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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028987
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ケトン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/293 20060101AFI20220209BHJP
   C07C 69/767 20060101ALI20220209BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
C07C67/293
C07C69/767
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2018235913
(22)【出願日】2018-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】関 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】真島 和志
(72)【発明者】
【氏名】劒 隼人
(72)【発明者】
【氏名】タルデ ジャリンダ バウサヘブ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC44
4H006BA05
4H006BA37
4H006BR30
4H006KA30
4H039CA62
4H039CD60
4H039CD90
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケトン化合物の新規製造方法の提供。
【解決手段】下式(I):
で表される化合物(I)を製造する方法であって、下式(II):
で表される化合物(II)(式中、Qは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基等を、式中の硫黄原子と結合する官能基として含む有機基)と、有機亜鉛化合物とを、銅触媒の存在下で反応させて、前記化合物(I)を得る工程を含んでなる、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
[式中、
及びWは、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基を、式中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基を表し、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表される化合物(I)を製造する方法であって、
下記式(II):
【化2】
[式中、
は、前記と同義であり、
Qは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基を、式中の硫黄原子と結合する官能基として含む有機基を表し、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表される化合物(II)と、
下記式(III-I):
【化3】
[式中、Wは、前記と同義であり、Xは、ハロゲン原子を表す。]
で表される化合物(III-I)、及び、下記式(III-II):
【化4】
[式中、Wは、前記と同義である。]
で表される化合物(III-II)
からなる群から選択される少なくとも1種の有機亜鉛化合物とを、
銅触媒の存在下で反応させて、前記化合物(I)を得る工程
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記化合物(II)と前記少なくとも1種の有機亜鉛化合物との反応が、-10~80℃で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記銅触媒が、銅塩又はその水和物もしくは溶媒和物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記銅触媒が、銅錯体触媒である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記銅錯体触媒が、1価又は2価の銅原子及び窒素配位子を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の有機亜鉛化合物が、前記化合物(III-I)を含み、
前記化合物(III-I)が、下記式:
【化5】
[式中、W及びXは、前記と同義である。]
で表されるシュレンク平衡状態にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脂肪族炭化水素基が、炭素数1~6の脂肪族炭化水素基であり、
前記芳香族炭化水素環基が、炭素数6~18の芳香族炭化水素環基であり、
前記脂肪族複素環基が、3~8員の脂肪族複素環基であり、
前記芳香族複素環基が、6~14員の芳香族複素環基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記脂肪族炭化水素基が有していてもよい前記1個以上の置換基が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基が有していてもよい前記1個以上の置換基が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
で表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方が、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を、前記式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含み、前記芳香族炭化水素環基及び前記芳香族複素環基が各々、1個以上の置換基を有していてもよい、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
で表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方が、下記式(V):
【化6】
[式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルケニルオキシ基及びアリールアルキニルオキシ基からなる群から選択される官能基を表し、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記アリール基、前記アリールアルキル基、前記アリールアルケニル基、前記アリールアルキニル基、前記アルキルオキシ基、前記アルケニルオキシ基、前記アルキニルオキシ基、前記アリールオキシ基、前記アリールアルキルオキシ基、前記アリールアルケニルオキシ基及び前記アリールアルキニルオキシ基は各々、1個以上の置換基を有していてもよく、
nは、0~4の整数であり、
Ar’は、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基を表し、前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
で表される官能基が、それぞれ独立して、アルキル基及びハロゲン原子から選択され、前記アルキル基が、1個以上の置換基を有していてもよい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
で表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方が、下記式(Va):
【化7】
[式中、
は、前記と同義であり、
Ar’は、下記式(Va-I)、(Va-II)及び(Va-III):
【化8】
[式中、Rは、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基からなる群から選択される官能基を表し、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環は各々、1個以上の置換基を有していてもよく、pは0~5の整数を表す。]
からなる群から選択される官能基を表す。]
で表される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
で表される官能基が、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~14の芳香族炭化水素環基、炭素数2~12の脂肪族複素環基及び炭素数3~12の芳香族複素環基からなる群から選択され、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基が各々、1個以上の置換基を有していてもよい、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Qで表される有機基が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を、式中の硫黄原子と結合する官能基として含み、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基及び前記アリール基が各々、1個以上の置換基を有していてもよい、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
で表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方が、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケトン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、糖尿病治療薬として様々な治療薬が市販されており、スルホニル尿素薬、グリニド薬、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤、グルコース様ペプチド1(GLP-1)受動態作動薬等が知られている。また、近年では、新たな機序の糖尿病治療薬として、ナトリウム-グルコース共輸送担体-2(以下「SGLT-2」ともいう。)阻害薬も開発され、注目されている。
【0003】
SGLT-2阻害薬の例として、カナグリフロジン(1-(β-D-グラコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン)等が挙げられ、これらの化合物の製造方法として、1-(β-D-グラコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン前駆体の酸素保護基を脱保護してカナグリフロジンを合成することが提案されている(特許文献1参照)。1-(β-D-グラコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン前駆体は、C-アリールヒドロキシグリコキシド誘導体とも称され、SGLT-2阻害薬を製造するための中間体として注目されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
上述したC-アリールヒドロキシグリコキシド誘導体の製造方法として種々の提案がなされており、例えば、-78℃の超低温下において、D-グルコノラクトン誘導体にアリールリチウムを作用させてアリール基を付加反応させる方法(非特許文献1及び非特許文献3参照)、-20~-10℃の低温下において、D-グルコノラクトン誘導体にArMgBr・LiCl(Arはアリール基を表す)等のターボグリニャール試薬を作用させてアリール基を付加反応させる方法(非特許文献2参照)、更には、リチウムトリn-ブチルマグネサート(nBuMgLi)から得られたマグネシウムアート錯体を用いて、-15℃程度の温度環境下、D-グルコノラクトン誘導体にアリール基を付加反応させる方法(特許文献2参照)等が知られている。また、ニッケル触媒存在下でチオエステル誘導体に有機亜鉛試薬を反応させることによりカップリングが起こり、ケトン誘導体が得られることが報告されている(非特許文献4及び非特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2010/043682号公報
【特許文献2】WO2015/012110号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Med.Chem.2008,51,1145-1149
【非特許文献2】Org.Lett.2014,16,4090-4093
【非特許文献3】J.Org.Chem.1989,54, 610-612
【非特許文献4】Tetrahedron Letters 2002,43, 1039-1042
【非特許文献5】Chem.Eur.J.2018,24,8774-8778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
C-アリールヒドロキシグリコキシド誘導体の製造に従前使用されていた手法はいずれも、厳しい低温条件下で高価な試薬を用いて実施する必要があり、設備コスト又はランニングコストが極めて高価となり、最終原薬を安価に量産することが困難となっていた。このため、C-アリールヒドロキシグリコキシド誘導体を工業的に安価で効率的に製造することを可能とするケトン化合物の製造方法が求められている。
【0008】
本発明は、ケトン化合物の新規製造方法を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の発明を包含する。
【0010】
[1]下記式(I):
【化1】
[式中、
及びWは、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基を、式中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基を表し、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表される化合物(I)を製造する方法であって、
下記式(II):
【化2】
[式中、
は、前記と同義であり、
Qは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基を、式中の硫黄原子と結合する官能基として含む有機基を表し、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表される化合物(II)と、
下記式(III-I):
【化3】
[式中、Wは、前記と同義であり、Xは、ハロゲン原子を表す。]
で表される化合物(III-I)、及び、下記式(III-II):
【化4】
[式中、Wは、前記と同義である。]
で表される化合物(III-II)
からなる群から選択される少なくとも1種の有機亜鉛化合物とを、
銅触媒の存在下で反応させて、前記化合物(I)を得る工程
を含んでなる、方法。
[2]前記化合物(II)と前記少なくとも1種の有機亜鉛化合物との反応が、-10~80℃で行われる、[1]に記載の方法。
[3]前記銅触媒が、銅塩又はその水和物もしくは溶媒和物である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記銅触媒が、銅錯体触媒である、[1]又は[2]に記載の方法。
[5]前記銅錯体触媒が、1価又は2価の銅原子及び窒素配位子を含んでなる、[4]に記載の方法。
[6]前記少なくとも1種の有機亜鉛化合物が、前記化合物(III-I)を含み、
前記化合物(III-I)が、下記式:
【化5】
[式中、W及びXは、前記と同義である。]
で表されるシュレンク平衡状態にある、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記脂肪族炭化水素基が、炭素数1~6の脂肪族炭化水素基であり、
前記芳香族炭化水素環基が、炭素数6~18の芳香族炭化水素環基であり、
前記脂肪族複素環基が、3~8員の脂肪族複素環基であり、
前記芳香族複素環基が、6~14員の芳香族複素環基である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記脂肪族炭化水素基が有していてもよい前記1個以上の置換基が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択される、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基が有していてもよい前記1個以上の置換基が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択される、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]Wで表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方が、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を、前記式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含み、前記芳香族炭化水素環基及び前記芳香族複素環基が各々、1個以上の置換基を有していてもよい、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]Wで表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方が、下記式(V):
【化6】
[式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルケニルオキシ基及びアリールアルキニルオキシ基からなる群から選択される官能基を表し、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記アリール基、前記アリールアルキル基、前記アリールアルケニル基、前記アリールアルキニル基、前記アルキルオキシ基、前記アルケニルオキシ基、前記アルキニルオキシ基、前記アリールオキシ基、前記アリールアルキルオキシ基、前記アリールアルケニルオキシ基及び前記アリールアルキニルオキシ基は各々、1個以上の置換基を有していてもよく、
nは、0~4の整数であり、
Ar’は、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基を表し、前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。]
で表される、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]Rで表される官能基が、それぞれ独立して、アルキル基及びハロゲン原子から選択され、前記アルキル基が、1個以上の置換基を有していてもよい、[11]に記載の方法。
[13]Wで表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方が、下記式(Va):
【化7】
[式中、
は、前記と同義であり、
Ar’は、下記式(Va-I)、(Va-II)及び(Va-III):
【化8】
[式中、Rは、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基からなる群から選択される官能基を表し、前記脂肪族炭化水素基、前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環は各々、1個以上の置換基を有していてもよく、pは0~5の整数を表す。]
からなる群から選択される官能基を表す。]
で表される、[11]又は[12]に記載の方法。
[14]Rで表される官能基が、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~14の芳香族炭化水素環基、炭素数2~12の脂肪族複素環基及び炭素数3~12の芳香族複素環基からなる群から選択され、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記芳香族炭化水素環基、前記脂肪族複素環基及び前記芳香族複素環基が各々、1個以上の置換基を有していてもよい、[13]に記載の方法。
[15]Qで表される有機基が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を、式中の硫黄原子と結合する官能基として含み、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基及び前記アリール基が各々、1個以上の置換基を有していてもよい、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]Wで表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方が、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である、[1]~[15]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケトン化合物の新規製造方法が提供される。本発明の製造方法は、工業的に安価で効率的にケトン化合物を製造することを可能とし、設備コスト、ランニングコスト等を大幅に抑制し得ることから、工業生産上有利である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について説明する。なお、本明細書に記載される実施形態のうち、2以上の実施形態を組み合わせることができる場合、本発明には、当該組み合わせも包含される。
【0013】
<定義>
以下、本明細書で用いられる用語及び表現について説明する。以下の定義は、別段規定される場合を除き、本明細書を通じて適用される。例えば、「アルキル基」の定義は、「アルキル」又は「アルキル基」を含む官能基(例えば、アルキルアリール基、アリールアルキル基等)に関しても適用される。その他の官能基の定義も同様である。
【0014】
「有機基」は、1個以上の炭素原子を含む官能基を意味する。有機基は、1種又は2種以上のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロ原子」は、水素原子及び炭素原子以外の原子を意味する。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、珪素原子等が挙げられる。「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。有機基の結合手は、有機基に含まれる炭素原子の結合手で形成されていることが好ましい。
【0015】
一実施形態において、有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を含む。この実施形態において、有機基の結合手は、脂肪族炭化水素基の結合手で形成されていることが好ましい。
【0016】
別の実施形態において、有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を含む。この実施形態において、有機基の結合手は、芳香族炭化水素環基の結合手で形成されていることが好ましい。
【0017】
別の実施形態において、有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基を含む。この実施形態において、有機基の結合手は、脂肪族複素環基の結合手で形成されていることが好ましい。
【0018】
別の実施形態において、有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を含む。この実施形態において、有機基の結合手は、芳香族複素環基の結合手で形成されていることが好ましい。
【0019】
別の実施形態において、有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基及び1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される2種以上を組み合わせて形成される官能基を含む。この実施形態において、有機基の結合手は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基の結合手で形成されていることが好ましい。
【0020】
「脂肪族炭化水素基」は、脂肪族炭化水素から水素原子を除去することにより生成される官能基(芳香族性を有しない炭化水素基)を意味する。「脂肪族炭化水素基」は、文脈に応じて、1価又は2価の官能基を意味し得る。脂肪族炭化水素基は、鎖状、環状及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。鎖状は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。脂肪族炭化水素基は、好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状である。脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。不飽和結合は、炭素-炭素二重結合であってもよいし、炭素-炭素三重結合であってもよい。
【0021】
1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。1価の脂肪族炭化水素基は、好ましくは、アルキル基又はアルケニル基であり、さらに好ましくは、アルキル基である。2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基等が挙げられる。2価の脂肪族炭化水素基は、好ましくは、アルキレン基又はアルケニレン基であり、さらに好ましくはアルキレン基である。
【0022】
