(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022029308
(43)【公開日】2022-02-17
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/38 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
H05K3/38 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020132588
(22)【出願日】2020-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真篠 直寛
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA16
5E343AA18
5E343BB16
5E343BB22
5E343BB24
5E343BB35
5E343CC62
5E343DD23
5E343DD25
5E343DD43
5E343DD76
5E343GG14
(57)【要約】
【課題】電極間の短絡及び信頼性の低下を防止すること。
【解決手段】配線基板は、絶縁層と、前記絶縁層の表面に金属又は半金属の酸化物を成膜して形成された絶縁性の酸化物薄膜と、前記酸化物薄膜に積層された金属からなるシード層と、前記シード層上に形成された金属からなる電極とを有し、前記酸化物薄膜及び前記シード層は、前記電極と重ならない領域から除去されて前記絶縁層を露出させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層の表面に金属又は半金属の酸化物を成膜して形成された絶縁性の酸化物薄膜と、
前記酸化物薄膜に積層された金属からなるシード層と、
前記シード層上に形成された金属からなる電極とを有し、
前記酸化物薄膜及び前記シード層は、
前記電極と重ならない領域から除去されて前記絶縁層を露出させる
ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記酸化物薄膜は、
ハフニウムの酸化物である酸化ハフニウムを成膜して形成されることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記酸化物薄膜は、
ALD(Atomic Layer Deposition)を用いて成膜された厚さが1~100nmの酸化ハフニウムの薄膜であることを特徴とする請求項2記載の配線基板。
【請求項4】
前記電極と重なる領域において前記絶縁層を貫通するビアをさらに有し、
前記シード層は、
前記ビアが形成される領域を除く領域において前記酸化物薄膜に積層される第1シード層と、
前記第1シード層に積層されるとともに、前記ビアの外周に形成される第2シード層とを有することを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項5】
絶縁層の表面に金属又は半金属の酸化物を成膜して絶縁性の酸化物薄膜を形成し、
前記酸化物薄膜に金属からなるシード層を積層し、
前記シード層上に金属からなる電極を形成し、
前記電極と重ならない領域から前記シード層を除去し、
前記シード層が除去された領域において前記酸化物薄膜を除去し、前記絶縁層を露出させる
工程を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記酸化物薄膜を形成する工程は、
ハフニウムの酸化物である酸化ハフニウムを成膜することを特徴とする請求項5記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記酸化物薄膜を形成する工程は、
ALD(Atomic Layer Deposition)を用いて厚さが1~100nmの酸化ハフニウムの薄膜を形成することを特徴とする請求項6記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記酸化物薄膜を除去する工程は、
前記シード層をエッチングマスクとしたドライエッチングによって前記酸化物薄膜を除去することを特徴とする請求項5記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記酸化物薄膜を除去する工程は、
アルゴン逆スパッタリングによって前記酸化物薄膜を除去することを特徴とする請求項8記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
一部の領域において前記シード層及び前記酸化物薄膜を除去し、
前記シード層及び前記酸化物薄膜が除去された領域に、前記絶縁層を貫通するビアホールを形成し、
前記シード層の表面及び前記ビアホールの内面に第2シード層を形成する工程をさらに有し、
前記電極を形成する工程は、
前記第2シード層上に前記電極を形成し、
前記シード層を除去する工程は、
前記シード層及び前記第2シード層を除去する
ことを特徴とする請求項5記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁層を貫通するビアホールを形成する工程をさらに有し、
前記酸化物薄膜を形成する工程は、
