(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027736
(43)【公開日】2022-02-14
(54)【発明の名称】分類システムとデータ・バーストの分類方法
(51)【国際特許分類】
G01R 13/00 20060101AFI20220203BHJP
G01R 13/20 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G01R13/00 Z
G01R13/20 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021126118
(22)【出願日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】202021032802
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】17/386,400
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーシキーヤン・アール
(72)【発明者】
【氏名】シビー・チャーリー・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン・ジェイ・ピカード
(72)【発明者】
【氏名】セイフィー・エフ・ジャスダンワラ
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラ・セカール・カッパガントゥ
(72)【発明者】
【氏名】マヘシュ・ネア・エム
(57)【要約】
【課題】単一のチャンネルを使用して双方向信号を分類する。
【解決手段】システム10は、波形信号を受ける入力部12と、1つ以上のプロセッサ20とを有し、プロセッサ20は、波形信号からデータ・バーストを抽出し、各データ・バーストのロー・データから対応するデータ・ベクトルを生成し、機械学習を使用して、対応するデータ・ベクトルからデータ・バーストの夫々を分類する処理を1つ以上のプロセッサに行わせるコードを実行するように構成さる。データ・バースト分類方法は、入力波形を受けて、入力波形からデータ・バーストを抽出し、データ・バーストの1つ以上のスペクトル特徴を導出し、1つ以上のスペクトル特徴から各データ・バーストに対応するデータ・ベクトルを生成し、機械学習を使用して対応するデータ・ベクトルからデータ・バーストを分類する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形信号を受ける入力部と、
1つ以上のプロセッサであって、
上記波形信号からデータ・バーストを抽出する処理と、
上記データ・バースト夫々のロー・データから対応するデータ・ベクトルを生成する処理と、
機械学習を使用して、対応する上記データ・ベクトルから上記データ・バーストの夫々を分類する処理と
を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードを実行するように構成された1つ以上の上記プロセッサと
を具える分類システム。
【請求項2】
上記波形信号中の上記データ・バーストを抽出する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードが、
上記プロセッサに、データ・バーストのプリアンブルを特定すると共にデータ・バーストの後のポストアンブルを特定する処理と、
上記プリアンブル、事前に定義されたサイクル数を有する上記データ・バースト及びポストアンブルを含むウィンドウを定義する処理と、
上記データ・バースト内のサンプルについて、もしサンプルが所定の閾値を超える値を持つ場合には1に、もしサンプルが所定の閾値をより小さい値を持つ場合には0に設定することで、上記データ・バーストのロー・データを生成する処理と
を行わせるコードを有する請求項1の分類システム。
【請求項3】
対応するデータ・ベクトルを生成する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせる上記コードが、1つ以上のプロセッサに、上記データのスペクトル特徴を連結して対応する上記データ・ベクトルにする処理を行わせるコードを有する請求項1の分類システム。
【請求項4】
対応するデータ・ベクトルを生成する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせる上記コードが、1つ以上の上記プロセッサに、
上記ロー・データに短時間フーリエ変換(STFT)を適用してスペクトル・データを生成する処理と、
エネルギー、平坦性係数、重心及びロール・オフを含むスペクトル・データの1つ以上のスペクトル特徴を求める処理と、
1つ以上の上記スペクトル特徴を連結して、対応する上記データ・ベクトルを生成する処理と
を行わせるコードを有する請求項1の分類システム。
【請求項5】