「アルキル基」は、アルカンから1個の水素原子を除去することにより生成される1価の官能基を意味する。アルキル基は、鎖状、環状及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。なお、環状のアルキル基は「シクロアルキル基」と同義である。鎖状は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルキル基は、好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状である。直鎖状のアルキル基の炭素数は、通常1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~8個、より一層好ましくは1~6個、より一層好ましくは1~4個、より一層好ましくは1~3個である。分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、通常3~20個、好ましくは3~10個、より好ましくは3~8個、より一層好ましくは3~6個、より一層好ましくは3~4個である。環状のアルキル基の炭素数は、通常3~20個、好ましくは3~10個、より好ましくは3~8個、より一層好ましくは3~6個である。直鎖状又は分岐鎖状部分と環状部分とを有するアルキル基の炭素数は、通常4~20個、好ましくは4~10個、より好ましくは4~8個、より一層好ましくは4~6個である。
【0023】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、4,4-ジメチルペンチル基、オクチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の環状のアルキル基;シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基等の直鎖状又は分岐鎖状部分と環状部分とを有するアルキル基等が挙げられる。
【0024】
「アルケニル基」は、アルケンから1個の水素原子を除去することにより生成される1価の官能基を意味する。アルケニル基は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する。アルケニル基は、鎖状、環状及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。なお、環状のアルケニル基は「シクロアルケニル基」と同義である。鎖状は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルケニル基は、好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状である。直鎖状のアルケニル基の炭素数は、通常2~20個、好ましくは2~10個、より好ましくは2~8個、より一層好ましくは2~6個、より一層好ましくは2~4個である。分岐鎖状のアルケニル基の炭素数は、通常3~20個、好ましくは3~10個、より好ましくは3~8個、より一層好ましくは3~6個、より一層好ましくは3~4個である。環状のアルケニル基の炭素数は、通常3~20個、好ましくは3~10個、より好ましくは3~8個、より一層好ましくは3~6個である。直鎖状又は分岐鎖状部分と環状部分とを有するアルケニル基の炭素数は、通常4~20個、好ましくは4~10個、より好ましくは4~8個、より一層好ましくは4~6個である。アルケニル基における二重結合の数は、通常1~9個、好ましくは1~7個、より好ましくは1~4個、より一層好ましくは1~3個である。
【0025】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、2-ブテニル基、4-ペンテニル基、3-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、2-ヘプテニル基、3-ヘプテニル基、4-ヘプテニル基、3-オクテニル基、3-ノネニル基、4-デセニル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等の環状のアルケニル基;シクロペンテニルメチル基、シクロペンテニルエチル基、シクロペンテニルプロピル基、シクロヘキセニルメチル基、シクロヘキセニルエチル基等の直鎖状又は分岐鎖状部分と環状部分とを有するアルケニル基等が挙げられる。
【0026】
「アルキニル基」は、アルキンから1個の水素原子を除去することにより生成される1価の官能基を意味する。アルキニル基は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する。アルキニル基は、鎖状、環状及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。なお、環状のアルキニル基は「シクロアルキニル基」と同義である。鎖状は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルキニル基は、好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状である。直鎖状のアルキニル基の炭素数は、通常2~20個、好ましくは2~10個、より好ましくは2~8個、より一層好ましくは2~6個、より一層好ましくは2~4個である。分岐鎖状のアルキニル基の炭素数は、通常4~20個、好ましくは4~10個、より好ましくは4~8個、より一層好ましくは3~6個である。環状のアルキニル基の炭素数は、通常4~20個、好ましくは4~10個、より好ましくは4~8個、より一層好ましくは4~6個である。直鎖状又は分岐鎖状部分と環状部分とを有するアルキニル基の炭素数は、通常5~20個、好ましくは5~10個、より好ましくは5~8個、より一層好ましくは5~6個である。アルキニル基における三重結合の数は、通常1~9個、好ましくは1~7個、より好ましくは1~4個、より一層好ましくは1~3個である。
【0027】
アルキニル基としては、例えば、2-プロピニル基、3-ブチニル基、2-ブチニル基、4-ペンチニル基、3-ペンチニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、2-ヘプチニル基、3-ヘプチニル基、4-ヘプチニル基、3-オクチニル基、3-ノニニル基、4-デシニル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基;シクロブチニル基、シクロペンチニル基、シクロヘプチニル基、シクロオクチニル基等の環状のアルキニル基;シクロペンチニルメチル基、シクロペンテニルエチル基、シクロペンチニルプロピル基、シクロペンチニルメチル基、シクロペンチニルエチル基等の直鎖状又は分岐鎖状部分と環状部分とを有するアルキニル基等が挙げられる。
【0028】
「アルキレン基」は、アルキル基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基を意味する。アルキル基に関する説明は、上記と同様である。
【0029】
「アルケニレン基」は、アルケニル基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基を意味する。アルケニル基に関する説明は、上記と同様である。
【0030】
「アルキニレン基」は、アルキニル基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基を意味する。アルキニル基に関する説明は、上記と同様である。
【0031】
「芳香族炭化水素環基」は、芳香族炭化水素環から水素原子を除去することにより生成される官能基を意味する。「芳香族炭化水素環基」は、文脈に応じて、1価又は2価の官能基を意味し得る。
【0032】
1価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、アリール基等が挙げられる。2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、アリーレン基等が挙げられる。
【0033】
「アリール基」は、単環式又は多環式(例えば、2環式又は3環式)の芳香族炭素水素環基を意味する。アリール基は、通常1~4環式、好ましくは1~3環式、より好ましくは1又は2環式の芳香族炭素水素環基である。アリール基における環構成炭素原子の数は、通常6~18個、好ましくは6~14個、より好ましくは6~10個である。
【0034】
単環式の芳香族炭素水素環基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0035】
アリール基には、縮合多環式の芳香族炭化水素環基及び部分的に飽和された縮合多環式の芳香族炭化水素環基も包含される。部分的に飽和された縮合多環式の芳香族炭化水素環基は、環を構成する結合の一部が水素化された縮合多環式の芳香族炭化水素環基である。縮合多環式の芳香族炭化水素環基としては、例えば、ナフチル基、アントリル基、フェナントレニル基、テトラセニル基、ピレニル基等の2~4環式の芳香族炭素水素環基に加えて、フルオレニル基、インデニル基、アセナフチレニル等が挙げられる。部分的に飽和された縮合多環式の芳香族炭化水素環基としては、例えば、ジヒドロナフチル基、インダニル基、アセナフテニル基等が挙げられる。
【0036】
「アリーレン基」は、アリール基から環構成炭素原子に結合した1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基である。アリール基に関する説明は、上記と同様である。アリーレン基としては、例えば、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基等が挙げられる。
【0037】
「脂肪族複素環基」は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式又は多環式(例えば、2環式又は3環式)の脂肪族複素環(非芳香族複素環)から水素原子を除去することにより生成される官能基を意味する。「脂肪族複素環基」は、文脈に応じて、1価又は2価の官能基を意味し得る。なお、「脂肪族複素環」を含む官能基(例えば、脂肪族複素環チオ基、脂肪族複素環オキシ基等)における「脂肪族複素環」は、脂肪族複素環基を意味する。
【0038】
脂肪族複素環基に含まれるヘテロ原子の数は、通常1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。脂肪族複素環基の員数は、通常3~16員、好ましくは4~10員、より好ましくは5~8員、より一層好ましくは5~7員、より一層好ましくは5又は6員である。脂肪族複素環基は、例えば、単環式、2環式又は3環式であり、好ましくは単環式又は2環式である。脂肪族複素環基における環構成炭素原子の数は、脂肪族複素環基のヘテロ原子数及び員数に応じて適宜選択される。脂肪族複素環基における環構成炭素原子の数は、通常2~12個、好ましくは2~8個、より好ましくは2~5個である。
【0039】
単環式の脂肪族複素環基は、例えば、単環式の飽和脂肪族複素環基である。単環式の飽和脂肪族複素環基は、飽和結合のみによって環が構成された単環式の脂肪族複素環基である。一実施形態において、単環式の飽和脂肪族複素環基は、1~2個の酸素原子を含む。別の実施形態において、単環式の飽和脂肪族複素環基は、1~2個の硫黄原子を含む。別の実施形態において、単環式の飽和脂肪族複素環基は、1~2個の酸素原子及び1~2個の硫黄原子を含む。別の実施形態において、単環式の飽和脂肪族複素環基は、1~4個の窒素原子を含む。別の実施形態において、単環式の飽和脂肪族複素環基は、1~3個の窒素原子と、1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含む。単環式の飽和脂肪族複素環基において、環を構成する2個の炭素原子がアルキレン基で架橋されていてもよい。単環式の飽和脂肪族複素環基において、環を構成する炭素原子のうち隣接する2個の炭素原子が二重結合を形成していてもよい。単環式の飽和脂肪族複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。単環式の飽和脂肪族複素環基が有し得るオキソ基の数は、好ましくは1又は2個である。単環式の飽和脂肪族複素環基に含まれるヘテロ原子が硫黄原子である場合、単環式の飽和脂肪族複素環基は、ジオキシド体であってもよい。
【0040】
単環式の脂肪族複素環基としては、例えば、アジリジニル基、オキシラニル基、チイラニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリニル基、ピロリジニル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、オキサゾリニル基、オキサゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロイソチアゾリル基、テトラヒドロオキサゾリル基、テトラヒドロイソオキサゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロピリジニル基、ジヒドロピリジニル基、ジヒドロチオピラニル基、テトラヒドロピリミジニル基、テトラヒドロピリダジニル基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基(環上の硫黄原子は酸化されてもよい)、アゼパニル基、ジアゼパニル基、アゼピニル基、オキセパニル基、アゾカニル基、ジアゾカニル基等の3~8員の単環式の脂肪族複素環基が挙げられる。
【0041】
単環式の脂肪族複素環基には、部分的に飽和された単環式の芳香族複素環基も包含される。部分的に飽和された単環式の芳香族複素環基は、環を構成する結合の一部が水素化された単環式の芳香族複素環基である。部分的に飽和された単環式の芳香族複素環基としては、例えば、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、1,2,3,6-テトラヒドロピリジル基、4H-1,3-オキサジニル基、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジニル基等が挙げられる。部分的に飽和された単環式の芳香族複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。部分的に飽和された単環式の芳香族複素環基が有し得るオキソ基の数は、好ましくは1又は2個である。
【0042】
多環式の脂肪族複素環基は、例えば、縮合多環式の脂肪族複素環基である。縮合多環式の脂肪族複素環基は、例えば、縮合多環式の飽和脂肪族複素環である。縮合多環式の飽和脂肪族複素環は、飽和結合のみによって環が構成された縮合多環式の脂肪族複素環基である。一実施形態において、縮合多環式の飽和脂肪族複素環基は、1~3個の酸素原子を含む。別の実施形態において、縮合多環式の飽和脂肪族複素環基は、1~3個の硫黄原子を含む。別の実施形態において、縮合多環式の飽和脂肪族複素環基は、1~3個の酸素原子及び1~3個の硫黄原子を含む。別の実施形態において、縮合多環式の飽和脂肪族複素環基は、1~5個の窒素原子を含む。別の実施形態において、縮合多環式の飽和脂肪族複素環基は、1~4個の窒素原子と、1~3個の硫黄原子及び/又は1~3個の酸素原子とを含む。縮合多環式の飽和脂肪族複素環基において、環を構成する2個の炭素原子がアルキレン基で架橋されていてもよい。縮合多環式の飽和脂肪族複素環基において、環を構成する炭素原子のうち隣接する2個の炭素原子が二重結合を形成していてもよい。縮合多環式の飽和脂肪族複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。縮合多環式の飽和脂肪族複素環基が有し得るオキソ基の数は、好ましくは1、2又は3個である。縮合多環式の飽和脂肪族複素環基に含まれるヘテロ原子が硫黄原子である場合、縮合多環式の飽和脂肪族複素環基は、ジオキシド体であってもよい。
【0043】
縮合多環式の脂肪族複素環基としては、例えば、オクタヒドロ-1H-イソインドリル基、デカヒドロキノリル基、デカヒドロイソキノリル基、ヘキサヒドロ-2H-[1,4]ジオキシノ[2,3-c]ピロリル基、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル基等が挙げられる。
【0044】
脂肪族複素環基には、スピロ環式複素環基も包含される。スピロ環式複素環基は、2個の環が1個のスピロ炭素原子を共有して形成された複素環基である。2個の環の組み合わせとしては、例えば、単環式の脂肪族複素環基と単環式の脂肪族炭化水素環基(例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等)との組み合わせ、単環式の脂肪族複素環基と単環式の脂肪族複素環基との組み合わせ等が挙げられる。スピロ環式複素環基において、環を構成する炭素原子のうち隣接する2個の炭素原子が二重結合を形成していてもよい。スピロ環式複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。スピロ環式複素環基が有し得るオキソ基の数は、好ましくは1、2又は3個である。スピロ環式複素環基に含まれるヘテロ原子が硫黄原子である場合、スピロ環式複素環基は、ジオキシド体であってもよい。
【0045】
スピロ環式複素環基としては、例えば、2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタニル基、1-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタニル基、6-オキサ-1-アザスピロ[3.3]ヘプタニル基、1-オキソ-2,8-ジアザスピロ[4.5]デカニル基、1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4.5]デカニル基、2-アザスピロ[3.3]ヘプチル基、7-オキサ-2-アザスピロ[3.5]ノニル基、5,8-オキサ-2-アザスピロ[3.4]オクチル基、1,4-ジオキサ-8-アザスピロ[4.5]デカニル基、1-オキサスピロ[4.5]デカニル基等が挙げられる。
【0046】
「芳香族複素環基」は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式又は多環式の芳香族複素環から水素原子を除去することにより生成される官能基を意味する。「芳香族複素環基」は、文脈に応じて、1価又は2価の官能基を意味し得る。
【0047】
1価の芳香族複素環基としては、例えば、ヘテロアリール基等が挙げられる。2価の芳香族複素環基としては、例えば、ヘテロアリーレン基等が挙げられる。
【0048】
「ヘテロアリール基」は、単環式又は多環式の芳香族複素環基を意味する。ヘテロアリール基は、通常1~4環式、好ましくは1~3環式、より好ましくは1又は2環式の芳香族複素環基である。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子の数は、通常1~4個、好ましくは1~3個、より一層好ましくは1又は2個である。ヘテロアリール基の員数は、好ましくは5~14員、より好ましくは5~10員である。ヘテロアリール基における環構成炭素原子の数は、ヘテロ原子数及び員数に応じて適宜決定される。ヘテロアリール基における環構成炭素原子の数は、通常3~12個、好ましくは3~8個、より一層好ましくは3~5個である。ヘテロアリール基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。一実施形態において、ヘテロアリール基は、5~7員の単環式の芳香族複素環基である。別の実施形態において、ヘテロアリール基は、8~14員の2環式又は3環式の芳香族複素環基である。
【0049】
ヘテロアリール基は、例えば、単環式の芳香族複素環基である。一実施形態において、単環式の芳香族複素環基は、1~2個の酸素原子を含む。別の実施形態において、単環式の芳香族複素環基は、1~2個の硫黄原子を含む。別の実施形態において、単環式の芳香族複素環基は、1~2個の酸素原子及び1~2個の硫黄原子を含む。別の実施形態において、単環式の芳香族複素環基は、1~4個の窒素原子を含む。別の実施形態において、単環式の芳香族複素環基は、1~3個の窒素原子と、1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含む。
【0050】
単環式の芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チエニル基、ピロリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基等)、チアジアゾリル基(例えば、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基等)、トリアゾリル基(例えば、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基等)、テトラゾリル基、トリアジニル基等の5~7員の単環式の芳香族複素環基が挙げられる。単環式の芳香族複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。単環式の芳香族複素環基が有し得るオキソ基の数は、好ましくは1又は2個である。
【0051】
ヘテロアリール基は、例えば、多環式の芳香族複素環基である。多環式の芳香族複素環基は、例えば、縮合多環式の芳香族複素環基である。一実施形態において、縮合多環式の芳香族複素環基は、1~3個の酸素原子を含む。別の実施形態において、縮合多環式の芳香族複素環基は、1~3個の硫黄原子を含む。別の実施形態において、縮合多環式の芳香族複素環基は、1~3個の酸素原子及び1~3個の硫黄原子を含む。別の実施形態において、縮合多環式の芳香族複素環基は、1~5個の窒素原子を含む。別の実施形態において、縮合多環式の芳香族複素環基は、1~4個の窒素原子と、1~3個の硫黄原子及び/又は1~3個の酸素原子とを含む。
【0052】
縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾピリジニル基、チエノピリジニル基、フロピリジニル基、ピロロピリジニル基、ピラゾロピリジニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピラジニル基、イミダゾピリミジニル基、チエノピリミジニル基、フロピリミジニル基、ピロロピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、オキサゾロピリミジニル基、チアゾロピリミジニル基、ピラゾロトリアジニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、フェノキサチイニル基、インドリル基、イソインドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、β-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基等の8~14員の縮合多環式(好ましくは2環式又は3環式)の芳香族複素環基等が挙げられる。多環式の芳香族複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。多環式の芳香族複素環基が有し得るオキソ基の数は、好ましくは1、2又は3個である。
【0053】
ヘテロアリール基には、部分的に飽和された単環(例えば、単環式の芳香族炭化水素環基、単環式の芳香族複素環基等)を有する縮合多環式の芳香族複素環基(例えば、芳香族環に脂肪族複素環が縮合した環式基等)も包含される。部分的に飽和された単環を有する縮合多環式の芳香族複素環基は、環を構成する結合の一部が水素化された単環を有する縮合多環式の芳香族複素環基である。部分的に飽和された単環を有する縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、ジヒドロベンゾフラニル基、ジヒドロベンゾイミダゾリル基、ジヒドロベンゾオキサゾリル基、ジヒドロベンゾチアゾリル基、ジヒドロベンゾイソチアゾリル基、ジヒドロナフト[2,3-b]チエニル基、テトラヒドロイソキノリル基、テトラヒドロキノリル基、4H-キノリジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジニル基、テトラヒドロベンゾアゼピニル基、テトラヒドロキノキサリニル基、テトラヒドロフェナントリジニル基、ヘキサヒドロフェノチアジニル基、ヘキサヒドロフェノキサジニル基、テトラヒドロフタラジニル基、テトラヒドロナフチリジニル基、テトラヒドロキナゾリニル基、テトラヒドロシンノリニル基、テトラヒドロカルバゾリル基、テトラヒドロ-β-カルボリニル基、テトラヒドロアクリジニル基、テトラヒドロフェナジニル基、テトラヒドロチオキサンテニル基、オクタヒドロイソキノリル基等の9~14員の縮合多環式(好ましくは2環式又は3環式)の芳香族複素環基等が挙げられる。部分的に飽和された単環を有する縮合多環式の芳香族複素環基において、同一炭素原子に結合する2個の水素原子が、オキソ基で置換されていてもよい。部分的に飽和された単環を有する縮合多環式の芳香族複素環基が有し得るオキソ基の数は、好ましくは1、2又は3個である。
【0054】
ヘテロアリール基には、部分的に飽和された縮合多環式の芳香族複素環基も包含される。部分的に飽和された縮合多環式の芳香族複素環基は、環を構成する結合の一部が水素化された単環を有する縮合多環式の芳香族複素環基である。部分的に飽和された縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、1,3-ジヒドロベンゾイミダゾール-2-オニル基、2-ベンゾオキサゾリノニル基、オクタヒドロイソインドリル基、2H-ピリド[3,2-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オン-イル基、3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-6-イル基、[1,3]ジオキソロ[4,5-b]ピリジル基、2,3-ジヒドロベンゾ[b]チエニル基、2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-5-イル基、2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-6-イル基、1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-イル基、2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-イル基、1,3-ベンゾジオキソール-5-イル基、2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-2-イル基、2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-6-イル基、3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾオキサジン-6-イル基、1,4-ベンゾジオキサニル基、2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン-イル基、3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル基、インドリニル基、2H-イソインドリニル基、クロマニル基、クロモニル基、イソクロマニル基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリル基等が挙げられる。
