気ノイズの計測方法は、
(g)前記ステップ(f)の後、算出された前記特徴量を前記記憶部に保存するステップ、
(h)前記ステップ(g)の後、算出された前記特徴量を前記表示部に表示するステップ、
(i)前記ステップ(h)の後、前記ステップ(c)~前記ステップ(h)を1回以上繰り返すステップ、
を更に有する、電気ノイズの計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置および電気ノイズの計測方法に関し、特に、電子ビームの揺れ量の特徴量を計測可能な荷電粒子線装置、および、その荷電粒子線装置を用いて行われる電気ノイズの計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスなどの試料の構造を解析するために、荷電粒子線装置の1つである走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)が用いられている。SEM装置では、電子ビームが、試料上において照射および走査され、試料の表面から放出された二次電子が、検出器において検出される。二次電子は、試料の表面の凹凸および材質の情報を含む。照射された領域ごとに、二次電子のエネルギーおよび数の変化を輝度値に変換することで、SEM像が形成される。
【0003】
鮮明なSEM像を得るためには、電子源から放出された電子ビームに電気ノイズが重畳しないことが望ましい。SEM装置の内部および外部で発生した電気ノイズは、電子ビームが通過する鏡筒の内部の電場または磁場を乱し、電子ビームに揺れとして重畳する。その結果として、SEM像に揺れが発生し、SEM像の質が劣化する。
【0004】
電子ビームに揺れをもたらす電気ノイズを低減するためには、ノイズ源を特定する必要があるが、有効な手段として、電子ビームの揺れを検出し、それに含まれる周波数成分とノイズ源の周波数ピークとを照らし合わせる方法がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、二次電子の放出量が大きく異なる2つの領域の境界部分に、走査を停止した電子ビームを照射し続け、電子ビームの揺れに重畳した商用電源由来のノイズを輝度変化として検出し、電子ビームに補正信号を加え、電子ビームの揺れをキャンセルする方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、特殊なパターン上で電子ビームの走査を停止し、電子ビームのON/OFFを高速で繰り返すことで、高周波の電子ビームの揺れを低周波のうなりへ変換し、電子ビームの揺れの周波数特性を得るという方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、試料上でX方向またはY方向の何れかにのみ走査を繰り返し、得られた各スキャン結果のずれ量を解析し、電子ビームの揺れの周波数特性を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-65760号公報
【特許文献2】特開平9-312246号公報
【特許文献3】特開2012-151053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
半導体プロセスの微細化に伴い、上述のような電気ノイズに起因する電子ビームの揺れが、測長精度の劣化に大きな影響を及ぼしている。それ故、電子ビームの揺れを検出および解析する技術の重要性が、増している。
【0010】
近年、荷電粒子線装置においてスイッチング電源化が進んでおり、電気ノイズは、数百kHzまで高周波化されている。しかし、微小な電子ビームの揺れを、数百kHz以上の高周波まで計測できる技術は無い。それ故、顧客先へ装置が設置された後、測長精度などの性能劣化が起こった場合、それが、装置の内部および外部で発生した高周波の電気ノイズの変化に因るものであるのか、それ以外の要因に因るものであるのかを区別することが難しい。従って、その対策に時間が掛かり、装置の機能の回復が遅れるという課題がある。
【0011】
上述の特許文献1および特許文献2では、電子ビームの揺れ量を計算するために、電子ビームの形状を正確に把握する必要がある。また、電子ビーム径は数umを想定しているので、SEM装置で使用されるような数nmの細い電子ビーム径を使用することができない。