機械学習を使用して上記データ・バーストの夫々を分類する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせる上記コードが、1つ以上の上記プロセッサに、上記データ・バーストの夫々をメモリ読み出しバースト又はメモリ書き込みバーストのいずれかとして分類する処理を行わせるコードを有する請求項1のシステム。
【請求項6】
入力波形を受ける処理と、
上記入力波形からデータ・バーストを抽出する処理と、
上記データ・バーストの1つ以上のスペクトル特徴を導出する処理と、
1つ以上の上記スペクトル特徴から上記バースト・データ夫々に対応するデータ・ベクトルを生成する処理と、
機械学習を使用して、対応する上記データ・ベクトルから上記データ・バーストを分類する処理と
を具えるデータ・バースト分類方法。
【請求項7】
データ・バーストを抽出する処理が、
データ・バーストのプリアンブルとデータ・バーストの後のポストアンブルとを特定する処理と、
上記プリアンブル、所定数のサイクルを有する上記データ・バースト及びポストアンブルを含むウィンドウを定義する処理と、
上記データ・バースト内のサンプルについて、もしサンプルが所定の閾値を超える値を持つ場合には1に、もしサンプルが所定の閾値をより小さい値を持つ場合には0に設定することで、上記データ・バーストのロー・データを生成する処理と
を有する請求項6のデータ・バースト分類方法。
【請求項8】
対応するデータ・ベクトルを生成する処理が、上記データのスペクトル特徴を連結して、対応するデータ・ベクトルとする処理を有する請求項6又は7のデータ・バースト分類方法。
【請求項9】
対応するデータ・ベクトルを生成する処理が、
ロー・データに短時間フーリエ変換(STFT)を適用して、スペクトル・データを生成する処理と、
エネルギー、平坦性係数、重心及びロール・オフを含むスペクトル・データの1つ以上のスペクトル特徴を求める処理と、
1つ以上のスペクトル特徴を連結して、対応するデータ・ベクトルを生成する処理と
を有する請求項6から8のいずれかのデータ・バースト分類方法。
【請求項10】
入力される波形を受ける入力部と、
上記波形からデータ・バーストを抽出するバースト抽出部と、
上記データ・バースト中のデータから1つ以上のスペクトル特徴を導出する特徴の導出部と、
1つ以上の上記スペクトル特徴からデータ・ベクトルを生成するデータ・ベクトル生成部と、
上記データ・ベクトルを使用して上記データ・バーストを分類する機械学習システムと
を具える分類システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、波形からのデータ・バーストの抽出に関し、特に、データ・バーストを使用して機械学習(machine learning)によって分類するために、データ・ベクトルを生成することに関する。
【背景技術】
【0002】
DDR5(ダブル・データ・レート第5世代)メモリ及び以前の世代のDDRメモリでは、データ・バスを介してデータが転送される。双方向データ・バスは、メモリ・コントローラとダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)チップ間のデータ転送をサポートする。データの記憶中、コントローラは、データ・バスを駆動(ドライブ)してDRAMにデータを書き込む(書き込みバースト)。同様に、データの読み戻し中に、DRAMは、同じデータ・バスにデータを出力する(読み出しバースト)。このような双方向データ転送構造では、読み出し/書き込みバーストを正しく検出し、データ分析を選択的に実行するのは複雑になる。
【0003】
従来利用されている手法では、DQS波形又はクロック波形を利用して、バーストを読み出し(リード)又は書き込み(ライト)として特定(識別)している。データ転送は、一般に、16/32/64ビットのバイト長の短いバーストで構成され、各バーストは、メモリの読み出し又はメモリへの書き込み動作を示す。信号特性は、読み出しと書き込みの間で変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
何らかの種類のコンプライアンス測定を実行するには、バーストを読み出し又は書き込みとして識別(特定)することが不可欠になる。通常、DQS信号を使用して特定のパラメータを計算すると、バーストの種類を識別できる。この手法は、うまく機能するが、クロック信号と専用のチャンネルが必要である。
【0006】
開示された装置及び方法の実施形態は、従来技術における欠点に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の実施形態には、大まかに言えば、単一のチャンネル(例えば、オシロスコープのような試験測定装置の単一の入力チャンネル)を用いて双方向信号を分類する方法が含まれる。これら実施形態は、信号バーストに対して信号処理を行って、信号のスペクトルの特徴を求め、これらの特徴を機械学習分類器(machine learning classifier)への入力として使用して信号を識別(特定)する。本願の実施形態は、データ波形に適用される機械学習ベースの手法を採用して、読み出し/書き込みの分類を実行する。これら実施形態は、単一のチャンネル、信号処理機能、及び応用機械学習を利用して、これを達成する。本願の実施形態では、DDR5における読み出しバーストと書き込みバーストとの間での識別を説明するが、本願の手法は、他の双方向信号の信号バーストの識別に応用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、データ・バーストを分類する方法を示す。
