(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027482
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】排ガス処理方法およびガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20220203BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20220203BHJP
B01D 53/75 20060101ALI20220203BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20220203BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20220203BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B01D53/50 220
B01D53/50 260
B01D53/68 120
B01D53/50 230
B01D53/50 240
B01D53/75 ZAB
B01D53/78
B01D53/82
B01D53/50 100
B01D53/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099571
(22)【出願日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】202010756349.3
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】赤木 直人
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰治
(72)【発明者】
【氏名】関嶋 龍磨
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康秀
(72)【発明者】
【氏名】何 祥文
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA12
4D002AA19
4D002AC10
4D002BA02
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4D002DA06
4D002DA07
4D002DA12
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4D002DA57
4D002EA02
4D002EA13
4D002FA02
4D002FA03
4D002FA04
4D002FA06
4D002FA10
4D002GA01
4D002GB03
4D002GB08
4D002HA01
4D002HA05
(57)【要約】
【課題】スタビライザーの壁面への中和剤の付着の問題を有意に抑制することが可能な、排ガス処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ガラス物品の製造過程で発生する排ガスを処理する排ガス処理方法であって、ガラス原料を溶解した際に生じる排ガスを冷却用水溶液と接触させて、第1の処理ガスを生成する第1の工程と、前記第1の処理ガスを、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と接触させて、第2の処理ガスを生成する第2の工程と、前記第2の処理ガスを窒素酸化物(NO
x)用の還元剤と接触させる第3の工程と、を有し、前記第1の工程に使用される前記冷却用水溶液は、尿素またはアンモニアを含む、排ガス処理方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品の製造過程で発生する排ガスを処理する排ガス処理方法であって、
ガラス原料を溶解した際に生じる排ガスを冷却用水溶液と接触させて、第1の処理ガスを生成する第1の工程と、
前記第1の処理ガスを、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と接触させて、第2の処理ガスを生成する第2の工程と、
前記第2の処理ガスを窒素酸化物(NOx)用の還元剤と接触させる第3の工程と、
を有し、
前記第1の工程に使用される前記冷却用水溶液は、尿素またはアンモニアを含む、排ガス処理方法。
【請求項2】
前記冷却用水溶液は、尿素またはアンモニアの濃度が3質量%~30質量%である、請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項3】
前記冷却用水溶液は、さらに、水酸化ナトリウムまたは水酸化マグネシウムを含む、請求項1または2に記載の排ガス処理方法。
【請求項4】
前記水酸化ナトリウムまたは水酸化マグネシウムの濃度は、2.0質量%以下である、請求項3に記載の排ガス処理方法。
【請求項5】
前記冷却用水溶液に含まれる総アルカリ添加量に対する尿素添加量のモル比は、20%以上である、請求項1または2に記載の排ガス処理方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸ナトリウムである、請求項1または2に記載の排ガス処理方法。