前記絶縁層の表面及び前記ビアホールの内面に前記酸化物薄膜を形成し、
前記電極を形成する工程は、
前記ビアホールの領域において前記シード層及び前記酸化物薄膜を除去し、
前記シード層の表面及び前記ビアホールの内面に第2シード層を形成し、
前記第2シード層上に前記電極を形成する工程を含む
ことを特徴とする請求項5記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、微細配線を有する配線基板は、例えばポリイミドなどの絶縁性の基材の表面に陰極となるシード層を形成し、シード層上に例えば電解めっきによって銅などの金属の電極を形成することにより製造される。シード層は、電極と同様に銅などの金属からなる層であり、基材の表面全体を被覆する。また、シード層と基材との密着性を高めるために、シード層と基材の間に、例えばチタンなどの金属を用いた密着層が形成されることがある。
【0003】
シード層及び密着層は、いずれも例えばスパッタリングによって形成される。すなわち、基材の表面にチタンのスパッタリングが行われることにより密着層が形成され、密着層の表面に銅のスパッタリングが行われることによりシード層が形成される。密着層としては、例えばチタン及びハフニウムなどの遷移金属の酸化物が用いられることもあり、この場合には、絶縁性の密着層が形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55-3676号公報
【特許文献2】特開2005-347438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シード層上に電極が形成された後、隣接する電極間においては、例えばエッチングによりシード層が除去される。すなわち、例えばシード層が銅を用いて形成されている場合、銅のエッチング液(エッチング液A)を用いるウェットエッチングによって電極間のシード層が除去される。
【0006】
しかしながら、基材に密着層、シード層及び電極が順に積層される配線基板においては、電極間の短絡及び信頼性の低下が発生することがあるという問題がある。具体的には、シード層上に銅の電解めっきによって電極が形成された状態の中間構造体から、電極間のシード層と密着層をウェットエッチングによって除去する際、エッチング液(エッチング液A)に中間構造体を浸漬する時間が長いと、シード層と同様に銅を用いて形成される電極の側面がエッチングされるサイドエッチングが発生する。このため、過度に長時間エッチング液(エッチング液A)に中間構造体を浸漬することはない。しかし、サイドエッチングを軽減させるためにエッチング時間を短くし過ぎると、密着層上にシード層の残渣が残留することがある。結果として、たとえ密着層が絶縁性であっても、密着層の表面に残留するシード層の残渣によって、隣接する電極間の短絡及び信頼性の低下が発生してしまう。
【0007】
また、密着層がチタンなどの金属を用いて形成されている場合には、シード層のエッチングの後、密着層のエッチングが行われるが、チタンのエッチング液(エッチング液B)はチタンよりも銅を早くエッチングするため、銅のエッチングレートが高くなる。このため、密着層のエッチング時に、電極の側面がエッチングされるサイドエッチングが発生する。サイドエッチングを抑制するために、中間構造体をチタンのエッチング液(エッチング液B)に浸漬する時間を過度に短時間にすると、導体であるチタンが電極間に残留し、電極間の短絡及び信頼性の低下が発生する。このような電極間の短絡及び信頼性の低下は、隣接する電極間の距離が小さい微細配線を有する配線基板では、特に発生する可能性が高い。
【0008】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、電極間の短絡及び信頼性の低下を防止することができる配線基板及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願が開示する配線基板は、1つの態様において、絶縁層と、前記絶縁層の表面に金属又は半金属の酸化物を成膜して形成された絶縁性の酸化物薄膜と、前記酸化物薄膜に積層された金属からなるシード層と、前記シード層上に形成された金属からなる電極とを有し、前記酸化物薄膜及び前記シード層は、前記電極と重ならない領域から除去されて前記絶縁層を露出させる。
【発明の効果】
【0010】
本願が開示する配線基板及び配線基板の製造方法の1つの態様によれば、電極間の短絡及び信頼性の低下を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る配線基板の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る配線基板の製造方法を示すフロー図である。
【
図3】
図3は、酸化物薄膜形成工程の具体例を示す図である。
【
図4】
図4は、シード層形成工程の具体例を示す図である。
【
図5】