【
図3】
図3は、試験測定装置の画面上でのデータ・バーストの画像を示す。
【
図4】
図4は、読み出しデータ・バーストの短時間フーリエ変換を示す。
【
図5】
図5は、書き込みデータ・バーストの短時間フーリエ変換を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、データ・バースト信号を分類するように構成されたシステムの実施形態を示す。本願での説明は、信号が読み出しデータ信号であるか又は書き込みデータ信号であるかの決定に焦点を当てているが、上述したように、本願の手法は、他の双方向信号の信号バーストの識別に応用することもできる。
【0010】
システム10は、入力波形を受信する入力部12を有する。オシロスコープなどの試験測定装置14は、被試験デバイス(DUT)16から波形を受信し、その分類を行うシステムに波形を渡しても良い。いくつかの実施形態では、分類を行うシステムと試験測定装置とが、同じ装置を備えても良い。他の実施形態では、試験測定装置は分類システムとは別の装置に存在しても良い。別の実施形態では、波形データが、データ・ファイル18の形式で分類システムに提供されても良い。分類システムは、1つ以上のプロセッサ20を有していても良く、これは、同じコンピューティング装置中に存在しても良いし、いくつかの異なる装置に渡って分散されても良いが、その一部は、いくつかの実施形態においてネットワーク上に存在しても良い。
【0011】
分類システムには、ストレージ(記憶媒体)24があっても良く、これは、プロセッサを有しているのと同じ装置中にあっても良いし、データベースやクラウド・ストレージのような、装置の外部にあっても良い。また、分類システムには、内部メモリ22もあって良く、これは、実施形態の処理をプロセッサに実行させる命令を保持する。この内部メモリ又は外部ストレージは、トレーニングと検証に使用されるデータ・セットに加えて、分類中のデータを保有しても良い。分類の結果は、28のように出力として提供される。ユーザは、ユーザ・インタフェース26を介してシステムとインタラクティブな操作ができる。このユーザ・インタフェースは、試験測定デバイス上の任意のユーザ・インタフェースに追加されるものであっても良い。システム10は、アーキテクチャが何であれ、バースト・データを分類するために動作する。
【0012】
図2は、信号処理、機械学習(ML:Machine Learning)による分類に基づく後述の前処理及び特徴エンジニアリング処理を含むデータ・バーストを分類する方法の一実施形態のフローチャートを示す。この処理は、30で、試験測定装置又はファイルのいずれかから波形入力を受ける。実施形態は、バーストのバイナリ(binary)分類を行う。この処理は、32において、指定されたレコード長の波形からバーストを分離するもので、与えられた信号を分離してバースト領域のみを抽出する。この抽出動作は、振幅シフト若しくはエネルギー・シフト又はその両方の観点から実現できる。抽出の品質は、極端に正確である必要はなく、それ相応の品質の抽出であれば、残りの処理ブロックに関して十分であろう。実施形態は、特徴抽出器(feature extractor)及び機械学習分類器(machine learning classifier)が動作するのに適した形式に信号を操作する。
【0013】
以下の式は、サンプルを抽出するために使用される式の1つの実施形態を示す。
【数1】
ここで、1はバーストを、0は無バースト(non bursts:バースト無し)を示し、Iは、扱った演算の正又は負の符号に基づいて0又は1を与える指示関数(indicator function)であり、s
iは、選択されたウィンドウのi番目のサンプルであって、このとき、ウィンドウの定義=(バースト長+6UI)、バースト長=16UI、UIは信号のユニット・インターバルであり、そして、閾値は、設定変更可能であるが、比較のために、1に初期化されている。例えば、DDR5メモリがDUTの場合、バースト長は、DDR5の仕様に沿って、16UI/32UIのように変化する。
【0014】
図3は、バースト・ウィンドウの波形表示を示す。下の凡例ボックスにおいて、R1はDQS波形、R2はDQ波形である。
図3に示すように、DQ波形におけるデータ・バーストには、プリアンブル50、実際のバースト信号52、次いでポスアンブル54がある。プリアンブル、バースト、ポスアンブルの組み合わせが、ウィンドウを構成する。この特定の実施形態では、バーストは、16UIの長さを有する。