【請求項7】
前記アルカリ土類金属塩は、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、または炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複塩である、請求項1または2に記載の排ガス処理方法。
【請求項8】
前記還元剤は、アンモニアガス、アンモニア水または尿素水である、請求項1または2に記載の排ガス処理方法。
【請求項9】
前記第2の工程で生じた反応生成物は、前記ガラス原料とともに溶解される、請求項1または2に記載の排ガス処理方法。
【請求項10】
ガラス物品の製造方法であって、
ガラス原料を溶解して溶融ガラスを形成する工程と、
前記溶融ガラスを成形して成形ガラスを形成する工程と、
前記成形ガラスを徐冷してガラス物品を得る工程と、
を有し、
前記溶融ガラスを形成する工程において生じた排ガスは、請求項1~9のいずれか一項に記載の排ガス処理方法を用いて処理される、製造方法。
【請求項11】
前記ガラス物品は、無アルカリガラスで構成される、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理方法およびガラス物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス物品の製造過程、特に溶融ガラスの形成過程で、塩化水素(HCl)、硫黄酸化物(SOx)、および窒素酸化物(NOx)などを含む排ガスが生じる場合がある。このような排ガスは、大気に放出する前に、適正に処理する必要がある。
【0003】
従来、そのような排ガスを処理するため、排ガス処理設備が使用されている。例えば、特許文献1には、スタビライザー、バグフィルターおよび脱硝装置を備える排ガス処理設備が記載されている。
【0004】
スタビライザーでは、排ガスが冷却されるとともに、排ガス中に含まれる塩化水素および硫黄酸化物の一部が除去される。また、バグフィルターにおいても、排ガス中に含まれる塩化水素および硫黄酸化物が除去される。さらに、脱硝装置では、排ガス中に含まれる窒素酸化物が還元除去される。従って、このような排ガス処理設備を使用することにより、排ガスを適正に処理することができる。
【0005】
なお、従来の排ガス処理設備では、排ガス中の酸を除去するため、スタビライザーにおいて、水酸化ナトリウム水溶液のような、酸を中和する中和剤が噴霧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ガラス物品の生産能力の増強に伴い、製造設備から排出される排ガスの量も増加する傾向にある。このため、排ガスの処理に対して、さらなる効率化が求められるようになってきた。
【0008】
排ガス処理の効率化のためには、スタビライザーにおいて噴霧される中和剤の量および/または濃度を高めることが考えられる。
【0009】
しかしながら、中和剤である水酸化ナトリウム水溶液は、比較的粘性が高いという特性を有する。従って、スタビライザー内で高濃度または多量の中和剤(水酸化ナトリウム水溶液)を噴霧した場合、水酸化ナトリウムが壁面に付着するリスクが高まる。また、そのような付着が顕著になると、排ガスの流路が閉塞してしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、スタビライザーの壁面への中和剤の付着の問題を有意に抑制することが可能な、排ガス処理方法を提供することを目的とする。また、そのような排ガス処理方法を利用した、ガラス物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、ガラス物品の製造過程で発生する排ガスを処理する排ガス処理方法であって、ガラス原料を溶解した際に生じる排ガスを冷却用水溶液と接触させて、第1の処理ガスを生成する第1の工程と、前記第1の処理ガスを、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と接触させて、第2の処理ガスを生成する第2の工程と、前記第2の処理ガスを窒素酸化物(NOx)用の還元剤と接触させる第3の工程と、を有し、前記第1の工程に使用される前記冷却用水溶液は、尿素またはアンモニアを含む、排ガス処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、スタビライザーの壁面への中和剤の付着の問題を有意に抑制することが可能な、排ガス処理方法を提供することができる。また、そのような排ガス処理方法を利用した、ガラス物品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による排ガス処理方法のフローを模式的に示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態による排ガス処理方法を実施するための排ガス処理設備の構成例を模式的に示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるガラス物品の製造方法のフローを模式的に示した図である。
【
図4】各例において得られた排ガス中のアンモニア量の測定結果をまとめて示した図である。
【