【0012】
上述の特許文献3では、試料の特定箇所を繰り返しスキャンすることによって、電気ノイズが計測されるが、スキャンの振り戻し時間が原因となり、数百kHz以上の高周波の電気ノイズの計測が行えない。
【0013】
また、これらの特許文献1~3では、装置のインライン動作時において、電気ノイズの計測を行うことが想定されておらず、計測の高速化についての言及もない。
【0014】
このような状況から、荷電粒子線装置において、数百kHz以上の高周波における電子ビームの微小な揺れを、状況に応じた速度で高精度に計測することで、高周波の電気ノイズを計測できる技術が望まれる。
【0015】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0017】
一実施の形態における荷電粒子線装置は、電子ビームを発生させるための電子源と、試料を設置するためのステージと、前記試料から放出される二次電子を検出するための検出器と、前記電子源、前記ステージおよび前記検出器に電気的に接続され、且つ、これらを制御可能な制御部と、を備える。ここで、前記ステージ上に前記試料が設置され、前記試料の特定箇所に対して前記電子源から前記電子ビームが連続的に照射された場合、前記制御部は、前記特定箇所から放出された前記二次電子の量に基づいて、前記電子ビームの照射位置の時系列変化を算出でき、前記照射位置の時系列変化に基づいて、前記電子ビームの揺れの特徴量を算出でき、前記特徴量は、周波数スペクトルを含む。
【0018】
また、一実施の形態における電気ノイズの計測方法は、電子ビームを発生させるための電子源と、試料を設置するためのステージと、前記試料から放出される二次電子を検出するための検出器と、前記検出器に電気的に接続されたデータ取得部と、前記電子源、前記ステージ、前記検出器および前記データ取得部に電気的に接続され、且つ、これらを制御可能な制御部と、を備えた荷電粒子線装置を用いて行われる。また、電気ノイズの計測方法は、(a)前記ステージ上に前記試料を設置するステップ、(b)前記ステップ(a)の後、前記試料の特定箇所に対して、前記電子源から前記電子ビームを連続的に照射するステップ、(c)前記ステップ(b)の後、前記検出器において、前記特定箇所から放出された前記二次電子を検出するステップ、(d)前記ステップ(c)の後、前記データ取得部において、検出された前記二次電子の量を計測するステップ、(e)前記ステップ(d)の後、前記制御部において、前記二次電子の量に基づいて、前記電子ビームの照射位置の時系列変化を算出するステップ、(f)前記ステップ(e)の後、前記制御部において、前記照射位置の時系列変化に基づいて、前記電子ビームの揺れの特徴量を算出するステップ、を有する。ここで、前記特徴量は、周波数スペクトルを含む。
【発明の効果】
【0019】
一実施の形態によれば、荷電粒子線装置において、高周波の電気ノイズを計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1における荷電粒子線装置を示す模式図である。
図2】実施の形態1における試料の特定箇所を示す平面図である。
図3】実施の形態1における輝度の時系列変化を示すグラフである。
図4】実施の形態1における電子ビームの揺れの周波数スペクトルを示すグラフである。
図5】実施の形態1における電気ノイズの計測方法を示すフローチャートである。
図6】実施の形態2における試料の計測点を示す平面図である。
図7】実施の形態2における試料の計測点を示す平面図である。
図8】実施の形態2における試料の計測点を示す平面図である。
図9A】実施の形態2におけるX方向の電子ビームの揺れの周波数スペクトルを示すグラフである。
図9B】実施の形態2におけるY方向の電子ビームの揺れの周波数スペクトルを示すグラフである。
図9C】実施の形態2における電子ビームの揺れの振幅の計算図である。
図10】実施の形態3における電子ビームの揺れの周波数スペクトルを示すグラフである。
図11】実施の形態3における電子ビームの揺れの周波数スペクトルを示すグラフである。
図12A】実施の形態4における環境変化および経年劣化による電子ビームの揺れ量の増減のモニタリングを示す模式図である。