【0055】
「ヘテロアリーレン基」は、ヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基を意味する。ヘテロアリール基に関する説明は、上記と同様である。
【0056】
脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される2種以上を組み合わせて形成される官能基としては、例えば、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素環基を組み合わせて形成される官能基、脂肪族炭化水素基及び脂肪族複素環基を組み合わせて形成される官能基、脂肪族炭化水素基及び芳香族複素環基を組み合わせて形成される官能基等が挙げられる。
【0057】
脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素環基を組み合わせて形成される官能基は、式:(*)-脂肪族炭化水素基-芳香族炭化水素環基、又は、式:(*)-芳香族炭化水素環基-脂肪族炭化水素基で表される。(*)は、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素環基を組み合わせて形成される官能基を含む有機基の結合手を表す。式中の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素環基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。式中の脂肪族炭化水素基は、例えば、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。式中の芳香族炭化水素環基は、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。置換基として選択される脂肪族炭化水素基は、例えば、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。置換基として選択される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基は各々、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。
【0058】
式:(*)-脂肪族炭化水素基-芳香族炭化水素環基で表される官能基としては、例えば、アルキルアリール基、アルケニルアリール基、アルキニルアリール基等が挙げられる。「アルキルアリール基」、「アルケニルアリール基」及び「アルキニルアリール基」におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基に関する説明は、上記と同様である。
【0059】
アルキルアリール基におけるアルキル基の数、アルケニルアリール基におけるアルケニル基の数及びアルキニルアリール基におけるアルキニル基の数は、通常1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個である。アルキルアリール基としては、例えば、o-トルイル、m-トルイル、p-トルイル、2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、3,4-ジメチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、o-エチルフェニル、m-エチルフェニル、p-エチルフェニル等が挙げられる。アルケニルアリール基としては、例えば、o-スチリル,m-スチリル,p-スチリル等のアルケニルアリール基が挙げられる。アルキニルアリール基としては、例えば、2-エチニル-2-フェニル等のアルキニルアリール基等が挙げられる。
【0060】
式:(*)-芳香族炭化水素環基-脂肪族炭化水素基で表される官能基としては、例えば、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基等が挙げられる。「アリールアルキル基」、「アリールアルケニル基」及び「アリールアルキニル基」におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基に関する説明は、上記と同様である。
【0061】
アリールアルキル基の炭素数は、通常7~15個、好ましくは7~11個である。アリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、2-フェネチル基等が挙げられる。アリールアルケニル基の炭素数は、通常8~16個、好ましくは8~12個である。アラルケニル基としては、例えば、2-フェネテニル基、2-ネフチルエテニル基等が挙げられる。アリールアルキニル基の炭素数は、通常8~16個、好ましくは8~12個である。アラルキニル基としては、例えば、フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0062】
脂肪族炭化水素基及び脂肪族複素環基を組み合わせて形成される官能基は、式:(*)-脂肪族炭化水素基-脂肪族複素環基、又は、式:(*)-脂肪族複素環基-脂肪族炭化水素基で表される。(*)は、脂肪族炭化水素基及び脂肪族複素環基を組み合わせて形成される官能基を含む有機基の結合手を表す。式中の脂肪族炭化水素基及び脂肪族複素環基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。式中の脂肪族炭化水素基は、例えば、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。式中の脂肪族複素環基は、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。置換基として選択される脂肪族炭化水素基は、例えば、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。置換基として選択される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基は各々、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。
【0063】
式:(*)-脂肪族炭化水素基-脂肪族複素環基で表される官能基としては、例えば、アルキル脂肪族複素環基、アルケニル脂肪族複素環基、アルキニル脂肪族複素環基等が挙げられる。「アルキル脂肪族複素環基」、「アルケニル脂肪族複素環基」及び「アルキニル脂肪族複素環基」におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及び脂肪族複素環基に関する説明は、上記と同様である。
【0064】
式:(*)-脂肪族複素環基-脂肪族炭化水素基で表される官能基としては、例えば、脂肪族複素環アルキル基、脂肪族複素環アルケニル基、脂肪族複素環アルキニル基等が挙げられる。「脂肪族複素環アルキル基」、「脂肪族複素環アルケニル基」及び「脂肪族複素環アルキニル基」におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及び脂肪族複素環基に関する説明は、上記と同様である。
【0065】
脂肪族炭化水素基及び芳香族複素環基を組み合わせて形成される官能基は、式:(*)-脂肪族炭化水素基-芳香族複素環基、又は、式:(*)-芳香族複素環基-脂肪族炭化水素基で表される。(*)は、脂肪族炭化水素基及び芳香族複素環基を組み合わせて形成される官能基を含む有機基の結合手を表す。式中の脂肪族炭化水素基及び芳香族複素環基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。式中の脂肪族炭化水素基は、例えば、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。式中の芳香族複素環基は、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。置換基として選択される脂肪族炭化水素基は、例えば、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。置換基として選択される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基は各々、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基から選択される1個以上の置換基を有していてもよい。
【0066】
式:(*)-脂肪族炭化水素基-芳香族複素環基で表される官能基としては、例えば、アルキルヘテロアリール基、アルケニルヘテロアリール基、アルキニルヘテロアリール基等が挙げられる。「アルキルヘテロアリール基」、「アルケニルヘテロアリール基」及び「アルキニルヘテロアリール基」におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記と同様である。
【0067】
アルキルヘテロアリール基におけるアルキル基の数、アルケニルヘテロアリール基におけるアルケニル基の数及びアルキニルヘテロアリール基におけるアルキニル基の数は、通常1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個である。
【0068】
式:(*)-芳香族複素環基-脂肪族炭化水素基で表される官能基としては、例えば、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基、ヘテロアリールアルキニル基等が挙げられる。「ヘテロアリールアルキル基」、「ヘテロアリールアルケニル基」及び「ヘテロアリールアルキニル基」におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記と同様である。
【0069】
ヘテロアリールアルキル基の炭素数は、通常8~14個、好ましくは8~10個である。ヘテロアリールアルキル基としては、例えば、フリルエチル基、チエニルメチル基、ベンソチオフェニルメチル基等が挙げられる。ヘテロアリールアルケニル基の炭素数は、通常7~15個、好ましくは7~11個である。ヘテロアラルケニル基としては、例えば、ピリジルエテニル基、チエニルエテニル基、ベンソチオフェニルエテニル基等が挙げられる。ヘテロアリールアルキニル基の炭素数は、通常7~15個、好ましくは7~11個である。ヘテロアラルキニル基としては、例えば、イミダゾイルエチニル基、チエニルエチニル基、ベンソチオフェニルエチニル基等が挙げられる。
【0070】
ある官能基に関して「1個以上の置換基を有していてもよい」という表現は、当該官能基の1個以上の水素原子が、それぞれ独立して、他の原子又は原子団で置き換えられていてもよいことを意味する。「置換されていてもよい」という表現は、「1個以上の置換基を有していてもよい」という表現と同義である。
【0071】
脂肪族炭化水素基が有し得る置換基の数は、脂肪族炭化水素基の炭素数等に応じて適宜決定することができる。脂肪族炭化水素基は、置換可能位置に、例えば1~6個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個の置換基を有することができる。炭化水素基が2個以上の置換基を有する場合、2個以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
アルキル基の炭素数が1~4個である場合、アルキル基が有し得る置換基の数は、通常1~3個、好ましくは1又は2個、より好ましくは1個である。アルキル基の炭素数が5~9個である場合、アルキル基が有し得る置換基の数は、通常1~6個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~4個、より一層好ましくは1又は2個である。アルキル基の炭素数が10個以上である場合、アルキル基が有し得る置換基の数は、通常1~9個、好ましくは1~5個、より一層好ましくは1~4個、より一層好ましくは1又は2個である。
【0073】
アルケニル基の炭素数が2~4個である場合、アルケニル基が有し得る置換基の数は、通常1~3個、好ましくは1又は2個、より好ましくは1個である。また、アルケニル基の炭素数が5~9個である場合、アルケニル基が有し得る置換基の数は、通常1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、より一層好ましくは1又は2個である。また、アルケニル基の炭素数が10個以上である場合、アルケニル基が有し得る置換基の数は、通常1~8個、好ましくは1~4個、より一層好ましくは1~3個、より一層好ましくは1又は2個である。
【0074】
アルキニル基の炭素数が2~4個である場合、アルキニル基が有し得る置換基の数は、通常1~3個、好ましくは1又は2個、より好ましくは1個である。アルキニル基の炭素数が5~9個である場合は、アルキニル基が有し得る置換基の数は、通常1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、より一層好ましくは1又は2個である。アルキニル基の炭素数が10個以上である場合、アルキニル基が有し得る置換基の数は、通常1~8個、好ましくは1~4個、より一層好ましくは1~3個、より一層好ましくは1又は2個である。
【0075】
芳香族炭化水素環基が有し得る置換基の数は、芳香族炭化水素環基の炭素数、員数等に応じて適宜決定することができる。芳香族炭化水素環基は、置換可能位置に、例えば1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、より一層好ましくは1又は2個の置換基を有することができる。芳香族炭化水素環基が2個以上の置換基を有する場合、2個以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
脂肪族複素環基が有し得る置換基の数は、脂肪族複素環基の炭素数、員数等に応じて適宜決定することができる。脂肪族複素環基は、置換可能位置に、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個の置換基を有することができる。脂肪族複素環基が2個以上の置換基を有する場合、2個以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
芳香族複素環基が有し得る置換基の数は、芳香族複素環基の炭素数、員数等に応じて適宜決定することができる。芳香族複素環基は、置換可能位置に、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個の置換基を有することができる。芳香族複素環基が2個以上の置換基を有する場合、2個以上の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
アリールアルキル基又はアルキルアリール基の炭素数が7~11個である場合、アリールアルキル基又はアルキルアリール基が有し得る置換基の数は、通常1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~2個である。アリールアルキル基又はアルキルアリール基の炭素数が12~15個である場合、アリールアルキル基又はアルキルアリール基が有し得る置換基の数は、通常1~6個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~2個である。アリールアルキル基又はアルキルアリール基の炭素数が16個以上である場合、アリールアルキル基又はアルキルアリール基が有し得る置換基の数は、通常1~8個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個であり、より一層好ましくは1~2個である。
【0079】
アリールアルケニル基又はアルケニルアリール基の炭素数が8~11個である場合、アリールアルケニル基又はアルケニルアリール基が有し得る置換基の数は、通常1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~2個である。アリールアルケニル基又はアルケニルアリール基の炭素数が12~15個である場合、アリールアルケニル基又はアルケニルアリール基が有し得る置換基の数は、通常1~6個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~2個である。アリールアルケニル基又はアルケニルアリール基の炭素数が16個以上である場合、アリールアルケニル基又はアルケニルアリール基が有し得る置換基の数は、通常1~8個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個であり、より一層好ましくは1~2個である。
【0080】
アリールアルキニル基又はアルキニルアリール基の炭素数が8~11個である場合、アリールアルキニル基又はアルキニルアリール基が有し得る置換基の数は、通常1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~2個である。アリールアルキニル基又はアルキニルアリール基の炭素数が12~15個である場合、アリールアルキニル基又はアルキニルアリール基が有し得る置換基の数は、通常1~6個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~2個である。アリールアルキニル基又はアルキニルアリール基の炭素数が16個以上である場合、アリールアルキニル基又はアルキニルアリール基が有し得る置換基の数は、通常1~8個、好ましくは1~6個、より好ましくは1~4個であり、より一層好ましくは1~2個である。
【0081】
有機基に含まれる脂肪族炭化水素基(1価及び2価を含む)が有し得る1個以上の置換基、有機基に含まれる芳香族炭化水素環基(1価及び2価を含む)が有し得る1個以上の置換基、有機基に含まれる脂肪族複素環基(1価及び2価を含む)が有し得る1個以上の置換基、及び、有機基に含まれる芳香族複素環基(1価及び2価を含む)が有し得る1個以上の置換基は、それぞれ独立して、以下の置換基群A~Mから選択することができる。
【0082】
[置換基群A]
(A-1)ハロゲン原子
(A-2)ニトロ基
(A-3)シアノ基
(A-4)オキソ基
(A-5)保護されていてもよい水酸基
(A-6)保護されていてもよいチオール基
(A-7)保護されていてもよいアミノ基
(A-8)保護されていてもよいホルミル基
(A-9)保護されていてもよいカルボキシル基
(A-10)保護されていてもよいカルバモイル基
(A-11)保護されていてもよいスルホニル基
【0083】
[置換基群B]
(B-1)アルキル基
(B-2)アルキルチオ基
(B-3)アルキルオキシ基
(B-4)アルキルカルボニルオキシ基
(B-5)アルキルカルバモイルオキシ基
(B-6)アルキルスルホニルオキシ基
(B-7)アルキルオキシカルボニルオキシ基
(B-8)アルキルカルボニル基
(B-9)アルキルオキシカルボニル基
(B-10)アルキルアミノカルボニル基
(B-11)アルキルカルバモイル基
(B-12)アルキルスルホニル基
(B-13)アルキルスルフィニル基
(B-14)モノ-又はジ-アルキルアミノ基
(B-15)アルキルカルボニルアミノ基
(B-16)アルキルスルホニルアミノ基
(B-17)アルキルオキシカルボニルアミノ基
(B-18)アルキルオキシアルキルオキシ基
【0084】
[置換基群C]
(C-1)アルケニル基
(C-2)アルケニルチオ基
(C-3)アルケニルオキシ基
(C-4)アルケニルカルボニルオキシ基
(C-5)アルケニルカルバモイルオキシ基
(C-6)アルケニルスルホニルオキシ基
(C-7)アルケニルオキシカルボニルオキシ基
(C-8)アルケニルカルボニル基
(C-9)アルケニルオキシカルボニル基
(C-10)アルケニルアミノカルボニル基
(C-11)アルケニルカルバモイル基
(C-12)アルケニルスルホニル基
(C-13)アルケニルスルフィニル基
(C-14)モノ-又はジ-アルケニルアミノ基
(C-15)アルケニルカルボニルアミノ基
(C-16)アルケニルスルホニルアミノ基
(C-17)アルケニルオキシカルボニルアミノ基
(C-18)アルケニルオキシアルキルオキシ基
【0085】
[置換基群D]
(D-1)アルキニル基
(D-2)アルキニルチオ基
(D-3)アルキニルオキシ基
(D-4)アルキニルカルボニルオキシ基
(D-5)アルキニルカルバモイルオキシ基
(D-6)アルキニルスルホニルオキシ基
(D-7)アルキニルオキシカルボニルオキシ基
(D-8)アルキニルカルボニル基
(D-9)アルキニルオキシカルボニル基
(D-10)アルキニルアミノカルボニル基
(D-11)アルキニルカルバモイル基
(D-12)アルキニルスルホニル基
(D-13)アルキニルスルフィニル基
(D-14)モノ-又はジ-アルキニルアミノ基
(D-15)アルキニルカルボニルアミノ基
(D-16)アルキニルスルホニルアミノ基
(D-17)アルキニルオキシカルボニルアミノ基
(D-18)アルキニルオキシアルキルオキシ基
【0086】
[置換基群E]
(E-1)アリール基
(E-2)アリールチオ基
(E-3)アリールオキシ基
(E-4)アリールカルボニルオキシ基
(E-5)アリールカルバモイルオキシ基
(E-6)アリールスルホニルオキシ基
(E-7)アリールオキシカルボニルオキシ基
(E-8)アリールカルボニル基
(E-9)アリールオキシカルボニル基
(E-10)アリールアミノカルボニル基
(E-11)アリールカルバモイル基
(E-12)アリールスルホニル基
(E-13)アリールスルフィニル基
(E-14)モノ-又はジ-アリールアミノ基
(E-15)アリールカルボニルアミノ基
(E-16)アリールスルホニルアミノ基
(E-17)アリールオキシカルボニルアミノ基
(E-18)アリールオキシアルキルオキシ基
【0087】
[置換基群F]
(F-1)ヘテロアリール基
(F-2)ヘテロアリールチオ基
(F-3)ヘテロアリールオキシ基
(F-4)ヘテロアリールカルボニルオキシ基
(F-5)ヘテロアリールカルバモイルオキシ基
(F-6)ヘテロアリールスルホニルオキシ基
(F-7)ヘテロアリールオキシカルボニルオキシ基
(F-8)ヘテロアリールカルボニル基
(F-9)ヘテロアリールオキシカルボニル基
(F-10)ヘテロアリールアミノカルボニル基
(F-11)ヘテロアリールカルバモイル基
(F-12)ヘテロアリールスルホニル基
(F-13)ヘテロアリールスルフィニル基
(F-14)モノ-又はジ-ヘテロアリールアミノ基
(F-15)ヘテロアリールカルボニルアミノ基
(F-16)ヘテロアリールスルホニルアミノ基
(F-17)ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ基
(F-18)ヘテロアリールオキシアルキルオキシ基
【0088】
[置換基群G]
(G-1)脂肪族複素環基
(G-2)脂肪族複素環チオ基
(G-3)脂肪族複素環オキシ基
(G-4)脂肪族複素環カルボニルオキシ基
(G-5)脂肪族複素環カルバモイルオキシ基
(G-6)脂肪族複素環スルホニルオキシ基
(G-7)脂肪族複素環オキシカルボニルオキシ基
(G-8)脂肪族複素環カルボニル基
(G-9)脂肪族複素環オキシカルボニル基
(G-10)脂肪族複素環アミノカルボニル基
(G-11)脂肪族複素環カルバモイル基
(G-12)脂肪族複素環スルホニル基
(G-13)脂肪族複素環スルフィニル基
(G-14)モノ-又はジ-脂肪族複素環アミノ基
(G-15)脂肪族複素環カルボニルアミノ基
(G-16)脂肪族複素環スルホニルアミノ基
(G-17)脂肪族複素環オキシカルボニルアミノ基
(G-18)脂肪族複素環アルキルオキシアルキルオキシ基
【0089】
[置換基群H]
(H-1)アリールアルキル基
(H-2)アリールアルキルチオ基
(H-3)アリールアルキルオキシ基
(H-4)アリールアルキルカルボニルオキシ基
(H-5)アリールアルキルカルバモイルオキシ基
(H-6)アリールアルキルスルホニルオキシ基
(H-7)アリールアルキルオキシカルボニルオキシ基
(H-8)アリールアルキルカルボニル基
(H-9)アリールアルキルオキシカルボニル基
(H-10)アリールアルキルアミノカルボニル基
(H-11)アリールアルキルカルバモイル基
(H-12)アリールアルキルスルホニル基
(H-13)アリールアルキルスルフィニル基
(H-14)モノ-又はジ-アリールアルキルアミノ基
(H-15)アリールアルキルカルボニルアミノ基
(H-16)アリールアルキルスルホニルアミノ基
(H-17)アリールアルキルオキシカルボニルアミノ基
(H-18)アリールアルキルオキシアルキルオキシ基
【0090】
[置換基群I]
(I-1)アリールアルケニル基
(I-2)アリールアルケニルチオ基
(I-3)アリールアルケニルオキシ基
(I-4)アリールアルケニルカルボニルオキシ基
(I-5)アリールアルケニルカルバモイルオキシ基
(I-6)アリールアルケニルスルホニルオキシ基
(I-7)アリールアルケニルオキシカルボニルオキシ基
(I-8)アリールアルケニルカルボニル基
(I-9)アリールアルケニルオキシカルボニル基
