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特開2022-27073磁気テープ制御システムおよび磁気テープ制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027073
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】磁気テープ制御システムおよび磁気テープ制御装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 23/107 20060101AFI20220203BHJP
   G11B 5/008 20060101ALI20220203BHJP
   G11B 23/037 20060101ALI20220203BHJP
   G11B 23/087 20060101ALI20220203BHJP
   G11B 23/113 20060101ALI20220203BHJP
   G11B 23/30 20060101ALI20220203BHJP
   G11B 23/08 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G11B23/107
G11B5/008 Z
G11B23/037
G11B23/087 508A
G11B23/113 503D
G11B23/30 E
G11B23/30 Z
G11B23/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130862
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】村田 悠人
【テーマコード(参考)】
5D091
【Fターム(参考)】
5D091AA02
5D091GG22
5D091HH04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】保管後の磁気テープに対するデータの記録および/または再生において良好に記録および/または再生を行うことを可能にするための手段を提供する。
【解決手段】磁気テープ制御装置は、磁気テープをリールに巻取った状態で保管する巻替え前保管と、巻替え前保管の後、磁気テープを巻替え前保管中にテープ外側末端であった末端がテープ内側末端となり巻替え前保管中にテープ内側末端であった末端がテープ外側末端となるようにリールと異なるリール又は同一のリールに巻替えた状態で保管する巻替え後保管とを実施する。磁気テープ制御装置はまた、巻替え実施情報を送信する巻替え制御部と、巻替え実施情報を受信し、リールに巻取られた状態で保管されている磁気テープの走行を開始させて該磁気テープの巻替えを実施する駆動部と、を含む。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープをリールに巻取った状態で保管する巻替え前保管と、
前記巻替え前保管の後、前記磁気テープを、前記巻替え前保管中にテープ外側末端であった末端がテープ内側末端となり、前記巻替え前保管中にテープ内側末端であった末端がテープ外側末端となるように、前記リールと異なるリールまたは同一のリールに巻替えた状態で保管する巻替え後保管と、
を実施する、磁気テープ制御システム。
【請求項2】
前記巻替え前保管を、前記磁気テープへのデータの記録および磁気テープに記録されたデータの再生の少なくとも一方が行われた後に実施する、請求項1に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項3】
前記巻替え後保管の実施時期を、前記巻替え前保管に付された磁気テープのテープ幅に関する測定結果に基づいて決定する、請求項1または2に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項4】
前記巻替え後保管の実施時期を、前記巻替え前保管に付された磁気テープのテープ幅に関する測定結果を前記巻替え前保管に付される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果と対比した対比結果に基づいて決定する、請求項3に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項5】
前記巻替え前保管に付される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果を、前記磁気テープ制御システムのデータ保存領域に保存する、請求項4に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項6】
前記データ保存領域は、前記磁気テープとは異なる記憶媒体である、請求項5に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項7】
前記記憶媒体は、磁気テープカートリッジ内のカートリッジメモリである、請求項6に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項8】
前記データ保存領域は、前記磁気テープの一部領域である、請求項5に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項9】
前記磁気テープは、2.0μm以下のトラックピッチでデータが記録される磁気テープである、請求項1~8のいずれか1項に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項10】
前記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールは、前記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールとは異なるリールである、請求項1~9のいずれか1項に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項11】
前記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび前記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールは、同一の磁気テープカートリッジ内に収容されているリールである、請求項10に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項12】
前記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび前記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールのうち、一方のリールが磁気テープカートリッジのカートリッジリールであり、他方のリールが記録再生が行われる際に磁気テープが巻取られるリールである、請求項10に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項13】
前記他方のリールは、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置内に設置されている巻取りリールである、請求項12に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項14】
前記他方のリールは、前記一方のカートリッジリールを有する磁気テープカートリッジとは異なる磁気テープカートリッジのカートリッジリールである、請求項12に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項15】
前記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび前記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールは、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置内に設置されているリールである、請求項10に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項16】
前記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび前記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールのうち、一方のリールが磁気テープカートリッジのカートリッジリールであり、他方のリールが巻取り装置内に設置されている巻取りリールである、請求項10に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項17】
巻替え実施情報を送信する巻替え制御部と、
前記巻替え実施情報を受信して前記磁気テープの走行を開始させて前記巻替えを実施する駆動部と、
を更に含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の磁気テープ制御システム。
【請求項18】
巻替え実施情報を送信する巻替え制御部と、
前記巻替え実施情報を受信し、リールに巻取られた状態で保管されている磁気テープの走行を開始させて該磁気テープの巻替えを実施する駆動部と、
を含み、
前記巻替えは、巻替え前にテープ外側末端であった末端がテープ内側末端となり、巻替え前にテープ内側末端であった末端がテープ外側末端となるように、巻替え前に巻き取られていたリールと異なるリールまたは同一のリールに前記磁気テープを巻取ることである、磁気テープ制御装置。
【請求項19】
前記巻替え制御部は、前記巻替え実施情報の送信時期を、前記巻替え前にリールに巻取られた状態で保管されていた磁気テープのテープ幅に関する測定結果に基づいて決定する、請求項18に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項20】
前記巻替え制御部は、前記巻替え実施情報の送信時期を、前記巻替え前にリールに巻取られた状態で保管されていた磁気テープのテープ幅に関する測定結果を前記リールに巻取られた状態で保管される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果と対比した対比結果に基づいて決定する、請求項19に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項21】
前記巻替え制御部は、前記リールに巻取られた状態で保管される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果を、該テープ幅に関する測定結果が保存されているデータ保存領域から読み出す、請求項20に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項22】
前記データ保存領域は、前記磁気テープとは異なる記憶媒体である、請求項21に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項23】
前記記憶媒体は、磁気テープカートリッジ内のカートリッジメモリである、請求項22に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項24】
前記データ保存領域は、前記磁気テープの一部領域である、請求項21に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項25】
前記磁気テープは、2.0μm以下のトラックピッチでデータが記録される磁気テープである、請求項18~24のいずれか1項に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項26】
前記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールは、前記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールとは異なるリールである、請求項18~25のいずれか1項に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項27】
前記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび前記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールは、同一の磁気テープカートリッジ内に収容されているリールである、請求項26に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項28】