【0015】
ほとんどのMLベースの分類作業は、特徴エンジニアリングを応用しており、その考え方は、その基礎となるデータの抽象的な表現を見つけ出すことである。この場合、特徴エンジニアリングは、動作中の全てのバーストに対して、抽象固定ベクトルを作成する。特徴エンジニアリングの手順は、様々な形式を取り得るが、パラメータ/特徴を導出する処理は、共通性が最も高く、これは、ドメインの知識に基づくロー・データから、ターゲット・クラス間の差別化要因のように機能する。
【0016】
本願での実施形態は、ロー(raw:生)データ(この場合、バースト信号)からの特徴導出を利用する。本願での実施形態は、DDRに関連する特定のパラメータを使用する代わりに、任意の1次元(1D)信号の本質的に一般的な特徴を導出することによって、わずかに異なる特徴導出に取り組むものである。実施形態は、周波数ベースの複数のスペクトル特徴(スペクトル特徴のセット)を使用する。各特徴の詳細は、以下で説明する。
【0017】
スペクトル特徴を見つけ出すために、このプロセスは、
図2の34において、抽出されたバースト信号を周波数領域に変換する。一般に、周波数変換としては、単純な高速フーリエ変換(FFT)がある。しかし、FFTを信号全体に適用すると、結果として得られる変換は、高い周波数分解能と低い時間分解能とを有する。これにより、時間領域のデータの詳細を取りこぼすことになる。この問題を解決するために、このプロセスでは、短時間フーリエ変換(Short-Term Fourier Transform:STFT)を使用する。STFTは、時間領域の窓関数(ウィンドウ)処理とフレーム処理とを重ねて行い、FFTを各フレームに個別に適用する。これにより、X軸に沿った時間とY軸に沿った周波数を有する時間と周波数の2次元(2D)表現が作成される。
数式2
S
it=FFT(frames(x
i))
ここで、大文字の「S」はi番目のビンとt番目の時間フレームの周波数領域データを表し、x
iは、入力信号バーストであり、framesは、時間領域でフレーム化した入力信号バーストの断片を示し、そして、S
itは、STFTで表されたデータである。
図4は、読み出し(リード)信号のSTFT結果を示し、
図5は書き込み(ライト)信号に関するSTFT結果を示していると共に、X軸に沿った時間とY軸に沿った周波数を有する信号のスペクトログラムを示し、このとき、実際のものはフルカラーで示されている。色は、デシベル(dB)スケールで周波数領域の強度を示しており、強度が強いほど赤に近づき、強度が弱いほど青に近づく。しかし、添付の
図4及びと5は、グレースケールで示されているので、おおよそ、強度が強いほど黒に近づき、強度が弱いほど白に近づくことを示している。これら信号の異なるスペクトル特徴は、36において、求められる。
【0018】
スペクトル特徴の1つは、エネルギー、つまり、STFTデータの時間領域フレーム毎に計算されるスペクトルの大きさである。これは次のように表すことができる。
【数3】
ここで、E
tは、t番目の時間フレームのスペクトル・エネルギーであり、S
itは、i番目の周波数ビンとt番目の時間フレームであり、Nは、周波数とビンの数を表す。
【0019】
スペクトルの平坦性(Spectral flatness)は、周波数スペクトルの幾何平均(geometric mean)に対する算術平均(arithmetic mean)の比である。本願の実施形態は、フレーム単位でそれを計算し、時間フレームの数と同じ数の平坦性係数を与える。平坦性係数がゼロに近づいている場合、これは、次のように、スペクトルが全ての周波数から構成されており、そして、大まかに言って、クリーンな信号でアクティブな信号は少なく、ノイズが非常に多いことを示している。
【数4】
ここで、F
tは、t番目の時間フレームのスペクトル平坦性であり、S
itは、i番目の周波数ビンとt番目の時間フレームのSTFTデータであり、Nは、サンプルの数である。
【0020】
その重心、つまり、スペクトルの重心(spectral centroid)は、任意の特定の時間フレームの周波数スペクトルの重心(center of gravity)を定義する。実際には、次に示されるように、各時間フレームにおける正規化された周波数スペクトルのマグニチュード加重平均として定義される。
【数5】
ここで、C
tは、t番目の時間フレームの重心(centroid)であり、Freq
iは、i番目のビンの周波数値であり、S
itは、i番目の周波数ビンとt番目の時間フレームのSTFTデータを示す。
【0021】
スペクトルのロール・オフによって、時間フレーム毎のエネルギーの大部分(デフォルトは85%)に貢献している周波数ビンの中心周波数が特定される。その同じことは、以下のように表すことができる。
数式6
Rt=Freqk=argmax(0.85*Et=CMagit)
ここで、Rtは、t番目の時間フレームのスペクトルのロール・オフであり、Etは、t番目の時間フレームのスペクトル・エネルギーであり、CMagitは、i番目の周波数ビンとt番目の時間フレームに関する累積マグニチュード(cumulative magnitude)である。