図5】各例におけるスタビライザー出口で測定された塩素量をまとめて示したグラフである。
【
図6】各例におけるスタビライザー出口で測定された二酸化硫黄量をまとめて示したグラフである。
【
図7】各例において得られたスタビライザーでの脱塩率をまとめて示したグラフである。
【
図8】各例において得られたスタビライザーでの脱硫率をまとめて示したグラフである。
【
図9】各例において得られた脱硝装置での脱硝率をまとめて示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
前述のように、従来の排ガス処理方法では、スタビライザーにおいて噴霧される中和剤として、水酸化ナトリウム水溶液が使用されている。しかしながら、水酸化ナトリウム水溶液は、比較的粘性が高く、高濃度または多量の水酸化ナトリウム水溶液を噴霧した場合、該水酸化ナトリウムがスタビライザーの壁面に付着するリスクが高まるという問題がある。
【0016】
そこで、本発明の一実施形態では、ガラス物品の製造過程で発生する排ガスを処理する排ガス処理方法であって、ガラス原料を溶解した際に生じる排ガスを冷却用水溶液と接触させて、第1の処理ガスを生成する第1の工程と、前記第1の処理ガスを、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と接触させて、第2の処理ガスを生成する第2の工程と、前記第2の処理ガスを窒素酸化物(NOx)用の還元剤と接触させる第3の工程と、を有し、前記第1の工程に使用される前記冷却用水溶液は、尿素またはアンモニアを含む、排ガス処理方法が提供される。
【0017】
本発明の一実施形態による排ガス処理方法では、第1の工程において、尿素またはアンモニアを含む冷却用水溶液(以下、これらをまとめて、「アンモニア含有水溶液」と称する。)が使用される。
【0018】
尿素水溶液およびアンモニア水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液と比べて粘性が低い。そのため、第1の工程において、中和剤としてアンモニア含有水溶液を使用した場合、該アンモニア含有水溶液が比較的高濃度および/または多量であっても、スタビライザーの壁面に中和剤が付着するという問題を有意に軽減できる。
【0019】
従って、本発明の一実施形態による排ガス処理方法では、従来に比べて、排ガスをより効率的に処理することが可能となる。
【0020】
なお、本発明の一実施形態において、アンモニア含有水溶液は、単独で使用されてもよく、あるいは水酸化ナトリウム水溶液と併用されてもよい。後者の場合、尿素またはアンモニアと、水酸化ナトリウムとを含む混合水溶液が使用されてもよく、あるいは、アンモニア含有水溶液と、水酸化ナトリウム水溶液とを別個に使用してもよい。また、後者の場合、水酸化ナトリウム水溶液を単独で使用する場合に比べて、水酸化ナトリウム水溶液の濃度および/または噴霧量を有意に低減することができる。
【0021】
(本発明の一実施形態による排ガス処理方法)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による排ガス処理方法について、より詳しく説明する。
【0022】
図1には、本発明の一実施形態による排ガス処理方法のフローを模式的に示す。
【0023】
図1に示すように、本発明の一実施形態による排ガス処理方法は、ガラス原料を溶解した際に生じる排ガスを冷却用水溶液と接触させて、第1の反応生成物および第1の処理ガスを生成する工程であって、前記冷却用水溶液は、尿素またはアンモニアを含む、第1の工程(工程S110)と、前記第1の処理ガスを、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と接触させて、第2の反応生成物および第2の処理ガスを生成する第2の工程(工程S120)と、前記第2の処理ガスを、窒素酸化物(NO
x)用の還元剤と接触させる第3の工程(工程S130)と、を有する。
【0024】
図2には、本発明の一実施形態による排ガス処理方法を実施するための排ガス処理設備(以下、単に「処理設備」と称する。)の一構成例を概略的に示す。
【0025】
図2に示すように、この処理設備100は、溶解炉110、スタビライザー120、バグフィルター140、脱硝装置160、湿式装置170および煙突180を備える。
【0026】
溶解炉110は、ガラス原料を溶解して溶融ガラスを形成するために使用される。
【0027】
スタビライザー120は、溶解炉110の下流に設置され、溶解炉110において生じた排ガスGを冷却するために設けられる。また、スタビライザー120は、中和剤を噴霧することが可能な1または2以上のスプレーノズル122と、排ガスGと中和剤との反応によって生じた生成物(以下、「第1の反応生成物S1」と称する。)を回収するための第1の回収手段126とを有する。
【0028】
バグフィルター140は、スタビライザー120の下流に設置される。バグフィルター140は、スタビライザー120から排出された処理ガス(以下、「第1の処理ガス」と称する。)G1を処理するために設けられる。また、バグフィルター140は、複数の本体部142と、各本体部142に粉体を供給する粉体供給装置150と、本体部142で生じた生成物(以下、「第2の反応生成物S2」と称する。)を回収するための第2の回収手段146とを有する。