前記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび前記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールのうち、一方のリールが磁気テープカートリッジのカートリッジリールであり、他方のリールが記録再生が行われる際に磁気テープが巻取られるリールである、請求項26に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項29】
前記他方のリールは、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置内に設置されている巻取りリールである、請求項28に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項30】
前記他方のリールは、前記一方のカートリッジリールを有する磁気テープカートリッジとは異なる磁気テープカートリッジのカートリッジリールである、請求項28に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項31】
前記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび前記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールは、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置内に設置されているリールである、請求項26に記載の磁気テープ制御装置。
【請求項32】
前記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび前記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールのうち、一方のリールが磁気テープカートリッジのカートリッジリールであり、他方のリールが巻取り装置内に設置されている巻取りリールである、請求項26に記載の磁気テープ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ制御システムおよび磁気テープ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体にはテープ状のものとディスク状のものがあり、データバックアップ、アーカイブ等のデータストレージ用途には、テープ状の磁気記録媒体、即ち磁気テープが主に用いられている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10460757号明細書
【特許文献2】特開2010-250910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気テープへのデータの記録は、通常、磁気テープ装置(一般に「ドライブ」と呼ばれる。)内で磁気テープを走行させ、磁気ヘッドを磁気テープのデータバンドに追従させてデータバンド上にデータを記録することにより行われる。これにより、データバンドにデータトラックが形成される。また、記録されたデータの再生時には、通常、磁気テープ装置内で磁気テープを走行させ、磁気ヘッドを磁気テープのデータバンドに追従させてデータバンド上に記録されたデータの読み取りを行う。そして、かかる記録後または再生後、磁気テープは、磁気テープカートリッジ内にリール(以下、「カートリッジリール」とも記載する。)に巻取られた状態で、次に記録および/または再生が行われるまで、保管される。
【0005】
上記保管後、記録および/または再生が行われる際、磁気テープの変形によってデータを記録および/または再生するための磁気ヘッドが狙いのトラック位置からずれてデータの記録および/または再生を行ってしまうと、記録不良(例えば記録済データの上書き等)、再生不良(例えばデータの読み取り不良)等の現象が発生してしまう。他方、近年、データストレージ分野では、アーカイブ(archive)と呼ばれる、データの長期保管に対するニーズが高まっている。しかし、一般に、保管期間が長くなるほど磁気テープの変形は生じ易い傾向がある。したがって、保管後の上記現象の発生を抑制することが、今後一層求められることが予想される。
【0006】
以上に鑑み、本発明の一態様は、保管後の磁気テープに対するデータの記録および/または再生において、良好に記録および/または再生を行うことを可能にするための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
磁気テープをリールに巻取った状態で保管する巻替え前保管と、
上記巻替え前保管の後、上記磁気テープを、上記巻替え前保管中にテープ外側末端であった末端がテープ内側末端となり、上記巻替え前保管中にテープ内側末端であった末端がテープ外側末端となるように、上記リールと異なるリールまたは同一のリールに巻替えた状態で保管する巻替え後保管と、
を実施する、磁気テープ制御システム、
に関する。
【0008】
一形態では、上記磁気テープ制御システムは、上記巻替え前保管を、上記磁気テープへのデータの記録および磁気テープに記録されたデータの再生の少なくとも一方が行われた後に実施することができる。
【0009】
一形態では、上記磁気テープ制御システムは、上記巻替え後保管の実施時期を、上記巻替え前保管に付された磁気テープのテープ幅に関する測定結果に基づいて決定することができる。
【0010】
一形態では、上記磁気テープ制御システムは、上記巻替え後保管の実施時期を、上記巻替え前保管に付された磁気テープのテープ幅に関する測定結果を上記巻替え前保管に付される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果と対比した対比結果に基づいて決定することができる。
【0011】
一形態では、上記磁気テープ制御システムは、上記巻替え前保管に付される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果を、上記磁気テープ制御システムのデータ保存領域に保存することができる。
【0012】
一形態では、上記データ保存領域は、上記磁気テープとは異なる記憶媒体であることができる。
【0013】
一形態では、上記記憶媒体は、磁気テープカートリッジ内のカートリッジメモリであることができる。
【0014】
一形態では、上記データ保存領域は、上記磁気テープの一部領域であることができる。
【0015】
一形態では、上記磁気テープ制御システムは、巻替え実施情報を送信する巻替え制御部と、上記巻替え実施情報を受信して上記磁気テープの走行を開始させて上記巻替えを実施する駆動部と、を更に含むことができる。
【0016】
本発明の他の一態様は、
巻替え実施情報を送信する巻替え制御部と、
上記巻替え実施情報を受信し、リールに巻取られた状態で保管されている磁気テープの走行を開始させて磁気テープの巻替えを実施する駆動部と、
を含み、
上記巻替えは、巻替え前にテープ外側末端であった末端がテープ内側末端となり、巻替え前にテープ内側末端であった末端がテープ外側末端となるように、巻替え前に巻き取られていたリールと異なるリールまたは同一のリールに磁気テープを巻取ることである、磁気テープ制御装置、
に関する。
【0017】
一形態では、上記巻替え制御部は、上記巻替え実施情報の送信時期を、上記巻替え前にリールに巻取られた状態で保管されていた磁気テープのテープ幅に関する測定結果に基づいて決定することができる。
【0018】
一形態では、上記巻替え制御部は、上記巻替え実施情報の送信時期を、上記巻替え前にリールに巻取られた状態で保管されていた磁気テープのテープ幅に関する測定結果を上記リールに巻取られた状態で保管される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果と対比した対比結果に基づいて決定することができる。
【0019】
一形態では、上記巻替え制御部は、上記リールに巻取られた状態で保管される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果を、この測定結果が保存されているデータ保存領域から読み出すことができる。
【0020】
一形態では、上記データ保存領域は、上記磁気テープとは異なる記憶媒体であることができる。
【0021】
一形態では、上記記憶媒体は、磁気テープカートリッジ内のカートリッジメモリであることができる。
【0022】
一形態では、上記データ保存領域は、上記磁気テープの一部領域であることができる。
【0023】
また、上記磁気テープ制御システムおよび上記磁気テープ制御装置について取り得る形態としては、以下の形態を挙げることができる。
【0024】
一形態では、上記磁気テープは、2.0μm以下のトラックピッチでデータが記録される磁気テープであることができる。
【0025】
一形態では、上記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールは、上記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールとは異なるリールであることができる。
【0026】
一形態では、上記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび上記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールは、同一の磁気テープカートリッジ内に収容されているリールであることができる。
【0027】
一形態では、上記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび上記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールのうち、一方のリールは磁気テープカートリッジのカートリッジリールであることができ、他方のリールは記録再生が行われる際に磁気テープが巻取られるリールであることができる。本発明および本明細書において、「記録再生」とは、「データの記録」、「データの再生」または「データの記録およびデータの再生」を意味するものとする。
【0028】
一形態では、上記の他方のリールは、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置内に設置されている巻取りリールであることができる。
【0029】
一形態では、上記の他方のリールは、上記一方のカートリッジリールを有する磁気テープカートリッジとは異なる磁気テープカートリッジのカートリッジリールであることができる。
【0030】
一形態では、上記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび上記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールは、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置内に設置されているリールであることができる。
【0031】
一形態では、上記巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび上記巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールのうち、一方のリールは磁気テープカートリッジのカートリッジリールであることができ、他方のリールは巻取り装置内に設置されている巻取りリールであることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、保管後の磁気テープに対するデータの記録および/または再生において、良好に記録および/または再生を行うことを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】磁気テープカートリッジの一例の斜視図である。
図2】リールに磁気テープを巻取り始めるときの斜視図である。
図3】リールに磁気テープを巻取り終えたときの斜視図である。
図4】データバンドおよびサーボバンドの配置例を示す。
図5】LTO(Linear Tape-Open) Ultriumフォーマットテープのサーボパターン配置例を示す。
図6】磁気テープ制御システムの構成例を示す。
図7】磁気テープ制御システムの他の構成例を示す。
図8】磁気テープ制御システムの他の構成例を示す。
図9】磁気テープ制御システムの他の構成例を示す。
図10】磁気テープ制御システムの他の構成例を示す。