図12B】実施の形態4における電子ビームの揺れの周波数スペクトルを示すグラフである。
図12C】実施の形態4における電子ビームの揺れの周波数スペクトルを示すグラフである。
図12D】実施の形態4における電子ビームの揺れの周波数スペクトルを示すグラフである。
図13】実施の形態4におけるGUIを示す模式図である。
図14】実施の形態5における管理システムを示す模式図である。
図15】実施の形態6における電気ノイズの計測方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0022】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する場合もある。
【0023】
(実施の形態1)
<荷電粒子線装置100の構成>
以下に図1を用いて、実施の形態1における荷電粒子線装置100について説明する。以下で説明する荷電粒子線装置100は、半導体検査装置であり、走査型電子顕微鏡(SEM装置)であるが、荷電粒子線装置100は、走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM)などのような他の装置であってもよい。
【0024】
図1に示されるように、荷電粒子線装置100は、試料室1、電子源2、偏向器3、ステージ4、検出器5、データ取得部6、制御部7、記憶部8および表示部9を備える。制御部7は、電子源2、偏向器3、ステージ4、検出器5、データ取得部6、記憶部8および表示部9に電気的に接続され、これらを制御可能である。
【0025】
検査対象となる試料10を観察する場合、試料室1の内部は、高真空にされ、試料10が、ステージ4上に搭載される。電子源(荷電粒子源)2から放出された電子ビーム(荷電粒子ビーム)EB1は、偏向器3によって、試料10のうち所望の位置へ走査される。検出器5は、例えば二次電子検出器であり、電子ビームEB1が試料10に照射された際に、試料10から放出される二次電子EB2を検出する。
【0026】
データ取得部6は、検出器5に電気的に接続され、検出された二次電子EB2の量を計測できる。また、二次電子EB2は、データ取得部6でサンプリングされ、信号に変換されて、制御部7へ出力される。
【0027】
制御部7は、出力された信号を解析し、SEM像を生成できる。SEM像などの解析結果は、記憶部8に保存される。また、制御部7は、必要に応じて記憶部8に保存された解析結果を表示部9に表示できる。
【0028】
実施の形態1における制御部7は、試料10の特定箇所11から放出された二次電子EB2の量に基づいて、電子ビームEB1の照射位置の時系列変化を算出でき、この照射位置の時系列変化に基づいて、電子ビームEB1の揺れの特徴量を算出できる。このような機能について、以下に図2図4を用いて説明する。
【0029】
図2は、試料10の一部を拡大した平面図である。図2に示されるように、試料10は、第1領域10aと、第1領域10aに隣接する第2領域10bとを含んでいる。第2領域10bは、例えば第1領域10aと高低差を有する領域である。
【0030】
ここでは、第1領域10aおよび第2領域10bは、ライン&スペースパターンを構成している。第1領域10a、第2領域10bおよびこれらの境界は、それぞれY方向に延在している。
【0031】
実施の形態1におけるライン&スペースパターンとは、X方向において、高低差を有するパターンであり、低地と高地とが繰り返し並んだパターンである。なお、低地とは、Z方向における物体の高さが相対的に低い領域であり、高地とは、Z方向における物体の高さが相対的に高い領域である。第1領域10aが低地である場合、第2領域10bは高地であり、第2領域10bが低地である場合、第1領域10aは高地である。
【0032】
なお、実施の形態1におけるライン&スペースパターンは、高低差を有するパターンに限られない。例えば、第2領域10bが、第1領域10aと異なる材質からなる領域であってもよい。すなわち、第1領域10aおよび第2領域10bは、互いの輝度に差が出るように構成されていればよい。以下では、ライン&スペースパターンが高低差を有するパターンである場合について、説明する。
【0033】
特定箇所11は、電子ビームEB1が連続して照射される箇所であり、第1領域10a、第2領域10bおよびこれらの境界を含んでいる。