図5は、レジスト形成工程の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、電解銅めっき工程の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、レジスト剥離工程の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、シード層エッチング工程の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係る配線基板の構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係る配線基板の製造方法を示すフロー図である。
【
図11】
図11は、ビルドアップ工程の具体例を示す図である。
【
図12】
図12は、酸化物薄膜形成工程の具体例を示す図である。
【
図13】
図13は、シード層形成工程の具体例を示す図である。
【
図14】
図14は、シード層エッチング工程の具体例を示す図である。
【
図15】
図15は、レジスト剥離工程の具体例を示す図である。
【
図16】
図16は、酸化物薄膜エッチング工程の具体例を示す図である。
【
図17】
図17は、ビアホール形成工程の具体例を示す図である。
【
図18】
図18は、第2シード層形成工程の具体例を示す図である。
【
図19】
図19は、電解銅めっき工程の具体例を示す図である。
【
図20】
図20は、レジスト剥離工程の具体例を示す図である。
【
図21】
図21は、シード層エッチング工程の具体例を示す図である。
【
図22】
図22は、実施の形態3に係る配線基板の製造方法を示すフロー図である。
【
図23】
図23は、ビアホール形成工程の具体例を示す図である。
【
図24】
図24は、酸化物薄膜形成工程の具体例を示す図である。
【
図25】
図25は、シード層形成工程の具体例を示す図である。
【
図26】
図26は、レジスト形成工程の具体例を示す図である。
【
図27】
図27は、シード層エッチング工程の具体例を示す図である。
【
図28】
図28は、レジスト剥離工程の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願が開示する配線基板及び配線基板の製造方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る配線基板100の構成を示す断面図である。
図1においては、配線を含む電極が形成される配線基板100の表面付近の断面を示す。
図1に示す配線基板100は、絶縁層110、酸化物薄膜120、シード層130及び電極141、142を有する。
【0014】
絶縁層110は、例えばポリイミドなどの絶縁性樹脂を用いて形成される配線基板100の基材である。絶縁層110は、無機材料フィラーやガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたものや、紙にフェノール樹脂を含浸させたものや、テフロン(登録商標)などであっても良い。絶縁層110の厚さは、例えば50μm程度である。
【0015】
酸化物薄膜120は、絶縁層110の表面に形成される絶縁性の薄膜であり、絶縁層110に対するシード層130の密着性を向上させる層である。酸化物薄膜120は、金属又は半金属の酸化物を用いたプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)又はALD(Atomic Layer Deposition)などの成膜技術によって形成され、厚さが例えば1~500nm、より望ましくは1~100nmの薄膜とすることができる。酸化物薄膜120が例えばALDによって成膜される薄膜であるため、酸化物薄膜120が絶縁層110に密着する密着強度が高く、また、例えばスルーホールなどの立体的な構造及び側壁に対しても被着性が高い。結果として、例えばHAST(Highly Accelerated Stress Test)のように配線基板100が高温高湿の条件下にさらされる信頼性試験が行われても、シード層130の絶縁層110に対する密着性低下を抑制することができる。
【0016】
酸化物薄膜120の材料としては、例えば酸化ハフニウム(ハフニア)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)又は五酸化ニオブなどを用いるのが好ましい。また、五酸化バナジウム、酸化クロム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸化スズ又は酸化アンチモンなどを酸化物薄膜120の材料とすることもできる。
【0017】
酸化物薄膜120は、電極141、142が形成される位置において絶縁層110の表面に形成されており、電極141、142の間においては、酸化物薄膜120が除去されている。具体的には、酸化物薄膜120は、シード層130がエッチングされた後に、例えばアルゴン逆スパッタリング、イオンミリング又はレーザ加工などによってドライエッチングされ、電極141、142と重ならない領域から除去される。結果として、電極141、142の間の領域では、絶縁層110が露出する。
【0018】
これにより、電極141、142の間の領域では、酸化物薄膜120とともに、酸化物薄膜120の表面に残留するシード層130の残渣が除去され、電極141、142間の短絡及び信頼性の低下を防止することができる。また、酸化物薄膜120は、絶縁性の酸化物を材料とする薄膜であるため、たとえ絶縁層110の表面に酸化物薄膜120の残渣が残留しても、電極141、142間の短絡及び信頼性の低下が発生することはない。