【0022】
このプロセスは、
図2の38において、データ・ベクトルを作成する。このデータ・ベクトルは、信号の少なくとも2つのスペクトル特徴の連結を含み、このとき、スペクトル特徴としては、限定するものではないが、先に示したものを含む。本願で説明する実施形態では、上述したスペクトル特徴の全てを連結したが、全てを利用する必要はない。もっと少ないスペクトル特徴を利用することもできるが、判定の正確性の確率に影響を与えることがある。
【0023】
特徴ベクトルの抽出が完了したら、次のステップでは、機械学習(machine learning)40を用いて、これらの特徴ベクトルの分類を進める。いくつかの実施形態は、ランダム・フォレスト分類器を使用しても良く、これは、決定木の集合(collection of decision trees)を含んでいる。このプロセスは、サンプルが少ない非常に小さなデータセットについてプロトタイプを作成し、集合体を通した過剰な適合(overfitting)に抵抗する能力により、ランダム・フォレストを適切に選択した。過剰な適合は、データ・ポイントの小さなセットにあまりにもぴったりと適合しすぎる特定の関数に起因する。ランダム・フォレストは、最も投票されたものである最終的に分類されたラベルを有する複数の決定木(decision trees)の集合体(ensemble:アンサンブル)を生成する。
【0024】
一部の実施形態は、ランダム・フォレスト分類器を採用しても良いし、以下の説明は、ランダム・フォレストに焦点を当てているが、この特定の分類器に限定する意図はないし、限定することを何ら意味しないことに注意されたい。以下の説明では、ランダム・フォレスト分類器に限定するのではなく、分類器を使用する方法の例を提示する。
【0025】
バーストのトレーニング・サンプルとそれぞれのクラス・ラベルを、次のように与えたとする。
【数7】
分類器のランダム・フォレストの式は、次のように与えられる。
【数8】
ここで、Dは、決定木を示し、Mは、木の集合体(アンサンブル)の数を与え、Iは、指標関数であり、RF
bは、バーストbのランダム・フォレストの分類ラベルを表す。モデル42は、分類器(classifier)46を適切に開発するためにトレーニング・データ44でトレーニングされ、後に、48において、提供される試験セットで試験される。このモデルは、次いで、50において、データ・バーストの分類を行う。
【0026】
説明は、ランダム・フォレスト分類器に焦点を当てているが、このプロセスは、他の分類器を使用しても良いことに注意されたい。例えば、次の式で記述されるデータのセットを考えると、
【数9】
バースト分類器の一般的な式は、入力信号の特徴について学習した非線形関数として定義され、次で、出力ラベルを以下のように予測する。
数式10
f:x
b → y
b
ここで、x
b∈R
dは、b個の入力バーストの夫々に対応するd次元の特徴であり、y
b∈{0,1}は、b個の入力バーストの夫々に対応する読み出し(リード)及び書き込み(ライト)のラベルである。データ探索によって解明される入力データの固有の非線形性のため、分類器の非線形機能が推奨される。一般的に利用される非線形分類器は、サポート・ベクター・マシン(Support Vector Machine:SVM)や、ランダム・フォレスト(Bagging:バギング)又はブースティング(Boosting)のようなアンサンブル学習(ensemble learning:集合学習)方法、及びニューラル・ネットワークであっても良い。
【0027】
トレーニングや試験(テスト)に関係なく、全てのバーストは、実際のモデル・トレーニングを実行する前に、前処理と機能エンジニアリングを受けました。ランダムに選択された読み出し(リード)/書き込み(ライト)バースト夫々のスペクトログラム(短時間フーリエ変換)を表したものは、
図4及び5のようなもので、これら表示から、周波数スペクトルに十分な変動があって、スペクトルから生成できる学習可能なパラメータの存在を示していることは、明らかである。
【0028】
実験では、発明者は、現実世界のバースト信号から作成されたデータセット上のモデルをトレーニングしました。検証/テストは、トレーニングで使用されていない別のデータセットについて行われ、約90%の平均精度が得られました。
【0029】
このようにして、このシステムは、DQバーストについて、1つの(モノラル)チャンネルのみを使用してバースト検出を実行できる。実施形態は、DDR固有の属性ではなく、単純な一般的な周波数領域パラメータを使用してバースト検出を行う。このアプローチは、ベンダーと顧客の波形に依存しないものであり、モデルはサンプリングレートのみに依存する。また、実施形態は、バースト検出に応用されたMLアプローチを提供する。
【0030】