【0034】
図3は、輝度の時系列変化を示すグラフである。基本的に、二次電子EB2は検出器5で検出されるが、二次電子EB2の量が多ければ輝度が高くなり、二次電子EB2の量が少なければ輝度が低くなる。
【0035】
ライン&スペースパターンの低地では輝度が低くなり、ライン&スペースパターンの高地では輝度が高い。偏向器3によって電子ビームEB1が走査されることなく、電子ビームEB1を第1領域10aと第2領域10bとの境界付近に連続的に照射することで、X方向における電子ビームEB1の揺れが、輝度の時系列変化として算出される。ある時間における輝度の変化が大きいということは、電子ビームEB1の揺れが大きいことを意味し、電子ビームEB1の照射位置がずれていることを意味する。従って、輝度の時系列変化から、電子ビームEB1の照射位置の時系列変化を算出できる。
【0036】
すなわち、ステージ4上に試料10が設置され、試料10の特定箇所11に対して電子源2から電子ビームEB1が連続的に照射された場合、特定箇所11から放出された二次電子EB2は、検出器5によって検出され、データ取得部6において、検出された二次電子EB2の量が計測される。そして、制御部7は、二次電子EB2の量の時系列変化に基づいて、輝度の時系列変化を算出し、輝度の時系列変化に基づいて、電子ビームEB1の照射位置の時系列変化を算出する。
【0037】
その後、図4に示されるように、輝度の変動を電子ビームEB1の揺れ量に変換し、高速フーリエ変換(FFT)などの周波数解析を行うと、電子ビームEB1の揺れの周波数スペクトルが得られる。その結果、電子ビームEB1の揺れに含まれる周波数成分と、その振幅(揺れの大きさ)とが分かる。図4では、周波数fおよび周波数fにおける振幅が、それぞれ振幅Aおよび振幅Aとして表され、これらがノイズピークとなっている。
【0038】
なお、実施の形態1では、電子ビームEB1の揺れの周波数スペクトルは、電子ビームの揺れの特徴量の一部として定義される。言い換えれば、特徴量は、周波数スペクトルを含む。
【0039】
<電気ノイズの計測方法>
以下に図5を用いて、実施の形態1における電気ノイズの計測方法を説明する。
【0040】
ステップS1では、試料10の位置合わせが行われる。まず、ステージ4上に試料10を設置する。次に、制御部7の制御によって、ステージ4を移動させる、または、偏向器3による走査を行うことで、電子ビームEB1が、試料10の特定箇所11にフォーカスされる。
【0041】
ステップS2では、電子ビームEB1の照射が行われる。制御部7の制御によって、偏向器3によって電子ビームEB1が走査されることなく、特定箇所11に対して、電子源2から電子ビームEB1を連続的に照射する。
【0042】
ステップS3では、電子ビームEB1の照射位置の時系列変化の取得が行われる。まず、検出器5において、特定箇所11から放出された二次電子EB2を検出する。次に、データ取得部6において、検出された二次電子EB2の量を計測する。そして、上述の図3のように、制御部7において、二次電子EB2の量の時系列変化に基づいて、輝度の時系列変化を算出し、輝度の時系列変化に基づいて、電子ビームEB1の照射位置の時系列変化を算出する。
【0043】
ステップS4では、電子ビームEB1の揺れの特徴量の取得が行われる。上述の図4のように、制御部7において、電子ビームEB1の照射位置の時系列変化に基づいて、電子ビームEB1の揺れの特徴量を算出する。なお、この特徴量は、周波数スペクトルを含む。
【0044】
ステップS5では、特徴量などの保存が行われる。制御部7の制御によって、二次電子EB2の量の時系列変化、輝度の時系列変化、電子ビームEB1の照射位置の時系列変化および電子ビームEB1の揺れの特徴量などの計測結果(解析結果)が、記憶部8に保存される。
【0045】
ステップS6では、制御部7の制御によって、記憶部8に保存された特徴量などの計測結果が、必要に応じて表示部9に表示される。
【0046】
実施の形態1では、特許文献1と異なり、電子ビームEB1を照射する対象である特定箇所11が、高いコントラストを有する必要は無い。また、電子ビームEB1の揺れ量よりも、電子ビームEB1のビーム径が大きくなければならないという制約も無い。なお、電子ビームEB1の形状に特に制約は無いが、電子ビームEB1の形状はなるべく細いことが好ましく、フォーカスが絞られている方が好ましい。