図11】巻替え後保管を行うことによって、巻替え前保管により生じた磁気テープのテープ幅変形が復元した一例を示す。
図12】巻替え実施フロー例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[磁気テープ制御システム]
本発明の一態様は、磁気テープ制御システムに関する。上記磁気テープ制御システムは、磁気テープをリールに巻取った状態で保管する巻替え前保管と、上記巻替え前保管の後、上記磁気テープを、上記巻替え前保管中にテープ外側末端であった末端がテープ内側末端となり、上記巻替え前保管中にテープ内側末端であった末端がテープ外側末端となるように、上記リールと異なるリールまたは同一のリールに巻替えた状態で保管する巻替え後保管と、を実施する。
【0035】
本発明および本明細書において、「テープ内側末端」は、磁気テープの2つの末端(即ち端部)のうちのリールへの巻取りの起点の末端であり、他方の末端が「テープ外側末端」である。したがって、リールに巻取られた状態において、テープ内側末端は、磁気テープにおいて、そのリールに最も近い末端ということができ、テープ外側末端は、そのリールから最も遠い末端ということができる。
また、本発明および本明細書において、磁気テープについて「リールに巻取られた状態」とは、
磁気テープの全長が1つのリールに巻回されている状態と、
磁気テープの2つの末端のうちの一方の末端を起点として磁気テープの全長のうちの一部の部分があるリールに巻回され、他の一部の部分(他方の末端を含む部分)はそのリール上にはない状態と、
が包含される。後者の状態において、磁気テープの上記の他方の末端を含む部分は、例えば、別のリール上にあることができ、上記の他方の末端を起点として別のリールに巻回された状態にあることもできる。したがって、詳細を後述する巻替え前保管および/または巻替え後保管において、磁気テープの一方の末端(テープ内側末端)を起点としてリールに巻取られるテープ長は、一形態では磁気テープの全長であることができ、他の一形態では磁気テープの全長のうちの一部の部分であることができる。また、磁気テープの全長のうちの一部の部分をリールに巻取った状態で巻替え前保管および/または巻替え後保管を行う場合には、そのリールに巻取られる部分のテープ長は、磁気テープのデータ記録領域の80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
また、巻替え前保管において、磁気テープの全長のうち、一方の末端を含む一部の部分があるリールに巻取られ、他方の末端を含む一部の部分が他のリール上にあるか他のリールに巻回されている場合、巻替え前保管中に磁気テープが巻取られているリールとは、磁気テープのより多くの部分が巻取られているリールをいうものとする。また、巻替え後保管において、磁気テープの全長のうち、一方の末端を含む一部の部分が巻替えのためのリールに巻取られ、他方の末端を含む一部の部分が巻替え前に磁気テープが巻取られていたリール上にあるかそのリールに巻回されている場合、巻替えのためのリールに、磁気テープのより多くの部分が巻取られていることが好ましい。
【0036】
磁気テープの出荷形態の1つとしては、磁気テープが磁気テープカートリッジに収容されて出荷される形態が挙げられる。磁気テープカートリッジは、通常、長尺状の磁気テープ原反を規定の幅にスリットして得られた磁気テープを、磁気テープカートリッジのリールに巻取り収容して作製される。
一方、磁気テープへのデータの記録の一形態としては、以下の形態が挙げられる。
磁気テープを収容した磁気テープカートリッジを磁気テープ装置(ドライブ)に取り付け、磁気テープカートリッジ内のリール(「カートリッジリール」とも呼ばれる。)と磁気テープ装置内の巻取りリールとの間で磁気テープを走行させて、磁気テープへのデータの記録および/または記録されたデータの再生を行うことができる。そして、データの記録後または再生後、磁気テープは、リールに巻返され、次に記録および/または再生が行われるまで、磁気テープカートリッジ内でリールに巻取られた状態で保管される。
リールに巻取られた状態での保管中の磁気テープでは、そのリールに近い部分は初期より幅広に変形し、そのリールから遠い部分は初期より幅狭に変形するという、位置によって異なる変形が起こると推察される。このような変形は、テープ巻き応力を主な要因とするクリープ変形によってもたらされるものであると本発明者は考えている。また、かかる変形は、磁気テープが、リールに巻取られた状態で、長期間および/または高温環境下で保管されると、より顕著に発生すると本発明者は推察している。
しかし、上記のような変形が起こることは、保管後に記録および/または再生が行われる際、磁気ヘッドが狙いのトラック位置からずれてデータの記録および/または再生を行ってしまうことの原因になり得ると考えられる。磁気テープが高容量化するにつれてデータトラック幅は狭くなるため、磁気ヘッドが狙いのトラック位置からずれてデータの記録および/または再生を行ってしまうことが、より発生し易くなる傾向がある。
テープ変形に対する対策に関しては、先に示した特許文献1(米国特許第10460757号明細書)には、磁気テープにかけるテンションを調整すること(特許文献1の請求項12)等が提案されている。特許文献2(特開2010-250910号公報)には、磁気記録媒体用支持体に金属類または金属系無機化合物からなる層を設けることによって、磁気記録媒体の温湿度環境変化および寸法変化の好ましい範囲を両立することが容易となると記載されている(特許文献2の段落0043参照)。
これに対し、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、上記の対策とは別異の着想に基づき、「巻替え」を行うことに至った。詳しくは、上記磁気テープ制御システムでは、磁気テープをリールに巻取った状態で保管(巻替え前保管)した後、巻替え前保管中にテープ外側末端であった末端がテープ内側末端となり、巻替え前保管中にテープ内側末端であった末端がテープ外側末端となるように、巻替え前保管において磁気テープが巻取られていたリールと異なるリールまたは同一のリールに巻替えた状態で磁気テープを保管する巻替え後保管を実施する。先に記載したように、リールに巻取られた状態での保管中、磁気テープは、そのリールに近い部分は初期より幅広に変形し、そのリールから遠い部分は初期より幅狭に変形する。そこで上記磁気テープ制御システムでは、巻替え前保管中にテープ外側末端であった末端がテープ内側末端となり、巻替え前保管中にテープ内側末端であった末端がテープ外側末端となるように磁気テープを巻取って巻替え後保管を行う。これにより、巻替え前保管中とは逆向きのクリープ変形を生じさせることができるため、巻替え前保管において幅広に変形した部分を巻替え後保管中に幅狭に変形させることができ、巻替え前保管において幅狭に変形した部分を巻替え後保管中に幅広に変形させることができると本発明者は考えている。こうして、巻替え前保管中に変形した部分を、変形前の状態に近づけることができ、その結果、保管中のテープ変形に起因する記録不良および/または再生不良の発生を抑制することが可能になると本発明者は推察している。
【0037】
以下、上記磁気テープ制御システムについて、更に詳細に説明する。以下では、図面を参照して説明することがある。ただし、図面に示されている形態は例示であって、本発明は例示された形態に限定されるものではない。
【0038】
<磁気テープカートリッジ>
磁気テープは、一形態では、磁気テープカートリッジに収容された状態で出荷され、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置に磁気テープカートリッジが取り付けられ、磁気テープ装置内で磁気テープを走行させて磁気テープへのデータの記録が行われ、および/または、磁気テープに記録されたデータの再生が行われる。また、他の一形態では、磁気テープは、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置に収容された状態で出荷され、この磁気テープ装置内で磁気テープを走行させて磁気テープへのデータの記録が行われ、および/または、磁気テープに記録されたデータの再生が行われる。
【0039】
磁気テープカートリッジには、カートリッジ本体内部に磁気テープがリールに巻取られた状態で収容される。磁気テープカートリッジのリールは、少なくともリールハブから構成され、通常、リールハブの両端部にフランジがそれぞれ設けられている。リールハブは、磁気テープが巻取られる軸心部を構成する円筒状部材である。リールは、カートリッジ本体内部に回転可能に備えられている。磁気テープカートリッジとしては、カートリッジ本体内部にリールを1つ具備する単リール型の磁気テープカートリッジおよびカートリッジ本体内部にリールを2つ具備する双リール型の磁気テープカートリッジが広く用いられている。単リール型の磁気テープカートリッジは、磁気テープへのデータの記録および/または再生のために磁気テープ装置に装着されると、磁気テープカートリッジから磁気テープが引き出されて磁気テープ装置に備えられているリール(巻取りリール)に巻取られる。磁気テープカートリッジから巻取りリールまでの磁気テープ搬送経路には、磁気ヘッドが配置されている。磁気テープカートリッジのリール(供給リール)と磁気テープ装置のリール(巻取りリール)との間で、磁気テープの送り出しと巻取りが行われる。この間、磁気ヘッドによって、磁気テープへのデータの記録および/または磁気テープに記録されているデータの再生が行われる。これに対し、双リール型の磁気テープカートリッジは、供給リールと巻取りリールの両リールが、磁気テープカートリッジ内部に備えられている。
【0040】
以下に、図面を参照して磁気テープカートリッジの構成例について説明する。
【0041】
図1は、磁気テープカートリッジの一例の斜視図である。図1には、単リール型の磁気テープカートリッジが示されている。
【0042】
図1に示されている磁気テープカートリッジ10は、ケース12を有している。ケース12は、矩形の箱状に形成されている。ケース12は、例えば、ポリカーボネート等の樹脂製である。ケース12の内部には、リール20が1つだけ回転可能に収容されている。
【0043】
図2は、リールに磁気テープを巻取り始めるときの斜視図である。図3は、リールに磁気テープを巻取り終えたときの斜視図である。
【0044】
リール(「カートリッジリール」とも呼ぶ。)20は、リールハブ22を有する。リールハブ22の両端部には、リールハブ22の下端部および上端部からそれぞれ半径方向外側に張り出すフランジ(下フランジ24および上フランジ26)が設けられている。ここでは、「上」および「下」について、磁気テープカートリッジが磁気テープ装置に装着される際、上方に位置する側を「上」、下方に位置する側を「下」と記載する。下フランジ24および上フランジ26の一方または両方は、リールハブ22の上端部側および/または下端部側を補強する観点から、リールハブ22と一体的に構成されていることが好ましい。一体的に構成されているとは、別部材ではなく、1つの部材として構成されていることをいうものとする。第一の形態では、リールハブ22と上フランジ26とが1つの部材として構成され、この部材が、別部材として構成された下フランジ24と公知の方法で接合される。第二の形態では、リールハブ22と下フランジ24とが1つの部材として構成され、この部材が、別部材として構成された上フランジ26と公知の方法で接合される。磁気テープカートリッジのリールは、いずれの形態であってもよい。各部材は、射出成形等の公知の成形方法によって作製することができる。
【0045】
磁気テープTは、テープ内側末端Tf(図2参照)を起点として、リールハブ22の外周に巻取られる。
【0046】
ケース12の側壁には、リール20に巻回された磁気テープTを引き出すための開口14があり、この開口14から引き出される磁気テープTのテープ外側末端Teには、磁気テープ装置(図示省略)の引出部材(図示省略)によって係止されつつ引き出し操作されるリーダーピン16が固着されている。
【0047】
また、開口14は、ドア18によって開閉されるようになっている。ドア18は、開口14を閉塞可能な大きさの矩形の板状に形成されており、その開口14を閉塞する方向へ付勢部材(図示省略)により付勢されている。そして、ドア18は、磁気テープカートリッジ10が磁気テープ装置に装着されると、付勢部材の付勢力に抗して開放されるようになっている。
【0048】