実施形態は、基本的に、より簡単な分析のため、バースト信号を読み出し(リード)/書き込み(ライト)に分類するためのMLに基づく技術を網羅している。実施形態は、DQ信号のみを利用すると共に、基本的な周波数領域の特徴だけを使用して、根本的に新しい角度からのバーストの分類を考えている。このシステムは、実際の波形を有するサンプル・データセットで開発及び検証され、この技術の堅牢性を概して示しました。
【0031】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0032】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0033】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Versatile Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0034】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0035】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0036】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
実施例
【0037】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0038】
実施例1は、システムであって、波形信号を受ける入力部と、1つ以上のプロセッサであって、上記波形信号からデータ・バーストを抽出する処理と、上記データ・バースト夫々のロー(raw:生)データから対応するデータ・ベクトルを生成する処理と、機械学習を使用して、対応する上記データ・ベクトルから上記データ・バーストの夫々を分類する処理とを1つ以上の上記プロセッサに行わせるコード(プログラム)を実行するように構成された1つ以上の上記プロセッサとを具えている。
【0039】
実施例2は、実施例1のシステムであって、上記波形信号中の上記データ・バーストを抽出する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードが、上記プロセッサに、データ・バーストのプリアンブルを特定すると共にデータ・バーストの後のポストアンブルを特定する処理と、上記プリアンブル、事前に定義されたサイクル数を有する上記データ・バースト及びポストアンブルを含むウィンドウを定義する処理と、上記データ・バースト内のサンプルについて、もしサンプルが所定の閾値を超える値を持つ場合には1に、もしサンプルが所定の閾値をより小さい値を持つ場合には0に設定することで、上記データ・バーストのロー・データを生成する処理とを行わせるコードを有している。
【0040】
実施例3は、実施例2又は3のシステムであって、上記データ・バースト夫々の上記ロー・データから対応するデータ・ベクトルを生成する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードが、1つ以上のプロセッサに、上記ロー・データから特徴を導出する処理を行わせるコードを有している。
【0041】
実施例4は、実施例1~3のいずれかのシステムであって、対応するデータ・ベクトルを生成する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードが、1つ以上のプロセッサに、上記データのスペクトル特徴を連結して対応するデータ・ベクトルにする処理を行わせるコードを有する。
【0042】
実施例5は、実施例1~4のいずれかのシステムであって、対応するデータ・ベクトルを生成する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードが、1つ以上のプロセッサに、上記ロー・データに短時間フーリエ変換(STFT)を適用してスペクトル・データを生成する処理と、エネルギー、平坦性係数、重心(centroid)及びロール・オフを含むスペクトル・データの1つ以上のスペクトル特徴を求める処理と、1つ以上の上記スペクトル特徴を連結して、対応する上記データ・ベクトルを生成する処理とを行わせるコードを有している。
【0043】
実施例6は、実施例1~5のいずれかのシステムであって、機械学習を使用して、対応する上記データ・ベクトルから上記データ・バーストの夫々を分類する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードが、1つ以上の上記プロセッサに、ランダム・フォレスト分類器を使用させるコードを有する。
【0044】
実施例7は、実施例1~6のいずれかのシステムであって、機械学習を使用する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードが、1つ以上の上記プロセッサに、トレーニングされたモデルを生成するために、トレーニング・データを使用して分類器をトレーニングする処理を行わせるコードを更に有する。
【0045】