【0047】
また、実施の形態1では、特定箇所11に対して電子ビームEB1を連続的に照射し続けるので、特許文献3の課題であったスキャンの振り戻しに起因するサンプリング速度の上限が無い。それ故、実施の形態1では、データ取得部6のサンプリング速度上限まで計測可能周波数を上げることができ、近年問題視されている数百kHz以上の高周波ノイズに対応できる。
【0048】
以上のように、実施の形態1における荷電粒子線装置100と、電気ノイズの計測方法とを用いれば、数百kHz以上の高周波における電子ビームEB1の微小な揺れを高精度および高速に計測でき、高周波の電気ノイズを計測できる。
【0049】
また、実施の形態1では、ステップS1~S6のような、一連の電気ノイズの計測のステップをプログラム化し、電気ノイズ測定用の仕様として荷電粒子線装置100に設定しておくことにより、高速な電気ノイズの計測を安定的に実行させることが可能となる。
【0050】
また、電子ビームEB1が高周波の電気ノイズの影響を受けていると判断した際、その結果をフィードバックし、電気ノイズを低減または除去するような対策を講じることで、電子ビームEB1の揺れを改善でき、荷電粒子線装置100の機能を迅速に回復できる。従って、荷電粒子線装置100において形成されるSEM像の質が劣化するという不具合を、解消することができる。
【0051】
(実施の形態2)
以下に図6図8および図9A図9Cを用いて、実施の形態2における荷電粒子線装置100および電気ノイズの計測方法を説明する。なお、以下では、主に実施の形態1との相違点について説明する。
【0052】
実施の形態1では、X方向のような1方向における電子ビームEB1の揺れを検出したが、実施の形態2では、X方向およびY方向のような複数の方向における電子ビームEB1の揺れを検出する。図6図8は、試料10のうち互いに異なる領域を示している。
【0053】
図6に示されるライン&スペースパターンは、実施の形態1と同様であり、図6の第1領域10a、第2領域10bおよびこれらの境界は、それぞれY方向に延在している。
【0054】
図7に示されるライン&スペースパターンは、図6と交差し、図7の第1領域10a、第2領域10bおよびこれらの境界は、それぞれX方向に延在している。すなわち、図6図7とでは、第1領域10a、第2領域10bおよびこれらの境界は、互いに交差し、互いに直交している。
【0055】
実施の形態2では、特定箇所11は、試料10のうち互いに異なる2つ以上の計測点を含んでいる。ここでは、試料10の特定箇所11は、図6の計測点11aと、図7の計測点11bとを含む。計測点11aおよび計測点11bは、それぞれ、第1領域10a、第2領域10bおよびこれらの境界を含む。
【0056】
計測点11aを用いて、X方向おける電子ビームEB1の揺れを検出でき、計測点11bを用いて、Y方向おける電子ビームEB1の揺れを検出できる。すなわち、計測点11aに対して図5のステップS1~S6が行われた後、計測点11bに対して図5のステップS1~S6が行われる。なお、計測点11bが先であってもよい。このように、計測点11aおよび計測点11bに対して、それぞれ電子ビームEB1が連続的に照射され、計測点11aおよび計測点11bにおける電子ビームEB1の揺れの特徴量が取得される。
【0057】
また、図8に示される円形パターンの左右端および上下端を使用することでも、X方向およびY方向おける電子ビームEB1の揺れを検出できる。任意方向のビームの揺れに対しては、X方向およびY方向おける電子ビームEB1の揺れを独立に計測した後、それぞれの結果を用いて、揺れの大きさおよび方向を計算すればよい。
【0058】
図9A図9Cは、任意方向の揺れの大きさおよび方向を計算する方法を示している。図6図8を用いて、それぞれ独立にX方向およびY方向おける電子ビームEB1を計測し、周波数解析した結果、周波数fの位置にそれぞれ振幅Axおよび振幅Ayを持つピークが存在したとする。この場合、図9Cに示されるように、周波数fのピークは、実際にはX軸から角度θで傾いた方向に、振幅Aで振動していると言える。このような角度θおよび振幅Aにおける周波数スペクトルを用いて、電子ビームEB1の揺れを検出できる。