上記形態は例示であって、磁気テープカートリッジの詳細については、公知技術を適用することができる。磁気テープカートリッジに収容される磁気テープの全長は、特に限定されず、例えば800m~2500m程度の範囲であることができる。磁気テープカートリッジ1巻に収容されるテープ全長が長いほど、磁気テープカートリッジの高容量化の観点から好ましい。ただし、上記磁気テープ制御システムは、磁気テープが磁気テープカートリッジに収容される形態に限定されない。他の形態については、後述の記載を参照できる。
【0049】
<磁気テープ>
上記磁気テープ制御システムにおいて巻替え前保管および巻替え後保管に付される磁気テープは、特に限定されず、例えば非磁性支持体と強磁性粉末を含む磁性層とを有する磁気テープであることができる。上記磁気テープは、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末を含む非磁性層を有することができ、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に非磁性粉末を含むバックコート層を有することもできる。一般に、磁気テープは塗布型と金属薄膜型とに大別される。上記磁気テープは、塗布型磁気テープであってもよく、金属薄膜型磁気テープであってもよい。塗布型磁気テープにおいて、磁性層、非磁性層およびバックコート層は、結合剤を含み、1種以上の添加剤を任意に含むことができる。金属薄膜型磁気テープは、例えば、スパッタ法によって形成された磁性層を有することができる。上記磁気テープ制御システムにおいて巻替え前保管および巻替え後保管に付される磁気テープについては、公知技術を適用できる。
【0050】
高密度記録化の観点から、上記磁気テープへのデータの記録において、トラックピッチは2.0μm以下であることが好ましい。上記トラックピッチは、例えば、0.05μm ~2.0μmの範囲であることができる。本発明および本明細書において、「トラックピッチ」とは、隣り合う2つのデータトラックの中心部間距離をいうものとする。
【0051】
(サーボパターン)
磁気テープには、通常、サーボパターンが形成されている。「サーボパターンの形成」は、「サーボ信号の記録」ということもできる。以下に、サーボパターンの形成について説明する。
【0052】
サーボパターンは、通常、磁気テープの長手方向に沿って形成される。サーボ信号を利用する制御(サーボ制御)の方式としては、タイミングベースサーボ(TBS)、アンプリチュードサーボ、周波数サーボ等が挙げられる。
【0053】
ECMA(European Computer Manufacturers Association)―319(June 2001)に示される通り、LTO(Linear Tape-Open)規格に準拠した磁気テープ(一般に「LTOテープ」と呼ばれる。)では、タイミングベースサーボ方式が採用されている。このタイミングベースサーボ方式において、サーボパターンは、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(「サーボストライプ」とも呼ばれる。)が、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置されることによって構成されている。サーボシステムとは、サーボ信号を利用してヘッドトラッキングを行うシステムである。本発明および本明細書において、「タイミングベースサーボパターン」とは、タイミングベースサーボ方式のサーボシステムにおけるヘッドトラッキングを可能とするサーボパターンをいう。上記のように、サーボパターンが互いに非平行な一対の磁気ストライプにより構成される理由は、サーボパターン上を通過するサーボ信号読み取り素子に、その通過位置を教えるためである。具体的には、上記の一対の磁気ストライプは、その間隔が磁気テープの幅方向に沿って連続的に変化するように形成されており、サーボ信号読み取り素子がその間隔を読み取ることによって、サーボパターンとサーボ信号読み取り素子との相対位置を知ることができる。この相対位置の情報が、データトラックのトラッキングを可能にする。そのために、サーボパターン上には、通常、磁気テープの幅方向に沿って、複数のサーボトラックが設定されている。
【0054】
サーボバンドは、磁気テープの長手方向に連続するサーボパターンにより構成される。このサーボバンドは、通常、磁気テープに複数本設けられる。例えば、LTOテープにおいて、その数は5本である。隣接する2本のサーボバンドに挟まれた領域が、データバンドである。データバンドは、複数のデータトラックで構成されており、各データトラックは、各サーボトラックに対応している。
【0055】
また、一形態では、特開2004-318983号公報に示されているように、各サーボバンドには、サーボバンドの番号を示す情報(「サーボバンドID(identification)」または「UDIM(Unique DataBand Identification Method)情報」とも呼ばれる。)が埋め込まれている。このサーボバンドIDは、サーボバンド中に複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のものを、その位置が磁気テープの長手方向に相対的に変位するように、ずらすことによって記録されている。具体的には、複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のもののずらし方を、サーボバンド毎に変えている。これにより、記録されたサーボバンドIDはサーボバンド毎にユニークなものとなるため、一つのサーボバンドをサーボ信号読み取り素子で読み取るだけで、そのサーボバンドを一意に(uniquely)特定することができる。
【0056】
尚、サーボバンドを一意に特定する方法には、ECMA―319(June 2001)に示されているようなスタッガード方式を用いたものもある。このスタッガード方式では、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置された、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(サーボストライプ)の群を、サーボバンド毎に磁気テープの長手方向にずらすように記録する。隣接するサーボバンド間における、このずらし方の組み合わせは、磁気テープ全体においてユニークなものとされているため、2つのサーボ信号読み取り素子によりサーボパターンを読み取る際に、サーボバンドを一意に特定することも可能となっている。
【0057】
また、各サーボバンドには、ECMA―319(June 2001)に示されている通り、通常、磁気テープの長手方向の位置を示す情報(「LPOS(Longitudinal Position)情報」とも呼ばれる。)も埋め込まれている。このLPOS情報も、UDIM情報と同様に、一対のサーボストライプの位置を、磁気テープの長手方向にずらすことによって記録されている。ただし、UDIM情報とは異なり、このLPOS情報では、各サーボバンドに同じ信号が記録されている。
【0058】
上記のUDIM情報およびLPOS情報とは異なる他の情報を、サーボバンドに埋め込むことも可能である。この場合、埋め込まれる情報は、UDIM情報のようにサーボバンド毎に異なるものであってもよいし、LPOS情報のようにすべてのサーボバンドに共通のものであってもよい。
また、サーボバンドに情報を埋め込む方法としては、上記以外の方法を採用することも可能である。例えば、一対のサーボストライプの群の中から、所定の対を間引くことによって、所定のコードを記録するようにしてもよい。
【0059】
サーボパターン形成用ヘッドは、サーボライトヘッドと呼ばれる。サーボライトヘッドは、通常、上記一対の磁気ストライプに対応した一対のギャップを、サーボバンドの数だけ有する。通常、各一対のギャップには、それぞれコアとコイルが接続されており、コイルに電流パルスを供給することによって、コアに発生した磁界が、一対のギャップに漏れ磁界を生じさせることができる。サーボパターンの形成の際には、サーボライトヘッド上に磁気テープを走行させながら電流パルスを入力することによって、一対のギャップに対応した磁気パターンを磁気テープに転写させて、サーボパターンを形成することができる。各ギャップの幅は、形成されるサーボパターンの密度に応じて適宜設定することができる。各ギャップの幅は、例えば、1μm以下、1~10μm、10μm以上等に設定可能である。
【0060】
磁気テープにサーボパターンを形成する前には、磁気テープに対して、通常、消磁(イレース)処理が施される。このイレース処理は、直流磁石または交流磁石を用いて、磁気テープに一様な磁界を加えることによって行うことができる。イレース処理には、DC(Direct Current)イレースとAC(Alternating Current)イレースとがある。ACイレースは、磁気テープに印加する磁界の方向を反転させながら、その磁界の強度を徐々に下げることによって行われる。一方、DCイレースは、磁気テープに一方向の磁界を加えることによって行われる。DCイレースには、更に2つの方法がある。第一の方法は、磁気テープの長手方向に沿って一方向の磁界を加える、水平DCイレースである。第二の方法は、磁気テープの厚み方向に沿って一方向の磁界を加える、垂直DCイレースである。イレース処理は、磁気テープ全体に対して行ってもよいし、磁気テープのサーボバンド毎に行ってもよい。
【0061】
形成されるサーボパターンの磁界の向きは、イレースの向きに応じて決まる。例えば、磁気テープに水平DCイレースが施されている場合、サーボパターンの形成は、磁界の向きがイレースの向きと反対になるように行われる。これにより、サーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号の出力を、大きくすることができる。尚、特開2012-53940号公報に示されている通り、垂直DCイレースされた磁気テープに、上記ギャップを用いた磁気パターンの転写を行った場合、形成されたサーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号は、単極パルス形状となる。一方、水平DCイレースされた磁気テープに、上記ギャップを用いた磁気パターンの転写を行った場合、形成されたサーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号は、双極パルス形状となる。
【0062】
<磁気テープ装置>
本発明および本明細書において、「磁気テープ装置」とは、磁気テープへのデータの記録および磁気テープに記録されたデータの再生の少なくとも一方を行うことができる装置を意味するものとする。かかる装置は、一般にドライブと呼ばれる。磁気テープ装置には、磁気ヘッドが備えられている。磁気ヘッドは、通常、磁気テープ装置の筐体内に収容されている。磁気ヘッドは、磁気テープへのデータの記録を行うことができる記録ヘッドであることができ、磁気テープに記録されたデータの再生を行うことができる再生ヘッドであることもできる。また、磁気テープ装置は、一形態では、別々の磁気ヘッドとして、記録ヘッドと再生ヘッドの両方を含むことができる。他の一形態では、磁気テープ装置に含まれる磁気ヘッドは、記録素子と再生素子の両方を1つの磁気ヘッドに備えた構成を有することもできる。再生ヘッドとしては、磁気テープに記録された情報を感度よく読み取ることができる磁気抵抗効果型(MR;Magnetoresistive)素子を再生素子として含む磁気ヘッド(MRヘッド)が好ましい。MRヘッドとしては、公知の各種MRヘッド(例えば、GMR(Giant Magnetoresistive)ヘッド、TMR(Tunnel Magnetoresistive)ヘッド等)を用いることができる。また、データの記録および/またはデータの再生を行う磁気ヘッドには、サーボ信号読み取り素子が含まれていてもよい。または、データの記録および/またはデータの再生を行う磁気ヘッドとは別のヘッドとして、サーボ信号読み取り素子を備えた磁気ヘッド(サーボヘッド)が上記磁気テープ装置に含まれていてもよい。例えば、データの記録および/または記録されたデータの再生を行う磁気ヘッド(以下、「記録再生ヘッド」とも呼ぶ。)は、サーボ信号読み取り素子を2つ含むことができ、2つのサーボ信号読み取り素子のそれぞれが、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドを同時に読み取ることができる。2つのサーボ信号読み取り素子の間に、1つまたは複数のデータ用素子を配置することができる。データの記録のための素子(記録素子)とデータの再生のための素子(再生素子)を、「データ用素子」と総称する。
【0063】
一形態では、磁気テープ装置は、磁気テープが筐体内に内蔵された形態で出荷されることができる。この場合、磁気テープ装置には磁気テープカートリッジは装着されず、磁気テープ装置の筐体内に備えられた2つのリールの間で磁気テープが走行する。かかる形態の磁気テープ装置の一例については、後述する。