【0029】
各本体部142には、第1の処理ガスG1の流路を形成する濾布(図示されていない)が設置される。濾布は、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂で構成される。粉体供給装置150は、複数の粉体供給室152を有し、各粉体供給室152は、それぞれの対応する本体部142と接続されている。なお、
図2に示した例では、本体部142および粉体供給室152は、それぞれ、3つの区画で構成されている。しかしながら、これらの数は、特に限られない。
【0030】
脱硝装置160は、バグフィルター140の下流に設置される。脱硝装置160は、バグフィルター140から排出された処理ガス(以下、「第2の処理ガス」と称する。)G2を処理するために設けられる。また、脱硝装置160は、触媒と、還元剤の注入ノズルとを有する(いずれも図示されていない)。触媒は、例えば、五酸化バナジウム(V2O5)を含んでもよい。
【0031】
湿式装置170は、脱硝装置160の下流に設けられる。湿式装置170は、脱硝装置160から排出される処理ガス(以下、「第3の処理ガス」と称する。)G3に含まれる水溶性成分を回収する役割を有する。また、湿式装置170は、液体を噴霧するノズルと、排液を回収するタンクとを有する(いずれも図示されていない)。液体は、例えば、水または水溶液であってもよい。さらに、湿式装置170は、タンクに回収された排液をスタビライザー120に戻すための配管174が接続されてもよい。なお、処理設備100において、湿式装置170は省略されてもよい。
【0032】
煙突180は、湿式装置170から排出される処理ガス(以下、「第4の処理ガス」と称する。)G4を、大気に放出するために設けられる。ただし、処理設備100が湿式装置170を有しない場合、脱硝装置160からの第3の処理ガスG3が、煙突180に導入される。
【0033】
以下、
図2を参照しながら、本発明の一実施形態による排ガス処理方法(以下、「第1の方法」と称する。)における各工程について説明する。
【0034】
(工程S110)
まず、溶解炉110において、ガラス原料が溶解され、溶融ガラスが形成される。ガラス原料の溶解の際に排ガスGが生じる。この排ガスGには、塩素成分、硫黄成分、および窒素成分など各種成分が含まれる。塩素成分は、主に塩化水素(HCl)であり、硫黄成分は、主に硫黄酸化物(SOx)であり、窒素成分は、主に窒素酸化物(NOx)である。排ガスGは、このまま排出することはできないため、以下のように適正に処理される。
【0035】
排ガスGは、スタビライザー120に供給される。排ガスGは、スタビライザー120を通過することにより冷却される。スタビライザー120の入口温度は、例えば、700℃~900℃の範囲であり、出口温度は、例えば、200℃~220℃の範囲である。
【0036】
また、前述のように、スタビライザー120には、1または2以上のスプレーノズル122が設置されており、これらのスプレーノズル122から、中和剤である冷却用水溶液が噴霧される。中和剤は、「アンモニア含有水溶液」、すなわち尿素またはアンモニアを含有する水溶液を含む。「アンモニア含有水溶液」は、比較的粘性が低く、前述のような問題、すなわちスタビライザー120の内壁に中和剤が付着するという問題は生じ難い。従って、比較的高濃度のアンモニア含有水溶液、または比較的多量のアンモニア含有水溶液を使用することができる。
【0037】
また、「アンモニア含有水溶液」は、水酸化ナトリウム水溶液と比べて、排ガスGとの反応によって生じた生成物である第1の反応生成物S1がスタビライザー120の内壁に付着しにくい。具体的には、「アンモニア含有水溶液」は、排ガスG中に含まれる塩素成分および硫黄成分と反応することにより、塩化アンモニウムおよび硫酸アンモニウムが生成する(後述する反応式(1)~(4)参照)。一方、水酸化ナトリウム水溶液は、排ガスG中に含まれる塩素成分および硫黄成分と反応することにより、塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムが生成する(後述する反応式(5)および(6)参照)。そして、塩化アンモニウムおよび硫酸アンモニウムを含む第1の反応生成物S1は、塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムを含む第1の反応生成物S1と比べて、粒径が小さく、流動性が良いので、スタビライザー120の内壁に付着しにくい。
【0038】
冷却用水溶液は、尿素またはアンモニアの濃度が3質量%~30質量%であることが好ましい。尿素またはアンモニアの濃度が3質量%以上だと、排ガスGに含まれる塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)を効率的に処理することができる。尿素またはアンモニアの濃度が30質量%以下だと、冷却用水溶液の粘性が低く、スタビライザー120の内壁に中和剤が付着するという問題は生じ難い。尿素またはアンモニアの濃度は、5質量%~25質量%であることがより好ましい。
【0039】