(I-10)アリールアルケニルアミノカルボニル基
(I-11)アリールアルケニルカルバモイル基
(I-12)アリールアルケニルスルホニル基
(I-13)アリールアルケニルスルフィニル基
(I-14)モノ-又はジ-アリールアルケニルアミノ基
(I-15)アリールアルケニルカルボニルアミノ基
(I-16)アリールアルケニルスルホニルアミノ基
(I-17)アリールアルケニルオキシカルボニルアミノ基
(I-18)アリールアルケニルオキシアルキルオキシ基
【0091】
[置換基群J]
(J-1)アリールアルキニル基
(J-2)アリールアルキニルチオ基
(J-3)アリールアルキニルオキシ基
(J-4)アリールアルキニルカルボニルオキシ基
(J-5)アリールアルキニルカルバモイルオキシ基
(J-6)アリールアルキニルスルホニルオキシ基
(J-7)アリールアルキニルオキシカルボニルオキシ基
(J-8)アリールアルキニルカルボニル基
(J-9)アリールアルキニルオキシカルボニル基
(J-10)アリールアルキニルアミノカルボニル基
(J-11)アリールアルキニルカルバモイル基
(J-12)アリールアルキニルスルホニル基
(J-13)アリールアルキニルスルフィニル基
(J-14)モノ-又はジ-アリールアルキニルアミノ基
(J-15)アリールアルキニルカルボニルアミノ基
(J-16)アリールアルキニルスルホニルアミノ基
(J-17)アリールアルキニルオキシカルボニルアミノ基
(J-18)アリールアルキニルオキシアルキルオキシ基
【0092】
[置換基群K]
(K-1)ヘテロアリールアルキル基
(K-2)ヘテロアリールアルキルチオ基
(K-3)ヘテロアリールアルキルオキシ基
(K-4)ヘテロアリールアルキルカルボニルオキシ基
(K-5)ヘテロアリールアルキルカルバモイルオキシ基
(K-6)ヘテロアリールアルキルスルホニルオキシ基
(K-7)ヘテロアリールアルキルオキシカルボニルオキシ基
(K-8)ヘテロアリールアルキルカルボニル基
(K-9)ヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基
(K-10)ヘテロアリールアルキルアミノカルボニル基
(K-11)ヘテロアリールアルキルカルバモイル基
(K-12)ヘテロアリールアルキルスルホニル基
(K-13)ヘテロアリールアルキルスルフィニル基
(K-14)モノ-又はジ-ヘテロアリールアルキルアミノ基
(K-15)ヘテロアリールアルキルカルボニルアミノ基
(K-16)ヘテロアリールアルキルスルホニルアミノ基
(K-17)ヘテロアリールアルキルオキシカルボニルアミノ基
(K-18)ヘテロアリールアルキニルオキシアルキルオキシ基
【0093】
[置換基群L]
(L-1)ヘテロアリールアルケニル基
(L-2)ヘテロアリールアルケニルチオ基
(L-3)ヘテロアリールアルケニルオキシ基
(L-4)ヘテロアリールアルケニルカルボニルオキシ基
(L-5)ヘテロアリールアルケニルカルバモイルオキシ基
(L-6)ヘテロアリールアルケニルスルホニルオキシ基
(L-7)ヘテロアリールアルケニルオキシカルボニルオキシ基
(L-8)ヘテロアリールアルケニルカルボニル基
(L-9)ヘテロアリールアルケニルオキシカルボニル基
(L-10)ヘテロアリールアルケニルアミノカルボニル基
(L-11)ヘテロアリールアルケニルカルバモイル基
(L-12)ヘテロアリールアルケニルスルホニル基
(L-13)ヘテロアリールアルケニルスルフィニル基
(L-14)モノ-又はジ-ヘテロアリールアルケニルアミノ基
(L-15)ヘテロアリールアルケニルカルボニルアミノ基
(L-16)ヘテロアリールアルケニルスルホニルアミノ基
(L-17)ヘテロアリールアルケニルオキシカルボニルアミノ基
(L-18)ヘテロアリールアルケニルオキシアルキルオキシ基
【0094】
[置換基群M]
(M-1)ヘテロアリールアルキニル基
(M-2)ヘテロアリールアルキニルチオ基
(M-3)ヘテロアリールアルキニルオキシ基
(M-4)ヘテロアリールアルキニルカルボニルオキシ基
(M-5)ヘテロアリールアルキニルカルバモイルオキシ基
(M-6)ヘテロアリールアルキニルスルホニルオキシ基
(M-7)ヘテロアリールアルキニルオキシカルボニルオキシ基
(M-8)ヘテロアリールアルキニルカルボニル基
(M-9)ヘテロアリールアルキニルオキシカルボニル基
(M-10)ヘテロアリールアルキニルアミノカルボニル基
(M-11)ヘテロアリールアルキニルカルバモイル基
(M-12)ヘテロアリールアルキニルスルホニル基
(M-13)ヘテロアリールアルキニルスルフィニル基
(M-14)モノ-又はジ-ヘテロアリールアルキニルアミノ基
(M-15)ヘテロアリールアルキニルカルボニルアミノ基
(M-16)ヘテロアリールアルキニルスルホニルアミノ基
(M-17)ヘテロアリールアルキニルオキシカルボニルアミノ基
(M-18)ヘテロアリールアルキニルオキシアルキルオキシ基
【0095】
有機基に含まれる脂肪族炭化水素基(1価及び2価を含む)が有し得る1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。なお、脂肪族炭化水素基(1価及び2価を含む)が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である場合、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、環状の脂肪族炭化水素基(例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等)を置換基として有し得る。
【0096】
有機基に含まれる芳香族炭化水素環基(1価及び2価を含む)が有し得る1個以上の置換基、有機基に含まれる脂肪族複素環基(1価及び2価を含む)が有し得る1個以上の置換基、及び、有機基に含まれる芳香族複素環基(1価及び2価を含む)が有し得る1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。
【0097】
ある官能基に関して「保護されていてもよい」とは、当該官能基が無置換であること、又は、当該官能基が、一般的に用いられる保護基で保護されていることを意味する。
【0098】
「保護基」とは、目的の官能基を目的の反応において不活性である官能基に変換することができ、目的の反応後が終了した後、目的の官能基から脱離することができる限り特に限定されず、目的の官能基、目的の反応等に応じて適宜選択することができる。
【0099】
「保護されていてもよい水酸基」は、水酸基又は水酸基保護基で保護された水酸基であり、例えば、式:-OP(式中、Pは、水素原子又は水酸基保護基を表す。)で表すことができる。水酸基保護基としては、例えば、エステル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基等が挙げられる。
【0100】
エステル型保護基としては、例えば、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10個のアルキルカルボニル基、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数6~10個のアリールカルボニル基等が挙げられる。1個以上の置換基は、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。アルキルカルボニル基が有し得る置換基は、脂肪族炭化水素基に関する置換基と同様である。アリールカルボニル基が有し得る置換基は、芳香族炭化水素環基に関する置換基と同様である。1個以上の置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基としては、例えば、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、イソプロパノイル基、ピバロイル基等が挙げられる。1個以上の置換基を有していてもよいアリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基、4-メチルオキシベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-tert-ブチルベンゾイル基、4-フルオロベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基、4-ブロモベンゾイル基、4-フェニルベンゾイル基、4-メチルオキシカルボニルベンゾイル基等が挙げられる。エステル型保護基は、好ましくは、炭素数1~10個のアルキルカルボニル基、より好ましくは、炭素数1~5個のアルキルカルボニル基、より一層好ましくは、アセチル基又はピバロイル基である。
【0101】
アリールアルキル型保護基としては、例えば、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11個のアリールアルキル基等が挙げられる。1個以上の置換基は、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。アリールアルキル基における「アルキル」が有し得る置換基は、脂肪族炭化水素基に関する置換基と同様である。アリールアルキル基における「アリール」が有し得る置換基は、芳香族炭化水素環基に関する置換基と同様である。1個以上の置換基は、好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、メチルオキシ基、フェニル基及びナフチル基から選択される。1個以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11個のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、1,1-ジフェニルエチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0102】
アルキル型保護基としては、例えば、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10個のアルキル基等が挙げられる。1個以上の置換基は、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。アルキル基が有し得る置換基は、脂肪族炭化水素基に関する置換基と同様である。1個以上の置換基は、好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基から選択される。アルキル型保護基は、好ましくは、1個以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~5個のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、tert-ブチル基等である。
【0103】
アリールアルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11個のアリールアルキルオキシメチル基、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11個のアリールアルキルオキシエチル基、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11個のアリールアルキルオキシプロピル基等のアリールアルキルオキシアルキル基が挙げられる。1個以上の置換基は、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。アリールアルキルオキシアルキル基における「アルキル」が有し得る置換基は、脂肪族炭化水素基に関する置換基と同様である。アリールアルキルオキシアルキル基における「アリール」が有し得る置換基は、芳香族炭化水素環基に関する置換基と同様である。1個以上の置換基は、好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基及びメチルオキシ基から選択される。アリールアルキルオキシアルキル型保護基は、例えば、1個以上の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基、好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基又はメチルオキシ基で置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、より好ましくはベンジルオキシメチル基である。
【0104】
アルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10個のアルキルオキシメチル基、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10個のアルキルオキシエチル基、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10個のアルキルオキシプロピル基等のアルキルオキシアルキル基が挙げられる。1個以上の置換基は、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。アルキルオキシアルキル基における「アルキル」が有し得る置換基は、脂肪族炭化水素基に関する置換基と同様である。1個以上の置換基は、好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基及びメチルオキシ基から選択される。アルキルオキシアルキル型保護基は、好ましくは、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10個のアルキルオキシメチル基、より好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチルオキシ基又はエチルオキシ基を有していてもよい炭素数1~5個のアルキルオキシメチル基、より一層好ましくは、メチルオキシメチル基である。
【0105】
シリル型保護基としては、例えば、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10個のアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数7~10個のアリールアルキル基及び1個以上の置換基を有していてもよい炭素数6~10個のアリール基から選択される官能基を有するシリル基が挙げられる。1個以上の置換基は、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。アルキル基及びアリールアルキル基における「アルキル」が有し得る置換基は、脂肪族炭化水素基に関する置換基と同様である。アリール基及びアリールアルキル基における「アリール」が有し得る置換基は、芳香族炭化水素環基に関する置換基と同様である。シリル型保護基は、好ましくは、炭素数1~10個のアルキル基及び炭素数6~10個のアリール基から選択される官能基を有するシリル基、より好ましくは、炭素数1~5個のアルキル基及びフェニル基から選択される官能基を有するシリル基、より一層好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はtert-ブチルジフェニルシリル基である。
【0106】
オキシカルボニル型保護基としては、例えば、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10個のアルキルオキシカルボニル基、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10個のアルケニルオキシカルボニル基、1個以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11個アリールアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。1個以上の置換基は、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。アルキルオキシカルボニル基における「アルキル」、アルケニルオキシカルボニル基における「アルケニル」及びアリールアルキルオキシカルボニル基における「アルキル」が有し得る置換基は、脂肪族炭化水素基に関する置換基と同様である。アリールアルキルオキシカルボニル基における「アリール」が有し得る置換基は、芳香族炭化水素環基に関する置換基と同様である。オキシカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数1~5個のアルキルオキシカルボニル基、炭素数2~5個のアルケニルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基、より好ましくは、メチルオキシメチル基、アリルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基である。
【0107】
「保護されていてもよいチオール基」は、チオール基又はチオール基保護基で保護されたチオール基であり、例えば、式:-SP(式中、Pは、水素原子又はチオール基保護基を表す。)で表すことができる。チオール基保護基としては、例えば、エステル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基等が挙げられる。これらの保護基に関する説明は、上記と同様である。
【0108】
「保護されていてもよいアミノ基」は、アミノ基又はアミノ基保護基で保護されたアミノ基であり、例えば、式-NH-P、式-N(-P)(-P)、又は式=N(-P)(式中、P及びPは、それぞれ独立して、アミノ基保護基を表す。)で表すことができる。アミノ基保護基としては、例えば、炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基等)、炭素数7~11のアリールアルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基等)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられる。なお、アミノ基には、脂環式アミノ基及び複素環式アミノ基も包含される。
【0109】
「保護されていてもよいカルボキシル基」は、カルボキシル基又はカルボキシル基保護基で保護されたカルボキシル基であり、例えば、式-C(=O)(-OP)(式中、Pは、水素原子又はカルボキシル基保護基を表す。)で表すことができる。カルボキシル基保護基としては、例えば、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、炭素数7~11のアリールアルキル基(例えば、ベンジル基等)等が挙げられる。
【0110】
「保護されていてもよいホルミル基」は、ホルミル基又はホルミル基保護基で保護されたホルミル基であり、例えば、式-C(Y)(Y)(式中、Yはヘテロ原子を表し、P及びPは、それぞれ独立して水酸基保護基を表すか、又は、P及びPは一緒になってアルキレンを形成してもよい。)で表すことができる。ヘテロ原子は、好ましくは酸素原子又は硫黄原子である。水酸基保護基は、例えば、炭素数1~5のアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、P及びPは一緒になって形成するアルキレンの炭素数は、好ましくは2~10であり、好ましくは2~5であり、より好ましくは2又は3個である。
【0111】
「保護されていてもよいカルバモイル基」は、好ましくは式-O-C(=O)-NH(-P)(式中、Pは、アミノ基保護基を表す。)で表される。アミノ基保護基としては、例えば、炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基等)、炭素数7~11のアリールアルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基等)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0112】
「保護されていてもよいスルホニル基」は、スルホニル基又はスルホニル基保護基で保護されたスルホニル基であり、例えば、1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキルスルホニル基、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリールスルホニル基等である。1個以上の置換基は、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。アルキルスルホニル基における「アルキル」が有し得る置換基は、脂肪族炭化水素基に関する置換基と同様である。アリールスルホニル基における「アリール」が有し得る置換基は、芳香族炭化水素環基に関する置換基と同様である。アルキルスルホニル基におけるアルキル基の炭素数は、通常1~10、好ましくは1~5、より好ましくは1~3である。1個以上の置換基で置換されていてもよいアルキルスルホニル基は、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基等)である。アリールスルホニル基におけるアリ-ル基の炭素数は、通常6~14、好ましくは6~10である。1個以上の置換基で置換されていてもよいアリールスルホニル基は、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、p-トルエンスルホニル基等)である。
【0113】
置換基群A~Mにおける置換基に含まれる「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アリール」、「ヘテロアリール」及び「脂肪族複素環」は、それぞれ、置換基群Aから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。置換基に含まれる「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アリール」、「ヘテロアリール」又は「脂肪族複素環」をさらに置換するために置換基群Aから選択される1個以上の置換基は、それぞれ独立して、好ましくは、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基及び置換されていてもよいスルホニル基から選択され、より好ましく、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基及び保護されていてもよいカルボキシル基から選択され、より一層好ましくは、ハロゲン原子である。
【0114】
<化合物(I)>
化合物(I)は、下記式(I)で表される。
【0115】
【化9】
【0116】
式(I)において、W及びWは、それぞれ独立して、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を、式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基を表す。
【0117】
で表される有機基及びWで表される有機基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0118】
一実施形態において、Wで表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。
【0119】
別の実施形態において、Wで表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。
【0120】
好ましい実施形態において、Wで表される有機基及びWで表される有機基の一方は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含み、Wで表される有機基及びWで表される有機基の他方は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。
【0121】
別の実施形態において、Wで表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。
【0122】
好ましい実施形態において、Wで表される有機基及びWで表される有機基の一方は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含み、Wで表される有機基及びWで表される有機基の他方は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。
【0123】
別の実施形態において、Wで表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であるか、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。
【0124】
好ましい実施形態において、Wで表される有機基及びWで表される有機基の一方は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含み、Wで表される有機基及びWで表される有機基の他方は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。
【0125】
別の実施形態において、Wで表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基及び1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される2種以上を組み合わせて形成される官能基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。
【0126】