【0064】
データの記録および/または記録されたデータの再生の際には、まず、サーボ信号を利用したヘッドトラッキングを行うことができる。即ち、サーボ信号読み取り素子を所定のサーボトラックに追従させることによって、データ用素子が、目的とするデータトラック上を通過するように制御することができる。データトラックの移動は、サーボ信号読み取り素子が読み取るサーボトラックを、テープ幅方向に変更することにより行われる。
また、記録再生ヘッドは、他のデータバンドに対する記録および/または再生を行うことも可能である。その際には、先に記載したUDIM情報を利用してサーボ信号読み取り素子を所定のサーボバンドに移動させ、そのサーボバンドに対するトラッキングを開始すればよい。
【0065】
図4に、データバンドおよびサーボバンドの配置例を示す。図4中、磁気テープTの磁性層には、複数のサーボバンド1が、ガイドバンド3に挟まれて配置されている。2本のサーボバンドに挟まれた複数の領域2が、データバンドである。サーボパターンは、磁化領域であって、サーボライトヘッドにより磁性層の特定の領域を磁化することによって形成される。サーボライトヘッドにより磁化する領域(サーボパターンを形成する位置)は規格により定められている。例えば業界標準規格であるLTO Ultriumフォーマットテープには、磁気テープ製造時に、図5に示すようにテープ幅方向に対して傾斜した複数のサーボパターンが、サーボバンド上に形成される。詳しくは、図5中、サーボバンド1上のサーボフレームSFは、サーボサブフレーム1(SSF1)およびサーボサブフレーム2(SSF2)から構成される。サーボサブフレーム1は、Aバースト(図5中、符号A)およびBバースト(図5中、符号B)から構成される。AバーストはサーボパターンA1~A5から構成され、BバーストはサーボパターンB1~B5から構成される。一方、サーボサブフレーム2は、Cバースト(図5中、符号C)およびDバースト(図5中、符号D)から構成される。CバーストはサーボパターンC1~C4から構成され、DバーストはサーボパターンD1~D4から構成される。このような18本のサーボパターンが5本と4本のセットで、5、5、4、4、の配列で並べられたサブフレームに配置され、サーボフレームを識別するために用いられる。図5には、説明のために1つのサーボフレームを示した。ただし、実際には、タイミングベースサーボ方式のヘッドトラッキングが行われる磁気テープの磁性層には、各サーボバンドに、複数のサーボフレームが走行方向に配置されている。図5中、矢印は走行方向を示している。例えば、LTO Ultriumフォーマットテープは、通常、磁性層の各サーボバンドに、テープ長1mあたり5000以上のサーボフレームを有する。
【0066】
<磁気テープ制御システムの構成例>
以下に、上記磁気テープ制御システムの構成例を示す。ただし、本発明は、構成例に示す形態に限定されるものではない。巻替え前保管は、磁気テープへのデータの記録および磁気テープに記録されたデータの再生の少なくとも一方が行われた後に実施することができ、以下に図面に基づき説明する例では、磁気テープへのデータの記録が行われた後に実施される。
【0067】
(巻替え前保管において磁気テープが単リール型の磁気テープカートリッジに収容される例)
図6は、巻替え前保管において磁気テープが単リール型の磁気テープカートリッジに収容される形態の磁気テープ制御システムの構成例を示す図である。
図6に示す磁気テープ制御システムでは、磁気テープカートリッジ10が磁気テープ装置60の筐体H内に挿入され、磁気テープTが筐体H内に引き出され、巻取りリール606に巻取られる。筐体Hは、例えば、金属製、樹脂製等であることができる。
磁気テープカートリッジ10については、単リール型の磁気テープカートリッジに関する先の記載を参照できる。
磁気テープTへのデータの記録および再生は、制御装置601からの命令により記録再生ヘッドユニット602を制御して行われる。
磁気テープ装置60は、カートリッジリール20と巻取りリール606を回転制御するスピンドルモーター607A、607Bおよびそれらの駆動装置608A、608Bから磁気テープの長手方向にかかるテンションの検出および調整が可能な構成を有している。
磁気テープ装置60は、磁気テープカートリッジ10を装着可能な構成を有している。
磁気テープ装置60は、磁気テープカートリッジ10内のカートリッジメモリ27について読み取りおよび書き込みが可能なカートリッジメモリリードライト装置604を有している。
磁気テープ装置60の筐体H内に挿入された磁気テープカートリッジ10からは、磁気テープTの一方の末端またはリーダーピンが自動のローディング機構または手動により引き出され、磁気テープTの磁性層表面が記録再生ヘッドユニット602の記録再生ヘッド表面に接する向きでガイドローラー605A、605Bを通して記録再生ヘッド上をパスし、磁気テープTが巻取りリール606に巻取られる。一形態では、磁気テープ装置における磁気テープへのデータの記録時および/または磁気テープに記録されたデータの再生時、磁気ヘッドが磁気テープの磁性層表面と接触し摺動する。かかる磁気テープ装置は、一般に、摺動型ドライブまたは接触摺動型ドライブと呼ばれる。他の一形態では、磁気テープ装置において、磁気ヘッドは、磁性層表面とは、不作為に接触する場合を除き、非接触の状態で、磁気テープへのデータの記録および/または磁気テープに記録されたデータの再生を行う。かかる形態の磁気記録再生装置は、一般に浮上型ドライブと呼ばれる。
制御装置601からの信号によりスピンドルモーター607Aとスピンドルモーター607Bの回転およびトルクが制御され、磁気テープTが任意の速度とテンションで走行される。テープ速度の制御には、磁気テープ上に予め形成されたサーボパターンを利用することができる。テンションの検出のために、磁気テープカートリッジ10と巻取りリール606との間にテンション検出機構を設けてもよい。テンションの調整は、スピンドルモーター607Aおよび607Bによる制御の他に、ガイドローラー605Aおよび605Bを用いて行ってもよい。
カートリッジメモリリードライト装置604は、制御装置601からの命令により、カートリッジメモリ27の情報の読み出しと書き込みが可能に構成されている。カートリッジメモリリードライト装置604とカートリッジメモリ27との間の通信方式としては、例えば、ISO(International Organization for Standardization)14443方式を採用できる。
【0068】
制御装置601は、例えば、制御部、記憶部、通信部等を含む。
【0069】
記録再生ヘッドユニット602は、例えば、記録再生ヘッド、記録再生ヘッドのトラック幅方向の位置を調整するサーボトラッキングアクチュエータ、記録再生アンプ609、制御装置601と接続するためのコネクタケーブル等から構成される。記録再生ヘッドは、例えば、磁気テープにデータを記録する記録素子、磁気テープのデータを再生する再生素子および磁気テープ上に記録されたサーボ信号を読み取るサーボ信号読み取り素子から構成される。1つの磁気ヘッド内に、記録素子、再生素子およびサーボ信号読み取り素子は、例えば、それぞれ1個以上搭載されている。または、磁気テープの走行方向に応じた複数の磁気ヘッド内に別々にそれぞれの素子を有していてもよい。
【0070】
記録再生ヘッドユニット602は、制御装置601からの命令に応じて、磁気テープTに対してデータを記録することが可能に構成されている。また、制御装置601からの命令に応じて、磁気テープTに記録されたデータを再生することが可能に構成されている。
【0071】
制御装置601は、磁気テープTの走行時にサーボバンドから読み取られるサーボ信号から磁気テープの走行位置を求め、狙いの走行位置(トラック位置)に記録素子および/または再生素子が位置するように、サーボトラッキングアクチュエータを制御する機構を有している。このトラック位置の制御は、例えば、フィードバック制御により行われる。制御装置601は、磁気テープTの走行時に隣り合う2本のサーボバンドから読み取られるサーボ信号から、サーボバンド間隔を求める機構を有している。またサーボバンド間隔が狙いの値になるように、スピンドルモーター607Aおよびスピンドルモーター607Bのトルクおよび/またはガイドローラー605Aおよび605Bを制御して磁気テープの長手方向にかけるテンションを調整して変化させ得る機構を有している。このテンションの調整は、例えば、フィードバック制御により行われる。また、制御装置601は、求めたサーボバンド間隔の情報を、磁気テープ装置60の筐体H内に配置されている制御装置601の内部の記憶部、制御装置とは別の装置として筐体H内に配置されている記憶装置(不図示)、カートリッジメモリ27、筐体Hの外部に配置されている外部記憶装置(不図示)等に保存することができる。
【0072】
磁気テープ装置60において、記録時、再生時および磁気テープカートリッジへの巻取り時および巻取りリール606への巻替え時の1つ以上のタイミングにおいて、磁気テープの長手方向にテンションをかけることができる。磁気テープの長手方向にかけるテンションは、一形態では一定値であり、他の一形態では変化する。本発明および本明細書におけるテンションに関して、磁気テープの長手方向にかけるテンションの値は、磁気テープの長手方向にかけるべきテンションとして、テンションを調整する機構を制御するために制御装置に入力される値とする。また、磁気テープの長手方向に実際にかかるテンションは、例えば、先に記載したように、図6中、磁気テープカートリッジ10と巻取りリール606との間にテンション検出機構を設けて検出することができる。更に、例えば、最小テンションが規格等により定められた値または推奨された値を下回らないように、および/または、最大テンションが規格等により定められた値または推奨された値を上回らないように、磁気テープ装置の制御装置等により制御することもできる。上記の点は、後述の磁気テープ装置および巻取り装置に関しても当てはまる。
【0073】
磁気テープへのデータの記録は、巻取りリール606とカートリッジリール20との間で磁気テープTを走行させながら行われる。磁気テープに記録されたデータの再生も、巻取りリール606とカートリッジリール20との間で磁気テープTを走行させながら行われる。記録および/または再生の終了後、磁気テープTは、通常、磁気テープカートリッジ10のカートリッジリール20に巻取られ、磁気テープTの全長が磁気テープカートリッジ10内に収容される。磁気テープTが収容された磁気テープカートリッジ10は、一形態では磁気テープ装置60の筐体H内に保持され、他の一形態では筐体Hから取り出される。
【0074】
図6に示す例では、磁気テープTは、こうして磁気テープカートリッジ10のカートリッジリール20に巻取られた状態で保管される。かかる保管が、巻替え前保管である。
【0075】
巻替え前保管の後、磁気テープカートリッジ10が磁気テープ装置60の筐体Hから取り出されていた場合には筐体H内に磁気テープカートリッジ10を再び挿入し、磁気テープ装置60の巻取りリール606に磁気テープTの一部の部分または全長を巻取る(即ち巻替える)。カートリッジリール20に巻取られた状態でテープ外側末端であったテープ末端が、磁気テープ装置60の巻取りリール606への巻取り(巻替え)では、巻取りの起点の末端となる。したがって、巻替え後の磁気テープTにおいては、カートリッジリール20に巻取られた状態での保管中にカートリッジリール20に対してテープ外側末端であった末端が巻取りリール606に対してテープ内側末端となり、カートリッジリール20に巻取られた状態での保管中にカートリッジリール20に対してテープ内側末端であった末端が巻取りリール606に対してテープ内側末端となる。後述する巻替え後保管の後のデータの再生および/または記録を容易に開始する観点からは、巻替えによって巻取りリール606に巻取る部分は、磁気テープTの一部の部分であることが好ましい。この場合、磁気テープTにおいて、巻取りリール606に対してテープ外側末端である末端を含む部分(一例として長さ10m程度)は、巻替え後保管の後のデータの再生および/または記録をより一層容易に開始する観点からは、カートリッジリール20上にあるか、カートリッジリール20に巻回されていることが好ましい。
こうして巻取りリール606に巻替えた状態で、磁気テープ装置60の筐体H内で磁気テープTを保管する。かかる保管が、巻替え後保管である。温湿度計610によって、巻替え後保管中の磁気テープの保管環境である磁気テープ装置60の筐体H内の温度および湿度を計測してモニタリングすることもできる。