冷却用水溶液は、さらに、水酸化ナトリウムまたは水酸化マグネシウムを含むことが好ましい。その場合、水酸化ナトリウムまたは水酸化マグネシウムの濃度は、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。それ以上の濃度では、冷却用水溶液の粘性が上昇し、壁面への付着の問題が生じるおそれがある。
【0040】
また、噴霧される中和剤(冷却用水溶液)全体に含まれる総アルカリ添加量に対する尿素添加量のモル比(以下、「尿素添加率」という。)は、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。ここで、総アルカリ添加量とは、中和剤に添加された尿素、アンモニア、水酸化ナトリウム及び水酸化マグネシウムの総モル数をいう。尿素添加率が20%以上だと、排ガスGに含まれる塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)を効率的に処理することができる。
【0041】
また、噴霧される中和剤(冷却用水溶液)全体に含まれる総アルカリ添加量に対するアンモニア添加量のモル比(以下、「アンモニア添加率」という。)は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。アンモニア添加率が30%以上だと、排ガスGに含まれる塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)を効率的に処理することができる。
【0042】
なお、それぞれのスプレーノズル122から、別の中和剤が噴霧されてもよい。あるいは、各スプレーノズル122から、同一の中和剤が噴霧されてもよい。例えば、一つのスプレーノズル122をアンモニア含有水溶液の噴霧に利用し、別のスプレーノズル122を水酸化ナトリウム水溶液の噴霧に利用してもよい。あるいは、単一のスプレーノズル122から、尿素またはアンモニアと水酸化ナトリウムとを含む混合水溶液を噴霧してもよい。
【0043】
噴霧された中和剤は、スタビライザー120内で気化し、排ガスG中に含まれる塩素成分および硫黄成分と接触する。その結果、第1の反応生成物S1および第1の処理ガスG1が生じる。
【0044】
例えば、中和剤が尿素を含む場合、塩化水素および硫黄酸化物は、それぞれ、以下の反応式(1)および(2)により、排ガスGから分離されると考えられる。
2HCl+(NH2)2CO+H2O=2NH4Cl+CO2 (1)
SO3+(NH2)2CO+2H2O=(NH4)2SO4+CO2 (2)
また、中和剤がアンモニアを含む場合、塩化水素および硫黄酸化物は、それぞれ、以下の反応式(3)および(4)により、排ガスGから分離されると考えられる。
HCl+NH3=NH4Cl (3)
SO3+2NH3+H2O=(NH4)2SO4 (4)
さらに、中和剤が水酸化ナトリウムを含む場合、塩化水素および硫黄酸化物は、それぞれ、以下の反応式(5)および(6)により、排ガスGから分離される。
HCl+NaOH=NaCl+H2O (5)
SO3+2NaOH=Na2SO4+H2O (6)
このように、スタビライザー120を経由することにより、排ガスGから、塩素成分および硫黄成分の一部が第1の反応生成物S1として除去され、第1の処理ガスG1が排出される。
【0045】
生成した第1の反応生成物S1は、第1の回収手段126により回収される。
【0046】
(工程S120)
次に、スタビライザー120から排出された第1の処理ガスG1は、バグフィルター140の本体部142に供給される。本体部142の温度は、例えば、180℃~220℃の範囲である。前述のように、本体部142は、粉体供給装置150の各粉体供給室152と接続されており、これらの粉体供給室152から本体部142に粉体が供給される。
【0047】
粉体は、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩で構成される。アルカリ金属塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸ナトリウムであることが好ましい。アルカリ土類金属塩は、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、または炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの複塩であることが好ましい。なお、本明細書において、アルカリ土類金属塩は、アルカリ土類金属の水酸化物を含むものとする。
【0048】
本体部142に供給された粉体は、第1の処理ガスG1に含まれる塩素成分および硫黄成分と接触する。その結果、第2の反応生成物S2および第2の処理ガスG2が生成される。例えば、粉体が水酸化カルシウムを含む場合、塩化水素および硫黄酸化物は、それぞれ、以下の反応式(7)および(8)により、第1の処理ガスG1から分離される。
2HCl+Ca(OH)2=CaCl2+2H2O (7)
SO3+Ca(OH)2=CaSO4+H2O (8)
このように、バグフィルター140を経由することにより、第1の処理ガスG1から塩素成分および硫黄成分の一部が第2の反応生成物S2として除去され、第2の処理ガスG2が排出される。第2の反応生成物S2は、第2の回収手段146により回収される。
【0049】