【0019】
さらに、上述したように、酸化物薄膜120の除去は、例えばアルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングによって行われるため、シード層130及び電極141、142のサイドエッチングを抑制することができるとともに、電極141、142と重ならない領域で露出する絶縁層110の表面の損傷も低減することができる。
【0020】
シード層130は、酸化物薄膜120の表面に形成される導電性の層であり、電極141、142に対する陰極となる層である。シード層130は、例えば銅などの金属のスパッタリングによって形成され、厚さを例えば30~3000nmとすることができる。
【0021】
電極141、142は、配線基板100の表面に形成される配線及び電極であり、例えば銅の電解めっきによってシード層130の表面に形成される。電極141、142のシード層130表面からの高さは、例えば1~500μmとすることができる。電極141、142は互いに隣接するが、電極141、142の間の領域の酸化物薄膜120及びシード層130が除去されているため、電極141、142は絶縁されている。
【0022】
次いで、上記のように構成される配線基板100の製造方法について、具体的に例を挙げながら
図2のフロー図を参照して説明する。
【0023】
まず、例えばポリイミドからなる絶縁層110の表面に、ALDなどの成膜技術によって酸化物薄膜120が形成される(ステップS101)。具体的には、例えば
図3に示すように、厚さ50μm程度の絶縁層110の表面に、厚さ1~500nmの酸化物薄膜120が形成される。酸化物薄膜120は、例えば酸化ハフニウム(ハフニア)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)又は五酸化ニオブなどの金属又は半金属の酸化物を材料とし、薄膜を形成可能なALDなどの成膜技術によって形成される。ALDによって酸化物薄膜120を形成することにより、例えばHASTなどの信頼性試験後にも酸化物薄膜120の密着強度の低下を抑制することができる。
【0024】
そして、酸化物薄膜120の表面に、スパッタリングによってシード層130が形成される(ステップS102)。すなわち、例えば
図4に示すように、酸化物薄膜120の表面に、例えば銅のスパッタリングによって厚さ30~3000nmのシード層130が形成される。
【0025】
シード層130が形成されると、配線を含む電極が形成される領域を除く領域にレジストが形成される(ステップS103)。すなわち、例えば
図5に示すように、電極141、142が形成される領域に開口部を有するレジスト150が形成される。そして、レジスト150をマスクとして、例えば銅の電解めっきが行われる(ステップS104)。すなわち、例えば
図6に示すように、レジスト150の開口部に銅が析出し、電極141、142が形成される。
【0026】
電極141、142が形成されると、レジスト150が剥離され(ステップS105)、例えば
図7に示すように、絶縁層110の表面に積層された酸化物薄膜120及びシード層130上に電極141、142を有する中間構造体が得られる。この中間構造体では、隣接する電極141、142が導体のシード層130を介して短絡しているため、銅のエッチングにより、電極141、142の間の領域のシード層130が除去される(ステップS106)。すなわち、例えば
図8に示すように、電極141、142をエッチングマスクとして、銅のエッチング液(エッチング液A)に中間構造体を浸漬することにより、電極141、142と重ならない領域121のシード層130が除去される。銅のエッチング液(エッチング液A)としては、例えば、主成分として硫酸と過酸化水素を混合したものを用いることができる。
【0027】
このとき、中間構造体を銅のエッチング液(エッチング液A)に浸漬するウェットエッチングが行われるため、銅を材料として形成されている電極141、142の側面がエッチングされるサイドエッチングが発生する。このため、エッチング液(エッチング液A)に中間構造体を浸漬する時間を過度に長くすることなく、サイドエッチングを抑制するのが好ましい。結果として、領域121にシード層130の残渣が残留することがあるが、これらの残渣は、以下の酸化物薄膜120のエッチング時に同時に除去される。
【0028】
すなわち、シード層130のウェットエッチングの後、例えばアルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングによって、領域121の酸化物薄膜120が除去される(ステップS107)。酸化物薄膜120が除去されることにより、酸化物薄膜120の表面に残留するシード層130の残渣も同時に除去され、電極141、142の間の領域では、絶縁層110が露出する。結果として、シード層130の残渣による電極141、142間の短絡及び信頼性の低下を防止することができる。また、アルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングが行われるため、シード層130及び電極141、142のサイドエッチングが抑制され、シード層130及び電極141、142の側面の損傷を低減することができる。