好ましい実施形態において、Wで表される有機基及びWで表される有機基の一方は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含み、Wで表される有機基及びWで表される有機基の他方は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基及び1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基から選択される2種以上を組み合わせて形成される官能基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。この実施形態において、有機基の結合手は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基の結合手で形成されている。
【0127】
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0128】
【化10】
【0129】
上記式において、Lは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、Lは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、(*)は式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する結合手を表す。
【0130】
一実施形態において、Lは、無置換の脂肪族炭化水素基であり、Lは、無置換の芳香族炭化水素環基である。
【0131】
別の実施形態において、Lは、無置換の脂肪族炭化水素基であり、Lは、無置換の脂肪族複素環基である。
【0132】
別の実施形態において、Lは、無置換の脂肪族炭化水素基であり、Lは、無置換の芳香族複素環基である。
【0133】
別の実施形態において、Lは、無置換の脂肪族炭化水素基であり、Lは、1個以上の置換基を有する芳香族炭化水素環基である。
【0134】
別の実施形態において、Lは、無置換の脂肪族炭化水素基であり、Lは、1個以上の置換基を有する脂肪族複素環基である。
【0135】
別の実施形態において、Lは、無置換の脂肪族炭化水素基であり、Lは、1個以上の置換基を有する芳香族複素環基である。
【0136】
別の実施形態において、Lは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基であり、Lは、無置換の芳香族炭化水素環基である。
【0137】
別の実施形態において、Lは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基であり、Lは、無置換の脂肪族複素環基である。
【0138】
別の実施形態において、Lは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基であり、Lは、無置換の芳香族複素環基である。
【0139】
別の実施形態において、Lは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基であり、Lは、1個以上の置換基を有する芳香族炭化水素環基である。
【0140】
別の実施形態において、Lは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基であり、Lは、1個以上の置換基を有する脂肪族複素環基である。
【0141】
別の実施形態において、Lは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基であり、Lは、1個以上の置換基を有する芳香族複素環基である。
【0142】
また、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0143】
【化11】
【0144】
上記式において、L及びLは、上記と同義であり、Lは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、(*)は式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する結合手を表す。
【0145】
一実施形態において、Lは、無置換の脂肪族炭化水素基である。この実施形態は、L及びLに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0146】
別の実施形態において、Lは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。この実施形態は、L及びLに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0147】
また、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0148】
【化12】
【0149】
上記式において、L、L及びLは、上記と同義であり、Lは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、(*)は式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する結合手を表す。
【0150】
一実施形態において、Lは、無置換の芳香族炭化水素環基である。この実施形態は、L、L及びLに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0151】
別の実施形態において、Lは、無置換の脂肪族複素環基である。この実施形態は、L、L及びLに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0152】
別の実施形態において、Lは、無置換の芳香族複素環基である。この実施形態は、L、L及びLに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0153】
別の実施形態において、Lは、1個以上の置換基を有する芳香族炭化水素環基である。この実施形態は、L、L及びLに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0154】
別の実施形態において、Lは、1個以上の置換基を有する脂肪族複素環基である。この実施形態は、L、L及びLに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0155】
別の実施形態において、Lは、1個以上の置換基を有する芳香族複素環基である。この実施形態は、L、L及びLに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0156】
及び/又はLで表される脂肪族炭化水素基が1個以上の置換基を有する実施形態において、1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。L及び/又はLで表される脂肪族炭化水素基が有する1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。1個以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基及びアルキルオキシカルボニル基から選択されることが好ましい。なお、L及び/又はLで表される脂肪族炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である場合、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、環状の脂肪族炭化水素基(例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等)を置換基として有し得る。
【0157】
及び/又はLで表される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基が1個以上の置換基を有する実施形態において、1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。L及び/又はLで表される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基が有する1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。1個以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキルオキシ基、アルキル基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基及びアルキルオキシカルボニル基から選択されることが好ましい。
【0158】
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0159】
【化13】
【0160】
上記式において、Mは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Mは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、(*)は式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する結合手を表す。
【0161】
一実施形態において、Mは、無置換の芳香族炭化水素環基であり、Mは、無置換の脂肪族炭化水素基である。
【0162】
別の実施形態において、Mは、無置換の芳香族炭化水素環基であり、Mは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。
【0163】
別の実施形態において、Mは、1個以上の置換基を有する芳香族炭化水素環基であり、Mは、無置換の脂肪族炭化水素基である。
【0164】
別の実施形態において、Mは、1個以上の置換基を有する芳香族炭化水素環基であり、Mは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。
【0165】
一実施形態において、Mは、無置換の脂肪族複素環基であり、Mは、無置換の脂肪族炭化水素基である。
【0166】
別の実施形態において、Mは、無置換の脂肪族複素環基であり、Mは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。
【0167】
別の実施形態において、Mは、1個以上の置換基を有する脂肪族複素環基であり、Mは、無置換の脂肪族炭化水素基である。
【0168】
別の実施形態において、Mは、1個以上の置換基を有する脂肪族複素環基であり、Mは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。
【0169】
一実施形態において、Mは、無置換の芳香族複素環基であり、Mは、無置換の脂肪族炭化水素基である。
【0170】
別の実施形態において、Mは、無置換の芳香族複素環基であり、Mは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。
【0171】
別の実施形態において、Mは、1個以上の置換基を有する芳香族複素環基であり、Mは、無置換の脂肪族炭化水素基である。
【0172】
別の実施形態において、Mは、1個以上の置換基を有する芳香族複素環基であり、Mは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。
【0173】
また、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0174】
【化14】
【0175】
上記式において、M及びMは、上記と同義であり、Mは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、(*)は式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する結合手を表す。
【0176】
一実施形態において、Mは、無置換の芳香族炭化水素環基である。この実施形態は、M及びMに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0177】
別の実施形態において、Mは、1個以上の置換基を有する芳香族炭化水素環基である。この実施形態は、M及びMに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0178】
別の実施形態において、Mは、無置換の脂肪族複素環基である。この実施形態は、M及びMに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0179】
別の実施形態において、Mは、1個以上の置換基を有する脂肪族複素環基である。この実施形態は、M及びMに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0180】
別の実施形態において、Mは、無置換の芳香族複素環基である。この実施形態は、M及びMに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0181】
別の実施形態において、Mは、1個以上の置換基を有する芳香族複素環基である。この実施形態は、M及びMに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0182】
また、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0183】
【化15】
【0184】
上記式において、M、M及びMは、上記と同義であり、Mは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、(*)は式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する結合手を表す。
【0185】
一実施形態において、Mは、無置換の脂肪族炭化水素基である。この実施形態は、M、M及びMに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0186】
別の実施形態において、Mは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。この実施形態は、M、M及びMに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0187】
及び/又はMで表される脂肪族炭化水素基が1個以上の置換基を有する実施形態において、1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。M及び/又はMで表される脂肪族炭化水素基が有する1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。1個以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基及びアルキルオキシカルボニル基から選択されることが好ましい。なお、M及び/又はMで表される脂肪族炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である場合、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、環状の脂肪族炭化水素基(例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等)を置換基として有し得る。
【0188】
及び/又はMで表される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基が1個以上の置換基を有する実施形態において、1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。M及び/又はMで表される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基又は芳香族複素環基が有する1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。1個以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基及びアルキルオキシカルボニル基から選択されることが好ましい。
【0189】
で表される有機基及びWで表される有機基の少なくとも一方は、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基又はヘテロアリールアルキニル基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含み、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。アルキル基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~10であり、アリールアルキル基の炭素数は、例えば7~20、好ましくは7~15であり、アリール基の炭素数は、例えば6~20、好ましくは6~10であり、ヘテロアリール基の炭素数は、例えば5~20、好ましくは5~9である。
【0190】
化合物(I)は、例えば、下記式(Ia)で表される化合物(Ia)である。なお、化合物(Ia)は、式(I)において、Wで表される有機基及びWで表される有機基の一方が、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基であり、Wで表される有機基及びWで表される有機基の一方が、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である化合物に相当する。
【0191】
【化16】
【0192】
式(Ia)において、R~Rは、それぞれ独立して、水酸基保護基又は水素原子を表し、Arは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を、式(Ia)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基を表す。
【0193】
好ましい実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、水酸基保護基を表し、R及びRは、それぞれ独立して、水酸基保護基又は水素原子を表し、Rは、水酸基保護基(ただし、Rで表される水酸基保護基と同一の水酸基保護基及びRで表される水酸基保護基と同一の水酸基保護基を除く。)を表す。
【0194】
~Rで表される水酸基保護基は、同一であっても異なってもよいが、水酸基保護基の効率的な導入及び除去を勘案すれば、同一であることが好ましい。
【0195】
~Rで表される水酸基保護基は、特に限定されない。R~Rで表される水酸基保護基は、それぞれ独立して、例えば、エステル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基及びオキシカルボニル型保護基から選択することができる。エステル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基及びオキシカルボニル型保護基に関する説明は、上記と同様である。
【0196】
~Rで表される水酸基保護基は、それぞれ独立して、メチルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、イソプロパノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基、4-メチルオキシベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-tert-ブチルベンゾイル基、4-フルオロベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基、4-ブロモベンゾイル基、4-フェニルベンゾイル基、4-メチルオキシカルボニルベンゾイル基、ベンジル基、1-フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、1,1-ジフェニルエチル基、ナフチルメチル基、メチル基、tert-ブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、tert-ブチルオキシカルボニルオキシ基及びベンジルオキシカルボニル基から選択されることが好ましく、ベンジル基、アセチル基、ピバロイル基、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基及びtert-ブチルジフェニルシリル基から選択されることがより好ましい。
【0197】
及びRで表される官能基は、水素原子であってもよいが、後述する式(IVa)の6員環化合物を効率的に形成する観点から、水酸基保護基であることが好ましい。
【0198】
及びRで表される官能基は、水素原子であってもよいが、後述する式(IVa)の6員環化合物を効率的に形成する観点から、水酸基保護基であることが好ましい。
【0199】
及びRで表される水酸基保護基は、R及びRで表される水酸基保護基と同一であっても異なっていてもよいが、効率的な保護基の導入及び除去の観点から、R及びRで表される水酸基保護基と同一であることが好ましい。
【0200】
Arで表される有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を、式(Ia)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む限り特に限定されない。
【0201】
一実施形態において、Arで表される有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を式(Ia)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。
【0202】
別の実施形態において、Arで表される有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を式(Ia)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む。
【0203】
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を式(Ia)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0204】
【化17】
【0205】
上記式において、Jは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を表し、Jは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、Jは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、(*)は式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する結合手を表す。
【0206】
一実施形態において、Jは、無置換の芳香族炭化水素環基であり、Jは、無置換の脂肪族炭化水素基である。
【0207】
別の実施形態において、Jは、無置換の芳香族炭化水素環基であり、Jは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。
【0208】
別の実施形態において、Jは、1個以上の置換基を有する芳香族炭化水素環基であり、Jは、無置換の脂肪族炭化水素基である。
【0209】
別の実施形態において、Jは、1個以上の置換基を有する芳香族炭化水素環基であり、Jは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。
【0210】
一実施形態において、Jは、無置換の芳香族炭化水素環基である。この実施形態は、J及びJに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0211】
別の実施形態において、Jは、1個以上の置換基を有する芳香族炭化水素環基である。この実施形態は、J及びJに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0212】
別の実施形態において、Jは、無置換の脂肪族複素環基である。この実施形態は、J及びJに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0213】
別の実施形態において、Jは、1個以上の置換基を有する脂肪族複素環基である。この実施形態は、J及びJに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0214】
別の実施形態において、Jは、無置換の芳香族複素環基である。この実施形態は、J及びJに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0215】
別の実施形態において、Jは、1個以上の置換基を有する芳香族複素環基である。この実施形態は、J及びJに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0216】
で表される脂肪族炭化水素基が1個以上の置換基を有する実施形態において、1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。Jで表される脂肪族炭化水素基が有する1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。1個以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基及びアルキルオキシカルボニル基から選択されることが好ましい。なお、Jで表される脂肪族炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である場合、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、環状の脂肪族炭化水素基(例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等)を置換基として有し得る。
【0217】