【0076】
巻替え後保管の後、巻取りリールと606とカートリッジリール20との間で磁気テープTを走行させることにより、磁気テープTに記録されたデータの再生および/または磁気テープへのデータの記録を行うことができる。
【0077】
図6に示す例では、巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールのうち、一方のリールが磁気テープカートリッジのカートリッジリールであり、他方のリールが記録再生が行われる際に磁気テープが巻取られるリールであって、この他方のリールは磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置内(詳しくは、磁気ヘッドが収容されている筐体内)に設置されている巻取りリールである。
【0078】
図7は磁気テープ制御システムの他の構成例を示す。図7中の筐体H、制御装置701、記録再生ヘッドユニット702、カートリッジメモリリードライト装置704A、704B、ガイドローラー705A、705B、スピンドルモーター707A、707B、駆動装置708A、708B、記録再生アンプ709および温湿度計710については、それぞれ図6の各部についての先の記載を参照できる。磁気テープカートリッジ10A、10B、カートリッジリール20A、20B、カートリッジメモリ27A、27Bについては、それぞれ図1図3および図6の各部についての先の記載を参照できる。
【0079】
図7に示す例では、巻替えによって磁気テープが巻取られるリールおよび巻替え前に磁気テープが巻取られていたリールのうち、一方のリールが磁気テープカートリッジのカートリッジリールであり、他方のリールが、上記一方のカートリッジリールを有する磁気テープカートリッジとは異なる磁気テープカートリッジのカートリッジリールである。詳しくは、図7に示す例では、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置70は、2つの磁気テープカートリッジ10Aおよび10Bを着脱可能に設計されている。磁気テープカートリッジ10Aには、磁気テープ装置70の筐体H内でデータの記録および/またはデータの再生が行われる磁気テープTが収容されている。他方の磁気テープカートリッジ10Bは、磁気テープが巻かれていない空の状態となっており、磁気テープTを巻取り可能である。以下では、磁気テープカートリッジ10Bを巻取り用カートリッジと呼び、磁気テープカートリッジ10Bのカートリッジリール20Bを巻取り用カートリッジリールと呼ぶ。記録再生動作時、巻取り用カートリッジリール20Bを、図6の磁気テープ装置の筐体内に設置された巻取りリールと同様に扱うことによって、記録再生を行うことができる。即ち、磁気テープへのデータの記録は、巻取り用カートリッジリール20Bとカートリッジリール20Aとの間で磁気テープTを走行させながら行われる。磁気テープに記録されたデータの再生も、巻取り用カートリッジリール20Bとカートリッジリール20Aとの間で磁気テープTを走行させながら行われる。記録および/または再生の終了後、磁気テープTは、通常、磁気テープカートリッジ10Aのカートリッジリール20Aに巻取られ、磁気テープTの全長が磁気テープカートリッジ10A内に収容される。磁気テープTが収容された磁気テープカートリッジ10Aは、一形態では磁気テープ装置70の筐体Hから取り出され、他の一形態では筐体H内に保持される。
【0080】
図7に示す例では、磁気テープTは、こうして磁気テープカートリッジ10Aのカートリッジリール20Aに巻取られた状態で保管される。かかる保管が、巻替え前保管である。
【0081】
巻替え前保管の後、磁気テープカートリッジ10Aが磁気テープ装置70から取り出されていた場合には磁気テープ装置70の筐体H内に磁気テープカートリッジ10Aを再び挿入し、巻取り用カートリッジリール20Bに磁気テープTの全長を巻取る(即ち巻替える)。カートリッジリール20Aに巻取られた状態でテープ外側末端であったテープ末端が、巻取り用カートリッジリール20Bへの巻取り(巻替え)では、巻取りの起点の末端となる。したがって、巻替え後の磁気テープTは、カートリッジリール20Aに巻取られた状態での保管中にカートリッジリール20Aに対してテープ外側末端であった末端が巻取り用カートリッジリール20Bに対してテープ内側末端となり、カートリッジリール20Aに巻取られた状態での保管中にカートリッジリール20Aに対してテープ内側末端であった末端が巻取り用カートリッジリール20Bに対してテープ外側末端となる。こうして巻取り用カートリッジリール20Bに巻替えた状態で、巻取り用カートリッジ10B内で磁気テープTを保管する。一形態では、巻替え後保管は、巻取り用カートリッジ10Bを磁気テープ装置70の筐体Hから取り出し、磁気テープTを収容した巻取り用カートリッジ10Bを保管環境に置いて行うことができる。また、他の一形態では、磁気テープTを収容した巻取り用カートリッジ10Bを磁気テープ装置70の筐体H内に保持したまま、巻取り後保管を行うことができる。
【0082】
磁気テープTを収容した巻取り用カートリッジ10Bが磁気テープ装置70の筐体Hから取り出されていた場合には、巻取り後保管の後、巻取り用カートリッジ10Bを再び磁気テープ装置70の筐体H内に挿入する。一形態では、巻取り用カートリッジ10Bからカートリッジリール20Aに磁気テープTを巻戻した後、カートリッジリール20Aと巻取り用カートリッジリール20Bとの間で磁気テープTを走行させ、磁気テープTに記録されたデータの再生および/または磁気テープへのデータの記録を行うことができる。また、一形態では、巻取り後保管の後、巻取り用カートリッジ10Bを再び磁気テープ装置70の筐体H内に挿入した後、磁気テープカートリッジ10Aへの巻戻しを行うことなく、巻取り用カートリッジリール20Bとカートリッジリール20Aとの間で磁気テープTを走行させ、磁気テープTに記録されたデータの再生および/または磁気テープへのデータの記録を行うことができる。本形態では、巻替え前保管の前の走行とは逆向きに磁気テープを走行させることになるため、そのように磁気テープを走行させてもサーボトラックフォロイングデータ信号の信号処理等が可能なように、テープ走行システムを設計することができる。また、他の一形態では、巻替え後保管の後、巻取り用カートリッジ10Bを、図6に示す磁気テープ装置60の筐体H内に磁気テープカートリッジ10として挿入し、巻取り用カートリッジリール20B(図6ではカートリッジリール20)と巻取りリール606との間で磁気テープTを走行させ、磁気テープTに記録されたデータの再生および/または磁気テープへのデータの記録を行うことができる。本態様でも、巻替え前保管の前の走行とは逆向きに磁気テープを走行させることになるため、先に記載したようにテープ走行システムを設計することができる。
【0083】
(巻替え前保管において磁気テープが双リール型の磁気テープカートリッジに収容される例)
図8は、双リール型の磁気テープカートリッジ30と、磁気テープカートリッジを着脱可能に設計された磁気テープ装置80を用いる例を示す。通常、磁気テープカートリッジ30は、2つのカートリッジリール31A、31Bのうちのいずれか一方のカートリッジリールに磁気テープTの大部分または全長が巻かれた状態で磁気テープ装置80に挿入される。磁気テープについて、「大部分」とは、テープ長が磁気テープのデータ記録領域の80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。磁気テープへのデータの記録は、カートリッジリール31Aと31Bとの間で磁気テープTを走行させながら行われる。磁気テープに記録されたデータの再生も、カートリッジリール31Aと31Bとの間で磁気テープTを走行させながら行われる。記録および/または再生の終了後、磁気テープTの一部の部分または全長が、2つのカートリッジリールの一方に巻取られる。その後、磁気テープカートリッジ30は、一形態では磁気テープ装置80の筐体Hから取り出され、他の一形態では筐体H内に保持される。
【0084】
図8に示す例では、磁気テープTは、その一部の部分または全長が磁気テープカートリッジ30の2つのカートリッジリールの一方に巻取られた状態で保管される。かかる保管が、巻替え前保管である。巻替えを容易に開始する観点からは、巻替え前保管において一方のカートリッジリールに巻取られる部分は、磁気テープTの一部の部分であることが好ましい。
【0085】
巻替え前保管の後、磁気テープカートリッジ30が磁気テープ装置80の筐体Hから取り出されていた場合には磁気テープ装置80の筐体H内に磁気テープカートリッジ30を再び挿入し、磁気テープTの一部の部分または全長を、一方のカートリッジリールから他方のカートリッジリールに巻取る(即ち巻替える)。一方のカートリッジリールに巻取られた状態で、そのカートリッジリールに対してテープ外側末端であったテープ末端が、他方のカートリッジリールへの巻取り(巻替え)では、巻取りの起点の末端となる。したがって、巻替え後の磁気テープTは、一方のカートリッジリールに巻取られた状態での保管中にそのカートリッジリールに対してテープ外側末端であった末端が他方のカートリッジリールに対してテープ内側末端となり、一方のカートリッジリールに巻取られた状態での保管中にそのカートリッジリールに対してテープ内側末端であった末端が他方のカートリッジリールに対してテープ外側末端となる。こうして他方のカートリッジリールに巻替えた状態で、磁気テープカートリッジ30内で磁気テープTを保管する。巻替え後保管の後のデータの再生および/または記録を容易に開始する観点からは、巻替えによってカートリッジリール31Aまたは31Bに巻取る部分は、磁気テープTの一部の部分であることが好ましい。この場合、磁気テープTにおいて、巻替え後保管において磁気テープTが巻取られているカートリッジリールに対してテープ外側末端である末端を含む部分(一例として長さ10m程度)は、巻替え後保管の後のデータの再生および/または記録をより一層容易に開始する観点からは、他方のカートリッジリール上にあるか、他方のカートリッジリールに巻回されていることが好ましい。一形態では、巻替え後保管は、磁気テープカートリッジ30を磁気テープ装置80から取り出し、磁気テープTを収容した磁気テープカートリッジ30を保管環境に置いて行うことができる。また、他の一形態では、磁気テープTを収容した磁気テープカートリッジ30を磁気テープ装置80内に保持したまま、巻取り後保管を行うことができる。
【0086】
磁気テープTを収容した磁気テープカートリッジ30が磁気テープ装置80の筐体Hから取り出されていた場合には、巻取り後保管の後、磁気テープカートリッジ30を再び磁気テープ装置80の筐体H内に挿入する。一形態では、巻替え後保管後に磁気テープTが巻取られているカートリッジリールから他方のカートリッジリールに磁気テープTの一部または全長を巻戻した後、カートリッジリール31Aと31Bとの間で磁気テープTを走行させ、磁気テープTに記録されたデータの再生および/または磁気テープへのデータの記録を行うことができる。また、一形態では、巻取り後保管の後、上記の巻戻しを行うことなく、カートリッジリール31Aと31Bとの間で磁気テープTを走行させ、磁気テープTに記録されたデータの再生および/または磁気テープへのデータの記録を行うことができる。
【0087】
図8中の筐体H、制御装置801、記録再生ヘッドユニット802、カートリッジメモリリードライト装置804、ガイドローラー805A、805B、スピンドルモーター807A、807B、駆動装置808A、808B、記録再生アンプ809および温湿度計810については、それぞれ図6の各部についての先の記載を参照できる。カートリッジリール31A、31Bおよびカートリッジメモリ37については、それぞれ図2、3および図6の各部についての先の記載を参照できる。磁気テープカートリッジ30については、双リール型の磁気テープカートリッジに関する公知技術および先の記載を参照できる。
【0088】
(巻替え前保管において磁気テープが磁気テープ装置内のリールに巻取られる例)
上記の例では、磁気テープが取り外し可能な媒体(いわゆる可換媒体)として扱われ、磁気テープを収容した磁気テープカートリッジを磁気テープ装置の筐体内に挿入することができ、磁気テープを収容した磁気テープカートリッジを磁気テープ装置の筐体から取り出すこともできる。ただし、かかる形態は一形態であり、他の一形態では、磁気テープは可換媒体として扱われず、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置内(詳しくは、磁気ヘッドが収容されている筐体内)に磁気テープが収容される。本形態では、巻替え前保管中に磁気テープが巻き取られるリールも、巻替えによって磁気テープが巻取られるリールも、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置内(詳しくは、磁気ヘッドが収容されている筐体内)に設置されているリールである。