【0059】
このように、実施の形態2によれば、複数の方向における電子ビームEB1の揺れを検出できるので、電子ビームEB1がどの方向から電気ノイズの影響を受けているのかを、より精度良く検査することができる。
【0060】
(実施の形態3)
以下に図10および図11を用いて、実施の形態3における荷電粒子線装置100および電気ノイズの計測方法を説明する。なお、以下では、主に実施の形態1との相違点について説明する。
【0061】
実施の形態3では、状況に応じて、高速の電気ノイズの計測方法と、低速の電気ノイズの計測方法とを使い分ける方法について説明する。実施の形態3における荷電粒子線装置100は、電子ビームEB1の揺れに関する計測を、状況に応じて高速計測または低速計測として使い分ける機能を有する。
【0062】
試料10の特定箇所11で位置固定し、電子ビームEB1を照射すると、検出器5には常に二次電子EB2の時間変化が入力されるので、制御部7からの制御によってデータ取得部6の設定を変更するだけで、容易に取得データ数を変更することができる。例えば、取得データ数を少なくするためには、図3に示される輝度の時系列変化のうち、全部ではなく、一部のみを適用すればよい。
【0063】
すなわち、制御部7は、輝度の時系列変化に含まれる取得データ数を調整でき、電子ビームEB1の照射位置の時系列変化に含まれる取得データ数を調整できる。そして、それらに伴って、制御部7は、電子ビームEB1の揺れの特徴量(周波数スペクトル)に含まれる取得データ数を調整できる。
【0064】
図10に示されるように、電気ノイズの大雑把な特徴を把握したい場合、取得データ数を減らして高速計測を行う。その場合、計測は高速に終了するが、結果として得られる周波数スペクトルは粗くなる。
【0065】
このような高速計測は、通常使用時に適している。荷電粒子線装置100のインライン動作時、例えばオートフォーカスの直後などでは、高速計測に設定しておくことで、荷電粒子線装置100の動作状況をモニタできる。
【0066】
また、図11に示されるように、電気ノイズの詳細な特徴を把握したい場合、取得データ数を増やして低速計測を行う。その場合、計測終了までの時間が増えるが、詳細な周波数スペクトルが得られる。
【0067】
このような低速計測は、荷電粒子線装置100の異常発生時および定期メンテナンス時に適している。取得データ数を増やした計測を行うことで、電気ノイズの特性およびその発生源を詳細に把握することができる。
【0068】
なお、実施の形態3で開示した技術を、実施の形態2で開示した技術に組み合わせて実施することもできる。
【0069】
(実施の形態4)
以下に図12A図12Dおよび図13を用いて、実施の形態4における荷電粒子線装置100および電気ノイズの計測方法を説明する。なお、以下では、主に実施の形態1との相違点について説明する。
【0070】
実施の形態4では、一定期間毎に電子ビームEB1の揺れの特徴量の算出を行い、装置内外の環境変化および経年劣化をモニタする方法について説明する。
【0071】
図12Aは、環境変化および経年劣化による電子ビームEB1の揺れ量の増減のモニタリングを示している。測長性能は、電子ビームEB1の揺れが大きいほど劣化すると考えられるので、各計測のタイミングにおける電子ビームEB1の揺れによる測長性能の劣化の指標として、例えば周波数スペクトル中の全てのピーク値の二乗和の平方根などで、電子ビームEB1の揺れの強度を定義する。
【0072】
なお、図12Aに示される計測のタイミングB~Dにおける周波数スペクトルは、それぞれ、図12B図12Dに対応している。
【0073】
まず、出荷前に荷電粒子線装置100の電子ビームEB1の揺れを計測し、図12Bに示されるような周波数スペクトルを記憶部8に保存する。そして、このときの電子ビームEB1の揺れの周波数スペクトルから、出荷前の電子ビームEB1の揺れの強度を計算し、この強度を記憶部8に保存する。
【0074】
次に、荷電粒子線装置100の設置後、例えば1カ月毎に電子ビームEB1の揺れの計測を実行し、その都度、電子ビームEB1の揺れの強度を計算し、それらを周波数スペクトルと共に記憶部8に保存する。
【0075】