ここで、前述の反応式(1)のように、第1の処理ガスG1中には、工程S110において反応により生成した塩化アンモニウム(NH4Cl)が含まれている。この塩化アンモニウムは、バグフィルター140において、供給された粉体(水酸化カルシウム)と以下の反応式(9)のように反応して、塩化カルシウムとアンモニアに変化し得る。
2NH4Cl+Ca(OH)2=CaCl2+2NH3+2H2O (9)
従って、粉体として水酸化カルシウムを使用した場合、第2の処理ガスG2は、この反応により生じたアンモニアを含むと考えられる。このアンモニアは、以降の工程S130において、利用することができる。
【0050】
また、反応式(9)から明らかなように、バグフィルター140に供給される粉体が水酸化カルシウムの場合、アンモニアが生成する際に、この供給された水酸化カルシウムも消費される。通常、バグフィルター140に供給される水酸化カルシウムは、その多くが未反応のまま残留することが知られている。しかしながら、第1の方法では、例えば、反応式(9)により、バグフィルター140に未反応のまま残留する水酸化カルシウムの量を有意に抑制することができる。従って、バグフィルター140に供給される粉体をより効率的に利用することができる。
【0051】
バグフィルター140から排出される第2の処理ガスG2に含まれる硫黄成分の濃度は、二酸化硫黄(SO2)換算で、例えば、100mg/Nm3以下である。また、第2の処理ガスG2に含まれる塩素成分の濃度は、塩化水素(HCl)換算で、例えば、100mg/Nm3以下である。
【0052】
(工程S130)
次に、バグフィルター140から排出された第2の処理ガスG2は、脱硝装置160に供給される。
【0053】
なお、第2の処理ガスG2は、脱硝装置160に供給される前に加熱されてもよい。第2の処理ガスG2を加熱することにより、脱硝装置160内での反応効率が高められる。加熱温度は、例えば、250℃~300℃の範囲であってもよい。
【0054】
第2の処理ガスG2が脱硝装置160に供給されると、注入ノズルから還元剤が注入される。還元剤は、アンモニアガス、アンモニア水または尿素水であることが好ましい。第2の処理ガスG2が還元剤(アンモニアガスまたはアンモニア水)と接触すると、例えば、以下の反応式(10)、(11)に示す反応が生じる。
NO+NO2+2NH3=2N2+3H2O (10)
SO3+2NH3+H2O=(NH4)2SO4 (11)
これにより、第2の処理ガスG2中の窒素酸化物および硫黄酸化物が除去され、第3の処理ガスG3が生成される。
【0055】
なお、前述のように、第2の処理ガスG2には、アンモニアが含まれる場合がある(反応式(9)参照)。このアンモニアを、窒素酸化物および硫黄酸化物との反応に利用してもよい。この場合、脱硝装置160において、注入ノズルから供給される還元剤の量を抑制することができる。
【0056】
脱硝装置160から排出される第3の処理ガスG3の温度は、例えば、250℃~300℃の範囲である。また、第3の処理ガスG3に含まれる窒素酸化物の濃度は、例えば、800mg/Nm3以下である。
【0057】
その後、必要な場合、脱硝装置160から排出された第3の処理ガスG3は、湿式装置170に供給されてもよい。湿式装置170を使用することにより、上流側の装置で除去できず残留した硫黄成分および塩素成分などが、ここで除去される。具体的には、第3の処理ガスG3が湿式装置170に供給されると、ノズルから水などの液体が噴霧される。これにより、硫黄成分および塩素成分などが水に溶解するため、これらの残留成分をタンクに回収することができる。タンクに回収された水溶液は、配管174を介してスタビライザー120に戻してもよい。この場合、廃棄処分する排液の量を低減することができる。
【0058】
その後、湿式装置170から排出された第4の処理ガスG4は、煙突180を経由して大気に放出される。第4の処理ガスG4は、結露防止のため、例えば、200℃~250℃に加熱されてから、煙突180に供給されてもよい。
【0059】
ただし、前述のように、湿式装置170は必須の構成ではなく、省略されてもよい。この場合、脱硝装置160からの第3の処理ガスG3は、そのまま、または結露防止のため加熱された後、煙突180に供給される。
【0060】
以上、第1の方法では、このような工程を経て、排ガスGを適正に処理することができる。第1の方法を例に、本発明の一実施形態による排ガス処理方法について説明した。
【0061】
しかしながら、上記記載は単なる一例であって、本発明の一実施形態による排ガス処理方法は、別の工程を有してもよい。例えば、第1の方法の工程S120において、第2の回収手段146により回収された第2の反応生成物S2は、溶解炉110に戻され、ガラス原料とともに溶解されてもよい。この場合、処理設備100から排出される廃棄物の量を有意に抑制することができる。この他にも、各工程の修正、変更、および新たな工程の追加が可能である。
【0062】
(本発明の一実施形態によるガラス物品の製造方法)
次に、
図3を参照して、本発明の一実施形態によるガラス物品の製造方法について説明する。
図3には、本発明の一実施形態によるガラス物品の製造方法のフローを模式的に示す。
【0063】