さらに、アルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングでは、絶縁層110がエッチング液に浸漬されるウェットエッチングとは異なり、電極141、142と重ならない領域で露出する絶縁層110の表面の損傷を低減することができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態によれば、絶縁層の表面に密着層として絶縁性の酸化物薄膜を形成し、酸化物薄膜の表面にシード層を形成し、シード層上に電極を形成する。そして、電極と重ならない領域のシード層を除去した後、ドライエッチングによって酸化物薄膜を除去する。このため、電極が形成されていない領域にシード層の残渣が残留しても、これらの残渣が酸化物薄膜とともに除去され、隣接する電極間の短絡及び信頼性の低下を防止することができる。また、酸化物薄膜がアルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングによって除去されるため、シード層及び電極のサイドエッチングを抑制することができるとともに、単に逆スパッタにより残渣除去するよりも絶縁層の表面の損傷を低減することができる。
【0030】
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2に係る配線基板100の構成を示す断面図である。
図9において、
図1と同じ部分には同じ符号を付す。
図9においては、配線を含む電極が形成される配線基板100の表面付近の断面を示す。
図9に示す配線基板100は、絶縁層110、115、酸化物薄膜120、シード層130、電極141、142、導体層210、215、ビア220、第2シード層230及びビア240を有する。
【0031】
実施の形態2に係る配線基板100は、複数の絶縁層110、115及び複数の導体層210、215を積層して得られる積層基板である。なお、
図9に示す導体層210の下層に他の絶縁層及び導体層がさらに積層されていても良い。
【0032】
絶縁層110、115は、例えばポリイミドなどの絶縁性樹脂を材料とする絶縁層である。絶縁層110は、下層の絶縁層の表面に形成される導体層210を被覆し、絶縁層110の表面には導体層215が形成される。そして、導体層215は、絶縁層115によって被覆される。このように、配線基板100は、絶縁層110、115と導体層210、215とを積層して得られるビルドアップ層を有する。
【0033】
導体層210、215は、例えば銅などの金属をパターニングすることにより、各絶縁層の上面に形成される。互いに異なる絶縁層の上面に形成される導体層210及び導体層215は、絶縁層110を貫通するビア220によって電気的に接続される。また、絶縁層110の上面に形成される導体層215と絶縁層115の上面に形成される電極141とは、絶縁層115を貫通するビア240によって電気的に接続される。
【0034】
酸化物薄膜120は、絶縁層115の表面に形成される絶縁性の薄膜であり、絶縁層115に対するシード層130の密着性を向上させる層である。酸化物薄膜120は、金属又は半金属の酸化物を用いたプラズマCVD又はALDなどの成膜技術によって形成され、厚さが例えば1~500nmの薄膜とすることができる。酸化物薄膜120が例えばALDによって成膜される薄膜であるため、酸化物薄膜120が絶縁層115に密着する密着強度が高く、例えばHASTのように配線基板100が高温高湿の条件下にさらされる信頼性試験が行われても、シード層130の絶縁層115に対する密着性低下を抑制することができる。
【0035】
酸化物薄膜120の材料としては、例えば酸化ハフニウム(ハフニア)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)又は五酸化ニオブなどを用いるのが好ましい。また、五酸化バナジウム、酸化クロム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸化スズ又は酸化アンチモンなどを酸化物薄膜120の材料とすることもできる。
【0036】
酸化物薄膜120は、電極141、142が形成される位置において絶縁層110の表面に形成されており、電極141、142の間においては、酸化物薄膜120が除去されている。また、本実施の形態においては、酸化物薄膜120は、ビア240の位置においても除去されている。具体的には、酸化物薄膜120は、シード層130がエッチングされた後に、例えばアルゴン逆スパッタリング、イオンミリング又はレーザ加工などによってドライエッチングされ、電極141、142の間の領域及びビア240が形成される領域から除去される。
【0037】
シード層130は、酸化物薄膜120の表面に形成される導電性の層であり、電極141、142に対する陰極となる層である。シード層130は、例えば銅などの金属のスパッタリングによって形成され、厚さを例えば30~3000nmとすることができる。
【0038】