で表される芳香族炭化水素環基及び/又はJで表される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基もしくは芳香族複素環基が1個以上の置換基を有する実施形態において、1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。Jで表される芳香族炭化水素環基及び/又はJで表される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基もしくは芳香族複素環基が有する1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。1個以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基及びアルキルオキシカルボニル基から選択されることが好ましい。
【0218】
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(Ia)中のカルボニル基の炭素原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0219】
【化18】
【0220】
上記式において、Kは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Kは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、Kは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、(*)は式(I)中のカルボニル基の炭素原子と結合する結合手を表す。
【0221】
一実施形態において、Kは、無置換の芳香族複素環基であり、Kは、無置換の脂肪族炭化水素基である。
【0222】
別の実施形態において、Kは、無置換の芳香族複素環基であり、Kは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。
【0223】
別の実施形態において、Kは、1個以上の置換基を有する芳香族複素環基であり、Kは、無置換の脂肪族炭化水素基である。
【0224】
別の実施形態において、Kは、1個以上の置換基を有する芳香族複素環基であり、Kは、1個以上の置換基を有する脂肪族炭化水素基である。
【0225】
一実施形態において、Kは、無置換の芳香族炭化水素環基である。この実施形態は、K及びKに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0226】
別の実施形態において、Kは、1個以上の置換基を有する芳香族炭化水素環基である。この実施形態は、K及びKに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0227】
別の実施形態において、Kは、無置換の脂肪族複素環基である。この実施形態は、K及びKに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0228】
別の実施形態において、Kは、1個以上の置換基を有する脂肪族複素環基である。この実施形態は、K及びKに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0229】
別の実施形態において、Kは、無置換の芳香族複素環基である。この実施形態は、K及びKに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0230】
別の実施形態において、Kは、1個以上の置換基を有する芳香族複素環基である。この実施形態は、K及びKに関する上記実施形態と組み合わせることができる。
【0231】
で表される脂肪族炭化水素基が1個以上の置換基を有する実施形態において、1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。Kで表される脂肪族炭化水素基が有する1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。1個以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基及びアルキルオキシカルボニル基から選択されることが好ましい。なお、Kで表される脂肪族炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である場合、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、環状の脂肪族炭化水素基(例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等)を置換基として有し得る。
【0232】
で表される芳香族複素環基及び/又はKで表される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基もしくは芳香族複素環基が1個以上の置換基を有する実施形態において、1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。Kで表される芳香族複素環基及び/又はKで表される芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基もしくは芳香族複素環基が有する1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。1個以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基及びアルキルオキシカルボニル基から選択されることが好ましい。
【0233】
Arで表される有機基に含まれる、式(Ia)中のカルボニル基の炭素原子と結合する芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基は、好ましくは、炭素数6~14の芳香族炭化水素環基又は炭素数3~12の芳香族複素環基であり、より好ましくは、炭素数6~10の芳香族炭化水素環基又は炭素数3~8の芳香族複素環基であり、より一層好ましくは、フェニル基、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基又はピリジル基であり、より一層好ましくはフェニル基、チエニル基又はベンゾチオフェニル基であり、より一層好ましくは、フェニル基である。
【0234】
Arで表される有機基は、化合物(Ia)をSGLT-2阻害薬又はその誘導体の製造原料として使用する観点からは、SGLT-2阻害薬が有する芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基と同一であるか、当該芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を誘導化した基であることが好ましい。
【0235】
ここで、カナグリフロジン、エンパギフロジン(「(1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{4-クロロ-3-[(4-{[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシ}フェニル)メチル]フェニル}-D-グルシトール」ともいう。)、イプラグリフロジン(「(1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{3-[(1-ベンゾチオフェン-2-イル)メチル]-4-フルオロフェニル}-D-グルシトール―(2S)-ピロリジン-2-カルボン酸」ともいう。)及びダパグリフロジン(「(2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エチルオキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-チオール」ともいう)をはじめとするSGLT-2阻害薬は、下記式(V)又は式(Va)で表される芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を有している。
【0236】
したがって、好ましい実施形態において、Arで表される有機基は、下記式(V)で表される。
【0237】
【化19】
【0238】
式(V)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルケニルオキシ基及びアリールアルキニルオキシ基からなる群から選択される官能基を表し、前記群に含まれるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルケニルオキシ基及びアリールアルキニルオキシ基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。
【0239】
式(V)において、Rで表される官能基は、それぞれ独立して、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルキルオキシ基及び炭素数7~15のアリールアルキルオキシ基から選択され、より好ましくは、ハロゲン原子及び炭素数1~10のアルキル基から選択される。
【0240】
式(V)において、nは、0~4の整数を表す。nで表される整数は、好ましくは1~3であり、より好ましくは1又は2である。
【0241】
式(V)において、Ar’は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar’は、好ましくは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0242】
Ar’で表される官能基は、好ましくは、炭素数6~14の芳香族炭化水素環基又は炭素数3~12の芳香族複素環であり、より好ましくは、炭素数6~14の芳香族炭化水素環基又は炭素数3~12の芳香族複素環であり、より一層好ましくは、フェニル基、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基又はピリジル基であり、より一層好ましくは、フェニル基、チエニル基又はベンゾチオフェニル基である。
【0243】
Ar’で表される官能基が有する1個以上の置換基は、好ましくは、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1~5のアルキルオキシ基、脂肪族複素環オキシ基(例えば、テトラヒドロフラニルオキシ基等)等である。
【0244】
より好ましい実施形態において、Arで表される有機基は、下記式(Va)で表される。
【0245】
【化20】
【0246】
式(Va)において、Rで表される官能基は、上記と同義であり、Ar’は、下記式(Va-I)、(Va-II)及び(Va-III)で表される官能基である。
【0247】
【化21】
【0248】
式(Va-I)、(Va-II)及び(Va-III)において、Rは、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基からなる群から選択される官能基を表し、前記群に含まれる脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。
【0249】
で表される官能基は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~14の芳香族炭化水素環基、炭素数2~12の脂肪族複素環基及び炭素数3~12の芳香族複素環基から選択されることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数6~10の芳香族炭化水素環基及び炭素数2~5の脂肪族複素環基から選択されることがより好ましく、フェニル基及びテトラヒドロフラニル基から選択されることがより一層好ましい。
【0250】
で表される官能基が有する1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、置換基群A~Mから選択することができる。Rで表される官能基が有する1個以上の置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキル基、アリール基、脂肪族複素環基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アルキル脂肪族複素環基、アルキルヘテロアリール基、アリールアルキル基、脂肪族複素環アルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、脂肪族複素環オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキル脂肪族複素環オキシ基、アルキルヘテロアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、脂肪族複素環アルキルオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、脂肪族複素環チオ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルアリールチオ基、アルキル脂肪族複素環チオ基、アルキルヘテロアリールチオ基、アリールアルキルチオ基、脂肪族複素環アルキルチオ基、ヘテロアリールアルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、脂肪族複素環カルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基、アルキルアリールカルボニル基、アルキル脂肪族複素環カルボニル基、アルキルヘテロアリールカルボニル基、アリールアルキルカルボニル基、脂肪族複素環アルキルカルボニル基、ヘテロアリールアルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族複素環オキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルアリールオキシカルボニル基、アルキル脂肪族複素環オキシカルボニル基、アルキルヘテロアリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、脂肪族複素環アルキルオキシカルボニル基及びヘテロアリールアルキルオキシカルボニル基から選択することができる。1個以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいカルバモイル基、保護されていてもよいスルホニル基、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基及びアルキルオキシカルボニル基から選択されることが好ましい。1個以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよいホルミル基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいカルボキシル基、保護されていてもよいスルホニル基及び炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基から選択されることがより好ましく、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、炭素数1~10のアルキルオキシ基及び炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基から選択されることがより一層好ましい。
【0251】
式(Va-I)において、pは0~5の整数を表す。pで表される整数は、好ましくは0~3、より好ましくは0~2、より一層好ましくは0又は1である。式(Va-II)及び(Va-III)において、pで表される整数は、好ましくは0~5、より好ましくは0~3、より一層好ましくは0~2である。
【0252】
より好ましい実施形態において、Arで表される有機基は、下記(V-I-I)、(V-II-I)、(V-III-I)又は(V-III-II)で表される。
【0253】
【化22】
【0254】
<化合物(II)>
化合物(II)は、下記式(II)で表される。
【0255】
【化23】
【0256】
式(II)において、Wは、上記と同義であり、Qは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を、式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む有機基を表す。
【0257】
一実施形態において、Qで表される有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む。
【0258】
別の実施形態において、Qで表される有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む。
【0259】
別の実施形態において、Qで表される有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基であるか、又は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む。
【0260】
別の実施形態において、Qで表される有機基は、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であるか、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む。
【0261】
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0262】
【化24】
【0263】
上記式において、Lは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、Lは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、(*)は式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す。上記式で表される有機基に関する説明は、(*)が式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す点を除き、上記と同様である。
【0264】
また、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0265】
【化25】
【0266】
上記式において、L及びLは、上記と同義であり、Lは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、(*)は式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す。上記式で表される有機基に関する説明は、(*)が式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す点を除き、上記と同様である。
【0267】
また、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0268】
【化26】
【0269】
上記式において、L、L及びLは、上記と同義であり、Lは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、(*)は式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す。上記式で表される有機基に関する説明は、(*)が式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す点を除き、上記と同様である。
【0270】
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0271】
【化27】
【0272】
上記式において、Mは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Mは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、(*)は式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す。上記式で表される有機基に関する説明は、(*)が式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す点を除き、上記と同様である。
【0273】
また、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0274】
【化28】
【0275】
上記式において、M及びMは、上記と同義であり、Mは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、(*)は式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す。上記式で表される有機基に関する説明は、(*)が式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す点を除き、上記と同様である。
【0276】
また、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む有機基は、例えば、下記式で表すことができる。
【0277】
【化29】
【0278】
上記式において、M、M及びMは、上記と同義であり、Mは、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、(*)は式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す。上記式で表される有機基に関する説明は、(*)が式(II)中の硫黄原子と結合する結合手を表す点を除き、上記と同様である。
【0279】
Qで表される有機基は、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基又はヘテロアリールアルキニル基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含み、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を式(II)中の硫黄原子と結合する官能基として含む。アルキル基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~10であり、アリールアルキル基の炭素数は、例えば7~20、好ましくは7~15であり、アリール基の炭素数は、例えば6~20、好ましくは6~10であり、ヘテロアリール基の炭素数は、例えば5~20、好ましくは5~9である。
【0280】
化合物(II)は、例えば、下記式(IIa)で表される化合物(IIa)である。なお、化合物(IIa)は、式(II)において、Wで表される有機基が、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である化合物に相当する。
【0281】
【化30】
【0282】
式(IIa)において、R~R及びQは、上記と同義である。
【0283】
<化合物(I)を製造する方法>
本発明の化合物(I)を製造する方法は、以下の工程(a)を含む。
【0284】
工程(a)は、上記式(II)で表される化合物(II)と、
下記式(III-I):
【化31】
[式中、Wは、上記と同義であり、Xは、ハロゲン原子を表す。]
で表される化合物(III-I)、及び、下記式(III-II):
【化32】
[式中、Wは、上記と同義である。]
で表される化合物(III-II)
からなる群から選択される少なくとも1種の有機亜鉛化合物とを、
銅触媒の存在下で反応させて、化合物(I)を得る工程である。
【0285】
工程(a)においては、化合物(III-I)化合物(III-II)からなる群から選択される少なくとも1種の有機亜鉛化合物は、化合物(II)に基Wを導入する試薬として使用される。有機亜鉛化合物として、化合物(III-I)及び化合物(III-II)の一方を単独で使用してもよいし、両方を組み合わせて使用してもよい。
【0286】
好ましい実施形態において、少なくとも1種の有機亜鉛化合物は、化合物(III-I)を含む。化合物(III-I)は、反応系内において、下記式で表される平衡状態にあることが好ましい。下記式で表されるシュレンク平衡状態を実現する観点から、有機亜鉛化合物として、化合物(III-I)及び化合物(III-II)の両方を使用することが好ましい。
【0287】
【化33】
【0288】
Xで表されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される。Xで表されるハロゲン原子は、好ましくは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0289】
化合物(III-I)としては、例えば、アリール亜鉛ハライド(式(III-I)において、Wがアリール基であり、Xがハロゲン原子、好ましくは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である化合物)、アルキル亜鉛ハライド(式(II-I)において、Wがアルキル基であり、Xがハロゲン原子、好ましくは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である化合物)等が挙げられる。
【0290】
化合物(III-II)としては、例えば、ジアリール亜鉛(式(III-II)において、Wがアリール基である化合物)、ジアルキル亜鉛(式(III-II)において、Wがアルキル基である化合物)等が挙げられる。
【0291】
化合物(III-I)及び化合物(III-II)は、市販品であってもよいし、非特許文献5等に記載の公知の手法に従って製造してもよい。
【0292】
化合物(III-I)及び/又は化合物(III-II)は、例えば、塩化リチウム等のリチウム塩、塩化亜鉛等の亜鉛塩とともに使用することができる。上記式で表される平衡状態を実現する点からは、化合物(III-I)及び/又は化合物(III-II)を塩化亜鉛等の亜鉛塩とともに使用することが好ましい。後述する化合物(III-I)とリチウム塩との複合体を形成する点からは、化合物(III-I)及び/又は化合物(III-II)を塩化リチウム等のリチウム塩とともに使用することが好ましい。