図3に示すように、本発明の一実施形態によるガラス物品の製造方法(以下、単に「製造方法」と称する。)は、ガラス原料を溶解して溶融ガラスを形成する工程(S210)と、前記溶融ガラスを成形して成形ガラスを形成する工程(S220)と、前記成形ガラスを徐冷してガラス物品を得る工程(S230)と、を有する。
【0064】
以下、各工程について説明する。
【0065】
(工程S210)
まず、前述の
図2に示したような溶解炉110を用いて、ガラス原料が溶解され、溶融ガラスが形成される。
【0066】
(工程S220)
次に、溶融ガラスが成形される。成形の方法は、特に限られず、従来の方法を適用できる。例えば、フロート法またはフュージョン法を用いて、ガラスリボンを成形してもよい。
【0067】
(工程S230)
次に、成形ガラスが室温まで徐冷される。その後、徐冷されたガラスが所望の寸法に切断され、ガラス物品が製造される。
【0068】
ここで、製造方法の実施中、特に溶融ガラスの形成過程(工程S210)において、排ガスが生じる。この排ガスは、本発明の一実施形態による排ガス処理方法を用いて処理される。例えば、排ガスは、前述の第1の方法により処理されてもよい。本発明の一実施形態による排ガス処理方法を用いて排ガスを処理することにより、排ガス中に含まれる塩素成分、硫黄成分および窒素成分を適正に処理することができる。
【0069】
製造されるガラス物品の組成は、特に限られない。ただし、以下の理由から、製造方法は、無アルカリガラスの製造に適用することが好適である。無アルカリガラスとは、アルカリ金属酸化物の含有量の合量が0.1質量%以下であるガラスをいう。
【0070】
無アルカリガラスを製造する際、工程S210では、溶融ガラスに含まれる気泡を除去するため、塩素を含む清澄剤が添加されたガラス原料が、溶解炉110に投入される。従って、無アルカリガラスの製造プロセスでは、相応の塩素成分を含む排ガスが生じ得る。
【0071】
そこで、製造方法では、スタビライザー120において噴霧される冷却用水溶液として、壁面への付着が生じ難いアンモニア含有水溶液が使用される。このため、排ガスが高濃度の塩素成分を含む場合であっても、比較的高濃度および/または多量のアンモニア含有水溶液を使用することにより、排ガスを効率的に処理することができる。
【0072】
無アルカリガラスは、例えば、酸化物基準の質量%表示で、SiO2:54%~66%、Al2O3:10%~23%、B2O3:6%~12%、MgO+CaO+SrO+BaO:8%~26%を含有する。
【0073】
無アルカリガラスは、高歪点とするには、例えば、酸化物基準の質量%表示で、SiO2:54%~68%、Al2O3:10%~25%、B2O3:0.1%~5.5%、MgO+CaO+SrO+BaO:8%~26%を含有する。
【0074】
無アルカリガラスのCl含有量は、例えば、0.1質量%~0.35質量%である。
【実施例0075】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、以下の記載において、例1~例5は実施例であり、例11は比較例である。
【0076】
(例1)
排ガス処理設備を使用して、溶解炉から排出される排ガスの処理を実施した。排ガス処理設備としては、前述の
図2に示した構成の設備を使用した。排ガス処理設備の各装置の稼働条件は、以下の通りである。
[溶解炉]
ガラス溶解温度;1600℃
ガラス原料;無アルカリガラス(AGC株式会社のAN100)製造用の原料
排ガス温度;1200℃
[スタビライザー]
排ガスのスタビライザー入口温度;750℃
中和剤1;濃度10質量%の尿素水溶液
中和剤1の流量;5L/時間
中和剤1のモル数;505mol/時間
中和剤2;濃度0.61質量%の水酸化ナトリウム水溶液
中和剤2の流量;3300L/時間
中和剤2のモル数;503mol/時間
総アルカリ添加量;1008mol/時間
尿素添加率;50%
排ガスのスタビライザー出口温度;210℃
[バグフィルター]
排ガスのバグフィルター入口温度;210℃
粉体材料;水酸化カルシウム
粉体供給速度;1.5トン/日
排ガスのバグフィルター出口温度;190℃
[脱硝装置]
排ガスの脱硝装置入口温度;280℃
還元剤;アンモニアガス(供給量=300L/分)
排ガスの脱硝装置出口温度;280℃
[湿式装置]
排ガスの湿式装置入口温度;80℃
噴霧液体;水(供給量=3000L/時間)
排ガスの湿式装置出口温度;70℃
(例2~例5)
例1と同様の設備を用いて、排ガスの処理を実施した。ただし、この例2~例5では、スタビライザーにおいて噴霧される中和剤の条件を、以下の表1のように変更した。
【0077】
その他の稼働条件は、例1の場合と同様である。
【0078】
(例11)
例1と同様の設備を用いて、排ガスの処理を実施した。ただし、この例11では、スタビライザーにおいて中和剤1(尿素水溶液)を噴霧しなかった。すなわち、中和剤2(水酸化ナトリウム水溶液)のみを以下の表1の条件で噴霧した。
【0079】
その他の稼働条件は、例1の場合と同様である。
【表1】
【0080】
(結果)
各例において、以下の項目を評価した。
【0081】
(アンモニアガスの挙動)
例1~例5のそれぞれにおいて、排ガス処理設備の各位置で排ガスに含まれるアンモニア量を測定した。ここでいう排ガスは、排ガスG、第1の処理ガスG1、第2の処理ガスG2、および第4の処理ガスG4を意味する。
【0082】