電極141、142は、配線基板100の表面に形成される配線及び電極であり、例えば銅の電解めっきによって第2シード層230の表面に形成される。電極141、142の第2シード層230表面からの高さは、例えば1~500μmとすることができる。電極141、142は互いに隣接するが、電極141、142の間の領域の酸化物薄膜120、シード層130及び第2シード層230が除去されているため、電極141、142は絶縁されている。電極141は、ビア240によって導体層215と電気的に接続される。
【0039】
第2シード層230は、シード層130の表面及びビア240の外周に形成される導電性の層であり、シード層130とともに電極141、142に対する陰極となる層である。第2シード層230は、シード層130と同様に、例えば銅などの金属のスパッタリングによって形成される。
【0040】
ビア240は、絶縁層115を貫通するビアホール内に第2シード層230及び電極141が形成されることにより、電極141と導体層215を電気的に接続する。すなわち、ビアホールの内面に形成される第2シード層230が導体層215に接触し、第2シード層230の内側の凹部に電極141が延伸している。
【0041】
次いで、上記のように構成される配線基板100の製造方法について、具体的に例を挙げながら
図10のフロー図を参照して説明する。なお、
図10において、
図2と同じ部分には同じ符号を付す。
【0042】
まず、絶縁層及び導体層の積層によりビルドアップ層が形成される(ステップS201)。具体的には、例えば
図11に示すように、絶縁層の上面に導体層210が形成されると、導体層210を被覆するように絶縁層110が積層される。そして、絶縁層110を貫通するビア220が形成されるとともに、絶縁層110の上面に導体層215が形成される。さらに、導体層215を被覆するように絶縁層115が積層される。
【0043】
そして、絶縁層115の表面に、ALDなどの成膜技術によって酸化物薄膜120が形成される(ステップS101)。具体的には、例えば
図12に示すように、ビルドアップ層の最上層である絶縁層115の表面に、厚さ1~500nmの酸化物薄膜120が形成される。酸化物薄膜120は、例えば酸化ハフニウム(ハフニア)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)又は五酸化ニオブなどの金属又は半金属の酸化物を材料とし、薄膜を形成可能なALDなどの成膜技術によって形成される。ALDによって酸化物薄膜120を形成することにより、例えばHASTなどの信頼性試験後にも酸化物薄膜120の密着強度の低下を抑制することができる。
【0044】
そして、酸化物薄膜120の表面に、スパッタリングによってシード層130が形成される(ステップS102)。さらに、シード層130の上面には、ビア240が形成される領域を除く領域にレジストが形成される(ステップS202)。すなわち、例えば
図13に示すように、酸化物薄膜120の表面に、例えば銅のスパッタリングによって厚さ30~3000nmのシード層130が形成される。その後、ビア240が形成される領域に開口部を有するレジスト250が形成される。
【0045】
そして、レジスト250をエッチングマスクとして、シード層130のエッチングが行われる(ステップS203)。具体的には、例えば
図14に示すように、レジスト250の開口部のシード層130が除去され、ビア240が形成される領域122において、酸化物薄膜120が露出する。
【0046】
領域122のシード層130が除去されると、レジスト250が剥離され(ステップS204)、例えば
図15に示すように、領域122では酸化物薄膜120が露出し、領域122以外の領域では酸化物薄膜120がシード層130によって被覆された状態となる。そこで、シード層130をエッチングマスクとして、酸化物薄膜120のエッチングが行われる(ステップS205)。具体的には、例えば
図16に示すように、例えばアルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングによって、領域122の酸化物薄膜120が除去される。ここでは、アルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングが行われるため、酸化物薄膜120のみが除去され、シード層130及び絶縁層115の損傷を低減することができる。
【0047】
そして、酸化物薄膜120が除去されることにより露出する絶縁層115に対して、例えば異方性エッチング又はレーザ加工などが施され、絶縁層115を貫通するビアホールが形成される(ステップS206)。すなわち、例えば
図17に示すように、酸化物薄膜120及びシード層130が除去された領域において、絶縁層115にビアホール115aが形成される。ビアホール115aは、絶縁層115を貫通して導体層215まで到達し、底面に導体層215を露出させる。
【0048】
ビアホール115aが形成されると、シード層130の上面及びビアホール115aの内面に、スパッタリングによって第2シード層230が形成される(ステップS207)。さらに、第2シード層230の上面には、配線を含む電極が形成される領域を除く領域にレジストが形成される(ステップS103)。すなわち、例えば
図18に示すように、シード層130の表面及びビアホール115aの内面に、例えば銅のスパッタリングによって厚さ30~3000nmの第2シード層230が形成される。その後、電極141、142が形成される領域に開口部を有するレジスト260が形成される。