【0293】
化合物(III-I)は、リチウム塩との複合体を形成していてもよい。化合物(III-I)とリチウム塩との複合体は、例えば、下記式(III-Ia)で表すことができる。
【化34】
【0294】
式(III-Ia)において、X及びYは、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。
【0295】
化合物(III-I)とリチウム塩との複合体(III-Ia)は、化合物(III-I)の製造を、リチウム塩の存在下で実施することにより好適に得ることができる。複合体(III-Ia)は、化合物(III-I)のリチウム塩錯体であってもよい。
【0296】
工程(a)において、複合体(III-Ia)を使用することは、有機亜鉛化合物の反応速度を向上させる上で好ましい。
【0297】
リチウム塩としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられるが、好ましくは、塩化リチウムである。したがって、複合体(III-Ia)において、X及びYは、それぞれ独立して、塩素、臭素及びヨウ素から選択されることが好ましく、塩素および臭素から選択されることがより好ましい。
【0298】
複合体(III-Ia)は、市販品であってもよいし、公知の手法に従って製造してもよい。好ましい製造方法としては、式:WMgX・LiY[式中、Wは上記と同義であり、Xは、ハロゲン原子を表す。]で表されるターボグリニャール試薬と、式:ZnX[式中、Xは、ハロゲン原子を表す。]で表されるハロゲン化亜鉛とを有機溶媒中で反応させる方法が挙げられる。Xで表されるハロゲン原子は、Yで表されるハロゲン原子と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0299】
ターボグリニャール試薬は、不活性化ガス(例えば、窒素、アルゴン等)に置換した反応容器において、リチウム塩の存在下、マグネシウムと、式:W[式中、W及びXは、上記と同義である。]で表されるハロゲン有機化合物とを有機溶媒中で反応させることにより得ることができる。
【0300】
マグネシウムは、反応性向上の観点から、粉砕物、削り屑状物等として使用することが好ましい。また、マグネシウムとハロゲン有機化合物とを有機溶媒中で反応させる際、反応性を向上する観点から、マグネシウム1当量に対して0.05~0.2当量程度の触媒量の水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)等の還元剤を有機溶媒中に添加していてもよい。
【0301】
ターボグリニャール試薬の製造において、リチウム塩の使用量は、通常、マグネシウム1当量に対して、通常0.5~5.0当量程度、好ましくは0.5~3.0当量程度、より好ましくは0.5~2.0当量程度とすればよい。
【0302】
ターボグリニャール試薬の製造において、ハロゲン有機化合物(W)の使用量は、マグネシウム1当量に対して、通常0.5~3.0当量程度、好ましくは0.5~2.0当量程度、より好ましくは0.5~1.5当量程度とすればよい。
【0303】
ターボグリニャール試薬の製造に使用される有機溶媒は、安定的な製造の観点から、好ましくは、エーテル系溶媒であり、より好ましくは、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等であり、より一層好ましくは、テトラヒドロフランである。使用される溶媒の量は、ハロゲン有機化合物(W)に対して通常1~1000倍の容量、好ましくは1~100倍の容量である。
【0304】
ターボグリニャール試薬の製造における反応温度は、通常-50~50℃であり、好ましくは-20~20℃である。反応時間は、通常0.5~5時間、好ましくは1~3時間である。
【0305】
なお、ターボグリニャール試薬(WMgX・LiY)は、Angew Chem.Int.Ed2006,45,2958等に記載の公知方法に従い、下記式に示される通り、TMPMgX・LiY[式中、TMPは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを表す。]で表されるノッシェル・ハウザー塩基と、化合物(W-H)とを反応させることにより製造してもよい。このような態様も、本発明に包含される。
【0306】
【化35】
【0307】
複合体(III-Ia)は、ターボグリニャール試薬とハロゲン化亜鉛とを有機溶媒中で混合して製造することができる。ターボグリニャール試薬とハロゲン化亜鉛との反応は、ターボグリニャール試薬の製造と同様、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン等)中で実施することが好ましい。
【0308】
ターボグリニャール試薬とハロゲン化亜鉛との反応は、通常-30~30℃程度の温度で行うことができる。また、反応時間は、通常0.1~1時間である。
【0309】
工程(a)において、有機亜鉛化合物又は複合体(III-Ia)の使用量は、化合物(II)の量に応じ適宜設定することができる。有機亜鉛化合物の使用量は、化合物(II)1当量に対して、通常1~5当量、好ましくは1~3当量である。
【0310】
有機亜鉛化合物又は複合体(III-Ia)は、反応系に銅触媒及び化合物(II)を添加して混合した後、反応系に添加してもよいし、反応系に化合物(II)を添加した後、銅触媒と同時に反応系に添加して混合してもよいが、反応系に銅触媒及び化合物(II)を添加して混合した後、反応系に添加することが好ましい。
【0311】
反応雰囲気は、銅触媒の活性を考慮して、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。反応雰囲気は、加圧、常圧及び減圧のいずれであってもよい。
【0312】
工程(a)において、銅触媒が使用される。銅触媒の使用量は、所望の反応が進行する範囲で適宜調整することができる。銅触媒の使用量は、化合物(II)1当量に対して、通常0.0001~1当量、好ましくは、0.01~0.1当量である。
【0313】
一実施形態において、銅触媒は、銅塩又はその水和物若しくは溶媒和物である。銅塩に含まれる銅原子の価数は、通常、1価又は2価である。銅塩としては、例えば、塩化銅(I)(CuCl)、塩化銅(II)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、臭化銅(II)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、ヨウ化銅(II)(CuI)、酢酸銅(I)(CuOAc)、酢酸銅(II)(Cu(OAc))、硫酸銅(II)(CuSO)、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)(CuOTf)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)(Cu(OTf))、安息香酸銅(I)(CuOBz)、安息香酸銅(II)(Cu(OBz))等が挙げられる。これらのうち、ヨウ化銅(I)、酢酸銅(II)(Cu(OAc))及び硫酸銅(II)(CuSO)が好ましく、ヨウ化銅(I)がより好ましい。
【0314】
別の実施形態において、銅触媒は、銅錯体触媒である。銅錯体触媒は、銅原子及び該銅原子にキレートする配位子を含んでなる。銅錯体触媒における銅原子の価数は、通常0~3価、好ましくは1又は2価である。なお、1又は2価の銅原子(銅イオン)が触媒として作用するためには、配位子とのキレート形成が必要である。銅錯体触媒において、配位子と銅原子との比に特に限定されないが、配位子1個あたり1個以上の銅原子が配位することが好ましい。配位子1個あたりの銅原子の数は、例えば、1~3個である。銅錯体触媒に含まれる銅原子は、例えば、反応系に添加された銅塩又はその水和物若しくは溶媒和物に由来する。銅塩又はその水和物若しくは溶媒和物の具体例は、上記と同様である。銅触媒が銅錯体触媒である実施形態において、予め形成された銅錯体触媒を反応系に添加してもよいし、反応系に銅塩又はその水和物若しくは溶媒和物と配位子とを添加し、反応系中で銅錯体触媒を形成してもよい。
【0315】
銅錯体触媒に含まれる配位子は、銅原子に配位結合で結合している分子又はイオンである。好ましい配位子は、窒素配位子である。窒素配位子は、配位原子として窒素原子を含有する配位子である。配位原子は、配位結合に直接かかわっている原子である。窒素配位子は、通常、塩基性である。窒素配位子は、例えば、アミン系又はイミン系の多座配位子である。多座配位子は、二座以上の配位子である。二座配位子は、配位原子数が2個の配位子であり、三座配位子は、配位原子数が3個の配位子であり、四座配位子は、配位原子数が4個の配位子である。
【0316】
窒素配位子としては、例えば、N、N’、N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMDTA)、N、N、N’、N’’、N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDTA)、1,10-フェナントロリン、3,3’-ジピリジン等が挙げられる。好ましい窒素配位子は、PMDTAである。
【0317】
その他の窒素配位子としては、例えば、2,2-ビピリジン、4,4’-ジ-(5-ノニル)-2,2’-ビピリジン、N-(n-プロピル)ピリジルメタンイミン、N-(n-オクチル)ピリジルメタンイミン等の二座配位の多座アミン;N-プロピル-N,N-ジ(2-ピリジルメチル)アミン等の三座配位の多座アミン;ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン、N,N-ビス(2-ジメチルアミノエチル)-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、2,5,9,12-テトラメチル-2,5,9,12-テトラアザテトラデカン、2,6,9,13-テトラメチル-2,6,9,13-テトラアザテトラデカン、4,11-ジメチル-1,4,8,11-テトラアザビシクロヘキサデカン、N’,N’’-ジメチル-N’,N’’-ビス((ピリジン-2-イル)メチル)エタン-1,2-ジアミン、トリス[(2-ピリジル)メチル]アミン、2,5,8,12-テトラメチル-2,5,8,12-テトラアザテトラデカン等の四座配位の多座アミン;N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’’,N’’’’-ヘプタメチルテトラエチレンテトラミン等の五座配位の多座アミン;N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン等の六座配位の多座アミン;ポリアミン、ポリエチレンイミン等のその他の窒素配位子等が挙げられる。
【0318】
窒素配位子には、上記窒素配位子の誘導体も包含される。窒素配位子の誘導体化としては、例えば、1個以上の置換基の導入等が挙げられる。窒素配位子に導入される1個以上の置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アルキルオキシ基、アルキルオキシアルキル基、アリールオキシ基、アリールオキシアルキル基、ハロゲン原子、ジアルキル基、ジアリールアミノ基、ニトロ基、オキシカルボニル基、ジアルキルホスフィン基、ジアリールホスフィン基等が挙げられる。
【0319】
別の実施形態において、銅触媒は、銅原子と該銅原子を担持する担体とを有する担持触媒である。担持触媒における銅原子の価数は、通常0~3価、好ましくは1又は2価である。なお、1又は2価の銅原子(銅イオン)が触媒として作用するためには、配位子とのキレート形成が必要である。担持触媒には、銅塩又はその水和物若しくは溶媒和物が担持されていてもよいし、銅錯体触媒が担持されていてもよいし、銅金属触媒が担持されていてもよいが、銅塩又はその水和物若しくは溶媒和物、あるいは、銅錯体触媒が担持されていることが好ましい。担持触媒における担体としては、例えば、活性炭、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化珪素、粘土、珪酸塩、ゼオライト、高分子マトリックス等が挙げられる。高分子マトリックスとしては、例えば、スチレン-ジビニルベンゼン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。担体には、銅原子にキレートする配位子が担持されていてもよい。担体に担持された配位子が、銅原子との錯体を形成することにより、銅触媒を、不均一触媒として形成することができる。担持触媒を使用することにより、基W間のカップリング反応等により生じる副生成物の量を低減する上で有利である。
【0320】
銅触媒は、均一触媒であってもよいし、不均一触媒であってもよい。銅触媒が均一触媒である場合、銅触媒は、銅塩又は銅錯体触媒であることが好ましい。均一触媒は、反応を迅速に進行させることができる点で有利である。銅触媒が不均一触媒である場合、銅触媒は、担持触媒であることが好ましい。担持触媒は、反応混合物から遷移金属触媒を容易に分離できる点で有利である。
【0321】
工程(a)において使用される溶媒は、好ましくは有機溶媒であり、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジグライム、メチル-テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒、トルエン、塩化メチレン、ヘキサン、ヘプタン、キシレン、1,4-ジオキサン、ジブチルエーテル、メシチレン、p-シメン等の非極性溶媒等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。溶媒は、好ましくは、THF、2-メチル-THF、ジブチルエーテル、トルエン、DMF又はそれらの混合溶媒であり、より好ましくはTHFである。
【0322】
工程(a)において使用される溶媒の量は、特に限定されないが、例えば、化合物(II)に対して1~100倍の容量とすることができる。
【0323】
工程(a)において、反応温度は、通常-30~120℃、好ましくは-10~100℃、より好ましくは10~80℃、より一層好ましくは10~60℃、より一層好ましくは10~50℃である。このようなマイルドな温度条件を採用して化合物(I)を製造できることは、温度管理に関連した設備コストを抑制して工業生産を実施する上で好ましい。
【0324】
工程(a)において、反応時間は、用いる基質の量、触媒の量、反応温度等に応じて適宜決定してよく、通常0.5~48時間、好ましくは1~24時間である。
【0325】
以下、化合物(II)として化合物(IIa)を使用する場合について説明する。
【0326】
化合物(II)として化合物(IIa)を使用する場合、工程(a)は、化合物(IIa)と、化合物(III-I)及び化合物(III-II)からなる群から選択される少なくとも1種の有機亜鉛化合物とを、銅触媒の存在下で反応させて、化合物(Ia)を得る工程である。反応スキームは、下記式の通りである。
【0327】
【化36】
【0328】
まず、化合物(IIa)を準備する。化合物(IIa)の準備工程の詳細は、工程(a-1)として後述する。
【0329】
で表される水酸基保護基は、後述する式(IVa)の6員環化合物を効率的に形成する観点から、Rで表される水酸基保護基及びRで表される水酸基保護基と異なる水酸基保護基であることが好ましい。すなわち、Rで表される水酸基保護基は、Rで表される水酸基保護基と同一の水酸基保護基及びRで表される水酸基保護基と同一の水酸基保護基を除く範囲から選択されることが好ましい。Rで表される水酸基保護基が除去されると、水酸基が生じ、同一分子内のカルボニル基と反応して、式(IVa)の環が形成され得る。したがって、R及びRで表される水酸基保護基を保持しつつ、Rで表される水酸基保護基を選択的に除去できるように、Rで表される水酸基保護基の種類を選択することが好ましい。
【0330】
で表される水酸基保護基は、エステル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アラルキオキシアルキル型保護基アリールアルキルアルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基及びオキシカルボニル型保護基から選択されることが好ましく、エステル型保護基、アラルキオキシアルキル型保護基アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基及びオキシカルボニル型保護基から選択されることがより好ましい。Rで表される水酸基保護基は、好ましくは、メチルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、イソプロパノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基、4-メチルオキシベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-tert-ブチルベンゾイル基、4-フルオロベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基、4-ブロモベンゾイル基、4-フェニルベンゾイル基、4-メチルオキシカルボニルベンゾイル基、ベンジル基、1-フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、1,1-ジフェニルエチル基、ナフチルメチル基、メチル基、tert-ブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、tert-ブチルオキシカルボニルオキシ基、ベンジルオキシカルボニル基であり、より好ましくはメチル基、ベンジル基、アセチル基、ピバロイル基、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はtert-ブチルジフェニルシリル基である。
【0331】
好ましい実施形態において、Rで表される水酸基保護基は、エステル型保護基であり、Rで表される水酸基保護基及びRで表される水酸基保護基は、それぞれ独立して、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アラルキオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基及びオキシカルボニル型保護基から選択される。より好ましい実施形態において、Rで表される水酸基保護基は、アセチル基又はピバロイル基であり、Rで表される水酸基保護基及びRで表される水酸基保護基は、それぞれ独立して、メチル基、ベンジル基、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基及びtert-ブチルジフェニルシリル基から選択される。
【0332】
好ましい別の実施形態において、Rで表される水酸基保護基は、シリル型保護基であり、Rで表される水酸基保護基及びRで表される水酸基保護基は、それぞれ独立して、エステル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アラルキオキシアルキル型保護基アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基及びオキシカルボニル型保護基アリールアルキルから選択される。より好ましい別の実施形態において、Rで表される水酸基保護基は、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基及びtert-ブチルジフェニルシリル基から選択され、Rで表される水酸基保護基及びRで表される水酸基保護基は、それぞれ独立して、メチル基、ベンジル基、アセチル基及びピバロイル基から選択される。
【0333】
式(IVa)の6員環を効率的に形成する観点からは、Rで表される水酸基保護基は、R、R、R及びRで表される水酸基保護基と異なることが好ましい。
【0334】
一実施形態において、Rで表される水酸基保護基は、エステル型保護基であり、R、R、R及びRで表される水酸基保護基は、それぞれ独立して、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アラルキオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基及びオキシカルボニル型保護基から選択される。好ましい実施形態において、Rで表される水酸基保護基は、アセチル基又はピバロイル基であり、R、R、R及びRで表される水酸基保護基は、それぞれ独立して、メチル基、ベンジル基、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基及びtert-ブチルジフェニルシリル基から選択される。
【0335】
好ましい別の実施形態において、Rで表される水酸基保護基は、シリル型保護基であり、R、R、R及びRで表される水酸基保護基は、それぞれ独立して、アラルキオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基及びオキシカルボニル型保護基アリールアルキルから選択される。好ましい別の実施形態において、Rで表される水酸基保護基は、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はtert-ブチルジフェニルシリル基であり、R、R、R及びRで表される水酸基保護基は、それぞれ独立して、メチル基、ベンジル基、アセチル基及びピバロイル基から選択される。
【0336】
化合物(II)として化合物(IIa)を使用する場合、工程(a)において化合物(Ia)を得た後、工程(b)を実施し、下記式(IVa)で表される化合物(IVa)を製造することが好ましい。
【0337】
【化37】
【0338】
工程(b)は、化合物(Ia)からRで表される水酸基保護基を除去して、化合物(IVa)を得る工程である。反応スキームは、下記式の通りである。
【0339】
【化38】
【0340】
で表される水酸基保護基は、水酸基保護基の種類に応じて、Peter G.M. Wuts著、「プロテクティブ・グループ・イン・オーガニック・シンセシス(“Protective Group in Organic Synthesis”)第5版」(JOHN WILEY&SONS出版)等に記載の公知の手法によって除去することができる。典型的な手法としては、化合物(Ia)と酸性試薬又は塩基性試薬とを不活性溶媒中で反応させてRで表される水酸基保護基を除去する方法が挙げられる。
【0341】
酸性試薬としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、臭化水素等の無機酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、フタル酸等の有機酸が挙げられる。塩基性試薬としては、例えば、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド、アンモニウムフルオリド、アンモニウムバイフルオリド、フッ化水素酸等のフッ化物、炭酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチルオキシド、ナトリウムエチルオキシド、アンモニア水等が挙げられる。
【0342】
酸性試薬の使用量は、化合物(Ia)1当量に対して通常0.1~1000当量、好ましくは1~5当量である。塩基性試薬の使用量は、化合物(Ia)1当量に対して通常0.001~10当量、好ましくは0.01~2当量である。
【0343】
工程(b)において使用される溶媒としては、好ましくは有機溶媒であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の極性プロトン性溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、THF、2-メチル-テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメチルオキシエタン、ジグライム、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の極性非プロトン性溶媒:塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の無極性溶媒等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はそれらの混合溶媒である。
【0344】
工程(b)において使用される溶媒の量は、化合物(Ia)に対して通常1~1000倍の容量、好ましくは1~100倍の容量である。
【0345】
工程(b)において、反応温度は、通常-30~100℃、好ましくは0~100℃、より好ましくは0~40℃、より一層好ましくは0~50℃である。このようなマイルドな温度条件を採用して化合物(IVa)を取得できることは、温度管理に関連した設備コストを抑制して工業生産を実施する上で好ましい。
【0346】
以下、化合物(IIa)の準備工程である工程(a-1)について説明する。
工程(a-1)の反応スキームは、下記式の通りである。
【0347】
【化39】
【0348】
化合物(IVa)の製造方法において、出発原料として使用される化合物(IIa)は、市販品であってもよいし、工程(a-1)に従って製造してもよい。
【0349】
工程(a-1)は、以下の工程(a-1-1)及び工程(a-1-2)を含む。
【0350】
工程(a-1-1)は、下記式(VI):
【化40】
で表される化合物(VI)と、
下記式(VII):
【化41】
で表される化合物(VII)とを反応させて、下記式(VIII):
【化42】
で表される化合物(VIII)を得る工程である。
【0351】
工程(a-1-1)の反応スキームは、下記式の通りである。
【化43】
【0352】