各計測のタイミングに対する電子ビームEB1の揺れの強度をプロットすることによって、装置内外の環境変化または経年劣化による電子ビームEB1の揺れが測長性能の劣化にもたらす影響を、定量的に把握することができる。
【0076】
図12Aに示される破線は、各計測のタイミングにおける電子ビームEB1の揺れの強度を表している。また、ハッチングされた領域は、出荷前の電子ビームEB1の揺れの強度を表している。
【0077】
この例では、荷電粒子線装置100の設置後、1カ月目と2カ月目との間に大きな周辺環境変化が起こり、電子ビームEB1の揺れが、極端に増加し、事前に設定されていた異常検出レベルを超えている。
【0078】
その後、電気ノイズ対応を行い、電子ビームEB1の揺れは、3カ月目には元の水準に落ち着いている。その後も毎月、電気ノイズの計測を行い、12カ月目の計測を終えた後にメンテナンスが行われ、それまで経年劣化によって増大した電子ビームEB1の揺れが、13カ月目には設置直後の水準に落ち着いている。
【0079】
図12B図12Dは、それぞれ荷電粒子線装置100の設置の直後、装置設置後2カ月目および装置設置後12カ月目における電気ノイズの計測結果を表しており、周波数スペクトルのうち太線は、ノイズピークを表している。
【0080】
図12Aの電子ビームEB1の揺れの強度は、これらの周波数スペクトルのピーク値を用いて計算されている。図12Bでは、ほとんどノイズピークが見当たらなかったのに対して、図12Cおよび図12Dでは、ノイズピークの数および値が増えている。
【0081】
顧客は、図12Aを見ることによって、ウエハを測長する前に測長性能が劣化していることが予想できるので、迅速に電気ノイズ対応を行うことができる。
【0082】
また、メンテナンス担当者は、図12B図12Dの電子ビームEB1の揺れを見て、どの位置にピークが出ているかを記録し、電気ノイズ源および電気ノイズの周波数を確認することによって、即座に電気ノイズ源を特定することができる。
【0083】
図13は、定期的な電気ノイズの計測結果を表示するGUIの例である。図12A図12Dを用いて説明したように、電子ビームEB1の揺れの特徴量(周波数スペクトル)を算出するために、図3に示されるステップS1~S6が、一定期間毎に実施され、それらの結果は、記憶部8に保存される。制御部7は、記憶部8に保存されている一定期間毎の特徴量を、図13のように、表示部9のウィンドウWD3に表示できる。
【0084】
ウィンドウWD1内には、様々な項目が表示される。ウィンドウWD1の左上では、時間軸データのインターバルを月1回、週1回、毎日および任意(ユーザー定義)に設定するためのチェックボックスが表示されている。ユーザが何れかのチェックボックスにチェックを入れると、ウィンドウWD1の右上に、計測タイミング毎の電子ビームEB1の揺れの強度を示すウィンドウWD2が表示される。
【0085】
計測タイミング、サンプリング速度および取得データ点数は、ウィンドウWD1内に設けられた設定ボタンBT1をユーザが押すことで、変更できる。ウィンドウWD2内に表示されている電子ビームEB1の揺れの強度のうち何れかをユーザが選択すると、ウィンドウWD3のように、その時の特徴量(周波数スペクトル)が表示される。
【0086】
また、即座に電気ノイズの計測を行いたい場合は、サンプリング速度およびデータ取得点数をユーザが設定し、ウィンドウWD1内に設けられた即時計測用の実行ボタンBT2をユーザが押すことで、電気ノイズの計測が実行され、ウィンドウWD3に周波数スペクトルが表示される。
【0087】
荷電粒子線装置100の性能劣化の一つの要因である電子ビームEB1の揺れが、装置周囲の環境または時間経過によってどのように変化するかをモニタすることで、その結果をフィードバックし、荷電粒子線装置100の機能の回復が迅速に行われる。これにより、荷電粒子線装置100の高性能を維持することができ、複数の荷電粒子線装置100の性能差を低減することができる。
【0088】
なお、実施の形態4で開示した技術を、実施の形態2および実施の形態3で開示した技術に組み合わせて実施することもできる。
【0089】
(実施の形態5)
以下に図14を用いて、実施の形態5における荷電粒子線装置100および電気ノイズの計測方法を説明する。なお、以下では、主に実施の形態1との相違点について説明する。