【0049】
そして、レジスト260をマスクとして、例えば銅の電解めっきが行われる(ステップS104)。すなわち、例えば
図19に示すように、レジスト260の開口部に銅が析出し、電極141、142が形成される。このとき、ビアホール115aの内面に形成された第2シード層230の内側の凹部まで電極141が延伸し、電極141と導体層215を電気的に接続するビア240が形成される。
【0050】
電極141、142が形成されると、レジスト260が剥離され(ステップS105)、例えば
図20に示すように、絶縁層115の表面に積層された酸化物薄膜120、シード層130及び第2シード層230上に電極141、142を有し、電極141と導体層215を接続するビア240を有する中間構造体が得られる。この中間構造体では、隣接する電極141、142が導体のシード層130及び第2シード層230を介して短絡しているため、銅のエッチングにより、電極141、142の間の領域のシード層130及び第2シード層230が除去される(ステップS208)。すなわち、例えば
図21に示すように、電極141、142をエッチングマスクとして、銅のエッチング液に中間構造体を浸漬することにより、電極141、142と重ならない領域121のシード層130及び第2シード層230が除去される。
【0051】
このとき、中間構造体を銅のエッチング液に浸漬するウェットエッチングが行われるため、銅を材料として形成されている電極141、142の側面がエッチングされるサイドエッチングが発生する。このため、エッチング液に中間構造体を浸漬する時間を過度に長くすることなく、サイドエッチングを抑制するのが好ましい。結果として、領域121にシード層130又は第2シード層230の残渣が残留することがあるが、これらの残渣は、以下の酸化物薄膜120のエッチング時にも除去される。
【0052】
すなわち、シード層130及び第2シード層230のウェットエッチングの後、例えばアルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングによって、領域121の酸化物薄膜120が除去される(ステップS107)。酸化物薄膜120が除去されることにより、酸化物薄膜120の表面に残留するシード層130又は第2シード層230の残渣も同時に除去され、電極141、142間の短絡及び信頼性の低下を防止することができる。また、アルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングが行われるため、シード層130、第2シード層230及び電極141、142のサイドエッチングが抑制され、シード層130、第2シード層230及び電極141、142の側面の損傷を低減することができる。さらに、アルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングでは、絶縁層115がエッチング液に浸漬するウェットエッチングとは異なり、絶縁層115の表面の損傷を低減することができる。
【0053】
以上のように、本実施の形態によれば、絶縁層の表面に酸化物薄膜及びシード層を形成した後、電極が形成される位置の酸化物薄膜及びシード層を除去してビアを形成し、ビアを介して内層配線と接続される電極を形成する。そして、電極と重ならない領域のシード層を除去した後、ドライエッチングによって酸化物薄膜を除去する。このため、密着層として酸化物薄膜を有する積層基板を製造することができるとともに、電極が形成されていない領域にシード層の残渣が残留しても、これらの残渣が酸化物薄膜とともに除去され、隣接する電極間の短絡及び信頼性の低下を防止することができる。また、酸化物薄膜がアルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングによって除去されるため、シード層及び電極のサイドエッチングを抑制することができるとともに、単独でシード層残渣をドライエッチングする場合と比べて絶縁層の表面の損傷を低減することができる。
【0054】
(実施の形態3)
上記実施の形態2においては、絶縁層115の表面に酸化物薄膜120及びシード層130が形成された後、ビア240が形成される領域の酸化物薄膜120及びシード層130を除去し、ビアホール115aが形成されるものとした。しかしながら、ビアホール115aは、酸化物薄膜120及びシード層130が形成される前の初期段階で形成することも可能である。そこで、実施の形態3においては、初期段階でビアホール115aが形成される場合の配線基板100の製造方法について説明する。
【0055】
実施の形態3に係る配線基板100の構成は、実施の形態2(
図9)と同様であるため、その説明を省略する。実施の形態3においては、配線基板100の製造方法が実施の形態2とは異なる。そこで、実施の形態3に係る配線基板100の製造方法について、具体的に例をあげながら
図22に示すフロー図を参照して説明する。なお、
図22において、
図2及び
図10と同じ部分には同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0056】