図4には、各例において得られた排ガス中のアンモニア量の測定結果を示す。測定箇所は、スタビライザー入口(以下、「位置A」と称する。)、スタビライザー出口(以下、「位置B」と称する。)、バグフィルター出口(以下、「位置C」と称する。)、および煙突の直前(以下、「位置D」と称する。)とした。
【0083】
図4に示すように、排ガス中のアンモニア量は、特徴的な挙動を示した。すなわち、アンモニア量は、位置Aから位置Bまで減少した後、位置Cで再上昇し、その後、位置Dで再び減少した。
【0084】
このうち、位置Aから位置Bまでの挙動は、スタビライザー内での反応に対応している。すなわち、スタビライザー内で噴霧された尿素水溶液は、直後にアンモニアガスに分解する。このため、位置Aではアンモニア量が高くなる。ただし、生成したアンモニアガスは、排ガス中に含まれる塩素成分および硫黄成分と反応し、例えば、前述の反応式(3)、(4)のように消費される。従って、位置Bでは、アンモニア量が低下する。
【0085】
一方、位置Bから位置Cまでの挙動は、バグフィルター内での反応に対応している。すなわち、バグフィルター内では、例えば、前述の反応式(9)のように、アンモニウム塩が水酸化カルシウムと反応して、アンモニアガスが生成する。従って、位置Cでは、再度アンモニウム量が上昇する。
【0086】
さらに、位置Cから位置Dまでの挙動は、脱硝装置内での反応に対応している。すなわち、位置Cで再生成したアンモニアガスは、前述の反応式(10)、(11)のように、脱硝装置における反応で消費される。従って、位置Dでは、アンモニア量が減少する。
【0087】
このように、例1~例5における排ガス処理プロセスでは、排ガスの流れに沿って、アンモニアガスが特徴的な増減を繰り返していることがわかった。
【0088】
(排ガス処理の効果)
図5には、各例におけるスタビライザー出口(位置B)で測定された塩素量をまとめて示す。
図5において、横軸は、スタビライザー内での噴霧された尿素添加量と水酸化ナトリウム添加量の合計、すなわち総アルカリ添加量(mol/時間)を表す。また、縦軸は、スタビライザー出口(位置B)における塩素量(mol/時間)を表す。
【0089】
図5から、総アルカリ添加量が増加するほど、位置Bにおいて排ガス(第1の処理ガスG1)に含まれる塩素量が低下する傾向にあることがわかる。噴霧する中和剤が水酸化ナトリウムのみである場合(例11)も、同様の傾向が認められる。従って、係る結果から、スタビライザー内で噴霧された尿素は、塩素の除去に関して、少なくとも水酸化ナトリウムと同等の効果を発揮すると言える。
【0090】
図6には、各例におけるスタビライザー出口(位置B)で測定された二酸化硫黄量をまとめて示す。
図6において、横軸は、スタビライザー内での総アルカリ添加量(mol/時間)を表す。また、縦軸は、スタビライザー出口(位置B)における二酸化硫黄量(mol/時間)を表す。
【0091】
図6から、位置Bにおいて排ガスに含まれる二酸化硫黄に関しても、総アルカリ添加量が増加するほど低下する傾向にあることがわかる。従って、係る結果から、スタビライザー内で噴霧された尿素は、二酸化硫黄の除去に関しても、少なくとも水酸化ナトリウムと同等の効果を発揮すると言える。
【0092】
図7には、各例において得られたスタビライザーでの脱塩率を示す。
図7から、尿素を噴霧した例1~例5では、水酸化ナトリウムのみを噴霧した例11における脱塩率と同等またはそれ以上の脱塩率が得られることがわかる。なお、脱塩率は、以下の式(12)から算出した。
脱塩率(%)=1-
バグフィルター入口でのCl濃度/スタビライザー入口でのCl濃度 (12)
図8には、各例において得られたスタビライザーでの脱硫率を示す。
図8から、尿素を噴霧した例1~例5では、水酸化ナトリウムのみを噴霧した例11における脱硫率と同等またはそれ以上の脱硫率が得られることがわかる。なお、脱硫率は、以下の式(13)から算出した。
脱硫率(%)=1-
バグフィルター入口でのSO
2濃度/スタビライザー入口でのSO
2濃度 (13)
図9には、各例において得られた脱硝装置での脱硝率を示す。なお、脱硝率は、以下の式(14)から算出した。
脱硝率(%)=1-
煙突手前でのNO
x濃度/バグフィルター出口でのNO
x濃度 (14)
図9から、尿素を噴霧した例1~例5では、水酸化ナトリウムのみを噴霧した例11における脱硝率を超える高い脱硝率が得られていることがわかる。これは、前述のように、例1~例5では、バグフィルターにおいてアンモニアガスが生成されるためであると考えられる。すなわち、脱硝装置では、噴霧されるアンモニアガスに加えて、前工程で生成したアンモニアガスも、脱硝反応に寄与するため、高い脱硝率が得られたと考えられる。
【0093】
以下の表2には、各例で得られたスタビライザーでの脱塩率、スタビライザーでの脱硫率、および脱硝装置での脱硝率をまとめて示した。
【表2】
【0094】
このように、例1~例5における排ガス処理プロセスでは、脱塩率、脱硫率、および脱硝率のいずれにおいても、例11における排ガス処理プロセスと同等以上の効果が得られることがわかった。
【0095】
以上のことから、スタビライザーにおいて噴霧される中和剤として、アンモニア含有水溶液を使用しても、排ガスを適正に処理できることが確認された。