【0089】
図9は、上記形態の例として、磁気テープが巻取られているリールと磁気テープ装置とが一体となっている例を示す。図9中、テープリール911Aおよびテープリール911Bは、磁気テープ装置90の筐体H内に固定されており、磁気テープTは可換媒体として扱われない。磁気テープへのデータの記録は、テープリール911Aと911Bとの間で磁気テープTを走行させながら行われる。磁気テープに記録されたデータの再生も、テープリール911Aと911Bとの間で磁気テープTを走行させながら行われる。記録および/または再生の終了後、磁気テープTは、通常、テープリール911Aまたはテープリール911Bに大部分が巻取られた状態で、磁気テープ装置90内で保管される。かかる保管が、巻替え前保管である。巻替え前保管の後、他方のテープリールへの巻取り(巻替え)を行い、磁気テープTの大部分を他方のテープリールに巻取った状態で、磁気テープ装置90内で磁気テープTを保管する。かかる保管が、巻替え後保管である。一方のテープリールに巻取られた状態でそのテープリールに対してテープ外側末端であったテープ末端が、他方のテープリールへの巻取り(巻替え)では、他方のテープリールへの巻取りの起点の末端となる。したがって、巻替え後の磁気テープTは、一方のテープリールに巻取られた状態での保管中にそのテープリールに対してテープ外側末端であった末端が、他方のテープリールに対してテープ内側末端となり、一方のテープリールに巻取られた状態での保管中にそのテープリールに対してテープ内側末端であった末端が、他方のテープリールに対してテープ外側末端となって、他方のテープリールに巻取られる。こうして他方のテープリールに巻替えた状態で、磁気テープ装置90の筐体H内で磁気テープTを保管する。
【0090】
一形態では、巻替え後保管後に磁気テープTが巻取られているテープリールから他方のテープリールに磁気テープTを巻戻した後、テープリール911Aと911Bとの間で磁気テープTを走行させ、磁気テープTに記録されたデータの再生および/または磁気テープへのデータの記録を行うことができる。また、一形態では、巻取り後保管の後、上記の巻戻しを行うことなく、テープリール911Aと911Bとの間で磁気テープTを走行させ、磁気テープTに記録されたデータの再生および/または磁気テープへのデータの記録を行うことができる。
【0091】
図9中の筐体H、制御装置901、記録再生ヘッドユニット902、ガイドローラー905A、905B、スピンドルモーター907A、907B、駆動装置908A、908B、記録再生アンプ909および温湿度計910については、それぞれ図6の各部についての先の記載を参照できる。テープリール911Aおよび911Bについては、それぞれ図2、3および図6の各部についての先の記載を参照できる。
【0092】
磁気テープ装置90は、筐体H内に収容されている記憶装置912と、筐体H外に配置されている外部記憶装置913と、を有する。これら記憶装置については後述する。
【0093】
(巻替え後保管において磁気テープが巻取り装置内の巻取りリールに巻取られる例)
図6図9に示す例では、磁気テープの巻取りは、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置内で行われる。他の一形態としては、磁気ヘッドを含まない巻取り専用の装置を用いて、磁気テープの巻替えを行うことができる。
【0094】
図10は、上記形態の例として、巻替え前保管中に磁気テープが巻取られるリールと巻取り後保管中に磁気テープが巻取られるリールのうち、一方のリールが磁気テープカートリッジのカートリッジリールであり、他方のリールが巻取り装置内に設置されている巻取りリールである例を示す。図10に示す例では、巻取り前保管中に磁気テープが巻取られるリールが磁気テープカートリッジのカートリッジリールであり、巻替えが行われて磁気テープが巻取られるリールが、巻取り装置内の巻取りリールである。
【0095】
図10に示す例について、巻取り前保管までの説明は、図6に示す例についての説明と同様である。
【0096】
図10に示す例では、巻替えを行うために、巻取り装置100の筐体H内に、磁気テープカートリッジ10Cが挿入される。この筐体H内には、磁気ヘッドは収容されていない。巻取り装置100の筐体H内で、巻取り装置100の巻取りリール1006に磁気テープTの全長を巻取る(即ち巻替える)。カートリッジリール20Cに巻取られた状態でテープ外側末端であったテープ末端が、巻取り装置100の巻取りリール1006への巻取り(巻替え)では、巻取りの起点の末端となる。したがって、巻替え後の磁気テープTは、カートリッジリール20Cに巻取られた状態での保管中にカートリッジリール20Cに対してテープ外側末端であった末端が巻取りリール1006に対してテープ内側末端となり、カートリッジリール20Cに巻取られた状態での保管中にカートリッジリール20Cに対してテープ内側末端であった末端が巻取りリール1006に対してテープ外側末端となる。こうして巻取りリール1006に巻替えた状態で、巻取り装置100の筐体H内で磁気テープTを保管する。かかる保管が、巻替え後保管である。巻替えによって巻取りリール1006に巻取る部分は、磁気テープTの一部の部分または全長であり、巻替え後保管の後に磁気テープTを磁気テープカートリッジ10Cに収容する際の容易性の観点からは、磁気テープTの一部の部分であることが好ましい。巻替えによって巻取りリール1006に磁気テープTの一部の部分を巻取る場合、磁気テープTにおいて、巻取りリール1006に対してテープ外側末端である末端を含む部分(一例として長さ10m程度)は、上記の収容をより一層容易にする観点からは、カートリッジリール20C上にあるか、カートリッジリール20Cに巻回されていることが好ましい。
【0097】
巻替え後保管の後、巻取り装置100の筐体H内で、磁気テープTの全長を、再び磁気テープカートリッジ10Cのカートリッジリール20Cに巻取り、磁気テープカートリッジ10C内に収容する。こうして磁気テープTが収容された磁気テープカートリッジ10Cを、例えば図6に示す磁気テープ装置60に挿入し、磁気テープTに記録されたデータの再生および/または磁気テープへのデータの記録を行うことができる。
【0098】
図10中の筐体H、制御装置1001、カートリッジメモリリードライト装置1004、ガイドローラー1005A、1005B、スピンドルモーター1007A、1007B、駆動装置1008Aおよび1008Bについては、それぞれ図6の各部についての先の記載を参照できる。磁気テープカートリッジ10C、カートリッジリール20C、カートリッジメモリ27Cおよび巻取りリール1006については、それぞれ図1図3および図6の各部についての先の記載を参照できる。
【0099】
図11に、巻替え後保管を行うことによって、巻替え前保管により生じた磁気テープのテープ幅変形が復元した一例を示す。
図11の上図は、磁気テープのテープ幅が、巻替え前保管の後、巻替え前保管の前のテープ幅から変化したこと(即ち変形したこと)を示している。巻替え前保管の前のテープ幅(図11中の細実線)に対して、巻替え前保管の後のテープ幅(図11中の点線)は異なっている。この保管前後のテープ幅差が大きいと、保管後に記録不良(例えば記録済データの上書き等)、再生不良(例えばデータの読み取り不良)等の現象が発生してしまう。
これに対し、図11の下図に示されているように、巻替え後保管の後の磁気テープのテープ幅(図11中の太実線)は、巻替え前保管の前のテープ幅に近い。即ち、巻替え後保管を実施することによって、保管前後の磁気テープのテープ幅差が低減されている。これは、巻替えを行うことによって巻替え後保管中に巻替え前保管中とは逆向きのクリープ変形を生じさせることができた結果と考えられる。尚、図11中、リール内側は、巻替え前保管中に磁気テープがリールに巻き取られていた状態において内側(リールに近い側)であった位置をいい、リール外側は、巻替え前保管中に磁気テープがリールに巻き取られていた状態において外側(リールから遠い側)であった位置をいうものとする。
【0100】
図面に示した例では、巻替え後保管は、巻替え前保管において磁気テープが巻き取られていたリールとは異なるリールに磁気テープを巻取って行われる。他の一形態では、巻替え後保管は、巻替え前保管において磁気テープが巻き取られていたリールと同じリールに巻取って行うことができる。
【0101】
以上説明した巻替えについては、巻替え後保管の実施時期を、巻替え前保管に付された磁気テープのテープ幅に関する測定結果に基づいて決定することができる。一形態では、巻替え後保管の実施時期を、巻替え前保管に付された磁気テープのテープ幅に関する測定結果を巻替え前保管に付される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果と対比した対比結果に基づいて決定することができる。かかる対比のために、巻替え前保管に付される前の磁気テープ(例えば、データの記録後または再生後の磁気テープ)のテープ幅に関する測定結果を、上記磁気テープ制御システムのデータ保存領域に保存しておくことが好ましい。こうして保存しておいた測定結果を読み出し、巻替え前保管に付された磁気テープのテープ幅に関する測定結果と対比し、テープ幅差が閾値を上回る場合に巻替えを実施して巻替え後保管を行うことができる。例えば、予備実験を行うことによって、保管後の記録不良、再生不良等の現象を抑制し得るテープ幅差を上記閾値として決定することができる。
【0102】
上記データ保存領域は、一形態では、上記磁気テープの一部領域であることができる。
また、一形態では、上記データ保存領域は、上記磁気テープとは異なる記憶媒体であることができ、例えば磁気テープカートリッジのカートリッジメモリ、磁気テープ装置に含まれる情報保持領域等であることができる。上記データ保存領域として、1つまたは2つ以上の記憶媒体を使用することができる。
【0103】
例えば、磁気テープ装置に含まれるデータ保持領域は、
磁気テープ装置の筐体内に配置されている制御装置(例えば図6中の制御装置601等の先に記載した各種図面に示されている制御装置)に含まれている記憶部、
磁気テープ装置の筐体内に制御装置とは別装置として配置されている記憶装置(例えば図9中の記憶装置912)、
磁気テープ装置の筐体外に配置されている外部記憶装置(例えば図9中の外部記憶装置913)、
等に含まれる記憶媒体であることができる。
【0104】
上記磁気テープ制御システムは、巻替え実施情報を送信する巻替え制御部と、巻替え実施情報を受信して上記磁気テープの走行を開始させて上記巻替えを実施する駆動部と、を有することができる。上記巻替え制御部は、例えば先に説明した各種図面に示した制御装置(例えば図6中の制御装置601等)に含まれ得る。上記駆動部は、例えば先に説明した各種図面に示した駆動装置(例えば図6中の駆動装置608Aおよび608B等)に含まれ得る。
【0105】
上記巻替え制御部は、巻替え後保管の実施時期を、巻替え前保管に付された磁気テープのテープ幅に関する測定結果に基づいて決定することができる。一形態では、上記巻替え制御部は、巻替え後保管の実施時期を、巻替え前保管に付された磁気テープのテープ幅に関する測定結果を巻替え前保管に付される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果と対比した対比結果に基づいて決定することができる。かかる対比のために、上記巻替え制御部は、巻替え前保管に付される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果を、この測定結果が保存されているデータ保存領域から読み出すことができる。
【0106】
<巻替え実施フロー例>
図12に、巻替え実施フロー例を示す。
磁気テープへのデータの記録(S1)が行われた後、記録と同時または記録時とテープ幅が同等とみなせるタイミングで磁気テープ幅の測定および測定結果の保存が行われる(S2)。測定結果の保存領域については、先に記載した通りである。