まず、絶縁層及び導体層の積層によりビルドアップ層が形成される(ステップS201)。すなわち、積層された絶縁層110、115及び導体層210、215を有し、導体層210、215を電気的に接続するビア220を有するビルドアップ層が形成される。
【0057】
そして、ビルドアップ層の最上層の絶縁層115に対して、例えば異方性エッチング又はレーザ加工などが施され、絶縁層115を貫通するビアホールが形成される(ステップS301)。すなわち、例えば
図23に示すように、ビア240が形成される領域において、絶縁層115にビアホール115aが形成される。ビアホール115aは、絶縁層115を貫通して導体層215まで到達し、底面に導体層215を露出させる。
【0058】
そして、絶縁層115の表面及びビアホール115aの内面に、ALDなどの成膜技術によって酸化物薄膜120が形成される(ステップS101)。具体的には、例えば
図24に示すように、絶縁層115の表面及びビアホール115aの内面に、厚さ1~500nmの酸化物薄膜120が形成される。酸化物薄膜120は、例えば酸化ハフニウム(ハフニア)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)又は五酸化ニオブなどの金属又は半金属の酸化物を材料とし、薄膜を形成可能なALDなどの成膜技術によって形成される。ALDによって酸化物薄膜120を形成することにより、例えばHASTなどの信頼性試験後にも酸化物薄膜120の密着強度の低下を抑制することができる。
【0059】
そして、酸化物薄膜120の表面に、スパッタリングによってシード層130が形成される(ステップS102)。すなわち、例えば
図25に示すように、酸化物薄膜120の表面に、例えば銅のスパッタリングによって厚さ30~3000nmのシード層130が形成される。ビアホール115aにおいては、ビアホール115aの内面及び導体層215の上面に沿って酸化物薄膜120及びシード層130が形成されるため、凹部が形成される。
【0060】
シード層130が形成されると、シード層130の上面のビアホール115aの領域を除く領域にレジストが形成される(ステップS202)。すなわち、例えば
図26に示すように、ビアホール115aの領域に開口部を有するレジスト250が形成される。そして、レジスト250をエッチングマスクとして、シード層130のエッチングが行われる(ステップS203)。具体的には、例えば
図27に示すように、レジスト250の開口部のシード層130が除去され、ビアホール115a内の凹部を含む領域において、酸化物薄膜120が露出する。
【0061】
ビアホール115aの領域のシード層130が除去されると、レジスト250が剥離され(ステップS204)、例えば
図28に示すように、ビアホール115aの領域では酸化物薄膜120が露出し、ビアホール115aの領域以外の領域では酸化物薄膜120がシード層130によって被覆された状態となる。そこで、シード層130をエッチングマスクとして、酸化物薄膜120のエッチングが行われる(ステップS205)。これにより、実施の形態2においてビアホール115aが形成された状態(
図17)と同一の状態になるため、以下、実施の形態2と同様に、電極141、142及びビア240が形成される。
【0062】
すなわち、シード層130の上面及びビアホール115aの内面に、スパッタリングによって第2シード層230が形成され(ステップS207)、第2シード層230の上面の電極141、142が形成される領域を除く領域にレジストが形成される(ステップS103)。そして、レジストをマスクとして、例えば銅の電解めっきが行われることにより(ステップS104)、電極141、142及びビア240が形成され、レジストが剥離される(ステップS105)。その後、銅のエッチングにより、電極141、142と重ならない領域のシード層130及び第2シード層230が除去され(ステップS208)、例えばアルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングによって、電極141、142と重ならない領域の酸化物薄膜120が除去される(ステップS107)。
【0063】
以上のように、本実施の形態によれば、絶縁層にビアホールを形成した後、絶縁層の表面及びビアホールの内面に酸化物薄膜及びシード層を形成し、ヒアホールの領域の酸化物薄膜及びシード層を除去して電極及びビアを形成する。そして、電極と重ならない領域のシード層を除去した後、ドライエッチングによって酸化物薄膜を除去する。このため、密着層として酸化物薄膜を有する積層基板を製造することができるとともに、電極が形成されていない領域にシード層の残渣が残留しても、これらの残渣が酸化物薄膜とともに除去され、隣接する電極間の短絡及び信頼性の低下を防止することができる。また、酸化物薄膜がアルゴン逆スパッタリングなどのドライエッチングによって除去されるため、シード層及び電極のサイドエッチングを抑制することができるとともに、絶縁層の表面の損傷を低減することができる。
【符号の説明】
【0064】
110、115 絶縁層
115a ビアホール
120 酸化物薄膜
130、230 シード層
141、142 電極
150、250、260 レジスト
210、215 導体層
220、240 ビア