工程(a-1-1)では、化合物(VI)と、化合物(VII)とを反応させて化合物(VIII)を得る。工程(a-1-1)において出発物質として使用される化合物(VI)は、例えば、非特許文献1、非特許文献2等に記載の公知の方法又は後述する例1に記載の方法に従って製造することができる。化合物(VI)は、市販品であってもよい。化合物(VII)は、公知の手法に従って製造することができる。化合物(VII)として、市販の有機チオール化合物を使用してもよい。
【0353】
化合物(VII)の使用量は、例えば、化合物(VI)1当量に対して通常1~10当量、好ましくは1~5当量である。
【0354】
化合物(VI)と化合物(VII)との反応条件は、化合物(VIII)を取得しうる限り特に限定されないが、下記式(IX)で表される化合物(IX)の存在下で実施することが好ましい。化合物(IX)は、公知の手法に従って製造することができる。化合物(IX)として、市販のアルミニウム触媒を使用してもよい。
【0355】
【化44】
【0356】
式(IX)において、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基からなる群から選択される官能基を表し、前記群に含まれる脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。
【0357】
好ましい実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選択される官能基を表し、前記群に含まれるアルキル基、アリール基及びアリールアルキル基は各々、1個以上の置換基を有していてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基及び炭素数7~20のアリールアルキル基からなる群から選択されることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基から選択されることがより好ましく、メチル基、エチル基及びプロピル基から選択されることがより一層好ましい。Rで表される官能基及びRで表される官能基は、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0358】
式(IX)において、qは0~3の整数を表し、rは0~3の整数を表す。ただし、q+r=3である。好ましい実施形態において、q又はrの一方は0を表し、他方は3を表す。
【0359】
工程(a-1-1)において、化合物(IX)の使用量は、化合物(VI)1当量に対して通常1~5当量、好ましくは3~5当量である。
【0360】
工程(a-1-1)において使用される溶媒としては、好ましくは有機溶媒であり、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF、2-メチル-テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメチルオキシエタン、ジグライム、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の極性非プロトン性溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の無極性溶媒等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。溶媒は、好ましくは、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン又はそれらの混合溶媒であり、より好ましくは、塩化メチレンである。
【0361】
工程(a-1-1)において使用される溶媒の量は、化合物(VI)に対して通常1~1000倍の容量、好ましくは1~100倍の容量である。
【0362】
工程(a-1-1)において、反応温度は、通常-30~80℃、好ましくは-10~40℃、より好ましくは0~40℃である。本工程において比較的マイルドな温度条件を採用できることは、温度管理に関連した設備コストを抑制する観点から好ましい。
【0363】
工程(a-1-1)においては、水、HCl水溶液、塩化アンモニウム水溶液等を使用してアルミニウム触媒反応を終了させ、触媒の除去を簡便に実施することができる。
【0364】
工程(a-1-1)において化合物(VIII)を得た後、次の工程(a-1-2)は、出来る限り速やかに行うことが好ましく、このために、工程(a-1-1)及び工程(a-1-2)を同じ反応系で実施することが好ましい。工程(a-1-1)から速やかに工程(a-1-2)に移行することは、化合物(VIII)の閉環反応により化合物(VI)が再度生成することを防止する上で有利である。
【0365】
工程(a-1-2)は、化合物(VIII)における水酸基を、Rで表される水酸基保護基で保護し、化合物(IIa)を得る工程である。工程(a-1-2)の反応スキームは、下記式の通りである。
【0366】
【化45】
【0367】
工程(a-1-2)では、下記式(VIII)で表される化合物(VIII)における水酸基を、Rで表される水酸基保護基で保護して、化合物(II)を得る。
【0368】
【化46】
【0369】
化合物(VIII)における水酸基に対するR基の導入は、特に限定されず、Rで表される水酸基保護基の種類に応じて、Peter G.M. Wuts著、「プロテクティブ・グループ・イン・オーガニック・シンセシス(“Protective Group in Organic Synthesis”)第5版」(JOHN WILEY&SONS出版)等に記載の公知の手法によって実施することができる。典型的な手法としては、化合物(VIII)と保護基導入試薬とを酸又は塩基性試薬の存在下、不活性溶媒中で反応させてRを導入する方法が挙げられる。
【0370】
保護基導入試薬は、Rの種類に応じて適宜決定することができるが、例えば、無水酢酸、無水ピバリン酸、アセチルクロリド、ピバロイルクロリド等のエステル型保護基導入剤;臭化ベンジル等のアリールアルキルエーテル型保護基導入剤;ヨードメタン等のアルキルエーテル型保護基導入剤;トリメチルシリルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、tert-ブチルジメチルシリルクロリド、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド等のシリル型保護基導入剤ビス(tert-ブチルオキシカルボニルオキシ)オキシド等のオキシカルボニル型保護基等が挙げられるが、好ましくは無水酢酸、無水ピバリン酸、アセチルクロリド、ピバロイルクロリド等のエステル型保護基導入剤であり、より好ましくは無水酢酸である。
【0371】
酸性試薬としては、例えば、酢酸、臭化水素等の無機酸、p-トルエンスルホン酸、フタル酸等の有機酸等が挙げられる。塩基性試薬としては、特に限定されないが、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)及びジエチルアニリン等の有機アミン等が挙げられるが、好ましくはトリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)又はそれらの混合物である。
【0372】
酸性試薬の使用量は、特に限定されないが、化合物(VIII)1当量に対して通常0.1~1000当量、好ましくは1~5当量である。また、塩基性試薬の使用量は、特に限定されないが、化合物(VIII)1当量に対して通常0.001~10当量、好ましくは0.01~2当量である。
【0373】
工程(a-1-2)において使用される溶媒としては、好ましくは有機溶媒であり、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、THF、2-メチル-テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメチルオキシエタン、ジグライム、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の極性非プロトン性溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の無極性溶媒等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。溶媒は、好ましくは塩化メチレン、トルエン又はそれらの混合溶媒である。
【0374】
工程(a-1-2)において使用される溶媒の量は、特に限定されないが、化合物(VIII)に対して通常1~1000倍の容量、好ましくは1~100倍の容量である。
【0375】
工程(a-1-2)において、反応温度は、特に限定されないが、通常-30~100℃、好ましくは-30~40℃、より好ましくは-10~40℃、より一層好ましくは0~30℃である。本工程においても比較的マイルドな温度条件を採用することは、化合物(VIII)から化合物(VI)への戻りの反応を抑制する上で有利である。また、本工程においても比較的マイルドな温度条件を採用できることは、温度管理に関連した設備コストを抑制して工業生産を実施する上で好ましい。
【0376】
<β-C-アリールグリコシド誘導体(化合物(XI))の製造工程>
【化47】
【0377】
化合物(IVa)は、下記式(XI)で表わされる化合物(XI)、すなわちβ-C-アリールグリコシド誘導体の製造原料として有利に使用することができる。
【0378】
【化48】
【0379】
化合物(IVa)から化合物(XI)への反応は、公知の還元反応を用いることが可能である。具体的には、還元方法としては、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF・OEt)の存在下でトリエチルシランを用いて化合物(I)を還元する方法や、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン、テトラメチルジシロキサン等のシラン化合物の存在下、BF・OEt、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン(BF・THF)、塩化アルミニウム等のルイス酸と化合物(I)とを反応させる方法等が挙げられる。
【0380】
得られた化合物(XI)は、そのまま、あるいはR’、R’、R’又はR’が水酸基保護基の場合、所望によりPeter G.M. Wuts著、「プロテクティブ・グループ・イン・オーガニック・シンセシス(“Protective Group in Organic Synthesis”)第5版」(JOHN WILEY&SONS出版)等に記載の公知の方法で脱保護して、β-C-アリールグリコシド誘導体として使用することができる。
【0381】
<化合物(IIa)の用途/製造中間体>
化合物(IIa)を製造中間体として使用して化合物(IVa)を製造し、さらにSGLT2阻害剤自体又はその合成中間体に当たる化合物(XI)に変換することができる。したがって、化合物(IIa)は、化合物(XI)の製造のための試薬又は中間体として好適に適用することができる。
【0382】
したがって、本発明の好ましい態様によれば、化合物(IIa)を含んでなる、化合物(XI)を製造するための試薬が提供される。また、本発明の好ましい態様によれば、前記試薬において、式(XI)におけるArは式(V)又は(Va)で表されるものである。
【0383】
また、本発明の別の態様によれば、化合物(XI)の製造中間体としての、化合物(IIa)の使用が提供される。また、本発明の好ましい態様によれば、前記使用において、式(XI)におけるArは式(V)又は(Va)で表されるものである。
【実施例0384】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0385】
例1:化合物(2)((3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)-6-(ベンジルオキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン)の製造
【化49】
【0386】
ジメチルスルホキシド(25mL)中に化合物(1)(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-D-グルコピラノース;5.0g、9.24mmol)を含有する溶液をアルゴン雰囲気下、20~25℃で30分間撹拌した。この反応混合液に対して25℃にて無水酢酸(15mL)を5分かけて添加した。添加が完了した後、得られた反応混合液を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によってモニターしながら、20~25℃で20時間撹拌した。次に、反応混合液をトルエン(100mL)で希釈し、得られた希釈液に1N HCl水溶液(120mL)を加えて過剰の無水酢酸をクエンチした。得られた反応混合液を20~25℃で20分間撹拌した後、相分離した。得られた有機相を1M NaHCO水溶液(3×50mL)で洗浄した。さらに有機相を水(15mL)及び食塩水(15mL)で洗浄し、次いで無水NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2/20~3/20)により精製し、無色油状物として化合物(2)(3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)-6-(ベンジルオキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン;4.8g、収率96%)を得た。
【0387】
化合物(2)
IR(KBr):νmax=3030,2868,1754,1496,1363,1164,1097,737,698cm-1
H NMR(400MHz,CDCl)δ:7.39-7.16(m,20H),4.97(d,J=11.4Hz,1H),4.73-4.44(m,8H),4.12(d,J=6.3Hz,1H),3.96-3.89(m,2H),3.73-3.64(m,2H)
13C NMR(101MHz,CDCl)δ:169.38,137.71,137.64,137.63,137.06,128.57,128.53,128.48,128.19,128.09,128.07,128.02,127.91,81.06,78.26,77.51,76.20,73.98,73.80,73.78,73.66,68.40
HRMS[M+H]3435 計算値539.2428;実測値:539.2420
質量分析[M+H]:539
【0388】
例2:化合物(3)((2R,3S,4R,5R)-S-デシル2,3,4,6-テトラキス(ベンゾイルオキシ)-5-ヒドロキシヘキサンチオエート)の製造
【化50】
【0389】
0℃に冷却した無水CHCl(10mL)中にデカンチオール(0.72g、4.1mmol)を含有する溶液に、トリメチルアルミニウム(1Mトルエン溶液;4.1mL、4.1mmol)を10分間かけて滴下し、20分間撹拌した。次に、得られた反応混合液に対して、無水CHCl(12mL)中に化合物(2)(2g、3.71mmol)を含有する溶液を10分間かけてゆっくりと加え、1時間撹拌した。得られた反応混合液をCHCl(20mL)で希釈して氷冷水(20mL)を含む250mLビーカーに加え、さらに1N HCl水溶液(10mL)を撹拌しながらゆっくりビーカーに注ぎ、相分離を行った。得られた水相は冷CHCl(3×30mL)で抽出した。有機抽出物を合わせた有機相は、水及び食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶離液としてCHClを使用したフラッシュシリカカラムにより濾過し、化合物(3)((2R,3S,4R,5R)-S-デシル2,3,4,6-テトラキス(ベンゾイルオキシ)-5-ヒドロキシヘキサンチオエート)の粗生成物を得た。その後、得られた化合物(3)の粗生成物は精製せずに、次の工程に用いた。
【0390】
例3:化合物(4)((2R,3R,4S,5R)-1,3,4,5-テトラキス(ベンゾイルオキシ)-6-(デシルチオ)-6-オキソヘキサン-2-イルアセテート)の製造
【化51】
【0391】
アルゴン雰囲気下、0℃に冷却した無水CHCl中に化合物(3)の粗生成物(2.8g、3.71mmol)を含有する溶液に対して、無水酢酸(AcO;0.88mL、9.5mmol)を添加し、さらにDMAP(9mg、2mol%)を添加した。5分後、得られた混合液にトリエチルアミン(1.32mL、9.5mmol)を添加し、アルゴン雰囲気下で4時間撹拌した。得られた反応混合液を水(30mL)でクエンチし、有機相をCHCl(3×30mL)で抽出した。有機抽出物を合わせた有機相は、水(30mL)及び食塩水(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濃縮した。得られた粗生成物をシリカクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/20~2/20)で精製し、無色液体として化合物(4)((2R,3R,4S,5R)-1,3,4,5-テトラキス(ベンゾイルオキシ)-6-(デシルチオ)-6-オキソヘキサン-2-イルアセテート;2.6g、化合物(2)を基準として収率92%)を得た。
【0392】
化合物(4)
IR (KBr):νmax=3063,3031,2926,2860,1745,1676,1452,1375,1244,1093,1069,745,696cm-1
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:7.40(d,J=6.5Hz,2H),7.36-7.15(m,18H),5.15(q,J=4.3Hz,1H),4.79(d,J=10.8Hz,1H),4.71(d,J=11.4Hz,1H),4.65-4.39(m,6H),4.25(d,J=4.3Hz,1H),4.01-3.95(m,2H),3.82(dd,J=10.6,4.1Hz,1H),3.65(dd,J=10.6,5.7Hz,1H),2.84(t,J=7.4Hz,2H),1.96(s,3H),1.55(p,J=7.3Hz,2H),1.41-1.18(m,15H),0.88(t,J=6.7Hz,3H)
13C-NMR(101MHz,CDCl)δ:201.90,170.02,138.51,138.08,137.98,137.08,128.65,128.43,128.39,128.36,128.25,128.17,128.04,127.97,127.80,127.71,127.59,127.53,85.28,80.31,78.45,75.71,74.67,74.53,73.23,72.91,68.06,31.95,29.61,29.55,29.36,29.20,29.05,28.39,22.74,21.11,14.18
HRMS [M+H]4659S 計算値755.3981;実測値:755.3976
質量分析[M+H]:755
【0393】
例4:CuI及びPMDEA存在下のカップリング反応
化合物(5)((2R,3R,4S,5R)-1,3,4,5-テトラキス(ベンゾイルオキシ)-6-オキソ-6-フェニルヘキサン-2-イルアセテート)の製造
【化52】
【0394】
ホットオーブンで乾燥したSchlenk管に、アルゴン雰囲気下、化合物(4)(0.25mmol、190mg)を入れ、続いてCuI(0.0125mmol、3mg)、PMDETA(0.0125mmol、3mg)およびTHF(2mL)を入れた。得られた反応混合液を5分間撹拌し、続いて有機亜鉛化合物と塩化リチウムとの複合体PhZnCl・LiCl(0.375mmol、3mL)のTHF溶液(0.125M)を注射器で添加した。得られた反応混合液を40℃で12時間撹拌した。その後、反応混合液を水(1mL)でクエンチし、セライトパッドにより濾過し、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。得られた有機抽出物を水および食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/20~2/20)で精製し、化合物(5)((2R,3R,4S,5R)-1,3,4,5-テトラキス(ベンゾイルオキシ)-6-オキソ-6-フェニルヘキサン-2-イルアセテート;121mg、0.182mmol、73%)を得た。また、化合物(5)の他、未反応の化合物(4)(46mg、0.06mmol、24%)及び副生成物ビフェニルPh-Ph(7mg、0.045mmol、24%)を得た。
【0395】
例5:化合物(6)(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-1C-フェニルグルコース)の製造
【化53】
【0396】
ホットオーブンで乾燥したSchlenk管に、アルゴン雰囲気下、化合物(5)(0.2mmol、132mg)を入れ、続いてナトリウムメトキシド(0.02mmol、1mg)及びメタノール(2mL)を入れた。得られた反応混合液を25℃で6時間撹拌した。その後、反応混合液をシリカ層で濾過し、メタノール(3×20mL)で洗浄した。次に、得られた溶液を減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=4/20~8/20)で精製し、無色液体として化合物(6)(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-1C-フェニルグルコース;112mg、0.182mmol、収率91%)を得た。
【0397】
化合物(6)
IR(KBr):νmax=3411,3027,2923,1590,1494,1452,1361,1212,1093,734,696cm-1
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:7.64(d,J=7.0Hz,2H),7.38-7.13(m,21H),6.97(d,J=6.1Hz,2H),4.95-4.81(m,3H),4.69-4.56(m,2H),4.51(d,J=12.3Hz,1H),4.38(d,J=10.4Hz,1H),4.17(d,J=8.2Hz,1H),4.07(t,J=9.2Hz,1H),3.84-3.79(m,3H),3.70(d,J=10.9Hz,1H),3.53(d,J=9.4Hz,1H),3.34(s,1H)
13C-NMR(101MHz,CDCl)δ:142.47,138.85,138.58,138.45,137.59,128.61,128.47,128.42,128.26,128.23,128.03,127.79,127.75,127.69,127.62,127.58,126.36,98.00,85.28,83.59,78.53,75.75,75.53,75.08,73.38,72.15,69.12
HRMS [M-H]:C4039 計算値615.2747;実測値:615.2743
質量分析[M-H]:615
【0398】
例6:化合物(7)(3R,4S、5R-トリベンジルオキシ-6R-ベンジルオキシメチル-6S-フェニルテトラヒドロピラン)の製造
【化54】
【0399】
例1で得られた化合物(6)(200mg、0.32mmol)のアセトニトリル溶液(3mL)にトリエチルシラン(76mg、0.65mmol)を加えた。得られた溶液をドライアイス/アセトンバスで-40℃まで冷却後、三フッ化ホウ素・エーテル錯体(70mg、0.49mmol)の塩化メチレン(1mL)溶液を加えて-40~-30℃で3時間撹拌した。
【0400】
反応液をHPLC分析したところ、化合物(6)は完全に消費され、化合物(7)のピークが確認された。
【0401】
反応液に水(20mL)を加え、生成物を酢酸エチル(5mL×4)で抽出した。有機抽出物を合わせて減圧濃縮した。濃縮液をシリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製して化合物(7)(3R,4S、5R-トリベンジルオキシ-6R-ベンジルオキシメチル-6S-フェニルテトラヒドロピラン;110mg、収率56%)を得た。化合物(7)の異性体比は、β:α=82/18であった。
【0402】
HPLC条件:
測定波長:210nm
流速:1.0mL/min
移動相:アセトニトリル:水=90/10→100/0(0→10、20min)
カラム温度:20℃
充填剤:X Bridge、C18、5mm、4.8mmx150mm)
保持時間:β体 5.64min; α体 5.31min
【0403】
化合物(7)
H-NMR(CDCl)δ:3.50-3.55(m,1H),3.60-3.61(m,1H),3.73-3.82(m,5H),4.25(d,J=9.3Hz,1H),4.36(d,J=10.3Hz,1H),4.55-4.68(m,3H),4.86-4.98(m,3H),6.91-6.93(m,2H),7.14-7.53(m,23H)
【0404】
例7:有機亜鉛化合物と塩化リチウムとの複合体PhZnCl・LiClの製造
【化55】
【0405】
マグネチック撹拌子の入った50mLの乾燥したシュレンク管に削り屑状Mg(372mg、15.3mmol、1.5当量)及び塩化リチウム(LiCl;540mg、12.75mmol、1.25当量)入れてグローブボックスに入れ、ホットガンで乾燥させた。次に、温かいフラスコにアルゴンを3回注入した後、乾燥したTHF(8mL)及び水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H;1.0M THF溶液0.1mL、1mol%)を室温で加え、5~10分撹拌した。次に、シュレンク管を0℃に冷却し、ブロモベンゼン(1.1mL、10.2mmol、1.0当量)を加えた。得られた反応混合液を0℃で10分間、次いで室温で2時間撹拌してグリニャール試薬と塩化リチウムとの複合体(PhMgBr.LiCl)を得た。グリニャール試薬と塩化リチウムとの複合体を適当な量の乾燥THFで希釈して、LiCl及びヨウ素を用いて滴定し、約1M濃度に調整した。得られたグリニャール試薬と塩化リチウムとの複合体を含有する溶液を、ZnCl(グリニャール試薬に対して1当量)を含有する乾燥THF溶液に室温で添加し、15分間撹拌して、0.125MのPhZnCl・LiClを含有する溶液を取得した。なお、溶液濃度は、対応するグリニャール試薬の滴定濃度とトランスメタレーション後の希釈率に基づき調整した。