磁気テープ幅に関する測定結果は、例えば、磁気テープのテープ幅を、レーザー変位計(例えばキーエンス社製KEYENCE LS-9030等)等を用いて測定した測定値であることができる。または、磁気テープ上のサーボ信号とサーボ信号読み取り素子を利用して、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を測定することができ、この測定結果を磁気テープのテープ幅に関する測定結果として採用することもできる。磁気テープの幅は、テープの長手方向の位置により異なり得るため、長手方向で一定の間隔の値を測定し保存することが好ましい。また、記録を複数の時期に分割して実施する際には、それぞれのタイミングで磁気テープ幅が異なり得るため、それぞれのタイミングでの磁気テープ幅が保存されることが好ましい。磁気テープの幅は、温湿度環境、巻取り時にテープ長手方向にかかるテンションの影響も受け得るため、先に記載した閾値の決定においては、これらの影響も考慮することが好ましい。
【0107】
リールへの巻取り時に磁気テープの長手方向にかけるテンション(以下、「巻取りテンション」とも記載する。)は、巻き異常の発生の抑制、テープ走行安定性への影響等を考慮して決定することが好ましい。これらの観点から、巻取りテンションは、好ましくは0.20N(ニュートン)以上1.20N以下であり、より好ましくは0.30N以上1.00N以下であり、更に好ましくは0.40N以上0.80N以下である。
【0108】
巻替えを行う環境の温度および湿度は、特に限定されない。
リールに巻取られた状態での磁気テープの保管環境の温度は、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは40℃以下である。また上記保管環境の温度は、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは20℃以上であり、更に好ましくは30℃以上である。保管環境の温度とは、例えば、磁気テープが収容された磁気テープカートリッジ内の温度、かかる磁気テープカートリッジが保管される環境の雰囲気温度、磁気テープが収容された磁気テープ装置の筐体内の温度、かかる装置が保管される環境の雰囲気温度、磁気テープが収容された巻取り装置の筐体内の温度またはかかる装置が保管される環境の雰囲気温度であることができる。一例として、先に説明した図面に示されている温湿度計(例えば図6中の温湿度計610)によって、磁気テープ装置の筐体内の温度をモニタリングし、モニタリング結果に基づき、磁気テープ装置が配置されている環境の温湿度を必要に応じて変化させることによって、磁気テープ装置の筐体内の温度制御を行うことができる。
【0109】
上記の磁気テープ幅の取得後の磁気テープは、巻替え前保管に付される(S3)。
【0110】
巻替え前保管の開始から一定期間が経過した後、磁気テープ幅を測定する(S4)。磁気テープ幅の測定方法については、先の記載を参照できる。磁気テープの幅は定期的に測定し、大きなテープ幅変形が生じる前に巻替えを行うことが好ましい。磁気テープ幅の測定を行う間隔は、好ましくは6ヵ月毎以下であり、より好ましくは1ヵ月毎以下であり、更に好ましくは1週間毎以下である。
【0111】
上記の磁気テープ幅に関する測定結果は、巻替え前保管の前の磁気テープ幅に関する測定結果と対比され、巻替え前保管の前とのテープ幅差が閾値を上回った場合、巻替えが行われ(S5)、磁気テープは巻替え後保管に付される(S6)。
【0112】
巻替え後保管の開始から一定期間が経過した後、磁気テープ幅を測定する(S7)。ここでの磁気テープ幅の測定方法についても、先の記載を参照できる。ここでも磁気テープの幅は定期的に測定し、大きなテープ幅変形が生じる前に、後述する巻戻しを行うことが好ましい。磁気テープ幅の測定を行う間隔については、先の記載を参照できる。
【0113】
上記の磁気テープ幅に関する測定結果は、巻替え前保管の前の磁気テープ幅に関する測定結果と対比され、巻替え前保管の前とのテープ幅差が閾値以下になった場合、元のリールに巻戻す(S8)。尚、先に記載したように、元のリールへの巻戻しを行わない形態もあり得る。こうして巻替え後保管に付された後の磁気テープに対してデータの記録または再生を行うことによって、記録不良、再生不良等の現象が発生することを抑制することができる。
【0114】
一形態では、巻替え後保管の保管期間は、例えば3日間以上であることが好ましく、5日間以上であることがより好ましく、10日間以上であることが更に好ましい。また、一形態では、巻替え後保管の保管期間は、例えば100日間以下、80日間以下、60日間以下または40日間以下であることができる。
【0115】
巻取りテンションおよび/または保管期間は、保管に付される磁気テープの変形のし易さ、保管環境等を考慮して決定することもできる。例えば、変形し易い磁気テープについては、巻替え前保管中に大きなテープ変形が発生し易いため、巻替えにおいて巻取りテンションを高くし、かつ巻替え後保管の期間を長くすることによって、巻替え後保管において巻替え前保管とは逆向きのクリープ変形を大きく発生させることができる。また、保管環境がテープ幅変形の生じやすい高温高湿環境の場合には、テープ幅の測定を行う間隔を短くすることによって、巻替え前保管において大きな変形が生じる前に巻替えを行うこと、および/または、巻替え後保管において望ましい変形量を超える大きな変形が生じてしまうこと、を抑制することができる。
【0116】
[磁気テープ制御装置]
本発明の一態様は、巻替え実施情報を送信する巻替え制御部と、上記巻替え実施情報を受信し、リールに巻取られた状態で保管されている磁気テープの走行を開始させて磁気テープの巻替えを実施する駆動部と、を含む磁気テープ制御装置に関する。上記巻替えは、巻替え前にテープ外側末端であった末端がテープ内側末端となり、巻替え前にテープ内側末端であった末端がテープ外側末端となるように、巻替え前に巻き取られていたリールと異なるリールまたは同一のリールに上記磁気テープを巻取ることである。
【0117】
上記巻替え制御部は、巻替え実施情報の送信時期を、巻替え前にリールに巻取られた状態で保管されていた磁気テープのテープ幅に関する測定結果に基づいて決定することができる。一形態では、上記巻替え制御部は、巻替え実施情報の送信時期を、巻替え前にリールに巻取られた状態で保管されていた磁気テープのテープ幅に関する測定結果をリールに巻取られた状態で保管される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果と対比した対比結果に基づいて決定することができる。かかる対比のために、上記巻替え制御部は、リールに巻取られた状態で保管される前の磁気テープのテープ幅に関する測定結果を、この測定結果が保存されているデータ保存領域から読み出すことができる。
【0118】
上記磁気テープ制御装置の詳細については、上記磁気テープ制御システムに関する先の記載を参照できる。
【実施例0119】
以下に、本発明を実施例に基づき説明する。但し、本発明は実施例に示す実施形態に限定されるものではない。
【0120】
[比較例1]
塗布型磁気テープを収容したLTO(Linear Tape-Open)8カートリッジ、LTO8ドライブおよびドライブ制御のためのコンピュータを使用した。LTO8カートリッジとは、LTO8の仕様に準拠した磁気テープカートリッジ(単リール型)であり、LTO8ドライブとは、LTO8の仕様に準拠した磁気テープ装置である。
LTO8カートリッジが筐体内に挿入されたドライブを雰囲気温度23℃±2℃、相対湿度50%±5%に制御された環境に24時間以上置くことで同環境に慣らした後、同環境において、LTO8カートリッジに収容されている磁気テープに規定容量のデータを記録した。
LTO8カートリッジをドライブの筐体から取り出し、雰囲気温度60℃相対湿度20%の環境に30日間保管した。
保管後のLTO8カートリッジを記録と同じドライブの筐体に挿入し、このドライブを雰囲気温度23℃±2℃相対湿度50%±5%に制御された環境に24時間置くことで同環境に慣らした後、磁気テープに記録されている全記録データの読み取りを試みた。その結果、データの読み取りの途中で、データの記録時と読み取り時とのテープ幅差がドライブの制御装置に設定されている許容値を超えたため、再生データにエラーが発生しドライブが走行停止した(即ち、読み取り不良が発生)。
【0121】
[実施例1]
比較例1と同様にLTO8ドライブで規定容量のデータが磁気テープに記録されたLTO8カートリッジを、雰囲気温度60℃相対湿度20%の環境に30日間保管した後、リールテスターを用いてカートリッジ中の磁気テープの全長を、テープが巻かれていない状態の別のLTO8カートリッジのリールに巻取った(巻替え)。巻替え時の巻取りテンションは0.56Nとし、巻替え時のテープ走行速度は4m/sとし、巻替えは、雰囲気温度23℃±2℃相対湿度50%±5%の環境で実施した。巻替えを行う際にはリーダーピンおよびリーダーテープを取り外した。上記巻替え後、リールに巻取られた状態の磁気テープを、温度60℃相対湿度20%の環境に30日間保管した(巻替え後保管)、
その後、リールテスターを用いて、磁気テープを元のLTO8カートリッジのカートリッジリールに巻戻し、このLTO8カートリッジ内に収容した。巻戻しは巻替え時と同じ条件で行った。
巻戻し後、磁気テープにリーダーピンおよびリーダーテープを再度取り付けた。この磁気テープが収容されたLTO8カートリッジを記録と同じドライブの筐体に挿入し、このドライブを雰囲気温度23℃±2℃相対湿度50%±5%に制御された環境に24時間以上置くことで同環境に慣らした後、磁気テープに記録されている全記録データの読み取りを試みた。その結果、全記録データを正常に読み取ることができた。
【0122】
[実施例2]
巻替え後の保管期間を20日間に変更した点以外は実施例1と同様にしたところ、全記録データを正常に読み取ることができた。
【0123】
[実施例3]
巻替え後の保管期間を10日間に変更した点以外は実施例1と同様にしたところ、全記録データを正常に読み取ることができた。
【0124】
サーボ信号とサーボ信号読み取り素子を利用して磁気テープのテープ幅に関する測定結果として、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を測定する方法の一例を、以下に説明する。
磁気テープとして、LTOUltriumフォーマットにしたがう配置でデータバンド、サーボバンドおよびガイドバンドを有し、かつサーボバンド上にLTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターン(タイミングベースサーボパターン)を有する磁気テープを使用する。上記サーボパターンは、JIS(Japanese Industrial Standards) X6175:2006およびStandard ECMA-319(June 2001)の記載にしたがうサーボパターンである。
データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を、以下のように求める。
データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を求めるためには、サーボパターンの寸法が必要である。サーボパターンの寸法の規格は、LTOの世代によって異なる。そこでまず、磁気力顕微鏡等を用いて、AバーストとCバーストの対応する4ストライプ間の平均距離AC、およびサーボパターンのアジマス角αを計測する。
次に、リールテスターと、磁気テープの長手方向と直交する方向に間隔をおいて固定された2つのサーボ信号読み取り素子(以下では、一方を上側、他方を下側と呼ぶ。)を備えたサーボヘッドとを用いて、磁気テープに形成されたサーボパターンをテープ長手方向に沿って順次読み取る。1LPOSワードの長さにわたるAバーストとBバーストに対応する5ストライプ間の平均時間をaと定義する。1mの長さにわたるAバーストとCバーストの対応する4ストライプの平均時間をbと定義する。このとき、AC×(1/2-a/b)/(2×tan(α))で定義される値が、サーボ信号読み取り素子により得られたサーボ信号に基づく幅方向の読み取り位置PES(Position Error Signal)を表す。サーボパターンの読み取りは、上側と下側の2つのサーボ信号読み取り素子により同時に行う。上側のサーボ信号読み取り素子により得られたPESの値をPES1、下側のサーボ信号読み取り素子により得られたPESの値をPES2とする。「PES2-PES1」として、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を求めることができる。これは、上側と下側のサーボ信号読み取り素子がサーボヘッドに固定されてその間隔が変わらないからである。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の一態様は、各種データストレージの技術分野において有用である。
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