実施例8は、実施例7のシステムであって、1つ以上の上記プロセッサに、トレーニング・データを使用して分類器をトレーニングする処理を行わせるコードが、1つ以上の上記プロセッサに、トレーニングされたモデルを検証させるコードを更に有している。
【0046】
実施例9は、実施例1~8のいずれかのシステムであって、機械学習を使用して、対応する上記データ・ベクトルから上記データ・バーストの夫々を分類する処理を1つ以上の上記プロセッサに行わせるコードが、1つ以上の上記プロセッサに、上記データ・バーストの夫々をメモリ読み出しバースト又はメモリ書き込みバーストのいずれかとして分類する処理を行わせるコードを有している。
【0047】
実施例10は、データ・バーストを分類する方法であって、入力波形を受ける処理と、上記入力波形からデータ・バーストを抽出する処理と、上記データ・バーストの1つ以上のスペクトル特徴を導出する処理と、1つ以上の上記スペクトル特徴から上記バースト・データ夫々に対応するデータ・ベクトルを生成する処理と、機械学習を使用して、対応する上記データ・ベクトルから上記データ・バーストを分類する処理とを具えている。
【0048】
実施例11は、実施例10の方法であって、データ・バーストを抽出する処理が、データ・バーストのプリアンブルを特定すると共にデータ・バーストの後のポストアンブルを特定する処理と、上記プリアンブル、所定数のサイクルを有する上記データ・バースト及びポストアンブルを含むウィンドウを定義する処理と、上記データ・バースト内のサンプルについて、もしサンプルが所定の閾値を超える値を持つ場合には1に、もしサンプルが所定の閾値をより小さい値を持つ場合には0に設定することで、上記データ・バーストのロー・データを生成する処理とを有している。
【0049】
実施例12は、実施例10又は11の方法であって、対応するデータ・ベクトルを生成する処理が、ロー・データから特徴を導出する処理を有する。
【0050】
実施例13は、実施例10~12のいずれかの方法であって、対応するデータ・ベクトルを生成する処理が、上記データのスペクトル特徴を連結して、対応するデータ・ベクトルとする処理を有する。
【0051】
実施例14は、実施例10~13のいずれかの方法であって、対応するデータ・ベクトルを生成する処理が、ロー・データに短時間フーリエ変換(STFT)を適用して、スペクトル・データを生成する処理と、エネルギー、平坦性係数、重心及びロール・オフを含むスペクトル・データの1つ以上のスペクトル特徴を求める処理と、1つ以上のスペクトル特徴を連結して、対応するデータ・ベクトルを生成する処理とを有する。
【0052】
実施例15は、実施例10~14のいずれかの方法であって、機械学習を使用して、対応する上記データ・ベクトルから上記データ・バーストを分類する処理が、ランダム・フォレスト、サポート・ベクター・マシン、ブースティング及びニューラルネットワークのいずれかを含む分類器を使用する処理を有する。
【0053】
実施例16は、実施例10~15のいずれかの方法であって、機械学習を使用する処理が、トレーニングされたモデルを生成するために、トレーニング・データを使用して分類器をトレーニングする処理を有する。
【0054】
実施例17は、実施例16の方法であって、トレーニング・データを使用する処理が、トレーニングされたモデルを検証する処理を有する。
【0055】
実施例18は、実施例10~16のいずれかの方法であって、機械学習を使用して上記データ・バーストの夫々を分類する処理が、上記データ・バーストの夫々をメモリ読み出しバースト又はメモリ書き込みバーストのいずれかとして分類する処理を有する。
【0056】
実施例19は、システムであって、入力される波形を受ける入力部と、上記波形からデータ・バーストを抽出するバースト抽出部と、上記データ・バースト中のデータから1つ以上のスペクトル特徴を導出する特徴の導出部と、1つ以上の上記スペクトル特徴からデータ・ベクトルを生成するデータ・ベクトル生成部と、上記データ・ベクトルを使用して上記データ・バーストを分類する機械学習システムとを具えている。
【0057】
実施例20は、実施例19のシステムであって、上記データ・ベクトル生成部は、複数のスペクトル特徴を連結することによってデータ・ベクトルを生成するように構成される。
【0058】
特許請求の範囲、要約及び図面を含め、本明細書に開示される全ての特徴と、開示される全ての方法又は処理における全ての工程は、互いに少なくとも一部分が排他的でない限り、任意に組み合わせても良い。特許請求の範囲、要約及び図面を含め、本明細書に開示される特徴の夫々は、特に明記されていない限り、同じ、等価又は類似の目的に寄与する代替の特徴で置き換えても良い。
【0059】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0060】
10 分類システム
12 入力部
14 試験測定装置
16 被試験デバイス(DUT)
18 データ・ファイル
20 プロセッサ
22 内部メモリ
24 ストレージ
26 ユーザ・インターフェイス
28 出力
【外国語明細書】