【0090】
実施の形態5では、複数の荷電粒子線装置からの計測結果を集約する方法について説明する。
【0091】
図14に示されるように、複数の荷電粒子線装置100a~100dは、サーバ200を介して管理装置300に電気的に接続されている。複数の荷電粒子線装置100a~100dは、それぞれ実施の形態1における荷電粒子線装置100と同等の装置である。
【0092】
管理装置300には、荷電粒子線装置100a~100dの各々の動作状況、電気ノイズの計測結果およびデータを取得した時刻などが、荷電粒子線装置100a~100dの各々の制御部7からアップロードされる。
【0093】
管理装置300に蓄積されたデータを確認することで、荷電粒子線装置100a~100dの電気ノイズの計測結果と、荷電粒子線装置100a~100dが設置されている場所との関係から、電子ビームEB1の揺れの原因となる電気ノイズ源が、何処にあるのかを推測することができるので、荷電粒子線装置100a~100dの機能を改善につながる手掛かりが得られる。
【0094】
なお、実施の形態5で開示した技術を、実施の形態2~4で開示した技術に組み合わせて実施することもできる。
【0095】
(実施の形態6)
以下に図15を用いて、実施の形態6における荷電粒子線装置100および電気ノイズの計測方法を説明する。なお、以下では、主に実施の形態1との相違点について説明する。
【0096】
実施の形態6では、リアルタイムの電気ノイズの計測方法について説明する。実施の形態1などで開示されている電気ノイズの計測方法は、高速に実行可能であるので、1回の計測をループの中に入れて何度も繰り返すことにより、リアルタイムの電気ノイズの計測が可能となる。これはメンテナンス担当者が装置に発生したビーム揺れを除去する際に有用である。
【0097】
図15は、電気ノイズの計測方法を示すフローチャートである。ステップS1~S6については、図3での説明と同様である。その後、ステップS7では、計測を継続するか否かが判断される。計測を継続する場合、ステップS3に戻り、ステップS3~S6を少なくとも1回以上繰り返す。この場合、同じ特定箇所11に対して電子ビームEB1が照射され続け、表示部9には、同じ特定箇所11に対する電子ビームEB1の揺れが、リアルタイムに表示され続ける。ステップS7で、計測を継続しないと判断した場合、制御部7は電子ビームEB1の照射を停止させ、計測が終了する。
【0098】
なお、実施の形態6で開示した技術を、実施の形態2~5で開示した技術に組み合わせて実施することもできる。
【0099】
以上、上記実施の形態に基づいて本発明を具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0100】
例えば、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に、他の実施例の構成を加えることも可能である。また、上記の各構成、機能、処理部および処理手段等は、それらの一部または全部を例えば集積回路で設計することで、ハードウェアで実現されてもよい。また、上記の各構成および機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより、ソフトウェアで実現されていてもよい。各機能を実現するプログラム、テーブルおよびファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク若しくはSSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード若しくはDVD等の記録媒体に保存されてよい。
【符号の説明】
【0101】
1 試料室
2 電子源
3 偏向器
4 ステージ
5 検出器
6 データ取得部
7 制御部
8 記憶部
9 表示部
10 試料
10a 第1領域
10b 第2領域
11 特定箇所
11a、11b 計測点
100、100a~100d 荷電粒子線装置
200 サーバ
300 管理装置
BT1 設定ボタン
BT2 実行ボタン
EB1 電子ビーム
EB2 二次電子
S1~S7 ステップ
WD1~WD3 ウィンドウ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15